JPWO2019069789A1 - 電極触媒層、膜電極接合体、および、固体高分子形燃料電池 - Google Patents
電極触媒層、膜電極接合体、および、固体高分子形燃料電池 Download PDFInfo
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Abstract
電極触媒層は、触媒物質を担持した炭素粒子と、高分子電解質の凝集体と、有機電解質繊維としての高分子電解質繊維とを含む。高分子電解質繊維の平均繊維径は、2μm以下であり、1μm以下であることが好ましい。膜電極接合体は、高分子電解質膜と、高分子電解質膜を挟む一対の電極触媒層とを備え、一対の電極触媒層の少なくとも一方が、高分子電解質繊維を含む電極触媒層である。
Description
本発明は、燃料電池に備えられる電極触媒層、電極触媒層を備えた膜電極接合体、および、固体高分子形燃料電池に関する。
環境問題やエネルギー問題の解決に寄与する電池として、燃料電池が注目されている。燃料電池は、水素等の燃料と酸素等の酸化剤との化学反応を利用して、電力を生成する。燃料電池のなかでも、固体高分子形燃料電池は、低温での作動や小型化が可能であるため、携帯用電源、家庭用電源、車載用電源等としての利用が期待されている。
固体高分子形燃料電池は、アノードである燃料極を構成する電極触媒層と、カソードである空気極を構成する電極触媒層と、これら2つの電極触媒層に挟まれた高分子電解質膜とを有する膜電極接合体を備えている。燃料極を構成する電極触媒層には、水素を含む燃料ガスが供給され、空気極を構成する電極触媒層には、酸素を含む酸化剤ガスが供給される。その結果、燃料極と空気極とにおいて下記の電気化学反応が生じ、電力が生じる(例えば、特許文献1参照)。
燃料極:H2 → 2H++ 2e−
空気極:1/2O2 + 2H+ + 2e− → H2O
すなわち、燃料極に供給された燃料ガスから、電極触媒層が含む触媒の作用によりプロトンと電子とが生じる。プロトンは、電極触媒層と高分子電解質膜とが含む高分子電解質によって伝導され、高分子電解質膜を通って空気極に移動する。電子は、電極触媒層から外部回路に取り出され、外部回路を通って空気極に移動する。空気極では、酸化剤ガスと、燃料極から移動してきたプロトンおよび電子とが反応して水が生成される。このように、電子が外部回路を通ることにより電流が生じる。
燃料極:H2 → 2H++ 2e−
空気極:1/2O2 + 2H+ + 2e− → H2O
すなわち、燃料極に供給された燃料ガスから、電極触媒層が含む触媒の作用によりプロトンと電子とが生じる。プロトンは、電極触媒層と高分子電解質膜とが含む高分子電解質によって伝導され、高分子電解質膜を通って空気極に移動する。電子は、電極触媒層から外部回路に取り出され、外部回路を通って空気極に移動する。空気極では、酸化剤ガスと、燃料極から移動してきたプロトンおよび電子とが反応して水が生成される。このように、電子が外部回路を通ることにより電流が生じる。
ところで、電極触媒層の形成の際の乾燥による収縮等に起因して、電極触媒層にクラックが生じることがある。電極触媒層にクラックが存在すると、膜電極接合体において、クラックの部分から高分子電解質膜が露出し、こうした高分子電解質膜の露出は、膜電極接合体の耐久性の低下や、固体高分子形燃料電池の発電性能の低下の要因となる。
本発明は、クラックの発生を抑制することのできる電極触媒層、膜電極接合体、および、固体高分子形燃料電池を提供することを目的とする。
上記課題を解決する電極触媒層は、触媒物質を担持した炭素粒子と、高分子電解質の凝集体と、有機電解質繊維とを含み、前記有機電解質繊維の平均繊維径が、2μm以下である。
上記構成によれば、電極触媒層において有機電解質繊維が絡み合う構造が形成され、この構造が電極触媒層中で凝集体の支持体として機能するため、電極触媒層におけるクラックの発生が抑えられる。
上記構成において、前記有機電解質繊維の平均繊維径が、1μm以下であることが好ましい。
上記構成によれば、電極触媒層中に十分な空孔が形成されるため、この電極触媒層を備える固体高分子形燃料電池の出力の向上が可能である。
上記構成によれば、電極触媒層中に十分な空孔が形成されるため、この電極触媒層を備える固体高分子形燃料電池の出力の向上が可能である。
上記構成において、前記有機電解質繊維の平均繊維長が、1μm以上200μm以下であることが好ましい。
上記構成によれば、電極触媒層において有機電解質繊維が凝集することが抑えられるため、空孔が形成されやすくなる。また、電極触媒層において有機電解質繊維が絡み合う構造が好適に形成されるため、電極触媒層の強度が高められ、その結果、クラックの発生を抑える効果が高められる。
上記構成によれば、電極触媒層において有機電解質繊維が凝集することが抑えられるため、空孔が形成されやすくなる。また、電極触媒層において有機電解質繊維が絡み合う構造が好適に形成されるため、電極触媒層の強度が高められ、その結果、クラックの発生を抑える効果が高められる。
上記構成において、電極触媒層は炭素繊維をさらに含んでもよい。
上記構成によれば、電極触媒層において、有機電解質繊維によるプロトン伝導性の向上と炭素繊維による電子伝導性の向上とが可能であるため、この電極触媒層を備える固体高分子形燃料電池の出力の向上が可能である。
上記構成によれば、電極触媒層において、有機電解質繊維によるプロトン伝導性の向上と炭素繊維による電子伝導性の向上とが可能であるため、この電極触媒層を備える固体高分子形燃料電池の出力の向上が可能である。
上記構成において、前記電極触媒層が含む前記炭素粒子の総質量に対する前記有機電解質繊維の総質量の比は、0.1以上3.0以下であることが好ましい。
上記構成によれば、電極触媒層におけるプロトンの伝導が促進されるため、この電極触媒層を備える固体高分子形燃料電池の出力の向上が可能である。
上記構成によれば、電極触媒層におけるプロトンの伝導が促進されるため、この電極触媒層を備える固体高分子形燃料電池の出力の向上が可能である。
上記構成において、前記有機電解質繊維は、高分子電解質から構成されていてもよい。
上記構成によれば、電極触媒層におけるプロトン伝導性が高められる。
上記構成において、前記有機電解質繊維は高分子電解質から構成され、前記電極触媒層が含む前記炭素粒子の総質量に対する前記凝集体の総質量の比は、1.0以下であることが好ましい。
上記構成によれば、電極触媒層におけるプロトン伝導性が高められる。
上記構成において、前記有機電解質繊維は高分子電解質から構成され、前記電極触媒層が含む前記炭素粒子の総質量に対する前記凝集体の総質量の比は、1.0以下であることが好ましい。
上記構成によれば、電極触媒層中に空孔が形成されやすくなり、また、電極触媒層の形成に要する高分子電解質の量を低減することができる。電極触媒層が高分子電解質からなる繊維を含んでいるため、凝集体の比率が高くなくとも、良好なプロトン伝導性が得られる。その結果、当該電極触媒層を備える固体高分子形燃料電池の出力の向上が可能である。
上記課題を解決する膜電極接合体は、高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜を挟む一対の電極触媒層と、を備え、前記一対の電極触媒層の少なくとも一方が、上記電極触媒層である。
上記構成によれば、クラックの発生の抑えられた電極触媒層を備える膜電極接合体が実現される。
上記課題を解決する固体高分子形燃料電池は、上記膜電極接合体と、前記膜電極接合体を挟む一対のセパレータと、を備える。
上記課題を解決する固体高分子形燃料電池は、上記膜電極接合体と、前記膜電極接合体を挟む一対のセパレータと、を備える。
上記構成によれば、クラックの発生の抑えられた電極触媒層を備える固体高分子形燃料電池が実現される。
本発明によれば、電極触媒層におけるクラックの発生を抑制することができる。
図1〜図4を参照して、電極触媒層、膜電極接合体、および、固体高分子形燃料電池の一実施形態について説明する。
[電極触媒層および膜電極接合体]
図1〜図3を参照して、電極触媒層、および、電極触媒層を備える膜電極接合体の構成について説明する。
[電極触媒層および膜電極接合体]
図1〜図3を参照して、電極触媒層、および、電極触媒層を備える膜電極接合体の構成について説明する。
図1が示すように、膜電極接合体10は、高分子電解質膜11、および、燃料極触媒層12Aと空気極触媒層12Cとの2つの電極触媒層を備えている。燃料極触媒層12Aは、固体高分子形燃料電池のアノードである燃料極に用いられる電極触媒層であり、空気極触媒層12Cは、固体高分子形燃料電池のカソードである空気極に用いられる電極触媒層である。
高分子電解質膜11は、燃料極触媒層12Aと空気極触媒層12Cとの間に挟まれている。燃料極触媒層12Aは、高分子電解質膜11が有する2つの面の一方に接触し、空気極触媒層12Cは、高分子電解質膜11が有する2つの面の他方に接触している。
高分子電解質膜11が有する一方の面と対向する位置から見たとき、燃料極触媒層12Aの外形と空気極触媒層12Cの外形とはほぼ同形であり、これらの触媒層12A,12Cの外形よりも、高分子電解質膜11の外形は大きい。高分子電解質膜11の外形および触媒層12A,12Cの外形の形状は特に限定されず、例えば、矩形であればよい。
高分子電解質膜11は高分子電解質を含む。高分子電解質膜11に用いられる高分子電解質は、プロトン伝導性を有する高分子電解質であればよく、例えば、フッ素系高分子電解質や炭化水素系高分子電解質が用いられる。フッ素系高分子電解質としては、例えば、Nafion(登録商標:デュポン社製)が挙げられる。炭化水素系高分子電解質としては、例えば、エンジニアリングプラスチックや、エンジニアリングプラスチックの共重合体にスルホン酸基を導入した化合物等が挙げられる。
図2は、本実施形態の電極触媒層の第1の構成を模式的に示す。図2が示すように、燃料極触媒層12Aと空気極触媒層12Cとの各々は、触媒物質Psを担持した炭素粒子Pcである触媒物質担持炭素体20と、高分子電解質の凝集体21と、繊維状の高分子電解質である高分子電解質繊維22とを含む。高分子電解質繊維22は有機電解質繊維の一例である。電極触媒層においては、分散した触媒物質担持炭素体20の周囲に凝集体21および高分子電解質繊維22が位置し、かつ、これらの間に空孔Hlが形成されている。
触媒物質Psとしては、例えば、白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウムの白金族元素や、鉄、鉛、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属、あるいは、これらの合金、酸化物、複酸化物等が用いられる。特に、触媒物質Psとして白金または白金合金を用いることが好ましい。電極触媒層が含む複数の触媒物質Psの平均粒径は、0.5nm以上20nm以下であることが好ましく、1nm以上5nm以下であることがさらに好ましい。触媒物質Psの平均粒径が上記下限値以上であれば、触媒としての安定性が高められる。触媒物質Psの平均粒径が上記上限値以下であれば、触媒としての活性が高められる。
炭素粒子Pcは、微粒子状で導電性を有し、触媒に侵されない担体であればよい。炭素粒子Pcとしては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、黒鉛、活性炭、カーボンナノチューブ、フラーレン等からなる粉末状の炭素材料が用いられる。電極触媒層が含む複数の炭素粒子Pcの平均粒径は、10nm以上1000nm以下であることが好ましく、10nm以上100nm以下であることがより好ましい。炭素粒子Pcの平均粒径が上記下限値以上であれば、電極触媒層中に電子伝導のパスが形成されやすい。炭素粒子Pcの平均粒径が上記上限値以下であれば、抵抗が過大にならない程度に電極触媒層を薄く形成できるため、燃料電池の出力の低下が抑えられる。
触媒物質Psを担持させる炭素材料が粒子状であることで、炭素材料における触媒物質Psを担持可能な面積の増大が可能であり、炭素材料に高密度に触媒物質Psを担持させることができる。そのため、触媒活性の向上が可能である。
高分子電解質の凝集体21は、アイオノマーである高分子電解質が凝集力によって凝集した塊である。凝集力は、アイオノマー間に働くクーロン力やファンデルワールス力を含む。高分子電解質繊維22は、架橋等によって細長く延びる形状を構成している高分子電解質である。
凝集体21および高分子電解質繊維22を構成する高分子電解質は、プロトン伝導性を有する高分子電解質であればよく、例えば、フッ素系高分子電解質や炭化水素系高分子電解質が用いられる。フッ素系高分子電解質としては、例えば、Nafion(登録商標:デュポン社製)が挙げられる。炭化水素系高分子電解質としては、例えば、エンジニアリングプラスチックや、エンジニアリングプラスチックの共重合体にスルホン酸基を導入した化合物等が挙げられる。
凝集体21を構成する高分子電解質と、高分子電解質繊維22を構成する高分子電解質とは、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。また、凝集体21および高分子電解質繊維22の各々を構成する高分子電解質と、高分子電解質膜11を構成する高分子電解質とは、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。触媒層12A,12Cと高分子電解質膜11の密着性を高めるためには、触媒層12A,12Cが含む高分子電解質と、高分子電解質膜11が含む高分子電解質とは、同一の材料であることが好ましい。
触媒層12A,12Cに高分子電解質繊維22が含まれていることにより、高分子電解質繊維22同士が絡み合って電極触媒層中で支持体として機能するため、電極触媒層の割れ等が抑えられる。それゆえ、従来のように、電極触媒層が触媒物質担持炭素体20と高分子電解質の凝集体21とから構成される場合と比較して、電極触媒層にクラックが生じることが抑えられる。
また、固体高分子形燃料電池において電極反応を進めるためには、特に燃料極において、触媒物質Psの周囲に、導電物質である炭素粒子Pcと、プロトン伝導物質である高分子電解質と、電極触媒層に供給されるガスとが接する三相界面が形成されている必要がある。本実施形態では、複数の高分子電解質繊維22間の隙間に高分子電解質の凝集体21が入り込んでいることによって、触媒物質担持炭素体20と高分子電解質繊維22とのみから電極触媒層が構成されている場合と比較して、触媒物質Psと高分子電解質との接触確率が高められる。すなわち、上記三相界面が形成されている箇所を増やすことが可能であり、その結果、電極反応が促進されて固体高分子形燃料電池の出力が高められる。
電極触媒層が含む複数の高分子電解質繊維22の平均繊維径は、2μm以下である。平均繊維径が2μm以下であれば、電極触媒層に含有させる繊維材料として適当な細さが確保される。
固体高分子形燃料電池の出力の向上のためには、電極触媒層に供給されるガスが、電極触媒層の有する空孔Hlを通じて電極触媒層中に適切に拡散されること、および、特に空気極では電極反応により生成される水が空孔Hlを通じて適切に排出されることが望ましい。また、空孔Hlの存在により、上記三相界面が形成されやすくなって電極反応が促進されるため、これによっても固体高分子形燃料電池の出力の向上が可能である。
以上の観点から、電極触媒層は、的確な大きさおよび量の空孔Hlを有していることが好ましい。高分子電解質繊維22の平均繊維径が1μm以下であれば、電極触媒層において高分子電解質繊維22が絡まり合う構造のなかに十分な間隙が形成されて十分に空孔Hlが確保されるため、燃料電池の出力の向上が可能である。さらに、高分子電解質繊維22の平均繊維径が0.5nm以上500nm以下であると、燃料電池の出力が特に高められる。
電極触媒層が含む複数の高分子電解質繊維22の平均繊維長は、平均繊維径よりも大きく、1μm以上200μm以下であることが好ましい。平均繊維長が上記範囲内であれば、電極触媒層中において高分子電解質繊維22が凝集することが抑えられることにより、空孔Hlが形成されやすい。また、平均繊維長が上記範囲内であれば、電極触媒層中において高分子電解質繊維22が絡み合う構造が好適に形成されるため、電極触媒層の強度が高められ、その結果、クラックの発生を抑える効果が高められる。
電極触媒層が含む炭素粒子Pcの総質量に対する高分子電解質繊維22の総質量の比は、0.1以上3.0以下であることが好ましい。炭素粒子Pcと高分子電解質繊維22との質量比が上記範囲内であれば、電極触媒層におけるプロトンの伝導が促進されるため、燃料電池の出力の向上が可能である。なお、上記炭素粒子Pcの総質量は、炭素粒子Pcのみの総質量であって、炭素粒子Pcが担持している触媒物質Psの質量を含まない重さである。
図3は、本実施形態の電極触媒層の第2の構成を模式的に示す。図3が示すように、燃料極触媒層12Aと空気極触媒層12Cとの各々は、触媒物質担持炭素体20、高分子電解質の凝集体21、および、高分子電解質繊維22に加えて、炭素繊維23を含んでいてもよい。
炭素繊維23は、炭素を構成元素とする繊維状の構造体である。炭素繊維23としては、例えば、カーボンファイバー、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等からなる繊維状の炭素材料が用いられる。特に、カーボンナノファイバーもしくはカーボンナノチューブが用いられることが好ましい。
電極触媒層が含む複数の炭素繊維23の平均繊維径は、500nm以下であることが好ましい。平均繊維径が500nm以下であれば、電極触媒層に含有させる繊維材料として適当な細さが確保される。
電極触媒層が含む複数の炭素繊維23の平均繊維長は1μm以上200μm以下であることが好ましい。炭素繊維23の平均繊維長が上記範囲内であれば、電極触媒層中において高分子電解質繊維22および炭素繊維23が絡み合う構造が好適に形成されるため、電極触媒層の強度が高められ、その結果、クラックの発生を抑える効果が高められる。
第2の構成においては、複数の高分子電解質繊維22間に炭素繊維23が位置し、また、複数の炭素繊維23間に高分子電解質繊維22が位置するように、高分子電解質繊維22と炭素繊維23とが絡み合っている。そして、高分子電解質繊維22および炭素繊維23である繊維材料が絡み合って電極触媒層中で支持体として機能するため、第1の構成と同様に電極触媒層にクラックが生じることが抑えられる。
ここで、電極触媒層が、繊維材料として炭素繊維23のみを含み、高分子電解質繊維22を含まない形態であっても、炭素繊維23が絡み合う構造が形成されることにより、クラックの発生を抑えることは可能である。しかしながら、炭素繊維23は電子伝導にのみ寄与し、プロトン伝導に寄与しないため、電極触媒層が含む繊維材料が炭素繊維23のみである形態では、電極触媒層が含む高分子電解質の割合が小さくなり、その結果、電極触媒層におけるプロトン伝導性が低下する。高分子電解質の凝集体21を増量することでプロトン伝導性を補おうとすれば、空孔Hlの容積が低減してガスの拡散性や排水性等が維持できない。
これに対し、本実施形態では、電極触媒層が含む繊維材料に高分子電解質繊維22が含まれるため、繊維材料が炭素繊維23のみである形態と比較して、空孔Hlを確保しつつ電極触媒層におけるプロトンの伝導を促進することができる。
さらに、電極反応で生じた電子の取り出しのためには、電極触媒層には電子の伝導性も必要である。電極触媒層が繊維材料として高分子電解質繊維22と炭素繊維23とを含む形態であれば、電極触媒層におけるプロトン伝導性、電子伝導性、空孔Hlの形成状態、これらが好適となることにより、固体高分子形燃料電池の出力の向上が可能である。
第1の構成および第2の構成のいずれにおいても、電極触媒層がプロトン伝導に寄与する高分子電解質繊維22を含むため、電極触媒層が高分子電解質として凝集体21のみを含む場合と比較して、電極触媒層における凝集体21の含有量を低減することが可能である。電極触媒層が含む炭素粒子Pcの総質量に対する凝集体21の総質量の比は、1.0以下であることが好ましく、0.4以上0.8以下であることがさらに好ましい。なお、上記炭素粒子Pcの総質量は、炭素粒子Pcのみの総質量であって、炭素粒子Pcが担持している触媒物質Psの質量を含まない重さである。
なお、第1の構成にて説明した高分子電解質繊維22の平均繊維径および平均繊維長、炭素粒子Pcと高分子電解質繊維22との質量比に関する構成は、第2の構成にも適用できる。
高分子電解質繊維22および炭素繊維23の各々についての平均繊維径および平均繊維長は、例えば、走査型電子顕微鏡を用いて電極触媒層の断面を観察することによって計測可能である。例えば、平均繊維径は、上記断面における30μm×30μmの大きさの3個以上の測定領域に含まれる繊維ごとの最大径の平均値である。また例えば、平均繊維長は、上記断面における30μm×30μmの大きさの3個以上の測定領域に含まれる繊維ごとの最大長の平均値である。
[固体高分子形燃料電池]
図4を参照して、上述の膜電極接合体10を備える固体高分子形燃料電池の構成について説明する。
図4を参照して、上述の膜電極接合体10を備える固体高分子形燃料電池の構成について説明する。
図4が示すように、固体高分子形燃料電池30は、膜電極接合体10と、一対のガス拡散層31A,31Cと、一対のセパレータ32A,32Cとを備えている。膜電極接合体10は、ガス拡散層31Aとガス拡散層31Cとの間に挟まれており、ガス拡散層31Aは燃料極触媒層12Aに接し、ガス拡散層31Cは空気極触媒層12Cに接している。ガス拡散層31A,31Cは、導電性を有するとともに、触媒層12A,12Cに供給されるガスを拡散させる機能を有する。ガス拡散層31A,31Cとしては、例えば、カーボンクロスやカーボンペーパー等が用いられる。
膜電極接合体10とガス拡散層31A,31Cとの積層体は、セパレータ32Aとセパレータ32Cとの間に挟持されている。セパレータ32A,32Cは、導電性で、かつ、ガス不透過性の材料から構成される。セパレータ32Aにて、ガス拡散層31Aと向かい合う面には、ガス流路33Aが形成され、ガス拡散層31Aとは反対側の面には、冷却水流路34Aが形成されている。同様に、セパレータ32Cにて、ガス拡散層31Cと向かい合う面には、ガス流路33Cが形成され、ガス拡散層31Cとは反対側の面には、冷却水流路34Cが形成されている。
上記構成では、燃料極触媒層12Aとガス拡散層31Aとから、アノードである燃料極が構成され、空気極触媒層12Cとガス拡散層31Cとから、カソードである空気極が構成される。
固体高分子形燃料電池30の使用時には、燃料極側のセパレータ32Aのガス流路33Aに水素等の燃料ガスが流され、空気極側のセパレータ32Cのガス流路33Cに酸素等の酸化剤ガスが流される。また、各セパレータ32A,32Cの冷却水流路34A,34Cには、冷却水が流される。そして、ガス流路33Aから燃料極に燃料ガスが供給され、ガス流路33Cから空気極に酸化剤ガスが供給されることによって、電極反応が進行し、燃料極と空気極との間に起電力が生じる。なお、燃料極には、メタノール等の有機物燃料が供給されてもよい。
固体高分子形燃料電池30は、図4に示した単一のセルの状態で用いられてもよいし、複数の固体高分子形燃料電池30が積層されて直列接続されることにより1つの燃料電池として用いられてもよい。
なお、高分子電解質膜11および触媒層12A,12Cに加え、上記ガス拡散層31A,31Cを含めて、膜電極接合体10が構成されてもよい。また、固体高分子形燃料電池30は、触媒層12A,12Cに供給されるガス等が燃料電池から漏れることを抑える機能を有するガスケットを備えていてもよく、こうしたガスケットを含めて膜電極接合体10が構成されてもよい。ガスケットは、高分子電解質膜11および触媒層12A,12Cからなる積層体の外周を囲むように配置される。
[電極触媒層および膜電極接合体の製造方法]
上述の触媒層12A,12C、および、膜電極接合体10の製造方法を説明する。
触媒層12A,12Cは、触媒層12A,12Cの構成材料を含む触媒層用スラリーを基材に塗布して塗膜を形成し、塗膜を乾燥することによって形成される。
上述の触媒層12A,12C、および、膜電極接合体10の製造方法を説明する。
触媒層12A,12Cは、触媒層12A,12Cの構成材料を含む触媒層用スラリーを基材に塗布して塗膜を形成し、塗膜を乾燥することによって形成される。
触媒層用スラリーは、粉末状の高分子電解質、もしくは、粉末状の高分子電解質が溶解または分散された電解質液と、触媒物質担持炭素体20と、高分子電解質繊維22とを溶媒に加えて混合することによって生成される。高分子電解質繊維22は、例えば、エレクトロスピニング法等の利用によって形成される。第2の構成の電極触媒層を形成する場合には、触媒層用スラリーにさらに炭素繊維23が加えられる。
触媒層用スラリーの溶媒は、特に限定されない。溶媒の例としては、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイゾブチルケトン、メチルアミルケトン、ペンタノン、へプタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトニルアセトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アニソール、メトキシトルエン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジエチルアミン、アニリン等のアミン類、蟻酸プロピル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル類、酢酸、プロピオン酸、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンが挙げられる。また、グリコール系溶媒およびグリコールエーテル系溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジアセトンアルコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等が挙げられる。
触媒層12A,12Cの形成のための基材としては、例えば、触媒層12A,12Cを高分子電解質膜11に転写した後に剥離される転写基材が用いられる。転写基材としては、例えば、樹脂フィルムが用いられる。また、触媒層12A,12Cの形成のための基材として高分子電解質膜11が用いられてもよいし、ガス拡散層31A,31Cが用いられてもよい。
基材への触媒層用スラリーの塗布方法は、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ドクターブレード法、ダイコーティング法、ディッピング法、スクリーン印刷法、ラミネータロールコーティング法、スプレー法等が挙げられる。
基材に塗布された触媒層用スラリーである塗膜の乾燥方法としては、例えば、温風乾燥、赤外線乾燥等が用いられる。乾燥温度は、40℃以上200℃以下の程度であればよく、40℃以上120℃以下の程度であることが好ましい。乾燥時間は、0.5分以上1時間以下の程度であればよく、1分以上30分以下の程度であることが好ましい。
触媒層12A,12Cの形成のための基材として、転写基材あるいはガス拡散層31A,31Cが用いられる場合、熱圧着によって触媒層12A,12Cが高分子電解質膜11に接合される。基材として転写基材が用いられる場合、触媒層12A,12Cの接合後に転写基材は触媒層12A,12Cから剥離される。基材としてガス拡散層31A,31Cが用いられる場合、基材の剥離は不要である。
触媒層12A,12Cの形成のための基材として、高分子電解質膜11が用いられる製造方法であれば、触媒層12A,12Cが高分子電解質膜11の面上に直接に形成される。そのため、高分子電解質膜11と触媒層12A,12Cとの密着性が高く得られ、また、触媒層12A,12Cの接合のための加圧が不要であるため、触媒層12A,12Cが潰れることも抑えられる。したがって、触媒層12A,12Cの形成のための基材としては、高分子電解質膜11が用いられることが好ましい。
ここで、高分子電解質膜11は、膨潤および収縮が大きい特性を有するため、高分子電解質膜11を基材として用いると、転写基材やガス拡散層31A,31Cを基材として用いた場合と比較して、触媒層12A,12Cとなる塗膜の乾燥工程における基材の体積変化が大きい。それゆえ、従来のように電極触媒層が繊維材料を含まない構成であると、電極触媒層にクラックが生じやすい。これに対し、本実施形態の触媒層12A,12Cであれば、繊維材料の含有によりクラックの発生が抑えられるため、触媒層12A,12Cの形成のための基材として高分子電解質膜11を用いる製造方法の利用に適している。
また、本実施形態では、触媒層用スラリーにおいて、言い換えれば、膜の成形が行われる前の状態で、触媒物質担持炭素体20と、高分子電解質繊維22を含む繊維材料と、凝集体21となる粉末状の高分子電解質とが混合される。したがって、例えば、高分子電解質繊維22が絡み合った集合体を形成した後に、触媒物質担持炭素体20と粉末状の高分子電解質とを含む液状体を上記集合体に浸み込ませる製造方法と比較して、繊維材料間の隙間に凝集体21が均一に分散した電極触媒層の形成が可能である。それゆえ、上述のように三相界面が形成されやすくなるため、固体高分子形燃料電池の出力が高められる。
なお、固体高分子形燃料電池30は、膜電極接合体10に、ガス拡散層31A,31Cおよびセパレータ32A,32Cが組み付けられ、さらに、ガスの供給機構等が設けられることにより製造される。
[実施例]
上述した電極触媒層、膜電極接合体、および、固体高分子形燃料電池について、具体的な実施例および比較例を用いて説明する。
上述した電極触媒層、膜電極接合体、および、固体高分子形燃料電池について、具体的な実施例および比較例を用いて説明する。
(実施例1)
触媒物質担持炭素体として白金担持カーボン(TEC10E50E:田中貴金属社製)を用い、20gの白金担持カーボンを水に加えて混合後、10gの高分子電解質繊維、高分子電解質の分散液(Nafion分散液:和光純薬工業社製)、1−プロパノールを加えて撹拌して、触媒層用スラリーを生成した。高分子電解質繊維は、高分子電解質の分散液(Nafion分散液:和光純薬工業社製)を、エレクトロスピニング法を用いて繊維状にした後、冷却粉砕することによって作製した。高分子電解質繊維の平均繊維径は150nmであり、平均繊維長は10μmであった。なお、平均繊維径は一の位を四捨五入した値、平均繊維長は小数第一位を四捨五入した値で示している。また、触媒用スラリーに加える高分子電解質の分散液の量を、触媒用スラリー中において、触媒物質担持炭素体の炭素粒子の総質量に対する分散液中の高分子電解質の総質量の比が0.6となるように調整した。
触媒物質担持炭素体として白金担持カーボン(TEC10E50E:田中貴金属社製)を用い、20gの白金担持カーボンを水に加えて混合後、10gの高分子電解質繊維、高分子電解質の分散液(Nafion分散液:和光純薬工業社製)、1−プロパノールを加えて撹拌して、触媒層用スラリーを生成した。高分子電解質繊維は、高分子電解質の分散液(Nafion分散液:和光純薬工業社製)を、エレクトロスピニング法を用いて繊維状にした後、冷却粉砕することによって作製した。高分子電解質繊維の平均繊維径は150nmであり、平均繊維長は10μmであった。なお、平均繊維径は一の位を四捨五入した値、平均繊維長は小数第一位を四捨五入した値で示している。また、触媒用スラリーに加える高分子電解質の分散液の量を、触媒用スラリー中において、触媒物質担持炭素体の炭素粒子の総質量に対する分散液中の高分子電解質の総質量の比が0.6となるように調整した。
触媒用スラリーを高分子電解質膜(Nafion212:デュポン社製)にダイコーティング法を用いて塗布し、80℃の炉内で乾燥することによって、一対の電極触媒層と高分子電解質膜とを備える実施例1の膜電極接合体を得た。
さらに、膜電極接合体を2つのガス拡散層(SIGRACET 35BC:SGL社製)で挟み、JARI(Japan Automobile Research Institute)標準セルを利用して、実施例1の固体高分子形燃料電池を構成した。
(実施例2)
高分子電解質繊維として、平均繊維径が1.0μm、平均繊維長が10μmである高分子電解質繊維を用いたこと以外は、実施例1と同様の工程によって、実施例2の膜電極接合体および固体高分子形燃料電池を得た。なお、平均繊維径は小数第二位を四捨五入した値、平均繊維長は小数第一位を四捨五入した値で示している。
高分子電解質繊維として、平均繊維径が1.0μm、平均繊維長が10μmである高分子電解質繊維を用いたこと以外は、実施例1と同様の工程によって、実施例2の膜電極接合体および固体高分子形燃料電池を得た。なお、平均繊維径は小数第二位を四捨五入した値、平均繊維長は小数第一位を四捨五入した値で示している。
(実施例3)
高分子電解質繊維として、平均繊維径が1.3μm、平均繊維長が10μmである高分子電解質繊維を用いたこと以外は、実施例1と同様の工程によって、実施例3の膜電極接合体および固体高分子形燃料電池を得た。なお、平均繊維径は小数第二位を四捨五入した値、平均繊維長は小数第一位を四捨五入した値で示している。
高分子電解質繊維として、平均繊維径が1.3μm、平均繊維長が10μmである高分子電解質繊維を用いたこと以外は、実施例1と同様の工程によって、実施例3の膜電極接合体および固体高分子形燃料電池を得た。なお、平均繊維径は小数第二位を四捨五入した値、平均繊維長は小数第一位を四捨五入した値で示している。
(実施例4)
触媒層用スラリーに加える高分子電解質繊維の量を5gとし、さらに、5gの炭素繊維を加えたこと以外は、実施例1と同様の工程によって、実施例4の膜電極接合体および固体高分子形燃料電池を得た。炭素繊維としては、VGCF−H(昭和電工社製)を用いた。高分子電解質繊維の平均繊維径は150nmであり、平均繊維長は10μmであった。炭素繊維の平均繊維径は150nmであり、平均繊維長は10μmであった。なお、平均繊維径は一の位を四捨五入した値、平均繊維長は小数第一位を四捨五入した値で示している。
触媒層用スラリーに加える高分子電解質繊維の量を5gとし、さらに、5gの炭素繊維を加えたこと以外は、実施例1と同様の工程によって、実施例4の膜電極接合体および固体高分子形燃料電池を得た。炭素繊維としては、VGCF−H(昭和電工社製)を用いた。高分子電解質繊維の平均繊維径は150nmであり、平均繊維長は10μmであった。炭素繊維の平均繊維径は150nmであり、平均繊維長は10μmであった。なお、平均繊維径は一の位を四捨五入した値、平均繊維長は小数第一位を四捨五入した値で示している。
(実施例5)
触媒用スラリーに加える高分子電解質の分散液の量を、触媒用スラリー中において、触媒物質担持炭素体の炭素粒子の総質量に対する分散液中の高分子電解質の総質量の比が1.2となるように変更したこと以外は、実施例1と同様の工程によって、実施例5の膜電極接合体および固体高分子形燃料電池を得た。
触媒用スラリーに加える高分子電解質の分散液の量を、触媒用スラリー中において、触媒物質担持炭素体の炭素粒子の総質量に対する分散液中の高分子電解質の総質量の比が1.2となるように変更したこと以外は、実施例1と同様の工程によって、実施例5の膜電極接合体および固体高分子形燃料電池を得た。
(比較例)
触媒層用スラリーに高分子電解質繊維を加えないこと以外は、実施例1と同様の工程によって、比較例の膜電極接合体および固体高分子形燃料電池を得た。
触媒層用スラリーに高分子電解質繊維を加えないこと以外は、実施例1と同様の工程によって、比較例の膜電極接合体および固体高分子形燃料電池を得た。
(参考例)
触媒層用スラリーに、高分子電解質繊維に代えて、10gの炭素繊維を加えたこと以外は、実施例1と同様の工程によって、参考例の膜電極接合体および固体高分子形燃料電池を得た。炭素繊維としては、VGCF−H(昭和電工社製)を用いた。炭素繊維の平均繊維径は150nmであり、平均繊維長は10μmであった。なお、平均繊維径は一の位を四捨五入した値、平均繊維長は小数第一位を四捨五入した値で示している。
触媒層用スラリーに、高分子電解質繊維に代えて、10gの炭素繊維を加えたこと以外は、実施例1と同様の工程によって、参考例の膜電極接合体および固体高分子形燃料電池を得た。炭素繊維としては、VGCF−H(昭和電工社製)を用いた。炭素繊維の平均繊維径は150nmであり、平均繊維長は10μmであった。なお、平均繊維径は一の位を四捨五入した値、平均繊維長は小数第一位を四捨五入した値で示している。
(評価)
<クラックの発生の評価>
実施例、比較例、および、参考例の膜電極接合体について、電極触媒層の表面を顕微鏡(倍率:200倍)で観察して、クラックの発生状態を確認した。10μm以上の長さのクラックが生じていた場合を×、10μm以上の長さのクラックが生じていない場合を○として、評価結果を表1に示す。
<クラックの発生の評価>
実施例、比較例、および、参考例の膜電極接合体について、電極触媒層の表面を顕微鏡(倍率:200倍)で観察して、クラックの発生状態を確認した。10μm以上の長さのクラックが生じていた場合を×、10μm以上の長さのクラックが生じていない場合を○として、評価結果を表1に示す。
<発電性能の評価>
実施例、比較例、および、参考例の固体高分子形燃料電池について、発電性能として、出力密度を測定した。出力密度は、燃料ガスとして水素(100%RH)、酸化剤ガスとして空気(100%RH)を供給し、80℃の環境下における最大の出力密度を測定した。測定結果を表1に示す。
実施例、比較例、および、参考例の固体高分子形燃料電池について、発電性能として、出力密度を測定した。出力密度は、燃料ガスとして水素(100%RH)、酸化剤ガスとして空気(100%RH)を供給し、80℃の環境下における最大の出力密度を測定した。測定結果を表1に示す。
表1に示すように、電極触媒層が繊維材料を含まない比較例では大きなクラックが発生していることに対し、電極触媒層が高分子電解質繊維を含む実施例1〜5では、いずれも、クラックの発生が抑えられている。また、高分子電解質繊維の平均繊維径以外の条件が同一である実施例1〜3に着目すると、平均繊維径が1μm以下である実施例1,2では、平均繊維径が1μmを超える実施例3と比較して、燃料電池の出力が顕著に向上している。これは、高分子電解質繊維の平均繊維径が1μm以下である場合に、電極触媒層に空孔が好適に形成されることを示唆する。特に、高分子電解質繊維の平均繊維径がより小さい実施例1では、高い出力が得られる。
また、いずれも平均繊維径が1μm以下である高分子電解質繊維と炭素繊維とを含む実施例4では、さらに、燃料電池の出力が向上している。これは、繊維材料によって空孔が好適に形成されるとともに、2種類の繊維材料によって電極触媒層におけるプロトンおよび電子の伝導が促進されていることを示唆する。
さらに、実施例1と比較して、高分子電解質の凝集体の比率を増加させた実施例5においては、燃料電池の出力が低くなっている。これは、電極触媒層が高分子電解質繊維を含むことによりプロトンの伝導が促進されている一方で、高分子電解質の凝集体の量が増加することによって空孔の容積が低減し、水の排水性が低下していることを示唆する。
なお、繊維材料として炭素繊維のみを含む参考例でも、クラックの発生は抑えられているものの、参考例と同じ比率で高分子電解質の凝集体を含む実施例と比較すると、繊維材料として高分子電解質繊維のみを含む実施例1,2の方が、燃料電池の出力が高い傾向を示す。さらに、高分子電解質繊維と炭素繊維とを含む実施例4では、特に高い出力が得られている。したがって、平均繊維径が1μm以下の高分子電解質繊維を含む電極触媒層であれば、繊維材料として炭素繊維のみを含む電極触媒層と比較して、燃料電池の出力の向上が可能であることが示唆される。
以上、実施例を用いて説明したように、上記実施形態の電極触媒層、膜電極接合体、および、固体高分子形燃料電池によれば、以下の効果が得られる。
(1)触媒層12A,12Cが、平均繊維径が2μm以下である高分子電解質繊維22を含む。こうした構成によれば、電極触媒層において高分子電解質繊維22が絡み合う構造が形成され、この構造が電極触媒層中で凝集体21の支持体として機能するため、触媒層12A,12Cにおけるクラックの発生が抑えられる。
(1)触媒層12A,12Cが、平均繊維径が2μm以下である高分子電解質繊維22を含む。こうした構成によれば、電極触媒層において高分子電解質繊維22が絡み合う構造が形成され、この構造が電極触媒層中で凝集体21の支持体として機能するため、触媒層12A,12Cにおけるクラックの発生が抑えられる。
(2)高分子電解質繊維22の平均繊維径が1μm以下であれば、電極触媒層中に十分な空孔Hlが形成されるため、燃料電池の出力の向上が可能である。
(3)高分子電解質繊維22の平均繊維長が1μm以上200μm以下であることにより、電極触媒層において高分子電解質繊維22が凝集することが抑えられるため、空孔Hlが形成されやすくなる。また、電極触媒層において高分子電解質繊維22が絡み合う構造が好適に形成されるため、電極触媒層の強度が高められ、その結果、クラックの発生を抑える効果が高められる。
(3)高分子電解質繊維22の平均繊維長が1μm以上200μm以下であることにより、電極触媒層において高分子電解質繊維22が凝集することが抑えられるため、空孔Hlが形成されやすくなる。また、電極触媒層において高分子電解質繊維22が絡み合う構造が好適に形成されるため、電極触媒層の強度が高められ、その結果、クラックの発生を抑える効果が高められる。
(4)触媒層12A,12Cが、炭素繊維23をさらに含む構成であれば、電極触媒層において、高分子電解質繊維22によるプロトン伝導性の向上と炭素繊維23による電子伝導性の向上とが可能であるため、燃料電池の出力の向上が可能である。
(5)電極触媒層が含む炭素粒子Pcの総質量に対する高分子電解質繊維22の総質量の比が0.1以上3.0以下である構成によれば、電極触媒層におけるプロトンの伝導が促進されるため、燃料電池の出力の向上が可能である。
(6)電極触媒層が含む炭素粒子Pcの総質量に対する高分子電解質の凝集体21の総質量の比が1.0以下である構成によれば、空孔Hlが形成されやすくなり、また、電極触媒層の形成に要する高分子電解質の量を低減することができる。電極触媒層が高分子電解質繊維22を含むことにより、凝集体21の比率が高くなくとも、良好なプロトン伝導性が得られる。
[変形例]
上記実施形態は、以下のように変更して実施することが可能である。
・膜電極接合体10において、燃料極触媒層12Aと空気極触媒層12Cとの一方のみが高分子電解質繊維22を含む電極触媒層であってもよい。こうした構成であっても、燃料極触媒層12Aと空気極触媒層12Cとの双方が繊維材料を含まない構成と比較して、高分子電解質繊維22を含む一方の電極触媒層においては、クラックが抑えられる点で利点がある。また、燃料極触媒層12Aと空気極触媒層12Cとの一方が、繊維材料として高分子電解質繊維22のみを含み、他方が、繊維材料として高分子電解質繊維22と炭素繊維23とを含んでもよい。
上記実施形態は、以下のように変更して実施することが可能である。
・膜電極接合体10において、燃料極触媒層12Aと空気極触媒層12Cとの一方のみが高分子電解質繊維22を含む電極触媒層であってもよい。こうした構成であっても、燃料極触媒層12Aと空気極触媒層12Cとの双方が繊維材料を含まない構成と比較して、高分子電解質繊維22を含む一方の電極触媒層においては、クラックが抑えられる点で利点がある。また、燃料極触媒層12Aと空気極触媒層12Cとの一方が、繊維材料として高分子電解質繊維22のみを含み、他方が、繊維材料として高分子電解質繊維22と炭素繊維23とを含んでもよい。
・電極触媒層が含む繊維材料は、電解質として機能する繊維であればよく、換言すれば、プロトン伝導性を有する有機電解質繊維であればよい。有機電解質繊維は、上記実施形態のように、その全体が高分子電解質からなる繊維であってもよいし、あるいは、一部が高分子電解質から構成され、残部が高分子電解質とは異なる物質から構成された繊維であってもよい。
Hl…空孔、Pc…炭素粒子、Ps…触媒物質、10…膜電極接合体、11…高分子電解質膜、12A…燃料極触媒層、12C…空気極触媒層、20…触媒物質担持炭素体、21…凝集体、22…高分子電解質繊維、23…炭素繊維、30…固体高分子形燃料電池、31A,31C…ガス拡散層、32A,32B…セパレータ、33A,33C…ガス流路、34A,34C…冷却水流路。
Claims (9)
- 触媒物質を担持した炭素粒子と、高分子電解質の凝集体と、有機電解質繊維とを含み、前記有機電解質繊維の平均繊維径が、2μm以下である
電極触媒層。 - 前記有機電解質繊維の平均繊維径が、1μm以下である
請求項1に記載の電極触媒層。 - 前記有機電解質繊維の平均繊維長が、1μm以上200μm以下である
請求項1または2に記載の電極触媒層。 - 炭素繊維をさらに含む
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電極触媒層。 - 前記電極触媒層が含む前記炭素粒子の総質量に対する前記有機電解質繊維の総質量の比は、0.1以上3.0以下である
請求項1〜4のいずれか一項に記載の電極触媒層。 - 前記有機電解質繊維は、高分子電解質から構成されている
請求項1〜5のいずれか一項に記載の電極触媒層。 - 前記電極触媒層が含む前記炭素粒子の総質量に対する前記凝集体の総質量の比は、1.0以下である
請求項6に記載の電極触媒層。 - 高分子電解質膜と、
前記高分子電解質膜を挟む一対の電極触媒層と、を備え、
前記一対の電極触媒層の少なくとも一方が、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電極触媒層である
膜電極接合体。 - 請求項8に記載の膜電極接合体と、
前記膜電極接合体を挟む一対のセパレータと、
を備える固体高分子形燃料電池。
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