以下、本発明に係る基板接合装置、基板接合方法および記録ディスク製造方法の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、記録ディスクの製造方法については、基板接合方法と併せて説明する。
まず、図1から図4を参照しながら、本発明の実施の形態に係る基板接合装置10について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る基板接合装置10の概略構成を模式的に示す図2のX−X線で切断した断面図である。図1に示すように、第1基板12と第2基板14とを接合するための基板接合装置10は、第1容器部である蓋体16と、第2容器部である基体18とを備える真空容器20と、真空容器20内に設けられている第1基板12を保持する第1保持台22および第2基板14を保持する第2保持台24と、真空容器20に接続された第1排気手段と、を有している。
図2は、第1基板12および第2基板14の斜視図である。いずれも記録ディスク用基板である第1基板12および第2基板14は、ポリカーボネート等の樹脂から構成されている。また、第1基板12および第2基板14は、図2に示すように、円板形状をしており、それぞれの中心部には第1孔26および第2孔28が形成されている。接着層等を介して第1基板12と第2基板14とが互いに接合されて、DVD等のディスクが作製される。
なお、ディスクとしては、第1基板12のみに記録層と反射層とを有する片面一層型光ディスク、第1基板12および第2基板14の両方に記録層と反射層とを有する両面一層型光ディスク、両面一層型光ディスクの片方の反射層を半透明層とした片面二層型光ディスクおよび片面二層型光ディスクを貼り合わせた両面二層型光ディスク等が挙げられるが、本発明は各種のディスクの作製に適用することができる。
蓋体16は、図1に示すように、略酒枡形状をしており、内側底面には、第1保持台22が設けられている。第1保持台22の基板保持面には、外側に段差部を設けた略ドーナツ形状の多孔質部材からなる第1多孔体30が設けられている。第1多孔体30は孔部を多数有し、この孔部が通気孔とされている。また、第1多孔体30は、段差部に係合する略リング形状の第1係止体31によって外周部を押さえられて、第1保持台22に固定されている。なお、第1係止体31は、ボルト(不図示)等によって、第1保持台22に固定されている。また、第1多孔体30には、ドーナツ形状の第1バッファ空間32を介して大気圧よりも高い圧力の気体を供給する給気手段が接続されている。
このため、第1基板12と第2基板14とを接触させた状態で、第1多孔体30から、第1基板12の第2基板14との接合面12aとは反対の面12bに向けて、高い圧力の気体を供給することができる。この結果、第1基板12と第2基板14とを強固に接合することができる。なお、供給する気体の圧力が大気圧以下では、第1基板12と第2基板14とを強固に接合することができない。供給する気体の好ましい圧力は、0.2MPa以上0.5MPa以下である。また、第1多孔体30に代えて、一端が第1バッファ空間32と連通し、他端が蓋体16の内側表面で開口する通気孔を複数設けた部材を使用しても良い。
図3は、蓋体16を基体18に対して閉じたときの蓋体16を上面から見た図である。蓋体16は、図3に示すように、蓋体16を把持して開閉する把持部40と、平面形状が中心角約90度である扇形の4つの凹部42,42,42,42と、を備えている。把持部40は、作業者が把持しやすいように取手形状をしている。なお、本実施の形態に係る基板接合装置10では、蓋体16は作業者の手動によって開閉するが、これに代えて、動力機構によって蓋体16を開閉する構成にしても良い。
各凹部42,42,42,42には、長孔44,44,44,44が設けられている。蓋体16を開けた状態から閉じた状態に移行する途中で、各長孔44,44,44,44には、基体18に設けられている後述する4つの蓋固定体46,46,46,46が嵌め込まれる。蓋体16が閉じた状態のときに、当接手段となる蓋固定体46の軸棒48の先端に設けられている固定部50を回動して、蓋体16を基体18に対して固定する。このとき、固定部50は、固定部50の外壁に設けられた突起部(カムフォロア)と凹部42の内壁に設けられた溝部(カム溝)とが係合した状態で、凹部42の内壁を斜方向に徐々に上昇していく。このため、蓋体16は固定部50によって押し付けられ、真空室90が外部と連通できない状態となる。
蓋体16を基体18に対して固定し、真空室90を外部と連通させないようにする当接手段としての構成は、これに限定されない。例えば、蓋体16を基体18に対してボルトで固定しても良いし、蓋体16に基体18をロックするロックリングを設けて、これを基体18に設けられたフックに係止して蓋体16と基体18とを互いに固定しても良いし、蓋体16および基体18の側面に穴を形成して、これらの穴に略コ字状の部材を差し込んで蓋体16と基体18とを互いに固定しても良い。
また、蓋体16は、その少なくとも一部が、石英または強化ガラス等の耐圧性を有する透明部材から構成されていても良い。この構成によって、第1基板12と第2基板14とを接合する接着剤として紫外線硬化性樹脂(UV(Ultra Violet light)樹脂)を用いた場合、真空容器20外から接着剤に紫外線を照射することができる。また、この透明部材は、蓋体16以外の部位、例えば基体18に設けても良い。
また、基板接合装置10を、第1基板12に圧力が加わり過ぎた場合に、第1基板12が第1保持台22の保持面から離れるように構成しても良い。この構成によって、第1基板12に圧力が加わり過ぎたとき、気体が真空容器20内に漏洩して、気体の第1基板12に対する押圧力が急減するため、ディスク内の記録層またはディスク自体を破損するのを防ぐことができる。
第1多孔体30は、セラミックスから形成されていることが好ましい。この構成によって、第1保持台22の基板保持面を平坦にすることができる。この結果、第1基板12が反ることなく、第1基板12を第1保持台22に保持することができる。なお、第1多孔体30の材質は、セラミックスに限定されない。第1多孔体30は、金属または樹脂から形成されていても良い。
また、第1多孔体30は、第1保持台22の第1基板12の保持面の全体に渡って設けなくても良い。すなわち、第1多孔体30は、第1保持台22の第1基板12との接触面の少なくとも一部に設けられていれば良い。例えば、第1基板12のうち、反りの程度が大きくなる外周部が接触することとなる第1保持台22の保持面の箇所のみに、第1多孔体30を設けても良い。
また、図1に示すように、第1保持台22の中央には、第1基板12の第1孔26に嵌合する第1突起部60が設けられている。このため、第1基板12を、第1保持台22の所定の位置に精度良く保持することができる。第1突起部60は、略円柱形状をしており、この円柱の側面には、円の径方向に弾性的に伸縮して第1基板12を第1孔26の内側から押圧保持する押圧部(不図示)が設けられている。また、第1突起部60の露出している円周部は、面取りが施されている。また、第1突起部60は、MCナイロン(Monomer Cast Nylon)等の樹脂から構成されている。
また、第1突起部60は、基板接合装置10に第1基板12および第2基板14を配置した状態で、後述する駆動手段によって第1基板12と第2基板14とが接近および接触する際、第1保持台22に弾性的に引き込まれるように構成されている。この構成によって、第1基板12と第2基板14とが接近および接触する際に、第1突起部60を簡易に第1基板12から外すことができる。本実施の形態では、第1突起部60が第1保持台22に弾性的に引き込まれる構成として、第1突起部60をガススプリングによって伸縮させる構成を用いている。なお、この構成に代えて、第1突起部60の背後にコイルスプリング等の弾性体を設けても良い。
なお、第1突起部60が第1保持台22に弾性的に引き込まれる構成に代えて、後述する第2突起部62が第2保持台24に弾性的に引き込まれる構成としても良いし、第1突起部60および第2突起部62の両方が、それぞれ第1保持台22および第2保持台24に弾性的に引き込まれる構成としても良い。
大気圧以上の圧力を供給することとなる給気手段は、第1多孔体30に接続されている給気管64と、給気管64の途中に設けられている給気開閉バルブ66と、給気管64に接続されているコンプレッサ等の大気圧よりも高い圧力の気体を供給する加圧装置68と、を備えている。
また、第1多孔体30には、第1バッファ空間32を介して第2排気手段が接続されている。この第2排気手段は、第1バッファ空間32に連通している第2排気管70と、第2排気管70の途中に設けられている第2開閉バルブ72と、第2排気管70に接続されている第2排気ポンプ74と、を備えている。なお、本実施の形態に係る基板接合装置10では、第2排気管70を2つ設けたが、第2排気管70の数は、1つであっても、3つ以上であっても良い。
第2排気ポンプ74を稼働させることによって、第1基板12を第1保持台22の第1多孔体30に、平坦に、かつ、均一な吸着力で保持させることができる。なお、本実施の形態に係る基板接合装置10の給気手段と第2排気手段に代えて、給気管64と第2排気管70を共用とし、この共用している管に加圧および減圧が可能な圧力調整装置を接続しても良い。また、第1基板12を吸着保持しなくても第1基板12が平坦な場合には、第1多孔体30および第2排気手段を省略することができる。この場合、第1基板12は、第1突起部60によってのみ、第1保持台22に保持されることとなる。
図4は、蓋体16が、完全に開いた状態(図示A)と閉じた状態(図示B)の間に位置する状態を模式的に示す基板接合装置10の側面図である。蓋体16は、図4に示すように、基体18に対して閉じたときにその開口部(真空室90を構成する凹部)が基体18側に向くように、回転機構を介して基体18に接続されている。このため、蓋体16は、回転可能であり、回転しながら基体18に対して開閉できるように構成されている。この回転機構は、水平方向に延びた回転軸80と、回転軸80の周囲に設けられている回転軸受82と、を備えている。
また、蓋体16には、急激な蓋体の開閉を防止するため、ダンパ84等から構成されている緩衝機構85が設けられている。図4に示すように、開状態では、ダンパ84のピストン軸84aが長く伸びているが、閉状態では、ピストン軸84aのほとんどがシリンダ筒84b内に入り込んだ状態となる。ピストン軸84aがシリンダ筒84bに入り込むときに抵抗力を受けることによって、蓋体16はゆっくりと閉じることとなる。抵抗力の発生は、オイルまたは空気等を用いることによってなされる。
蓋体16の開閉角度(回転軸を中心として、蓋体16が完全に開いた状態と、蓋体16が閉じた状態とのなす角度)が約100度になるように基板接合装置10が構成されている。この状態(約100度の開状態)のとき、ダンパ84のピストン軸84aは伸びきった状態となり、これ以上伸びることができなくなっている。このため、蓋体16はさらに開く方向に回転できず、この開状態が維持される。
このように蓋体16の開閉角度を90度以上にすることによって、蓋体16が完全に開いた状態では、第1保持台22の基板保持面が鉛直方向またはわずかに上方に向くため、第1基板12を第1保持台22に保持させることが容易となると共に、蓋体16を安定させた状態で開放することができる。なお、蓋体16の開閉角度は90度以上に限定されず、90度未満であっても良い。
基体18は、図1に示すように、上面がほぼ平坦になるように構成されている。基体18の中央部には、第2基板14を保持する第2保持台24が形成されている。また、基体18の第2保持台24の周囲には、Oリング溝86が設けられている。このOリング溝86にはOリング88が挿入されている。固定部50を利用して蓋体16を固く閉じることによって、Oリング88を挟んで、蓋体16と基体18とで気密な真空室90を形成することができる。
さらに、基体18のOリング溝86の外側には、上述した4つの蓋固定体46,46,46,46が設けられている。蓋固定体46は、回動されることによって蓋体16を押さえる固定部50と、固定部50の回動の軸となる軸棒48と、軸棒48を回動させる駆動源となる駆動アクチュエータ94と、を備えている。
なお、固定部50は、蓋体16を基体18に対して閉じた直後の状態では、回動できないように構成されている。固定部50は、真空室90が排気されて、Oリング88が潰れた状態で蓋体16と基体18とが密着しているときに、回動できるように構成されている。なお、本実施の形態に係る基板接合装置10では、固定部50が駆動アクチュエータ94によって回動されているが、これに代えて、固定部50を手動で回動して蓋体16を押さえる構成としても良い。
第2保持台24の基板保持面には、外側に段差部を設けた略ドーナツ形状の孔部を多数有する多孔質部材からなる第2多孔体96が設けられている。また、第2多孔体96は、段差部に係合する略リング形状の第2係止体97によって外周部を押さえられて、第2保持台24に固定されている。なお、第2係止体97は、ボルト(不図示)等によって、第2保持台24に固定されている。第2多孔体96には、ドーナツ形状の第2バッファ空間98を介して第3排気手段が接続されている。この第3排気手段は、第2バッファ空間98に連通している第3排気管100と、第3排気管100の途中に設けられている第3開閉バルブ102と、第3排気管100に接続されている第3排気ポンプ104と、を備えている。このため、第3排気ポンプ104を稼働させることによって、第2基板14を第2保持台24の第2多孔体96に、平坦に、かつ、均一な吸着力で保持させることができる。
なお、第2多孔体96に代えて、一端が第2バッファ空間98と連通し、第2保持台24の表面で開口する通気孔を複数設けた部材を使用しても良い。また、本実施の形態に係る基板接合装置10では、第3排気管100を2つ設けたが、第3排気管100の数は、1つであっても、3つ以上であっても良い。また、第2基板14を吸着保持しなくても第2基板14が平坦な場合には、第2多孔体96および第3排気手段を省略することができる。この場合、第2基板14は、第2突起部62によってのみ、第2保持台24に保持されることとなる。
第2多孔体96は、第1多孔体30と同様に、セラミックスから形成されていることが好ましい。この構成によって、第2保持台24の基板保持面を平坦にすることができる。この結果、第2基板14が反ることなく、第2基板14を第2保持台24に保持することができる。なお、第2多孔体96の材質はセラミックスに限定されず、第2多孔体96が金属または樹脂から形成されていても良い。
また、第2多孔体96は、第2保持台24の第2基板14の保持面の全体に渡って設けなくても良い。すなわち、第2多孔体96は、第2保持台24の第2基板14との接触面の少なくとも一部に設けられていれば良い。例えば、第2基板14のうち、反りの程度が大きくなる外周部が接触することとなる第2保持台24の保持面の箇所のみに、第2多孔体96を設けても良い。
また、第2保持台24の中央には、第2基板14の第2孔28に嵌合する第2突起部62が設けられている。このため、第2基板14を、第2保持台24の所定の位置に精度良く保持することができる。第2突起部62は、略円柱形状をしており、この円柱の側面には、円の径方向に弾性的に伸縮して第2基板14を第2孔28の内側から押圧保持する押圧部(不図示)が設けられている。また、第2突起部62の露出している円周部は、面取りが施されている。また、第2突起部62は、MCナイロン等の樹脂から構成されている。
基体18の第2保持台24の外側でOリング溝86の内側には、真空容器20内(真空室90)を排気し減圧する第1排気手段が接続されている。このため、大気圧より圧力が低い真空雰囲気下で第1基板12と第2基板14とを接合することができる。真空雰囲気下では気泡の発生源である空気がほとんど存在しないため、第1基板12と第2基板14とを接合する際に、第1基板12と第2基板14との間に気泡が発生するのを防ぐことができる。また、第1基板12と第2基板14との間の接着層に存在する気泡は、第1基板12と第2基板14とを接合する段階で、第1排気手段によって除去される。第1排気手段は、基体18の上面に開口している第1排気管110と、第1排気管110の途中に設けられている第1開閉バルブ112と、第1排気管112に接続されている第1排気ポンプ114と、を備えている。なお、第1排気管110、第1開閉バルブ112または第1排気ポンプ114は、2つ以上設けても良い。
また、第2保持台24には、真空容器20内に配置された第1基板12と第2基板14とが、互いに接近および離反可能な駆動手段が接続されている。この駆動手段は、第2保持台24の下方に配置された昇降ブロック116と、昇降ブロック116とロッド118を介して接続されているエアシリンダ120と、を備え、第2保持台24の昇降手段となっている。また、基体18の、第2保持台24の外周壁24aと接する箇所には、真空室90の気密性を保つシール部材122が設けられている。このため、第2保持台24が昇降しても、真空室90の気密性が維持される。
駆動手段によって第1基板12と第2基板14とが接近する際、第1突起部60と第2突起部62とが、それぞれの中心を一致させた状態で接触するように構成されている。このため、第1基板12の第2基板14との接合時の位置合わせを高精度で行うことができる。
次に、図1および図3から図7を参照しながら、基板接合装置10を用いた本発明の実施の形態に係る基板接合方法について説明する。
図5は、本発明の実施の形態に係る基板接合方法の手順を示すフローチャートである。本実施の形態に係る基板接合方法は、最初に、第1基板12の片方の面12b(以下、この片方の面を「非接合面」といい、非接合面とは反対の面を「接合面」という)を第1保持台22に接触させて、第1基板12を第1保持台22に保持する(工程S501)。
この工程S501は、以下のようにして行う。まず、第1基板12の非接合面12bと第1多孔体30とが対向している状態で、第1基板12の第1孔26を第1突起部60に嵌め込む。次に、非接合面12bが第1多孔体30に接触するまで、第1基板12を押し込んでいく。このとき、第1突起部60の側面から径方向にわずかに突出している複数の押圧部(不図示)は、弾性的に第1突起部60の側面の内部に収縮される。そして、第1基板12と第1多孔体30とが接触したら、押圧部が第1基板12を第1孔26の内側から弾性的に押圧し、第1基板12を第1保持台22に保持することとなる。なお、この押圧保持に代えて、または、この押圧保持と併せて、後述する第1基板12の第1保持台22への吸着保持を行っても良い。
また、第1基板12内の記録層と反射層のうち、記録層側の面を非接合面12bとする。記録ディスクは、第1基板12の記録層側の面から光が照射されて、記録層に記録したり、記録されている情報が読み取られたりするからである。ただし、第1基板12内に記録層がない場合、すなわち、第1基板12がいわゆるダミー基板の場合には、第1基板12のどちらの面を非接合面12bとしても良い。
工程S501に次いで、一方の面14a(以下、この一方の面を「接合面」といい、接合面とは反対の面を「非接合面」という)に接着層130(図1参照)を有する第2基板14の非接合面14bを第2保持台24に接触させて、第2基板14を第2保持台24に保持する(工程S502)。
この工程S502は、以下のようにして行う。まず、第2基板14の非接合面14bと第2多孔体96とが対向している状態で、第2基板14の第2孔28を第2突起部62に嵌め込む。次に、非接合面14bが第2多孔体96に接触するまで、第2基板14を押し込んでいく。このとき、第2突起部62の側面から径方向にわずかに突出している複数の押圧部(不図示)は、弾性的に第2突起部62の側面の内部に収縮される。そして、第2基板14と第2多孔体96とが接触したら、押圧部が第2基板14を第2孔28の内側から弾性的に押圧し、第2基板14を第2保持部に保持することとなる。なお、この押圧保持に代えて、または、この押圧保持と併せて、後述する第2基板14の第2保持台24への吸着保持を行っても良い。
また、第2基板14内の記録層と反射層のうち、記録層側の面を非接合面14bとする。記録ディスクは、第2基板14の記録層側の面から光が照射されて、記録層に記録したり、記録されている情報が読み取られたりするからである。ただし、第2基板14内に記録層がない場合、すなわち、第2基板14がいわゆるダミー基板の場合には、第2基板14のどちらの面を非接合面14bとしても良い。工程S501と工程S502の順序は、本実施の形態と逆であっても良い。なお、工程S502に先立って、第2基板14の接合面14aに接着層130を形成している。
ここで、この第2基板14の接合面14aに接着層130を形成する工程について、図6を参照しながら、簡単に説明する。
図6は、第2基板14の接合面14aに接着層130を形成する工程を説明する外観図である。まず、図6に示すように、第2基板14の非接合面14bを下方に向けた状態で、第2基板14をスピンコート装置(不図示)の載置台131に載置する。次に、載置台131を回転させながら(矢示C)、接着剤132をスピンコート装置の滴下部133から第2基板14の接合面14aの内側に滴下する。これによって、接着剤132は、遠心力で外側に薄く拡がり(矢示D)、第2基板14の接合面14a全体に接着層130が形成される。
なお、接着剤をスピンコートして第2基板14の接合面14aに接着層130を形成する方法に代えて、第2基板14の接合面14aに、接着剤の微粒子を噴霧して均一に塗布しても良いし、第2基板14の形状とほぼ等しい両面テープ等の両面接着シートを第2基板14の接合面14aに配置して、接着層130を形成しても良い。
また、スピンコート装置は、基板接合装置10に隣接していることが好ましい。スピンコート装置と基板接合装置10とが隣接していることによって、第2基板14の接合面14aへの接着層130の形成工程から、第1、第2基板12,14の接合工程に手早く移行することができる。さらに、スピンコート装置と基板接合装置10とを兼用にしても良い。スピンコート装置と基板接合装置10とを兼用にする場合は、第2保持台24を回転可能の構成にするのが好ましい。
工程S502に次いで、第1基板12および第2基板14の周辺の環境を、大気圧より圧力が低い真空雰囲気下にする。この工程は、以下のようにして行う。まず、第1基板12および第2基板14を、それぞれ第1保持台22および第2保持台24に保持した状態で、蓋体16を基体18に対して閉じる(工程S503)。このとき、蓋体16の4つの長孔44,44,44,44が、基体18に設けられている4つの蓋固定体46,46,46,46に嵌まり込むように、回転機構を支点とした回転をさせながら蓋体16を閉じる。
工程S503に次いで、第1基板12を第1保持台22に吸着保持する(工程S504)。この工程S504は、第2排気ポンプ74を稼働させて、第1バッファ空間32および第1多孔体30の通気孔を介して、第1基板12の非接合面12bを第1多孔体30に吸着させることによって行う。なお、第1基板12が第1突起部60によって第1保持台22に保持されている場合には、本工程を省略することができる。また、この工程S504は、工程S502の前に、または、工程S503の前に行っても良いし、後述する工程S505の後に行っても良い。
工程S504に次いで、第2基板14を、第2保持台24に吸着保持する(工程S505)。この工程S505は、第3排気ポンプ104を稼働させて、第2バッファ空間98および第2多孔体96の通気孔を介して、第2基板14の非接合面14bを第2多孔体96に吸着させることによって行う。なお、第2基板14が第2突起部62によって第2保持台24に保持されている場合には、本工程を省略することができる。また、この工程S505は、工程S503の前に、または、工程S504の前に行っても良い。
工程S505に次いで、第1排気ポンプ114を稼働させて真空容器20内を排気する(工程S506)。このとき、真空容器20内に設けられている圧力センサ(不図示)によって真空室90の圧力を検出し、この検出結果に基づいて第1排気ポンプ114の排気速度を制御している。この結果、真空室90は、第1基板12と第2基板14とが貼り合わされるまで、所定の圧力範囲内、例えば、50Pa〜200Paに維持される。次に、真空室90が真空雰囲気下の状態で、駆動アクチュエータ94を稼働させて、軸棒48および固定部50を約90度回動させる(工程S507)。これによって、固定部50が、蓋体16を基体18に対して密着状態で固定する。なお、工程S506と工程S507との順序を本実施の形態とは逆に行えるように、基板接合装置10(蓋固定体46)を構成しても良い。
工程S507に次いで、第1基板12の接合面12aと第2基板14の接合面14aとを、接着層130を介して接触させる。なお、微視的には、第1基板12の接合面12aは凹凸があり、同様に、第2基板14の接合面14aも凹凸がある。また、微視的には、接着層130は、欠損部を有し、第2基板14の接合面14aの全部を覆ってはいないこともある。したがって、「第1基板12と第2基板14とが、接着層130を介して接触する」には、第1基板12の接合面12aと第2基板14の接合面14aとが、直接接触している部分を有する場合も含まれる。
この第1基板12の接合面12aと第2基板14の接合面14aとを、接着層130を介して接触させる工程は、以下のようにして行う。まず、コンプレッサ等の給気装置134によって、空気の供給量または供給圧力等を制御しながらエアシリンダ120に加圧空気を供給し、ロッド118、昇降ブロック116および第2基板14を保持している第2保持台を上昇させる(工程S508)。次に、第2基板14が、接着層130を介して、第1基板12に、所定の押圧力以上で接触しているかどうか検知する(工程S509)。第2基板14が、接着層130を介して、第1基板12に、所定の押圧力以上で接触していることが検出されたら、第2保持台24の上昇を停止させる。
ここで、図7を参照しながら、第1基板12と第2基板14とが接触する状態について詳細に説明する。
図7は、第2基板14が上昇して第1基板12と接触するまでの基板接合装置10の真空容器20内の状態を示す断面図で、(a)は第1突起部60と第2突起部62とが接触する前の状態、(b)は第1突起部60と第2突起部62とが接触していて、第1基板12と第2基板14とが接触していない状態、(c)は第1基板12と第2基板14とが接触している状態を示している。
図7(b)に示すように、第2保持台24が上昇していくと、第1基板12と第2基板14とが接触する前に、第1突起部60と第2突起部62とが、それぞれの中心を一致させた状態で接触する。第1突起部60と第2突起部62とが接触し始めると、第2突起部62が第1突起部60を押圧する。第2突起部62に押圧された第1突起部60は、ガススプリングによって第1保持台22の方向に引き込まれていく。この状態で第2保持台24を上昇させ続けて、図7(c)に示すように、第1基板12の接合面12aと第2基板14の接合面14aとを接着層130を介して接触させる。第1基板12と第2基板14とが所定の押圧力以上で接触したら、第2保持台24の上昇を停止させる。
第1基板12と第2基板14とが所定の押圧力以上で接触していることの検知は、第2突起部62に圧力センサを設け、第1突起部60のガススプリングからの反発力を測定することによって行っても良いし、蓋体16の内壁面に位置センサを設け、第2基板14が所定の高さまで上昇したのを検出し、この第2基板14の位置をもって、第1基板12と第2基板14とが所定の押圧力以上で接触しているとみなすことによって行っても良いし、また、第2保持台24の上昇時間で、第1基板12と第2基板14とが所定の押圧力以上で接触しているとみなすことによって行っても良い。
なお、工程S509の完了時点では、気泡が生じない状態で第1基板12と第2基板14とが当接しているが、まだ第1基板12と第2基板14とは、完全には接合されていない。また、第1基板12と第2基板14とが接触している状態では、第1突起部60が第1保持台22に収納されるため、もはや第1基板12は第1突起部60によって押圧保持されていない。また、本実施の形態では、第2保持台24を上昇させて第1基板12と第2基板14とを接触させたが、この方法に限定されない。すなわち、第1保持台22または第2保持台24の少なくとも一方を駆動して、第1基板12の接合面12aと第2基板14の接合面14aとを接触させれば良い。
工程S509に次いで、第1基板12と第2基板14とが接触している状態で、第1保持台22から第1基板12の非接触面12bに向けて大気圧よりも高い圧力の気体を噴出させて、第1基板12と第2基板14とを強く貼り合わせる(工程S510)。
この工程S510は、以下のようにして行う。まず、第2排気ポンプ74の稼働を停止する。次に、加圧装置68を稼働させて、大気圧よりも高い圧力の気体を、第1バッファ空間32を介して第1多孔体30の孔部に供給する。供給された気体は、第1多孔体30の孔部を通過して第1基板12の非接合面12bに到達する。こうして、第1基板12の非接触面12bに向けて気体が噴出され、第1基板12と第2基板14とが強固に貼り合わされる。
なお、接着層130が硬化性の接着剤から構成されている場合、第1基板12の非接触面12bに向けて大気圧以上の圧力の気体を噴出している間に、接着剤を硬化させても良い。すなわち、接着剤が紫外線硬化性のときには、第1基板12の非接触面12bに向けて高圧の気体を噴出している間に、真空容器20の外部に配置されたUVランプ等の紫外線源から紫外線を発生させ、蓋体16または基体18に設けられた石英窓等の透明部材である紫外線透過部を介して、接着剤に紫外線を照射して硬化させても良い。また、接着剤が熱硬化性のときには、第1基板12の非接触面12bに向けて気体を噴出している間に、真空容器20の外部に配置された赤外線ランプ等の赤外線源から赤外線を発生させ、蓋体16または基体18に設けられた石英窓等の透明部材である赤外線透過部を介して、接着剤に赤外線を照射して加熱硬化させても良い。
さらに、接着剤が熱硬化性のときには、第1多孔体30および第2多孔体96をセラミックスで形成し、第1多孔体30または第2多孔体96の少なくとも一方にヒータを挿入し、ヒータを加熱して、第1多孔体30および第1基板12経由で、あるいは、第2多孔体96および第2基板14経由で、接着剤を加熱硬化させても良い。このように、第1多孔体30および第2多孔体96をセラミックスで形成し、第1多孔体30または第2多孔体96の少なくとも一方にヒータを挿入した構成によって、熱硬化性の接着剤を短時間に、かつ、均一に硬化させることができる。
工程S510に次いで、第2保持台24を降下させて、接合されたディスクが第2保持台24に載置されている状態にする(工程S511)。第2保持台24の降下は、工程S508と同様に、エアシリンダ120内の圧縮空気を調整することによって行う。工程S509が行われた後は、第1基板12が第1保持台22によって保持されていないので、本工程では、ディスクは第2保持台24の降下と連動して、第2保持台24に載置される。なお、第2保持台24の降下の直前に、加圧装置68の稼働を停止するが、この加圧装置68の稼働の停止時期は、本工程中でも、本工程後でも構わない。
工程S511に次いで、真空室90を大気圧に戻す。この工程は、以下のようにして行う。まず、第1排気ポンプ114の稼働を停止する(工程S512)。次に、蓋固定体46,46,46,46を回動させて、蓋体16の押さえ付けを解除する(工程S513)。次に、真空室90に大気を導入する(工程S514)。大気の導入は、第1排気管110の途中に設けられている第1開閉バルブ112を操作して、真空室90と外気とを連通させることによって行う。なお、工程S513と工程S514との順序を本実施の形態とは逆に行えるように、基板接合装置10(蓋固定体46)を構成しても良い。
なお、第1排気管110の第1開閉バルブ112を操作して真空室90に大気を導入する方法に代えて、または、併せて、蓋体16または基体18にリークバルブを設けて、このリークバルブを操作(開放)することによって、真空室90と外気とを連通させても良い。さらに、真空室90に導入される大気は、真空室90の前で吸湿剤を通過させても良い。吸湿剤を通過させることによって、大気中の水分(水蒸気)を除去または大幅減少させることができ、ディスクへの悪影響を防ぐことができる。
工程S514に次いで、ディスクを真空容器20内から取り出す(工程S515)。この工程S515は、以下のようにして行う。まず、蓋体16を基体18に対して開ける。次に、作業者の手または取り出し装置等を用いて、ディスクを第2保持台24から取り外し、真空容器20外に取り出す。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形実施可能である。例えば、本発明に係る基板接合装置10は、CD(Compact Disc)の製造にも適用できる。また、CDまたはDVDなどの基板に、各種フィルムを貼付する際にも、利用することができる。
また、本発明に係る基板接合装置10は、自動車のフロントガラスまたは遮熱もしくは遮光ガラス等として使用される複層ガラスの製造にも使用することができる。この場合、2枚のガラス基板の間にガラスの中間層となる樹脂フィルムを配置し、これらのガラス基板同士を接合して複層ガラスを製造する。
また、本発明の実施の形態に係る基板接合装置10では、蓋体16が基体18に対して回動することによって開閉するように構成されているが、これに代えて、蓋体16が基体18に対して昇降することによって開閉するように構成されていても良い。
また、本発明の実施の形態に係る基板接合装置10では、加圧装置68によって大気圧よりも高い圧力の気体を供給するようにしているが、これに代えて、第1基板12と第2基板14との接合時の真空室90の圧力よりも十分高い圧力の気体を供給するようにしても良い。第1基板12と第2基板14との接合時の真空室90が十分低圧ならば、例えば、大気圧と同じ圧力の気体を供給しても良い。
また、本発明の実施の形態に係る基板接合装置10では、第1基板12および第2基板14が水平方向に保持された状態で接合されたが、これに代えて、第1基板12および第2基板14が、水平方向以外に、例えば、鉛直方向に保持された状態で接合されるように基板接合装置10を構成しても良い。
図8は、基板接合装置10と、第1排気ポンプ114、第2排気ポンプ74および第3排気ポンプ104を備える真空ポンプ装置140と、スピンコート装置142の配置の一例を模式的に示す平面図である。それぞれ、スピンコート装置142は各種操作スイッチ145を、基板接合装置10は各種操作スイッチ150を備えている。このように、基板接合装置10とスピンコート装置142とを隣接して配置し、さらに、真空ポンプ装置140を、基板接合装置10またはスピンコート装置142の付近に配置することによって、記録ディスクの製造スペースをコンパクト化することが可能となる。