JP2010159468A - 成形回路部品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】触媒に含まれる貴重な貴金属の省資源化ができると共に、基体を粗面化しないでも密着性に優れる精密な3次元的な導電性回路の形成方法を提供する。
【解決手段】第1の基体1に脱ドープ状態のポリピロールとバインダとを混合した接着層2を塗布し、ポリ乳酸等からなる被覆材3で部分的に被覆して、触媒5を付与する。疎水性の被覆材3に残存する触媒5aを水洗浄で除去し、被覆されていない部分の触媒5b部に、浴組成が酸性または中性の無電解めっきによる導電性回路を形成する。
【選択図】図4

Description

本発明は、絶縁材からなる基体に、三次元的な導電性回路を形成した部品の製造方法に関し、特に絶縁材からなる基体に、導電性高分子を含む接着層を付与して、この接着層に無電解めっき等による導電性回路を形成した部品の製造方法に関する。
従来から絶縁材からなる基体の表面に、無電解めっきによって選択的に導電性回路を形成する、成形回路部品の製造方法が各種提案されている。これらの製造方法においては、無電解めっき層と、被めっき体である基体との密着性を確保することが必要である。そこで従来から、無電解めっき層と基体との密着性を確保する手段として、予め基体の表面をアルカリ溶液等によってエッチングして粗面化しておく手段が提案されている(例えば特許文献1、2、及び3参照。)。
これらの成形回路部品の製造方法は、いずれも粗化した基体の表面を被覆材で部分的に被覆し、触媒を付与した後に被覆材を除去する。そして被覆材で被覆されていなかったために触媒が付着した基体の表面部分に、無電解めっきを行って導電性回路を形成するものである。したがってこの被覆材は、触媒付与後の工程において、簡単に溶出して除去できるものが望ましい。このため特許文献1および2に記載の製造方法では、被覆材として、容易に水に溶出して除去できる高分子材料であるポリビニルアルコール系樹脂を使用している。また特許文献3に記載の製造方法では、容易にアルカリ性溶液で加水分解して除去できる高分子材料であるポリ乳酸等を使用している。
また無電解めっき層と基体との密着性を確保する他の手段として、基材フィルムの表面に、脱ドープ状態の導電性高分子を含む接着層を、インクジェット方式によりパターン印刷して、このパターン印刷の表面上に、二次元的な導電性回路を形成する手段が提案されている(例えば特許文献4参照。)。ポリピロール等の導電性高分子は、ドープ状態では、分子内に正電荷(アクセプタ、正孔ともいう。)を有しているため、自由電子を持つ金属との密着性に優れている。このためポリピロール等を含む接着層と無電解めっき層との密着性を確保することができる。また接着層には、基体との親和性に優れたバインダを混合することによって、この接着層と基体との密着性を確保している。
特開平11−145583号公報(1〜4頁) 特開2000−80480号公報(1〜8頁) 特開2002−344116号公報(1〜4頁) 特開2007−270180号公報(2頁)
本願発明者は、基体の全表面に脱ドープ状態の導電性高分子を含む接着層を形成し、この接着層の表面を被覆材で部分的に被覆して、被覆されない部分に、無電解めっきによる三次元的な導電性回路を形成する成形回路部品の製造方法の着想を得た。しかるにこの製造方法には、次の解決すべき課題があることが判明した。すなわち上述した特許文献1及び2に記載の方法においては、いずれも被覆材として、後工程において溶出除去が容易な、水溶性のポリビニルアルコール系樹脂等の高分子材料を使用しているため、触媒付与の工程において、この被覆材の表面が膨潤して親水性となり、その結果、被覆材の表面に付着した触媒が、洗浄しても除去できないという問題がある。このため、後工程において被覆材を溶解除去するときに、触媒も一緒に溶解液に混入し、溶解液の廃却と共に、混入した触媒も廃棄される。しかるに触媒には、パラジウムや金等の希少金属が用いられるため、これらの貴重な貴金属に対する省資源化を図る必要がある。
また上記特許文献3に記載の方法においては、被覆材として、加水分解性のポリ乳酸や脂肪族ポリエステル等の高分子材料を使用し、触媒を付与した後に、加水分解を促進するアルカリ性溶液を用いて被覆材を除去するため、この被覆材の除去工程において、被覆材で被覆されていない基体の表面部分、すなわち導電性回路を形成する部分に付与された触媒までもが、このアルカリ性溶液の洗浄効果によって脱落し、その結果、この導電性回路を形成する部分に、無電解めっきが十分析出しないという問題がある。
さらに上述した特許文献1〜3の手段では、いずれも被覆材を除去後に無電解めっきを行なっているため、いわゆる通常行なわれるバレルめっき(すなわち基体を容器内にバラバラな状態で投入し、容器をめっき浴槽内で回転させる。)では、無電解めっきの初期段階において、触媒付与面が互いに擦れ合って触媒が脱落し、めっき未着不良が生じ易い。
そこで本願発明の目的は、被めっき層との密着性に優れる三次元的な導電性回路を容易に形成できると共に、触媒に含まれる貴重な貴金属の省資源化と、導電性回路を形成する部分に無電解めっきを十分析出させることができる成形回路部品の製造方法を提供することにある。
本願発明による成形回路部品の製造方法の特徴は、基体の表面を粗化する替わりに、無電解めっきとの密着性の優れた接着層で覆うこと、この接着層を部分的に覆う被覆材として耐酸性の樹脂を用いること、触媒付与後に被覆材の表面に残存する触媒を水洗除去すること、無電解めっきを酸性または中性のいずれかの浴組成で行なうこと、被覆材の除去は、無電解めっき後に行なうこと、および接着層には、脱ドープ状態のポリピロールの微粒子と、バインダとを含めることにある。
すなわち、この成形回路部品の製造方法は、絶縁体からなる第1の基体を成形する第1の工程と、上記第1の基体の表面に接着材を付与して接着層を形成する第2の工程と、上記接着層の表面に、ポリグリコール酸、若しくはポリ乳酸の単体、またはポリ乳酸と脂肪族ポリエステルとの混合体、若しくは共重合体からなる被覆材を、部分的に被覆して第2の基体を形成する第3の工程と、上記第2の基体の表面に触媒を付与する第4の工程と、上記被覆材の表面に残存する上記触媒を、水洗除去する第5の工程と、上記第2の基体の表面であって、上記被覆材で被覆されていない部分に、浴組成が酸性または中性のいずれかの第1の無電解めっきをする第6の工程と、上記被覆材を除去する第7の工程とを備えている。そして上記接着材の製造は、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、有機溶剤、およびイオン交換水を混合して乳化液とする第2.1の工程と、上記乳化液に、ピロールモノマを混合する第2.2の工程と、上記ピロールモノマを混合した混合液に酸を加えて、このピロールモノマを重合反応させ、導電率0.01S/Cm未満のポリピロールの微粒子を生成する第2.3の工程と、上記ポリピロールの微粒子を分散混合した有機溶媒液にバインダを加える第2.4の工程とを含む。
上記第6の工程と第7の工程との間に、上記第1の無電解めっきの表面に、浴組成が酸性または中性のいずれかの第1の電解めっきを積層する第6.1の工程を備えてもよい。また上記第7の工程の後に、上記第1の無電解めっきの表面に、浴組成が酸性、中性、またはアルカリ性のいずれかの1の第2の電解めっきを積層する第8の工程を備えてもよい。
あるいは上記第7の工程の後に、上記第1の無電解めっきの表面に、浴組成が酸性、中性、またはアルカリ性のいずれかの1の第2の無電解めっきを積層する第9の工程を備えてもよい。
あるいは上記第6の工程と第7の工程との間に、上記第1の無電解めっきの表面に、浴組成が酸性または中性のいずれかの第3の無電解めっきを積層する第6.2の工程を備えてもよい。あるいは上記第7の工程の後に、上記第1の電解めっきの表面に、浴組成が酸性、中性、若しくはアルカリ性のいずれかの1の第3の電解めっき、または第4の無電解めっきのいずれかを積層する第10の工程を備えてもよい。
なお上述した第7の工程以降の工程番号、電解めっき番号、及び無電解めっき番号は、いずれも各工程、各電解めっき、及び各無電解めっきに関して、それぞれ相互に区別するためのものであって、必ずしも本願発明による成形回路部品の製造工程の時系列的な順番を示すものではない。
ここで「絶縁体からなる第1の基体」は、3次元的な立体形状のものに限らず、平板状のものであってもよく、表裏面等の相異なる面を開口孔で連結したものも含む。「絶縁体」としては、熱可塑性樹脂が望ましいが、熱硬化性樹脂であってもよい。かかる樹脂としては、例えば芳香族系液晶ポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルポリスルホン、ポリアリールスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエステル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂、ポリアミド、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂、ノルボルネン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂が該当する。
「接着材を付与」の「接着材」とは、第1の基体、及び後述する無電解めっきの双方に密着する層を意味し、「付与」とは、スプレーによる吹き付け、刷毛等による塗布、あるいは接着材を含む溶液への浸漬等を意味する。「ポリグリコール酸」とは、例えば、株式会社クレハ製の図9に示す構造式のものが該当する。「ポリ乳酸」とは、例えば、三井化学株式会社製のレイシア♯H-100J/Fが該当する。「脂肪族ポリエステル」とは、例えば、ポリヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、脂肪族多価塩基酸とからなる脂肪族ポリエステル、ヒドロキシカルボン酸や脂肪族多価アルコールから選ばれた複数種のモノマー成分と、脂肪族多価塩基酸から選ばれる複数種のモノマー成分とからなるランダム共重合体やブロック共重合体などが該当する。
このポリ乳酸と脂肪族ポリエステルとの混合量、共重合量は、混合体又は共重合体の全量に対して1〜10重量%程度がよい。アルカリ分解促進剤を、混合体全量に対して1〜100重量%程度、混合してもよい。また必要に応じてアルカリ分解促進剤、有機無機充填剤、着色剤などの、合成樹脂に使用できる汎用の添加剤を混合してもよい。
「部分的に被覆する」とは、後工程において導電性回路を形成すべき部分を残して、選択的に被覆するということを意味している。「第2の基体」とは、第1の基体と、この第1の基体の表面に付与した接着層と、この接着層を部分的に被覆した被覆材とからなる部材を意味する。「触媒」とは、後工程における無電解めっきを最初に析出させる金属を意味し、パラジウム、金、あるいは銀等の貴金属が該当する。
「水洗除去」とは、疎水性を維持している被覆材の表面に残存している触媒を、水洗によって洗い流すことを意味する。この水洗は、pH7以上の中性からアルカリ組成の洗浄水を使用し、例えば15〜70℃の洗浄水に、第2の基体を5〜120秒間浸して攪拌したり、100〜170℃の洗浄水の蒸気を、第2の基体に高圧で噴き付けたりして行なう。「浴組成」とは、無電解めっき液のpH(水素イオン濃度)を意味しており、「浴組成が酸性または中性」とは、無電解めっき液、または電解めっき液のpHが7以下であることを意味する。なお本願発明においては、無電解めっきの「浴組成」が、7〜7.5程度の弱アルカリ性であっても、酸性または中性の浴組成と同様に作用するが、無電解めっき液の劣化を早めるため注意が必要である。
「アニオン系界面活性剤」とは、濡れ性の向上を果す物質を意味し、種々のものが使用できるが、疎水性末端を複数有するもの(例えば、疎水基に分岐構造を有するものや、疎水基を複数有するもの)が好ましい。このような疎水性末端を複数有するアニオン系界面活性剤を使用することにより、安定したミセルを形成させることができ、重合後において水相と有機溶媒相との分離がスムーズであり、有機溶媒相に分散したポリピロール及び/ポリピロール誘導体微粒子が入手し易い。疎水性末端を複数有するアニオン系界面活性剤としては、例えばスルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム(疎水性末端4つ)、スルホコハク酸ジ−2−エチルオクチルナトリウム(疎水性末端4つ)および分岐鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩(疎水性末端2つ)が好適である。
なお反応系中でのアニオン系界面活性剤の量は、ピロールおよび/ピロール誘導体のモノマー1molに対し0.05mol未満であることが好ましく、さらに好ましくは0.005mol〜0.03molである。0.05mol以上では添加したアニオン性界面活性剤がドーパントとして作用し、得られる微粒子は導電性を発現するため、これを用いて無電解めっきを行うためには脱ドープの工程が必要となるからである。
「ノニオン界面活性剤」とは、濡れ性の向上を果す物質を意味し、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル類、アルキルグルコシド類、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビダン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類が該当する。なおこれらを一種類または複数混ぜて使用してもよい。特に安定的にO/W型エマルションを形成するものが好ましい。
なお反応系中でのノニオン系界面活性剤の量は、ピロール及び/又はピロール誘導体のモノマー1molに対し、アニオン性界面活性剤と足して0.2mol以下であることが好ましく、0.05〜0.15molであることが、さらに好ましい。0.05mol未満では収率や分散安定性が低下し、一方、0.2mol以上では合後において、水相と有機溶媒相との分離が困難になり、有機溶媒相にある還元性微粒子を得ることが困難になるからである。
「有機溶媒」は、疎水性であることが好ましく、なかでも芳香族系の有機溶媒であるトルエンやキシレンが、O/W型エマルションの安定性およびピロールモノマとの親和性の観点から、より好ましい。なお両性溶媒でもポリピロールの重合を行うことはできるが、生成したポリマー微粒子を回収する際の有機相と水相との分離が困難になる。また乳化液における有機相と水相との割合は、水相が75体積%以上であることが好ましい。水相が20体積%以下ではピロールモノマの溶解量が少なくなり、生産効率が悪くなるからである。
「ピロールモノマ」には、ピロールモノマの誘導体を含む。この「ピロールモノマ」およびその誘導体としては、ピロール、N−メチルピロール、N−エチルピロール、N−フェニルピロール、N−ナフチルピロール、N−メチル−3−メチルピロール、N−メチル−3−エチルピロール、N−フェニル−3−メチルピロール、N−フェニル−3−エチルピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−ブチルピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−n−プロポキシピロール、3−n−ブトキシピロール、3−フェニルピロール、3−トルイルピロール、3−ナフチルピロール、3−フェノキシピロール、3−メチルフェノキシピロール、3−アミノピロール、3−ジメチルアミノピロール、3−ジエチルアミノピロール、3−ジフェニルアミノピロール、3−メチルフェニルアミノピロール、3−フェニルナフチルアミノピロール等が該当する。特に好ましいのはピロールである。
「酸」とは、ピロールモノマまたはその誘導体を重合反応させる酸化剤を意味し、例えば、硫酸、塩酸、硝酸およびクロロスルホン酸のような無機酸、アルキルベンゼンスルホン酸およびアルキルナフタレンスルホン酸のような有機酸、過硫酸カリウム、並びに過硫酸アンモニウムおよび過酸化水素のような過酸化物が該当する。これらは単独で使用しても、二種類以上を併用してもよい。なお塩化第二鉄等のルイス酸でもポリピロールを重合できるが、生成した粒子が凝集し、ポリピロールを微分散できない場合がある。特に好ましい酸化剤は、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩である。
なお反応系中での酸化剤の量は、ピロールモノマ等1molに対して0.1mol以上、0.8mol以下が好ましく、0.2〜0.6molが、さらに好ましい。0.1mol未満ではモノマーの重合度が低下し、ポリマー微粒子を分液回収することが困難になり、一方、0.8mol以上ではポリピロールが凝集してポリマー微粒子の粒径が大きくなり、分散安定性が悪化するからである。
「バインダ」とは、第1の基体との親和性に優れ、この第1の基体と接着層との密着性を確保する素材を意味する。例えば、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等が該当する。なお添加するバインダの量は、ポリピロール1質量部に対して100質量部以下が好ましく、より好ましくは10質量部以下である。100質量部以上添加すると、ポリピロールの還元性が損なわれる場合がある。
無電解めっきとの密着性に優れる接着層を使用することによって、第1の基体の表面を粗面化する工程が不要になる。第1の基体の全表面に接着層を付与し、この接着層の表面を被覆材で部分的に覆うことによって、無電解めっきにより、精密な三次元的な導電性回路を容易に形成することができる。被覆材として、加水分解によって容易に除去でき、かつ触媒液によって膨潤することなく疎水性を維持できるポリグリコール酸、若しくはポリ乳酸の単体、またはポリ乳酸と脂肪族ポリエステルとの混合体、若しくは共重合体を使用することによって、触媒付与の際に、触媒が被覆材に強固に密着することを防止できる。
そして触媒付与後に水洗浄の工程を設けることによって、被覆材の疎水性の表面に残存する触媒を、容易かつ確実に除去できるので、この洗浄水に洗い出された触媒を容易に分離回収可能となり、高価な貴金属の省資源化が可能となる。また上記被覆材は耐酸性を有するので、無電解めっき若しくは電解めっきを、酸性または中性のいずれかの浴組成で行なうことによって、この被覆材の溶解等を防止して、導電性回路を精密に形成することができる。
さらに被覆材の溶解除去を、導電性回路を形成する部分に、無電解めっきを形成した後に行うことによって、無電解めっき前に被覆材の溶解除去をする従来手法の問題点、すなわち被覆材の除去に用いるアルカリ性の溶解液によって、被覆材で被覆されていない第1の基体の表面に付与した触媒までもが脱落してしまうという問題を回避できるので、無電解めっきを十分に析出させることができる。
また被覆材を除去した後は、被覆材の溶解等を考慮する必要がなくなるため、浴組成が酸性、中性、またはアルカリ性のいずれであっても、この被覆材の除去前に行った電解めっき、または無電解めっきに重ねて、さらに電解めっき、または無電解めっきを積層することができる。
また無電解めっき、または電解めっきの上に、重ねて無電解めっき、または電解めっきを積層することによって、成形回路の厚みや強度等を増大させることができる。また材質の異なるめっきを積層することによって、成形回路に半田付け性の向上等、他の有用な特性を付与することができる。
また被覆材の溶解除去を、無電解めっきを形成した後に行うことによって、無電解めっきの際には、導電性回路を形成する部分の周囲を、被覆材の壁で取囲まれた状態にすることができる。このためバレルめっきを行なう場合にも、被覆材の壁によって、触媒付与が付与された導電性回路を形成する部分が、相互に擦れ合うことを回避でき、めっきの未着不良が生じることが防止できる。
第1の基体の断面図である。 全表面に接着層を付与した第1の基体の断面図である。 接着層を被覆材で部分的に被覆した第2の基体の断面図である。 触媒を付与した第2の基体の断面図である。 被覆材に残存する触媒を水洗除去した第2の基体の断面図である。 被覆材で覆われていない接着層に、無電解ニッケルめっきによる導電性回路を形成した第2の基体の断面図である。 被覆材を除去した第2の基体の断面図である。 無電解ニッケルめっきによる導電性回路の表面に、電解銅めっきを形成した第2の基体の断面図である。 ポリグリコール酸の化学構造式である。
図1〜図8を参照しつつ、本発明による成形回路部品の製造方法の具体例を説明する。さて図1に示すように、第1の工程として、絶縁体からなる熱可塑性樹脂を射出成形して、ブロック形状の第1の基体1を形成する。ここで熱可塑性樹脂としては、芳香族系液晶ポリマーを使用する。次に図2に示すように、第2の工程として、第1の基体1の全表面に、接着層2を塗布する。なおこの接着層2については、詳細を後述する。
次に図3に示すように、第3の工程として、接着層2の表面に、被覆材3を部分的に被覆して、第2の基体4を形成する。被覆材3としては、ポリ乳酸の単体を使用するが、これに限らず、ポリグリコール酸の単体、またはポリ乳酸と脂肪族ポリエステルとの混合体、若しくは共重合体を使用してもよい。これらの樹脂は、アルカリ水溶液で加水分解する性質を有し、酸性水溶液に対して耐性を示す性質がある。被覆の方法としては、射出成形金型内に、全表面に接着層2を塗布した第1の基体1をセットして、この接着層の表面のうち、所定の導電性回路が形成されるべき部分2aを金型等で覆い、その部分以外のキャビティ内にポリ乳酸樹脂を注入することにより、被覆材3を一体的に形成する。なお被覆材3の厚さは、0.1〜1mmが望ましく、0.3〜0.5mmが、さらに望ましい。
次に図4に示すように、第4の工程として、第2の基体4の全表面に、触媒5を付与する。触媒5の付与は、例えば室温の塩化パラジウム溶液中に、第2の基体4を5分間程度浸漬して行なう。
次に第5の工程として、触媒5を付与した第2の基体4を水洗浄すると、被覆材3は疎水性であるため、この被覆材の表面に残存する触媒5aは、全て脱落除去できる。一方被覆材3で覆われていない、導電性回路が形成されるべき部分に付与された触媒5bは、後述するように、接着層2との密着力が強いため、水洗浄によっても脱落することはない。したがって水洗浄後は、図5に示すように、被覆材3で覆われていない、導電性回路が形成されるべき部分にだけ、触媒5bが残存する。なおこの水洗浄は、第2の基体4を、温度15〜25℃の水槽に浸して、5〜30秒間、ワークを遥動して行なう。
次に図6に示すように、第6の工程として、接着層2の表面であって、被覆材3で被覆されていない部分、すなわち触媒5bが残存する部分に、浴組成が酸性の第1の無電解めっきである無電解ニッケルめっきを行い、導電性回路6を形成する。この無電解ニッケルめっきは、例えば、pH4.7、温度90℃の酸性浴に、35分間浸漬して行なう。なお無電解ニッケルめっき、または無電解金めっきは、それぞれ酸性または中性の浴組成で行なうため、上述したように耐酸性を有する被覆材3は、めっき液に溶解することはなく、導電性回路6を精密に形成することができる。
次に図7に示すように、第7の工程として、接着層2の表面を被覆した被覆材3を除去する。上述したように被覆材3のポリ乳酸等は、酸性水溶液に対して耐性を示すが、アルカリ水溶液では簡単に加水分解するので、第2の基体4を、濃度2〜15重量%、温度25〜70℃の苛性アルカリ(NaOH、KOHなど)水溶液中に、1〜120分程度浸漬して、被覆材3を除去する。したがって手作業によるマスク除去に比べ作業効率が著しく向上する。かかる場合、被覆材3で被覆されていない部分は、既に、無電解ニッケルめっきによる導電性回路6が形成されているので、この部分の触媒が、この被覆材を加水分解するアルカリ性の溶液によって脱落するという従来の問題点とは、全く無縁となる。
さて図8に示すように、上述した第6の工程(第1の無電解めっき)と、第7の工程(被覆材3の除去)との間には、この第1の無電解めっきを形成した導電性回路6の表面に、浴組成が酸性または中性の第1の電解めっきを行なって、二次めっき層7を形成する第6.1の工程を挿入することができる。例えば電解銅めっきを行う場合、酸性の硫酸銅浴の浴組成は、CuSO・5HO(75g)/lHSO(190g)/lCl(60ppm)/添加剤(適量)とする。また陽極材料を含リン銅として、浴温度は25℃に設定し、陰極電流密度を2.5A/dmとする。
このように第7の工程の前、すなわち被覆材3の除去前に、浴組成が酸性または中性の第1の電解めっきを行なう第6.1の工程を挿入しても、この被覆材は、耐酸性を有するので、電解銅めっき液に溶解することはなく、無電解めっきを形成した導電性回路6の表面上に、正確に二次めっき層7を形成することができる。あるいは第6の工程による無電解ニッケルめっき(第1の無電解めっき)後に、この無電解ニッケルめっきの上に、浴組成を中性にして、重ねて無電解金めっきを行なってもよい(第3の無電解であり、第6.2の工程に相当する。)。
また第7の工程によって被覆材3を除去した後に、上述した無電解ニッケルめっき(第1の無電解めっき)による導電性回路6の表面に、さらに第2の電解めっき(第8の工程に相当する。)や、第2の無電解めっき(第9の工程に相当する。)を行うこともできる。また第7の工程によって被覆材3を除去した後に、上述した第1の電解めっきの上に、第3の電解めっき、あるいは第4の無電解めっき(第10の工程に相当する。)を行うこともできる。
第7の工程以降は、アルカリ性溶液で加水分解する被覆材3は、既に除去されているため、めっきの浴組成は、酸性または中性のみならず、アルカリ性であってもよい。また被覆材3で覆われていなかった部分には、すでに第1の無電解めっき等が形成してあるため、従来のような、この部分に付与した触媒が、アルカリ性の溶液で脱落するという問題とは、全く無縁となっている。
さて次に、接着層2の製造方法と、その作用効果とについて説明する。接着材3の製造は、上述したように、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、有機溶剤、およびイオン交換水を混合して乳化液とする第2.1の工程と、この乳化液に、ピロールモノマを混合する第2.2の工程と、このピロールモノマを混合した混合液に酸を加えて、このピロールモノマを重合反応させ、導電率0.01S/Cm未満のポリピロールの微粒子を生成する第2.3の工程と、このポリピロールの微粒子を分散混合した有機溶媒液に、バインダを加える第2.4の工程とを含む。
アニオン性界面活性剤として、例えば花王株式会社製の商品であるペレックスOT−P、ノニオン界面活性剤として、例えば同社の商品であるポリオキシエチレンアルキルエーテル系ノニオン界面活性剤のエマルゲン409P、有機溶剤として、例えばトルエンを使用し、トルエン50mLに、アニオン性界面活性剤を0.42mmol、ノニオン界面活性剤を2.1mmol加え、さらにイオン交換水100mLを加えて、液温を20℃に保持しつつ乳化するまで撹拌する。
次いで得られた乳化液に、ピロールモノマ21.2mmolを加え、1時間撹拌する。そして過硫酸アンモニウム6mmolを加えて、2時間重合反応を行う。重合反応終了後、有機相を回収し、イオン交換水で数回洗浄して、トルエンに分散した還元性能を有するポリピロール微粒子を得る。なおこのようにして得られるトルエン分散液中のポリピロールの固形分は、1.3%前後である。また、このポリピロール微粒子の導電率は、ほぼ0.001S/Cmとなる。
この還元性能を有するポリピロール微粒子を分散したトルエン液に、バインダとして、大日本インキ化学工業社製の商品であるスーパーベッカミンJ−820を、ポリピロール1重量に対して3重量分の割合で加え、固形分が約5%となる還元性を有したポリピロール塗料を調製する。以上のようにして得られた塗料を、第1の基体1の全表面に、約100μmの厚みに塗布し、120℃で5分間乾燥させて接着層2を形成する。
次に上述した接着層2の作用効果について説明する。すなわちピロールモノマやアニリンモノマは、酸化されると重合して高分子に成長すると共に、この酸化によって電子が奪われ、分子内にプラス電荷(正孔)を生じる。また酸化重合したポリピロールやポリアニリン等の高分子は、二重結合と単結合が交互に並んだ構造、すなわちパイ共役が発達した主鎖を有し、このパイ共役主鎖に沿って、上述した電荷(正孔)が自由に移動するため、導電性を発現する。このため導電性高分子は、あたかも電子が自由に移動できる金属の様相を有し、自由電子を持つ金属との密着性に優れる特性を備えている。したがって、このようなポリピロール等の導電性高分子の層に無電解めっき層を形成すると、この無電解めっき層は、導電性高分子の層に強く密着する。
上述したように導電性高分子は、分子内にプラス電荷である正孔を有しているが、このプラス電荷を電気的に中性にするために、このプラス電荷に近い表面に、陰イオンが取り込まれている。このような状態にある導電性高分子に、マイナス電荷である電子を与える、すなわち還元すると、上述したプラス電荷(正孔)が電気的に中和されて導電性を失うと共に、プラス電荷に近い表面に取り込まれていた陰イオンとの電気的結合が解除される(この状態を「脱ドープ状態」という。)。このように導電性を失った高分子を、再度酸化、すなわち電子を奪うと、分子内に再びプラス電荷(正孔)が生じて、導電性が回復する(この状態を「ドープ状態」という。)。
ところで無電解めっき層を形成するためには、めっき金属が最初に析出する触媒核を、被めっき面に付与する必要がある。この触媒核は、パラジウム、金、あるいは銀等の貴金属の陽イオンを還元することによって形成する。しかるにドープ状態、すなわち導電性を発現する状態の高分子は、分子内にプラス電荷である正孔を有しているため、パラジウム等の陽イオンを還元しない。逆に脱ドープ状態であって導電性を発現しない状態の高分子は、分子内のプラス電荷である正孔が電気的に中和された状態にあるため、パラジウム等の陽イオンを還元する特性を有している。したがって脱ドープ状態の高分子を、塩化パラジウム溶液に浸漬等すれば、パラジウム陽イオンが還元されて、パラジウム金属が高分子の表面に析出する。本願発明による接着層2は、脱ドープ状態にあり、還元性を有している。したがって、この接着層2は、パラジウム金属等の触媒を表面に析出させ、この析出したパラジウム金属を核として、無電解めっきが形成される。ここでパラジウム陽イオンが還元されるということは、脱ドープ状態の高分子を酸化することになり、高分子は導電性を回復する。このため触媒核であるパラジウム金属、及びこの触媒核を中心に析出する無電解めっきのめっき金属が、上述したように、この高分子と強く密着すると考えられる。
さらに本発明においては、無電解めっきを行なった後に、被覆材をアルカリ水溶液で加水分解して除去する。この際、被覆材を除去されて表面に露呈した接着層2の部分、すなわち非回路部分は、アルカリ水溶液によって還元されて脱ドープ状態になり、導電性を失う。したがって回路間の絶縁性が確保できる。一方無電解めっきで覆われた接着層2の部分は、アルカリ水溶液に触れないため、ドープ状態を維持し、触媒核を中心に析出する無電解めっきのめっき金属と高分子との強い密着性が維持される。
本願発明による接着層2に用いるポリピロール等は、ピロールモノマを酸化剤によって酸化させて高分子に重合させるが、酸化剤の添加量を抑えると共に、還元作用を有するアニオン系界面活性剤を添加することによって濡れ性を向上させ、導電率を0.01S/Cm以下に抑えた、粒径が10〜100nmの微粒子に成形したものである。この微粒子は、上述した脱ドープ状態にあり、触媒核を形成するパラジウム等の金属イオンを還元する特性を有する。
以上説明したように、本願発明による接着層は、脱ドープ状態のポリピロールによって、パラジウム等の金属イオンを還元して触媒核を析出させると共に、この析出した触媒金属、及びこの触媒金属を核として形成される無電解めっきを、強く密着させることができ、剥がれ難い強固な導電性回路が形成できる。なお上述したように、接着層には、第1の基体との親和性の高いバインダを混入してあるため、この接着層は、第1の基体と高い密着性を有する。
本発明による成形回路部品の製造方法は、被めっき層との密着性に優れる三次元的な導電性回路を容易に形成できると共に、触媒に含まれる貴重な貴金属の省資源化が可能なため、電子機器等に関する産業に広く利用可能である。
1 第1の基体
2 接着層
2a 被覆材で被覆されていない部分
3 被覆材
4 第2の基体
5 触媒
5a 被覆材に付着した触媒
5b 被覆材で被覆されない接着層に付着した触媒
6 無電解ニッケルめっき(第1に無電解めっき)による導電性回路
7 二次めっき層(第1の電解めっき)

Claims (6)

  1. 絶縁体からなる第1の基体を成形する第1の工程と、
    上記第1の基体の表面に接着材を付与して接着層を形成する第2の工程と、
    上記接着層の表面に、ポリグリコール酸、若しくはポリ乳酸の単体、またはポリ乳酸と脂肪族ポリエステルとの混合体、若しくは共重合体からなる被覆材を、部分的に被覆して第2の基体を形成する第3の工程と、
    上記第2の基体の表面に触媒を付与する第4の工程と、
    上記被覆材の表面に残存する上記触媒を、水洗除去する第5の工程と、
    上記第2の基体の表面であって、上記被覆材で被覆されていない部分に、浴組成が酸性または中性のいずれかの第1の無電解めっきをする第6の工程と、
    上記被覆材を除去する第7の工程とを備え、
    上記接着材の製造は、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、有機溶剤、およびイオン交換水を混合して乳化液とする第2.1の工程と、
    上記乳化液に、ピロールモノマを混合する第2.2の工程と、
    上記ピロールモノマを混合した混合液に酸を加えて、このピロールモノマを重合反応させ、導電率0.01S/Cm未満のポリピロールの微粒子を生成する第2.3の工程と、
    上記ポリピロールの微粒子を分散混合した有機溶媒液に、バインダを加える第2.4の工程とを含む
    ことを特徴とする成形回路部品の製造方法。
  2. 請求項1において、上記第6の工程と第7の工程との間に、上記第1の無電解めっきの表面に、浴組成が酸性または中性のいずれかの第1の電解めっきを積層する第6.1の工程を備える
    ことを特徴とする成形回路部品の製造方法。
  3. 請求項1において、上記第7の工程の後に、上記第1の無電解めっきの表面に、浴組成が酸性、中性、またはアルカリ性のいずれかの1の第2の電解めっきを積層する第8の工程を備える
    ことを特徴とする成形回路部品の製造方法。
  4. 請求項1において、上記第7の工程の後に、上記第1の無電解めっきの表面に、浴組成が酸性、中性、またはアルカリ性のいずれかの1の第2の無電解めっきを積層する第9の工程を備える
    ことを特徴とする成形回路部品の製造方法。
  5. 請求項1、3、または4のいずれかの1において、上記第6の工程と第7の工程との間に、上記第1の無電解めっきの表面に、浴組成が酸性または中性のいずれかの第3の無電解めっきを積層する第6.2の工程を備える
    ことを特徴とする成形回路部品の製造方法。
  6. 請求項2において、上記第7の工程の後に、上記第1の電解めっきの表面に、浴組成が酸性、中性、若しくはアルカリ性のいずれかの1の第3の電解めっき、または第4の無電解めっきのいずれかを積層する第10の工程を備える
    ことを特徴とする成形回路部品の製造方法。
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