JP5434089B2 - 双極型二次電池用の集電体 - Google Patents

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Description

本発明は、導電材(導電性フィラー)が添加された樹脂や導電性高分子などの導電性を有する樹脂(以下、単に導電性樹脂ともいう)からなる集電体に関する。
近年、環境保護のため二酸化炭素排出量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池の開発が鋭意行われている。二次電池としては、高エネルギー密度、高出力密度が達成できるリチウムイオン二次電池に注目が集まっている。
リチウムイオン二次電池は、一般に、バインダを用いて正極または負極活物質等を正極用または負極用集電体にそれぞれ塗布して電極を構成している。また、双極型の電池の場合には、集電体の一方の面にバインダを用いて正極活物質等を塗布して正極層を、反対側の面にバインダを用いて負極活物質等を塗布して負極層を有する双極型電極を構成している。
このようなリチウムイオン二次電池においては、従来、集電体として金属箔(金属集電箔)が用いられてきた。近年、金属箔に代わって金属粉(導電性フィラー)が添加された樹脂から構成される、いわゆる樹脂集電体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような樹脂集電体は、金属集電箔に較べて軽量であり、電池の出力向上が期待される。
特開昭61−285664号公報
しかしながら、特許文献1に記載の従来の樹脂集電体を双極型二次電池に適用した場合には、樹脂集電体内を通じて電解液(更に電解液内を通してイオン)が透過し、双極型電極内の正極層と負極層との間で液絡が生じる問題があった。また、金属集電箔と比較して軽量にし難くなる。
そこで本発明の目的は、金属箔集電体に較べて軽量であるとともに、双極型電極内の正極層と負極層との間の液絡を防ぐことができる双極型二次電池用の集電体を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意研究を積み重ねた結果、120℃以上の融点を有する結晶性の樹脂を用いることで、双極型二次電池用の集電体が上記課題を解決し得ることを見出し、本願を完成させた。
本発明の集電体によれば、樹脂を構成する高分子鎖が規則配列しているので、双極型電極内の正極層と負極層との間の液絡を防ぐと共に、金属箔集電体に較べて軽量にできる。
本発明の双極型二次電池の代表的な一実施形態である双極型リチウムイオン二次電池の概要を模式的に表した断面概略図である。 本発明の双極型二次電池の双極型電極における集電体内部で、結晶性樹脂層のみが1層配置された例を模式的に表した、双極型二次電池内の任意の双極型電極の断面概略図である。 本発明の双極型二次電池の双極型電極における集電体内部で、結晶性樹脂層と非結晶性樹脂層の2層が積層配置された例を模式的に表した、双極型二次電池内の任意の双極型電極の断面概略図である。 本発明の双極型二次電池の双極型電極における集電体内部で、結晶性樹脂層と非結晶性樹脂層の3層が非結晶性樹脂層−結晶性樹脂層−非結晶性樹脂層の順に積層配置された例を模式的に表した、双極型二次電池内の任意の双極型電極の断面概略図である。 本発明の双極型二次電池の双極型電極における集電体内部で、結晶性樹脂層と非結晶性樹脂層の3層が結晶性樹脂層−非結晶性樹脂層−結晶性樹脂層の順に積層配置された例を模式的に表した、双極型二次電池内の任意の双極型電極の断面概略図である。 本発明に係る非双極型ないし双極型二次電池の代表的な実施形態である積層型の扁平な双極型リチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。 本発明に係る双極型二次電池モジュールの代表的な実施形態を模式的に表した外観図であって、図4Aは双極型二次電池モジュールの平面図であり、図4Bは双極型二次電池モジュールの正面図であり、図4Cは双極型二次電池モジュールの側面図である。 本発明の双極型二次電池のモジュール(組電池)を搭載した車両の概念図である。
本発明の双極型二次電池用の集電体は、樹脂と、導電材とを有する層を1層以上備えてなる構造であって、該少なくとも1層の樹脂として、120℃以上の融点を有する結晶性の樹脂が用いられてなることを特徴とするものである。
かかる構成とすることで、ガス遮蔽性および工程上の強度を保つことができる。詳しくは、集電体がガス遮蔽性を有することで、電解液の透過を防止することができ、双極型電極内の正極層と負極層との間の液絡を防止できる。また、工程上の強度を保つことで、従来よりも集電体を薄くできるため、集電体の厚さ方向の抵抗増大を防ぎ、電池性能を向上できる。また、集電体全体でみた場合、金属集電箔に較べて軽量であり、電池の出力が向上できる。
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみには制限されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
<I>本発明の双極型二次電池の一般的な基本構成について
本発明の双極型二次電池は、一般的な基本構成として、複数の双極型電極と、これらの双極型電極の間に配置される電解質層とを備えてなる、双極型電極と電解質層とが交互に積層された構造を有する。そして、前記双極型電極は、集電体と、前記集電体の一方の面に電気的に結合した正極層と、前記集電体の他方の面に電気的に結合した負極層と、からなる構成を有する。
本発明の双極型二次電池の種類は、特に制限されず、例えば、非水電解質を用いた双極型二次電池が挙げられ、好ましくは双極型リチウムイオン二次電池である。双極型リチウムイオン二次電池では、セル(単電池層)の電圧が大きく、高エネルギー密度、高出力密度が達成でき、車両の駆動電源用や補助電源用として優れているためである。また、電池の構造・形態で区別した場合には、積層型(扁平型)電池、巻回型(円筒型)電池など特に制限されず、従来公知のいずれの構造にも適用されうる。
双極型二次電池内の電気的な接続形態(電極構造)で見た場合、双極型は、いわば内部直列接続タイプの二次電池であると言える。
同様に双極型二次電池の電解質の形態で区別した場合にも、特に制限はない。例えば、非水電解液をセパレータに含浸させた液体電解質型の電池、ポリマー電池とも称される高分子ゲル電解質型電池および固体高分子電解質(全固体電解質)型電池のいずれにも適用されうる。高分子ゲル電解質および固体高分子電解質に関しては、これらを単独で使用することもできるし、これら高分子ゲル電解質や固体高分子電解質をセパレータに含浸させて使用することもできる。
図1は、本発明の双極型二次電池の代表的な一実施形態である双極型リチウムイオン二次電池(以下、単に「双極型二次電池」とも称する)の一般的な基本構成の概要を模式的に表した断面概略図である。なお、本明細書においては、双極型リチウムイオン二次電池を例に挙げて詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はかような形態のみに制限されない。
図1に示す双極型二次電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、電池外装材29であるラミネートシートの内部に封止された構造を有する。
ここで、発電要素21は、集電体11の一方の面に正極層13が形成され、他方の面に負極層15が形成された複数の双極型電極16を有する。各双極型電極16は、電解質層17を介して積層されて発電要素21を形成する。この際、一の双極型電極16aの正極層13と前記一の双極型電極16aに隣接する他の双極型電極16bの負極層15とが電解質層17を介して向き合うように、各双極型電極16および電解質層17が交互に積層されている。即ち、一の双極型電極16aの正極層13と前記一の双極型電極16aに隣接する他の双極型電極16bの負極層15の間に電解質層17が挟まれている。
一の双極型電極16aの正極層13、電解質層17、および隣接する他の双極型電極16bの負極層15は、一つの単電池層(=電池単位ないし単セル)19を構成する。従って、双極型二次電池10は、単電池層19が複数積層されてなる構成を有するともいえる。また、電解質層17の漏れを防止するために単電池層19の周辺部にはシール部31が配置されている。該シール部31を設けることで隣接する集電体11間を絶縁することもできる。なお、発電要素21の最外層に位置する正極層側の最外層集電体11aには、片面のみに正極層13が形成されている。また、発電要素21の最外層に位置する負極層側の最外層集電体11bには、片面のみに負極層15が形成されている。
さらに、双極型二次電池10では、正極層側の最外層集電体11aが延長されて正極タブ25とされ、電池外装材29であるラミネートシートから導出している。一方、負極層側の最外層集電体11bが延長されて負極タブ27とされ、同様に電池外装材29であるラミネートシートから導出している。
双極型二次電池は、上記の構成により、厚さ方向(積層方向)に電流が流れるため、電子伝導のパスが非双極型の積層電池と比べて格段に短くなり、その分、高出力となる。
<II>本発明の双極型二次電池の特徴部分である集電体の構成について
本発明の双極型二次電池の特徴部分である集電体について、図面を用いて説明する。図2A〜2Dは、いずれも本発明の双極型二次電池の双極型電極における集電体内部で、結晶性の樹脂が用いられた層の配置の例を模式的に表した、双極型二次電池内の任意の双極型電極の断面概略図である。
(1)1層配置された構成例
図2Aに示す双極型電極16では、集電体11が、樹脂1と導電材2とを有する層3からなる1層構造を有する。更に本構成例では、樹脂1が、120℃以上の融点を有する結晶性の樹脂(以下、単に「結晶性の樹脂」ともいう)1aからなる構成を有する例である。かかる構成では、結晶性の樹脂1aが集電体全体に存在する為、極めて高いガス遮蔽性および工程上の強度を保つことができる。これにより、集電体11内の電解液(イオン)の透過を、層3により防止することができ、双極型電極16内の正極層13と負極層15との間の液絡を防止できる。また従来の樹脂集電箔に比べて薄くできる。更に金属箔集電体に較べて軽量にできる。また構造がシンプルで生産性、経済性にも優れる。
また、本構成例のように結晶性の樹脂を有する層(結晶性樹脂層ともいう)が、表面層(=少なくとも表面に存在する構造)に存在することで、電解液の樹脂内部(集電体内部)への浸透を妨げ、膜強度を更に向上することができる点で優れている。このことは、同様の構成を有する以下に示す他の構成例(図2B、2Dに示す構成例)についても同様のことが言える。正極層13側の表面層3aのみが同様の構成を有している図2Bの構成よりも、電解液の樹脂内部(集電体内部)への浸透を妨げる観点からは、集電体の両方の表面層が結晶性樹脂層の構成を有している本構成例と図2Dの構成例がより好ましい。
また、本構成例のように正極層13と負極層15が、樹脂と導電材とを有する、いわば導電性樹脂層3と接する構成とすることで、金属集電箔のように内部短絡時に面方向に電流が流れ、局所的な発熱現象を引き起こすのを効果的に防止することができる。これは、導電性樹脂層3では、厚さ方向に極短い距離だけ電流を流す場合には、体積抵抗率にもよるが、導電性樹脂層3の厚さ範囲程度であれば導電性樹脂層の厚み方向の抵抗は電池の内部抵抗全体に対しほぼ無視できる領域であり、双極型電極の導電性には何ら支障はない。一方、導電性樹脂層3の面内方向に電流を流そうとした場合には、導電性樹脂層3の表面抵抗は非常に大きく、内部短絡時に面内方向に電流が流れるのを効果的に抑制でき、局所的な発熱現象が生じるのを防止できるためである。このことは、同様の構成を有する以下に示す他の構成例(図2B〜2Dに示す全ての構成例)についても同様のことが言える。
更に、本構成例では、正極層13と負極層15に接する層3の結晶性の樹脂1aとして、正極電位および負極電位双方に耐え得る樹脂1aを選択するのがよい。これにより正極電位、負極電位それぞれの電位に長期間耐えうる集電体11を形成することが可能になる。このことは、同様の構成を有する以下に示す他の構成例(図2Dに示す構成例)についても同様のことが言える。
(2)2層配置された構成例
図2Bに示す双極型電極16では、集電体11が、樹脂1と導電材2とを有する、層3aと層3bの順に2層積層されてなる構造である。更に本構成例では、層3aの樹脂1が、結晶性の樹脂1aからなり、層3bの樹脂1が、120℃以上の融点を有する結晶性の樹脂以外の1種又は2種以上の他の樹脂(単に「結晶性のない樹脂」ともいう)1bからなる構成を有する例である。
かかる構成でも、結晶性の樹脂1aが集電体の層3aの面内方向に連続して存在する構造、即ち、層3aのいわば全面(全体)に存在する構造を有する為、極めて高いガス遮蔽性および工程上の強度を保つことができる。特に、本構成例では、集電体全体でなく、ある層3aに結晶性の樹脂が連続して存在することで、遮蔽性および工程上の強度を向上することが可能である。これにより集電体11内の電解液(イオン)の透過を、層3aにより防止することができ、双極型電極16内の正極層13と負極層15との間の液絡を防止できる。また従来の樹脂集電箔に比べて薄くできる。更に金属箔集電体に較べて軽量にできる。
ここで、層3aの面内方向に不連続な格子状や海島状に結晶性の樹脂1aが存在する場合、即ち格子状部分や海部分(または島部分)では結晶性の樹脂1aが厚さ方向に連続して存在する場合、十分なガス遮断性を保つ難く、電解液の透過を防止し難い場合がある。但し、結晶性の樹脂1aが存在する格子状部分や海部分(または島部分)の面内に示す面積(占有面積)を高めることで、本発明の効果を奏することができる場合には、本発明の技術範囲に含まれるものであり、本発明から排除されるものではない。一方、本構成例のように、結晶性の樹脂1aが層3aの面内方向に連続して存在する構造、即ち層3aのいわば全面(全体)に存在する構造では、層3aの面内方向の全体(全面)に高いガス遮断性が得られ、工程上の強度も高めることができる。
更に、本構成例では、正極層13と負極層15に接する層3a、3bの樹脂1a、1bとして、正極電位、および負極電位に耐え得る樹脂をそれぞれ選択するのがよい。すなわち、本構成例では、正極層13側に配置する3aには、正極電位に耐え得る結晶性の樹脂1aを、負極層15側に配置する層3bには、負極電位に耐え得る結晶性のない樹脂1bを選択可能となる。これにより、正極電位、負極電位それぞれの電位に長期間耐えうる集電体11を形成することが可能になる。
(3)3層配置された構成例
図2Cに示す双極型電極16では、集電体11が、樹脂1と導電材2とを有する、層3a、層3b、層3cの順に3層積層されてなる構造である。更に本構成例では、中間層3bの樹脂1が、結晶性の樹脂1aからなり、両方の表面層3a、3cの樹脂1が、結晶性でない1種又は2種以上の他の樹脂1bからなる構成を有する例である。
かかる構成でも、結晶性の樹脂1aが集電体11の中間層3bの面内方向に連続して存在する構造、即ち、中間層3bのいわば全面(全体)に存在する構造を有する為、極めて高いガス遮蔽性および工程上の強度を保つことができる。これにより集電体11内の電解液(イオン)の透過を、中間層3bにより防止することができ、双極型電極16内の正極層13と負極層15との間の液絡を防止できる。その結果、寿命特性が向上した長期信頼性に優れた双極型二次電池を構築できる。また中間層3aにより工程上の強度を保持できるため、金属箔集電体に較べて薄膜、軽量にできる。
本構成例でも、中間層3bの面内方向に不連続な格子状や海島状に結晶性の樹脂1aが存在する場合、即ち格子状部分や海部分(または島部分)では結晶性の樹脂1aが厚さ方向に連続して存在する場合、十分なガス遮断性を保つ難く、電解液の透過を防止し難い場合がある。但し、結晶性の樹脂1aが存在する格子状部分や海部分(または島部分)の面内に示す面積(占有面積)を高めることで、本発明の効果を奏することができる場合には、本発明の技術範囲に含まれるものであり、本発明から排除されるものではない。一方、本構成例のように、結晶性の樹脂1aが中間層3bの面内方向に連続して存在する構造、即ち中間層3bのいわば全面(全体)に存在する構造では、中間層3bの面内方向の全体(全面)に高いガス遮断性が得られ、工程上の強度も高めることができる。
更に、本構成例では、正極層13と負極層15に接する表面層3a、3cには、結晶性でない1種又は2種以上の他の樹脂1bを用いることができる。そのため、正極層13や負極層15との界面(接着面)や中間層3bとの界面(接着面)の接着性(剥離強度)に優れる結着性のある樹脂1bを利用することができる。
また、正極層13や負極層15に接する表面層3a、3cに、結晶性のない樹脂1bを用いることで、双極型二次電池の耐振動性能が向上する。特に本構成例のように正極層13と負極層15の両方に、結晶性のない樹脂1bを用いた表面層3a、3bが接する構成とした場合に顕著となる。これは、正極層13及び負極層15内の活物質材料が充放電に伴い膨張収縮したときに、該正極層と負極層に接する表面層3a、3bの結晶性のない樹脂1bが、該膨張収縮による応力を緩和するように伸縮することができる。また、外部からの振動、衝撃に対しても、当該結晶性のない樹脂1bが振動、衝撃等の外部負荷を緩和するように伸縮することができ、双極型二次電池の耐振動性能が向上するためである。このことは、結晶性のない樹脂1bを有する層を持つ他の構成例(図2B、2D参照)についても同様のことが言える。
更に、本構成例では、正極層13と負極層15に接する表面層3a、3cの結晶性のない樹脂1bとして正極電位、および負極電位に耐え得る樹脂1bを用いることができる。すなわち、本構成例では、正極層13側に配置する表面層3aには、正極電位に耐え得る結晶性のない樹脂1bを、負極層15側に配置する表面層3cには、負極電位に耐え得る結晶性のない樹脂1bを用いるのが望ましい。これにより、正極電位、負極電位それぞれの電位に長期間耐えうる、集電体11を形成することが可能になる。
(4)3層積層配置された他の構成例
図2Dに示す双極型電極16は、図2Cの双極型電極の変形例である。
図2Cに示す双極型電極16でも、集電体11が、樹脂1と導電材2とを有する、層3a、層3b、層3cの順に3層積層されてなる構造である。更に本構成例では、中間層3bの樹脂1が、結晶性でない1種又は2種以上の他の樹脂1bからなり、両方の表面層3a、3cの樹脂1が、結晶性の樹脂1aからなる構成を有する例である。
かかる構成でも、結晶性の樹脂1aが集電体11の層3a、3cの面内方向に連続して存在する構造、即ち、表面層3a、3cのいわば全面(全体)に存在する構造を有する為、極めて高いガス遮蔽性および工程上の強度を保つことができる。これにより集電体11内の電解液(イオン)の透過を、表面層3a、3cにより防止することができ、双極型電極16内の正極層13と負極層15との間の液絡を防止できる。その結果、寿命特性が向上した長期信頼性に優れた双極型二次電池を構築できる。また表面層3a、3cにより工程上の強度を保持できるため、金属箔集電体に較べて薄膜、軽量にできる。
更に、本構成例でも、中間層3bには、結晶性でない1種又は2種以上の他の樹脂1bを用いることができる。そのため、表面層3a、3cとの界面(接着面)の接着性(剥離強度)に優れる結着性のある樹脂1bを利用することができる。
また、本構成例のように正極層13と負極層15に、表面層3a、3cを介して、結晶性のない樹脂1bを用いた中間層3bが接する構成とした場合でも双極型二次電池の耐振動性能を向上することができる。これは、正極層13及び負極層15内の活物質材料が充放電に伴い膨張収縮したときに、該正極層と負極層に接する表面層3a、3bを介して挟まれた、中間層3bの結晶性のない樹脂1bが、該膨張収縮による応力を緩和するように伸縮することができるためである。また、外部からの振動、衝撃に対しても、当該結晶性のない樹脂1bが振動、衝撃等の外部負荷を緩和するように伸縮することができ、双極型二次電池の耐振動性能が向上するためである。
(5)4層以上に積層配置された構成例
本発明では、双極型電極の集電体が、樹脂と導電材とを有する層が4層以上積層されてなる構造とすることもできる(図示せず)。こうした構成例でも、集電体のある層の樹脂として結晶性の樹脂がもちいられていればよい。言い換えれば、結晶性の樹脂が、少なくとも集電体のある層の面内方向に連続して存在する構造を有するものであればよいといえる。例えば、結晶性の樹脂が、集電体の少なくとも表面層の面内方向に連続して存在する構造(=集電体の少なくとも表面に存在する構造)を有してもよい。あるいは結晶性の樹脂が、集電体の少なくともある中間層(内層)の面内方向に連続して存在する構造を有してもよい。或いは双方が組み合わされた構造でもよいなど、特に制限されるものではない。
上記したように集電体を多層積層構造にすることで、双極型二次電池の耐振動性能がより一層向上する。また、正極層及び負極層に接する2つの表面層のほか、該表面層に挟持される内層にも、結着性の樹脂や応力を緩和しうる樹脂を配置することもできる。これにより、集電体と正極層や負極層との剥離強度がより一層向上する。これは、表面層による密着性並びに応力緩和機能に加えて、内層も密着性並びに応力緩和機能を果たし、表面層と正極層や負極層との密着性及び耐振動性能をより一層増強させているためであると推測される。
なお、上記(a)〜(e)の各構成例は本発明に用いられる集電体のあくまで1例に過ぎず、上記した構成例以外であっても、少なくとも1層の樹脂として、120℃以上の融点を有する結晶性の樹脂が用いられてなる構造を有するものであれば、本発明の技術範囲に含まれるものである。
例えば、図2Bの集電体の配置を入れ替えて、正極層側に結晶性のない樹脂を有する層(非結晶性樹脂層ともいう)を、負極層に結晶性樹脂層とした構成などが挙げられる。更に非結晶性樹脂層−(第1結晶性樹脂層−第2結晶性樹脂層)ように、結晶性の樹脂の種類や特性の異なる第1結晶性樹脂層と第2結晶性樹脂層を連続積層する形態でも、本発明の技術範囲に含まる。同様に、結晶性樹脂層−(第1非結晶性樹脂層−第2非結晶性樹脂層)のように、結晶性のない樹脂の種類や特性の異なる第1非結晶性樹脂層と第2非結晶性樹脂層を連続積層する形態でも、本発明の技術範囲に含まる。更に、(第1結晶性樹脂層−第2結晶性樹脂層)−(第1非結晶性樹脂層−第2非結晶性樹脂層)ように、結晶性のない樹脂の種類や特性の異なる第1非結晶性樹脂層と第2非結晶性樹脂層を連続積層し、結晶性の樹脂の種類や特性の異なる第1結晶性樹脂層と第2結晶性樹脂層を連続積層する形態でも本発明の技術範囲に含まる。なお、上記した(第1結晶性樹脂層−第2結晶性樹脂層)や(第1非結晶性樹脂層−第2非結晶性樹脂層)を、1層の非結晶性樹脂層や結晶性樹脂層の内部の樹脂材料や導電性フィラー材料の分布が段階的に変化しているとみなして、上記図2Bの構成例に含めてもよい。
(2)集電体内の各構成要件
集電体内の構成材料には、図2A〜Dで説明したように、導電材と、120℃以上の融点を有する結晶性の樹脂とを必須とし、更に結晶性のない樹脂(120℃以上の融点を有する結晶性の樹脂以外のもの)が用いられてなる。導電材により双極型電池用の集電体に求められる膜厚方向の電子伝導性(導電性)を付与できればよい。また、上記結晶性の樹脂により電解液(イオン)の透過を防止できる構造にできればよい。更に集電体全体を既存の金属箔集電体に較べて軽量化できもの構成であればよい。よって、導電材と結晶性のない樹脂に関しては、特に制限されるものではなく、既存の樹脂集電体と同様の材料を用いて形成することができる。
(a)120℃以上の融点を有する結晶性の樹脂(結晶性の樹脂)
結晶性の樹脂は、集電体内の少なくとも1層に、ガス遮蔽性および工程上の強度を保つために必要である。この結晶性の樹脂を用いた集電体内の層では、ガス遮蔽性を保つことができるため、集電体中の電解液(イオン)の透過を防ぐことができる。また、工程上の強度を保つことができるため、従来よりも樹脂集電体を薄く(軽量に)できる。そのため、集電体の厚さ方向の抵抗増大を防ぎ、電池性能を向上できる。また、集電体内のある層(特に面内方向全体)に連続して存在することで、遮蔽性をより向上することが可能となる。
なお、結晶性の樹脂は、結晶性ポリマー、結晶性高分子、結晶性重合体などとも称されてなる既知の材料(主にエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックの特殊な用途に用いられるものが知られている)である。結晶化した部分の密度が高く尚且つ硬いため、耐薬品性に優れた剛直な樹脂となる。また、結晶性の樹脂(結晶性高分子)は、かなりの秩序を持った分子配列を示し、X線回折により明確な結晶構造が認められる高分子物質などとして定義されている(例えば、「岩波 理化学辞典」(第3版)、400頁参照)。また結晶性の樹脂は、融点以下の温度では、高分子鎖が規則正しく配列する性質のある、(熱可塑性)樹脂の総称であり、融点が高い程、耐熱性に優れるとも言える。逆に、結晶性のない樹脂(=非結晶性樹脂)は、熱を加えることにより、ガラス状からゴム状状態になる温度を、ガラス転移温度(Tg)と定義されているが、ガラス転移温度以下の固化した状態においても、高分子鎖が、規則正しく配列しない性質のある(熱可塑性)樹脂の総称であり、ガラス転移温度(Tg)が高い程、耐熱性に優れるといえる。
本発明に用いられる結晶性の樹脂は、120℃以上の融点を有するものであればよいが、130〜290℃であることが好ましく、150〜250℃であることがより好ましい。結晶性の樹脂が、は、120℃以上の融点を有するものであれば、高いガス遮蔽性と工程上の強度を保つことができる。一方、結晶性の樹脂が120℃以上の融点を有しない場合、あるいは後述する比較例のようにTgのみで融点を持たない非結晶性の樹脂の場合には、電池の製造工程において熱プレス等に供せられることもあり、工程上の強度(耐熱プレス性能)を保つのが困難となる。
本発明に用いられる結晶性の樹脂としては、120℃以上の融点を有するものであればよく、特に制限されるものではない。具体的には、高密度ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリアミド(ナイロン(登録商標));ポリアセタール(POM);ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル;シンジオタクチック・ポリスチレン(SPS)などのポリスチレン;ポリフェニレンサルファイド(PPS);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);液晶ポリマー(LCP);ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのふっ素樹脂;ポリエーテルニトリル(PEN)などが挙げられる。これらの結晶性の樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種併用してもよい。
本発明に用いられる結晶性の樹脂として好ましくは、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートおよびポリアミドよりなる群から選ばれてなる少なくとも1種が好ましい。これらは、双極型リチウムイオン二次電池の集電体として耐電位などに優れることから特に好ましい樹脂である。また、これらの樹脂では、樹脂の硬さや剛直が他の結晶性の樹脂に比べて高くなく、成膜性などの加工性に優れており、また正極層や負極層、更には他の層との接着性(密着性)を損なうこともなく、高いガス遮蔽性と工程上の強度を保つことができる点でも優れている。
上記した好適な結晶性の樹脂の1種であるポリエチレンについては、密度0.92g/cm以上の高密度ポリエチレンであるのが望ましい。遮蔽性の向上が図れるためである。詳しくは、ポリエチレンの分子配列(結晶構造)では、密度が高いほど結晶化度が高く、遮蔽性を高くでき、電解液(イオン)の透過防止効果を向上できるためである。密度0.92g/cm以上であれば、後述する実施例1に示すように、当該高密度ポリエチレンを用いることで集電体に優れたガス遮蔽性、耐熱プレス性能、耐薬品性などの特性を付与することができる。
また、上記した好適な結晶性の樹脂の1種であるポリプロピレンについては、立体規則性がアイソタクチックである高結晶性ポリプロピレンであるのが望ましい。遮蔽性の向上が図れるためである。詳しくは、ポリプロピレンの分子配列(結晶構造)において、アイソタクチックであるほど結晶性が高く、遮蔽性が高くでき、電解液(イオン)の透過防止効果を向上できるためである。当該ポリプロピレンでも(密度0.92g/cm以上あり)、後述する実施例2に示すように、当該アイソタクチックポリプロピレンを用いることで集電体に優れたガス遮蔽性、耐熱プレス性能、耐薬品性などの特性を付与することができる。
また、上記した好適な結晶性の樹脂の1種であるポリスチレンについては、立体規則性がシンジオタクチックである結晶性ポリスチレンであるのが望ましい。遮蔽性の向上が図れるためである。詳しくは、ポリスチレンの分子配列(結晶構造)では、シンジオタクチックであるほど結晶性が高く、遮蔽性が高くでき、電解液(イオン)の透過防止効果を向上できるためである。当該ポリスチレンでも(密度0.92g/cm以上あり)、後述する実施例5に示すように、当該シンジオタクチックポリスチレンを用いることで、集電体に優れたガス遮蔽性、耐熱プレス性能、耐薬品性などの特性を付与することができる。
また、上記した好適な結晶性の樹脂の1種であるポリエチレンテレフタレート(PTE)およびポリアミド(例えば、ナイロン66(登録商標))でも、結晶性が高く、遮蔽性が高くでき、電解液(イオン)の透過防止効果を向上できる。当該PTEやナイロン66(登録商標)でも(密度0.92g/cm以上あり)、後述する実施例3、4に示すように、これらを用いることで集電体に優れたガス遮蔽性、耐熱プレス性能、耐薬品性などの特性を付与することができる。
(a−1)結晶性の樹脂の含有量
集電体の結晶性の樹脂が使用されている各層中の当該結晶性の樹脂の含有量は、70〜99wt%、好ましくは80〜98wt%、より好ましくは85〜98wt%である。結晶性の樹脂の含有量が上記範囲であれば、導電材による膜厚方向の導電性を保持した上で、双極型二次電池用の集電体の結晶性の樹脂が使用されている各層全てに、ガス遮蔽性および工程上の強度(耐熱プレス性能)、更には耐薬品性等の特性にも優れる。
(a−2)結晶性の樹脂の分布
集電体における結晶性の樹脂の分布は、均一でなくてもよく、集電体内部で結晶性の樹脂の分布が変化していてもよい。また、集電体が複数の層で構成されている場合、複数の結晶性の樹脂が用いられ、各層間でも、結晶性の樹脂の分布、含有量、材料の種類等が変化していてもよい。但し、図2A〜Dの構成例で説明したように、結晶性の樹脂が少なくとも層の面内方向に連続して存在する構造、即ち、層のいわば全面(全体)に存在する構造となるように分布させるのが望ましい。
また、正極層に接する表面層や正極層寄りの内層と、負極層に接する表面層や正極層寄りの内層とで、好ましい結晶性の樹脂を使い分けてもよい。例えば、正極層に接する表面層や正極層寄りの内層(正極層側層)に好適に用いられる結晶性の樹脂としては、ガス遮蔽性、工程上の強度、正極電位に対する耐電位などの観点から適宜選択するのが好ましい。負極層に接する表面層や負極層寄りの内層(負極層側層)に好適に用いられる結晶性の樹脂としては、ガス遮蔽性、工程上の強度、負極電位に対する耐電位などの観点から適宜選択するのが好ましい。
(b)導電材(導電性フィラー)
導電材(導電性フィラー)は、導電性を有する材料から選択される。好ましくは、集電体内のイオン透過を抑制する観点から、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さない材料を用いるのが望ましい。また、導電材(導電性フィラー)は、積層配置される位置にもよるが、正極層側や負極層側の表面層に配置される場合には、印加される正極電位や負極電位に耐えうる材料から選択されるのが望ましい。
具体的には、アルミニウム、ステンレス(SUS)、グラファイトやカーボンブラックなどのカーボン、銀、金、銅、チタンなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらの導電材(導電性フィラー)は1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金が用いられてもよい。好ましくは銀、金、アルミニウム、ステンレス、カーボン、さらに好ましくはカーボンである。またこれらの導電材(導電性フィラー)は、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(上記した導電材の金属成分など)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
(b−1)導電材(導電性フィラー)の形状
また、導電材(導電性フィラー)の形状(形態)は、粒子形態で用いればよいが、粒子形態に限られず、カーボンナノチューブなど、いわゆるフィラー系導電性樹脂組成物として実用化されている粒子形態以外の形態であってもよい。
(b−2)導電材(導電性フィラー)の分布
集電体における導電材(導電性フィラー)の分布は、均一でなくてもよく、集電体内部で導電材(導電性フィラー)粒子の分布が変化していてもよい。また、集電体が複数の層で構成されている場合、複数の導電材(導電性フィラー)が用いられ、各層間でも、導電材(導電性フィラー)粒子の分布、含有量、材料の種類等が変化していてもよい。例えば、正極層に接する表面層や正極層寄りの内層と、負極層に接する表面層や正極層寄りの内層とで、好ましい導電材(導電性フィラー)材料を使い分けてもよい。
正極層に接する表面層や正極層寄りの内層(正極層側層)に好適に用いられる導電材としては、導電性、高分散性、正極電位に対する耐電位などの観点から粒子形態のアルミニウム粒子、SUS粒子、金粒子およびカーボン粒子が好ましい。なかでもカーボン粒子がより好ましい。
負極層に接する表面層や負極層寄りの内層(負極層側層)に好適に用いられる導電材としては、導電性、高分散性、負極電位に対する耐電位などの観点から、銀粒子、金粒子、アルミニウム粒子、銅粒子、チタン粒子、SUS粒子、およびカーボン粒子が好ましい。なかでも、カーボン粒子がより好ましい。
上記カーボン粒子としては、カーボンブラックやグラファイトなどが挙げられる。これらカーボンブラックやグラファイトなどのカーボン粒子は電位窓が非常に広く、正極電位および負極電位の双方に対して幅広い範囲で安定であり、さらに導電性に優れているためである。また、カーボン粒子は非常に軽量なため、質量の増加が最小限になる。さらに、カーボン粒子は、電極(特に正極層)の導電助剤として用いられることが多いため、これらの導電助剤と接触しても、同材料であるがゆえに接触抵抗が非常に低くなる。更に、カーボン粒子を導電材(導電性フィラー)として用いる場合には、カーボンの表面に疎水性処理を施すことにより電解質のなじみ性を下げ、集電体に電解液が染み込みにくい状況を作ることも可能である。
(b−3)導電材(導電性フィラー)の平均粒子径
導電材(導電性フィラー)の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、0.01〜10μm程度であることが望ましい。なお、本明細書中において、「粒子径」とは、導電性フィラーの輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。後述する活物質粒子などの粒子径や平均粒子径も同様に定義することができる。
(b−4)導電材(導電性フィラー)の含有量
集電体の各層中の導電材(導電性フィラー)の含有量は、1〜30wt%、好ましくは2〜20wt%、より好ましくは2〜15wt%である。集電体の各層中の導電材(導電性フィラー)の含有量が1wt%以上あれば、双極型二次電池用の集電体の各層全てに必要な導電性能を有効に発現することができる。一方、導電材(導電性フィラー)の含有量が30wt%以下であれば、導電材(導電性フィラー)を含有する集電体全体の重量増加を抑制することができる。
(c)上記結晶性の樹脂以外の樹脂(結晶性のない樹脂;非結晶性樹脂)
上記図2B〜2Dで説明したように、集電体が複数の層で構成されている場合、結晶性の樹脂を用いる代わりに、正極層や負極層との界面(接着面)の接着性を高めたり、振動・衝撃を緩和するなど、結晶性の樹脂を用いた層とは異なる機能を付与する目的で、結晶性のない樹脂を用いた層を形成することができる。
かかる結晶性のない樹脂としては、従来の樹脂集電体に用いられているような樹脂を用いることができるなど、特に制限されないが、好ましくは、導電材を結着させる結着性のある(絶縁性)高分子材料や導電性高分子などを単独又は併用して用いることができる。
結着性のある高分子材料を用いることで、導電性フィラーの結着性を高め、電池の信頼性を高めることができる。
さらに、結晶性のない樹脂が表面層に用いられる場合には、印加される正極電位および負極電位に耐えうる材料から選択されるのが望ましい。また、結晶性のない樹脂が表面層に用いられる場合には、内層や正極層や負極層に熱融着するために、該表面層に含まれる結晶性のない樹脂は、熱可塑性であることが好ましい。但し、通常のスラリー塗布による表面層の形成も可能であるため、必ずしも熱可塑性であるものに限られない。
ここで、上記導電性高分子の例としては、導電性を有する材料から選択される。好ましくは、層内のイオン透過を抑制する観点から、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さない材料を用いるのが望ましい。これらの導電性高分子は、共役したポリエン系がエネルギー帯を形成し導電性を示すと考えられている。代表的な例としては電解コンデンサなどで実用化が進んでいるポリエン系導電性高分子を用いることができる。具体的には、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアクリロニトリル、ポリオキサジアゾール、またはこれらの混合物などが好ましい。導電性(電子伝導性)および電池内で安定に使用できるという観点から、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレンがより好ましい。
なお、正極層や負極層に接する表面層に該導電性高分子を用いる場合には、単独では、印加される正極電位や負極電位に耐えうる良好な材料となるものが現段階では開発されていない為、更に後述する導電材(導電性フィラー)を添加して、印加される正極電位や負極電位に耐えうるようにするのが望ましい。
上記結着性のある(絶縁性)高分子材料の例としては、例えば、上記した結晶性の樹脂の要件から外れる、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS);アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS);ポリエチレン、アタクチック・ポリスチレン(非結晶性)、シリコーン、ポリイミド(PI);ポリフッ化ビニリデン(PVdF);エポキシ樹脂;スチレンブタジエンゴム(SBR)などの合成ゴム;ポリアクリロニトリル(PAN);ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのアクリル樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC)などが挙げられる。これらの高分子材料は、1種単独で用いてもよいし、2種併用してもよい。中でも、電解質(有機溶媒)に対して膨潤性がない点で、エポキシ樹脂が好ましい。また、以下の観点からは、ポリエチレン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデンが好ましい。これらの材料は電位窓が非常に広く正極電位、負極電位のいずれに対しても安定である。また軽量であるため、電池の高出力密度化が可能となる。さらに熱を加えることで融解し易く、金属層や正極層や負極層に融着することが容易である。
(c−1)結晶性のない樹脂の軟化点
結晶性のない樹脂が表面層に用いられる場合、該表面層を正極層や負極層や内層に熱融着させて形成する場合には、結晶性のない樹脂の軟化点は、80〜250℃であることが好ましく、80〜200℃であることがより好ましい。かような範囲であれば、熱融着が行いやすく製造時の生産性が向上するためである。なお、本明細書において、軟化点は、JIS K7206(1999)ビカット軟化温度試験方法によって測定された値を採用する。高分子材料が2種以上の高分子の混合物である場合には、混合物の軟化点を測定し、この値を軟化点とする。
(c−2)結晶性のない樹脂の含有量
集電体の結晶性のない樹脂が使用されている各層中の当該結晶性のない樹脂の含有量は、70〜99wt%、好ましくは80〜98wt%、より好ましくは85〜98wt%である。結晶性のない樹脂の含有量が上記範囲であれば、導電材による膜厚方向の導電性を保持した上で、結晶性のない樹脂が使用されている各層に、他の層との界面(接着面)の接着性(剥離強度)や外部からの振動・衝撃を吸収緩和する等の特性を付与させることができる。
(d)他の添加剤
集電体の各層には、樹脂と導電材以外にも、本発明の作用効果に影響を与えない範囲内であれば、撥水剤などの他の添加剤を適量含有していてもよい。
(3)集電体の結晶性の樹脂を用いた層の厚さ
集電体が複数の層から構成されている場合、結晶性の樹脂を用いた層の厚さは、ガス遮蔽性および工程上の強度を保つことができる範囲内であれば、軽量化により電池の出力密度を高める上では、薄いほど好ましい。双極型二次電池においては、双極型電極の正極層と負極層の間に存在する集電体は、積層方向に水平な方向の電気抵抗が高くてもよいため、集電体の厚さを薄くすることが可能であり、集電体内の各層の厚さも薄くできる。そのため、電池出力特性に優れ、長期信頼性に優れた電池を構築できる。
上記観点から、結晶性の樹脂を用いた層を含む集電体の場合、集電体内の結晶性の樹脂を用いた層(1層分)の厚さは、3〜100μm、好ましくは3〜50μm、更に好ましくは3〜30μmである。結晶性の樹脂を用いた層の体積抵抗率にもよるが前記範囲内であれば結晶性の樹脂を用いた層の厚み方向の抵抗は電池内部抵抗全体に対しほぼ無視できる領域である。そのため、結晶性の樹脂を用いた層、ひいては集電体の遮蔽性および工程上の強度、導電性を確保した上で、軽量化による電池の出力密度を高めることができる。更に液絡低減による寿命特性向上のほか、双極型二次電池の耐振動性能が向上する。
(4)集電体の結晶性のない樹脂を用いた層の厚さ
集電体が複数の層から構成されている場合、結晶性のない樹脂を用いた層の厚さは、上記したような結晶性のない樹脂を用いた層の形成目的を達成する範囲内であれば、軽量化により電池の出力密度を高める観点から、薄いほど好ましい。双極型二次電池においては、双極型電極の正極層と負極層の間に存在する集電体は、積層方向に水平な方向の電気抵抗が高くてもよいため、集電体の厚さを薄くすることが可能であり、集電体内の各層の厚さも薄くできる。そのため、電池出力特性に優れ、長期信頼性に優れた電池を構築できる。
上記観点から、結晶性のない樹脂を用いた層を含む集電体の場合、集電体内の結晶性のない樹脂を用いた層(1層分)の厚さは、1〜99μm、好ましくは1〜74μm、更に好ましくは1〜49μmである。結晶性のない樹脂を用いた層の体積抵抗率にもよるが前記範囲内であれば結晶性のない樹脂を用いた層の厚み方向の抵抗は電池内部抵抗全体に対しほぼ無視できる領域である。そのため、結晶性のない樹脂を用いた層、ひいては集電体の導電性を確保した上で、軽量化による電池の出力密度を高めることができる。更に、他の層との界面の接着性を高めたり、耐振動性能が向上した双極型二次電池を提供できる。
(5)結晶性の樹脂を用いた層と結晶性のない樹脂を用いた層との厚み比
結晶性の樹脂を用いた層と結晶性のない樹脂を用いた層(1層分)との厚み比(結晶性の樹脂を用いた層/結晶性のない樹脂を用いた層)は、上記した結晶性の樹脂を用いた層の厚さと、結晶性のない樹脂を用いた層(共に1層分)の厚さの範囲内であれば、特に制限されるものではなく、任意の厚さの結晶性の樹脂を用いた層と結晶性のない樹脂を用いた層とを組み合わせることができる。
(6)集電体全体の厚さ
集電体の厚さは、結晶性の樹脂により、ガス遮蔽性および工程上の強度を保つことができる範囲内であれば、軽量化により電池の出力密度を高める上では、薄いほど好ましい。双極型二次電池においては、双極型電極の正極層と負極層の間に存在する集電体は、積層方向に水平な方向(=面内方向)の電気抵抗が高くてもよいため、集電体の厚さを薄くすることが可能である。そのため、電池出力特性に優れ、長期信頼性に優れた電池を構築できる。
上記観点から、集電体の厚さは、5〜200μm、好ましくは5〜150μm、更に好ましくは5〜100μmである。かかる範囲であれば、集電体のガス遮蔽性、工程上の強度および導電性を確保した上で、軽量化による電池の出力密度を高めることができる。
(7)集電体の抵抗値
集電体の抵抗値に関しては、双極型二次電池用の集電体に求められる膜厚方向(積層方向)の電子伝導性が十分に確保できれいればよく、特に制限されるものではない。
かかる観点から、双極型二次電池の双極型電極用の集電体として用いる場合には、厚さ方向(膜厚方向)の体積抵抗率が、10Ω以下、好ましくは10〜10−5Ωの範囲であるのが好ましい。かかる範囲であれば、膜厚方向の電子伝導性に優れるためである。なお、双極型二次電池の双極型電極用の集電体として用いる場合の面内方向の表面抵抗率は、電子伝導性が十分に確保されていなくともよく、何ら制限されるものではない。
上記したように双極型二次電池の双極型電極用の集電体では、面内方向よりも膜厚方向に対する電気抵抗が低いのが望ましい。即ち、面内方向の表面抵抗率よりも厚さ方向(膜厚方向)の体積抵抗率が小さく、異方性が見られるのが望ましい。これにより、内部短絡時に集電体の面内方向に電流が流れて、短絡発生個所に電流が集中するのを防止でき、発熱現象を防止できる点で優れておる。
また、双極型電極に用いられる集電体の抵抗値に関しては、膜厚方向(積層方向)の電子伝導性が十分に確保できれいればよいことから、好ましくは、電池全体の抵抗値に対して、集電体の積層方向における抵抗値が、1/100以下、好ましくは1/1000以下となるように制御するのが望ましい。かかる抵抗値の制御には、導電材の種類や濃度などを調節することで行うことができる。
なお、双極型二次電池でも、正極層側の最外層集電体及び負極層側の最外層集電体は、積層方向に水平な方向(面内方向)の抵抗値も低減する必要がある。そのため、面内方向の表面抵抗率として、100Ω/□以下、好ましくは10Ω/□以下の特性を併せ持つのが望ましい。かかる範囲であれば、面内方向の電子伝導性にも優れるためである。但し、上記観点から最外層集電体に関しては、本発明の集電体のほか、既存の金属集電箔を用いてもよい。
上記した面内方向の表面抵抗率の測定方法としては、実施例で用いた測定方法である、JIS K 7194(導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法)に従って測定することができる。例えば、JIS規格により所定サイズに切り出したシート(サンプル)を該JIS規格に適合する市販の抵抗測定機を用いて計測して求めることができる。また、厚さ方向(膜厚方向)の体積抵抗率の測定方法としても、実施例で用いた測定方法である、電気抵抗測定器A(株式会社井元製作所製:製品仕様;測定対象:導電性高分子・ゴム、測定電極:Ф20・Ф10mm、電極荷重:1、2、3、4、5kg、電極材質:銅・試料接面金メッキ、厚さ計:デジタルゲージ、手動荷重:レバ操作により任意荷重印加可能)を用いて計測して求めることができる。但し、面内方向の表面抵抗率及び厚さ方向(膜厚方向)の体積抵抗率の測定原理は、既に確立されており、上記した測定装置によらなくとも、市販の測定装置を用いて同様に測定することができる。
なお、本明細書中で、「導電性を有する」とは、一般には電気伝導率(導電率)がグラファイト(電気伝導率:10S/m)と同等以上のものが導体、10−6S/m以下のものを不導体(絶縁体)、その中間の値をとるものを半導体と分類するが、本発明では、絶縁体でなければよく、電気伝導率(導電率)が10−6S/m以上であればよい。
<III>本発明の双極型二次電池の集電体(特徴部分)以外の構成について
以上が、本発明の双極型二次電池の特徴的な構成要件である集電体に関する説明であり、他の構成要件に関しては特に制限されるものではない。よって、以下では、本発明の双極型二次電池の特徴的な構成要件である集電体以外の他の構成要件に関し、双極型リチウムイオン二次電池を例に取り説明するが、本発明がこれらに制限されるものではない。
[正極層及び負極層]
本発明の双極型電極では、電解液の透過による液からがなく、工程上の強度に優れる双極型電極として有効に利用できる。
かかる双極型電極を構成する電極層(正極層13および負極層15)は活物質を含み、必要に応じてその他の添加剤をさらに含む。
正極層13は、正極活物質を含む。正極活物質としては、例えば、LiMn、LiCoO、LiNiO、Li(Ni−Co−Mn)Oおよびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの等のリチウム−遷移金属複合酸化物、リチウム−遷移金属リン酸化合物、リチウム−遷移金属硫酸化合物などが挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、リチウム−遷移金属複合酸化物が、正極活物質として用いられる。なお、上記以外の正極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
負極層15は、負極活物質を含む。負極活物質としては、例えば、グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、リチウム−遷移金属複合酸化物(例えば、LiTi12)、金属材料、リチウム合金系負極材料などが挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、炭素材料またはリチウム−遷移金属複合酸化物が、負極活物質として用いられる。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
各正極層13、負極層15に含まれるそれぞれの活物質の平均粒子径は特に制限されないが、高出力化の観点からは、好ましくは1〜20μmである。
電極層(正極層13および負極層15)は、結着高分子材料(単に、バインダともいう)を含む。
電極層13、15に用いられるバインダとしては、特に限定されないが、例えば、以下の材料が挙げられる。ポリプロピレン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)等のポリエステル;ポリイミド;ポリアミド;ポリフッ化ビニリデン(PVdF);エポキシ樹脂;合成ゴムなどが挙げられる。中でも、好適には、ポリプロピレン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)等のポリエステル;ポリイミド;ポリアミド;ポリフッ化ビニリデン(PVdF);エポキシ樹脂;合成ゴムである。これらの好適なバインダは、耐熱性に優れ、さらに電位窓が非常に広く正極電位、負極電位双方に安定であり電極層13、15に使用が可能となる。これらのバインダは、1種単独で用いてもよいし、2種併用してもよい。集電体の導電性樹脂層と熱融着して結合される電極層に用いられるバインダとしては、PVdF、エポキシ樹脂などが好ましい。これらの材料では、熱融着が行いやすく製造時の生産性が向上するためである。また、バインダが熱硬化性であっても熱融着が行いやすいため、好ましい。好適な熱硬化性バインダとしては、熱硬化性ポリイミド、熱硬化性ポリアミド、エポキシ樹脂、合成ゴム等が挙げられ、エポキシ樹脂などがより好ましい。
活物質層に含まれうるその他の添加剤としては、例えば、導電助剤、電解質塩(リチウム塩)、イオン伝導性ポリマー等が挙げられる。
電極層(正極層及び負極層)中のバインダは、いずれも3〜10wt%が望ましい。かかる範囲内であれば、電極活物質層内で所望の結着性を発現できるほか、該活物質層と集電体との界面の接着性(密着性)を効果的に向上させることができる。なお、電極活物質層中のバインダが、3wt%以上であれば、集電体との接着性を著しく向上させることができる。一方、10wt%以下であれば、電極の充放電容量を低下させることなく、所望のバインダ機能を有効に発現できる。但し、本発明では、当該範囲に制限されるものではなく、当該範囲を外れていても、上記した効果を有効に発現できる場合には、本発明の技術範囲に含まれるものといえる。
電極活物質層に含まれうるその他の添加剤としては、例えば、導電助剤、電解質塩(リチウム塩)、イオン伝導性ポリマー等が挙げられる。

導電助剤とは、正極活物質層または負極活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、気相成長炭素繊維などの炭素材料が挙げられる。活物質層が導電助剤を含むと、活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与しうる。
電解質塩(リチウム塩)としては、Li(CSON、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO等が挙げられる。
イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。
正極層13および負極層15中に含まれる成分の配合比は、特に限定されない。配合比は、非水溶媒二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。
各電極層13、15の厚さについても特に制限はなく、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)、イオン伝導性を考慮して適宜決定すればよく、電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、各電極層13、15の厚さは、2〜100μm程度である。
[電解質層]
電解質層17を構成する電解質としては、充放電時に正負極間を移動するリチウムイオンのキャリアーとしての機能を有するものであれば特に制限されず、液体電解質、ポリマー電解質、無機固体電解質(酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質)等が用いられうる。
液体電解質は、可塑剤である有機溶媒に支持塩であるリチウム塩が溶解した形態を有する。可塑剤として用いられうる有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)等のカーボネート類が例示される。また、支持塩(リチウム塩)としては、Li(CFSON、Li(CSON、LiPF、LiBF、LiAsF、LiTaF、LiClO、LiCFSO等の電極の合剤層に添加されうる化合物が同様に採用されうる。
一方、ポリマー電解質は、電解液を含むゲル電解質と、電解液を含まない真性(全固体)ポリマー電解質に分類される。
ゲルポリマー電解質は、マトリックスポリマー(ホストポリマー)に、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。電解質としてゲルポリマー電解質を用いることで電解質の流動性がなくなり、集電体層への電解質の流出をおさえ、各層間のイオン伝導性を遮断することが容易になる点で優れている。マトリックスポリマー(ホストポリマー)としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(PVdF−HFP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)およびこれらの共重合体等が挙げられる。
真性ポリマー電解質としては、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)等のポリエーテル系ポリマー電解質が挙げられる。通常、真性ポリマー電解質に支持塩(リチウム塩)が溶解してなる構成を有しており、可塑剤である有機溶媒を含まない。したがって、電解質として真性ポリマー電解質を用いることで電解質の流動性がなくなり、集電体層への電解質の流出をおさえ、各層間のイオン伝導性を遮断することが容易になる。
ゲルポリマー電解質や真性ポリマー電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。
なお、電解質層が液体電解質やゲル電解質から構成される場合には、電解質層にセパレータを用いてもよい。セパレータの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンからなる微多孔膜が挙げられる。
[最外層集電体]
最外層集電体11aおよび11bとしては、上記したように、双極型電極用の集電体11を用いることができるほか、既存の金属集電箔を用いることができる。例えば、アルミニウム箔、ステンレス(SUS)箔、ニッケルとアルミニウムのクラッド材、銅とアルミニウムのクラッド材、あるいはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが挙げられる。中でも正極電位、負極電位に耐えうる最外層集電体とするためには、アルミニウム箔、ステンレス箔が好ましい。
最外層集電体にも双極型集電体を用い、該双極型集電体を用いて形成された双極型電極を最外層電極にも適用してもよい。この場合、例えば、正極タブに接続される最外層の双極型電極では、最外表面に位置する負極層は実質的に充放電反応に寄与しない。同様に負極タブに接続される最外層の双極型電極では、最外表面に位置する正極層は実質的に充放電反応に寄与しない。しかしながら、最外層にも双極型電極を用いることで電池の構成部品点数が削減できる。また、わざわざ最外層電極専用の最外層集電体11a、11bを用いて正極層13のみや負極層15のみを形成するための製造ラインの組み替え(ないし切り替え)や生産管理(品質管理)を行う必要がない。さらに、最外層とそれ以外の双極型電極とを取り違えるという不具合の発生も防止できる点などで優れている。
[シール部]
シール部(シーラントないし周辺絶縁層とも称されている)31は、電解質層17の漏れを防止するために単電池層19の周辺部に配置されている。この他にも電池内で隣り合う集電体同士が接触したり、積層電極の端部の僅かな不ぞろいなどによる短絡が起こったりするのを防止することもできる。該シール部31としては、例えば、PE、PPなどのポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ゴム、ポリイミドなどが使用でき、耐蝕性、耐薬品性、製膜性、経済性などの観点からは、ポリオレフィン樹脂が好ましい。ただし、これらに何ら制限されるものではない。
シール部31は、スパッタ、蒸着、CVD、PVD、イオンプレーティングおよび溶射のいずれかの方法により形成することもできる。こうした形成法に適したシール部31としては、アルミナ、シリカ、マグネシア、イットリアなどが好適に利用可能である。
[タブ(正極タブおよび負極タブ)]
電池外部に電流を取り出す目的で、各集電体に電気的に接続されたタブ(正極タブ25および負極タブ27)が電池外装材の外部に取り出されている。具体的には、図3に示すように最外層正極集電体11aに電気的に接続された正極タブ25と最外層負極集電体11bに電気的に接続された負極タブ27とが、電池外装材29であるラミネートシートの外部に取り出される。
タブ(正極タブ25および負極タブ27)を構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用のタブとして従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。タブの構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましく、より好ましくは軽量、耐食性、高導電性の観点からアルミニウム、銅などが好ましい。なお、正極タブ25と負極タブ27とでは、同一の材質が用いられてもよいし、異なる材質が用いられてもよい。また、最外層集電体11aおよび11bの一部を延長することにより正極タブ25および負極タブ27としてもよいし、別途準備した正極タブ25および負極タブ27を最外層集電体11aおよび11bに接続してもよい。
[正極および負極端子板]
正極および負極端子板は、必要に応じて使用する。例えば、最外部集電体11a、11bから正極タブ25及び負極タブ27を直接取り出す場合には、正極および負極端子板は用いなくてもよい。この電極端子板の一部を延長することにより正極タブ25および負極タブ27としてもよい。あるいは、別途準備した正極タブ25および負極タブ27や正極および負極端子リードを正極および負極端子板に接続してもよい。
正極および負極端子板の材料は、従来公知のリチウムイオン電池で用いられる材料を用いることができる。例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼、これらの合金を利用することができる。耐蝕性、作り易さ、経済性などの観点からは、アルミニウムを用いることが好ましい。さらに、端子部での内部抵抗を抑える観点から、正極および負極端子板の厚さは、通常、0.1〜2mm程度が望ましい。
[正極および負極端子リード]
正極端子リードおよび負極端子リードに関しても、必要に応じて使用する。例えば、最外層集電体11aおよび11bから出力電極端子となる正極タブ25および負極タブ27を直接取り出す場合には、正極端子リードおよび負極端子リードは用いなくてもよい。
正極端子リードおよび負極端子リードの材料は、公知のリチウムイオン二次電池で用いられる端子リードを用いることができる。なお、電池外装材29から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆するのが好ましい。
[電池外装材]
電池外装材29としては、公知の金属缶ケースを用いることができるほか、発電要素を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるラミネートフィルムが望ましい。
[双極型二次電池の外観構成]
図3は、本発明に係る双極型二次電池の代表的な実施形態である積層型の扁平な双極型リチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
図3に示すように、積層型の扁平な双極型リチウムイオン二次電池50では、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極タブ58、負極タブ59が引き出されている。発電要素57は、双極型リチウムイオン二次電池50の電池外装材52によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素57は、正極タブ58及び負極タブ59を外部に引き出した状態で密封されている。ここで、発電要素57は、先に説明した図1に示す双極型リチウムイオン二次電池10の発電要素21に相当するものである。また、正極層13、電解質層17および負極層15で構成される単電池層(単セル)19が複数積層されたものである。
なお、本発明の双極型二次電池は、図1に示すような積層型の扁平な形状のものに制限されるものではない。巻回型の双極型二次電池では、円筒型形状のものであってもよいし、こうした円筒型形状のものを変形させて、長方形状の扁平な形状にしたようなものであってもよい。上記円筒型の形状のものでは、その外装材に、ラミネートフィルムを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよいなど、特に制限されるものではない。
また、図3に示すタブ58、59の取り出しに関しても、特に制限されるものではない。正極タブ58と負極タブ59とを同じ辺から引き出すようにしてもよいし、正極タブ58と負極タブ59をそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出しようにしてもよいなど、図3に示すものに制限されるものではない。また、巻回型の双極型二次電池では、タブに変えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
[組電池]
本発明の組電池は、本発明の双極型二次電池を複数個接続して構成した物である。詳しくは少なくとも2つ以上用いて、直列化あるいは並列化あるいはその両方で構成されるものである。直列、並列化することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。なお、本発明の組電池では、本発明の双極型二次電池と、他の非双極型リチウムイオン二次電池とを組み合わせて、これらを直列に、並列に、または直列と並列とに、複数個組み合わせて、組電池を構成することもできる。
また、図4は、本発明に係る組電池の代表的な実施形態の外観図であって、図4Aは組電池の平面図であり、図4Bは組電池の正面図であり、図4Cは組電池の側面図である。
図4に示すように、本発明に係る組電池300は、双極型リチウムイオン二次電池が複数、直列に又は並列に接続して装脱着可能な小型の組電池250を形成する。この装脱着可能な小型の組電池250をさらに複数、直列に又は並列に接続して、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力を持つ組電池300を形成することもできる。図4Aは、組電池の平面図、図4Aは正面図、図4Cは側面図を示しているが、作成した装脱着可能な小型の組電池250は、バスバーのような電気的な接続手段を用いて相互に接続し、この組電池250は接続治具310を用いて複数段積層される。何個の双極型リチウムイオン二次電池を接続して組電池250を作製するか、また、何段の組電池250を積層して組電池300を作製するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。
[車両]
本発明の車両は、本発明の電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を搭載したことを特徴とするものである。本発明の双極型二次電池は高い出力であるから、電池を搭載するとEV走行距離の長いプラグインハイブリッド電気自動車や、一充電走行距離の長い電気自動車を構成できる。言い換えれば、本発明の双極型二次電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池は、車両の駆動用電源として用いられうる。車両としては、例えば、自動車ならばハイブリット車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)が挙げられる。ただし、用途が自動車に限定されるわけではなく、他の車両、例えば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
図5は、本発明の組電池を搭載した車両の概念図である。
図5に示したように、組電池300を電気自動車400のような車両に搭載するには、電気自動車400の車体中央部の座席下に搭載する。座席下に搭載すれば、車内空間およびトランクルームを広く取ることができるからである。なお、組電池300を搭載する場所は、座席下に限らず、後部トランクルームの下部でもよいし、車両前方のエンジンルームでも良い。以上のような組電池300を用いた電気自動車400は十分な出力を提供しうる。
<IV>本発明の双極型二次電池の製造方法について
次に、本発明の双極型二次電池の製造方法としては、特に制限されるものではなく、従来公知の方法を適用して作製することができる。
本発明の特徴部分である、双極型二次電池用の集電体を形成する方法としても、特に制限されるものではない。既存の樹脂薄膜の成膜技術や積層・貼合せ技術などを適宜組み合わせて利用することができる。
即ち、前記集電体は、(1)導電材と結晶性の樹脂を含有する材料(ペレット等)を圧延機にて混練・圧延して、所望の厚さのフィルム状の結晶性樹脂層(1層の場合には、これで集電体にできる。実施例1〜5参照)、更に必要に応じて非結晶性樹脂層を形成する。得られた結晶性樹脂層と非結晶性樹脂層を熱融着(熱硬化)によって張り合わせる手法により形成される。(2)離型フィルム上に、導電材と結晶性の樹脂を含有するスラリーを塗布、乾燥して結晶性樹脂層を形成する。また、別の離型フィルム上に導電材と結晶性のない樹脂を含有するスラリーを乾燥して非結晶性樹脂層を形成する。次に、得られた結晶性樹脂層と非結晶性樹脂層を熱融着(熱硬化)によって張り合わせる手法により形成される。あるいは(3)離型フィルム上に、導電材と結晶性の樹脂を含有するスラリーを塗布、乾燥して結晶性樹脂層を形成する。得られた結晶性樹脂層上に、導電材と結晶性のない樹脂を含有するスラリーを乾燥して非結晶性樹脂層を形成する手法により形成することもできる。なお、3層以上の積層構造の集電体も上記(1)〜(3)の手法を繰り返すことでで、結晶性樹脂層と非結晶性樹脂層とを多数積層させた集電体を作製することができる。しかしながら、これに限る製造方法以外のものでもよい。
本発明の双極型二次電池の製造方法としては、集電体を上記にて説明した適当な手法にて形成すること以外は、特に制限されるものではなく、従来公知の製造方法を適用して作製することができる。
(実施例1)
以下の材料で、集電体として、集電シート1を作製した。
○構成材料
結晶性の樹脂として高密度ポリエチレン樹脂を用い、導電材として平均粒子径0.1μmのケッチェンブラックを用いた。
○作製方法
高密度ポリエチレン樹脂にケッチェンブラックを10wt%濃度となるように添加し、ペレットを作成した。上記ペレットを圧延機にて混練・圧延して厚さ50μmのフィルム状の集電シート1(1層構成;図2A参照)を作成した。集電シート1の組成は、導電材:樹脂=10:90(重量比)であった。
(実施例2)
以下の材料で、集電体として、集電シート2を作製した。
○構成材料
結晶性の樹脂としてアイソタクチックポリプロピレン樹脂を用い、導電材として平均粒子径0.1μmのケッチェンブラックを用いた。
○作製方法
アイソタクチックポリプロピレン樹脂にケッチェンブラックを10wt%濃度となるように添加し、ペレットを作成した。上記ペレットを圧延機にて混練・圧延して厚さ50μmのフィルム状の集電シート2(1層構成;図2A参照)を作成した。集電シート2の組成は、導電材:樹脂=10:90(重量比)であった。
(実施例3)
以下の材料で、集電体として、集電シート3を作製した。
○構成材料
結晶性の樹脂としてポリエチレンテレフタレート樹脂を用い、導電材として平均粒子径0.1μmのケッチェンブラックを用いた。
○作製方法
ポリエチレンテレフタレート樹脂にケッチェンブラックを10wt%濃度となるように添加し、ペレットを作成した。上記ペレットを圧延機にて混練・圧延して厚さ50μmのフィルム状の集電シート3(1層構成;図2A参照)を作成した。集電シート3の組成は、導電材:樹脂=10:90(重量比)であった。
(実施例4)
以下の材料で、集電体として、集電シート4を作製した。
○構成材料
結晶性の樹脂としてナイロン66樹脂(登録商標)を用い、導電材として平均粒子径0.1μmのケッチェンブラックを用いた。
○作製方法
ナイロン66樹脂(登録商標)にケッチェンブラックを10wt%濃度となるように添加し、ペレットを作成した。上記ペレットを圧延機にて混練・圧延して厚さ50μmのフィルム状の集電シート4(1層構成;図2A参照)を作成した。集電シート4の組成は、導電材:樹脂=10:90(重量比)であった。
(実施例5)
以下の材料で、集電体として、集電シート5を作製した。
○構成材料
結晶性の樹脂としてナイロン66樹脂(登録商標)を用い、導電材として平均粒子径0.1μmのケッチェンブラックを用いた。
○作製方法
ナイロン66樹脂(登録商標)にケッチェンブラックを10wt%濃度となるように添加し、ペレットを作成した。上記ペレットを圧延機にて混練・圧延して厚さ50μmのフィルム状の集電シート5(1層構成;図2A参照)を作成した。集電シート5の組成は、導電材:樹脂=10:90(重量比)であった。
(比較例1)
以下の材料で、集電体として、比較集電シート1を作製した。
○構成材料
結晶性のない樹脂(非結晶性樹脂)としてアクリル樹脂を用い、導電材として平均粒子径0.1μmのケッチェンブラックを用いた。
○作製方法
アクリル樹脂にケッチェンブラックを10wt%濃度となるように添加し、ペレットを作成した。上記ペレットを圧延機にて混練・圧延して厚さ50μmのフィルム状の比較集電シート1を作成した。比較集電シート1の組成は、導電材:樹脂=10:90(重量比)であった。
(比較例2)
以下の材料で、集電体として、比較集電シート2を作製した。
○構成材料
結晶性のない樹脂(非結晶性樹脂)としてアタクチックポリスチレン樹脂を用い、導電材として平均粒子径0.1μmのケッチェンブラックを用いた。
○作製方法
アタクチックポリスチレン樹脂にケッチェンブラックを10wt%濃度となるように添加し、ペレットを作成した。上記ペレットを圧延機にて混練・圧延して厚さ50μmのフィルム状の比較集電シート2を作成した。比較集電シート2の組成は、導電材:樹脂=10:90(重量比)であった。
(評価試験)
形成した実施例1〜5の集電シートおよび比較例1〜2の比較集電シート(以下、これらを総称して単に集電シートともいう)について、耐薬品性、ガス透過性、電気抵抗値、耐熱プレス性を評価した。
<耐薬品性>
上記で得られた各集電シート(フィルム)について、溶剤に対する初期耐久性を下記の方法で評価した。得られた結果を表1に示す。
・各集電シート(2cm角)をエチレンカーボネート/プロピレンカーボネート混合溶液30ccに浸漬し、3日後の重量変化(および形状変化)を測定した。ここで、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの混合比は、1:1(体積比)とした。
(結果)
実施例1〜5、比較例2は重量変化が小さく、比較例1は10wt%以上の重量増加(溶媒膨潤)が見られた。
<ガス透過性>
JIS K 7126にて各集電シート(フィルム)の酸素ガス透過性を評価した。得られた結果を表1に示す。
(結果)
実施例1〜5、比較例1はガス透過性が小さく(10−16〜10−17)、ガス遮蔽性が良好であったが、比較例2は遮蔽性が劣っていた。
<電気抵抗値>
上記のフィルムについて下記の方法で膜厚方向の抵抗を評価した。
上記で得られた各集電シート(フィルム)について、下記の方法で面内方向及び膜厚方向の電気抵抗を評価した。得られた結果を表1に示す。
・面内方向の電気抵抗(表面抵抗率)は、JIS K 7194(導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法)に従って実施した。実際には、所定サイズに切り出したシートを該JIS規格品の抵抗測定機で計測して求めたものである。
・厚さ方向(膜厚方向)の電気抵抗(体積抵抗率)は、電気抵抗測定器A(株式会社井元製作所製:製品仕様;測定対象:導電性高分子・ゴム、測定電極:Ф20・Ф10mm、電極荷重:1、2、3、4、5kg、電極材質:銅・試料接面金メッキ、厚さ計:デジタルゲージ、手動荷重:レバ操作により任意荷重印加可能)を用いて計測して求めたものである。
(結果)
実施例1〜5、比較例1、2において、低抵抗なシートが得られた。
<耐熱プレス性>
下記の電極を熱転写して密着性(耐熱プレス性)を確認した。得られた結果を表1にまとめた。
○電極活物質層の形成(電極の作製)
活物質:導電助剤:PVdF(バインダ)=90:5:5(質量比)とし、これらに対し、スラリー粘度調整溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を適量添加して電極スラリーを調製した。ここで、活物質にはLiMn(平均粒子径:10μm)を用いた。導電助剤にはアセチレンブラックを用いた。
上記電極スラリーをアルミ箔(転写用基材シート)上に塗布して乾燥したもの(電極シート)を、各集電シートにそれぞれ熱転写した。
詳しくは、集電シート(8cm角)上の中央に上記電極シート(4cm角)を重ね、150℃に加熱した熱プレスで2MPaでプレスした。
5分間、上記条件で加圧プレスした後、室温にて冷却し、アルミ箔(転写用基材シート)を剥がして転写状況を確認した。詳しくは、アルミ箔(転写用基材シート)を剥がした後、電極層と集電シートとの界面の段差に破れを生じていないかを確認した。
(結果)
実施例1〜5は、電極層と集電シートとの界面が良好で破れは見られなかった。
比較例1〜2は、電極層と集電シートとのとの界面段差に破れが見られた。
なお、上記では、集電シートの片面に電極層を形成した電極を用いて実験したが、集電シートの裏面側にも、上記したと同様にして、電極スラリーを各集電シートに塗布して乾燥したものをそれぞれ熱プレスした。かかる熱プレスに行っても、上記したと同様の結果が得られた。即ち、上記した集電シートの片面に電極活物質層を形成した電極を用いた実験により、集電シートの両面に活物質層を形成した通常の電極性能を十分に確認評価できることがわかった。
Figure 0005434089
表1の膜厚の単位は、μmである。フィラーの値は、含有量を表わし、単位は、wt%である。フィラー耐薬品性の重量変化率の単位は、wt%である。また、Oガス透過性の単位は、cm(stp)/(cm・s・Pa)である。電気抵抗の面内方向の抵抗の単位は、Ω/□である。膜厚方向の抵抗の単位は、Ωである。また、融点の単位は、℃である。密度の単位は、g/cmである。Tgの単位は、℃である。実施例5の樹脂の種類のSPSは、ポリスチレン(シンジオタクチック)の略号である。比較例2の樹脂の種類のAPSは、ポリスチレン(アタクチック)の略号である。
表1の熱プレスの評価基準は以下の通りである。
〇:良好:界面が良好で破れは見られなかった。
△:やや不良:界面段差に破れが見られる。
×:不良:破れがひどく、電極として使用できない。
1a 結晶性の樹脂、
1b 結晶性のない樹脂、
2 導電材(導電性フィラー)、
3、3a、3b、3c 樹脂と導電材を含む層、
10 双極型リチウムイオン二次電池、
11 集電体、
11a 正極層側の最外層集電体、
11b 負極層側の最外層集電体、
13 正極層、
15 負極層、
16、16a、16b 双極型電極、
17 電解質層(ゲル電解質層)、
19 単電池層(=電池単位ないし単セル)、
25 正極タブ、
27 負極タブ、
29 電池外装材(たとえばラミネートフィルム)、
31 シール部、

50 双極型リチウムイオン二次電池、250 装脱着可能な小型の双極型二次電池の組電池(モジュール)、
300 双極型二次電池の組電池(モジュール)、
310 接続治具、
400 電気自動車。

Claims (8)

  1. 樹脂と、導電材とを有する層からなる集電体であって、
    前記集電体が、120℃以上の融点を有する結晶性の樹脂を含む層を有し
    前記結晶性の樹脂が、高密度ポリエチレン、高結晶性ポリプロピレンおよびポリスチレンよりなる群から選ばれてなる少なくとも1種であることを特徴とする双極型二次電池用の集電体。
  2. 前記結晶性の樹脂が、少なくとも集電体のある層の面内方向に連続して存在する構造を有する請求項1に記載の集電体。
  3. 前記結晶性の樹脂が、集電体の少なくとも表面に存在する構造または集電体の少なくとも表面層の面内方向に連続して存在する構造を有することを特徴とする請求項1または2に記載の集電体。
  4. 前記ポリエチレンが、密度0.92g/cm以上の高密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の集電体。
  5. 前記ポリプロピレンが、立体規則性がアイソタクチックである高結晶性ポリプロピレンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の集電体。
  6. 前記ポリスチレンが、立体規則性がシンジオタクチックである結晶性ポリスチレンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の集電体。
  7. 請求項1〜のいずれかの集電体の片面あるいは両面に電気的に結合した電極活物質層を有する電極。
  8. 請求項に記載の電極を用いた双極型二次電池。
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