JP2000169753A - アルカリ脱膜型水性潤滑組成物及び潤滑皮膜の形成方法 - Google Patents
アルカリ脱膜型水性潤滑組成物及び潤滑皮膜の形成方法Info
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- JP2000169753A JP2000169753A JP10345339A JP34533998A JP2000169753A JP 2000169753 A JP2000169753 A JP 2000169753A JP 10345339 A JP10345339 A JP 10345339A JP 34533998 A JP34533998 A JP 34533998A JP 2000169753 A JP2000169753 A JP 2000169753A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 プレス作業環境をより改善し、衛生的な環境
下でプレス作業ができ、およびプレス加工品の塗装まで
の期間での発錆の抑制による歩留り向上が期待できるア
ルカリ脱膜型潤滑塗料組成物及び潤滑皮膜形成方法を提
供すること。 【解決手段】 下記(1)〜(3)を含有することを特
徴とするアルカリ脱膜型水性潤滑組成物である。 (1)鹸化度がモル比で90%以上、形成フィルムのガ
ラス転移温度が50〜70℃、数平均分子量が50,0
00〜100,000の水溶性カルボキシル基変性ポリ
ビニルアルコール:1〜10固形分重量%、 (2)水溶性潤滑剤:1〜10固形分重量%、 (3)水:80〜98重量% (但し、(1)〜(3)の合計が100重量%)
下でプレス作業ができ、およびプレス加工品の塗装まで
の期間での発錆の抑制による歩留り向上が期待できるア
ルカリ脱膜型潤滑塗料組成物及び潤滑皮膜形成方法を提
供すること。 【解決手段】 下記(1)〜(3)を含有することを特
徴とするアルカリ脱膜型水性潤滑組成物である。 (1)鹸化度がモル比で90%以上、形成フィルムのガ
ラス転移温度が50〜70℃、数平均分子量が50,0
00〜100,000の水溶性カルボキシル基変性ポリ
ビニルアルコール:1〜10固形分重量%、 (2)水溶性潤滑剤:1〜10固形分重量%、 (3)水:80〜98重量% (但し、(1)〜(3)の合計が100重量%)
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルカリ脱膜型水
性潤滑組成物及び潤滑皮膜の形成方法に関する。更に詳
しくは、特にステンレス鋼板、アルミニウム板等のプレ
ス加工において、比較的高温湿潤下で生じる経時変色
(黒変)を抑制することができ、且つプレス油の使用を
要せず、作業環境を改善することができるアルカリ脱膜
型の潤滑組成物及びそれを用いた潤滑皮膜の形成方法に
関する。
性潤滑組成物及び潤滑皮膜の形成方法に関する。更に詳
しくは、特にステンレス鋼板、アルミニウム板等のプレ
ス加工において、比較的高温湿潤下で生じる経時変色
(黒変)を抑制することができ、且つプレス油の使用を
要せず、作業環境を改善することができるアルカリ脱膜
型の潤滑組成物及びそれを用いた潤滑皮膜の形成方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】従来、アルミニウム板などの非鉄を基板
としたポストコート金属板のプレス加工においては、加
工前に金属製品にプレス油などの潤滑剤を塗布して金型
と金属板との潤滑性を高め、加工時に加えられる荷重を
低減したり、焼付きを防止する技術が用いられてきた。
としたポストコート金属板のプレス加工においては、加
工前に金属製品にプレス油などの潤滑剤を塗布して金型
と金属板との潤滑性を高め、加工時に加えられる荷重を
低減したり、焼付きを防止する技術が用いられてきた。
【0003】近年、このようなプレス加工においても、
その作業環境の改善が急がれており、公害の少ない潤滑
剤が望まれている。このような無公害型の潤滑剤とし
て、例えば特公昭60−17477号公報には、水溶性
金属加工用潤滑剤が記載されている。これは、リン酸水
素二ナトリウムとフッ素系炭化水素の非イオン系界面活
性剤とを主成分とした金属に対する防錆性を有する無公
害型の潤滑性に優れた水溶性金属加工用潤滑剤である。
すなわち、固形皮膜ではなく、潤滑油と同様な使い方
の、引火性のない水溶性のウェット状態で用いる潤滑処
理剤である。
その作業環境の改善が急がれており、公害の少ない潤滑
剤が望まれている。このような無公害型の潤滑剤とし
て、例えば特公昭60−17477号公報には、水溶性
金属加工用潤滑剤が記載されている。これは、リン酸水
素二ナトリウムとフッ素系炭化水素の非イオン系界面活
性剤とを主成分とした金属に対する防錆性を有する無公
害型の潤滑性に優れた水溶性金属加工用潤滑剤である。
すなわち、固形皮膜ではなく、潤滑油と同様な使い方
の、引火性のない水溶性のウェット状態で用いる潤滑処
理剤である。
【0004】また、近年では、プレス加工時に潤滑剤を
塗布する代わりに、樹脂中に潤滑剤を含有させた潤滑皮
膜を予め金属板の表面に形成した表面潤滑処理金属板が
用いられるようになってきた。表面潤滑処理金属板は、
脱膜型と非脱膜型とに大別される。脱膜型の表面潤滑処
理金属板は、プレス加工後、アルカリ溶液に浸漬する等
の手法により潤滑皮膜を除去(脱膜)してから使用され
る。一方、非脱膜型の表面潤滑処理金属板は、プレス加
工後、潤滑皮膜を除去せずにそのまま或いはその上に更
に塗装などを施して使用される。一般に、ステンレス鋼
板やアルミニウム系めっき鋼板など、その綺麗な表面を
生かして最終製品化される金属板の場合は、脱膜型の表
面潤滑処理金属板として使用することが多い。
塗布する代わりに、樹脂中に潤滑剤を含有させた潤滑皮
膜を予め金属板の表面に形成した表面潤滑処理金属板が
用いられるようになってきた。表面潤滑処理金属板は、
脱膜型と非脱膜型とに大別される。脱膜型の表面潤滑処
理金属板は、プレス加工後、アルカリ溶液に浸漬する等
の手法により潤滑皮膜を除去(脱膜)してから使用され
る。一方、非脱膜型の表面潤滑処理金属板は、プレス加
工後、潤滑皮膜を除去せずにそのまま或いはその上に更
に塗装などを施して使用される。一般に、ステンレス鋼
板やアルミニウム系めっき鋼板など、その綺麗な表面を
生かして最終製品化される金属板の場合は、脱膜型の表
面潤滑処理金属板として使用することが多い。
【0005】また、上述したステンレス鋼板のように、
表面に研磨ないし光輝焼鈍等を施した綺麗な金属光沢を
有する金属板の場合、潤滑性を付与するだけでは不十分
で、加工後に潤滑処理皮膜を除去した後も本来の綺麗な
表面を保持していることが要求される。この場合には、
潤滑皮膜を形成する代わりに、金属板の表面に厚み80
μm程度のガードフィルム等を貼布して潤滑性及び美麗
な表面を確保する方法が一般に採用されている。
表面に研磨ないし光輝焼鈍等を施した綺麗な金属光沢を
有する金属板の場合、潤滑性を付与するだけでは不十分
で、加工後に潤滑処理皮膜を除去した後も本来の綺麗な
表面を保持していることが要求される。この場合には、
潤滑皮膜を形成する代わりに、金属板の表面に厚み80
μm程度のガードフィルム等を貼布して潤滑性及び美麗
な表面を確保する方法が一般に採用されている。
【0006】しかし、この方法では、プレス加工後にフ
ィルムを剥離する必要があり、通常この作業は人力で行
わなければならないため、製造ラインの自動化・省力化
の大きな妨げとなる上、コストを押し上げる。また、特
に加工部ではフィルムの剥離が困難になる場合が多い。
ィルムを剥離する必要があり、通常この作業は人力で行
わなければならないため、製造ラインの自動化・省力化
の大きな妨げとなる上、コストを押し上げる。また、特
に加工部ではフィルムの剥離が困難になる場合が多い。
【0007】したがって、作業環境の改善、プレス油の
塗油工程など工程省力化等のニーズにも対応し、特に塗
装前の金属板のプレス加工時に高潤滑性を発揮し、加工
完了後は速やかにアルカリ脱脂などで綺麗に脱膜するア
ルカリ脱膜型の潤滑処理の要求が強い。
塗油工程など工程省力化等のニーズにも対応し、特に塗
装前の金属板のプレス加工時に高潤滑性を発揮し、加工
完了後は速やかにアルカリ脱脂などで綺麗に脱膜するア
ルカリ脱膜型の潤滑処理の要求が強い。
【0008】こうしたニーズに応えた従来技術として、
特開平10−114012号公報、特開平10−114
013号公報及び特開平10−114014号公報に記
載のものがある。これらの従来技術は、光輝ステンレス
やめっき鋼板の光沢の維持や傷付き防止を目的に、特定
の脱膜型塗装を施すことによって、コスト高になってい
たガードフィルムの省略を図ったものである。
特開平10−114012号公報、特開平10−114
013号公報及び特開平10−114014号公報に記
載のものがある。これらの従来技術は、光輝ステンレス
やめっき鋼板の光沢の維持や傷付き防止を目的に、特定
の脱膜型塗装を施すことによって、コスト高になってい
たガードフィルムの省略を図ったものである。
【0009】上記従来技術においては、以下の特徴があ
る。アルカリ脱膜性を上げる手法として、水溶性または
水分散性樹脂の酸価を20以上に特定している。また、
ガードフィルムを使用せずに傷付き防止を図るために、
樹脂のガラス転移温度Tgを10〜85℃に特定してい
る。また、潤滑性の付与については、金属石鹸の配合量
を0.5〜10重量%に特定している。更に、皮膜の密
着性助剤、すなわち、皮膜の架橋密度を上げるための硬
化剤として、シランカップリング剤を特定量添加してい
る。そして、該組成物を特定膜厚で塗布するが、その
際、特に基板の光輝性維持にあたり、塗膜表面の傾斜角
(Δa)を特定した点にも特徴がある。
る。アルカリ脱膜性を上げる手法として、水溶性または
水分散性樹脂の酸価を20以上に特定している。また、
ガードフィルムを使用せずに傷付き防止を図るために、
樹脂のガラス転移温度Tgを10〜85℃に特定してい
る。また、潤滑性の付与については、金属石鹸の配合量
を0.5〜10重量%に特定している。更に、皮膜の密
着性助剤、すなわち、皮膜の架橋密度を上げるための硬
化剤として、シランカップリング剤を特定量添加してい
る。そして、該組成物を特定膜厚で塗布するが、その
際、特に基板の光輝性維持にあたり、塗膜表面の傾斜角
(Δa)を特定した点にも特徴がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
従来技術は、以下に掲げる技術課題については全く開示
されておらず検討されていない。 (1)一定の素地密着性を有し、薄膜でも良好な潤滑機
能を有すること(耐絞り加工性) (2)成形加工後、皮膜同士が容易に粘着しないこと
(耐ブロッキング性) (3)化学的に潤滑膜の素地離れがよいこと(耐アルカ
リ脱膜性) (4)潤滑膜のアルカリ溶解性がよいこと(潤滑膜の耐
溶解性/再付着防止) (5)特にアルミニウム板における耐湿性がよいこと
(経時黒変しにくいこと) (6)薬剤費が安価であること
従来技術は、以下に掲げる技術課題については全く開示
されておらず検討されていない。 (1)一定の素地密着性を有し、薄膜でも良好な潤滑機
能を有すること(耐絞り加工性) (2)成形加工後、皮膜同士が容易に粘着しないこと
(耐ブロッキング性) (3)化学的に潤滑膜の素地離れがよいこと(耐アルカ
リ脱膜性) (4)潤滑膜のアルカリ溶解性がよいこと(潤滑膜の耐
溶解性/再付着防止) (5)特にアルミニウム板における耐湿性がよいこと
(経時黒変しにくいこと) (6)薬剤費が安価であること
【0011】本発明は、上記技術的課題を検討し、これ
らを十分に解決可能な潤滑組成物及び潤滑被膜の形成方
法を提供することを目的とするものである。
らを十分に解決可能な潤滑組成物及び潤滑被膜の形成方
法を提供することを目的とするものである。
【0012】本発明者らは、上述の観点に鑑み、以下に
列挙する水溶性樹脂組成物の適性仕様に関する各項目に
ついて鋭意研究を行い本発明を完成するに至った。 (1)安価で、脱膜が容易で且つ伸び性の高い樹脂形態
としては、直鎖状の水溶性のポリビニルアルコール樹脂
が最適である。 (2)更に深絞りを含めて、しごき加工にも耐える潤滑
皮膜とするには、付着性がよく、素地の塑性変形に破損
することなく十分追従できる伸びと強度の高い樹脂が必
要であり、そのためにはTgが特定の範囲にある必要が
ある。 (3)脱膜した後の素地アルミニウムの表面は非常に活
性なため、すぐ発錆しやすい。その抑制には防錆剤若し
くはインヒビターの特定が不可欠である。 (4)両性金属の素地アルミニウムを腐食助長する親水
性SO3基を持たないエマルション樹脂系を選定する。 (5)性能及び作業性からみた適性範囲(付着量、焼付
板温、浴pH)を選定する。
列挙する水溶性樹脂組成物の適性仕様に関する各項目に
ついて鋭意研究を行い本発明を完成するに至った。 (1)安価で、脱膜が容易で且つ伸び性の高い樹脂形態
としては、直鎖状の水溶性のポリビニルアルコール樹脂
が最適である。 (2)更に深絞りを含めて、しごき加工にも耐える潤滑
皮膜とするには、付着性がよく、素地の塑性変形に破損
することなく十分追従できる伸びと強度の高い樹脂が必
要であり、そのためにはTgが特定の範囲にある必要が
ある。 (3)脱膜した後の素地アルミニウムの表面は非常に活
性なため、すぐ発錆しやすい。その抑制には防錆剤若し
くはインヒビターの特定が不可欠である。 (4)両性金属の素地アルミニウムを腐食助長する親水
性SO3基を持たないエマルション樹脂系を選定する。 (5)性能及び作業性からみた適性範囲(付着量、焼付
板温、浴pH)を選定する。
【0013】
【課題を解決するための手段】すなわち、第1の本発明
は、下記(1)〜(3)を含有することを特徴とするア
ルカリ脱膜型水性潤滑組成物を提供するものである。 (1)鹸化度がモル比で90%以上、形成フィルムのガ
ラス転移温度が50〜70℃、数平均分子量が50,0
00〜100,000の水溶性カルボキシル基変性ポリ
ビニルアルコール:1〜10固形分重量%、 (2)水溶性潤滑剤:1〜10固形分重量%、 (3)水:80〜98重量% (但し、(1)〜(3)の合計が100重量%)
は、下記(1)〜(3)を含有することを特徴とするア
ルカリ脱膜型水性潤滑組成物を提供するものである。 (1)鹸化度がモル比で90%以上、形成フィルムのガ
ラス転移温度が50〜70℃、数平均分子量が50,0
00〜100,000の水溶性カルボキシル基変性ポリ
ビニルアルコール:1〜10固形分重量%、 (2)水溶性潤滑剤:1〜10固形分重量%、 (3)水:80〜98重量% (但し、(1)〜(3)の合計が100重量%)
【0014】また、第2の本発明は、下記(1)〜
(4)を含有することを特徴とするアルカリ脱膜型水性
潤滑組成物を提供するものである。 (1)鹸化度がモル比で90%以上、形成フィルムのガ
ラス転移温度が50〜70℃、数平均分子量が50,0
00〜100,000の水溶性カルボキシル基変性ポリ
ビニルアルコール:1〜10固形分重量%、 (2)水溶性潤滑剤:1〜10固形分重量%、 (3)バナジン酸アンモニウム:0.01〜0.5固形
分重量%、 (4)水:79.5〜97.99重量% (但し、(1)〜(4)の合計が100重量%)
(4)を含有することを特徴とするアルカリ脱膜型水性
潤滑組成物を提供するものである。 (1)鹸化度がモル比で90%以上、形成フィルムのガ
ラス転移温度が50〜70℃、数平均分子量が50,0
00〜100,000の水溶性カルボキシル基変性ポリ
ビニルアルコール:1〜10固形分重量%、 (2)水溶性潤滑剤:1〜10固形分重量%、 (3)バナジン酸アンモニウム:0.01〜0.5固形
分重量%、 (4)水:79.5〜97.99重量% (但し、(1)〜(4)の合計が100重量%)
【0015】さらに、第3の本発明は、上記のアルカリ
脱膜型水性潤滑組成物を乾燥皮膜として1〜5μm形成
することを特徴とする潤滑皮膜の形成方法を提供するも
のである。
脱膜型水性潤滑組成物を乾燥皮膜として1〜5μm形成
することを特徴とする潤滑皮膜の形成方法を提供するも
のである。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の構成について詳述
する。
する。
【0017】本発明の骨子は、上記した構成の中で、特
に、(1)水溶性カルボキシル基変性ポリビニルアルコ
ール(以下、単に「PVA」と言うことがある。)の鹸
化度を上記のように特定したこと、(2)水溶性潤滑剤
を特定量配合したこと、さらに必要により、(3)バナ
ジン酸アンモニウムを配合したことを柱とした技術思想
で構成される。
に、(1)水溶性カルボキシル基変性ポリビニルアルコ
ール(以下、単に「PVA」と言うことがある。)の鹸
化度を上記のように特定したこと、(2)水溶性潤滑剤
を特定量配合したこと、さらに必要により、(3)バナ
ジン酸アンモニウムを配合したことを柱とした技術思想
で構成される。
【0018】潤滑皮膜とするためのバインダー樹脂であ
るPVA樹脂は、素地の付着性を高めるためにカルボキ
シル基で変性し、さらに、プレス加工時に潤滑膜が破損
なく十分追従して金型に流れ込むよう、PVA樹脂のT
gが高い優れた密着性の皮膜であることが必要である。
るPVA樹脂は、素地の付着性を高めるためにカルボキ
シル基で変性し、さらに、プレス加工時に潤滑膜が破損
なく十分追従して金型に流れ込むよう、PVA樹脂のT
gが高い優れた密着性の皮膜であることが必要である。
【0019】この密着性を高めるために、本発明者らが
見出した技術は、カルボキシル基で変性したバインダー
樹脂(PVA樹脂)と、特にアルミニウムに対して有効
なバナジン酸アンモニウムとを組み合わせて用いたこと
である。すなわち、経験則から、バナジン酸イオンには
バインダー樹脂(PVA樹脂)と架橋密度を促進する作
用がある知見に基づいて、素地アルミニウムの表面を不
動態化し、耐湿性の向上を図ったものである。つまり、
該樹脂の水酸基と界面エッチングによるフレッシュな素
地の金属アルミニウム面との直接接触が必要と考えられ
る。そのためにインヒビターとしてバナジン酸アンモニ
ウムを用いると、バナジン酸イオンの素地アルミニウム
表面へのキレート作用により酸化バナジウムが吸着析出
し、そのカソード化によって局部電池が形成され、これ
が表面エッチングを連動して引き起こし、これが潤滑膜
の適度な密着性向上をもたらすものと推定される。
見出した技術は、カルボキシル基で変性したバインダー
樹脂(PVA樹脂)と、特にアルミニウムに対して有効
なバナジン酸アンモニウムとを組み合わせて用いたこと
である。すなわち、経験則から、バナジン酸イオンには
バインダー樹脂(PVA樹脂)と架橋密度を促進する作
用がある知見に基づいて、素地アルミニウムの表面を不
動態化し、耐湿性の向上を図ったものである。つまり、
該樹脂の水酸基と界面エッチングによるフレッシュな素
地の金属アルミニウム面との直接接触が必要と考えられ
る。そのためにインヒビターとしてバナジン酸アンモニ
ウムを用いると、バナジン酸イオンの素地アルミニウム
表面へのキレート作用により酸化バナジウムが吸着析出
し、そのカソード化によって局部電池が形成され、これ
が表面エッチングを連動して引き起こし、これが潤滑膜
の適度な密着性向上をもたらすものと推定される。
【0020】また、バナジン酸アンモニウムは防錆剤と
しても作用するので、耐湿性改善に寄与する。これは、
上述のようにして形成された潤滑皮膜がプレス加工後、
脱膜されるまでの間は基板表面に残存したまま、この状
態で暫く放置されるのが実情であることから、この間に
発錆などが生じて商品価値あるいは歩留りの低下やコス
トアップを招くのを避けるためにも、本発明のようにP
VA樹脂塗料中にバナジン酸アンモニウムを配合するこ
とは有効である。
しても作用するので、耐湿性改善に寄与する。これは、
上述のようにして形成された潤滑皮膜がプレス加工後、
脱膜されるまでの間は基板表面に残存したまま、この状
態で暫く放置されるのが実情であることから、この間に
発錆などが生じて商品価値あるいは歩留りの低下やコス
トアップを招くのを避けるためにも、本発明のようにP
VA樹脂塗料中にバナジン酸アンモニウムを配合するこ
とは有効である。
【0021】なお、特公昭60−17477号公報に
は、防錆剤としてメタバナジン酸ナトリウム、モリブデ
ン酸ナトリウムの1種又は2種を使用することが開示さ
れているが、いずれも水に溶けやすいナトリウム塩であ
る点で、本発明とは構成が全く異なる。上記公報の開示
するナトリウム塩は水に対する溶解性が非常に高いた
め、固形皮膜を形成した場合は直ちに溶け出し、形成さ
れる膜成分の一つに取り込まれてしまう。すなわち、素
地アルミの表面を腐食環境から守る機能はあっても寿命
が短いため、プレス成形後直ちに素地が腐食し、黒く変
色して商品価値を損う恐れがある。また、潤滑皮膜の乾
燥性に影響したり吸湿などいわゆる潤滑皮膜の耐ブロッ
キング性にやや難が生じる。これに対して本発明のアン
モニウム塩にはこの現象が全く認められない。本発明者
らの実験によれば、長時間経っても外観変色は全く見ら
れなかった。
は、防錆剤としてメタバナジン酸ナトリウム、モリブデ
ン酸ナトリウムの1種又は2種を使用することが開示さ
れているが、いずれも水に溶けやすいナトリウム塩であ
る点で、本発明とは構成が全く異なる。上記公報の開示
するナトリウム塩は水に対する溶解性が非常に高いた
め、固形皮膜を形成した場合は直ちに溶け出し、形成さ
れる膜成分の一つに取り込まれてしまう。すなわち、素
地アルミの表面を腐食環境から守る機能はあっても寿命
が短いため、プレス成形後直ちに素地が腐食し、黒く変
色して商品価値を損う恐れがある。また、潤滑皮膜の乾
燥性に影響したり吸湿などいわゆる潤滑皮膜の耐ブロッ
キング性にやや難が生じる。これに対して本発明のアン
モニウム塩にはこの現象が全く認められない。本発明者
らの実験によれば、長時間経っても外観変色は全く見ら
れなかった。
【0022】以下に、本発明のアルカリ脱膜型水性潤滑
組成物(以下、単に「潤滑組成物」と言う。)につい
て、その構成因子及び製造方法に対する作用限界につい
て述べる。
組成物(以下、単に「潤滑組成物」と言う。)につい
て、その構成因子及び製造方法に対する作用限界につい
て述べる。
【0023】本発明においては、例えば、オーステナイ
ト系、フェライト系またはマルテンサイト系等のステン
レス鋼板若しくは各種アルミニウム(合金)板等の表面
に、下記(1)乃至(4)を含有する潤滑組成物を固形
皮膜として厚みが1〜5μmになるよう塗布し、ついで
直ちに乾燥炉の出側板温が最高板温として100〜18
0℃になるよう焼付して潤滑皮膜を形成する。
ト系、フェライト系またはマルテンサイト系等のステン
レス鋼板若しくは各種アルミニウム(合金)板等の表面
に、下記(1)乃至(4)を含有する潤滑組成物を固形
皮膜として厚みが1〜5μmになるよう塗布し、ついで
直ちに乾燥炉の出側板温が最高板温として100〜18
0℃になるよう焼付して潤滑皮膜を形成する。
【0024】本発明の潤滑組成物は、好適に、ステンレ
ス鋼板またはアルミニウム板の表面にあって薄膜に形成
され、アルカリ除去されるまでの間は素地金属の表面は
何のダメージも受けないことが作用限界の判断基準とな
る。
ス鋼板またはアルミニウム板の表面にあって薄膜に形成
され、アルカリ除去されるまでの間は素地金属の表面は
何のダメージも受けないことが作用限界の判断基準とな
る。
【0025】(1)PVA樹脂 樹脂構造 本発明に使用されるPVA樹脂の樹脂形態は、重合して
ポリマー化した酢酸ビニル樹脂を鹸化して得られるビニ
ル樹脂を更に重合した高分子ビニル樹脂であり、加えて
水に溶けやすく、カルボキシル基を付加変性してなる水
溶性カルボキシル基変性PVA樹脂である。カルボキシ
ル基を変性した事により、素地表面と樹脂のカルボキシ
ル基との直接接触により、良好な密着性が得られる。カ
ルボキシル基変性とは、高分子ビニル樹脂に、カルボキ
シル基を付加重合させて樹脂を水溶性化することをい
う。
ポリマー化した酢酸ビニル樹脂を鹸化して得られるビニ
ル樹脂を更に重合した高分子ビニル樹脂であり、加えて
水に溶けやすく、カルボキシル基を付加変性してなる水
溶性カルボキシル基変性PVA樹脂である。カルボキシ
ル基を変性した事により、素地表面と樹脂のカルボキシ
ル基との直接接触により、良好な密着性が得られる。カ
ルボキシル基変性とは、高分子ビニル樹脂に、カルボキ
シル基を付加重合させて樹脂を水溶性化することをい
う。
【0026】鹸化度 PVA樹脂の鹸化度、すなわち樹脂中に占める水酸基の
割合は90モル%以上であることが必要である。鹸化度
が90モル%未満では、潤滑塗料建浴時の水に対する樹
脂の溶解性が悪く、撹拌溶解に対し気泡の巻き込みなど
が加わり、樹脂の溶解建浴時の作業性に支障を来すた
め、作業効率上あまり好ましくない。また、潤滑皮膜と
なった後のアルカリ溶液に対する脱膜性の低下と脱膜物
の溶解性の低下などが顕著に現れ、非現実的である。該
樹脂のより好ましい鹸化度は95モル%以上である。
割合は90モル%以上であることが必要である。鹸化度
が90モル%未満では、潤滑塗料建浴時の水に対する樹
脂の溶解性が悪く、撹拌溶解に対し気泡の巻き込みなど
が加わり、樹脂の溶解建浴時の作業性に支障を来すた
め、作業効率上あまり好ましくない。また、潤滑皮膜と
なった後のアルカリ溶液に対する脱膜性の低下と脱膜物
の溶解性の低下などが顕著に現れ、非現実的である。該
樹脂のより好ましい鹸化度は95モル%以上である。
【0027】形成フィルムにおけるガラス転移温度T
g 本発明において、PVA樹脂のガラス転移温度Tgは5
0〜70℃であることが必要である。Tgの範囲を特定
する目的は、主としてプレス加工時の素材の変形に対す
る潤滑膜の追従性の向上にある。すなわち、潤滑皮膜に
は、素材の変形過程で決して該皮膜が破壊しない伸びと
強度が要求される。そのためには、該樹脂自身の皮膜強
度がある程度以上必要とされる。Tgが50℃未満では
硬化剤を配合しない本塗装系においては潤滑膜としての
本来の効果が発揮できず、皮膜の密着性の確保も不十分
なため、好ましくない。一方、Tgが70℃を越える
と、皮膜が脆性破壊しやすく脆くなるという問題が生じ
るので好ましくない。従って、初めから比較的高いTg
の樹脂設計が好ましく、より好ましいTgの範囲は65
〜70℃である。
g 本発明において、PVA樹脂のガラス転移温度Tgは5
0〜70℃であることが必要である。Tgの範囲を特定
する目的は、主としてプレス加工時の素材の変形に対す
る潤滑膜の追従性の向上にある。すなわち、潤滑皮膜に
は、素材の変形過程で決して該皮膜が破壊しない伸びと
強度が要求される。そのためには、該樹脂自身の皮膜強
度がある程度以上必要とされる。Tgが50℃未満では
硬化剤を配合しない本塗装系においては潤滑膜としての
本来の効果が発揮できず、皮膜の密着性の確保も不十分
なため、好ましくない。一方、Tgが70℃を越える
と、皮膜が脆性破壊しやすく脆くなるという問題が生じ
るので好ましくない。従って、初めから比較的高いTg
の樹脂設計が好ましく、より好ましいTgの範囲は65
〜70℃である。
【0028】分子量 本発明において、PVA樹脂の分子量は数平均分子量と
して50,000〜100,000であることが必要で
ある。本発明の樹脂は、元来架橋反応が少ない樹脂であ
る上、架橋剤を共存させない構成であるため、固形皮膜
化した際の皮膜の密着性は低い。したがって、分子量が
50,000未満では、密着性が不十分となる。加え
て、分子量が50,000未満では、皮膜としての機械
的強度が小さいため、加工によって皮膜が破損しやすい
特性があり、本来目的とする潤滑機能が十分発揮されな
いので、好ましくない。一方、分子量が100,000
を越えると、水溶液化する場合に液の増粘現象が現れる
ため、塗料製造作業上あまり好ましくない。より好まし
い分子量範囲としては60,000〜70,000であ
る。
して50,000〜100,000であることが必要で
ある。本発明の樹脂は、元来架橋反応が少ない樹脂であ
る上、架橋剤を共存させない構成であるため、固形皮膜
化した際の皮膜の密着性は低い。したがって、分子量が
50,000未満では、密着性が不十分となる。加え
て、分子量が50,000未満では、皮膜としての機械
的強度が小さいため、加工によって皮膜が破損しやすい
特性があり、本来目的とする潤滑機能が十分発揮されな
いので、好ましくない。一方、分子量が100,000
を越えると、水溶液化する場合に液の増粘現象が現れる
ため、塗料製造作業上あまり好ましくない。より好まし
い分子量範囲としては60,000〜70,000であ
る。
【0029】配合比 本発明において、PVA樹脂の配合比は、固形分比とし
て1〜10重量%であることが必要である。PVA樹脂
の配合比が1重量%未満では、高速ライン下での均一塗
装が難しく、逆に10重量%を越えると、潤滑皮膜とし
ての潤滑性又は密着性に欠け、好ましくない場合があ
る。より好ましい樹脂の配合比の範囲は固形分比で3〜
5重量%である。
て1〜10重量%であることが必要である。PVA樹脂
の配合比が1重量%未満では、高速ライン下での均一塗
装が難しく、逆に10重量%を越えると、潤滑皮膜とし
ての潤滑性又は密着性に欠け、好ましくない場合があ
る。より好ましい樹脂の配合比の範囲は固形分比で3〜
5重量%である。
【0030】(2)水溶性潤滑剤 本発明に用いる水溶性潤滑剤は、主として水分散性の低
分子ポリエチレンワックスが用いられる。水溶性潤滑剤
の配合比は、固形分比として1〜10重量%であること
が必要である。該潤滑剤の配合比が1重量%未満では、
固体潤滑皮膜としての潤滑効果は十分でなく、また10
重量%を越えても、効果の程度は飽和状態のためコスト
高となり、いずれも好ましくない。より好ましい配合量
の範囲は3〜5重量%である。
分子ポリエチレンワックスが用いられる。水溶性潤滑剤
の配合比は、固形分比として1〜10重量%であること
が必要である。該潤滑剤の配合比が1重量%未満では、
固体潤滑皮膜としての潤滑効果は十分でなく、また10
重量%を越えても、効果の程度は飽和状態のためコスト
高となり、いずれも好ましくない。より好ましい配合量
の範囲は3〜5重量%である。
【0031】(3)バナジン酸アンモニウム 本発明におけるバナジン酸アンモニウムの役割は、素地
の腐食環境下における防錆を目的とするが、更に重要な
作用効果は、素地界面での樹脂の架橋反応の促進にあ
る。この架橋促進反応は、樹脂に対し間接的に行われる
反応と考えられている。すなわち、例えば、素地金属が
アルミニウムの場合、この溶出アルミニウムイオンは塗
膜中のバナジウムイオンによってキレート化し、自らは
不溶解化するとともに、周囲の樹脂とは架橋を促進する
作用を有していることが本発明者らによって見出され
た。この現象は経験則ではあるが再現性が高く、バナジ
ン酸アンモニウムの共存下でしか起こり得ない現象であ
ることを見出した。
の腐食環境下における防錆を目的とするが、更に重要な
作用効果は、素地界面での樹脂の架橋反応の促進にあ
る。この架橋促進反応は、樹脂に対し間接的に行われる
反応と考えられている。すなわち、例えば、素地金属が
アルミニウムの場合、この溶出アルミニウムイオンは塗
膜中のバナジウムイオンによってキレート化し、自らは
不溶解化するとともに、周囲の樹脂とは架橋を促進する
作用を有していることが本発明者らによって見出され
た。この現象は経験則ではあるが再現性が高く、バナジ
ン酸アンモニウムの共存下でしか起こり得ない現象であ
ることを見出した。
【0032】バナジン酸アンモニウムの配合比は、固形
分比として0.01〜0.5重量%であることが必要で
ある。バナジン酸アンモニウムが0.01重量%未満で
は、上述した素地金属の防錆性及び潤滑膜の架橋促進効
果は半減し、好ましくない。一方、0.5重量%を越え
ると、上述した二つの作用効果は飽和状態となり、コス
トの高騰もあって好ましくない。より好ましい配合比の
範囲は0.1〜0.3重量%である。
分比として0.01〜0.5重量%であることが必要で
ある。バナジン酸アンモニウムが0.01重量%未満で
は、上述した素地金属の防錆性及び潤滑膜の架橋促進効
果は半減し、好ましくない。一方、0.5重量%を越え
ると、上述した二つの作用効果は飽和状態となり、コス
トの高騰もあって好ましくない。より好ましい配合比の
範囲は0.1〜0.3重量%である。
【0033】(4)水 本発明において水は粘度調整のために配合され、イオン
交換水や蒸留水が好ましく用いられる。その配合比は、
第1の発明では80〜90重量%、第2の発明では7
9.5〜97.99重量%である。
交換水や蒸留水が好ましく用いられる。その配合比は、
第1の発明では80〜90重量%、第2の発明では7
9.5〜97.99重量%である。
【0034】(5)潤滑皮膜の膜厚 本発明にあって、潤滑皮膜の膜厚は、固形皮膜として1
〜5μmがよい。該膜厚が1μm未満では、厳しい加工
性、腐食環境での潤滑皮膜との密着性及び耐食性の両立
が難しい。また、5μmを越えると、高生産性のライン
下での潤滑皮膜の塗布の不均一、乾燥の長時間化による
皮膜のタレ模様発生あるいは皮膜自身の柔らかさが招く
擦り傷性の低下等が生じ、処理外観、耐食性及び塗料密
着性など全体性能を損うため、生産性及び性能面で余り
利点がない。従って、本発明における適性付着量として
は1〜5μmであって、好ましくは1〜3μmである。
〜5μmがよい。該膜厚が1μm未満では、厳しい加工
性、腐食環境での潤滑皮膜との密着性及び耐食性の両立
が難しい。また、5μmを越えると、高生産性のライン
下での潤滑皮膜の塗布の不均一、乾燥の長時間化による
皮膜のタレ模様発生あるいは皮膜自身の柔らかさが招く
擦り傷性の低下等が生じ、処理外観、耐食性及び塗料密
着性など全体性能を損うため、生産性及び性能面で余り
利点がない。従って、本発明における適性付着量として
は1〜5μmであって、好ましくは1〜3μmである。
【0035】(6)焼付温度 本発明における塗布処理時の焼付板温は、乾燥炉の出側
最高板温として100〜180℃が好ましい。該板温が
100℃未満では、潤滑膜としての架橋反応が不十分な
ため、金属板がブロッキングを起こしたり、プレス加工
時に潤滑皮膜の剥離が生じたり、或いは裸耐食性の低下
を生じるため、あまり好ましくない。また、180℃を
越えると、樹脂の架橋反応が過剰に進むため、皮膜は脆
くなり、高レベルの皮膜の密着性及び耐食性の維持の両
立が難しくなるため、あまり好ましくない。従って、高
生産性のライン下で潤滑性能を安定して高品位に維持す
るための潤滑塗膜の乾燥条件としては、炉出側での最高
板温が100〜180℃であり、より好ましい範囲は1
00〜150℃である。
最高板温として100〜180℃が好ましい。該板温が
100℃未満では、潤滑膜としての架橋反応が不十分な
ため、金属板がブロッキングを起こしたり、プレス加工
時に潤滑皮膜の剥離が生じたり、或いは裸耐食性の低下
を生じるため、あまり好ましくない。また、180℃を
越えると、樹脂の架橋反応が過剰に進むため、皮膜は脆
くなり、高レベルの皮膜の密着性及び耐食性の維持の両
立が難しくなるため、あまり好ましくない。従って、高
生産性のライン下で潤滑性能を安定して高品位に維持す
るための潤滑塗膜の乾燥条件としては、炉出側での最高
板温が100〜180℃であり、より好ましい範囲は1
00〜150℃である。
【0036】
【実施例】次に、本発明について実施例及び比較例を挙
げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施
例にのみ限定されるものではない。
げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施
例にのみ限定されるものではない。
【0037】「実施例1〜55、比較例1〜31」「表
1」〜「表6」に示すように、実施例1〜30及び比較
例1〜17(試験板:アルミニウム板)、実施例31〜
55及び比較例18〜31(試験板:ステンレス鋼板)
に示した特性の水溶性ポリビニルアルコール及びその他
の成分を異なる配合比により配合して潤滑組成物を作製
した。その作製方法について概要を示す。まず、所要の
蒸留水を50〜60℃に昇温し、バナジン酸アンモニウ
ムを所定量添加し、撹拌しながら完全溶解させる。溶解
完了の確認を待って、水溶性ポリビニルアルコールの液
状の樹脂を特定量添加し、撹拌しながら徐々に添加し、
添加し終えたらば、適量(0.01〜0.1重量%)の
消泡剤を加え、所定量の水溶性潤滑剤を添加し、撹拌を
継続して溶解作業を完了する。この一連の作業は液温5
0〜60℃の保温の中で行われ、完了したところで室温
に戻される。このようにして作製された潤滑組成物は、
ロール塗装によってアルミニウム板(材質:1050、
板厚0.5mm)、ステンレス鋼板(SUS304、板
厚0.5mm)に所定膜厚に塗布され、所定板温に焼付
される。
1」〜「表6」に示すように、実施例1〜30及び比較
例1〜17(試験板:アルミニウム板)、実施例31〜
55及び比較例18〜31(試験板:ステンレス鋼板)
に示した特性の水溶性ポリビニルアルコール及びその他
の成分を異なる配合比により配合して潤滑組成物を作製
した。その作製方法について概要を示す。まず、所要の
蒸留水を50〜60℃に昇温し、バナジン酸アンモニウ
ムを所定量添加し、撹拌しながら完全溶解させる。溶解
完了の確認を待って、水溶性ポリビニルアルコールの液
状の樹脂を特定量添加し、撹拌しながら徐々に添加し、
添加し終えたらば、適量(0.01〜0.1重量%)の
消泡剤を加え、所定量の水溶性潤滑剤を添加し、撹拌を
継続して溶解作業を完了する。この一連の作業は液温5
0〜60℃の保温の中で行われ、完了したところで室温
に戻される。このようにして作製された潤滑組成物は、
ロール塗装によってアルミニウム板(材質:1050、
板厚0.5mm)、ステンレス鋼板(SUS304、板
厚0.5mm)に所定膜厚に塗布され、所定板温に焼付
される。
【0038】なお、水溶性潤滑剤としては、低分子ポリ
エチレンワックス(商品名「ケミパールWF640
1」、三井化学社製)を用いた。
エチレンワックス(商品名「ケミパールWF640
1」、三井化学社製)を用いた。
【0039】各実施例及び比較例に係る潤滑塗装された
アルミニウム板及びステンレス鋼板のアルカリ脱膜潤滑
性能を下記の項目について評価し、その結果を「表1」
〜「表6」に、各実施例の配合組成と併せて示した。
アルミニウム板及びステンレス鋼板のアルカリ脱膜潤滑
性能を下記の項目について評価し、その結果を「表1」
〜「表6」に、各実施例の配合組成と併せて示した。
【0040】「耐湿性(耐黒変性)」60℃、相対湿度
95%以上、72時間後の表面外観を目視判定した。 ◎:全く変色なし ○:僅かに黒変あり △:部分黒変(ブチ状) ×:全面黒変
95%以上、72時間後の表面外観を目視判定した。 ◎:全く変色なし ○:僅かに黒変あり △:部分黒変(ブチ状) ×:全面黒変
【0041】「絞り加工性(円筒絞り加工)」50mm
φ円筒、肩R:ポンチ/ダイ=0.5R/0.3R、シ
ワ押え圧力1トン、絞り比2.4の条件で、絞り抜け加
工による胴部の型かじり状態を判定した。 ◎:型かじりなし ○:極僅かにかじりあり △:部分かじりあり ×:全面かじり又は板破断あり
φ円筒、肩R:ポンチ/ダイ=0.5R/0.3R、シ
ワ押え圧力1トン、絞り比2.4の条件で、絞り抜け加
工による胴部の型かじり状態を判定した。 ◎:型かじりなし ○:極僅かにかじりあり △:部分かじりあり ×:全面かじり又は板破断あり
【0042】「アルカリ脱膜性」40℃の4%水酸化ナ
トリウム水溶液に30秒浸漬した後の脱膜状態を目視判
定した。 ◎:金属光沢 ○:極僅かに脱膜残りあり △:部分的に残膜あり ×:面積比で10%以上の残膜あり
トリウム水溶液に30秒浸漬した後の脱膜状態を目視判
定した。 ◎:金属光沢 ○:極僅かに脱膜残りあり △:部分的に残膜あり ×:面積比で10%以上の残膜あり
【0043】「脱膜した膜のアルカリ溶液に対する溶解
性」40℃の4%水酸化ナトリウム水溶液300ml中
に1μm両面塗装した試験板(50mm×50mm)を
浸漬し、1m2相当脱膜した際の膜のアルカリ溶液中で
の均一溶解性について目視判定した。 ◎:透明で沈殿なし ○:極僅かに濁りあり △:部分的にダマ発生 ×:糊状のダマ発生
性」40℃の4%水酸化ナトリウム水溶液300ml中
に1μm両面塗装した試験板(50mm×50mm)を
浸漬し、1m2相当脱膜した際の膜のアルカリ溶液中で
の均一溶解性について目視判定した。 ◎:透明で沈殿なし ○:極僅かに濁りあり △:部分的にダマ発生 ×:糊状のダマ発生
【0044】「耐ブロッキング性」潤滑塗膜面同士を重
ね合わせた後、荷重100Kg/cm2、RH70%、
40℃の雰囲気中で72時間圧着した後の圧接面の状態
を目視判定した。 ◎:試験前と変化なし ○:極僅かに光沢差あり △:部分的に皮膜同士が圧着又は剥離発生 ×:ほぼ全面にブロッキングし、皮膜剥離が発生
ね合わせた後、荷重100Kg/cm2、RH70%、
40℃の雰囲気中で72時間圧着した後の圧接面の状態
を目視判定した。 ◎:試験前と変化なし ○:極僅かに光沢差あり △:部分的に皮膜同士が圧着又は剥離発生 ×:ほぼ全面にブロッキングし、皮膜剥離が発生
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
【表5】
【0050】
【表6】
【0051】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明によれば、特
定のPVA樹脂と水溶性潤滑剤、さらにバナジン酸アン
モニウムを特定組成で併用することにより、主としてス
テンレス鋼板及びアルミニウム板において利用される、
発錆を抑制し且つ油による環境汚染を大幅に改善可能な
画期的なアルカリ脱膜型潤滑塗料組成物及び潤滑皮膜の
形成方法を提供できる。
定のPVA樹脂と水溶性潤滑剤、さらにバナジン酸アン
モニウムを特定組成で併用することにより、主としてス
テンレス鋼板及びアルミニウム板において利用される、
発錆を抑制し且つ油による環境汚染を大幅に改善可能な
画期的なアルカリ脱膜型潤滑塗料組成物及び潤滑皮膜の
形成方法を提供できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C09D 129/04 C09D 129/04 A
Claims (3)
- 【請求項1】 下記(1)〜(3)を含有することを特
徴とするアルカリ脱膜型水性潤滑組成物。 (1)鹸化度がモル比で90%以上、形成フィルムのガ
ラス転移温度が50〜70℃、数平均分子量が50,0
00〜100,000の水溶性カルボキシル基変性ポリ
ビニルアルコール:1〜10固形分重量%、 (2)水溶性潤滑剤:1〜10固形分重量%、 (3)水:80〜98重量% (但し、(1)〜(3)の合計が100重量%) - 【請求項2】 下記(1)〜(4)を含有することを特
徴とするアルカリ脱膜型水性潤滑組成物。 (1)鹸化度がモル比で90%以上、形成フィルムのガ
ラス転移温度が50〜70℃、数平均分子量が50,0
00〜100,000の水溶性カルボキシル基変性ポリ
ビニルアルコール:1〜10固形分重量%、 (2)水溶性潤滑剤:1〜10固形分重量%、 (3)バナジン酸アンモニウム:0.01〜0.5固形
分重量%、 (4)水:79.5〜97.99重量% (但し、(1)〜(4)の合計が100重量%) - 【請求項3】 請求項1又は2記載のアルカリ脱膜型水
性潤滑組成物を乾燥皮膜として1〜5μm形成すること
を特徴とする潤滑皮膜の形成方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10345339A JP2000169753A (ja) | 1998-12-04 | 1998-12-04 | アルカリ脱膜型水性潤滑組成物及び潤滑皮膜の形成方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10345339A JP2000169753A (ja) | 1998-12-04 | 1998-12-04 | アルカリ脱膜型水性潤滑組成物及び潤滑皮膜の形成方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2000169753A true JP2000169753A (ja) | 2000-06-20 |
Family
ID=18375929
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP10345339A Pending JP2000169753A (ja) | 1998-12-04 | 1998-12-04 | アルカリ脱膜型水性潤滑組成物及び潤滑皮膜の形成方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2000169753A (ja) |
Cited By (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006052446A (ja) * | 2004-08-12 | 2006-02-23 | Nisshin Steel Co Ltd | 温水可溶型樹脂被覆ステンレス鋼板 |
JP2006184646A (ja) * | 2004-12-28 | 2006-07-13 | Fuji Photo Film Co Ltd | 光学補償シート、その製造方法、およびそれを用いた液晶表示装置 |
JP2007091995A (ja) * | 2005-09-30 | 2007-04-12 | Toho Chem Ind Co Ltd | アルカリ脱膜型水系接着剤 |
JP2007098599A (ja) * | 2005-09-30 | 2007-04-19 | Kobe Steel Ltd | 樹脂被覆鋼板 |
JP2007160887A (ja) * | 2005-12-16 | 2007-06-28 | Nisshin Steel Co Ltd | 温間絞り加工性に優れた樹脂被覆ステンレス鋼板 |
JP2007181948A (ja) * | 2006-01-05 | 2007-07-19 | Nisshin Steel Co Ltd | 温水可溶性,耐ブロッキング性に優れた樹脂被覆鋼板 |
US8211515B2 (en) | 2004-12-28 | 2012-07-03 | Fujifilm Corporation | Optical compensation sheet, process for producing the same, and polarizing plate and liquid crystal display device using the same |
-
1998
- 1998-12-04 JP JP10345339A patent/JP2000169753A/ja active Pending
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JP4592595B2 (ja) * | 2006-01-05 | 2010-12-01 | 日新製鋼株式会社 | 温水可溶性,耐ブロッキング性に優れた樹脂被覆鋼板 |
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