JP2010158967A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料消費を抑制し、かつ運動性能を向上させること。
【解決手段】第1ベルト4A及び第2ベルト4Bは、空気入りタイヤ1の幅方向外側部分から幅方向中心線CLに向かうにしたがって、空気入りタイヤの回転軸(Y軸)との距離が小さくなる凹形状である。また、空気入りタイヤ1のトレッドプロファイルは、空気入りタイヤ1の幅方向中心線CLから幅方向外側部分に向かうにしたがって、空気入りタイヤの回転軸との距離が小さくなる凸形状である。さらに、空気入りタイヤ1の幅方向中心における空気入りタイヤの厚さ>空気入りタイヤ1の幅方向中心と接地端Eとの中央位置Mにおける空気入りタイヤ1の厚さ>接地端Eにおける空気入りタイヤ1の厚さとする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、空気入りタイヤに関するものである。特に、本発明は、断面形状が複数の円弧によって形成されたトレッド面を有する空気入りタイヤに関するものである。
空気入りタイヤには、耐摩耗性能、転がり抵抗、運動性能といった様々な性能が求められる。特許文献1には、傾斜部分を有する路面での直進安定性を向上させるため、ベルト幅方向端部を、ベルト幅方向中央部よりもタイヤ径方向外側に位置させる偏平空気入りラジアルタイヤが開示されている。
特開平7−237404号公報
特許文献1に開示された技術は、直進安定性を向上させることはできるが、燃料消費を抑制するために転がり抵抗を低減させることや、コーナーリングパワーを増加させて運動性能を向上させることについては改善の余地がある。本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、燃料消費を抑制し、かつ運動性能を向上させることができる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
上述した目的を達成するために、本発明に係る空気入りタイヤは、規定内圧を充填した空気入りタイヤにおいて、少なくとも当該空気入りタイヤの補強部材であるベルトは、前記空気入りタイヤの幅方向外側部分から幅方向中心に向かうにしたがって、前記空気入りタイヤの回転軸との距離が小さくなる凹形状であり、前記空気入りタイヤのトレッドプロファイルは、前記空気入りタイヤの幅方向中心から幅方向外側部分に向かうにしたがって、前記空気入りタイヤの回転軸との距離が小さくなる凸形状であり、前記空気入りタイヤの幅方向中心における前記空気入りタイヤの厚さをhc、接地端における前記空気入りタイヤの厚さをhe、前記幅方向中心と前記接地端との中央位置における前記空気入りタイヤの厚さをhmとすると、hc>hm>heであることを特徴とする。
このように、ベルトを凹形状とするとともに、トレッドプロファイルを凸形状とし、かつ空気入りタイヤの幅方向中心から接地端に向かうにしたがって、タイヤの厚さを小さくする。これにより、空気入りタイヤ全体での粘弾性損失エネルギ及び転がり抵抗を低減できるので、燃料消費を抑制できる。また、トレッド部の中央部における接地長が長くなるので接地圧分布の均一化を図ることができるとともに接地面積が増加するので、コーナーリングパワーが増加して、運動性能を向上させることができる。
本発明の望ましい態様としては、前記空気入りタイヤにおいて、前記空気入りタイヤの幅方向中心における、前記ベルトと前記空気入りタイヤの回転軸との距離をRc1、前記中央位置と前記接地端との間における、前記ベルトと前記空気入りタイヤの回転軸との距離の最大値をRb1とすると、Rc1<Rb1であることが好ましい。
本発明の望ましい態様としては、前記空気入りタイヤにおいて、前記空気入りタイヤの規定内圧をPとすると、空気入りタイヤの内圧が(P−30)kPa以上(P+30)kPa以下である場合もRc1<Rb1であることが好ましい。
本発明の望ましい態様としては、前記空気入りタイヤにおいて、前記空気入りタイヤの幅方向中心から前記空気入りタイヤの接地端までの、前記空気入りタイヤの幅方向における距離をLとし、前記空気入りタイヤの幅方向中心から0.30×L以上0.70×L以下の位置を境界として、前記空気入りタイヤの幅方向中心側をセンター部とし、前記境界よりも前記空気入りタイヤの幅方向外側をショルダー部とした場合、前記空気入りタイヤのセンター部に配置されるゴムは、前記空気入りタイヤのショルダー部に配置されるゴムよりも発熱量が小さいことが好ましい。
本発明の望ましい態様としては、前記空気入りタイヤにおいて、前記空気入りタイヤの幅方向中心から前記空気入りタイヤの接地端までの、前記空気入りタイヤの幅方向における距離をLとし、前記空気入りタイヤの幅方向中心から0.30×L以上0.70×L以下の位置を境界として、前記空気入りタイヤの幅方向中心側をセンター部とし、前記境界よりも前記空気入りタイヤの幅方向外側をショルダー部とした場合、前記空気入りタイヤのショルダー部に配置されるゴムは、前記空気入りタイヤのセンター部に配置されるゴムよりも弾性率が大きいことが好ましい。
本発明の望ましい態様としては、前記空気入りタイヤにおいて、空気入りタイヤのトレッド部を構成するキャップトレッドよりも前記空気入りタイヤの径方向内側には、前記キャップトレッドよりも発熱量の小さいゴムを配置し、前記トレッド部に形成される溝の溝底は、前記キャップトレッドよりも発熱量の小さいゴムに含まれることが好ましい。
本発明の望ましい態様としては、前記空気入りタイヤにおいて、前記空気入りタイヤのトレッド部に形成される溝の溝底の周囲に、前記トレッド部を構成するゴムよりも発熱量の小さいゴムを配置することが好ましい。
本発明の望ましい態様としては、前記空気入りタイヤにおいて、前記空気入りタイヤのショルダー部に存在する溝の溝底と前記空気入りタイヤの内面との距離は、前記空気入りタイヤの幅方向中心に最も近い溝の溝底と前記空気入りタイヤの内面との距離よりも小さくすることが好ましい。
本発明は、燃料消費を抑制し、かつ運動性能を向上させることができる。
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明により本発明が限定されるものではない。また、以下の説明における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。本発明は、空気入りタイヤ全般に適用できるが、特に、空気入りタイヤの幅方向中心部に周方向溝がない空気入りタイヤに対して好適である。
(実施形態)
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤの子午断面を示す断面図である。子午断面とは、タイヤの回転軸と平行かつ前記回転軸を含む平面でタイヤを切ったときの断面である。図2は、本実施形態に係る空気入りタイヤを構成するベルトの拡大図である。図3−1、図3−2は、本実施形態に係る空気入りタイヤのトレッドプロファイルを説明するための図である。図3−3は、本実施形態に係る空気入りタイヤの溝を説明するための図である。図4は、本実施形態に係る空気入りタイヤの子午断面を示す一部断面図である。
図1のY軸は、空気入りタイヤ1の回転軸である。Z軸は、Y軸に直交するとともに、空気入りタイヤ1が接地する路面と直交する軸である。X軸は、Y軸及びZ軸に直交する軸である。空気入りタイヤ1の周方向(以下タイヤ周方向という)は、空気入りタイヤ1が回転軸(Y軸)の周りに回転する方向であり、空気入りタイヤ1の赤道面CCと、空気入りタイヤ1の接地面6とが交わる線が延びる方向、すなわち、空気入りタイヤ1の中心線(以下幅方向中心線という)CLと平行な線が延びる方向である。幅方向中心線CLは、空気入りタイヤ1の赤道線に相当する。すなわち、赤道線である幅方向中心線CLは、空気入りタイヤ1の幅方向(回転軸であるY軸と平行な方向)中心を通り、かつ空気入りタイヤ1の回転軸(Y軸)に直交する平面と、空気入りタイヤ1の接地面6とが交わる線である。
ここで、空気入りタイヤ1の赤道面CCは、空気入りタイヤ1の回転軸(Y軸)と直交し、かつ、空気入りタイヤ1の回転軸(Y軸)と平行な方向、すなわち空気入りタイヤ1の幅方向(以下タイヤ幅方向という)における中心を通る平面である。また、空気入りタイヤ1の径方向(以下タイヤ径方向という)は、空気入りタイヤ1の回転軸(Y軸)と直交する方向である。タイヤ径方向外側は、空気入りタイヤ1の接地面6側であり、タイヤ径方向内側は、空気入りタイヤ1の回転軸(Y軸)側である。
図1に示すように、空気入りタイヤ1は、ビードコア2と、タイヤ径方向内側から順に、カーカス3と、第1ベルト4A及び第2ベルト4Bからなるベルト層4とを有する。第1ベルト4A及び第2ベルト4Bを構成するコードは、例えば、金属のワイヤが用いられる。ベルト層4のタイヤ径方向外側、すなわち、第2ベルト4Bの径方向外側には、トレッド部7を構成するトレッドゴムが配置される。また、カーカス3のタイヤ幅方向外側には、サイドウォール部SWを構成するサイドウォールゴムが配置される。
ビードコア2は、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向両側の一対を一組として構成される。カーカス3は、左右のビードコア2間にトロイド状に架け渡される。第1ベルト4Aは、カーカス3のタイヤ径方向外側に配置され、カーカス3と隣接して配置される。図1、図2に示すように、第1ベルト4Aのタイヤ径方向外側には、第2ベルト4Bが配置される。
図1に示すように、空気入りタイヤ1の接地面6は、空気入りタイヤ1の路面接地部に配置されており、カーカス3やベルト層4の外側を覆うゴム層である。カーカス3は、ビードコア2で折り返され、ビードコア2に巻き込まれる。カーカス3をビードコア2の周囲に巻き込む際に生ずる空間へは、ビードフィラーと呼ばれるゴムが配置される。
接地面6、すなわちトレッド面には、タイヤ周方向に向かって延在する周方向溝、すなわち主溝5が設けられる。空気入りタイヤ1は、4本の周方向主溝を備えており、接地面6は、4本の主溝で区画されて陸部が形成される。4本の主溝のうち、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向における中央部に設けられる主溝を中央部主溝5Cといい、中央部主溝5Cよりもタイヤ幅方向外側にある主溝をショルダー側主溝5Sという。ここで、接地面6のタイヤ幅方向における接地端をEとし、両方の接地端E同士の距離を2×Lとする。また、赤道面CC(タイヤ幅方向中心)と接地端Eとの中央位置を、中央位置Mとする。赤道面CCから中央位置Mまでの距離はL/2である。本実施形態では、両方の中央位置Mを含み、かつ中央位置Mよりも赤道面CC側の領域を中央部とする。
子午断面における接地面6の形状をトレッドプロファイルという。トレッドプロファイルは、接地面6と、空気入りタイヤ1の回転軸(Y軸)を含む平面とが交わって形成される線である。主溝5の部分には接地面が存在しないため、図3−1に示すように、主溝5の部分には仮想のトレッドプロファイル(仮想トレッドプロファイル)6Vを設定する。図3−2に示す空気入りタイヤ1では、2本の中央部主溝5Cの間に、幅方向中心線CLと平行な主溝(中心部主溝)5Aが設けられている。すなわち、図3−2に示す空気入りタイヤ1は、5本の周方向主溝を有する。この場合も、主溝5の部分には仮想のトレッドプロファイル(仮想トレッドプロファイル)6Vを設定する。
図3−3に示すように、主溝5(中央部主溝5C、中心部主溝5A、ショルダー側主溝5S)は、溝壁5wと溝底5Bとで構成される。溝壁5wと接地面6とが交わって形成される線を、主溝境界5eという。本実施形態において、仮想トレッドプロファイル6Vは、両方の主溝境界5e同士を結んだ直線とする。また、本実施形態において、主溝とは、接地面6と溝壁5wとのなす角度θが80度以上140度以下のものをいうものとする。
空気入りタイヤ1は、規定内圧を充填した場合、図1に示すように、少なくとも補強部材である第1ベルト4A及び第2ベルト4B(ベルト層4)は、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向外側部分から幅方向中心(赤道面CC)に向かうにしたがって、空気入りタイヤ1の回転軸(Y軸)との距離が小さくなる凹形状である。本実施形態では、カーカス3も第1ベルト4A及び第2ベルト4Bと同様に凹形状である。また、空気入りタイヤ1のトレッドプロファイルは、空気入りタイヤ1の幅方向中心から幅方向外側部分に向かうにしたがって、空気入りタイヤ1の回転軸(Y軸)との距離が小さくなる凸形状である。また、図4に示すように、空気入りタイヤ1の幅方向中心(赤道面CC)における空気入りタイヤの厚さをhc、接地端Eにおける前記空気入りタイヤの厚さをhe、幅方向中心(赤道面CC)と接地端Eとの中央の位置である中央位置Mにおける前記空気入りタイヤの厚さをhmとすると、hc>hm>heである。ここで、空気入りタイヤ1の厚さは、接地面6と直交する方向の寸法である。
このように、空気入りタイヤ1は、規定内圧を充填したときに、ベルト層4が凹形状かつトレッドプロファイルが凸形状となるので、ベルトの張力が高くなるとともに、路面における接地端E近傍の接地圧を低減できる。また、上記構成により、空気入りタイヤ1は偏心変形が大きくなり、かつ接地時におけるベルト端部(タイヤ幅方向におけるベルト端部)近傍のひずみが低減されるので、ショルダー部の損失エネルギが低減されるとともに、ショルダー部の変形が抑制される。これらの作用により、空気入りタイヤ1全体での粘弾性損失エネルギ及び転がり抵抗を低減できる。その結果、この空気入りタイヤ1を装着した車両の燃料消費を抑制できる。
また、空気入りタイヤ1は、トレッドプロファイルが凸形状であり、また、hc>hm>heなので、トレッド部7の中央部は、トレッド部7のショルダー部よりもタイヤ径方向の寸法が大きい。このため、トレッド部7の中央部における接地長が長くなる。その結果、接地圧分布の均一化を図ることができるとともに接地面積が増加するので、コーナーリングパワーが増加して車両の運動性能を向上させることができる。このように、空気入りタイヤは、燃料消費を抑制し、かつ運動性能を向上させることができる。
ここで、heはhcの70%以下が好ましく、65%以下が望ましい。また、hmはhcの90%以下が好ましく、85%以下が望ましい。このようにすると、接地圧分布をより均一にできるとともに、接地面積をより増加できるので、コーナーリングパワーの増加に有効である。また、規定内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である(以下同様)。また、正規リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。正規荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。
図5は、本実施形態に係る空気入りタイヤの子午断面を示す断面図である。空気入りタイヤ1の幅方向中心(赤道面CC)におけるベルト(具体的には第2ベルト4B)と空気入りタイヤ1の回転軸(Y軸)との距離をRc1、中央位置Mと接地端Eとの間におけるベルト(具体的には第2ベルト4B)と空気入りタイヤ1の回転軸(Y軸)との距離の最大値をRb1とする。空気入りタイヤ1は、少なくとも第1ベルト4A及び第2ベルト4Bが凹形状なので、規定内圧を充填したときにはRc1<Rb1となる。この場合、Rb1とRc1との差(Rb1−Rc1)とRc1との比(Rb1−Rc1)/Rc1が0.02(2%)以下であることが好ましい。これによって、粘弾性損失エネルギ及び転がり抵抗を効果的に低減できる。また、規定内圧をPとすると、空気入りタイヤ1の内圧が(P−30)kPa以上(P+30)kPa以下である場合もRc1<Rb1となり、また、(Rb1−Rc1)/Rc1が0.02(2%)以下となることが好ましい。このようにすれば、内圧が変化した場合でも、確実に粘弾性損失エネルギ及び転がり抵抗を低減できる。
図6は、本実施形態に係る空気入りタイヤの子午断面を示す一部断面図である。上述したように、空気入りタイヤ1の第1ベルト4A及び第2ベルト4B等を凹形状にして、トレッドプロファイルを凸形状にすると、ショルダー側の粘弾性エネルギ損失が低減されるが、相対的にセンター側の粘弾性エネルギ損失が増加する。
このため、空気入りタイヤ1は、幅方向中心(赤道面CC)から空気入りタイヤ1の接地端Eまでの、タイヤ幅方向における距離をLとし、空気入りタイヤ1の幅方向中心から距離K(=0.30×L以上0.70×L以下)の位置Qを境界として、前記空気入りタイヤ1の幅方向中心側をセンター部とし、前記境界よりも空気入りタイヤ1の幅方向外側をショルダー部とする。この場合、空気入りタイヤ1のトレッド部のセンター部に配置されるゴム7GCは、空気入りタイヤ1のトレッド部のショルダー部に配置されるゴム7GEよりも発熱量が小さいことが好ましい。
このように、センター部のみ発熱量の低いゴムを用いることで、粘弾性エネルギ損失を抑制でき、さらに転がり抵抗を低減できる。センター部に配置するゴム7GCのtanδはショルダー部に配置するゴム7GEのtanδの90%以下とすることがより好ましい。これによって、転がり抵抗をより効果的に低減できる。
また、本実施形態において、空気入りタイヤ1は、ショルダー部に配置されるゴム7GEの弾性率を、センター部に配置されるゴム7GCの弾性率よりも大きくすることが好ましい。これによって、タイヤ幅方向に変形に対するトレッドせん断剛性が増加するので、コーナーリングパワーが上昇する。コーナーリングパワーを効果的に上昇させるためには、ショルダー部に配置されるゴム7GEの弾性率を、センター部に配置されるゴム7GCの弾性率よりも10%以上大きくすることが好ましい。空気入りタイヤ1のトレッド部7を構成するゴムの弾性率を上述のようにすることで、転がり抵抗を低減しつつ、コーナーリングパワーを増加させることができる。ここで、弾性率は、100%伸張時の応力である。
図7は、本実施形態に係る空気入りタイヤの溝の断面を示す拡大断面図である。空気入りタイヤ1に主溝5がある場合、溝底5B付近のゴムの応力及びひずみが、他の箇所よりも大きくなり、粘弾性損失が増加する。これを抑制するため、空気入りタイヤ1は、トレッド部7を構成するキャップトレッド7Cよりも空気入りタイヤ1の径方向内側に、キャップトレッド7Cよりも発熱量の小さいゴム7Uを、キャップトレッド7Cに隣接させて配置する。そして、空気入りタイヤ1のトレッド部7に形成される溝(主溝5)の溝底5Bは、キャップトレッド7Cよりも発熱量の小さいゴム7Uに含まれるようにすることが好ましい。これによって、コーナーリングパワーを維持したまま、さらに転がり抵抗を低減できる。なお、キャップトレッド7Cに隣接し、かつ空気入りタイヤ1の径方向内側の部分は、アンダートレッドである。
溝底5Bからのゴム7Uの厚さ(空気入りタイヤ1の径方向における寸法)duは、溝深さ(仮想トレッドプロファイル6Vから溝底5Bまでの距離)daの10%以上50%以下とすることが好ましい。これによって、コーナーリングパワーを維持したまま、さらに転がり抵抗を低減する効果を確実に得ることができる。
図8は、本実施形態に係る空気入りタイヤの溝の断面を示す拡大断面図である。図8に示すように、空気入りタイヤ1のトレッド部7に形成される溝(主溝5)の溝底5Bの周囲に、トレッド部7を構成するゴムよりも発熱量の小さいゴム7GLを配置してもよい。このように、溝底5Bの周囲のみに発熱量の小さいゴム7GLを配置することにより、コーナーリングパワーを維持したまま、さらに転がり抵抗を低減する効果に加え、発熱量の小さいゴム7GLの使用量を低減できる。
溝底5Bからのゴム7GLの厚さduは、溝深さdaの10%以上50%以下とすることが好ましい。また、溝底5Bの周囲を覆うゴム7GLの厚さhglは、1.5mm以上3.0mm以下、好ましくは1.8mm以上2.5mm以下が望ましい。このようにすれば、コーナーリングパワーを維持したまま、さらに転がり抵抗を低減する効果を確実に得ることができる。なお、本実施形態において、hglは2mmである。
図9は、本実施形態に係る空気入りタイヤの子午断面を示す一部断面図である。上述したように、本実施形態では、第1ベルト4A及び第2ベルト4Bを凹形状としている。このようなベルト構造は、センター部と比較してショルダー部の厚さが小さくなるので、センター部と比較してショルダー部の方が早期に摩耗限界に達するおそれがある。本実施形態では、空気入りタイヤ1のショルダー部に存在する溝(本実施形態ではショルダー側主溝5S)の溝底5BSと、空気入りタイヤ1の内面1Iとの距離をhusとする。また、空気入りタイヤ1の幅方向中心(赤道面CC)に最も近い溝(本実施形態では中央部主溝5C)の溝底5BCと、空気入りタイヤ1の内面1Iとの距離をhucとする。このとき、hus<hucとする。これによって、空気入りタイヤ1のショルダー部の早期摩耗を抑制できる。
ここで、hus/hucが0.7、又はhus<huc−(Rb1−Rc1)のうち、いずれか一方を満たすことが好ましい。このようにすることで、ショルダー部の早期摩耗をより確実に抑制できる。なお、本実施形態において、幅方向中心(赤道面CC)における空気入りタイヤ1の内面1Iからベルト層4の最外層、すなわち、第2ベルト4Bの径方向外側までの距離は、5mm以上7mm以下の範囲とすることが好ましい。
(評価例)
本発明に係る空気入りタイヤを7種類作成した(表1の評価例1から評価例7)。比較対象として、ベルトが凸形状であり、空気入りタイヤの厚さがタイヤ幅方向で一定のものを作成した(表1の比較例)。本発明に係る空気入りタイヤ及び比較例に係る空気入りタイヤのサイズは、225/50R18である。また、本発明に係る空気入りタイヤ及び比較例に係る空気入りタイヤは、2−OPL、かつ2枚ベルト(周方向に対する傾斜角度が27度)、かつフルエッジカバー構造である。空気圧は250kPa、荷重は4.6kNとした。転がり抵抗は、試験に供する空気入りタイヤをリムサイズ18×8Jのホイールに組み付け、ドラム試験機において、タイヤの転動速度が80kn/hの条件で転動させて評価した。また、コーナーリングパワーは、試験に供する空気入りタイヤをリムサイズ18×8Jのホイールに組み付け、フラットベルト試験機において、10km/hの条件で転動させ、スリップ角が−1度の場合と+1度の場合とでのコーナーリングフォースの変化量で評価した。表1に評価結果を示す。なお、転がり抵抗及びコーナーリングパワー(CP)は、いずれも比較例に係る空気入りタイヤを100とした指数で表示してある。転がり抵抗は値が小さいほど小さく、コーナーリングパワーは値が大きいほど大きくなる。表1中のtanδは60℃のときのものであり、弾性率は100%伸張時の応力である。
Figure 2010158967
表1に示す評価結果から、ベルト、カーカスが凹形状でトレッドプロファイルが凸形状、かつhc>hm>heである空気入りタイヤ(評価例1)は、比較例に対して転がり抵抗が低下するとともに、コーナーリングパワーは増加していることがわかる。評価例2は、評価例1の構成に加え、センター部に配置されるゴムの発熱量を、ショルダー部に配置されるゴムの発熱量よりも小さくしているが、このようにすると、評価例1よりも転がり抵抗が低下することがわかる。評価例3は、評価例1の構成に加え、ショルダー部に配置されるゴムの弾性率を、センター部に配置されるゴムの弾性率よりも大きくしているが、このようにすると、評価例1よりもコーナーリングパワーが増加することがわかる。
評価例4は、評価例1の構成に加え、キャップトレッドよりも径方向内側に、キャップトレッドのゴムよりも発熱量の小さいゴムを配置するとともに、キャップトレッドの径方向内側に配置された前記ゴムに、溝底が含まれるようにしたものである。このようにすると、評価例1よりも転がり抵抗が低下することがわかる。評価例5は、評価例2の構成に加え、キャップトレッドよりも径方向内側に、キャップトレッドのゴムよりも発熱量の小さいゴムを配置するとともに、キャップトレッドの径方向内側に配置された前記ゴムに、溝底が含まれるようにしたものである。このようにすると、評価例2よりも転がり抵抗が低下することがわかる。
評価例6は、評価例2の構成に加え、溝底の周囲に、トレッド部のゴムよりも発熱量の小さいゴムを配置したものである。このようにすると、評価例2よりも転がり抵抗が低下することがわかる。評価例7は、評価例2の構成と評価例4とを加えた構成に対し、さらに、溝底の周囲に、トレッド部のゴムよりも発熱量の小さいゴムを配置した構成を加えたものである。このようにすると、転がり抵抗は評価例2と同等であり、評価例4よりも低下することがわかる。
以上のように、本発明に係る空気入りタイヤは、燃料消費の抑制及び運動性能の向上を両立させることに有用である。
本実施形態に係る空気入りタイヤの子午断面を示す断面図である。 本実施形態に係る空気入りタイヤを構成するベルトの拡大図である。 本実施形態に係る空気入りタイヤのトレッドプロファイルを説明するための図である。 本実施形態に係る空気入りタイヤのトレッドプロファイルを説明するための図である。 本実施形態に係る空気入りタイヤの溝を説明するための図である。 本実施形態に係る空気入りタイヤの子午断面を示す一部断面図である。 本実施形態に係る空気入りタイヤの子午断面を示す断面図である。 本実施形態に係る空気入りタイヤの子午断面を示す一部断面図である。 本実施形態に係る空気入りタイヤの溝の断面を示す拡大断面図である。 本実施形態に係る空気入りタイヤの溝の断面を示す拡大断面図である。 本実施形態に係る空気入りタイヤの子午断面を示す一部断面図である。
1 空気入りタイヤ
1I 内面
2 ビードコア
3 カーカス
4 ベルト層
4A 第1ベルト
4B 第2ベルト
5 主溝
5S ショルダー側主溝
5A 中心部主溝
5B、5BC、5BS 溝底
5C 中央部主溝
5e 主溝境界
5w 溝壁
6 接地面
6V 仮想トレッドプロファイル
7C キャップトレッド
7GC、7GE、7U、7GL ゴム
7 トレッド部

Claims (8)

  1. 規定内圧を充填した空気入りタイヤにおいて、
    少なくとも当該空気入りタイヤの補強部材であるベルトは、前記空気入りタイヤの幅方向外側部分から幅方向中心に向かうにしたがって、前記空気入りタイヤの回転軸との距離が小さくなる凹形状であり、
    前記空気入りタイヤのトレッドプロファイルは、前記空気入りタイヤの幅方向中心から幅方向外側部分に向かうにしたがって、前記空気入りタイヤの回転軸との距離が小さくなる凸形状であり、
    前記空気入りタイヤの幅方向中心における前記空気入りタイヤの厚さをhc、接地端における前記空気入りタイヤの厚さをhe、前記幅方向中心と前記接地端との中央位置における前記空気入りタイヤの厚さをhmとすると、hc>hm>heであることを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記空気入りタイヤの幅方向中心における、前記ベルトと前記空気入りタイヤの回転軸との距離をRc1、前記中央位置と前記接地端との間における、前記ベルトと前記空気入りタイヤの回転軸との距離の最大値をRb1とすると、Rc1<Rb1である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記空気入りタイヤの規定内圧をPとすると、空気入りタイヤの内圧が(P−30)kPa以上(P+30)kPa以下である場合もRc1<Rb1である請求項2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記空気入りタイヤの幅方向中心から前記空気入りタイヤの接地端までの、前記空気入りタイヤの幅方向における距離をLとし、前記空気入りタイヤの幅方向中心から0.30×L以上0.70×L以下の位置を境界として、前記空気入りタイヤの幅方向中心側をセンター部とし、前記境界よりも前記空気入りタイヤの幅方向外側をショルダー部とした場合、
    前記空気入りタイヤのセンター部に配置されるゴムは、前記空気入りタイヤのショルダー部に配置されるゴムよりも発熱量が小さい請求項1から3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記空気入りタイヤの幅方向中心から前記空気入りタイヤの接地端までの、前記空気入りタイヤの幅方向における距離をLとし、前記空気入りタイヤの幅方向中心から0.30×L以上0.70×L以下の位置を境界として、前記空気入りタイヤの幅方向中心側をセンター部とし、前記境界よりも前記空気入りタイヤの幅方向外側をショルダー部とした場合、
    前記空気入りタイヤのショルダー部に配置されるゴムは、前記空気入りタイヤのセンター部に配置されるゴムよりも弾性率が大きい請求項1から4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  6. 空気入りタイヤのトレッド部を構成するキャップトレッドよりも前記空気入りタイヤの径方向内側には、前記キャップトレッドよりも発熱量の小さいゴムを配置し、
    前記トレッド部に形成される溝の溝底は、前記キャップトレッドよりも発熱量の小さいゴムに含まれる請求項1から5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記空気入りタイヤのトレッド部に形成される溝の溝底の周囲に、前記トレッド部を構成するゴムよりも発熱量の小さいゴムを配置する請求項1から6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  8. 前記空気入りタイヤのショルダー部に存在する溝の溝底と前記空気入りタイヤの内面との距離は、前記空気入りタイヤの幅方向中心に最も近い溝の溝底と前記空気入りタイヤの内面との距離よりも小さくした請求項1から7のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
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