JP2008248076A - ステンレス冷延鋼板用潤滑塗料組成物およびステンレス冷延鋼板 - Google Patents

ステンレス冷延鋼板用潤滑塗料組成物およびステンレス冷延鋼板 Download PDF

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Abstract

【課題】アルカリ脱膜性、成形加工性、耐パウダリング性および溶接特性等の諸特性を向上させたステンレス冷延鋼板専用の潤滑塗料組成物を提供する。
【解決手段】アクリル系樹脂および中和剤を含有する塗料組成物において、該アクリル系樹脂が、メタクリル酸とアルコールとからなるメタクリル酸エステル、スチレンおよびカルボキシル基を有する単量体との共重合体(a)と、エーテル結合を有する重合性化合物の重合体(b)を、該共重合体(a)と該重合体(b)の割合が質量比で85:15〜50:50を満足する範囲で含有すると共に、潤滑剤として融点が60℃以上の有機固形ワックスを含有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、既存のめっき鋼板や熱延鋼板用に開発されていた潤滑コートに対し、化成処理性や防錆性に関する成分を極力排除して、アルカリ脱膜性、成形加工性、耐パウダリング性および溶接特性等の諸特性を向上させたステンレス冷延鋼板専用の潤滑塗料組成物に関するものである。
また、本発明は、表面に、上記の潤滑塗料組成物を塗布、乾燥して得た潤滑塗装皮膜をそなえる加工性に優れたステンレス冷延鋼板に関するものである。
従来、耐食性が要求される自動車構造材や排気系部品には、亜鉛系めっき鋼板(電気めっき鋼板や合金化溶融亜鉛めっき鋼板)が使用されてきた。しかしながら、各種の環境規制に対する対応や、リサイクル性の向上、部品1個を製造するためのトータルコストの削減という観点から、塗装やめっき工程等の複雑な製造工程をできる限り削減したいという強い要望がある。
このような背景から、耐食性や高温特性に優れたステンレス鋼の適用が自動車や家電、厨房分野を中心に検討されている。特にフェライト系ステンレス鋼は、Niを含有しないためオーステナイト系ステンレス鋼に比べて安価であり、しかも応力腐食割れ(SCC)の心配がないという利点を備えているので、今後需要増加が期待される材料である。しかしながら、フェライト系ステンレス鋼は、軟鋼に比べてCrを多量に含有しているため、延性に乏しく、張り出し性に劣るため、成形可能範囲が限定されるという問題があった。
ステンレス鋼の張り出し性を改善するために、潤滑油を塗布する方法や成形前に塩化ビニルフィルムを鋼板のダイス面側へ貼付し、金型との接触による型かじりを防止する方法等が開発された。
しかしながら、潤滑油を塗布する方法では、プレス時に潤滑油を塗布し、プレス後はこの潤滑油を除去する必要があるため、作業性が損なわれるという問題がある。また、塩化ビニルフィルムを貼付する方法では、プレス成形後に塩化ビニルフィルムを成形品から剥離する工程が必要となるだけでなく、剥離したフィルムの処分方法次第では環境汚染を引き起こすおそれがある。
そのため、ステンレス鋼板のプレス成形性を改善するために、有機樹脂被覆を施し、ステンレス鋼板の潤滑性を向上させることが提案されている。
潤滑性を向上させる技術としては、従来から鋼板表面にアルカリ脱膜型の有機樹脂組成物等の塗膜を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
しかしながら、例えば特許文献1に記載されている方法では、ステンレス表面に塗布する潤滑処理皮膜の平均傾斜角を一定値以下に保持する必要があるが、実際の操業での塗膜厚みのばらつきが生じ易いだけでなく、鋼板の傷などの影響を受け易いため、安定した潤滑鋼板を得ることは難しかった。
また、特許文献2に記載されている方法では、ステンレス鋼の粗面化処理が必要であり、特に単位面積当たりの表面積がその幾何学的表面積に対して2.5倍以上となるような非常に粗い粗面化処理で平均口径が1〜10μmのピットを発生させることを必要としているため、成形後の外観性や耐食性を大きく損ねることになり、必ずしも効果的な方法とはいい難い。
さらに、特許文献3に記載されている方法では、潤滑コートがアルカリのみならず、水にも溶解する水溶性であるため、結露などの環境下では皮膜が容易に溶解し、安定した潤滑性が得られないばかりか、板同士がくっついて作業性を著しく阻害するという欠点があった。
その他、特許文献4には、アルカリ脱膜型のアクリル系樹脂を塗布する技術が提案されているが、この技術は、めっき鋼板や軟鋼の熱延鋼板用に開発されたものであり、ステンレス鋼板用に特性を特化させたものではないため、ステンレス鋼板のように表面に不動態皮膜を有する基板に対しては、プレス成形時の密着性、アルカリ溶液中での脱膜性などが通常の鋼板に比較して劣るという問題がある。
この脱膜性が劣るという事実は、通常はさほど問題にはならないレベルであるが、特殊な用途、特に高い耐食性が要求される部品に使用する場合には、問題になる。
例えば、フェライト系ステンレス鋼板に限らず、ステンレス冷延鋼板では、そのような用途に使用される場合が多々あるが、アクリル系樹脂皮膜が完全には除去されず、鋼板表面に残留していた場合、溶接などの処理により、残留した皮膜と鋼板が鋭敏化を起こす。その部分が非常に強い腐食環境下に曝された場合、鋭敏化した部分は母材に比べて特性が劣化することがあり、実用上問題となる。
特開平10−114014号公報 特開2000−301659号公報 特開2002−120323号公報 特開2000−327989号公報
需要先における数百〜数千回に及ぶ連続プレス時や厳しい深絞り成形時には、摩擦熱や変形抵抗が原因で、金型温度は少なくとも40℃、場合によっては100℃まで上昇すると言 われている。この温度上昇を緩和するために、オイルを金型にかけながらプレス成形することが一般に行われているが、プレス回数の増加に伴いオイルによる冷却効果が低下して金型温度が上昇する。その結果、従来技術では有機樹脂塗膜が軟化し、潤滑効果が低下して、プレス割れや型かじりが発生するという問題があった。
この点、上記の問題を解決したとされる特許文献4に開示された技術をもってしても、めっき鋼板や熱延鋼板に比べて表面に不動態皮膜とよばれる極薄い酸化皮膜が存在するステンレス冷延鋼板に対しては、密着性が十分ではなく、非常に加工度の高いプレス成形を続けた場合には多量の剥離粉が出るようになるため、成形時に押し傷の発生や摩擦係数の上昇が生じ、成形性の低下を余儀なくされていた。
また、ステンレス鋼は、軟鋼に比べて延性に乏しく、しかも表面が硬質なため、軟鋼を母材としためっきや塗装鋼板用途にフェライト系ステンレス鋼を適用するには、軟鋼以上に摺動性や皮膜強度が潤滑コートに要求される。
さらに、ステンレス鋼板の場合、溶接をした後、高耐食性が要求される環境で使用されることが多いが、潤滑コートの一部の成分でも脱膜処理後に残存すると、鋼中のCrと鋭敏化を起こし、耐食性を損ねることが問題となる。
そのため、従来コートを上回る優れた脱膜性が要求されていた。
また、軟鋼を基板に用いる場合、プレス成形後、アルカリ洗浄処理を施し、ついで化成処理を施して、化成処理皮膜を形成し、その後の電着塗装や静電塗装等による外装塗料の塗膜と金属板との密着性を確保する必要がある。化成処理皮膜を形成するには、上記した有機樹脂塗膜を除去しなければならず、化成処理前のアルカリ洗浄による有機樹脂塗膜の除去(アルカリ脱膜)が重要である。
併せて、軟鋼は、大気中でも赤錆が生じるので耐錆性の改善も重要な課題である。この点、既存のコートは、脱膜性改善と耐食性向上という相反する特性を同時に満たす必要があったため、それらのバランスがとれた成分系とされていた。しかしながら、地鉄がある程度耐食性を有し、また表面に不動態皮膜を有するステンレス鋼板用の塗膜としては、既存コートのようなバランスは重要ではなく、高皮膜密着性、高強度、難水溶性、容アルカリ脱膜性に特化した皮膜が要求される。特に、中でも容アルカリ脱膜性は重要である。
さらに、前述したとおり、フェライト系ステンレス鋼に限らず、ステンレス冷延鋼板は、高い耐食性が要求される用途に使用されることが多々あるが、皮膜が鋼板表面に残留していた場合、溶接などの処理により、残留した皮膜と鋼板が鋭敏化を起こし、その部分が非常に強い腐食環境下に曝された場合、鋭敏化した部分が母材に比べて劣化し、実用上問題となる。
また、この潤滑コートが水に簡単に溶解するようだと、結露などの自然現象により板がくっつき、作業性が劣化するという問題が生じる。
本発明は、潤滑コート成分の特性を、ステンレス冷延鋼板用に最適化することにより、新しいアクリルベース潤滑コートを開発したものである。
すなわち、本発明は、ステンレス冷延鋼板の表面に、有機樹脂塗膜(潤滑処理塗膜)を有するステンレス冷延鋼板に残されていた問題点、すなわち特定の溶液(アルカリ溶液)での脱膜性、プレス成形性(耐プレス粉)およびプレス地の塗膜密着性を効果的に改善し得る潤滑塗料組成物を提案することを目的とする。
また、本発明は、表面に、上記の潤滑塗料組成物を塗布、乾燥して得た潤滑塗装皮膜をそなえる加工性に優れたステンレス冷延鋼板を提案することを目的とする。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
(1)アクリル系樹脂および中和剤を含有する塗料組成物において、該アクリル系樹脂が、メタクリル酸とアルコールとからなるメタクリル酸エステル、スチレンおよびカルボキシル基を有する単量体との共重合体(a)と、エーテル結合を有する重合性化合物の重合体(b)を、該共重合体(a)と該重合体(b)の割合が質量比で85:15〜50:50を満足する範囲で含有すると共に、潤滑剤として融点が60℃以上の有機固形ワックスを含有することを特徴とするステンレス冷延鋼板用潤滑塗料組成物(第1発明)。
(2)アクリル系樹脂および中和剤を含有する塗料組成物において、該アクリル系樹脂が、メタクリル酸とアルコールとからなるメタクリル酸エステル、スチレン、カルボキシル基を有する単量体およびエーテル結合を有する重合性化合物の重合体(b)を、該重合体(b)以外の成分と該重合体(b)の割合が質量比で85:15〜50:50を満足する範囲で重合させた共重合体(c)を含有すると共に、潤滑剤として融点が60℃以上の有機固形ワックスを含有することを特徴とするステンレス冷延鋼板用潤滑塗料組成物(第2発明)。
(3)上記(1)または(2)において、前記重合体(b)のベースとなるエーテル結合を有する重合性化合物が、カルボキシル基を有する単量体:1molに対して5〜40molのアルキレンオキサイドからなることを特徴とするステンレス冷延鋼板用潤滑塗料組成物。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかにおいて、前記有機固形ワックス中に占める燐酸系無機塩の割合を、アクリル系樹脂総量に対して0.1質量%以下に抑制したことを特徴とするステンレス冷延鋼板用潤滑塗料組成物。
(5)ステンレス冷延鋼板の表面に、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のステンレス冷延鋼板用潤滑塗料組成物を塗布、乾燥して得た潤滑塗装皮膜をそなえることを特徴とする加工性に優れたステンレス冷延鋼板。
本発明の潤滑塗料組成物をステンレス鋼板の表面に塗布することにより、ステンレス鋼板の耐型かじり性、耐パウダリング性を含むプレス成形性、アルカリ脱膜性、アルカリ脱膜後の溶接性、アルカリ脱膜後の耐食性およびアルカリ脱膜後の溶接部の耐食性が格段に向上する。
従って、本発明によれば、従来問題となっていたフェライト系ステンレス鋼の難プレス成形が可能となり、自動車部品等の材料に適用して偉効を奏する。
以下、本発明の潤滑塗料組成物について具体的に説明する。
本発明は、アクリル系樹脂および中和剤を含有する潤滑塗料組成物であるが、改善すべきステンレス冷延鋼板のプレス成形性(耐塗膜剥離性)を、アクリル系樹脂をべースに、メタクリル酸エステル、スチレン、さらには特にステンレス用としてカルボキシル基を有する重合性化合物とアルキレンオキサイドの重合体を特定量範囲で導入し、さらに潤滑剤として融点が60℃以上の有機固形ワックスを含有させることにより、完成させたものである。
まず、第1発明の潤滑塗料組成物について説明する。
アクリル系共重合体(a):
メタクリル酸エステルとスチレンとカルボキシル基を有する単量体との共重合体(a)は、有機樹脂塗膜の破断エネルギーを高レベルに維持することが可能であるため、プレス成形性の改善に有効に寄与する。
ここに、メタクリル酸とエステル化させるアルコールとしては、脂肪族1価アルコールが実用的であり、本発明の好適メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸エチル(略称EMA、Tg:65℃)、メタクリル酸イソプロピル(略称iso−PMA、Tg:81℃)、メタクリル酸−n−ブチル(略称n−BMA、Tg:20℃)およびメタクリル酸イソブチル(略称iso−BMA、Tg:67℃)等が挙げられる。
なお、アクリル酸エステルは、通常、ガラス転移点Tgが0℃未満であり、プレス成形性が劣る傾向にあるが、本発明のメタクリル酸エステルはTgが常温以上であるので、プレス成形性に優れるという利点がある。
一般に、需要家による実プレス成形は、連続でしかも高速であるため、摩擦熱や金属板の変形抵抗による熱で、高温に達する。従って、Tgが0℃未満のメタクリル酸エステルを成分とする共重合体を含有する場合、軟質成分が熱により、金属板から離脱または溶融し、塗膜全体の潤滑性能を低下させることになる。メタクリル酸エステルのTgは、好ましくは10〜90℃の範囲である。
共重合体(a)の第二共重合成分であるスチレンは、耐湿性が高いだけでなく、ガラス転移点Tgも高いため、防錆性、プレス成形性を両立させる上で必須である。上記したメタクリル酸エステルとスチレンとの共重合比は、質量比で20:80〜90:10程度とするのが好適である。この両者の合計量において、メタクリル酸エステルの比率が20質量%未満では、スチレンの含有割合が増すため、プレス成形性は向上するが、特に表面に不動態皮膜を有するステンレス鋼板の場合、アルカリでの溶解性が劣るようになる。また、塗料の貯蔵安定性が低下する傾向にある。逆に、メタクリル酸エステルの比率が90質量%を超えた場合、塗膜の破断強度が低下し、プレス成形性が低下する。メタクリル酸エステル:スチレンの共重合比のより好ましい質量比は、30:70〜80:20であり、さらに好ましくは50:50〜75:25の範囲である。
共重合体(a)の第三共重合成分はカルボキシル基を有する単量体であり、例えばアクリ ル酸、メタクリル酸、マレイン酸およびイタコン酸等のカルボキシル基を1個または2個有するエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。これにより、共重合体はカルボキシル基を分子中に有することになり、例えばアンモニア、アミン等の塩基で中和することにより水溶化が可能となる。その結果、共重合体(a)は、塗料の重要な性能の一つであるアルカリ脱膜性を有することになる。
この共重合体(a)は、中和前の酸価が50〜400mg-KOH/gになるように調整することが好ましい。というのは、中和前の酸価が50mg-KOH/g未満の場合、不動態皮膜を有するステンレス鋼表面でのアルカリ洗浄液による当該塗膜のアルカリ脱膜性が極端に低下し、一方、酸価が400mg-KOH/gを超えた場合は、塗料状態で長期間保管する場合に不安定となるからである。より好ましい酸価の範囲は100〜350mg-KOH/g、さらに好ましくは120〜300mg-KOH/gの範囲である。
上記した好ましい酸価を確保するためには、例えばカルボキシル基を有する単量体をメタクリル酸とした場合、メタクリル酸とスチレンとメタクリル酸エステルとの共重合体(a):100質量部に対しメタクリル酸の割合を10〜64質量部にするとよい。
また、共重合体(a)の好ましい分子量は、質量平均分子量で1〜5万である。この範 囲であると、塗膜の潤滑効果が効果的に発現し、プレス成形に有利となる。
さらに、共重合体(a)においては、カルボキシル基をアンモニアやアミンなどの塩基である中和剤により水溶化する。従って、エマルジョン化等に使用される界面活性剤を使用する必要はない。そのため、界面活性剤が乾燥後の塗膜に残存し、塗膜の防錆性やプレス成形性を低下させるという問題が生じない。加えて、界面活性剤を含むエマルジョン塗料の本質として、乾燥焼付温度を(Tg+20℃)以上とする必要があり、より高温での乾燥によってのみ成膜が可能になる。これは、界面活性剤を含む場合は塗膜乾燥性が劣ることを意味するが、共重合体(a)の場合は、この問題も回避される。
かような共重合体(a)は、水性溶剤中における公知の共重合によって得ることができる。例えば 窒素雰囲気下で、約100℃に調整した水性溶剤のブチルセロソルブ中に、メタクリル酸エステルとスチレンを、メタクリル酸エステル:スチレンの質量比で好ましくは50:50〜75:25に調整して加え、さらにアクリル酸を、好ましくは酸価が120〜300mg-KOH/gになるように重合開始剤と共に5時間程度かけて滴下しながら共重合させ、さらに同温度でさらに3時間程度の加熱撹拌を行い、共重合を完結させ、所定の共重合体(a)を得る。
その後、溶液を冷却し、アンモニアなどの塩基で中和して、水溶化させる。
また、本発明の共重合体(a)を塩基で中和させる際に、有機樹脂塗膜中のカルボキシル 基の一部を有機樹脂被覆時に蒸散しにくい塩基、すなわち沸点の高いアミンまたは水酸化物で中和させてもよい。これは、共重合体(a)のカルボキシル基が沸点の高いアミンによ って中和されていると、アルカリ脱膜性がさらに向上するためである。なお、アルカリ脱膜性に関しては、後述するエーテル結合を有する重合性化合物の重合体(b)の添加効果が大きいので、必ずしも必須というわけではない。
中和剤としては、アンモニア、ジエチルアミン(沸点:56℃)、N,N−ジメチルエタノールアミン(沸点:130℃)、モノエタノールアミン(沸点:170℃)等が挙げられるが、アルカノールアミンおよびアルキルアミンが特に好ましい。水酸化物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。
エーテル結合を有する重合性化合物の重合体(b):
本発明においては、上記した共重合体(a)に、特定質量範囲のエーテル結合を有する重合性化合物の重合体(b)を含有させることにより、ステンレス鋼板の表面に対して非常に高度のアルカリ脱膜性を付与する。
共重合体(a)は、塗膜の焼付けやその後の放置により、カルボキシル基が増加する傾向にあるため、アルカリ脱膜性は必ずしも安定していない。この傾向は、基板がステンレス鋼板の場合とくに顕著になる。そのメカニズムは必ずしも明らかではないが、カルボキシル基とステンレス鋼板表面の不動態皮膜が一部結合することに起因すると推定される。
エーテル結合を有する重合性化合物の重合体(b)は、共重合体(a)とは異なり、中和、未中和に係わらず、水溶性を確保できるので、中和された共重合体(a)が、カルボキシル化することに起因するアルカリ脱膜性の低下を効果的に防止することができる。
この重合体(b)は、共重合体(a)と混合され、組成物を形成する。また、この重合体(b)は、共重合体(a)の場合と異なり、塩基により中和されていなくても、水との相溶性が良いので、重合体(b)を含む塗料組成物は、アルカリ脱膜性が良好である。
エーテル結合を有する重合性化合物としては、不飽和カルボン酸エステルが代表的であり、エチレン性不飽和カルボン酸のポリアルキレンとグリコールモノアルキルエーテルのエステル等がある。
エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸およびフマール酸等がある。これに、アルキレンオキサイドを付加し、さらに末端をアルキルエーテルとしたものである。
アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドおよびブチレンオキサイド等が挙げられる。
ここに、本発明に係るステンレス鋼板用の塗料組成物の場合、カルボキシル基を有する単量体:1molに対して、アルキレンオキサイドを5〜40molの範囲で重合させることが好ましい。この理由は、樹脂自体に水酸基を増やすことによって、水素結合などの効果により、中性水溶液中では若干の極性を持つ不動態皮膜との密着性が確保され、一方アルカリ溶液中では容易に皮膜が溶解するといった両方の性質を同時に確保できるためである。
通常、アルキレンオキサイドを分子中に付加させすぎると、防錆性が劣化し、通常の鋼板では致命的な欠陥となる。しかしながら、下地がステンレス鋼の場合、むしろ水酸基はできるだけ多く付加させた方が良いことが判明した。カルボキシル基を有する単量体:1molに対して、付加させるアルキレンオキサイドが5mol未満では、水溶液中での密着性向上効果は小さく、アルカリでの脱膜性もさほど向上しない。逆に40molを超えて添加すると、樹脂自体が安定しなくなる。従って、好ましい範囲を5〜40molとした。なお、さらに好ましいアルキレンオキサイドの重合付加範囲は、カルボキシル基を有する単量体:1molに対して10〜30molである。
さらに、本発明では、前記した共重合体(a)と添加する重合体(b)の含有量を、質量比で85:15 〜50:50の範囲とする必要がある。通常の鋼板を目的とした場合、重合体(b)を本発明ほど添加した場合には、防錆性が著しく劣化し、潤滑コートとしては致命的な欠陥になりかねない。
しかしながら、ステンレス鋼板では、表層に不動態皮膜が存在しているため、ある程度の重合体(b)の含有は許容できるようになり、むしろ重合体(b)の水酸基による表面不動態皮膜との密着性向上効果およびアルカリでの脱膜効果を確保する方が、ステンレス用としては良好となる。換言すれば、この重合体(b)の添加量と付加させるアルキレンオキサイドの重合付加化数が本発明の大きな特徴の一つである。
ここに、添加する重合体(b)の含有量が、共重合体(a):重合体(b)の質量比で85:15未満になると、通常のステンレス鋼板表面との密着性、特に表面に強固な不動態皮膜が付いた状態では、密着性は確保できず、高加工成形をした場合、パウダリングなどの悪影響を起こす。さらに、アルカリ溶液中では脱膜性も劣化し、脱膜不良→溶接時の鋭敏化といった不具合を起こす。逆に、重合体(b)の含有量を、共重合体(a):重合体(b)の質量比で50:50超にしてしまうと、塗膜の破断強度が低下し、摺動性の改善が見られないばかりでなく、塗料組成物として不安定になり、安定した塗布、プレスができなくなる。
従って、重合体(b)の含有量は、共重合体(a):重合体(b)の質量比で85:15〜50:50の範囲に規定する。より好ましくは80:20〜60:40の範囲、さらに好ましくは75:25〜70:30の範囲である。
なお、エーテル結合を有する重合性化合物の重合体(b)において、ポリアルキレングリコールエーテルのエステルの末端基は、水酸基であるのが一般的であるが、塗料組成物を長期保存した場合、組成物の成分同士が脱水反応を起こして三次元化し、ゲル化することがある。これに対しては、末端の水酸基をメチルアルコール、エチルアルコールなどのアルキルアルコールでエーテル化、または脂肪族カルボン酸でエステル化することにより、長期保存時の塗料安定性を確保することができる。
さらに、ステンレス鋼板用としては、塗料組成物中に、潤滑剤として融点が60℃以上の有機固形ワックスを含有させる。これは、ステンレス鋼板の場合、表層が固く、表面が不動態皮膜で覆われているため、表面の塗料塗装の一部でも剥離して、その部分が成型加工時に金型などに触れるとかじりの原因となり、特に加工形状が複雑な場合にこの現象が起こり易くなるからである。
また、この現象は、プレス時の温度が高くなり、金型や鋼板の温度が高温になった時に起こり易くなり、低温の時はさほど問題とならない。従って、本発明のステンレス鋼板用の塗料組成物としては、融点が60℃以上の有機固形ワックスを用いるものとした。
かようなワックスとしては、ポリエチレンワックス、石油パラフィンワックス、動植物油脂、高級脂肪酸、高級アルコール、高級脂肪酸と高級アルコールのエステル、高級脂肪酸アマイドおよび高級脂肪酸のアミン塩などが挙げられる。
この有機固形ワックスの配合量は、塗料組成物の全樹脂固形分に対して1〜10質量%程度とするこのが好ましい。より好ましくは1〜5質量%の範囲である。この範囲だと、アルカリ脱膜性を損なわず、プレス成形性に優れ、しかも塗料安定性を損なうことはない。
本発明の潤滑塗料組成物は、例えば次のようにして調製される。
すなわち、共重合体(a)および重合体(b)を、所定量の水に分散し、60〜70℃に加温し、所定量のアンモニアを添加して中和する。さらに、必要に応じて、例えばトリエタノールアミンを添加する。その後、融点:60℃以上の有機固形ワックスを添加分散させる。
次に、第2発明の潤滑塗料組成物について説明する。
共重合体(c):
上記したように、第1発明では、共重合体(a)および重合体(b)が混合されて、組成物を構成していれば十分であるが、前記の組成比を維持し、共重合体(a)を構成する成分とエーテル結合を有する重合性化合物の重合体(b)とを共重合させて、一体化した共重合体(c)を得、これを共重合体 (a)および重合体(b)に替えて使用することもできる。
このようにエーテル結合を有する重合性化合物の重合体を共重合させることにより、塗料組成物中の低分子量成分が減少し、プレス成形性が一段と向上する。
共重合体(a)を構成する成分とエーテル結合を有する重合性化合物の重合体(b)との共重合体、すなわちメタクリル酸とアルコールとからなるメタクリル酸エステル、スチレン、カルボキシル基を有する単量体とエーテル結合を有する重合性化合物の重合体との共重合体(c)は、例えば次の方法によって製造される。
溶液重合法の場合は、80〜140℃に加熱した水溶性溶剤のブチルセロソルブ等に、窒素 雰囲気下において、例えばスチレン:18質量部、メタクリル酸イソブチル:22質量部、メタクリル酸:30質量部およびメタクリル酸のポリエチレングリコールモノエチルエーテルエステル:30質量部を加え、予備混合した後、重合開始剤と共に、5時間程度かけて滴下しながら共重合させ、共重合を完結する方法が挙げられる。
得られた塗料組成物を、トリクロロメタンで抽出し、孔径:0.5μmのフィルターで濾過し、GPCで測定した。スペクトルは、ピーク数が1個であり、これが共重合体であることが確認された。この場合の共重合体(a)を構成する成分:重合体(b)を構成する成分の割合は70:30である。その後、塗料組成物を55〜60℃に冷却し、共重合体に含まれる酸:1当量に対し、アンモニア:1当量を加えて中和し、水溶化を行った。
本発明の塗料組成物が、共重合体(a)を構成する成分とエーテル結合を有する重合性化 合物の重合体(b)を共重合して得た共重合体(c)である場合の酸価は、中和前の共重合体(c)の酸価である。
ここに、塗料組成物の酸価は50〜400mg-KOH/gになるように調整することが好ましい。より好ましくは100〜350mg-KOH/g、さらに好ましくは120〜300mg-KOH/gの範囲である。
上記した好ましい酸価を確保するためには、例えばカルボキシル基を有する単量体をメタクリル酸とした場合、メタクリル酸とスチレンとメタクリル酸エステルとの合計量:100質量部に対してメタクリル酸を10〜60質量部にするとよい。
また、塗料組成物の質量平均分子量は、1〜5万程度とするのが好ましく、より好ましくは2〜4万の範囲である。この質量平均分子量が1万未満では、プレス成形性が劣化し、一方5万を超えると塗料組成物の粘度が上昇して、塗装が困難になる傾向がある。
さらに、塗料組成物のガラス転移点Tgは、50℃以上であるのが好ましい。というのは、50℃未満では、プレス成形時の発熱により、金属板表面に塗布して形成された塗膜が金属板から離脱または溶融し、塗膜の潤滑性能を低下させるからである。好ましいTgの範囲は60〜100℃である。
本発明の塗料組成物は、潤滑性向上のための添加剤として、燐酸系無機物を含まないことを特徴とする。これは、ステンレス鋼の場合、燐酸系無機物は下地の不動態皮膜との結合が強く、アルカリ脱膜性を著しく阻害するからである。また、燐酸系無機物がプレス中にピン止め効果のような影響を及ぼし、樹脂の変形を阻害して、パウダリングなどの悪影響もステンレス鋼では生じる。このため、燐酸系無機物はできるだけ排除した方が良い。ステンレス鋼の場合、この燐酸系無機物が、アクリル系樹脂総量に対し0.1質量%を超えるとアルカリ脱膜性が著しく劣化し、強加工した場合のパウダリングもひどくなる。従って、燐酸系無機物の添加量は0.1質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.05質量%以下である。
また、塗料組成物を、ステンレス鋼板表面に塗装する場合、付着量は片面当たり、乾燥重量で0.5〜6g/m2程度とすることが好ましい。というのは、付着量が0.5g/m2未満の場合には、金属板表面の凹凸を完全に埋めることができず、プレス成形性に対する本塗膜の効果が発現せず、一方6g/m2を超えた場合には、プレス成形時にパウダリングが発生するおそれがあるからである。より好ましい範囲は0.5〜3g/m2である。
なお、塗布方法としては、ロール塗布、スプレー塗布、浸漬塗布、刷毛塗り塗布等公知の方法で実施できる。また、乾燥条件は、温度:50〜200℃、乾燥時間:1〜120秒間程度が好適である。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1
原板であるステンレス冷延鋼板としては、商用工程で2B仕上げをした、SUS430、SUS436、SUH409(いずれも板厚:1.0mm)のフェライト系ステンレス冷延鋼板を使用した。そして、これらの鋼板を、100mm(C方向)×200mm(L方向)の大きさにせん断し、アルカリ溶液中で脱脂したものを用いた。
また、アクリル樹脂としては、下記(1)〜(6)に示すアクリル系共重合体(a)および重合体(b)を特定比で混合した後、中和剤で中和し、ついで固形潤滑剤を添加混合することにより、潤滑塗料組成物を作成した。表1に、アクリル樹脂の共重合体(a)作成時の成分混合比、重合体(b)作成時の成分混合比、共重合体(a)と重合体(b)の混合比、中和条件、添加した固形潤滑剤および得られた潤滑塗料組成物の物性を示す。
上記のようにして作成した潤滑塗料組成物を、脱脂後、表2に示すステンレス鋼板の表面に、乾燥塗膜重量で片面当たり2.0g/m2になるように両面に塗布し、大気中にて65℃で1分間の乾燥を行い、試験片とした。
〔アクリル系樹脂〕
(1) 共重合体(a):メタクリル酸エチル、スチレン、メタクリル酸の共重合体
重合体(b) :メタクリル酸、エチレンオキサイドのエステル化物の重合体
(2) 共重合体(a):メタクリル酸メチル、スチレン、マレイン酸の共重合体
重合体(b) :アクリル酸、プロピレンオキサイドのエステル化物の重合体
(3) 共重合体(a):メタクリル酸−n−ブチル、スチレン、メタクリル酸の共重合体
重合体(b) :メタクリル酸とエチレンオキサイドのエステル化物の重合体
(4) 共重合体(a):メタクリル酸イソブチル、スチレン、アクリル酸の共重合体
重合体(b) :マレイン酸とプロピレンオキサイドのエステル化物の重合体
(5) 共重合体(a):メタクリル酸エチル、スチレン、アクリル酸の共重合体
重合体(b) :イタコン酸とエチレンオキサイドのエステル化物の重合体
(6) 共重合体(a):メタクリル酸−n−ブチル、スチレン、メタクリル酸の共重合体
重合体(b) :マレイン酸とプロピレンオキサイドのエステル化物の重合体
このようにして得られた試験片について、プレス成形性、アルカリ脱膜性、アルカリ脱膜後の溶接性、アルカリ脱膜後の耐食性、アルカリ脱膜・溶接後の溶接部の耐食性、大気中での塗膜面剥離性および塗料安定性を調査した。また、比較のため、鋼板として一般の軟鋼や亜鉛めっき鋼を用いた場合についても、同様の調査を行った。
得られた結果を表2に併記する。
なお、各特性の評価方法は次のとおりである。
<プレス成形性>
(1) 常温プレス成形性(限界しわ押さえ荷重、耐型かじり性、耐パウダリング性)
エリクセンカップ絞り試験機を用いて、下記のプレス条件で、かつ金型温度を25℃に保持して、円筒深絞り成形を行った。
ポンチ径:33mmφ(円筒)
絞りダイス肩曲率:2mmR
ブランク径 円筒:70mmφ
絞り速度:60mm/s
・限界しわ押さえ荷重
破断せずに成形可能な最大荷重で評価した。
・耐型かじり性
上記試験片の側壁部を観察し、型かじりの有無を次の4段階で評価した。
◎:型かじりなし
○:型かじり若干あり
△:型かじりやや多め
×:型かじり多い
・耐パウダリング性
上記試験片の側壁部を観察し、パウダリングの有無を次の4段階評価した。
◎:パウダリング発生なし
○:パウダリング発生若干あり
△:パウダリング発生やや多め
×:パウダリング発生多い
(2) 温間プレス成形性(限界しわ押さえ荷重、耐型かじり性、耐パウダリング性)
エリクセンカップ絞り試験機を用いて、下記のプレス条件で、かつ金型温度を80℃に保持して、円筒深絞り成形を行った。
ポンチ径:33mmφ(円筒)
絞りダイス肩曲率:2mmR
ブランク径 円筒:70mmφ
絞り速度:60mm/s
・限界しわ押さえ荷重
破断せずに成形可能な最大荷重で評価した。
・耐型かじり性
上記試験片の側壁部を観察し、型かじりの有無を次の4段階で評価した。
◎:型かじりなし
○:型かじり若干あり
△:型かじりやや多め
×:型かじり多い
・耐パウダリング性
上記試験片の側壁部を観察し、パウダリングの有無を次の4段階評価した。
◎:パウダリング発生なし
○:パウダリング発生若干あり
△:パウダリング発生やや多め
×:パウダリング発生多い
<耐食性>
試験片の縁から5mmまでのエッジ部と片面(試験面と反対面)をシールして、耐食性試験に供した。耐食性試験はSST試験(JIS Z 2371)に準じて、濃度:5質量%の食塩水を噴霧することにより行い、24時間後の発錆面積率により次の4段階で評価した。
また、No.24,25の比較例については、試験片に、防錆油(“ノンラスト”Z5:出光興産(株)製)を2g/m2塗油した後に腐食試験に供し、白錆もしくは赤錆の発生状況を、同じく4段階で評価した。
◎:発錆なし
○:発錆面積率1%未満
△:発錆面積率5%未満
×:発錆面積率5%以上
<アルカリ脱膜性>
試験片を、濃度:5質量%、液温:50℃に調整したアルカリ洗浄液(脱脂液:ホメザリン:花王(株)製)中に30秒間浸漬して脱脂し、脱脂後の試験片を水中に浸漬し、引き上げた後の水濡れ面積を目視観察し、次の基準でアルカリ脱膜性を3段階評価した。
○:水濡れ部位が金属板表面積の100%
△:水濡れ部位が金属板表面積の95%以上
×:水濡れ部位が金属板表面積の95%未満
<アルカリ脱膜後の耐食性>
試験片を、濃度:5質量%、液温:50℃に調整したアルカリ洗浄液(脱脂液:ホメザリン:花王(株)製)中に30秒間浸漬して脱脂し、脱膜した。それらのサンプルの縁から5mmまでのエッジ部と片面(試験面と反対面)をシールして、耐食性試験に供した。耐食性試験は、CCT試験(乾湿繰り返し試験)により評価した。乾湿繰り返し試験条件は、噴霧(NaC1:5%溶液、温度:35℃、0.5時間)→乾燥(温度:60℃、1時間)→湿潤(温度:40℃、湿度:95%、1時間)を1サイクルとして、塗膜を塗らなかった無垢表面との初期発錆までの時間比較で次の4段階評価を行った。
◎:(脱膜材の発錆までの時間/無垢材の発錆までの時間)×100=95%以上
○:(脱膜材の発錆までの時間/無垢材の発錆までの時間)×100=90%以上
△:(脱膜材の発錆までの時間/無垢材の発錆までの時間)×100=85%以上
×:(脱膜材の発錆までの時間/無垢材の発錆までの時間)×100=85%未満
<アルカリ脱膜後の溶接性>
試験片を、濃度:5質量%、液温:50℃に調整したアルカリ洗浄液(脱脂液:ホメザリン:花王(株)製)中に30秒間浸漬して脱脂、脱膜した。こうして脱脂した試験片2枚を重ねて板中央部をC方向に平行にシーム溶接を行った。シーム溶接条件は、次のとおりである。
加圧力:500kgf
電極幅:5mm
Heat/Cool Time:3/1サイクル
溶接速度:1.0m/min
溶接電流:9000A
溶接後のサンプルは、溶接部を中心として片側をT字型に広げ、T字足の両端を引っ張ることにより、溶接部の密着性を次の4段階で評価した。
◎:(T字の引張り強さ/母材の引張り強さ)×100=95%以上
○:(T宇の引張り強さ/母材の引張り強さ)×100=90%以上
△:(T字の引張り強さ/母材の引張り強さ)×100=75%以上
×:(T字の引張り強さ/母材の引張り強さ)×100=75%未満
<アルカリ脱膜・溶接後の溶接部の耐食性>
試験片を、濃度:5質量%、液温:50℃に調整したアルカリ洗浄液(脱脂液:ホメザリン:花王(株)製)中に30秒間浸漬して脱脂、脱膜した。こうして脱脂した試験片2枚を重ねて板中央部をC方向に平行にシーム溶接を行った。シーム溶接条件は、上記の場合と同じである。
溶接後のサンプルは、縁から5mmまでのエッジ部と片面(試験面と反対面)をシールして、耐食性試験に供した。耐食性試験は、CCT試験(乾湿繰り返し試験)により評価した。乾湿繰り返し試験条件は、噴霧(NaC1:5%溶液、温度:35℃、0.5時間)→乾燥(温度:60℃、1時間)→湿潤(温度:40℃、湿度:95%、1時間)を1サイクルとして、塗膜を塗らなかった無垢表面との初期発錆までの時間比較で次の4段階評価を行った。
◎:(脱膜材の発錆までの時間/無垢材の発錆までの時間)×100=95%以上
○:(脱膜材の発錆までの時間/無垢材の発錆までの時間)×100=90%以上
△:(脱膜材の発錆までの時間/無垢材の発錆までの時間)×100=85%以上
×:(脱膜材の発錆までの時間/無垢材の発錆までの時間)×100=85%未満
<大気中での塗膜面剥離性>
塗膜面同士を内側にして重ね合せた2枚の試験片を50kgのトルクで締め付けた状態で、50℃で湿度:80%の恒温槽中に24時間放置した。その後、重ねた試験片を引き剥がし、引き剥がした時の粘着状況により、大気中での塗膜面剥離性を次の4段階で評価した。
◎:粘着なし
○:若干粘着あり
△:粘着あり
×:粘着大
<塗料安定性>
40℃のオープン中にガラスビーカーに入れた本発明の塗料組成物を1ヶ月間放置し、放置後の塗料分離状況を目視観察すると共に、粘度を測定し、放置前の粘度と比較して、次の4段階評価を行った。なお、塗料組成物中の固形分は20質量%とした。
◎:塗料組成物の分離なく、かつ粘度変化なし
○:塗料組成物の分離ないが、粘度上昇傾向あり
△:若干の沈降物もしくは浮遊物あり、かつ粘度上昇あり
×:沈降物もしくは浮遊物が著しく発生し、かつ粘度上昇あり
Figure 2008248076
Figure 2008248076
表2から明らかなように、本発明の要件を満足する潤滑塗料組成物を、ステンレス鋼板の表面に塗布することにより、耐型かじり性、耐パウダリング性を含むプレス成形性をはじめとして、アルカリ脱膜性、アルカリ脱膜後の溶接性および耐食性、アルカリ脱膜・溶接後の溶接部の耐食性および大気中での塗膜面剥離性、さらには塗料安定性が格段に改善されることが分かる。
これに対し、基板が軟鋼や亜鉛メッキ鋼板の場合では、特に防錆性が著しく劣り、本発明の潤滑塗料組成物はステンレス鋼専用に特化したものであることが分かる。
実施例2
原板であるステンレス冷延鋼板としては、商用工程で2B仕上げをした、SUS430、SUS436、SUH409(いずれも板厚:1.0mm)のフェライト系ステンレス冷延鋼板を使用した。そして、これらの鋼板を、100mm(C方向)×200mm(L方向)の大きさにせん断し、アルカリ溶液中で脱脂したものを用いた。
また、アクリル樹脂としては、下記(7)〜(10)に示す(a群)と(b群)を特定比で共重合させた後、中和剤で中和し、ついで固形潤滑剤を添加混合することにより、潤滑塗料組成物を作成した。表3に、重合体(b)作成時の成分混合比、共重合体(c)作成時の成分混合比、中和条件、添加した固形潤滑剤および得られた潤滑塗料組成物の物性を示す。
上記のようにして作成した潤滑塗料組成物を、脱脂後、表4に示すステンレス鋼板の表面に、乾燥塗膜重量で片面当たり2.0g/m2になるように両面に塗布し、大気中にて65℃で1分間の乾燥を行い、試験片とした。
〔アクリル系樹脂〕
(7) (a群) メタクリル酸−n−ブチル、スチレン、アクリル酸と、(b群) メタクリル酸とプロピレンオキサイドのエステル化物との共重合体(c)
(8) (a群) メタクリル酸−n−ブチル、スチレン、メタクリル酸と、(b群) メタクリル酸とエチレンオキサイドのエステル化物との共重合体(c)
(9) (a群) メタクリル酸エチル、スチレン、マレイン酸と、(b群) メタクリル酸とプロピレンオキサイドのエステル化物との共重合体(c)
(10)(a群) メタクリル酸イソプロピル、スチレン、メタクリル酸と、(b群) メタクリル酸とエチレンオキサイドのエステル化物との共重合体
このようにして得られた試験片について、プレス成形性、アルカリ脱膜性、アルカリ脱膜後の溶接性、アルカリ脱膜後の耐食性、アルカリ脱膜・溶接後の溶接部の耐食性、大気中での塗膜面剥離性および塗料安定性を調査した。
得られた結果を表4に併記する。
なお、各特性の評価方法は、実施例1の場合と同じである。
Figure 2008248076
Figure 2008248076
表4に示したとおり、本発明に従う潤滑塗料組成物を、ステンレス鋼板の表面に塗布することにより、耐型かじり性、耐パウダリング性を含むプレス成形性をはじめとして、アルカリ脱膜性、アルカリ脱膜後の溶接性および耐食性、アルカリ脱膜・溶接後の溶接部の耐食性および大気中での塗膜面剥離性、さらには塗料安定性が格段に改善されることが分かる。

Claims (5)

  1. アクリル系樹脂および中和剤を含有する塗料組成物において、該アクリル系樹脂が、メタクリル酸とアルコールとからなるメタクリル酸エステル、スチレンおよびカルボキシル基を有する単量体との共重合体(a)と、エーテル結合を有する重合性化合物の重合体(b)を、該共重合体(a)と該重合体(b)の割合が質量比で85:15〜50:50を満足する範囲で含有すると共に、潤滑剤として融点が60℃以上の有機固形ワックスを含有することを特徴とするステンレス冷延鋼板用潤滑塗料組成物。
  2. アクリル系樹脂および中和剤を含有する塗料組成物において、該アクリル系樹脂が、メタクリル酸とアルコールとからなるメタクリル酸エステル、スチレン、カルボキシル基を有する単量体およびエーテル結合を有する重合性化合物の重合体(b)を、該重合体(b)以外の成分と該重合体(b)の割合が質量比で85:15〜50:50を満足する範囲で重合させた共重合体(c)を含有すると共に、潤滑剤として融点が60℃以上の有機固形ワックスを含有することを特徴とするステンレス冷延鋼板用潤滑塗料組成物。
  3. 請求項1または2において、前記重合体(b)のベースとなるエーテル結合を有する重合性化合物が、カルボキシル基を有する単量体:1molに対して5〜40molのアルキレンオキサイドからなることを特徴とするステンレス冷延鋼板用潤滑塗料組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかにおいて、前記有機固形ワックス中に占める燐酸系無機塩の割合を、アクリル系樹脂総量に対して0.1質量%以下に抑制したことを特徴とするステンレス冷延鋼板用潤滑塗料組成物。
  5. ステンレス冷延鋼板の表面に、請求項1〜4のいずれかに記載のステンレス冷延鋼板用潤滑塗料組成物を塗布、乾燥して得た潤滑塗装皮膜をそなえることを特徴とする加工性に優れたステンレス冷延鋼板。
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