以下、本発明の実施の形態の例を説明する。
図1は本発明の真空吸着ノズル組み立て体を電子部品装着機に組み付けたときの構成の一例を示す、(a)は斜視図であり、(b)は(a)の縦断面図である。
図1に示す真空吸着ノズル1は、真空吸引することによって電子B部品(図示せず)を吸着して保持するための吸着面2を先端の端面側に有した円筒部5と、円筒部5の吸着面2と相対する側に円筒部5に向かって先細りの形状で設けられた円錐部4と、円錐部4が吸着面2と相対する根元の端面側すなわち後端に設けた頭部6とを有する構成である。そして、円筒部5を貫通して吸着面2に開口した内孔は、円錐部4と頭部6とに延設して頭部6の表面に開口させて、吸引孔3としてある。
また、真空吸着ノズル1の後端である頭部6と嵌合する受け部11を有し、吸引孔3と連通するように吸引孔12を有しているフランジ10が、真空吸着ノズル1の頭部6と受け部11とを導電性フィラー101を介して電気的に短絡するように接着して取り付けられており、このフランジ10と真空吸着ノズル1とで真空吸着ノズル組み立て体7を構成して、フランジ10を介して電子部品装着機(図示せず)に取り付けられるようにしてある。
そして、真空吸着ノズル1とフランジ10とを接着して真空吸着ノズル組み立て体7とすれば、電子部品15の小型化に伴い真空吸着ノズル1も小型化したとしても、電子部品装着機14から取り外して洗浄したり、新品に交換したりするときの作業性が低下することを防止することができる。真空吸着ノズル組み立て体7は、真空吸着ノズル1を電子部品装着機14から取り外して手で保持して洗浄や着脱作業をする場合と比較して、フランジ10が真空吸着ノズル1に接着されていることから、フランジ10を手で保持することができるために持ちやすく、真空吸着ノズル1の円筒部5のように細くて折れやすい部分があっても指を触れずにすむため破損しにくく、作業性も低下しない。また、インジェクション成形法などを用いて真空吸着ノズル1とフランジ10とを一体成型するよりも形状の自由度が高くなるという利点や、フランジ10にセラミックスの他に金属等の材質を適宜選択して用いることができるという利点もある。
次に、図2に、本発明の真空吸着ノズル組み立て体を具備した電子部品装着機を用いて、チップ状の電子部品を回路基板に実装する電子部品装着装置の構成を概略図で示す。
図2に示す電子部品装着装置20は、電子部品装着機14に具備した真空吸着ノズル組み立て体7と、電子部品15を並べたトレイ16と、真空吸着ノズル1に吸着された電子部品15に向けて光を照射するライト17と、ライト17の反射光を受光するためのCCDカメラ18と、CCDカメラ18で受光した反射光(画像)を画像処理するための画像解析装置19とで構成されている。
そして、この電子部品装着装置20は、真空吸着ノズル組み立て体7がトレイ16まで移動し、トレイ16上に並べられた電子部品15を真空吸着ノズル1が吸着すると、ライト17が真空吸着ノズル1に吸着された電子部品15へ向けて光を照射し、この光が電子部品15の本体や電極に当たって反射する反射光をCCDカメラ18で受光し、CCDカメラ18で受光した画像を基に画像解析装置19によって電子部品15の位置を測定して、そのデータを基に回路基板(図示せず)の所定の位置に電子部品15を吸着した真空吸着ノズル1を移動させて、回路基板の表面に電子部品15を実装するものである。
そして、本発明の真空吸着ノズル組み立て体7は、半導電性セラミックスからなる真空吸着ノズル1の後端6が導電性または半導電性のフランジ10の受け部11に接着され、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11とが、導電性フィラー101を介して電気的に導通していることが重要である。
真空吸着ノズル1を半導電性セラミックスで形成すれば、吸着面2が多数の電子部品15を着脱する過程で磨耗が進行して吸着面2の形状精度が低下し、吸着力が低下したり電子部品15の位置ずれが生じたりすることを抑制することができるとともに、半導電性とすることによって、真空吸着ノズル1に静電気が帯電したとしても、この静電気はフランジ10と電子部品装着機14とを通して適度な速度でアース(除電)できるために、真空吸着ノズル1が帯電して真空吸着する電子部品15を吹き飛ばしたり、真空吸着ノズル1から静電気が急速に放電して電子部品15や周囲の部品が放電破壊するのを防止することができる。
そして、真空吸着ノズル1が静電気を帯電することが防止できるので、静電気によって
塵埃等が真空吸着ノズル1に付着して電子部品が汚染するという問題を防止できる。
次に、図3は本発明の真空吸着ノズル組み立て体における真空吸着ノズルの後端とフランジの受け部との接着部の例を模式的に示す断面図である。
そして、この真空吸着ノズル組み立て体7は、真空吸着ノズル1の頭部6を含む後端とフランジ10の受け部11との間の接着部13を、絶縁性接着剤104と導電性フィラー101とによって構成している。
本発明の真空吸着組み立て体7を構成する真空吸着ノズル1は半導電性セラミックスで構成されるが、このような半導電性セラミックスは、例えばセラミックスとなる基材に導電性付与剤を添加して焼結することによって得られる。このとき、添加した導電性付与剤の一部はセラミックスの表面に移動するので、その表面は、導電性付与剤が多くなり導電性は良いが接着性では特に優れた特性を有する表面とはならない。特に、半導電性セラミックスを焼結しただけの表面(以下、焼き肌面と称す。)はなだらかではあるが起伏のある面となり、真空吸着ノズル1の頭部6とフランジ10の受け部11とをこのような焼き肌面で接着しようとすると、当接面同士がしっかりと合わさることがなく部分的に隙間ができて導通が悪くなるとともに、接着部13の厚みが不均一となって接着強度が低下する傾向にある。
また、真空吸着ノズル1が小型化して寸法精度が求められるようになると、セラミックスを単に焼結させただけでは寸法精度を満足させることが難しくなり、そのために、半導電性セラミックスを焼結した後に真空吸着ノズル1かフランジ10側あるいはその両方の当接する部分(接着部13)に研削加工を施して接着することが必要になる。この研削面は、加工傷を任意に形成することができるので接着性は良いが、導電性では特に優れた特性を有す表面とはならない。
したがって、このような真空吸着ノズル1とフランジ10との接着部13において、接着性と導電性における優れた特性を兼ね備えた真空吸着ノズル組み立て体7を得ようとすると、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11とを導電性フィラー101を介して電気的に導通しているものとするのが重要である。真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11とを絶縁性接着剤を用いて接着する場合に両者の間に導電性フィラー101が介在していると、前述の半導電性セラミックスの焼き肌面にしっかりと導電性フィラー101が接触して導通を得ることができるとともに、接着部13の厚みを均一にすることができるので高い接着強度が得られる。また、絶縁性接着剤を用いて接着する面が研削面の場合には、もともとその面を均一に加工できるので接着部13の厚みは均一になりやすく、接着する面が焼き肌面の場合よりも接着強度が良好である。
したがって、後端6と受け部11とを半導電性セラミックスを用いて形成する場合には導電性の点からは焼き肌面で接着するのがよいが、接着強度の点からは研削面で接着した方がよいという矛盾が生じる。この矛盾を解決するために導電性フィラーを介して導通すれば、焼き肌面と研削面とのそれぞれの問題を解決することができるのである。これによって、導電性においては研削加工によって半導電性セラミックスの表面の導電性付与剤が研削されて低下するものの、導電性フィラー101がしっかりと研削面の表面に接触して静電気を導通するので、真空吸着ノズル1が静電気を帯電して塵埃等が付着して電子部品が汚染するという問題、静電気によって真空吸着する電子部品が吹き飛ばされるという問題、あるいは真空吸着ノズル1から静電気が急速に放電して真空吸着する電子部品や周囲の部品が放電破壊するという問題が生じるのを防止することができる。
また、導電性フィラー101は通常、絶縁性接着剤104と併せて使用することが好ましい。絶縁性接着剤104には、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11との間に接着部13を形成して両者を強固に接着することが要求される。つまり、電子部品装着機14に取り付けられた真空吸着ノズル1で、電子部品15を吸着して回路等へ載置する動作を高速で長時間繰り返すが、その動作中に上記接着部13に緩みが生ずると、CCDカメラにより監視されている真空吸着ノズル組み立て体7の位置精度が微妙に狂い、電子部品15の吸着および載置が正確に行なわれないという問題が生ずるため、通常の使用状態の振動や真空吸着ノズル組み立て体7を電子部品装着機14から取り外し吸着孔3の清掃作業等により、接着部12による接着が緩まない程度の強度が必要である。なお、本発明者は、経験的に接着部13の強度が300N以上あればよいことを掴んでいる。
また、導電性フィラー101を介して導通することによって、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11とは焼き肌面および研削面のどちらも任意に選択できるようになり、必要に応じて導電性の程度および接着強度を変えて選択することができるという利点が生じる。
さらに、フランジ10が真空吸着ノズル1とは別の導電性または半導電性の材料からなる場合においても、導電性フィラー101は同様の効果を奏すことができる。
なお、導電性フィラー101の好ましい材質としては、Au,Ag,Cu,Ni,Al,Fe,C,Co,Cr,Mo,Pd,Pt,Pb,Sn,Znの単一もしくは複合物からなるものであればよく、これらの物質をメッキ等により複数使用したものであってもよい。特に、硬度が低く延性のあるAuやAlは、導電性フィラー101の材質として好適である。
また、導電性フィラー101の形状は、球状,矩形状,フレーク状および針状等のいずれか、またはそれらの形状のものが混合したものでもよいが、特に球状であることが好ましい。
また、導電性フィラー101の大きさ(径)は、半導電性の真空吸着ノズル1の後端6の少なくとも一部をセラミックスの焼き上げ面である焼き肌面とする場合を考慮すれば、焼き肌面のうねりよりも大きければ、このうねりの中で導電性フィラー101が埋没することがないことから、後端6と受け部11とを直接に導電性フィラー101で電気的に短絡させるとができる。しかし、接着部13の接着強度を低下させないためには、導電性フィラー101の大きさ(径)は小さいほうが好ましい。その大きさ(径)の範囲は5〜45μmがよく、より好ましくは15〜30μmである。
そして、本発明の真空吸着ノズル組み立て体7においては、導電性フィラー101が金属フィラーおよび金属被覆樹脂フィラーの少なくとも一方であることが好ましい。
図4は本発明の真空吸着ノズル組み立て体の真空吸着ノズルの先端とフランジの後端との間を電気的に導通させるための導電性フィラーの例を模式的に示すものであり、(a)は金属フィラーの断面図であり、(b)は金属被覆樹脂フィラーの断面図である。
この導電性フィラー101は、図4(a)に示すように、全体が金属からなる金属フィラー102、または(b)に示すように、フィラーの中心が樹脂103bからなり、その表面を金属層103aで覆う金属被覆樹脂フィラー103からなる。
例えば、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11とを接着する場合には、接着剤と導電性フィラー101とを後端6と受け部11との間である接着部13に配置し、後端6および受け部11の少なくとも一方側から加圧することによって接着剤を接着部13に確実に充填して接着し、また、導電性フィラー101を所望の程度で潰すことによって導電性フィラー101を大きくするとともに後端6および受け部11との接着面を大きくし、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11との間の導通がより良好な状態になるようにしている。
導電性フィラー101が金属フィラー102であるときは、例えば真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11とを接着する場合に加える加圧が高くなっても用いることができ、金属フィラー102が変形しても電気的な導通の性能に影響することがない。したがって、例えば、接着剤の粘性が高く、接着時に高い加圧力が必要な場合には、金属フィラー102を用いることが好ましい。
また、逆に接着剤の粘性が低く小さい加圧力しか加えられない場合には、接着部13の全体に容易に接着剤が充填できるようであれば、金属被覆樹脂フィラー13を用いればよい。金属被覆樹脂フィラー103は、中央に樹脂103bがあることから小さい加圧で変形しやすく、真空吸着ノズル1の後端6およびフランジ10の受け部11の双方の当接部で変形しながら金属層103aが密着するので、良好な電気的な導通を得ることができる。
また、これら2種類の金属フィラー102と金属被覆樹脂フィラー103とを適宜混ぜ合わせて用いると、例えば種々の接着剤の粘性によって生じる必要な加圧力に対応することができるので好適である。また、金属フィラー102のみだと後端6と受け部11とのそれぞれに確実に当接して接着強度がよいが、これに金属被覆樹脂フィラー103が加わると、金属被覆樹脂フィラー103は潰れやすいことから、金属フィラー102よりも後端6と受け部11に当接する面積を大きくできるので、電気的な導通に優れたものとすることができる。
なお、導電性フィラー101に金属被覆樹脂フィラー103を用いるときには、金属層103aの材質は、前述の導電性フィラー101の説明において使用した材質をその中から適宜選択すればよい。樹脂103bの材質は、ジビニルベンゼンのように、弾力性に富み、200℃程度で塑性変形しないものであればよい。
金属被覆樹脂フィラー103における金属層103aの膜厚は、0.05〜1μm程度であれば、通常の使用において、接着時の加圧力で破れるおそれがなく、また、接着時の加圧力が低くても容易に変形しやすい。したがって、後端6および受け部11に金属被覆樹脂フィラー103の金属層103aが十分に接触して電気的に導通できる。
図5は本発明の真空吸着ノズル組み立て体の真空吸着ノズルの先端とフランジの後端との間を電気的に導通させるための導電性フィラーの例を模式的に示すものであり、(a)は導電性フィラーが押し潰された状態を示す断面図であり、(b)は導電性フィラーのアスペクト比を説明するための断面図である。
また、導電性フィラー101は、図5(a)に示すように、真空吸着ノズル1の後端6(6aおよび6cの少なくともいずれか)とフランジ10の受け部11との間で、少なくとも1個が押し潰されて配置されていることが好ましい。
導電性フィラー101は、真空吸着ノズル1の後端6(6aおよび6cの少なくともいずれか)とフランジ10の受け部11との間の接着部13に少なくとも1個が押し潰されて配置されているときには、後端6ならびに受け部11と導電性フィラー101の接触する部分の面積は、導電性フィラー101が押し潰されていないものに比べると広くなることから、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端6との間で確実な電気的な導通を得ることができるので、真空吸着ノズル1に静電気が帯電したとしても、この静電気はフランジ10から電子部品装着機14を通して適度な速度でアース(除電)できる。したがって、真空吸着ノズル1が静電気を帯電して塵埃等が付着して電子部品が汚染するという問題、静電気によって真空吸着する電子部品が吹き飛ばされるという問題、あるいは真空吸着ノズル1から静電気が急速に放電して真空吸着する電子部品や周囲の部品が放電破壊するという問題が生じるのを防止することができる。
なお、ここで、押し潰された導電性フィラー101は、最初から潰れた形状であっても良いが、より好ましくは、真空吸着ノズル1とフランジ10との接着をする段階で加える加圧力により押し潰された状態であれば、後端6(6a,6c)ならびに受け部11の接着する面が焼き肌面の場合には、焼き肌面にある起伏部や研削した面にできる研削キズに導電性フィラー101の表面が食い込むことから、電気的な導通不良の発生を抑制できる。
また、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11とを接着するために絶縁性接着剤を用いるならば、導電性フィラーの個数をより少なくすることによって、後端6や受け部11との接着を、より強固な接着とすることができる。
また、導電性フィラー101は、図5(a),(b)に示すように、真空吸着ノズル1の後端6(6aおよび6cの少なくともいずれか)とフランジ10の受け部11との間で、真空吸着ノズル組み立て体7の軸方向に垂直な方向の接着部13に、少なくとも1個の導電性フィラー101が、真空吸着ノズル組み立て体7の軸方向に平行な方向の長さが軸方向に垂直な方向の長さよりも短いものが配置されていることが好ましい。
導電性フィラー101は、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11との間の接着部13に少なくとも1個の導電性フィラー101が真空吸着ノズル組み立て体7の軸方向に平行な方向の長さが軸方向に垂直な方向の長さよりも短いものが配置されているときには、後端6および受け部11と導電性フィラー101との接触する部分の面積は、導電性フィラー101が略球体のものに比べると広くなることから、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端6との間ではより確実な電気的な導通を得ることができるので、真空吸着ノズル1に静電気が帯電したとしても、この静電気はフランジ10から電子部品装着機14を通して適度な速度でアース(除電)できる。したがって、真空吸着ノズル1が静電気を帯電して塵埃等が付着して電子部品が汚染するという問題、静電気によって真空吸着する電子部品が吹き飛ばされるという問題、あるいは真空吸着ノズル1から静電気が急速に放電して真空吸着する電子部品や周囲の部品が放電破壊するという問題が生じるのを防止することができる。
なお、ここで、真空吸着ノズル組み立て体の軸方向に平行な方向の長さをLとし、軸方向に垂直な方向の長さをDとしたときに、導電性フィラー101の長さDは長さLよりも最初から短いものが配置されていても良いが、より好ましくは、真空吸着ノズル1とフランジ10との接着をする段階で加える加圧力により長さDを長さLよりも短くすることにより、後端6および受け部11の接する面が焼き肌面の場合には、焼き肌面にある起伏や研削した面にできる研削キズに導電性フィラー101の表面が食い込むことから、電気的な導通不良の発生を抑制できる。
また、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11とを接着するために絶縁性接着剤を用いるならば、導電性フィラーの個数をより少なくすることによって、後端6や受け部11との接着は、より強固な接着とすることができる。
また、導電性フィラー101は、図5(a),(b)に示すように、真空吸着ノズル1の後端6(6aおよび6cの少なくともいずれか)とフランジ10の受け部11との間で、真空吸着ノズル組み立て体の軸方向に平行な方向の長さをLとし、軸方向に垂直な方向の長さをDとしたときのアスペクト比L/Dが0.5〜0.98のものが配置されていることが好ましい。
導電性フィラー101のアスペクト比L/Dが0.5〜0.98であれば、真空吸着ノズル組み立て体7の真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11とを加圧しながら接着するときには、加圧力を高くしなくても真空吸着ノズル1の後端およびフランジ10の受け部11と導電性フィラー101との各々の接触する部分の面積は、導電性フィラーが略球体のものに比べると広くなることから、真空吸着ノズルの後端とフランジの受け部との間でより確実な電気的な導通を得ることができる。さらに、接触する部分の面積を広くできることから、加圧しながら接着するときに加圧力を低くしても、真空吸着ノズルの後端およびフランジ10の受け部11と導電性フィラー101との各々が十分に接触することができ、加圧力による真空吸着ノズル1およびにフランジ10にクラックやカケを発生させることを抑制できる。さらに、真空吸着ノズル1に静電気が帯電したとしても、この静電気はフランジ10から電子部品装着機14を通して適度な速度でアース(除電)できるので、真空吸着ノズル1が静電気を帯電して塵埃等が付着して電子部品が汚染するという問題、静電気によって真空吸着する電子部品が吹き飛ばされるという問題、あるいは真空吸着ノズル1から静電気が急速に放電して真空吸着する電子部品や周囲の部品が放電破壊するという問題が生じるのを防止することができる。
また、導電性フィラー101は、真空吸着ノズル組み立て体7の組立時には略球体のものを用い、真空吸着ノズル1とフランジ10との接着の段階で加圧力により潰れて、絶縁性接着剤が硬化した時点でのアスペクト比L/Dが0.50〜0.98であることがより好ましい。
後端6と受け部11との接着部13に導電性フィラー101と絶縁性接着剤104とを塗布し、絶縁性接着剤104が熱硬化性であれば、加圧力と熱とを同時にかけて所望の加圧力をかけた時点で加圧力と熱とを解放する。この時点で導電性フィラー101および絶縁性接着剤104は熱収縮し、その収縮の度合いは導電性フィラー101の方が絶縁性接着剤104より大きいものの、導電性フィラー101に残る残留応力により、導電性フィラー101と後端6および受け部11との接触する面が離間することを防止できる。また、絶縁性接着剤104が二液硬化性であるときには、導電性フィラー101は熱収縮しないため、熱硬化性の絶縁性接着剤104を用いるときよりも、導電性フィラー101と後端6および受け部11とがお互いに接触する面での離間が発生するおそれは少なくなる。
図6は、本発明の真空吸着ノズル組み立て体における真空吸着ノズルの後端とフランジの受け部との接着部の例を模式的に示す、(a)は真空吸着ノズル1の後端6にうねりがあり接着部の厚みのばらつきを示す模式図であり、(b)はフランジ10の受け部11の平行度が大きい場合の状態を示す断面の模式図である。
この図6に、真空吸着ノズル組み立て体7の詳細を示すように、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11との接着部13に絶縁性接着剤104および導電性フィラー101からなる接着部13があり、真空吸着ノズル組み立て体7の軸方向に平行な方向の接着部13の厚みtの最大値をt1とし、最小値をt2とし、真空吸着ノズル組み立て体7の軸方向の中心線Yの垂線Xに対する吸着面2の延長線Zとのズレを傾きθとしてある。
本発明の真空吸着ノズル組み立て体7の真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11とを接着している接着部13は、真空吸着ノズル組み立て体7の軸方向に垂直な方向の部分における接着部13の厚みtが0.005〜0.050mmの範囲であって、かつ、接着部13の厚みtの最大値t1と最小値t2との差が0.01〜0.045mmの範囲であることが好ましい。
接着部13の厚みtが0.005mm〜0.050mmの範囲であれば、真空吸着ノズル組み立て体7の真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11とを加圧しながら接着するときには、真空吸着ノズル1の先端部側の円筒部と、フランジ10とを別々に組立治具で固定し、後端6とフランジ10の受け部11とを嵌合するときに、この接着部13の厚み(真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11との隙間、すなわちクリアランス22)があることにより、この厚みを利用しながらフランジ10に対する真空吸着ノズル1の傾きθおよび位置を調整して接着ができることから、真空吸着ノズル1ならびにフランジ10を組み込む場所の加工精度が高くなくても、この接着部13の厚み(クリアランス22)により、組立後の真空吸着ノズル組み立て体7の吸着面2である先端部の吸着面10の位置を精度良く決めて嵌合することができる。さらに、接着部13の薄い場所に介在する導電性フィラー101の一部に大きな加圧力がかかり、真空吸着ノズル1の後端6およびフランジの受け部11と導電性フィラー101とが接触することから、電気的な導通を確実に得ることができる。
さらに、接着部13の厚みtの最大値t1と最小値t2との差が0.01mm以上であれば、真空吸着ノズル組み立て体7の後端6と受け部11とを接着するときに接着部13中で介在する導電性フィラー101の一部に大きな加圧力がかかり、後端6および受け部10と導電性フィラー101とが確実に接触することから、電気的な導通を得ることができる。
また、最大値t1と最小値t2との差が0.045mm以下であれば、後端6および受け部11にうねりがあったとしても、接着部13中で介在する導電性フィラー101の少なくとも一部に加圧力がかかり、後端6および受け部11と導電性フィラー101とが接触することができることから、電気的な導通を確実に得ることができる。また、後端6および受け部11の接着部13の導電性フィラー101と接する面に平行度の問題があったとしても、接着する際に加圧力を加えたときに加圧力のベクトルが垂直方向から斜め方向にずれることを防止でき、導電性フィラー101が接着部13の厚みtの差の大きい方へ逃げることを防止することができる。
また、導電性フィラー101が、金属フィラー102および金属被覆樹脂フィラー103からなるときには、金属被覆樹脂フィラー103が金属フィラー102よりも大きいことが好ましい。
本発明の真空吸着ノズル組み立て体7は、導電性フィラー101が、金属フィラー102および金属被覆樹脂フィラー103からなり、金属被覆樹脂フィラー103が金属フィラー102よりも大きいものとしたときには、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11とを接着する時の加圧力でこれらの距離が狭まってくると、大きい金属被覆樹脂フィラー103が先に後端6と受け部11とに当接し、さらに加圧力が高まって後端6と受け部11とが狭まると金属樹脂被覆フィラー103の変形が始まり、より当接面積が大きくなり電気的な導通が好ましくなる。これに加えて、金属フィラー102が真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11とに当接して、金属被覆樹脂フィラー103も金属フィラー102もともに後端6と受け部11とに当接するので、より確実に電気的な導通を得ることができる。
また、導電性フィラー101は、硬度差のある少なくとも2種類の金属フィラー102からなり、硬度の低い金属フィラー102が硬度の高い金属フィラー102よりも大きいことが好ましい。
本発明の真空吸着ノズル組み立て体7は、導電性フィラー101が硬度差のある少なくとも2種類の金属フィラー102からなり、硬度の低い金属フィラー102が硬度の高い金属フィラー102よりも大きいものとしたときには、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11とを接着する時の加圧力でこれらの距離が狭まってくると、硬度が低い金属フィラー102の方が硬度の高い金属フィラー102よりも大きいので硬度が低い金属フィラー102の方が先に後端6と受け部11とに当接し、さらに加圧力が高まって後端6と受け部11とが狭まると硬度が低い金属フィラー102の変形が始まり、より当接面積が大きくなって電気的な導通が好ましいものとなる。これに加えて、次に硬度が高く小さい金属フィラー102が後端6と受け部11とに当接して、硬度が低い金属フィラー102も硬度が高い金属フィラー102もともに真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11とに当接するので、より確実に電気的な導通を得ることができる。
また、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11との接着部13が、セラミックスの焼き肌面8が接着された部位と研削面9が接着された部位とからなることが好ましい。
本発明の真空吸着ノズル組み立て体7は、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11との接着部13が、セラミックスの焼き肌面が接着された部位と研削面が接着された部位とからなるときには、セラミックスの焼き肌面には導電性付与材の層が顕在しているから電気的な導通を得やすく、また、セラミックスの研削面には接着に際してアンカー効果の役目を果たす研削傷が残ることから高い接着強度が得られやすいので、より確実に電気的な導通と強固な接着が得られる。
また、本発明の真空吸着ノズル組み立て体7は、フランジ10は、真空吸着ノズル1よりも電気抵抗が同等または小さい金属またはセラミックスからなることが好ましい。
フランジ10が真空吸着ノズル1よりも電気抵抗が小さいと、真空吸着ノズル1が帯電しても帯電した静電気は真空着ノズル1からフランジ10を経由し速やかにアース(除電)させることができるために、真空吸着ノズル1が帯電して塵埃等が付着して電子部品が汚染したり、真空吸着ノズル1が真空吸着する電子部品15を吹き飛ばしたり、真空吸着ノズル1から静電気が急速に放電して真空吸着する電子部品15や周囲の部品が放電破壊するのをより確実に防止することができる。
また、本発明の真空吸着ノズル組み立て体7は、フランジ10が真空吸着ノズル1よりも明るい色であることが好ましい。
真空吸着ノズル組み立て体7のフランジ10が真空吸着ノズル1よりも明るい色であるときには、真空吸着ノズル1とフランジ10とを組み立てるとき、真空吸着ノズル1とフランジ10との接着部の視認性が向上して接着作業の正確さが向上する。また、真空吸着ノズル組み立て体7に組み立てた後も全体が単色ではないことから作業者の視認性がよく、電子部品装着機14との着脱作業のときや、電子部品装着機14から真空吸着ノズル組み立て体7を取り外して洗浄作業をするときの作業性が良好なものとすることができる。
このようにフランジ10を真空吸着ノズル1よりも明るい色としたとき、電子部品15を吸着した状態をCCDカメラで撮影したときに真空吸着ノズル1からの反射光で電子部品15が認識しにくくなることを抑制することができるとともに、フランジ10の反射光はCCDカメラの画像で十分に認識することができるので電子部品装着機14で吸着された電子部品15の位置確認が容易となる。
ここで、半導電性とは、材料の内部に発生した電荷をアースするための導電性(除電性)と、外部からの電気の流入を防止するための絶縁性とを両立させる性質を持ち合わせたものであり、具体的には103〜1011Ωの抵抗値を有するものをいう。
そして、図7は本発明の真空吸着ノズル組み立て体7の真空吸着ノズル1の先端とフランジ10の後端との間の抵抗値を測定する方法を示す正面図であり、真空吸着ノズル1の先端となる吸着面2に一方の電極60を接触させ、フランジ10の後端となる凸部21の端面に他方の電極60を接触させた状態を示している。そして、これら電極60・60には電気抵抗測定器(図示せず)が接続されており、真空吸着ノズル組み立て体7の先端側と後端側の電極60・60間に任意の電圧を加えて真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端との間の抵抗値を測定すればよい。測定に際して加える電圧は真空吸着ノズル1の形状や材質などに合わせて設定すればよく、おおよそ10〜1500Vの範囲であれば問題はない。
また、真空吸着ノズル1の吸着面2の径は0.7mm以下とするのが好ましいが、これは長辺が1mm以下の矩形状の電子部品15を吸着して高密度に実装される回路基板に実装するときに、吸着面2や円筒部5が先に実装してある電子部品や周囲に実装してある部品に接触して欠けるという問題が生じにくくするためである。吸着面2の径が0.7mmを超えると、長辺が1mm以下の矩形状の電子部品15を吸着して高密度に実装される回路基板に実装しようとすると、吸着面2や円筒部5が実装箇所の周囲にある部品と接触して破損しやすくなる。例えば、電子部品15が0603タイプ(寸法が0.6mm×0.3mm)のチップ部品である場合には、回路基板に実装された部品の間隔が約0.1mmとなる箇所もあるために、電子部品15が吸着面2に吸着されたときに僅かにずれただけでも、実装時に吸着面2や円筒部5が実装箇所の周囲にある部品に接触し破損する危険がある。そして、このように吸着面2の径を小さくして真空吸着ノズル1を小型化するような場合には、フランジ10とともに真空吸着ノズル組み立て体7を構成して取り扱うことが必要となり、このような場合に本発明は特に有効である。
さらに、本発明の真空吸着ノズル組み立て体7における真空吸着ノズル1に用いるセラミックスは導電性付与材を含むものであるが、真空吸着ノズル1に用いるセラミックスが単体では絶縁性のセラミックスであっても、導電性付与材を含ませることによって適度な抵抗値を有する真空吸着ノズル1を作製することができる。
例えば、アルミナは絶縁性のセラミックスであるが、安価で耐摩耗性が優れているという特長があり、炭化チタンや窒化チタンなどの導電性付与材を添加すれば、耐摩耗性に優れ、適度な導電性も有する真空吸着ノズル1を作製することができる。同様に、ジルコニアは強度の高い材料であり、酸化鉄,酸化チタン,酸化亜鉛などの導電性付与材を添加すれば、細い形状でも折れにくくなり、適度な導電性も有する真空吸着ノズル1を作製することができる。また、炭化珪素は、炭素を添加することで抵抗値を調整した真空吸着ノズル1を作製することができる。
そして、本発明における真空吸着ノズル1に用いるセラミックスは黒色系セラミックスであることが好ましい。
真空吸着ノズル1に黒色系セラミックスを用いると、真空吸着ノズル1で吸着した電子部品15をライト17で照射してCCDカメラ18で撮影したときに、電子部品15はライト17の反射光で鮮明に写るが、電子部品15の背景は真空吸着ノズル1が黒色系セラミックスであるために暗い状態となり、電子部品15の輪郭は明瞭になる。そのため、画像解析装置19は真空吸着ノズル1に吸着された電子部品15の形状を正確に認識できるので、回路基板に電子部品15を実装する際の位置精度が高くなるという利点がある。
黒色系セラミックスとしては、黒色系の導電性付与材を添加したジルコニア,アルミナおよび炭化珪素などがある。また、茶色系や青色系など他の色調を有するセラミックスでも、濃い色調とすることにより黒色系セラミックスと同様の効果を得ることができる。
例えば、アルミナセラミックスに添加する黒色系あるいは茶色系や青色系であっても濃い色調として用いることができる導電性付与材としては、酸化鉄,酸化ニッケル,炭化チタン,窒化チタンなどが挙げられ、中でも酸化鉄,炭化チタンが黒色系セラミックスを得られる導電性付与材として好ましい。ジルコニアセラミックスに添加する黒色系あるいは茶色系や青色系であっても濃い色調として用いることができる導電性付与材としては、酸化鉄,酸化チタン,酸化コバルト,酸化クロム,酸化ニッケルなどが挙げられ、中でも酸化鉄が黒色系セラミックスを得られる導電性付与材として好ましい。炭化珪素セラミックスは、炭素を含有させて導電性を付与したものが黒色系セラミックスとして好ましい。
さらに、本発明における真空吸着ノズル1に用いるセラミックスは、安定化剤を含むジルコニアであることが好ましい。
真空吸着ノズル1に用いるセラミックスに安定化剤を含むジルコニアを用いることが好ましいのは、セラミックスとしての機械的強度が高いためである。特に、図1(a)に示す真空吸着ノズル1のように、円筒部5を有しており、その径が細い形状の真空吸着ノズル1の場合には、吸着面2に吸着した電子部品15を基板に実装したときに隣接する部品と真空吸着ノズル1の先端とが接することによって円筒部5が破損しやすいので、セラミックスとして強度の高いジルコニアを使用することが好適である。
このときのジルコニアに含ませる安定化剤にはイットリア,セリア,マグネシアなどを用いればよく、これら安定化剤を2〜8モル%程度含んでいれば実用上で強度的に十分なジルコニアとなる。また、ジルコニアの平均結晶粒子径は3μm以下のものが好ましい。平均結晶粒子径を3μm以下とすることで、真空吸着ノズル1の作製や補修の際に吸着面2に対して研削加工や鏡面加工をするときに、結晶粒子が脱落しにくくなることから吸着面2に欠けが生じにくくなる。
そして、この真空吸着ノズル1で電子部品15を吸着すると、ライト17が真空吸着ノズル1に吸着された電子部品15に向けて光を照射し、CCDカメラ18で反射光を受光するときに、電子部品15の色合いに対して真空吸着ノズル1の色合いを濃色系に変えたものを選択できるので、画像解析装置19が真空吸着ノズル1と電子部品15とを区別しやすい色合いのものとすることができ、認識エラーや誤動作を低減させることができる。
一般的に、電子部品15は色合いが白色系,銀色系あるいは灰色系のものが多く、そのために真空吸着ノズル1の色合いとしては黒色系などの濃色系の色合いが求められることが多い。このような黒色系の色合いの真空吸着ノズル1を得るためには、例えば、ジルコニアが65質量%に酸化鉄を30質量%,酸化コバルトを3質量%,酸化クロムを2質量%の組成としたものが好適である。また、電子部品15が銀色系のときは、真空吸着ノズル1の色合いは濃い黒色系を用いるのが好ましいが、これは、酸化鉄を25質量%以上とすることによって得ることができる。
次に、本発明の真空吸着ノズル組み立て体7に用いるセラミックス製の真空吸着ノズル1の製造方法を説明する。
本発明における真空吸着ノズル1を構成するセラミックスとしては、炭化珪素,アルミナ,安定化剤を含むジルコニアなど公知の材料を用いることができる。
炭化珪素質セラミックスを用いる場合であれば、例えば、炭化珪素を91〜94.8質量%とし、これに焼結助剤としてアルミナを5質量%、導電性付与材を0.2〜4質量%として合計100質量%として混合した原料をボールミルに投入して所定の粒度まで粉砕してスラリーを作製し、スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥して顆粒を形成する。
次に、この顆粒と熱可塑性樹脂とをニーダに投入して加熱しながら混練して得られた坏土をペレタイザーに投入すれば、インジェクション成形用の原料となるペレットを得ることができる。なお、ニーダに投入する熱可塑性樹脂としては、エチレン酢酸ビニル共重合体やポリスチレンやアクリル系樹脂などをセラミックスの質量に対して10〜25質量%程度添加すればよく、ニーダを用いて混練中の加熱温度は140〜180℃に設定すればよい。また、混練の条件はセラミックスの種類や粒度、および熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜設定すればよい。
そして、得られたペレットをインジェクション成形機に投入して射出成形すれば、真空吸着ノズル1となる成形体が得られる。このとき、得られた成形体には通常は射出成形したときの余分な原料が冷えて固まったランナが付随しているので、脱脂する前に切断しておく。
炭化珪素の焼成条件としては、真空雰囲気中またはアルゴンやヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中で焼成すればよく、最高温度は1900〜2200℃とし、最高温度での保持時間を1〜5時間とすればよい。
さらにまた、本発明における真空吸着ノズル1を構成するセラミックスとして、安定化剤を含むジルコニア,アルミナなどを用いる場合には、導電性付与材としては、酸化鉄,酸化コバルト,酸化クロムおよび酸化ニッケルの少なくとも1種か、または炭化チタンや窒化チタンを含むものを用いることができる。
例えば、安定化剤としてイットリアを含むジルコニアを65質量%に対して酸化鉄を35質量%の割合で混合し、この原料をボールミルに投入して所定の粒度まで粉砕してスラリーを作製し、スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥して顆粒を形成し、インジェクション成形機に投入して前述と同様の方法で射出成形すれば、真空吸着ノズル1となる成形体が得られる。
ここで、ジルコニア,アルミナの焼成条件としては、導電性付与材が酸化鉄,酸化コバルト,酸化クロムおよび酸化ニッケルの少なくとも1種の場合には、大気雰囲気中での焼成で最高温度を1300〜1500℃の範囲として、最高温度での保持時間を1〜5時間とすればよい。また、導電性付与材が炭化チタンの場合には、最高温度を1400〜1800℃の範囲として、最高温度での保持時間を1〜5時間とし、真空雰囲気中またはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で焼成すればよい。また、導電性付与材が窒化チタンの場合には、これら真空雰囲気中または不活性雰囲気中に加えて、窒素ガス雰囲気中で焼成してもよい。これにより、セラミックス製の真空吸着ノズル1に適度な導電性を付与することができる。
次に、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11との接着方法について説明する。
図8は、本発明の真空吸着ノズル組み立て体の真空吸着ノズルの後端とフランジの受け部との間を電気的に導通させるための導電性フィラーの例を模式的に示す、(a)は真空吸着ノズルの後端とフランジの受け部の接着部に1個の導電性フィラーが絶縁性接着剤とともに接着されている断面図であり、(b)は接着部にそれぞれ1個の金属フィラーと金属フィラーよりも大きい金属被覆樹脂フィラーが絶縁性接着剤とともに接着されている断面図であり、(c)は接着部に硬度の高い金属フィラーとこれよりも硬度は低いが大きさの大きい金属フィラーが絶縁性接着剤とがともに接着されている断面図である。
まず、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11とを接着するのに用いる導電性フィラー101は、少なくとも半導電性セラミックスからなる真空吸着ノズル1よりも電気抵抗が低いことが肝要である。
図9は本発明の真空吸着ノズル組み立て体の真空吸着ノズルとフランジの接着部の強度の測定法を示す断面図であり、フランジ10の吸引孔12の中に直径が4mmの接触子105を挿入し、速度0.1mm/秒で押圧し、接着部13においてフランジ10から真空吸着ノズル1が破断するときの荷重を測定して、強度(N)に換算した。なお、測定装置は、アイコーエンジニアリング製デジタル荷重測定機1840を使用した。
ここで、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11とを接着させるために用いる絶縁性接着剤104の成分は、ビスフェノール型A型エポキシ樹脂を用いるとよいが、これに限らず、ビスフェノールF,フェノールノボラックとエピクロルヒドリンとの反応で得られたポリグリシジルエーテル,ビニルシクロヘキシンジオキシド,ジシクロペンタジエンオキシド等の、通常、エポキシ樹脂の希釈剤として用いるものであれば使用できる。
さらに、絶縁性接着剤104は、1液性で熱硬化方式のものをここでは用いるが、特にこれに限定するものではなく、ウレタン系,シリコン系,アクリル系等の他の2液硬化性のものであっても構わない。
また、導電性フィラー101と絶縁性接着剤104とを用いて真空吸着ノズル1の後端6(6a,6b,6c)とフランジ10の受け部11とを接着する方法としては、予め絶縁性接着剤104と導電性フィラー101とを調合して混合したものを、例えば真空吸着ノズル1の後端6に塗布した後、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11を嵌合して加圧しながら接着すればよい。このとき、絶縁性接着剤104と導電性フィラー101とを調合して混合したものは、フランジ10の受け部11側に塗布してもよく、後端6と受け部11との両方に塗布してもよい。また、塗布の方法は一般的な接着剤を塗布する方法を用いればよい。なお、用いる導電性フィラー101の量が少ない場合には、先に絶縁性接着剤104を塗布した後に導電性フィラー101を添加してもよい。このようにして接着した後、絶縁性接着剤104を常温で硬化させればよく、必要であれば接着部13を約150℃で約30分加熱することで接着部13の熱硬化を促進させて硬化させてもよい。
以下、本発明の実施例を説明する。
まず、セラミックスの主成分として炭化珪素を選択し、焼結助剤としてアルミナを、導電性付与材としてカーボンをそれぞれ表1に示す試料No.1,16の割合で混合して、水を加えてボールミルで粉砕・混合してスラリーを作製し、これらのスラリーをスプレードライヤーを用いて噴霧乾燥し、顆粒を作製した。そして、この顆粒100質量部に対してエチレン酢酸ビニル共重合体,ポリスチレン,アクリル系樹脂を合計20質量部加えてニーダに投入し、約150℃の温度に保ちながら混練して坏土を作製した。次に、得られた坏土をペレタイザーに投入してインジェクション成形用の原料となるペレットを作製した。そして、このペレットを公知のインジェクション成形機に投入し、図1に示す真空吸着用ノズル1とフランジ10となる成形体をそれぞれ作製した。
次に、これらの成形体を窒素雰囲気の乾燥機に入れて乾燥した後、公知のアルゴン雰囲気の焼成方法で最高温度を1900〜2200℃とし、最高温度での保持時間を1〜5時間として焼成し焼結体とした。
次に、セラミックスの主成分としてアルミナ,安定化剤としてイットリアを3モル%含むジルコニアを選択し、導電性付与材として酸化鉄,酸化コバルト,酸化クロム,酸化ニッケル,炭化チタンを選択し、さらに焼結助剤をそれぞれセラミックスの全体量に対して表1の2〜15に示すような割合で添加した原料を各々秤量して、これらに水を加えてボールミルで粉砕・混合してスラリーを作製し、これらのスラリーをスプレードライヤーを用いて噴霧乾燥し、それぞれの顆粒を作製した。なお、アルミナの焼結助剤としてはマグネシア,カルシア,チタニア,ジルコニアなどを適宜添加した。
そして、上述したインジェクション成形方法で真空吸着ノズル1とフランジ10の成形体をそれぞれ作製し、これらの成形体を乾燥機に入れて乾燥した後、公知の一般的なセラミックスの焼成方法を用いて焼結体とした。このとき、導電性付与材が酸化鉄,酸化コバルト,酸化クロムおよび酸化ニッケルの少なくとも1種の場合には、酸化雰囲気である大気雰囲気中での焼成で最高温度を1300〜1500℃の範囲とし、最高温度での保持時間を1〜5時間として、また導電性付与材が炭化チタンの場合には、非酸化雰囲気であるアルゴン雰囲気仲での焼成で最高温度を1400〜1800℃の範囲とし、最高温度での保持時間を1〜5時間として、それぞれ焼成して焼結体とした。
次に、得られた真空吸着用ノズル1の焼結体のうち、試料No.1〜8,10,11,15,16については、図3に示す頭部6の6b,6cを焼き肌面8とし、頭部6の6aを研削加工して研削面9とした。また、試料No.9,12,13については、頭部6の6a,6b,6cを全て研削加工して研削面9とした。また、試料No.14については、頭部6の6a,6b,6cを全て研削加工せず焼き肌面8とした。また、フランジ10の試料焼結体のうちNo.1〜16のうち、No.14以外は、真空吸着ノズル1と接着する部位を全て研削面に加工した。
そして、真空吸着ノズル1の円筒部5の寸法が長さが3.2mm,外径が0.7mm,内径が0.4mmであり、円筒部5の肉厚が0.15mmとなるように作製した。
なお、表1の試料No.15,16は、真空吸着ノズル1のみをジルコニアまたは炭化珪素を主成分とし、フランジ10についてはともにステンレスを用いているので、導電性付与材と焼結助剤の項目は真空吸着ノズル1のジルコニアまたは炭化珪素を主成分とした場合の値を示している。
準備した試料について表1に示す。
次に、表1に示す真空吸着ノズル1とフランジ10とを用いて、導電性フィラーの種別,導電性フィラーの材質,導電性フィラーの個数,絶縁性接着材の有無,接着時の加圧力,導電性フィラーが押し潰されているかの有無および導電性フィラーの大きさについて、各々表2に示す様な各試料を作製した。
真空吸着ノズル1の頭部6とフランジ10の受け部11の接着は次の方法により行なった。絶縁性接着剤104にはビスフェノールF型A型エポキシ樹脂を用い、導電性フィラー101については、真空吸着ノズル1の後端6(6a,6b,6c)に絶縁性接着剤104を先に滴下してから、顕微鏡を使用して導電性フィラー101の個数を確認しながら接着した。なお、真空吸着ノズル1とフランジ10との接着時の加圧力は、金属フィラー102の場合には0.1〜0.25MPaとし、金属被覆樹脂フィラー103の場合には0.05〜0.12MPaとした。この加圧力であれば、本実施例に用いた金属フィラー102および金属被覆樹脂フィラー103についてはともにある程度押し潰されて変形が生じるものの、金属被覆樹脂フィラー103については金属層103aの被覆が破れてしまって電気的な導通不良の発生率が高くなる程の高い加圧力ではない。
また、絶縁性接着剤104の付与後には、接着部13を約150℃で約30分加熱して、接着部13の熱硬化を促進した。
ここで、金属被覆樹脂フィラー103の金属層103aの膜厚は0.10μmとした。また、導電性フィラー101の形状は球状で、その粒径は90%積算粒径分布d90(μm)で表した積算粒径分布d90の値の母集団の中から抽出したものである。なお、試料数は各試料No.毎に1000個とした。
導電性フィラー101として金属フィラー102または金属被覆樹脂フィラー103のいずれか1種を用いたものが試料No.1−1〜9−1、11−1〜16−2であり、試料No.10−1は、導電性フィラー101を使用せずに絶縁性接着剤104のみで接着したものである。
次に、評価方法について説明する。
これらの真空吸着ノズル組み立て体7の試料を電子部品装着機14に取り付けて0603タイプ(寸法が0.6mm×0.3mm)の電子部品15の真空吸着テストを行ない、電子部品15の吹き飛び、および電子部品15の静電破壊について調べた。このとき、隣接する電子部品15の間隔は最小で0.1mmとした。
まず、電子部品15の吹き飛びについては、電子部品装着機14を稼動させて2000万個の吸着を行ない、ダミー基板上に電子部品15を実装してその個数を数えることで、電子部品15の吹き飛びの個数を確認した。吹き飛んだ数が3個以下のときは◎、4〜10個のときは○と記入した。また、電子部品15の吹き飛んだ数が11個以上のときは、従来と差がないか、または従来より劣るので、不合格として×と記入した。
また、電子部品15の静電破壊については、電子部品装着機14を稼動させて2000万個の吸着を行ない、回路を形成したダミー基板上に電子部品15を実装し、ダミー基板の通電試験を行なって電子部品15を実装した回路基板が通電するか否かの確認をするという方法で、電子部品15の静電破壊の有無を確認した。今回の試験では、1枚のダミー基板に100個の電子部品15を実装して、一般に使用される回路の導通試験機を用いてダミー基板毎に導通試験を実施して、問題のあったダミー基板についてのみさらに個別に実装した電子部品15の導通試験を実施して良否の判断を行ない、静電破壊した個数を数えた。その結果、静電破壊した個数が3個以下のときは◎、4〜10個のときは○とし、11個以上のときは、従来と差がないか従来より劣るので、不合格として×とした。
次に、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端6との間の抵抗値の測定については、図7を用いて前述した通りであり、真空吸着ノズル1の先端となる吸着面2に一方の電極60を接触させ、フランジ10の後端となる凸部21の端面に他方の電極60を接触させ、フランジ10の後端となる凸部21の端面に他方の電極60を接触させた状態で、これら電極60・60に、HIOKI製SM−8220表面抵抗測定器を接続して電圧を加えて、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端との間の抵抗値を測定した。
また、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端6との間の導通不良の発生率の評価は、同一の試料を各1000個作製して前述の抵抗値の測定と同様に抵抗値の測定を行ない、その評価は、抵抗値が1012Ω以上となるものを導通不良として、導通不良の発生率が0%のときは優とし、0.1〜0.3%のときは良とし、0.4〜0.6%のときは可とし、0.7%以上のときは不可とした。
次に、本発明の真空吸着ノズル組み立て体7の真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端6との間の強度の測定法については、図9を用いて前述した通りであり、フランジ10の吸引孔12の中に接触子105を挿入し、速度0.1mm/秒で押圧し、接着部13においてフランジ10から真空吸着ノズル1が破断するときの荷重を測定して、強度(N)に換算した。なお、測定装置はアイコーエンジニアリング製デジタル荷重測定機1840を使用し、試料数は各100個であった。
次に、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端6との間の接着の際に真空吸着ノズル1またはフランジ10に加える加圧力によるクラックやカケの発生が無いかの検査をした。試料数はいずれも各1000個で、目視で確認できるレベルのものを不良とし、クラックまたはカケの発生率が0%のときは優とし、0.1〜0.3%のときは良とし、0.4〜0.6%のときは可とし、0.7%以上のときは不可とした。これらの不良は、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11とを接着する際に、真空吸着ノズル1は強度的に最も弱い先端部である円筒部5を治具で保持するために、この部分に発生が集中することから、その場所を検査した。
次に、前述した真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端6との間の導通不良の発生率において、接着時の加圧力が影響することが判明したため、接着後の真空吸着ノズル組み立て体7の種々の評価を終えた後に、それぞれの各試料10個について、導電性フィラー101の状態を調査した。調査方法は接着された真空吸着ノズル組み立て体7を、レーザ加工にて軸方向にほぼ二分割した後に、分割した一方の接着部13の導電性フィラー101の潰れの有無、ならびに、図5(b)に示す真空吸着ノズル組み立て体の軸方向に平行な方向の長さLおよび軸方向に垂直な方向の長さDの測定を行なった。この測定は、接着部13に金蒸着してSEM(走査型電子顕微鏡)で観察して行なった。なお、導電性フィラー101の長さDに対する長さLのアスペクト比L/Dの範囲が0.98を超えて1.02未満の場合には導電性フィラー101に潰れはないと判断し、この数値範囲以上のアスペクト比のものは潰れがあると判断した。
なお、いずれも各試料の測定値は平均値とした。また、総合評価は、導通不良,クラックやカケ,静電破壊および吸着物の吹き飛びのいずれかの評価のうち一番下位の評価を用いた。
得られた結果を表3に示す。
表3に示す結果から、電子部品15の吹き飛びおよび静電破壊については、本発明の真空吸着ノズル組み立て体7の真空吸着ノズル1とフランジ10とを導電性フィラー101を介して導通している試料No.1−1〜2−2,4−1〜9−1,14−1〜16−2は、電子部品15の吹き飛びおよび静電破壊が2000万個中で10個以内であることが分かる。これに対して、比較例である真空吸着ノズル1とフランジ10との間で導電性フィラーを介していない試料No.3−1,3−2,10−1〜13−2では電子部品15の吹き飛びおよび静電破壊が2000万個中で11個以上であったことから、本発明の実施例は比較例よりも良好であったことが分かる。すなわち、本発明の実施例である試料No.1−1〜2−2,4−1〜9−1,14−1〜16−2の真空吸着組み立て体7は、真空吸着ノズル1とフランジ10とが導電性フィラー101を介して導通していることから、先端と後端との間の抵抗値が103〜1011Ωになり、真空吸着ノズル1に静電気が発生しても適切に除電することができ、電子部品15が静電気で反発して吹き飛んだり静電破壊したりすることが抑制できることが分かる。
このことから、導電性フィラー101として金属フィラー102もしくは金属被覆樹脂フィラー103のいずれかを用いた試料においては、電子部品15の吹き飛びおよび静電破壊が2000万個中で10個以内であり、導電性フィラー101は、金属フィラー102および金属被覆樹脂フィラー103の少なくとも一方であれば真空吸着ノズル1に静電気が発生しても適切に除電することができ、電子部品15が静電気で反発して吹き飛んだり静電破壊したりすることが抑制できることが分かる。
これに対し、本発明の比較例である試料No.10−1の真空吸着組み立て体7は、真空吸着ノズル1とフランジ10とを導電性フィラー101を介して導通していないことから、また、試料No.3−1,3−2,11−1〜13−2は、初めから真空吸着ノズル1およびフランジ10の抵抗値が真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端との間の抵抗値の1011Ωを超えているため、帯電しやすく、電子部品15が静電気で反発して吹き飛びが2000万個中で11個以上あり、従来品と比較して差がなかった。
また、本発明の比較例である試料No.11−1,11−2は、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端との間の抵抗値が103Ω未満であるため放電しやすく、電子部品15の静電破壊が2000万個中で11個以上であり、従来品と比較して劣っていた。
次に、接着後の真空吸着ノズル組み立て体7において、導電性フィラー101が押し潰されているかの有無と、真空吸着ノズル1の治具にて保持される円筒部5のクラックまたはカケの発生率との関係、および導電性フィラー101が押し潰されているかの有無と、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端との導通不良の発生率との関係については、次のようであった。まず、導電性フィラー101が押し潰されているかの有無とクラックまたはカケの発生率との関係については、試料No.6−11〜6−13,6−21〜6−23では、接着部13に介在した導電性フィラー101は長さLに対して長さDが短く、押し潰された形状であった。また、その他の本発明の真空吸着ノズル組み立て体7の試料では、長さDと長さLの差がなく、押し潰されていなかった。この押し潰されている試料No.6−11〜6−13,6−21〜6−23は、クラックまたはカケの発生率は金属フィラー102の試料で0.1〜0.3%もしくは0.4〜0.6%と、良もしくは可の判定であった。また、金属被覆樹脂フィラー103を用いたものでは、0%もしくは0.1〜0.3%であり、判定は優もしくは良であった。一方、導電性フィラー101が押し潰されていない試料では、全てクラックまたはカケの発生率は0%であり、判定は優であった。
次に、導電性フィラー101が押し潰されているかの有無と真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端との導通不良の発生率との関係については、試料No.6−11〜6−13,6−21〜6−23では、接着部13に介在した導電性フィラー101が長さLに対し長さDが短く、押し潰された形状であった。また、その他の本発明の真空吸着ノズル組み立て体7の試料では、長さDと長さLとの差がなく、押し潰されていなかった。押し潰されている試料の導通不良は0.2%以下と良好な結果であった。一方、導電性フィラー101が押し潰されていない試料の導通不良は0.4%以上であった。
以上のことから、導電性フィラー101が押し潰されている試料は、押し潰されていない試料に比べると、クラックまたはカケの発生は僅かに劣るものの、導通不良は、押し潰されている試料は0.2%以下と良好な結果であるのに対して、押し潰されていない試料は0.4〜0.5%であることから、真空吸着ノズル1の静電気対策として重要である電気的な導通のことを考えると、導電性フィラー101は押し潰されていることが好ましく、さらには、真空吸着ノズル組み立て体7の軸方向に平行な方向の長さLが、垂直な方向の長さDよりも短いことが好ましいことが分かる。
次に、真空吸着ノズル組み立て体7の軸方向に平行な方向の長さLと垂直な方向の長さDとのアスペクト比L/Dと、導通不良の発生率ならびにクラックまたはカケの発生率との関係については、アスペクト比L/Dが0.50〜0.98である試料No.6−11,6−12と6−21,6−22は、導通不良はいずれも0%で良好な結果であった。クラックまたはカケの発生率は、試料No.6−11,6−12は0.1,0.2%と僅かに不良の発生が見られた。試料No.6−21,6−22は0%と良好な結果であった。
しかし、アスペクト比L/Dが0.98を超える試料No.6−1,6−2は、クラックまたはカケの発生率は0%で良好であるものの、導通不良は0.5,0.4%とやや高かった。これは、接着時に導電性フィラー101に加圧力がかからなかったか、もしくは僅かに加圧力がかかったものの絶縁性接着剤104の硬化時に絶縁性接着剤104の収縮に対して導電性フィラー101の熱収縮の方が上回り、一部に導通不良の発生があったと考えられる。
また、アスペクト比L/Dが0.50未満の試料No.6−13は、クラックまたはカケの発生率は0.6%とやや高かったものの、導通不良の発生率は0%と良好であり、試料No.6−23は、クラックまたはカケの発生率は0.1%で、導通不良の発生率も0.2%と、いずれも僅かに不良の発生が見られた。導電性フィラー101が金属フィラー102の場合には、加圧力を大きくすることにより導通不良は0%にすることができるが、加圧力が高いためにクラックまたはカケの発生の原因になる傾向があった。一方、金属被覆樹脂フィラー103の場合においては、加圧力そのものがさほど高くないことから、クラックまたはカケの発生は低いが、金属の被覆の破れが一部に見られ、後端6および受け部11と接触する金属被覆樹脂フィラー103の両極部の導通が取りにくくなり、導通不良が発生しやすい傾向があった。
これらの結果から、導電性フィラー101(102,103)の真空吸着ノズル組み立て体7の軸方向に平行な方向の長さDと垂直な方向の長さLとのアスペクト比L/Dは、0.50〜0.98であることが、真空吸着ノズル1の静電気対策として重要である電気的な導通のことを考えるとより好ましいことが分かる。
次に、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端の間の抵抗値と、本発明の真空吸着ノズル組み立て体7の真空吸着ノズル1とフランジ10の接着部の強度については、試料No.1−1〜8−7,11−1,11−2,15−1,15−2,16−1,16−2の図3に示す頭部6の6b,6cを焼き肌面8とし、頭部6の6aを研削加工して研削面9とした試料と、試料No.9−1,12−1,13−1,13−2の頭部6の6a,6b,6cを全て研削加工して研削面9とした試料と、試料No.14−1,14−2の、頭部6の6a,6b,6cを全て研削加工せず焼き肌面8とした試料とでは、試料No.1−1〜8−7,11−1,11−2,15−1,15−2,16−1,16−2の頭部6の6b,6cを焼き肌面8とし、頭部6の6aを研削加工して研削面9とした試料は、接着強度が800Nであり十分な強度があって、さらに、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端との抵抗値が、真空吸着ノズル1およびフランジ10との各々単独の抵抗値と差がなく、十分に導通していることが分かる。
これに対して、試料No.9−1,12−1,13−1,13−2の頭部6の6a,6b,6cを全て研削加工して研削面9とした試料は、接着強度が800Nで十分な強度があるものの、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端との間の抵抗値が真空吸着ノズル1およびフランジ10の各々単独の抵抗値と差があり、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端との間の抵抗値の方が大きくなっていることが分かる。また試料No.14−1,14−2の、頭部6の6a,6b,6cを全て研削加工せず焼き肌面8とした試料では、接着強度が300Nでその他の試料より接着強度が弱いものの、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端との抵抗値が真空吸着ノズル1およびフランジ10との各々単独の抵抗値と差がなく十分に導通していることが分かる。以上のことから、真空吸着ノズル組み立て体7は、頭部6と受け部11との接着部13が、セラミックスの焼き肌面8が接着された部位と研削面が接着された部位とからなるときには、焼き肌面8には導電性付与材の層が電気的な導通を得やすく、また、セラミックスの研削面はアンカー効果の役目を果たす研削傷が残るので高い接着強度が得られることにより確実に電気的な導通と強固な接着が得られる。
また、導電性フィラー101が真空吸着ノズル1の頭部6と受け部11との間に少なくとも1個配置されている試料No.1−1〜8−7,10−1〜16−2は、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端との間の抵抗値が真空吸着ノズル1とフランジ10との各単独の抵抗値と同一またはほとんど変わっていないことが分かる。これに対して、試料No.10−1は、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端との間の抵抗値が真空吸着ノズル1およびフランジ10の各々単独の抵抗値よりかなり高くなっていることが分かる。すなわち、導電性フィラー101が真空吸着ノズル1の頭部6と受け部11との間に少なくとも1個配置されていることによって、抵抗値の上昇を抑制できることが分かる。
次に、接着部13の強度については、接着部13に導電性フィラー101が絶縁性接着剤104および導電性フィラー101の体積総量を100としたときの導電性フィラー101の割合が9%以下である試料No.1−1〜8−5,9−1〜16−2は、接着部13の強度が300N以上あることが分かる。これに対して、導電性フィラー101の割合が9.5%以上である試料No.8−6,8−7は、接着部13の強度が300N未満であることが分かる。
すなわち、導電性フィラー101の割合が0.004〜9%である場合には、真空吸着ノズル組み立て体7を使用する上で必要な強度である300N以上が得られる。
次に、表1に示す試料No.6,9を用いて、接着部の厚みと接着後の真空吸着ノズル組み立て体7の寸法精度との関係を調査した。このときの導電性フィラー101には実施例1に用いたものと同じ材質のものを用いて、この導電性フィラー101の積算粒径分布d90を4〜50μmまで変更したものを各々10個使用した。そして、絶縁性接着剤104および加圧方法は実施例1と同様に行なって接着した。
また、接着する際に真空吸着ノズル1の円筒部5の先端を治具に固定して垂直に立て、フランジ10も別の治具で保持して、後端6と受け部11とを勘合して加圧しながら接着した。
次に、接着後の真空吸着ノズル組み立て体7を用いて、導通不良,接着部の強度ならびに電子部品の静電破壊および吸着物の吹き飛びの各項目について、実施例1と同様の評価方法で評価を行なった。また、真空吸着ノズル1の吸着面2の傾きθについては、各試料10個について、工具顕微鏡を用いて、真空吸着ノズル組み立て体7の軸方向の中心線Yに対する垂線Xと、吸着面2の延長線Zとの角度の差を傾きθとした。さらに、接着部13の厚みtの最大値t1、最小値t2および導電性フィラー101の潰れの有無については、測定用試料の作製方法は実施例1と同様に行ない、SEM写真から算出した。
得られた結果を表4に示す。
表4に示す結果から、電子部品15の吹き飛びおよび静電破壊については、いずれの試料も2000万個中10個以内か0個であり、導通不良の発生率も、1000個測定したところ0.6%以内であった。また、接着部13の強度は360〜800Nであり、真空吸着ノズル1の吸着面2の傾きθは0.005〜0.1°と、いずれも実際に使用する上では問題のない結果であった。
しかしながら、接着後の接着部13の厚みtの最大値t1が50μmを超え、最小値t2との差が45μmを超える試料No.6−20,6−29は、接着部13の強度が360Nと実際に使用する上では問題はないもののやや低下していた。これは、接着部13の厚みtが大きいことが強度の低下になったと考えられる。さらに、導電性フィラー101に潰れが見られず、導通不良の発生率や吸着物の吹き飛びは4〜10個であり、判定は○で最良ではなかった。これは、接着部13の厚みtの差が大きいことから、導電性フィラー101が加圧時に厚みの大きい方に逃げて押し潰されず、一部に導通不良の発生が見られたことが考えられる。
また、接着部13の厚みtの最小値t2が5μm未満で最大値t1との差が10μm未満の試料No.9−15は、接着部13の強度は高いものの、導電性フィラー101に潰れが見られず、導通不良の発生率や吸着物の吹き飛びも4〜10個であり、判定は○で最良ではなかった。これは、導電性フィラー101に均等に加圧力がかかったため、特に一部の導電性フィラー101が押し潰される現象が生じなかったためと見られる。さらに、真空吸着ノズル1の吸着面2の傾きθが0.1°と、実施例の中では大きな値となった。これは、接着部13のクリアランス22が狭く、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10との調整代が小さかったためと考えられる。
また、接着部13の厚みtが5〜50μmの範囲内で、その差が10μm未満の試料No.6−15は、導電性フィラー101も潰れがなく、導通不良の発生率および吸着物の吹き飛びは4〜10個であり、判定は最良ではなく○であった。これは、導電性フィラー101に加圧力が均等にかかったために、導電性フィラー101が押し潰されずに、導通不良の発生が一部にあったことが考えられる。
以上の結果から、接着部13の厚みtが5〜50μmの範囲であって、かつ、最大値t1と最小値t2との差が10〜45μmの範囲内である試料No.6−16〜6−19,6−25〜6−28は、一部の導電性フィラー101に接着時の加圧力がかかるため、押し潰された状態となった。その結果、導通不良の発生率も低く、吸着物の吹き飛びの発生も見られなかった。さらに、接着部13の厚みtが厚すぎないことから、接着部の強度の低下もなかった。さらに、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10の受け部11との隙間であるクリアランス22により、真空吸着ノズル1の後端6とフランジ10との調整代が十分にとれ、後端6とフランジ10の受け部との傾きの調整をできたことから、真空吸着ノズル組み立て体7における真空吸着ノズル1の吸着面2の傾きθを0.1°以内とすることができた。
次に、表1に示す真空吸着ノズル1とフランジ10とを用いて、導電性フィラー101の個数および大きさについて、または金属被覆樹脂フィルター103の場合は樹脂103bの材質について、さらに、絶縁性接着剤104の成分ならびに絶縁性接着剤104と導電性フィラー101の割合(%)について、各々表2に示す様な各試料を作製した。
真空吸着ノズル1の頭部6とフランジ10の受け部11の接着は次の方法により行なった。絶縁性接着剤104にはビスフェノールF型A型エポキシ樹脂を用い、導電性フィラー101の個数が1個の場合には、真空吸着ノズル1の頭部6(6a,6b,6c)に絶縁性接着剤104を先に滴下してから顕微鏡を使用して個数を確認しながら導電性フィラー101を入れて接着した。また、導電性フィラー101が100個以上の場合には、絶縁性接着剤104と導電性フィラー101とを所定の割合となるように絶縁性接着剤104の体積を100としたときの導電性フィラー104の体積の割合を事前に設定して調合したものを用いた。このときの接着剤の使用量はディスペンサーで調整して接着した。
また、接着剤の付与後には、接着部13を約150℃で約30分加熱して接着部13の熱硬化を促進した。
ここで金属被覆樹脂フィラー103の金属層103aの膜厚は0.10μmとし、また、導電性フィラー101は球状で、その粒径は90%積算粒径分布d90(μm)で表した。なお、導電性フィラー101の個数が1個の場合においても、積算粒径分布d90の値の母集団の中から抽出したものである。なお、試料数は各試料No.毎に200個とした。
導電性フィラー101を金属フィラー102または金属被覆樹脂フィラー103をいずれか1個用いたものが試料No.1−1〜8−2,9−1,11−1〜16−2であり、試料No.8−3は、金属フィラー102を約1000個と金属被覆樹脂フィラー103を約100個用いたものであり、試料No.8−3は、金属フィラー102を約1000個と金属被覆樹脂フィラー103を約100個用いたものであり、試料No.8−4は、金属フィラー102を約100個と金属被覆樹脂フィラー103を約1000個用いたものであり、試料No.8−5は、金属フィラー102を約20000個と金属被覆樹脂フィラー103を約100個用いたものであり、試料No.8−6は、金属フィラー102を約22000個と金属被覆樹脂フィラー103を約100個用いたものであり、試料No.8−7は、金属フィラー102を約30000個と金属被覆樹脂フィラー103を約100個用いたものであり、試料No.8−9は、金属フィラー102を1個と金属被覆樹脂フィラー103を1個用いたものである。また、試料No.10−1は絶縁性接着剤104のみで接着したものである。
なお、真空吸着ノズル1とフランジ10との接着時の加圧力は、金属フィラー102のときには0.1MPaとし、金属被覆樹脂フィラー103のときには0.05MPaとした。この加圧力であれば、本実施例に用いた金属フィラー102および金属被覆樹脂フィラー103ともに、ある程度の変形が生じるものの、金属被覆樹脂フィラー103については金属層103aの被覆が破れてしまう程の高い加圧力ではない。
次に、評価方法について説明する。
これらの真空吸着ノズル組み立て体7の試料を電子部品装着機14に取り付けて0603タイプ(寸法が0.6mm×0.3mm)の電子部品15の真空吸着テストを行ない、電子部品15の吹き飛び、および電子部品15の静電破壊について調べた。このとき、隣接する電子部品15の間隔は最小で0.1mmとした。
まず、電子部品15の吹き飛びについては、電子部品装着機14を稼動させて2000万個の吸着を行ない、ダミー基板上に電子部品15を実装してその個数を数えることで、電子部品15の吹き飛びの個数を確認した。吹き飛んだ数が3個以下のときは◎、4〜10個のときは○と記入した。また、電子部品15の吹き飛んだ数が11個以上のときは、従来と差がないか、または、従来より劣るので、不合格として×と記入した。
また、電子部品15の静電破壊については、電子部品装着機14を稼動させて2000万個の吸着を行ない、回路を形成したダミー基板上に電子部品15を実装し、ダミー基板の通電試験を行なって電子部品15を実装した回路基板が通電するか否かの確認をするという方法で、電子部品15の静電破壊の有無を確認した。今回の試験では、1枚のダミー基板に100個の電子部品15を実装して、一般に使用される回路の導通試験機を用いてダミー基板毎に導通試験を実施して、問題のあったダミー基板についてのみさらに個別に実装した電子部品15の導通試験を実施して良否の判断を行ない、静電破壊した個数を数えた。その結果、静電破壊した個数が3個以下のときは◎、4〜10個のときは○とし、11個以上のときは、従来と差がないか従来より劣るので、不合格として×とした。
次に、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端6との間の抵抗値の測定については、図7を用いて前述した通りであり、真空吸着ノズル1の先端となる吸着面2に一方の電極60を接触させ、フランジ10の後端となる凸部21の端面に他方の電極60を接触させ、フランジ10の後端となる凸部21の端面に他方の電極60を接触させた状態で、これら電極60・60に、HIOKI製SM−8220表面抵抗測定器を接続して電圧を加えて、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端との間の抵抗値を測定した。
次に、本発明の真空吸着ノズル組み立て体7の真空吸着ノズル1とフランジ10との接着部13の強度の測定法については、図7を用いて前述した通りであり、フランジ10の吸引孔12の中に接触子105を挿入し、速度0.1mm/秒で押圧し、接着部13においてフランジ10から真空吸着ノズル1が破断するときの荷重を測定して、強度(N)に換算した。なお、測定装置はアイコーエンジニアリング製デジタル荷重測定機1840を使用した。なお、抵抗値および強度の値は各試料とも平均値である。
得られた結果を表5に示す。
表5に示す結果から、電子部品15の吹き飛びおよび静電破壊については、本発明の真空吸着ノズル組み立て体7の真空吸着ノズル1とフランジ10とを導電性フィラー101を介して導通している試料No.1−1〜2−2,4−1〜9−1,14−1〜16−2は、電子部品15の吹き飛びおよび静電破壊が2000万個中で10個以内であることが分かる。これに対して、比較例である真空吸着ノズル1とフランジ10との間で導電性フィラーを介していない試料No.3−1,3−2,10−1〜13−2では電子部品15の吹き飛びおよび静電破壊が2000万個中で11個以上であったことから、本発明の実施例は比較例よりも良好であったことが分かる。すなわち、本発明の実施例である試料No.1−1〜2−2,4−1〜9−1,14−1〜16−2では、真空吸着組み立て体7は、真空吸着ノズル1とフランジ10とが導電性フィラー101を介して導通していることから、先端と後端との間の抵抗値が103〜1011Ωになり、真空吸着ノズル1に静電気が発生しても適切に除電することができ、電子部品15が静電気で反発して吹き飛んだり静電破壊したりすることが抑制できることが分かる。
また、導電性フィラー101として金属フィラー102を用いた試料No.8−1と、導電性フィラー101として金属被覆樹脂フィラー103を用いた試料No.8−2と、導電性フィラー101として金属フィラー102と金属被覆樹脂フィラー103とを用いた試料No.8−9とは、電子部品15の吹き飛びおよび静電破壊が2000万個中で10個以内であり、導電性フィラー101は、金属フィラー102および金属被覆樹脂フィラー103の少なくとも一方であれば真空吸着ノズル1に静電気が発生しても適切に除電することができ、電子部品15が静電気で反発して吹き飛んだり静電破壊したりすることが抑制できることが分かる。
これに対し、本発明の比較例である試料No.10-1の真空吸着組み立て体7は、真空吸着ノズル1とフランジ10とを導電性フィラー101を介して導通していないことから、また、試料No.3−1,3−2,11−1〜13−2は、初めから真空吸着ノズル1およびフランジ10の抵抗値が真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端との間の抵抗値の1011Ωを超えているため、帯電しやすく、電子部品15が静電気で反発して吹き飛びが2000万個中で11個以上あり、従来品と比較して差がなかった。
また、本発明の比較例である試料No.11−1,11−2は、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端との間の抵抗値が103Ω未満であるため放電しやすく、電子部品15の静電破壊が2000万個中で11個以上であり、従来品と比較して劣っていた。
次に、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端の間の抵抗値と、本発明の真空吸着ノズル組み立て体7の真空吸着ノズル1とフランジ10の接着部の強度については、試料No.1−1〜8−7,11−1,11−2,15−1,15−2,16−1,16−2の図3に示す頭部6の6b,6cを焼き肌面8とし、頭部6の6aを研削加工して研削面9とした試料と、試料No.9−1,12−1,13−1,13−2の頭部6の6a,6b,6cを全て研削加工して研削面9とした試料と、試料No.14−1,14−2の、頭部6の6a,6b,6cを全て研削加工せず焼き肌面8とした試料とでは、試料No.1−1〜8−7,11−1,11−2,15−1,15−2,16−1,16−2の頭部6の6b,6cを焼き肌面8とし、頭部6の6aを研削加工して研削面9とした試料は、接着強度が800Nであり十分な強度があって、さらに、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端との抵抗値が、真空吸着ノズル1およびフランジ10との各々単独の抵抗値と差がなく、十分に導通していることが分かる。
これに対して、試料No.9−1,12−1,13−1,13−2の頭部6の6a,6b,6cを全て研削加工して研削面9とした試料は、接着強度が800Nで十分な強度があるものの、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端との間の抵抗値が真空吸着ノズル1およびフランジ10の各々単独の抵抗値と差があり、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端との間の抵抗値の方が大きくなっていることが分かる。また試料No.14−1,14−2の、頭部6の6a,6b,6cを全て研削加工せず焼き肌面8とした試料では、接着強度が300Nでその他の試料より接着強度が弱いものの、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端との抵抗値が真空吸着ノズル1およびフランジ10との各々単独の抵抗値と差がなく十分に導通していることが分かる。以上のことから、真空吸着ノズル組み立て体7は、頭部6と受け部11との接着部13が、セラミックスの焼き肌面8が接着された部位と研削面が接着された部位とからなるときには、焼き肌面8には導電性付与材の層が電気的な導通を得やすく、また、セラミックスの研削面はアンカー効果の役目を果たす研削傷が残るので高い接着強度が得られることにより確実に電気的な導通と強固な接着が得られる。
また、導電性フィラー101が真空吸着ノズル1の頭部6と受け部11との間に少なくとも1個配置されている試料No.1−1〜8−7,10−1〜16−2は、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端との間の抵抗値が真空吸着ノズル1とフランジ10との各単独の抵抗値と同一またはほとんど変わっていないことが分かる。これに対して、試料No.10−1は、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端との間の抵抗値が真空吸着ノズル1およびフランジ10の各々単独の抵抗値よりかなり高くなっていることが分かる。すなわち、導電性フィラー101が真空吸着ノズル1の頭部6と受け部11との間に少なくとも1個配置されていることによって、抵抗値の上昇を抑制できることが分かる。
次に、接着部13の強度については、接着部13に導電性フィラー101が絶縁性接着剤104および導電性フィラー101の体積総量を100としたときの導電性フィラー101の割合が9%以下である試料No.1−1〜8−5,9−1〜16−2は、接着部13の強度が300N以上あることが分かる。これに対して、導電性フィラー101の割合が9.5%以上である試料No.8−6,8−7は、接着部13の強度が300N未満であることが分かる。
すなわち、導電性フィラー101の割合が0.004〜9%である場合には、真空吸着ノズル組み立て体7を使用する上で必要な強度である300N以上が得られる。
次に、本発明の真空吸着ノズル組み立て体7である、表5に示す試料No.2−1の導電性フィラー101を介した真空吸着ノズル組み立て体7と、本発明の比較例である表5に示す試料No.10−1の導電性フィラー101を介さない真空吸着ノズル組み立て体70の真空吸着ノズル31とフランジ40とを絶縁性接着剤で固定した真空吸着ノズル組み立て体70とを用いて各々10000個ずつ電子部品の吸着テストを実施して、その外観を顕微鏡50倍で観察して、塵埃の付着がないか確認をして比較した。
その結果、試料No.2−1の導電性フィラー101を介した真空吸着ノズル組み立て体7では塵埃の付着はなかった。それに対して、比較例である表3に示す試料No.10−1の導電性フィラー101を介さない真空吸着ノズル組み立て体7は、塵埃の付着が10個以上確認できた。
この結果、本発明の真空吸着ノズル組み立て体7は、真空吸着ノズル1が静電気を帯電し塵埃等が付着して電子部品が汚染するということを抑制することができることが分かる。
次に、導電性フィラー101が、金属フィラー102のみの場合と、金属被覆樹脂フィラー103のみの場合と、金属フィラー102および金属被覆樹脂フィラー103の場合との3種類で、各導電性フィラー101の粒径と加圧力とを変更して、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端との間の抵抗値の異常値発生率について評価するために、表1に示す試料No.7の材質を用いて、表3に示す試料No.7−1〜7−4を作製した。具体的には、試料No.7−1,7−2はいずれも導電性フィラー101にAu材の金属フィラー102またはAu材の金属被覆樹脂フィラー103のいずれかを1個のみ使用して接着時の加圧力を0.1MPaにしたものである。また、試料No.7−3はAu材の金属フィラー102およびAu材の金属被覆樹脂フィラー103をいずれも1個使用し、金属フィラー102よりも金属被覆樹脂フィラー103の方の径を大きくして、接着時の加圧力を0.1MPaにしたものである。さらに、試料No.7−4は試料No.7−3の接着時の加圧力を0.2MPaとしたものである。ここで、金属被覆樹脂フィラー103の金属層103aの膜厚は実施例1と同様に0.10μmとした。
なお、抵抗値については、1000個のサンプルから任意に200個を選び、その測定値から標準偏差σを求め、その±4σより外れた試料数を異常としてその発生率をデータとした。
得られた結果を表6に示す。
表6に示す結果から、試料No.7−4に示す金属フィラー102の積算粒径分布d90が30μmで、金属被覆樹脂フィラーの積算粒径分布d90が45μmであり、加圧力が0.2MPaの試料が一番良い結果を示したことが分かる。これは、試料No.7−1および7−2に比べて金属被覆樹脂フィラー103が金属フィラー102よりも大きく、試料No.7−3よりさらに加圧力が従来より少し高くしたので、金属フィラー102および金属被覆樹脂フィラー103が真空吸着ノズル1の頭部6とフランジ10の受け部11とに当接して、金属樹脂被覆フィラー103が従来より当接面積が大きくなって電気的な導通が良くなり、さらにこれに加えて、金属フィラー102が金属被覆樹脂フィラー103とともに真空吸着ノズル1の頭部6とフランジの受け部11とに当接したので、より確実に電気的な導通を得ることができて異常発生が少なくなったことが分かる。
次に、導電性フィラー101に、金属フィラー102であり、硬度(モース硬度)差のある2種類の金属フィラー102を用いて、硬度の低い金属フィラー102が硬度の高い金属フィラー102よりも大きいものの2種類を用いて真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端6との間の抵抗値の異常値発生率について評価するために、表1に示す試料No.7の材質を用いて、表4に示す試料No.7−5〜7−8を作製した。具体的には、試料No.7−5は、第1の金属フィラー102を1個とし、材質にNiを使用した積算粒径分布d90が30μmのものと、第2の金属フィラー102を1個とし、材質にCuを使用した積算粒径分布d90が45μmのものである。また、試料No.7−6は、第1の金属フィラー102を1個とし、材質にNiを使用して積算粒径分布d90を45μmとしたものであって、第2の金属フィラー102を1個とし、材質にCuを使用して積算粒径分布d90を30μmとしたものである。また、試料No.7−7は、第1の金属フィラー102を1000個とし、材質にNiを使用して積算粒径分布d90が30μmのものと、第2の金属フィラー102を1000個とし、材質にCuを使用して積算粒径分布d90を45μmとしたものである。また、試料No.7−8は、第1の金属フィラー102を1000個とし、材質にNiを使用した積算粒径分布d90が45μmのものと、第2の金属フィラー102を1000個として材質にCuを使用して積算粒径分布d90が30μmのものである。以上の接着時の加圧力は、全て0.2MPaとした。
なお、抵抗値については、上記実施例と同様に1000個のサンプルから任意に200個を選び、その測定値から標準偏差σを求め、その±4σより外れた試料数を異常として、その発生率をデータとした。
得られた結果を表7に示す。
表7に示す結果から、真空吸着ノズル組み立て体7の先端と後端との間の抵抗値の異常値の発生率は、第1および第2の金属フィラーの数が各1個である試料No.7−5,7−6では、試料No.7−5が2.8%であり、試料No.7−6が3.6%であって、硬度が低い金属フィラー102の径が大きく、硬度が高い金属フィラー102の径が小さい試料No.7−5の方が抵抗値の異常の発生率が低いことが分かる。また、第1および第2の導電性フィラー102の数が各1000個である試料No.7−7,7−8では、試料No.7−7が0.1%であり、試料No.7−8が0.3%であって、同じく硬度が低い金属フィラー102の径が大きく、硬度が高い金属フィラー102の径が小さい試料No.7−7の方が抵抗値の異常の発生率が低いことが分かる。これは、硬度が低い金属フィラー102の径を大きく、硬度が高い金属フィラー102の径を小さくしたので、硬度の低い第2の金属フィラー102の方が硬度の高い第1の金属フィラー102よりも大きいことから、真空吸着ノズル1の頭部6とフランジ10の受け部11とを接着する時の加圧力で硬度が低い金属フィラー102の方が先に頭部6と受け部11とに当接し、さらに加圧力が高まって頭部6と受け部11とが狭まると、硬度が低い金属フィラー102の変形が始まり、より当接面積が大きくなって電気的な導通が得られ、これに加えて、次に、硬度が高く小さい金属フィラー102が頭部6と受け部11とに当接して、硬度が低い金属フィラー102も硬度が高い金属フィラー102もともに真空吸着ノズル1の頭部6とフランジ10の受け部11とに当接するようになったので、確実に電気的な導通を得ることができて抵抗値の異常発生が少なくなったと言える。
次に、表1に示す試料No.6のジルコニアで作製した真空吸着ノズル1と表1に示す試料No.2のアルミナで作製したフランジ10とを用いた真空吸着ノズル組み立て体7と、試料No.15のジルコニアで作製した真空吸着ノズル1とステンレスで作製したフランジ10とを用いた真空吸着ノズル組み立て体7とを用いて、実施例1と同様の評価内容にて、真空吸着ノズル組み立て体7の試料を電子部品装着機14に取り付けて0603タイプの電子部品15の真空吸着テストを行ない、電子部品15の吹き飛びおよび電子部品15の静電破壊の評価と、実施例2と同様の評価内容にて塵埃の付着がないかの確認とを行なった。なお、このときの導電性フィラー101には、Au材の金属フィラー102を1個使用した。
その結果、表1に示す試料No.6のジルコニアで作製した真空吸着ノズル1と表1に示す試料No.2のアルミナで作製したフランジ10とを用いた真空吸着ノズル組み立て体7と、試料No.15のジルコニアで作製した真空吸着ノズル1とステンレスで作製したフランジ10とを用いた真空吸着ノズル組み立て体7とは、電子部品15の吹き飛びおよび静電破壊が2000万個中で3個以内であり良好なものであって、また、塵埃の付着についても1個も発見されなかった。この結果から、真空吸着ノズル1が帯電しても帯電した静電気は真空着ノズル1からフランジ10を経由し速やかにアース(除電)させることができ、真空吸着ノズル1が帯電して塵埃等が付着して電子部品15が汚染したり、真空吸着ノズル1が真空吸着する電子部品15を吹き飛ばしたり、真空吸着ノズル1から静電気が急速に放電して真空吸着する電子部品15や周囲の部品が静電破壊するのをより確実に防止することができることが分かる。
次に、表1に示す試料No.6の黒色のジルコニアで作製した真空吸着ノズル1とフランジ10とを用いた真空吸着ノズル組み立て体7を500個と、試料No.6の黒色のジルコニアで作製した真空吸着ノズル1とステンレスで作製した表1に示す試料No16のフランジ10とを用いた真空吸着ノズル組み立て体7を500個とをそれぞれ作製し、同じ5人の作業者各々が100組ずつ組み付け作業を行ない、組み付け作業に要した時間を測定して作業時間の差を比較した。
その結果、黒色のジルコニアで作製した真空吸着ノズル1とフランジ10とを用いた真空吸着ノズル組み立て体7と比較して、黒色のジルコニアで作製した真空吸着ノズル1とステンレスで作製したフランジ10とを用いた真空吸着ノズル組み立て体7の方が、作業時間を5〜15%短縮することができた。
これは、黒色のジルコニアで作製した真空吸着ノズル1とステンレスで作製したフランジ10とを用いた真空吸着ノズル組み立て体7では、真空吸着ノズル1の色調とフランジ10の色調とに濃淡差があるため、細かい部分の視認性がよくなったためと考えられる。