JP2001209973A - 光情報媒体およびその製造方法 - Google Patents

光情報媒体およびその製造方法

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JP2001209973A
JP2001209973A JP2000215655A JP2000215655A JP2001209973A JP 2001209973 A JP2001209973 A JP 2001209973A JP 2000215655 A JP2000215655 A JP 2000215655A JP 2000215655 A JP2000215655 A JP 2000215655A JP 2001209973 A JP2001209973 A JP 2001209973A
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Hideki Hirata
秀樹 平田
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TDK Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 支持基体表面に情報記録面を有し、この情報
記録面上に樹脂からなる光透過層を有する光情報媒体に
おいて、光透過層の厚さを均一にする。また、光情報媒
体の反り発生を抑え、また、光透過層の光学的不均質
さ、特に複屈折の増大を抑制する。 【解決手段】 支持基体20上に情報記録面4を有し、
この情報記録面4上に光透過層2を有し、この光透過層
2を通して記録光および/または再生光が入射するよう
に使用され、前記光透過層2が、光透過性シート201
と、この光透過性シート201を支持基体側に接着する
ための接着層202とから構成され、接着層202の平
均厚さが0.5μm以上5μm未満である光情報媒体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、再生専用光ディス
ク、光記録ディスク等の光情報媒体と、光情報媒体を製
造する方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、再生専用光ディスクや光記録ディ
スク等の光情報媒体では、動画情報等の膨大な情報を記
録ないし保存するため、記録密度向上による媒体の高容
量化が求められ、これに応えるために、高記録密度化の
ための研究開発が盛んに行われてきた。
【0003】その中のひとつとして、例えばDVD(Di
gital Versatile Disk)にみられるように、記録・再生
波長を短くし、かつ、記録・再生光学系の対物レンズの
開口数(NA)を大きくして、記録・再生時のレーザー
ビームスポット径を小さくすることが提案されている。
DVDをCDと比較すると、記録・再生波長を780nm
から650nmに、NAを0.45から0.6にすること
により、6〜8倍の記録容量(4.7GB/面)を達成し
ている。
【0004】しかし、このように高NA化すると、チル
トマージンが小さくなってしまう。チルトマージンは、
光学系に対する光情報媒体の傾きの許容度であり、NA
によって決定される。記録・再生波長をλ、記録・再生
光が入射する透明基体の厚さをtとすると、チルトマー
ジンは λ/(t・NA3) に比例する。また、光情報媒体がレーザービームに対し
て傾くと、すなわちチルトが発生すると、波面収差(コ
マ収差)が発生する。基体の屈折率をn、傾き角をθと
すると、波面収差係数は (1/2)・t・{n2・sinθ・cosθ}・NA3/(n
2−sin2θ)-5/2 で表される。これら各式から、チルトマージンを大きく
し、かつコマ収差の発生を抑えるためには、基体の厚さ
tを小さくすればよいことがわかる。実際、DVDで
は、基体の厚さをCD基体の厚さ(1.2mm程度)の約
半分(0.6mm程度)とすることにより、チルトマージ
ンを確保している。一方、基体の厚みムラマージンは、 λ/NA4 で表される。基体に厚みムラが存在すると、さらに波面
収差(球面収差)が発生する。基体の厚みムラを△tと
すると、球面収差係数は、 {(n2−1)/8n3}・NA4・△t で表される。これら各式から、NAを大きくした場合の
球面収差を抑えるためには、厚みムラを小さく抑える必
要があることがわかる。例えば、CDでは△tが±10
0μmに対して、DVDでは±30μmに抑えられてい
る。
【0005】ところで、より高品位の動画像を長時間記
録するために、基体をさらに薄くできる構造が提案され
ている。この構造は、通常の厚さの基体を剛性維持のた
めの支持基体として用い、その表面にピットや記録層を
形成し、その上に薄型の基体として厚さ0.1mm程度の
光透過層を設け、この光透過層を通して記録・再生光を
入射させるものである。この構造では、従来に比べ基体
を著しく薄くできるため、高NA化による高記録密度達
成が可能である。
【0006】ただし、この構造に用いる光透過層を樹脂
の射出成形によって形成することは、非常に困難であ
る。そのため、このような光透過層の形成方法として、
例えば特開平9−161333号公報では、紫外線硬化
樹脂をスピンコートすることにより光透過層を形成する
提案がなされている。また、特開平10−269624
号公報では、光硬化性樹脂中にスペーサー粒子を分散さ
せ、これを基体上に塗布した後、板材で押しつけること
により、厚さの均一な光透過層を形成する提案がなされ
ている。
【0007】しかし、上記各公報に記載された方法によ
り光透過層を形成すると、光透過層を構成する樹脂の硬
化に伴う収縮により、媒体に反りが生じてしまう。ま
た、光硬化性樹脂を0.1mm程度の厚さの膜とした場
合、膜厚方向において均一な硬化が難しい。そのため、
光透過層が光学的に均質とならず、また、未硬化のモノ
マーによる媒体の信頼性低下が生じやすくなる。
【0008】このほか、特開平10−283683号公
報では、光透過性シートを紫外線硬化型樹脂で接着する
提案がなされている。同公報に記載された方法では、ま
ず、基板表面またはこれと光透過性シート表面とに紫外
線硬化型樹脂を供給し、次いで、基板上に光透過性シー
トを載置し、次いで、基板および光透過性シートを回転
させることにより、紫外線硬化型樹脂を両者の間に行き
渡らせる。同公報には、この方法を利用することによっ
て、シートの変形や接着剤の読み出し面へのはみ出しが
発生せず、均一な厚さの光透過層が短時間で容易に形成
され、さらに、非常に薄い接着剤層が形成されることと
なるため、基板の初期の反りや経時変化による光記録媒
体の変形が抑えられる旨が記載されている。
【0009】上記特開平10−283683号公報で
は、紫外線硬化型樹脂を接着層として利用するため、上
記した他の方法よりは紫外線硬化型樹脂層が薄くなるの
で、反りは軽減される。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記特開平1
0−283683号公報に記載された方法では、薄い光
透過性シートを載置した状態で数千回転程度の回転を与
えるため、光透過性シートがばたつく。そのため、接着
剤層中に気泡が混入して光学的均質さが損なわれやす
い。また、そのため、接着剤層の厚さ分布、特にディス
ク周方向における厚さ分布が大きくなりやすい。また、
そのため、溶剤希釈タイプの樹脂では溶剤が蒸発しにく
いという問題もある。
【0011】また、上記特開平10−283683号公
報には、紫外線硬化型樹脂の具体的例示はない。また、
同公報には、紫外線硬化型樹脂の好ましい粘度として1
〜1500cpsの範囲が挙げられており、接着剤層の好
ましい厚さとして0.01〜10μmの範囲が挙げられ
ているが、特定の粘度の紫外線硬化型樹脂を使って特定
の厚さの接着剤層を形成した実施例は記載されていな
い。
【0012】本発明の目的は、支持基体表面に情報記録
面を有し、この情報記録面上に樹脂からなる光透過層を
有する光情報媒体において、光透過層の厚さを均一にす
ることである。また、本発明の他の目的は、このような
光情報媒体の反り発生を抑えることであり、また、光透
過層の光学的不均質さ、特に複屈折の増大を抑制するこ
とである。
【0013】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(9)の本発明により達成される。 (1) 支持基体上に情報記録面を有し、この情報記録
面上に光透過層を有し、この光透過層を通して記録光お
よび/または再生光が入射するように使用され、前記光
透過層が、樹脂を含有する光透過性シートと、この光透
過性シートを支持基体側に接着するための接着層とを含
み、前記接着層が紫外線硬化型樹脂の硬化物を含有し、
前記接着層の平均厚さが0.5μm以上5μm未満である
光情報媒体。 (2) 前記光透過性シートが、ポリカーボネート、ポ
リアリレートおよび環状ポリオレフィンの1種を含有す
る上記(1)の光情報媒体。 (3) 前記光透過性シートが流延法により製造された
ものである上記(1)または(2)の光情報媒体。 (4) 支持基体上に情報記録面を有し、この情報記録
面上に光透過層を有し、この光透過層を通して記録光お
よび/または再生光が入射するように使用され、前記光
透過層が、樹脂を含有する光透過性シートと、この光透
過性シートを支持基体側に接着するための接着層とを含
み、前記接着層が紫外線硬化型樹脂の硬化物を含有する
光情報媒体を製造する方法であって、前記紫外線硬化型
樹脂またはその溶液の塗膜を、前記支持基体側の表面全
面に形成する塗膜形成工程と、前記塗膜上に前記光透過
性シートを載置する載置工程と、前記紫外線硬化型樹脂
を紫外線により硬化して前記接着層とする硬化工程と
を、この順で有する光情報媒体の製造方法。 (5) 前記紫外線硬化型樹脂またはその溶液の粘度が
10cps未満である上記(4)の光情報媒体の製造方
法。 (6) 前記紫外線硬化型樹脂の溶液の固形分濃度が1
0〜50重量%である上記(4)または(5)の光情報
媒体の製造方法。 (7) 前記載置工程と前記硬化工程との間に、光透過
性シートの表面に圧力を加える加圧工程を有する上記
(4)の光情報媒体の製造方法。 (8) 前記加圧工程において、気体による加圧を利用
する上記(7)の光情報媒体の製造方法。 (9) 前記光透過性シートを載置する工程を、減圧雰
囲気中で行う上記(4)〜(8)のいずれかの光情報媒
体の製造方法。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明の光情報媒体の構成例を、
図1に示す。この光情報媒体は記録媒体であり、支持基
体20上に、情報記録面として記録層4を有し、この記
録層4上に光透過層2を有する。記録光および/または
再生光は、光透過層2を通して入射する。本発明は、記
録層の種類によらず適用できる。すなわち、例えば、相
変化型記録媒体であっても、ピット形成タイプの記録媒
体であっても、光磁気記録媒体であっても適用できる。
なお、通常は、記録層の少なくとも一方の側に、記録層
の保護や光学的効果を目的として誘電体層や反射層が設
けられるが、図1では図示を省略してある。また、本発
明は、図示するような記録可能タイプに限らず、再生専
用タイプにも適用可能である。その場合、支持基体20
と一体的に形成されるピット列が、情報記録面を構成す
ることになる。
【0015】図示する光情報媒体では、光透過層2を、
光透過性シート201と、これを支持基体20側に接着
するための接着層202とから構成している。接着層2
02は、記録・再生光に対して透明であり、紫外線硬化
型樹脂の硬化物を含有する。
【0016】紫外線硬化型樹脂としては、例えばラジカ
ル重合系樹脂、カチオン重合系樹脂等のいずれであって
もよい。
【0017】ラジカル重合に用いるオリゴマーとして
は、例えばエステルアクリレート、ウレタンアクリレー
ト、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート、ア
クリル樹脂アクリレート等の各種アクリレートが挙げら
れる。
【0018】カチオン重合系樹脂には、例えばエポキシ
樹脂、ビニルエーテル系化合物、環状エーテル系化合物
などがあり、これらのいずれを用いてもよいが、特に、
エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂には、ビスフェ
ノール型、ノボラック型、脂環型、脂肪族型などがあ
り、これらのいずれを用いてもよいが、特に、脂環型が
好ましい。なお、脂環型を用いる場合、その1種だけを
用いてもよいが、複数種を混合して用いることが好まし
い。
【0019】硬化前の樹脂層は、オリゴマーやモノマー
に加え、光重合開始剤を含有する。用いる光重合開始剤
は特に限定されない。例えばカチオン重合系樹脂では、
芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族
スルホニウム塩、メタロセン化合物などから適宜選択す
ればよいが、これらのうちでは特に芳香族スルホニウム
塩が好ましい。樹脂に対する光重合開始剤の添加量は、
0.1〜10重量%であることが好ましい。
【0020】また、ラジカル重合系樹脂およびカチオン
重合系樹脂のほか、例えば、光付加重合型のポリチオー
ル・ポリエン系樹脂を用いることもできる。
【0021】接着層の平均厚さは、好ましくは0.5μ
m以上5μm未満であり、より好ましくは1〜3μmであ
る。接着層が薄すぎると、紫外線の吸収量が少なくなる
ため、活性種が生じにくくなる。また、空気中で硬化を
行う場合、接着層が薄すぎると接着層の単位体積あたり
の接触空気量が多くなるので、酸素阻害を受けやすい樹
脂(例えばラジカル重合系樹脂)や湿度阻害を受けやす
い樹脂(例えばカチオン重合系樹脂)では活性種が失活
しやすい。したがって、接着層が硬化しにくくなり、接
着力が不十分となる。また、接着層が薄すぎると一様な
層を形成することが困難となる。一方、接着層が厚すぎ
ると、接着層の厚さ分布が大きくなってしまう。
【0022】なお、接着層の平均厚さとは、光ディスク
中心からの距離がディスク半径の1/2である位置での
厚さを意味する。
【0023】次に、接着層の形成方法を説明する。
【0024】接着層を形成するに際しては、まず、紫外
線硬化型樹脂またはその溶液を含有する塗膜を、支持基
体側の表面(図1では記録層4の表面)全面に形成す
る。本発明では、接着層の厚さ分布および塗布むらを小
さくするために、紫外線硬化型樹脂を溶剤で希釈して樹
脂溶液とし、この樹脂溶液を用いて塗膜を形成すること
が好ましい。樹脂の希釈に用いる溶剤は特に限定され
ず、例えばアルコール系、エステル系、セロソルブ系、
炭化水素系等の各種溶剤から、支持基体および光透過性
シートを侵さないものを適宜選択すればよい。
【0025】樹脂溶液の粘度は、好ましくは10cps未
満、より好ましくは4〜6cpsである。粘度が高すぎる
と、接着層の厚さ分布を小さくすることが困難となる。
一方、粘度が低すぎると一様な接着層を形成することが
困難となる。塗布する樹脂は、溶剤で希釈しなくてもこ
の範囲の粘度とすることが可能であり、その場合でも接
着層の厚さ分布を小さくすることはできる。ただし、そ
の場合、接着性や信頼性を確保することが難しくなるの
で、好ましくは溶剤で希釈する。なお、上記粘度は、塗
布時の温度における粘度である。塗布は樹脂溶液を加温
した状態で行ってもよいが、通常、室温付近、例えば1
0〜30℃程度で加温せずに行うのが一般的である。樹
脂溶液の固形分濃度は、好ましくは10〜50重量%、
より好ましくは20〜40重量%である。固形分濃度が
低すぎると一様な接着層を形成することが困難となり、
固形分濃度が高すぎると接着層の厚さ分布を小さくする
ことが困難となる。
【0026】塗膜の形成方法は特に限定されず、例えば
スピンコート法、スプレーコート法、ロールコート法、
スクリーンコート法、ダイコート法、カーテンコート
法、ディップコート法などのいずれを用いてもよい。た
だし、スピンコート法では、光ディスクの外周側ほど接
着層が厚くなり、また、ロールコートおよびダイコート
では、リーディング側とトレーリング側とで接着層の厚
さに違いがでるので、本発明ではこれらの方法を用いた
場合に効果、特に、接着層の厚さ分布低減効果が高くな
る。これらの塗布法のなかでは、一様な接着層を形成し
やすいこと、非接触コートのため媒体にダメージを与え
ないこと、接着層の表面粗さを小さくできることなどか
ら、スピンコート法を用いることが好ましい。
【0027】塗膜形成後、塗膜上に光透過性シートを載
置する。光透過性シートの載置は、減圧雰囲気中で行う
ことが好ましい。減圧雰囲気としては、1気圧未満、好
ましくは0.3気圧以下、より好ましくは0.1気圧以
下である。減圧雰囲気中で光透過性シートを載置するこ
とにより、接着層中への気泡の混入を防ぐことができる
ので、気泡に起因するトラッキングサーボ不良を防ぐこ
とができる。
【0028】光透過性シートを載置した後、紫外線照射
により塗膜を硬化する。紫外線照射は、一般の高圧水銀
ランプを用いて行えばよい。硬化は、減圧状態のままで
行ってもよく、空気中に戻してから行ってもよい。減圧
状態で硬化を行えば、硬化時の酸素阻害や湿度阻害を軽
減できる。
【0029】本発明では、光透過性シートを載置後、塗
膜を硬化する前に、光透過性シートの表面に圧力を加え
る加圧工程を設けることが好ましい。光透過性シート表
面に圧力を加えて前記塗膜を加圧することにより、接着
層の厚さ分布をより小さくすることができる。
【0030】加圧手段は特に限定されず、油圧シリン
ダ、空気圧シリンダ、ロールプレス等の通常の機械的加
圧手段を利用することができる。ただし、本発明におい
て加圧対象となる光透過性シートは、通常の光情報媒体
に用いる剛性基板と異なり極めて薄く機械的に弱いこ
と、また、接着層の厚さ分布を小さくするために均一な
加圧が必要であること、などから、本発明では気体によ
り直接加圧することが好ましい。気体により加圧すれ
ば、光透過性シートにプレス機等の加圧面が接触するこ
とがない。ところで、気体による加圧では圧力が等方的
に加わる。スピンコートにより形成した直後において外
周部ほど厚い塗膜が、等方的な加圧により平坦化すると
は考えにくいが、本発明者の実験によれば、気体による
加圧が厚さ分布減少に著しく有効であることがわかっ
た。これは予期しない効果であった。しかも、等方的に
圧力を加えれば、加圧むらによる厚さ分布の増大が避け
られるという利点もある。加圧に用いる気体は特に限定
されず、通常は空気を用いればよい。
【0031】加圧工程において加える圧力の範囲は、接
着層の厚さ分布が小さくなるように適宜設定すればよい
が、加圧手段によらず好ましくは1.05〜2.5気
圧、より好ましくは1.1〜1.8気圧である。圧力が
低すぎると、接着層の平坦化が十分に進まない。一方、
圧力が高すぎると、支持基体と光透過性シートとの間か
ら樹脂またはその溶液がはみ出して、媒体を汚染してし
まうことがある。加圧時間は特に限定されないが、通
常、0.2秒以上とすることが好ましく、また、3秒を
超えて加圧する必要はない。
【0032】なお、加圧工程において加える上記圧力と
は、光透過性シート載置時の雰囲気圧力を基準として、
それに上乗せして印加される圧力である。すなわち、加
圧工程において例えば1.5気圧を印加すると仮定する
と、真空中で載置した場合には、その状態で1.5気圧
まで気体または機械的加圧手段により加圧するか、いっ
たん空気中に戻した後に、さらに気体または機械的加圧
手段により0.5気圧分加圧することになる。また、空
気中で載置した場合には、その状態から1.5気圧分加
圧することになる。
【0033】加圧工程を設ける場合、接着層の厚さが5
μm以上であっても、また、樹脂溶液の粘度が10cps以
上であっても、また、溶剤希釈型ではない樹脂を用いた
場合であっても、接着層の厚さ分布を十分に小さくする
ことができる。ただし、加圧工程を設ける場合でも、接
着層が厚すぎると媒体に反りが発生しやすくなり、ま
た、光透過性シートの複屈折が大きくなってしまうの
で、接着層の厚さは好ましくは30μm以下、より好ま
しくは20μm以下とする。また、加圧工程を設ける場
合には、塗布する樹脂または樹脂溶液の粘度は特に限定
されず、通常の塗布型接着剤であれば特に制限なく用い
ることができるが、通常、塗布時の粘度は5000cps
以下であることが好ましい。
【0034】次に、光透過性シートについて説明する。
【0035】光透過性シートの構成材料は、ポリカーボ
ネート、ポリアリレートおよび環状ポリオレフィンの1
種であることが好ましい。
【0036】本発明で用いるポリカーボネートは特に限
定されず、例えば、一般的なビスフェノール型の芳香族
ポリカーボネートを用いることができる。後述する流延
法により製造されたポリカーボネートシートとしては、
例えばピュアエース(帝人社製)が市販されている。
【0037】ポリアリレートは、2価のフェノールと芳
香族ジカルボン酸とのポリエステルである。本発明で用
いるポリアリレートは、非晶ポリアリレートであり、特
に、ビスフェノールAとテレフタル酸の縮重合物を用い
ることが好ましい。ポリアリレートは、ポリカーボネー
トと同様に芳香環を有するため複屈折を生じやすいが、
ポリカーボネートに比べ耐熱性が高い。後述する流延法
により製造されたポリアリレートシートとしては、例え
ばエルメック(鐘淵化学工業社製)が市販されている。
【0038】本発明で用いる環状ポリオレフィンは、光
透過性に優れることが好ましい。光透過性に優れた環状
ポリオレフィンとしては、ノルボルネン系化合物を出発
物質とする非晶質環状ポリオレフィンが挙げられる。こ
のものは、耐熱性にも優れる。本発明では、市販の環状
ポリオレフィンを使用することができる。市販の環状ポ
リオレフィンとしては、例えばアートン(JSR社
製)、ゼオネクス(日本ゼオン社製)、アペル(三井化
学社製)などが挙げられる。これらのうちアートンおよ
びゼオネクスはフィルムとして市販されている。アート
ンおよびゼオネクスは、ノルボルネン系モノマーを開環
重合し、水素添加したものである。アートンは、ノルボ
ルネン系モノマーの側鎖にエステル基をもたせているた
め、溶剤に容易に溶解できる。したがって、シート化す
る際に、後述する流延法を利用できる点で好ましい。ま
た、有機材料に対する接着性が良好であるため、接着層
に対する接着強度を高くできる点でも好ましい。また、
帯電性が低いため、塵埃が付着しにくい点でも好まし
い。
【0039】光透過性シートの製造方法は特に限定され
ないが、本発明で用いる光透過性シートは薄いため、通
常の射出成形法により製造することは困難である。した
がって、流延(ソルベントキャスト)法や溶融押し出し
法など、樹脂をシート状に形成できる方法を利用するこ
とが好ましい。このうち特に好ましい方法は、流延法で
ある。流延法は、例えば特公平3−75944号公報に
記載されている。同公報には、透明性、複屈折性、可撓
性、表面精度、膜厚の均一さに優れたフレキシブルディ
スク基板が製造できる流延法が記載されており、本発明
では、光透過性シートの製造にこの流延法を利用するこ
とが好ましい。この流延法では、以下の工程により光透
過性シートを製造する。
【0040】(1)ポリカーボネートペレット等の樹脂
ペレットを塩化メチレン、アクリロニトリル、メチルア
クリレート等の溶媒に溶解し、(2)よく攪拌、脱泡、
濾過した後、表面精度の高い金型上にダイより連続的に
流し、(3)乾燥炉を通して溶媒を蒸発させ、連続的に
ロール状に巻き取る。
【0041】このような流延法で製造した光透過性シー
トは、一般的な溶融押し出し法で製造したものに比べ、
シートにかかるテンションが小さいので、複屈折が小さ
くなる。これに対し溶融押し出し法で製造したシートで
は、延伸方向に複屈折の分布が生じてしまう。また、上
記流延法では、溶媒の蒸発速度を適切に制御することに
より、表面状態に優れた、均一な厚さのシートが製造で
き、また、溶融押し出し法により製造されたシートでみ
られる、ダイラインによる傷が生じない。
【0042】なお、光透過性シートが流延法により製造
されたかどうかは、複屈折のパターンが等方的であるこ
とによって確認でき、また、シート中の残存溶剤をガス
クロマトグラフ分析などにより定性分析することによっ
ても確認できる。
【0043】光透過層の厚さは、30〜300μmの範
囲から選択することが好ましい。光透過層が薄すぎる
と、光透過層表面に付着した塵埃による光学的な影響が
大きくなる。一方、上記範囲を超える厚さの光透過層
は、射出成形などの他の方法によって形成できる。
【0044】支持基体20は、媒体の剛性を維持するた
めに設けられる。支持基体20の厚さは、通常、0.2
〜1.2mm、好ましくは0.4〜1.2mmとすればよ
く、透明であっても不透明であってもよい。光記録媒体
において通常設けられる案内溝は、図示するように、支
持基体20に設けた溝を光透過層形成時に転写すること
により、形成できる。図示する案内溝21は、光入射側
に向かって凹んでいる溝である。
【0045】
【実施例】実施例1 以下の手順で、表1に示す再生専用光ディスクサンプル
を作製した。
【0046】サンプルNo.1〜4 光透過層側から見たときに情報を担持するピットとなる
凹凸を形成したディスク状支持基体(ポリカーボネート
製、直径120mm、厚さ1.2mm)の表面に、Al合金
からなる反射膜をスパッタ法により形成した。
【0047】次いで、反射膜表面に、ラジカル重合系の
紫外線硬化型樹脂溶液(三菱レイヨン製の4X108
E、溶媒は酢酸ブチル)をスピンコートにより塗布し、
樹脂層を形成した。上記樹脂溶液の固形分濃度および2
5℃における粘度を表1に示す。ただし、サンプルNo.
3では、ラジカル重合系で無溶剤型の紫外線硬化型樹脂
(大日本インキ化学工業株式会社製のSD−211)を
用いた。なお、スピンコートは、25℃のクリーンルー
ム中で行った。
【0048】次いで、真空中(0.1気圧以下)におい
て、光透過性シートとしてポリカーボネートシート(厚
さ100μm、複屈折率15nm)を樹脂層上に載置し
た。このポリカーボネートシートは、ピュアエース(帝
人社製)であり、前記流延法により製造されたものであ
る。このポリカーボネートは、ガラス転移点が145
℃、分子量が約40,000である。
【0049】次いで、空気中に戻した後、紫外線を照射
して上記樹脂層を硬化し、接着層とした。支持基体中心
から30mm(支持基体半径の1/2)の位置での接着層
厚さ(平均厚さ)を、表1に示す。なお、本実施例にお
いて接着層の厚さは、硬化後に接着層と光透過性シート
との積層体を支持基体から剥がし取り、この積層体の厚
さをマイクロメータで測定し、その厚さから光透過性シ
ートの厚さを減じることにより求めた。ただし、例え
ば、光透過性シートを選択的に溶解可能な溶剤(例えば
塩化メチレン)に前記積層体を入れて光透過性シートだ
けを溶解させ、残った接着層の厚さを測定する方法も利
用できる。
【0050】サンプルNo.5 溶融押し出し法により製造したポリカーボネートシート
(厚さ100μm、複屈折率80nm)を光透過性シート
として用いたほかはサンプルNo.2と同様にして作製し
た。なお、ポリカーボネート材料自体は、流延法により
製造したシートと同じである。
【0051】サンプルNo.6 流延法により製造した環状ポリオレフィンシート(厚さ
100μm、複屈折率10nm)を光透過性シートとして
用いたほかはサンプルNo.2と同様にして作製した。な
お、この環状ポリオレフィンシートは、アートン(JS
R社製、ガラス転移点170℃)である。
【0052】サンプルNo.7 流延法により製造したポリアリレートシート(厚さ10
0μm、複屈折率15nm)を用いたほかはサンプルNo.2
と同様にして作製した。なお、このポリアリレートシー
トは、エルメック(鐘淵化学工業社製、ガラス転移点2
00℃)である。
【0053】サンプルNo.8 光透過性シートの載置を空気中で行ったほかはサンプル
No.2と同様にして作製した。
【0054】評価 上記各サンプルについて、光透過層の厚さ分布(最大値
と最小値との差)および反り量を測定した。結果を表1
に示す。厚さ分布は、キーエンス社製のレーザーフォー
カス変位計により測定した。厚さ分布は、サンプルの半
径25〜58mmの領域内において測定した。反り量は、
小野測器製の機械精度測定機を用い、支持基体側から光
を入射させて測定した。測定時の線速は4m/sとした。
【0055】また、光透過層全体の複屈折率を、アドモ
ンサイエンス社製回転検光子型複屈折測定器により測定
した。結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】表1から本発明の効果が明らかである。す
なわち、接着層の平均厚さを本発明で限定する範囲内に
設定することにより、光透過層厚さの均一性が著しく改
善されることがわかる。また、反り量および複屈折も改
善されている。また、No.2とNo.5との比較から、流延
法により製造したポリカーボネートシートを特定の厚さ
の接着層と組み合わせることにより、ポリカーボネート
シートの複屈折増大をほぼ完全に抑制できることがわか
る。また、No.6およびNo.7から、流延法により製造し
た環状ポリオレフィンおよびポリアリレートを用いた場
合でも、同様に複屈折増大をほぼ完全に抑制できること
がわかる。なお、サンプルNo.1では、樹脂層の硬化が
不良だったため、光透過性シートを貼付することができ
なかった。
【0058】また、光透過性シートを空気中で載置した
サンプルNo.8では、接着層中に気泡の混入が認めら
れ、光ディスクドライブで再生したときに気泡に起因す
ると考えられるトラッキングサーボ不良が認められた。
これに対し、光透過性シートを真空中で載置したサンプ
ルでは、気泡の混入はみられず、また、トラッキングサ
ーボ不良も生じなかった。
【0059】実施例2 サンプルNo.9 光透過層側から見たときに情報を担持するピットとなる
凹凸を形成したディスク状支持基体(ポリカーボネート
製、直径120mm、厚さ1.2mm)の表面に、Al合金
からなる反射膜をスパッタ法により形成した。
【0060】次いで、反射膜表面に、アクリル系紫外線
硬化型接着剤(日本化薬製DVD−003、25℃にお
ける粘度500cps)をスピンコートにより塗布し、樹
脂層を形成した。なお、スピンコートは、25℃のクリ
ーンルーム中で行った。
【0061】次いで、真空中(0.1気圧以下)におい
て、実施例1のサンプルNo.2で用いたポリカーボネー
トシートを樹脂層上に載置した。次いで、空気中に戻し
た後、オートクレーブに入れて、加熱せずに加圧だけを
行った。加圧力(オートクレーブ内の圧力)は1.2気
圧、加圧時間は1秒間とした。加圧後、紫外線を照射し
て上記樹脂層を硬化し、接着層とした。
【0062】サンプルNo.10 前記特開平10−283683号公報に記載された方法
に従い、まず、サンプルNo.9で用いたディスク状支持
基体を60rpmで回転させながら、その内周部付近に接
着剤を円弧状にディスペンスした後、光透過性シートを
載置し、同時に、回転数を60rpmから5秒間で400
0rpmまで上昇させ、2秒間保持した。次いで紫外線を
照射し、接着剤を硬化した。これらの操作はすべて空気
中で行った。なお、接着剤および光透過性シートは、サ
ンプルNo.9と同じものを用いた。
【0063】評価 上記各サンプルについて、光透過層の平均厚さおよび厚
さ分布を実施例1と同様にして測定した。ただし、厚さ
分布は、サンプルの半径25〜58mmの領域内におい
て、径方向および周方向のそれぞれについて測定した。
また、接着層中の気泡数を調べた。結果を表2に示す。
【0064】
【表2】
【0065】表2から、支持基体側の表面全面に紫外線
硬化型接着剤の塗膜を形成した後、減圧雰囲気中におい
て光透過性シートを載置する方法の効果が明らかであ
る。また、光透過性シートの載置後に加圧すれば、接着
層の平均厚さが15μmと厚くても、厚さ分布を小さく
できることがわかる。なお、サンプルNo.9と10とで
は、支持基体側表面に供給した接着剤量は同じとした
が、サンプルNo.10では表2に示すように接着層が厚
くなってしまった。
【0066】
【発明の効果】本発明では、樹脂からなる光透過性シー
トを、特定の厚さの接着層で支持基体に接着して光透過
層を形成することにより、光透過層の厚さを均一にでき
る。また、これにより、光透過性シートの複屈折増大を
抑制することができ、また、光情報媒体の反り発生を抑
えることができる。
【0067】また、支持基体側の表面全面に樹脂層を形
成した後、光透過性シートを前記樹脂層上に載置し、次
いで、樹脂層を紫外線硬化させて接着層とすることによ
り、光透過層の厚さ分布、特に周方向における厚さ分布
を小さくできる。また、光透過性シートを載置の減圧雰
囲気中において行えば、接着層中への気泡混入を防ぐこ
とができる。また、光透過性シート載置後に加圧すれ
ば、光透過層が厚い場合でもその厚さ分布を小さくする
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光情報媒体の構成例を示す部分断面図
である。
【符号の説明】
2 光透過層 201 光透過性シート 202 接着層 20 支持基体 21 案内溝 4 記録層

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 支持基体上に情報記録面を有し、この情
    報記録面上に光透過層を有し、この光透過層を通して記
    録光および/または再生光が入射するように使用され、 前記光透過層が、樹脂を含有する光透過性シートと、こ
    の光透過性シートを支持基体側に接着するための接着層
    とを含み、前記接着層が紫外線硬化型樹脂の硬化物を含
    有し、前記接着層の平均厚さが0.5μm以上5μm未満
    である光情報媒体。
  2. 【請求項2】 前記光透過性シートが、ポリカーボネー
    ト、ポリアリレートおよび環状ポリオレフィンの1種を
    含有する請求項1の光情報媒体。
  3. 【請求項3】 前記光透過性シートが流延法により製造
    されたものである請求項1または2の光情報媒体。
  4. 【請求項4】 支持基体上に情報記録面を有し、この情
    報記録面上に光透過層を有し、この光透過層を通して記
    録光および/または再生光が入射するように使用され、
    前記光透過層が、樹脂を含有する光透過性シートと、こ
    の光透過性シートを支持基体側に接着するための接着層
    とを含み、前記接着層が紫外線硬化型樹脂の硬化物を含
    有する光情報媒体を製造する方法であって、 前記紫外線硬化型樹脂またはその溶液の塗膜を、前記支
    持基体側の表面全面に形成する塗膜形成工程と、前記塗
    膜上に前記光透過性シートを載置する載置工程と、前記
    紫外線硬化型樹脂を紫外線により硬化して前記接着層と
    する硬化工程とを、この順で有する光情報媒体の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 前記紫外線硬化型樹脂またはその溶液の
    粘度が10cps未満である請求項4の光情報媒体の製造
    方法。
  6. 【請求項6】 前記紫外線硬化型樹脂の溶液の固形分濃
    度が10〜50重量%である請求項4または5の光情報
    媒体の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記載置工程と前記硬化工程との間に、
    光透過性シートの表面に圧力を加える加圧工程を有する
    請求項4の光情報媒体の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記加圧工程において、気体による加圧
    を利用する請求項7の光情報媒体の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記光透過性シートを載置する工程を、
    減圧雰囲気中で行う請求項4〜8のいずれかの光情報媒
    体の製造方法。
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