JP4373353B2 - ダイカストシミュレーション方法、その装置及びそのプログラム、並びに当該プログラムを記録した記録媒体 - Google Patents
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Description
ダイカストにより得られる鋳物における課題としては、ひけ巣欠陥、空気等の巻き込み欠陥、湯回り不良欠陥、表面欠陥等がある。このうち、特に大きな問題となる欠陥の1つとして表面欠陥がある。
これまでのダイカストシミュレーションは、溶融材料の流れ及び流れに伴う凝固の挙動について理解を深めることを目的としており、適正なダイカスト鋳造条件を探索する有用な手段として期待されている。
しかしながら、従来のダイカストシミュレーションにおける充填、凝固時の解析は、内部欠陥を予測することが主体となっており、表面欠陥の発生を子測する手法は未だ開発されていない。
上記溶融金属材料の成形に用いる上記鋳型の形状を座標系上に位置づけ、該座標系の空間を複数の微小要素に分割する要素作成ステップと、
上記微小要素のそれぞれについて、上記鋳型の型領域に位置する場合には型要素と、上記鋳型のキャビティ領域に位置する場合にはキャビティ要素と定義する要素定義ステップと、を含む前処理工程と、
上記キャビティ要素のそれぞれについて、上記溶融金属材料の充填状態を経時的に解析する充填領域解析を行うと共に、上記溶融金属材料が充填された上記キャビティ要素である溶融材料充填要素について、該溶融材料充填要素同士の間、及び該溶融材料充填要素と上記型要素との間の伝熱をそれぞれの熱伝達係数に基づいて経時的に解析して、上記溶融材料充填要素の温度を経時的に算出する充填伝熱解析ステップと、
算出された上記溶融材料充填要素の温度に応じて、該溶融材料充填要素内の上記溶融金属材料の固相率を経時的に算出する固相率算出ステップと、を含む充填伝熱解析工程と、
充填完了時における、上記型要素の内壁面から連続的に固相率1となる上記キャビティ要素の厚さである固体相厚さを算出する固体相厚さ算出ステップと、
該固体相厚さから表面欠陥の発生を予測する表面欠陥発生評価ステップと、を含む評価工程とを有することを特徴とするダイカストシミュレーション方法にある(請求項1)。
第3の発明は、上記第2の発明のダイカストシミュレーションプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体にある(請求項6)。
第4の発明は、上記第1の発明のダイカストシミュレーション方法を実行するよう構成されたコンピュータを有することを特徴とするダイカストシミュレーション装置にある(請求項7)。
前処理工程は(1)要素作成ステップと(2)要素定義ステップとを含み、鋳型のモデルデータを作成して、後述する充填伝熱解析工程を行う準備をする工程である。
(1)要素作成ステップ
要素作成ステップは、本ダイカストシミュレーション方法の対象である鋳型(型)を座標系上に位置づけ、その座標系上の空間を多面体からなる複数の微小要素に分割するステップである。すなわち、座標系上の空間を解析用の微小要素に細分化するステップである。
座標系は、任意のものを選択することが可能である。この座標系上の空間には必要に応じた大きさで微小要素が形成される。
また、鋳型の構造を充分に再現できるような微小要素の大きさを採用することが好ましい。従って、微小要素の大きさは要求される精度やシミュレーションの原理的な制約、解析時間等から適正に決定できる。なお、微小要素の大きさはすべての部分について同じ大きさとする必要はなく、解析部位によって大きさを変更することができる。例えば、ダイカスト品の肉薄な部分では、局所的に微小要素の大きさを小さく設定し、解析精度を向上することが好ましい。
要素定義ステップは、前述の要素作成ステップにおいて規定された微小要素のそれぞれについて、鋳型の型領域に位置する場合には型要素と定義し、鋳型のキャビティ領域に位置する場合にはキャビティ要素と定義してモデルデータとするステップである。すなわち、後述の充填伝熱解析工程用に各微小要素の属性を定義し、座標系上に型の形状を微小要素により構築するステップである。
なお、本ステップは、前述の要素作成ステップにおいて微小要素が規定された後に行われるステップであるが、すべての微小要素が規定された後に行う必要は必ずしもなく、1以上の微小要素が規定される毎に本ステップを行い、その後に要素作成ステップを再度行うことを繰り返すこともできる。
具体的に各微小要素を型要素とキャビティ要素とに定義する方法としては特に限定されず、公知の方法が採用可能である。以下に図1、図2を参照しながら一例を説明する。
図1に示すように、座標として直交座標を採用し、その座標系上に正方形の微小要素1(形状は特に正方形に限定されるものではない。また、3次元上に適用する場合には直方体・立方体その他任意形状の多面体が要素の形として例示できる。以下同じ。)が規則的に規定されている。また、座標上には、型のモデルデータの境界線Kが位置づけられている。
充填伝熱解析工程は、(1)充填伝熱解析ステップと(2)固相率算出ステップとを行う。
充填伝熱解析工程においては、基準となる時間を設定することが好ましい。つまり、解析の進行と共に、その基準となる時間を微少量ずつ進めていき、その基準となる時間に基づいて各ステップを適用することで、鋳型内の溶融材料の挙動を解析できる。従って、充填伝熱解析工程においては、実時間の進行に関わらず充填伝熱解析工程で設定された任意の時間経過に基づいて解析を行う。そして、各ステップは充填伝熱解析工程内に設定された時間経過に対して、常に同じ頻度で解析を行うことは必須ではない。例えば、これらのステップを行う時間間隔はすべて同じ間隔を採用することもできるし、異なる間隔を採用することもできる。
充填伝熱解析ステップでは、充填領域解析を行うと共に、溶融材料充填要素の温度を経時的に算出する。
まず、充填領域解析では、キャビティ要素のそれぞれについて、溶融金属材料の充填状態の解析を経時的に行う。すなわち、鋳型内における注入された溶融金属材料の物理的挙動を、微小要素毎に、かつ微小時間毎に解析する。そして、溶融金属材料が充填された微小要素は溶融材料充填要素として扱う。
基本的な溶湯の充填解析の方法については、特に限定されるものではない。例えば、VOF(Volume of Fluid)、SOLA、FAN及びそれらの改良された方法等の公知技術・慣用技術等を適用することができる。
伝熱の解析は、溶融材料充填要素同士の間でのほか、溶融材料充填要素と鋳造型最表面(すなわちキャビティ要素に接する型要素)との間で経時的に行い、各微小要素の温度を算出する。
固相率算出ステップは、充填伝熱解析ステップで算出された溶融材料充填要素の温度に基づいてその溶融材料充填要素に充填された溶融材料の固相率を算出する。固相率は、その溶融材料充填要素内の溶融金属材料のすべてが固化した状態を1、すべてが溶融状態にある場合を0として、その中間の状態は0〜1の間の数値で表す。固相率の算出は状態図等により求めたり、シャイルの式等の理論式又は近似式により算出することが可能である。ここで、上記固相率は、固相率そのものだけでなく、これに関連のあるパラメータを含む概念であり、固相率と関連のあるパラメータである液相率や温度等を用いて計算を行っても良い。液相率は1から固相率を減じた値である。固相率に関連するパラメータとして温度を用いる場合には、すべて液相になる温度以上及びすべて固相になる温度以下はそれぞれ同一に扱う。
評価工程では、(1)固体相厚さ算出ステップと、(2)表面欠陥発生評価ステップとを行う。
(1)固体相厚さ算出ステップ
固体相厚さ算出ステップは、充填完了時における、上記型要素の内壁面から連続的に固相率1となる上記キャビティ要素の厚さである固体相厚さを算出するステップである。固体相厚さは、上述したごとく、充填直後におけるキャビティ内の溶融金属材料表面に固化形成された表皮部分の厚さを示すものである。このステップは、充填完了直後に行う。
鋳型(型要素)の内壁面から固相率<1となる要素までの距離を求めることにより、固相率1となる固体相厚さを求めることができる。そして、内壁面から連続的に固相率1となる場合の最終要素に隣接する固相率<1となる要素の固体相厚さは、要素体積と固相率、隣接部の面積から求めることができる。
そして、前記の連続的に固相率1となる要素の厚さの和と、その最終要素に隣接する固相率<1となる要素内の固体相厚さの和が求める固体相厚さとなる。また、内壁面と隣接する要素が固相率<1のとき、固体相厚さはその要素体積と固相率、隣接部の面積により求まる値となる。
表面欠陥発生評価ステップは、求めた固体相厚さから表面欠陥の発生を予測するステップである。
具体的には、求めた固体相厚さが予め定めた基準厚さよりも厚いか否かを、各部分において行い、厚い部分に表面欠陥が発生すると予測することができる。また、この基準を定めるに当たっては、鋳造圧力等の実際の鋳造条件によって基準値を変えることにより、より精度の高い評価を行うことができる。
本発明の実施例に係るダイカストシミュレーション方法及びその装置につき、図3〜図5を用いて説明する。
本例のダイカストシミュレーション装置1は、図4に示すごとく、各解析ステップを実行する手段を備えたコンピュータ10を有する装置である。コンピュータ10には、キーボード、記憶媒体読み取り装置等の入力装置11と、ディスプレイ、プリンタ等の出力装置12が接続されている。
以下、これをさらに詳説する。
(1)前処理工程S100
座標系として直交座標系を採用した。鋳造型の形状はCADデータとして作成される。説明を簡略化するためにx、yで表す2次元での説明を図5に示す。以下に行う2次元での説明は単純にそのまま3次元に拡張可能である。
まず、CADデータを2次元の座標系上に配置する。そして、座標系をx、y軸方向で微小要素に分割する(要素作成ステップS101)。
充填伝熱解析工程S200では、充填領域解析を行うと共に溶融材料充填要素の温度を経時的に算出する充填伝熱解析ステップS201と、溶融材料充填要素内の上記溶融金属材料の固相率を経時的に算出する固相率算出ステップS202とを行う。各解析は、シミュレーション内の時間の進行に従って、それぞれに設定された微小時間間隔毎に行う。
評価工程S300では、まず固体相厚さ算出ステップS301を行う。このステップは、上記の充填伝熱解析工程S200の結果を踏まえ、キャビティへの溶融金属の充填が完了した直後に行う。
次いで、検出された要素の固相率fsが、0<fs<1の場合には、その要素をCs要素とし、その要素内における固体相厚さLcのみが、その部分での固体相厚さとなる。このときの算出式としては、固体相厚さLc=(要素体積×固相率)/(型要素と接した面の面積)を採用することができる。
次いで、上記準型要素に対して厚み方向に隣接するキャビティ要素の固相率が1の場合には、この要素も準型要素として、その固体相厚さLjは、Lj=(要素体積)/(上記の準型要素と接した面の面積)という算出式で算出する。以下、厚み方向に接する要素の固相率が1である限り、同様の算出式で各要素の厚さLjを算出する。
また、上記の準型要素に対して厚み方向に隣接するキャビティ要素が上述したCs要素である場合には、その固体相厚さLcを、Lc=(要素体積×固相率)/(上記の準型要素と接した面の面積)という算出式で算出する。
なお、固相率が0の要素の固体相厚さLは当然0である。
例えば、固体相厚さが0.4mmを越えた場合に、表面欠陥発生要素とする。なお、こ0.4mmという基準は、実際に行われる鋳造条件や溶融金属材料の材質等に応じて変更することも可能である。
いずれにしても、型要素に隣接するすべてのキャビティ要素について、その厚み方向の合計の固体相厚さLが基準値を超える場合には、そのキャビティ要素を特定して他と区別することにより、表面欠陥が発生する分布を、コンピュター上に表現することができる。具体的には、得られる鋳物(成形品)の画像に対し、表面欠陥が発生する部分を所定のマークで塗りつぶす等の手法で描画的に出力するすることができる。また、画像ではなく、座標データのみで出力することも可能である。
本例は、実施例1の方法を用いてシミュレーションを行った結果についての具体例を示す。
まず、本例では、上記シミュレーションの有効性を評価すべく、実際にダイカスト用鋳型を作製し、図6に示す形状の鋳物8を実際に作製し、表面欠陥を観察した。鋳物8は平板状であって、これには、溶湯の注入加圧部81及びランナ部82、ゲート部83がつながっている。
その結果を図8に示す。同図に示すごとく、シミュレーション結果の出力は、鋳物8の画像の表面に、表面欠陥が発生しうる部分5を示した。
図8と前述した図7との比較から知られるように、今回のシミュレーション結果は、図7(b)に示す鋳造圧力65MPaの場合とよく一致していることが分かる。一方、図7(a)の鋳造圧力30MPaの場合と比べると、若干表面欠陥が発生しうる部分5が少ない結果となった。
そのシミュレーション結果を図9に示す。同図は、図8の場合と同様に、鋳物8の画像の表面に表面欠陥が発生しうる部分5を示したものである。
図9と前述した図7との比較から知られるように、今回のシミュレーション結果は、図7(a)に示す鋳造圧力30MPaの場合とよく一致していることが分かる。
10 コンピュータ
21 要素作成ステップ実行手段
22 要素定義ステップ実行手段
23 充填伝熱解析ステップ実行手段
24 固相率算出ステップ実行手段
25 固相厚さ算出ステップと実行手段
26 表面欠陥発生評価ステップ実行手段
S100 前処理工程
S101 要素作成ステップ
S102 要素定義ステップ
S200 充填伝熱解析工程
S201 充填伝熱解析ステップ
S202 固相率算出ステップ
S300 評価工程
S301 固体厚さ算出ステップ
S302 表面欠陥発生評価ステップ
Claims (8)
- 鋳型内に溶融金属材料を加圧注入して凝固させることにより所望形状の鋳物を得るダイカストを行う際に、少なくとも上記鋳物に生じる表面欠陥の発生を予測するダイカストシミュレーション方法であって、
上記溶融金属材料の成形に用いる上記鋳型の形状を座標系上に位置づけ、該座標系の空間を複数の微小要素に分割する要素作成ステップと、
上記微小要素のそれぞれについて、上記鋳型の型領域に位置する場合には型要素と、上記鋳型のキャビティ領域に位置する場合にはキャビティ要素と定義する要素定義ステップと、を含む前処理工程と、
上記キャビティ要素のそれぞれについて、上記溶融金属材料の充填状態を経時的に解析する充填領域解析を行うと共に、上記溶融金属材料が充填された上記キャビティ要素である溶融材料充填要素について、該溶融材料充填要素同士の間、及び該溶融材料充填要素と上記型要素との間の伝熱をそれぞれの熱伝達係数に基づいて経時的に解析して、上記溶融材料充填要素の温度を経時的に算出する充填伝熱解析ステップと、
算出された上記溶融材料充填要素の温度に応じて、該溶融材料充填要素内の上記溶融金属材料の固相率を経時的に算出する固相率算出ステップと、を含む充填伝熱解析工程と、
充填完了時における、上記型要素の内壁面から連続的に固相率1となる上記キャビティ要素の厚さである固体相厚さを算出する固体相厚さ算出ステップと、
該固体相厚さから表面欠陥の発生を予測する表面欠陥発生評価ステップと、を含む評価工程とを有することを特徴とするダイカストシミュレーション方法。 - 請求項1において、上記表面欠陥発生評価ステップは、上記固体相厚さが0.4mm以上の場所に表面欠陥が発生すると予測することを特徴とするダイカストシミュレーション方法。
- 請求項1において、上記表面欠陥発生評価ステップは、上記固体相厚さが0.1×e0.0297×Pmm(ここで、Pは鋳造圧力(MPa))以上の場所に表面欠陥が発生すると予測することを特徴とするダイカストシミュレーション方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項において、解析対象となる上記溶融金属材料は、凝固時に表皮側から凝固相が形成される表皮生成型凝固を示す合金であることを特徴とするダイカストシミュレーション方法。
- 請求項4において、上記溶融金属材料は、Si含有量が8〜14mass%であるAl−Si系アルミニウム合金であることを特徴とするダイカストシミュレーション方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のダイカストシミュレーション方法をコンピュータに実行させるためのダイカストシミュレーションプログラム。
- 請求項6に記載のダイカストシミュレーションプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のダイカストシミュレーション方法を実行するよう構成されたコンピュータを有することを特徴とするダイカストシミュレーション装置。
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