JP2010131607A - 金属鋳物の鋳巣解析方法およびその鋳巣解析プログラム - Google Patents

金属鋳物の鋳巣解析方法およびその鋳巣解析プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】溶湯充填中のガス巻き込みを考慮した金属鋳物の鋳巣解析方法を提供する。
【解決手段】本発明の金属鋳物の鋳巣解析方法は、溶湯の充填解析を行い、その結果得られたガスの情報も考慮して凝固解析に利用し、鋳巣解析を行う。このため、溶湯充填中のガス巻き込みを考慮した実際の鋳造過程に近い鋳巣解析を行うことが可能となる。
さらに、溶湯の充填がほぼ完了する時期からは、溶湯の流入条件を溶湯速度条件から溶湯圧力条件に切り替えることによって、鋳巣の位置を正確に予測することが可能となる。
【選択図】図5

Description

本発明は、鋳造過程における溶湯充填時のガス巻き込みを予測し、それを考慮した鋳巣解析を行うことができる鋳造解析方法およびその鋳造解析プログラムに関する。
重力鋳造、ダイカストなどに伴う鋳造欠陥は、ひけ巣不良、空気等の巻き込み不良、湯回り不良等により発生する。その中で特に大きな問題となる欠陥として空気等の巻き込みによる鋳巣の発生がある。
ダイカスト鋳造の場合は、プランジャの射出速度が高速域で1ないし3m/sで移動して溶湯を射出するため、溶湯はゲート部で数十m/sでキャビティ内に射出される。このため溶湯は乱れながら型内充填し、型内に存在していた空気を巻き込み、結果として製品内に気泡が生じる。また、溶湯充填完了後の鋳造圧付加により、この気泡(ガス巣)部分は圧縮される。その後、凝固時の溶湯圧力低下にともない気泡が膨張し、ガス巣を中心にひけが生じ、最終的な鋳巣となる。
特開2004−38444号公報 特開2003−216659号公報 特開2002−283001号公報 特開2007−125593号公報 特開2000−211005号公報
これまでの溶湯充填解析では、例えば上記の特許文献1に示されるように、充填完了時の溶湯温度を初期条件として凝固解析を行うだけで、溶湯充填中に巻き込んだガスの情報を凝固解析に利用する例はみられない。
また、ガスの巻き込みに関しては、例えば上記の特許文献2、特許文献3で示されるように閉領域が溶融材料で充填されて消滅した場合、閉領域が消滅した座標上の点に、消滅した閉領域に対応づけられた気体量情報を対応づける方法がある。そして、充填解析において溶融材料の流れ速度に従い移動する仮想巻き込み点を設定し、それを移動させるのが一般的である。
しかし、これらの方法では、ガス内の圧力や熱特性などのガスの情報を凝固解析に利用することはできない。
また、ガス巣を予測する手法は、例えば、上記の特許文献4で示される特許を用いて、未充填部をガス巣とすることにより、ガスの発生位置を予測することができる。
しかし、例えば前記の特許文献2で示されるように一般の流れ解析では、メッシュサイズの所定充填率以下(0.5ないし0.1)の気泡は消滅させ、溶湯として取り扱うため、高圧力がかかった時点でメッシュサイズが0.5ないし0.1以下の気泡は消滅し、溶湯として凝固解析に利用される。そのために、解析結果は実際とは異なるものであった。
また、上記特許文献5で示されるように、経過時間毎、要素毎に温度、ガス圧力を求める手法がある。
しかしながら、特許文献5で示される方法では、充填初期から充填完了時までの間にガス欠陥位置は移動し、ガス欠陥の発生位置を一義的に決定することはできなかった。
そこで、上記課題を解決するため、本発明者等は溶湯充填中に巻き込んだガスの情報も凝固解析に利用することを検討した。
さらに、溶湯の充填状態とガス巣挙動を鋭意検討し、加圧部位であるプランジャ近傍の溶湯部(流入境界位置)の圧力が急激に増加し始めるのはキャビティがほぼ充填完了(充填率85%以上)に近い時期であり、この時期でのガス巣の移動はほとんどないことを見出した。
この知見を発展させて、以下の発明を完成させるに至った。
〔金属鋳物の鋳巣解析方法〕
具体的には、溶融材料の成型に用いる型の形状を座標系上に位置づけ、該座標系の空間を複数の微小要素に分割する要素作成ステップと、
該微小要素のそれぞれについて、該型の型領域に位置する型要素と該型のキャビティ領域に位置するキャビティ要素とを定義する要素定義ステップと、
をもつ前処理工程と、
該キャビティ要素について、該溶融材料の充填領域を経時的に解析する充填解析ステップと、
該溶融材料が充填されていない該キャビティ要素をガス巣要素と位置付け、該ガス巣要素に該充填解析ステップで得られた圧力および温度条件を与え、該溶融材料が充填された該キャビティ要素である溶融材料充填要素と該ガス巣要素のそれぞれの要素間の伝熱および鋳造型最表面に位置する該型要素とそれに接する該溶融材料充填要素または該ガス巣要素のそれぞれの要素間の伝熱を経時的に解析して、該溶融材料充填要素の温度を経時的に算出する伝熱解析ステップと
該溶融材料充填要素の該温度から算出される該溶融材料充填要素の潜熱放出量に応じて、該溶融材料の固相率を算出する固相率算出ステップとをもつ凝固解析ステップと、
該溶融材料充填要素の該固相率から該溶融材料の凝固収縮を解析する凝固収縮解析ステップと、
をもつ解析工程と、
を有することを特徴とする金属鋳物の鋳巣解析方法に係る発明である。
本発明によれば、溶湯の充填解析を行い、その結果得られたガスの情報も考慮して凝固解析に利用することができるため、実際の鋳造過程に近い鋳巣解析を行うことが可能となる。
ガスの情報とは、ガスの圧力、温度、熱伝導率などの熱特性をはじめとしたガスの物理量をいうが、これらの要素に限定されるものではない。
そして、金属鋳物の鋳造方法がダイカストの場合において、前記充填解析ステップは、プランジャ直前部の該溶融材料充填要素の平均圧力が所定圧力を超えた時もしくは溶湯充填率が所定充填率を超えた時に、溶湯の流入条件を溶湯速度条件から溶湯圧力条件に切り替えるステップとすることが好ましい。
本発明によれば、溶湯が充填されていない要素(ガス巣)の位置を正確に予測することが可能となる。これは、溶湯の流入条件が溶湯速度条件一定のままでは、ガス巣は消滅してしまうが、溶湯の流入条件を溶湯速度条件から溶湯圧力条件に切り替えることによって、所定圧力以上のガス巣の消滅はなくなるからである。
また、金属鋳物の鋳造方法がダイカストの場合において、前記所定圧力は、前記プランジャ直前部の前記溶融材料充填要素の圧力変化から算出することができる。溶湯の充填がほぼ完了する時期からは、プランジャ直前部の溶湯圧力が急激に増加するからである。
なお、金属鋳物の鋳造方法がダイカストの場合において、前記所定充填率を特定の充填率以上とすることができる。溶湯充填率からも溶湯の充填が完了する時期が分かるからである。
〔本発明の他形態〕
本発明は、上述した「方法」の発明に限られず、「物」の発明としても把握できる。すなわち、本発明は、前述の鋳巣解析方法を、コンピュータを機能させて実行することを特徴とする鋳巣解析プログラムでもよい。
また、プログラムが「物」として把握されない場合であれば、そのプログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体として把握することができる。さらには、そのプログラムを実行する鋳巣解析装置としても把握できる。これらの場合、本発明でいう「ステップ」もしくは「工程」を「手段」に読み替えればよい。すなわち、要素作成ステップを要素作成手段に、要素定義ステップを要素定義手段に、前処理工程を前処理手段に、充填解析ステップを充填解析手段に、凝固解析ステップを凝固解析手段に、凝固収縮解析ステップを凝固収縮解析手段に、解析工程を解析手段にそれぞれ置換して考えればよい。
溶湯の充填解析を行い、その結果得られたガスの情報も考慮して凝固解析に利用することができるため、実際の鋳造過程に近い鋳巣解析を行うことが可能となる。
さらに、溶湯の充填がほぼ完了する時期からは、溶湯の流入条件を溶湯速度条件から溶湯圧力条件に切り替えることによって、ガス巣の位置を正確に予測することが可能となる。
〔金属鋳物の鋳巣解析方法〕
本鋳巣解析方法は、前処理工程と解析工程とその他必要に応じた工程とを有する。前処理工程は要素作成ステップと要素定義ステップとをもち、型のモデルデータを作成して、型内へ充填する溶融材料について充填解析、凝固解析及び凝固収縮解析を行う準備をする工程である。解析工程は作成された型のモデルデータに対して、充填解析ステップと凝固解析ステップおよび凝固収縮解析ステップとを行う工程である。本鋳巣解析方法は、ダイカスト等の鋳造、射出成型等に適用して鋳巣の解析を行うことができ、本鋳巣解析方法が適用される型は溶融した材料の成型に用いるものであればよい。
なお、鋳造方法がダイカストの場合は、その溶融材料を導入するゲートをもつ。ゲートは溶融材料を型内に導入する部分であれば名称、形状は問わない。ゲートの数は特に限定しない。
(前処理工程)
〈要素作成ステップ〉
要素作成ステップは、本成型シミュレーション方法の対象である型を座標系上に位置づけ、その座標系上の空間を多面体からなる複数の微小要素に分割するステップである。すなわち、座標系上の空間を解析用の微小要素に細分化するステップである。
座標系は、適当なものを選択することが可能である。この座標系上の空間には必要に応じた大きさで微小要素が形成される。微小要素に分割する方法としては有限差分法で採用されるような直交6面体の微小要素で分割する方法、有限要素法のように要素の形状を鋳造型のモデルデータに応じて比較的自由に変更できる方法等がある。有限差分法は微小要素への分割が容易であり、且つ解析が数学的に簡潔であるという利点がある。
なお、座標系空間のすべてに微小要素を規定する必要はなく、必要な部分(溶融材料が注入されるキャビティ領域とその周りに接する型領域等のように後述する解析工程で必要な部分)を最小限含むような範囲で規定すれば充分である。
そして作成する微小要素の大きさはできるだけ小さい方が解析の精度が向上できるが、より多くの解析時間が必要となる。したがって、微小要素の大きさは要求される精度やシミュレーションの原理的な制約、解析時間等から適正に決定できる。なお、微小要素の大きさはすべての部分について同じ大きさとする必要はなく、解析部位によって大きさを変更することができる。たとえば、成型品の肉厚が薄い部分では、局所的に微小要素の大きさを小さく設定し、解析精度を向上することが好ましい。
ところで、型を座標系上に位置づけるためには、型の形状がCADデータ型式等の数値データに変換されている必要がある。型の形状を数値データに変換する方法としては、特に限定されず、たとえば、最初から型の形状をCADにより設計したり、試作品の形状を3次元スキャナ等の何らかの方法で数値化しても良い。ここでCADにより型の数値データを作成した場合には、CAD等により作成された型のデータを読み込み、型の外形データを抽出する必要がある。その方法については公知の方法が使用できる。また、本方法においてCADデータをそのまま使用できるようにしても良い。なお、本ステップにおいて、型に代えて成型される成型品を座標系上に位置づけることもできる。鋳造方法がダイカストの場合は、型とした場合に必要なゲートの位置についてのデータを付与する。
〈要素定義ステップ〉
要素定義ステップは、前述の要素作成ステップにおいて規定された微小要素のそれぞれについて、型の型領域に位置する場合には型要素と定義し、型のキャビティ領域に位置する場合にはキャビティ要素と定義するステップである。すなわち、後述の解析工程用に各微小要素の属性を定義し、座標系上に型の形状を微小要素により構築するステップである。
なお、本ステップは、前述の要素作成ステップにおいて微小要素が規定された後に行われるステップであるが、すべての微小要素が規定された後に行う必要は必ずしもなく1以上の微小要素が規定される毎に本ステップを行い、その後に要素作成ステップを再度行うことを繰り返すこともできる。
ここで、型の「型領域」とは型自身を形成する領域であって、溶融材料が流れない部分であり、型の「キャビティ領域」とは溶融材料が流れ最終的に成型品が形成される部分である領域をそれぞれ意味する。
具体的に各微小要素を型要素とキャビティ要素とに定義する方法としては特に限定されず、公知の方法が採用可能である。以下に図を参照しながら一例を説明する。図1には、型の形状及び微小要素の一部を拡大して示す。また、図は記載及び説明の便宜上2次元上にて型及び微小要素を示し、以下の説明も2次元の図に基づいて行うが、その本質は3次元のものと異なるところはない。
図1に示すように、座標として直交座標を採用し、その座標系上に正方形の微小要素20(形状は特に正方形に限定されるものではない。また、3次元上に適用する場合には直方体・立方体その他任意形状の多面体が要素の形として例示できる。以下同じ。)が規則的に規定されている。また、座標上には、型モデルデータの境界線が位置づけられている。
図1において、各微小要素20それぞれの重心21の位置が、型の型領域(斜線部分)に存在する場合にはその微小要素20を型要素(以下「M要素」という。)と定義し、キャビティ領域に存在する場合にはその微小要素をキャビティ要素(以下「C要素」という。)と定義する。各微小要素20をM要素及びC要素に定義した状態を図2に示す。図2では型領域に存在する重心21を白丸で、キャビティ領域に存在する重心21を黒丸で表す。なお、型領域及びキャビティ領域のいずれにも該当しない微小要素20の扱いは特に限定しないが、計算上の負荷とならないように規定することが好ましい。
(解析工程)
解析工程は充填解析ステップと凝固解析ステップと凝固収縮解析ステップとをもち、これらの工程はそれぞれの適正な微小時間間隔で、それぞれ目的の解析を行う。そして、これらのステップは、充填解析ステップ、凝固解析ステップ、凝固収縮解析ステップの順に解析を行う。まず充填解析ステップで溶融材料が充填されていないキャビティ要素(ガス巣要素)を算出する必要があるからである。
また、これらのステップを行う微小時間間隔はすべて同じ間隔を採用することもできるし、異なる間隔を採用することもできる。
〈充填解析ステップ〉
充填解析ステップは、C要素のそれぞれについて、溶融材料の充填解析を経時的に行うステップである。すなわち、型内における注入された溶融材料の物理的挙動を解析するステップであり、微小要素毎に微小時間毎の溶融材料の物理的挙動を解析する。溶融材料が充填された微小要素は溶融材料充填要素として扱う。
基本的な溶湯の充填解析の方法については、特に限定されるものではない。例えば、VOF(Volume of Fluid)、SOLA、FAN及びそれらの改良された方法等の公知技術・慣用技術等を適用することができる。
そして、鋳造方法がダイカストの場合は、プランジャ直前部の溶融材料充填要素の平均圧力が所定圧力を超えた時もしくは溶湯充填率が所定充填率を超えた時に、溶湯の流入条件を溶湯速度条件から溶湯圧力条件に切り替えることが好ましい。
一般の流れ解析では、C要素の所定充填率以下(0.5ないし0.1)の気泡は消滅させ、溶湯として取り扱う。そのため、溶湯の充填完了後の鋳造圧付加により高圧力がかかった時に、気泡を消滅させ、溶湯として取り扱われるのを防ぐ必要があるからである。
ここで、所定圧力とは、複雑形状のキャビティ内に溶湯を充填させるために必要な圧力であり、プランジャ直前部の溶融材料充填要素の圧力平均値が急激に増加するときの圧力である。
また、所定充填率とは、溶湯が大きく移動して溶湯を充填する過程から、溶湯の大きな移動がなくなり、溶湯が充填されていない残存部が圧縮される工程に変化するときの溶湯充填率をいう。
〈凝固解析ステップ〉
凝固解析ステップは、(i)溶融材料が充填されたC要素(溶融材料充填要素)と溶融材料が充填されずガス巣として残った要素(ガス巣要素)について伝熱解析を行い、溶融材料充填要素の温度を経時的に算出する伝熱解析ステップと、(ii)溶融材料充填要素の温度から算出される溶融材料充填要素の潜熱放出量に応じて、溶融材料充填要素内の溶融材料の固相率を経時的に算出する固相率算出ステップとをもつ。なお、本凝固解析ステップでは、溶融材料充填要素の温度から溶融材料の固相率を算出しているが、熱伝導率などの熱特性から溶融材料の固相率を求めてもよい。
(i)伝熱解析ステップは、溶融材料充填要素とガス巣要素のそれぞれの要素間での伝熱解析のほか、鋳造型最表面に位置する型要素(すなわちC要素に接するM要素)とそれに接する溶融材料充填要素またはガス巣要素のそれぞれの要素間で経時的に伝熱解析を行う。伝熱解析ステップでは計算が発散せず且つ許容時間内で計算が終了するように設定された微小時間間隔で各要素間の伝熱を各モデルに設定された伝熱係数に基づいて計算する。伝熱解析ステップで行う解析方法は特に限定されるものではないが、例えば、熱移流、潜熱を考慮した非定常熱伝導解析に差分法とADI法とを併用する等の計算方法を用いてそれぞれの要素について熱の伝導を計算することができる。
(ii)固相率算出ステップは、伝熱解析ステップで算出された溶融材料充填要素の温度から算出される潜熱放出量に応じて、溶融材料充填要素に充填された溶融材料の固相率を算出する。固相率の算出は状態図等により求めたり、シャイルの式等の理論式又は近似式により算出することが可能である。ここで、固相率に変えて、固相率と関連のあるパラメータである液相率や温度等を用いて計算を行ってもよい。液相率は100%から固相率を減じた値である。固相率に関連するパラメータとして温度を用いる場合には、すべて液相になる温度以上及びすべて固相になる温度以下はそれぞれ同一に扱う。
〈凝固収縮解析ステップ〉
凝固収縮解析ステップは(i)閉領域検出ステップと(ii)凝固収縮検出ステップとをもつ。
(i)閉領域検出ステップは、固相率が100%未満であるそれぞれの溶融材料充填要素(以下、「含液相要素」と称する)について、含液相要素以外の微小要素(以下、「非液相要素」と称する、例えば、型要素や、固相率が100%である溶融材料充填要素、又は溶融材料が充填されていないC要素である)によって囲繞される閉領域を経時的に検出するステップである。つまり、含液相要素に対して新たに溶融した溶融材料を補給できない場合にその領域を閉領域とする。閉領域内では溶融材料の移動が可能であるので、その領域内で発生した凝固収縮はその領域内のいずれかの部位にひけ巣を発生させる。
本ステップで非液相要素で完全に囲繞された含液相要素を検出する方法を例示すると、すべての含液相要素について、その含液相要素を起点に周りの微小要素を非液相要素に到達するまで順次探索していき探索が終了したときにその領域を閉領域とする。
さらに解析時間の経過に伴い、閉領域の一部が凝固してその閉領域を分割することで、一度検出された閉領域が新たに2以上に分割されることもあり得る。閉領域が分割された後にもその閉領域内で継続して解析を行う。
(ii)凝固収縮検出ステップは、閉領域の発生後に、その閉領域内で発生する凝固収縮をその閉領域内の溶融材料充填要素のうち固相率が低い要素に経時的に対応づけるステップである。閉領域は閉領域検出ステップにより検出されると、以後、微小時間毎に凝固収縮の量が検出される。凝固収縮の量は公知の方法により算出できる。例えば、(凝固収縮の体積)=(液相の体積低減量)×(凝固収縮係数)+(液相温度低下)×(液相収縮係数)で表される。凝固収縮は閉領域内のすべての溶融材料充填要素について体積の変動を算出することで検出できる。凝固解析ステップにより固相率が100%となった溶融材料充填要素についても直前の解析までは固相率が100%未満であった場合には体積変動を計算して凝固収縮の計算に含める。凝固収縮のほか、液相状態及び固相状態の溶融材料について熱収縮に関する固相収縮係数から算出される体積変化を考慮することができる。例えば、(固相温度低下)×(固相収縮係数)で計算される固相部分の収縮も加えることもできる。
算出された凝固収縮はその閉領域内の固相率の低い微小要素に対応づけられる。ここで「凝固収縮を微小要素に対応づける」とは、対応づける微小要素に対する溶融材料の充填率が、発生した凝固収縮の体積に相当するだけ減少することを意味する。言い換えれば、他の微小要素で発生した凝固収縮を対応づける微小要素から溶湯を補給している。
ここで、固相率の低い微小要素とは実際に一番固相率が低い微小要素を選択できる。固相率の大きさは段階的に評価して、固相率が一定範囲内に収まる微小要素毎について同一の固相率であるとして扱うこともできる。固相率の段階の決定は固定ではなく、解析中に変動させてもよい。
凝固収縮を対応づける方法としては、固相率が低い順に対応づける方法がある。この場合には、固相率が同じ微小要素に対して均等に凝固収縮を対応づける方法のほか、重力を考慮して重力に対して上方から順に凝固収縮を対応づける方法がある。溶融材料の凝固時間が比較的長い鋳造においては重力の影響を考えることでより正確なひけ巣欠陥の位置を予測できる。
重力の影響を考慮して、より正確なひけ巣欠陥の発生位置を特定する方法としては凝固収縮が対応づけられた微小要素が完全に凝固するまでの時間とひけ巣欠陥の移動距離との関係を関数として予め決定する方法がある。決定した関数に基づいて、各微小要素に対応づけられた凝固収縮の移動距離を算出することにより、ひけ巣欠陥の発生位置を予測する。その場合に完全に凝固した微小要素には発生したひけ巣欠陥は移動できないので、最終的なひけ巣欠陥の発生位置はひけ巣欠陥の移動距離内の部位のうち固相率が100%未満の部位に限定される。
各微小要素に対応づけられた凝固収縮の量が、その微小要素の体積以上となる場合には、閉領域内においてその微小要素を除いた微小要素について固相率を考慮して(固相率の低い微小要素を選択する)残りの凝固収縮を対応づける。前述したように、閉領域は分割されることがある。閉領域が分割された場合には、閉領域の分割後にそれぞれの内部で発生した凝固収縮をそれぞれの内部で固相率を考慮して対応づけることでより正確にひけ巣欠陥の発生を予測できる。
(その他の工程)
本シミュレーション方法はその他に、種々の工程を含ませることができる。例えばその他の欠陥予測解析(湯回り及び湯境予測等)、DCスリーブ内流動解析、中子ガス発生解析、残留応力解析等を行う工程を含ませることができる。
これらの解析を併せて行うことにより、全体として、めざし、型温分布、湯境、湯しわ、ブリスター、残留歪、割れ、耐久強度(静的、疲労、衝撃)、特性予測等を精度及び効率よく行うことができる。
さらに、本実施形態の方法に含ませることができるその他の工程としては、解析結果を出力する工程や解析結果を表示する工程が例示できる。
解析結果を出力する工程としては、たとえば、独自形式乃至は他の汎用CAD等にて読み込み可能なファイル形式で出力・保存したり、前述の解析結果を出力する工程に出力することができるものである。
解析結果を表示する工程は、本実施形態の鋳巣解析方法における解析結果を可視化する工程である。可視化することにより解析結果の把握がより容易となる。
解析結果を出力(可視化)する場合には解析工程で解析した鋳巣の解析結果(鋳巣欠陥の体積、位置等の情報)を併せて出力(可視化)することが好ましい。
〔金属鋳物の鋳巣解析プログラム〕
以下に本発明の鋳巣解析プログラムについて、実施形態に基づいて説明する。本実施形態の鋳巣解析プログラムは、前処理手段と解析手段とを有する。また、本実施形態の鋳巣解析プログラムは、必要に応じて、その他の手段を含むことができる。本実施形態の各手段はすべてコンピュータ上のロジックとして実現可能としたものであり、コンピュータ上で実行可能な形式で作成されている。また、本プログラムはCD−ROM等の記録媒体上に記録されていても良い。
前処理手段は要素作成手段と要素定義手段とをもち、型内の溶融材料の充填解析及び凝固解析、凝固収縮解析の準備を行う手段である。解析手段は充填解析手段と凝固解析手段と凝固収縮解析手段とをもつ。
(前処理手段)
〈要素作成手段〉
要素作成手段は、本鋳巣解析手段の解析対象である型を座標系上に位置づけ、その座標系上の空間を多面体からなる複数の微小要素に分割する手段である。すなわち、座標系上の空間を解析用の微小要素に細分化する手段である。なお、本手段についての説明は、前述の鋳巣解析方法における要素作成ステップにおけるものとほぼ同様であるので先の説明をもって本手段の説明に代える。
〈要素定義手段〉
要素定義手段は、前述の要素作成手段において規定された微小要素のそれぞれについて、型の型領域に位置する場合には型要素と定義し、型のキャビティ領域に位置する場合にはキャビティ要素と定義する手段である。すなわち、後述の解析手段用に各微小要素の属性を定義し、座標系上に型の形状を微小要素により構築する。なお、本手段についての説明は、前述の鋳巣解析方法における要素定義ステップにおけるものとほぼ同様であるので先の説明をもって本手段の説明に代える。
(解析手段)
〈充填解析手段〉
充填解析手段は、C要素のそれぞれについて、溶融材料の充填解析を行う手段である。すなわち、型内における注入された溶融材料の物理的挙動を解析する手段であり、微小要素毎に微小時間毎の溶融材料の物理的挙動を解析する。なお、本手段についての説明は、前述の鋳巣解析方法における充填解析ステップにおけるものとほぼ同様であるので先の説明をもって本手段の説明に代える。
〈凝固解析手段〉
凝固解析手段は、溶融材料が充填されたC要素(溶融材料充填要素)と溶融材料が充填されずガス巣として残った要素(ガス巣要素)について伝熱解析を行い、温度を経時的に算出する伝熱解析手段と、溶融材料充填要素の温度から算出される溶融材料充填要素の潜熱放出量に応じて、溶融材料充填要素内の溶融材料の固相率を経時的に算出する固相率算出手段とをもつ。なお、本手段についての説明は、前述の鋳巣解析方法における凝固解析ステップにおけるものとほぼ同様であるので先の説明をもって本手段の説明に代える。
〈凝固収縮解析手段〉
凝固収縮解析手段は閉領域検出手段と凝固収縮検出手段とをもつ。閉領域検出手段は、含液相要素について、非液相要素によって囲繞された閉領域を経時的に検出する手段である。凝固収縮検出手段は、閉領域の発生後に、その閉領域内の溶融材料充填要素のうち固相率が低い要素にその閉領域内で発生する凝固収縮を経時的に対応づける手段である。なお、本手段についての説明は、前述の鋳巣解析方法における凝固収縮解析ステップにおけるものとほぼ同様であるので先の説明をもって本手段の説明に代える。
(その他の手段)
本実施形態の装置に含ませることができるその他の手段としては、前述した鋳巣解析方法で説明したように、解析結果を出力する手段や解析結果を表示する手段が例示できる。なお、これらの手段についての説明は、前述の鋳巣解析方法におけるものとほぼ同様であるので先の説明をもってこれらの手段の説明に代える。
実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
(実施例1)
本実施例は、鋳造方法がダイカストの場合において、溶湯充填中に巻き込まれたガスによるガス巣の挙動を把握することを目的に、試験鋳物を製作してガス巣の挙動を確認する。
〈金型〉
図3に示す形状のキャビティを有する試験用の金型を用意した。この鋳物部の形状が本発明でいうキャビティ形状(領域)に相当する。各部のサイズは次のとおりである。
製品部 :120×50×5(mm)
ゲート :幅30×厚さ5(mm)
ランナ :15×10×200(mm)
ビスケット:φ60×20(mm)
〈ダイカスト鋳物の製造〉
現物であるダイカスト鋳物を、上記の金型を用いて135tonのダイカスト機を用いて製造した。このとき、金型のキャビティへ金属溶湯を加圧充填するプランジャは、サイズがφ60×20(mm)のものを用いた。キャビティ内のガスは、大気圧開放とした。
〈観察結果〉
上部の1本ゲートから溶湯をキャビティ内に射出したときの、ガス巻き込み状態を観察した。
その結果、溶湯の充填がほぼ完了する時期(充填率85%)には図4(a)に示す丸印で示した位置に大きなガス巻き込みが観察され、鋳物のX線透過試験により、ほぼ同じ位置に巣が発生していることが確認された。
一方、溶湯充填中期(充填率50%)には図4(b)に示す丸印で示した位置に大きなガス巻き込みが観察され、充填率85%時と発生位置が異なっていることが分かる。
充填率を変えて観察した結果、溶湯充填初期の段階では取り込まれた空気は溶湯の流れとともに移動するが、充填後期になるとほとんど移動しなくなり、その位置で圧縮される現象が確認された。
(実施例2)
実施例1のダイカスト鋳物を対象にして鋳巣解析を行った。まず、本実施例の鋳巣解析方法について説明し、その後に鋳巣解析結果について説明する。
〈鋳巣解析方法〉
本鋳巣解析方法では型としての鋳造型をCADで作成し、その鋳造型のモデルデータを用いて解析を行う。本鋳巣解析方法は、図5に示すように大きく分類すると、前処理工程S1と解析工程S2とからなる。
(1)前処理工程S1
座標系として直交座標系を採用した。鋳造型の型モデルデータはCADデータとして作成される(型モデルデータ作成S11)。
図3は型モデルデータ(成型品形状)を示した図である。まず、型モデルデータを座標系上に配置する。そして、座標系をそれぞれの座標軸方向で微小要素に分割する(要素作成ステップS12)。この微小要素の重心位置が型モデルデータの鋳造型内に位置する要素をM要素、キャビティ内に位置する要素をC要素と定義する(要素定義ステップS13)。本鋳造型は図面左上に溶湯が注入されるゲートが配置されている。
(2)解析工程S2
解析工程S2は充填解析ステップS21と凝固解析ステップS22と凝固収縮解析ステップS23とをもつ。
(i)充填解析ステップS21ではC要素について溶湯の充填割合を所定時間間隔で順次計算していく。充填解析ステップS21は有限差分法のうちSOLA−VOF法と称される方法を用いて湯流れを解析する。
本充填解析ステップでは、充填解析の初期条件もしくは境界条件として、溶湯が充填されていないC要素(ガス巣要素)のガスの情報を用いる。本実施例では、ガスの情報は、大気圧時の空気密度、熱伝導率、比熱を使用した。
また、プランジャ直前部の溶融材料充填要素の平均圧力が所定圧力を超えた時もしくは溶湯充填率が所定充填率を超えた時に、溶湯の流入条件を溶湯速度条件から溶湯圧力条件に切り替える手法の一例を図6に示す。
解析開始前に入力した形状、材料条件、必要な圧力Pm0、最大加圧力Pm等のデータをもとに(S2101)、溶融材料充填要素の圧力、速度の流動演算を行う(S2102)。さらに、ガス巣要素の圧力を求め(S2103)、後述する凝固解析ステップより溶融材料充填要素の温度、固相率を求める(S2104)。その結果、溶融材料充填要素の固相率が溶湯の流動限界を超えている場合(S2105)は、解析対象から除外する(S2106)。
そして、プランジャ直前部の溶融材料充填要素の圧力平均Pfを求め(S2107)、溶融材料充填要素の圧力平均Pfが必要な圧力Pm0を超えている場合もしくは溶湯充填率が所定充填率(例えば85%)を超えている場合(S2108)は、溶湯の流入条件を溶湯速度条件から溶湯圧力条件に変更する(S2109)。
溶湯充填時間が充填完了時間を超えるまで(S2110)、解析のタイムステップを進め(S2111)、上記演算を繰り返す。
ここで、必要な圧力Pm0は、複雑形状のキャビティ内に溶湯を充填させるために必要な圧力であり、プランジャ直前部の溶融材料充填要素の圧力平均値が急激に増加するときの圧力である。
(ii)凝固解析ステップS22では非定常熱伝導計算法により各微小要素の温度を解析する伝熱解析ステップと、算出された温度に基づき溶湯が充填された微小要素(以下、「充填要素」と称する)について固相率を算出する固相率算出ステップとをもつ。固相率は各充填要素の温度をシャイルの式にあてはめて算出する。
(iii)凝固収縮解析ステップS23はゲートから溶湯の供給がなされない領域を検出する閉領域検出ステップと、閉領域内で発生した凝固収縮を適正に対応づける凝固収縮検出ステップとをもつ。
閉領域検出ステップは固相率が100%未満であるそれぞれの溶融材料充填要素(含液相要素)について、含液相要素以外の微小要素(非液相要素)によって囲繞された閉領域を経時的に検出するステップである。
閉領域検出ステップは、図7に示すように、閉領域内から任意に含液相要素を選出する(S231)。そして、選出された含液相要素を起点として隣接する微小要素を順次探索する。
次に、選出された含液相要素について識別可能な識別符号を付す(S232)。その識別符号を付した含液相要素について隣接する微小要素を検出していき(S233)、隣接する微小要素がさらに含液相要素である場合には(S236)、その隣接する含液相要素にも先の含液相要素と同じ識別符号を付す(S237)。その結果、最終的に同一の符号を付している含液相要素は連続した含液相要素の領域を表すこととなる。
隣接する微小要素をすべて探索してそれ以上含液相要素が存在しない場合には、その他に、識別符号を付していない含液相要素が存在するか否かを探索し(S234)、識別符号を付していない含液相要素が存在する場合にはその中から新たに含液相要素を選出して(S231)、その含液相要素について別の識別符号を付して(S232)、以下同様に隣接する微小要素を探索する工程を繰り返し行う。
すべての含液相要素について探索を終了したときに(S234)、同一識別符号が付された含液相要素からなる領域は閉領域であると判断する(S235)。
閉領域検出ステップは微小時間間隔毎に閉領域を検出する。解析が進行する結果、同一の識別符号が付された微小要素の一部が解析の途中で固化することで、1つの閉領域が2以上に分割されることもある。
凝固収縮検出ステップは直前に検出された閉領域と現在の閉領域とを対比して、閉領域内に含まれる溶融材料の体積変動を求め、その体積変動の大きさを閉領域内の固相率が低い溶融材料充填要素に対応づける。
固相率の大きさは段階的に設定されており、同一段階に含まれる固相率をもつ溶融材料充填要素はすべて同じ固相率であるとみなして解析を行う。閉領域内に含まれる溶融材料充填要素のうち、一番低い固相率をもつ溶融材料充填要素に均等に凝固収縮の量を割り当てる。凝固収縮の量は各溶融材料充填要素についてそれぞれ加算していく。一番低い固相率をもつ溶融材料充填要素に凝固収縮を割り当てるとその溶融材料充填要素の体積を超過する場合には、超過した凝固収縮についてはその溶融材料充填要素を除外して対応付けを行う。更に解析が進行して一番低い固相率をもつ溶融材料充填要素がすべてそれ以上凝固収縮が割り当てられない場合には次に固相率の小さい溶融材料充填要素に対して均等に凝固収縮の量を割り当てる。この作業をすべての溶融材料充填要素が完全に凝固するまで行う。
微小時間間隔毎に充填解析ステップS21、凝固解析ステップS22及び凝固収縮解析ステップS23を行いすべての溶融材料充填要素が凝固するまで解析を続行する。
(3)解析結果表示工程(図略)
最終的に充填解析ステップS21及び凝固解析ステップS22が終了した後に、解析結果を可視化する。キャビティ領域内への溶湯の充填の様子を可視化することの他に、最終的に製造される成型品についてひけ巣欠陥の予測位置を表示する。ひけ巣欠陥は、凝固収縮の体積の情報が対応づけられた微小要素に発生するものと予測する。凝固収縮の体積の情報が対応づけられた結果、その微小要素の空隙率((対応づけられた凝固収縮の体積)/(その微小要素の体積)×100(%))が90%以上のものをひけ巣欠陥として表示する。この空隙率の値は適正に変動できる。ひけ巣欠陥の大きさとしては、対応づけられた凝固収縮の体積の大きさの和をもって予測する。
〈鋳巣解析結果〉
(1)プランジャ直前部の溶湯圧力変化
溶湯の流入速度を3m/sで固定し、充填が完了するまで(充填率が99%以上になるまで)充填解析を行った際のプランジャ直前部の溶湯圧力変化を確認した。
図8にプランジャ直前部の溶湯圧力変化を示す。溶湯充填中におけるプランジャ直前部の溶湯圧力は約2MPaで一定である。しかし、溶湯がほぼ充填完了近くなると急激に圧力が増加している。
なお、このプランジャ直前部の溶湯圧力の変化は射出開始から0.1841秒以降において大きくなり、このときのキャビティへの充填率は85%であった。
(2)鋳巣解析結果
まず、溶湯の流入条件を溶湯速度条件で固定して鋳巣解析を行った(比較例)。
具体的には、溶湯の流入速度は3m/sとした。また、ガス巣要素の圧力は大気圧として、充填解析の初期条件もしくは境界条件に使用した。
解析の結果、溶湯がほぼ充填完了となる0.1841秒時にみられたガス巣が、プランジャ直前部の溶融材料充填要素の平均圧力が急激に増加した状態である0.1875秒時には、ガス巣はみられなくなった。これは、充填率0.1以下の気泡は消滅させ、溶湯として取り扱ったことによると考えられる。
次に、溶湯の充填がほぼ完了する時期に、溶湯の流入条件を溶湯速度条件から溶湯圧力条件に切り替えて鋳巣解析を行った(本発明)。
具体的には、溶湯充填中は、溶湯流入速度3m/sで固定し、溶湯がほぼ充填完了となる0.1841秒より溶湯流入条件を2MPaの圧力条件に切り替えた。また、比較例と同様に、ガス巣要素の圧力は大気圧として、充填解析の初期条件もしくは境界条件に使用した。
解析の結果、溶湯がほぼ充填完了となる0.1841秒時にみられたガス巣は、プランジャ直前部の溶融材料充填要素の平均圧力が急激に増加した状態である0.1875秒時においても残存していた。また、ガス巣の形態、位置の移動がないことも確認された。
以上より、溶湯の充填がほぼ完了する時期に、溶湯の流入条件を溶湯速度条件から溶湯圧力条件に切り替えることによって、ガス巣の位置を正確に予測することが可能となったといえる。
なお、本解析は、プランジャ部から3m/s一定の速度で溶湯を流入し、途中で圧力条件に切り替えたが、スリーブとプランジャを作成し、プランジャを移動させることにより溶湯を流入させてもよい。
(実施例3)
図9に示す形状の成型品について、実際の鋳物に発生したひけ巣と解析により予測されたひけ巣を比較した。図9は成型品にハッチングを付した面で切断した断面図であり、ゲートGから溶湯が充填される。図10(a)は、成型品に実際に発生したひけ巣を示したものである。ハッチングを付して囲まれた部分にひけ巣がみられる。
一方、同一形状の成型品について、本発明の鋳巣解析を行った結果を同図(b)に示す。ハッチングを付して囲まれた部分が予測されたひけ巣である。なお、実施例2と同様に、溶湯の充填がほぼ完了する時期に溶湯の流入条件を溶湯速度条件から溶湯圧力条件に切り替えて充填解析を行い、ガス巣要素の圧力は大気圧として、充填解析の初期条件もしくは境界条件に使用した。
実際の鋳物に発生したひけ巣欠陥の部位(図10(a))と、解析により予測されたひけ巣欠陥の発生部位(同図(b))とを比較すると、ひけ巣欠陥の発生部位は、ほぼ一致しており、本発明の解析方法は、正確にひけ巣欠陥の位置・大きさを予測していることが分かる。
微小要素を定義する方法の一例を示した図である。 微小要素を定義する方法の一例を示した図である。 試験鋳物の概略図である。 試験鋳物の溶湯充填率85%におけるガス巣欠陥位置を示した図(同図(a))と、溶湯充填率50%におけるガス巣欠陥位置を示した図(同図(b))である。 鋳巣解析方法のフローチャートである。 鋳巣解析方法の充填解析ステップのフローチャートである。 鋳巣解析方法の閉領域検出ステップのフローチャートである。 プランジャ直前部の溶湯圧力変化を示した図である。 成型品の概略断面図である。 成型品の鋳巣の発生状況(同図(a))と鋳巣の解析結果(同図(b))を示した図である。
符号の説明
D…型モデルデータ
C…キャビティ要素(C要素)
M…型要素(M要素)
G…ゲート

Claims (5)

  1. 溶融材料の成型に用いる型の形状を座標系上に位置づけ、該座標系の空間を複数の微小要素に分割する要素作成ステップと、
    該微小要素のそれぞれについて、該型の型領域に位置する型要素と該型のキャビティ領域に位置するキャビティ要素とを定義する要素定義ステップと、
    をもつ前処理工程と、
    該キャビティ要素について、該溶融材料の充填領域を経時的に解析する充填解析ステップと、
    該溶融材料が充填されていない該キャビティ要素をガス巣要素と位置付け、該ガス巣要素に該充填解析ステップで得られた圧力および温度条件を与え、該溶融材料が充填された該キャビティ要素である溶融材料充填要素と該ガス巣要素のそれぞれの要素間の伝熱および鋳造型最表面に位置する該型要素とそれに接する該溶融材料充填要素または該ガス巣要素のそれぞれの要素間の伝熱を経時的に解析して、該溶融材料充填要素の温度を経時的に算出する伝熱解析ステップと
    該溶融材料充填要素の該温度から算出される該溶融材料充填要素の潜熱放出量に応じて、該溶融材料の固相率を算出する固相率算出ステップとをもつ凝固解析ステップと、
    該溶融材料充填要素の該固相率から該溶融材料の凝固収縮を解析する凝固収縮解析ステップと、
    をもつ解析工程と、
    を有することを特徴とする金属鋳物の鋳巣解析方法。
  2. 金属鋳物の鋳造方法がダイカストの場合において、前記充填解析ステップは、プランジャ直前部の該溶融材料充填要素の平均圧力が所定圧力を超えた時もしくは溶湯充填率が所定充填率を超えた時に、溶湯の流入条件を溶湯速度条件から溶湯圧力条件に切り替えるステップである請求項1に記載のダイカスト鋳造鋳物の鋳巣解析方法。
  3. 金属鋳物の鋳造方法がダイカストの場合において、前記所定圧力は、前記プランジャ直前部の前記溶融材料充填要素の圧力変化から算出することを特徴とする請求項2に記載のダイカスト鋳造鋳物の鋳巣解析方法。
  4. 金属鋳物の鋳造方法がダイカストの場合において、前記所定充填率を特定の充填率以上とすることを特徴とする請求項2に記載のダイカスト鋳造鋳物の鋳巣解析方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載の鋳巣解析方法を、コンピュータを機能させて実行することを特徴とする鋳巣解析プログラム。
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