JP2015214755A - 製鉄用ヘマタイトの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
詳しくは、ニッケル酸化鉱石の高温酸浸出(HPAL)法による湿式精錬プラントの最終中和工程から得られるスラリー状態の浸出残渣(以後、テーリングスラリーと称す)から製鉄用ヘマタイトを回収する技術に関する。
具体的には、リモナイトやサプロライトなどのニッケル酸化鉱石を、硫酸溶液とともにオートクレーブなどの加圧装置に入れ、240〜300℃程度の高温高圧下においてニッケルを浸出する、高温加圧酸浸出(High Pressure Acid Leach、以下HPALと表記する。)プロセスと呼ばれる製造プロセスが実用化されている。
このHPALプロセスにおける硫酸溶液中に浸出されたニッケルは、中和剤を添加して余剰の酸を中和し、次いで固液分離されて、浸出残渣と分離される。
その後、ニッケルは不純物を分離する工程を経て、水酸化物や硫化物などの形態の中間原料として回収され、この中間原料をさらに精製することにより、ニッケルメタルやニッケル塩化物などの形態で得られる。
なお、余剰の酸を中和する工程では、浸出物は固液分離に適したpHに調整され、次工程の固液分離工程において、CCD(Counter Current Decantation)と呼ばれる設備で、固形分の濃縮および固液分離が行われる。通常CCDでは、連続する複数段のシックナーが使用されている。
従って、HPALプロセスの操業に伴って発生する、膨大な量の浸出残渣を積立保管するための広大な残渣積立置場が必要となっている。
一般に、その原料となる鉄鉱石は限られた資源であり、しかも鋼の品質維持に必要な良質な鉄鉱石の入手は次第に難しくなってきている。このため、浸出残渣を鉄鉱石として使用する検討がなされてきている。
HPALプロセスの浸出残渣には、酸化鉄以外にも脈石や不純物、特に硫黄が含まれるため、従来の一般的な製鉄プロセスに用いる原料には適さなかった。具体的には、硫黄の品位が高いためである。
特に、製鉄原料に利用できる酸化鉄中の硫黄品位は、個々の製鉄所の設備能力、生産量などによって異なるが、一般には1%未満に抑制することが必要とされている。
この石膏は、高圧酸浸出で得られた浸出スラリーに残留する遊離硫酸(遊離硫酸とはHPALプロセスで十分な浸出を行うために過剰に加えた硫酸のうち、未反応で残留する酸のことである。)を中和する際に、一般的で安価なカルシウム系の中和剤、例えば、石灰石や消石灰を添加しており、中和剤に含まれるカルシウムと遊離硫酸が反応することで生成し、浸出残渣中に混入しているものである。
なお、浸出残渣固形分中に含有される硫黄の一部(1%程度)は、生成したヘマタイトの粒子中に取り込まれている。
この浸出残渣を製鉄用のヘマタイトとして使用するには、浸出残渣固形分中の鉄品位を50%以上、硫黄品位を1%以下に精製することが必要である。
しかし、特許文献1に開示される発明で得られるヘマタイトは、製鉄用ヘマタイトとして単独で使用するには満足できるものではなかった。特に鉄品位は高くても40〜45%程度までのものしか得られず、そのため、製鉄用ヘマタイトとして使用するには、より高品位の鉄を含む製鉄用原料と混合する必要があった。なお、特許文献1では物理分離後に得られる浸出残渣の水分率は40%程度である。
図1は、本発明の製鉄用ヘマタイトを製造する製造工程フロー図である。
本発明は、図3のHPALプロセスの製造工程概略フロー図に示されるような高圧酸浸出(HPAL)法を利用したニッケル酸化鉱石の湿式精錬プラントから排出される中和処理したスラリー状態の浸出残渣(以下、図3の「テーリングダム」に貯留される「テーリングスラリー(最終中和残渣)」を意味する。)から有益な成分組成を有する材料を分離するもので、その製造工程が、テーリングスラリーの構成成分を湿式サイクロンを使用して、オーバーフローとアンダーフローとに成分分離する第1のステップと、分離したオーバーフロー成分を、磁力を利用して成分分離する強磁場磁気分離装置を使用して、磁性の強い成分と、弱い成分とに分離し、ヘマタイトケーキを得る第2のステップと、得られたヘマタイトケーキを1150〜1350℃の温度で焼結し、ヘマタイトの焼結体を得る第3のステップの少なくとも1〜3のステップを順次行うことを特徴とするものである。
この品位の組成であれば、単独で製鉄用に供することが可能であり、他の製鉄原料と混合して使用する場合も調整の余裕が大きく使用しやすい。
本発明に係る製鉄用ヘマタイトの製造方法に用いる原料は、HPALプロセスにおける浸出残渣スラリーを中和処理したテーリングスラリーを原料として用いるが、その固形分において、鉄はヘマタイト、硫黄(S)は石膏の形として含まれている。
特に、上記範囲において、湿式サイクロンでの分級効果を高めることが可能となる。
本発明では、このようなテーリングスラリーは、湿式サイクロンに装入されると、粒径の大きな石膏の大部分がアンダーフローとして除去される。一方、オーバーフローには粒径の小さいヘマタイトが濃縮される。
次に、得られたオーバーフローを、ヘマタイトとクロマイトに分離可能な程度に磁化できる「強磁場磁気分離装置」を用いて分離処理する。
通常の磁力選鉱において使用する磁力は、高々2000[Gauss]程度であるが、例えば、実施例で使用している「強磁場磁気分離装置」では、粉体に対してメッシュを通過する際に磁力を掛ける方式を採用しているため、非常に強力な磁力を掛けることができる。なお、このメッシュは分離対象の粉体に最適な目開きとなるように設定されている。
その結果、最終的に、上記磁力選鉱装置の磁性体側の排出物(磁着物)として、鉄:53重量%程度、硫黄(S):1重量%程度の品位を有する製鉄用ヘマタイトが、ヘマタイトケーキとして回収される。
基本的に磁界強度は強いほうが好ましいが、5[kGauss]未満だと、ヘマタイトの分離が不充分になるからである。また、20[kGauss]より大きい場合、それ以上の効果が期待できないばかりでなく、経済的にも好ましくない。
回収されたヘマタイトケーキでも製鉄用原料として使用可能であるが、極微粒子で構成されているために、極微粒子のままでは、高炉で目詰まりを起こしやすいので、少量しか用いることが出来ない。そこで、好ましくは、超微粒子の粉であるヘマタイトケーキを焼結して、粗粒子の粉とした方が好ましい。
第2ステップにより形成したヘマタイトケーキは、平均粒径が1μm以下である。このような極微細な粉末は焼結特性が良いため、焼結時に添加する焼結助剤の石灰などが不要になる。焼結は1150〜1350℃で行い、密度が4.0g/cm3〜5.0g/cm3の焼結体を得る。
従って、ヘマタイトケーキを焼結する温度は1150〜1350℃が好ましい。
即ち、硫黄(S)品位1%以下の高鉄品位低硫黄品位の製鉄用ヘマタイトを得ることができる。
その粒径が3mm未満であると高炉内での目詰まりの原因になり、還元ガスの流れが悪くなる。一方、20mmを超えると、反応時間が長くなり生産性悪化の原因となる。
例えば、粉体に対してメッシュを通過する際に磁力を掛ける方式である実施例でも使用した「強磁場磁気分離装置」では、運転直後から粒径の大きな石膏が上記メッシュを目詰まりさせ、分離操作が進行しなくなるからである。
一方、本発明の製造方法において、物理分離処理後に得られる磁性の強い成分(水分率40%程度)に、一般的な脱水処理を施して得られるヘマタイトケーキは、その硫黄分が1%未満と低いが、水分含有率は22wt%程度と比較的高いものが得られる。
一般的に固体物質の運送においては、水分含有量が多いと船舶輸送中に液状化現象を引き起こし、船舶の転覆を引き起こす可能性があると言われ、日本海事検定協会の調査結果では、本発明ヘマタイトの運送許容水分値(Transportable Moisture Limit:TML)は17%wt以下であった。このため、船舶搬送する場合に、本発明によるヘマタイトケーキを製造する場合、その水分含有率を下げる必要がある。
その脱水方法は、加熱法、フィルタープレス法、遠心分離法などがあるが、水分除去効率の高さや経済性からフィルタープレスによる方法が望ましい。
固形分の処理量として、10トンのテーリングスラリーを処理し、得られたスラリー状のオーバーフローの重量は9.1トンであった。
磁力選鉱の結果、鉄品位:53%、硫黄(S)品位:0.7%の、固形分重量2.2トンのヘマタイトケーキを得た。ヘマタイトの粒径は0.6μmであった。
そのヘマタイトケーキ(10cm×20cm×1cm)を、1150℃で10分間かけて焼結させた。得られたヘマタイトの焼結体は、密度4.0g/cm3、鉄品位54%、硫黄(S)品位:0.08%であった。
固形分の処理量は、10トンのテーリングスラリーを処理し、得られたスラリー状のオーバーフローの重量は9.1トンであった。
磁力選鉱で得られたヘマタイトケーキ2.2トンを、高圧フィルタープレス(高圧加熱濾過装置)をすることで、鉄品位:52%、硫黄(S)品位:0.8%、水分率15%、固形分重量2.0トンのヘマタイトケーキを得た。得られたヘマタイト粒径は0.7μmであった。
このヘマタイトケーキ(10cm×20cm×1cm)を、1350℃で10分間かけて加熱させた。得られたヘマタイトの焼結体は、密度5.0g/cm3、鉄品位:53%、硫黄(S)品位:0.01%であった。
磁力選鉱で得られたヘマタイトケーキ2.2トンを高圧フィルタープレス(高圧加熱濾過装置)することで、鉄品位:52%、硫黄(S)品位:0.8%、水分率15%、2.0トンのヘマタイトケーキを得た。得られたヘマタイトの粒径は0.7μmであった。
得られたヘマタイトケーキ(10cm×20cm×1cm)を、1150℃で、10分間かけて焼結させた。
得られた焼結体は、鉄品位:53%、硫黄(S)品位:0.08%、密度4.3g/cm3であった。
得られたスラリー状のオーバーフローの重量は8トンであった。
磁力選鉱処理を行ったところ、鉄品位:52%、硫黄(S)品位:0.8%、固形分重量1.6トンのヘマタイトケーキが得られた。
得られたヘマタイトの粒径は0.5μmであった。
前記ヘマタイトケーキ(10cm×20cm×1cm)を、1150℃で10分間かけて焼結させた後、この焼結体をジョークラッシャーにより粉砕した。粉砕により得られたヘマタイトの焼結体は、密度4.0g/cm3、鉄品位:53%、硫黄(S)品位:0.08%、粒径3mmであった。
得られたスラリー状のオーバーフローの重量は9.3トンであった。
磁力選鉱処理を行ったところ、鉄品位:55%、硫黄(S)品位:0.9%、固形分重量2.3トンのヘマタイトケーキが得られた。そのヘマタイトの粒径は0.9μmであった。
このヘマタイトケーキ(10cm×20cm×1cm)を1150℃で10分間かけて焼結させた後、ジョークラッシャーを使用して粉砕した。
粉砕後に得られたヘマタイトの焼結体は、密度4.0g/cm3、鉄品位:56%、硫黄(S)品位:0.08%、粒径20mmであった。
本発明を適用せず、表1記載の磁力選鉱装置を用いた磁力選鉱による分離をしなかったこと、並びに焼結も行わなかったこと以外は、実施例1と同条件で、テーリングスラリーからヘマタイトの製造を行った。
その結果、鉄品位:37%、硫黄(S)品位:5%で、7.9トンの固形分を得ることができたが、製鉄用ヘマタイトとして、単独では利用不可能なヘマタイトしか製造できなかった。
本発明を適用せず、表1記載の湿式サイクロンによる分離をしなかったこと、並びに焼結も行わなかったこと以外は、実施例1と同条件で、テーリングスラリーからヘマタイトの製造を行った。
その結果、磁力選鉱において、表1記載の装置における磁力を印加するメッシュが運転直後に目詰まりしたため、製造を継続することが出来なかった。
実施例1の処理条件において、湿式サイクロンの設定を0.4μm以下、磁力選鉱装置の磁界の強度を4[kGauss]としたこと、及び焼結を行わなかったこと以外は、全て同条件でテーリングスラリーからヘマタイトの製造を行った。
得られたスラリー状のオーバーフローの重量は0.5トンであった。
磁力選鉱処理を行ったところ、鉄品位:49%、硫黄(S)品位:1.2%、固形分重量0.01トンと、非常に少量の低品位ヘマタイトが得られた。
得られたヘマタイト粒径は0.2μmであった。
実施例1の処理条件において、湿式サイクロンの設定を2.5μm以下、磁力選鉱装置の磁界の強度を22[kGauss]としたこと、及び焼結を行わなかったこと以外は、全て同条件でテーリングスラリーからヘマタイトの製造を行った。
得られたスラリー状のオーバーフローの重量は9.3トンであった。
磁力選鉱処理を行ったところ、鉄品位:52%、硫黄(S)品位:1.5%、固形分重量2.1トンと、硫黄(S)品位が高いヘマタイトが得られた。
得られたヘマタイト粒径は1.3μmであった。
焼結温度を1400℃にした以外は、実施例2と同じ条件でテーリングスラリーからヘマタイトの製造を行った。
得られたヘマタイトの粒径は0.6μmであった。
得られたヘマタイトケーキ(10cm×20cm×1cm)を1400℃、10分の焼結を施した。
得られた焼結体は、鉄品位:52%、硫黄(S)品位:0.01%、密度5.2g/cm3であった。
焼結温度を1050℃にした以外は実施例2と同じ条件でテーリングスラリーからヘマタイトの製造を行った。
得られたヘマタイトの粒径は0.6μmであった。
得られたヘマタイトケーキ(10cm×20cm×1cm)を、1050℃、10分の焼結を施した。
得られた焼結体は、鉄品位:52%、硫黄(S)品位:0.2%、密度3.8g/cm3であった。
Claims (3)
- 鉄品位30〜35%、硫黄品位3〜10%を含むテーリングスラリーを原料とする製鉄用ヘマタイトの製造方法であって、
前記浸出残渣を、湿式サイクロンを使用して、分級サイズが、オーバーフローにおいては1μm以下となる設定以上、2μm以下となる設定以下の分離条件で、オーバーフローとアンダーフローとに分離する第1のステップと、
磁力を利用した強磁場磁気分離装置を使用して、前記オーバーフローを、磁場強度が、5〜20[kGauss]の分離条件で、磁性の強い成分と、弱い成分とに分離する第2のステップと、
分離された前記磁性の強い成分を、焼結体の密度が4.0〜5.0g/cm3となるように焼結して焼結体を形成する第3のステップ
の少なくとも前記1〜3のステップを順次行うことを特徴とする製鉄用ヘマタイトの製造方法。 - 前記磁性の強い成分が含有する水分の水分率を、10wt%〜17wt%に調整する脱水工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の製鉄用ヘマタイトの製造方法。
- 前記第3のステップ後に、前記焼結体の粒径を3〜20mmとする粉砕工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の製鉄用ヘマタイトの製造方法。
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