JP2007270179A - 還元性ポリマー微粒子を用いるパターン化された金属膜が形成されためっきフィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基材フィルム上にパターン化された金属膜が形成されためっきフィルムの製造方法であって、
1)有機溶媒と、水と、アニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤を混合撹拌してなるO/W型の乳化液中に、ピロール及び/又はピロール誘導体のモノマーを添加し、該モノマーを酸化重合することにより、有機溶媒に分散した導電率が0.01S/cm未満である微粒子を得る工程、
2)前記微粒子が分散された塗料を基材フィルム上にコーティングしてポリマー層を形成する工程、
3)基材フィルム上の前記ポリマー層に紫外線をマスクパターンを介して照射する工程、4)前記ポリマー層のうち、紫外線が照射されなかった部分について無電解めっき液から金属膜を化学めっきする工程、
よりなる製造方法。
【選択図】なし
Description
この様な問題点を解決する方法として、基材フィルム上にパターン化された導電性高分子層を形成し、該導電性高分子層上にめっきを施すことにより電気回路を作製する方法が幾つか提案されている。
の実用には耐え得ないものであった。
更に、得られた金属めっき膜は、その下に、触媒層及び導電性高分子層を有する多層構造となることより、基材に対する密着性が不十分となり、そのため、該金属めっき膜は基材層から剥離され易くなることが懸念される。
加えて、上記製造方法においては、モノマーを重合する際に、専用の装置が必要となり、例えば、気相で重合する場合には、モノマー蒸気が飛散しないような密閉系を保持できる装置が必要であり、液相で重合する場合には、モノマー液が浸漬できる槽及び基材フィルムを乾燥するオーブンが必要となるといった問題があった。
更に、特許文献1と同様の問題、即ち、残留した酸化剤による金属めっき膜の腐食の問題、多層構造による金属めっき膜の密着性不足による易剥離性の問題及びモノマーを重合する際に、専用の装置を必要とするという問題が依然存在する。
しかし、特許文献3に記載の製造方法においては、非電気化学的方法(=無電解)で導電性高分子層上にめっきを行って金属を付着させる前に、該導電性高分子をヒドラジン等の化学的還元剤で還元(=脱ドープ)して活性化する必要があり、該ヒドラジン等による還元(=脱ドープ)は、アルカリ条件下による長時間の処理により行われるため、使用する基材が該アルカリ条件に耐えられるものに限定されてしまうこと、また、該処理によりポリアニリン自身の塗膜の強度が低下すること等の新たな問題が生じる。更には、特許文献3に記載の製造方法においては、形成する導電性高分子層をパターン化する方法が何ら記載されておらず、従って、どのようにして導電性高分子層をパターン化するかが不明であった。
が形成されないことを見出し、これにより、マスクパターンを介して紫外線を照射し、紫外線が照射されなかった部分にめっきによる金属膜を付着させることにより該金属膜のパターン化を可能とし、本発明を完成させた。
1.基材フィルム上にパターン化された金属膜が形成されためっきフィルムの製造方法であって、
1)有機溶媒と、水と、アニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤を混合撹拌してなるO/W型の乳化液中に、ピロール及び/又はピロール誘導体のモノマーを添加し、該モノマーを酸化重合することにより、有機溶媒に分散した導電率が0.01S/cm未満である微粒子を得る工程、
2)前記微粒子が分散された塗料を基材フィルム上にコーティングしてポリマー層を形成する工程、
3)基材フィルム上の前記ポリマー層にマスクパターンを介して紫外線を照射する工程、4)前記ポリマー層のうち、紫外線が照射されなかった部分について無電解めっき液から金属膜を化学めっきする工程、
よりなる製造方法、
に関するものである。
更に、本発明の製造方法は、脱ドープの処理を行わなくても非電気化学的方法(=無電解)で該ポリマー層上にめっきを行って金属を付着させることが可能であり、これにより、操作を簡素化できると同時に、長時間のアルカリ処理によるポリマー層の密着性の低下を防止でき、結果として金属めっき膜の密着強度の低下を防止できる。
また、本発明における金属膜のパターン化は、マスクパターンを介した紫外線照射により容易に達成することができる。
例えば、導電性を有するポリピロールは式(1)で表されるようにドーパントアニオンとイオン結合を形成していると考えられ、そのため、ポリピロールが還元性を有するためには、還元等によりドーパントアニオンを除去して式(2)で表される還元状態とする必要がある。
一方、本発明におけるポリマー層は、殆ど導電性を有さないものであり、従って、ポリピロールは初めから式(2)で表される還元状態にあると考えられ、そのため、その後の塩化パラジウム処理によりパラジウムイオンを還元して金属パラジウムにすると考えられる。そして生成した金属パラジウムはポリピロール表面に吸着して式(3)で表される状態となり、吸着された金属パラジウムが無電解めっきの活性化触媒として働き、ポリピロール表面上に金属膜が形成されることになると考えられる。
この理由については、必ずしも明らかではないが、紫外線によりポリピロールの共役鎖が切断され、それにより還元力が低下したためと推察される。
ロポキシピロール、3−n−ブトキシピロール、3−フェニルピロール、3−トルイルピロール、3−ナフチルピロール、3−フェノキシピロール、3−メチルフェノキシピロール、3−アミノピロール、3−ジメチルアミノピロール、3−ジエチルアミノピロール、3−ジフェニルアミノピロール、3−メチルフェニルアミノピロール、3−フェニルナフチルアミノピロール等が挙げられる。特に好ましいのはピロールである。
疎水性末端を複数有するアニオン系界面活性剤の中でも、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム(疎水性末端4つ)、スルホコハク酸ジ−2−エチルオクチルナトリウム(疎水性末端4つ)および分岐鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩(疎水性末端2つ)が好適に使用できる。
が使用できる。これらは単独で使用しても、二種類以上を併用してもよい。塩化第二鉄等のルイス酸でもポリピロールを重合できるが、生成した粒子が凝集し、ポリピロールを微分散できない場合がある。特に好ましい酸化剤は、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩である。
(a)アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、有機溶媒および水を混合攪拌し乳化液を調製する工程、
(b)ピロール及び/又はピロール誘導体のモノマーを乳化液中に分散させる工程、
(c)モノマーを酸化重合させる工程、
(d)有機相を分液しポリマー微粒子を回収する工程。
尚、ポリマー微粒子が有する粒径は、通常、10〜100nmサイズの球形の微粒子となる。
得られたポリマー微粒子の導電率は0.01S/cm未満であり、好ましくは、0.005S/cm以下である。
使用する有機溶媒は、ポリマー微粒子に損傷を与えず、ポリマー微粒子を分散させうるものであれば特に限定はしないが、好ましくは、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。
添加するバインダーとしては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェ
ノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂
、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等が挙げられる。
添加するバインダー量は、ポリピロール1質量部に対して100質量部以下が好ましく、より好ましくは10質量部以下である。100質量部以上添加すると、ポリピロールの還元性が損なわれる場合がある。
基材フィルムへのコーティングは、通常使用されている方法で行うことができ、特に限定されない。
マスクパターンは、ネガ型、ポジ型の何れでも適用できる。
ポリピロールパターンが形成されたフィルムを塩化パラジウム溶液に浸漬した後、水洗等を行い、無電解めっき浴に浸漬することにより、紫外線が照射されなかった部分がめっきされてパターン化されたフィルムを得ることができる。
紫外線が照射された部分は、前述のようにポリピロールの共役鎖が切断されて、還元力が低下していると考えられ、そのため、塩化パラジウムを金属パラジウムに還元することができず、そのため、非電気化学的方法(=無電解)によるめっきが形成されなくなると推定される。
照射する紫外線の光源としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、殺菌灯等の一般的に用いられる光源を用いることが出来る。照射する紫外線照射エネルギーは、400J/cm2以上あればよい。400J/cm2未満だとポリピロール微粒子の還元力に劣る。
実施例1
アニオン性界面活性剤ペレックスOT−P(花王株式会社)0.42mmol、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系ノニオン界面活性剤エマルゲン409P(花王株式会社)2.1mmol、トルエン50mL、イオン交換水100mLを加えて20℃に保持しつつ乳化するまで撹拌した。得られた乳化液にピロールモノマー21.2mmolを加え、1時間撹拌し、次いで過硫酸アンモニウム6mmolを加えて2時間重合反応を行った。反応終了後、有機相を回収し、イオン交換水で数回洗浄して、トルエンに分散した還元性能を有するポリピロール微粒子を得た。尚、ポリピロール微粒子の導電率は0.001S/cmであった。
上記で得られたトルエン分散液中のポリピロールの固形分は、約1.3%であったが、ここに、バインダーとしてスーパーベッカミンJ-820(大日本インキ化学工業)を加え、ポリピロール:バインダー樹脂=1:3、固形分約5%となる還元性を有したポリピロール塗料を調製した。得られた塗料の分散安定性は良好であった。
上記で調製した塗料を、100μmの厚みのポリエステルフィルムにバーコーター(N
o.8)で、薄くコーティングし、120℃で5分乾燥し塗膜を作成した。この乾燥後の
塗工膜の厚みは150nmの極めて薄い均一な膜であった。
この薄膜に、線幅0.5mm、ピッチ2mm、長さ20mmに描いたポジフィルムマスクパターンを重ね50cmの距離から2Kwハロゲンランプで15分間光照射した。
このポリピロールパターンが形成されたフィルムを塩化パラジウム溶液中に室温で5分間浸漬後、水道水で水洗した。次に、該フィルムを無電解銅めっき浴に浸漬すると、およそ10分程度で紫外線非照射部のパターン部にのみ銅めっきが施されたポリエステルフィルムが得られた。
実施例1のノニオン界面活性剤をソルビダン脂肪酸エステル系ノニオン界面活性剤レオドールSP-O30V(花王株式会社)0.64mmolとポリオキシエチレンソルビダン脂肪酸エステル レオドールTW−O120V(花王株式会社)2.1mmolの二種を混合したものに変えた以外は実施例1と同様に塗料を調製した。得られた塗料の分散安定性は良好であった。尚、ポリピロール微粒子の導電率は0.005S/cmであった。
上記で調製した塗料を、100μmの厚みのポリエステルフィルムにバーコーター(N
o.8)で、薄くコーティングし、120℃で5分乾燥し塗膜を作成した。この乾燥後の
塗工膜の厚みは150nmの極めて薄い均一な膜であった。
この薄膜に、実施例1と同様の操作(マスクパターンを介した紫外線照射及び無電解めっき)を行うことにより、紫外線非照射部のパターン部にのみ銅めっきが施されたポリエステルフィルムを得た。
実施例1のバインダーをポリエステル系ポリウレタン架橋剤ニッポラン2301(日本ポリウレタン工業株式会社)に変えた以外は実施例1と同様にして塗料を調製した。得られた塗料の分散安定性は良好であった。
上記で調製した塗料を、100μmの厚みのポリエステルフィルムにバーコーター(N
o.8)で、薄くコーティングし、120℃で5分乾燥し塗膜を作成した。この乾燥後の
塗工膜の厚みは150nmの極めて薄い均一な膜であった。
この薄膜に、実施例1と同様の操作(マスクパターンを介した紫外線照射及び無電解めっき)を行うことにより、紫外線非照射部のパターン部にのみ銅めっきが施されたポリエステルフィルムを得た。
実施例1のノニオン界面活性剤を除き、アニオン性界面活性剤ペレックスOT−P(花王株式会社)を1.5mmol使用した以外は実施例1と同様に塗料を調製した。得られた塗料の分散安定性は良好であった。尚、ポリピロール微粒子の導電率は0.05S/cmであった。
上記で調製した塗料を、100μmの厚みのポリエステルフィルムにバーコーター(N
o.8)で、薄くコーティングし、120℃で5分乾燥し塗膜を作成した。この乾燥後の
塗工膜の厚みは150nmの極めて薄い均一な膜であった。
この薄膜に、実施例1と同様の操作(マスクパターンを介した紫外線照射及び無電解めっき)を行ったが、めっきは形成されなかった。
ポリ酢酸ビニル2部を酢酸エチル20部に溶解し、この溶液に無水塩化鉄(III)を固形分中の質量比で30%となるように加え、完全に溶解した。この溶液を100μmの
厚みのポリエステルフィルムにバーコーター(No.8)で、薄くコーティングし、70
℃で15分乾燥し塗膜を作成した。この乾燥後の塗工膜厚みは、10μmの均一な膜であった。この薄膜に、線幅0.5mm、ピッチ2mm、長さ20mmに描いたポジフィルムマスクパターンを重ね50cmの距離から2Kwハロゲンランプで15分間光照射した。光照射後、密閉容器中で、室温で5分間ピロールを気相重合し、マスク部分にポリピロー
ルを生成させ、ポリピロールパターンを作成した。このポリピロールパターンが形成されたフィルムを塩化パラジウム溶液中に室温で5分間浸漬後、水道水で水洗した。次に、該フィルムを無電解銅めっき浴に浸漬したが、めっきは形成されなかった。
比較例2で得られたポリピロールパターンが形成されたフィルムを、1M水酸化ナトリウム溶液中に24時間浸漬して、脱ドープ状態とした後、塩化パラジウム溶液中に室温で5分間浸漬後、水道水で水洗した。次に、該フィルムを無電解銅めっき浴に浸漬すると、およそ10分程度でポリピロールパターン部にのみ銅めっきが施されたポリエステルフィルムが得られた。
実施例1で使用した塗料に代えて、市販のポリピロール導電性塗料である、SSPY(三谷産業)を用い、100μmの厚みのポリエステルフィルムにバーコーター(No.8)で、薄くコーティングし、120℃で5分乾燥し塗膜を作成した。
この薄膜に、実施例1と同様の操作(マスクパターンを介した紫外線照射及び無電解めっき)を行ったが、めっきは全く形成されなかった。
比較例4で用いたポリピロール塗料をポリエステルフィルムへコーティングし、1M水酸化ナトリウム溶液中に24時間浸漬して、脱ドープ状態とした。脱ドープされたポリピロール膜は手でこすると落ちる程度に強度が低下していたが、実施例1と同様なマスクパターンを介した紫外線照射及び無電解めっきを行った。しかし、全面に銅のめっきが施されたフィルムが得られたのみで、パターン化は全くされていなかった。さらに、めっき部は手でこすると簡単にポリエステルフィルムから脱落した。
実施例1〜3及び比較例1〜5で作成したポリエステルフィルムのめっき状態、密着性及び腐食性を評価して表1に示した。
尚、評価方法は以下に示した通りである。
評価
めっき状態
めっき皮膜の状態を目視で観察し、基材露出面積を測定した。
尚、評価基準は以下の通りとした。
○:完全に被覆され、基材露出無し。
△:50%程度基材の露出あり
×:100%基材露出
密着性
JIS H 8504に基づいて、テープ試験により引き剥がし試験を実施した。
尚、評価基準は以下の通りとした。
○:剥離無し
△:50%程度剥離あり
×:100%剥離
腐食性
めっきが施されたフィルムを湿度95%×70℃の環境下に8時間放置して、銅めっき部の変色等を観察することにより腐食性の試験を行った。
尚、評価基準は以下通りとした。
○:腐食無し
△:若干腐食あり
×:激しい腐食あり
表1
Claims (1)
- 基材フィルム上にパターン化された金属膜が形成されためっきフィルムの製造方法であって、
1)有機溶媒と、水と、アニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤を混合撹拌してなるO/W型の乳化液中に、ピロール及び/又はピロール誘導体のモノマーを添加し、該モノマーを酸化重合することにより、有機溶媒に分散した導電率が0.01S/cm未満である微粒子を得る工程、
2)前記微粒子が分散された塗料を基材フィルム上にコーティングしてポリマー層を形成する工程、
3)基材フィルム上の前記ポリマー層にマスクパターンを介して紫外線を照射する工程、4)前記ポリマー層のうち、紫外線が照射されなかった部分について無電解めっき液から金属膜を化学めっきする工程、
よりなる製造方法。
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