JP2012187607A - 熱交換器用アルミニウムフィン材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】熱交換器用アルミニウムフィン材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるフィン材本体13の外面に、水溶性樹脂からなり、分子量が5000以上、20万以下で、針入度が10以下の潤滑層15が形成されてなることを特徴とする。潤滑層15は水溶性ポリエーテルからなることが好ましい。
【選択図】図3
Description
この熱交換器用プレコートフィンは、通常、フィンの表面で結露した水滴がフィンの隙間を塞いで通風抵抗の増加をもたらし、熱交換効率が低下することを防止する必要があるので、上述の如く親水性皮膜が設けられている。
また、上述の無機系耐食皮膜に代えて、有機高分子樹脂からなる下地皮膜を形成した後、前記した水ガラス系の親水性皮膜を形成するタイプの皮膜構造を備えた熱交換器用フィンが知られている。(特許文献1、2参照)
即ち、従来のプレコートフィンにあっては、上述の結露の問題を解消した上で加工用金型の摩耗を少なくできる構造が望まれている。
また、熱交換器用のプレコートフィンとして、多価アルコールを主成分として含む耐食性皮膜と、親水性皮膜とがこの順で形成され、親水皮膜形成後に水洗または酸洗処理が施され、耐食性と親水性に優れた皮膜構造を有するものが知られている。(特許文献3参照)
ところが、プレコートフィン材の表面に潤滑層が存在し、金型を用いてフィン材をプレス加工するということは、加工中の型に対し潤滑層が擦り付けられることでもあるので、潤滑層が滑り易いという性質だけではなく、潤滑層を構成する潤滑剤が金型に転写しやすい成分であった場合、プレス加工を繰り返すうちに、潤滑剤が徐々に金型側に堆積し、潤滑剤過多となる傾向がある。この結果、フィン材が金型内で更に滑りやすくなり、プレス加工時にフィン材の送りピッチが乱れるおそれがある。プレス加工時の送りピッチが乱れると、フィン材各部のピッチや形状が乱れるのでフィン材の成型精度が低下する結果、フィン材の挿通孔に冷媒循環用の銅管などの伝熱管を差し込み、熱交換器として組み付ける場合、伝熱管を挿入することが困難になるなどの問題を生じるおそれがある。
本発明は、上述の背景に鑑みなされたもので、外面に潤滑層が形成された構造であって、プレス加工を行って目的の形状に加工しても金型に転写し難い潤滑層を備え、過潤滑を生じないので成型精度を高めることができる熱交換器用アルミニウムフィン材の提供を目的とする。
本発明の熱交換器用アルミニウムフィン材は、前記潤滑剤が水溶性ポリエーテルからなることを特徴とする。
本発明の熱交換器用アルミニウムフィン材は、前記フィン材本体の外面に親水性皮膜が形成され、その上に前記潤滑剤が塗布されたことを特徴とする。
図1は、本発明に係るアルミニウムフィン材からなるアルミニウムフィンの一例を示す斜視図、図2は同アルミニウムフィンを複数備えた熱交換器の一例を示す斜視図、図3は同アルミニウムフィン材の部分断面図である。
本実施形態のアルミニウムフィン10は細長い短冊形状をなしており、銅製の伝熱管を通すためのラッパ状のフレア11が、長さ方向に単列、或いは複数列で所定の間隔に配されている。また、アルミニウムフィン10の表面には、伝熱性能の向上を目的にスリット12が必要箇所設けられている。
図1に示すアルミニウムフィン10は、一例として図3に示すように、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるフィン材本体13の両面に親水性皮膜14と潤滑層15とがこの順に形成されたフィン材16を用意し、このフィン材16に金型を用いたプレス加工を施し、フレア11やスリット12などをプレス成型して得られる。
図2に示す熱交換器20は、図1に示すアルミニウムフィン10と、複数の伝熱管30とを備えたものである。アルミニウムフィン10は、一定の間隔で平行に並べられており、複数のアルミニウムフィン10の相互の間隙を空気が流動するようになっている。伝熱管30は、複数整列されたアルミニウムフィン10のフレア11を貫通するように設けられており、その内部を冷媒が流動するようになっている。
図2に示す熱交換器20は、図1に示すアルミニウムフィン10を複数備えているので、アルミニウムフィン10の表面(親水性皮膜14の表面あるいは潤滑層15の表面)に付着した水が容易に濡れ広がって流れ落ち、水滴が発生し難い。このため、アルミニウムフィン10の隣合う壁面同士の間隙に、水のブリッジが形成されるのが抑えられ、空気の通風抵抗を小さく抑えることができる。そのため、長期にわたって使用した場合であっても熱交換能力が低下しにくい熱交換器を提供できるものとなる。
親水性皮膜14の一例として、水酸基、カルボキシル基、エステル基、エーテル基のうち、1種又は2種以上などの親水性官能基を有する樹脂を例示することができる。より具体的には、ポリアクリル酸を主成分としたアクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂などを例示することができるがこれらに限るものではない。
また、潤滑層15を構成する潤滑剤の分子量が30万であるポリエチレンオキサイド(PEO)を用いて潤滑層を形成すると、摩擦係数を抑えることができ、滑り過ぎない表面を得ることができる。しかし、量産塗装時の設備として一般的なロールコーターによって潤滑剤の塗装を行うと、分子量が大きすぎる影響で糸引きが発生し、潤滑剤の塗布が困難となり易いが、分子量20万以下の潤滑剤ではこのような問題は生じない。この面から鑑み、潤滑剤の分子量の上限を20万とすることが好ましい。さらに好ましい潤滑剤の分子量の上限は15万以下である。
また、潤滑剤は水溶性である必要があり、水溶性でないと、親水性皮膜14の親水性に悪影響を及ぼし、接触角が大きくなって親水性が低下してしまう。接触角が大きくなると、複数配列されているフィンの隙間を水滴が閉じることになり、熱交換器とした場合の通風抵抗が大きくなり、熱交換効率が低下する。
針入度が10を超えて大きくなると、潤滑層15が柔らかくなり過ぎる結果、潤滑層を構成する潤滑剤が金型に転写する量が増加し、フィン材が金型において滑り過ぎる結果、プレス加工するために金型に送るアルミニウム材の送り精度がばらつく結果と、金型においてアルミニウム材が滑る結果として、プレス加工不良となり易く、フィン材によって形が不揃いになるおそれがある。
即ち、金型に対しフィン材16が水平移動しながら送り込まれている状態において、フィン材16の上下のぶれを抑えてフィン材16を金型に安定状態で送り込もうとする場合、フィン材16の上面を板抑え部材18が押さえ付ける構成を採用する場合がある。ここで、板抑え部材18の下をフィン材16が移動すると、潤滑剤15の表面の一部が板抑え部材18の底面側に一部転写されるが、ここで本願請求項1に記載の構造を備えたフィン材であるならば、潤滑剤15の表面側の一部分のみを板抑え部材18の底面側に図5の符号15aで示す程度薄く転写させる程度に抑えることができ、過剰な量の潤滑剤15を板抑え部材18側に堆積させることがない。
このため、フィン材16を送る場合に板押さえ部材18が抑えている部位において過潤滑が生じないので、フィン材16を規定量正確に金型側に送ることができ、金型において精密なプレス加工ができる効果がある。
JIS規定A1050合金のアルミニウムからなる厚さ0.10mmのアルミニウムフィン材に対し、リン酸クロメート処理を施した後、アクリル樹脂からなる親水性塗膜を塗布量1g/m2で塗布形成し、この親水性塗膜を220℃で焼き付けして親水性塗膜とした後、この親水性塗膜付きのアルミニウムフィン材を用いて以下の各種の試験を行った。
表1に示す種類の潤滑剤を用いて10%水溶液を作成し、この水溶液にアルミニウムフィン材を浸漬し、水溶液から引き上げた際、引き上げた状態から潤滑剤の糸引きが発生し、その糸引き部分が30mm以上延びるか、糸引き状態がフィン材から水溶液まで繋がるものは糸引きが生じ易いものと判断し、塗装性試験において不合格とした。(表1の糸引き性の欄に×印で示している。)
<金型転写性試験:バウデン動摩擦係数測定>
前記親水性皮膜を備えたアルミニウムフィン材の上に表1に示す各潤滑層を塗布量0.1g/m2)試験片を用いて金型転写性試験を行った。摩擦係数測定装置の接触子の鋼球にキムタオル(日本製紙クレシア株式会社、商品名)を被せ、潤滑剤表面を擦り付ける試験を行った。キムタオルの表面には潤滑剤が転写されることになる。潤滑剤が塗布されていないアルミニウムフィン材の表面に前記潤滑層を擦った後のキムタオルを被せた接触子で摩擦係数を測定し、潤滑剤の影響で摩擦係数が小さくなるか、否かを評価した。潤滑剤の転写がない場合に計測した摩擦係数に対し、低下率%で評価した。
10%水溶性アクリル樹脂をリン酸クロメート処理したアルミニウムフィン材に塗布し(約1g/cm2)、その上に上述の各潤滑剤3%水溶液を用い、バーコーターにて約0.1g/m2の皮膜を塗装し、水滴接触角を評価した。
<針入度>
JIS K2335に規定されている如く、潤滑剤を一端溶かして固めたものに重さ100gの針を置き、5秒放置し、針が5秒後に刺さっている長さ(mm)を10倍して求めた。
以上の結果を以下の表1に示す。表1には、用いた潤滑剤成分とその分子量、各分子量表記に対応した潤滑剤の商品名、製造社名を併記するとともに、針入度の計測結果、糸引き性試験結果、金型転写率測定結果、接触角測定結果を示す。
表1に示す結果から、潤滑剤の分子量について、5000以上、20万以下の範囲が好ましいことが判明した。また、分子量6000〜15万の範囲で全ての特性に優れることを実証できた。更に、分子量6万〜15万の範囲で針入度が特に低い場合、転写率の面で特に有利であり、かつ、接触角においても低い値を維持し、より優れていることがわかる。
また、ポリビニルアルコールの潤滑剤では接触角が上昇した。
以上のことから水溶性樹脂からなる潤滑剤であって、分子量が5000以上、20万以下であり、針入度10以下の潤滑剤であれば目的を達成できることが判明した。
Claims (3)
- アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるフィン材本体の外面に、水溶性樹脂からなり、分子量が5000以上、20万以下で、針入度が10以下の潤滑層が形成されてなることを特徴とする熱交換器用アルミニウムフィン材。
- 前記潤滑層が水溶性ポリエーテルからなることを特徴とする請求項1記載の熱交換器用アルミニウムフィン材。
- 前記フィン材本体の外面に親水性皮膜が形成され、その上に前記潤滑層が形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の熱交換器用アルミニウムフィン材。
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