JP2010094985A - 熱可逆記録媒体の画像消去方法 - Google Patents

熱可逆記録媒体の画像消去方法 Download PDF

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Abstract

【課題】熱可逆記録媒体の劣化状態によらず、画像の消去を均一に行うことができ、画像消去の繰返しによる熱可逆記録媒体の地肌かぶりを低減することが可能な画像消去方法を提供すること。
【解決手段】光を吸収して熱に変換するための光熱変換材料を熱可逆記録層または熱可逆記録層の近傍にある層の少なくとも一方に含有する熱可逆記録媒体に対し、該熱可逆記録媒体に形成された画像を、波長が700nm以上1500nm以下であるレーザ光を照射することにより消去する画像消去工程を少なくとも含む画像消去方法であって、前記熱可逆記録媒体は、支持体上に電子供与性呈色性化合物であるロイコ染料、電子受容性化合物である可逆性顕色剤を含む熱により色調が可逆的に変化する熱可逆記録層を有するものであり、照射するレーザ光のエネルギー密度を画像消去可能なエネルギー密度範囲で且つ前記エネルギー密度範囲の中心値以下のエネルギー密度で画像消去を行う。
【選択図】図1

Description

本発明は、レーザ光の利用により画像の消去を均一に行うことができ、画像消去の繰返しによる熱可逆記録媒体の地肌かぶりを低減できる画像消去方法に関する。
現在まで、熱可逆記録媒体(以下、単に「記録媒体」、又は「媒体」と称することがある)への画像記録及び画像消去は、加熱源を記録媒体に接触させて該媒体を加熱する接触式で行われている。該加熱源としては、通常、画像記録にはサーマルヘッドが用いられ、画像消去には熱ローラ、セラミックヒータなどが用いられている。
このような接触式の画像処理方法は、熱可逆記録媒体がフィルム、紙等のフレキシブルなものである場合には、プラテンなどによって記録媒体を加熱源に均一に押し当てることにより、均一な画像記録及び画像消去を行うことができ、かつ従来の感熱紙用のプリンタの部品を転用することによって画像記録装置及び画像消去装置を安価に製造することができるという利点があった。
しかし、熱可逆記録媒体が、特許文献1及特許文献2に記載されているようなRF−IDタグなどを内蔵している場合には、熱可逆記録媒体の厚みが厚くなりフレキシブル性が低下して加熱源を均一に押し当てるためには高い圧力が必要となる。
また、接触式であるために、印字と消去を繰り返すと記録媒体表面が削れて凹凸が生じ、サーマルヘッドやホットスタンプ等の加熱源に接触しない部分が生じ、均一に加熱されずに濃度低下や消去不良がおこるという問題がある。特に消去時に上記のような消去可能温度範囲の低温側で消去すると、接触し難い部分は消去温度まで達しにくいので消去不良が起こりやすい(特許文献3及び特許文献4)。
更に、RF−IDタグが非接触で離れたところから記憶情報の読み取り及び書き換えが行われるのに対して、熱可逆記録媒体についても離れた位置から画像を書き換えたいという要望が生じてきている。これらのことから熱可逆記録媒体(以下「記録媒体」、又は「媒体」と称する)の表面に凹凸が生じた場合や離れたところから均一に画像形成及び消去する方法として、レーザを用いる方法が検討されている。(例えば、特許文献5参照)
これは、物流ラインに用いる搬送用容器に熱可逆記録媒体を使用し非接触記録を行うものである。書き込みはレーザで実施するが、消去については熱風、温水、赤外線ヒータで行なうものであってレーザで行なうものではない。
このようなレーザによる記録方法としては、高出力のレーザ光を熱可逆記録媒体に照射して、その位置をコントロール可能なレーザ記録装置(レーザマーカー)が提供されている。このレーザマーカーを用いて、レーザ光を熱可逆記録媒体に照射して、媒体中の光熱変換材料が光を吸収して熱に変換し、その熱で記録及び消去を行うことが可能である。これまでレーザによる画像形成及び消去を行う方法として、ロイコ染料と可逆性顕色剤、種々の光熱変換材料を組み合わせて、近赤外レーザ光により記録する方法が提案されている
(例えば、特許文献6及び7参照)。
しかしながらこのような熱可逆記録媒体においては、地肌かぶりの問題が懸念される(例えば特許文献8、9、10参照)。さらにレーザ光による高出力で熱可逆記録媒体に繰り返し消去を行うと、地肌かぶりが発生してしまいその結果コントラストの低下を招いてしまうという問題がある。
地肌かぶりによるコントラストの低下は、バーコードの読み取り不具合などの種々の問題を引き起こしてしまう。
特許文献11には、記録時よりも、レーザ照射時間を少なくして消去することにより、地肌かぶりに対する解決方法が提案されている。しかし、熱可逆記録媒体の広範囲に画像処理を行う場合や、物流ラインに用いる搬送用容器に熱可逆記録媒体を使用し非接触で画像処理を行う場合、媒体の劣化状態や、媒体とレーザ光源を搭載した画像記録装置との距離や、ライン上での熱可逆記録媒体の移動速度によっては、レーザ光のエネルギー不足により、十分に画像の消去ができないなどの問題があった。
これより画像の消去を均一に行うことができ、地肌かぶりを抑制して明瞭なコントラストの画像を得るために、画像消去時単独での熱可逆記録媒体にかけるエネルギーを制御する方法が必要となる。
また、特許文献3には、サーマルヘッドやホットスタンプを用い、画像消去する技術として、可逆性感熱記録材料の画像消去時の消去可能なエネルギー範囲の中の中心エネルギー値より低エネルギー側のエネルギーとして画像消去を行なう画像消去方法が、記載されている。
しかし、該画像消去手法を、光熱変換材料を含有し、レーザ光により消去可能な熱可逆記録媒体に用いても、地かぶりを充分防止することができなかった。
本発明は、前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。支持体上に電子供与性呈色性化合物であるロイコ染料、電子受容性化合物である可逆性顕色剤を含む熱により色調が可逆的に変化する熱可逆記録層を有し、特定波長の光を吸収して熱に変換するための光熱変換材料を熱可逆記録層または熱可逆記録層に近接する層の少なくとも一方に含有されている熱可逆記録媒体に対して該熱可逆記録媒体を加熱して形成された画像に波長が700nm以上1,500nm以下であるレーザ光を照射して加熱することにより消去する画像消去工程を少なくとも含む前記画像消去工程において、照射するレーザ光のエネルギー密度を画像消去可能なエネルギー密度範囲で且つ前記エネルギー密度範囲の中心値以下のエネルギー密度で画像消去を行うことで、熱可逆記録媒体の劣化状態によらず、画像の消去を均一に行うことができ、画像消去の繰返しによる熱可逆記録媒体の地肌かぶりを低減することが可能な画像消去方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 光を吸収して熱に変換するための光熱変換材料を、熱可逆記録層または熱可逆記録層に近接する層の少なくとも一方に含有する熱可逆記録媒体に対し、該熱可逆記録媒体に形成された画像を、波長が700nm以上1,500nm以下であるレーザ光を照射することにより消去する画像消去工程を少なくとも含む画像消去方法であって、前記熱可逆記録媒体は、支持体上に電子供与性呈色性化合物であるロイコ染料、電子受容性化合物である可逆性顕色剤を含み、熱により色調が可逆的に変化する熱可逆記録層を有するものであり、照射するレーザ光のエネルギー密度を画像消去可能なエネルギー密度範囲で且つ前記エネルギー密度範囲の中心値以下のエネルギー密度で画像消去を行うことを特徴とする画像消去方法である。
<2> 画像消去工程で用いるレーザ光源が半導体レーザである前記<1>に記載の画像消去方法である。
<3> 熱可逆記録媒体における光熱変換材料が、近赤外領域に吸収ピークを有する材料である前記<1>から<2>のいずれかに記載の画像消去方法である。
<4> 熱可逆記録媒体に形成された画像は、レーザ光を照射して形成されたものであり、前記レーザ光は光照射強度分布における中心位置での光照射強度Iと、照射レーザ光の全照射エネルギーの80%面での光照射強度Iとが、次式、0.40≦I/I≦2.00を満たす前記<1>から<3>のいずれかに記載の画像消去方法である。
<5> 熱可逆記録媒体を、移動させながら画像を消去する前記<1>から<4>のいずれかに記載の画像消去方法である。
<6> 画像消去可能となる最小エネルギー密度値を0とし、前記画像消去可能となる最大エネルギー密度値を10としたとき、1〜4のエネルギー密度値で画像消去を行う前記<1>から<5>のいずれかに記載の画像消去方法である。
<7> 画像消去工程において照射される前記レーザ光の出力が5W〜200Wである前記<1>から<6>のいずれかに記載の画像消去方法である。
<8> 画像消去工程において照射されるレーザ光の走査速度が100mm/s〜20,000mm/sである前記<1>から<7>のいずれかに記載の画像消去方法である。
<9> 画像消去工程において照射される前記レーザ光のスポット径が0.5mm〜14mmである前記<1>から<8>のいずれかに記載の画像消去方法である。
<10> 前記<1>から<9>のいずれかに記載の画像消去方法に用いられ、熱可逆記録層に対してレーザ光を出射するレーザ光出射手段と、該レーザ光出射手段から出射されるレーザ光の光路上に配置され、該レーザ光の光路を変更させて該レーザ光を前記熱可逆記録層上で走査させる光走査手段と、を少なくとも有することを特徴とする画像消去装置である。
本発明は、支持体上に電子供与性呈色性化合物であるロイコ染料、電子受容性化合物である可逆性顕色剤を含み熱により色調が可逆的に変化する熱可逆記録層を有し、特定波長の光を吸収して熱に変換するための光熱変換材料を熱可逆記録層または熱可逆記録層に近接する層の少なくとも一方に含有されている熱可逆記録媒体に対して該熱可逆記録媒体を加熱して形成された画像に前記波長が700nm以上1,500nm以下であるレーザ光を照射して加熱することにより消去する画像消去工程を少なくとも含む前記画像消去工程において、照射するレーザ光のエネルギー密度を画像消去可能なエネルギー密度範囲で且つ前記エネルギー密度範囲の中心値以下で画像消去を行うことで、熱可逆記録媒体の劣化状態によらず、画像の消去を均一に行うことができ、画像消去の繰返しによる地肌かぶりを低減することが可能となる。
図1は、本発明で用いられる照射レーザ光の強度分布の一例を示す概略説明図である。 図2は、通常のレーザ光の光強度分布(ガウス分布)を示す概略説明図である。 図3は、レーザ光の光強度分布を変えたときの光強度分布の一例を示す概略説明図である。 図4は、レーザ光の光強度分布を変えたときの光強度分布の一例を示す概略説明図である。 図5は、レーザ光の光強度分布を変えたときの光強度分布の一例を示す概略説明図である。 図6は、本発明の画像処理装置の一例を説明する図である。 図7Aは、マスクの一例を説明する図である。 図7Bは、マスクの他の一例を説明する図である。 図7Cは、マスクの更に他の一例を説明する図である。 図8は、非球面素子レンズの一例を説明する図である。 図9は、熱可逆記録媒体の発色−消色特性を示すグラフである。 図10は、熱可逆記録媒体の発色−消色変化のメカニズムを表す概略説明図である。 図11は、RF−IDタグの一例を示す概略図である。 図12は、評価結果1を示す図である。 図13は、評価結果1を示す他の図である。
(画像消去方法)
本発明の画像消去方法は、画像消去工程を少なくとも含み、画像形成工程、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程を含む。
(画像消去工程)
支持体上に電子供与性呈色性化合物であるロイコ染料、電子受容性化合物である可逆性顕色剤を含み熱により色調が可逆的に変化する熱可逆記録層を有し、特定波長の光を吸収して熱に変換するための光熱変換材料を熱可逆記録層または熱可逆記録層に近接する層の少なくとも一方に含有されている熱可逆記録媒体に対して、該媒体における加熱して形成された画像に、特定波長のレーザ光を照射することで記録層を加熱し画像を消去する熱可逆記録媒体の画像消去方法(半導体レーザ光、YAGレーザ光等による消去)は、熱可逆記録媒体の表面から加熱を行うことで記録層を加熱し画像を消去する熱可逆記録媒体の画像消去方法(COレーザ光、ホットスタンプ、セラミックヒータ、サーマルヘッド、ヒートロール、ヒートブロック等による消去)に比べ、繰り返し消去を行うと消去部の地肌かぶりが起こりやすいという現象が起きる。
上記繰り返し消去による地肌かぶりの起こりやすさは、記録層の冷却速度の違いであると考えられる。
該媒体における加熱して形成された画像に対して、特定波長のレーザ光を照射することで加熱して画像消去する方法の場合、光熱変換物質を含む記録層のみ、または記録層と記録層に近接する光熱変換物質を含む層のみ加熱されるため、画像処理後には、熱が前記加熱された層の上下層に拡散されるため、記録層は急冷される。
一方、サーマルヘッドやホットスタンプにより、熱可逆記録媒体の表面から加熱を行う画像消去方法の場合、サーマルヘッドやホットスタンプに接する記録層、または、記録層の上層がサーマルヘッドやホットスタンプに接し、加熱されるため、画像処理後に加熱された層の下層に熱が拡散し、記録層は徐冷となる。
すなわち特定波長のレーザ光を照射することで画像消去を行う場合は、可逆記録媒体の表面から加熱を行うことで画像消去を行う場合に比べ記録層の冷却速度は速く、冷却速度の差が地肌かぶりの差になっていると考えられる。
本発明者らは、鋭意検討の結果、画像の消去を均一に行うことができ、かつ画像消去の繰返しによる熱可逆記録媒体の地肌かぶりを低減するために、以下の方法で画像消去を行うことを見出した。
すなわち本発明の前記画像消去方法は、支持体上に電子供与性呈色性化合物であるロイコ染料、電子受容性化合物である可逆性顕色剤を含む熱により色調が可逆的に変化する熱可逆記録層を有し、特定波長の光を吸収して熱に変換するための光熱変換材料を熱可逆記録層または熱可逆記録層に近接する層の少なくとも一方に含有されている熱可逆記録媒体に対して該熱可逆記録媒体を加熱して形成された画像に前記波長が700nm以上1,500nm以下のレーザ光を照射して加熱することにより消去する画像消去工程を少なくとも含む前記画像消去工程において、照射するレーザ光のエネルギー密度を画像消去可能なエネルギー密度範囲で且つ前記エネルギー密度範囲の中心値以下で画像消去を行う方法である。
ここで本発明における画像消去可能なエネルギー密度範囲は、画像が形成された熱可逆記録媒体の画像形成部にレーザ光を照射することで該部分の濃度値が地肌濃度値+0.02以下となるエネルギー密度範囲を指す。
前記濃度値は反射濃度計により測定することができる。
また、本発明における画像消去工程で照射するレーザ光のエネルギー密度とは、前記画像消去工程でレーザ光を重複させて画像消去する場合とレーザ光を重複させずに画像消去する場合とで、それぞれに定義される。
前記画像消去工程でレーザ光を重複させて画像消去する場合、画像消去工程でのレーザ光の出力をP、画像消去工程でのレーザ光の走査線速度をV、画像消去工程でのレーザ光の副走査方向の間隔をIとしたとき、エネルギー密度は、P/(V*I)で表される。
他方、前記画像消去工程でレーザ光を重複させずに画像消去する場合、画像消去工程でのレーザ光の出力をP、画像消去工程でのレーザ光の走査線速度をV、画像消去工程でのレーザ光の走査方向に対して垂直方向の該媒体上におけるスポット径をrとしたときに、エネルギー密度は、P/(V*r)で表される。
画像消去工程におけるエネルギー密度を変更する方法としては、Pのみを変更する、Vのみを変更する、Iまたはrのみを変更するなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。またこれらエネルギー密度変更方法は単独で用いても良いし、組み合わせて用いることもできる。
本発明において照射するレーザ光のエネルギー密度を画像消去可能なエネルギー密度範囲で且つ前記エネルギー密度範囲の中心値以下で画像消去を行うためエネルギー密度を変更する方法としては、広範囲の画像を均一に消去するために、PまたはVを変更する方法が好ましい。
画像消去工程における消去条件における該画像形成部及び又は非画像形成部に対してレーザ光を照射する場合において、該レーザ光のエネルギー密度を変更したときに、該画像形成部において画像消去可能となる最小エネルギー密度値を、画像消去エネルギー密度範囲の下限エネルギー密度値とし、また、該画像形成部及び又は非画像形成部において画像消去可能となる最大エネルギー密度値を、画像消去エネルギー密度範囲の上限エネルギー密度値とし、画像消去可能なエネルギー密度範囲を求めることができる。
ここで画像消去可能なエネルギー密度範囲の中心値は、下限エネルギー密度値と上限エネルギー密度値の平均値で表される。
画像消去工程で用いる照射レーザ光のエネルギー密度の下限値としては、前記画像消去可能となる最小エネルギー密度値を0、画像消去可能となる最大エネルギー密度値を10としたとき、1以上となるエネルギー密度値が好ましく、より好ましくは2以上となるエネルギー密度値であり、さらに好ましくは、2.4以上となるエネルギー密度値である。画像消去工程で用いる照射レーザ光のエネルギー密度の上限値としては、同様に、前記画像消去可能となる最小エネルギー密度値を0、画像消去可能となる最大エネルギー密度値を10としたとき、4以下となるエネルギー密度値が好ましく、より好ましくは3以下となるエネルギー密度値であり、さらに好ましくは、2.6以下となるエネルギー密度値である。
前記照射するレーザ光のエネルギー密度を前記下限エネルギー密度値以下にすると均一に画像が消去できなくなる。
また前記画像消去可能となる最小エネルギー密度値を0、画像消去可能となる最大エネルギー密度値を10としたとき、5となるエネルギー密度値より大きくすると熱可逆記録媒体の画像消去の繰返しによる地肌かぶりが大きくなり、明瞭なコントラストの画像が得難くなる。
また、前記画像消去可能となる最小エネルギー密度値を0、画像消去可能となる最大エネルギー密度値を10としたとき、1となるエネルギー密度値より小さくすると熱可逆記録媒体の画像消去の繰返しによる地肌かぶりは小さくなるものの、画像形成と消去の繰返しによる消え残り画像濃度と画像消去繰り返し後の地肌濃度との間の濃度差異が大きくなり、消え残りが目立ってしまう。
本発明において地肌かぶりの評価は、地肌濃度値と特定波長のレーザ光を照射して加熱した部分の地肌濃度値の差をとって地肌かぶり値とし、地肌かぶり値の大きさにより評価する。
地肌かぶり値としては、+0.04以下が好ましく、+0.03以下がより好ましく、+0.02以下がさらに好ましい。地肌かぶり値が0.04より大きくなると、明瞭なコントラストの画像が得難くなる。
前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより画像を消去する画像消去工程において照射される前記レーザ光の出力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5W以上が好ましく、7W以上がより好ましく、10W以上が更に好ましい。
前記レーザ光の出力が、5W未満であると、画像消去に時間がかかり、画像消去時間を短くしようとすると出力が不足して画像の消去不良が発生する。
また、前記レーザ光の出力の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200W以下が好ましく、150W以下がより好ましく、100W以下が更に好ましい。前記レーザ光の出力が、200Wを超えると、レーザ装置の大型化を招くおそれがある。
前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより画像を消去する画像消去工程において照射されるレーザ光の走査速度の下限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100mm/s以上が好ましく、200mm/s以上がより好ましく、300mm/s以上が更に好ましい。前記走査速度が、100mm/s未満であると、画像消去に時間がかかる。
また、前記レーザ光の走査速度の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20,000mm/s以下が好ましく、15,000mm/s以下がより好ましく、10,000mm/s以下が更に好ましい。前記走査速度が、20,000mm/sを超えると、均一な画像消去がし難くなることがある。
前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより画像を消去する画像消去工程において照射されるレーザ光のスポット径の下限としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、0.5mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましく、2.0mm以上が更に好ましい。
また、前記レーザ光のスポット径の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、14.0mm以下が好ましく、10.0mm以下がより好ましく、7.0mm以下が更に好ましい。
前記スポット径が下限より小さいと、画像消去に時間がかかる。また、スポット径がk上限より大きくなると、出力が不足して画像の消去不良が発生することがある。
(画像形成工程)
前記画像形成工程は、前記熱可逆記録媒体を加熱することにより画像を形成する工程である。熱可逆記録媒体を加熱する方法としては、従来既知の加熱方法を挙げられるが、物流ラインを想定した場合、熱可逆記録媒体にレーザ光を照射して加熱する方法が非接触の状態で画像の形成を行うことができるため特に好ましい。
前記画像形成工程においてレーザ光を照射して加熱することで、熱可逆記録媒体に画像を形成する場合、照射されるレーザ光の強度分布が、0.40≦I/I≦2.00を満たすことが特に好ましく、消去後に地かぶりを生じ難い。
:照射レーザ光の中心位置における光照射強度
:照射レーザ光の全照射エネルギーの80%面の光照射強度
ここで、前記照射レーザ光の全照射エネルギーの80%面とは、前記照射レーザ光の全照射エネルギーの80%となるときの面における光強度を指し、例えば図1に示すように、レーザ光の光照射強度を高感度焦電式カメラを用いたハイパワー用ビームアナライザーを用いて測定し、得られた光照射強度を三次元グラフ化し、Z=0となる面に対して水平な面とZ=0の面で囲まれた全照射エネルギーの80%が含まれるように光強度分布を分割した時の水平な面を指す。
前記レーザ光の光強度分布を測定する方法としては、前記レーザ光が、例えば、半導体レーザ、YAGレーザ等から出射され、近赤外領域の波長を有する場合には、CCD等を用いたレーザビームプロファイラを用いて行うことができる。
また、例えば、COレーザから出射され、遠赤外領域の波長を有する場合には、前記CCDを使用することができないため、ビームスプリッタとパワーメータとを組合せたもの、高感度焦電式カメラを用いたハイパワー用ビームアナライザなどを用いて行うことができる。
レーザ光の強度分布を変化させたときの照射レーザ光の最大値を含む断面における光強度分布曲線の例を図2〜図5に示す。図2はガウス分布を示し、このような中央部の光照射強度が強い光強度分布では、Iに対してIが小さくなるため、I/Iは大きくなる。
また、図3のような図2の光強度分布より中央部の光照射強度が弱い光強度分布では、Iに対してIが大きくなるため、I/Iは図2の光強度分布よりも小さくなる。
また、図4のようなトップハット形状に近い光強度分布では、Iに対してIがさらに大きくなるため、I/Iは図3の光強度分布よりもさらに小さくなる。
図5のような中央部の光照射強度が弱く周辺部の光照射強度が強い光強度分布では、Iに対してIが小さくなるため、I/Iは図4の光強度分布よりもさらに小さくなる。よって、前記比I/Iは前記レーザ光の光照射強度分布の形状を表していることになる。
本発明において、前記比I/Iが2.00を超えると、中心位置の光強度が強くなり、熱可逆記録媒体に過剰なエネルギーが加わり、繰返し画像形成及び消去を行ったときに熱可逆記録媒体の劣化が起きてしまう。
一方、前記比I/Iが0.40を下回ると、周辺部に対して中心位置にエネルギーが加わらなくなり、画像を形成できない。画像形成のために中央位置の照射エネルギーを上げると周辺部の光強度が強くなり過ぎて熱可逆記録媒体に過剰なエネルギーが加わり、繰返し画像形成及び消去を行ったときに熱可逆記録媒体の劣化が起きてしまう。
本発明において前記比率の下限としては、0.40とする必要があり、好ましくは0.50、より好ましくは0.60、更に好ましくは、0.70となる。
また本発明において、前記比率の上限は、2.00とする必要があり、好ましくは1.90、より好ましくは1.80、更に好ましくは、1.70となる。
更に、前記比I/Iが1.59より大きいと、中心位置の光照射強度が周辺部の光照射強度に対して強い光照射強度分布となることから、画像の形成及び消去の繰り返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑制しながら、照射パワーを調整することにより照射距離を変更しなくても描画線の太さを変えることができる。
前記レーザ光の強度分布を、ガウス分布から、照射レーザ光の中心位置における光照射強度のIと照射レーザ光の全照射エネルギーの80%面の光照射強度Iの関係が、0.40≦I/I≦2.00を満たすように変化させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
例えば、光照射強度調整手段を好適に用いることができる。前記光照射強度調整手段としては、レンズ、フィルタ、マスク、ミラー、ファイバーカップリングなどが好適に挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また集光レンズであるfθレンズと熱可逆記録媒体との距離を焦点距離からずらすことにより調整することも可能である。
前記マスクとしては、図7A、図7B、及び図7Cに示す形状からなるマスクなど用いることができる。
前記レンズとしては、非球面素子レンズを好適に使用することができ、前記非球面素子レンズの形状としては、例えば、図8に示す形状のものが挙げられる。
前記画像形成工程において照射されるレーザ光の出力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1W以上が好ましく、3W以上がより好ましく、5W以上が更に好ましい。前記レーザ光の出力が、1W未満であると、画像形成に時間がかかり、画像形成時間を短くしようとすると出力が不足して高濃度の画像が得られない。また、前記レーザ光の出力の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200W以下が好ましく、150W以下がより好ましく、100W以下が更に好ましい。前記レーザ光の出力が、200Wを超えると、レーザ装置の大型化を招くことがある。
前記画像形成工程において照射されるレーザ光の走査速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、300mm/s以上が好ましく、500mm/s以上がより好ましく、700mm/s以上が更に好ましい。前記走査速度が、300mm/s未満であると、画像形成に時間がかかる。また、前記レーザ光の走査速度の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、15,000mm/s以下が好ましく、10,000mm/s以下がより好ましく、8,000mm/s以下が更に好ましい。前記走査速度が、15,000mm/sを超えると、均一な画像が形成し難くなる。
前記画像形成工程において照射されるレーザ光のスポット径としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、0.02mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、0.15mm以上が更に好ましい。また、前記レーザ光のスポット径の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3.0mm以下が好ましく、2.5mm以下がより好ましく、2.0mm以下が更に好ましい。
前記スポット径が小さいと、画像の線幅が細くなり、コントラストが小さくなって視認性が低下する。また、スポット径が大きくなると、画像の線幅が太くなり、隣接する線が重なり、小さな文字の画像形成が不可能となる。
(画像消去装置)
画像消去装置は、本発明の前記画像消去方法に用いられ、前記熱可逆記録層に対してレーザ光を出射するレーザ光出射手段と、該レーザ光出射手段から出射されるレーザ光の光路上に配され、該レーザ光の光路を変更させて前記レーザ光を前記熱可逆記録層上で走査する光走査手段を少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材を有してなる。また詳細は後述するが、本発明においては熱可逆記録媒体がレーザ光を高効率で吸収し発熱する役割を有する光熱変換材料を少なくとも含有してなる。よって含有させる光熱変換材料が他材料に比べ最も高効率でレーザ光を吸収するように、出射するレーザ光の波長を選択する必要がある。
(レーザ光出射手段)
画像消去工程におけるレーザ光出射手段から出射されるレーザ光の波長としては、700nm以上1,500nm以下であり、更に光熱変換材料の吸収がある範囲から適宜選択することができ、720nm以上が好ましく、750nm以上がより好ましい。前記レーザ光の波長の上限としては、目的に応じて適宜選択することができるが、1,300mm以下が好ましく、1,200nm以下がより好ましい。
レーザ光の波長を700nmより短い波長にすると、可視光領域では熱可逆記録媒体の画像形成時のコントラストが低下したり、熱可逆記録媒体が着色してしまうという問題がある。さらに短い波長の紫外光領域では、熱可逆記録媒体の劣化が起こりやすくなるという問題がある。
また熱可逆媒体に添加する光熱変換材料には、繰返し画像処理に対する耐久性を確保する為に高い分解温度を必要とし、光熱変換材料に有機色素を用いる場合、分解温度が高く吸収波長が長い光熱変換材料を得るのは難しい。これよりレーザ光の波長としては1,500nm以下とする。
このような画像消去工程におけるレーザ光出射手段としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えばYAGレーザ、ファイバーレーザ、半導体レーザ(LD)が挙げられる。これらの中でも波長選択性が広いことで光熱変換材料の選択肢が増え、レーザ装置としては、レーザ光源自体が小さく、装置の小型化、更には低価格化が可能であるという点から、半導体レーザ光が特に好ましい。
画像形成工程においてレーザ光を用いる場合、レーザ光出射手段は目的に応じて適宜選択することができ、例えばYAGレーザ、ファイバーレーザ、半導体レーザ(LD)、CO2レーザなどの通常用いられるレーザが挙げられる。
前記レーザ光出射手段から出射されるレーザ光の波長としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、可視領域から赤外領域が好ましく、画像コントラストが向上する点で、近赤外領域から遠赤外領域がより好ましい。
前記YAGレーザ、前記ファイバーレーザ、及び前記LDから出射されるレーザ光の波長は、可視〜近赤外領域(数百μm〜1.2μm)であり、波長が短いため高精細画像の形成が可能であるという利点がある。
また、前記YAGレーザ、及び前記ファイバーレーザは高出力であるため、画像処理速度の高速化を量ることができるという利点がある。前記LDはレーザ自体が小さいため、装置の小型化、更には低価格化が可能であるという利点がある。
本発明の前記画像消去装置は、前記レーザ光出射手段と、前記光走査手段と、を少なくとも有している以外、その基本構成としては、通常レーザマーカーと呼ばれるものと同様であり、発振器ユニット、電源制御ユニット、及びプログラムユニットを少なくとも備えている。前記光走査手段としては、図6に示すスキャニングユニット(5)等が挙げられる。
また、前記画像消去装置は、前記レーザ光出射手段と前記光走査手段とを有する画像形成部を含む画像処理装置として構成される。
ここで、図6に、本発明の画像処理置の一例を、レーザ照射ユニットを中心に示す。
発振器ユニットは、レーザ発振器(1)、ビームエキスパンダ(2)、スキャンニングユニット(5)などで構成されている。
前記レーザ発振器(1)は、光強度が強く、指向性の高いレーザ光を得るために必要なものであり、例えば、レーザ媒質の両側にミラーを配置し、該レーザ媒質をポンピング(エネルギー供給)し、励起状態の原子数を増やし反転分布を形成させて誘導放出を起こさせる。そして、光軸方向の光のみが選択的に増幅されることにより、光の指向性が高まり出力ミラーからレーザ光が放出される。
前記スキャンニングユニット(5)は、ガルバノメータ(4)と、該ガルバノメータ(4)に取り付けられたミラー(4A)とで構成されている。そして、前記レーザ発振器1から出力されたレーザ光を、前記ガルバノメータ(4)に取り付けられたX軸方向とY軸方向との2枚のミラー(4A)で高速回転走査することにより、熱可逆記録媒体(7)上に、画像の形成又は消去を行うようになっている。
前記電源制御ユニットは、レーザ媒質を励起する光源の駆動電源、ガルバノメータの駆動電源、ペルチェ素子などの冷却用電源、画像処理装置全体の制御を司る制御部等などで構成されている。
前記プログラムユニットは、タッチパネル入力やキーボード入力により、画像の形成又は消去のために、レーザ光の強さ、レーザ走査の速度等の条件入力や、記録する文字等の作製及び編集を行うユニットである。
なお、前記レーザ照射ユニット、即ち、画像形成/消去用ヘッド部分は、画像処理装置に搭載されているが、該画像処理装置には、このほか、前記熱可逆記録媒体の搬送部及びその制御部、モニタ部(タッチパネル)等を有している。
前記画像処理方法は、ダンボールやプラスチックコンテナ等の容器に貼付したラベル等の熱可逆記録媒体に対して、非接触式にて、高いコントラストの画像を高速で繰返し形成及び消去可能で、しかも繰返しによる前記熱可逆記録媒体の地肌かぶりを抑制することができる。このため、物流・配送システムに特に好適に使用可能である。この場合、例えば、ベルトコンベアに載せた前記ダンボールやプラスチックコンテナを移動させながら、前記ラベルに画像を形成及び消去することができ、ラインの停止が不要な点で、出荷時間の短縮を図ることができる。
また、前記ラベルが貼付されたダンボールやプラスチックコンテナは、該ラベルを剥がすことなく、そのままの状態で再利用し、再度、画像の消去及び形成を行うことができる。
<画像形成及び画像消去メカニズム>
前記画像形成及び画像消去メカニズムは、熱により色調が可逆的に変化する態様である。前記態様はロイコ染料及び可逆性顕色剤(以下、「顕色剤」と称することがある)からなり、色調が透明状態と発色状態とに熱により可逆的に変化する。
図9に、前記樹脂中に前記ロイコ染料及び前記顕色剤を含んでなる熱可逆記録層を有する熱可逆記録媒体について、その温度−発色濃度変化曲線の一例を示し、図10に、透明状態と発色状態とが熱により可逆的に変化する前記熱可逆記録媒体の発消色メカニズムを示す。
まず、初め消色状態(A)にある前記記録層を昇温していくと、溶融温度Tにて、前記ロイコ染料と前記顕色剤とが溶融混合し、発色が生じ溶融発色状態(B)となる。溶融発色状態(B)から急冷すると、発色状態のまま室温に下げることができ、発色状態が安定化されて固定された発色状態(C)となる。この発色状態が得られたかどうかは、溶融状態からの降温速度に依存しており、徐冷では降温の過程で消色が生じ、初期と同じ消色状態(A)、あるいは急冷による発色状態(C)よりも相対的に濃度の低い状態となる。また別に、発色状態(C)から再び昇温していくと、発色温度よりも低い温度Tにて消色が生じ(DからE)、この状態から降温すると、初期と同じ消色状態(A)に戻る。
溶融状態から急冷して得た発色状態(C)は、前記ロイコ染料と前記顕色剤とが分子同士で接触反応し得る状態で混合された状態であり、これは固体状態を形成していることが多い。この状態では、前記ロイコ染料と前記顕色剤との溶融混合物(前記発色混合物)が結晶化して発色を保持した状態であり、この構造の形成により発色が安定化していると考えられる。
他方、消色状態(A)は、両者が相分離した状態である。この状態は、少なくとも一方の化合物の分子が集合してドメインを形成したり、結晶化した状態であり、凝集あるいは結晶化することにより前記ロイコ染料と前記顕色剤とが分離して安定化した状態であると考えられる。多くの場合、このように、両者が相分離して前記顕色剤が結晶化することにより、より完全な消色が生じる。
なお図9に示す、溶融状態から徐冷による消色、及び発色状態からの昇温による消色はいずれもTで凝集構造が変化し、相分離や前記顕色剤の結晶化が生じている。
さらに図9において、前記記録層を溶融温度T以上の温度Tに繰返し昇温すると消去温度に加熱しても消去できない消去不良が発生したりする場合がある。これは、前記顕色剤が熱分解を起こし、凝集あるいは結晶化しにくくなってロイコ染料と分離しにくくなるためと思われる。繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑えるためには、前記熱可逆記録媒体を加熱する際に図9の前記溶融温度Tと前記温度Tの差を小さくすることにより、繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑えられる。
(熱可逆記録媒体)
本発明の前記画像消去方法に用いられる前記熱可逆記録媒体は、支持体と、熱可逆記録層とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択した、保護層、中間層、アンダーコート層、バック層、接着層、粘着層、着色層、空気層、光反射層等のその他の層を有してなる。これら各層は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
(支持体)
前記支持体としては、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば、平板状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記熱可逆記録媒体の大きさ等に応じて適宜選択することができる。
前記支持体の材料としては、例えば、無機材料、有機材料などが挙げられる。
前記無機材料としては、例えば、ガラス、石英、シリコン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、SiO、金属などが挙げられる。
前記有機材料としては、例えば、紙、三酢酸セルロース等のセルロース誘導体、合成紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等のフィルムなどが挙げられる。
前記無機材料及び前記有機材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、有機材料が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
前記支持体には、塗布層の接着性を向上させることを目的として、コロナ放電処理、酸化反応処理(クロム酸等)、エッチング処理、易接着処理、帯電防止処理、などを行うことにより表面改質するのが好ましい。
また、前記支持体に、酸化チタン等の白色顔料などを添加することにより、白色にするのが好ましい。
前記支持体の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10〜2,000μmが好ましく、50〜1,000μmがより好ましい。
(熱可逆記録層)
前記熱可逆記録層(以下、単に「記録層」と称することがある)は、電子供与性呈色性化合物であるロイコ染料、電子受容性化合物である顕色剤を含む熱により色調が可逆的に変化する熱可逆記録層であり、更に必要に応じてその他の成分を含んでなる。
前記熱により色調が可逆的に変化する電子供与性呈色性化合物であるロイコ染料、電子受容性化合物である可逆性顕色剤は、温度変化により目に見える変化を可逆的に生じる現象を発現可能な材料であり、加熱温度及び加熱後の冷却速度の違いにより、相対的に発色した状態と消色した状態とに変化可能である。
熱により色調が可逆的に変化する材料としてはロイコ染料及び可逆性顕色剤が挙げられる。前記ロイコ染料は、それ自体無色又は淡色の染料前駆体である。該ロイコ染料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、トリフェニルメタンフタリド系、トリアリルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、チオフェルオラン系、キサンテン系、インドフタリル系、スピロピラン系、アザフタリド系、クロメノピラゾール系、メチン系、ローダミンアニリノラクタム系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、ビスラクトン系等のロイコ化合物が好適に挙げられる。これらの中でも、発消色特性、色彩、保存性等に優れる点で、フルオラン系又はフタリド系のロイコ染料が特に好ましい。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、異なる色調に発色する層を積層することにより、マルチカラー、フルカラーに対応させることもできる。
前記可逆性顕色剤としては、熱を因子として発消色を可逆的に行うことができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)前記ロイコ染料を発色させる顕色能を有する構造(例えば、フェノール性水酸基、カルボン酸基、リン酸基等)、及び、(2)分子間の凝集力を制御する構造(例えば、長鎖炭化水素基が連結した構造)、から選択される構造を分子内に1つ以上有する化合物が好適に挙げられる。
なお、連結部分にはヘテロ原子を含む2価以上の連結基を介していてもよく、また、長鎖炭化水素基中にも、同様の連結基及び芳香族基の少なくともいずれかが含まれていてもよい。
前記(1)ロイコ染料を発色させる顕色能を有する構造としては、フェノールが特に好ましい。
前記(2)分子間の凝集力を制御する構造としては、炭素数8以上の長鎖炭化水素基が好ましく、該炭素数は11以上がより好ましく、また炭素数の上限としては、40以下が好ましく、30以下がより好ましい。
前記可逆性顕色剤の中でも、下記一般式(1)で表されるフェノール化合物が好ましく、下記一般式(2)で表されるフェノール化合物がより好ましい。
前記一般式(1)及び前記一般式(2)中、Rは、単結合又は炭素数1〜24の脂肪族炭化水素基を表す。Rは、置換基を有していてもよい炭素数2以上の脂肪族炭化水素基を表し、該炭素数としては、5以上が好ましく、10以上がより好ましい。Rは、炭素数1〜35の脂肪族炭化水素基を表し、該炭素数としては、6〜35が好ましく、8〜35がより好ましい。これらの脂肪族炭化水素基は、1種単独で有していてもよいし、2種以上を併用して有していてもよい。
前記R、前記R、及び前記Rの炭素数の和としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下限としては、8以上が好ましく、11以上がより好ましく、上限としては、40以下が好ましく、35以下がより好ましい。
前記炭素数の和が、8未満であると、発色の安定性や消色性が低下することがある。
前記脂肪族炭化水素基は、直鎖であってもよいし、分枝鎖であってもよく、不飽和結合を有していてもよいが、直鎖であるのが好ましい。また、前記炭化水素基に結合する置換基としては、例えば、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基等が挙げられる。
X及びYは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよく、N原子又はO原子を含む2価の基を表し、具体例としては、酸素原子、アミド基、尿素基、ジアシルヒドラジン基、シュウ酸ジアミド基、アシル尿素基等が挙げられる。これらの中でも、アミド基、尿素基が好ましい。
nは、0〜1の整数を示す。
前記電子受容性化合物(顕色剤)は、消色促進剤として分子中に−NHCO−基、−OCONH−基を少なくとも一つ以上有する化合物を併用することにより、消色状態を形成する過程において消色促進剤と顕色剤の間に分子間相互作用が誘起され、発消色特性が向上するので好ましい。
前記消色促進剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記熱可逆記録層には、バインダー樹脂、更に必要に応じて記録層の塗布特性や発色消色特性を改善、制御するための各種添加剤を用いることができる。これらの添加剤としては、例えば、界面活性剤、導電剤、充填剤、酸化防止剤、光安定化剤、発色安定化剤、消色促進剤などが挙げられる。
前記バインダー樹脂としては、支持体上に記録層を結着することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、従来から公知の樹脂の中から1種又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、繰り返し時の耐久性を向上させるため、熱、紫外線、電子線などによって硬化可能な樹脂が好ましく用いられ、特にイソシアネート系化合物などを架橋剤として用いた熱硬化性樹脂が好適である。該熱硬化性樹脂としては、例えば、水酸基やカルボキシル基等の架橋剤と反応する基を持つ樹脂、又は水酸基やカルボキシル基等を持つモノマーとそれ以外のモノマーを共重合した樹脂などが挙げられる。このような熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂、等が挙げられる。これらの中でも、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂が特に好ましい。
前記記録層中における前記発色剤とバインダー樹脂との混合割合(質量比)は、発色剤1に対して0.1〜10が好ましい。バインダー樹脂が少なすぎると、前記記録層の熱強度が不足することがあり、一方、バインダー樹脂が多すぎると、発色濃度が低下して問題となることがある。
前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソシアネート類、アミノ樹脂、フェノール樹脂、アミン類、エポキシ化合物、等が挙げられる。これらの中でも、イソシアネート類が好ましく、特に好ましくはイソシアネート基を複数持つポリイソシアネート化合物である。
前記架橋剤のバインダー樹脂に対する添加量は、バインダー樹脂中に含まれる活性基の数に対する架橋剤の官能基の比は0.01〜2が好ましい。これ以下では熱強度が不足してしまい、また、これ以上添加すると発色及び消色特性に悪影響を及ぼす。
更に、架橋促進剤としてこの種の反応に用いられる触媒を用いてもよい。
前記熱架橋した場合の熱硬化性樹脂のゲル分率は、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上が更に好ましい。前記ゲル分率が30%未満であると、架橋状態が十分でなく耐久性に劣ることがある。
前記バインダー樹脂が架橋状態にあるのか非架橋状態にあるのかを区別する方法としては、例えば、塗膜を溶解性の高い溶媒中に浸すことによって区別することができる。
即ち、非架橋状態にあるバインダー樹脂は、溶媒中に該樹脂が溶けだし溶質中には残らなくなる。
前記記録層におけるその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、画像の記録を容易にする観点から、界面活性剤、可塑剤などが挙げられる。
前記記録層用塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、記録層の塗工方法、乾燥・硬化方法等は後述するバック層で用いられた公知の方法を用いることができる。
なお、記録層用塗布液は前記分散装置を用いて各材料を溶媒中に分散してもよいし、各々単独で溶媒中に分散して混ぜ合わせてもよい。更に加熱溶解して急冷又は徐冷によって
析出させてもよい。
前記記録層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)前記樹脂、及び前記電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物を溶媒中に溶解乃至分散させた記録層用塗布液を支持体上に塗布し、該溶媒を蒸発させてシート状等にするのと同時に又はその後に架橋する方法、(2)前記樹脂のみを溶解した溶媒に前記電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物を分散させた記録層用塗布液を支持体上に塗布し、該溶媒を蒸発させてシート状等にすると同時に又はその後に架橋する方法、(3)溶媒を用いず、前記樹脂と前記電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物とを加熱溶融して互いに混合し、この溶融混合物をシート状等に成形して冷却した後に架橋する方法、などが好適に挙げられる。なお、これらにおいて、前記支持体を用いることなく、シート状の熱可逆記録媒体として成形することもできる。
前記(1)又は(2)において用いる溶剤としては、前記樹脂及び前記電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物の種類等によって異なり一概には規定することはできないが、例えば、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、クロロホルム、四塩化炭素、エタノール、トルエン、ベンゼンなどが挙げられる。
なお、前記電子受容性化合物は、前記記録層中では粒子状に分散して存在している。
前記記録層用塗布液には、コーティング材料用としての高度な性能を発現させる目的で、各種顔料、消泡剤、顔料、分散剤、スリップ剤、防腐剤、架橋剤、可塑剤等を添加してもよい。
前記記録層の塗工方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ロール状で連続して、又はシート状に裁断した支持体を搬送し、該支持体上に、例えば、ブレード塗工、ワイヤーバー塗工、スプレー塗工、エアナイフ塗工、ビード塗工、カーテン塗工、グラビア塗工、キス塗工、リバースロール塗工、ディップ塗工、ダイ塗工等公知の方法で塗布する。
前記記録層用塗布液の乾燥条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、室温〜140℃の温度で、10秒間〜10分間程度、などが挙げられる。
前記記録層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1μm〜20μmが好ましく、3μm〜15μmがより好ましい。前記記録層の厚みが薄すぎると発色濃度が低くなるため画像のコントラストが低くなることがあり、一方、厚すぎると層内での熱分布が大きくなり、発色温度に達せず発色しない部分が発生し、希望とする発色濃度を得ることができなくなることがある。
(光熱変換層)
前記光熱変換層は、前記レーザ光を高効率で吸収し、発熱する役割を有する光熱変換材料を少なくとも含有してなる。
光熱変換材料は、前記熱可逆記録層または前記熱可逆記録層に近接する層の少なくとも一方の層に含有させることが特に好ましい。
前記記録層中に光熱変換材料を含有させる場合、前記記録層は前記光熱変換層を兼ねることとなる。熱可逆記録層と光熱変換層が近接するとは、熱可逆記録層と光熱変換層を接する又は、熱可逆記録層と光熱変換層の間に記録層膜厚以下の層を形成させることを指す。熱可逆記録層と光熱変換層の間に両層が相互作用を抑制する目的でバリア層を形成することがあり、材料として熱伝導性の良い層が好ましい。前記熱可逆記録層と光熱変換層の間に挟む層は、目的に応じて適宜選択することができ、これらに限定されるものではない。
前記光熱変換材料は、無機系材料と有機系材料とに大別できる。
前記無機系材料としては、例えば、カーボンブラックやGe、Bi、In、Te、Se、Cr等の金属又は半金属及びそれを含む合金が挙げられ、これらは、真空蒸着法や粒子状の材料を樹脂等で接着して層状に形成される。
前記有機系材料としては、吸収すべき光波長に応じて各種の染料を適宜用いることができるが、光源として半導体レーザを用いる場合には、700〜1,500nm付近に吸収ピークを有する近赤外吸収色素が用いられる。具体的には、シアニン色素、キノン系色素、インドナフトールのキノリン誘導体、フェニレンジアミン系ニッケル錯体、フタロシアニン系色素などが挙げられる。繰返し画像処理を行うためには、耐熱性に優れた光熱変換材料を選択するのが好ましく、この点からフタロシアニン系色素が特に好ましい。
前記近赤外吸収色素は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記光熱変換層を設ける場合には、通常、前記光熱変換材料は、樹脂と併用して用いられる。該光熱変換層に用いられる樹脂としては、特に制限はなく、前記無機系材料及び有機系材料を保持できるものであれば、公知のものの中から適宜選択することができるが、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが好ましい。
前記熱可逆記録媒体は、前記記録層の他に、更に必要に応じて適宜選択した中間層、アンダーコート層、着色層、空気層、光反射層、接着層、バック層、保護層、接着剤層、粘着層等のその他の層を有していてもよい。これら各層は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
ただし前記光熱変換材料を含有させる層の上に設ける層においては、照射する特定波長のレーザ光のエネルギーロスを少なくするために前記特定波長において吸収の少ない材料を用いて層を構成させることが好ましい。
(保護層)
前記熱可逆記録媒体には、前記記録層を保護する目的で該記録層上に保護層を設けることが好ましい。該保護層は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1層以上に形成してもよく、露出している最表面に設けることが好ましい。
前記保護層はバインダー樹脂、更に必要に応じて、フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
前記保護層の樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線(UV)硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、等が好ましく、これらの中でも、紫外線(UV)硬化性樹脂、熱硬化性樹脂が特に好ましい。
前記UV硬化性樹脂は、硬化後非常に硬い膜を形成することができ、表面の物理的な接触によるダメージやレーザ加熱による媒体変形を抑止することができるため繰り返し耐久性に優れた熱可逆記録媒体が得られる。
また、前記熱硬化性樹脂は、前記UV硬化性樹脂にはやや劣るが同様に表面を硬くすることができ、繰り返し耐久性に優れる。
前記UV硬化性樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ビニル系、不飽和ポリエステル系のオリゴマーや各種単官能、多官能のアクリレート、メタクリレート、ビニルエステル、エチレン誘導体、アリル化合物等のモノマーが挙げられる。これらの中でも、4官能以上の多官能性のモノマー又はオリゴマーが特に好ましい。これらのモノマー又はオリゴマーを2種類以上混合することで樹脂膜の硬さ、収縮度、柔軟性、塗膜強度等を適宜調節することができる。
また、前記モノマー又はオリゴマーを紫外線を用いて硬化させるためには、光重合開始剤、光重合促進剤を用いる必要がある。
前記光重合開始剤又は光重合促進剤の添加量は、前記保護層の樹脂成分の全質量に対し0.1質量%〜20質量%が好ましく、1質量%〜10質量%がより好ましい。
前記紫外線硬化樹脂を硬化させるための紫外線照射は、公知の紫外線照射装置を用いて行うことができ、該装置としては、例えば、光源、灯具、電源、冷却装置、搬送装置等を備えたものが挙げられる。
前記光源としては、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、カリウムランプ、水銀キセノンランプ、フラッシュランプなどが挙げられる。該光源の波長は、前記熱可逆記録媒体用組成物に添加されている光重合開始剤及び光重合促進剤の紫外線吸収波長に応じて適宜選択することができる。
前記紫外線照射の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記樹脂を架橋するために必要な照射エネルギーに応じてランプ出力、搬送速度等を決めればよい。
また、搬送性を良好にするため、重合性基を持つシリコーン、シリコーングラフトをした高分子、ワックス、ステアリン酸亜鉛等の離型剤、シリコーンオイル等の滑剤を添加することができる。これらの添加量としては、保護層の樹脂成分全質量に対して0.01質量%〜50質量%が好ましく、0.1質量%〜40質量%がより好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、静電気対策として導電性フィラーを用いることが好ましく、更に針状導電性フィラーを用いることが好ましい。
前記フィラーの粒径としては、例えば、0.01μm〜10.0μmが好ましく、0.05μm〜8.0μmがより好ましい。前記フィラーの添加量としては、前記樹脂1質量部に対し、0.001質量部〜2質量部が好ましく、0.005質量部〜1質量部がより好ましい。
更に、前記保護層には、添加剤として従来公知の界面活性剤、レベリング剤、帯電防止剤等を含有していてもよい。
また、熱硬化性樹脂としては例えば、前記記録層で用いられたバインダー樹脂と同様なものを好適に用いることができる。
更に紫外線吸収構造を持つポリマー(以下、「紫外線吸収ポリマー」と称することもある)を用いてもよい。
ここで、前記紫外線吸収構造を持つポリマーとは、紫外線吸収構造(例えば、紫外線吸収性基)を分子中に有するポリマーを意味する。該紫外線吸収構造としては、例えば、サリシレート構造、シアノアクリレート構造、ベンゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造などが挙げられ、これらの中でも、耐光性が良好である点でベゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造が特に好ましい。
前記熱硬化性樹脂は架橋されていることが好ましい。したがって熱硬化性樹脂としては、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基等のような、硬化剤と反応する基を有しているものを用いることが好ましく、特に水酸基を有しているポリマーが好ましい。該紫外線吸収構造を持つポリマー含有層の強度を向上させるためには該ポリマーの水酸基価が10mgKOH/g以上のポリマーを用いると十分な塗膜強度が得られ、より好ましくは30mgKOH/g以上であり、更に好ましくは40mgKOH/g以上である。十分な塗膜強度を持たせることで繰り返し画像形成・消去を行っても記録媒体の劣化が抑えることができる。
前記硬化剤としては例えば、前記記録層で用いられた硬化剤と同様なものを好適に用いることができる。
前記保護層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、保護層の塗工方法、乾燥方法等は前記記録層で用いられた公知の方法を用いることができる。紫外線硬化樹脂を用いた場合には塗布して乾燥を行った紫外線照射による硬化工程が必要となるが、紫外線照射装置、光源、照射条件については前記の通りである。
前記保護層の厚みは、0.1μm〜20μmが好ましく、0.5μm〜10μmがより好ましく、1.5μm〜6μmが更に好ましい。前記厚みが0.1μm未満であると、熱可逆記録媒体の保護層としての機能を十分に果たすことができず、熱による繰り返し履歴によりすぐに劣化し、繰り返し使用することができなくなってしまうことがあり、20μmを超えると、保護層の下層にある感熱に十分な熱を伝えることができなくなり、熱による画像形成と消去が十分にできなくなってしまうことがある。
(中間層)
本発明においては、前記記録層と前記保護層の接着性向上、保護層の塗布による記録層の変質防止、保護層中の添加剤の記録層への移行を防止する目的で、両者の間に中間層を設けることが好ましく、これによって発色画像の保存性が改善できる。
前記中間層は、少なくともバインダー樹脂を含有し、更に必要に応じて、フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記記録層のバインダー樹脂や熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂成分を用いることができる。該樹脂成分としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミドなどが挙げられる。
また、前記中間層には、紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。該紫外線吸収剤としては、有機系及び無機系化合物のいずれでも用いることができる。
また、紫外線吸収ポリマーを用いてもよく、架橋剤により硬化してもよい。これらは前記保護層で用いられたものと同様のものを好適に用いることができる。
前記中間層の厚みは、0.1μm〜20μmが好ましく、0.5μm〜5μmがより好ましい。前記中間層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、中間層の塗工方法、中間層の乾燥・硬化方法等は、前記記録層で用いられた公知の方法を用いることができる。
(アンダー層)
本発明においては、印加した熱を有効に利用し高感度化するため、又は支持体と記録層の接着性の改善や支持体への記録層材料の浸透防止を目的として、前記記録層と前記支持体の間にアンダー層を設けてもよい。
前記アンダー層は、少なくとも中空粒子を含有してなり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記中空粒子としては、中空部が粒子内に一つ存在する単一中空粒子、中空部が粒子内に多数存在する多中空粒子、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記中空粒子の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、熱可塑性樹脂などが好適に挙げられる。前記中空粒子は、適宜製造したものであってもよいし、市販品であってもよい。該市販品としては、例えば、マイクロスフェアーR−300(松本油脂株式会社製);ローペイクHP1055、ローペイクHP433J(いずれも、日本ゼオン株式会社製);SX866(JSR株式会社製)などが挙げられる。
前記中空粒子の前記アンダー層における添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、10質量%〜80質量%が好ましい。
前記バインダー樹脂としては、前記記録層、又は前記紫外線吸収構造を持つポリマーを含有する層と同様の樹脂を用いることができる。
また、前記アンダー層には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、カオリン、タルクなどの無機フィラー及び各種有機フィラーの少なくともいずれかを含有させることができる。
なお、前記アンダー層には、その他、滑剤、界面活性剤、分散剤などを含有させることもできる。
前記アンダー層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1μm〜50μmが好ましく、2μm〜30μmがより好ましく、12μm〜24μmが更に好ましい。
(バック層)
本発明においては、前記熱可逆記録媒体のカールや帯電防止、搬送性の向上のために支持体の記録層を設ける面と反対側にバック層を設けてもよい。
前記バック層は、少なくともバインダー樹脂を含有し、更に必要に応じて、フィラー、導電性フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線(UV)硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、等が挙げられ、これらの中でも、紫外線(UV)硬化性樹脂、熱硬化性樹脂が特に好ましい。
前記紫外線硬化樹脂、前記熱硬化性樹脂、前記フィラー、前記導電性フィラー、及び前記滑剤については、前記記録層、前記保護層、前記又は中間層で用いられたものと同様なものを好適に用いることができる。
(接着剤層又は粘着層)
本発明においては、支持体の記録層形成面の反対面に接着剤層又は粘着剤層を設けて熱可逆記録ラベルとすることができる。前記接着剤層又は粘着剤層の材料は一般的に使われているものが使用可能である。
前記接着剤層又は粘着剤層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、酢ビ系樹脂、酢酸ビニル−アクリル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アクリル酸エステル系共重合体、メタクリル酸エステル系共重合体、天然ゴム、シアノアクリレート系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられる。
前記接着剤層又は粘着剤層の材料はホットメルトタイプでもよい。剥離紙を用いてもよいし、無剥離紙タイプでもよい。このように接着剤層又は粘着剤層を設けることにより、記録層の塗布が困難な磁気ストライプ付塩ビカードなどの厚手の基板の全面若しくは一部に貼ることができる。これにより磁気に記憶された情報の一部を表示することができる等、この媒体の利便性が向上する。このような接着剤層又は粘着剤層を設けた熱可逆記録ラベルは、ICカードや光カード等の厚手カードにも適用できる。
前記熱可逆記録媒体には、前記支持体と前記記録層との間に視認性を向上させる目的で、着色層を設けてもよい。前記着色層は、着色剤及び樹脂バインダーを含有する溶液、又は分散液を対象面に塗布し、乾燥するか、あるいは単に着色シートを貼り合せることにより形成することができる。
前記熱可逆記録媒体には、カラー印刷層を設けることもできる。前記カラー印刷層における着色剤としては、従来のフルカラー印刷に使用されるカラーインク中に含まれる各種の染料及び顔料等が挙げられ、前記樹脂バインダーとしては各種の熱可塑性、熱硬化性、紫外線硬化性又は電子線硬化性樹脂等が挙げられる。該カラー印刷層の厚みとしては、印刷色濃度に対して適宜変更されるため、所望の印刷色濃度に合わせて選択することができる。
前記熱可逆記録媒体は、非可逆性記録層を併用しても構わない。この場合、それぞれの記録層の発色色調は同じでも異なってもよい。また、本発明の熱可逆記録媒体の記録層と同一面の一部もしくは全面、又は/もしくは反対面の一部分に、オフセット印刷、グラビア印刷などの印刷、又はインクジェットプリンター、熱転写プリンター、昇華型プリンターなどによって任意の絵柄などを施した着色層を設けてもよく、更に着色層上の一部分もしくは全面に硬化性樹脂を主成分とするOPニス層を設けてもよい。前記任意の絵柄としては、文字、模様、図柄、写真、赤外線で検知する情報などが挙げられる。また、単純に構成する各層のいずれかに染料や顔料を添加して着色することもできる。
更に、本発明の熱可逆記録媒体には、セキュリティのためにホログラムを設けることもできる。また、意匠性付与のためにレリーフ状、インタリヨ状に凹凸を付けて人物像や社章、シンボルマーク等のデザインを設けることもできる。
前記熱可逆記録媒体は、その用途に応じて所望の形状に加工することができ、例えば、カード状、タグ状、ラベル状、シート状、ロール状などに加工される。また、カード状に加工されたものについてはプリペイドカードやポイントカード、更にはクレジットカードなどへの応用が挙げられる。カードサイズよりも小さなタグ状のサイズでは値札等に利用できる。また、カードサイズよりも大きなタグ状のサイズでは工程管理や出荷指示書、チケット等に使用できる。ラベル状のものは貼り付けることができるために、様々な大きさに加工され、繰り返し使用する台車や容器、箱、コンテナ等に貼り付けて工程管理、物品管理等に使用することができる。また、カードサイズよりも大きなシートサイズでは画像形成する範囲が広くなるため一般文書や工程管理用の指示書等に使用することができる。
(熱可逆記録部材 RF−IDとの組み合わせ例)
本発明で用いられる熱可逆記録部材は、前記可逆表示可能な記録層と情報記憶部とを、同一のカードやタグに設け(一体化させ)、該情報記憶部の記憶情報の一部を記録層に表示することにより、特別な装置がなくてもカードやタグを見るだけで情報を確認することができ、利便性に優れる。また、情報記憶部の内容を書き換えた時には熱可逆記録部の表示を書き換えることで、熱可逆記録媒体を繰り返し何度も使用することができる。
前記情報記憶部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、磁気記録層、磁気ストライプ、ICメモリー、光メモリー、RF−IDタグなどが好ましく用いられる。工程管理や物品管理等に使用する場合には特にRF−IDタグが好ましく用いられる。なお、前記RF−IDタグはICチップと、該ICチップに接続したアンテナとから構成されている。
前記熱可逆記録部材は、前記可逆表示可能な記録層と情報記憶部とを有し、該情報記憶部の好適なものとしてRF−IDタグが挙げられる。
ここで、図11は、RF−IDタグ85の概略図の一例を示す。このRF−IDタグ85はICチップ81と、該ICチップに接続したアンテナ82とから構成されている。前記ICチップ81は記憶部、電源調整部、送信部、受信部の4つに区分されており、それぞれが働きを分担して通信を行っている。通信はRF−IDタグとリーダライタのアンテナが電波により通信してデータのやり取りを行う。具体的には、RF−IDのアンテナがリーダライタからの電波を受信し共振作用により電磁誘導により起電力が発生する電磁誘導方式と放射電磁界により起動する電波方式の2種類がある。共に外部からの電磁界によりRF−IDタグ内のICチップが起動し、チップ内の情報を信号化し、その後、RF−IDタグから信号を発信する。この情報をリーダライタ側のアンテナで受信してデータ処理装置で認識し、ソフト側でデータ処理を行う。
前記RF−IDタグはラベル状又はカード状に加工されており、RF−IDタグを前記熱可逆記録媒体に貼り付けることができる。RF−IDタグは記録層面又はバック層面に貼ることができるが、バック層面に貼ることが好ましい。RF−IDタグと熱可逆記録媒体を貼り合わせるためには公知の接着剤又は粘着剤を使用することができる。
また、熱可逆記録媒体とRF−IDをラミネート加工等で一体化してカード状やタグ状に加工してもよい。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
(製造例1)
<熱可逆記録媒体の作製>
熱により色調が可逆的に変化する熱可逆記録媒体を、以下のようにして作製した。
−支持体−
支持体として、厚み125μmの白濁ポリエステルフィルム(帝人デュポン株式会社製、テトロンフィルムU2L98W)を用いた。
−アンダー層−
スチレン−ブタジエン系共重合体(日本エイアンドエル社製、PA−9159)30質量部、ポリビニルアルコール樹脂(株式会社クラレ製、ポバールPVA103)12質量部、中空粒子(松本油脂株式会社製、マイクロスフェアーR−300)20質量部、及び水40質量部を添加し、均一状態になるまで約1時間撹拌して、アンダー層塗布液を調製した。
次に、得られたアンダー層塗布液を前記支持体上に、ワイヤーバーにて塗布し、80℃にて2分間加熱及び乾燥して、厚み20μmのアンダー層を形成した。
−熱可逆記録層(記録層)−
下記構造式(1)で表される可逆性顕色剤5質量部、下記構造式(2)及び(3)で表される2種類の消色促進剤をそれぞれ0.5質量部ずつ、アクリルポリオール50質量%溶液(水酸基価=200mgKOH/g)10質量部、及びメチルエチルケトン80質量部を、ボールミルを用いて平均粒径が約1μmになるまで粉砕分散した。
(可逆性顕色剤)
(消色促進剤)
次に、前記可逆性顕色剤を粉砕分散させた分散液に、前記ロイコ染料としての2−アニリノ−3−メチル−6ジブチルアミノフルオラン1質量部、下記構造式(4)で表されるフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGANOX565)0.2質量部、及びイソシアネート(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHL)5質量部を加え、よく撹拌した。
次に、前記溶液にフタロシアニン系光熱変換材料(株式会社日本触媒製、IR−14)を0.02重量%添加し、よく撹拌させて記録層用塗布液を調製した。
得られた記録層用塗布液を、前記アンダー層形成済みの支持体上に、ワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて2分間乾燥した後、60℃にて24時間キュアーを行って、厚み11μmの記録層を形成した。
−中間層−
アクリルポリオール樹脂50質量%溶液(三菱レーヨン株式会社製、LR327)3質量部、酸化亜鉛微粒子30質量%分散液(住友セメント株式会社製、ZS303)7質量部、イソシアネート(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHL)1.5質量部、及びメチルエチルケトン7質量部を加え、よく攪拌して中間層用塗布液を調製した。
次に、前記アンダー層、及び前記記録層が形成された支持体上に、前記中間層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、60℃にて2時間加熱し、厚み2μmの中間層を形成した。
−保護層−
ペンタエリスルトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA)3質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業株式会社製、アートレジンUN−3320HA)3質量部、ジペンタエリスリトールカプロラクトンのアクリル酸エステル(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPCA−120)3質量部、シリカ(水澤化学工業株式会社製、P−526)1質量部、光重合開始剤(日本チバガイギー株式会社製、イルガキュア184)0.5質量部、及びイソプロピルアルコール11質量部を加え、ボールミルにてよく攪拌して平均粒径が約3μmになるまで分散し、保護層用塗布液を調製した。
次に、前記アンダー層、前記記録層、及び前記中間層が形成された支持体上に、前記保護層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、80W/cmの紫外線ランプで架橋させて、厚み4μmの保護層を形成した。
−バック層−
ペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA)7.5質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業株式会社製、アートレジンUN−3320HA)2.5質量部、針状導電性酸化チタン(石原産業株式会社製、FT−3000、長軸=5.15μm、短軸=0.27μm、構成:アンチモンドープ酸化スズ被覆の酸化チタン)2.5質量部、光重合開始剤(日本チバガイギー株式会社製、イルガキュア184)0.5質量部、及びイソプロピルアルコール13質量部を加え、ボールミルにてよく攪拌してバック層用塗布液を調製した。
次に、前記記録層、前記中間層、及び前記保護層が形成された支持体における、これらの層が形成されていない側の面上に、前記バック層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、80W/cmの紫外線ランプで架橋させて、厚み4μmのバック層を形成した。以上により、製造例1の熱可逆記録媒体を作製した。
(製造例2)
<熱可逆記録媒体の作製>
熱可逆記録層に、光熱変換材料としてフタロシアニン系光熱変換材料の代わりにシアニン系光熱変換材料(株式会社山本化成製、YKR−2900)を0.005重量%添加し、よく撹拌させて記録層用塗布液を調製した以外は、製造例1と同様の熱可逆記録媒体を作成した。ここでシアニン系光熱変換材料YKR−2900は熱可逆記録媒体製造例1と同様な画像消去可能エネルギー密度範囲になる添加量としている。
(評価方法)
<画像・地肌濃度値測定>
画像・地肌濃度値の測定は、X−rite社製
938 Spectrodensitometerで行った。
<地肌かぶり評価>
地肌かぶりの測定は、画像処理前の地肌濃度値0.15と繰り返し消去した部分の地肌濃度値の差を取り、地肌かぶり値とした。地肌かぶり値としては、0.04以下が好ましく、地肌かぶり値が0.04より大きくなると、明瞭なコントラストの画像が得られなくなってしまう。
<消え残り濃度評価>
消え残り濃度の測定は、繰り返し消去部と繰り返し画像処理部との地肌濃度値の差をとり、消え残り濃度値とした。消え残り濃度値としては、0.02以下が好ましく、消え残り濃度値が0.02より大きくなると、消え残りが目立ってしまう。
<レーザ光強度分布測定>
レーザ光の強度分布測定は、以下の手順で行った。
レーザとして半導体レーザ装置を用いた場合、まず、照射距離が熱可逆記録媒体に形成するときと同じ位置になるようにレーザビームアナライザー(Point Grey Research社製、Scorpion SCOR−20SCM)を設置し、レーザ出力が3×10−6となるように透過ミラー、フィルターを組合わせたビームスプリッター(OPHIR社製、BEAMSTAR−FX−BEAM SPLITTER)を用いて減光し、レーザビームアナライザーでレーザ光強度を測定した。次に、得られたレーザ光強度を三次元グラフ化してレーザ光の強度分布を得た。
(評価試験1)
<画像形成>
熱可逆記録媒体製造例1で製造した熱可逆記録媒体に、LIMO社製半導体レーザLIMO25-F100-DL808(中心波長:808nm)により出力10W、照射距離152mm、線速1000mm/s、I/Iが1.7となるように調整して、画像を形成した。
<画像消去>
熱可逆記録媒体製造例1に、LIMO社製半導体レーザLIMO25-F100-DL808(中心波長:808nm)により照射距離200mm、線速500mm/s、スポット径3.0mmとなるように調整して、0.5mmの間隔で直線状にレーザ光を走査して画像を消去した。
(評価結果1)
上記評価試験1による消去特性を図12及び図13に示す。
画像消去可能な最小エネルギー密度値は、48mJ/mm画像消去可能な最大エネルギー密度値は68mJ/mm(画像消去可能出力12〜17W)、消去可能範囲幅20mJ/mm、中心値は、58mJ/mmであった。
(評価試験・結果2)
<繰り返し消去>
実施例1〜6、比較例1〜3として熱可逆記録媒体製造例1製造した熱可逆記録媒体に、前記評価試験1と同様に画像を形成し、LIMO社製半導体レーザLIMO25-F100-DL808(中心波長:808nm)により照射距離200mm、線速500mm/s、スポット径3.0mmとなるように調整して、0.5mmの間隔で直線状に表1に示すレーザ光の出力で走査し、繰り返し消去を行い、地肌かぶり値を測定した結果を表1に示す。
なお、繰り返し消去は、地肌かぶり値を測定するものであり、画像形成を行わず、画像消去可能なエネルギー密度範囲で、繰り返してレーザ光を照射して行うものである。
<繰り返し画像処理>
前記熱可逆記録媒体に対して、前記評価試験1の条件で画像形成、実施例1〜6、比較例1〜3の画像消去条件で画像消去を行い、繰り返し画像処理1回後、300回後の消え残り濃度をそれぞれ評価した。消え残り濃度を測定した結果を表1に示す。ここで画像処理は画像形成・画像消去の順に行い、画像形成・画像消去を1回ずつ行った時に繰り返し回数を1回とした。
また参考例1として熱可逆記録媒体製造例1製造した熱可逆記録媒体に、前記評価試験1と同様に画像を形成し、サンクス株式会社製COレーザ LP−440により照射距離224mm、線速1750mm/s、スポット径3.0mm、消去可能エネルギー密度範囲(25〜35mJ/mm)の中心値30mJ/mm(26.5W)で、0.5mmの間隔で直線状にレーザ光を走査して繰り返し消去、繰り返し画像処理を行い、地肌かぶり値、消え残り濃度を測定した。
参考例2として熱可逆記録媒体製造例1製造した熱可逆記録媒体に、前記評価試験1と同様に画像を形成し、松下電子部品社製EUX−ET8A9AS1端面型サーマルヘッド(抵抗値1152オーム)を用いた八城製作所製感熱印字シミュレーター(パルス幅2ms、ライン周期2.86ms、速度43.10mm/s、副走査密度8dot/mm)により消去可能エネルギー密度範囲(14.1〜21.1mJ/mm)の中心値17.5mJ/mmで、繰り返し消去、繰り返し画像処理を行い、地肌かぶり値、消え残り濃度を測定した。
結果を下記表1に示す。ここで、消去可能領域内のレーザ出力またはエネルギー範囲である時には「可」、消去可能領域外である場合には「不可」と表記した。
(評価試験・結果3)
<繰り返し消去>
実施例7〜10、比較例4〜6として熱可逆記録媒体製造例1で製造した熱可逆記録媒体に、前記評価試験1と同様に画像を形成し、LIMO社製半導体レーザLIMO25-F100-DL808(中心波長:808nm)により照射距離200mm、出力13.25W、スポット径3.0mmとなるように調整して、0.5mmの間隔で直線状にレーザ光の表2に示す走査速度で繰り返し消去を行い、地肌かぶり値を測定した結果を表2に示す。
<繰り返し画像処理>
前記熱可逆記録媒体に対して、前記評価試験1の条件で画像形成、実施例7〜10、比較例4〜6の画像消去条件で画像消去を行い、繰り返し画像処理1回後、300回後の消え残り濃度をそれぞれ評価した。消え残り濃度を測定した結果を表2に示す。ここで画像処理は画像形成・画像消去の順に行い、画像形成・画像消去を1回ずつ行った時に繰り返し回数を1回とした。
ここで、消去可能領域内のレーザ出力またはエネルギー範囲である時には「可」、消去可能領域外である場合には「不可」と表記した。
(評価試験・結果4)
<画像形成>
熱可逆記録媒体製造例1・製造例2で製造した熱可逆記録媒体に対して、LIMO社製半導体レーザLIMO25-F100-DL808(中心波長:808nm)により出力10Wで、線速、及び表3に示すfθレンズから熱可逆記録媒体までのレーザ照射距離で、エネルギー密度一定で、光照射強度分布I/Iを変えて画像を形成した。
<画像消去>
実施例1、11、12として、前記画像が形成された熱可逆記録媒体に対して、LIMO社製半導体レーザLIMO25−F100−DL808(中心波長:808nm)により出力13.25W、照射距離200mm、線速500mm/s、スポット径3.0mmに調整し、0.5mmの間隔(エネルギー密度:53/mJ/mm)で直線状にレーザ光を走査して画像を消去した。
<繰り返し画像処理>
前記熱可逆記録媒体に対して、上記の画像形成、画像消去条件で画像処理を行い、繰り返し画像処理100回後及び300回後の消去性を評価した。ここで画像処理は画像形成・画像消去の順に行い、画像形成・画像消去を1回ずつ行った時に繰り返し回数を1回とした。
結果を下記表3に示す。ここで、繰り返し画像処理後の媒体において、目視により、完全に消去できている場合には「可」、消え残りが見られる場合には「不可」と表記した。
製造例2で作製した熱可逆記録媒体は、製造例1で作製した熱可逆記録媒体に比し消去可能な繰り返し回数が少なかった。
また実施例13として、製造例1の熱可逆記録媒体をプラスチックの箱に貼り付け、コンベアに載せて10m/分の搬送速度で移動させながら、実施例1と同条件で画像処理したところ、実施例1と同様の結果が得られた。
(評価試験・結果5)
<繰り返し消去>
実施例14〜17、比較例7〜9として、熱可逆記録媒体製造例1で製造した熱可逆記録媒体に、同様に画像を形成し、イエナオプティクス社製半導体レーザJOLD−55−CPFW−1L(中心波長:808nm)のLDバー光源のレーザ光の光路中に光学レンズを組合わせることでライン状のビーム形状(幅1.5mm、長さ50mm)を形成して、照射距離150mm、線速15mm/sで消去可能エネルギー密度範囲(48〜68mJ/mm)内で、レーザ光の出力を変えて走査し、繰り返し消去を行い、地肌かぶり値を測定した結果を表4に示す。
<繰り返し画像処理>
前記熱可逆記録媒体に対して、前記評価試験1の条件で画像形成、実施例14〜17、比較例7〜9の画像消去条件で画像消去を行い、繰り返し画像処理1回後、300回後の消え残り濃度をそれぞれ評価した。消え残り濃度を測定した結果を表4に示す。ここで画像処理は画像形成・画像消去の順に行い、画像形成・画像消去を1回ずつ行った時に繰り返し回数を1回とした。
試験結果について説明する。
実施例1〜6と比較例1〜3をそれぞれ対比すると、画像消去可能なエネルギー密度範囲で且つ前記エネルギー密度範囲の中心値以下のエネルギー密度値にすることで、地肌かぶりを抑制でき、明瞭なコントラストな画像を得ることができる。
また比較例2、3では、画像消去可能なエネルギー密度範囲外であり、消去できない及び発色してしまう等の問題がある。
実施例6と参考例1,2をそれぞれ対比すると、画像消去可能なエネルギー密度範囲が異なり、半導体レーザによる熱可逆記録媒体の画像消去方法と、COレーザ消去・サーマルヘッドによる画像消去方法とでは、熱可逆記録媒体に与える影響が異なることが分かる。
実施例7〜10と比較例4〜6をそれぞれ対比すると、画像消去可能なエネルギー密度範囲で且つ前記エネルギー密度範囲の中心値以下のエネルギー密度値にすることで、地肌かぶりを抑制でき、明瞭なコントラストな画像を得ることができる。また比較例4,5では、画像消去可能なエネルギー密度範囲外であり、消去できない及び発色してしまう等の問題がある。
実施例1と実施例11をそれぞれ対比すると、画像形成のレーザ光の光照射強度が0.40≦I/I≦2.00を満たすことで、繰り返し画像処理を行っても熱可逆記録媒体の劣化が起こらず、均一に画像消去可能となる。
実施例1と実施例12をそれぞれ対比すると、フタロシアニン系光熱変換材料を用いることで、繰り返し画像処理を行っても光熱変換材料の劣化が起こらず、さらに均一に画像消去可能となる。
実施例13より、移動体に対して繰り返し画像処理を行っても熱可逆記録媒体に対して均一に画像を消去することができ、かつ地肌かぶりを抑制でき明瞭なコントラストな画像を得ることができる。
実施例14〜17と比較例7〜9をそれぞれ対比すると、画像消去可能なエネルギー密度範囲で且つ前記エネルギー密度範囲の中心値以下のエネルギー密度値にすることで、地肌かぶりを抑制でき、明瞭なコントラストな画像を得ることができており、画像消去工程でレーザ光を重複させずに画像消去する場合でも、画像消去工程でレーザ光を重複させて画像消去する場合と同様の結果を得ることができる。
本発明の画像消去方法及び画像消去装置は、ダンボールやプラスチックコンテナ等の容器に貼付したラベル等の熱可逆記録媒体に対して、非接触式にて繰返し画像形成及び消去可能で、しかも繰返し消去による前記熱可逆記録媒体の地肌かぶりを抑制し明瞭なコントラストな画像を得ることができ、物流・配送システムに特に好適に使用可能である。
1 レーザ発振器
2 ビームエキスパンダ
3 マスクまたは非球面レンズ
4 ガルバノメータ
4A ガルバノミラー
5 スキャニングユニット
6 fθレンズ
7 熱可逆記録媒体
81 ICチップ
82 アンテナ
85 RF−IDタグ
特開2004−265247号公報 特開2004−265249号公報 特許第3161199号公報 特開平9−30118号公報 特開2000−136022号公報 特開平5−8537号公報 特開平11−151856号公報 特許第3836901号公報 特許第3998193号公報 特開2005−262798号公報 特許第3790485号公報

Claims (5)

  1. 光を吸収して熱に変換するための光熱変換材料を、熱可逆記録層または熱可逆記録層に近接する層の少なくとも一方に含有する熱可逆記録媒体に対し、該熱可逆記録媒体に形成された画像を、波長が700nm以上1,500nm以下であるレーザ光を照射することにより消去する画像消去工程を少なくとも含む画像消去方法であって、
    前記熱可逆記録媒体は、支持体上に電子供与性呈色性化合物であるロイコ染料、電子受容性化合物である可逆性顕色剤を含み、熱により色調が可逆的に変化する熱可逆記録層を有するものであり、照射するレーザ光のエネルギー密度を画像消去可能なエネルギー密度範囲で且つ前記エネルギー密度範囲の中心値以下のエネルギー密度で画像消去を行うことを特徴とする画像消去方法。
  2. 画像消去工程で用いるレーザ光源が半導体レーザである請求項1に記載の画像消去方法。
  3. 熱可逆記録媒体における光熱変換材料が、近赤外領域に吸収ピークを有する材料である請求項1から2のいずれかに記載の画像消去方法。
  4. 熱可逆記録媒体に形成された画像は、レーザ光を照射して形成されたものであり、前記レーザ光は光照射強度分布における中心位置での光照射強度Iと、照射レーザ光の全照射エネルギーの80%面での光照射強度Iとが、次式、0.40≦I/I≦2.00を満たす請求項1から3のいずれかに記載の画像消去方法。
  5. 熱可逆記録媒体を、移動させながら画像を消去する請求項1から4のいずれかに記載の画像消去方法。
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