JP2010170741A - 非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高容量であり、充放電を繰り返しても容量の低下が少なく、電池のサイクル特性、保存特性および出力特性を高水準に維持できる非水電解質二次電池用正極活物質を工業的に有利に製造する。
【解決手段】酸化工程、被覆工程およびリチウム混入工程を含む製造方法により、所望の非水電解質二次電池用正極活物質が得られる。酸化工程では、水酸化ニッケル粒子を熱処理して酸化ニッケル粒子を製造する。被覆工程では、酸化ニッケル粒子にアルミニウムまたはアルミニウム化合物を被覆する。リチウム混入工程では、アルミニウムまたはアルミニウム化合物を被覆した酸化ニッケル粒子とリチウム化合物とを混合し、得られる混合物を酸化性雰囲気中にて熱処理する。
【選択図】図1

Description

本発明は、非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、主に非水電解質二次電池用正極活物質の粒子構造の改良に関する。
リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池は、高い作動電圧と高エネルギー密度とを有し、比較的長時間の電力供給が可能である。したがって、非水電解質二次電池は、主に携帯用電子機器の駆動用電源として実用化され、急速な成長を遂げている。携帯用電子機器には、たとえば、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、ノートブック型パーソナルコンピュータ、ビデオカムコーダーなどがある。
また、非水電解質二次電池を、ハイブリッド電気自動車(以下「HEV」とする)、プラグインハイブリッド電気自動車(以下「PHEV」とする)などのモーター駆動用電源、家庭用電力貯蔵装置の電源などとして使用する研究が進められている。
たとえば、非水電解質二次電池をHEVのモーター駆動用電源として使用する場合、HEVの加速性能、登坂性能および燃費を向上させるという観点から、非水電解質二次電池には高い出力特性が要求される。具体的には、非水電解質二次電池には、短時間ではあるが時間率20C〜40Cという大電流を出力できる性能が必要になる。このような大電流は、携帯用電子機器に用いられる一般的な二次電池が出力する電流の数十倍に相当する。
また、HEVでは、制御システムによっても異なるが、たとえばSOCが60%程度である状態を基準にして、SOC40〜80%の幅で制御が行われている。したがって、HEVにおいては、SOCが十分高くない状態でも、大電流を出力できる二次電池が望まれている。
一方、PHEVは、温室効果ガスの排出量のさらなる低減化を図るために開発されたハイブリッド電気自動車である。PHEVは、家庭で充電可能なモーター駆動用電池を搭載し、近距離移動にはガソリンエンジンを使用せず、モーターの回転駆動のみにより走行するように設計されている。PHEVがモーターの回転駆動のみで走行する場合、モーター駆動用電池のSOCは走行距離に応じて低下する。そして、SOC30%程度の低いSOC状態になった時に、モーターとガソリンエンジンとの併用による走行に切り替わる。したがって、PHEV用の電池は、通常30〜90%程度の広いSOC範囲で使用される。この場合、電池のサイクル特性が悪いと、充放電に伴って放電容量が減少し、30%程度のSOCではPHEVの走行性能に支障をきたすおそれがある。
また、PHEV用の電池は、SOCが高い状態で放置されることも多い。非水電解質二次電池は、SOCが高い状態で長時間高温に曝されると、内部抵抗が大きく増加することがある。電池の内部抵抗が増加すると、電池の出力が低下し、PHEVの走行性能に悪影響を及ぼす。したがって、PHEVにおいては、サイクル特性および保存特性に優れた二次電池が望まれている。
従来から、非水電解質二次電池の出力特性、サイクル特性(寿命特性)および保存特性を向上させるために、たとえば、正極活物質について種々の検討がなされている。
たとえば、リチウムおよび遷移金属を含む酸化物粒子を、アルミニウムと酸素とを含む化合物により被覆した正極活物質が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1の実施例1では、アルミニウムと酸素とを含む化合物として、遷移アルミナが使用されている。特許文献1には、上記正極活物質を用いることにより、放電容量が高く、サイクル特性および安全性に優れた非水電解質二次電池が得られると記載されている。特許文献1では、活物質表面のアルミニウム濃度を高めることにより、活物質表面における副反応を抑制している。その結果、充放電を繰り返しても放電容量が使用初期の高い水準に維持され、電池のサイクル特性が向上するものと推測される。
特許文献1の実施例1では、第1工程〜第3工程を含む方法により、特許文献1の正極活物質を製造している。第1工程では、リチウムおよび遷移金属を含む酸化物粒子を作製する。第2工程では、酸化物粒子の表面に遷移アルミナを被覆する。第3工程では、遷移アルミナを被覆した酸化物粒子を熱処理する。この製造方法には、次のような問題点がある。第2工程で酸化物粒子の表面に被覆された遷移アルミナ層は充放電に寄与せず、充放電反応の円滑な進行を妨げる。したがって、遷移アルミナ層の結晶構造を酸化物粒子と同じ結晶構造に変換するために、第3工程の熱処理が余分に必要になる。熱処理は数百度以上の高温で行われることから、工業的にはできるだけ熱処理の回数を減らすことが望まれている。
また、酸化物粒子に含まれるリチウムは水と反応し易い。そして、水と反応したリチウムは充放電反応に寄与しないので、電池の放電容量が低下する。したがって、第1工程終了後から第3工程終了までの間、雰囲気の露点管理を非常に厳密に実施することが必要になる。しかしながら、厳密な露点管理を実施しても、リチウムと水との反応を完全に防止することは不可能である。このように、特許文献1の製造方法は、工程数の増加および工程管理の煩雑さという問題点を有し、工業的に不利である。しかも、得られる正極活物質の容量は、第1工程終了時点よりも僅かではあるが低下している。
また、表面にアルミニウムの水酸化物または酸化物が被覆された水酸化ニッケル粒子が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。特許文献2の水酸化ニッケル粒子では、アルミニウムの水酸化物または酸化物は、固溶および共沈によることなく、単に表面に被覆されている。この水酸化ニッケル粒子は、非水電解質二次電池において正極活物質として使用されるリチウム含有ニッケル酸化物の原料になる。
特許文献2の段落0033には、この水酸化ニッケル粒子からリチウム含有ニッケル酸化物を製造するための、具体的な方法が記載されている。すなわち、水酸化ニッケル粒子と水酸化リチウムとを混合した後、酸素雰囲気中での650℃で5時間の仮焼成および750℃で10時間の本焼成を経て、リチウム含有ニッケル酸化物が製造されている。しかしながら、特許文献2の水酸化ニッケル粒子を用いて製造されるリチウム含有ニッケル酸化物は、十分に高い容量を有していない。
特開2003−257427号公報 特開2001−106534号公報
本発明の目的は、充放電を繰り返しても容量の低下が少なく、電池のサイクル特性、保存特性および出力特性を高水準に維持できる正極活物質を工業的に有利に製造できる、非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するための研究過程において、特許文献2の技術により得られるリチウム含有ニッケル酸化物の容量が低い原因について検討を行った。そして、その原因が2度の熱処理にあることを見出した。すなわち、特許文献2では、表面にアルミニウムの水酸化物または酸化物が被着した水酸化ニッケル粒子に、650℃で5時間の仮焼成および750℃で10時間の本焼成という2度の熱処理を施している。このように、複数回の熱処理を施すと、粒子表面のアルミニウムが粒子内部まで拡散することが判明した。したがって、特許文献2のリチウム含有ニッケル酸化物粒子では、粒子表面および内部にアルミニウムがほぼ均一に分散していることを確認した。
さらに、本発明者らは、粒子表面に存在するアルミニウムは副反応の抑制に有効であるが、粒子内部に存在するアルミニウムは、リチウム含有ニッケル酸化物の非水電解質二次電池用正極活物質としての重量あたりの容量を低下させることを見出した。特許文献2の方法では2度の熱処理を行うので、粒子全体にアルミニウムが均一に分散する。したがって、特許文献2の方法では、アルミニウム濃度が粒子中心部よりも粒子表面側の方が高く、かつ粒子中心部のアルミニウム濃度が活物質としての容量を低下させない程度に低いリチウム含有ニッケル酸化物粒子を製造することはできない。
なお、水酸化ニッケル粒子表面に対するアルミニウム被覆量を多くすると、表面のアルミニウム濃度が高いリチウム含有ニッケル酸化物粒子が得られるものと考えられる。しかしながら、アルミニウム被覆量を多くすると、リチウム含有ニッケル酸化物粒子内部のアルミニウム原子濃度も相対的に高くなる。その結果、正極活物質としての重量あたりの容量がより一層低下する。
本発明者らは、これらの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、酸化ニッケル粒子にアルミニウムを被覆する構成を想到するに至った。この構成によれば、アルミニウムを被覆した酸化ニッケル粒子とリチウム化合物とを混合し、この混合物を熱処理することにより、リチウム含有ニッケル酸化物粒子が得られる。この構成では、アルミニウムの被覆後に熱処理を1度だけ実施するので、アルミニウムが粒子全体に拡散しない。その結果、アルミニウム濃度が粒子内部よりも粒子表面の方が高いリチウム含有ニッケル酸化物粒子が得られることを見出した。さらに、粒子中心部のアルミニウム濃度は活物質としての容量を低下させない程度に低いことを見出した。
さらに、上記構成によれば、リチウム含有ニッケル酸化物粒子は、特許文献1のように工程の途中で得られるのではなく、工程終了時に得られる。したがって、特許文献1のように雰囲気の露点管理を厳密に行う必要はなく、さらにリチウムが水と反応して活物質としての容量が低下することも特許文献1より少なくなる。また、アルミニウムの被覆後に、リチウムの混入操作と同時にアルミニウム含有皮膜の結晶構造を変換する。特許文献1のように、アルミニウム含有皮膜の結晶構造の変換のみを目的とする工程を設ける必要がない。したがって、工程数が増加しない。本発明者らは、これらの知見に基づいて本発明を完成した。
すなわち本発明は、酸化工程、被覆工程およびリチウム混入工程を含み、酸化工程では水酸化ニッケル粒子を熱処理して酸化ニッケル粒子を製造し、被覆工程では酸化ニッケル粒子にアルミニウムまたはアルミニウム化合物を被覆し、リチウム混入工程ではアルミニウムまたはアルミニウム化合物を被覆した酸化ニッケル粒子とリチウム化合物とを混合し、得られる混合物を酸化性雰囲気中にて熱処理し、表面側におけるアルミニウム原子濃度が中心部のアルミニウム原子濃度よりも高いリチウム含有ニッケル複合酸化物粒子を製造する非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法に係る。
リチウム混入工程で得られるリチウム含有ニッケル複合酸化物粒子は、アルミニウム原子の含有割合が表面側から中心部に向けて連続的にまたは段階的に減少していることが好ましい。
水酸化ニッケル粒子は、Mg、Mn、FeおよびCoよりなる群から選ばれる少なくとも1つの元素をさらに含有することが好ましい。
水酸化ニッケル粒子は、水酸化ニッケルとMg、Mn、FeおよびCoよりなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含む固溶体または共沈物であることがさらに好ましい。
酸化工程における水酸化ニッケル粒子の熱処理は、500℃〜1000℃の温度下にて行われることが好ましい。
リチウム混入工程における、アルミニウムを被覆した酸化ニッケル粒子とリチウム化合物との混合物の熱処理は、700℃〜850℃の温度下に行われることが好ましい。
リチウム混入工程におけるリチウム化合物は、水酸化リチウム、水酸化リチウム水和物、炭酸リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、過酸化リチウム、酢酸リチウムおよびクエン酸リチウムよりなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
本発明の製造方法によれば、アルミニウム濃度が粒子中心部よりも粒子表面側の方が高いリチウム含有ニッケル複合酸化物が得られる。しかも、このリチウム含有ニッケル複合酸化物において、粒子表面側のアルミニウム濃度は、副反応やそれ自体の劣化を抑制するのに十分な濃度である。また、粒子中心部におけるアルミニウム濃度は、その正極活物質としての容量を低下させない程度に低い。
したがって、このリチウム含有ニッケル複合酸化物は、容量が高く、粒子表面での副反応が起こり難く、かつ充放電を繰り返しても劣化が少なく、非水電解質二次電池用正極活物質として有用である。このリチウム含有ニッケル複合酸化物を正極活物質として用いることにより、サイクル特性、保存特性および出力特性に優れた非水電解質二次電池が得られる。さらに本発明の製造方法によれば、工程数の増加および雰囲気の厳密な露点管理を伴うことなく、上記のリチウム含有ニッケル複合酸化物を工業的に有利に製造できる。
本発明の非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法(以下単に「本発明の製造方法」とする)は、酸化工程、被覆工程およびリチウム混入工程を含む。これらの各工程は、具体的には次の通りである。
[酸化工程]
酸化工程では、水酸化ニッケル粒子を熱処理して酸化ニッケル粒子を製造する。
水酸化ニッケル粒子は、Mg、Mn、FeおよびCoよりなる群から選ばれる少なくとも1つの元素(以下「異種金属元素」とする)を含むことが好ましい。水酸化ニッケル粒子は、水酸化ニッケルと少なくとも1つの異種金属元素とを含む固溶体または共沈物であることがさらに好ましい。水酸化ニッケル粒子は、水酸化ニッケルと少なくとも1つの異種金属元素とを含む共沈物であることが特に好ましい。
固溶体は、たとえば、水酸化ニッケルと異種金属元素含有化合物とを混合し、得られる混合物を熱処理することにより製造できる。異種金属元素含有化合物とは、たとえば、異種金属元素の塩、異種金属元素の酸化物などである。熱処理は、水酸化ニッケルが酸化ニッケルに変換されない温度下に行われる。また、熱処理は、窒素、アルゴンなどの非酸化性雰囲気中で実施してもよい。
共沈物は、たとえば、ニッケルの水酸化物と異種金属元素の水酸化物とを共沈させることにより製造できる。これにより、異種金属元素を水酸化ニッケル中に原子レベルで均一に分散させることができる。その結果、異種金属元素を含有する単一相の正極活物質が最終的に得られる。特に、水酸化ニッケルにおける異種金属元素の含有量が多い場合、単一相の正極活物質を得るには、固溶体よりも共沈物の方が好ましい。より具体的には、共沈物は、共沈工程と乾燥工程とを含む方法により製造できる。
共沈工程では、ニッケル塩および異種金属元素の塩を含有する水溶液をアルカリ剤で中和し、ニッケルと異種金属元素の少なくとも1つとを含む複合水酸化物を共沈させる。ニッケル塩としては、たとえば、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、シュウ酸ニッケルなどを使用できる。ニッケル塩は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。異種金属元素の塩としては、異種金属元素がたとえばコバルトである場合は、硫酸コバルト、硝酸コバルト、シュウ酸コバルトなどが挙げられる。コバルト以外の異種金属元素についても、コバルトと同様の酸アニオンを含む塩が挙げられる。異種金属元素の塩は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
水溶液におけるニッケル塩と異種金属元素の金属塩との合計濃度は、特に限定されないが、好ましくは0.01モル/リットル以上である。アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどを使用できる。また、中和時における水溶液の液温は、特に限定されないが、好ましくは20℃〜50℃である。中和により析出する共沈物は水溶液から分離され、次の乾燥工程に供される。
乾燥工程では、共沈工程で得られる共沈物を乾燥させる。共沈物を乾燥させる温度は、特に限定されないが、好ましくは80℃〜120℃である。また、乾燥時間は、乾燥温度に応じて選択されるが、好ましくは5時間〜50時間である。これにより、異種金属元素の少なくとも1つを含む水酸化ニッケル粒子が得られる。
得られる水酸化ニッケル粒子の平均一次粒子径は、好ましくは0.01μm〜3μmである。平均一次粒子径は、水酸化ニッケル粒子を走査型電子顕微鏡により観察し、100個の一次粒子について粒子径を測定し、その平均値として求められる。また、水酸化ニッケル粒子の二次粒子の体積平均粒子径(D50)は、好ましくは2μm〜20μmである。体積平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(商品名:LA−700、(株)堀場製作所製)を用いて測定する。アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5%水溶液50ml中に水酸化ニッケル粒子2gを加え、超音波分散機(1000Hz)にて2分間分散して、測定用試料を調製する。
また、水酸化ニッケル粒子の窒素吸着法により求められるBET比表面積は、好ましくは1〜50m2/gである。
なお、水酸化ニッケル粒子の一次粒子径、二次粒子径およびBET比表面積は、ニッケル塩の使用量、異種金属元素の塩の使用量、中和時における水溶液の液温、乾燥温度、乾燥時間などを適宜選択することにより調整できる。
本工程では、水酸化ニッケル粒子を熱処理して酸化ニッケル粒子を得る。熱処理温度は、水酸化ニッケルが酸化ニッケルに酸化される温度であれば特に制限されないが、通常500℃〜1000℃、好ましくは500℃〜800℃である。熱処理温度が500℃未満では、水酸化ニッケルの酸化が十分に進行しないおそれがある。熱処理温度が1000℃を超えると、生成する酸化ニッケルが焼結してリチウム化合物との反応性が乏しくなるおそれがある。
また、熱処理時間は、熱処理温度に応じて適宜選択されるが、好ましくは1〜50時間である。熱処理時間が1時間未満では、水酸化ニッケルの酸化が十分に進行しないおそれがある。熱処理温度が50時間を超えると、生成する酸化ニッケルが焼結してリチウム化合物との反応性が乏しくなるおそれがある。また、熱処理を行う雰囲気は、酸化性雰囲気であれば特に制限されないが、酸素濃度20%以上の雰囲気が好ましい。
こうして得られる酸化ニッケル粒子は、次の被覆工程に供される。
[被覆工程]
本工程では、酸化ニッケル粒子にアルミニウムまたはアルミニウム化合物を被覆する。酸化ニッケル粒子の表面には、アルミニウム含有層が形成される。アルミニウム化合物としては、アルミニウムを含有する有機化合物および無機化合物を使用できるが、無機化合物が好ましい。アルミニウムを含有する無機化合物としては、たとえば、酸化物、水酸化物、硫酸塩などが挙げられる。アルミニウム化合物は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
アルミニウムまたはアルミニウム化合物の使用量は特に制限されないが、好ましくは次の範囲から選択される。酸化ニッケル粒子が異種金属元素を含有しない場合は、ニッケル:アルミニウム=98〜80:2〜20(モル比)である。また、酸化ニッケル粒子が異種金属元素を含む場合、ニッケルと異種金属元素との合計量:アルミニウム=98〜80:2〜20(モル比)である。
また、酸化ニッケル粒子への被覆は、化学的被覆法、機械的被覆法などにより実施する。化学的被覆法には、たとえば、晶析などがある。機械的被覆法には、たとえば、メカノケミカル法などがある。
アルミニウムまたはアルミニウム化合物を表面に被覆した酸化ニッケル粒子(以下「活物質前駆体」とする)は、次のリチウム混入工程に供される。
[リチウム混入工程]
本工程では、アルミニウムまたはアルミニウム化合物を被覆した酸化ニッケル粒子とリチウム化合物とを混合し、得られる混合物を酸化性雰囲気中にて熱処理し、リチウム含有ニッケル複合酸化物粒子を製造する。
本発明の製造方法では、酸化ニッケル粒子の表面にアルミニウム含有層を形成した後、本工程においてただ1度の熱処理を行う。このため、アルミニウムが酸化ニッケル粒子の内部まで拡散し難い。その結果、表面側におけるアルミニウム濃度が、中心部のアルミニウム濃度よりも高いリチウム含有ニッケル複合酸化物粒子が得られる。
なお、水酸化ニッケル粒子の表面にアルミニウム含有層を形成すると、2度の熱処理を施すことが必要になる。水酸化ニッケルを酸化ニッケルに酸化する熱処理と、酸化ニッケルとリチウムとを反応させる熱処理である。このように、2度の熱処理を実施すると、アルミニウムが粒子全体に均一に拡散する。その結果、表面側のアルミニウム濃度が中心部のそれよりも高いリチウム含有ニッケル複合酸化物粒子を得るのが困難になる。
また、本発明の製造方法では、本工程において、活物質前駆体とリチウム化合物とを混合した状態で熱処理を施す。これにより、活物質前駆体の表面に存在するアルミニウム含有層の結晶構造の変換、および活物質前駆体とリチウムとの反応による活物質前駆体へのリチウムの混入が同時に起こる。したがって、特許文献1のように、アルミニウム含有層の結晶構造の変換のみを目的とする余分な熱処理工程を設ける必要がなくなる。また、本発明の製造方法では、本工程が最終工程になるので、リチウムと水との反応を防止するために、雰囲気の厳密な露点管理を実施する必要がない。したがって、本発明の製造方法は、工程数が少なくかつ工程管理が比較的容易であり、工業的に有利である。
本工程では、上記したように、まず活物質前駆体とリチウム化合物とを混合する。混合は、たとえば、無機粉体の混合に利用される一般的な機械的混合法により実施できる。リチウム化合物としては特に限定されないが、たとえば、水酸化リチウム、水酸化リチウム水和物、炭酸リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、過酸化リチウム、酢酸リチウム、クエン酸リチウムなどを使用できる。リチウム化合物は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
リチウム化合物の使用量は特に制限されないが、好ましくは次の範囲から選択される。活物質前駆体に含まれる酸化ニッケル粒子が異種金属元素を含有しない場合は、ニッケル:リチウム=1:0.95〜1.1(モル比)である。また、酸化ニッケル粒子が異種金属元素を含有する場合は、ニッケルと異種金属元素との合計量:リチウム=1:0.95〜1.1(モル比)である。
次に、活物質前駆体とリチウム化合物との混合物を酸化性雰囲気中にて熱処理する。熱処理温度は、好ましくは700℃〜850℃である。
熱処理温度が700℃未満では、ニッケルとリチウムとの反応が不十分になり、得られるリチウム含有ニッケル複合酸化物粒子の非水電解質二次電池用正極活物質としての特性が低下するおそれがある。
また、熱処理温度が850℃を超えると、アルミニウム含有層中のアルミニウムが粒子内部に拡散し易くなるおそれがある。また、ニッケルのサイトにリチウムが位置する確率が増加し、結晶構造が変化するおそれがある。その結果、得られるリチウム含有ニッケル複合酸化物粒子の非水電解質二次電池用正極活物質としての特性が低下するおそれがある。したがって、熱処理温度が850℃を超えると、粒子表面側のアルミニウム濃度が低下し、単位重量あたりの容量が低下するおそれがある。
熱処理時間は、熱処理温度に応じて適宜選択できるが、好ましくは1〜30時間である。熱処理時間が1時間未満では、ニッケルとリチウムとの反応が不十分になり、得られるリチウム含有ニッケル複合酸化物粒子の非水電解質二次電池用正極活物質としての特性が低下するおそれがある。熱処理時間が30時間を超えると、アルミニウムが粒子中心部まで十分に拡散し、単位重量あたりの容量が低下するおそれがある。なお、粒子表面側のアルミニウム濃度を高くするという観点から、熱処理時間は5〜15時間であることがさらに好ましい。
このようにして、リチウム含有ニッケル複合酸化物粒子が得られる。このリチウム含有ニッケル複合酸化物粒子は、粒子表面側のアルミニウム濃度が粒子中心部のアルミニウム濃度よりも高いという特徴を有している。アルミニウム濃度は、該粒子の研磨断面をEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)分析することにより、確認できる。
ここで、粒子表面側とは、粒子表面および粒子表層を含む。粒子表層とは、粒子表面に存在する層厚100〜1000nmの部分である。また、粒子中心部とは、該粒子の形状が球状または楕円球状なので、該粒子を内包し得る最小の真球の中心およびその近傍部分である。具体的には、前記真球の中心を中心とし、径100〜1000nmの真球の部分である。
本発明の製造方法により得られるリチウム含有ニッケル複合酸化物は、アルミニウム濃度が粒子表面側から粒子中心部に向けて連続的にまたは段階的に減少していることが好ましい。これにより、粒子表面における副反応と、重量あたりの容量の低下とを一層顕著に抑制できる。さらに、粒子自体の経時劣化に対しても有効である。このリチウム含有ニッケル複合酸化物は、活物質前駆体とリチウム化合物との混合物の熱処理温度を、前記範囲の中で連続的にまたは段階的に低下させることにより得ることができる。
本発明のリチウム含有ニッケル複合酸化物は、一次粒子または一次粒子が凝集した二次粒子である。二次粒子の形状は球状または楕円球状である。一次粒子の平均粒径は、たとえば0.3μm〜3μmである。また、二次粒子の体積平均粒径は、好ましくは2μm〜20μm、さらに好ましくは5μm〜15μmである。さらに、窒素吸着法によるBET比表面積は、たとえば、0.3m2/g〜1.0m2/gである。
また、本発明のリチウム含有ニッケル複合酸化物において、アルミニウムの含有量は、酸化ニッケル粒子が異種金属元素を含有しない場合は、好ましくはニッケル:アルミニウム=98〜80:2〜20(モル比)であり、さらに好ましくはニッケル:アルミニウム=97〜85:3〜15(モル比)である。また、酸化ニッケル粒子が異種金属元素を含む場合、ニッケルと異種金属元素との合計量:アルミニウム=98〜80:2〜20モル比)であり、さらに好ましくはニッケルと異種金属元素との合計量:アルミニウム=97〜85:3〜15(モル比)である。リチウム含有ニッケル複合酸化物に含まれるアルミニウム原子の量は、被覆工程において、アルミニウムまたはアルミニウム化合物の使用量を調整することにより、前記範囲に制御できる。
本発明の製造方法により得られるリチウム含有ニッケル複合酸化物は、非水電解質二次電池、特にリチウムイオン二次電池の正極活物質として好適に使用できる。非水電解質二次電池は、たとえば、電極群と非水電解質とを電池ケースに収容し、電池ケースを封口することにより作製できる。電極群は正極、負極およびセパレータを含み、正極と負極との間にセパレータを介在させた捲回物または積層物である。
正極は、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、チタンなどからなる集電体の両方または片方の表面に、正極活物質層を形成した電極板である。正極活物質層は、本発明の製造方法により得られるリチウム含有ニッケル複合酸化物、導電材および結着材を含む。負極は、銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼などからなる集電体の両方または片方の表面に、負極活物質層を形成した電極板である。負極活物質層は、炭素材料、珪素、珪素酸化物、錫、錫酸化物などのリチウムの吸蔵放出が可能な負極活物質、結着材、導電材、増粘材などを含む。負極活物質が珪素、珪素酸化物、錫、錫酸化物などである場合は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの気相法により、薄膜状の負極活物質層を形成できる。
セパレータには、たとえば、樹脂製多孔質膜、無機酸化物からなる多孔質膜などを使用できる。樹脂製多孔質膜を構成する樹脂には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンが好ましい。無機酸化物からなる多孔質膜は、アルミナ、シリカ、マグネシア、チタニアなどの無機酸化物粒子を結着材によりシート状に成形したものである。非水電解質は、リチウム塩(支持塩)を有機溶媒(非水溶媒)に溶解または分散させたものである。電池ケースの材質は、鉄、ステンレス鋼などの金属、積層ラミネートフィルムなどである。電池の形状は特に制限されず、たとえば、円筒型、角型、コイン型、平板型、袋型などが挙げられる。
以下に実施例、比較例および試験例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
(a)ニッケル水酸化物の製造
NiSO4水溶液にコバルトの硫酸塩を加え、飽和水溶液を調製した。この飽和水溶液を25℃に保持し、攪拌下に水酸化ナトリウム水溶液をゆっくり滴下して中和し、ニッケルコバルト複合水酸化物(Ni0.85Co0.15(OH)2)を共沈させた。この沈殿物をろ過、水洗し、80℃で24時間乾燥し、複合水酸化物の粒子を得た。得られた複合水酸化物粒子の体積平均粒子径は約10μmであった。また、窒素吸着法により測定されるBET比表面積は20m2/gであった。
(b)ニッケル酸化物の製造
ニッケルコバルト複合水酸化物(Ni0.85Co0.15(OH)2)を大気中にて500℃で10時間加熱し、ニッケルコバルト複合酸化物(Ni0.85Co0.15O)を得た。
(c)アルミニウムの被覆
ニッケルコバルト複合酸化物(Ni0.85Co0.15O)を水に分散させ、この分散液に攪拌下に硫酸アルミニウム水溶液(濃度1モル/リットル)および水酸化ナトリウム水溶液(濃度1モル/リットル)を滴下した。このとき、NiとCoの合計量とAlとのモル比が93:7になるように、硫酸アルミニウム水溶液の滴下量を調整した。滴下終了後、水中の固形物を分離し、水洗し、80℃で24時間乾燥し、表面が水酸化アルミニウムで被覆されたニッケルコバルト複合酸化物(以下「活物質前駆体」とする)を製造した。
(d)リチウム含有ニッケル複合酸化物の製造
上記で得られた活物質前駆体と水酸化リチウム(LiOH)とを混合した。得られた混合物において、活物質前駆体に含まれるニッケルおよびコバルト(異種金属元素)の合計量とリチウムとのモル比が1:1になるように、水酸化リチウムの量を調整した。この混合物を、酸素雰囲気中、750℃で12時間焼成し、リチウム含有ニッケル複合酸化物(Li(Ni0.85Co0.150.93Al0.072)を製造した。
このリチウム含有ニッケル複合酸化物の粒子では、アルミニウム原子の含有割合が中心部から表面に向かって増加していた。また、このリチウム含有ニッケル複合酸化物は二次粒子であり、その体積平均粒径は12μmであった。また、前記の組成式から明らかなように、このリチウム含有ニッケル複合酸化物におけるアルミニウム原子の含有量は、金属元素(ニッケル、コバルトおよびアルミニウム)の合計量の7モル%であった。
さらに、このリチウム含有ニッケル複合酸化物粒子を、走査型電子顕微鏡で観察した。図1は、実施例1で得られたリチウム含有ニッケル複合酸化物粒子の走査型電子顕微鏡写真である。図1のリチウム含有ニッケル複合酸化物粒子は、表面側におけるアルミニウム原子含有割合が、中心部側におけるアルミニウム原子の含有割合よりも大きい。
(比較例1)
実施例1の(a)と同様にして、ニッケルコバルト複合水酸化物(Ni0.85Co0.15(OH)2)を製造した。このニッケルコバルト複合水酸化物を水中に分散させ、得られた分散液に攪拌下に硫酸アルミニウム水溶液(濃度1モル/リットル)および水酸化ナトリウム水溶液(濃度1モル/リットル)を滴下した。このとき、NiとCoの合計量とAlとのモル比が93:7になるように、硫酸アルミニウム水溶液の滴下量を調整した。滴下終了後、水中の固形物を分離し、水洗および乾燥し、表面が水酸化アルミニウムで被覆されたニッケルコバルト複合水酸化物を製造した。
次いで、水酸化アルミニウムが被覆されたニッケルコバルト水酸化物を、大気中500℃10時間加熱して、ニッケルコバルト複合酸化物Ni0.85Co0.15Al0.07Oを製造した。実施例1の(d)において、活物質前駆体に代えてこのニッケルコバルト複合酸化物を用いる以外は、実施例1の(d)と同様にして、体積平均粒子径13μmのリチウム含有複合酸化物を製造した。
(比較例2)
実施例1の(a)および(b)と同様にして、ニッケルコバルト複合酸化物(Ni0.85Co0.15O)を製造した。次に、実施例1の(d)において、活物質前駆体に代えてこのニッケルコバルト複合酸化物を用いる以外は、実施例1の(d)と同様にしてリチウム含有複合酸化物を製造した。
このリチウム含有複合酸化物とアルミナ(Al23、金属酸化物)とを、循環型メカノフュージョンシステムにて乾燥空気雰囲気中で30分間混合した。このとき、NiとCoとの合計量とAlとのモル比が93:7になるように、アルミナの使用量を調整した。これにより、表面にアルミナが被覆されたリチウム含有ニッケル複合酸化物を製造した。引き続き、このリチウム含有ニッケル複合酸化物を700℃で2時間焼成し、表面にアルミナが固着し、体積平均粒径が12μmであるリチウム含有ニッケル複合酸化物を製造した。
(試験例1)
実施例1および比較例1〜2で得られたリチウム含有ニッケル複合酸化物粒子の断面について、電子線マイクロアナライザー(以下「EPMA」とする、Electron Probe Micro Analyzer、商品名:DX−4、エダックス・ジャパン(株)製)を使用し、加速電圧15kVにて、Ni、CoおよびAlの濃度をライン分析した。結果を図2〜4に示す。
図2は、EPMAによる実施例1のリチウム含有ニッケル複合酸化物粒子のライン分析結果を示す図面である。図3は、EPMAによる比較例1のリチウム含有ニッケル複合酸化物粒子のライン分析結果を示す図面である。図4は、EPMAによる比較例2のリチウム含有ニッケル複合酸化物粒子のライン分析結果を示す図面である。図2〜4において、上下方向に並ぶ3つの折れ線のうち、符号1で示す一番下にある折れ線はNi原子の分布を示し、符号2で示す真中にある折れ線はCo原子の分布を示し、符号3で示す一番上にある折れ線はAl原子の分布を示している。各折れ線の縦方向の高さが、各原子の濃度を表している。
図2から、実施例1のリチウム含有ニッケル複合酸化物粒子では、粒子表面側のアルミニウム原子の濃度が粒子中心部のアルミニウム原子の濃度より高くなっていることが判る。これにより、この粒子を正極活物質として含む非水電解質二次電池を高温保存した場合に、正極表面での副反応による皮膜生成が少なく、抵抗増加を抑制することができる。しかも、粒子内部におけるアルミニウム原子濃度は低いので、重量当たりの容量が減少することも抑制される。
これに対し、図3に示すように、比較例1のリチウム含有ニッケル複合酸化物粒子は、粒子表面側のアルミニウム原子濃度と粒子中心部のアルミニウム原子濃度とがほぼ同じである。すなわち、粒子全体にわたって、アルミニウム原子がほぼ均一に分散しているものと推測される。したがって、比較例1の正極活物質の表面では、実施例1と比較してアルミニウム濃度が低いと推測される。このため、副反応による皮膜生成を抑制する効果が、実施例1の正極活物質に比べて小さくなると推測される。これにより、比較例1の粒子を正極活物質として含む非水電解質二次電池は、高温保存時における正極表面での副反応による皮膜生成が実施例1と比較して多くなり、抵抗増加が大きくなると推測される。また粒子内部のアルミニウム量が多いために重量当たりの容量が減少する。
比較例1では、ニッケルコバルト複合水酸化物表面にアルミニウムを被覆した後に、500℃×10時間の熱処理と、750℃×12時間の熱処理とを実施している。すなわち、アルミニウムの被覆後に、高温での熱処理を2回実施している。その結果、粒子表面のアルミニウムが粒子内部に拡散していき、粒子全体においてアルミニウム原子の濃度がほぼ均一化したものと推測される。
一方、図4から、比較例2のリチウム含有ニッケル複合酸化物粒子は、粒子表面側のアルミニウム原子の濃度が粒子中心部のアルミニウム原子の濃度より高くなっていることが判る。しかしながら、比較例2には次のような問題点がある。すなわち比較例2では、ニッケルコバルト複合酸化物にリチウムを混入させた後に、アルミナを被覆している。リチウムは水と反応し易いので、アルミナを被覆する際に水分と接触すると、電池容量に寄与するリチウム量が減少する。したがって、アルミナを被覆する際には、徹底した水分管理を実施する必要があるが、完全な水分の除去は困難である。その結果、電池容量の低下を避けることができない。
さらに、表面に被覆されたアルミナ層は充放電に寄与せず、充放電反応に対する抵抗を増大させる。したがって、再度熱処理を実施することにより、アルミナ層を、核になるリチウム含有ニッケル複合酸化物粒子と同じ結晶構造に変換しなければならない。その結果、実施例1よりも高温での熱処理工程が増加する。熱処理工程が多くなるほど、最終的に得られるリチウム含有ニッケル複合酸化物粒子の結晶構造、耐久性などに悪影響を及ぼす可能性がある。しかも、非常に厳密な工程管理が要求され、さらに工程数が増加するので、製造工程が複雑化し、製造コストも上昇する。
以上のように、本発明の製造方法によれば、厳密な工程管理を必要とせず、かつ少ない工程数で、非水電解質二次電池用の正極活物質としての性能に優れたリチウム含有ニッケル複合酸化物粒子を得ることができる。
本発明の製造方法によれば、優れた寿命特性および高い容量を有し、非水電解質二次電池用の正極活物質として有用なリチウム含有ニッケル複合酸化物を提供できる。このリチウム含有ニッケル複合酸化物は、大電流の出力にも対応可能である。したがって、このリチウム含有ニッケル複合酸化物を含む非水電解質二次電池は、特に、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車などのモーター駆動用電源、家庭用電力貯蔵装置の電源などとして好適に使用できる。さらには、携帯用電子機器の電源としても使用できる。
実施例1のリチウム含有ニッケル複合酸化物粒子の走査型電子顕微鏡写真である。 EPMAによる実施例1のリチウム含有ニッケル複合酸化物粒子のライン分析結果を示す図面である。 EPMAによる比較例1のリチウム含有ニッケル複合酸化物粒子のライン分析結果を示す図面である。 EPMAによる比較例2のリチウム含有ニッケル複合酸化物粒子のライン分析結果を示す図面である。
1 EPMAによるNi分布
2 EPMAによるCo分布
3 EPMAによるAl分布

Claims (7)

  1. 酸化工程、被覆工程およびリチウム混入工程を含み、
    酸化工程では、水酸化ニッケル粒子を熱処理して酸化ニッケル粒子を製造し、
    被覆工程では、酸化ニッケル粒子にアルミニウムまたはアルミニウム化合物を被覆し、
    リチウム混入工程では、アルミニウムまたはアルミニウム化合物を被覆した酸化ニッケル粒子とリチウム化合物とを混合し、得られる混合物を酸化性雰囲気中にて熱処理し、表面側におけるアルミニウム原子濃度が中心部のアルミニウム原子濃度よりも高いリチウム含有ニッケル複合酸化物粒子を製造する非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  2. リチウム混入工程で得られるリチウム含有ニッケル複合酸化物粒子は、アルミニウム原子の含有割合が表面側から中心部に向けて連続的にまたは段階的に減少している請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  3. 水酸化ニッケル粒子が、Mg、Mn、FeおよびCoよりなる群から選ばれる少なくとも1つの元素をさらに含有する請求項1または2に記載の非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  4. 水酸化ニッケル粒子が、水酸化ニッケルとMg、Mn、FeおよびCoよりなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含む固溶体または共沈物である請求項3に記載の非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  5. 酸化工程における水酸化ニッケル粒子の熱処理が、500℃〜1000℃の温度下にて行われる請求項1〜4のいずれか1つに記載の非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  6. リチウム混入工程における、アルミニウムを被覆した酸化ニッケル粒子とリチウム化合物との混合物の熱処理が、700℃〜850℃の温度下に行われる請求項1〜5のいずれか1つに記載の非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  7. リチウム混入工程におけるリチウム化合物が、水酸化リチウム、水酸化リチウム水和物、炭酸リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、過酸化リチウム、酢酸リチウムおよびクエン酸リチウムよりなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項1〜6のいずれか1つに記載の非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
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