JP2015089351A - 気泡含有チョコレート用油脂組成物 - Google Patents
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例えば、まずチョコレート生地の粘度を下げることが行われ、液状油を使用する方法(例えば特許文献1参照)やラウリン系油脂を使用する方法(例えば特許文献2参照)が提案された。しかし、これらの方法では、口溶けは改良されるものの、気泡の粒径についてはむしろ粗くなる傾向があり、あっさりした軽い後口が得られないという問題があった。
本発明の気泡含有チョコレート用油脂組成物は、HLBが3以下のショ糖脂肪酸エステルと、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステルとを1:9〜9:1、好ましくは2:8〜8:2、より好ましくは2:8〜6:4の質量比率(前者:後者)で含有する。
両者の比率がこの範囲外であると、本発明の効果が得られないことに加え、得られる気泡含有チョコレートがブルームやグレーニングを起こしやすくなってしまう。
また、上記HLBが3以下のショ糖脂肪酸エステルのHLBは、2以下であることが好ましい。尚、上記ショ糖脂肪酸エステルのHLBの下限は、好ましくは0である。
また、本発明の気泡含有チョコレート用油脂組成物において、上記HLBが3以下のショ糖脂肪酸エステルの含有量は、0.2〜45質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜25質量%、さらに好ましくは2〜10質量%、最も好ましくは2〜6質量%である。
尚、上記HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBの下限は、好ましくは2であるが、3以上であることが好ましい。
また、本発明の気泡含有チョコレート用油脂組成物において、上記ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、0.2〜45質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜25質量%、さらに好ましくは3.5〜12.5質量%、最も好ましくは3.5〜7質量%である。
2質量%未満であると、本発明の効果が得られないことに加え、得られる気泡含有チョコレートがブルームやグレーニングを起こしやすくなってしまう。一方、50質量%を超えると得られる気泡含有チョコレートが油性感が感じられるようになり、また口溶けが悪化する。
上記その他の乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリン酒石酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、HLBが3を超えるショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド、大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄、サポニン、植物ステロール類、乳脂肪球皮膜等が挙げられる。
本発明の気泡含有チョコレート用油脂組成物における、上記その他の乳化剤の含有量は好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0〜2質量%である。
本発明の気泡含有チョコレート用油脂組成物に使用する油脂はとくに制限されることなく、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、ハイオレイックひまわり油、サフラワー油、ハイオレイックサフラワー油、オリーブ油、キャノーラ油、牛脂、乳脂、豚脂、ココアバター、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂、動物油脂、並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂から選ばれた1種又は2種以上を使用することができる。
油相中のSUS型トリグリセリドが、15質量%未満であると、シャープな口溶けを有する気泡含有チョコレートが得られなくなるおそれがあり、35質量%を超えると、ノーテンパー型の気泡含有チョコレートに使用した場合にブルームが発生するなど、幅広い気泡含有チョコレートに使用することができず、汎用性が低くなる。
上記油脂Aにおいては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできるが、上記油脂配合物に含まれる脂肪酸組成においてS/Uの質量比が1.5〜4、好ましくは2.0〜3.5となるように、且つ、上記油脂配合物に含まれる炭素数14以下の脂肪酸含量が10質量%未満、より好ましくは5質量%未満、更に好ましくは3質量%未満となるように用いる。(但し、Sは炭素数16以上の飽和脂肪酸を表し、Uは炭素数16以上の不飽和脂肪酸を表す。)
そのため、上記パーム極度硬化油脂以外の油脂として、パーム油、パーム分別油等の、炭素数16の飽和脂肪酸(パルミチン酸)を多く含み、且つ、炭素数16の飽和脂肪酸含量より炭素数18の飽和脂肪酸(ステアリン酸)含量が少ない油脂を使用することが好ましい。
即ち、上記油脂Aでは、パーム極度硬化油脂以外の油脂として、パーム油、及び/又は、パーム分別油を使用することが好ましい。
ここで、これらのトリグリセリド成分、特に高融点のトリ飽和トリグリセリドを多く含有すると得られる気泡含有チョコレートの口溶けが悪化するため、本発明では、これらのトリグリセリドを一定含量以下となるように除去するのである。
具体的には、トリ飽和トリグリセリド含量が好ましくは12質量%以下、より好ましくは6質量%以下、更に好ましくは3質量%以下となるように高融点部分を除去する。尚、下限については特に制限はないが、一般的には0.5質量%、好ましくは1.5質量%である。
また、上記油脂Aは、構成脂肪酸組成において、炭素数20以上の飽和脂肪酸含量が好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下であることが好ましい。
その他のトリグリセリドとしては、例えば、1、2飽和、3不飽和のトリグリセリド、1飽和、2、3不飽和のトリグリセリド、1、3不飽和、2飽和のトリグリセリド、三飽和トリグリセリド、三不飽和のトリグリセリド、1,2飽和−3不飽和型トリグリセリドであって、脂肪酸の1つ以上が炭素数14未満又は18超であるトリグリセリド等が挙げられる。ただし、本発明の気泡含有チョコレート用油脂組成物では、三飽和トリグリセリドを用いると口溶けが悪くなりやすいため、三飽和トリグリセリドを使用する場合には、その含有量は油相中10質量%未満とすることが好ましい。
本発明の気泡含有チョコレート用油脂組成物において、上記のその他のトリグリセリド及びその他の油脂の配合量は、合計で好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは使用しないことが好ましい。
先ず、食用油脂に、上記HLBが3以下のショ糖脂肪酸エステルと、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステルとを、1:9〜9:1の質量比率で、且つ、気泡含有チョコレート用油脂組成物中に合計して2〜50質量%となりうる量を含有する油相を溶解し、必要により水相を混合乳化する。そして、次に殺菌処理するのが望ましい。殺菌方法は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。
本発明の気泡含有チョコレートは、本発明の気泡含有チョコレート用油脂組成物を、気泡含有チョコレートに含まれる油脂の一部又は全部に使用したものである。
本発明の気泡含有チョコレートにおける気泡含有チョコレート用油脂組成物の使用量は、該チョコレートに含まれる油脂中(以下、油分中ということもある)、5〜90質量%、好ましくは10〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%である。
本発明の気泡含有チョコレート中におけるこれらの任意成分の含有量は、好ましくは合計で98質量%以下、さらに好ましくは合計で60〜98質量%である。
本発明の気泡含有チョコレートを製造するには、まず、本発明の気泡含有チョコレート用油脂組成物を含有するチョコレート生地を製造する。
含起泡の方法としては、とくに限定されず、例えば適度な温度に冷却して結晶量を調節しながらホイッパー等で撹拌する方法、連続ミキサーを用いて強制的に気泡を含ませる方法等が例示できる。
なお、気泡含有チョコレートがテンパリング型である場合は含気泡の前にテンパリングすることが好ましい。
好ましい含気泡の程度、すなわち、気泡含有チョコレートの比重は、好ましくは0.5〜1.0、より好ましくは0.6〜0.9、さらに好ましくは0.6〜0.8である。比重が0.5未満であると、気泡が粗くなるため極めて脆い物性となり、また、口溶けがもたついた感じになり、良好な口溶けが得られにくい。一方、比重が0.9を超えると気泡含有チョコレート独特の軽い後口が得られにくい。
そして、その後定法にしたがい、冷却し、必要に応じ離型、成型する。
下記油脂及び乳化剤を用い下記〔表1〕に示す配合に従って調製した油相を、溶解、急冷練り合わせし、気泡含有チョコレート用油脂組成物を得た。得られた気泡含有チョコレート用油脂組成物のHLBが3以下のショ糖脂肪酸エステル含量、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル含量、該2種の乳化剤の比率、該2種の乳化剤の合計した含有量、SUS型トリグリセリド含量について〔表1〕に記した。
パーム油(ヨウ素価48)65質量部とパーム油(ヨウ素価48)をヨウ素価1未満となるまで硬化したパーム極度硬化油脂35質量部からなる油脂配合物を、Naメチラートを触媒としてランダムエステル交換反応を行い、常法により精製してエステル交換油脂Aを得た。
尚、上記エステル交換に用いる油脂配合物におけるS/Uの質量比は2.1、炭素数18の飽和脂肪酸/炭素数16の飽和脂肪酸(以下、St/Pともいう)の質量比は0.47であり、炭素数14以下の飽和脂肪酸含量は3質量%未満、炭素数20以上の飽和脂肪酸含量は0.5質量%未満、トランス脂肪酸含量は1質量%未満であった。
このエステル交換油脂Aからアセトン分別により高融点部と液状部を除去し、得られた中融点部を常法により精製して、油脂Aとした。
尚、得られた油脂AのSUS型トリグリセリド含量は28質量%、トリ飽和トリグリセリド含有量は2.7質量%、トリ不飽和トリグリセリドとモノ飽和ジ不飽和トリグリセリドの合計した含有量は6.8質量%、炭素数14以下の飽和脂肪酸含量は3質量%未満、炭素数20以上の飽和脂肪酸含量は0.5質量%未満、トランス脂肪酸含量は1質量%未満であった。
市販のビターチョコレート(油分含量36%、SUSで表されるトリグリセリド含有量85%、USUで表されるトリグリセリド含有量0%)91質量部を55℃に加温して溶解し、ここに55℃に加温して溶解した気泡含有チョコレート用油脂組成物9質量部を加えて混合して、チョコレート生地を得た。このチョコレート生地をテンパリングした後、約25℃に調温し、卓上ミキサーを使用して、ビーターを使用してホイップし、直径10mmの丸口金をセットした絞り袋を使用して、直径10mm、長さ30mmのストロー状に絞り出し、5℃で1時間冷却・固化させ、本発明の気泡含有チョコレートを得た。
上記実施例1〜9及び比較例1〜7の気泡含有チョコレート製造時のホイップ時に比重が最も軽くなった時点の比重について、下記の4段階で評価し、結果を〔表2〕に記載した。
◎+:最終比重が0.68未満であった。
◎:最終比重が0.68〜0.70であった。
○:最終比重が0.71〜0.73であった。
△:最終比重が0.74〜0.76であった。
×:最終比重が0.77以上であった。
上記実施例1〜9及び比較例1〜7で得られた気泡含有チョコレートを10人のパネラーにより下記評価基準に従って官能評価をさせ、10人のパネラーの合計点を評価点数とし、結果を〔表2〕に記載した。
41〜50点:◎+、31〜40点:◎、21〜30点:○、11〜20点:△、0〜10点:×
(油性感)
5点 :油性感が全く感じられない。
3点 :油性感がわずかに感じられる。
1点 :油性感がはっきり感じられる。
0点 :油性感が強く、不良である。
5点 :爽快な口溶けを有し、極めて良好である。
3点 :良好である。
1点:若干もたついた口溶けでやや不良である。
0点:もたついた口溶けで、不良である。
Claims (6)
- HLBが3以下のショ糖脂肪酸エステルと、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステルとを、1:9〜9:1の質量比率(前者:後者)で、且つ、合計して2〜50質量%含有することを特徴とする気泡含有チョコレート用油脂組成物。
- さらに、HLBが5.5以上のポリグリセリン脂肪酸エステル(ただし結合脂肪酸は不飽和脂肪酸)を、0.1〜10質量%含有することを特徴とする請求項1記載の気泡含有チョコレート用油脂組成物。
- トリグリセリド組成におけるSUS型トリグリセリド含量が15〜35質量%(油相基準)であることを特徴とする請求項1又は2記載の気泡含有チョコレート用油脂組成物。
ただし、上記S及びUは、それぞれ下記の脂肪酸を示す。
S:炭素数16以上の飽和脂肪酸
U:炭素数16以上の不飽和脂肪酸 - パーム極度硬化油を20〜60質量%含有し、脂肪酸組成においてS/Uの質量比が1.5〜4であり、炭素数14以下の脂肪酸含量が10質量%未満である油脂配合物をエステル交換したエステル交換油脂の低融点部又は中融点部を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の気泡含有チョコレート用油脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の気泡含有チョコレート用油脂組成物を含有することを特徴とする気泡含有チョコレート。
- テンパリング型である請求項5記載の気泡含有チョコレート。
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