JP2010095825A - 繊維の製造方法および触媒層の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】含フッ素イオン交換樹脂と溶媒とを含む紡糸原液を乾式紡糸法によって紡糸して繊維を製造する際、または少なくとも1種が含フッ素イオン交換樹脂と溶媒とを含み、かつ少なくとも1種が導電性物質と溶媒とを含むn種類(nは2以上の整数。)の紡糸原液を同時に乾式紡糸法によって紡糸して導電性複合繊維を製造する際に、乾式紡糸法によって紡糸されつつある紡糸原液を気流によって延伸する製造方法;および該製造方法によって製造された繊維を集積して不織布とし、該不織布を有する触媒層を得る触媒層の製造方法。
【選択図】図1
Description
固体高分子形燃料電池には、水素および酸素の利用率の高い運転条件、高いエネルギー効率および高い出力密度が要求される。
固体高分子形燃料電池が該要求を満たすためには、該電池を構成する要素のうち、触媒層におけるガス拡散性が特に重要である。
(i)触媒および含フッ素イオン交換樹脂をアルコール類(エタノール等。)の溶媒に溶解または分散した液状混合物を、固体高分子電解質膜の表面に直接塗布して触媒層を形成する方法。
(ii)前記液状混合物を基材フィルムに塗布して触媒層を形成し、該触媒層を固体高分子電解質膜の表面に転写または接合する方法。
しかし、該方法で得られた膜電極接合体では、触媒層における細孔の形成が不充分であり、ガス拡散性が低い。そのため、該膜電極接合体を備えた固体高分子形燃料電池を高電流密度で用いた場合、出力電圧の低下が生じる。
(1)触媒および含フッ素イオン交換樹脂を溶媒に分散または溶解した液状混合物から溶媒を除去して平均粒径が0.1〜100μmの粒子を造粒し、該粒子を固体高分子電解質膜の表面に散布し、加熱圧着することにより触媒層を形成する方法(特許文献2)。
(2)触媒および含フッ素イオン交換樹脂を、アルコール類(エタノール等。)および含フッ素アルコール類を含む溶媒に加えて液状混合物を調製し、該液状混合物を用いて触媒層を形成する方法(特許文献3)。
前記紡糸原液は、導電性物質をさらに含むことが好ましい。
本発明の触媒層の製造方法は、固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の触媒層の製造方法であって、本発明の製造方法によって製造された繊維を集積して、不織布とし、該不織布を有する触媒層を得ることを特徴とする。
本発明の触媒層の製造方法によれば、ガス拡散性の高い触媒層を低コストでかつ容易に製造できる。
また、本明細書においては、式(2)で表される化合物を化合物(2)と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。
本発明の繊維の製造方法は、吐出ノズルから紡糸原液を気体中に吐出し、該吐出された紡糸原液から溶媒を蒸発させる紡糸法(以下、乾式紡糸法とも言う。)によって紡糸原液を紡糸すると同時に気流によって延伸する方法である。
本発明の繊維の製造方法としては、下記の方法(I)または方法(II)が挙げられる。
(I)含フッ素イオン交換樹脂と溶媒とを含む紡糸原液を乾式紡糸法によって紡糸して繊維を製造する方法であって、乾式紡糸法によって紡糸されつつある前記紡糸原液を気流によって延伸する方法。
(II)少なくとも1種が含フッ素イオン交換樹脂と溶媒とを含み、かつ少なくとも1種が導電性物質と溶媒とを含むn種類(ただし、nは2以上の整数である。)の紡糸原液を同時に乾式紡糸法によって紡糸して導電性複合繊維を製造する方法であって、乾式紡糸法によって複合して紡糸されつつある前記n種類の紡糸原液を気流によって延伸する方法。
乾式紡糸法によって紡糸されつつある紡糸原液とは、吐出ノズルから吐出された紡糸原液、および該紡糸原液が紡糸され、溶媒の一部が蒸発したもの(すなわち繊維前駆体)を意味する。
乾式紡糸法は、紡糸原液から溶媒を蒸発させる紡糸法であるため、繊維の乾燥を補助する気体を流すことも好ましい。よって、気流の発生源となる気体を調湿してもよく、気流の発生源となる気体を適切な温度まで加熱してもよい。
(i)他の方法に比べ、簡便な装置で不織布を製造できる。
溶融樹脂を用いて不織布を製造する方法としては、メルトブローン法、スパンボンド法等が知られ、溶融紡糸法で形成された繊維を用いて不織布を製造する方法としては、抄紙法等が知られているが、いずれも大掛かりな不織布製造装置が必要となる、原料繊維を準備するために別に繊維製造装置が必要である等、装置コストがかかる。
(ii)極細の繊維が得られる。
通常の紡糸設備を用いて極細の繊維で構成される不織布を製造することは、条件的にも厳しく、原料の粘度、延伸性等、多くの制約がある。一方、気流延伸を併用した乾式紡糸法は、溶液を用いた紡糸法であるため、その乾燥過程において体積収縮が起こること、および原料自体が低粘度あるため、極細ノズルでの紡糸が可能であることにより、極細の繊維を得やすい。
(iii)繊維の集積体は、通常、繊維同志が結合した不織布として得られる。
気流延伸を併用した乾式紡糸法においては、溶液からの固化と延伸による紡糸とが同時に、または、逐次的に起こるため、繊維の集積体は、繊維同士が結合した不織布として得られる。
(iv)導電性物質を多く含む繊維を形成できる。
溶液を用いた紡糸法によって不織布を形成する方法としては、電界紡糸法が知られているが、気流延伸を併用した乾式紡糸法は、電界紡糸法とは異なり、電圧印加が不要である。電界紡糸法では、導電性物質を含む繊維を形成する場合、放電、それに伴う繊維の切断等が発生するおそれがあり、導電性物質を多く含む繊維の形成が事実上困難である。一方、気流延伸を併用した乾式紡糸法では、このような制限が一切発生せず、導電性物質を多く含む繊維を形成できる。
図1は、方法(I)において用いられる繊維の製造装置の一例を示す構成図である。繊維の製造装置10は、吐出ノズル12および気体吹出ノズル14を備えた紡糸ノズル16と、吐出ノズル12に対向するように設置された、回転自在のドラム18(コレクタ)と、紡糸原液を紡糸ノズル16に供給するポンプ22と、気体を紡糸ノズル16に供給するポンプ26とを具備する。
まず、ドラム18を回転させる。ポンプ22を作動させ、紡糸原液供給管38を通して第1のシリンジ32内の空間に紡糸原液を供給し、第1のシリンジ32の先端の吐出口28に基端が接続する吐出ノズル12の先端から紡糸原液を一定の速度で吐出させる。同時に、ポンプ26を作動させ、気体供給管40を通して第2のシリンジ36内の空間に加圧された気体を供給し、第2のシリンジ36の先端の気体吹出ノズル14から加圧された気体を吹き出し、吐出ノズル12から吐出される紡糸原液の吐出方向に対して略平行な気流を発生させる。
紡糸原液(a)は、含フッ素イオン交換樹脂を溶媒に溶解または分散させた溶液または分散液である。
スルホン酸型パーフルオロカーボンポリマーとしては、ポリマー(H)またはポリマー(Q)が好ましく、ポリマー(Q)が特に好ましい。
ポリマー(H)は、テトラフルオロエチレン(以下、TFEと記す。)に基づく単位と、単位(1)とを有するコポリマーである。
ただし、Xはフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、mは0〜3の整数であり、nは1〜12の整数であり、pは0または1である。
CF2=CFO(CF2)n1SO2F ・・・(21)、
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)n2SO2F ・・・(22)、
CF2=CF(OCF2CF(CF3))m3O(CF2)n3SO2F ・・・(23)。
ただし、n1、n2、n3は、1〜8の整数であり、m3は、1〜3の整数である。
ポリマー(Q)は、TFEに基づく単位と、単位(U1)とを有するコポリマーである。
単結合は、CYの炭素原子と、SO3Hのイオウ原子とが直接結合していることを意味する。
有機基は、炭素原子を1以上含む基を意味する。
パーフルオロアルキレン基の炭素数は1〜6が好ましく、直鎖状であってもよく、分岐状であってもいい。
ポリマー(Q)の質量平均分子量は、TQ値を測定することにより評価できる。TQ値(単位:℃)は、ポリマーの分子量の指標であり、長さ1mm、内径1mmのノズルを用い、2.94MPaの押出し圧力の条件でポリマーの溶融押出しを行った際の押出し量が100mm3/秒となる温度である。たとえば、TQ値が200〜300℃であるポリマーは、ポリマーを構成する繰り返し単位の組成で異なるが、質量平均分子量が1×105〜1×106に相当する。
カーボン担体としては、カーボンブラック粉末が挙げられ、耐久性の点から、熱処理等でグラファイト化したカーボンブラック粉末が好ましい。
カーボン担体の比表面積は、50〜1500m2/gが好ましい。カーボン担体の比表面積が該範囲であれば、金属が分散性よくカーボン担体に担持され、長期にわたって電極反応の活性が安定する。
白金または白金合金は、アノードにおける水素酸化反応およびカソードにおける酸素還元反応に対して高活性である。また、白金合金とすることで、触媒としての安定性や活性をさらに付与できる場合もある。
白金合金としては、白金以外の白金族の金属(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム。)、金、銀、クロム、鉄、チタン、マンガン、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン、アルミニウム、ケイ素、亜鉛およびスズからなる群から選ばれる1種以上の金属と白金との合金が好ましい。白金合金には、白金と合金化される金属と白金との金属間化合物が含まれていてもよい。
カソードの触媒としては、耐久性の点から、カーボン担体に白金−コバルト系合金を担持した触媒が好ましい。
水酸基を有する有機溶媒としては、主鎖の炭素数が1〜4の有機溶媒が好ましく、たとえば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、n−ブタノール等が挙げられる。水酸基を有する有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
含フッ素イオン交換樹脂およびPAOを含む場合、PAOの割合は、紡糸原液(a)(100質量%)のうち、0.01質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましい。また、PAOの割合は、30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。PAOの割合が該範囲であれば、安定して繊維を形成できる。
紡糸原液の粘度は、コーンプレートタイプ(ロータコード:01、ロータNo.:1°34’XR24)を装着したTV−20型粘度計(東機産業社製)を用い、25℃で測定する。
方法(II)としては、紡糸ノズルの構造が複雑にならず、また、安定して繊維を形成できる点から、下記の方法(II−1)が好ましい。
(II−1)少なくとも1種が含フッ素イオン交換樹脂と溶媒とを含み、かつ少なくとも1種が導電性物質と溶媒とを含む2種類の紡糸原液を、一方を芯部に配し、他方を鞘部に配して乾式紡糸法によって紡糸して芯鞘構造の繊維を製造する方法であって、乾式紡糸法によって紡糸されつつある前記2種類の紡糸原液を気流によって延伸する方法。
吐出ノズル12と気体吹出ノズル14とは、最も外側が気体吹出ノズル14となるように同心円状に気体吹出ノズル14の内側に吐出ノズル12が配置され、気体吹出ノズル14と吐出ノズル12の間隙を気体が流通する気体流路が形成されるように配置される。また、最も外側の気体吹出ノズル14の先端よりも内側の吐出ノズル12の先端を突出させる。このような配置関係とすることによって、気体吹出ノズル14から気体を吹き出した際に、吐出ノズル12から吐出される2種類の紡糸原液の吐出方向に対して略平行な気流が発生する。
まず、ドラム18を回転させる。ポンプ22を作動させ、内側ノズル44の基端から第1の紡糸原液を供給し、内側ノズル44の先端から第1の紡糸原液を一定の速度で吐出させる。同時に、ポンプ24を作動させ、紡糸原液供給管38を通して第1のシリンジ32内の空間に第2の紡糸原液を供給し、第1のシリンジ32の先端の吐出口28に基端が接続する外側ノズル42の先端から第2の紡糸原液を一定の速度で吐出させる。同時に、ポンプ26を作動させ、気体供給管40を通して第2のシリンジ36内の空間に加圧された気体を供給し、第2のシリンジ36の先端の気体吹出ノズル14から加圧された気体を吹き出し、吐出ノズル12から吐出される2種類の紡糸原液の吐出方向に対して略平行な気流を発生させる。
第1の紡糸原液(芯部)が紡糸原液(b)の場合、第2の紡糸原液(鞘部)が紡糸原液(c)となる。一方、第1の紡糸原液(芯部)が紡糸原液(c)の場合、第2の紡糸原液(鞘部)が紡糸原液(b)となる。
溶媒としては、紡糸原液(a)に用いたものと同様なものが挙げられ、水酸基を有する有機溶媒と水との混合溶媒が好ましい。水酸基を有する有機溶媒としては、紡糸原液(a)に用いたものと同様なものが挙げられる。
ポリマーとして含フッ素イオン交換樹脂およびPAOを含む場合、PAOの割合は、紡糸原液(b)(100質量%)のうち、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。また、PAOの割合は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。PAOの割合が該範囲であれば、安定して繊維を形成できる。
導電性物質としては、紡糸原液(a)に用いたものと同様なものが挙げられ、繊維を固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の触媒層に用いる場合は、触媒が好ましい。
溶媒としては、紡糸原液(a)に用いたものと同様なものが挙げられ、ポリマーとして含フッ素イオン交換樹脂を含み、導電性物質が触媒である場合は、水酸基を有する有機溶媒と水との混合溶媒が好ましい。水酸基を有する有機溶媒としては、紡糸原液(a)に用いたものと同様なものが挙げられる。
ポリマーとして含フッ素イオン交換樹脂およびPAOを含む場合、PAOの割合は、紡糸原液(c)(100質量%)のうち、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。また、PAOの割合は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。PAOの割合が該範囲であれば、安定して繊維を形成できる。
紡糸原液(c)の吐出量は、上述した紡糸原液(a)の吐出量と同じ範囲が好ましい。
気体の吹き出し量は、上述した気体の吹き出し量と同じ範囲が好ましい。
本発明の製造方法で得られる繊維は、含フッ素イオン交換樹脂を含む。
繊維の形態としては、方法(I)によって得られる1種類の紡糸原液を紡糸して形成される通常の繊維、方法(II)によって得られるn種類の紡糸原液を紡糸して形成される複合繊維が挙げられる。複合繊維としては、方法(II−1)によって得られる2種類の紡糸原液を紡糸して形成される芯鞘繊維が好ましい。
芯鞘繊維としては、たとえば、下記の芯鞘繊維が挙げられる。
(α)芯部に含フッ素イオン交換樹脂を含む紡糸原液(b)を用い、鞘部に触媒を含む紡糸原液(c)を用いて形成された芯鞘繊維(以下、芯鞘繊維(α)と記す。)。
(β)芯部に触媒を含む紡糸原液(c)を用い、鞘部に含フッ素イオン交換樹脂を含む紡糸原液(b)を用いて形成された芯鞘繊維(以下、芯鞘繊維(β)と記す。)。
芯鞘繊維(β)は、図12に示すように、芯部が、触媒が偏在する部分46であり、鞘部が、主として含フッ素イオン交換樹脂からなる部分47である。芯鞘繊維(β)は、長さ方向への電子伝導性に優れ、かつ反応場(周面側)へのプロトン供給が容易となる。
繊維の繊維径は、不織布を電子顕微鏡で観察し、無作為に選択した100本以上の繊維の幅を測定し、これらを平均化して求める。または、不織布の断面を電子顕微鏡にて観察し、観察される100本以上の繊維の断面の直径を測定し、これらを平均化して求める。
繊維のアスペクト比は、不織布を構成する繊維を、電子顕微鏡、光学顕微鏡等によって観察し、繊維の繊維径および長さを測定して求める。
本発明における固体高分子形燃料電池用膜電極接合体(以下、膜電極接合体と記す。)は、触媒層を有するアノードと、触媒層を有するカソードと、アノードとカソードとの間に触媒層に接した状態で配置される固体高分子電解質膜とを有する膜電極接合体であって、アノードの触媒層およびカソードの触媒層の少なくとの一方が、本発明の製造方法によって得られた、触媒を含む繊維(以下、導電性繊維と記す。)を含む。
一方の触媒層が前記導電性繊維を含み、他方の触媒層が前記導電性繊維を含まない場合、前記導電性繊維を含む触媒層は、カソードの触媒層であることが好ましい。
前記導電性繊維を含まない他方の触媒層としては、従来の触媒層が挙げられる。従来の触媒層としては、たとえば、含フッ素イオン交換樹脂と触媒とを含む分散液からコーティング法等で形成した触媒層が挙げられる。
以下、2つの触媒層が、前記導電性繊維を含む触媒層である場合について説明する。
触媒層62および触媒層72(以下、まとめて触媒層と記す。)は、本発明の製造方法によって得られた導電性繊維からなる不織布を含む触媒層である。ただし、該導電性繊維は、ポリマーとして含フッ素イオン交換樹脂を含み、導電性物質として触媒を含む。
また、触媒層は、本発明の効果を損なわない範囲で、不織布以外の成分を含んでいてもよい。
ガス拡散層64およびガス拡散層74(以下、まとめてガス拡散層と記す。)の構成材料としては、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルト等の多孔質カーボンシートが挙げられる。ガス拡散層は、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと記す。)等によって撥水化処理されていることが好ましい。
固体高分子電解質膜80は、イオン交換樹脂を含む膜である。
イオン交換樹脂としては、含フッ素イオン交換樹脂または非含フッ素イオン交換樹脂が挙げられ、耐久性の点から、含フッ素イオン交換樹脂が好ましく、上述したポリマー(H)またはポリマー(Q)がより好ましい。
膜電極接合体50は、図14に示すように、触媒層とガス拡散層との間にカーボン層66およびカーボン層76(以下、まとめてカーボン層と記す。)を有していてもよい。カーボン層を配置することにより、触媒層の表面のガス拡散性が向上し、固体高分子形燃料電池の発電特性が大きく向上する。
カーボン層は、カーボンと、必要に応じて結着剤とを含む層である。カーボンとしては、カーボン粒子、カーボンナノファイバー等が挙げられる。カーボン粒子としては、カーボンブラックが好ましい。カーボンナノファイバーとしては、繊維径1〜1000nm、繊維長1000μm以下のカーボンナノファイバーが好ましい。結着剤としては、撥水性の含フッ素ポリマーが好ましく、PTFEが特に好ましい。
膜電極接合体50は、たとえば、下記の方法(x−1)または方法(x−2)にて製造される。
(x−1)固体高分子電解質膜80上に触媒層を形成して膜触媒層接合体とし、該膜触媒層接合体をガス拡散層で挟み込む方法。
(x−2)ガス拡散層となるシート上に触媒層を形成して電極(アノード60、カソード70)とし、固体高分子電解質膜80を該電極で挟み込む方法。
(x−3)ガス拡散層上に、カーボンおよび非イオン性含フッ素ポリマーを含む分散液を塗布し、乾燥させてカーボン層を形成し、前記(x−1)の方法における膜触媒層接合体を、カーボン層を有するガス拡散層で挟み込む方法。
(y−1)本発明の製造方法にて導電性繊維を製造する際に、該導電性繊維を剥離基材上に集積して不織布を形成し、該不織布を固体高分子電解質膜80またはガス拡散層に積層し、その後、剥離基材を取り除いて触媒層を形成する方法。
(y−2)本発明の製造方法にて導電性繊維を製造する際に、該導電性繊維を固体高分子電解質膜80またはガス拡散層上に集積して不織布を形成すると同時に触媒層を形成する方法。
剥離基材、固体高分子電解質膜80またはガス拡散層は、本発明の製造方法にて導電性繊維を製造する際に、コレクタ(ドラム18)上に配置しておけばよい。
本発明の膜電極接合体は、固体高分子形燃料電池に用いられる。固体高分子形燃料電池は、たとえば、2つのセパレータの間に膜電極接合体を挟んでセルを形成し、複数のセルをスタックすることにより製造される。
セパレータとしては、燃料ガスまたは酸素を含む酸化剤ガス(空気、酸素等。)の通路となる溝が形成された導電性カーボン板等が挙げられる。
固体高分子形燃料電池の種類としては、水素/酸素型燃料電池、直接メタノール型燃料電池(DMFC)等が挙げられる。
例1〜4、6、7は実施例であり、例5は比較例である。
溶液の粘度は、E型粘度計(TOKI産業社製)を用い、1秒−1のせん断速度で測定した。
例1〜5については、不織布をエポキシ樹脂にて包埋し、ミクロトームを用いて断面カットを行った後、該断面を電子顕微鏡にて観察し、観察される繊維の直径を測定した。測定対象の繊維は140本とした。
不織布の電子顕微鏡写真を2mmまたは3mmの範囲で連続的に撮影し、該範囲内で両端部が確認できうる繊維がないことを確認した。
触媒の吐着効率は、下記のように測定した。
触媒層を形成するために吐出ノズルより吐出した紡糸原液の質量を測定し、該紡糸原液に含まれる全ての不揮発成分の質量%から、吐出ノズルから吐出された不揮発成分の質量W1を算出した。また、形成された触媒層の全質量W2を測定した。そして、W2とW1との比(W2/W1×100)を吐着効率とした。ただし、W2の測定の前に、触媒層に含まれる溶媒成分を除去するために、80℃で30分以上の乾燥処理を行った。
図15に示すガス拡散性の評価装置を用いてガス拡散性を測定した。
まず、内容積が96.0cm3であり、上面に半径R1の孔が形成された円筒体91の上面に、半径R2の円板状のサンプル92を載置し、該サンプルの上にサンプル92と同じ半径の円板状の蓋体93を載置し、サンプル92および蓋体93をさらに空気穴941を有するキャップ状の治具94で円筒体91の上面に固定した。圧力計95で円筒体91の内部の圧力を測定しながら、円筒体91に接続したポンプ96で円筒体91の内部の空気を抜き、円筒体91の内部が0.1kPa以下になった時点でポンプ96を止め、円筒体91の内部の圧力の上昇を記録した。円筒体91の内容積(96.0cm3)から透過した空気の透過速度を計算し、面内透過係数に換算した。なお、測定温度は23〜28℃の範囲であった。
Pm=(単位時間あたりの空気の透過体積)/(サンプル透過断面積S)×(透過距離)/(圧力差)。
ただし、Pmは、空気の面内透過係数であり、サンプル透過断面積Sは、2πR2・dであり、dは、サンプルの厚さであり、透過距離は、R2−R1である。
なお、単位時間あたりの空気の透過体積は、透過してくる空気の流入による圧力上昇から気体の状態方程式を基に計算される標準状態換算の空気の体積とする。
汎用の4端子プローブ法を用いて、導電性繊維が集積した不織布そのものの面内交流比抵抗を求め、触媒層の面内導電率を算出した。なお、測定温度が110℃、湿度が0%RHとなるように乾燥空気中で、加熱しながら測定を行うことにより、触媒層に含まれる含フッ素イオン交換樹脂がプロトン導電性を示さない条件で測定し、触媒層を形成する導電性物質(触媒)の特性から発現する電子導電率のみを評価した。
導電性繊維が集積した不織布からなる触媒層を、それが形成されている固体高分子電解質膜等の基材上に存在させたまま、2cm×2cmの寸法で切り出し、それを90℃温水中に2週間浸漬したのち、目視にて外観観察を行い、基材からのはがれ、触媒層自体の破壊、形態の崩れ等がみられないかどうかを観察するとともに、質量変化の有無を測定した。
膜電極接合体を、汎用のサーペンタイン型流路を有する面積25cm2の燃料電池評価セルに挿入し、両面から0.5Mpaの圧力で加圧し、アノードに水素ガスを0.5L/分で供給し、かつカソードに空気を、酸素ガスが1.2L/分となるように供給し、セル温度80℃、電力密度1.2A/cm2にて出力電圧を測定した。ガス加湿温度は64℃とした。
固体高分子電解質膜の作製:
エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(以下、ETFEと記す。)フィルム(旭硝子社製、厚さ:100μm)上に、TFEに基づく繰り返し単位と下式(11)で表される繰り返し単位とを有するポリマー(H11)(旭硝子社製、FlemionR、イオン交換容量:1.1ミリ当量/g乾燥樹脂)の水/エタノール溶液(溶媒組成:水/エタノール=4/6質量比、固形分:27質量%)を流延し、市販の循環式乾燥機の中にて80℃で30分間乾燥させ、厚さ10μmの固体高分子電解質膜を得た。さらに、同じ操作を2回繰り返し、ETFEフィルムつきの厚さ30μmの固体高分子電解質膜(MA1)を得た。さらに、市販の循環式乾燥機にて160℃で30分間加熱し、アニール処理を施した。
ポリマー(H11)の水/エタノール溶液(溶媒組成:水/エタノール=4/6質量比、固形分:27質量%)に、PEO(質量平均分子量:100万)を、0.3質量%となるように加えた後、マグネティックスターラを用いて室温で1時間混合し、粘度が2000mPa・sの紡糸原液(b1)を得た。
密封できる円筒型ポリエチレン製瓶(内容積:100cc)の中に、白金担持カーボン(田中貴金属社製、TEC10E50E、白金担持率:50質量%)の10g、蒸留水の26.9gを入れ、撹拌し、さらにエタノールの22.7gを加えた。ついで、ポリマー(H11)の水/エタノール溶液(溶媒組成:水/エタノール=4/6質量比、固形分:27質量%)の28.6gを加えた。さらに、直径5mmのZrO2粒子を40cc程度占有するように入れた後、ポリエチレン製瓶を市販のボールミル回転台の上で24時間回転させ、粘度が10000mPa・sの紡糸原液(c1)を得た。
図6に示す製造装置11および図7〜10に示す紡糸ノズル17を用意した。内側ノズル44としては、内径0.25mm、外径0.5mmの注射針を用いた。外側ノズル42としては、内径0.8mm、外径1.2mmの注射針を用いた。気体吹出ノズル14は、内径2.0mm、外径4.0mmとした。吐出ノズル12の先端からドラム18までの最短距離は、10cmとした。
不織布を構成する繊維の平均繊維径および触媒の吐着効率を表1に示す。繊維長が3mm以下の繊維は観察されなかった。触媒層(C1)のかさ密度は、0.9g/ccであり、単位面積あたりの白金量は、0.30mg/cm2であった。
また、膜触媒層接合体(MC1)について、ガス拡散性、導電率、耐水性を評価した。結果を表2に示す。
マイクロポーラス層コートつきの高拡散性カーボンペーパー(SGL カーボン ジャパン社販売、GDL25BC)を用意し、ガス拡散層(GDL1)とした。
紡糸原液(c1)を、固形分が12質量%となるように、水/エタノールの混合溶媒(1/1質量比)で希釈し、紡糸原液(c1)の調製時と同様にボールミルで24時間撹拌して触媒層形成用塗工液を得た。
ガス拡散層(GDL1)のマイクロポーラス層上に、触媒層形成用塗工液を、ダイコート法にて流延し、80℃で30分間乾燥させて触媒層(A1)を形成し、アノード(AN1)を得た。触媒層(A1)のかさ密度は、1.2g/ccであり、単位面積あたりの白金量は、0.05mg/cm2であった。
カーボンペーパー(SGL カーボン ジャパン社販売、GDL25BA)を用意し、ガス拡散層(GDL2)とした。
膜触媒層接合体(MC1)からETFEフィルムを剥がした後、膜触媒層接合体(MC1)の触媒層(C1)とガス拡散層(GDL2)とを貼り合わせ、かつ膜触媒層接合体(MC1)の固体高分子電解質膜(MA1)とアノード(AN1)の触媒層(A1)とを貼り合わせて膜電極接合体(MEA1)を得た。
膜電極接合体(MEA1)の発電性能を評価した。結果を表2に示す。
触媒層(C2)の形成:
外側ノズル42からの紡糸原液(b1)の吐出量を3mL/時に変更した以外は、例1と同様にして図12に示すような芯鞘繊維(β)を形成し、該繊維を固体高分子電解質膜(MA1)上に集積させ、不織布とすることにより、カソード側の触媒層(C2)を形成し、膜触媒層接合体(MC2)を得た。
不織布を構成する繊維の平均繊維径および触媒の吐着効率を表1に示す。繊維長が3mm以下の繊維は観察されなかった。触媒層(C2)のかさ密度は、0.8g/ccであり、単位面積あたりの白金量は、0.30mg/cm2であった。
また、膜触媒層接合体(MC2)について、ガス拡散性、導電率、耐水性を評価した。結果を表2に示す。
膜触媒層接合体(MC1)の代わりに膜触媒層接合体(MC2)を用いた以外は、例1と同様にして膜電極接合体(MEA2)を得た。
膜電極接合体(MEA2)の発電性能を評価した。結果を表2に示す。
触媒層(C3)の形成:
内側ノズル42からの紡糸原液(c1)の吐出量を2mL/時に変更したた以外は、例1と同様にして図12に示すような芯鞘繊維(β)を形成し、該繊維を固体高分子電解質膜(MA1)上に集積させ、不織布とすることにより、カソード側の触媒層(C3)を形成し、膜触媒層接合体(MC3)を得た。
不織布を構成する繊維の平均繊維径および触媒の吐着効率を表1に示す。繊維長が3mm以下の繊維は観察されなかった。触媒層(C3)のかさ密度は、0.8g/ccであり、単位面積あたりの白金量は、0.34mg/cm2であった。
また、膜触媒層接合体(MC3)について、ガス拡散性、導電率、耐水性を評価した。結果を表2に示す。
膜触媒層接合体(MC1)の代わりに膜触媒層接合体(MC3)を用いた以外は、例1と同様にして膜電極接合体(MEA3)を得た。
膜電極接合体(MEA3)の発電性能を評価した。結果を表2に示す。
触媒層(C4)の形成:
内側ノズル44から紡糸原液(b1)を吐出させ、外側ノズル42から紡糸原液(c1)を吐出させた以外は、例1と同様にして図11に示すような芯鞘繊維(α)を形成し、該繊維を固体高分子電解質膜(MA1)上に集積させ、不織布とすることにより、カソード側の触媒層(C4)を形成し、膜触媒層接合体(MC4)を得た。
不織布を構成する繊維の平均繊維径および触媒の吐着効率を表1に示す。繊維長が3mm以下の繊維は観察されなかった。触媒層(C4)のかさ密度は、0.8g/ccであり、単位面積あたりの白金量は、0.33mg/cm2であった。
また、膜触媒層接合体(MC4)について、ガス拡散性、導電率、耐水性を評価した。結果を表2に示す。
膜触媒層接合体(MC1)の代わりに膜触媒層接合体(MC4)を用いた以外は、例1と同様にして膜電極接合体(MEA4)を得た。
膜電極接合体(MEA4)の発電性能を評価した。結果を表2に示す。
例1の紡糸原液(c1)を、固形分が12質量%となるように、水/エタノールの混合溶媒(1/1質量比)で希釈し、紡糸原液(c1)の調製時と同様にボールミルで24時間撹拌して触媒層形成用塗工液を得た。
ETFEフィルム(旭硝子社製、厚さ:100μm)上に、触媒層形成用塗工液を、ダイコート法にて流延し、80℃で30分間乾燥させて触媒層(C6)を形成した。触媒層(C5)の単位面積あたりの白金量は、0.4mg/cm2であった。
触媒層(C6)と例1の固体高分子電解質膜(MA1)とを重ね、温度130℃、圧力3MPaのプレス条件にて積層し、膜触媒層接合体(MC6)を得た。触媒層(C6)のかさ密度は、1.2g/ccであった。
また、膜触媒層接合体(MC6)について、ガス拡散性、導電率、耐水性を評価した。結果を表2に示す。
膜電極接合体(MEA6)の発電性能を評価したが、電流密度1.2A/cm2では発電できなかった。
不織布(F1)の形成:
図1に示す製造装置10および図2〜5に示す紡糸ノズル16を用意した。吐出ノズル12としては、内径0.25mm、外径0.5mmの注射針を用いた。気体吹出ノズル14は、内径2.0mm、外径4.0mmとした。吐出ノズル12の先端からドラム18までの最短距離は、10cmとした。
電解質膜(MA1)を巻き付け、ドラム18を回転させた。ポンプ22およびポンプ26を作動させ、吐出ノズル12から紡糸原液(b1)を9mL/時で吐出させ、気体吹出ノズル14から空気を3.5L/分で吐出させ、繊維を形成した。該繊維を回転するドラム18上の固体高分子電解質膜(MA1)上に集積させ、不織布を形成した。
不織布を構成する繊維の平均繊維径および吐着効率を表3に示す。
不織布(F2)の形成:
気体吹出ノズル14からの空気の吹き出しを行わなかった以外は、例6と同様にして繊維を形成し、該繊維を固体高分子電解質膜(MA1)上に集積させ、不織布(F2)を形成した。
不織布を構成する繊維の平均繊維径および吐着効率を表3に示す。
14 気体吹出ノズル
Claims (5)
- 含フッ素イオン交換樹脂と溶媒とを含む紡糸原液を吐出ノズルから吐出し、該吐出された紡糸原液から溶媒を蒸発させる紡糸法によって繊維を製造する方法であって、
前記紡糸法によって紡糸されつつある前記紡糸原液を気流によって延伸する繊維の製造方法。 - 前記紡糸原液が、導電性物質をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の繊維の製造方法。
- 少なくとも1種が含フッ素イオン交換樹脂と溶媒とを含み、かつ少なくとも1種が導電性物質と溶媒とを含むn種類(ただし、nは2以上の整数である。)の紡糸原液をそれぞれ吐出ノズルから同時に吐出し、該吐出された前記n種類の紡糸原液から溶媒を蒸発させる紡糸法によって導電性複合繊維を製造する方法であって、
前記紡糸法によって複合して紡糸されつつある前記n種類の紡糸原液を気流によって延伸する、繊維の製造方法。 - 前記導電性物質が、金属を含む触媒であることを特徴とする請求項2または3に記載の繊維の製造方法。
- 固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の触媒層の製造方法であって、
請求項4に記載の製造方法によって製造された繊維を集積して、不織布とし、該不織布を有する触媒層を得る、触媒層の製造方法。
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