JP4303252B2 - 鋳造方案評価装置 - Google Patents

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本発明は、鋳造における引け巣等の鋳造欠陥の発生を抑制するために、鋳物の凝固時間を鋳造シミュレーションによって予測し、そのシミュレーションの結果を利用して鋳造方案の良否を評価する鋳造方案評価装置に関する。
鋳造において、鋳造方案の良否が製品(鋳物)の鋳造欠陥を招く直接の原因となり得ることから、製品の形状に最適な鋳造方案を設計することが求められている。特に、溶融金属(溶湯)の凝固収縮により製品内部に生じる空隙部、すなわち引け巣欠陥が製品の品質上問題となるが、この凝固収縮の対策として、製品に接続された押湯により体積収縮部に溶湯を補充して引け巣の発生を防止する鋳造方案が採用されている。従来、鋳造方案の設計は、最終的な製品形状に基づいて作業者の経験や勘を頼りに行われており、押湯系の設計についても作業者の経験を基に、押湯量や、製品と押湯の接続部の形状などの方案設計を行っていた。なお、押湯は引け巣欠陥を防止するために設けられているものであり、鋳造後に製品から切り離されて不要となるため、押湯量は少ない方が好ましく、その点も考慮して設計がなされている。そして、鋳造方案設計後に鋳型を製作して少数の実鋳造(試験吹き)を行い、鋳造品に鋳造欠陥が発生していないことを確認した後に、量産体制に移行する。ここで、鋳造品に引け巣などの鋳造欠陥が発生した場合には、その鋳造欠陥の発生部位などを分析して鋳造方案を再度設計し直し、鋳型を修正した後に実鋳造を行い、鋳造品の鋳造欠陥の有無確認を行うこととなる。このような鋳造方案の設計方法によると、作業者の熟練や経験が要求される。しかし、熟練した作業者であっても、その作業者にとって新規で複雑な形状の製品を製造する場合には、その鋳造方案の設計が困難になり、いたずらに鋳造方案設計と実鋳造を繰り返す結果、鋳造方案設計の効率悪化を招いていた。
そこで、近年では鋳造方案の設計に当たり、CAE(Computer Aided Engineering)を利用した鋳造シミュレーションが幅広く行われている。鋳造シミュレーションにおいて、製品や押湯などで構成された鋳物の三次元設計モデル(以下、鋳物モデルという。)と溶湯や鋳型の物性値などの鋳造条件とを基にして、鋳造品の凝固時間を求める手法が一般的に用いられている。これにより、鋳型内で溶湯の凝固の進行状況をシミュレーションにより確認し、製品内部に引け巣欠陥が生じるか否かを予測することができる。
鋳造シミュレーションにより引け巣欠陥の発生を予測する具体的な手法の1つとして、閉ループ法が利用されている。この閉ループ法は、鋳物モデルの任意の切断面において、凝固時間が所定の範囲内である領域ごとに、識別可能なグラフィックスとしてディスプレイ等に表示させ、表示された上記領域ごとの境界線(凝固時間が同一である要素で構成される線)が閉ループを形成するか否かにより、引け巣欠陥の発生を予測する手法である。これは、製品内部のある部位の凝固が周囲より遅れる場合に溶湯補給が断たれ、凝固収縮による引け巣欠陥が発生するという考えに基づいている。例えば、図21は、円柱状の製品21’と円柱状の押湯22’が同じく円柱状の接続部23’を介して接続されている鋳物モデル20’について、製品21’の中心線を含む任意切断面における凝固時間のシミュレーション結果を表す。図21によると、閉ループが形成されており、閉ループの内側((a)のクロスハッチングで示された領域)は閉ループの外側よりも凝固が遅れるため、閉ループの内側に引け巣が生じると予測される。つまり、図21に示す形状は鋳造方案としては不適当であり、押湯量の増加や、製品と押湯の接続面の形状変更が必要となる。そして鋳造方案の変更後に、上述と同様のシミュレーションを行い、閉ループが形成されないようになるまで形状変更とシミュレーションを繰り返し行う。
このような鋳造シミュレーションを利用すると、実際の鋳型製作や実鋳造による検証作業を省略することができるとともに鋳造方案設計に要する時間を大幅に短縮することができるので、効率的である。その一方で、例えば上述の閉ループ法において、任意切断面の選択は設計者の経験に委ねられている。つまり、通常は製品形状よりあらかじめ引け巣欠陥が生じ易い部位を予測し、その部位を含むように任意切断面が選択されるが、製品の形状が複雑になるとこの任意切断面の選択が困難になる。そして任意切断面の選択を誤ると、実際には製品内部に引け巣欠陥が生じると予測される部位が含まれているにもかかわらず、選択された任意切断面におけるシミュレーションの結果が良好であることにより、当該鋳造方案は適正であるとの誤判定を招くことにもなる。任意切断面の選択数を増やして誤判定を回避する方法も考えられるが、切断面を表示させる回数が増加して膨大な時間を要する割には判定の確実性に乏しい。また、製品の形状が複雑になると、もれなくすべての切断面を表示させることも現実的には不可能であり、鋳造方案の良否を予測する手法としては必ずしも実用的とは言えなかった。
一方、様々な鋳物について、製品、堰、および押湯の各部の形状と凝固時間の関係をニューラルネットワークに学習させて、各部の凝固時間を予測する鋳造方案設計方法も知られている。(例えば、特許文献1参照。)。
特開2000−326051号公報
特許文献1に開示されている鋳造方案設計方法によると、製品、堰、および押湯の各部についての凝固時間を対比し、製品、堰、押湯の順に凝固すること(指向性凝固)を予測する鋳造方案設計方法であり、ニューラルネットワークで予測した凝固時間と実際に鋳造した際の凝固時間の値に差がある場合には、その結果を再びニューラルネットワークに入力して学習させて、凝固時間の予測精度を向上させることができる点で優れている。
しかし、特許文献1の鋳造方案設計方法では、製品、堰、および押湯を含む鋳物全体の指向性凝固を予測することができる反面、製品部分に着目すると、製品の内部全体に亘り指向性凝固が達成されているかについては、予測することができなかった。つまり、製品の凝固時間が押湯の凝固時間より短くても、製品の凝固時間にはその部位によりバラつきがあり、上述の閉ループ法において閉ループが形成されるような状態である場合には、製品内部に引け巣欠陥が発生するおそれがあるが、特許文献1に示す鋳造方案設計方法では、この点について把握することができない。したがって、複雑な形状をとり得る鋳物製品について、製品全体としての鋳造方案の良否を判定できる普遍的な判定手法が求められていた。
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、複雑な形状をとり得る鋳物製品について、製品全体としての指向性凝固の成否を予測し、鋳造方案の設計を効率よく行うことができる鋳造方案評価装置を提供することを課題とする。
本発明によって提供される鋳造方案評価装置は、少なくとも製品および押湯からなる鋳物モデルを所定の微小三次元形状を有する複数の微小要素に分割する微小要素分割手段と、最小距離番号を付与するものとして指示された微小要素から他の各微小要素までの隣接する要素数の最小値を上記他の各微小要素における距離番号として算出する距離番号算出手段と、上記複数の微小要素のうちの全てまたは特定の複数の評価要素を選択する評価要素選択手段と、上記評価要素における距離番号に関するデータを利用して鋳造方案の良否を評価する評価手段と、を備えている。
このような構成の鋳造方案評価装置によれば、鋳物モデルから選択された複数の評価要素について、その評価要素における距離番号に関するデータを利用して鋳造方案の良否を評価するので、製品全体としての鋳造方案の良否を評価することができる。ここで、距離番号は、最小距離番号を付与するものとして指示された微小要素から他の各微小要素に至るまでの、鋳型部分を通過しない微小要素のみを通過する要素数であることから、必ずしも最小距離番号を付与するものとして指示された微小要素から各微小要素までの正確な最短距離であるとはいえないものの、この距離番号を、最小距離番号を付与するものとして指示された微小要素から各微小要素までの鋳型部分を通過しない最短距離の指標として扱うことが可能となる。
本発明のバリエーションとしては、本鋳造方案評価装置は、上記鋳物モデルの全体三次元形状データと所定の鋳造条件により上記各微小要素における溶湯の凝固時間を算出する凝固時間算出手段を更に備え、上記評価手段は、上記距離番号算出手段により得られた上記評価要素における距離番号と上記凝固時間算出手段により得られた上記評価要素における凝固時間との関係から鋳造方案の良否を評価するように構成されている。
このような構成によれば、評価要素を製品内部の様々な位置に均等に分散させて選択し、各評価要素ごとの距離番号と凝固時間との関係を見ることにより、押湯より遠い部分から近い部分に向けて順次溶湯が凝固する指向性凝固が行われるか否かについて、適正に予測することができる。また、製品の形状が複雑で、多くの引け巣欠陥の発生が予測できるものの個々の引け巣欠陥の対策が他の欠陥に悪影響を与えてしまい、鋳造品全体の引け巣欠陥の予測が困難な場合において本発明は特に有益であり、このような場合に本鋳造方案評価装置を用いれば、製品全体としての指向性凝固の成否を適正且つ容易に予測することが可能となり、鋳造方案の設計を効率よく行うことができる。
本発明のバリエーションとしては、上記評価手段は、上記評価要素における上記距離番号と上記凝固時間との関係を示す座標を分布図にプロットし、当該座標の分布に基づいて鋳造方案の良否を評価するように構成されている。
このような構成によれば、分布図中にプロットされた評価要素における距離番号と凝固時間との関係を示す座標群の分布状態により鋳造方案の良否を評価するので、指向性凝固の成否を迅速に予測することができる。さらに、製品全体として指向性凝固が行われると判断できる場合においても、座標群の全体的な分布から見て所定以上に離れた座標が存在する場合には、その座標から鋳物モデルにおける位置を特定することにより、鋳造欠陥の生成箇所を予測して製品形状や鋳造方案の見直しに利用することもできる。
本発明において、上記評価手段は、上記評価要素について同一の距離番号ごとの評価要素の度数から鋳造方案の良否を評価するように構成されている。
このような構成によれば、評価要素を製品内部の様々な位置に均等に分散させて選択し、これら複数の評価要素について、同一の距離番号ごとの当該距離番号が付された評価要素の度数を算出することにより、押湯より遠い部分から近い部分に向けて順次溶湯が凝固する指向性凝固が行われるか否かについて、迅速に予測することができる。すなわち、上記構成は、押湯から遠い位置の溶湯量を少なくしつつ押湯に近づくほど溶湯量を多くすれば、押湯から遠い位置から押湯に向かって溶湯の凝固が進行するという考えに基づいてなされたものである。例えば、距離番号が小さくなるにつれて当該距離番号が付された評価要素の度数が大きくなる場合には、指向性凝固が行われると判断することができるのである。また、上記構成に係る鋳造方案評価装置では、凝固時間算出手段が必須の構成要素として含まれていないので、本装置を用いて鋳造方案設計を行う際には、凝固時間の算出に要する時間が不要となる。このことは、鋳造についてのリードタイムを短縮するのに資する。このようなことから理解できるように、上記構成によれば、製品の形状が複雑な場合においても製品全体としての指向性凝固の成否を迅速且つ容易に予測することが可能となり、鋳造方案の設計を効率よく行うことができる。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記評価手段は、上記同一の距離番号ごとの評価要素の度数を示す座標を分布図にプロットし、当該座標の分布に基づいて鋳造方案の良否を評価するように構成されている。
上記評価手段は、上記分布図にプロットされた座標から最小二乗法を利用して一次回帰直線を求めて上記分布図に内挿し、その一次回帰直線の傾きから鋳造方案の良否を評価するように構成されているのがより好ましい。
このような構成によれば、座標分布の全体的な傾向を正確に把握することができるので、指向性凝固の成否判定が確実且つ容易となる。
本発明の好ましい実施の形態においては、上記最小距離番号を付与するものとして指示された微小要素は、製品と押湯との接続点を含む微小要素である。
このような構成によれば、最小距離番号を付与するものとして指示された微小要素は、製品部分の各評価要素に対して最も遅く凝固すべき部分であるため、指向性凝固の成否をより適正に予測するうえで好適である。
本発明の参考例について、図1〜図12を参照しつつ具体的に説明する。図1は、本発明の参考例に係る鋳造方案評価装置1の構成を示す図である。鋳造方案評価装置1は、例えばパーソナルコンピュータなどにより構成され、演算処理および外部接続された周辺装置の動作制御を行う評価装置本体10と、表示装置としてのディスプレイ11と、入力装置としてのキーボード12およびマウス13とを備えている。ディスプレイ11、キーボード12およびマウス13は、所定の接続ケーブルで評価装置本体10に接続されている。また、評価装置本体10内には、記憶装置としてのハードディスク14が内蔵されている。
ハードディスク14には、凝固解析プログラムがあらかじめ格納されている。この凝固解析プログラムは、鋳造方案の評価の対象である鋳物モデルの三次元形状データと凝固時間に影響を与える鋳造条件としての各種データとに基づいて、鋳物モデル内における溶湯の凝固時間を算出するものであり、本参考例においては市販のソフトウエア(例えば、株式会社トヨタコミュニケーションシステム社製の「TopCAST」)を使用する。上記凝固解析プログラムは、凝固時間を演算する機能の他に、鋳物モデルを微小要素に分割する機能、凝固解析に必要な各種データの入力設定をする機能、溶湯となり得る各種合金の物性値のデータベースなどを備えている。
図2は、鋳物モデルの一例を示す。鋳物モデル20は、一部をカットしたリング状の製品21と、円柱状の押湯22と、製品21と押湯22とを接続する円柱状の接続部23より構成されている。なお、鋳物モデル20は、鋳型内に成形される鋳物のうち、本発明にかかる鋳造方案評価装置による評価の対象となる構成のみを表し、湯道や湯口などの鋳造方案にかかる他の構成は省略している。
図3は、鋳造方案評価装置1により鋳造方案の評価を行う場合の処理動作を機能ブロックで示したものである。鋳造方案評価装置1は、鋳物モデルを複数の微小要素に分割し、所定の鋳造条件における溶湯の凝固時間を算出し、各微小要素の距離番号を算出した後、製品内部に複数の評価要素を設定して、距離番号と凝固時間との関係から鋳造方案の良否を評価する機能を有する。機能ブロックは、三次元形状データ記憶部2と、鋳造条件設定部3と、凝固時間算出部4と、接続点指示部5と、距離番号算出部6と、評価要素選択部7と、鋳造方案評価部8とからなる。
三次元形状データ記憶部2は、CAD(Computer Aided Design)などを利用して設計された鋳物モデルの三次元形状データを記憶するもので、評価装置本体10内のハードディスク14がその機能を果たしている。なお、本参考例では、ハードディスク14内に三次元形状データ記憶部2を設けたが、この構成に限定されるものではない。例えば、外部記憶装置としてのMO(Magneto-Optical disk)などの記録媒体(図示せず)を設け、当該記録媒体に記録された三次元形状データを読み込むように構成してもよい。
鋳造条件設定部3は、鋳造条件に関する所定のデータ(物性値)を、上記凝固解析プログラムの入力形式に基づいて入力設定するものである。上記所定のデータは、溶湯および鋳型の材質、初期温度を始めとして、溶湯および鋳型の比熱、熱伝導率や溶湯の固相線温度、液相線温度、凝固潜熱ならびに溶湯と鋳型との間の熱伝達係数などの各種物性値を含む。また、必要に応じて溶湯に負荷する圧力など、溶湯の凝固時間に影響を与える項目についても併せて入力する。なお、溶湯の種類がAC4B(アルミニウム合金)などの一般的な合金である場合には、上記データベースから当該合金の物性値を引き出すことにより、当該物性値の入力を省略することができる。
凝固時間算出部4は、三次元形状データ記憶部2より読み出された鋳物モデルの三次元形状データと、鋳造条件設定部3において入力設定された鋳造条件とに基づいて、上記凝固解析プログラムにより溶湯の凝固時間を算出するものである。凝固時間を算出するのに先立ち、オペレーターの入力指示により、鋳物モデルが直交6面体からなる微小要素に分割される。本参考例では、互いに大きさの等しい立方体からなる複数の微小要素が作成される。図4は、微小要素Eの配列状態を示す図で、微小要素Eを構成する任意の平面で切断した断面図である。図4において、線形で包囲された1区画が1つの微小要素Eを表している。続いて、上記凝固解析プログラムにより溶湯の凝固時間が算出され、凝固時間に関するデータとして出力される。
凝固時間の算出については、溶湯供給後において一定時間経過ごとの各要素の温度を計算することにより求めることができる。各微小要素Eにおける所定時間経過後の温度については、例えば、有限の微小時間Δtの間に起こる周辺の要素との熱の収支から定常伝熱量を計算することにより求めることができる。具体的には、図5に示すように、直線状に並ぶ微小要素(同図において符号E0,E1,E2,…,Enで表示)について、各微小要素E内の温度は均一であると仮定し、それぞれの微小要素に初期温度としてθ0,θ1,θ2,…,θn(K)を与える。有限の微小時間Δt(sec)の間にはこれらの温度は変化しないと仮定すれば、熱流が温度勾配に比例して生じるというフーリエ則を適用することができる。微小要素Eの一辺の長さをΔx(m)とし、熱伝導率をλ(J/sec・m・K)とし、微小要素Eどうしの接触面積をA(m2)とすると、微小時間Δtの間の微小要素E0の熱量変化ΔQ(J)は、フーリエ則により下記の式(1)で表される。
Figure 0004303252
一方、熱量変化ΔQによって微小要素E0の温度がΔtの間にθ0からθ0’に低下したと仮定する。この場合、微小要素の密度をρ(kg/m3)とし、比熱をc(J/kg・K)とすると、熱量変化ΔQは、熱伝導の関係により下記の式(2)で表される。
Figure 0004303252
ここで、式(1)および式(2)における熱量変化ΔQは等しいことから、両式から微小時間Δt経過後の温度θ0’について纏めると下記の式(3)が導かれる。そして、式(3)において、温度拡散率としてα=λ/ρcを定義し、F=αΔt/(ΔX)2と規定すると、温度θ0’は、下記の式(4)で表される。
Figure 0004303252
Figure 0004303252
この関係をすべての要素に適用すれば、t=0の初期温度分布から微小時間Δt経過ごとの各要素の温度を算出することができる。ただし、式(1)においては微小時間Δtの間に温度θが変化しないと仮定しているのに対し、式(2)においてはΔtの間に温度θが変化すると仮定している。このため、微小時間Δtとして大きい値を設定すると、上記の仮定が成立しなくなる。本参考例では、式(3)が成立するための条件として、例えばΔtに関する下記の式(5)を満たすことが要求される。
Figure 0004303252
凝固時間は種々な形式での出力が可能であり、例えば、各微小要素Eごとにその微小要素E内の凝固時間の平均値を凝固時間として出力する形式や、隣接する微小要素E同士の節点Spごと(図4参照)の凝固時間を出力する形式などがある。本参考例では、微小要素E内の凝固時間の平均値を凝固時間として出力する形式を採用している。また、ここで出力される凝固時間に関するデータ(以下、凝固時間データという。)は、微小要素No.と、微小要素Eの座標番号と、微小要素Eの凝固時間tである。微小要素No.は、複数の微小要素Eを識別するために、各微小要素Eに付される番号もしくは符号である。微小要素Eの座標番号とは、鋳物モデル内における微小要素Eの位置を特定するために三次元直交座標系のxyz方向の各々に付される番号である。出力された凝固時間データは、ハードディスク14の所定の記憶領域に記憶される。
図3に戻り、接続点指示部5は、製品と押湯の接続点を指示するものである。図6に示すように、接続点Cpの位置は、接続部23と製品21の接続面の略中心とするのが適当である。これは、押湯から製品部分全域に対して溶湯が適正に供給されるためには、製品部分において押湯に最も近接する部位(接続点Cp)が最後に凝固すべき部位であるという理由によるものである。接続点Cpは、オペレータの入力操作により指示される。
図3に戻り、距離番号算出部6は、接続点Cpから製品部分の各微小要素Eまでの隣接する要素数の最小値を距離番号として算出するものである。具体的には、例えば以下の手順により距離番号を算出することができる。距離番号の算出手順について、図7のフローチャートを用いて説明する。まず、接続点Cpを含む微小要素を指示し、これに距離番号として0を設定する(S51)。次に、ある微小要素に距離番号が付されているかを調べる(S52)。ここで、その微小要素に距離番号が付されている場合には、隣接する要素に移動してS52に戻る。ここで、隣接する要素については、凝固時間データにおける微小要素の座標番号を利用して特定することができる。一方、距離番号が付されていない場合には、隣接する6方向(上下左右前後)の要素のいずれかに距離番号が付されているかを調べる(S53)。ここで、隣接する要素のいずれにも距離番号が付されていない場合には、隣接する要素に移動してS52に戻る。一方、隣接する要素のいずれかに距離番号が付されている場合には、その距離番号のうち最小のものに1を加えたものをその微小要素の距離番号として決定する(S54)。次に、隣接する要素に移動してS52に戻り、以下(S52ないしS54)の手順を繰り返す。このようにして微小要素に対して距離番号を順次付与する。製品部分のすべての微小要素に距離番号が付与されると、距離番号に関するデータ(以下、距離番号データという。)として出力される。ここで、距離番号データは、微小要素No.と、その微小要素の距離番号dである。そして、距離番号データは、ハードディスク14の所定の記憶領域に記憶される(S55)。
図8は、上記手順によって算出された距離番号の一例を示す図である。同図において、左下がりのハッチングで示された領域は鋳型部であり、右下がりのハッチングで示された領域は接続部である。同図から理解できるように、上述のようにして付与された距離番号は、接続点Cpを含む微小要素から製品部分のみを通過しながら各微小要素に向けて最短経路(階段状になる場合もある)を辿る場合の要素数である。したがって、距離番号は、必ずしも接続点から各微小要素までの正確な最短距離であるとはいえないものの、この距離番号を接続点から各微小要素までの鋳型部分を通過しない最短距離の指標として扱うことができる。
図3に戻り、評価要素選択部7は、製品の内部において複数の評価要素を選択するものである。これらの評価要素は、それらが製品の内部全体において略均一に分散するように、微小要素Eの中から選択される。例えば、図9(a)に示すように、相互に隣接する一対の微小要素のうち1つを評価要素Ev(図中、ハッチングを施した微小要素が一対の微小要素のうち選択された方であり、白抜きの要素が選択されなかった方である)として選択する。或いは、図9(b)に示すように、一辺が2つの微小要素で構成される8つの微小要素からなる立方体(同図は平面的に表されたものであるから、立方体を構成する8つの微小要素のうち4つしか表されていない)を一組とし、各組において1つの要素を評価要素Evとして選択してもよい。このように評価要素Evを選択するのは、処理データを少なくして演算を簡易化するためであって、すべての微小要素Eを評価要素Evとして選択してもよい。なお、各評価要素Evを識別できるように、各評価要素Evには微小要素Eと同様に評価要素No.が付される。続いて、上述の凝固時間データから評価要素Evに対応する微小要素Eの凝固時間tを抽出し、評価要素Evにおける凝固時間Tとして設定する。また、上述の距離番号データから評価要素Evに対応する微小要素Eの距離番号dを抽出し、評価要素Evにおける距離番号Dとして設定する。そして、評価要素No.と、距離番号Dと、凝固時間Tとからなる評価要素Evに関するデータを作成する。続いて、すべての評価要素に関するデータ(以下、評価要素データR1という。)が出力される。出力された評価要素データR1は、ハードディスク14の所定の記憶領域に記憶される。図10は、評価要素データR1の一例(評価要素Evがn個からなる場合)を示す図である。なお、すべての微小要素Eを評価要素Evとして選択する場合には、各微小要素Eの微小要素No.と凝固時間tと距離番号dのそれぞれを、各評価要素Evの評価要素No.と凝固時間Tと距離番号Dとしてそのまま利用することができる。
図3に戻り、鋳造方案評価部8は、評価要素選択部7で得られた各評価要素における距離番号Dと凝固時間Tとの関係から、鋳造方案の良否を評価するものである。具体的には、以下の手順に基づいて実行される。まず、横軸を番号、縦軸を時間とする平面直交座標軸からなる分布図(図11参照)を作成する。当該分布図は、ディスプレイ11に表示される。次に、上述の評価要素データR1を読み出す。また、距離番号データを読み出し、距離番号のうち最大のもの(換言すると接続点より最も遠い位置にある微小要素の距離番号)を最大距離番号dmaxとして抽出するとともに、凝固時間データを読み出し、最大距離番号が付された微小要素の凝固時間を最大距離番号要素凝固時間tminとして抽出する。次に、各評価要素Evにおける距離番号Dと凝固時間Tとの関係を上記分布図にプロットする。ここで、横軸は最大距離番号dmaxと各評価要素Evの距離番号Dとの差の値、縦軸は各凝固時間Tと最大距離番号要素凝固時間tminとの差の値としてプロットする。例えば、No.iの評価要素Evについては、座標(dmax−Di,Ti−tmin)としてプロットされる。これをn個からなるすべての評価要素について行なう。その結果、上記分布図には座標(dmax−D1,T1−tmin),(dmax−D2,T2−tmin),…(dmax−Dn,Tn−tmin)の座標群が分布する。このように分布図中に座標をプロットする処理は、所定のプログラムを実行することにより行うことができる。次に、すべての座標に最も近接する直線を探索する。本参考例では、最小二乗法を利用して一次回帰直線(T−tmin=a(dmax−D)+b)を求め、上記分布図に内挿することにより行なう。ここで、TおよびDは変数、tminおよびdmaxは定数である。一次回帰直線T−tmin=a(dmax−D)+bの係数aおよびbは、a=[Σ{(dmax−D)(T−tmin)}−Σ(dmax−D)×Σ(T−tmin)/n]/{Σ(dmax−D)2−Σ(dmax−D)×Σ(dmax−D)/n}、b={Σ(T−tmin)−a×Σ(dmax−D)}/nにより算出される。なお、一次回帰直線は、所定のプログラムを実行することにより求めることもできる。
こうして得られた一次回帰直線T−tmin=a(dmax−D)+bより、鋳造方案を評価する。ここで具体的な評価方法の一例を詳述する。図11は、ある鋳物モデルについて、評価要素の距離番号と凝固時間との関係を分布図に記したものである。分布図内に分布する座標群(プロットされた点群)は、最大距離番号dmaxと各評価要素の距離番号Dの差および各評価要素の凝固時間Tと最大距離番号要素凝固時間tminの差からなる座標で構成されており、分布図内に描かれた直線は、当該座標群の一次回帰直線を表す。そして、例えば一次回帰直線の傾きが正の値であるときに、製品全体として指向性凝固が達成されているとして、この鋳造方案が「良」であると判定する。すなわち、一次回帰直線の傾きが正の値であれば、製品内部の評価要素が接続点に近づくにつれて凝固が遅くなると判断することができる。このことより、製品と押湯の接続点より遠い部分から近い部分に向けて順次溶湯が凝固する指向性凝固が行われるか否かについて、容易に予測することができる。また、評価要素選択部7で選択された評価要素Evは、製品の内部全体において略均等に分散しているので、製品全体の指向性凝固の成否を高い精度で予測することができる。さらに、上述したように、距離番号算出部6で算出された距離番号dは、鋳型部分を通過せずに製品部分のみを通過する最短距離の指標として扱うことができるので、製品の形状が複雑な場合においても指向性凝固の成否を適正に予測することができる。
なお、本参考例においては、分布図の横軸に最大距離番号dmaxと各評価要素の距離番号Dの差、縦軸に各評価要素の凝固時間Tと最大距離番号要素凝固時間tminの差として座標群をプロットとした。これは視認による判定の容易化を考慮し、分布図に内挿される一次回帰直線が右上がり(傾きが正の値)のときに鋳造方案が「良」であると判定することができるようにしたことによるものである。本発明は、これに限定されるものではなく、例えば横軸に距離番号D、縦軸に凝固時間Tとして座標群をプロットしてもよい。この場合、分布図に内挿される一次回帰直線が右下がり(傾きが負の値)であるときに、鋳造方案が「良」であると判定することができる。要するに、評価要素における距離番号Dおよび凝固時間Tが対応する変数として利用されていればよく、距離番号と凝固時間との関係を分布図にプロットする際には種々の方法を選択することができる。
上述の一次回帰直線の傾き(係数a)について、所定の閾値を設定しておくと、鋳造方案の良否判定処理を自動化することができる。また、回帰直線に対する分布座標の相関係数を求め、直線に対する相関性の高い場合に指向性凝固が達成されていると判定することもできる。さらに、分布図中において一次回帰直線から一定以上離れている座標を抽出し、抽出した座標より鋳物モデルにおける位置を特定することにより、鋳造欠陥の生成箇所を予測して製品形状や鋳造方案の見直しに利用することもできる。
次に、本参考例に係る鋳造方案評価装置1を用いた鋳造方案の評価処理手順について、図12のフローチャートを用いて説明する。鋳造方案の評価の対象である鋳物モデルの三次元形状データは、あらかじめ三次元形状データ記憶部2に記憶されているものとする。
まず、上記凝固解析プログラムが起動され、鋳物モデルの三次元形状データが、ハードディスク14の三次元形状データ記憶部2から上記凝固解析プログラムのワークエリアに読み出される(S1)。次に、鋳造条件設定部3により鋳造条件としての各種データが入力設定される(S2)。そして、凝固時間算出部4により微小要素Eごとの凝固時間が算出され、凝固時間データとして出力される(S3)。続いて、接続点指示部5により接続点Cpが指示され(S4)、その後、距離番号算出部6により距離番号が算出される(S5)。続いて、評価要素選択部7により評価要素Evが選択される(S6)。そして、鋳造方案評価部8により鋳造方案が評価される(S7)。ここでは、上述の手順にて距離番号と凝固時間との関係が分布図にプロットされ、プロットされた座標群の一次回帰直線が分布図に内挿される。そして、分布図中の座標群と一次回帰直線より、鋳造方案の良否が判定される。鋳造方案が「不良」と判定されたら、鋳造方案を設計変更してS1に戻り、以下(S1ないしS7)の手順を繰り返す。鋳造方案が「良」と判定されたら、上述の評価に使用した評価データ(分布図など)は、ハードディスク14の所定の記憶領域に記憶され(S8)、評価処理は終了する。
参考例によれば、製品全体に複数の評価要素を設定し、当該評価要素における距離番号と凝固時間との関係から鋳造方案の良否を評価するので、製品全体としての指向性凝固の成否を適正且つ容易に予測することができる。したがって、従来のように製品の一部の凝固時間分布に着目して鋳造方案の良否を判定する方法では当該製品に対する充分な知識が必要であったが、本参考例では、製品全体についての鋳造方案の良否を自動的に判定でき、鋳造方案設計の標準化を図ることができる。
次に、本発明の実施形態について、図1,図4,図6〜図9,図13〜図16を参照しつつ具体的に説明する。なお、本発明の実施形態において、本発明の参考例と同一または類似の部材および部分については同一の符号を付しており、適宜説明を省略する。
本発明の実施形態に係る鋳造方案評価装置1’は、参考例の鋳造方案評価装置1と同様に例えばパーソナルコンピュータなどにより構成され、図1に表れているように、評価装置本体10、ディスプレイ11、キーボード12およびマウス13を備えている。
評価装置10本体内のハードディスク14には、微小要素分割プログラムがあらかじめ格納されている。この微小要素分割プログラムは、鋳物モデルの三次元形状データを所定の微小三次元形状を有する複数の微小要素に分割するものであり、本実施形態においては市販のソフトウエア(例えば、参考例において例示した「TopCAST」)を使用する。
図13は、鋳造方案評価装置1’により鋳造方案の評価を行う場合の処理動作を機能ブロックで示したものである。鋳造方案評価装置1’は、鋳物モデルを微小要素に分割し、各微小要素の距離番号を算出した後、製品内部に複数の評価要素を設定して、同一の距離番号ごとの評価要素の度数から鋳造方案の良否を評価する機能を有する。機能ブロックは、三次元形状データ記憶部2と、微小要素分割部4’と、接続点指示部5と、距離番号算出部6と、評価要素選択部7と、鋳造方案評価部8’とからなる。
三次元形状データ記憶部2は、鋳物モデルの三次元形状データを記憶するものであり、参考例におけるものと同様である。
微小要素分割部4’は、三次元形状データ記憶部2より読み出された鋳物モデルの三次元形状データを、オペレータの入力指示により所定の微小三次元形状に分割するものである。本実施形態では、参考例と同様にして鋳物モデルが直交6面体からなる微小要素に分割され、互いに大きさの等しい立方体からなる複数の微小要素Eが作成される(図4参照)。続いて、微小要素に関するデータとして出力される。ここで出力される微小要素に関するデータ(以下、微小要素データという。)は、微小要素No.と、微小要素Eの座標番号である。微小要素データは、ハードディスク14の所定の記憶領域に記憶される。
図13に戻り、接続点指示部5は、製品と押湯の接続点Cpを指示するものであり、参考例におけるものと同様である(図6参照)。接続点Cpは、オペレータの入力操作により指示される。
図13に戻り、距離番号算出部6は、接続点Cpから製品部分の各微小要素Eまでの隣接する要素数の最小値を距離番号として算出するものであり、参考例におけるものと同様である。距離番号の算出手順については、参考例において図7のフローチャートを用いて説明したのと同様である。すなわち、図7のフローチャートに示されたS52〜S54の手順を繰り返すことにより製品部分のすべての微小要素に距離番号が付与されると、距離番号データ(微小要素No.および当該微小要素の距離番号dから構成)が出力され、当該距離番号データはハードディスク14の所定の記憶領域に記憶される(S55)。
上記手順によって算出された距離番号は、例えば図8に表れているように、接続点Cpを含む微小要素から製品部分のみを通過しながら各微小要素に向けて最短経路(階段状になる場合もある)を辿る場合の要素数である。したがって、距離番号は、必ずしも接続点から各微小要素までの正確な最短距離であるとはいえないものの、この距離番号を接続点から各微小要素までの鋳型部分を通過しない最短距離の指標として扱うことができる。この点は参考例と同様である。
図13に戻り、評価要素選択部7は、製品の内部において複数の評価要素を選択するものである。これらの評価要素は、それらが製品の内部全体において略均一に分散するように、微小要素Eの中から選択される(図9(a),(b)参照)。このように評価要素Evを選択するのは、処理データを少なくして演算を容易化するためであって、すべての微小要素Eを評価要素Evとして選択してもよい。なお、各評価要素Evを識別できるように、各評価要素Evには微小要素Eと同様にして評価要素No.が付される。続いて、上述の距離番号データから評価要素Evに対応する距離番号dを抽出し、評価要素Evにおける距離番号Dとして設定する。そして、評価要素No.と、距離番号Dとからなる評価要素Evに関するデータを作成する。続いて、すべての評価要素に関するデータ(以下、評価要素データR2という。)が出力される。評価要素データR2は、ハードディスク14の所定の記憶領域に記憶される。図14は、評価要素データR2の一例(評価要素Evがn個からなる場合)を示す図である。なお、すべての微小要素Eを評価要素Evとして選択する場合には、各微小要素Eの微小要素No.と距離番号dのそれぞれを、各評価要素Evの評価要素No.と距離番号Dとしてそのまま利用することができる。
図13に戻り、鋳造方案評価部8’は、評価要素選択部7で得られた評価要素データR2を利用して鋳造方案の良否を評価するものである。具体的には、以下の手順に基づいて実行される。まず、横軸を距離番号、縦軸を評価要素Evの度数とする平面直交座標軸からなる分布図(図15参照)を作成する。当該分布図は、ディスプレイ11に表示される。次に、上述の評価要素データR2を読み出す。次いで、評価要素データR2について、例えば距離番号が小さい順にソートするなどにより、同一の距離番号ごとに当該距離番号が付された評価要素Evの数量を算出する。そして、距離番号ごとの評価要素Evの数量(度数)を上記分布図にプロットする。例えば、距離番号がiである評価要素Evの度数は、座標(i,Yi)としてプロットされる。ここで、評価要素データR2に係る距離番号のうち最大のもの(換言すると接続点から最も遠い位置にある評価要素の距離番号)をnとすると、上記分布図には座標(1,Y1),(2,Y2),・・・(n,Yn)の座標が分布する。このように分布図中に座標をプロットする処理は、所定のプログラムを実行することにより行うことができる。次に分布図中のすべての座標に最も近接する直線を探索する。本実施形態では、最小二乗法を利用して一次回帰直線(Y=aX+b)を求め、上記分布図に内挿することにより行なう。一次回帰直線Y=aX+bの係数aおよびbは、a={(ΣXY)−(ΣX×ΣY)/n}/{Σ(X)2−(ΣX)2/n}、b=(ΣY−a×ΣX)/nにより算出される。なお、一次回帰直線は、所定のプログラムを実行することにより求めることもできる。
こうして得られた一次回帰直線Y=aX+bより、鋳造方案を評価する。ここで具体的な評価方法の一例を詳述する。図15は、ある鋳物モデルについて、同一の距離番号ごとの評価要素の度数を分布図に記したものである。分布図内の座標群は、距離番号と当該距離番号が付された評価要素の度数との関係を座標としてプロットしたものであり、分布図内に描かれた直線は、当該座標群の一次回帰直線を表す。そして、例えば一次回帰直線の傾きが負の値ないし負に近い値であるときに、製品全体として指向性凝固が達成されているとして、この鋳造方案が「良」であると判定する。これは、押湯から遠い位置の溶湯量を少なくしつつ押湯に近づくにつれて溶湯量を多くすれば、押湯から遠い位置から押湯に向かって溶湯の凝固が進行するとの考えに基づくものである。例えば、距離番号が小さくなるにつれて当該距離番号が付された評価要素の度数が大きくなる場合には、上記手法によって得られた一次回帰直線の傾きは負の値になる。この場合、指向性凝固が行われると判断することができ、その結果、鋳造方案が「良」であると判定することができるのである。また、ここで、一次回帰直線の傾きが「負に近い値」である場合にも鋳造方案が「良」であるとするのは、次の理由による。すなわち、鋳造方案設計においては、製品の形状などにより、製品に対する押湯の接続箇所について一定の制約が生じる場合がある。そして、押湯に近づくにつれて溶湯量を多くするように押湯を接続することができないような場合には、押湯の接続箇所が異なる複数の方案について、それぞれ上記手法によって一次回帰直線を求め、その傾きが正の値であっても最も負に近い値であれば、鋳造方案として良好であると判断することができるのである。
上述の一次回帰直線の傾き(係数a)について、所定の閾値を設定しておくと、鋳造方案の良否判定処理を自動化することができる。また、回帰直線に対する分布座標の相関係数を求め、直線に対する相関性の高い場合に指向性凝固が達成されていると判定することもできる。
次に、本実施形態に係る鋳造方案評価装置1’を用いた鋳造方案の評価処理手順について、図16のフローチャートを用いて説明する。鋳造方案の評価の対象である鋳物モデルの三次元形状データは、あらかじめ三次元形状データ記憶部2に記憶されているものとする。
まず、上記微小要素分割プログラムが起動され、鋳物モデルの三次元形状データが、ハードディスク14の三次元形状データ記憶部2から上記微小要素分割プログラムのワークエリアに読み出される(S11)。次に、微小要素分割部4’により鋳物モデルが複数の微小要素Eに分割され、微小要素データとして出力される(S12)。続いて、接続点指示部5により接続点Cpが指示され(S13)、その後、距離番号算出部6により距離番号が算出される(S14)。続いて、評価要素選択部7により評価要素Evが選択される(S15)。そして、鋳造方案評価部8’により鋳造方案が評価される(S16)。ここでは、上述の手順にて距離番号ごとの評価要素の度数が分布図にプロットされ、プロットされた座標群の一次回帰直線が分布図に内挿される。そして、分布図中の座標群と一次回帰直線より、鋳造方案の良否が判定される。鋳造方案が「不良」と判定されたら、鋳造方案を設計変更してS11に戻り、以下(S11ないしS16)の手順を繰り返す。鋳造方案が「良」と判定されたら、上述の評価に使用した評価データ(分布図など)は、ハードディスク14の所定の記憶領域に記憶され(S17)、評価処理は終了する。
本実施形態によれば、製品全体に複数の評価要素を設定し、当該評価要素における距離番号について、同一の距離番号ごとの評価要素の度数から鋳造方案の良否を評価するため、製品全体としての指向性凝固の成否を容易に予測することができる。したがって、従来のように製品の一部の凝固時間分布に着目して鋳造方案の良否を判定する方法では当該製品に対する充分な知識が必要であったが、本実施形態では、製品全体についての鋳造方案の良否を自動的に判定でき、鋳造方案設計の標準化を図ることができる。
また、本実施形態の微小要素分割部4’と参考例の凝固時間算出部4とを対比すれば理解できるように、本実施形態では、参考例に比べて凝固時間の算出が不要である。このことは、鋳造方案設計を効率よく行ううえで好適であり、鋳造についてのリードタイムを短縮するのに資する。
以上、本発明の具体的な実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の思想から逸脱しない範囲内で種々な変更が可能である。例えば、上記実施形態における鋳造方案の評価処理手順は、本発明を実施するための具体的な手順の一例に過ぎず、他にも種々な手順をとり得る。
上記実施形態では、鋳物モデルを直交6面体からなる微小要素に分割したが、本発明はこれに限定されず、所定の微小三次元形状を有する微小要素であれば、如何なる形状に分割してもよい。
下記の鋳物モデルについて、本発明の参考例に係る鋳造方案評価装置1を使用して上記評価手順に沿って鋳造方案の評価を行った。
〔鋳物モデル〕
本実施例の鋳物モデルとしては、リングの約1/3をカットした形状の製品に対して円柱形状の押湯と接続部を設ける鋳造方案について、2種類のものを準備した。図17は、鋳物モデルの外観を示す斜視図である。同図の鋳物モデル201,202は、製品211,212の形状および寸法、押湯221,222の形状および寸法、接続部231,232の形状および寸法がそれぞれ同一であり、製品に対する押湯および接続部の接続箇所が異なっている。鋳物モデル201,202の各部の寸法は、製品211,212については内径が80mm、外径が120mm、厚みが15mmとされ、押湯221,222については直径が30mm、高さが20mmとされ、接続部231,232については直径が20mm、高さが10mmとされている。鋳物モデル201においては製品211の中央部に押湯221および接続部231が接続されており、鋳物モデル202においては製品212の端部付近に押湯222および接続部232が接続されている。本実施例における製品や鋳型の物性値を図18に示す。
〔鋳造方案評価装置および鋳造方案評価手順〕
上記参考例に係る鋳造方案評価装置1を使用し、上記参考例に係る評価手順に沿って鋳物モデル201,202の鋳造方案の評価を行った。本実施例では、鋳物モデル201,202は、1辺が5mmの立方体からなる複数の微小要素Eに分割された。本実施例にて作成された分布図(各評価要素Evにおける距離番号Dと凝固時間Tの関係をプロットした座標群および当該座標群の一次回帰直線)を図19に示す。ここで、図19の(a),(b)は、図17の(a),(b)にそれぞれ対応している。一次回帰直線の傾きは、図19(a)では0.86であるのに対し、図19(b)では−0.12である。これにより、一次回帰直線の傾きが正の値である(a)(鋳物モデル201)が鋳造方案として適切であると評価することができる。このように、分布図に内挿された一次回帰直線の傾きより座標分布の全体的な傾向を正確に把握することができるので、指向性凝固の成否判定を確実且つ容易に行うことができる。また、ここで鋳造方案の評価として、一次回帰直線の傾きが所定の値以上の時に当該鋳造方案が「良」であると判定するように具体的な数値目標を設定しておくと、判定処理を自動化することができる。
実施例1と同一の鋳物モデル201,202について、実施例1とは異なる鋳造方案評価装置および鋳造方案評価手順により鋳造方案の評価を行った。本実施例では、上記実施形態に係る鋳造方案評価装置1’を使用し、上記実施形態に係る評価手順に沿って鋳造方案を評価した。本実施例では、鋳物モデルは、1辺が5mmの立方体からなる複数の微小要素Eに分割された。本実施例にて作成された分布図(距離番号ごとの評価要素Evの度数をプロットした座標群および当該座標群の一次回帰直線)を図20に示す。ここで、図20の(a),(b)は、図17の(a),(b)にそれぞれ対応している。一次回帰直線の傾きは、図20(a)では0.05であるのに対し、図20(b)では0.72である。これにより、一次回帰直線の傾きが負に近い値である(a)(鋳物モデル201)が鋳造方案として適切であると評価することができる。このように、分布図に内挿された一次回帰直線の傾きより座標分布の全体的な傾向を正確に把握することができるので、指向性凝固の成否判定を確実且つ容易に行うことができる。また、ここで鋳造方案の評価として、一次回帰直線の傾きが所定の値以下の時に当該鋳造方案が「良」であると判定するように具体的な数値目標を設定しておくと、判定処理を自動化することができる。
本発明の参考例に係る鋳造方案評価装置の構成を示す図である。 鋳物モデルの一例を示す斜視図である。 本発明の参考例に係る鋳造方案評価装置により実行される処理動作を機能ブロックで示した図である。 微小要素と節点を示す図である。 凝固時間の算出方法を説明するための図である。 指示された接続点の一例を示す斜視図である。 距離番号算出手段における処理手順を示すフローチャートである。 距離番号算出手段によって付与された距離番号の一例を示す図4と同様の図である。 選択された評価要素の一例を示す図4と同様の図である。 評価要素データの一例を示す図である。 距離番号と凝固時間との関係の一例を示す分布図である。 本発明の参考例に係る鋳造方案評価装置による鋳造方案の評価処理手順を示すフローチャートである。 本発明の実施形態に係る鋳造方案評価装置により実行される処理動作を機能ブロックで示した図である。 評価要素データの一例を示す図である。 距離番号ごとの評価要素の度数の一例を示す分布図である。 本発明の実施形態に係る鋳造方案評価装置による鋳造方案の評価処理手順を示すフローチャートである。 鋳物モデルを示す斜視図である。 鋳造条件としての物性値を示す図である。 距離番号と凝固時間との関係を示す分布図である。 距離番号ごとの評価要素の度数を示す分布図である。 従来の鋳造方案の評価方法(閉ループ法)を説明するための図である。
符号の説明
1,1’ 鋳造方案評価装置
2 三次元形状データ記憶部
3 鋳造条件設定部
4 凝固時間算出部
4’ 微小要素分割部
5 接続点指示部
6 距離番号算出部
7 評価要素選択部
8,8’ 鋳造方案評価部
20,201,202 鋳物モデル
21,211,212 製品
22,221,222 押湯
Cp 接続点
E 微小要素
Ev 評価要素
d,D 距離番号
t,T 凝固時間

Claims (2)

  1. 少なくとも製品および押湯からなる鋳物モデルを所定の微小三次元形状を有する複数の微小要素に分割する微小要素分割手段と、
    最小距離番号を付与するものとして指示された微小要素から他の各微小要素までの隣接する要素数の最小値を上記他の各微小要素における距離番号として算出する距離番号算出手段と、
    上記複数の微小要素のうちの全てまたは特定の複数の評価要素を選択する評価要素選択手段と、
    上記評価要素における距離番号に関するデータを利用して鋳造方案の良否を評価する評価手段と、を備え
    上記評価手段は、上記評価要素について同一の距離番号ごとの評価要素の度数から鋳造方案の良否を評価するように構成されている、鋳造方案評価装置。
  2. 上記評価手段は、上記同一の距離番号ごとの評価要素の度数を示す座標を分布図にプロットし、当該座標の分布に基づいて鋳造方案の良否を評価するように構成されている、請求項1に記載の鋳造方案評価装置。
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