JP2010190003A5 - - Google Patents
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Description
従来から、屋根の袖部を納める方法として種々のものが知られている。例として、特許文献1に記載されている図10のように、けらばの上部及び側部を覆うように葺設される袖瓦は、垂れの下端側に下方を向いた段差面を垂れの全長に亘って設けられている。さらにこの段差面は、内隅と外隅が鋭角となるような切り欠きが設けられている。よって、垂れに降りかかった雨水は、段差面に入り込まず外隅で落下し、外隅と破風板の間には少なくとも垂れの肉厚分の間隔が確保され、強風時でなければ雨水は破風板に付着することはない。
なお、特許文献1発明とは別に、袖瓦本体に雨垂れ防止機能を備えた袖瓦として特許文献2記載の発明が知られている。この特許文献2に記載されている図11によると、(特許文献2記載の)袖瓦は、本体部と本体部から略直角に垂下される垂下部とからなる縦断面が略逆L字をなし、垂下部の外側下端部に設けた細桟状部材が1段上位に葺設される袖瓦の垂下部から落下してゆく雨水を受け止める構造をしている。これにより、垂下部に集水された雨水を雨垂れとして落下させることがなく、雨垂れ音の抑止により住環境の向上が可能になる効果を発揮する。
さらに、側面部に形成された雨受け部は、開口端から底部に向かって下向きの角度が付いている、もしくは水平となっているという手段を採用することにより、任意の袖瓦の側面部を流下してきた雨水は、雨受け部より外側へ溢れさせることなく切り欠き溝内に留めておくことができる。
そのうえ、頭見付側雨受け部は、下位袖瓦の切り欠き溝に向かって下向きの角度が付いている、もしくは水平となっているという手段を採用することにより、任意の袖瓦の雨受け部から流下してきた雨水を、頭見付側雨受け部に滑らかに流下させることができる。
図1から図9を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について説明する。本発明における袖瓦1とは、屋根の切妻など住居本体部よりも張り出した場所で、一般的にけらばや袖部などと呼ばれる箇所に葺設される役物瓦であり、特に指定しない限りけらばの任意の位置に葺設されるものをいう。上面部2及び側面部3は、右側の袖部に葺設した袖瓦1を構成する部分であって、上面部2はけらばの上面を、側面部3はけらばの側面を覆い被せる役割を有する。本発明は兼用可能な袖瓦であり、左側の袖部に葺設された袖瓦の場合は、図中や上述又は以下に示した上面部2と側面部3とは入れ替わる(逆になる)部位である。頭見付部4は、袖瓦1の葺設状態における最も水下側の面であり、尻端部5は袖瓦1の長さ方向に対して頭見付部4と反対に位置し、葺設状態における最も水上側の面である。なお、葺設状態における袖瓦の水下側を単に頭側、同水上側を単に尻側ともいう。突起6は、側面部3の内側に突設され、後述する切り欠き溝10と互いにはまり合う部位である。このはまり合いにより、水上側より流下した雨水は確実に切り欠き溝に呼び込める。傾斜面7は、上面部2及び側面部3に設けた長さ方向に長い切り欠き溝10の最も尻端部5寄りに設けてあって、風雨時等に雨水が葺設した袖瓦1同士の隙間から袖瓦1の内側まで入り込むことを防止する部位である。端面8は、上面部2及び側面部3の幅方向の最も端であって、例えば右の袖部に葺設された袖瓦1の頭側を正面としたときに、最も左又は下となる面である。切り欠き溝10は、上面部2又は側面部3の端面8寄りに形成され、尻端部5付近から長さ方向に長く延び、頭見付部4の最も内側まで連続している部位で、上面部2や側面部3、頭見付部4に対し1段引っ込んだ略樋状の部位である。雨受け部11は、略樋状の切り欠き溝10のうち、端面8寄りの面状の部位であって、降雨時等に側面部3が受けた雨水が下方に流下したときに前記雨水を端面まで流下させることなく受け止める部位をいう。頭見付側雨受け部12とは、頭見付部4に形成され、側面部3に設けられた切り欠き溝10の雨受け部11と同様の機能を有する部位である。開口端13は、雨受け部11の最も外側であって、雨受け部と同様長さ方向に長く延び、頭見付側雨受け部12の最内側まで連続しているものをいい、底部14は、雨受け部11の最も内側であって、開口端と13と同様に長く延び、頭見付側雨受け部12の最内側まで連続している部位をいう。
袖瓦1の基本的構造は、図1〜図4に示すように、上面部2と側面部3が概ねL字又は逆L字となるような、従来から存在する袖部に葺設される袖瓦と同様である。野地板又は桟瓦(図示なし)の上部に葺設される上面部と、その上面部の一側方から略直角に垂下される側面部とからなり、雨仕舞のため袖瓦1の尻側と上位袖瓦1Bの頭側は重なり合っている。また、上面部2と側面部3は、それぞれ頭見付4と尻端部5が平行となる概ね台形状をなし、図5に示すように頭見付部幅H1は尻端部幅H2に対し袖瓦1の頭見付の厚さH3分だけ高くなっている。この頭見付厚さが好ましい例であり、袖瓦1を複数段葺設した状態において、端面8は上位袖瓦1Bの端面8B又は下位袖瓦1Aの端面8Aと一直線をなすように揃うので、全体としてシャープな外観となり、意匠的に見栄えも良い。また、図6に示すように、右側の袖部に葺設された袖瓦は図中の二点鎖線を軸に線対称となっているため、図6の状態より幅方向に90度左回転させるだけで、左側の袖部に葺設できる状態となる。
本発明の袖瓦1は、図8に示すように上下位に複数段葺設した状態において、袖瓦1の切り欠き溝10の尻側と1段上位に葺設される袖瓦1Bの突起6Bの頭側が葺き足調整可能な状態で重なり合う構造となっている。複数段葺設した袖瓦において、袖瓦1の側面部3に設けた略樋状の切り欠き溝10と、頭見付部4の内側に突起6を設け、切り欠き溝10に上位袖瓦1Bの突起6Bがはまり込むことにより、袖瓦の重なり部分における樋状の隙間は生じない。さらに、切り欠き溝10と突起6がはまり込むことにより、上位袖瓦1Bの雨受け部11Bより流れてきた雨水を頭見付側雨受け部12Bを経て袖瓦1の雨受け部11へ呼び込むことができる。
上記のように袖瓦1の重なり部分の隙間は、図4や図8に示すように、切り欠き溝10と上位袖瓦1Bの突起6Bとのはまり込みにより小さくなるが、特に上面部2においては、けらばに対し正面方向より風雨を伴った場合、袖瓦1に設けた切り欠き溝10に降りかかった雨水は、風の影響により袖瓦1の重なり部分へ入り込む不安がある。この不安を払拭させるため、切り欠き溝10の尻端部5寄りに、水返しとして傾斜面7を設けることで、雨水が切り欠き溝10と突起6Bとの間の隙間より袖瓦1の内側まで浸入したとしても、けらば内部まで浸水させることがなく、ひいては屋内への漏水を招くことはない。
本発明の雨受け部11は、図7に示すように袖瓦1の葺設状態において尻側の部位よりも頭側の部位が低位であることが望ましい。これにより、側面部3の任意の箇所に降りかかった雨水が切り欠き溝10を流下し、雨受け部11で流下を抑制されたとき、前記雨水は雨受け部11上に留まることなく、頭側へ流下する方向を変える。本発明の雨受け部11、袖瓦1の葺設状態において頭側が尻側よりも低位になっていればよく、袖瓦1を水平状態としたときに、雨受け部11の尻側が頭側より低位になっていてもよい。
さらに、雨受け部11は地面に対して水平、もしくは開口端13から底部14に向かって下向きの角度が付いていることが望ましい。これにより、側面部3に降りかかった雨水が側面部3を流下し雨受け部11に達したとき、前記雨水は、雨受け部11よりも側面部3の外側へ溢れさせることなく雨受け部11で留めておくことができる。
また、頭見付側雨受け部12は、図9に示すように、雨受け部11側から下位袖瓦1Aの雨受け部11Aに向かって下向きの角度が付いていることが望ましい。これにより、軒先に近い袖瓦など雨受け部11を流下する雨水は、その流量が増加したとしても雨受け部11から頭見付側雨受け部12へ回りこみ易くすることができる。
Claims (6)
- けらばを有する屋根の左右の袖部に葺設できる上面部(2)と、その上面部から葺設状態において略直角に垂下する側面部(3)とからなり、横断面が略逆L字又は略L字形であって、左右の袖部にそれぞれ葺設された袖瓦の断面が、前記上面部と前記側面部との成す角の二等分線を軸に略線対称となる袖瓦(1)において、前記上面部と前記側面部に設けた長さ方向に延びる切り欠き溝(10)が頭見付部(4)まで連続していることを特徴とする袖瓦。
- 上下位の複数段に葺設される袖瓦において、上位袖瓦の側面部(3B)に形成した切り欠き溝(10)が雨水を受けたとき、その雨水が前記切り欠き溝から頭見付部(4B)に形成した頭見付側雨受け部(12B)を介して、袖瓦(1)の側面部(3)に形成された切り欠き溝(10)に流下するように、突起(6)が切り欠き溝(10)にはまり込み、上位袖瓦の側面部(3B)と上位袖瓦の頭見付部(4B)及び袖瓦の側面部(3)の各々の切り欠き溝(10B,10)を連接することを特徴とする袖瓦。
- 屋根に袖瓦が葺設された状態において、雨受け部(11)の頭見付部(4)寄りの部位が、尻寄りの部位より低位になっている請求項1又は請求項2記載の袖瓦。
- 屋根に袖瓦が葺設された状態において、頭見付側雨受け部(12)は、下位袖瓦(A)の雨受け部(11A)と同一高さもしくは下位袖瓦の雨受け部よりも高い位置に位置している請求項1または2記載の袖瓦。
- 雨受け部(11)は、開口端(13)から底部(14)へ向かって下向きの角度が付いている請求項1又は請求項2記載の袖瓦。
- 頭見付側雨受け部(12)は、側面部(3)から下位袖瓦(A)の側面部(3A)に向かって下向きの角度が付いている、もしくは水平となっている請求項1または2記載の袖瓦。
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