JP2010081819A - ベーカリー生地の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】油相中に、パーム軟部油をエステル交換した油脂を油相基準で51質量%以上含有し、且つ、該油相のSFCが、10℃で25〜60、20℃で15〜35、30℃で10〜25であって、該油相を80〜100質量%含有する油脂組成物を、融解した状態で穀粉類含有生地に添加、混合することを特徴とするベーカリー生地の製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明で用いる上記の油脂組成物は、油相中に、パーム軟部油をエステル交換した油脂を含有する。上記の油脂組成物に用いるパーム軟部油は、アセトン分別やヘキサン分別等の溶剤分別、ドライ分別等の無溶剤分別等の方法によって、パーム油を分別した際に得られる低融点部であり、通常、ヨウ素価52〜70のものである。この分別は、常法により行うことができる。
本発明で用いる上記のパーム軟部油をエステル交換した油脂としては、無溶剤分別(ドライ分別)やヘキサンによる分別で得られたパーム軟部油のエステル交換油脂を使用した場合に比べ、アセトンによる分別で得られたパーム軟部油のエステル交換油脂を使用した場合の方が、本発明の効果が高い。
本発明で用いる油脂組成物の油相中、パーム軟部油をエステル交換した油脂の含有量が油相基準で51質量%よりも少ないと、本発明の目的とするソフトな食感が充分にベーカリー製品に付与できない。
本発明で用いる油脂組成物の油相のSFCは20℃で好ましくは20〜30、さらに好ましくは20〜25である。
本発明で用いる油脂組成物の油相のSFCは30℃で好ましくは10〜20、さらに好ましくは10〜15である。
また、本発明で用いる油脂組成物における水相含量は、好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜10質量%、最も好ましくは0〜1質量%である。本発明では水相が少ないほど好ましい。
本発明で用いる油脂組成物の油相含量が80質量%未満、すなわち水相成分が20質量%以上であると、水分の影響からベーカリー生地が過度に軟化し、べたつく等、作業性が悪化しやすい。
上記の合成乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリン酒石酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等を挙げることができる。
先ず、上記パーム軟部油をエステル交換した油脂を51質量%以上含有し、SFCが10℃で25〜60、20℃で15〜35、30℃で10〜25とした油相を溶解し、必要により水相を混合乳化し、油脂組成物を得る。そして、次に殺菌処理するのが望ましい。殺菌方法は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。
本発明において、ベーカリー生地は、穀粉類と水相成分を混合し、グルテンを出した穀粉類含有生地に、融解した状態の上記油脂組成物を添加、混合することにより製造する。
該食品素材としては、天然水、水道水等の水、上白糖、グラニュー糖、粉糖、ブドウ糖、果糖、蔗糖、黒糖、糖蜜、麦芽糖、乳糖、酵素糖化水飴、還元澱粉糖化物、異性化液糖、蔗糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、還元乳糖、ソルビトール、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、スクラロース、ステビア、アスパルテーム、ソーマチン、サッカリン、ネオテーム、アセスルファムカリウム、はちみつ、黒糖、糖蜜等の糖類及び甘味料、全卵、卵黄、卵白、乾燥卵、乾燥卵黄、乾燥卵白等の卵類、原料アルコール、焼酎、ウオッカやブランデー等の蒸留酒、ワイン、日本酒、ビール等の醸造酒、各種リキュール、純生クリーム、ホイップ用クリーム(コンパウンドクリーム)、植物性ホイップ用クリーム、チョコレート・ガナッシュ・カスタード風味のホイップ用クリーム等のクリーム類及びこれらのクリーム類をホイップしたもの、ケーキ用起泡剤、牛乳、全粉乳、脱脂粉乳、調製粉乳、発酵乳、ヨーグルト、乳清ミネラル、練乳、加糖練乳、全脂練乳、脱脂練乳、濃縮乳等の乳や乳製品、ココナッツミルク、豆乳、寒天、カラギーナン、ファーセルラン、タマリンド種子多糖類、タラガム、カラヤガム、ペクチン、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、トラガントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、プルラン、ジェランガム、アラビアガム、ゼラチン、加工澱粉等の増粘安定剤、コーンスターチ、小麦澱粉等の澱粉類、食塩、塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、β−カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白といった植物蛋白、着香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、コーヒー、ナッツペースト、ココアマス、ココアパウダー、チョコレート、チョコレートペースト、抹茶、紅茶、香辛料、ハーブ、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材、コンソメ、ブイヨン、食品添加物等が挙げられる。
中種法で製造する場合は、中種を製造し、本捏生地で用いる材料と中種生地を混合した穀粉類含有生地に、通常練り込み用油脂を投入するタイミングで、融解した本発明で用いる油脂組成物を添加し、混合することにより、ベーカリー生地を得る。
直捏法で製造する場合は、直捏生地で用いる材料を混合した穀粉類含有生地に、通常練り込み用油脂を投入するタイミングで、融解した本発明で用いる油脂組成物を添加し、混合することにより、ベーカリー生地を得る。
ヨウ素価51のパーム油を、パーム油:アセトン=1:2の質量比率で50℃にてアセトンに混合溶解し、混合物とした。この混合物を1℃/分の冷却速度で25℃まで冷却した後、結晶部(ステアリン画分)を濾別して液状部を得た。該液状部から常法によりアセトンを除去し、続いて常法に従い脱色、脱臭し、ヨウ素価55のパームオレインを得た。このパームオレインを原料油脂とし、ナトリウムメチラートを触媒として、ランダムエステル交換反応を行なった後、漂白(白土3%、85℃、9.3×102Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×102Pa以下の減圧下)を行い、ジグリセリドの含有量が8.8質量%であるパームオレインのエステル交換油を得た。
ヨウ素価51のパーム油を、パーム油:アセトン=1:2の質量比率で50℃にてアセトンに混合溶解し、混合物とした。この混合物を1℃/分の冷却速度で25℃まで冷却した後、結晶部(ステアリン画分)を濾別して液状部を得た。該液状部を更に濾別し、常法によりアセトンを除去し、続いて常法に従い脱色、脱臭し、ヨウ素価63のパームスーパーオレインを得た。このパームスーパーオレインを原料油脂とし、ナトリウムメチラートを触媒として、ランダムエステル交換反応を行なった後、漂白(白土3%、85℃、9.3×102Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×102Pa以下の減圧下)を行い、ジグリセリドの含有量が9.1質量%であるパームスーパーオレインのエステル交換油を得た。
製造例1で得たパームオレインのエステル交換油100質量部からなる油相を殺菌処理し、油脂組成物1を得た。
得られた油脂組成物1の油相のSFCは10℃で43、20℃で22.9、30℃で11.3、ジグリセリドの含有量は8.8質量%、トランス脂肪酸の含有量は2質量%未満で、実質的にトランス脂肪酸を含有していなかった。
製造例2で得たパームスーパーオレインのエステル交換油51質量部、パーム油46質量部、大豆極度硬化油3質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、殺菌し、油脂組成物2を得た。
得られた油脂組成物2の油相のSFCは10℃で41、20℃で20、30℃で10.7、ジグリセリドの含有量は8質量%、トランス脂肪酸の含有量は2質量%未満であり、実質的にトランス脂肪酸を含有していなかった。
製造例1で得たパームオレインのエステル交換油80質量部、製造例2で得たパームスーパーオレインのエステル交換油20質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、殺菌し、油脂組成物3を得た。
得られた油脂組成物3の油相のSFCは10℃で40.2、20℃で21.1、30℃で10.1、ジグリセリドの含有量は8.8質量%、トランス脂肪酸含量は2質量%未満であり、実質的にトランス脂肪酸を含有していなかった。
製造例1で得たパームオレインのエステル交換油51質量部、パーム硬化油(融点45℃)49質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、殺菌し、油脂組成物4を得た。
得られた油脂組成物4の油相のSFCは10℃で58.1、20℃で41.8、30℃で29、ジグリセリドの含有量は6.9質量%、トランス脂肪酸の含有量は8.7質量%であった。
製造例2で得たパームスーパーオレインのエステル交換油80質量部、大豆液状油20質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、殺菌し、油脂組成物5を得た。
得られた油脂組成物5の油相のSFCは10℃で23.4、20℃で11.0、30℃で4.3、ジグリセリドの含有量は8.2質量%、トランス脂肪酸の含有量は2質量%未満であり、実質的にトランス脂肪酸を含有していなかった。
製造例1で得たパームオレインのエステル交換油40質量部、パーム油60質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、殺菌し、油脂組成物6を得た。
得られた油脂組成物6の油相のSFCは10℃で47.4、20℃で21.4、30℃で11、ジグリセリドの含有量は7.9質量%、トランス脂肪酸の含有量は2質量%未満であり、実質的にトランス脂肪酸を含有していなかった。
パーム油80質量部、パーム硬化油(融点45℃)20質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、殺菌し、油脂組成物7を得た。
得られた油脂組成物7の油相のSFCは10℃で57.4、20℃で32.7、30℃で21.8、ジグリセリドの含有量は6.8質量%、トランス脂肪酸含量は4.2質量%であった。
殺菌後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプとした以外は、製造例3と同様にして、油脂組成物8を得た。
殺菌後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプとした以外は、製造例4と同様にして、油脂組成物9を得た。
殺菌後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプとした以外は、製造例5と同様にして、油脂組成物10を得た。
得られた油脂組成物1〜10を用いて、下記に示す配合及び製法により食パン生地を製造し、該食パン生地を用いてプルマン型食パンを製造した。得られた食パン生地の分割時の生地状態、得られた食パンのしとり感、ソフト性について、下記に示す評価基準に従って評価し、結果を表1に示した。
強力粉(イーグル:日本製粉製)70質量部、生イースト2質量部、イーストフード0.1質量部及び水40質量部をミキサーボウルに投入し、フックを使用し、低速で2分、中速で2分混合し、中種生地を得た。捏ね上げ温度は24℃であった。この中種生地を生地ボックスに入れ、温度28℃、相対湿度85%の恒温室で、4時間中種醗酵を行なった。終点温度は29℃であった。この中種醗酵の終了した生地を再びミキサーボウルに投入し、さらに、強力粉(イーグル:日本製粉製)30質量部、上白糖8質量部、脱脂粉乳2質量部、食塩1.8質量部、水25質量部を添加し、低速で4分、中速で4分ミキシングし、穀粉類含有生地を得た。ここで、油脂組成物を穀粉類含有生地中の穀粉類100質量部(強力粉70質量部と30質量部で合計100質量部)に対し10質量部添加し、フックを使用し、低速で4分、中速で6分ミキシング(混合)を行ない、食パン生地を得た。
尚、実施例1〜3と比較例1〜4では、それぞれ油脂組成物1〜7を50℃に融解した状態で添加し、比較例5〜7では、品温が20℃の油脂組成物を添加した。
得られた食パン生地の捏ね上げ温度は28℃であった。
ここで、フロアタイムを20分とった後、230gに分割・丸目を行なった。次いで、ベンチタイムを20分とった後、モルダー成形し、6本をU字にして3斤型プルマン型に入れ、38℃、相対湿度85%で50分ホイロをとった後、200℃に設定した固定窯に入れ40分焼成してプルマン型食パンを得た。
(分割時の生地状態)
5点:ドライ
4点:ややドライ
3点:べたつきなし
2点:ややべたつく
1点:非常にべたつく
焼成したプルマン型食パンを室温で1時間放冷後、ポリエチレン袋に密封し、室温(25℃)で保管した。保管1日後のプルマン型食パンをパネラー10人にて試食し、しとり感を評価した。
5点:8割以上が良好と評価
4点:6割以上8割未満が良好と評価
3点:4割以上6割未満が良好と評価
2点:2割以上4割未満が良好と評価
1点:2割未満が良好と評価
焼成したプルマン型食パンを室温で1時間放冷後、ポリエチレン袋に密封し、室温(25℃)で保管した。保管1日後のプルマン型食パンを30mmにスライスした後、FUDOHレオメーター(株式会社レオテック製)にて、厚さの50%まで加圧した時の荷重を測定し評価した。
測定条件:測定速度 6cm/min、接触面積 314mm2(アダプター:直径2cm円盤使用)、1サンプルを6回測定時の平均値
5点:350gf未満
4点:350gf以上400gf未満
3点:400gf以上450gf未満
2点:450gf以上500gf未満
1点:500gf以上
パームスーパーオレインのエステル交換油とパーム油と大豆極度硬化油からなる油脂組成物2を融解したものを使用して得られた実施例2のプルマン型食パンは、実施例1には及ばないものの、分割時の生地状態、しとり感、ソフト性の評価がよいものであった。
パームオレインのエステル交換油とパームスーパーオレインのエステル交換油からなる油脂組成物3を融解したものを使用して得られた実施例3のプルマン型食パンは、分割時の生地常態とソフト性は実施例2と同じ評価であり、しとり感については実施例1と同様の評価であった。
10℃、20℃、30℃のSFCが本発明に係る範囲からはずれている油脂組成物5を融解したものを使用して得られた比較例2のプルマン型食パンは、分割時の生地状態が実施例1よりもかなり劣り、しとり感とソフト性は実施例1より劣る評価であった。
パーム軟部油のエステル交換油を全く用いていない油脂組成物7を融解したものを使用して得られた比較例4のプルマン型食パンは、分割時の生地状態がとしとり感が実施例1よりも劣り、ソフト性は実施例1よりかなり劣る評価であった。
実施例2で用いた油脂組成物2をさらに急冷可塑化し、ショートニングタイプとした油脂組成物9を使用して得られた比較例6のプルマン型食パンは、分割時の生地状態、しとり感、ソフト性が実施例1よりやや劣る評価であった。
実施例3で用いた油脂組成物3をさらに急冷可塑化し、ショートニングタイプとした油脂組成物10を使用して得られた比較例7のプルマン型食パンは、分割時の生地状態が実施例1より僅かに劣り、しとり感とソフト性は実施例1よりやや劣る評価であった。
Claims (5)
- 油相中に、パーム軟部油をエステル交換した油脂を油相基準で51質量%以上含有し、且つ、該油相のSFCが、10℃で25〜60、20℃で15〜35、30℃で10〜25であって、該油相を80〜100質量%含有する油脂組成物を、融解した状態で穀粉類含有生地に添加、混合することを特徴とするベーカリー生地の製造方法。
- 上記油脂組成物が、ジグリセリドを油脂組成物基準で6〜10質量%含有する請求項1記載のベーカリー生地の製造方法。
- 上記油脂組成物が合成乳化剤を含有しない請求項1又は2記載のベーカリー生地の製造方法。
- 上記穀粉類含有生地に用いる穀粉類100質量部に対し、上記油脂組成物を5〜30質量部添加、混合する請求項1〜3の何れかに記載のベーカリー生地の製造方法。
- 請求項1記載のベーカリー生地の製造方法により得られたベーカリー生地。
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