JP2010081819A - ベーカリー生地の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ベーカリー生地がべたつかず、しとり感があり、食感がソフトであるベーカリー製品を製造することが可能なベーカリー生地の製造方法を提供すること。
【解決手段】油相中に、パーム軟部油をエステル交換した油脂を油相基準で51質量%以上含有し、且つ、該油相のSFCが、10℃で25〜60、20℃で15〜35、30℃で10〜25であって、該油相を80〜100質量%含有する油脂組成物を、融解した状態で穀粉類含有生地に添加、混合することを特徴とするベーカリー生地の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、油相中にパーム軟部油をエステル交換した油脂を含有する油脂組成物を融解した状態で、穀粉類含有生地に添加、混合することを特徴とするベーカリー生地の製造方法に関する。
パン生地をはじめとしたベーカリー生地を大量に製造する際には、大量生産に適した連続生産設備が用いられている。その際に使用される練り込み用油脂としては、計量、添加作業の利便性から、常温で流動状態の油脂又は融解した油脂が使用される。
上記の常温で流動状態の油脂としては、例えば、加温融解した油脂を冷却し特定の固体脂指数を示すまで結晶を析出させ、特定の粒径以下の乳化剤を添加混合して得られる製パン用流動状油脂組成物(特許文献1)や、油相中にパーム軟部油をエステル交換して得られた油脂と極度硬化油を含有し、特定のSFCを有する油相を80〜100質量%含有する流動状油脂組成物(特許文献2)が挙げられる。
特許文献1に記載の製パン用流動状油脂組成物は、合成乳化剤の使用が必須であり、近年の健康志向の高まりにより、合成乳化剤を始めとした食品添加物の使用を控えようとする動きに反するものであり、また合成乳化剤使用のため、ベーカリー製品の風味が悪くなるという欠点があった。
特許文献2に記載の流動状油脂組成物は、冬場のような低い気温で使用する場合には、流動状態を示さないため、作業性が悪くなるという欠点があった。また、特許文献2に記載の流動状油脂組成物はクリーム状食品に用いることが記載されているが、仮にこの流動状油脂組成物を融解し、穀粉類含有生地に添加、混合すると、穀粉類含有生地と流動状油脂組成物とが混ざりにくいため、ベーカリー生地とするのに時間がかかりすぎてしまったり、ベーカリー生地を焼成したベーカリー製品において、口どけが悪い、しとりがない、食感が硬い、内層が荒い、ボリュームが出ないという欠点があった。
一方、上記の融解した状態の油脂を用いる先行技術としては、特許文献3を挙げることができる。特許文献3には、小麦粉、融解した油脂、酵母及び水を混捏することを特徴とするパン生地の製造法が開示されている。
特許文献3には、上記製造法で用いることができる油脂としては、常温で固体で、融点が30〜45℃のもの、例えば、パーム油、牛脂、乳脂、豚脂、これらの硬化油、菜種油、大豆油、米油、コーン油、綿実油、ヒマワリ油、サフラワー油、ヤシ油、パーム核油、魚油等の硬化油等が挙げられると記載されている。しかし、これらの油脂を融解したものを使用したパン生地はべたつきやすく、作業性が悪いという欠点があった。
特開昭59−17937号公報 特開2006−115724号公報 特開平8−196197号公報
従って、本発明の目的は、ベーカリー生地がべたつかず、しとり感があり、食感がソフトであるベーカリー製品を製造することが可能なベーカリー生地の製造方法を提供することにある。
本発明者等は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、パーム軟部油をエステル交換した油脂を油相に含有する油脂組成物を使用することにより、上記目的を解決し得ることを知見した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、油相中に、パーム軟部油をエステル交換した油脂を油相基準で51質量%以上含有し、且つ、該油相のSFCが、10℃で25〜60、20℃で15〜35、30℃で10〜25であって、該油相を80〜100質量%含有する油脂組成物を、融解した状態で穀粉類含有生地に添加、混合することを特徴とするベーカリー生地の製造方法を提供するものである。
本発明のベーカリー生地の製造方法によれば、ベーカリー生地がべたつかず、しとり感があり、食感がソフトであるベーカリー製品を製造することが可能である。
以下、本発明のベーカリー生地の製造方法について詳述する。
まず、本発明のベーカリー生地の製造方法で用いる油脂組成物について説明する。
本発明で用いる上記の油脂組成物は、油相中に、パーム軟部油をエステル交換した油脂を含有する。上記の油脂組成物に用いるパーム軟部油は、アセトン分別やヘキサン分別等の溶剤分別、ドライ分別等の無溶剤分別等の方法によって、パーム油を分別した際に得られる低融点部であり、通常、ヨウ素価52〜70のものである。この分別は、常法により行うことができる。
上記のパーム軟部油としては、具体的には、パームオレインや、パームオレインをさらに分別して得られた低融点部であるパームスーパーオレインを挙げることができる。本発明では、これらのパーム軟部油の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
本発明では上記のパーム軟部油をエステル交換した油脂を用いるが、このエステル交換は常法により行なうことができ、その方法は、化学的触媒による方法でも、酵素による方法でもよく、また、ランダムエステル交換反応であっても、位置選択性のエステル交換反応であってもよいが、化学的触媒又は位置選択性のない酵素を用いた、ランダムエステル交換反応であることが好ましい。
上記化学的触媒としては、例えば、ナトリウムメチラート等のアルカリ金属系触媒が挙げられ、また、上記位置選択性のない酵素としては、例えば、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、リゾープス(Rhizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ムコール(Mucor)属、ペニシリウム(Penicillium)属等に由来するリパーゼが挙げられる。尚、該リパーゼは、イオン交換樹脂あるいはケイ藻土及びセラミック等の担体に固定化して、固定化リパーゼとして用いることもできるし、粉末の形態で用いることもできる。
また、本発明で用いる上記のパーム軟部油をエステル交換した油脂は、ジグリセリドを好ましくは6〜10質量%、さらに好ましくは7〜10質量%、最も好ましくは8〜10質量%含有することが好ましい。本発明において、上記のパーム軟部油をエステル交換した油脂中のジグリセリドの含有量は多いほど好ましい。
本発明では、上記のパーム軟部油をエステル交換した油脂の1種又は2種以上を用いることができる。
本発明で用いる上記のパーム軟部油をエステル交換した油脂としては、無溶剤分別(ドライ分別)やヘキサンによる分別で得られたパーム軟部油のエステル交換油脂を使用した場合に比べ、アセトンによる分別で得られたパーム軟部油のエステル交換油脂を使用した場合の方が、本発明の効果が高い。
本発明で用いる油脂組成物において、上記のパーム軟部油をエステル交換した油脂の含有量は、油相基準で51質量%以上、好ましくは60〜100質量%、さらに好ましくは70〜100質量%、最も好ましくは80〜100質量%である。
本発明で用いる油脂組成物の油相中、パーム軟部油をエステル交換した油脂の含有量が油相基準で51質量%よりも少ないと、本発明の目的とするソフトな食感が充分にベーカリー製品に付与できない。
本発明の効果は、上記のパーム軟部油をエステル交換して得られた油脂に代えて、未分別パーム油、未分別パーム油のエステル交換油脂、あるいはパーム硬部油のエステル交換油を使用した場合は得られない。その理由は、これらの油脂中のジグリセリドの含有量が本発明で用いるパーム軟部油をエステル交換した油脂よりも少なく、また後述するSFCとなるようにこれらの油脂を配合した油脂組成物において、ジグリセリドの含有量が少ないためである。
本発明で用いる油脂組成物は、油相のSFCが10℃で25〜60、20℃で15〜35、30℃で10〜25である。本発明で用いる油脂組成物の油相が上記のSFCの範囲内であると、融解した状態の油脂組成物を、穀粉類含有生地に添加、混合する際に、融解した状態の油脂組成物がすばやく固化し、穀粉類含有生地に練り込まれていく。しかし、本発明で用いる油脂組成物の油相において、10℃、20℃、30℃のSFCのどれか1つでも上記範囲の下限より小さいと、融解した状態の油脂組成物を、穀粉類含有生地に添加、混合する際に、融解した状態の油脂組成物が固化するのに時間がかかるため、穀粉類含有生地に練り込まれていく時間がかかりすぎ、その間にも発酵が進むため、伸展性に劣る等の取り扱いが難しい生地になる。また得られたベーカリー生地が、膜厚で伸展性が悪いものになりやすい。
本発明で用いる油脂組成物の油相において、10℃、20℃、30℃のSFCのどれか1つでも上記範囲の上限より大きいと、融解した状態の油脂組成物を、穀粉類含有生地に添加、混合する際に、融解した状態の油脂組成物が固化するが、固化した油脂組成物が硬すぎるため、穀粉類含有生地の組織を傷めることになる。
本発明で用いる油脂組成物の油相のSFCは10℃で好ましくは30〜50、さらに好ましくは40〜45である。
本発明で用いる油脂組成物の油相のSFCは20℃で好ましくは20〜30、さらに好ましくは20〜25である。
本発明で用いる油脂組成物の油相のSFCは30℃で好ましくは10〜20、さらに好ましくは10〜15である。
尚、上記SFCは、次のようにして測定する。即ち、先ず、油相を60℃に30分保持して完全に融解した後、0℃に30分保持して固化させる。次いで、25℃に30分保持し、テンパリングを行い、その後、0℃に30分保持する。これをSFCの各測定温度に順次30分保持後、SFCを測定する。
本発明で用いる油脂組成物には、上記のパーム軟部油をエステル交換した油脂以外に、油脂組成物の油相が上記のSFCとなる範囲内であれば、その他の油脂を配合することも可能である。
上記のその他の油脂としては、食用に適する油脂であればよく、その代表例としては、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ひまわり油等の常温で液体の油脂が挙げられるが、その他に、パーム油、パーム核油、ヤシ油、サル脂、マンゴ脂、乳脂、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の常温で固体の油脂も用いることができ、更に、これらの食用油脂に水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を使用することもできる。本発明で用いる油脂組成物において、これらの油脂は単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明で用いる油脂組成物における上記その他の油脂の配合量は、油相中に、油相基準で好ましくは0〜49質量%、さらに好ましくは0〜40質量%、一層好ましくは0〜30質量%、最も好ましくは0〜20質量%である。
本発明で用いる油脂組成物は、油脂組成物を基準として、ジグリセリドを好ましくは6〜10質量%、さらに好ましくは7〜10質量%、最も好ましくは8〜10質量%含有することが望ましい。
また、本発明で用いる油脂組成物は、トランス脂肪酸を実質的に含有しないことが好ましい。尚、ここでいう「トランス脂肪酸を実質的に含有しない」とは、トランス脂肪酸の含有量が、本発明の油脂組成物に含まれる油脂の全構成脂肪酸中、好ましくは10質量%未満、さらに好ましくは5質量%以下、最も好ましくは2質量%以下であることを意味する。
本発明で用いる油脂組成物における油相含量は、80〜100質量%、好ましくは90〜100質量%、より好ましくは99質量%〜100質量%である。
また、本発明で用いる油脂組成物における水相含量は、好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜10質量%、最も好ましくは0〜1質量%である。本発明では水相が少ないほど好ましい。
本発明で用いる油脂組成物の油相含量が80質量%未満、すなわち水相成分が20質量%以上であると、水分の影響からベーカリー生地が過度に軟化し、べたつく等、作業性が悪化しやすい。
また、本発明で用いる油脂組成物は、合成乳化剤を含有しないことが好ましい。
上記の合成乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリン酒石酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等を挙げることができる。
また、本発で用いる油脂組成物には、合成乳化剤ではない乳化剤を使用してもよい。合成乳化剤でない乳化剤としては、大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄、サポニン、植物ステロール類、乳脂肪球皮膜等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることが可能である。必要でなければ、これらの合成乳化剤でない乳化剤は用いなくてもよい。
本発明で用いる油脂組成物は、上記以外のその他の成分を含有することができる。その他の成分としては、例えば、ローカストビーンガム、カラギーナン、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉、化工澱粉等の増粘安定剤、食塩、塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、糖類や糖アルコール類、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、β−カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白といった植物蛋白、卵及び各種卵加工品、着香料、乳製品、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、ココアマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
本発明で用いる油脂組成物は、好ましくは以下の製造方法で製造する。
先ず、上記パーム軟部油をエステル交換した油脂を51質量%以上含有し、SFCが10℃で25〜60、20℃で15〜35、30℃で10〜25とした油相を溶解し、必要により水相を混合乳化し、油脂組成物を得る。そして、次に殺菌処理するのが望ましい。殺菌方法は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。
本発明においては、上記油脂組成物を用い、ベーカリー生地を製造する。
本発明において、ベーカリー生地は、穀粉類と水相成分を混合し、グルテンを出した穀粉類含有生地に、融解した状態の上記油脂組成物を添加、混合することにより製造する。
上記の穀粉類としては、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、全粒粉等の小麦粉類、ライ麦粉、米粉等のその他の穀粉類、アーモンド粉、へーゼルナッツ粉等の堅果粉等の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
本発明では、穀粉類含有生地に用いる穀粉類100質量部に対し、上記油脂組成物を融解した状態で、好ましくは5〜30質量部、さらに好ましくは5〜25質量部、最も好ましくは5〜20質量部を添加、混合し、ベーカリー生地を製造する。
本発明において、穀粉類含有生地に用いる穀粉類100質量部に対し、上記の融解した状態の油脂組成物が5質量部よりも少ないと、ベーカリー生地中での油脂量が少ないため、伸展性に乏しい、作業性の劣った生地となりやすく、30質量部よりも多いと、ベーカリー生地の軟化が進み、製造設備に付着しやすくなる等、やはり作業性の劣った生地となりやすい。
また上記の穀粉類含有生地は、イーストを含有することが好ましい。イーストは生イースト、ドライイーストのいずれでも構わない。イーストの使用量は、特に制限されるものではないが、穀粉類含有生地に用いる穀粉類100質量部に対し、生イーストの場合は、好ましくは1.5〜7質量部、ドライイーストの場合は、好ましくは0.5〜4質量部である。
上記の油脂組成物の融解温度は、好ましくは40〜65℃、さらに好ましくは45〜60℃、最も好ましくは50〜55℃である。本発明において、油脂組成物の融解温度が40℃未満では、油脂の結晶が析出しやすいため、油脂組成物の融解状態を維持することができず、作業性が悪くなりやすい。一方、油脂組成物の温度が65℃を超えると、穀粉類生地に含まれるイーストが高温にさらされやすく、発酵不良を招く場合がある。
上記の穀粉類含有生地には、必要により以下のような食品素材を用いることができる。
該食品素材としては、天然水、水道水等の水、上白糖、グラニュー糖、粉糖、ブドウ糖、果糖、蔗糖、黒糖、糖蜜、麦芽糖、乳糖、酵素糖化水飴、還元澱粉糖化物、異性化液糖、蔗糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、還元乳糖、ソルビトール、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、スクラロース、ステビア、アスパルテーム、ソーマチン、サッカリン、ネオテーム、アセスルファムカリウム、はちみつ、黒糖、糖蜜等の糖類及び甘味料、全卵、卵黄、卵白、乾燥卵、乾燥卵黄、乾燥卵白等の卵類、原料アルコール、焼酎、ウオッカやブランデー等の蒸留酒、ワイン、日本酒、ビール等の醸造酒、各種リキュール、純生クリーム、ホイップ用クリーム(コンパウンドクリーム)、植物性ホイップ用クリーム、チョコレート・ガナッシュ・カスタード風味のホイップ用クリーム等のクリーム類及びこれらのクリーム類をホイップしたもの、ケーキ用起泡剤、牛乳、全粉乳、脱脂粉乳、調製粉乳、発酵乳、ヨーグルト、乳清ミネラル、練乳、加糖練乳、全脂練乳、脱脂練乳、濃縮乳等の乳や乳製品、ココナッツミルク、豆乳、寒天、カラギーナン、ファーセルラン、タマリンド種子多糖類、タラガム、カラヤガム、ペクチン、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、トラガントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、プルラン、ジェランガム、アラビアガム、ゼラチン、加工澱粉等の増粘安定剤、コーンスターチ、小麦澱粉等の澱粉類、食塩、塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、β−カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白といった植物蛋白、着香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、コーヒー、ナッツペースト、ココアマス、ココアパウダー、チョコレート、チョコレートペースト、抹茶、紅茶、香辛料、ハーブ、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材、コンソメ、ブイヨン、食品添加物等が挙げられる。
上記油脂組成物を添加、混合する前の上記穀粉類含有生地の油分は、穀粉類含有生地で用いる穀粉類100質量部に対し、好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下、最も好ましくは1質量部以下である。
本発明のベーカリー生地は、中種法でも、直捏法でも製造することができる。
中種法で製造する場合は、中種を製造し、本捏生地で用いる材料と中種生地を混合した穀粉類含有生地に、通常練り込み用油脂を投入するタイミングで、融解した本発明で用いる油脂組成物を添加し、混合することにより、ベーカリー生地を得る。
直捏法で製造する場合は、直捏生地で用いる材料を混合した穀粉類含有生地に、通常練り込み用油脂を投入するタイミングで、融解した本発明で用いる油脂組成物を添加し、混合することにより、ベーカリー生地を得る。
本発明のベーカリー生地の捏上げ温度は、好ましくは20℃〜30℃、より好ましくは25℃〜28℃である。捏ね上げ温度が20℃未満では、以降の発酵工程に悪影響を及ぼしやすい。捏ね上げ温度が30℃を超えると、ベーカリー生地中での油脂組成物の固化が遅延し、より長時間ミキシングする必要が生じ、ベーカリー生地を加熱したベーカリー製品の食感に悪影響を及ぼしやすい。
本発明のベーカリー生地は、特に種類に制限はなく、例えば、食パン、菓子パン、バラエティーブレッド、バターロール、ソフトロール、ハードロール、スイートロール、デニッシュ、ペストリー、フランスパン、蒸しパン、イーストドーナツ等のパン類の生地が挙げられる。
本発明の製造方法により得られたベーカリー生地を加熱することにより、ベーカリー製品を得ることができる。ここでいう加熱とは、直焼き、フライ、蒸し焼きを含むものである。
次に、実施例、比較例等を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
〔製造例1〕パームオレインのエステル交換油の製造
ヨウ素価51のパーム油を、パーム油:アセトン=1:2の質量比率で50℃にてアセトンに混合溶解し、混合物とした。この混合物を1℃/分の冷却速度で25℃まで冷却した後、結晶部(ステアリン画分)を濾別して液状部を得た。該液状部から常法によりアセトンを除去し、続いて常法に従い脱色、脱臭し、ヨウ素価55のパームオレインを得た。このパームオレインを原料油脂とし、ナトリウムメチラートを触媒として、ランダムエステル交換反応を行なった後、漂白(白土3%、85℃、9.3×102Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×102Pa以下の減圧下)を行い、ジグリセリドの含有量が8.8質量%であるパームオレインのエステル交換油を得た。
〔製造例2〕パームスーパーオレインのエステル交換油の製造
ヨウ素価51のパーム油を、パーム油:アセトン=1:2の質量比率で50℃にてアセトンに混合溶解し、混合物とした。この混合物を1℃/分の冷却速度で25℃まで冷却した後、結晶部(ステアリン画分)を濾別して液状部を得た。該液状部を更に濾別し、常法によりアセトンを除去し、続いて常法に従い脱色、脱臭し、ヨウ素価63のパームスーパーオレインを得た。このパームスーパーオレインを原料油脂とし、ナトリウムメチラートを触媒として、ランダムエステル交換反応を行なった後、漂白(白土3%、85℃、9.3×102Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×102Pa以下の減圧下)を行い、ジグリセリドの含有量が9.1質量%であるパームスーパーオレインのエステル交換油を得た。
〔製造例3〕油脂組成物1の製造
製造例1で得たパームオレインのエステル交換油100質量部からなる油相を殺菌処理し、油脂組成物1を得た。
得られた油脂組成物1の油相のSFCは10℃で43、20℃で22.9、30℃で11.3、ジグリセリドの含有量は8.8質量%、トランス脂肪酸の含有量は2質量%未満で、実質的にトランス脂肪酸を含有していなかった。
〔製造例4〕油脂組成物2の製造
製造例2で得たパームスーパーオレインのエステル交換油51質量部、パーム油46質量部、大豆極度硬化油3質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、殺菌し、油脂組成物2を得た。
得られた油脂組成物2の油相のSFCは10℃で41、20℃で20、30℃で10.7、ジグリセリドの含有量は8質量%、トランス脂肪酸の含有量は2質量%未満であり、実質的にトランス脂肪酸を含有していなかった。
〔製造例5〕油脂組成物3の製造
製造例1で得たパームオレインのエステル交換油80質量部、製造例2で得たパームスーパーオレインのエステル交換油20質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、殺菌し、油脂組成物3を得た。
得られた油脂組成物3の油相のSFCは10℃で40.2、20℃で21.1、30℃で10.1、ジグリセリドの含有量は8.8質量%、トランス脂肪酸含量は2質量%未満であり、実質的にトランス脂肪酸を含有していなかった。
〔参考例1〕油脂組成物4の製造
製造例1で得たパームオレインのエステル交換油51質量部、パーム硬化油(融点45℃)49質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、殺菌し、油脂組成物4を得た。
得られた油脂組成物4の油相のSFCは10℃で58.1、20℃で41.8、30℃で29、ジグリセリドの含有量は6.9質量%、トランス脂肪酸の含有量は8.7質量%であった。
〔参考例2〕油脂組成物5の製造
製造例2で得たパームスーパーオレインのエステル交換油80質量部、大豆液状油20質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、殺菌し、油脂組成物5を得た。
得られた油脂組成物5の油相のSFCは10℃で23.4、20℃で11.0、30℃で4.3、ジグリセリドの含有量は8.2質量%、トランス脂肪酸の含有量は2質量%未満であり、実質的にトランス脂肪酸を含有していなかった。
〔参考例3〕油脂組成物6の製造
製造例1で得たパームオレインのエステル交換油40質量部、パーム油60質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、殺菌し、油脂組成物6を得た。
得られた油脂組成物6の油相のSFCは10℃で47.4、20℃で21.4、30℃で11、ジグリセリドの含有量は7.9質量%、トランス脂肪酸の含有量は2質量%未満であり、実質的にトランス脂肪酸を含有していなかった。
〔参考例4〕油脂組成物7の製造
パーム油80質量部、パーム硬化油(融点45℃)20質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、殺菌し、油脂組成物7を得た。
得られた油脂組成物7の油相のSFCは10℃で57.4、20℃で32.7、30℃で21.8、ジグリセリドの含有量は6.8質量%、トランス脂肪酸含量は4.2質量%であった。
〔参考例5〕油脂組成物8の製造
殺菌後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプとした以外は、製造例3と同様にして、油脂組成物8を得た。
〔参考例6〕油脂組成物9の製造
殺菌後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプとした以外は、製造例4と同様にして、油脂組成物9を得た。
〔参考例7〕油脂組成物10の製造
殺菌後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプとした以外は、製造例5と同様にして、油脂組成物10を得た。
〔実施例1〜3、比較例1〜7〕食パンの製造
得られた油脂組成物1〜10を用いて、下記に示す配合及び製法により食パン生地を製造し、該食パン生地を用いてプルマン型食パンを製造した。得られた食パン生地の分割時の生地状態、得られた食パンのしとり感、ソフト性について、下記に示す評価基準に従って評価し、結果を表1に示した。
<プルマン型食パンの配合・製法>
強力粉(イーグル:日本製粉製)70質量部、生イースト2質量部、イーストフード0.1質量部及び水40質量部をミキサーボウルに投入し、フックを使用し、低速で2分、中速で2分混合し、中種生地を得た。捏ね上げ温度は24℃であった。この中種生地を生地ボックスに入れ、温度28℃、相対湿度85%の恒温室で、4時間中種醗酵を行なった。終点温度は29℃であった。この中種醗酵の終了した生地を再びミキサーボウルに投入し、さらに、強力粉(イーグル:日本製粉製)30質量部、上白糖8質量部、脱脂粉乳2質量部、食塩1.8質量部、水25質量部を添加し、低速で4分、中速で4分ミキシングし、穀粉類含有生地を得た。ここで、油脂組成物を穀粉類含有生地中の穀粉類100質量部(強力粉70質量部と30質量部で合計100質量部)に対し10質量部添加し、フックを使用し、低速で4分、中速で6分ミキシング(混合)を行ない、食パン生地を得た。
尚、実施例1〜3と比較例1〜4では、それぞれ油脂組成物1〜7を50℃に融解した状態で添加し、比較例5〜7では、品温が20℃の油脂組成物を添加した。
得られた食パン生地の捏ね上げ温度は28℃であった。
ここで、フロアタイムを20分とった後、230gに分割・丸目を行なった。次いで、ベンチタイムを20分とった後、モルダー成形し、6本をU字にして3斤型プルマン型に入れ、38℃、相対湿度85%で50分ホイロをとった後、200℃に設定した固定窯に入れ40分焼成してプルマン型食パンを得た。
<評価基準>
(分割時の生地状態)
5点:ドライ
4点:ややドライ
3点:べたつきなし
2点:ややべたつく
1点:非常にべたつく
(しとり感)
焼成したプルマン型食パンを室温で1時間放冷後、ポリエチレン袋に密封し、室温(25℃)で保管した。保管1日後のプルマン型食パンをパネラー10人にて試食し、しとり感を評価した。
5点:8割以上が良好と評価
4点:6割以上8割未満が良好と評価
3点:4割以上6割未満が良好と評価
2点:2割以上4割未満が良好と評価
1点:2割未満が良好と評価
(ソフト性)
焼成したプルマン型食パンを室温で1時間放冷後、ポリエチレン袋に密封し、室温(25℃)で保管した。保管1日後のプルマン型食パンを30mmにスライスした後、FUDOHレオメーター(株式会社レオテック製)にて、厚さの50%まで加圧した時の荷重を測定し評価した。
測定条件:測定速度 6cm/min、接触面積 314mm2(アダプター:直径2cm円盤使用)、1サンプルを6回測定時の平均値
5点:350gf未満
4点:350gf以上400gf未満
3点:400gf以上450gf未満
2点:450gf以上500gf未満
1点:500gf以上
Figure 2010081819
表1より、パームオレインのエステル交換油のみからなる油脂組成物1を融解したものを使用して得られた実施例1のプルマン型食パンは、分割時の生地状態、しとり感、ソフト性の評価がすべて一番よいものであった。
パームスーパーオレインのエステル交換油とパーム油と大豆極度硬化油からなる油脂組成物2を融解したものを使用して得られた実施例2のプルマン型食パンは、実施例1には及ばないものの、分割時の生地状態、しとり感、ソフト性の評価がよいものであった。
パームオレインのエステル交換油とパームスーパーオレインのエステル交換油からなる油脂組成物3を融解したものを使用して得られた実施例3のプルマン型食パンは、分割時の生地常態とソフト性は実施例2と同じ評価であり、しとり感については実施例1と同様の評価であった。
20℃と30℃のSFCが本発明に係る範囲からはずれている油脂組成物4を融解したものを使用して得られた比較例1のプルマン型食パンは、分割時の生地状態としとり感が実施例1よりも劣り、ソフト性は実施例1よりかなり劣る評価であった。
10℃、20℃、30℃のSFCが本発明に係る範囲からはずれている油脂組成物5を融解したものを使用して得られた比較例2のプルマン型食パンは、分割時の生地状態が実施例1よりもかなり劣り、しとり感とソフト性は実施例1より劣る評価であった。
パームオレインのエステル交換油の含有量が本発明よりも少ない油脂組成物6を融解したものを使用して得られた比較例3のプルマン型食パンは、分割時の生地状態とソフト性が実施例1よりも劣り、しとり感は実施例1よりやや劣る評価であった。
パーム軟部油のエステル交換油を全く用いていない油脂組成物7を融解したものを使用して得られた比較例4のプルマン型食パンは、分割時の生地状態がとしとり感が実施例1よりも劣り、ソフト性は実施例1よりかなり劣る評価であった。
実施例1で用いた油脂組成物1をさらに急冷可塑化し、ショートニングタイプとした油脂組成物8を使用して得られた比較例5のプルマン型食パンは、分割時の生地状態が実施例1より僅かに劣り、しとり感とソフト性は実施例1よりやや劣る評価であった。
実施例2で用いた油脂組成物2をさらに急冷可塑化し、ショートニングタイプとした油脂組成物9を使用して得られた比較例6のプルマン型食パンは、分割時の生地状態、しとり感、ソフト性が実施例1よりやや劣る評価であった。
実施例3で用いた油脂組成物3をさらに急冷可塑化し、ショートニングタイプとした油脂組成物10を使用して得られた比較例7のプルマン型食パンは、分割時の生地状態が実施例1より僅かに劣り、しとり感とソフト性は実施例1よりやや劣る評価であった。

Claims (5)

  1. 油相中に、パーム軟部油をエステル交換した油脂を油相基準で51質量%以上含有し、且つ、該油相のSFCが、10℃で25〜60、20℃で15〜35、30℃で10〜25であって、該油相を80〜100質量%含有する油脂組成物を、融解した状態で穀粉類含有生地に添加、混合することを特徴とするベーカリー生地の製造方法。
  2. 上記油脂組成物が、ジグリセリドを油脂組成物基準で6〜10質量%含有する請求項1記載のベーカリー生地の製造方法。
  3. 上記油脂組成物が合成乳化剤を含有しない請求項1又は2記載のベーカリー生地の製造方法。
  4. 上記穀粉類含有生地に用いる穀粉類100質量部に対し、上記油脂組成物を5〜30質量部添加、混合する請求項1〜3の何れかに記載のベーカリー生地の製造方法。
  5. 請求項1記載のベーカリー生地の製造方法により得られたベーカリー生地。
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