JP2010150532A - エチレン−α−オレフィン極性基含有ビニルモノマー三元共重合体 - Google Patents
エチレン−α−オレフィン極性基含有ビニルモノマー三元共重合体 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】要件(a)及び(b)を満たすことを特徴とする、エチレンと炭素数3〜10のα−オレフィン、及びCH2=C(R1)CO2(R2)の極性基含有ビニルモノマーとの三元共重合体。(a)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnが以下の関係を満たす。1.5≦Mw/Mn≦3(b)融点Tm(℃)とα−オレフィン含量[C](モル%)、極性基含有ビニルモノマー含量[X](モル%)が以下の関係を満たす。60≦Tm≦135−6.4×([C]+[X])
【選択図】なし
Description
しかしながら、エチレン系重合体は極性基を持たないので、他の材料との接着性や印刷適性、或はフィラー等との相溶性の物性が要求される用途は限定されたものであった。
しかし、高圧ラジカル重合による極性基含有エチレン系重合体は低弾性率の材料しか得られない上、機械物性にも劣り、単体で用いる場合はもちろんのこと、他の樹脂との組成物として用いる場合においても、特に高強度が要求される用途への応用範囲は限られたものとなっていた。
更に、エチレンとα−オレフィン及び極性基含有モノマーとの三元共重合体も知られており、例えば、特許文献1には特定のクロム系触媒を用いて製造されたアクリル酸エチル含量12.1〜35.5mol%のエチレン・1−オクテン・アクリル酸エチル三元共重合体が開示されているが、この重合体は機械物性と接着性のバランス改良の点でまだ十分でない上、ベタツキ成分の多さや、成形時のメヤニ発生、フィルムのブロッキングなどの課題を残していた。
また、特許文献2には、特定のバナジウム系触媒を用いて製造したプロピレン含量13.5〜18.5mol%、アクリル酸メチル含量8〜27.2mol%のエチレン・プロピレン・アクリル酸メチル三元共重合体が開示されているが、その強度は本発明者らが検討した限り材料としてポリエチレンに期待されるものに及ばないものであった。
このように、極性基を含有しないエチレン系(共)重合体に比べた場合、極性基を含有したエチレン系共重合体の機械物性の大幅な低下は避けられないものであった。
それらの過程の結果、特定範囲の極めて狭い分子量分布を持ち、特定範囲の融点を有するエチレン系三元共重合体は、機械物性と親水性、他材料との接着性、印刷適性、フィラー等との相溶性のバランスの点で飛躍的な向上を示すことを見出し、本発明を開発するに至った。
(a) 重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnが以下の関係を満たす。
1.5 ≦ Mw/Mn ≦3
(b) 融点Tm(℃)とα−オレフィン含量[C](モル%)、極性基含有ビニルモノマー含量[X](モル%)が以下の関係を満たす。
60 ≦ Tm ≦ 135−6.4×([C] + [X])
但し、Tmは示差走査熱量計(DSC)による測定から得られる融解曲線のピーク温度であり、融解ピークが複数検出される場合には、それらのうち最大であるピークの温度である。
式(I) :CH2=C(R1)CO2(R2) 但し、R1は、水素又は炭素数1〜10のアルキル基である。R2は、水素又は炭素数1〜30のアルキル基である。更に、R2は、水素又は任意の位置に水酸基、アルコキシ基又はエポキシ基を含有していてもよい、炭素数1〜30の炭化水素基である。
28−0.3×Tw ≦ T90−T10 ≦ 41−0.3×Tw
本発明の目的を達成する共重合体は、下記要件(a)及び(b)を満たすことを特徴とする、エチレンと、炭素数3〜10のα−オレフィンと、下記一般式(I)で示される極性基含有ビニルモノマーとの三元共重合体である。
(a) 重量平均分子量をMw、数平均分子量をMnとした時、1.5 ≦ Mw/Mn ≦3.0である。
(b) 融点Tm(℃)とα−オレフィン含量[C](モル%)、及び極性基含有ビニルモノマー含量[X](モル%)が下記関係を満たす。
60 ≦ Tm ≦ 135−6.4×([C] + [X])
但し、Tmは示差走査熱量計(DSC)による測定から得られる融解曲線のピーク温度であり、融解ピークが複数検出される場合にはそれらのうち最大であるピークの温度である。
また、本発明の共重合体のMw/Mnは1.5以上である。Mw/Mnが1.5未満の共重合体を製造することは困難である。
60≦Tm≦135−6.4×([C] + [X])である必要がある。
融点は共重合されるα−オレフィン及び/又は極性基含有ビニルモノマーの分子鎖内での配列の仕方により変化する。α−オレフィンや極性基含有ビニルモノマーが分子鎖の末端に多く存在すると同一の([C] + [X])でも融点は高くなる。一方、分子鎖の内部に均一に分布した場合には融点は低下する。
融点が60℃未満では、エチレン系共重合体として最低限必要な耐熱性が保持できず、また、融点が135−6.4×([C] + [X])を超えると結晶ラメラが厚くなるため、ラメラとラメラをつなぐタイ分子が少なくなり、結果として衝撃強度の低下をもたらす。
28−0.3×Tw ≦ T90−T10 ≦ 41−0.3×Tw
ここで、重量平均溶出温度とは、全ての成分の溶出温度の重量平均値であり、下記式で定義される。重量平均溶出温度は、共重合体のα−オレフィン及び極性基含有ビニルモノマー含有量の合計と相関がある。
また、T90−T10は組成分布の広さを示すパラメータであり、この値が大きいほど組成分布が広い。すなわち、異なる分子鎖間でのα−オレフィン及び/または極性基含有ビニルモノマー含有量の差が大きい。
T90−T10 ≦ 41−0.3×Twの関係を満たさない場合、組成分布が広いため、ベタツキやメヤニの原因となる低結晶成分が多くなり、成形体の物性や外観を損ねる結果となる。
また、28−0.3×Tw ≦ T90−T10を満たさない共重合体を製造することは困難である。
その結果として、同じ触媒で重合した共重合体でも、Twに対してT90−T10をプロットすると、右肩上がりの関係が得られる。これは従来のメタロセン系触媒においても同様である。Twの係数0.3は、均一な活性点をもつメタロセン触媒で重合したエチレン−ヘキセン−1共重合体のTw対T90−T10プロットの傾きから得られた実験値である。また、上式の下限式の切片28は、エチレン単独重合体の平均溶出温度である約95℃を基準に、Tw=95℃のときT90−T10≒0となるように定めたものである。また、上限式の切片41は、本願実施例が全て含まれることを基準に定めたものである。
なお、本発明の共重合体は1,2−挿入に基づく異種結合を含まないのが好ましい。
従来の極性基を含有しないメタロセン系のエチレン系共重合体の組成分布と分子量分布が共に狭いため、その機械物性は平均分子量及びコモノマー含有量でほぼ決まるものであった。
ところが、本願の共重合体は、従来のメタロセン系のエチレン系共重合体と同様に狭い組成分布及び分子量分布をもつにも関わらず、その機械物性は従来のメタロセン系のエチレン系共重合体の延長線上にはない。
具体的には、コモノマー含有量見合いでの弾性率及び降伏応力が異なるため、例えば同じ弾性率もしくは降伏応力の共重合体でも耐熱性に優れたものが得られる。その理由は明らかではないが、共重合体中の極性基部分及び、α−オレフィンに由来する短鎖分岐部分は共にポリエチレンの結晶部分から排斥されて、非晶部分に高濃度で偏在するが、極性の違いのため相溶性に乏しく、非晶部の自由体積を増大させているためではないかと推測される。
好ましい(a)成分としては、炭素数1〜6のR1を有するα−オレフィンが挙げられる。
具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンが挙げられ、より好ましくは、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンであり、更に好ましくは、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンであり、特に好ましくは、1−ヘキセンである。なお、複数のα−オレフィンを使用してもよい。
本発明で好ましい具体的な(b)成分としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸などが挙げられる。
更に好ましい(b)成分としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、特に好ましい(b)成分としては、アクリル酸エチルである。なお、複数の極性基含有ビニルモノマーを併用してもよい。
使用されるその他オレフィンとしては、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン、エチリデンノルボルネンなどの環状オレフィンモノマー、p−メチルスチレンなどのスチレン系モノマーなどを挙げることができ、これらの骨格に、水酸基、アルコキサイド基、カルボン酸基、エステル基、アルデヒド基を含有してもよい。
また、(3−ブテン)−1−オールなどの、(a)成分で規定されたモノマーに水酸基、カルボン酸基が付与されたモノマー、その他、α、ω−ジエン等のジエン誘導体、無水マレイン酸、酢酸ビニルなども使用可能である。
本発明の実質的に線状な分子構造と、狭い分子量分布及び組成分布を有するエチレン−α−オレフィン極性基含有ビニルモノマーから成る共重合体を製造する方法については、従来殆ど知られていなかった。
本発明者らは、以下の様な特定の構造を有するトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物と8〜10族の遷移金属化合物とを反応させて得られる成分を含むα−オレフィン重合用触媒を使用することで、初めて実質的に線状な分子構造と、狭い分子量分布及び組成分布を有するエチレン−α−オレフィン極性基含有ビニルモノマーから成る共重合体を製造することが出来ることを見出した。
下記の一般式(1)で示されるトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物と8〜10族の遷移金属化合物とを反応させて得られる成分を含むα−オレフィン重合触媒を使用して、エチレン−α−オレフィン−(メタ)アクリル酸系オレフィンから成る共重合体を製造することが可能である。
・・・(1)
(一般式(1)中、Yは、リン又は砒素であり、Zは、−SO3H又はCO2Hである。R3〜R6は、各々独立して水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数6〜30のアリールオキシ基を示し、R3〜R6の少なくとも一つ、および、R3〜R6のどちらか一方が、二級もしくは三級のアルキル基、或は、芳香環に直接結合している炭素とO又はNより選ばれる元素との単結合を含む置換基である。R7〜R16は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリールオキシ基、又は炭素数1〜30の炭化水素基で置換されたシリル基を示す。)
Yは、リン又は砒素であり、好ましくはリンである。また、Zは、−SO3H又はCO2Hであり、好ましくは−SO3Hである。R3〜R6として好ましくは、R3〜R6の少なくとも一つ、および、R3〜R6のどちらか一方が、二級もしくは三級のアルキル基、或は、芳香環に直接結合している炭素とO又はNより選ばれる元素との単結合を含む置換基である。
R3〜R6は、各々独立して水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数6〜30のアリールオキシ基を示し、R3〜R6の少なくとも一つ、および、R3〜R6のどちらか一方が、二級もしくは三級のアルキル基、或は、芳香環に直接結合している炭素とO又はNより選ばれる元素との単結合を含む置換基である。R3〜R6は、中心の15族原子(リン又は砒素)からみてオルト位であり、即ち、本発明のトリアリールホスフィン化合物は分子中(オルト位に)少なくとも1つの立体的に嵩高い置換基を有していることが特徴の一つであり、この立体効果が触媒性能の向上に影響しているものと考えられる。
芳香環に直接結合している炭素と、O又はNより選ばれる元素との単結合を含む置換基としては、2個以上の炭素Cよりなる二級もしくは三級のアルキル基、1個の炭素Cと1個の酸素Oよりなるアルコキシアルキル基もしくは環状エーテル類、1個の炭素Cと1個の窒素Nよりなるピロリジン類もしくはピロール類、2個の酸素Oよりなるアセタール類、1個の酸素Oと1個の窒素Nよりなるモルホリン類もしくはオキサゾール類、2個の窒素Nよりなるイミダゾリジン類もしくはイミダゾール類が挙げられる。これら2個以上のC、O、Nを含む置換基は連結して環を形成しても良い。これらの中で、二級もしくは三級のアルキル基、アルコキシアルキル基、環状エーテル類が好ましく、特に好ましいのは後述の二級もしくは三級のアルキル基、またはテトラヒドロフリル基である。
R3〜R6として好ましい炭素数1〜30の炭化水素基は、さらに好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、好ましい具体例は、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、ノルマルブチル基、ノルマルヘキシル基であり、特に好ましくはメチル基である。
R3〜R6として好ましいハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基は、さらに好ましくは一つのハロゲン原子で置換された炭素数1〜6のアルキル基である。置換するハロゲンとしては、好ましくはフッ素であり、好ましい具体例は、フルオロメチル基、1−フルオロエチル基、2−フルオロエチル基、3−フルオロプロピル基、4−フルオロブチル基、6−フルオロヘキシル基である。
R3〜R6として好ましいヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基は、さらに好ましくは酸素原子を有する炭素数1〜4の炭化水素基であり、好ましい具体例は、メトキシメチル基、エトキシメチル基である。
R3〜R6として好ましい炭素数1〜30のアルコキシ基は、さらに好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基であり、好ましい具体例は、メトキシ基、エトキシ基である。
R3〜R6として好ましい炭素数6〜30のアリールオキシ基は、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリールオキシ基であり、好ましい具体例は、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基である。
二級もしくは三級のアルキル基、及び、芳香環に直接結合している炭素とO又はNより選ばれる元素との単結合を含む置換基で無い、これらの置換基群の具体例のうち、さらに好ましくは水素原子又はメチル基であり、特に好ましくは水素原子である。
R7〜R16として好ましい炭素数1〜30の炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基が挙げられる。
ここで、アルキル基、シクロアルキル基の例は、メチル基、エチル基、1−プロピル基、1−ブチル基、1−ペンチル基、1−ヘキシル基、1−ヘプチル基、1−オクチル基、1−ノニル基、1−デシル基、t−ブチル基、トリシクロヘキシルメチル基、1,1−ジメチル−2−フェニルエチル基、イソプロピル基、1−ジメチルプロピル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,1−ジエチルプロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、イソブチル基、1,1−ジメチルブチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−ヘプチル基、3−ヘプチル基、4−ヘプチル基、2−プロピルヘプチル基、2−オクチル基、3−ノニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロプロピル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、エキソ−ノルボルニル基、エンド−ノルボニル基、2−ビシクロ[2.2.2]オクチル基、ノピニル基、デカヒドロナフチル基、メンチル基、ネオメンチル基、ネオペンチル基、及び5−デシル基などである。これらの中で、好ましい置換基としては、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基である。
R7〜R16として好ましいハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基は、前述の炭素数1〜30の炭化水素基にフッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子で置換された置換基である。
R7〜R16として好ましい炭素数6〜30のアリールオキシ基は、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリールオキシ基であり、好ましい具体例は、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基である。
錯形成反応は、α−オレフィンとの共重合に使用する反応器中で行ってもよいし、該反応器とは別の容器中で行ってもよい。錯形成後に、金属錯体を単離抽出して触媒に用いてもよいし、単離せずに触媒に用いてもよい。更に、多孔質担体の存在下実施することも可能である。
・・・(2)
(一般式(2)中、Yは、リン又は砒素であり、Zは、−SO3−又はCO2−である。R3〜R6は、各々独立して水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数6〜30のアリールオキシ基を示し、R3〜R6の少なくとも一つ、および、R3〜R6のどちらか一方が、二級もしくは三級のアルキル基、或は、芳香環に直接結合している炭素とO又はNより選ばれる元素との単結合を含む置換基である。R7〜R16は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリールオキシ基、又は炭素数1〜30の炭化水素基で置換されたシリル基を示す。Mは、8〜10族の遷移金属からなる群より選択された金属原子を示し、Aは、水素原子、ハロゲン原子、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30のアルキル基又はヘテロ原子を有していてもよい炭素数6〜30のアリール基を示す。Bは、Mに配位した任意のリガンドを示す。また、AとBは互いに結合して環を形成していてもよい。)
Mは、第8〜10族の遷移金属を示すが、Fe,Co,Ni,Pd,Pt及びランタニドが好ましく、より好ましくは、Ni,Pdである。
Aは、水素原子、ハロゲン原子、ヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1〜30のアルキル基またはヘテロ原子を含有していてもよい炭素数6〜30のアリール基を示す。ここで、ヘテロ原子としては好ましくは、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、ハロゲンが好ましく、更に好ましくは酸素原子である。
本発明の共重合体の製造は、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素溶媒や液化α−オレフィン等の液体、また、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、安息香酸メチル、アセトン、メチルエチルケトン、ホルミアミド、アセトニトリル、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール等のような極性溶媒の存在下或は非存在下に行われる。また、ここで記載した液体化合物の混合物を溶媒として使用してもよい。なお、高い重合活性や高い分子量を得るうえでは、上述の炭化水素溶媒がより好ましい。
即ち、共重合温度は、通常−20℃から300℃、好ましくは0℃から250℃、更に好ましくは50℃から100℃、共重合圧力は、0.1MPaから200MPa、好ましくは、0.3MPaから100MPa、更に好ましくは0.3MPaから5MPa、共重合時間は、0.1分から6時間、好ましくは、0.5分から5時間、更に好ましくは10分から4時間の範囲から選ぶことができる。
本発明において、共重合は、一般に不活性ガス雰囲気下で行われる。例えば、窒素、アルゴン雰囲気が使用でき、窒素雰囲気が好ましく使用される。なお、少量の酸素や空気の混入があってもよい。
共重合体の組成の制御に関しては、複数のモノマーを反応器に供給し、その供給比率を変えることによって制御する方法を一般に用いることができる。その他、触媒の構造の違いによるモノマー反応性比の違いを利用して共重合組成を制御する方法や、モノマー反応性比の重合温度依存性を利用して共重合組成を制御する方法が挙げられる。
連鎖移動剤を使用する場合には、従来公知の連鎖移動剤を用いることができる。例えば、水素、メタルアルキルなどを使用することができる。また、(b)又は(c)成分自身が一種の連鎖移動剤となる場合には、(b)又は(c)成分の濃度や、(a)成分に対する比率を制御することによっても分子量調節が可能である。遷移金属錯体中の配位子構造を制御して分子量調節を行う場合には、金属Mの周りに嵩高い置換基を配置したり、金属Mにアリール基やヘテロ原子含有置換基等の電子供与性基が相互作用可能となるように配置したり、極性基含有モノマーのR中にヘテロ原子を導入することにより、一般に分子量が向上する傾向を利用することができる。
本触媒は、極性モノマー存在下であっても活性点の変質を受けにくく、均質な活性種を維持しているためと考えている。更に、重合中の温度やモノマー、コモノマー濃度の変化を小さくすることで、分子量分布が狭い共重合体の製造を可能にする。但し、この様な手法でMw/Mnをある程度小さくすることが可能であるが、Mw/Mnが1.5未満の共重合体を製造することは困難である。
その制御方法としては、コモノマーの含量は、エチレン、α−オレフィン、極性基含有ビニルモノマーの圧力及び濃度比を制御することで、融点Tm(℃)とα−オレフィン含量、極性基含有ビニルモノマー含量を変化させ、融点を制御することができる。エチレンの圧力に依存するが、例えば、エチレン圧が2MPaであれば、α−オレフィンと極性基含有ビニルモノマーは、0.01mol/L以上、9.0mol/L以下の範囲で所望のコモノマー含量の共重合体を製造し、融点を制御できる。
また、前述した特定のトリアリールホスフィン化合物、特にR3、R4のどちらか一方、及び、R5、R6のどちらか一方が、2級アルキル基である成分と、10族遷移金属化合物、特にPd化合物とを反応させて得られる成分を含むα−オレフィン重合触媒は、極性モノマー存在下であっても活性点の変質を受け難く、均質な活性種を維持し、更に、従来知られている触媒に対し、極性モノマーの共重合性に加え、従来共重合し難かった1−ヘキセンの共重合性が改良されており、上記の制御を行うためには、本触媒を選択することが重要である。
これらを制御するためには、前述した特定のトリアリールホスフィン化合物、特にR3、R4のどちらか一方、及び、R5、R6のどちらか一方が、2級アルキル基である成分と、10族遷移金属化合物、特にPd化合物とを反応させて得られる成分を含むα−オレフィン重合触媒を使用し、重合中のモノマー、コモノマー濃度や重合温度の変化を小さくすることが重要である。また、長鎖分岐の生成は重合溶媒にも依存し、上記した炭化水素溶媒を選択することが重要である。これは、溶媒に対する共重合体の溶解性が長鎖分岐の生成に影響すると考えており、コモノマー含量と溶媒種の選択でも制御することが可能である。ポリマーの溶解性が高い溶剤、コモノマー含量の高い共重合体は、位相角δ(G*=0.1MPa)が大きくなる傾向にあり、例えば、ポリマーの溶解性が低いヘキサン等を使うことで位相角δ(G*=0.1MPa)を小さくすることが可能である。
28-0.3×Tw ≦ T90−T10 ≦ 41-0.3×Tw
その制御方法としては、前述した特定のトリアリールホスフィン化合物、特にR3、R4のどちらか一方、および、R5、R6のどちらか一方が、2級アルキル基である成分と、10族遷移金属化合物、特にPd化合物とを反応させて得られる成分を含むα−オレフィン重合触媒は、極性モノマー存在下であっても活性点の変質を受けにくく、均質な活性種を維持し、分子鎖間で均質なポリマーの製造が可能となる。さらに、重合中の温度やモノマー、コモノマー濃度の変化を小さくすることで、組成分布が狭い共重合体の製造を可能にし、その結果上記の式の制御を可能にする。
その制御方法としては、前述した特定のトリアリールホスフィン化合物、特にR3、R4のどちらか一方、および、R5、R6のどちらか一方が、2級アルキル基である成分と、10族遷移金属化合物、特にPd化合物とを反応させて得られる成分を含むα−オレフィン重合触媒の使用において、R3〜R6の構造を選択することで、制御することが可能である。
(1)MFR
MFRは、JIS K-7210の表1-条件7に従い、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定した。
セイコー電子製のDSC6200R型融点測定装置を使用し、サンプル5mgを180℃で3分間保持し、次いで10℃/分で0℃まで冷却し、0℃で10分間保持し、その後10℃/分で昇温することでサーモグラムを得、観測される吸熱ピークの最大値における温度を融点とした。
[試料調製]
厚さ100μm程度のフィルム状に成形した試料約250mgを外径10mmの試料管に量りとり、オルト−ジクロロベンゼン1.84mlと重水素化ブロモベンゼン0.46mlを添加した。試料管上部を窒素置換した後、試料管の蓋をし130℃の高温槽で試料が均一になるまで加熱・溶解した。
[13C-NMR測定]
クライオプローブを装備したブルカー・バイオスピン社製AVANCEIII400 NMR測定装置を用いてゲート付きプロトンデカップリングによるNOE無しの条件で測定を行った。なお、励起パルスのフリップ角は90°とし、パルス間隔16.3秒、測定温度120℃、積算回数500回以上、スペクトル観測幅は24,038.5Hzとした。13C-NMRスペクトルの帰属は種々の文献を参考に行った。
得られた13C-NMRスペクトルからエチレン単位のモル数に比例する量TE、α-オレフィン単位のモル数に比例する量Tα-O 、極性基含有ビニルモノマー単位のモル数TFを求め、Tα-O/(TE+Tα-O+TF)×100より、α-オレフィン含有量(単位:モル%)を、TF/(TE+Tα-O+TF)×100より極性基含有ビニルモノマー含有量(単位:モル%)を求めた。
α−オレフィンがプロピレン及び1-ヘキセンの場合、極性基含有ビニルモノマー単位がアクリル酸メチル及びアクリル酸エチルの場合、Tα-O及びTFは以下のようにして求めた
α−オレフィンがプロピレンの場合にはプロピレンが共重合して鎖中に挿入することにより生じる核磁気共鳴ピークのうち、37.6 ppm付近のαメチレン炭素に由来するピークの積分強度の1/2と33.2 ppm付近のメチン炭素由来のピークの積分強度との平均値をプロピレン単位のモル数に比例する量Tα-Oとして求めた。Tα-O = (I37.6/2 + I33.2)/2。ここで、例えばI37.6は37.6ppm付近に生じるα−メチレン炭素に由来するピークの積分強度である。
プロピレンの場合同様、1−ヘキセンにより生じる特性ピークを用い、以下の式を用いてヘキセン単位のモル数に比例する量をTα-Oとして求めた。Tα-O = (I27.3/2 + I34.2 + I34.6/2 ) / 3。ここで、I27.3は1−ヘキセンの共重合により27.3ppm付近に生じるβメチレンの共鳴によるピークの積分強度、I34.2は1−ヘキセンの共重合により生じるブチル分岐の分岐末端から数えて4番目の炭素による共鳴ピークの積分強度、I34.6はαメチレンの共鳴によるピークの積分強度である。
アクリル酸メチルが共重合したことにより生じる核磁気共鳴信号のうち、27.8 ppm 付近のβメチレン炭素積分強度の半分、32.8 ppm付近のαメチレン炭素の積分強度の半分、及び46.0 ppm付近のメチン炭素積分強度の平均値をとってアクリル酸メチル単位のモル数に比例する量(TF)とした。
TF = (I27.8/2+I32.8/2+I46.0)/3。
アクリル酸メチルの場合と同様、アクリル酸エチルが共重合したことにより生じる核磁気共鳴信号のうち、27.8 ppm 付近のβメチレン炭素積分強度の半分、32.8 ppm付近のαメチレン炭素の積分強度の半分、及び46.0 ppm付近のメチン炭素積分強度の平均値をとってアクリル酸エチル単位のモル数に比例する量(TF)とした。TF = (I27.8/2+I32.8/2+I46.0)/3。なお、エチレン単位のモル数に比例する量TEは、30 ppm付近のγメチレンを含む主ピークの積分強度に上記各コモノマーにより生じる全てのαメチレン炭素ピークの積分強度の半分と全てのβメチレン炭素ピークの積分強度を加え合わせたものを1/2倍した値により求めた。TE = (I30+Iα/2+Iβ)/2。ここでI30は30ppm付近のγメチレンを含む主ピークの積分強度、Iαはコモノマーがプロピレンとアクリル酸メチルの場合にはI37.6+I32.8とし、1−ヘキセンとアクリル酸エチルの場合にはI34.6+I32.8とした。
Macromolecules 32(5) 1620 (1999)を参考に13C-NMRスペクトル解析を行い、共重合したα−オレフィン及び極性基含有ビニルモノマーに由来して生じる分岐構造以外の分岐構造の特定を行うとともに、公知の方法により1,000炭素当たりのそれらの分岐の量とその総和を求めた。
(測定条件)使用機種:ウォーターズ社製150C 検出器:FOXBORO社
製MIRAN1A・IR検出器(測定波長:3.42μm) 測定温度:140℃ 溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB) カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本) 流速:1.0mL/分 注入量:0.2mL
(試料の調製)試料はODCB(0.5mg/mLのBHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)を含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させた。
(分子量の算出)標準ポリスチレン法により行い、保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行った。
使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー社製の、(F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000)の銘柄である。
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成した。較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いた。分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いた。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PE:K=3.92×10−4、α=0.733
PP:K=1.03×10−4、α=0.78
自社製の装置を使用し、以下の手順及び条件に従い測定を行った。
1)試料
20mLガラス瓶に試料20mg及びo−ジクロロベンゼン20mLを秤り採り、金属製スクリューキャップで蓋をした後、140℃に保温されたドライバスに入れ15分おきに手で撹拌しながら2時間溶解を行った。溶解終了後、不溶成分がないことを目視で確認した。
2)沈着
内径8mmφ、長さ120mmのステンレスカラムを隙間なく納められるように加工したアルミブロックに400Wのヒーター及び熱電対を取り付けた装置(自社製)を用いて沈着を行った。カラムには予めガラスビーズを充填し、該装置で140℃に保温しておく。そこに140℃の試料溶液を注入し、続いてカラムを納めたアルミブロックを4℃/hの速度で室温まで降温し、ガラスビーズ上に試料を沈着させた。
3)溶出
内径8mmφ、長さ120mmのステンレスカラム及びカラムに接続した外径1/16インチのステンレスチューブを隙間なく納められるように加工したアルミブロックにペルチェ素子、200Wのヒーター及び熱電対を取り付けた装置(自社製)を用いて溶出を行った。該装置に日立製L-6200型LC用ポンプ、保温リードパイプ、及び液体フローセルを取り付けたMIRAN 1A型赤外分光計を接続し、カラムを一定速度で昇温しながら溶媒を一定流量で流し、溶媒中の試料量を測定できるシステムを作成した。沈着が終了したカラムを該システムに納め、赤外分光計の測定波長を3.42μmに設定し、20℃でo−ジクロロベンゼンを流量1.0ML/minで30分程度流し、ベースラインを安定させた。続いて流量1.0mL/minでo−ジクロロベンゼンを流しつつ50℃/hの速度で130℃まで昇温し、その間の温度及び赤外分光計の出力をコンピュータで記録した。得られたクロマトグラムを処理し、溶出温度−溶出量曲線を得た。
なお、溶出開始温度が明らかに20℃を下回るものについては、溶出操作の前にo−ジクロロベンゼンを流さずに4℃/hの速度で0℃まで降温し、0℃でo−ジクロロベンゼンを流量1.0mL/minで30分程度流し、ベースラインを安定させた後に流量1.0mL/minでo−ジクロロベンゼンを流しつつ50℃/hの速度で130℃まで昇温し測定を行った。得られたデータから、重量平均溶出温度Twを下記式に従って計算した。
ここでTは溶出温度、I(T)は温度T(℃)における溶出量を表す。また、T90及びT10は、それぞれ全体に対する溶出量90重量%及び10重量%における溶出温度である。
試験に供する樹脂を160℃で直径25mm、厚み1mmの円形にプレス成形したものをサンプルとし、動的粘弾性特性の測定装置は、Rheometrics社製ARES型回転式レオメータ及び25mmφパラレルプレートを用い、窒素雰囲気下において以下の条件で動的粘弾性を測定した。
・温度:160℃ ・歪み量:10% ・測定角周波数範囲:1.0×10−2〜1.0×102 rad/s ・測定間隔:5点/decade
複素弾性率の絶対値G*(Pa)の常用対数logG*に対して位相角δをプロットし、logG*=5.0に相当する点のδ(度)の値をδ(G*=0.1MPa)とした。測定点の中にlogG*=5.0に相当する点がないときは、logG*=5.0前後の2点を用いて、logG*=5.0におけるδ値を線形補間で求めた。また、測定点がいずれもlogG*<5であるときは、logG*値が大きい方から3点の値を用いて2次曲線でlogG*=5.0におけるδ値を補外して求めた。
各実施例のエチレン系共重合体をJIS K7151に記載の方法(冷却方法A)で厚さ1mmのシートを作成し、これを打抜いて作製したJIS K7162に記載の5B形小型試験片を用いて、引張速度10mm/分、温度23℃の条件下において引張試験を行ない、得られた応力−ひずみ曲線から、「成形加工, Vol.4, No.8, pp489-496(1992)」に記載された方法で引張弾性率、引張降伏応力、引張破断呼び応力及び引張破断呼びひずみを計算した。なお、引張降伏応力は、公称応力−ひずみ曲線に明確な極大点がある場合にはその極大点における真応力、ない場合は真応力−真ひずみ曲線における変曲点における真応力とした。また、ひずみの計算は、チャック間変位を用いて行った。
各実施例のエチレン系共重合体をJIS K7151に記載の方法(冷却方法A)で厚さ1mmのシートを作成し、これを打抜いて作製したJIS K7160に記載の4形試験片を用いて、JIS K7160に記載の条件で測定を行った。
JIS K7151に記載の方法(冷却方法A)で厚さ1mmのシートを作成し、これをビーカーに入れたエタノールに浸して1分間超音波洗浄をかけた後、ガーゼでエタノールを軽くふき取った。その表面に三菱鉛筆社製水性顔料サインペン「リブ」MyT-7を用いて約1cm角の文字を書き、10秒後の文字の形状で濡れ性を判定した。◎○×△の判断基準は下記の通りである。
◎:全くもしくは殆ど液はじきがなく、文字の輪郭が明瞭 ○:多少の液はじきはあるものの、文字の線は殆ど途切れがない △:液はじきがあり、所々に文字の線に途切れがある ×:液はじきが強く、いたる所で文字の線が途切れている
(1)エチレン−α−オレフィン−(メタ)アクリル酸系オレフィン共重合体の製造方法
(配位子の合成)
下記合成例で得られた配位子を用いた。なお、以下の合成例で特に断りのない限り、操作は精製窒素雰囲気下で行い、溶媒は脱水・脱酸素したものを用いた。
下記に示す配位子(I)は以下の方法で合成を実施した。無水ベンゼンスルホン酸(400mg,2.5mmol)のテトラヒドロフラン(20mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,2mL,5mmol)を0℃でゆっくりと滴下し、室温まで温度を上昇させながら1時間撹拌した。反応液を−70℃まで冷却し、三塩化リン(340mg,2.5mmol)を加え、室温まで温度を上昇させながら2時間撹拌した(反応液A)。
1−ブロモ−2−イソプロピルベンゼン(1g,5mmol)のジエチルエーテル(20mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,2mL,5mmol)を−30℃でゆっくりと滴下し、室温まで温度を上昇させながら3時間撹拌した。この溶液を、先ほどの反応液Aに室温で滴下し、一晩撹拌した。反応後、水(20mL)を加え、エーテル抽出し(20mL×2)、1N塩酸(20mL×2)で洗浄した後、溶媒を留去した。メタノール(5mL)で洗浄し、白色の目的物を100mg得た。
1H NMR (CDCl3, ppm/): 8.35 (ddd, J = 0.8, 4.8, 7.6 Hz, 1 H), 7.74 (tt, J = 1.4,7.6 Hz, 1 H), 7.65 (t, J = 7.6 Hz, 2 H), 7.53 (t, J = 6.4 Hz, 2 H), 7.42 (ddt, J = 1.2, 2.8, 7.6 Hz, 1 H), 7.26 (ddt, J = 0.8, 4.8, 8.0 Hz, 2 H), 7.05 (dd, J = 0.8, 7.6 Hz, 1 H), 6.98 (dd, J = 0.8, 5.2 Hz, 2 H), 3.00 (m, 2 H), 1.15 (d, J = 6.8 Hz, 6 H), 1.09 (d, J = 6.0 Hz, 6 H). 31P NMR (CDCl3, ppm/): 9.5.
2−1(実施例−エチレン/1−ヘキセン/エチルアクリレート共重合)
充分に窒素置換した30mLフラスコに、パラジウムビスジベンジリデンアセトンとリンスルホン酸配位子(I)をそれぞれ200マイクロモル秤量し、脱水トルエン(10mL)を加えた後、これを超音波振動機にて10分間処理することで、触媒スラリーを調製した。次に、内容積1Lの誘導撹拌機付ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、精製トルエン(170mL)、1−ヘキセン(279mL)、エチルアクリレート(245mL)を精製窒素雰囲気下にオートクレーブ内に導入した。先に調製した触媒スラリーを全量添加し、エチレンを圧力3MPaで加圧して重合を開始した。反応中は温度を80℃に保ち、圧力が3MPaに保持されるように連続的にエチレンを供給した。180分後、エチレンをパージ、オートクレーブを室温まで冷却し、エタノール(1L)を用いてポリマーを再沈させ、沈殿したポリマーを濾過した。更に、得られた固形ポリマーをエタノール(1L)に分散させ、ここに1N−塩酸(20ml)を加えて60分撹拌し、ポリマーを濾過した。得られた固形ポリマーをエタノールで洗浄し、60℃で3時間減圧乾燥することで、最終的にポリマーを回収した。
エチレン/1−ヘキセン/エチルアクリレート共重合が74g得られた。触媒活性は、1.2E+05g/mol/h、GPCによるMwは92,000、Mw/Mn:2.1、融点は、102.9℃、13CNMRによるモノマー組成は、エチレン含量が、96.3mol%、1−ヘキセン含量が、1.1mol%、エチルアクリレート含量が、2.6mol%であった。重合条件及び重合結果を表1,2に示す。
次に、内容積2.4Lの誘導撹拌機付ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、表10に示した所定量の精製トルエン(実施例11はトルエンの代わりにヘキサンを使用)、エチルアクリレート、1−ヘキセンをオートクレーブ内に導入した。
オートクレーブ内を所定温度に制御した後、窒素でオートクレーブ内の圧力を0.1MPaに昇圧し、更にエチレン分圧分を昇圧した(全圧=エチレン分圧+0.1)。
オートクレーブ内の温度が安定した後、先に調製した触媒スラリーを少量の窒素によりオートクレーブに圧入して重合を開始した。反応中は所定温度に保ち、圧力が所定圧力に保持されるように連続的にエチレンを供給した。
所定時間重合した後、エチレンをパージして、オートクレーブを室温まで冷却することで重合を停止した。生成したポリマーは反応溶液を1Lのアセトンに加えて洗浄した後、濾過により分離した。分離したポリマーは更にアセトン洗浄と濾過を2回繰り返し、60℃で3時間減圧乾燥することで、最終的にポリマーを回収した。それぞれの重合結果を表2示す。
次に、予め別の2Lの誘導撹拌機付ステンレス製オートクレーブをエチレン/プロピレン混合ガス用バッファータンクとして準備した。このタンクに液化プロピレン(150mL)及びエチレン(2.5MPa)を20℃で装入した後、充分に混合されるまで撹拌し、50℃まで昇温した。
続いて、重合に使用する内容積2Lの誘導撹拌機付ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、精製トルエン(500mL)、メチルアクリレート(37.5mL)、先に調製した触媒スラリー全量を精製窒素雰囲気下にオートクレーブ内に導入した。20℃でオートクレーブ内に、プロピレン (100mL)を導入し、上記調整した混合ガスを導入して1.2MPaまで昇圧した後、70℃まで昇温し、全圧が2.0MPaになるように混合ガスを追加した。重合中は全圧を保つように適宜混合ガスを導入した。10分後にエタノール(25ml)を装入し、未反応ガスをパージすることで重合を停止した。回収したトルエン懸濁液にエタノール(1,000mL)を加えて一晩静置した後、その混合物を濾過した。沈殿物にアセトン(500mL)を加え、20℃で20分間撹拌した後、濾過を行った。この洗浄をもう2回実施した。洗浄後、70℃で3時間減圧乾燥を行い、エチレン−プロピレン−メチルアクリレート共重合体を23.2g(触媒活性は、5.3E+05(g/mol/h))を得た。得られた共重合体のDSCによる融点は、107.2℃、GPCによるMwは80,000、Mw/Mnは1.7、メチルアクリレート含量は1.0mol%、プロピレン含量は3.0mol%であった。重合結果を表3に示す。
次に、予め別の2Lの誘導撹拌式オートクレーブをエチレン/プロピレン混合ガス用バッファータンクとして準備した。このタンクに液化プロピレン(150mL)及びエチレン(2.5MPa)を20℃で装入した後、充分に混合されるまで撹拌し、50℃まで昇温した。
続いて、重合に使用する内容積2Lの誘導撹拌機付ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、精製トルエン(500mL)、メチルアクリレート(37.5mL)、先に調製した触媒スラリー全量を精製窒素雰囲気下にオートクレーブ内に導入した。20℃でオートクレーブ内に、プロピレン (100mL)を導入し、上記調整した混合ガスを導入して1.2MPaまで昇圧した後、55℃まで昇温し、全圧が2.0MPaになるように混合ガスを追加した。重合中は全圧を保つように適宜混合ガスを導入した。25分後にエタノール(25ml)を装入し、未反応ガスをパージすることで重合を停止した。回収したトルエン懸濁液にエタノール(1,000mL)を加えて一晩静置した後、その混合物を濾過した。沈殿物にアセトン(500mL)を加え、20℃で20分間撹拌した後、濾過を行った。この洗浄をもう2回実施した。洗浄後、70℃で3時間減圧乾燥を行い、エチレン−プロピレン−メチルアクリレート共重合体を19.6g(触媒活性は、8.1E+04(g/mol/h))を得た。得られた共重合体のDSCによる融点は、113.6℃、GPCによるMwは58,000、Mw/Mnは1.6、メチルアクリレート含量は0.6mol%、プロピレン含量は2.4mol%であった。重合結果を表3に示す。
次に、予め別の2Lの誘導撹拌機付きステンレス製オートクレーブをエチレン/プロピレン混合ガス用バッファータンクとして準備した。このタンクに液化プロピレン(150mL)及びエチレン(2.5MPa)を20℃で装入した後、充分に混合されるまで撹拌し、50℃まで昇温した。
続いて、重合に使用する内容積2Lの誘導撹拌機付ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、精製トルエン(500mL)、メチルアクリレート(46.9mL)、先に調製した触媒スラリー全量を精製窒素雰囲気下にオートクレーブ内に導入した。20℃でオートクレーブ内に、プロピレン (100mL)を導入し、上記調整した混合ガスを導入して1.2MPaまで昇圧した後、55℃まで昇温し、全圧が2.0MPaになるように混合ガスを追加した。重合中は全圧を保つように適宜混合ガスを導入した。30分後にエタノール(25ml)を装入し、未反応ガスをパージすることで重合を停止した。回収したトルエン懸濁液にエタノール(1,000mL)を加えて一晩静置した後、その混合物を濾過した。得られた沈殿物にトルエン(100mL)と35%塩酸(0.5mL)を加え、70℃で30分間撹拌し、再び濾過を行った。沈殿物にアセトン(500mL)を加え、20℃で20分間撹拌した後、濾過を行った。この洗浄をもう2回実施した。洗浄後、70℃で3時間減圧乾燥を行い、エチレン−プロピレン−メチルアクリレート共重合体を1.87g(触媒活性は、1.5E+04(g/mol/h))を得た。得られた共重合体のDSCによる融点は、120.1℃、GPCによるMwは55,000、Mw/Mnは1.9、メチルアクリレート含量は0.6mol%、プロピレン含量は1.0mol%であった。重合結果を表3に示す。
参考例−1のポリエチレンホモの13C−NMRを測定した結果、メチル、エチル等の短鎖分岐は確認されず、検出限界以下であり、短鎖分岐の非常に少ないポリエチレンであることを確認した。
重合終了後、エチレンをパージ、オートクレーブを室温まで冷却し、得られたポリマーがトルエン不溶の固体である場合には、濾過によりポリマーと溶媒を分離した。濾過では分離が不十分な場合には、エタノール(1L)を用いてポリマーを再沈させ、沈殿したポリマーを濾過した。更に、得られた固形ポリマーをエタノール(1L)に分散させ、ここに1N−塩酸(20ml)を加えて60分撹拌し、ポリマーを濾過した。得られた固形ポリマーをエタノールで洗浄し、60℃で3時間減圧乾燥することで、最終的にポリマーを回収した。それぞれの重合結果を表5に示す。
13C−NMRにより確認した結果、前述したスペクトルの帰属よりエチルアクリレートが主鎖中に挿入しており、メチル、エチル等の短鎖分岐は確認できなかった。
充分に窒素置換した30mLフラスコに、表6に示す所定量のパラジウムビスジベンジリデンアセトンとリンスルホン酸配位子(I)をそれぞれ秤量し、脱水トルエン(10mL)を加えた後、これを超音波振動機にて10分間処理することで、触媒スラリーを調製した。次に、内容積1Lの誘導撹拌機付ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、表6に示す所定量の精製トルエン、1−ヘキセンを精製窒素雰囲気下にオートクレーブ内に導入した。先に調製した触媒溶液を添加し、室温下、エチレン圧を3MPaとして重合を開始した。反応中は温度を80℃に保ち、エチレンの分圧が3MPaに保持されるように連続的に所定時間エチレンを供給した。
重合終了後、エチレンをパージ、オートクレーブを室温まで冷却し、得られたポリマーがトルエン不溶の固体である場合には、濾過によりポリマーと溶媒を分離した。濾過では分離が不十分な場合には、エタノール(1L)を用いてポリマーを再沈させ、沈殿したポリマーを濾過した。更に、得られた固形ポリマーをエタノール(1L)に分散させ、ここに1N−塩酸(20ml)を加えて60分撹拌し、ポリマーを濾過した。得られた固形ポリマーをエタノールで洗浄し、60℃で3時間減圧乾燥することで、最終的にポリマーを回収した。それぞれの重合結果を表6に示す。
2−11.(実施例16:エチレン/1−ヘキセン/メチルアクリレート共重合)
(ビスジベンジリデンアセトン)パラジウムとリンスルホン酸配位子(I)のスラリーを別々に用意し、超音波振動器にて処理した後、混合して室温で15分間撹拌することで、0.002mol/Lの触媒スラリーを調製した。内容積10mLの誘導撹拌付ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、精製トルエン、所定量のヘキセン及びメチルアクリレートを導入した。80度に昇温後、エチレンで加圧して2MPaとした後、先に調製した触媒スラリーを所定量添加して、重合を開始した。尚、重合時の液総量は5mLになるように調製した。反応中は温度を一定に保ち、エチレンの分圧が2MPaに保持されるように連続的にエチレンを供給した。60分後に、未反応のエチレンをパージ後、オートクレーブを室温まで冷却し、得られたポリマーを濾過により回収し、40℃で6時間減圧乾燥した。詳細な重合条件と重合結果を表7に示す。
比較のため、市販のメタロセンポリエチレン及び高圧法アクリル酸エチル共重合体の評価を上記実施例と同様の方法で行った。比較例1は日本ポリエチレン(株)製メタロセンLL「カーネル」KF370、比較例2は同KF373N、比較例3は同KF480、比較例4は日本ポリエチレン(株)製高圧法EEA「レクスパールEEA」A1100、比較例5は同A1200である。なお、比較例4及び5は、重合時のコモノマーはアクリル酸エチルのみであるが、副生が不可避であるメチル、エチル、ブチル及びアミル分岐を有するので、これら短鎖分岐の合計を主鎖炭素に対する短鎖分岐濃度[C]に換算して比較を行った。表8に纏めた。得られた試料の物性評価結果を表9に示す。
実施例3は、本発明の請求項1のTmの式を満たさない比較例5とほぼ同じ弾性率かつほぼ同じ分子量を有するものであるが、この2つを比較すると、濡れ性はほぼ同等であり、機械物性は、引張降伏応力、引張破断呼び応力、引張破断呼びひずみ、引張衝撃強度いずれも実施例3の方が比較例5よりも高い値を示し、優れている。
また、実施例7は、市販のメタロセンポリエチレンの比較例3とほぼ同じ弾性率でかつほぼ同じ分子量を有するものであるが、この2つを比較すると、機械物性は、引張降伏応力、引張破断呼び応力、引張破断呼びひずみ、いずれもほぼ同等であるものの、引張衝撃強度は比較例3の方がやや高い値を示し、優れているが、実施例7は濡れ性において比較例3よりも優れている。したがって、実施例7は機械物性と濡れ性のバランスにおいて優れているといえる。
その他、本願の請求項1の要件を満たす各実施例は、市販の従来製品に比して、
優れた機械物性を有し、かつバランスよく十分な親水性を持ち、他の材料との接着性、印刷適性、フィラー等との相溶性の物性が改善された、エチレン系三元重合体であることが理解できる。
Claims (4)
- 要件(a)及び(b)を満たすことを特徴とする、エチレンと炭素数3〜10のα−オレフィン及び下記一般式(I)で示される極性基含有ビニルモノマーとの三元共重合体。
(a) 重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnが以下の関係を満たす。
1.5 ≦ Mw/Mn ≦3
(b) 融点Tm(℃)とα−オレフィン含量[C](モル%)、極性基含有ビニルモノマー含量[X](モル%)が以下の関係を満たす。
60 ≦ Tm ≦ 135−6.4×([C] + [X])
但し、Tmは示差走査熱量計(DSC)による測定から得られる融解曲線のピーク温度であり、融解ピークが複数検出される場合には、それらのうち最大であるピークの温度である。
式(I) :CH2=C(R1)CO2(R2) 但し、R1は、水素又は炭素数1〜10のアルキル基である。R2は、水素又は炭素数1〜30のアルキル基である。更に、R2は、水素又は任意の位置に水酸基、アルコキシ基又はエポキシ基を含有していてもよい、炭素数1〜30の炭化水素基である。 - 回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G*=0.1MPaにおける位相角:δ(G*=0.1MPa)が40度以上75度以下であることを特徴とする、請求項1に記載の三元共重合体。
- 連続昇温溶出分別法(TREF)による積分溶出曲線において、全体の10重量%が溶出する温度T10(℃)と、全体の90重量%が溶出する温度T90(℃)との差T90−T10(℃)、及び重量平均溶出温度Tw(℃)が、下記の関係を満たすことを特徴とする、請求項1又は2に記載の三元共重合体。
28−0.3×Tw ≦ T90−T10 ≦ 41−0.3×Tw - α−オレフィンの炭素数が4〜8の何れかであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の三元共重合体。
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