JP2010173949A - ビスフェノール類の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】固体酸触媒の存在下に、カルボニル化合物とフェノール化合物とを反応させてビスフェノール類を製造する方法であって、該固体酸触媒が、酸点の少なくとも一部がメルカプト基を有する含窒素化合物で変性された陽イオン交換性粘土鉱物類であることを特徴とするビスフェノール類の製造方法。
【選択図】なし
Description
ビスフェノールAは、通常、フェノールとアセトンとを酸性触媒の存在下で反応させることにより合成され、反応時に助触媒としてメチルメルカプタン等のイオウ化合物を添加する場合もある。酸性触媒としては、通常、塩化水素あるいは酸性イオン交換樹脂が用いられているが、塩化水素を触媒として用いる方法は、塩化水素による腐食性の点から耐腐食性の高価な材質を用いた反応装置が必要であり、さらに反応混合物から塩化水素を除去するための精製工程又は中和する工程が必要である等の問題点があった。
酸性イオン交換樹脂として強酸性スルホン酸型イオン交換樹脂を用い、更にメルカプトアミン類をイオン結合させた変性イオン交換樹脂を使用する方法も提案されている。しかしながら、上記変性イオン交換樹脂も含め、酸性イオン交換樹脂は水中で保管されることが一般的であり、使用前にフェノールで処理することによりイオン交換樹脂中に含まれている水をフェノールに置換してから反応に供する必要がある。また、上記変性イオン交換樹脂を用いた場合には、トリスフェノール等が副生することがある。更に、酸性イオン交換樹脂は単位体積当たりの酸点の導入量に制限があるので、反応器の小型化が困難であり、イオン交換樹脂そのものの耐熱性の点でも更なる改善が望まれている。
すなわち、本発明の要旨は、固体酸触媒の存在下にカルボニル化合物とフェノール化合物とを反応させてビスフェノール類を製造する方法であって、該固体酸触媒が、酸点の少なくとも一部がメルカプト基を有する含窒素化合物で変性された陽イオン交換性粘土鉱物類であることを特徴とするビスフェノール類の製造方法に存する。
<カルボニル化合物>
本発明に用いるカルボニル化合物の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等の炭素数3〜10程度のケトン類、及び、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド等の炭素数1〜10程度のアルデヒド類が挙げられる。これらの中では、ホルムアルデヒド及びアセトンが好ましく、アセトンが特に好ましい。
フェノール化合物としては、具体的には、例えば、無置換のフェノール;o−クレゾール、m−クレゾール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール等の炭素数1〜4のアルキル基で置換されたフェノール;o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、2,5−ジクロロフェノール、2,6−ジクロロフェノール等のハロゲンで置換されたフェノール等が挙げられる。ここで、フェノール化合物が置換基やハロゲンで置換されている場合、置換されている箇所は一箇所でも複数箇所でもよい。これらの中ではフェノールが特に好ましい。フェノール化合物としてフェノールを使用し、カルボニル化合物としてアセトンを使用した場合、ポリカーボネート樹脂等の原料として有用なビスフェノールAを得ることができるので、特に好ましい。
反応に使用するフェノール化合物とカルボニル化合物のモル比は、カルボニル化合物1モルに対してフェノール化合物が通常2モル以上、好ましくは4モル以上であり、通常40モル以下、好ましくは30モル以下である。フェノール化合物の使用量が少なすぎると副生物が増加する傾向があり、一方、多すぎても副生物を減少させる効果に殆ど変化はなく、むしろ回収再使用するフェノール化合物の量が増大するため経済的でなくなる傾向がある。
本発明のビスフェノール類の製造方法に用いる固体酸触媒は、酸点の少なくとも一部がメルカプト基を有する含窒素化合物で変性された陽イオン交換性粘土鉱物類である。陽イオン交換性粘土鉱物類は、通常、層状で層間に陽イオンを有するが、該層間に存在する陽イオン(X)がプロトンである場合はその部分がブレンステッド酸点となり、陽イオン(X)が金属陽イオンである場合は交換イオンの配位水が分極してプロトン(H+)を生じ強い固体酸性となり好ましい。金属陽イオンとしては、チタン、アルミニウム、ニオブ、スズ、鉄、ジルコニウムの陽イオン等が挙げられ、なかでも、酸強度の観点からチタン、アルミニウム、ニオブの陽イオンが好ましい。
Xm(Y2+,Y3+)2〜3Z4O10(OH)2・nH2O (1)
(式中、XはK+、Na+、1/2Ca2+及び1/2Mg2+からなる群から選ばれる層間の陽イオン、Y2+はMg2+、Fe2+、Mn2+、Ni2+及びZn2+からなる群から選ばれる八面体の陽イオン、Y3+はAl3+、Fe3+及びCr3+からなる群から選ばれる八面体の陽イオン、ZはSi及びAlから選ばれる四面体の陽イオン、mは0を超え0.6以下の正の数、nは0又は0を超える正の数である。)
Xm(Al2-lMgl)Si4O10(OH)2・nH2O (2)
(式中、XはK+、Na+、1/2Ca2+及び1/2Mg2+からなる群から選 ばれる層間の陽イオン、lは0を超え2未満の正の数、mは0を超え0.6 以下の正の数、nは0又は0を超える正の数である。)
上記モンモリロナイトとしては、例えば、クニピアF、クニゲルV1(クニミネ工業社製)に代表されるナトリウム型モンモリロナイトや、ベンクレイSL(水澤化学工業社製)、モンモリロナイトK10(アルドリッチ社製)、等が挙げられる。
メルカプト基を有する含窒素化合物としては、塩基性の窒素とメルカプト基を同一分子内に有する化合物であれば特に限定されず、例えば、メルカプトアルキルピリジン類、メルカプトアルキルアミン類が挙げられる。メルカプトアルキルピリジン類の例としては、3−メルカプトメチルピリジン、3−(2−メルカプトエチル)ピリジン、4−(2−メルカプトエチル)ピリジン(以下「4PET」と略称することがある)、2−(2−メルカプトエチル)ピリジン等の総炭素数6〜8のメルカプトアルキルピリジンが挙げられ、メルカプトアルキルアミン類の例としては、2−メルカプトエチルアミン、3−メルカプトプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−メルカプトプロピルアミン等の総炭素数2〜8のメルカプトアルキルアミンが挙げられる。なかでも2−(2−メルカプトエチル)ピリジン、4PET、及び2−メルカプトエチルアミンが好ましく、2−(2−メルカプトエチル)ピリジン、4PETが更に好ましく、特に4PETが好ましい。
メルカプト基を有する含窒素化合物による陽イオン交換性粘土鉱物類の変性方法は、通常、窒素雰囲気下、溶媒を用いた液相で行われ、代表的には、上記の方法に従ってプロトン又は金属陽イオンでイオン交換処理を行なった粘土鉱物類を、例えば、室温〜130℃程度で真空乾燥処理して得られた陽イオン交換性粘土鉱物類を用いて変性する。
尚、固体酸触媒の酸点は、上述の通り、プロトン又は金属陽イオンに由来して固体酸性を呈する部分であり、その測定は、例えば、測定系内をヘリウムで置換した後に、固体酸触媒を、真空ラインを用いて115〜125℃で2時間乾燥し、これを、例えば、−5.6<pKa≦+1.5ではベンゼンアゾジフェニルアミン、−8.2<pKa≦−5.6ではベンザルアセトフェノン、pKa≦−8.2ではアントラキノン等の滴定指示薬を加えたトルエン溶媒中に混合し、滴定剤として既知の濃度の2,6−ジメチルピリジン等の塩基性溶液を滴下し、着色の変化を、in-situ反応解析UVシステム(浜松ホトニクス社製 PMA−11、ダイヤインスツルメンツ社製 GT1000)を用い測定することにより行なうことができる。
尚、上記の変性されている陽イオン交換性粘土鉱物類を使用すると共に、メルカプト基含有化合物やメルカプト基を有する含窒素化合物を原料のフェノール化合物やカルボニル化合物と共に供給してもよい。
ビスフェノール類の製造は公知の方法に準じて行うことができ、例えば、反応方式としては、バッチ式および連続式が挙げられる。連続方式による製造は、例えば、特開平9−194414号公報に記載されている通り、反応工程、軽沸分分離工程、濃縮工程、晶析工程、造粒工程等を経て製造される。
ビスフェノールA収率(%)=(生成したビスフェノールAのモル数/仕込みアセトン のモル数)×100
ビスフェノールA選択率(%)=(ビスフェノールA収率(%)/アセトン転化率(% ))×100
アセトン及び得られたビスフェノールA(ビスフェノールA及びビスフェノールAの2,4−体)、及びトリスフェノールの分析は、以下の条件で分析を行った。
ガスクロマトグラフィー :島津製作所(株)製「GC−2010」
カラム :Restek社製 「Rtx−5(Crossband 5% diphenyl−95% dimethyl polysiloxane) 30m×0.32mm×0.5μm」
検出器:FID
キャリアーガス:He
測定系内をヘリウムで置換した後、固体酸触媒である陽イオン交換性粘土鉱物類を、真空ラインを用いて115〜125℃で2時間乾燥した。乾燥後の陽イオン交換性粘土鉱物を、滴定指示薬を加えたトルエン溶媒中に混合し、滴定剤として既知の濃度の2,6−ジメチルピリジン等の塩基性溶液を滴下し、着色の変化を、in-situ反応解析UVシステム(浜松ホトニクス社製 PMA−11、ダイヤインスツルメンツ社製 GT1000)を用い測定することにより行った。
−5.6<pKa≦+1.5:ベンゼンアゾジフェニルアミン
−8.2<pKa≦−5.6:ベンザルアセトフェノン
pKa≦−8.2:アントラキノン
以下に記載の変性率は、陽イオン交換性粘土鉱物の酸点のうちpKa≦−5.6の酸点に対する割合である。
攪拌下1.8mol/Lの塩化チタン水溶液700mLにナトリウム型モンモリロナイト(クニピアF、クニミネ工業社製)21gを添加した後50℃に昇温させ、その後、その温度を保持しながら24時間攪拌してイオン交換した。その後室温まで放冷し、得られたスラリーを吸引濾過した後、1500mLのイオン交換水で洗浄し塩化物を完全に除去した。120℃で12時間、真空乾燥し灰白色のチタンイオン交換モンモリロナイト(以下、「Ti−Mont」と略記することがある)(酸量3.1mmol/g)を得た。
冷却管を備えた100mLのナスフラスコにフェノール40.0g、4−(2−メルカプトエチル)ピリジン塩酸塩0.0186g、及び製造例1で調製したTi−Mont3.0gを添加し、110℃で1時間加熱攪拌して変性反応を行った。変性率(Ti−Montの酸点に対する4−(2−メルカプトエチル)ピリジンの変性割合)は1.1モル%である。その後室温にて放冷し、フェノールが固化する前にデカンテーションによりフェノールを取り除いた。洗浄はアセトンを50mL加え室温で20分攪拌し、デカンテーションする作業を5回繰り返した。デカンテーションにより得られた残部を100℃で12時間乾燥し、橙色の4−(2−メルカプトエチル)ピリジン変性チタンイオン交換モンモリロナイト(4PET/Ti−Mont)を得た。
製造例2において、4−(2−メルカプトエチル)ピリジン塩酸塩の代わりに、2−メルカプトエチルアミン塩酸塩0.069g(製造例1で調製したTi−Montの酸量に対し6.3モル%に相当)を用いて変性を行った他は、製造例2と同様に行い2−メルカプトエチルアミン変性チタンイオン交換モンモリロナイトを得た。
製造例1において、塩化チタン水溶液の代わりに、濃度0.15mol/lの硝酸アルミニウム水溶液を1400ml用いた他は、製造例1と同様に行いアルミニウムイオン交換モンモリロナイト(酸量2.4mmol/g)を得た。以下、アルミニウムイオン交換モンモリロナイトを「Al−Mont」と略記することがある。
製造例2において、製造例1のTi−Montの代わりに、製造例4のAl−Montを用い、0.0186g(製造例4のAl−Montの酸量に対して1.5モル%に相当)の4−(2−メルカプトエチル)ピリジン塩酸塩を用いて変性を行った他は、製造例2と同様に行い4−(2−メルカプトエチル)ピリジン変性アルミニウムイオン交換モンモリロナイトを得た。
製造例1において、塩化チタン水溶液の代わりに2N塩酸を210g用い、50℃に昇温させる代わりに90℃に昇温させた他は、製造例1と同様に行い酸処理モンモリロナイト(酸量3.5mmol/g)を得た。以下、該酸処理モンモリロナイトを「H−Mont」と略記することがある。
製造例2において、製造例1で調製したTi−Montの代わりに、製造例6で調製したH−Montを用い、0.0186g(製造例6のH−Montに対して1.0モル%に相当)の4−(2−メルカプトエチル)ピリジン塩酸塩を用いて変性を行った他は、製造例2と同様に行い4−(2−メルカプトエチル)ピリジン変性酸処理モンモリロナイトを得た。
窒素ガス導入管、還流冷却器、攪拌器を備えた反応器に、フェノール9.4g、製造例2で得られた4PET/Ti−Montを0.50g仕込み、窒素を導入した。攪拌しながら70℃にし、アセトン0.58gを加えて還流させながら反応を行った。反応開始後60分の時点で反応液を採取し、ガスクロマトグラフィーにより分析した。分析結果を表1に示す。
実施例1において、反応温度を80℃にした以外は実施例1と同様にして反応を行った。結果を表1に示す。
<実施例3>
実施例1において、製造例2の4PET/Ti−Montの代わりに、製造例3の2−メルカプトエチルアミン変性チタンイオン交換モンモリロナイトを用いた他は、実施例1と同様にして反応を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、製造例2の4PET/Ti−Montの代わりに、製造例5の4PET/Al−Montを用い、反応温度を80℃にした他は、実施例1と同様にして反応を行った。結果を表1に示す。
<実施例5>
実施例1において、製造例2の4PET/Ti−Montの代わりに、製造例7の4PET/H−Montを用い、反応温度を80℃にした他は、実施例1と同様にして反応を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、製造例2の4PET/Ti−Montの代わりに、製造例1で得られた未変性のTi−Montを用いた他は、実施例1と同様にして反応を行った。結果を表1に示す。
<比較例2>
実施例1において、製造例2の4PET/Ti−Montの代わりに、製造例1で得られた未変性のTi−Montを用い、更に、4−(2−メルカプトエチル)ピリジン塩酸塩を3.1mg添加した他は、実施例1と同様にして反応を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、製造例2の4PET/Ti−Montの代わりに、製造例1で得られた未変性のTi−Montを用い、更に、2−メルカプトエチルアミン塩酸塩を7.5mg添加した他は、実施例1と同様にして反応を行った。結果を表1に示す。
<比較例4>
実施例1において、製造例2で得られた4PET/Ti−Montの代わりに、スルホン酸型陽イオン交換樹脂(ダイヤイオンSK104H、三菱化学(株)製)20gを4−(2−メルカプトエチル)ピリジン塩酸塩0.73gで変性(変性率15%)して得られた4−(2−メルカプトエチル)ピリジン変性スルホン酸型陽イオン交換樹脂を0.5g用いた他は、実施例1と同様にして反応を行った。結果を表1に示す。
Claims (9)
- 固体酸触媒の存在下にカルボニル化合物とフェノール化合物とを反応させてビスフェノール類を製造する方法であって、該固体酸触媒が、酸点の少なくとも一部がメルカプト基を有する含窒素化合物で変性された陽イオン交換性粘土鉱物類であることを特徴とするビスフェノール類の製造方法。
- 陽イオン交換性粘土鉱物類が層状で、層間にプロトン又は金属陽イオンを有することを特徴とする請求項1に記載のビスフェノール類の製造方法。
- 陽イオン交換性粘土鉱物類が、プロトン又は金属陽イオンでイオン交換されたスメクタイト族の粘土鉱物類である請求項1又は2に記載のビスフェノール類の製造方法。
- 金属陽イオンが、チタン、アルミニウム、ニオブ、スズ、鉄及びジルコニウムからなる群から選ばれることを特徴とする請求項2又は3に記載のビスフェノール類の製造方法。
- スメクタイト族の粘土鉱物類が、下記一般式(1)で表されることを特徴とする請求項3又は4に記載のビスフェノール類の製造方法。
Xm(Y2+,Y3+)2〜3Z4O10(OH)2・nH2O (1)
(式中、XはK+,Na+、1/2Ca2+及び1/2Mg2+からなる群から選 ばれる層間の陽イオン、Y2+はMg2+、Fe2+、Mn2+、Ni2+及びZn2+ からなる群から選ばれる八面体の陽イオン、Y3+はAl3+、Fe3+及びCr 3+からなる群から選ばれる八面体の陽イオン、ZはSi及びAlから選ばれ る四面体の陽イオン、mは0を超え0.6以下の正の数、nは0又は0を超 える正の数である。) - スメクタイト族の粘土鉱物類がモンモリロナイトであることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載のビスフェノール類の製造方法。
- メルカプト基を有する含窒素化合物が、メルカプトアルキルピリジン及び/又はメルカプトアルキルアミンであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のビスフェノール類の製造方法。
- メルカプト基を有する含窒素化合物が、4−(2−メルカプトエチル)ピリジン及び/又は2−メルカプトエチルアミンであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のビスフェノール類の製造方法。
- フェノール類がフェノールであり、ケトン類がアセトンであり、ビスフェノール類がビスフェノールAであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のビスフェノール類の製造方法。
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