JP2010095788A - ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記(A)〜(C)の工程から選ばれる少なくともひとつの工程を含むことを特徴とする。(A)前記鉱石処理工程から産出する鉱石スラリー中のシリカ鉱物、クロマイト又はケイ苦土鉱から選ばれる少なくとも1種を含む粒子を、物理分離法により分離回収する。(B)前記固液分離工程から産出する浸出残渣スラリー中のヘマタイト粒子を、物理分離法により分離回収する。(C)前記中和工程から産出する中和殿物スラリーは、前記固液分離工程から産出する浸出残渣スラリーとは別途に最終中和処理する。
【選択図】図1
Description
工程(a):あらかじめスラリー化した酸化鉱石を、工程(b)で得られた加圧浸出液により、硫酸酸性下で常圧浸出し、常圧浸出液と常圧浸出残留物を得る。
工程(b):工程(a)で得られた常圧浸出残留物を高温高圧下に酸化性雰囲気下で硫酸と反応させ、加圧酸浸出液を得る。
工程(c):工程(a)で得られた常圧浸出液に中和剤を加えて中和し、次いで硫化アルカリ化合物を添加し、浸出液中のニッケル及びコバルトを硫化物として回収する。
(1)浸出工程:ニッケル酸化鉱石をスラリー化して硫酸を添加し、220〜280℃の温度で撹拌処理し、浸出スラリーを形成する。
(2)固液分離工程:前記浸出スラリーを多段階のシックナーを用いて洗浄し、ニッケル及びコバルトを含む浸出液と浸出残渣とに分離する。
(3)中和工程:前記浸出液の酸化を抑制しながら、炭酸カルシウムを用いてpHが4以下となるよう調整し、3価の鉄を含有する中和殿物を生成し、中和殿物スラリーとニッケル回収用母液とに分離する。及び
(4)硫化工程:前記ニッケル回収用母液に硫化水素ガスを吹きこみ、ニッケル及びコバルトを含有する硫化物を生成し、貧液と分離する。
図2において、ニッケル酸化鉱石8は、最初に、鉱石処理工程1で水と混合され、次いで異物除去及び鉱石粒度調整が行われ、鉱石スラリー9を形成する。次に、鉱石スラリー9は、浸出工程2で、硫酸を用いた高温加圧浸出に付され、浸出スラリー10が形成される。浸出スラリー10は、固液分離工程3に付され、多段洗浄された後、ニッケル及びコバルトを含む浸出液11と浸出残渣スラリー12に分離される。浸出液11は、中和工程4に付され、3価の鉄水酸化物を含む中和殿物スラリー13とニッケル回収用の母液(1)14に分離される。母液(1)14は、硫化剤を添加する亜鉛除去工程5に付され、硫化亜鉛を含む硫化亜鉛殿物15とニッケル回収用の母液(2)16とに分離される。次に、母液(2)16は、硫化工程6に付され、ニッケル及びコバルトを含む混合硫化物17とニッケル等が除去された貧液18に分離される。なお、貧液18は、固液分離工程3における浸出残渣の洗浄水として使用される。
最後に、浸出残渣スラリー12は、余剰の貧液18とともに、最終中和工程7に付され、中和処理され、最終中和残渣19は、テーリングダム20に貯留される。
(1)設備の磨耗の抑制:ニッケル酸化鉱石はスラリーとして各工程間を搬送されるが、設備材料の磨耗が著しく促進され、とりわけ浸出工程における配管、ポンプ等の設備では補修頻度が高く、メンテナンスコストの上昇とプラント稼働率の低下の大きな原因となっていた。すなわち、ニッケル酸化鉱石中に含有されるクロマイトは、特に硬く、スラリーの搬送を伴う湿式製錬プラントにおいては、配管、ポンプ等の磨耗を著しく助長する成分であり、浸出工程で処理する原料鉱石から除去することが望ましい。
下記の(A)〜(C)の工程から選ばれる少なくともひとつの工程を含むことを特徴とするニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法が提供される。
(A)前記鉱石処理工程から産出する鉱石スラリー中のシリカ鉱物、クロマイト又はケイ苦土鉱から選ばれる少なくとも1種を含む粒子を、物理分離法により分離回収する。
(B)前記固液分離工程から産出する浸出残渣スラリー中のヘマタイト粒子を、物理分離法により分離回収する。
(C)前記中和工程から産出する中和殿物スラリーは、前記固液分離工程から産出する浸出残渣とは別途に最終中和処理する。
下記の(A)〜(C)の工程から選ばれる少なくともひとつの工程を含むことを特徴とする。
(A)前記鉱石処理工程から産出する鉱石スラリー中のシリカ鉱物、クロマイト又はケイ苦土鉱から選ばれる少なくとも1種を含む粒子を、物理分離法により分離回収する。
(B)前記固液分離工程から産出する浸出残渣スラリー中のヘマタイト粒子を、物理分離法により分離回収する。
(C)前記中和工程から産出する中和殿物スラリーは、前記固液分離工程から産出する浸出残渣とは別途に最終中和処理する。
ここで、(A)の工程を採用すれば、前記鉱石処理工程から産出する鉱石スラリー中のシリカ鉱物、クロマイト及びケイ苦土鉱を含む粒子を分離回収することにより、該鉱石スラリーによる配管、ポンプ等の設備の磨耗を抑制するとともに、鉱石スラリーの固形率を上昇させることができる。すなわち、ニッケル酸化鉱石に一般的に含有される極めて硬度が高いクロマイト又はケイ苦土(ケイ酸マグネシウム)鉱を分離することにより、磨耗を抑制するとともに、ニッケル酸化鉱石に一般的に含有されている沈降性に悪影響を及ぼす低密度のクリストバライト(無定形シリカ)、粘度質の凝集塊(例えば、モンモリロナイト:鉄、アルミニウムの含水珪酸塩)を分離することにより、鉱石スラリーの固形率の上昇を妨害する要因の一つを排除することができる。さらに、これら不純物成分を分離すれば、浸出残渣量の低下により最終中和残渣量を低減することができ、しかも、硫酸使用量に大きく影響する不純物元素含有量の低減も達成される。ところで、これら不純物成分、特にクロマイトは有効活用することができる。なお、クロマイトはステンレス鋼の成分となるクロムを含む有価鉱物であるので、分離回収されれば有効な資源として活用できる。ここで、ステンレス鋼製造の添加元素として用いるフェロクロムの製造原料として使用する際には、処理効率やコストの点から、例えば5質量%以上となるクロム品位で分離することが好ましい。
図1は、本発明に係るニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法による実施態様の一例を表す製錬工程図である。
図1において、まずニッケル酸化鉱石8は、鉱石処理工程1で水と混合され、次いで異物除去及び鉱石粒度調整が行われ、鉱石スラリー9を形成する。この際、或いはその後、鉱石スラリー9は、新たに設けた(A)の工程21に付され、シリカ鉱物、ケイ苦土鉱又はクロマイト等22が分離回収される。鉱石スラリー9は、浸出工程2に付される。ここで、鉱石スラリー9は、オートクレーブなどを用いてニッケル、コバルト等の有価成分が硫酸で浸出され、浸出スラリー10が形成される。浸出スラリー10は、多段のシックナーなどを用いた固液分離工程3に付され、ニッケル及びコバルトを含む浸出液11と浸出残渣スラリー12とに分離される。
(1)鉱石処理工程及び(A)の工程
上記鉱石処理工程は、異物除去及び鉱石粒度調整を行い、鉱石スラリーを形成する工程である。ここで、ニッケル酸化鉱石を、湿式篩等で篩い分けし、浸出工程で浸出できない異物、ポンプで流送困難な粒度の鉱石等を分離する。ここで、篩分け粒度は、通常、2mm程度、好ましくは1.4mmであり、それ以上の粒度の鉱石は、解砕処理される。この解砕−篩分け処理を通過した鉱石によりスラリーが形成され、次いで沈降させて濃縮し、スラリー中の固体濃度(スラリー濃度)を調整した鉱石スラリーを調製する。なお、スラリー濃度としては、通常、25〜45質量%程度に調整される。
このため、鉱石処理工程で調製する鉱石スラリーから、クリストバライト等のシリカ鉱物、クロマイト及びケイ苦土鉱を事前に鉱石処理工程において分離回収しておくこと望ましい。
ニッケル酸化鉱石のEPMA観察では、クロム、ケイ素、及びマグネシウム含有量の高い部分は、鉄含有量の高い部分とは独立した単独相として存在する比率が高く、かつ20〜1000μmの粒径であるものが多い。このことは、クロム、ケイ素、及びマグネシウムを含む鉱物は、約20μm以上の粒子に多く含まれており、一方、ニッケル及び鉄を含む鉱物は、約20μm以下の粒子に多く含まれていることを示している。
表1は、2mm以下の粒度に解砕して得た鉱石スラリーの鉱石粒度分布と各粒度区分での各成分の品位の一例を示すものであるが、表1より、75μm以上の粗粒部の各粒度区分に、クロム、ケイ素、マグネシウム等が濃縮されること、及び特に、355μm以上の粗粒部の各粒度区分に、ケイ素、マグネシウム等が濃縮されることが分かる。
また、上記粗粒部において、ケイ素及びマグネシウムを高含有量で含む粒子は、クロムを高含有量で含む粒子よりも粗粒側により多く分布するので、これらを所定の粒度で分級して、ケイ素及びマグネシウムを高含有量で含む粒子を分離して、クロム含有量を向上させた濃縮物を回収することができる。
例えば、鉱石スラリーを篩分け分級又は遠心分級による物理分離法に付し、その際、分級された粗粒部を、シリカ鉱物、クロマイト又はケイ苦土鉱の濃縮物として回収する方法が採用される。すなわち、前記分級において、分級された粗粒部にシリカ鉱物、クロマイト、ケイ苦土鉱などの脈石成分が、一方、分級された細粒部にニッケルが含有されるゲーサイト及び含水ケイ苦土鉱が分布する。
上記浸出工程は、上記鉱石処理工程及び(A)の工程で得られた鉱石スラリーに硫酸を添加し、220〜280℃の温度下で撹拌処理して、浸出残渣と浸出液からなる浸出スラリーを形成する工程である。この工程では、主要設備として、プレヒーター、オートクレーブ、及びフラッシュタンクが用いられる。
MO+H2SO4 ⇒ MSO4+H2O (1)
(式中Mは、Ni、Co、Fe、Zn、Cu、Mg、Cr、Mn等を表す。)
2Fe(OH)3+3H2SO4 ⇒ Fe2(SO4)3+6H2O (2)
FeO+H2SO4 ⇒ FeSO4+H2O (3)
2FeSO4+H2SO4+1/2O2 ⇒ Fe2(SO4)3+H2O (4)
Fe2(SO4)3+3H2O⇒ Fe2O3+3H2SO4 (5)
上記固液分離工程は、上記浸出工程で形成される浸出スラリーを多段洗浄して、ニッケル及びコバルトを含む浸出液と浸出残渣を得る工程である。これによって、浸出残渣に付着して廃棄されるニッケル等を浸出液中に回収する。
上記中和工程は、上記浸出工程で得られた浸出液の酸化を抑制しながら、pHが4以下、好ましくは3.2〜3.8となるように炭酸カルシウムを添加し、3価の鉄を含む中和殿物スラリーとニッケル回収用の母液を形成する工程である。これによって、上記浸出工程で用いた過剰の酸の中和を行うとともに、溶液中に残留する3価の鉄イオンの除去を行うものである。すなわち、pHが4を超えると、ニッケルの水酸化物の発生が多くなる。
得られた中和殿物スラリーは、新たに設ける(C)の工程に当たる最終中和工程(2)へ送られ処理される。
上記亜鉛除去工程は、ニッケル及びコバルトを硫化物として分離する工程に先だって、上記母液に硫化水素ガスを吹きこみ、亜鉛を含む硫化物を生成し、硫化亜鉛殿物スラリーとニッケル及びコバルト回収用の母液を形成する工程である。これは硫化反応の際に弱い条件を作り出すことで硫化反応の速度を抑制し、亜鉛と比較して濃度の高い共存するニッケルの共沈を抑制することにより、亜鉛を選択的に除去するものである。
得られた硫化亜鉛殿物スラリーは、上記中和工程で得られる中和殿物スラリーと同様に最終中和工程(2)へ送られ処理することができる。
上記硫化工程は、上記脱亜鉛工程で得られるニッケル及びコバルト回収用の母液に、硫化水素を吹き込み、ニッケル及びコバルトを含む混合硫化物と貧液とを生成する工程である。
ここで、得られた貧液は、pHが1〜3程度、硫化されずに含まれる鉄、マグネシウム、マンガン等の不純物のほかに、回収ロスであるニッケル及びコバルトを僅かに含んでいるので、固液分離工程における浸出残渣の洗浄水、及び中和工程で産出する中和残渣の洗浄水として使用される。
上記最終中和工程(1)は、上記浸出残渣スラリーに余剰の貧液を加え、それに石灰石スラリーと消石灰スラリーを添加して、pHを8〜9程度に調整し、液中の金属イオンを中和殿物として沈殿させ、該浸出残渣を含む最終中和残渣(1)を得る工程である。
上記浸出残渣は、ヘマタイトを主成分として含有し、上記浸出工程で未浸出の石英、クロマイト、ケイ苦土鉱等の脈石成分を含有する。
まず、表4に、約2mm以下の粒度に解砕して得た鉱石スラリー(表1参照。)を浸出した際に得られた浸出残渣の鉱石粒度分布と各粒度区分での各成分の品位の一例を示す。
例えば、浸出残渣スラリー又はそれを含む最終中和残渣スラリーを篩分け分級又は遠心分級による物理分離法に付し、その際、分級された細粒部をヘマタイト濃縮物として回収する方法が採用される。
すなわち、前記分級において、分級された細粒部にヘマタイトが、一方、分級された粗粒部に脈石成分が分布する。
表5に、約2mm以下の粒度に破砕して得た鉱石スラリー(表4参照。)を浸出し、中和処理した際に得られた最終中和残渣の鉱石粒度分布と各粒度区分での各成分の品位の一例を示す。
上記最終中和工程(2)は、上記中和工程で得られる中和殿物スラリー、或いは、必要に応じて、これに上記亜鉛除去工程で得られる硫化亜鉛殿物スラリーを加えて、石灰石スラリーと消石灰スラリーを添加して、pHを8〜9程度に調整し、液中の金属イオンを中和殿物として沈殿させ、最終中和残渣(2)を得る工程である。なお、得られた最終中和残渣(2)は、テーリングダムで貯留される。
上記(A)の工程として、鉱石スラリーから、遠心分級により、シリカ鉱物、クロマイト及びケイ苦土鉱を濃縮分離した。
分級装置として、最大100Gの遠心力を持つネルソン・コンセントレーター(ネルソン社(Knelson Engineering and Manufacturing Division)製)を用いて、上記表1に示す鉱石スラリーの分級を行った。
ここで、スラリー濃度を15質量%とし、液温は常温とした。
得られた結果を表6に示す。
以上より、鉱石スラリーの分級により、粗粒部にシリカ鉱物、クロマイト及びケイ苦土鉱が濃縮され、分離されることが分かる。
上記(B)の工程として、浸出残渣から、遠心分級により、ヘマタイトを濃縮分離した。
上記表1に示す鉱石スラリーを用いて、スラリー濃度が30質量%のスラリーに、硫酸濃度45g/Lの硫酸を添加し、撹拌機付きのオートクレーブに装入し、浸出温度245℃で、所定の浸出温度に昇温後60分の浸出時間として浸出した。次いで、浸出終了後、浸出残渣と浸出液とを濾別し、得られた浸出残渣(上記表4参照。)を、実施例1で用いたものと同様の分級装置を用いて分級した。
なお、浸出液の組成は、Ni:7.1g/L、Co:0.6g/L、及びFe:5g/Lであった。
得られた結果を表7に示す。
以上より、浸出残渣の分級により、細粒部にヘマタイトが濃縮され、分離されることが分かる。
上記(B)の工程として、最終中和残渣から、遠心分級により、ヘマタイトを濃縮分離した。
上記浸出残渣(上記表4参照。)に、濃度25質量%の消石灰スラリーを中和剤として添加し、60℃で、pH8.5になるように中和した。さらに得られた最終中和残渣(上記表5参照。)を実施例1で用いたものと同様の分級装置で分級した。得られた結果を表8に示す。
上記(B)の工程として、最終中和残渣から、磁選分離により、ヘマタイトを濃縮分離した。
最終中和残渣スラリー(上記表5参照。)を用いて、高勾配磁気分離機(HGMS)を使用して、磁選した。なお、最終中和条件は実施例3と同様であった。得られた結果を表9に示す。
上記(B)の工程として、浸出残渣から、篩分け分級により、ヘマタイトを濃縮分離した。
上記図3、4に示す浸出残渣(鉄品位:47.6質量%、クロム品位:2.6質量%、ケイ素品位:7.1質量%)を用いて、目開き20μm、75μmの篩により、それぞれ湿式篩分けを行い、細粒部の鉄、クロム及びケイ素の品位と分布率を求めた。結果を表10に示す。
上記(B)の工程として、浸出残渣から、遠心分級により、ヘマタイトを濃縮分離した。
上記実施例1から実施例3までを通して得た浸出残渣スラリーを使用し、遠心分離を行なった。ただし、本発明の浸出残渣後の分級によるクロムやシリカの分離効果を確認するために、実施例1における浸出前の分級によるクロムとシリカの分離は行わなかった。
遠心分離には、定格の分級点が50μmであるハイドロサイクロン(日本分離株式会社製、SP−50型)を用いた。ここで、浸出残渣スラリーを供給したサイクロン1段目のアンダーフローをサイクロン2段目に給液して、粗粗粒(アンダーフロー)と粗細粒(オーバーフロー)を得た。また、サイクロン1段目のオーバーフローをサイクロン3段目に給液して、細粗粒(アンダーフロー)と細細粒(オーバーフロー)を得た。その後、これら産出物の分配率と組成を求めた。結果を表11に示す。
上記(A)の工程として、鉱石スラリーから、篩分け分級により、クロマイトを濃縮分離した。
上記表2に示す鉱石スラリーを用いて、目開き37μm、75μm、100μm、850μm、及び1000μmの篩により、湿式篩分けを行った場合について、粒度範囲A:100〜850μm、粒度範囲B:75〜1000μm、粒度範囲C:37〜850μm、粒度範囲D:37〜1000μm、及び粒度範囲F:100μm以下のニッケル、鉄、クロム、ケイ素、及びマグネシウムの品位と分布率を求めた。
上記表3から、粒度範囲C:37〜850μm及び粒度範囲D:37〜1000μmでは、クロム品位が10質量%以上となるクロマイトの濃縮物を得ることができることが分かる。また、1000μm以上の粒度範囲Gでは、ケイ素が10.6質量%及びマグネシウムが9質量%に上昇し、粗粒部にシリカ鉱物及びケイ苦土鉱が濃縮され、分離されることが分かる。
特に、粒度範囲A:100〜850μm、粒度範囲B:75〜1000μmでは、クロム品位が20質量%程度となる濃縮物を得ることができる。しかも、濃縮物中のニッケル品位は0.5質量%であり、ニッケルの損失は最小限に抑制され、かつ、100μm以下の粒度範囲Fではクロム品位は1.7質量%まで低減し、一方鉄及びニッケルが濃縮されることが分かる。
図1に示す製錬工程図に従って、(A)、(B)、(C)の工程を含むニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法を行い、クロマイト、シリカ鉱物及びケイ苦土鉱の分離とへマタイトの濃縮分離を行った。
まず、(A)の工程として、上記表2に示す鉱石スラリーを用いて、目開き75μmの篩により、湿式篩分け分級して、粗粒部としてクロマイト、シリカ鉱物及びケイ苦土鉱を分離した。次いで、浸出工程として、得られた細粒部を用いて、スラリー濃度が30質量%のスラリーに、硫酸濃度45g/Lの硫酸を添加し、撹拌機付きのオートクレーブに装入し、浸出温度245℃に昇温後60分間浸出し、浸出残渣スラリーと浸出液を得た。続いて、最終中和工程として、得られた浸出残渣スラリーに、濃度25質量%の消石灰スラリーを中和剤として添加し、60℃で、pH8.5になるように中和し、最後に、(B)の工程として、得られた中和残渣を用いて、最大24000Gの遠心力を持つハイドロサイクロン(日本化学機械製造株式会社製、NHC−1型)により、へマタイトを濃縮した細粒部と石膏が濃縮した粗粒部に分級し、細粒部の鉄、カルシウム、イオウ、クロム、ケイ素、及びマグネシウムの品位を求めた(実施例8)。結果を表12に示す。なお、(C)の工程として、前記浸出液の中和工程から得られた中和殿物スラリーは、前記浸出残渣とは別途最終中和処理した。
これに対して、上記浸出液を、60℃に維持しながら25質量%消石灰スラリーを中和剤として添加してpH2.5になるように中和し、3価の鉄水酸化物を含む中和殿物スラリーを得て、これを浸出残渣と混合したこと以外は実施例8と同様にして、細粒部の鉄、カルシウム、イオウ、クロム、ケイ素、及びマグネシウムの品位を求めた(参考例1)。結果を表12に示す。
2 浸出工程
3 固液分離工程
4 中和工程
5 亜鉛除去工程
6 硫化工程
7 最終中和工程又は最終中和工程(1)
8 ニッケル酸化鉱石
9 鉱石スラリー
10 浸出スラリー
11 浸出液
12 浸出残渣スラリー
13 中和殿物スラリー
14 母液(1)
15 硫化亜鉛殿物
16 母液(2)
17 混合硫化物
18 貧液
19 最終中和残渣又は最終中和残渣(1)
20 テーリングダム
21 (A)の工程
22 クロマイト等
23 (B)の工程
24 ヘマタイト殿物
25 最終中和工程(2)((C)の工程)
26 最終中和残渣(2)
Claims (10)
- 鉱石処理工程、浸出工程、固液分離工程、中和工程、亜鉛除去工程、硫化工程及び最終中和工程を含む高圧酸浸出法により、ニッケル酸化鉱石からニッケル及びコバルトを回収する湿式製錬方法において、
下記の(A)〜(C)の工程から選ばれる少なくともひとつの工程を含むことを特徴とするニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
(A)前記鉱石処理工程から産出する鉱石スラリー中のシリカ鉱物、クロマイト又はケイ苦土鉱から選ばれる少なくとも1種を含む粒子を、物理分離法により分離回収する。
(B)前記固液分離工程から産出する浸出残渣スラリー中のヘマタイト粒子を、物理分離法により分離回収する。
(C)前記中和工程から産出する中和殿物スラリーは、前記固液分離工程から産出する浸出残渣とは別途に最終中和処理する。 - 前記(C)の工程において、前記亜鉛除去工程から産出する硫化亜鉛殿物スラリーを、前記中和殿物スラリーと同時に最終中和処理することを特徴とする請求項1に記載のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
- 前記鉱石処理工程は、採掘した原料鉱石の異物除去及び鉱石粒度調整を行い、鉱石スラリーを形成する工程であり、前記浸出工程は、該鉱石スラリーに硫酸を添加し、高温高圧下で撹拌処理して、浸出残渣と浸出液からなる浸出スラリーを形成する工程であり、前記固液分離工程は、該浸出スラリーを多段洗浄して、ニッケル及びコバルトを含む浸出液と浸出残渣スラリーを得る工程であり、前記中和工程は、該浸出液に炭酸カルシウムを添加し、3価の鉄を含む中和殿物スラリーとニッケル回収用の母液を形成する工程であり、前記亜鉛除去工程は、該母液に硫化水素ガスを吹きこみ、硫化亜鉛殿物スラリーとニッケル及びコバルト回収用の母液を形成する工程であり、前記硫化工程は、該ニッケル及びコバルト回収用の母液に、硫化水素を吹き込み、ニッケル及びコバルトを含む混合硫化物と貧液とを生成する工程であり、及び最終中和工程は、該浸出残渣スラリーに余剰の貧液を加え、pHを8〜9程度に調整し、最終中和残渣を得る工程であることを特徴とする請求項1又は2に記載のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
- 前記鉱石処理工程において、鉱石粒度調整は、2mm以下の粒度で篩分け処理に付すことを特徴とする請求項3に記載のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
- 前記(A)の工程において、前記鉱石スラリーを篩分け分級又は遠心分級による物理分離法に付し、その際、分級された粗粒部をシリカ鉱物、クロマイト又はケイ苦土鉱の濃縮物として回収することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
- 前記分級粒度は、20〜850μmの範囲から選ばれることを特徴とする請求項5に記載のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
- 前記分級粒度は、850μm以上の範囲と20〜850μmの範囲から選ばれる二つの粒度であり、まず、前者の範囲の粒度で分級された粗粒部をシリカ鉱物又はケイ苦土鉱の濃縮物として回収し、次いで後者の範囲の粒度で分級された粗粒部をクロマイトの濃縮物として回収することを特徴とする請求項5に記載のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
- 前記(B)の工程において、前記浸出残渣スラリー又はそれを含む最終中和残渣スラリーを篩分け分級又は遠心分級による物理分離法に付し、その際、分級された細粒部をヘマタイトの濃縮物として回収することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
- 前記分級粒度は、20〜100μmの範囲から選ばれることを特徴とする請求項8に記載のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
- 前記(B)の工程において、前記浸出残渣スラリー又はそれを含む最終中和残渣スラリーを磁気分離による物理分離法に付し、その際、磁着物をヘマタイト濃縮物として回収することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
Priority Applications (4)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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