JP5403033B2 - ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法 - Google Patents
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Description
詳しくは、鉱石処理工程、浸出工程、固液分離工程、中和工程、亜鉛除去工程、硫化工程及び最終中和工程を含む高圧酸浸出法により、ニッケル酸化鉱石からニッケル及びコバルトを回収する湿式製錬方法において、鉱石処理工程から産出する鉱石スラリーによる配管、ポンプ等の設備の磨耗を抑制し、耐久性を向上させ、最終中和工程から産出する最終中和残渣量を低減し、廃棄される浸出残渣、中和澱物等を貯留するテーリングダムの容量の圧縮によりコスト及び環境リスクを抑えるという課題を達成するとともに、資源化して有効活用することができる不純物成分を分離回収することができるニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法に関する。
例えば、ニッケル製錬では、高温高圧下において耐食性に優れた材料が開発されたこともあり、ニッケル酸化鉱石を硫酸で加圧下に酸浸出する高圧酸浸出(High Pressure Acid Leach)法に基づく湿式製錬方法が注目されている。
工程(b):工程(a)で得られた常圧浸出残留物を、高温高圧下の酸化性雰囲気下で硫酸と反応させて加圧酸浸出液を得る。
工程(c):工程(a)で得られた常圧浸出液に中和剤を加えて中和し、次いで硫化アルカリ化合物を添加し、浸出液中のニッケル及びコバルトを硫化物として回収する。
(2)固液分離工程:先の浸出工程で得た浸出スラリーを、多段階のシックナーを用いて洗浄し、ニッケル及びコバルトを含む浸出液と浸出残渣とに分離する。
(3)中和工程:固液分離工程で得た浸出液の酸化を抑制しながら、炭酸カルシウムを用いてpHが4以下となるよう調整し、3価の鉄を含有する中和澱物を生成し、中和澱物スラリーとニッケル回収用母液とに分離する。
(4)硫化工程:硫化工程で得たニッケル回収用母液に硫化水素ガスを吹きこみ、ニッケル及びコバルトを含有する硫化物を生成し、貧液と分離する。
図2は、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法(特許文献2)に基づく実用プラントの一例における製錬工程図である。
次に、鉱石スラリー9は、(2)浸出工程で、硫酸を用いた高温加圧浸出に付され、浸出スラリー10が形成される。
形成した浸出スラリー10は、(3)固液分離工程に付され、多段洗浄された後、ニッケル及びコバルトを含む浸出液11と浸出残渣スラリー12に分離される。
母液(1)14は、硫化剤を添加する(5)亜鉛除去工程に付され、硫化亜鉛を含む硫化亜鉛澱物15とニッケル回収用の母液(2)16とに分離される。
次に、母液(2)16は、(6)硫化工程に付され、ニッケル及びコバルトを含む混合硫化物17とニッケル等が除去された貧液18に分離される。なお、貧液18は、(3)固液分離工程における浸出残渣の洗浄水として使用される。
最後に、浸出残渣スラリー12は、余剰の貧液18とともに、(7)最終中和工程に付され、中和処理され、最終中和残渣19は、テーリングダム20に貯留される。
さらに、中和澱物スラリーを固液分離工程へ送れば、ニッケルのロスを低減することができるので、より有利であるとされている。
(1)設備の磨耗の抑制
ニッケル酸化鉱石は、スラリーとして各工程間を搬送されるが、設備材料の磨耗が著しく促進され、とりわけ浸出工程における配管、ポンプ等の設備では補修頻度が高く、メンテナンスコストの上昇とプラント稼働率の低下の大きな原因となっている。
固液分離工程で得られる浸出残渣は、硫化工程から産出する余剰の貧液と合一され、これに石灰石スラリー又は消石灰スラリーを添加する中和処理により無害化される。
この最終的な中和処理工程(以下、最終中和工程と呼称する場合がある。)から産出される最終中和残渣は、テーリングダムで貯留される。しかしながら、最終中和残渣には、浸出残渣中のヘマタイト、クロマイト等の不純物成分のほか、中和処理により形成される石膏を含有するため資源化できず、テーリングダムの建設及び維持管理のための大きなコスト負担があった。
さらに、上記課題を、効果的かつ経済的に解決するためには、鉱石又は浸出残渣に含まれる不純物成分を効率的に分離回収することが有効な手段であり、これら不純物成分を資源化して有効活用することも求められていた。
そこで、本出願人は、高圧酸浸出法に基づく湿式製錬工程中に、鉱石スラリーからシリカ鉱物、クロマイト又はケイ苦土鉱から選ばれる少なくとも1種を含む粒子を物理分離、回収する工程、浸出残渣スラリー中のヘマタイト粒子を物理分離、回収する工程を含むニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法を特許文献3に提案しているが、鉱石又は浸出残渣に含まれる不純物成分の効率的な分離回収、および分離回収した、これら不純物成分の資源化に、更なる改善を必要とされてきた。
記
(A)工程:前記鉱石処理工程から産出する鉱石スラリー中のクロマイト粒子を、比重分離法を含む回収プロセスにより分離回収する工程。
(B−1)工程:前記(A)工程を経てCr品位の下がった鉱石スラリーを前記浸出工程、固液分離工程により処理して生成した浸出液の中和工程であって、中和する際にMg系中和剤を用いて中和する工程。
(B−2)工程:前記(A)工程を経てCr品位の下がった鉱石スラリーを、前記浸出工程、固液分離工程により処理して生成した浸出残渣スラリーの中和工程であって、中和する際にMg系中和剤を用いて中和し、ヘマタイト粒子を回収する工程。
さらに、湿式製錬前にクロマイトを分離するので、浸出残渣量の減少が期待でき、最終中和残渣量を低減することができる。さらに、分離したクロマイトを濃縮できれば、資源として有効活用することも可能である。
(A)工程
前記鉱石処理工程から産出する鉱石スラリー中のクロマイト粒子を、比重分離法を含む回収プロセスにより分離回収する工程である。
(B−1)工程
前記(A)工程を経てCr品位の下がった鉱石スラリーを、浸出工程、固液分離工程で処理し、固液分離工程後の浸出液の中和を、Mg(OH)2、MgOなどのMg系中和剤で行うものである。
(B−2)工程
前記(A)工程を経てCr品位の下がった鉱石スラリーを、浸出工程、固液分離工程で処理し、固液分離工程後の浸出残渣スラリーの中和を、Mg(OH)2、MgOなどのMg系中和剤で行い、ヘマタイト粒子を回収するものである。
(A)工程の採用は、前工程の鉱石処理工程から産出する鉱石スラリー中のクロマイトを含む粒子を分離回収することにより、鉱石スラリーの輸送時の配管、ポンプ等の設備の磨耗を抑制するものである。
また、湿式製錬前にクロマイトを鉱石スラリーから予め取り除くことで、浸出残渣量の低減が期待され、最終中和残渣量を減らすこともできる。さらに、分離回収したクロマイトを、十分濃縮することが出来れば、資源として有効活用することも可能である。
なぜなら、最終中和残渣に含まれるイオウ(石膏;硫酸カルシウム)、クロム(クロマイト)等は、銑鉄中への微量成分の分配、鉄鋼製品の品質等に影響する成分であり、これら不純物元素の含有は抑制することが求められるからであった。
図1は、本発明に係るニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法による実施態様の一例を表す製錬工程図である。
図1に示すように、まずニッケル酸化鉱石8は、[1]鉱石処理工程で水と混合され、次いで異物除去及び鉱石粒度調整が行われて鉱石スラリー9を形成する。
その後、この鉱石スラリー9は、新たに設けた(A)工程に付され、クロマイト23を分離回収する。一方のオートクレーブ供給スラリー22は、[2]浸出工程に供される。
形成された浸出スラリー10は、多段のシックナーなどを用いた[3]固液分離工程に供され、ニッケル及びコバルトを含む浸出液11と浸出残渣スラリー12とに分離される。
母液(1)14は、硫化剤を添加する[5]亜鉛除去工程に付され、硫化亜鉛を含む硫化亜鉛澱物15とニッケル回収用の母液(2)16とに分離される。
次いで、母液(2)16は、硫化剤を添加する[6]硫化工程に付され、ニッケル及びコバルトを含む混合硫化物17と貧液18とに分離される。
なお、貧液18は、[3]固液分離工程における浸出残渣の洗浄水として使用される他に、貧液18は、最終中和工程に供される場合もある。
その際、(B−2)工程後処理液27と(B−2)工程に供されなかった浸出残渣スラリー12は、[7]最終中和工程に供され、pH8〜9程度に中和される。
得られた最終中和残渣19は、テーリングダム20に貯留される。
[1]鉱石処理工程及び(A)工程
鉱石処理工程は、異物除去及び鉱石粒度調整を行い、鉱石スラリーを形成する工程である。
この工程では、ニッケル酸化鉱石を、湿式篩等で篩い分けし、浸出工程で浸出できない異物、ポンプで流送困難な粒度の鉱石等を分離する。
通常、篩分け粒度は、2mm程度であり、それ以上の粒度の鉱石は、破砕処理される。
破砕−篩分け処理を通過した鉱石によりスラリーが形成され、次いで沈降させて濃縮し、スラリー中の固体濃度(以下、スラリー濃度と称す)を調整したオートクレーブ供給スラリーを調製する。なお、スラリー濃度としては、通常、30〜45質量%程度に調整すると良い。
このラテライト鉱のニッケル含有量は、通常、0.8〜2.5質量%であり、ニッケルは水酸化物、又は含水ケイ苦土(ケイ酸マグネシウム)鉱物として含有される。
また、鉄の含有量は、10〜50質量%であり、主として3価の水酸化物(ゲーサイト)の形態であるが、一部2価の鉄が含水ケイ苦土鉱物等に含有される。珪酸分は、石英、クリストバライト(無定形シリカ)等のシリカ鉱物及び含水ケイ苦土鉱物に含有されている。
さらに、クロム分の多くは、鉄又はマグネシウムを含むクロマイト鉱物として含有される。また、マグネシア分は、含水ケイ苦土鉱物のほか、未風化で硬度が高いニッケルをほとんど含有しないケイ苦土鉱物に含有される。
つまり、この鉱石処理工程から産出する鉱石スラリーには、一般的に浸出工程の配管、ポンプ等の設備の磨耗に大きな影響を及ぼすクロマイトが含まれていることになる。
そのため、鉱石処理工程で調製する鉱石スラリーから、クロマイトを事前に鉱石処理工程において分離回収しておくことが望ましい。
ニッケル酸化鉱石のEPMA観察では、クロム含有量の高い部分は、鉄含有量の高い部分とは独立した単独相として存在する比率が高く、かつ20〜1000μmの粒径であるものが多い。
このことは、クロムを含む鉱物は、約20μm以上の粒子に多く含まれており、一方、ニッケル及び鉄を含む鉱物は、約20μm以下の粒子に多く含まれていることを示している。
なお、この時の解砕粒度としては、鉱石スラリーを形成する際の本来の目的を考慮して決められるが、約2mm以下が好ましい。
表1より、75μm以上の粗粒部に、クロム、珪素、マグネシウム等が濃縮されることが分かる。一方、75μm以下の細粒部には鉄が濃縮されることがわかる。
なお、(A)工程は、鉱石処理工程内に含めて実施する、或いは鉱石処理工程に続いて実施することもできる。
すなわち、表1に示すように、分級で濃縮できる品位には限界があり、分級だけでなく、比重差を利用した分離が必要となる。
すなわち、工業的に実施可能な分級点の下限は、おおむね20μmである上、この分級粒度が20μm未満では、粗粒部へのクロマイトの濃縮が不十分であるとともに、浸出工程で用いる鉱石スラリー中のニッケルがロスすることとなる。一方、分級粒度が150μmを超えると、細粒部でシリカ鉱物、クロマイト及びケイ苦土鉱の除去が不十分となってしまう。
一般に、クロマイトの比重はゲーサイト等の水酸化鉄のそれよりも大きいことが知られており、粗大で比重が大きいクロマイトと微細で比重が小さいゲーサイトは、サイクロンにより効率良く分離することが可能である。
サイクロンの形状は、アンダーフローのパルプコンテントが50wt%以上となるように形状を調整することが望ましい。
サイクロンの分離としては10wt%以下でも可能だが、水を大量に必要とする上、後工程の沈降濃縮にも不利である。また、30wt%を超えるとスラリーの粘度が上昇し、分離が困難になる場合がある。
すなわち、鉱石処理工程後のパルプコンテントを上記範囲の10〜30wt%に設定すれば、更に新たに水を供給する必要がなく、希釈のためのタンクも不要になるため、好ましい。
以上のように、パルプコンテント、サイクロン運転圧力、サイクロン形状を最適化することにより、オーバーフローへのクロマイトの分配を、殆どなくすことは可能であり、クロマイト回収の観点から好ましい。
使用する比重分離装置は、特に限定されるものではないが、シェーキングテーブル、デンシティ セパレーター、スパイラルコンセントレーターの少なくとも1種を選択することが好ましく、大量処理に適したデンシティ セパレーター、スパイラルコンセントレーターの少なくとも1種を選択することが更に好ましい。
15wt%以下であると、分離性能が悪化する場合があり、35wt%以上であると、スパイラルコンセントレーターで分離中にクロマイト濃縮側(内側)で粒子の流れが滞留してビルドアップが起こり、分離が十分に行われなくなる場合がある。
0.5未満であると干渉落下の効果が小さくなり、比重分離が効率良く行われない。
一方、7.0より大きいと、クロマイト粒子まで上昇させ、オーバーフロー側に損失する場合がある。この場合、浸出工程に供給されるスラリー中のクロマイトが多くなり、クロマイトの回収のみならず、ヘマタイト中Cr品位低減の観点からも不利になる。
マグネタイトの比重はクロマイトの比重に極めて近いので磁気分離を利用する。
磁気分離に際して、その磁界強度は特に限定されるものではなく、ベルトの速度やベルトの厚さ、他装置により異なるが、200[Oe]〜2000[Oe]の範囲であることが好ましい。
200[Oe]未満であると磁界が弱すぎて、マグネタイトの分離除去が不十分な場合がある。一方、2000[Oe]を超えるとマグネタイトの除去は問題ないが、クロマイトまで磁着される場合がある。
特に望ましくは、低磁界磁力選鉱機を使用すると良い。
浸出工程は、鉱石処理工程及び(A)工程を経て得られた鉱石スラリーに硫酸を添加し、220〜280℃の温度下で撹拌処理して、浸出残渣と浸出液からなる浸出スラリーを形成する工程である。この工程では、主要設備として、プレヒーター、オートクレーブ、及びフラッシュタンクが用いられる。
しかしながら、鉄イオンの固定化は、完全には進行しないので得られる浸出スラリーの液部分には、ニッケル、コバルト等のほか、2価と3価の鉄イオンが含まれるのが通常である。
すなわち、この温度範囲で反応を行うことにより、鉄はヘマタイトとして固定される。
反応温度が220℃未満では、高温熱加水分解反応の速度が遅いため反応溶液中に鉄が溶存して残るので、鉄を除去するための浄液負荷が増加し、ニッケルとの分離が非常に困難となる。一方、温度が280℃を超えると、高温熱加水分解反応自体は促進されるものの、高温加圧浸出に用いる容器の材質の選定が難しいだけでなく、温度上昇にかかる蒸気コストが上昇するため不適当である。
すなわち、その濃度が25g/L未満では、浸出残渣を含むスラリーを沈降する際に、固形分の沈降濃縮が不完全となり、上澄みに浮遊固形分が残存する。これは、高温熱加水分解の反応速度が遅く、水酸化鉄の脱水が十分に進まず、真密度の低いヘマタイトが形成されることによる。
一方、その濃度が50g/Lを超えると、浸出設備の耐久性を向上させることが必要になり、また酸の中和に必要とされる中和剤の使用量が著しく増加するのでコスト的に不利になる。
固液分離工程は、前工程の浸出工程で形成された浸出スラリーを多段洗浄して、ニッケル及びコバルトを含む浸出液と、浸出残渣を得る工程である。これによって、浸出残渣に付着して廃棄されるニッケル等を浸出液中に回収する。
(4−1)中和工程1[浸出液の処理]
・(B−1)の工程
この(B−1)工程は、前工程の固液分離工程で分離された浸出液11を中和するもので、浸出工程で得られた浸出液11の酸化を抑制しながら、pHが4以下、好ましくは3.2〜3.8の範囲になるように中和剤(pH調整剤)を添加し、3価の鉄を含む中和澱物スラリーの(B−1)工程残渣26とニッケル回収用の母液(1)14を形成する工程である。
この工程を用いることによって、浸出工程で用いた過剰の酸の中和を行うとともに、浸出液中に残留する3価の鉄イオンの除去を行うものである。
中和剤として、CaCO3等のCaを含むものを使用すると、石膏が生成するが、本工程で発生する中和澱物スラリーの(B−1)工程残渣26は、一部を固液分離工程に戻し、繰り返すため、浸出残渣スラリー中への石膏の混入が起こってしまう。
そこで、中和剤にはCaを含まない、Mg(OH)2等のMg系アルカリや、浸出液に溶けてアルカリ性を示すMgO等のMg系中和剤を使用する。
この亜鉛除去工程は、ニッケル及びコバルトを硫化物として分離する工程に先だって、前工程で得られた母液に、硫化水素ガスを吹きこみ、亜鉛を含む硫化物を生成し、硫化亜鉛澱物スラリーと、ニッケル及びコバルト回収用の母液を形成する工程である。
これは硫化反応の際に弱い条件を作り出すことで硫化反応の速度を抑制し、亜鉛と比較して濃度の高い共存するニッケルの共沈を抑制することにより、亜鉛を選択的に除去するものである。
この硫化工程は、脱亜鉛工程で得られたニッケル及びコバルト回収用の母液(2)に、硫化水素を吹き込み、ニッケル及びコバルトを含む混合硫化物17と貧液18とを生成する工程である。
ここで、得られた貧液18は、pHが1〜3程度、硫化されずに含まれる鉄、マグネシウム、マンガン等の不純物のほかに、回収ロスであるニッケル及びコバルトを僅かに含んでいるので、固液分離工程における浸出残渣の洗浄水、及び中和工程で産出する中和残渣の洗浄水として使用される。
・(B−2)工程
この(B−2)工程は、固液分離工程から産出する浸出残渣(浸出残渣スラリー12)の一部をMg(OH)2等のMg系アルカリやMgOなどのMg系中和剤で中和し、ヘマタイト粒子を回収する工程である。
(B−2)工程の方法としては、特に限定されるものではないが、中和剤はCa系アルカリは用いない。例えば、中和剤としてCaCO3を使用した場合、付着硫酸と反応して石膏が生成する。この石膏の溶解度は小さいので固体として析出し、残渣中のイオウ品位を上げてしまう。一方、MgSO4は溶解度が大きいので固体として析出しにくく、イオウの低減に有効である。
従って、中和剤としてはMg系アルカリであるMg(OH)2 が好ましいが、MgO2のようなMg系中和剤であれば良い。
まず、表2に、約2mm以下の粒度に解砕して得た鉱石スラリーを浸出した際に得られた浸出残渣の鉱石粒度分布と各粒度区分での各成分の品位の一例を示す。
分級法としては大量処理が可能なサイクロン等による処理が好ましい。
この最終中和工程は、(B−2)工程で得られる(B−2)工程後処理液27、固液分離工程後の浸出残渣スラリー12のうち、(B−2)工程では処理しなかったスラリーと、(B−1)工程残渣26、或いは、必要に応じて、これに亜鉛除去工程で得られる硫化亜鉛澱物15をスラリー化したものを加えて、さらに石灰石スラリーと消石灰スラリーを添加し、そのpHを8〜9程度に調整することによって、液中の金属イオンを中和澱物として沈殿させ、最終中和残渣19を得る工程である。なお、得られた最終中和残渣19は、テーリングダム20で貯留される。
実施例では、金属の分析に蛍光X線分析法、又はICP発光分析法を用いて分析を行っている。
実施例1では、スラリー濃度は15質量%、スラリーの温度を常温とし、運転圧力を0.2MPaの条件で分級を行った。
鉱石スラリー組成と、ハイドロサイクロンのアンダーフロー組成を、表3に併せて記す。なお、以下の表の単位は質量%とした。
以上より、鉱石スラリーの分級により、粗粒部にシリカ鉱物、クロマイト濃縮され、分離されていることが分かる。
その供給速度を56.7[kg/Hr]、スラリーの温度を常温とした。
この時のTeeter Water量は、5.5[m3・h−1/m2]、Set Point(密度計の設定値)を21として行った。
デンシティ セパレーターのフィード(ハイドロサイクロンのアンダーフロー)およびデンシティ セパレーターのアンダーフローの組成を表4に記す。
以上より、デンシティ セパレーター処理により、粗粒部にシリカ鉱物、クロマイト濃縮され、分離されることが分かる。
供給水量は7.57[リットル/分]とした。
テーブル試験の結果を表5に記す。なお、表内の「−」表記は、未測定の場合を表している。
この結果からシェーキングテーブル処理により、クロマイトが分離されることが分かる。
その結果を表6に記す。なお、表内の「−」表記は、未測定の場合を表している。
対して、Cr2O3(磁着物/Mag)のFe品位は37.8質量%と、Fe品位が高いことからも、磁力選鉱によりマグネタイトが分離除去され、クロマイトのCr2O3品位が上昇したことがわかる。
鉱石とハイドロサイクロンのアンダーフロー組成を表7に記す。
以上より、鉱石スラリーの分級により、粗粒部にシリカ鉱物、クロマイトが濃縮、分離されることが分かる。
この時のTeeter Water量は6.9[m3・h−1/m2]、Set Point(密度計の設定値)は20とした。
デンシティ セパレーターのフィード(給鉱/装入物:HC−UF)およびアンダーフロー(DS−UF)、及びオーバーフロー(DS−OF)の組成を表8に記す。
以上より、デンシティ セパレーター処理により、粗粒部にクロマイト濃縮され、分離されることが分かる。
そのスパイラル試験の結果を表9に記す。
一方、「Middling」では45.0質量%、「Tailing」では14.1質量%、「Slimes」では9.4質量%となった。
以上より、スパイラルコンセントレーター処理により、クロマイトが濃縮分離されることが分かる。
その結果を表10に記す。
Cr2O3(磁着物/Mag)は、そのFe品位が37.8質量%と高いことからも、磁力選鉱によりマグネタイトが分離除去され、クロマイトのCr2O3品位が上昇したことがわかる。
これは、一般に市販されているクロマイトのCr2O3品位を上回る濃度まで濃縮が可能であることを意味している。
分級装置として、ハイドロサイクロン(アタカ大樹株式会社製、「MD−9型」)を用いて、鉱石スラリーの分級を行った。
ここで、スラリー濃度を9.8質量%、スラリーの温度は常温とし、運転圧力0.22MPaの条件で分級を行った。
ハイメッシュセパレーターへの供給速度は0.98[m3/時]、バケットの回転数は0.8rpm、バケット長は75mm、バケットは4mm直径の孔が6mmピッチで開いており、開孔率は40%である。
洗浄水量は6m3/時とした。
鉱石とハイドロサイクロンのアンダーフローの組成、及びハイメッシュセパレーターのアンダーフロー組成を表11に記す。
この工程の中では、特にハイドロサイクロンによる濃縮には問題は見られなかったが、ハイメッシュセパレーターでの濃縮が不十分であると判定できる。
それぞれのアンダーフロー(HC−UF、HMS−UF)を75μmで篩い、その上下の分析を実施したところ、表12に示す結果が得られた。
この結果から、ハイメッシュセパレーターはスライム除去の仕事しかしておらず、比重分離の仕事をしていない。
このように市販レベルのCr2O3品位を持つクロマイトは、比重分離を行わない限り、濃縮できないことがわかる。
さらに、作製した浸出スラリーを固液分離工程により浸出液11と浸出残渣スラリー12に分離した。
浸出温度:245℃
浸出時間:60分
最終(浸出終了時の)遊離硫酸濃度:40[g/L]
スラリー濃度:30重量%
オートクレーブ容量:5L
次に、このスラリーを5C濾紙で固液分離し、さらにMg(OH)2スラリーをpH6になるまで添加した後、さらに5C濾紙で固液分離した。
実施例2の鉱石スラリーをハイドロサイクロンと、デンシティ セパレーターで処理することなくオートクレーブに装入し、それ以外は実施例3と同様に処理したところ、得られた最終中和残渣のCr2O3品位は4.1%であった。
生成するMgSO4の溶解度が大きいため、残渣のイオウ品位は0.13%であった。
実施例3と同様にして浸出残渣スラリー12を作製し、その全量に濃度25質量%の消石灰スラリーを中和剤として添加し、60℃で、pH8.5になるように中和して、金属イオンを澱物として沈殿させ、固液分離により中和残渣と中和後処理液を得た。
この中和残渣をサイクロン分級してヘマタイト28を分離した。
ヘマタイト28を分離した残りの中和残渣と中和後処理液を混合した混合液に、濃度25質量%の消石灰スラリーを添加した後、5C濾紙での固液分離を繰り返して最終中和残渣を得た。
9 鉱石スラリー
10 浸出スラリー
11 浸出液
12 浸出残渣スラリー
14 母液(1)
15 硫化亜鉛澱物
16 母液(2)
17 Ni,Co混合硫化物
18 貧液
19 最終中和残渣
20 テーリングダム
22 オートクレーブ供給スラリー
23 クロマイト
26 (B−1)工程残渣
27 (B−2)工程後処理液
28 ヘマタイト
Claims (14)
- 採掘した原料鉱石の異物除去及び鉱石粒度調整を行い、鉱石スラリーを形成する鉱石処理工程、前記鉱石スラリーに硫酸を添加し、高温高圧下で撹拌処理して、浸出残渣と浸出液からなる浸出スラリーを形成する浸出工程、前記浸出スラリーを多段洗浄して、ニッケル及びコバルトを含む浸出液と浸出残渣スラリーを得る固液分離工程、前記浸出液にアルカリを添加し、3価の鉄を含む中和澱物スラリーとニッケル回収用の母液を形成する中和工程、前記母液に硫化水素ガスを吹きこみ、硫化亜鉛澱物スラリーとニッケル及びコバルト回収用の母液を形成する亜鉛除去工程、前記ニッケル及びコバルト回収用の母液に、硫化水素を吹き込み、ニッケル及びコバルトを含む混合硫化物と貧液とを生成する硫化工程、及び前記浸出残渣スラリーに余剰の前記貧液を加え、pHを8〜9に調整し、最終中和残渣を得る最終中和工程を含む高圧酸浸出法を用いてニッケル酸化鉱石からニッケル及びコバルトを回収する湿式製錬方法において、
下記(A)工程と(B−1)工程と(B−2)工程を含むことを特徴とするニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
記
(A)工程:前記鉱石処理工程から産出する鉱石スラリー中のクロマイト粒子を、比重分離法を含む回収プロセスにより分離回収する工程。
(B−1)工程:前記(A)工程を経てCr品位の下がった鉱石スラリーを、前記浸出工程、固液分離工程により処理して生成した浸出液の中和工程であって、中和する際にMg系中和剤を用いて中和する工程。
(B−2)工程:前記(A)工程を経てCr品位の下がった鉱石スラリーを、前記浸出工程、固液分離工程により処理して生成した浸出残渣スラリーの中和工程であって、中和する際にMg系中和剤を用いて中和し、ヘマタイト粒子を回収する工程。 - 前記A工程と前記(B−1)工程のみを含むことを特徴とする請求項1記載のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
- 前記A工程と前記(B−2)工程のみを含むことを特徴とする請求項1記載のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
- 前記(B−2)工程において、中和後のpHを4〜7とし、その後、Mg系中和剤以外のアルカリで最終中和を行うことを特徴とする請求項1又は3に記載のニッケル酸化鉱石の製錬方法。
- 前記(B−2)工程において、前記浸出残渣スラリー又はそれを含む中和残渣スラリーをサイクロン分級し、その際、分級された細粒部をヘマタイトの濃縮物として回収することを特徴とする請求項1、3、4のいずれか1項に記載のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
- 前記(A)工程の回収プロセスが、前記鉱石スラリーにサイクロンによるサイクロン分級を行い、微細な鉄水酸化物粒子を低減させた後、比重分離法を用いてクロマイトの濃縮物として、前記鉱石スラリー中のクロマイト粒子を前記鉱石スラリーから回収することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
- 前記(A)工程の回収プロセスが、前記鉱石スラリーのスラリー濃度を希釈せずに、サイクロン分級することを特徴とする請求項6に記載のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
- 前記(A)工程の回収プロセスが、サイクロン分級におけるクロマイトのアンダーフローへの採取が、不可避的損失を除く全量が行われることを特徴とする請求項6又は7に記載のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
- 前記比重分離法が、デンシティ セパレーターを用いる工程、スパイラルコンセントレーターを用いる工程、シェーキングテーブルを用いる工程から選ばれる少なくとも一つの工程を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
- 前記スパイラルコンセントレーターに供給されるスラリーのパルプコンテントが、15〜35%Solidであることを特徴とする請求項9に記載のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
- 前記デンシティ セパレーターに供給されるTeeter Water量が、0.5〜7.0[m3・h−1/m2]であることを特徴とする請求項9に記載のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
- 前記比重分離後に磁力分離による物理分離に付してマグネタイトを除去し、非磁着物をクロマイト濃縮物として回収することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
- 前記鉱石処理工程における鉱石粒度調整が、2mm以下の粒度で篩い分け処理に付すことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
- 濃縮されたクロマイトのCr2O3品位が、45%以上であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法。
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