JP2010176987A - 双極型二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】電池容量の低減を防止できる双極型二次電池を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の双極型二次電池は、双極型電極と、支持塩および溶媒を含む電解質層と、が積層されてなる発電要素を有する。双極型電極は、樹脂を基材とする導電性を有する樹脂層を含む集電体、集電体の一方の面に形成された正極活物質層、および集電体の他方の面に形成された負極活物質層を有する。そして、集電体に含まれるいずれか1つの樹脂層の基材を形成する樹脂の溶解度パラメータ(SP)と、溶媒の溶解度パラメータ(SP)との差の絶対値が、1.9以上である。
【選択図】なし

Description

本発明は、双極型二次電池、ならびに該電池を用いた組電池および車両に関する。特に、本発明は、電池容量の低減を防ぐことのできる双極型二次電池、ならびに該電池を用いた組電池および車両に関する。
近年、環境や燃費の観点から、ハイブリッド自動車(HEV)や電気自動車(EV)、さらには燃料電池自動車が製造・販売され、新たな開発が続けられている。これらのいわゆる電動車両においては、放電・充電ができる電源装置の活用が不可欠である。この電源装置としては、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池や、電気二重層キャパシタ等が利用される。特に、リチウムイオン二次電池はそのエネルギー密度の高さや繰り返し充放電に対する耐久性の高さから、電動車両に好適と考えられ、各種の開発が鋭意進められている。ただし、上記したような各種自動車のモータ駆動用電源に適用するためには、大出力を確保するために、複数の二次電池を直列に接続して用いる必要がある。
しかしながら、接続部を介して電池を接続した場合、接続部の電気抵抗によって出力が低下してしまう。また、接続部を有する電池は空間的にも不利益を有する。即ち、接続部によって、電池の出力密度やエネルギー密度の低下がもたらされる。
この問題を解決するものとして、双極型リチウムイオン二次電池等の双極型二次電池が開発されている。双極型二次電池は、集電体の一方の面に正極活物質層が形成され、他方の面に負極活物質層が形成された双極型電極が、電解質層やセパレータを介して複数積層された発電要素を有する。
このような双極型二次電池に用いる集電体は、電池の単位質量当たりの出力密度向上の観点から、より軽量な材料からなることが望ましい。そこで、近年、従来の金属箔に代わって導電性フィラーが添加された樹脂または導電性高分子材料から構成される集電体が提案されている。例えば、特許文献1では、樹脂に導電性フィラーとして金属粉が混合された導電性を有する樹脂からなる集電体が開示されている。
特開昭61−285664号公報
しかしながら、上述のような樹脂を含む集電体を双極型二次電池に使用した場合、電解液に含まれる溶媒によって集電体中の樹脂が膨潤する。すなわち、樹脂中に電解液の一部が保持されたままとなりうる。このため、電極間において、リチウムイオンの移動媒体となる電解液が不足してしまい、電池容量が低減するという問題点を有していた。
したがって、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電池容量の低減を防止することができる双極型二次電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、集電体に含まれる樹脂と、電解液に含まれる溶媒とをある特定の組み合わせとすることにより、電極間の電解液不足が防止できることを見出した。さらに、樹脂と溶媒との組み合わせについて詳細に検討した結果、樹脂の溶解度パラメータと、溶媒の溶解度パラメータとの差を特定の範囲とすることによって、電解液の集電体への浸透が効果的に抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の双極型二次電池は、双極型電極と、支持塩および溶媒を含む電解質層と、が積層されてなる発電要素を有する。双極型電極は、樹脂を基材とする導電性を有する樹脂層を含む集電体、集電体の一方の面に形成された正極活物質層、および集電体の他方の面に形成された負極活物質層を有する。そして、集電体に含まれるいずれか1つの樹脂層の基材を形成する樹脂の溶解度パラメータ(SP)と、溶媒の溶解度パラメータ(SP)との差の絶対値が、1.9以上である。
本発明によれば、電解液の集電体への浸透が効果的に抑制されうる。これにより、電極間に電解液が十分に保持されるため、電池容量の低減を防止することができる。
本発明の一実施形態である双極型二次電池を模式的に表した断面概略図である。 本発明に係る集電体の好ましい実施形態を表した断面外略図である。 本発明の一実施形態である組電池を模式的に表した外観図であって、図3Aは組電池の平面図であり、図3Bは組電池の正面図であり、図3Cは組電池の側面図である。 本発明の双極型二次電池または組電池を搭載した車両の概念図である。
以下、本発明の好ましい形態を説明する。本形態は、支持塩および溶媒を含む電解質層と、が積層されてなる発電要素を有する双極型電極に関する。双極型電極は、樹脂を基材とする導電性を有する樹脂層を含む集電体、集電体の一方の面に形成された正極活物質層、および集電体の他方の面に形成された負極活物質層を有する。そして、集電体に含まれるいずれか1つの樹脂層の基材を形成する樹脂の溶解度パラメータ(SP)と、溶媒の溶解度パラメータ(SP)との差の絶対値が、1.9以上である。
以下、図面を参照しながら、本形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
<双極型二次電池>
図1は、本発明の一実施形態である双極型二次電池の全体構造を模式的に表わした断面図である。図1に示す本実施形態の双極型二次電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、電池外装材であるラミネートフィルム29の内部に封止された構造を有する。
図1に示すように、本実施形態の双極型二次電池10の発電要素21は、集電体11の一方の面に電気的に結合した正極活物質層13が形成され、集電体11の反対側の面に電気的に結合した負極活物質層15が形成された複数の双極型電極23を有する。各双極型電極23は、電解質層17を介して積層されて発電要素21を形成する。なお、電解質層17は、基材としてのセパレータの面方向中央部に電解質が保持されてなる構成を有する。この際、一の双極型電極23の正極活物質層13と前記一の双極型電極23に隣接する他の双極型電極23の負極活物質層15とが電解質層17を介して向き合うように、各双極型電極23および電解質層17が交互に積層されている。すなわち、一の双極型電極23の正極活物質層13と前記一の双極型電極23に隣接する他の双極型電極23の負極活物質層15との間に電解質層17が挟まれて配置されている。
隣接する正極活物質層13、電解質層17、および負極活物質層15は、一つの単電池層19を構成する。したがって、双極型二次電池10は、単電池層19が積層されてなる構成を有するともいえる。また、電解質層17からの電解液の漏れによる液絡を防止する目的で、単電池層19の外周部にはシール部(絶縁層)31が配置されている。なお、発電要素21の最外層に位置する正極側の最外層集電体11aには、片面のみに正極活物質層13が形成されている。また、発電要素21の最外層に位置する負極側の最外層集電体11bには、片面のみに負極活物質層15が形成されている。ただし、正極側の最外層集電体11aの両面に正極活物質層13が形成されてもよい。同様に、負極側の最外層集電体11bの両面に負極活物質層15が形成されてもよい。
さらに、図1に示す双極型二次電池10では、正極側の最外層集電体11aに隣接するように正極集電板25が配置され、これが延長されて電池外装材であるラミネートフィルム29から導出している。一方、負極側の最外層集電体11bに隣接するように負極集電板27が配置され、同様にこれが延長されて電池の外装であるラミネートフィルム29から導出している。
図1に示す双極型二次電池10においては、通常、各単電池層19の周囲にシール部31が設けられる。このシール部31は、電池内で隣り合う集電体11どうしが接触したり、発電要素21における単電池層19の端部の僅かな不揃いなどに起因する短絡が起こったりするのを防止する目的で設けられる。かようなシール部31の設置により、長期間の信頼性および安全性が確保され、高品質の双極型二次電池10が提供されうる。
なお、単電池層19の積層回数は、所望する電圧に応じて調節する。また、双極型二次電池10では、電池の厚みを極力薄くしても十分な出力が確保できれば、単電池層19の積層回数を少なくしてもよい。双極型二次電池10でも、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、発電要素21を電池外装材であるラミネートフィルム29に減圧封入し、正極集電板25および負極集電板27をラミネートフィルム29の外部に取り出した構造とするのがよい。以下、本形態の双極型二次電池の主な構成要素について説明する。
[双極型電極]
双極型電極は、集電体と、該集電体の表面に形成されてなる活物質層とを有する。より詳しくは、一つの集電体の一方の面に正極活物質層が形成され、他方の面に負極活物質層が形成される。活物質層は正極活物質または負極活物質を含み、必要に応じてその他の添加剤をさらに含む。
(集電体)
集電体は、正極活物質層と接する一方の面から、負極活物質層と接する他方の面へと電子の移動を媒介する機能を有する。本形態に係る集電体は、少なくとも1つの導電性を有する樹脂層を必須に含み、必要に応じてその他の層をさらに含みうる。
導電性を有する樹脂層は、本形態の集電体に必須の構成要素であり、電子移動媒体としての機能を有することは勿論のこと、集電体の軽量化に寄与しうる。該樹脂層は、樹脂からなる基材と、必要に応じて導電性フィラー等のその他の部材を含みうる。
基材に使用される樹脂は、特に制限はなく、従来公知の非導電性高分子材料または導電性高分子材料を制限なく使用することができる。好ましい非導電性高分子材料としては、例えば、ポリエチレン(PE;高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE))、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、およびポリスチレン(PS)などが挙げられる。かような非導電性高分子材料は、優れた耐電位性または耐溶媒性を有しうる。また、好ましい導電性高分子材料としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアクリロニトリル、およびポリオキサジアゾールなどが挙げられる。かような導電性高分子材料は、導電性フィラーを添加しなくても十分な導電性を有するため、製造工程の容易化または集電体の軽量化の点において有利である。これらの非導電性高分子材料または導電性高分子材料は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて混合物として使用しても構わない。
基材には、樹脂層の導電性を確保するために、必要に応じて導電性フィラーが添加されうる。特に、樹脂が非導電性高分子のみからなる場合は、樹脂に導電性を付与するために必然的に導電性フィラーが必須となる。導電性フィラーは、導電性を有する物質であれば特に制限なく用いることができる。例えば、導電性、耐電位性、またはリチウムイオン遮断性に優れた材料として、金属および導電性カーボンなどが挙げられる。
金属としては、特に制限はないが、Ni、Ti、Al、Cu、Pt、Fe、Cr、Sn、Zn、In、Sb、およびKからなる群から選択される少なくとも1種の金属もしくはこれらの金属を含む合金または金属酸化物を含むことが好ましい。これらの金属は、集電体表面に形成される正極または負極の電位に対して耐性を有する。例えば、Alは正極電位に対して、Ni、Cuは負極電位に対して、TiおよびPtは両極の電位に対して耐性を有する。これらのうち、Ni、Ti、Al、Cu、Pt、Fe、およびCrからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む合金であることがより好ましい。
合金としては、具体的には、ステンレス鋼(SUS)、インコネル(登録商標)、ハステロイ(登録商標)、およびその他Fe−Cr系合金、Ni−Cr合金等が挙げられる。これらの合金を用いることにより、より高い耐電位性が得られうる。
導電性カーボンとしては、特に制限はないが、アセチレンブラック、バルカン、ブラックパール、カーボンナノファイバー、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、およびフラーレンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの導電性カーボンは、電位窓が非常に広く、正極電位および負極電位の双方に対して幅広い範囲で安定であり、さらに、優れた導電性を有する。なかでも、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、ケッチェンブラック、カーボンナノバルーン、およびフラーレンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。これらの導電性カーボンは中空構造を有するので、質量あたりの表面積が大きく、集電体をより一層軽量化することができる。なお、これらの金属および導電性カーボンなどの導電性フィラーは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
導電性フィラーの形状は、特に制限はなく、粒状、繊維状、板状、塊状、布状、およびメッシュ状などの公知の形状を適宜選択することができる。例えば、樹脂に対して広範囲に亘って導電性を付与したい場合は、粒状の導電性フィラーを使用することが好ましい。一方、樹脂において特定方向への導電性をより向上させたい場合は、繊維状等の形状に一定の方向性を有するような導電性フィラーを使用することが好ましい。
導電性フィラーの大きさは、特に制限はなく、樹脂層の大きさや厚さまたは導電性フィラーの形状によって、様々な大きさのフィラーを使用することができる。一例として、導電性フィラーが粒状の場合の平均粒子径は、樹脂層の成形を容易にする観点から、0.1〜10μm程度であることが好ましい。なお、本明細書中において、「粒子径」とは、導電性フィラーの輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。後述する活物質などの粒子径や平均粒子径も同様に定義することができる。
樹脂層に含まれる導電性フィラーの含有量も特に制限はない。特に、樹脂が導電性高分子材料を含み、十分な導電性が確保できる場合は、導電性フィラーを必ずしも添加する必要はない。しかしながら、樹脂が非導電性高分子材料のみからなる場合は、導電性を付与するために導電性フィラーの添加が必須となる。この際の導電性フィラーの含有量は、非導電性高分子材料の全質量に対して、好ましくは5〜35質量%であり、より好ましくは5〜25質量%であり、さらに好ましくは5〜15質量%である。かような量の導電性フィラーを樹脂に添加することにより、樹脂層の質量増加を抑制しつつ、非導電性高分子材料にも十分な導電性を付与することができる。
樹脂層中の導電性フィラーの分散の形態は特に制限はなく、基材である樹脂中に均一に分散されている形態であってもよいし、部分的に局在して分散されていても勿論よい。樹脂層全体に亘って均一に導電性を付与したい場合は、導電性フィラーは樹脂全体に均一に分散されていることが好ましい。
導電性を有する樹脂層の1層分の厚さは、1〜200μmであることが好ましく、10〜100μmであることがより好ましく、10〜50μmであることがさらに好ましい。樹脂層の厚さがかような範囲にあると、厚み方向の抵抗を充分低く抑えることができる。そのため集電体の導電性を確保した上で、軽量化による電池の出力密度を高めることができる。さらに、液絡低減による寿命特性向上や、耐振動性向上を図ることができる。
集電体の形態は、少なくとも1つの導電性を有する樹脂層を含むものであれば、特に制限はなく、様々な形態を取りうる。例えば、樹脂層の他に、必要に応じてその他の層を含む積層体であってもよい。樹脂層以外のその他の層としては、金属層または接着層などが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
集電体の好ましい形態の一例を図2に示す。図2において、例えば、(a)のように、1種の導電性を有する樹脂層1aが単独で集電体を形成してもよいし、(b)〜(i)のように、2種以上の導電性を有する樹脂層(1a、1b、1c)が積層された形態であってもよい。かように樹脂層を複数積層することによって、もしも各樹脂層で微小なクラックが生じた場合であっても、クラックの位置が一致しないため、液絡を防止することができる。また、(e)〜(i)のように、樹脂層以外にも、アルミニウム、ニッケル、もしくは銅などの金属、またはこれらの合金等を含む金属層2を有してもよい。かような金属層を含むことにより、樹脂層内のイオン透過による双極型電極内の正極活物質層と負極活物質層との間の液絡を防ぐことができ、寿命特性が向上した長期信頼性に優れた双極型二次電池を構築できる。なお、樹脂層と金属層とを積層する方法としては、樹脂層に金属蒸着する方法、金属箔上に樹脂を融着する方法などが挙げられる。また、(d)および(f)〜(i)のように集電体が2つ以上の樹脂層または金属層を積層してなる場合、層の境界面での接触抵抗を低減したり、接着面の剥離を防ぐ観点から、2つの層は接着層3を介して接着されてもよい。かような接着層に使用される材料としては、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタンなどを含む金属酸化物系の導電性ペースト;カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイトなどを含むカーボン系の導電性ペーストが好ましく使用される。
集電体の厚さは、軽量化により電池の出力密度を高める上では、薄い方が好ましい。双極型二次電池においては、双極型電極の正極活物質層と負極活物質層の間に存在する集電体は積層方向に水平な方向の電気抵抗が高くてもよいため、集電体の厚さを薄くすることが可能である。具体的には、集電体の厚さは、1〜200μmであることが好ましく、5〜150μmであることがより好ましく、10〜100μmであることがさらに好ましい。かような厚さを有することによって、出力特性に優れ、長期信頼性に優れた電池を構築できる。
(正極活物質層)
正極活物質層は正極活物質を含む。正極活物質は、放電時にイオンを吸蔵し、充電時にイオンを放出する組成を有する。好ましい一例としては、遷移金属とリチウムとの複合酸化物であるリチウム−遷移金属複合酸化物が挙げられる。具体的には、LiCoOなどのLi・Co系複合酸化物、LiNiOなどのLi・Ni系複合酸化物、スピネルLiMnなどのLi・Mn系複合酸化物、LiFeOなどのLi・Fe系複合酸化物およびこれらの遷移金属の一部を他の元素により置換したものなどが使用できる。これらリチウム−遷移金属複合酸化物は、反応性、サイクル特性に優れ、低コストな材料である。そのためこれらの材料を電極に用いることにより、出力特性に優れた電池を形成することが可能である。この他、前記正極活物質としては、LiFePOなどの遷移金属とリチウムのリン酸化合物や硫酸化合物;V、MnO、TiS、MoS、MoOなどの遷移金属酸化物や硫化物;PbO、AgO、NiOOHなど、を用いることもできる。上記正極活物質は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
正極活物質の平均粒子径は、特に制限されないが、正極活物質の高容量化、反応性、サイクル耐久性の観点からは、好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜20μmである。このような範囲であれば、二次電池は、高出力条件下での充放電時における電池の内部抵抗の増大が抑制され、充分な電流を取り出しうる。なお、正極活物質が2次粒子である場合には該2次粒子を構成する1次粒子の平均粒子径が10nm〜1μmの範囲であるのが望ましいといえるが、本発明では、必ずしも上記範囲に制限されるものではない。ただし、製造方法にもよるが、正極活物質が凝集、塊状などにより2次粒子化したものでなくても良いことはいうまでもない。かかる正極活物質の粒径および1次粒子の粒径は、レーザー回折法を用いて得られたメディアン径使用できる。なお、正極活物質の形状は、その種類や製造方法等によって取り得る形状が異なり、例えば、球状(粉末状)、板状、針状、柱状、角状などが挙げられるがこれらに限定されるものではなく、いずれの形状であれ問題なく使用できる。好ましくは、充放電特性などの電池特性を向上し得る最適の形状を適宜選択するのが望ましい。
(負極活物質層)
負極活物質層は負極活物質を含む。負極活物質は、放電時にイオンを放出し、充電時にイオンを吸蔵できる組成を有する。負極活物質は、リチウムを可逆的に吸蔵および放出できるものであれば特に制限されないが、負極活物質の例としては、SiやSnなどの金属、あるいはTiO、Ti、TiO、もしくはSiO、SiO、SnOなどの金属酸化物、Li4/3Ti5/3もしくはLiMnNなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物、Li−Pb系合金、Li−Al系合金、Li、または天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、活性炭、カーボンファイバー、コークス、ソフトカーボン、もしくはハードカーボンなどの炭素材料などが好ましく挙げられる。また、負極活物質は、リチウムと合金化する元素を含むことが好ましい。リチウムと合金化する元素を用いることにより、従来の炭素系材料に比べて高いエネルギー密度を有する高容量および優れた出力特性の電池を得ることが可能となる。上記負極活物質は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
上記のリチウムと合金化する元素としては、以下に制限されることはないが、具体的には、Si、Ge、Sn、Pb、Al、In、Zn、H、Ca、Sr、Ba、Ru、Rh、Ir、Pd、Pt、Ag、Au、Cd、Hg、Ga、Tl、C、N、Sb、Bi、O、S、Se、Te、Cl等が挙げられる。これらの中でも、容量およびエネルギー密度に優れた電池を構成できる観点から、炭素材料、ならびに/またはSi、Ge、Sn、Pb、Al、In、およびZnからなる群より選択される少なくとも1種以上の元素を含むことが好ましく、炭素材料、Si、またはSnの元素を含むことが特に好ましい。これらは1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用してもよい。
負極活物質の平均粒子径は、特に制限されないが、負極活物質の高容量化、反応性、サイクル耐久性の観点からは、好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜20μmである。このような範囲であれば、二次電池は、高出力条件下での充放電時における電池の内部抵抗の増大が抑制され、充分な電流を取り出しうる。なお、負極活物質が2次粒子である場合には該2次粒子を構成する1次粒子の平均粒子径が10nm〜1μmの範囲であるのが望ましいといえるが、本発明では、必ずしも上記範囲に制限されるものではない。ただし、製造方法にもよるが、負極活物質が凝集、塊状などにより2次粒子化したものでなくても良いことはいうまでもない。かかる負極活物質の粒径および1次粒子の粒径は、レーザー回折法を用いて得られたメディアン径使用できる。なお、負極活物質の形状は、その種類や製造方法等によって取り得る形状が異なり、例えば、球状(粉末状)、板状、針状、柱状、角状などが挙げられるがこれらに限定されるものではなく、いずれの形状であれ問題なく使用できる。好ましくは、充放電特性などの電池特性を向上し得る最適の形状を適宜選択するのが望ましい。
活物質層には、必要であれば、その他の物質が含まれてもよい。例えば、導電助剤、バインダ等が含まれうる。また、イオン伝導性ポリマーが含まれる場合には、前記ポリマーを重合させるための重合開始剤が含まれてもよい。
導電助剤とは、活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、グラファイト等のカーボン粉末や、気相成長炭素繊維(VGCF;登録商標)等の種々の炭素繊維、膨張黒鉛などが挙げられる。しかし、導電助剤がこれらに限定されないことはいうまでもない。
バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリイミド、PTFE、SBR、合成ゴム系バインダ等が挙げられる。しかし、バインダがこれらに限定されないことはいうまでもない。また、バインダとゲル電解質として用いるマトリックスポリマーとが同じ場合には、バインダを使用する必要はない。
活物質層に含まれる成分の配合比は、特に限定されない。配合比は、リチウムイオン二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。活物質層の厚さについても特に制限はなく、リチウムイオン二次電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、活物質層の厚さは、好ましくは10〜100μm程度であり、より好ましくは20〜50μmである。活物質層が10μm程度以上であれば、電池容量が充分に確保されうる。一方、活物質層が100μm程度以下であれば、電極深部(集電体側)にリチウムイオンが拡散しにくくなることに伴う内部抵抗の増大という問題の発生が抑制されうる。
集電体表面上への正極活物質層(または負極活物質層)の形成方法は、特に制限されず、公知の方法が同様にして使用できる。例えば、上記したように、正極活物質(または負極活物質)、ならびに必要であれば、イオン伝導性を高めるための電解質塩、電子伝導性を高めるための導電助剤、およびバインダを、適当な溶剤に分散、溶解などして、正極活物質スラリー(または負極活物質スラリー)を調製する。これを集電体上に塗布、乾燥して溶剤を除去した後、プレスすることによって、正極活物質層(または負極活物質層)が集電体上に形成される。この際、溶剤としては、特に制限されないが、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミド、シクロヘキサン、ヘキサンなどが用いられうる。バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を採用する場合には、NMPを溶媒として用いるとよい。
上記方法において、正極活物質スラリー(または負極活物質スラリー)を集電体上に塗布・乾燥した後、プレスする。この際、プレス条件を調節することにより、正極活物質層(または負極活物質層)の空隙率が制御されうる。
プレス処理の具体的な手段やプレス条件は特に制限されず、プレス処理後の正極活物質層(または負極活物質層)の空隙率が所望の値となるように、適宜調節されうる。プレス処理の具体的な形態としては、例えば、ホットプレス機やカレンダーロールプレス機などが挙げられる。また、プレス条件(温度、圧力など)も特に制限されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。
[電解質層]
電解質層は、電極間でリチウムイオンの移動する際の媒体としての機能を有する。本形態において、電解質層を構成する電解質は、電解液として溶媒を含むものであれば特に制限はなく、従来公知の液体電解質および高分子ゲル電解質を適宜採用することができる。
液体電解質は、溶媒に支持塩であるリチウム塩が溶解したものである。溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、プロピオン酸メチル(MP)、酢酸メチル(MA)、ギ酸メチル(MF)、4−メチルジオキソラン(4MeDOL)、ジオキソラン(DOL)、2−メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン(DME)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、およびγ−ブチロラクトン(GBL)などが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせた混合物として使用してもよい。
また、支持塩(リチウム塩)としては、特に制限はないが、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiTaF、LiSbF、LiAlCl、Li10Cl10、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF、LiSCN等の無機酸陰イオン塩、LiCFSO、Li(CFSON、LiBOB(リチウムビスオキサイドボレート)、LiBETI(リチウムビス(パーフルオロエチレンスルホニルイミド);Li(CSONとも記載)等の有機酸陰イオン塩などが挙げられる。これらの電解質塩は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
一方、高分子ゲル電解質は、リチウムイオン伝導性を有するマトリックスポリマーに、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。リチウムイオン伝導性を有するマトリックスポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシドを主鎖または側鎖に持つポリマー(PEO)、ポリプロピレンオキシドを主鎖または側鎖に持つポリマー(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリル酸エステル、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(PVdF−HFP)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ(メチルアクリレート)(PMA)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)などが挙げられる。また、上記のポリマー等の混合物、変成体、誘導体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体なども使用できる。これらのうち、PEO、PPOおよびそれらの共重合体、PVdF、PVdF−HFPを用いることが望ましい。かようなマトリックスポリマーには、リチウム塩等の電解質塩がよく溶解しうる。また、マトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発揮しうる。
なお、電解質層が液体電解質や高分子ゲル電解質から構成される場合には、電解質層にセパレータを用いてもよい。セパレータの具体的な形態としては、例えば、微孔性ポリエチレンフィルム、微孔性ポリプロピレンフィルム、微孔性エチレン−プロピレンコポリマーフィルムなどのポリオレフィン系樹脂、ならびにアラミド、ポリイミド、セルロースなどの多孔膜または不織布、これらの積層体などが挙げられる。これらは、電解質(電解液)との反応性を低く抑えることができるという効果を有する。他に、ポリオレフィン系樹脂不織布またはポリオレフィン系樹脂多孔膜を補強材層に用い、前記補強材層中にフッ化ビニリデン樹脂化合物を充填した複合樹脂膜なども挙げられる。
本形態の双極型二次電池は、集電体に含まれるいずれか1つの樹脂層の基材を形成する樹脂の溶解度パラメータ(SP)と、電解液に含まれる溶媒の溶解度パラメータ(SP)との差の絶対値を1.9以上とすることを特徴とする。溶解度パラメータの差の絶対値がかような範囲内にある樹脂と溶媒との組み合わせることによって、該溶媒を含む電解液が該樹脂を含む集電体に浸透するのを防ぐことができる。すなわち、電解液が電解質層から離脱することを防ぐことができ、電極間の電解液が不足するという従来の問題を解決することができる。
溶解度パラメータ(SP値)は、一般に、2成分系溶液または溶媒−溶質の溶解度の目安として使用されている。そして、2つの成分の溶解度パラメータ値の差が小さいほど、溶解度が大きくなることが経験的に知られている。なお、本明細書において、樹脂の溶解度パラメータ(SP)は、原子団寄与法(Van Kreveren法)を用いて得られた値を採用するものとする。また、溶媒の溶解度パラメータ(SP)はHansenの溶解度パラメータによる値を採用するものとする。
本形態における樹脂は、上述のように、非導電性高分子材料または導電性高分子材料を1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせた混合物とすることもできる。後者の2種以上の高分子材料を組み合わせた混合物とする際には、その混合形態は、以下の2つの形態がありうる。第1の混合形態は、2種以上の高分子材料が分子レベルで混合されている場合である。この場合における樹脂の溶解度パラメータ(SP)は、各高分子材料の溶解度パラメータに各含有割合(w/w)を乗じた値の総和、すなわち下記式により算出される値を採用する。
Figure 2010176987
上記式中、A(A、A・・・A)は各高分子材料の溶解度パラメータを表し、X(X、X・・・X)は樹脂全体に対する各高分子材料の含有割合(w/w)を表し、mは混合される単一高分子材料の種類数を表わす。
一方、第2の混合形態は、主成分である高分子材料中に、副成分である高分子材料が局在化(例えば、点在)している場合である。ここで、「主成分である」とは、樹脂全体に対して50質量%を超えて、好ましくは60質量%以上、含有されることを意味する。かような形態においては、樹脂の溶解度パラメータ(SP)は主成分である高分子材料の溶解度パラメータの値を採用するものとする。なお、「主成分である高分子材料」が、2種以上の高分子材料が分子レベルで混合されてなる場合は、第1の混合形態の定義から算出された値が「主成分である高分子材料」の溶解度パラメータとなる。そして、第2の混合形態の定義により、該溶解度パラメータの値が、樹脂の溶解度パラメータとなるのである。
本形態における溶媒は、上述のように、単一溶媒を1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせた混合物として使用してもよい。後者の2種以上の単一溶媒を組み合わせた混合物とする際の溶媒の溶解度パラメータ(SP)は、各単一溶媒の溶解度パラメータに各含有割合(w/w)を乗じた値の総和、下記式により算出される値を採用する。
Figure 2010176987
上記式中、B(B、B・・・B)は各単一溶媒の溶解度パラメータを表し、Y(Y、Y・・・Y)は溶媒全体に対する各単一溶媒の含有割合(w/w)を表し、nは混合される単一溶媒の種類数を表わす。
集電体に2以上の樹脂層が含まれ、それぞれの樹脂層が異なる樹脂材料を基材とする場合においては、各々の樹脂の溶解度パラメータと溶媒の溶解度パラメータとの差の絶対値のうち最も大きい値が1.9以上であればよい。
さらに、樹脂への溶媒の浸透を低減し、電池容量の低減を抑制するためには、樹脂の溶解度パラメータ(SP)は、溶媒の溶解度パラメータ(SP)よりも、1.9以上大きいことが好ましい。集電体に2以上の樹脂層が含まれ、それぞれの樹脂層が異なる樹脂材料を基材とする場合においては、各々の樹脂のSPのうち最も大きい値と溶媒のSPとの差を算出するものとする。
本形態においては、溶解度パラメータの差が上記範囲にあるものであれば、樹脂と溶媒との組み合わせは特に制限はない。好ましい組み合わせの一例を挙げると、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、およびポリアクリロニトリルからなる群から選択される少なくとも1種を含む樹脂と、ジメチルカーボネートを含む溶媒との組み合わせである。
[シール部]
シール部(絶縁層)層は、集電体同士の接触や単電池層の端部における短絡を防止する機能を有する。シール部を構成する材料としては、絶縁性、固体電解質の脱落に対するシール性や外部からの水分の透湿に対するシール性(密封性)、電池動作温度下での耐熱性等を有するものであればよい。例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ゴム等が用いられうる。なかでも、耐蝕性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性等の観点から、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂が、絶縁層の構成材料として好ましく用いられる。
[電池外装材]
電池外装材としては、従来公知の金属缶ケースを用いることができるほか、発電要素を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、ポリプロピレン、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。本発明では、高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用等の大型機器用電池に好適に利用することができるラミネートフィルムが望ましい。
<組電池>
本形態の複数の双極型二次電池を直列または並列に電気的に接続することによって組電池とすることができる。このように、複数の電池を直列または並列化することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。
図3は、本発明に係る組電池の代表的な実施形態の外観図であって、図3Aは組電池の平面図であり、図3Bは組電池の正面図であり、図3Cは組電池の側面図である。
図3に示すように、本発明に係る組電池300は、本発明の双極型二次電池が複数、直列にまたは並列に接続して装脱着可能な小型の組電池250を形成している。この装脱着可能な小型の組電池250をさらに複数、直列にまたは並列に接続して、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力を持つ組電池300を形成することもできる。図3Aは、組電池の平面図、図3Aは正面図、図3Cは側面図を示しているが、作成した装脱着可能な小型の組電池250は、バスバーのような電気的な接続手段を用いて相互に接続し、この組電池250は接続治具310を用いて複数段積層される。何個の双極型二次電池を接続して組電池250を作製するか、また、何段の組電池250を積層して組電池300を作製するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。
<車両>
本発明の車両は、本発明のリチウムイオン電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を搭載したことを特徴とするものである。本発明では、長期信頼性および出力特性に優れた高寿命の電池を構成できることから、こうした電池を搭載するとEV走行距離の長いプラグインハイブリッド電気自動車や、一充電走行距離の長い電気自動車を構成できる。言い換えれば、本発明のリチウムイオン電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池は、車両の駆動用電源として用いられうる。本発明のリチウムイオン電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を車両、例えば、自動車ならばハイブリット車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)に用いることにより高寿命で信頼性の高い自動車となるからである。ただし、用途が自動車に限定されるわけではなく、例えば、他の車両、例えば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
図4は、本発明の組電池を搭載した車両の概念図である。図4に示したように、組電池300を電気自動車400のような車両に搭載するには、電気自動車400の車体中央部の座席下に搭載する。座席下に搭載すれば、車内空間およびトランクルームを広く取ることができるからである。なお、組電池300を搭載する場所は、座席下に限らず、後部トランクルームの下部でもよいし、車両前方のエンジンルームでも良い。以上のような組電池300を用いた電気自動車400は高い耐久性を有し、長期間使用しても十分な出力を提供しうる。さらに、燃費、走行性能に優れた電気自動車、ハイブリッド自動車を提供できる。本発明の組電池を搭載した車両としては、図4に示すような電気自動車のほか、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車などに幅広く適用できるものである。
本発明の作用効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。以下では、まず各種樹脂を用いた集電体への電解液の浸透評価を行った。そして、次に各種集電体を用いて双極型二次電池を作成し、放電容量保持率を測定した。
<電解液の集電体への浸透評価>
10cm角に切り出した厚さ100μmの集電体2枚ずつを、ドライ雰囲気下で3辺を厚物ガゼット用ポリシーラー(FT―230)を用いてシールした。そして、シールしていない残りの1辺より溶媒を5cc添加し、この1辺をシールすることによって、集電体で構成された電解液入りの袋を作製した。作製した袋を均等に並べ、一定時間経過後に重さを測定し、溶媒の残存率を算出した。なお、使用した樹脂および溶媒の組み合わせは表1の通りである。
Figure 2010176987
表1の結果より、樹脂の溶解度パラメータ(SP)と溶媒の溶解度パラメータ(SP)との差の絶対値が1.9以上である製造例1〜8は、3日後の溶媒の残存率が100%であった。一方、絶対値の差が1.9未満である比較製造例1〜4は、3日後の溶媒の残存率が著しく低かった。比較製造例1〜4における溶媒の残存率が低いのは、溶媒が樹脂に浸透し、袋の外側に溶媒が揮発することによって、袋中の溶媒量が減少したことを意味する。逆に製造例1〜8では、溶媒が樹脂に浸透しにくいため、溶媒の揮発がほとんど起こらないものと考えられた。
<双極型二次電池の放電容量保持率の評価>
(双極型電極の作製)
アセチレンブラック(AB)(導電助剤)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)(バインダ)、平均粒子径5μmリチウムニッケル酸化物系活物質(LiNiO2)およびNMPを用いて、正極層用スラリーを作製した。各成分の配合比は、リチウムニッケル酸化物系活物質:AB:PVDF=86:6:8(質量比)である。また、アセチレンブラック(AB)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ハードカーボンおよびNMPを用いて、負極層用スラリーを作製した。各成分の配合比は、ハードカーボン:AB:PVDF=85:5:10(質量比)である。
導電性フィラーであるカーボンブラックを含む導電性を有する樹脂層を含む集電体(厚さ100μm)を準備した。集電体が複数層からなる場合は、各層の厚みが5μm以上で、かつ全体の厚さが100μmとなるように調整した。導電性フィラーとしてカーボンブラックを用いる場合には、適切な体積抵抗率となるように、高分子材料および導電性フィラーの合計に対してカーボン粒子を3〜40質量%程度添加した。各実施例および比較例における集電体の形態は表2の通りである。調製した正極活物質スラリーを集電体の一方の面に塗布し、乾燥させることによって、厚さ30μmの正極活物質層を形成した。また、集電体の他方の面に負極活物質スラリーを塗布し、乾燥させることによって、厚さ20μmの負極活物質層を形成した。かようにして集電体の一方の面に正極活物質層を、他方の面に負極活物質層を形成した積層体を得た。
得られた正極活物質層・集電体・負極活物質層の積層体を160×130(mm)の大きさに切り取り、外縁から10mmの外周部に形成された正極活物質層および負極活物質層を剥がし取ることにより、集電体である導電性を有する樹脂層表面を露出した。これにより、各活物質層面が140×110(mm)であり、外縁から10mmの外周部の導電性を有する樹脂層が露出した双極型電極を得た。
(双極型二次電池の作製)
得られた双極型電極の、正極活物質層が形成された面の導電性を有する樹脂層露出部分(電極未塗布部分)に、シール用シート(PP/PEN/PPを積層した3層構造品)を配置した。次に、170×140(mm)の樹脂系セパレータ(宇部興産製微多孔膜)を正極活物質層が形成された側の双極型電極が全て覆われるように配置した。その後、電極未塗布部に対応するセパレータ上にシール用シートを配置し、その上から、双極型電極を負極面を重ねた。かようにして、双極型電極(負極活物質層・集電体・正極活物質層)・セパレータ・双極型電極(負極活物質層・集電体・正極活物質層)・・・セパレータ・双極型電極(負極活物質層・集電体・正極活物質層)、の順番で、双極型電極13枚をセパレータを介して積層し、シールすることによって、単電池層が12個積層された双極型二次電池構造体を作製した。
電解液として、ジエチレンカーボネート(DEC)またはプロピレンカーボネート(PC)にリチウム塩であるLiPFが1.0Mの濃度に溶解した溶液を準備した。そして、上記の双極型二次電池構造体を、電解液に含浸し、双極型電極間に配されたセパレータに保持させることにより、電解質層を形成した。
かようにして電解質層を形成後、双極型二次電池構造体を直列になるように4つ重ね、電流取り出し用のアルミタブを挟み、外装材としてアルミラミネートフィルムを用いて真空密封することで、48直列の双極型二次電池モジュールを作成した。
(充放電サイクル)
上記の方法で作製した各双極型二次電池について、25℃の雰囲気下、定電流方式(CC、電流:5C)で200Vまで充電し、10分間休止させた後、定電流(CC、電流:5C)で120Vまで放電し、放電後10分間休止させた。この充放電過程を1サイクルとし、10サイクルの充放電試験を行い、放電容量保持率を調べた。結果を下記の表2に示す。なお、表2において「放電容量保持率」は、1サイクル目の放電容量に対する10サイクル目の放電容量の割合を表す(百分率表示)。
Figure 2010176987
表2より、樹脂の溶解度パラメータ(SP)と溶媒の溶解度パラメータ(SP)との差の絶対値が1.9以上である実施例1〜5(製造例1、5〜8に対応)では、10サイクル後の放電容量保持率が70%以上と非常に優れていた。一方、絶対値の差が1.9以下である比較例1および2(比較例1および3に対応)では、放電容量保持率が著しく低かった。以上の結果より、実施例では、樹脂への溶媒の浸透が効果的に抑制されることによって、電極間での電解液不足によって引き起こされる放電容量の低減が抑えられるものと考えられた。
1a、1b、1c 導電性を有する樹脂層、
2 金属層、
3 接着層、
10 双極型二次電池、
11 集電体、
11a 正極側の最外層集電体、
11b 負極側の最外層集電体、
13 正極活物質層、
15 負極活物質層、
17 電解質層、
19 単電池層、
21 発電要素、
23 双極型電極、
25 正極集電板、
27 負極集電板、
29 ラミネートフィルム、
31 シール部、
250 小型の組電池、
300 組電池、
310 接続治具、
400 車両。

Claims (6)

  1. 樹脂を基材とする導電性を有する樹脂層を含む集電体、
    前記集電体の一方の面に形成された正極活物質層、および
    前記集電体の他方の面に形成された負極活物質層を有する双極型電極と、
    支持塩および溶媒を含む電解質層と、が積層されてなる発電要素を有する双極型二次電池であって、
    前記集電体に含まれるいずれか1つの樹脂層の基材を形成する樹脂の溶解度パラメータ(SP)と、前記溶媒の溶解度パラメータ(SP)との差の絶対値が、1.9以上である、双極型二次電池。
  2. 前記集電体が、複数の前記樹脂層を含む、請求項1に記載の双極型二次電池。
  3. 前記集電体に含まれるいずれか1つの樹脂層の基材を形成する樹脂の溶解度パラメータ(SP)が、前記溶媒の溶解度パラメータ(SP)よりも1.9以上大きい、請求項1または2に記載の双極型二次電池。
  4. 前記樹脂は、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、およびポリアクリロニトリルからなる群から選択される少なくとも1種を含み、
    前記溶媒は、ジメチルカーボネートを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の双極型二次電池。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の双極型二次電池が、複数電気的に接続されてなる、組電池。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の双極型二次電池または請求項5に記載の組電池を、モータ駆動用電源として搭載した、車両。
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