JP2010197017A - 熱交換器用アルミニウムフィン材及びそれを用いたフィンプレス方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】第1塗膜3は、ウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂のうち1種以上からなるベース樹脂にワックスを含有してなり、膜厚が0.2〜20μmである。第1塗膜3におけるワックスの含有量はベース樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部である。ワックスは、カルナウバ、ポリエチレン、ナイロン、ポリエステル、フッ素系樹脂、ポリプロピレン、アミノ樹脂、シリコン系樹脂のうち1種以上からなる。第2塗膜4は、親水性樹脂に分子量1000〜400000の水溶性ポリエーテルからなる親水性潤滑剤を含有してなり、膜厚が0.2〜5μmである。
【選択図】図1
Description
さらには、熱交換器を加熱して加工油を蒸発揮散させるために乾燥炉を通す必要があり、乾燥炉操業にかかわるCO2排出量の増加や、揮散した油が大気中に放出される等、地球環境に悪影響を与えるという問題がある。
このように、従来使用していたアルミニウムフィン材では、プレス加工の際に低粘度加工油を使用しても、上述の問題が発生する。
上記第1塗膜は、ベース樹脂にワックスを含有してなると共に、膜厚が0.2〜20μmであり、
上記ベース樹脂は、ウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂のうち1種又は2種以上からなり、
上記第1塗膜における上記ワックスの含有量は、上記ベース樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部であり、
上記ワックスは、カルナウバ、ポリエチレン、ナイロン、ポリエステル、フッ素系樹脂、ポリプロピレン、アミノ樹脂、シリコン系樹脂のうち1種又は2種以上からなり、
上記第2塗膜は、親水性樹脂に親水性潤滑剤を含有してなると共に、膜厚が0.2〜5μmであり、
上記親水性潤滑剤は、分子量1000〜400000の水溶性ポリエーテルからなることを特徴とする熱交換器用アルミニウムフィン材にある(請求項1)。
なお、プレス潤滑油の通常の供給量とは、フィン付着油量で2.0〜2.5g/m2程度であり、本発明の熱交換器用アルミニウムフィン材を用いる場合には、プレス潤滑油を供給することなく、あるいは、フィン付着油量で0.2g/m2以下程度の使用量でプレス加工を行うことができる。
また、上記第1塗膜に含有されているワックスにより摩擦面の潤滑性を向上させることができる。
さらに、本発明の熱交換器用アルミニウムフィン材を用いることにより、プレス油の購入コスト、乾燥コストを削減することができ、また大気中への有機物の排出を削減することができ、環境への影響を低減することができる。
また、上記フィンプレス方法は、プレス油を用いることなく、又は低減してプレス加工を行うため、プレス油の購入コスト・乾燥コストを削減することができ、また大気中への有機物の排出を削減することができ環境への影響を低減することができる。
上記アルミニウムよりなる基板は、純アルミニウムであっても、アルミニウム合金であってもよい。
上記第1塗膜の膜厚が0.2μm未満である場合には、上述の第1塗膜による潤滑性を十分に得ることができないという問題がある。一方、上記膜厚が20μmを超える場合には、塗膜が脆く剥離しやすくなって金型上に堆積し、プレス加工を阻害するという問題がある。また、塗装時には、塗装ロール等に堆積し生産が困難となる。
これらのベース樹脂を構成する樹脂は、第2塗膜との密着性が良好であるという性質を有しているため、ベース樹脂として適している。
上記ワックスの含有量が上記ベース樹脂100重量部に対して0.1重量部未満である場合には、上記第1塗膜が、十分な潤滑性を有することができないという問題がある。一方、上記ワックスの含有量が上記ベース樹脂100重量部に対して10重量部を超える場合には、第2塗膜との密着性を阻害し、金型上に塗膜が堆積するという問題や、塗装時には塗装ロール等に堆積し、生産が困難になるという問題がある。
また、上記第2塗膜を構成する親水性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、セルロース樹脂等が挙げられる。
この場合は、親水性が良好であり、熱交換器性能の低下を抑制することができる。
また、上記有機樹脂を含有する際には、有機樹脂のみを含有してもよいし、上記有機樹脂に界面活性剤等を添加したものを含有してもよい。
上記親水性潤滑剤を構成する水溶性ポリエーテルの分子量が1000未満の場合には、プレス加工の際に塗膜粉が金型表面に堆積するおそれや、潤滑塗膜の融点が低くなり塗装後の材料同士の潤滑塗膜が融着しやすくなり、塗装後の材料同士がくっつき作業性が低下するおそれがある。一方、上記水溶性ポリエーテルの分子量が400000を超える場合には、コストが上がる恐れや、取り扱いや量産性に問題が生じるおそれがある。
上記ポリエーテルを構成するアルキレンオキサイドとしては、具体的には、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−エポキシブタン(β−ブチレンオキサイド)、1,2−エポキシ−1−メチルプロパン、1,2−エポキシヘプタン等が挙げられる。
また、上記アルキレンオキサイド等の重合形態は特に限定されず、1種類のアルキレンオキサイドの単独重合、2種類以上のアルキレンオキサイド等のランダム共重合、ブロック共重合、ランダム/ブロック共重合等であってよい。
上記第2塗膜の膜厚が0.2μm未満である場合には、上記第2塗膜による親水性を十分に得ることができないという問題がある。一方、上記第2塗膜の膜厚が5μmを超える場合には、塗膜が脆く剥離しやすくなって金型上に堆積し、プレス加工を阻害するという問題がある。また、塗装時には、塗装ロール等に堆積し生産が困難となる。
第2塗膜にワックスを含有させる場合には、上記第2塗膜の親水性が低下しないように、ワックスとして、フッ素樹脂あるいはポリエチレンを採用することが好ましい。
この場合には、プレス加工時の潤滑性を向上させることができる。
この場合には、プレス加工を行う際に、アルミニウムフィン材と工具との摩擦面において、摩擦抵抗を減少させ、しごき加工性、張り出し加工性を向上させることができる。
この場合には、上記親水性皮膜に、さらに、優れた親水性を付与することができる。
上記第2塗膜に油性剤を含有させることにより、プレス工具への金属粉の凝着を抑制することができる。
上記化成皮膜よりなる下地層が形成されている場合には、アルミニウム板と第1塗膜との密着性を効果的に向上させることができる。また、優れた耐食性が実現されて、水、塩素化合物等の腐食性物質がアルミニウム板の表面に浸透した際に惹起される塗膜下腐食が抑制され、塗膜割れや塗膜剥離の防止を図ることができる。
なお、上記クロメート処理やノンクロメート処理等の化成処理方法には、反応型及び塗布型があるが、本発明においてはいずれの手法が採用されても何ら差し支えない。
また、上記耐食性樹脂皮膜としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等よりなる皮膜が挙げられる。
本例は、本発明の熱交換器用アルミニウムフィン材にかかる実施例について図1、及び図2を用いて説明する。
本例では、本発明にかかる実施例として、表1、2に示す熱交換器用アルミニウムフィン材(試料e1〜試料e43)を作製し、また、本発明にかかる比較例として、表3に示す熱交換器用アルミニウムフィン材(試料c1〜試料c8)を作製した。
図1は、試料e1〜試料e32、試料e43、及び試料c1〜試料c8の構成を示す図である。
図2は、試料e33〜試料e42の構成を示す図である。
以下、これを詳説する。
また、上記第1塗膜3、及び第2塗膜4を形成する下記の材料を用意した。
第1塗膜を構成するベース樹脂として、以下のA1〜A4を準備した。
A1:ウレタン樹脂、
A2:エポキシ樹脂、
A3:ポリエステル樹脂、
A4:フェノール樹脂。
第1塗膜を構成するワックスとして、以下のB1〜B8を準備した。
B1:カルナウバ、
B2:ポリエチレン、
B3:ナイロン、
B4:ポリエステル、
B5:フッ素、
B6:ポリプロピレン、
B7:アミノ樹脂、
B8:シリコン樹脂。
第2塗膜を構成する親水性塗料として、以下のC1〜C7を準備した。
C1:水ガラス系親水性塗料、
アルカリケイ酸塩(SiO2:Na2O=3:5)10重量部、ヒドロキシエチルアクリレート−アクリル酸共重合体2重量部、炭酸アンモニウムジルコニウム塩0.5重量部。
C2:樹脂系親水性塗料+シリカ系親水性塗料、
アクリル樹脂70重量部、メラミン樹脂15重量部、ポリオキシエチレンンアルキルフェニルエーテル(界面活性剤)10重量部、コロイダルシリカ5重量部。
C3:樹脂系親水性塗料、
ヒドロキシエチルセルロース(水溶性セルロース樹脂)10重量部、アクリル酸−アクリルアミド共重合体(水溶性アクリル樹脂)10重量部。
C4:樹脂系親水性塗料、
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸20重量部、メタクリル酸60重量部、メタクリル酸メチル15重量部、ジメチルアミノエチルメタクリレート5重量部。
C5:樹脂系親水性塗料、
カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩25重量部、カルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩50重量部、N−メチロールアクリルアミド25重量部、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(界面活性剤)5重量部。
C6:樹脂系親水性塗料、
ポリビニールアルコール50重量部、カルボキシメチルセルロース50重量部、ジルコニウムキレート化合物5重量部、ジアルキルスルホこはく酸エステル塩(界面活性剤)5重量部。
C7:樹脂系親水性塗料、
ポリビニルアルコール50重量部、アクリル酸50重量部。
上記C1〜C7のいずれの親水性塗料も、水酸基、カルボキシル基、エステル基もしくはエーテル基のいずれかを含む有機樹脂を含有しているものである。
また、上記C1、C2は、ケイ酸塩もしくはコロイダルシリカのいずれかを含有しているものである。
また、第2塗膜に含有させる親水性潤滑剤として、以下のD1及びD2を準備した。
D1:ポリエチレングリコール、
D2:ポリエチレンオキサイドとエチレンオキサイドの誘導体。
また、第2塗膜に含有させる樹脂ビーズ41として、以下のE1及びE2を準備した。
E1:フッ素系、
E2:ポリエチレン。
また、第2塗膜に含有させる油性剤として、以下のF1を準備した。
F1:アルカンスルホン酸塩。
まず、上記基板2に対して、市販の弱アルカリ系脱脂剤にて、脱脂処理を行い、次いで、クロム酸、リン酸、フッ化水素酸よりなる液でリン酸、フッ化水素酸よりなる液でリン酸クロメートを主体とする化成皮膜よりなる下地層5を形成させた。化成皮膜中のクロム量は20mg/m2であった。
まず、上記アルミニウムフィン材1に対して、9.52mmφのドローレス金型(日高製機社製)を用いて、プレス加工を施した。プレス加工の条件を表4に示す。なお、加工速度は250spm、評価ショット数は20000ショットとした。
凝着性は、プレス加工を20000ショット行った後の、ピアスパンチ表面、及び第2アイアニングパンチ表面におけるアルミ付着量を指標とした。
プレス加工後のピアスパンチ及び第2アイアニングパンチそれぞれ20個を、70℃の苛性ソーダ中に1分間浸漬し凝着しているアルミを溶解する。その溶液を王水を混合させて酸性にし、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法にて分析し、アルミ凝着量を定量した。
残渣重量が0.2mg以下の場合を評価◎とし、0.2mg超え0.5mg以下の場合を評価○、0.5mgを超える場合を評価×とし、評価が◎、○の場合を凝着性合格、評価が×の場合を凝着性不合格とした。結果を表5に示す。
塗膜堆積は、プレス加工を20000ショット行った後に、金型表面を目視にて観察し、塗膜粉の堆積が確認されない場合を合格(評価○)とし、塗膜粉の堆積が認められた場合を不合格(評価×)とした。結果を表5に示す。
さらに、第2塗膜が油性剤を含有している試料e8〜試料e10は、特に優れた凝着性を示すことがわかる。
また、第2塗膜に適正な粒径及び含有量の樹脂ビーズを含有している試料e33〜試料e38は、特に優れた凝着性を示すことがわかる。
また、プレス加工後、プレス加工部分以外の部分が親水性を有していることを確認した。
これにより、本例によれば、プレス潤滑油を供給することなく、あるいは通常よりも供給量を低減しても、優れた潤滑性で、工具へのアルミの凝着及び塗膜の堆積を抑制してプレス加工を行うことができ、且つ、プレス加工後に親水性が残存している熱交換器用アルミニウムフィン材を提供できることがわかる。
また、比較例としての試料c2は、第1塗膜の膜厚が本発明の上限を上回り、塗膜が脆く剥離しやすくなるため、凝着性及び塗膜堆積が不合格であった。
また、比較例としての試料c4は、第1塗膜のワックスの含有量が本発明の上限を上回り、第2塗膜との密着性が悪く、塗膜堆積が不合格であった。
また、比較例としての試料c6は、第2塗膜の膜厚が本発明の上限を上回り、塗膜が脆く剥離しやすくなり、塗膜堆積が不合格であった。
また、比較例としての試料c8は、第2塗膜に水溶性ポリエーテルを含有しないため、十分な潤滑性を得ることができず、凝着性が不合格であった。
2 基板
3 第1塗膜
4 第2塗膜
Claims (9)
- アルミニウムよりなる基板と、該基板の表面に形成した第1塗膜と、該第1塗膜の表面に形成した第2塗膜とからなり、
上記第1塗膜は、ベース樹脂にワックスを含有してなると共に、膜厚が0.2〜20μmであり、
上記ベース樹脂は、ウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂のうち1種又は2種以上からなり、
上記第1塗膜における上記ワックスの含有量は、上記ベース樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部であり、
上記ワックスは、カルナウバ、ポリエチレン、ナイロン、ポリエステル、フッ素系樹脂、ポリプロピレン、アミノ樹脂、シリコン系樹脂のうち1種又は2種以上からなり、
上記第2塗膜は、親水性樹脂に親水性潤滑剤を含有してなると共に、膜厚が0.2〜5μmであり、
上記親水性潤滑剤は、分子量1000〜400000の水溶性ポリエーテルからなることを特徴とする熱交換器用アルミニウムフィン材。 - 請求項1において、上記第2塗膜の親水性樹脂は、フッ素系樹脂、ポリエチレン樹脂のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする熱交換器用アルミニウムフィン材。
- 請求項1又は請求項2において、上記第2塗膜は、粒径が、0.1〜30μmである樹脂ビーズを、上記親水性樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部含有していることを特徴とする熱交換器用アルミニウムフィン材。
- 請求項1〜3のいずれか1項において、上記第2塗膜の親水性樹脂は、水酸基、カルボキシル基、エステル基、エーテル基のうち1種又は2種以上を含む有機樹脂を含有することを特徴とする熱交換器用アルミニウムフィン材。
- 請求項1〜4のいずれか1項において、上記第2塗膜は、さらに、ケイ酸塩及び/又はコロイダルシリカを含有することを特徴とする熱交換器用アルミニウムフィン材。
- 請求項1〜5のいずれか1項において、上記第2塗膜は、さらに、1価以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物、1価以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物のハイドロカルビルエーテル、1価以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物の脂肪酸エステル、カルボン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、脂肪酸アルカノールアミドのうち1種又は2種以上からなる油性剤を含有していることを特徴とする熱交換器用アルミニウムフィン材。
- 請求項1〜6のいずれか1項において、上記水溶性ポリエーテルは、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールアリールエーテル、脂肪族ポリアルキレングリコールエステル、脂肪族ポリアルキレングリコールソルビタンエステルの1種又は2種以上よりなるポリエーテル、及び上記ポリエーテルのうち1種又は2種以上のウレタン結合による重合物から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする熱交換器用アルミニウムフィン材。
- 請求項1〜7のいずれか1項において、上記基板の表面には、化成皮膜あるいは耐食性樹脂皮膜よりなる下地層が形成されていることを特徴とする熱交換器用アルミニウムフィン材。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱交換器用アルミニウムフィン材に対して、フィンプレス油を供給することなく、あるいは通常よりも供給量を低減してフィンプレス加工を行うことを特徴とするフィンプレス方法。
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