本実施形態の電極は、第1樹脂と、第1導電材とを含む第一集電体からなる集電体と、前記集電体の表面に、第1バインダを含む第一活物質層が積層されてなる電極であって、第1樹脂と第1バインダのSP値の差が0〜2.5であることを特徴とするものである。
かかる構成とすることで、樹脂集電体を構成する樹脂と、活物質層中のバインダとの接着性(密着性)を向上させることができる。そのため、充電および放電過程において、正極および負極活物質中へのリチウムイオンの吸蔵、放出によって正極および負極活物質層の膨張、収縮が起こっても、樹脂集電体と活物質層との界面の接着性(密着性)が向上しているため、界面での剥離を抑えることができる。さらに樹脂集電体と活物質層との界面が密着され一体化されることで、該樹脂集電体を構成する樹脂が膨張収縮を吸収し緩和することもできる。また、車両に搭載した電池では、外部から振動・衝撃を受けるが、かかる外部振動(負荷)に対しても、樹脂集電体と活物質層との界面の高い密着性により、剥離することなく、樹脂集電体の樹脂で吸収緩和することができる。このように耐振動性、耐衝撃性に優れた電極、ひいては双極型二次電池を構築することができる点でも優れている。
さらに、樹脂集電体と活物質層との界面の高い密着性により、樹脂集電体および活物質層との間の接触抵抗を抑えて、電気抵抗を低く抑えることができる点でも優れている。
特に、双極型二次電池の集電体では、最外層集電体以外は、移動距離の長い面内方向への導電性は必要ではなく、膜厚方向にのみ電流が流れればよい。そのため、電子伝導のパスが非双極型の二次電池用集電体と比べて格段に短くなる。よって、この樹脂集電体の膜厚方向の電気抵抗(体積低効率)は、面内方向の電気抵抗(表面低効率)よりも導電材の使用量を抑えても低抵抗させることができ、その分、高出力となり、また薄膜に成形性しやすい。即ち、本実施形態の樹脂集電体では、膜厚方向の電気抵抗を面内方向の電気抵抗よりも小さくできるという、いわゆる異方性にできる。そのため、こうした異方性を持つ樹脂集電体を用いる場合には、内部短絡時に樹脂集電体の表面を局所に向けて大量の電流が集中して流れて、更なる発熱を引き起こすのを極めて効果的に抑制することができる。また発生箇所周辺の樹脂が溶融し、発生箇所の導電パス経路を素早く閉塞することができるという、いわゆる自己修復機能をも持たせることができ、内部短絡発生による集電体や活物質層へダメージを最小限に留めることができる。そのため、内部短絡発生後、速やかに正常な状態に自己修復(復旧)でき、その後も充放電使用できる点で優れている。但し、本実施形態では、導電材を増量することで、非双極型でない、一般の非水電解質型の二次電池用の電極および集電体としても利用し得る。
また、集電体全体でみた場合、金属集電箔に較べて軽量であり、電池の出力が向上し得る電極、ひいては非水電解質型の二次電池を提供できる。
以下、図面を参照しながら、本実施形態の電極の代表的な形態であるリチウムイオン二次電池用電極及びこれを用いてなるリチウムイオン二次電池の実施形態を説明する。ただし、本実施形態の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみには制限されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
<I>本実施形態の電池の一般的な基本構成について
まず、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、高容量とできることから、車両の駆動電源用等として好適に利用できるほか、携帯電話などの携帯機器向けのリチウムイオン二次電池にも十分に適用可能である。
すなわち、本実施形態の対象となるリチウムイオン二次電池は、本実施形態の電極を用いてなるものであればよく、他の構成要件に関しては、特に制限されるべきものではない。
例えば、上記リチウムイオン二次電池を形態・構造で区別した場合には、積層型(扁平型)電池、巻回型(円筒型)電池など、従来公知のいずれの形態・構造にも適用し得るものである。積層型(扁平型)電池構造を採用することで簡単な熱圧着などのシール技術により長期信頼性を確保でき、コスト面や作業性の点では有利である。
また、リチウムイオン二次電池内の電気的な接続形態(電極構造)で見た場合、上述した内部並列接続タイプの非双極型二次電池および内部直列接続タイプの双極型二次電池のいずれにも適用し得るものである。とりわけ、本実施形態の電極構成を用いた双極型リチウムイオン二次電池では、厚さ方向(積層方向)に電流が流れるため、電子伝導のパスが非双極型のリチウムイオン二次電池と比べて格段に短くなり、その分、高出力となる点で優れている。
リチウムイオン二次電池内の電解質層の種類で区別した場合には、電解質層に非水電解質を用いた非水電解質型の二次電池であればよい。具体的に、電解質層に非水系の電解液等の溶液電解質を用いた溶液電解質型電池、電解質層に高分子電解質を用いたポリマー電池など従来公知のいずれの電解質層のタイプにも適用し得るものである。該ポリマー電池は、更に高分子ゲル電解質(単にゲル電解質ともいう)を用いたゲル電解質型電池、高分子固体電解質(単にポリマー電解質ともいう)を用いた固体高分子(全固体)型電池に分けられる。
したがって、以下の説明では、本実施形態の電極を用いてなる、内部並列接続タイプの非双極型リチウムイオン二次電池と、内部直列接続タイプの双極型リチウムイオン二次電池それぞれにつき図面を用いてごく簡単に説明する。ただし、決してこれらに制限されるべきものではない。
(1)本実施形態の非双極型リチウムイオン二次電池の一般的な基本構成について
図1は、本実施形態のリチウムイオン電池の代表的な一実施形態である、扁平型(積層型)の非双極型リチウムイオン二次電池(以下、単に非双極型リチウムイオン二次電池、または非双極型二次電池ともいう)の全体構造を模式的に表した断面概略図である。
図1に示すように、非双極型リチウムイオン二次電池10では、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素17が、電池外装材22である高分子−金属を複合したラミネートシートの内部に封止された構造を有する。詳しくは、電池外装材22に高分子−金属を複合したラミネートフィルムを用いて、その周辺部の全部を熱融着にて接合することにより、発電要素17を収納し密封した構成を有している。
ここで発電要素17は、正極集電体11の両面に正極活物質層12が形成された正極板、電解質層13、および負極集電体14の両面(発電要素の最下層および最上層用は片面)に負極活物質層15が形成された負極板を積層した構成を有している。この際、一の正極板片面の正極活物質層12と前記一の正極板に隣接する一の負極板片面の負極活物質層15とが電解質層13を介して向き合うようにして、正極板、電解質層13、負極板の順に複数積層されている。
これにより、隣接する正極活物質層12、電解質層13、および負極活物質層15は、一つの単電池層16を構成する。従って、本実施形態のリチウムイオン二次電池10は、単電池層16が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。なお、発電要素17の両最外層に位置する最外層負極集電体14aには、いずれも片面のみに負極活物質層15が形成されている。なお、図1と正極板と負極板の配置を変えることで、発電要素17の両最外層に最外層正極集電体(図示せず)が位置するようにし、該最外層正極集電体の場合にも片面のみに正極活物質層が形成されているようにしてもよい。
また、上記の各電極板(正極板及び負極板)と導通される正極タブ18および負極タブ19が、正極端子リード20および負極端子リード21を介して各電極板の正極集電体11及び負極集電体14に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられている。これにより、正極集電体11及び負極集電体14に電気的に接続された正極タブ18および負極タブ19は、上記熱融着部に挟まれて上記の電池外装材22の外部に露出される構造を有している。
(2)本実施形態の双極型リチウムイオン二次電池の一般的な基本構成について
図2は、本実施形態のリチウムイオン電池の他の代表的な一実施形態である双極型の扁平型(積層型)のリチウムイオン二次電池(以下、単に双極型リチウムイオン二次電池、または双極型二次電池とも称する)の全体構造を模式的に表わした概略断面図である。
図2に示すように、双極型リチウムイオン二次電池30は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素37が、電池外装材42の内部に封止された構造を有する。図2に示すように、本実施形態の双極型二次電池30の発電要素37は、1枚または2枚以上で構成される双極型電極34で電解質層35を挟み、隣合う双極型電極34の正極(正極活物質層)32と負極(負極活物質層)33とが対向するようになっている。ここで、双極型電極34は、集電体31の片面に正極活物質層32を設け、もう一方の面に負極活物質層33を設けた構造を有している。即ち、双極型二次電池30では、集電体31の片方の面上に正極活物質層32を有し、他方の面上に負極活物質層33を有する双極型電極34を、電解質層35を介して複数枚積層した構造の発電要素37を具備してなるものである。
隣接する正極活物質層32、電解質層35および負極活物質層33は、一つの単電池層(=電池単位ないし単セル)36を構成する。従って、本実施形態の双極型リチウムイオン二次電池30は、単電池層36が複数積層されることで、電気的に直列接続されてなる構成を有するともいえる。
また、電解質層35からの電解液の漏れによる液絡を防止するために単電池層36の周辺部にはシール部(絶縁層)43が配置されている。該シール部(絶縁層)43を設けることで隣接する集電体31間を絶縁し、隣接する電極活物質層(正極活物質層32及び負極活物質層33)間の接触による短絡を防止することもできる。
なお、発電要素37の最外層に位置する正極側電極34a及び負極側電極34bは、双極型電極構造でなくてもよい。例えば、集電体31a、31b(または端子板)に必要な片面のみの正極活物質層32または負極活物質層33を配置した構造としてもよい。発電要素37の最外層に位置する正極側の最外層集電体31aには、片面のみに正極活物質層32が形成されているようにしてもよい。同様に、発電要素37の最外層に位置する負極側の最外層集電体31bには、片面のみに負極活物質層33が形成されているようにしてもよい。
また、双極型リチウムイオン二次電池30では、上下両端の正極側最外層集電体31a及び負極側最外層集電体31bにそれぞれ正極タブ38および負極タブ39が、必要に応じて正極端子リード40及び負極端子リード41を介して接合されている。但し、正極側最外層集電体31aが延長されて正極タブ38とされ、電池外装材42であるラミネートシートから導出されていてもよい。同様に、負極側最外層集電体31bが延長されて負極タブ39とされ、同様に電池外装材42であるラミネートシートから導出される構造としてもよい。
また、双極型リチウムイオン二次電池30でも、発電要素37部分を電池外装材(外装パッケージ)42に減圧封入し、正極タブ38及び負極タブ39を電池外装材42の外部に取り出した構造とするのがよい。かかる構造とすることで、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止することができるためである。この双極型リチウムイオン二次電池30の基本構成は、複数積層した単電池層(単セル)36が直列に接続された構成ともいえるものである。
上記した通り、非双極型リチウムイオン二次電池と双極型リチウムイオン二次電池の各構成要件および製造方法に関しては、リチウムイオン二次電池内の電気的な接続形態(電極構造)が異なることを除いては、基本的には同様である。よって、上記した双極型リチウムイオン二次電池の各構成要件を中心に、以下説明するが、非双極型リチウムイオン二次電池の各構成要件および製造方法に関しても、同様の構成要件及び製造方法を適宜利用して構成ないし製造することができることは言うまでもない。また、本実施形態の非双極型リチウムイオン二次電池および/または双極型リチウムイオン二次電池を用いて、組電池や車両を構成することもできる。
<II>本実施形態の特徴部分である電極の構成について
まず、本実施形態では、その特徴的な構成として、電極が、第1樹脂と、第1導電材とを含む第一集電体からなる集電体と、前記集電体の表面に、第1バインダを含む第一活物質層が積層されてなる電極であって、第1樹脂と第1バインダのSP値の差が0〜2.5であることにある。かかる構成とすることで、集電体と第一活物質層との界面において、集電体の第1樹脂とバインダとの接着性(密着性)を向上させることができる。その結果、集電体と第一活物質層との界面での剥離を抑え、接触抵抗の増加を防ぎことができる。また、金属集電箔に較べて軽量にできる。これらにより、電池出力の向上を図ることができる。集電体と第一活物質層とのとの界面(接着)強度に優れる為、電池の耐衝撃性、耐振動性を向上することもできる。また、正極活物質層側と負極活物質層側でそれぞれ充填させる導電材を変えることも可能となる。そのめた、正極活物質層側と負極活物質層側とで正極電位及び負極電位それぞれの電位に長期間耐えうる導電材を充填配置した集電体を形成することも可能である。その結果、より一層寿命特性が向上した長期信頼性に優れた二次電池を構築することもできる。
(1)電極の構成について
本実施形態の電極は、集電体に第一集電素子からなる1層構成(第1実施形態);第一集電素子と第二集電素子とが積層された2層構成(第2実施形態);第一集電素子と第二集電素子の間に更に樹脂層を挟んだ3層構成(第3実施形態)等を用いたものなど例示できる。但し、本実施形態の電極では、これらの代表的な積層構成のものに何ら制限されず、更に多層化したものや、各集電素子の構成を多層化させたものなども利用できる。以下では、上記した代表的な積層構成の第1〜第3実施形態につき、図面を用いて説明する。
(a)第1実施形態の電極構成について
図3は、本実施形態の電極の代表的な一形態(第1実施形態)として第一集電素子からなる1層構成の集電体を用いた電極の一般的な基本構成の概要を模式的に表した断面概略図である。
図3に示すように、第1実施形態の電極1は、第1樹脂2aと、第1導電材3aとを含む第一集電素子4aからなる1層構成の集電体5と、集電体5の表面に、第1バインダ6aを含む第一活物質層8aが積層されてなる。更に、第1実施形態の電極1では、第1樹脂2aと第1バインダ6aのSP値の差が0〜2.5、好ましくは0〜2、より好ましくは0〜1.5の範囲である。かかる構成とすることで、上記した本実施形態の作用効果を奏することができる。即ち、第1樹脂と第1バインダのSP値の差が2.5以下になるように、第1樹脂と第1バインダを選択することで、集電体と第一活物質層の界面全体の接着性(密着性)の向上させることができる。即ち、集電体と第一活物質層の界面全体の接着性(密着性)を第1樹脂と第1バインダにより高めることができる。そのため、集電体5の第1導電材3aの種類や大きさや含有量、第一活物質層8aの活物質粒子7a(または7b)の種類(特に、膨脹・収縮の程度)や大きさや含有量を厳密にコントロールする煩わしさが不要となる。その結果、使用用途(目的)に応じて、最適な導電材や活物質粒子を選択肢することができる点でも優れている。
なお、第1バインダ6aを含に第一活物質層8aには、第一活物質7aとして正極活物質ないし負極活物質が必須成分として含まれる。しかしながら、本実施形態では、第1バインダ6aが含まれているものを第一活物質層8aとしており、該第一活物質層8aに含まれる第一活物質7aについては、何ら制限されない。よって集電体5の両面に、正極活物質(または負極活物質)を含む第1活物質層8aを用いる場合には、一般の非双極型の二次電池用電極(正極または負極)を構成できる。また、集電体5の片面に正極活物質を含む第1活物質層8aを用い、他方の面に負極活物質を含む第1活物質層8aを用いる場合には、双極型電極を構成できる。
ここで、溶解度パラメータ(SP値)は、一般に、2成分系溶液または溶媒−溶質の溶解度の目安として使用されている。そして、2つの成分の溶解度パラメータ値の差が小さいほど、溶解度が大きくなることが経験的に知られている。通常、溶媒の溶解度パラメータ(SP2)は、Hansenの溶解度パラメータによる値を用いるが、本明細書において、樹脂(第1樹脂〜第5樹脂など)及びバインダ(第1バインダ、第2バインダなど)の溶解度パラメータ(SP1)は、原子団寄与法(Van Kreveren法)を用いて得られた値を用いるものとする。
本形態における樹脂やバインダは、後述するように、非導電性高分子材料または導電性高分子材料を1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせた混合物とすることもできる。後者の2種以上の高分子材料を組み合わせた混合物とする際には、その混合形態は、以下の2つの形態がありうる。第1の混合形態は、2種以上の高分子材料が分子レベルで混合されている場合である。この場合における樹脂やバインダの溶解度パラメータ(SP1)は、各高分子材料の溶解度パラメータに各含有割合(w/w)を乗じた値の総和、すなわち下記式により算出される。
上記式中、Ak(A1、A2・・・Am)は各高分子材料の溶解度パラメータを表し、Xk(X1、X2・・・Xm)は樹脂(またはバインダ)全体に対する各高分子材料の含有割合(w/w)を表し、mは混合される単一高分子材料の種類数を表わす。
一方、第2の混合形態は、主成分である高分子材料中に、副成分である高分子材料が局在化(例えば、点在)している場合である。ここで、「主成分である」とは、樹脂(またはバインダ)全体に対して50質量%を超えて、好ましくは60質量%以上、含有されることを意味する。かような形態においては、樹脂やバインダの溶解度パラメータ(SP1)は主成分である高分子材料の溶解度パラメータの値を用いるものとする。なお、「主成分である高分子材料」が、2種以上の高分子材料が分子レベルで混合されてなる場合は、第1の混合形態の定義から算出された値が「主成分のである高分子材料」の溶解度パラメータとなる。そして、第2の混合形態の定義により、該溶解度パラメータの値が、樹脂あるいはバインダの溶解度パラメータとなるのである。
参考までに、溶媒の溶解度パラメータ(SP2)でも、2種以上の単一溶媒を組み合わせた混合物とする際には、各単一溶媒の溶解度パラメータに各含有割合(w/w)を乗じた値の総和、すなわち下記式により算出される値が用いられている。
上記式中、Bl(B1、B2・・・Bn)は各単一溶媒の溶解度パラメータを表し、Yl(Y1、Y2・・・Yn)は溶媒全体に対する該単一溶媒の含有割合(w/w)を表し、nは混合される単一溶媒の種類数を表わす。
(b)第1実施形態の電極構成の変形例について
図4は、図3の電極の集電体の構成成分を追加し、より最適化した第1実施形態の変形例を模式的に表した断面概略図である。
図4では、図3に示す基本構成のうち、第一集電素子4aとして、更に第1樹脂2aと溶解度パレメータの異なる第2樹脂2bを更に含み、第1樹脂2aと第2樹脂2bが混合または共重合する事で構成されることを特徴とするものである。かかる構成とすることで、特性(SP値)の異なる樹脂を並存させることができる。即ち、第1樹脂2aと第2樹脂2bを含む複数の樹脂を混合した場合でも、あるいは複数を共重合した場合でも、第1樹脂2a、第2樹脂2bを含む複数の樹脂の持つ特性(SP値)を保持できる。そのため、第1樹脂や第2樹脂を単独で用いるだけでは、同時に多くの特性を付与させることできないが、本変形例のように溶解度パレメータの異なる樹脂を併用することで、多様な特性を発現させることができる。例えば、SP値の異なる第1樹脂及び第2樹脂として、正極及び負極活物質層の第1バインダに対して優れた接着性(密着性)を有する樹脂同士を組み合わせることもできる。また、SP値の異なる樹脂として、活物質層との接着性(密着性)に優れる樹脂(第1樹脂)と、正極電位ないし負極電位に耐えうる樹脂(第2樹脂)とを組み合わせることもできる。更に、ポリマーブレンドや共重合で、さらに衝撃吸収性が向上させることができる場合もある。また、以下に説明するように、活物質層との接着性(密着性)に優れる樹脂(第1樹脂)と、耐熱プレス性能(耐衝撃性)に優れた樹脂(第2樹脂)とを組み合わせることもできる。
よって、第1実施形態の他の変形例としては、第一集電素子4aとして、上記第2樹脂2bを用い、該第1樹脂2aと第2樹脂2bとの重量比が30以上100未満:0を超えて70以下(ここで、第1樹脂と第2樹脂との重量比の合計は100である)とする。更に第2樹脂2bとして、150℃における耐熱プレス性能が、少なくとも2〜4Mpaである(具備する)ものを用いることを特徴とする。該第1樹脂2aと第2樹脂2bとの重量比が上記範囲を満足する場合には、耐熱プレス性能(強度)に優れる第2樹脂2bを適量含有されるため、電極塗付後のプレス工程において衝撃強さが足りないときに生じる穴あきなどの不良の発生を効果的に防止できる。同様に、150℃における耐熱プレス性能が少なくとも2〜4Mpaの範囲であれば(具備すれば)、電極塗付後のプレス工程にて穴あきなどの不良の発生を効果的に防止できる。またこうした耐熱プレス性能(強度)に優れる第2樹脂2bを適量含有することで、外部からの持つ振動・衝撃を吸収緩和できる程度の柔軟性を兼ね備えることができる点で優れている。
上記観点から、第1樹脂2aと第2樹脂2bとの重量比は、30以上100未満:0を超えて70以下、好ましくは30〜90:70〜10、より好ましくは30〜70:70〜30である。ここで、第1樹脂と第2樹脂との重量比の合計は100である。即ち、第1樹脂と第2樹脂の合計量を100重量部とした際に、第1樹脂の含有量は、30重量部以上100重量部未満、好ましくは30〜90重量部の範囲である。ここで、第1樹脂の含有量が100重量部(第1樹脂のみ)の場合は、第1実施形態に相当するため、これを除いたものである。一方、第1樹脂と第2樹脂の合計量を100重量部とした際に、第2樹脂の含有量は、0重量部を超えて70重量部以下、好ましくは10〜70重量部の範囲である。ここで、第2樹脂の含有量が極微量でも存在していればよいといえるが、耐熱プレス性能(耐衝撃性)に優れた樹脂(第2樹脂)本来の特性を有効に発現させるには、上記した好ましい範囲である10〜70重量部を含有させるのが望ましいといえる。また、第2樹脂2bとして、150℃における耐熱プレス性能が5〜10Mpaであるのがより好ましい。
ここで、「150℃における耐熱プレス性能が少なくとも2〜4Mpaである(具備する)」とは、電極塗付後のプレス工程において、150℃に加熱した熱プレスで2MPa(下限)及び4MPa(上限)のいずれでプレスしても衝撃強さが足りないときに生じる穴あきなどの不良が生じないことをいう。したがって、第2樹脂2bのみで試験用サンプルを作製して、電極塗付後のプレス工程と同様の条件で熱プレスを行って、穴あきなどの不良が生じないことを確認してもよい。あるいは、上記の如く第2樹脂を用いた集電体に電極活物質層を形成し、この電極に対して、電極塗付後のプレス工程と同様の条件で熱プレスを行って、穴あきなどの不良が生じないことを確認してもよい。また、当該プレス工程を、150℃に加熱した熱プレスで2〜4MPaでプレスする以外の条件で行う場合には、その条件(150℃以外のプイス温度や2〜4MPa以外のプレス圧)で、穴あき等の不良が生じない耐熱プレス性能を有するポリマーを用いればよい。
上記耐熱プレス性能を有するポリマーを選定する際には、アイゾット試験方法(JIS K7110;「プラスチック−アイゾット衝撃強さの試験方法」)により求められるアイゾット強さを基準に適宜決定するのが望ましい。具体的には、アイゾット強さが3kgf・cm/cm以上であればよく、望ましくは5kgf・cm/cm以上のポリマーであれば、概ね上記耐熱プレス性能を満足するものといえる。なお、アイゾット強さの上限値については、特に制限されるものではないが、20kgf・cm/cm以下であれば、硬すぎず、外部からの振動、衝撃に対して、当該第2樹脂を用いた集電体にて良好に吸収緩和できるといえる。
(c)第2実施形態の電極構成について
図5は、本実施形態の電極の代表的な他の形態(第2実施形態)として第一集電素子と第二集電素子とが積層された2層構成の集電体を用いた電極の一般的な基本構成の概要を模式的に表した断面概略図である。
図5に示すように、第2実施形態の(双極型)電極1では、集電体5が、図3又は図4示す前記第一集電素子4aと;第3樹脂2cと、該第3樹脂2cと溶解度パレメータの異なる第4樹脂2dと、第2導電材3bとを含む第二集電素子4bとからなる。また、第3樹脂2cと第4樹脂2dとが混合または共重合する事で構成されている。更に、第一集電素子4aと第2集電素子4bとが積層されてなり、前記第一集電素子4aの表面に前記第一活物質層8aが積層され、前記第二集電素子4bの表面に第2バインダ6bを含む第二活物質層8bが積層されている。さらに、前記第3樹脂2cと第2バインダ6bのSP値の差が0〜2.5、好ましくは0〜2、より好ましくは0〜1.5の範囲である。
かかる構成とすることで、両面の活物質層8a、8bで異なるバインダ6a、6bを用いる場合においても、両面の各バインダ6a、6bに対応して、集電素子4a、4bの両面の第1樹脂2aおよび第3樹脂2cのSP値を変更し、両面での接着性(密着性)を向上させることができる。即ち、第1樹脂と第1バインダのSP値の差と同様に、第3樹脂と第2バインダのSP値の差も2.5以下になるように、第3樹脂と第2バインダを選択することで、集電体と両面の活物質層の界面全体の接着性(密着性)のいずれも向上させることができる。特に、正極活物質層と負極活物質層とでSP値が異なるバインダを用いてなる場合に極めて有効である。すなわち、集電体と両面の活物質層の界面全体の接着性(密着性)を、第1樹脂と第1バインダ、第3樹脂と第2バインダにより共に高めることができる。そのため、集電体5の導電材3a、3bの種類や大きさや含有量、活物質層7a、7bの活物質粒子の種類(特に、膨脹・収縮の程度)や大きさや含有量を厳密にコントロールする煩わしさが不要となる。その結果、使用用途(目的)に応じて、最適な導電材や活物質粒子を選択肢することができる点でも優れている。
ここで、SP値の計算については、上記(a)の第1実施形態で説明したと同様にして求めることができる。
なお、本実施形態では、第2バインダ6bを含に第二活物質層8bにも、上記(1)の第1実施形態8で説明した第一活物質層8aと同様に、第二活物質7bとして正極活物質ないし負極活物質が必須成分として含まれる。本実施形態でも、第2バインダ6bが含まれているものを第二活物質層8bとしており、該第二活物質層8bに含まれる第二活物質7bについては、何ら制限されない。よって集電体5の第一集電素子4aの表面に第一活物質7aとして正極(または負極)活物質を含む第一活物質層8aを用い、第二集電素子4bの表面に第二活物質7bとして同極の正極(または負極)活物質を含む第二活物質層8bを用いることができる。この場合には、非双極型二次電池用電極(正極または負極)を構成できる。また、集電体5の第一集電素子4aの表面に第一活物質7aとして正極(または負極)活物質を含む第1活物質層8aを用い、第二集電素子4bの表面に第二活物質7bとして異極の負極(または正極)活物質を含む第二活物質層8bを用いることもできる。この場合には、双極型電極を構成できる。
(d)第2実施形態の電極構成の変形例について
第2実施形態の電極構成の変形例の電極構成は、図5に示す第2実施形態の双極型電極の基本構成と同様である。
本変形例では、図5に示す基本構成のうち、第二集電素子4bを構成する第3樹脂2cと第4樹脂2dとの重量比が30以上100未満:0を超えて70以下(ここで、第3樹脂と第4樹脂との重量比の合計は100である)とする。更に第4樹脂2dとして、150℃における耐熱プレス性能が、少なくとも2〜4Mpaである(具備する)ものを用いることを特徴とする。該第3樹脂2cと第4樹脂2dとの重量比が上記範囲を満足する場合には、耐熱プレス性能(強度)に優れる第4樹脂2dを適量含有されるため、第二集電素子4bでも電極塗付後のプレス工程において穴あきなどの不良の発生を効果的に防止できる。同様に、150℃における耐熱プレス性能が少なくとも2〜4Mpaの範囲であれば(具備すれば)、電極塗付後のプレス工程にて穴あきなどの不良の発生を効果的に防止できる。またこうした耐熱プレス性能(強度)に優れる第4樹脂2dを適量含有することで、外部からの持つ振動・衝撃を吸収緩和できる程度の柔軟性を兼ね備えることができる点で優れている。
上記観点から、第3樹脂2cと第4樹脂2dとの重量比は、30〜100:0〜70、好ましくは30〜90:70〜10、より好ましくは30〜70:70:30である。ここで、第3樹脂と第4樹脂との重量比の合計は100である。即ち、第3樹脂と第4樹脂の合計量を100重量部とした際に、第3樹脂の含有量は、30重量部以上100重量部以下、好ましくは30〜90重量部の範囲である。ここで、第3樹脂の含有量が100重量部(第3樹脂のみ)の場合でも、上記した第一実施形態と同様に、第二活物質層との界面の密着性を高めることができる。一方、第3樹脂と第4樹脂の合計量を100重量部とした際に、第4樹脂の含有量は、0〜70重量部、好ましくは10〜70重量部の範囲である。ここで、第4樹脂の含有量は存在しなくともよいといえるが、耐熱プレス性能(耐衝撃性)に優れた樹脂(第4樹脂)本来の特性を有効に発現させるには、上記した好ましい範囲である10〜70重量部を含有させるのが望ましいといえる。また、第4樹脂2dは、150℃における耐熱プレス性能が5〜10Mpaであるのがより好ましい。
(e)第3実施形態の電極構成について
図6は、本実施形態の電極の代表的な他の形態(第3実施形態)として第一集電素子と第二集電素子の間に更に樹脂層を挟んだ3層構成の集電体を用いた双極型電極の一般的な基本構成の概要を模式的に表した断面概略図である。
図6に示すように、第3実施形態の(双極型)電極1では、集電体5が、図3又は図4示す前記第一集電素子4aと、図5に示す前記第2集電素子4bとの間に更に第5樹脂2eからなる樹脂層9を含む、いわば3層構成であることを特徴とする。
かかる構成とすることで、さらに耐衝撃性を向上させることができる。特に中央の樹脂層により外部からの振動、衝撃を吸収緩和することができる。
ここで、本実施形態では、第5樹脂2eに導電性を有する樹脂(高分子材料)を用いることで、双極型電極及び非双極型二次電池用の電極(正極または負極)のいずれにも構成し得る。更に、後述する実施例3のように、第5樹脂2eに加えて、更に導電材(導電性フィラー)を添加して、導電性を有する集電素子として機能するようにしてもよい。かかる構成でも、双極型電極及び非双極型二次電池用の電極(正極または負極)のいずれにも構成し得る。添加する導電材としては、特に制限されるものではなく、後述する第1導電材及び第2導電材で用いられているものを幅広く適用できる。
また、第5樹脂2eに絶縁性の樹脂を用いる場合には、膜厚方向に導電性を確保できないが、面内方向には第一集電素子4aと第2集電素子により導電性を確保できることから、非双極型二次電池用の電極(正極または負極)とすることができる。
以下、本実施形態の電極の各構成要件ごとに更に詳しく説明する。
[集電体]
(1)集電体の電子伝導性(抵抗値)
集電体の抵抗値に関しては、双極型二次電池用および非双極型二次電池用の集電体に求められる膜厚方向(積層方向)および面内方向の電子伝導性が十分に確保できれいればよく、特に制限されるものではない。
かかる観点から、双極型二次電池の双極型電極用の集電体として用いる場合には、厚さ方向(膜厚方向)の体積抵抗率が、102Ω以下、好ましくは102〜10−5Ωの範囲であるのが好ましい。かかる範囲であれば、膜厚方向の電子伝導性に優れるためである。なお、双極型二次電池の双極型電極用の集電体として用いる場合の面内方向の表面抵抗率は、電子伝導性が十分に確保されていなくともよく、何ら制限されるものではない。
一方、非双極型の二次電池用の集電体として用いる場合には、面内方向の表面抵抗率が100Ω/□以下、好ましくは10Ω/□以下であるのが好ましい。かかる範囲であれば、面内方向の電子伝導性に優れるためである。
上記したように、集電体が双極型電極に用いられる場合には、面内方向よりも膜厚方向に対する電気抵抗が低いのが望ましい。即ち、面内方向の表面抵抗率よりも厚さ方向(膜厚方向)の体積抵抗率が小さく、異方性が見られるのが望ましい。これにより、膜厚方向に低抵抗にでき、双極型二次電池用の集電体に求められる膜厚方向(積層方向)の電子伝導性が十分に確保できる。更に面内方向を高抵抗にできるため、内部短絡時に集電体の面内方向に電流が流れて、発生個所に電流が集中するのを防止でき、発熱現象を防止できる点で優れておる。
また、集電体が双極型電極に用いられる場合には、集電体の抵抗値に関しては、膜厚方向(積層方向)の電子伝導性が十分に確保できれいればよいことから、好ましくは、電池全体の抵抗値に対して、集電体の積層方向における抵抗値が、1/100以下、好ましくは1/1000以下となるように制御するのが望ましい。かかる抵抗値の制御には、導電材の種類や導電性フィラー濃度などを調節することで行うことができる。
なお、双極型二次電池でも、正極活物質層側の最外層集電体及び負極活物質層側の最外層集電体は、積層方向に水平な方向(面内方向)の抵抗値も低減する必要がある。そのため、上記した非双極型の二次電池用の集電体として用いる場合の面内方向の表面抵抗率を併せ持つのが望ましい。かかる観点から最外層集電体に関しては、本実施形態の集電体のほか、既存の金属集電箔を用いてもよい。
本実施形態の集電体では、該集電体を構成する第一集電素子、第二集電素子及び樹脂層についても、双極型二次電池用および非双極型二次電池用の集電体に求められる膜厚方向(積層方向)および面内方向の電子伝導性が十分に確保できれいればよく、特に制限されるものではない。ここで、第一集電素子、第二集電素子及び樹脂層の各層間の接着性(密着性)についても、第1樹脂と第3樹脂と第5樹脂間や第2樹脂と第4樹脂間で高い接着性(密着性)を有し、これらの界面での接触抵抗の増加を抑えることができる。そのため、双極型二次電池の双極型電極用の集電体の場合には、第一集電素子、第二集電素子及び樹脂層において、上記集電体と同程度の電子伝導性(電気抵抗)であればよいといえる。また、非双極型二次電池の集電体の場合には、第一集電素子、第二集電素子において、上記集電体と同程度の電子伝導性(電気抵抗)であればよいといえる。即ち、非双極型二次電池の集電体では、集電体の表面層である第一集電素子、第二集電素子において面内方向の電子伝導性が十分に確保できれいればよく、樹脂層については、特に制限されず、絶縁体であってもよい。
かかる観点から、双極型二次電池の双極型電極に用いられる第一集電素子、第二集電素子及び樹脂層の厚さ方向(膜厚方向)の体積抵抗率は、100Ω以下、好ましくは10Ω以下であるのが好ましい。かかる範囲であれば、膜厚方向の電子伝導性に優れるためである。なお、双極型二次電池の双極型電極に用いられる第一集電素子、第二集電素子及び樹脂層の面内方向の表面抵抗率は、何ら制限されるものではない。
一方、非双極型の二次電池に用いられる第一集電素子及び第二集電素子の面内方向の表面抵抗率が100Ω/□以下、好ましくは10Ω/□以下であるのが好ましい。かかる範囲であれば、面内方向の電子伝導性に優れるためである。なお、非双極型二次電池に用いられる樹脂層の面内方向の表面抵抗率は、何ら制限されるものではない。非双極型二次電池に用いられる第一集電素子、第二集電素子及び樹脂層の厚さ方向(膜厚方向)の体積抵抗率は、何ら制限されるものではない。
上記した面内方向の表面抵抗率の測定方法としては、実施例で用いた測定方法である、JIS K 7194(導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法)に従って測定することができる。例えば、JIS規格により所定サイズに切り出したシート(サンプル)を該JIS規格に適合する市販の抵抗測定機を用いて計測して求めることができる。また、厚さ方向(膜厚方向)の体積抵抗率の測定方法としても、実施例で用いた測定方法である、電気抵抗測定器A(株式会社井元製作所製:製品仕様;測定対象:導電性高分子・ゴム、測定電極:Ф20・Ф10mm、電極荷重:1、2、3、4、5kg、電極材質:銅・試料接面金メッキ、厚さ計:デジタルゲージ、手動荷重:レバ操作により任意荷重印加可能)を用いて計測して求めることができる。但し、面内方向の表面抵抗率及び厚さ方向(膜厚方向)の体積抵抗率の測定原理は、既に確立されており、上記した測定装置によらなくとも、市販の測定装置を用いて同様に測定することができる。
(2)集電体の厚さ
集電体の厚さは、軽量化により電池の出力密度を高める上では、薄いほど好ましい。かかる観点から、集電体の厚さは、5〜200μm、好ましくは5〜150μm、更に好ましくは5〜100μmである。かかる範囲であれば、集電体の少なくとも膜厚方向の電子伝導性を確保した上で、軽量化による電池の出力密度を高めることができる。但し、上記範囲を外れる場合であっても、本実施形態の作用効果を奏することができるものであれば、本実施形態の電極として適用し得る。特に双極型電極の集電体では、膜厚方向(積層方向)に垂直な面方向(水平方向)の電気抵抗が高くてもよいため、上記範囲よるも更に集電体の厚さをより薄くすることが可能である。これにより、電池出力特性に優れ、長期信頼性に優れた電池を構築できる。
第一集電素子、第二集電素子の厚さは、本実施形態の目的である活物質層との界面の接着性(密着性)、更には耐熱プレス性能を有効に発現できる厚さであればよく、特に制限されるものではないが、軽量化により電池の出力密度を高める上では、薄いほど好ましい。かかる観点から、第一集電素子の厚さは、2〜90μm、好ましくは2〜50μm、更に好ましくは2〜40μmである。第二集電素子の厚さは、1〜199μm、好ましくは1〜146μm、更に好ましくは1〜96μmである。
また、樹脂層の厚さは、第一及び第二集電素子との界面の接着性(密着性)、更には耐熱プレス性能を有効にできる厚さであればよく、特に制限されるものではないが、軽量化により電池の出力密度を高める上では、薄いほど好ましい。かかる観点から、1〜50μm、好ましくは1〜30μm、更に好ましくは1〜10μmである。
さらに、上記第一集電素子、第二集電素子ないし樹脂層を複数積層して用いる場合でも、上記した目的を達成できる範囲内で適宜最適な厚さを決定すればよいといえる。
(3)集電体の耐電位
有機物の耐久電位(電位窓)は、リチウム二次電池の全電圧範囲(0〜4.5V)をカバーすることが難しい。このため、正・負極の各面について、電位に対応する電位窓を有するポリマーで樹脂集電体を作成することが必要となる。かかる観点から、活物質層のバインダとの関連において、特に耐電位に優れる組合せとしては、例えば、以下のような組合せが挙げられる。但し、本実施形態はこれらに何ら制限されるものではない。
即ち、耐電位に優れる電極を構成するには、まず、第一および第二活物質層の第1および第二バインダとして、ポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエンゴム、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリイミドよりなる群から選ばれてなる少なくとも1種を使用する。かかるバインダに対応する第1樹脂ないし第3樹脂としては、SP値が11未満のポリマーであるポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエンゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリスチレン、ポリアミドおよびポリオレフィンよりなる群から選ばれてなる少なくとも1種のポリマーを含むもの、好ましくは全量これらのポリマーを用いるのが望ましい。更に、第2または第4樹脂として、ポリフェニレンエーテル、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートおよびポリメチルメタクリレートよりなる群から選ばれてなる少なくとも1種のポリマーを含むもの、好ましくは全量これらのポリマーを用いるのが望ましい。これにより、本実施形態の目的である活物質層と集電体の界面の接着性(密着性)を向上すると共に、正極電位及び負極電位それぞれの電位に長期間耐えうる電極を構成し得るものである。さらに、上記第一集電素子、第二集電素子ないし樹脂層を複数積層して用いる場合でも、上記した目的を達成できる範囲内でそれぞれの層の樹脂や導電材の種類を決定すればよいといえる。但し、本実施形態に用いられる集電体の各構成要素については、これらに何ら制限されるものではない。以下、集電体の各構成要素につき、詳しく説明する。
(4)集電体内の各構成要素について
(a)第1樹脂及び第3樹脂
上記した第1及び第2実施形態に用いられる第1樹脂及び第3樹脂は、いずれも活物質層との界面の接着性(密着性)を向上させることができるものであればよい。具体的には、両面の活物質層の各バインダとの間で上記したSP値の差0〜2.5の範囲を満足し得るものであればよく、特に制限されるものではない。これら第1樹脂及び第3樹脂を用いることで、金属集電箔に比して、軽量であるため、電池の高出力密度化が可能となる。こうした接着性(密着性)に優れ、剥れないポリマーを用いることで、活物質層との界面でアンカー効果を狙うこともできる。
より好ましくは、導電材3a、3bと併用されることから、上記SP値の差を満足した上で、該導電材3a、3bを結着させることができる結着性を有するポリマー(結着高分子)を用いるのが望ましい。上記SP値の差を満足するような結着高分子を用いることで、活物質層のバインダとの接着性のほか、導電材同士や活物質粒子との結着性を高め、電池の信頼性をより一層高めることができる。また、第1樹脂及び第3樹脂、特に結着高分子は、印加される正極電位および負極電位に耐えうる材料から選択されるのが望ましい。また、正極活物質層や負極活物質層に熱融着するために、熱可塑性であることが好ましい。但し、集電体表面に、通常の正極、負極スラリー塗布による正極活物質層や負極活物質層の形成も可能であるため、必ずしも熱可塑性であるものに限られない。
以上の点から、第1樹脂及び第3樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル;ポリイミド(PI);ポリアミド(PA);ポリスチレン(PSt);ポリフッ化ビニリデン(PVdF);ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);スチレンブタジエンゴム(SBR)などの合成ゴム;ポリアクリロニトリル(PAN);ポリメチルアクリレート(PMA);ポリメチルメタクリレート(PMMA);ポリ塩化ビニル(PVC);エポキシ樹脂;スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS);アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS);ポリスチレン;シリコーンなどが挙げられる。これらの樹脂(ポリマー)は、1種単独で用いてもよいし、2種併用してもよい。
なお、上記した各種共重合体については、当該第1樹脂と第2樹脂と必要に応じて更に他の樹脂とが共重合する事で構成されるものとみなすこともできる。但し、当該共重合体である第1樹脂と、該第1樹脂の溶解度パレメータの異なる別の第2樹脂とを混合したり、当該共重合体である第1樹脂と別の第2樹脂とを更に共重合してもよく、こうした場合には、上記した各種共重合体を第1樹脂とみなすことができる。同様に、上記した各種共重合体については、当該第3樹脂と第4樹脂とが共重合する事で構成されるものとみなすこともできる。但し、当該共重合体である第3樹脂と、該第3樹脂の溶解度パレメータの異なる別の第4樹脂とを混合したり、当該共重合体である第3樹脂と別の第4樹脂とを更に共重合してもよく、こうした場合には、上記した各種共重合体を第3樹脂とみなすことができる。
なかでも、SP値が11未満のポリマーであるPVdF;SBR;PTFE;PI;PE、PP等のポリオレフィン;PSt;PAなどが好適に用いられる。これは、後述する活物質層に用いられるバインダとしては、通常、PVdF、SBR、PTFE、PIのいずれかが使用されることが多く、こうしたバインダと組み合わせて使用する場合に、上記したポリマーが、上記SP値の差を満足し得るためである。ただし、本実施形態ではこれらに何ら制限されるものではない。
また、第1樹脂及び第3樹脂のうち、結着高分子として用いることができるものとしては、例えば、エポキシ樹脂;SEBS;ABS;SBRなどの合成ゴム材料のほか、PE、PP等のポリオレフィン;PET、PEN等のポリエステル;シリコーン、PI;PA;PVdF;PTFE;PAN;PMA;PMMA;PVCなどが挙げられる。なかでも、電解質(有機溶媒)に対して膨潤性がない点では、エポキシ樹脂が好ましい。
また、第1樹脂及び第3樹脂は、熱を加えることで融解し易く、活物質層に融着することが容易であり、さらに電位窓が広く正極電位ないし負極電位に対して安定な素材、即ち、正極電位または負極電位に耐えうるものを選択するのが望ましい。例えば、第1樹脂2aを含む第一集電素子4aの表面に第一活物質層8aとして正極活物質層が形成され、第3樹脂2cを含む第二集電素子4bの表面に第二活物質層8bとして負極活物質層が形成される場合、第1樹脂2aには正極電位に耐えうるものを選択するのがよい。同様に、第3樹脂2cには負極電位に耐えうるものを選択するのがよい。こうした観点からは、上記した第2樹脂及び第4樹脂には、PE、PP等のポリオレフィン;PET、PEN等のポリエステル;PI;PA;PVdFなどのポリマーが好ましい。
また、充放電反応による発熱や炎天下に車両搭載して使用されことにより、電池内部温度60〜80℃程度まで昇温することもある。そこで、電池内部温度が60〜80℃程度に上昇しても軟化せず上記接着性(密着性)を損なわない素材を用いるのが望ましい。こうした観点からは、第1樹脂及び第3樹脂には、PP等のポリオレフィン、PI、PA、アラミド、ポリエステル、セルロース等のポリマーが望ましい。
上記第1樹脂及び第3樹脂のSP値については、上記した通り、正極または負極活物質層の各バインダのSP値により異なるため一義的に規定することはできないが、上記したように、SP値が11未満、好ましくは3〜10、より好ましくは3〜8を有するポリマーを用いるのが望ましい。
また、上記第1樹脂及び第3樹脂を含む第一及び第二集電素子4a、4bでは、第1及び第3導電材3a、3bをそれぞれ併用することから、上記したような導電性のない汎用性のある樹脂(絶縁性樹脂)を用いることができるが、該絶縁性樹脂に変えて、あるいは併用する形で、導電性を有する樹脂(導電性樹脂)を用いてもよい。
これらの導電性樹脂は、共役したポリエン系がエネルギー帯を形成し導電性を示すと考えられている。代表的な例としては、電解コンデンサなどで実用化が進んでいるポリエン系導電性高分子を用いることができる。具体的には、ポリフェニレンスルフィド、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、PAN、ポリオキサジアゾール、またはこれらの混合物などが挙げられる。導電性(電子伝導性)および電池内で安定に使用できるという観点から、ポリフェニレンスルフィド、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレンが好ましい。なお、双極型電極の集電体に用いる場合には、該集電体内部のイオン透過を抑制する観点から、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さないポリマーを用いるのが望ましい。
なお、導電性樹脂は、単独では印加される正極電位や負極電位に耐えうる良好な材料となるものが現段階では開発されていない為、上記した絶縁性樹脂や後述する導電材と組み合わせて、印加される正極電位や負極電位に耐えうるようにすればよい。
(b)第2樹脂及び第4樹脂
上記した第1及び第2実施形態に用いられる第2樹脂及び第4樹脂は、いずれも第一及び第二集電素子の耐衝撃性、特に電極塗付後のプレス工程に対して十分な衝撃強さを付与することができるものであればよい。具体的には、150℃における耐熱プレス性能が2〜4Mpaを満足し得るものであればよく、特に制限されるものではない。これら第2樹脂及び第4樹脂を用いることで、金属集電箔に比して、軽量であるため、電池の高出力密度化が可能となる。
第一及び第二集電素子にそれぞれ含まれる第2樹脂及び第4樹脂として、具体的には、ポリフェニレンエーテル(PPE);PAN;ポリブタジエン;PA;PET、PEN等のポリエステル;PMMA;PI;SEBS;ABS;PVdF;PTFE;SBRなどの合成ゴム;PMA;PVC;エポキシ樹脂;PSt;シリコーン;PE、PP等のポリオレフィンなどが挙げられる。これらの樹脂(ポリマー)は、1種単独で用いてもよいし、2種併用してもよい。なかでも、優れた耐衝撃性、耐振動性を有し、正極電位、負極電位に対して安定なポリマーであるPPE、PAN、ポリブタジエン、PA、PET、PMMAなどが好適に用いられる。ただし、本実施形態ではこれらに何ら制限されるものではない。
なお、上記した各種共重合体については、当該第2樹脂と第1樹脂と必要に応じて更に他の樹脂とが共重合する事で構成されるものとみなすこともできる。但し、当該共重合体である第2樹脂と、該第2樹脂の溶解度パレメータの異なる別の第1樹脂とを混合したり、当該共重合体である第2樹脂と別の第1樹脂とを更に共重合してもよく、こうした場合には、上記した各種共重合体を第2樹脂とみなすことができる。同様に、上記した各種共重合体については、当該第4樹脂と第3樹脂とが共重合する事で構成されるものとみなすこともできる。但し、当該共重合体である第4樹脂と、該第4樹脂の溶解度パレメータの異なる別の第3樹脂とを混合したり、当該共重合体である第4樹脂と別の第3樹脂とを更に共重合してもよく、こうした場合には、上記した各種共重合体を第4樹脂とみなすことができる。
また、第2樹脂及び第4樹脂は、熱を加えることで融解し易く、活物質層に融着することが容易であり、さらに電位窓が広く正極電位ないし負極電位に対して安定な素材、即ち、正極電位または負極電位に耐えうるものを選択するのが望ましい。例えば、第2樹脂2bを含む第一集電素子4aの表面に第一活物質層8aとして正極活物質層が形成され、第4樹脂2dを含む第二集電素子4bの表面に第二活物質層8bとして負極活物質層が形成される場合、第2樹脂2bには正極電位に耐えうるものを選択するのがよい。同様に、第4樹脂2dには負極電位に耐えうるものを選択するのがよい。こうした観点からは、上記した第2樹脂及び第4樹脂には、PE、PP等のポリオレフィン;PET、PEN等のポリエステル;PI;PA;PVdFなどのポリマーが好ましい。
また、充放電反応による発熱や炎天下に車両搭載して使用されことにより、電池内部温度60〜80℃程度まで昇温することもある。そこで、電池内部温度が60〜80℃程度に上昇しても軟化せず、外部からの衝撃、振動に対しても優れた特性を損なわない素材を用いるのが望ましい。こうした観点からは、第2樹脂及び第4樹脂には、PP等のポリオレフィン、PI、PA、アラミド、ポリエステル、セルロース等のポリマーが望ましい。
また、上記第2樹脂及び第4樹脂を含む第一及び第二集電素子4a、4bでは、第1及び第3導電材3a、3bをそれぞれ併用することから、上記したような導電性のない汎用性のある樹脂(絶縁性樹脂)を用いることができるが、該絶縁性樹脂に変えて、あるいは併用する形で、導電性を有する樹脂(導電性樹脂)を用いてもよい。
これらの導電性樹脂は、共役したポリエン系がエネルギー帯を形成し導電性を示すと考えられている。代表的な例としては、電解コンデンサなどで実用化が進んでいるポリエン系導電性高分子を用いることができる。具体的には、ポリフェニレンスルフィド、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、PAN、ポリオキサジアゾール、またはこれらの混合物などが挙げられる。導電性(電子伝導性)および電池内で安定に使用できるという観点から、ポリフェニレンスルフィド、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレンが好ましい。なお、双極型電極の集電体に用いる場合には、該集電体内部のイオン透過を抑制する観点から、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さないポリマーを用いるのが望ましい。
なお、導電性樹脂は、単独では印加される正極電位や負極電位に耐えうる良好な材料となるものが現段階では開発されていない為、上記した絶縁性樹脂や後述する導電材と組み合わせて、印加される正極電位や負極電位に耐えうるようにすればよい。
(b−1)第1樹脂と第2樹脂の配合比率、第3樹脂と第4樹脂の配合比率
第1樹脂と第2樹脂の配合比率(重量比)としては、上記第1実施形態の変形例に記載の通り、30以上100未満:0を超えて70以下、好ましくは30〜90:70〜10、より好ましくは30〜70:70〜30である。ここで、第1樹脂と第2樹脂との重量比の合計は100である。この際、第2樹脂2bは150℃における耐熱プレス性能が少なくとも2〜4Mpaであるのがより好ましい。但し、上記範囲を外れる配合比率であっても、当該第2実施形態の作用効果を有効に発現することができるものであれば、本実施形態に技術的範囲に含まれることはいうまでもない。
第3樹脂と第4樹脂の配合比率(重量比)としては、上記第2実施形態の変形例に記載の通り、30以上100未満:0を超えて70以下、好ましくは30〜90:70〜10、より好ましくは30〜70:70〜30である。ここで、第3樹脂と第4樹脂との重量比の合計は100である。この際、第4樹脂2dは150℃における耐熱プレス性能が少なくとも2〜4Mpaであるのがより好ましい。但し、上記範囲を外れる配合比率であっても、当該第実施形態の作用効果を有効に発現することができるものであれば、本実施形態に技術的範囲に含まれることはいうまでもない。
(c)第5樹脂
上記した第3実施形態に用いられる第5樹脂は、耐衝撃性を更に向上させることができるものであればよい。第5樹脂を用いることで、金属集電箔に比して、軽量であるため、電池の高出力密度化が可能となる。
樹脂層に含まれる第5樹脂としてが、上記第1〜4樹脂のいずれか、好ましくは第2、4樹脂のように耐熱プレス性能を有するポリマーが望ましい。具体的には、ポリフェニレンエーテル(PPE);PAN;ポリブタジエン;PA;PET、PEN等のポリエステル;PMMA;PI;SEBS;ABS;PVdF;PTFE;SBRなどの合成ゴム;PMA;PVC;エポキシ樹脂;PSt;シリコーン;PE、PP等のポリオレフィンなどが挙げられる。これらの樹脂(ポリマー)は、1種単独で用いてもよいし、2種併用してもよい。なかでも、優れた耐衝撃性、耐振動性を有するポリマーであるPPE、PAN、ポリブタジエン、PA、PET、PMMAなどが好適に用いられる。ただし、本実施形態ではこれらに何ら制限されるものではない。
なお、第5樹脂は、熱を加えることで融解し易く、第一及び第二集電素子4a、4bに融着することが容易であるものを選択するのが望ましい。こうした観点からは、第5樹脂には、PE、PP等のポリオレフィン;PET、PEN等のポリエステル;PI;PA;PVdFなどのポリマーが好ましい。
また、充放電反応による発熱や炎天下に車両搭載して使用されことにより、電池内部温度60〜80℃程度まで昇温することもある。そこで、電池内部温度が60〜80℃程度に上昇しても軟化せず、外部からの衝撃、振動に対しても優れた特性を損なわない素材を用いるのが望ましい。こうした観点からは、第5にも、PP等のポリオレフィン、PI、PA、アラミド、ポリエステル、セルロース等のポリマーが望ましい。
また、上記第5樹脂を含む樹脂層9では、第3実施形態の電極構成で説明したように、双極型電極及び非双極型二次電池用の電極(正極または負極)のいずれにも構成し得る。上記したような導電性のない汎用性のある樹脂(絶縁性樹脂)を用いることで非双極型二次電池用の電極(正極または負極)とすることができる。また、上記絶縁性樹脂に変えて、あるいは併用する形で、導電性を有する樹脂(導電性樹脂)を用いる場合には、双極型電極及び非双極型二次電池用の電極(正極または負極)のいずれにも構成し得る。
これらの導電性樹脂は、共役したポリエン系がエネルギー帯を形成し導電性を示すと考えられている。代表的な例としては、電解コンデンサなどで実用化が進んでいるポリエン系導電性高分子を用いることができる。具体的には、ポリフェニレンスルフィド、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、PAN、ポリオキサジアゾール、またはこれらの混合物などが挙げられる。導電性(電子伝導性)および電池内で安定に使用できるという観点から、ポリフェニレンスルフィド、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレンが好ましい。なお、双極型電極の集電体に用いる場合には、該集電体内部のイオン透過を抑制する観点から、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さないポリマーを用いるのが望ましい。
(d)第1導電材及び第2導電材
上記した第1ないし第3実施形態に用いられる第1導電材及び第2導電材は、いずれも集電体に所望の導電性(電子伝導性)を持たせることができるものであればよく、カーボンブラックあるいは金属あるいは半導体などの導電性を有する材料から選択される。好ましくは、集電体内部のイオン透過を抑制する観点から、電荷移動媒体として用いられるイオンに関してイオン伝導性を有さない材料を用いるのが望ましい。
第1導電材及び第2導電材に用いられる導電性を有する材料(導電性材料)としては、具体的には、グラファイトやカーボンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボン;アルミニウム、ステンレス、銀、金、銅、チタンなどの金属;シリコン(バンドギャップ約1.1eV)、ゲルマニウム(同約0.67eV)、ガリウムヒ素化合物半導体(同約1.4eV等)の半導体などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これら第1導電材及び第2導電材に用いられる導電性材料は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金材が用いられてもよい。好ましくは銀、金、アルミニウム、ステンレス、カーボン、さらに好ましくはカーボンである。また第1導電材及び第2導電材としては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに上記導電性材料をめっき等でコーティングしたものでもよい。こうしためっき等でコーティングした導電材では、より一層の軽量化が図れる点で優れている。
また、第1導電材3a及び第2導電材3bは、印加される正極電位や負極電位に耐えうる材料から選択されるのが望ましい。そのため、第1導電材3a及び第2導電材3bの種類を、正極活物質層側と負極活物質層側で変えてもよい。例えば、第1導電材3aを含む第一集電素子4aの表面に第一活物質層8aとして正極活物質層が形成され、第2導電材3bを含む第二集電素子4bの表面に第二活物質層8bとして負極活物質層が形成される場合、第1導電材3aには正極電位に耐えうるものを選択するのがよい。同様に、第2導電材3bには負極電位に耐えうるものを選択するのがよい。なお、正極側と負極側を入れ替えた場合には、第1導電材3aには負極電位に耐えうるものを選択するのがよいし、第2導電材3bには正極電位に耐えうるものを選択するのがよい。
そこで、正極活物質層側に適用し得る導電材3a(3b)としては、例えば、カーボン(C)、クロム(Cr)、金(Au)、ハフニウム(Hf)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、レニウム(Re)、ロジウム(Rh)、チタン(Ti)、タングステン(W)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、およびこれらの酸化物などが好ましく用いられる。正極活物質層側により好適に用いられる導電材としては、印加される正極電位に耐えうる材料であって、導電性、高分散性の観点から、カーボン、ニッケル、アルミニウムが好ましい。また、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに上記導電性材料(ニッケル、アルミニウム等)をめっき等でコーティングしたものが好ましい。なかでもカーボンがより好ましい。
負極活物質層側に適用し得る導電材3a(3b)としては、例えば、カーボン(C)、コバルト(Co)、ジスプロジウム(Dy)、エルビウム(Er)、ガドリニウム(Gd)、ハフニウム(Hf)、鉄(Fe)、ランタン(La)、マグネシウム(Mg)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、レニウム(Re)、ロジウム(Rh)、タンタル(Ta)、テルビウム(Tb)、チタン(Ti)、タングステン(W)、バナジウム(V)、イッテルビウム(Yb)、ジルコニウム(Zr),アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、カドミウム(Cd)、銅(Cu)、およびこれらの酸化物などが好ましく用いられる。負極活物質層側により好適に用いられる導電材としては、印加される負正極電位に耐えうる材料であって、導電性、高分散性の観点から、カーボン、チタン、銅が好ましい。また、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに上記導電性材料(チタン、銅等)をめっき等でコーティングしたものが好ましい。なかでもカーボンがより好ましい。
上記好適な導電材3a(3b)の中でもカーボン粒子が望ましく、カーボンブラックやグラファイトなどが挙げられる。これらカーボンブラックやグラファイトなどのカーボン粒子は電位窓が非常に広く、正極電位および負極電位の双方に対して幅広い範囲で安定であり、さらに導電性に優れているためである。そのため、上記した第1実施形態のように、1層構成の集電体を構成する第一集電素子に用いられる第1導電材のように、正極電位及び負極電位双方に耐え得る材料が求められる場合に、好適に利用されるものである。ただし、カーボン以外でも、上記した正極活物質層側と負極活物質層側の双方に好適な材料として例示されているものであって、正極電位および負極電位の双方に対して幅広い範囲で安定なものであれば、第1実施形態の第1導電材に十分に適用可能である。
また、カーボン粒子は、他の金属製の導電材に比べて非常に軽量なため、質量の増加が最小限になる。さらに、カーボン粒子は、電極(特に正極活物質層)の導電助剤として用いられることが多いため、これらの導電助剤と接触しても、同じ材料であるがゆえに接触抵抗が非常に低くなる。なお、カーボン粒子を用いる場合には、カーボンの表面に疎水性処理を施すことにより電解質のなじみ性を下げ、集電体内部に電解質が染み込みにくい状況を作ることも可能である。
ここで、上記導電材3a、3bは、絶縁体でなければよく、電気伝導率(導電率)が10−6S/m以上であればよい。一般に電気伝導率(導電率)がグラファイト(電気伝導率:106S/m)と同等以上のものが導体、10−6S/m以下のものを不導体(絶縁体)、その中間の値をとるものを半導体と分類されている。本実施形態の導電材3a、3bでは半導体の電気伝導率以上のものであればよいが、好ましくは導体の電気伝導率以上が望ましい。
(d−1)第1導電材及び第2導電材の平均粒子径
第1導電材及び第2導電材の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、いずれも0.01〜10μm程度であることが望ましい。なお、本明細書中において、「粒子径」とは、第1導電材及び第2導電材(導電性フィラー)の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。後述する活物質粒子などの粒子径や平均粒子径も同様に定義することができる。
(d−2)導電材の含有量
第1導電材3aの含有量は、第一集電素子4a全体に対して5〜50wt%、好ましくは5〜20wt%、より好ましくは5〜10wt%である。5wt%以上であれば、低抵抗であり、集電体5の電子伝導性を十分に確保できる。50wt%以下であれば、低抵抗であり成膜(成形)も容易である。特に双極型電極では、厚さ方向(積層方向)に電流が流れるため、電子伝導のパスが非双極型のリチウムイオン二次電池と比べて格段に短くなり、その分、膜厚方向の電子伝導性を十分に確保でき、高出力となる点で優れている。また上記範囲内であれば、第一集電素子4aと第一活物質層8aの界面の接着性(密着性)を高め、電池の信頼性を高めることができる。更に面内方向の電子伝導性も十分に確保でき、非双極型の電極にも十分適用可能である。第1導電材3a、ひいては集電体5全体の重量増加を抑制することができる。
第2導電材3bを含む場合には、該第2導電材3aの含有量は、第二集電素子4b全体に対して5〜50wt%、好ましくは5〜20wt%、より好ましくは5〜10wt%である。かかかる範囲であれば、集電体5の電子伝導性を十分に確保できる。特に双極型電極では、厚さ方向(積層方向)に電流が流れるため、電子伝導のパスが非双極型のリチウムイオン二次電池と比べて格段に短くなり、その分、膜厚方向の電子伝導性を十分に確保でき、高出力となる点で優れている。また上記範囲内であれば、第二集電素子4bと第二活物質層8bの界面の接着性(密着性)を高め、電池の信頼性を高めることができる。更に面内方向の電子伝導性も十分に確保でき、非双極型の電極にも十分適用可能である。更にまた。第2導電材3b、ひいては集電体5全体の重量増加を抑制することができる。
(d−3)導電材の分布
導電材3a、3bは、集電素子4a、4bの面内方向や膜厚方向で、該導電材の種類および濃度を変更し、集電素子、更には集電体の部分毎に電子伝導性の有無・多少を制御してもよい。こうした導電材の種類および濃度の制御により、塗布した活物質層8a、8bの厚さ分布が生じやすい周辺部や構造上電流の集中しやすい箇所(中央部など)に応じて集電体5の電子伝導性を制御し、内部発熱の発生を緩和できる点で優れている。
例えば、各集電素子4a、4b」の中央部には、導電材(導電性フィラー)3a、3bに相対的に導電率の高い導電性材料を用いたり、濃度を高めるなどして、集中する電流を素早く活物質層に供給できるようにするのがよい。一方、活物質層8a、8bの厚さ分布が生じやすい周辺部には、導電材(導電性フィラー)3a、3bに相対的に導電率の低い導電性材料を用いたり、濃度を低減する(第1〜第4樹脂の濃度を高める)などして制御してもよい。また、活物質層8a、8bが集電体5上に形成されていない周縁部では、導電材(導電性フィラー)3a、3bを用いることなく(濃度をゼロまで低減し)、第1〜第4樹脂のみで構成するようにしてもよい。ただし、こうした構成とする場合、上記した導電材や第1〜第4樹脂の含有量の計算には、当該周縁部は含めないものとする。すなわち、集電素子として機能する部分のみにつき、上記した導電材や第1〜第4樹脂の含有量を適用すればよいものとする。
(d−4)導電材の形状
また、導電材(導電性フィラー)の形状(形態)は、粒子形態で用いればよいが、粒子形態に限られず、カーボンナノチューブなど、いわゆるフィラー系導電性樹脂組成物として実用化されている粒子形態以外の形態であってもよい。
(e)他の添加材
第一集電素子4a、第二集電素子4b及び樹脂層9には、上記第1〜第5樹脂、第1〜第2導電材の他、本実施形態の作用効果に影響を与えない範囲内であれば、他の樹脂成分や導電性成分、更には撥水剤などの他の添加材を適量含有していてもよい。
(5)集電体の軟化点
集電体の各層(第一集電素子、第二集電素子、樹脂層、更に必要に応じて積層する集電素子や樹脂層を含む)の軟化点は、100〜300℃であることが好ましく、120〜250℃であることがより好ましい。かような範囲であれば、集電体の各層間や集電体と活物質層との熱融着(熱硬化)が行いやすく製造時の生産性が向上するため好ましい。また、電池使用時(充放電時)の電池内部温度は、60〜80℃程度の高温になることもある。したがって製造段階で熱融着(熱硬化)した後の使用段階では、80℃でも十分な形状保持性能を有し、耐熱性、機械強度に優れる有機構造体を提供できるため好ましい。なお、本明細書において、軟化点は、JIS K7206によって測定された値を採用する。集電体の各層を構成する有機(高分子)材料が、2種以上の高分子材料の混合物である場合には、これら混合物の軟化点を測定し、この値を軟化点とする。
(6)集電体の各層の任意の構成材料について
集電体の各層(第一集電素子、第二集電素子、樹脂層、更に必要に応じて積層する集電素子や樹脂層を含む)には、上記した第1〜第5樹脂を適宜含むものであればよく、他の樹脂を併用してもよい。同様に集電体の各層(第一集電素子、第二集電素子、樹脂層、更に必要に応じて積層する集電素子や樹脂層を含む)には、上記した第1〜第2導電材を適宜含むものであればよく、他の導電材を併用してもよい。特に更に必要に応じて積層する集電素子や樹脂層の構成は、上記した第一集電素子、第二集電素子、樹脂層と同様にして行えばよい。また、これらの層には、他の添加剤を含んでいてもよい。
[正極活物質層及び負極活物質層]
正極活物質層および負極活物質層(活物質層8a、8b)は活物質を含み、必要に応じてその他の添加剤をさらに含む。なお、活物質層8a、8bと、正極活物質層および負極活物質層との関係は、非双極型二次電池及び双極型二次電池とで構成が異なる為、以下では、正極活物質層および負極活物質層に分けて説明する。詳しくは、図3〜6の電極構成を、図1、2の非双極型二次電池と双極型二次電池の各電極構成に併せて適用すればよいといえる。
正極活物質層は、正極活物質を含む。正極活物質としては、例えば、LiMn2O4、LiCoO2、LiNiO2、Li(Ni−Co−Mn)O2およびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの等のリチウム−遷移金属複合酸化物、リチウム−遷移金属リン酸化合物、リチウム−遷移金属硫酸化合物などが挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、リチウム−遷移金属複合酸化物が、正極活物質として用いられる。なお、上記以外の正極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
負極活物質層は、負極活物質を含む。負極活物質としては、例えば、グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、リチウム−遷移金属複合酸化物(例えば、Li4Ti5O12)、金属材料、リチウム合金系負極材料などが挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、炭素材料またはリチウム−遷移金属複合酸化物が、負極活物質として用いられる。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
各正極活物質層、負極活物質層に含まれるそれぞれの活物質の平均粒子径は特に制限されないが、高出力化の観点からは、好ましくは1〜20μmである。
電極活物質層(正極活物質層および負極活物質層)は、第一又は第二バインダ6a、6bを含む。
電極活物質層に用いられる第一又は第二バインダ6a、6bとしては、特に限定されないが、例えば、以下の材料が挙げられる。ポリプロピレン(PP);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル;ポリイミド;ポリアミド;ポリフッ化ビニリデン(PVdF);エポキシ樹脂;スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS);アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS);スチレンブタジエンゴム(SBR)などの合成ゴム材料などが挙げられる。中でも、好適には、PP;PET、PEN等のポリエステル;ポリイミド;ポリアミド;PVdF;エポキシ樹脂;SEBS;ABS;SBRなどの合成ゴム材料などである。これらの好適なバインダは、耐熱性に優れ、さらに電位窓が非常に広く正極電位、負極電位双方に安定であり電極活物質層に使用が可能となる。中でも、正極電位、負極電位に対して安定なバインダ6a、6bとしては、ポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエンゴム、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリイミドよりなる群から選ばれてなる少なくとも1種を使用するのが望ましい。これらのバインダ6a、6bでは、集電体の接着性(密着性)向上目的で好適に用いられる、SP値が11未満のポリマーであるPVdF、SBR、PTFE、PI、PSt、PAおよびポリオレフィン等の第1樹脂や第3樹脂とのSP値の差を小さくできる。またこれらのバインダ6a、6bに対し、正極電位、負極電位に対して安定な第2樹脂や第4樹脂であるPPE、PAN、ポリブタジエン、PA、PETおよびPMMA等を組み合わせるのがより望ましいといえる。これらのバインダ6a、6bは、それぞれ1種単独で用いてもよいし、2種併用してもよい。また、正極活物質層と負極活物質層とで、それぞれの電極電位に対して安定なバインダを使い分けてもよい。こうした場合、正極活物質層で使用するバインダには、PVdFなどが好適に利用できる。一方、負極活物質層で使用するバインダには、PVdF、SBRなどが好適に利用できる。
集電体の集電素子4a、4bと熱融着して結合される電極活物質層に用いられるバインダ6a、6bとしては、PVdF、エポキシ樹脂、SEBS、ABS、合成ゴム(SBRなど)等などが好ましい。これらの材料では、熱融着が行いやすく製造時の生産性が向上するためである。また、バインダが熱硬化性であっても熱融着が行いやすいため、好ましい。好適な熱硬化性バインダとしては、熱硬化性ポリイミド、熱硬化性ポリアミド、エポキシ樹脂、SEBS、ABS、合成ゴム(SBRなど)等が挙げられ、エポキシ樹脂などがより好ましい。
電極活物質層中のバインダは、3〜10wt%が望ましい。かかる範囲内であれば、電極活物質層内で所望の結着性を発現できるほか、該活物質層と集電体との界面の接着性(密着性)を効果的に向上させることができる。なお、電極活物質層中のバインダが、3wt%以上であれば、集電体との接着性を著しく向上させることができる。一方、10wt%以下であれば、電極の充放電容量を低下させることなく上記効果を有効に発現できる。但し、本実施形態では、当該範囲に制限されるものではなく、当該範囲を外れていても、上記した効果を有効に発現できる場合には、本実施形態の技術範囲に含まれるものといえる。
電極活物質層に含まれうるその他の添加剤としては、例えば、導電助剤、電解質塩(リチウム塩)、イオン伝導性ポリマー等が挙げられる。
導電助剤とは、正極活物質層または負極活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、気相成長炭素繊維などの炭素材料が挙げられる。電極活物質層が導電助剤を含むと、電極活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与しうる。
電解質塩(リチウム塩)としては、Li(C2F5SO2)2N、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3等が挙げられる。
イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。
正極活物質層および負極活物質層中に含まれる成分の配合比は、特に限定されない。配合比は、非水電解質型の二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。
各電極活物質層の厚さについても特に制限はなく、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)、イオン伝導性を考慮して適宜決定すればよく、電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、各電極活物質層の厚さは、2〜100μm程度である。
<III>本実施形態の電極(特徴部分)以外の構成について
以上が、本実施形態の二次電池の特徴的な構成要件である電極に関する説明であり、他の構成要件に関しては特に制限されるものではない。よって、以下では、本実施形態の二次電池の特徴的な構成要件である電極以外の他の構成要件に関し、図1、2で説明した非双極型及び双極型リチウムイオン二次電池を例に取り説明するが、本実施形態がこれらに制限されるものではない。
[電解質層]
電解質層を構成する電解質としては、充放電時に正負極間を移動するリチウムイオンのキャリアーとしての機能を有するものであれば特に制限されず、液体電解質、ポリマー電解質、無機固体電解質(酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質)等が用いられうる。
液体電解質は、可塑剤である有機溶媒に支持塩であるリチウム塩が溶解した形態を有する。可塑剤として用いられうる有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)等のカーボネート類が例示される。また、支持塩(リチウム塩)としては、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiTaF6、LiClO4、LiCF3SO3等の電極の合剤層に添加されうる化合物が同様に採用されうる。
一方、ポリマー電解質は、電解液を含むゲル電解質と、電解液を含まない真性(全固体)ポリマー電解質に分類される。
ゲルポリマー電解質は、マトリックスポリマー(ホストポリマー)に、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。電解質としてゲルポリマー電解質を用いることで電解質の流動性がなくなり、外部への電解質の流出をおさえることが容易になる点で優れている。また、双極型二次電池では集電体内部への電解質の流出もおさえることができ、集電体の両面に積層される正極活物質層と負極活物質層間のイオン伝導性を遮断することが容易になる点で優れている。マトリックスポリマー(ホストポリマー)としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(PVdF−HFP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)およびこれらの共重合体等が挙げられる。
真性ポリマー電解質としては、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)等のポリエーテル系ポリマー電解質が挙げられる。通常、真性ポリマー電解質に支持塩(リチウム塩)が溶解してなる構成を有しており、可塑剤である有機溶媒を含まない。したがって、電解質として真性ポリマー電解質を用いることで電解質の流動性がなくなり、外部への電解質の流出がない点で優れている。また、双極型二次電池では集電体内部への電解質の流出もないため、集電体の両面に積層される正極活物質層と負極活物質層間のイオン伝導性を遮断できる点で優れている。
ゲルポリマー電解質や真性ポリマー電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。
なお、電解質層が液体電解質やゲル電解質から構成される場合には、電解質層にセパレータを用いてもよい。セパレータの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンからなる微多孔膜が挙げられる。
[最外層集電体]
双極型二次電池では、最外層集電体(図2参照)として、上記した双極型電極用の集電体を用いることができるほか、既存の金属集電箔を用いることができる。例えば、アルミニウム箔、ステンレス(SUS)箔、ニッケルとアルミニウムのクラッド材、銅とアルミニウムのクラッド材、あるいはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが挙げられる。中でも正極電位、負極電位に耐えうる最外層集電体とするためには、アルミニウム箔、ステンレス箔が好ましい。
さらに本実施形態の双極型電極を最外層の電極にも適用してよい。この場合、例えば、正極タブに接続される最外層の双極型電極では、最外表面に位置する負極活物質層は実質的に充放電反応に寄与しない。同様に負極タブに接続される最外層の双極型電極では、最外表面に位置する正極活物質層は実質的に充放電反応に寄与しない。一方、最外層にも双極型電極を用いることで電池の構成部品点数が削減できる。また、わざわざ最外層電極専用の最外層集電体を用いて正極活物質層のみや負極活物質層のみを形成するための製造ラインの組み替え(ないし切り替え)や生産管理(品質管理)を行う必要がない。さらに、最外層の電極とそれ以外の双極型電極とを取り違えるという不具合の発生も防止できる点などで優れている。
[シール部]
シール部(シーラントないし周辺絶縁層とも称されている)(図2参照)は、電解質層の漏れを防止するために単電池層の周辺部に配置されている。かかる観点からは双極型二次電池に適用するのがよい。この他にも電池内で隣り合う集電体同士が接触したり、積層電極の端部の僅かな不ぞろいなどによる短絡が起こったりするのを防止することもできる。かかる観点からは非双極型および双極型二次電池のいずれに適用してもよい。該シール部としては、例えば、PE、PPなどのポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ゴム、ポリイミドなどが使用でき、耐蝕性、耐薬品性、製膜性、経済性などの観点からは、ポリオレフィン樹脂が好ましい。ただし、これらに何ら制限されるものではない。
シール部は、スパッタ、蒸着、CVD、PVD、イオンプレーティングおよび溶射のいずれかの方法により形成することもできる。こうした形成法に適したシール部31としては、アルミナ、シリカ、マグネシア、イットリアなどが好適に利用可能である。
[タブ(正極タブおよび負極タブ)]
電池外部に電流を取り出す目的で、各集電体に電気的に接続されたタブ(正極タブおよび負極タブ)が電池外装材の外部に取り出されている。具体的には、図1、2、7に示すように、各正極集電体(図1参照)や最外層正極集電体(図2参照)に電気的に接続された正極タブと、各負極集電体(図1参照)や最外層負極集電体(図2参照)に電気的に接続された負極タブとが、電池外装材であるラミネートシートの外部に取り出される(図7参照)。
タブ(正極タブおよび負極タブ)を構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用のタブとして従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。タブの構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましく、より好ましくは軽量、耐食性、高導電性の観点からアルミニウム、銅などが好ましい。なお、正極タブと負極タブとでは、同一の材質が用いられてもよいし、異なる材質が用いられてもよい。また、最外層集電体(図2参照)に導電性に優れた金属集電箔等を用いる場合には、当該集電体の一部を延長することにより正極タブおよび負極タブとしてもよいし、別途準備した正極タブおよび負極タブを各正極及び負極集電体(図1参照)や最外層集電体(図2参照)に電気的に接続してもよい。
[正極および負極端子板]
正極および負極端子板は、必要に応じて使用する。例えば、最外部の集電体(図2参照)から正極タブ及び負極タブを直接取り出す場合には、正極および負極端子板は用いなくてもよい。また、電極端子板の一部を延長することにより正極タブおよび負極タブとしてもよい。あるいは、別途準備した正極タブおよび負極タブや正極および負極端子リードを正極および負極端子板に接続してもよい。
正極および負極端子板の材料は、従来公知のリチウムイオン電池で用いられる材料を用いることができる。例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼、これらの合金を利用することができる。耐蝕性、作り易さ、経済性などの観点からは、アルミニウムを用いることが好ましい。さらに、端子部での内部抵抗を抑える観点から、正極および負極端子板の厚さは、通常、0.1〜2mm程度が望ましい。
[正極および負極端子リード]
正極端子リードおよび負極端子リードに関しても、必要に応じて使用する。例えば、各正極及び負極集電体(図1参照)や最外層集電体(図2参照)や電極端子板から出力電極端子となる正極タブおよび負極タブ(図7参照)を直接取り出す場合には、正極端子リードおよび負極端子リードは用いなくてもよい。
正極端子リードおよび負極端子リードの材料は、公知のリチウムイオン二次電池で用いられる端子リードを用いることができる。なお、電池外装材から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆するのが好ましい。
[電池外装材]
電池外装材としては、公知の金属缶ケースを用いることができるほか、発電要素を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるラミネートフィルムが望ましい。
[二次電池の外観構成]
図7は、本実施形態に係る非双極型ないし双極型二次電池の代表的な実施形態である積層型の扁平な双極型リチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
図7に示すように、積層型の扁平な非双極型ないし双極型リチウムイオン二次電池50では、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極タブ58、負極タブ59が引き出されている。発電要素57は、双極型リチウムイオン二次電池50の電池外装材52によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素57は、正極タブ58及び負極タブ59を外部に引き出した状態で密封されている。ここで、発電要素57は、先に説明した図1、2に示す非双極型や双極型リチウムイオン二次電池の発電要素に相当するものである。また、正極活物質層、電解質層および負極活物質層で構成される単電池層(単セル)が複数積層されたものともいえる。
なお、本実施形態の非双極型及び双極型二次電池は、図1、2に示すような積層型の扁平な形状のものに制限されるものではない。巻回型の二次電池では、円筒型形状のものであってもよいし、こうした円筒型形状のものを変形させて、長方形状の扁平な形状にしたようなものであってもよい。上記円筒型の形状のものでは、その外装材に、ラミネートフィルムを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよいなど、特に制限されるものではない。
また、図7に示すタブ58、59の取り出しに関しても、特に制限されるものではない。正極タブ58と負極タブ59とを同じ辺から引き出すようにしてもよいし、正極タブ58と負極タブ59をそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出しようにしてもよいなど、図7に示すものに制限されるものではない。また、巻回型の双極型二次電池では、タブに変えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
[組電池]
本実施形態の組電池は、本実施形態の双極型二次電池を複数個接続して構成した物である。詳しくは少なくとも2つ以上用いて、直列化あるいは並列化あるいはその両方で構成されるものである。直列、並列化することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。なお、本実施形態の組電池では、本実施形態の双極型二次電池と、他の非双極型リチウムイオン二次電池とを組み合わせて、これらを直列に、並列に、または直列と並列とに、複数個組み合わせて、組電池を構成することもできる。
また、図8は、本実施形態に係る組電池の代表的な実施形態の外観図であって、図8Aは組電池の平面図であり、図8Bは組電池の正面図であり、図8Cは組電池の側面図である。
図8に示すように、本実施形態に係る組電池300は、双極型リチウムイオン二次電池が複数、直列に又は並列に接続して装脱着可能な小型の組電池250を形成する。この装脱着可能な小型の組電池250をさらに複数、直列に又は並列に接続して、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力を持つ組電池300を形成することもできる。図8Aは、組電池の平面図、図8Aは正面図、図8Cは側面図を示しているが、作成した装脱着可能な小型の組電池250は、バスバーのような電気的な接続手段を用いて相互に接続し、この組電池250は接続治具310を用いて複数段積層される。何個の双極型リチウムイオン二次電池を接続して組電池250を作製するか、また、何段の組電池250を積層して組電池300を作製するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。
[車両]
本実施形態の車両は、本実施形態の電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を搭載したことを特徴とするものである。本実施形態の双極型二次電池は高い出力であるから、電池を搭載するとEV走行距離の長いプラグインハイブリッド電気自動車や、一充電走行距離の長い電気自動車を構成できる。言い換えれば、本実施形態の双極型二次電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池は、車両の駆動用電源として用いられうる。車両としては、例えば、自動車ならばハイブリット車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)が挙げられる。ただし、用途が自動車に限定されるわけではなく、他の車両、例えば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
図9は、本実施形態の組電池を搭載した車両の概念図である。
図9に示したように、組電池300を電気自動車400のような車両に搭載するには、電気自動車400の車体中央部の座席下に搭載する。座席下に搭載すれば、車内空間およびトランクルームを広く取ることができるからである。なお、組電池300を搭載する場所は、座席下に限らず、後部トランクルームの下部でもよいし、車両前方のエンジンルームでも良い。以上のような組電池300を用いた電気自動車400は十分な出力を提供しうる。
<IV>本実施形態の双極型二次電池の製造方法について
次に、本実施形態の双極型二次電池の製造方法としては、特に制限されるものではなく、従来公知の方法を適用して作製することができる。
本実施形態の特徴部分である、電極を形成する方法としても、特に制限されるものではなく、既存の樹脂集電体の製造方法を利用して作製することができる。即ち、所定の樹脂及び導電材を組み合わせて、導電性樹脂スラリーや樹脂のみのスラリーを形成し、これらスラリーを金属箔(転写用基材シート)上に塗布、乾燥させる操作を、集電体の積層構成に応じて繰り返すことで、所望の積層構成の集電体を形成できる。その後、該集電体を活物質層に転写する。詳しくは、集電体表面に電極(正極ないし負極)スラリーを塗付(乾燥)した後、上記したプレス工程において、150℃に加熱した熱プレスで2MPa(下限)ないし4MPa(上限)でプレスすることで、接着(転写)できる。その後、金属箔(転写用基材シート)を剥離し、該剥離面にも電極(正極ないし負極)スラリーを塗付(乾燥)した後、上記したプレス工程を行い活物質層を接着(転写)すればよい。あるいは、集電体からを金属箔(転写用基材シート)を剥離した後、該集電体の両側に電極(正極ないし負極)スラリーを塗付した後、上記したプレス工程を行い、集電体の両面に活物質層を接着(転写)してもよいなど、特に制限されるものではなく、既存の方法を用いることができる。なお、上記したプレス工程により、集電体内部の各層間の接着性(密着性)もより一層向上させることができる。
(実施例1)
<集電体(集電シート1)の作製>
以下の材料で、集電体としての集電シート1を作製した。
○構成材料
・第1樹脂としてポリスチレン(PSt)、第2樹脂としてポリフェニレンエーテル(PPE)を混合して用いた。第1樹脂:第2樹脂=60:20(質量比)とした。
・第1導電材として、平均粒子径0.1μmのケッチェンブラックを用いた。
○作製方法
上記第1樹脂(PSt)と第2樹脂(PPE)の混合物からなるポリマーに第1導電材(ケッチェンブラック)を15wt%濃度となるように添加し、ペレットを作成した。
上記ペレットを圧延機にてフィルム状に形成させ、目的の集電シート1(1層構成;図3参照)を得た。集電シート1の膜厚は50μmであった。
(実施例2)
<集電体(集電シート2)の作製>
以下の材料で、集電体としての集電シート2を作製した。
○構成材料
・第1樹脂としてポリスチレン(PSt)、第2樹脂としてポリフェニレンエーテル(PPE)を混合して用いた。第1樹脂:第2樹脂=45:35(質量比)とした。
・第1導電材として、平均粒子径0.1μmのケッチェンブラックを用いた。
○作製方法
上記第1樹脂(PSt)と第2樹脂(PPE)の混合物からなるポリマーに第1導電材(ケッチェンブラック)を15wt%濃度となるように添加し、ペレットを作成した。
上記ペレットを圧延機にてフィルム状に形成させ、目的の集電シート2(1層構成;図3参照)を得た。集電シート2の膜厚は50μmであった。
(実施例3)
<集電体(集電シート3)の作製>
○構成材料
・第5樹脂としてポリフェニレンエーテル(PPE)を用いた。
・導電材として、平均粒子径0.1μmのケッチェンブラックを用いた。
○作製方法
・実施例1と同様にして作製した集電シート1を2枚用意した。但し、本実施例では、集電シート1の膜厚を20μmと薄膜に形成した。
・次に、第5樹脂(PPE)からなるポリマーに導電材(ケッチェンブラック)を15wt%濃度となるように添加し、ペレットを作成した。このペレットを圧延機にてフィルム状に形成させ、樹脂集電シート(図6の樹脂層)を準備した。樹脂集電シートの膜厚は20μmであった。
準備した集電シート1、3を、集電シート1(厚さ20μm)/樹脂集電シート(厚さ20μm)/集電シート1(厚さ20μm)の順に3層を積層した集電シート3(3層構成;図6参照)を得た。集電シート3全体の膜厚は50μmであった。
(実施例4)
<集電体(集電シート4)の作製>
○構成材料
・第1樹脂としてポリスチレン(PSt)を用いた。
・第1導電材として、平均粒子径0.1μmのケッチェンブラックを用いた。
○作製方法
・実施例1と同様にして、第1樹脂(PSt)からなるポリマーに第1導電材(ケッチェンブラック)を15wt%濃度となるように添加し、ペレットを作成した。
上記ペレットを圧延機にてフィルム状に形成させ、集電シート4(1層構成;図3参照)を得た。集電シート4の膜厚は50μmであった。
(比較例1)
<集電体(比較集電シート1)の作製>
○構成材料
・第5樹脂としてポリフェニレンエーテル(PPE)を用いた。
・導電材として、平均粒子径0.1μmのケッチェンブラックを用いた。
○作製方法
・実施例3と同様にして、第5樹脂(PPE)からなるポリマーに導電材(ケッチェンブラック)を15wt%濃度となるように添加し、ペレットを作成した。このペレットを圧延機にてフィルム状に形成させ、比較集電シート1(図6の樹脂層のみ)を得た。比較集電シート1の膜厚は50μmであった。
(参考例1)
<金属集電シート1(既存の金属集電箔)の作製>
既存の金属集電箔として、厚さ20μmのアルミニウム箔を用いて、金属集電シート1とした。
(参考例2)
<金属集電シート2(既存の金属集電箔)の作製>
既存の金属集電箔として、厚さ12μmの銅箔を用いて、金属集電シート2とした。
上記集電シートに用いた樹脂(PPE、PSt、PPE−PStブレンド)のSP値および衝撃強さ(アイゾット試験方法:JIS K7110で計測)を下記表1にまとめた。併せて、下記評価試験で用いた電極活物質層に用いたバインダ(PVdF)のSP値も併せて表1に記載した。また、電極活物質層に用いた他のバインダ(PTFE及びSBR)のSP値も参考として表1に示す。
(評価試験)
<電極接着性および耐熱プレス性の評価試験>
下記の電極活物質層を熱転写(熱プレス)して、電極活物質層と集電シートの界面の接着性(密着性)及び耐熱プレス性を確認した。得られた結果を表2にまとめた。
○電極活物質層の形成(電極の作製)
活物質:導電助剤:PVdF(バインダ)=90:5:5(質量比)とし、これらに対し、スラリー粘度調整溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を適量添加して電極スラリーを調製した。ここで、活物質にはLiMn2O4(平均粒子径:10μm)を用いた。導電助剤にはアセチレンブラックを用いた。
上記電極スラリーをアルミ箔(転写用基材シート)上に塗布して乾燥したもの(電極シート)を、実施例1〜4の各集電シートおよび比較例1の比較集電シート1(以下、これらを総称して単に集電シートともいう)にそれぞれ熱転写した。
詳しくは、集電シート(8cm角)上の中央に電極シート(4cm角)を重ね、150℃に加熱した熱プレスで2MPaでプレスした。同様の方法で、4MPaでプレスも実施した。
5分間上記条件で加圧プレスした後、室温にて冷却し、アルミ箔(転写用基材シート)を剥がして転写状況を確認した。詳しくは、アルミ箔(転写用基材シート)を剥がした後、電極活物質層と集電シートとの界面の段差に破れを生じていないかを確認した。
一方、金属集電シート1、2では、上記電極スラリーを金属集電シートに塗布して乾燥したものを熱プレスした。
詳しくは、金属集電シート(8cm角)の中央に電極活物質層(共に4cm角)を塗布して乾燥したものを、そのまま150℃に加熱した熱プレスで2MPaでプレスした。同様の方法で、4MPaでプレスも実施した。
5分間、上記条件で加圧プレスした後、室温にて冷却し、電極活物質層と金属集電シートとの界面の段差に破れを生じていないかを確認した。
(電極接着性および耐熱プレス性試験の結果)
実施例1の集電シート1を用いた電極では、電極活物質層の熱転写率(接着性・密着性)は良好であった。電極活物質層と集電シート1との界面段差(耐熱プレス性)は、2MPaではまま良好であるが、4MPaでは若干の破れが見られた。
実施例2の集電シート2を用いた電極では、電極活物質層の熱転写率(接着性・密着性)が2MPaでは良好であり、4MPaに高めると非常に良好となった。電極活物質層と集電シート2との界面段差(耐熱プレス性)は、2MPa、4MPaともに良好であった。
実施例3の集電シート3を用いた電極では、電極活物質層の熱転写率(接着性・密着性)は非常に良好であり、電極活物質層と集電シート3との界面段差(耐熱プレス性)は2MPa、4MPaともに良好であった。
実施例4の集電シート4を用いた電極では、電極活物質層の熱転写率(接着性・密着性)は非常に良好であったが、電極活物質層と集電シート3との界面段差(耐熱プレス性)は、2MPaでは若干の破れが見られ、4MPaでは破れが見られた。
比較例1の比較集電シート1を用いた電極では、電極活物質層の熱転写率(接着性・密着性)が不良であったが、電極活物質層と集電シート3との界面段差(耐熱プレス性)は、2MPa、4MPa共に良好であった。
参考例1、2の金属集電シート1、2を用いた電極では、熱転写しない為、電極活物質層の熱転写率(接着性・密着性)は、評価していないが、熱プレス後の電極活物質層と金属集電シート1、2との界面段差(耐熱プレス性)は、いずれも2MPa、4MPa共に良好であった。
なお、上記では集電シートの片面に電極活物質層を形成した電極を用いて実験したが、集電シートの裏面側にも、上記した金属集電シートへの活物質層の形成方法と同様にして、電極スラリーを各集電シートに塗布して乾燥したものをそれぞれ熱プレスした。かかる熱プレスに行っても、上記したと同様の結果が得られた。即ち、上記した集電シートの片面に電極活物質層を形成した電極を用いた実験により、集電シートの両面に活物質層を形成した通常の電極性能を十分に確認評価できることがわかった。
<耐薬品性>
上記で得られた各集電シートを用いた電極について、溶剤に対する初期耐久性を下記の方法で評価した。得られた結果を表2に示す。
各集電シートを用いた電極(2cm角)をエチレンカーボネート/プロピレンカーボネート混合溶液30ccに浸漬し、3日後の重量変化および形状変化を測定した。ここで、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの混合比は、1:1(体積比)とした。
(結果)
集電シート1〜4を用いた電極では、重量変化が非常に小さく良好であり、形状変化もなく、優れた初期耐久性を有することが確認できた。比較例1の比較集電シート1を用いた電極では、比較集電シート1に若干膨潤が見られた。このことから、比較例1の比較集電シート1を用いた電極では、比較集電シート1と活物質層の界面の接着性(密着性)が十分でなく、電池を長期間使用する過程で、当該界面が剥離しやすい構成であることが予見された。
なお、参考例1、2の金属集電シート1、2を用いた電極では、重量変化が非常に小さく、小さく良好であり、形状変化もなく、優れた初期耐久性を有することが確認できた。
<電気抵抗値>
上記で得られた各集電シートを用いた電極について、下記の方法で面内方向及び膜厚方向の電気抵抗を測定(評価)した。得られた結果を表2に示す。
・面内方向の電気抵抗(表面抵抗率)は、JIS K 7194(導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法)に従って実施した。実際には、所定サイズに切り出したシートを該JIS規格品の抵抗測定機で計測して求めたものである。
・厚さ方向(膜厚方向)の電気抵抗(体積抵抗率)は、電気抵抗測定器A(株式会社井元製作所製:製品仕様;測定対象:導電性高分子・ゴム、測定電極:Ф20・Ф10mm、電極荷重:1、2、3、4、5kg、電極材質:銅・試料接面金メッキ、厚さ計:デジタルゲージ、手動荷重:レバ操作により任意荷重印加可能)を用いて計測して求めたものである。
(結果)
集電シート1〜3を用いた電極では、比較例1の比較集電シート1を用いた電極に比べて、面内方向および膜厚方向の抵抗が、共に低抵抗であるシート(電極)が得られた。特に膜厚方向の電気抵抗が、低抵抗にできており、双極型電極に好適に利用できることが確認できた。
実施例4の集電シート4を用いた電極では、実施例1〜3の集電シート1〜3を用いた電極よりも、低抵抗であるシート(電極)が得られた。
一方、比較例1の比較集電シート1を用いた電極では、実施例1〜4の集電シート1〜4を用いた電極に比較して、やや抵抗が高かった。
また、参考例1、2の金属集電シート1、2を用いた電極では、最も抵抗が低かった。
なお、集電シート1〜4および比較集電シート1を用いた電極は、面内方向よりも膜厚方向に対する電気抵抗が低く、異方性が見られた。一方、金属集電シート1、2を用いた電極では、電気抵抗の面内および膜厚方向に対する異方性が見られなかった。
表1の熱転写の評価基準は以下の通りである。
◎:良好:熱転写率が概ね100%である。
〇:まま良好:熱転写率が概ね75〜99%である。
△:やや不良:熱転写率が25〜74%である。
×:不良:熱転写率が24%以下である。
表1の熱プレスの評価基準は以下の通りである。
◎:良好:破れもひずみもない。
〇:まま良好:破れはないが、若干のひずみ(ひどくなると破れるようななる箇所)が見られる。
△:やや不良:若干の破れが見られる。
×:不良:破れが見られる。
表1の耐薬品性の評価基準は以下の通りである。
◎:良好:重量変化が1%未満と非常に小さく、かつ形状変化もない(変化率1%未満)。
〇:まま良好:重量変化が1%〜5%と小さく、かつ形状変化も変化率1%〜5%とわずかである。
△:やや不良:重量変化がやや大きい/形状変化として若干膨潤が見られる、のいずれかでも該当すればやや不良とした。
×:不良:重量変化が大きい/形状変化として膨潤が見られる、のいずれかでも該当すれば不良した。