JP6903988B2 - 水性顔料分散組成物、水性インク、インクカートリッジ、記録装置及び記録方法 - Google Patents

水性顔料分散組成物、水性インク、インクカートリッジ、記録装置及び記録方法 Download PDF

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Description

本発明は、顔料分散剤、水性顔料分散組成物、水性インク、インクカートリッジ、記録装置及び記録方法に関する。
特許文献1には、(a)塩生成基含有モノマーと、(b)マクロマーと、(c)塩生成基含有モノマー及びマクロマーと共重合可能なモノマーを含むモノマー混合物を共重合させてなるビニルポリマーに顔料を含有させたビニルポリマー粒子の水分散液を含有するインクジエツト記録用水系インクが開示されている。
特許文献2には、少なくとも、(a)顔料と、(b)樹脂酸残基を含む特定繰り返し単位を含み、且つ重量平均分子量が10000〜1000000の範囲である重合体と、(c)重合性化合物とを含む顔料分散物が開示されている。
国際公開第00/39226号 特開2010−007020号公報
水系の顔料分散液では、顔料分散剤として酸価を有する高分子を中和して使用されることが多い。酸価を有する高分子としては、安価かつ容易に入手可能であることから、メタクリル酸又はアクリル酸を用いる共重合体を使用されることが多い。
しかし、メタクリル酸又はアクリル酸を用いる共重合体の中和物のpHは8.5から9.5のアルカリ性になり、pHが8.5以下の中性乃至弱アルカリ性領域では、顔料の分散が不安定になりやすく、顔料分散液の増粘や凝集の発生に対して懸念がある。一方、pHが9.5以上の強アルカリ性領域では顔料分散液中に含まれる各種成分が加水分解等により劣化する場合がある。
一方、界面活性剤を用いた顔料分散液の分散性は中性領域でも安定である。しかし、水系顔料分散液を用いたインクや塗料において、水の蒸発による顔料分散液の固化を防ぐ目的で高沸点の水溶性有機溶媒を顔料分散液に含有させることが多い。しかし、水溶性有機溶媒を多量に顔料分散液に含有させた場合、顔料の分散が不安定になり、顔料分散液の増粘や凝集の発生を引き起こす場合があった。
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであり、メタクリル酸又はアクリル酸由来の構造単位を有する共重合体に比較して、有機溶媒を含む水系媒体における中性乃至弱アルカリ性領域での顔料の保管安定性に優れる顔料分散剤を提供することを目的とする。
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
即ち、<1>に係る発明は、
下記一般式(1)で表される構造単位とポリスチレンマクロモノマー由来の構造単位とを有する重合体である顔料分散剤。
Figure 0006903988
(一般式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Xは、単結合を除く2価の連結基を示す。)
<2>に係る発明は、
一般式(1)で表される構造単位が、(メタ)アクリレート化合物由来の構造単位を含む<1>に記載の顔料分散剤。
<3>に係る発明は、
一般式(1)で表される構造単位が、(メタ)アクリル酸多量体由来の構造単位を含む<1>に記載の顔料分散剤。
<4>に係る発明は、
一般式(1)における前記2価の連結基が、直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基、アラルキレン基、アリーレン基、複素環基、−CO−、−O−、−NH−若しくは−S−又はこれらの組み合わせで表される<1>に記載の顔料分散剤。
<5>に係る発明は、
一般式(1)におけるRの結合する炭素原子とカルボキシ基との間に介在する原子の数が、1以上16以下であり、前記原子が、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子及びリン原子からなる群より選択される少なくとも1種である<1>に記載の顔料分散剤。
<6>に係る発明は、
前記ポリスチレンマクロモノマーの数平均分子量が、1000以上10000以下である<1><5>のいずれか1項に記載の顔料分散剤。
<7>に係る発明は、
前記一般式(1)で表される構造単位の割合が、5質量%以上50質量%以下である<1><6>のいずれか1項に記載の顔料分散剤。
<8>に係る発明は、
前記ポリスチレンマクロモノマー由来の構造単位の割合が、10質量%以上80質量%以下である<1><7>のいずれか1項に記載の顔料分散剤。
<9>に係る発明は、
顔料、水及び<1><8>のいずれか1項に記載の顔料分散剤を含有する水性顔料分散組成物。
<10>に係る発明は、
さらに、水溶性有機溶媒を含有する<9>に記載の水性顔料分散組成物。
<11>に係る発明は、
前記水溶性有機溶媒の含有量が、1質量%以上60質量%以下である<10>に記載の水性顔料分散組成物。
<12>に係る発明は、
前記顔料が、キナクリドン系顔料を含む<9><11>のいずれか1項に記載の水性顔料分散組成物。
<13>に係る発明は、
顔料、水、水溶性有機溶媒及び<1><8>のいずれか1項に記載の顔料分散剤を含有する水性インク。
<14>に係る発明は、
前記水溶性有機溶媒の含有量が、1質量%以上60質量%以下である<13>に記載の水性インク。
<15>に係る発明は、
前記顔料が、キナクリドン系顔料を含む<13>又は<14>に記載の水性インク。
<16>に係る発明は、
<13><15>のいずれか1項に記載の水性インクを収容したインクカートリッジ。
<17>に係る発明は、
<13><15>のいずれか1項に記載の水性インクを記録媒体上に吐出する吐出ヘッドを備える記録装置。
<18>に係る発明は、
<13><15>のいずれか1項に記載の水性インクを記録媒体上に吐出する吐出工程を有する記録方法。
<1><8>に係る発明によれば、メタクリル酸又はアクリル酸を用いる共重合体に比較して、有機溶媒を含む水系媒体における中性乃至弱アルカリ性領域での顔料の保管安定性に優れる顔料分散剤が提供される。
<9><12>に係る発明によれば、メタクリル酸又はアクリル酸を用いる共重合体に比較して、有機溶媒を含む水系媒体における中性乃至弱アルカリ性領域での顔料の保管安定性に優れる顔料分散剤を含有する水性顔料分散組成物が提供される。
<13><15>に係る発明によれば、メタクリル酸又はアクリル酸を用いる共重合体に比較して、有機溶媒を含む水系媒体における中性乃至弱アルカリ性領域での顔料の保管安定性に優れる顔料分散剤を含有する水性インクが提供される。
<16>に係る発明によれば、メタクリル酸又はアクリル酸を用いる共重合体に比較して、有機溶媒を含む水系媒体における中性乃至弱アルカリ性領域での顔料の保管安定性に優れる顔料分散剤を含有する水性インクを収容したインクカートリッジが提供される。
<17>に係る発明によれば、メタクリル酸又はアクリル酸を用いる共重合体に比較して、有機溶媒を含む水系媒体における中性乃至弱アルカリ性領域での顔料の保管安定性に優れる顔料分散剤を含有する水性インクを用いる記録装置が提供される。
<18>に係る発明によれば、メタクリル酸又はアクリル酸を用いる共重合体に比較して、有機溶媒を含む水系媒体における中性乃至弱アルカリ性領域での顔料の保管安定性に優れる顔料分散剤を含有する水性インクを用いる記録方法が提供される。
本実施形態に係る記録装置を示す概略構成図である。
以下、本発明の一例である実施形態について詳細に説明する。
<顔料分散剤>
本実施形態に係る顔料分散剤は、下記一般式(1)で表される構造単位とポリスチレンマクロモノマー由来の構造単位とを有する重合体である。本実施形態に係る顔料分散剤は、一般式(1)で表される構造単位及びポリスチレンマクロモノマー由来の構造単位以外のその他の構造単位を含んでもよい。
Figure 0006903988
一般式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Xは、単結合を除く2価の連結基を示す。
本実施形態に係る顔料分散剤はポリスチレンマクロモノマー由来の構造単位を含むため、顔料の表面に吸着されやすい。そのため、有機溶媒を含む水系媒体中においても顔料分散剤としての機能が発揮されやすいと考えられる。
また、本実施形態に係る顔料分散剤は一般式(1)で表される構造単位を含む。一般式(1)で表される構造単位では、2価の連結基であるXを介してカルボキシ基が共重合体の主鎖骨格に結合する。カルボキシ基が共重合体の主鎖骨格と2価の連結基を介して結合することで、カルボキシ基の中和物のpKaが、アクリル酸又はメタクリル酸由来の構造単位におけるカルボキシ基の中和物のpKaに比較して中性乃至弱アルカリ性領域での顔料の保管安定性に適した値となりやすい。そのため、中性乃至弱アルカリ性領域での顔料の保管安定性が向上すると考えられる。
以上の理由から、本実施形態に係る顔料分散剤は、メタクリル酸又はアクリル酸由来の構造単位を有する共重合体に比較して、有機溶媒を含む水系媒体における中性乃至弱アルカリ性領域での顔料の保管安定性に優れると推察される。
以下、本実施形態に係る顔料分散剤について詳細に説明する。
−一般式(1)で表される構造単位−
一般式(1)で表される構造単位は特に限定されるものではなく、カルボキシ基と共重合体の主鎖骨格との間に2価の連結基が介在しているものであれば特に限定されない。
カルボキシ基と共重合体の主鎖骨格との間に2価の連結基が介在することは即ち、一般式(1)で表される構造単位の元となる単量体が、アクリル酸及びメタクリル酸ではないことを意味する。
で示される2価の連結基としては、例えば、直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基、アラルキレン基、アリーレン基、複素環、−CO−、−O−、−NH−若しくは−S−又はこれらの組み合わせで表されるものが挙げられる。
また、一般式(1)におけるRの結合する炭素原子とカルボキシ基との間に介在する原子の数は1以上16以下であり、前記原子が、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子及びリン原子からなる群より選択される少なくとも1種であってもよい。
介在する原子の数は、1以上12以下であることが好ましく、1以上8以下であることがより好ましい。
の結合する炭素原子とカルボキシ基との間に介在する原子の数は、原子の数に基づくカルボキシ基と共重合体の主鎖骨格との間の距離に相当する。当該原子の数が多くなるにつれて、カルボキシ基が共重合体の主鎖骨格から離れていることを意味する。
に芳香環、脂環式アルキル基等の環状構造が含まれている場合、Rの結合する炭素原子とカルボキシ基との間に介在する原子の数は、当該原子の数が最小の数となるように数える。
以下に、Xの具体例を示すが、Xは以下の具体例に限定されるものではない。下記具体例において*を付した箇所でXがRの結合する炭素原子と結合し、**を付した箇所でXがカルボキシ基と結合するものとする。また、下記具体例中に付された数字は、各具体例におけるRの結合する炭素原子とカルボキシ基との間に介在する原子の数を示す。
Figure 0006903988
一般式(1)で表される構造単位は、(メタ)アクリレート化合物由来の構造単位であってもよい。
一般式(1)で表される構造単位の元となる(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、β−カルボキシエチルアクリレート等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
本実施形態において(メタ)アクリレートはアクリレート又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイルオキシはアクリロイルオキシ又はメタクリロイルオキシを意味し、(メタ)アクリル酸はアクリル酸又はメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリロイル基はアクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
一般式(1)で表される構造単位は、(メタ)アクリル酸多量体由来の構造単位であってもよい。(メタ)アクリル酸多量体は、下記一般式(2)で表される。
Figure 0006903988
一般式(2)において、Rは水素原子又はメチル基を示し、nは整数を示し、1以上4以下であることが好ましく、1以上3以下であることがより好ましい。なお、Rが水素原子でnが1の場合がβ−カルボキシエチルアクリレートである。
一般式(1)で表される構造単位は、重合体の主鎖骨格に直接又は2価の連結基を介して結合した水酸基に酸無水物を付加して形成されたものであってもよい。
水酸基に付加される酸無水物の具体例としては、無水コハク酸、無水フタル酸、無水3−メチルフタル酸、無水トリメリット酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、無水3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸、無水cis−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
−ポリスチレンマクロモノマー由来の構造単位−
ポリスチレンマクロモノマー由来の構造単位の元となるポリスチレンマクロモノマーは、片末端に重合性二重結合を有するスチレンの単独又はその他のモノマーとの共重合体であることが好ましい。ポリスチレンマクロモノマーとしては、ポリスチレンの分子末端の一方に(メタ)アクリロイル基が結合したオリゴマーを挙げることができる。その他のモノマーとしては、アクリロニトリル等が挙げられる。
ポリスチレンマクロモノマーに占めるスチレン由来の構造単位の質量基準の割合は、95質量%以上であることが好ましい。
ポリスチレンマクロモノマーの数平均分子量は特に限定されるものではなく、1000以上10000以下であることが好ましく、2000以上9000以下であることがより好ましく、3000以上8000以下であることがさらに好ましい。
ポリスチレンマクロモノマーの具体例としては、片末端メタクリロイル化ポリスチレンオリゴマー(Mn=6000、商品名:AS−6、東亞合成株式会社製)、片末端メタクリロイル化スチレンアクリロニトリルオリゴマー(Mn=6000、商品名:AN−6S、東亞合成株式会社製)等が挙げられる。ポリスチレンマクロモノマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
本実施形態に係る顔料分散剤に含まれていてもよいその他の構造単位の元となるその他のモノマーは特に限定されるものではない。
その他のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル、イタコン酸エステル、フマル酸エステル、マレイン酸エステル等のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル化合物;酢酸ビニル等のビニルエステル化合物;アクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;アクリルアミド等のアクリルアミド化合物;スチレン、アルキル置換スチレン、ハロゲン置換スチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン置換エチレン化合物;エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン、ピネン等のエチレン性不飽和化合物;などが挙げられる。これらの化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
これらの中でも、重合のし易さ、及び顔料が分散された顔料分散液の保管安定性の低下をより抑制する点で、(メタ)アクリル酸エステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル等)等の(メタ)アクリロイル骨格を有する化合物が好ましい。
本実施形態に係る顔料分散剤が有する一般式(1)で表される構造単位、ポリスチレンマクロモノマー由来の構造単位及び必要に応じて用いられるその他の構造単位の比率は以下の通りである。
本実施形態に係る顔料分散剤の全量に占めるポリスチレンマクロモノマー由来の構造単位の割合は、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、15質量%以上60質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上50質量%以下であることがさらに好ましい。
ポリスチレンマクロモノマー由来の構造単位の割合が10質量%以上であれば、顔料分散剤の顔料への吸着性が向上し、水系媒体に有機溶媒を含有させた際の顔料の分散安定性が向上する。ポリスチレンマクロモノマー由来の構造単位の割合が80質量%以下であれば、顔料分散剤の付着した顔料の親水性の低下が抑制され、低pHでの分散安定性が向上する。
本実施形態に係る顔料分散剤の全量に占める一般式(1)で表される構造単位の割合は、5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、5質量%以上45質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上40質量%以下であることがさらに好ましい。
また、一般式(1)で表される構造単位の割合は、後述する顔料分散剤の酸価に鑑みて適宜設定してもよい。
本実施形態に係る顔料分散剤に含まれる一般式(1)で表される構造単位とポリスチレンマクロモノマー由来の構造単位との質量基準の比率(一般式(1)で表される構造単位:ポリスチレンマクロモノマー由来の構造単位)は、15:85〜60:40であることが好ましく、20:80〜50:50であることがより好ましく、25:75〜50:50であることがさらに好ましい。
本実施形態に係る顔料分散剤がその他の構造単位を有する場合、本実施形態に係る顔料分散剤の全量に占めるその他の構造単位の割合は、0質量%を超え70質量%以下であることが好ましく、5質量%以上60質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上50質量%以下であることがさらに好ましい。
本実施形態に係る顔料分散剤の酸価は、30mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることが好ましい。顔料分散剤の酸価が30mgKOH/g以上であれば顔料分散液の安定性が向上し、顔料の沈降や顔料分散剤の粘度上昇を引き起こしにくくなる。顔料分散剤の酸価が250mgKOH/g以下であれば、分散安定性の悪化が引き起こされにくく、画像の耐水性や耐アルカリ性の低下が抑制される。顔料分散剤の酸価は35mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であることがより好ましく、40mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。
酸価は、JIS K0070:1992に従って行い、中和滴定法を用いて測定される。即ち、適当量の試料を分取し、溶媒(テトラヒドロフラン)100ml、及び、指示薬(フェノールフタレイン溶液)数滴を加え、水浴上で試料が完全に溶けるまで充分に振り混ぜる。これに、0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬の薄い紅色が30秒間続いた時を終点とする。酸価をA、試料量をS(g)、滴定に用いた0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液をB(ml)、fを0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液のファクターとした時、A=(B×f×5.611)/Sとして算出する。
本実施形態に係る顔料分散剤の重量平均分子量は特に限定されるものではない。顔料分散剤の重量平均分子量は、8000以上30万以下であることが好ましい。顔料分散剤の重量平均分子量が8000以上であれば顔料分散液の安定性の悪化が抑制されやすく、顔料の沈降や顔料分散液の粘度上昇を引き起こしにくくなる。顔料分散剤の重量平均分子量が30万以下であれば顔料分散液の粘度が上昇しにくく、顔料の分散不良が生じにくく分散時間が長くなりにくい。顔料分散剤の重量平均分子量は、1万以上15万以下であることがより好ましく、1万以上10万以下であることがさらに好ましく、1万以上8万以下であることが特に好ましい。
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定される値である。具体的には、GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC「HLC−8120GPC」を用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM−M (15cm)を使用し、THF溶媒で行う。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
次に、本実施形態に係る顔料分散剤の製造方法について説明する。
本実施形態に係る顔料分散剤は、例えば、一般式(1)で表される構造単位の元となるモノマー、ポリスチレンマクロモノマー、必要に応じて用いられるその他のモノマー等のラジカル重合性の化合物の単量体を用いて、ラジカル重合により重合することで得られる。
具体的には、溶液重合、乳化重合、懸濁重合など種々の重合方法を採用することができる。例えば、溶液重合法では、通常、モノマー、ラジカル重合開始剤等の試薬を均一に溶解させる溶媒を用いて行う。溶媒は、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコール、カルボン酸、ニトリル、エステル、ケトン、スルホキシド、水等が挙げられる。脂肪族炭化水素としては、ヘキサン、シクロヘキサン、芳香族炭化水素としては、トルエン、キシレン、ハロゲン化炭化水素としてはクロロホルム、四塩化炭素、アルコールとしてはエタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、カルボン酸としては酢酸、プロピオン酸、ニトリルとしてはアセトニトリル、エステルとしては酢酸エチル、酢酸ブチル、ケトンとしてはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、スルホキシドとしてはジメチルスルホキシド等が挙げられる。
ラジカル重合性の化合物の単量体を用いてラジカル重合により重合するとき、重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤としては、過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化tert−ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1−フェニル−2−メチルプロピル−1−ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過蟻酸tert−ブチル、過酢酸tert−ブチル、過安息香酸tert−ブチル、過フェニル酢酸tert−ブチル、過メトキシ酢酸tert−ブチル、過N−(3−トルイル)カルバミン酸tert−ブチル、重硫酸アンモニウム、重硫酸ナトリウム、等の過酸化物類;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’−アゾビス−(2,4’−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ化合物等が挙げられる。
また、分子量を調整する観点から、連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、ヘキシルチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、ノナンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、テトラデカンチオール、ヘキサデカンチオール等のチオール部位を有する化合物;等が挙げられる。
本実施形態に係る顔料分散剤は、顔料が分散された顔料分散液が油性(非水性)の場合、又は水性の場合のいずれの場合でも適用され得る。本実施形態に係る顔料分散剤は、特に、顔料を分散させる顔料分散液が水性である場合の顔料分散剤として適用すると、水性の顔料分散液の保管安定性の低下がより抑制される。
なお、本実施形態に係る顔料分散剤を用いて顔料を分散させた水性の顔料分散液は、例えば、水性塗料の顔料分散液、又は水性インクの顔料分散液として適用され得る。
本実施形態に係る顔料分散剤において、重合体中の構造単位の構造及びその存在量は、核磁気共鳴(NMR)、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)等の分析機器によって測定することで確認し得る。
(水性顔料分散組成物)
本実施形態に係る水性顔料分散組成物は、本実施形態に係る顔料分散剤と、顔料と、水とを含む。また、必要に応じて、水溶性有機溶媒を含む。
なお、水性顔料分散組成物中に含まれる顔料分散剤は、本実施形態に係る顔料分散剤と本実施形態に係る顔料分散剤以外の顔料分散剤を併用してもよい。本実施形態に係る顔料分散剤以外の顔料分散剤としては、例えば、本実施形態に係る顔料分散剤以外の高分子顔料分散剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
ただし、水性顔料分散組成物の保管安定性の低下がより抑制される点で、水性顔料分散組成物中に含まれる本実施形態に係る顔料分散剤は、水性顔料分散組成物中に含まれる顔料分散剤の全量に対して、90質量%以上であることがよく、100質量%であることが好ましい。
本実施形態に係る顔料分散剤の含有量は、顔料の種類により異なるため、特に限定されないが、水性顔料分散組成物中の顔料に対し、例えば、0.1質量%以上100質量%以下であることがよい。
顔料について説明する。
顔料としては、特に制限されないが、例えば、有機顔料、無機顔料が挙げられる。
黒色顔料(ブラック顔料)の具体例としては、Raven7000,Raven5750,Raven5250,Raven5000 ULTRAII,Raven 3500,Raven2000,Raven1500,Raven1250,Raven1200,Raven1190 ULTRAII,Raven1170,Raven1255,Raven1080,Raven1060(以上、コロンビアン・カーボン社製)、Regal400R,Regal330R,Regal660R,Mogul L,Black Pearls L,Monarch 700,Monarch 800,Monarch 880,Monarch 900,Monarch 1000,Monarch 1100,Monarch 1300,Monarch 1400(以上、キャボット社製)、Color Black FW1,Color Black FW2,Color Black FW2V,Color Black 18,Color Black FW200,Color Black S150,Color Black S160,Color Black S170,Printex35,Printex U,Printex V,Printex140U,Printex140V,Special Black 6,Special Black 5,Special Black 4A,Special Black4(以上、オリオンエンジニアドカーボンズ社製)、No.25,No.33,No.40,No.47,No.52,No.900,No.2300,MCF−88,MA600,MA7,MA8,MA100(以上、三菱化学社製)等を挙げられるが、これらに限定されるものではない。
シアン色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Blue−1,−2,−3,−15,−15:1,−15:2,−15:3,−15:4,−16,−22,−60等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
マゼンタ色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Red−5,−7,−12,−48,−48:1,−57,−112,−122,−123,−146,−168,−177,−184,−202, C.I.Pigment Violet −19等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
イエロー顔料の具体例としては、C.I.Pigment Yellow−1,−2,−3,−12,−13,−14,−16,−17,−73,−74,−75,−83,−93,−95,−97,−98,−114,−128,−129,−138,−151,−154,−180等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、顔料としては、黒色とシアン、マゼンタ、イエローの3原色顔料のほか、赤、緑、青、茶、白等の特定色顔料や、金、銀色等の金属光沢顔料、無色又は淡色の体質顔料、プラスチックピグメント等も挙げられる。
また、顔料としては、シリカ、アルミナ、又は、ポリマービード等をコアとして、その表面に染料又は顔料を固着させた粒子、染料の不溶レーキ化物、着色エマルション、着色ラテックス等も挙げられる。
キナクリドン系顔料(たとえばC.I.Pigment Red−122)は水系媒体に分散させることが困難な場合があるが、本実施形態に係る顔料分散剤を用いることで、キナクリドン系顔料が水系媒体中に安定に分散しやすくなる。
水性顔料分散組成物中に含まれる顔料の含有量は、特に限定されないが、予め定められた量が含有されていればよい。例えば、水性顔料分散組成物の全量に対して1質量%以上30質量%以下(好ましくは、2質量%以上25質量%以下)が挙げられる。
水について説明する。
水としては、特に不純物の混入、又は微生物の発生を防止するという観点から、イオン交換水、超純水、蒸留水、限外濾過水が好適に挙げられる。
水性顔料分散組成物中に含まれる水の量としては、特に限定されないが、顔料分散組成物中に含まれる顔料濃度が予め定められた量になるように決めればよい。
水溶性有機溶媒について説明する。
水溶性有機溶媒は、例えば、水性顔料分散組成物の保管時の乾燥抑制、及び水性顔料分散組成物による塗膜を乾燥させるときの造膜性の改善を目的に使用される。
水溶性有機溶媒としては、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒等が挙げられる。水溶性有機溶媒としては、その他、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等も挙げられる。
多価アルコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,2−へキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、キシリトールなどの糖アルコール類;キシロース、グルコース、ガラクトースなどの糖類;等が挙げられる。
多価アルコール類誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
含窒素溶媒としては、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
アルコール類としてはエタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等が挙げられる。
含硫黄溶媒としては、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
水溶性有機溶媒は、1種類で使用しても2種類以上を併用してもよい。
水溶性有機溶媒の量としては、特に限定されないが、水性顔料分散組成物の保管時の乾燥抑制の度合い、及び水性顔料分散組成物による塗膜を乾燥させるときの造膜性の改善する度合いに応じて、顔料分散組成物中に含まれる顔料濃度が予め定められた量になるように決定すればよい。水溶性有機溶媒の含有量は、例えば、1質量%以上60質量%以下(好ましくは、1質量%以上40質量%以下)が挙げられる。
水性顔料分散組成物は、必要に応じて、その他添加剤を含んでいてもよい。その他添加剤は、例えば、酸化防止剤、防カビ剤、導電剤、紫外線吸収剤、およびキレート化剤等が挙げられる。
水性顔料分散組成物の粘度は、顔料の種類等によって異なるため、特に限定されるものではない。例えば、水性顔料分散組成物の粘度は、1.5mPa・s以上30mPa・s以下(好ましくは1.5mPa・s以上20mPa・s以下)の範囲が挙げられる。
また、水性顔料分散組成物の保管安定性の低下がより抑制される点で、水性顔料分散組成物の調整直後(保管前)の粘度と、保管後(例えば、80℃、6日間保管後)との粘度の差が、0mP・s以上1.0mP・s以下(好ましくは0mPa・s以上0.5mPa・s以下)であることがよい。
粘度は、粘度粘弾性測定機(HAAKE社製、型番:MARS)を測定装置として用い、直径35mmのコーンプレートを用いて、粘度測定モードで、測定温度23℃、せん断速度100rpmで測定する。
水性顔料分散組成物中に分散している顔料の体積平均粒子径は、顔料分散組成物の保管安定性の低下がより抑制される点で、水性顔料分散組成物の調整直後(保管前)と、保管後(例えば、80℃、6日間保管後)との差が、0nm以上10nm以下(好ましくは0nm以上5nm以下)であることがよい。
体積平均粒子径の測定方法としては、動的光散乱式粒径分布測定装置(堀場製作所社製、LB−500)を用い、25℃で測定を行う。
水性顔料分散組成物の用途としては、特に制限されないが、例えば、水性塗料、各種印刷用の水性インク等の用途が挙げられる。
(水性インク)
次に、水性インクについて説明する。
水性インク(以下、単に「インク」とも称する)は、本実施形態に係る顔料分散剤、顔料、水、及び水溶性有機溶媒を含む。
水性インクは、本実施形態に係る顔料分散剤を含んでいる。水性インク中に含まれる顔料分散剤は、本実施形態に係る顔料分散剤と本実施形態に係る顔料分散剤以外の顔料分散剤を併用してもよい。本実施形態に係る顔料分散剤以外の顔料分散剤としては、特に限定されるものではないが、前述の水性顔料分散組成物に含有される本実施形態に係る顔料分散剤以外の顔料分散剤と同様の顔料分散剤が挙げられる。
ただし、水性インクの保管安定性の低下がより抑制される点で、水性インク中に含まれる本実施形態に係る顔料分散剤は、水性インク中に含まれる顔料分散剤の全量に対して、90質量%以上であることがよく、100質量%であることが好ましい。
本実施形態に係る顔料分散剤の含有量は、顔料の分散性等により異なるため、特に限定されないが、水性インク中の顔料に対し、例えば、0.1質量%以上100質量%以下であることがよい。
顔料としては、特に限定されるものではないが、前述の水性顔料分散組成物に含まれる顔料と同様の有機顔料、無機顔料が挙げられる。例えば、黒色顔料(ブラック顔料)、シアン色顔料、マゼンタ色顔料及びイエロー顔料が挙げられ、これらの顔料の具体例は、前述の水性顔料分散組成物に含有される顔料が挙げられる。
水性インクに含まれる顔料の含有量は、例えば、水性インクの全量に対して1質量%以上25質量%以下が好ましく、2質量%以上20質量%以下がより好ましい。
水としては、特に不純物の混入、又は微生物の発生を防止するという観点から、イオン交換水、超純水、蒸留水、限外濾過水が好適に挙げられる。
水の含有量は、例えば、インクに対して10質量%以上95質量%以下(好ましくは、30質量%以上90質量%以下)であることがよい。
水溶性有機溶媒としては、前述の水性顔料分散組成物に含まれる水溶性有機溶媒と同様の水溶性有機溶媒が挙げられる。例えば、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等が挙げられ、これらの水溶性有機溶媒の具体例は、前述の水性顔料分散組成物に含有される水溶性有機溶媒と同様のものが挙げられる。
水溶性有機溶媒の含有量は、1質量%以上60質量%以下が好ましく、1質量%以上40質量%以下がより好ましい。
その他添加剤について説明する。
水性インクには、その他添加剤を含んでもよい。その他添加剤としては、インク吐出性改善剤(ポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)、導電率/pH調整剤(水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属類の化合物等)、反応性の希釈溶媒、浸透剤、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、キレート化剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤等が挙げられる。
また、その他添加剤としては、水性インクの表面張力を調整し易くするための界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、公知の界面活性剤が挙げられ、例えば、HLB(親水基/疎水基バランス「Hydrophile− Lipophile Barance」)が14以下の界面活性剤が挙げられる。HLBが14以下の界面活性剤としては、HLBが14以下の界面活性剤を単独で用いるか、又は異なるHLBの界面活性剤を複数種使用してHLBを14以下に調整するなどの方法が挙げられる。
なお、HLB(親水基/疎水基バランス「Hydrophile− Lipophile Barance」)は、以下の式(グリフィン法)により定義されるものである。
・HLB=20×(親水部の式量の総和/分子量)
水性インクのpHは、例えば、好ましくは4以上10以下(より好ましくは7.5以上9.5以下)の範囲が挙げられる。
水性インクの導電率は、例えば、0.01S/m以上0.5S/m以下(好ましくは0.01S/m以上0.25S/m以下、より好ましくは0.01S/m以上0.20S/m以下)の範囲が挙げられる。
水性インクの粘度は、例えば、1.5mPa・s以上30mPa・s以下(好ましくは1.5mPa・s以上20mPa・s以下)の範囲が挙げられる。
また、水性インクの保管安定性の低下がより抑制される点で、水性インクの調製直後(保管前)と、保管後(例えば、80℃、6日間保管後)との粘度の差が、0mP・s以上1.0mP・s以下(好ましくは0mPa・s以上0.5mPa・s以下)であることがよい。
水性インク中に分散している顔料の体積平均粒子径は、水性インクの保管安定性の低下がより抑制される点で、水性インクの調製直後(保管前)と、保管後(例えば、80℃、6日間保管後)との差が、0nm以上10nm以下(好ましくは0nm以上5nm以下)であることがよい。
水性インクのpH、導電率、粘度、及び水性インク中の体積平均粒子径の各々の測定方法は、水性顔料分散組成物のpH、導電率、粘度、及び水性インク中の体積平均粒子径の各々の測定方法と同様である。
また、水性インクの表面張力は、例えば、20mN/m以上50mN/m以下(好ましくは、25mN/m以上45mN/m以下)の範囲が挙げられる。
ここで、表面張力としては、ウイルヘルミー型表面張力計(協和界面科学株式会社製)を用い、23℃、55%RHの環境において測定した値を採用する。
(記録装置/記録方法)
本実施形態に係る記録装置は、本実施形態に係る水性インクを記録媒体上に吐出する吐出ヘッドを備える記録装置である。本実施形態に係る記録装置によれば、本実施形態に係る水性インクを記録媒体上に吐出する吐出工程を有する記録方法が実現される。
また、本実施形態に係る記録装置には、本実施形態に係る水性インクを収容し、当該記録装置に着脱されるようカートリッジ化されたインクカートリッジを備えていてもよい。
以下、本実施形態に係る記録装置及び記録方法の一例について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る記録装置を示す概略構成図である。
本実施形態に係る記録装置12は、例えば、図1に示すように、筐体14内の下部に、給紙容器16が備えられており、給紙容器16内に積層された用紙P(記録媒体の一例)を取り出しロール18で1枚ずつ取り出す機構を有している。取り出された用紙Pは、搬送経路22を構成する複数の搬送ローラ対20で搬送される。
給紙容器16の上方には、駆動ロール24及び従動ロール26に張力を付与されつつ支持された無端状の搬送ベルト28が配置されている。搬送ベルト28の上方には、吐出ヘッド30(吐出装置の一例)が配置されており、搬送ベルト28における平坦部分に対向している。この吐出ヘッド30が搬送ベルト28の平坦部分に対向した領域が、吐出ヘッド30から用紙Pにインクの液滴が吐出される吐出領域となっている。搬送ローラ対20で搬送された用紙Pは、搬送ベルト28で保持されてこの吐出領域に至り、吐出ヘッド30に対向した状態となり、吐出ヘッド30から画像情報に応じて吐出されたインクの液滴が用紙Pの表面に付着する。
吐出ヘッド30はインクジェット方式によってインク滴を複数のノズルから吐出する吐出ヘッドであり、公知のものが適用される。例えば、吐出ヘッド30は、インクの液滴を熱により吐出する、所謂サーマル方式であってもよいし、インクの液滴を圧力により吐出する、所謂圧電方式であってもよい。
また吐出ヘッド30としては、例えば、有効な記録領域(インクを吐出するノズルの配置領域)が用紙Pの幅(搬送方向と交差(例えば直交)する方向の長さ)以上とされた長尺状の吐出ヘッドが挙げられる。
また吐出ヘッド30としては、目的に応じて、例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)の4色それぞれに対応した4つの吐出ヘッドが搬送方向に沿ってアレイ状に配置されている形態、ブラック(K)に対応した一つの吐出ヘッド30を配置した形態、他の中間色を加えた4色以上のそれぞれに対応した4つ以上の吐出ヘッド30を配置した形態等が挙げられる。
吐出ヘッド30の上流側(用紙Pの搬送方向上流側)には、帯電ロール32が配置されている。帯電ロール32は、従動ロール26との間で搬送ベルト28及び用紙Pを挟みつつ従動し、接地された従動ロール26との間に電位差を生じさせ、用紙Pに電荷を与えて搬送ベルト28に静電吸着させる。
吐出ヘッド30の下流側(用紙Pの搬送方向下流側)には、剥離板34が配置されており、用紙Pを搬送ベルト28から剥離させる。剥離された用紙Pは、剥離板34の下流側(用紙Pの搬送方向下流側)で排出経路36を構成する複数の排出ローラ対38で搬送され、筐体14の上部に設けられた排紙容器40に排出される。
なお、図1に示す記録装置12は、吐出ヘッド30によってインクの液滴を用紙Pの表面に直接吐出する方式であるが、これに限られず、例えば中間転写体にインクの液滴を吐出した後に、中間転写体上のインクの液滴を用紙Pに転写する方式であってもよい。
また、記録装置12では、目的のサイズの枚葉状の記録媒体に水性インクを吐出して画像を記録する方式について説明したが、例えば、ロール状の記録媒体(所謂連帳紙)に水性インクを吐出して画像を記録する方式であってもよい。
記録装置12では、乾燥装置を備えていない記録装置について説明したが、記録媒体上に吐出された水性インクを乾燥する乾燥装置を更に備えた記録装置でもあってもよい。
本実施形態は、限定的に解釈されるものではなく、本発明の要件を満足する範囲内で実現されることは、言うまでもない。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
[実施例1]
(顔料分散剤1の合成)
反応容器にメチルエチルケトン200部を仕込んで窒素気流下78℃に加熱した。β−カルボキシエチルアクリレート(CEA:SIPOMER β−CEA J;ソルベイ日華株式会社製)90部、エチルメタクリレート(EMA)240部、ポリスチレンマクロモノマー(AS−6、東亞合成株式会社製)270部、メチルエチルケトン200部、V−601(重合開始剤、和光純薬工業株式会社製)12部の混合物を3時間かけて滴化し、さらに80℃で3時間反応させた。メチルエチルケトンを減圧留去することで顔料分散剤1を白色粉体として得た。CEA、EMA及びAS−6の質量基準の比率CEA/EMA/AS−6は15/40/45とした。
顔料分散剤1の酸価は51mgKOH/gであり、Mwは43000であった。
(顔料分散剤2の合成)
CEA、EMA及びAS−6の質量基準の比率CEA/EMA/AS−6を15/20/65とした以外は顔料分散剤1の合成と同様にして顔料分散剤2を合成した。
顔料分散剤2の酸価は51mgKOH/gであり、Mwは51000であった。
(顔料分散剤3の合成)
EMAに替えてブチルアクリレート(BA)を用い、CEA、BA及びAS−6の質量基準の比率を15/50/35とした以外は顔料分散剤1の合成と同様にして顔料分散剤3を合成した。
顔料分散剤3の酸価は51mgKOH/gであり、Mwは38000であった。
(顔料分散剤4の合成)
CEA、EMA及びAS−6の質量基準の比率CEA/EMA/AS−6を30/25/45とした以外は顔料分散剤1の合成と同様にして顔料分散剤4を合成した。
顔料分散剤4の酸価は103mgKOH/gであり、Mwは43000であった。
(顔料分散剤5の合成)
CEAに替えて2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸(SEMA)を用い、SEMA、EMA及びAS−6の質量基準の比率を20/35/45とした以外は顔料分散剤1の合成と同様にして顔料分散剤5を合成した。
顔料分散剤5の酸価は49mgKOH/gであり、Mwは41000であった。
(顔料分散剤6の合成)
AS−6に替えてAN−6S(東亞合成株式会社製)を用いた以外は顔料分散剤1の合成と同様にして顔料分散剤6を合成した。
顔料分散剤6の酸価は51mgKOH/gであり、Mwは55000であった。
(比較顔料分散剤1の合成)
CEAに替えてメタクリル酸(MAA)を用い、AS−6に替えてスチレン(St)を用い、MAA、EMA及びStの質量基準の比率を15/40/45とした以外は顔料分散剤1の合成と同様にして比較顔料分散剤1を合成した。
比較顔料分散剤1の酸価は100mgKOH/gであり、Mwは33000であった。
(比較顔料分散剤2の合成)
CEAに替えてメタクリル酸(MAA)を用い、MAA、EMA及びAS−6の質量基準の比率を8/47/45とした以外は顔料分散剤1の合成と同様にして比較顔料分散剤2を合成した。
比較顔料分散剤2の酸価は52mgKOH/gであり、Mwは46000であった。
[実施例1〜9及び比較例1〜4]
(水性顔料分散組成物及び水性インクの調製)
各顔料3.0部、各顔料分散剤0.9部、25%水酸化ナトリウム水溶液を各顔料分散剤に含まれるカルボキシ基と等モルの水酸化ナトリウムとなる量及び水を混合し、超音波分散機で60分間分散して顔料の濃度が15%の水性顔料分散組成物を得た。用いた顔料及び顔料分散剤は、表1又は表2のとおりとした。なお、比較例4では、顔料分散剤に替えて界面活性剤(テイカパワーBN2060(商品名)、テイカ株式会社製)0.3部を加えた。
さらに、得られた水性顔料分散組成物に表1又は表2に記載の水溶性有機溶媒を表1又は表2に記載の量添加し、さらに顔料の濃度が5.0%となるように水を加えて水性インクを得た。
<評価>
得られた水性インクに3%硝酸又は10%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを7.5及び9.5に調整した。動的光散乱式粒径分布測定装置(LB−500(堀場製作所社製))を用いてpH調整前の水性インク中の顔料の体積平均粒子径及びpH調整して30℃で7日経過後の水性インク中の顔料の体積平均粒子径を測定した。pH調整前後での目視による沈降物の有無及び体積平均粒子径の変化率に基づいて分散安定性を下記基準に従い評価した。得られた結果を表1又は表2に示す。
−評価基準−
A:体積平均粒子径の変化率が10%未満、かつ沈降物なし
B:体積平均粒子径の変化率が10%以上、かつ沈降物なし
C:沈降物あり
Figure 0006903988
Figure 0006903988
表1及び表2中、略号の意味は以下の通りである。
PG :プロピレングリコール
EG :エチレングリコール
DPM :ジプロピレングリコールモノメチルエーテル
PR122 :C.I.Pigment Red−122
PB15:3 :C.I.Pigment Blue−15:3
PY74 :C.I.Pigment Yellow−74
12 記録装置
14 筐体
16 給紙容器
18 取り出しロール
20 搬送ローラ対
24 駆動ロール
26 従動ロール
28 搬送ベルト
30 吐出ヘッド
32 帯電ロール
34 剥離板
36 排出経路
38 排出ローラ対
40 排紙容器
P 用紙

Claims (24)

  1. 顔料、水及び下記一般式(1)で表される構造単位とポリスチレンマクロモノマー由来の構造単位とを有する重合体である顔料分散剤を含有する水性顔料分散組成物
    Figure 0006903988

    (一般式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Xは、単結合を除く2価の連結基を示す。)
  2. 一般式(1)で表される構造単位が、(メタ)アクリレート化合物由来の構造単位を含む請求項1に記載の水性顔料分散組成物
  3. 一般式(1)で表される構造単位が、(メタ)アクリル酸多量体由来の構造単位を含む請求項1に記載の水性顔料分散組成物
  4. 一般式(1)における前記2価の連結基が、直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基、アラルキレン基、アリーレン基、複素環基、−CO−、−O−、−NH−若しくは−S−又はこれらの組み合わせで表される請求項1に記載の水性顔料分散組成物
  5. 一般式(1)におけるRの結合する炭素原子とカルボキシ基との間に介在する原子の数が、1以上16以下であり、前記原子が、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子及びリン原子からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載の水性顔料分散組成物
  6. 前記ポリスチレンマクロモノマーの数平均分子量が、1000以上10000以下である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の水性顔料分散組成物
  7. 前記一般式(1)で表される構造単位の割合が、5質量%以上50質量%以下である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の水性顔料分散組成物
  8. 前記ポリスチレンマクロモノマー由来の構造単位の割合が、10質量%以上80質量%以下である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の水性顔料分散組成物
  9. さらに、水溶性有機溶媒を含有する請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の水性顔料分散組成物。
  10. 前記水溶性有機溶媒の含有量が、1質量%以上60質量%以下である請求項に記載の水性顔料分散組成物。
  11. 前記顔料が、キナクリドン系顔料を含む請求項〜請求項10のいずれか1項に記載の水性顔料分散組成物。
  12. 顔料、水、水溶性有機溶媒及び下記一般式(1)で表される構造単位とポリスチレンマクロモノマー由来の構造単位とを有する重合体である顔料分散剤を含有する水性インク。
    Figure 0006903988

    (一般式(1)中、R は、水素原子又はメチル基を示し、X は、単結合を除く2価の連結基を示す。)
  13. 一般式(1)で表される構造単位が、(メタ)アクリレート化合物由来の構造単位を含む請求項12に記載の水性インク。
  14. 一般式(1)で表される構造単位が、(メタ)アクリル酸多量体由来の構造単位を含む請求項12に記載の水性インク。
  15. 一般式(1)における前記2価の連結基が、直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基、アラルキレン基、アリーレン基、複素環基、−CO−、−O−、−NH−若しくは−S−又はこれらの組み合わせで表される請求項12に記載の水性インク。
  16. 一般式(1)におけるR の結合する炭素原子とカルボキシ基との間に介在する原子の数が、1以上16以下であり、前記原子が、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子及びリン原子からなる群より選択される少なくとも1種である請求項12に記載の水性インク。
  17. 前記ポリスチレンマクロモノマーの数平均分子量が、1000以上10000以下である請求項12〜請求項16のいずれか1項に記載の水性インク。
  18. 前記一般式(1)で表される構造単位の割合が、5質量%以上50質量%以下である請求項12〜請求項17のいずれか1項に記載の水性インク。
  19. 前記ポリスチレンマクロモノマー由来の構造単位の割合が、10質量%以上80質量%以下である請求項12〜請求項18のいずれか1項に記載の水性インク。
  20. 前記水溶性有機溶媒の含有量が、1質量%以上60質量%以下である請求項12〜請求項19のいずれか1項に記載の水性インク。
  21. 前記顔料が、キナクリドン系顔料を含む請求項12〜請求項20のいずれか1項に記載の水性インク。
  22. 請求項12〜請求項21のいずれか1項に記載の水性インクを収容したインクカートリッジ。
  23. 請求項12〜請求項21のいずれか1項に記載の水性インクを記録媒体上に吐出する吐出ヘッドを備える記録装置。
  24. 請求項12〜請求項21のいずれか1項に記載の水性インクを記録媒体上に吐出する吐出工程を有する記録方法。
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