JP2010077985A - 複合遊星歯車を用いた多段自動変速機 - Google Patents

複合遊星歯車を用いた多段自動変速機 Download PDF

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Abstract

【課題】多段自動変速機の変速比の段間差を小さくできる複合遊星歯車の強度を確保し、シンプルな構造で燃費を向上させる。
【解決手段】減速用遊星歯車と、複合遊星歯車と、クラッチC1、C2、C3と、ブレーキB1、B2とからなる前進6速後進1速或いは前進8速後進2速の多段自動変速機の、複合遊星歯車を構成する各4個のシングルピニオンとダブルピニオン遊星歯車を保持する遊星キャリアPの両サイド部材を各ピニオン遊星歯車の軸支軸で連結し、シングルピニオン遊星歯車と噛合うサンギアS1とダブルピニオン遊星歯車と噛合うサンギアS2の歯数を近づけ、遊星キャリアPの両サイド部材の内径をサンギアS1の外径より小さくして軸支する。
【選択図】図10

Description

本発明は、油圧クラッチ及びブレーキを用いて制御する自動変速機に関し、変速比の段間差が小さくできる複合遊星歯車を用いた多段自動変速機に関する。
トルクコンバータと遊星歯車列及び油圧クラッチ、ブレーキを用いたAT(Automatic Transmission)に対抗した自動変速機として、無段階に変速するCVT(Continuously Variable Transmission)と手動変速機であるMT(Manual Transmission)を自動化したAMT(Automated Mechanical Transmission)が省燃費を主な目的として商品化されている。このCVTにはトルクコンバータが用いられているが発進時以外はトルクコンバータをロスのない直結(ロックアップ)状態として用いるため、市街地走行でほとんどトルクコンバータをロックアップしないATと比べ燃費は良くなるが、無段変速機構となるベルトの伝達効率がギア伝達に比べ極めて悪く、ATがトルクコンバータをロックアップして用いることができる高速走行では逆に燃費が悪くなり、市街地走行でも原動機の回転を低く保てる利点はあるものの、燃費改良のポテンシャルは小さい。AMTは燃費改良のポテンシャルが大きいため、変速の際連続的な走行ができないSCT(Sngle Clutch AMT)を改良し、一方のクラッチで動力が伝達されている時、他方のクラッチを次の変速段に切り換えて待機させ、2個のクラッチを繋ぎ換えることで連続的な走行が可能となる前進6速及び7速のDCT(Dual Clutch AMT)も商品化されたが、クラッチの切り換えにより変速できる変速段が1種類しかなく、特に飛び越し変速が必要となるキックダウン変速や手動操作での任意の変速、及び前後進の切り換え時においてスムースな変速ができなく車両の使い勝手に問題が生じる。
一方、ATはクラッチ又はブレーキの1個のみの繋ぎ代えで変速可能な変速段が、増速と減速側の次段と次々段の合わせて4種類準備可能で、キックダウン変速や手動変速及び前後進の切り換えで問題を生じさせない。そこで、原動機の使用回転域を下げ燃費を向上さす目的で前進6速段以上の多段化が進められているが、実用化された前進6速(6AT)では前進4速(4AT)と比べ5〜6%の燃費向上しか実現されていなく、依然として大幅な燃費改良は進んでいない。この主な原因は入力継手として用いる流体伝導による動力ロスを伴うトルクコンバータを多用していることにあり、燃費をさらに向上さすにはトルクコンバータの使用領域を減らさなければならない。基本的には発進と変速時以外はトルクコンバータをロスのないロックアップ状態で用いるようにすることであるが、最良の方法はAMTのようにトルクコンバータを用いないことである。ATやCVTでは当たり前のようにトルクコンバータを用いているが、資源の浪費及び環境負荷の増大に繋がり技術でこれを防がなければならない。通常、乗用車のMTでは前進の変速段数は5、6速段であり、6ATではトルク増幅作用のあるトルクコンバータを使用しなくとも牽引力が確保できる。但し、隣り合う変速段の変速比の段間差をMTのように小さくすることが望ましく、複数の変速段で同一遊星歯車に動力が通過するATはMTよりシンプルな構造となるが変速比の設定自由度は低く、その組み合わせは限定される。尚、実用化された6ATでは伝達効率上好ましくないものや締結要素となる摩擦部材の連れ回りロス低減に対する配慮が十分でないものが多く、伝達効率や耐久強度を考慮するとパワートレン及びその構造は更に限定される。
近年実用化された6ATは3種あり、4個の構成要素を持った2個の遊星歯車列の、3個の構成要素に選択的に非減速回転と減速用遊星歯車を介した減速回転を入力し、そのうちの2個の構成要素にブレーキを配し、残りの1個の構成要素を出力する方式が大部分を占め、減速回転の入力個数を1個とした特許文献1と2個とした特許文献2の2種類が存在する。残りの1種は変速段により3個の遊星歯車列の組換えを行う特許文献3に示されたもので、何れも5個のクラッチ及びブレーキの2個を選択的に締結することにより変速段が決定される構造となっている。この3種のうち、隣り合う変速段の変速比の段間差を比較的小さく取れる方式の一つとして特許文献2のリングギアを出力とする4ATと同じ形態のラビニョー遊星歯車を用いた組み合わせがあり、シンプルな構造で配置できることもあって一番多く実用化されている。但し、特許文献2の形態では前進1速〜4速段で減速用遊星歯車を介した大きなトルクとなる減速回転が変速用遊星ギアに入力する強度的に不利となる点と、高速段の前進4速−5速段及び前進5速−6速段の変速比の段間差が少し大きくなる問題を有している。加えてラビニョー遊星歯車の欠点として、ダブルピニオン遊星歯車を用いるため噛合い歯車が増え効率的に不利となること及び歯面荷重を分散して伝えるピニオン遊星歯車の個数に限界が生じる強度面の弱点がある。又、ラビニョー遊星歯車では本件出願図の図8、図9のType0、1に示した如く、ロングピニオン遊星歯車Paと噛合うピニオン遊星歯車Pb、サンギアS1及びリングギアR1の噛合いベクトルがそれぞれ異なるためロングピニオン遊星歯車が傾き、噛合いが悪くなる欠点を有している。そのためラビニョー遊星歯車の基本形態であり利点でもあるロングピニオン遊星歯車による動力伝達方式を変えることも考慮しなければならない。尚、近年燃費向上のため原動機には低回転高トルクのディーゼルエンジンが用いられるようになり、強度的に不利となる特許文献2の形態に強度面に弱点があるラビニョー遊星歯車を用いるには一層の補強が望まれる。
乗用車で最も多用されている原動機をフロント側に横置きに配するFWD(Front Wheel Drive)車では特に変速機の軸方向の短縮化が要求され、特許文献2のラビニョー遊星歯車を用いた極めてコンパクトとなる6ATとしてSAE TECHNICAL PAPERに記載された非特許文献4があり、各部位の配置が特許文献5及び6で提案されている。この方式では前進1速〜4速段で減速用遊星歯車を介した大きなトルクとなる減速回転がラビニョー遊星歯車のダブルピニオン遊星歯車と噛合う小径のサンギアに入力されるため、このサンギアの歯面荷重が必然的に大きくなる。そのため歯車の歯幅を増やす必要が生じ、軸方向の短縮化が要求されるFWD車には向かなくなる。一般的に4ATに用いられるラビニョー遊星歯車ではダブルピニオン遊星歯車の数は2×3個であり、ダブルピニオン遊星歯車の数をスペース的に限界となる2×4個まで増やし歯面荷重を更に分散させると歯幅を増やす必要がなくなる。そのため非特許文献4では本件出願図の図29に示したように、サンギアS2と噛合うピニオン遊星歯車Pbの外径を小さくしてピニオン遊星歯車PbとリングギアR1との間にスペースを設け、遊星キャリアを構成する両サイド部材を連結する連結部材Pを配する工夫をしている。しかしながら、ピニオン遊星歯車Pbの歯数が小さくなり回転が増えて効率及び耐久上不利になるのに加えて、前進1速から原動機直結とするため前進1速−2速段の変速比の段間差をDCTのように小さくするにはサンギアS2とS1の歯数を近づけねばならず、ピニオン遊星歯車Pbの配置スペース上限界が生じる。又、ピニオン遊星歯車Pbの軸支軸を保持する遊星キャリアの肉厚がサンギアS1の外径との距離δで決まるためピニオン遊星歯車Pbの軸支軸の径を小さくしなければならず、この構造で前進1速−2速段の変速比の段間差をDCTのように小さくすることは困難となる。
又、この方式のラビニョー遊星歯車では遊星キャリアが長幅構造になるとともにブレーキとクラッチの摩擦部材を係止するため遊星キャリアがアンバランスとなり、遊星キャリアの両端を軸支する必要がある。しかしながら、非特許文献4では遊星キャリアを一端でしか軸支しない片持構造となっており振動や耐久上好ましくない。加えて、この遊星キャリアの軸方向の保持が相対回転の大きくなる径の大きな固定部となっており、遊星キャリアの軸支機構全体がロスを伴う不安定な構造となっている。
非特許文献4では減速用遊星歯車とラビニョー遊星歯車の外周径方向外側にクラッチとブレーキの摩擦部材を配したためコンパクトな構造となるが、ラビニョー遊星歯車のシングルピニオン遊星歯車と噛合うサンギアに減速回転を入力するクラッチドラムを、ブレーキで制動する構造となっている。このクラッチドラムは最高速段の前進6速段で制動され、連続高速走行状態において内周側に摩擦部材を係止するクラッチドラムに遠心力が作用せず潤滑油が排出され難くなり、摩擦部材の連れ回りロスが大きくなる欠点がある。このクラッチの摩擦部材は減速用遊星歯車の外周径方向外側に配され、減速用遊星歯車潤滑後の潤滑油が供給される構造となっており、減速用遊星歯車の潤滑油は常時必要なため制動時に潤滑油の供給を止めるわけにはいかなく、連れ回りロスが必然的に大きくなる。
更に、特許文献2の特性上の欠点とも言えるが、前進4速−5速段及び前進5速−6速段の変速比の段間差をDCTのように小さくするのは不可能なため、クラッチ1個を追加し全ての段間差を前進7速のDCTに負けず小さくできる8ATが燃費改善の有力手段となる。そうするにはラビニョー遊星歯車に6ATより更に大きな減速回転を入力しなければならず、各歯車にかかる負担は大きくサンギアS2とS1の歯数を近づけた4×2個のダブルピニオン遊星歯車の配置が必須になるとともに、ロングピニオン遊星歯車の傾きによる歯当たり悪化の改善が必要となる。当然クラッチ追加による摩擦部材の連れ回りロスも増えるため、摩擦部材の連れ回りロス低減を考慮しなければならない。このクラッチ1個を追加した8ATとしてRWD(Rear Wheel Drive)車用に実用化されたSAE TECHNICAL PAPERに記載された非特許文献7がある。ここで用いられているラビニョー遊星歯車に於けるピニオン遊星歯車の配置構造は非特許文献4と同じ本件出願図の図29に示した構造であるが、スペース的に余裕があるためサンギアS2の径を大きくし強度を向上させ、その結果サンギアS1との相対比を小さくすることが可能となり変速段の段間差が比較的小さくなっている。但し、サンギアS2とS1の相対比をもっと小さくすると全体の変速比が更にバランスの採れたものとなる。又、ラビニョー遊星歯車の遊星キャリアはRWD車では軸方向スペースに余裕があるため両端で軸支出来ており問題はないが、一方の軸支部がシングルピニオン遊星歯車の外径より大きな位置での軸支であり周速が速くなる不利な構造となっている。一方、スペースに余裕のないFWD車用での8AT化は非特許文献7に示された構造は採れなく工夫が必要となる。
ラビニョー遊星歯車の各ピニオン歯車のスペースを確保する手段として、本願出願人より特許文献8が提案されている。このラビニョー遊星歯車は本件で用いる4個の構成要素を有したものとは異なり、5個の構成要素を有したラビニョー遊星歯車に関する提案である。サンギアとシングルピニオン遊星歯車を軸支する遊星キャリアとリングギアからなる2列のシンプル遊星歯車の、一方のピニオン遊星歯車を伸ばしてロングピニオン遊星歯車とし、もう一方のショートピニオン遊星歯車と同一遊星キャリア内でダブルピニオン遊星歯車として噛合わせたラビニョー遊星歯車の、遊星キャリアの両サイド部材を2分割し3個のショートピニオン遊星歯車の軸支軸で両サイド部材を連結する構造である。この構造ではショートピニオン遊星歯車に対しロングピニオン遊星歯車の歯数を極端に小さくしなければ配置スペースに於いて成立せず、ロングピニオン遊星歯車の軸支軸の径は小さくなりショートピニオン遊星歯車の軸支軸のみで2分割した両サイド部材を連結しなければならない。又、遊星キャリアの一方のサイド部材が出力軸と一体となり片持構造とはなるが、出力軸がハウジングの2点で大容量の軸受けで軸支される構造となるため遊星キャリアを両端で軸支する必要はない。加えて、前進の減速段で動力が本件とは逆の径の大きなサンギアに入力するため歯面荷重が小さくなるとともに、ショートピニオン遊星歯車と噛合う径の小さなサンギアの負荷頻度は径の大きなサンギアより小さいため、歯幅を径の大きなサンギアと同等以下に押さえることができる。したがって、遊星キャリアの幅も小さくなり、連結軸となるショートピニオン遊星歯車の軸支軸の連結幅も小さくできるため3箇所の連結だけで剛性的な問題は出ないが、遊星キャリアの幅が大きくなり、しかもショートピニオン遊星歯車の歯幅が大きくなる本件では、ショートピニオン遊星歯車の軸支軸だけで両サイド部材を連結することは剛性上不十分となる。
本願は前項で述べたように、隣り合う変速段の変速比の段間差を小さくし、発進と変速時以外はトルクコンバータをロスのないロックアップ状態で用いることができる6〜8ATの提案であり、主願としてはトルクコンバータを用いない6〜8ATの提案である。FWD車用に実用化された6ATに用いられるトルクコンバータは、CVTや4ATで用いられている応答性とトルク伝達容量に難のあるトーラス内部圧で締結させるロックアップクラッチであり、ロックアップの多用は困難となる。特に低回転高トルクのディーゼルエンジンには向かない。したがって、このトルクコンバータには軸方向がコンパクトとなることに加え、入力継手内に独立した油圧係合室を備え、複面の摩擦面を持つロックアップクラッチを有する本願出願人が特許文献9で提案したような入力継手を適用しなければならない。又、トルクコンバータを用いないATの構造が本願出願人より特許文献10で提案されている。この方式は発進段となる前進1速と後進段で締結するブレーキB1を本件出願図の図27に示したのように交互に配された摩擦部材の円周方向中央部に貫通穴を開け、ハウジングよりこの貫通穴に冷却油を供給し滑らせてクリープや発進を行わせるものである。トルクコンバータを用いない他の方法としては入力継手に湿式クラッチを用いる方法や、発進段となる前進1速と後進段で締結するクラッチC1、C3を滑らせる方法も提案されているが、変速機内部のロスがクラッチに加わり滑りエネルギーが増し、車両のクリープ状態等常時摩擦部材を滑らさなければならない状況で不利となる。一方特許文献10のブレーキB1の滑り状態を表す本件出願図の図28に示した前進1速段の速度線図では、締結しているクラッチC1以外の全てのクラッチとブレーキの連れ回りトルクが発進力となるためブレーキB1を滑らすエネルギーがクラッチを滑らす方式と比べ少なくて済み、摩擦部材の冷却方式の容易さとともに有利となる。したがって、隣り合う変速段の変速比の段間差を小さく取れる方式と組み合わせれば燃費的に最良のATとなる。
ところで、FWD車では原動機と同軸となる変速機の入力軸と平行に出力軸が配され、入力軸と出力軸の回転方向が同じ方向になることが要求されるため、入力軸から中継軸を介してカウンターギアで減速して出力軸に動力を伝達する構造となっている。この減速比は3〜4必要であり、中継軸に小径となるカウンターギアを配し、出力軸の大径となるカウンターギアと噛合わせる構造としている。この動力伝達構造はモジュールの大きな小歯数と大歯数の噛合わせとなり歯面のスリップによるロスが大きくなるとともに、ATに限らずMTでもCVTでも重量が増え燃費的に負の要因となるばかりではなく、狭いエンジンルームの空間を更に狭めている。又、大径となるカウンターギアの干渉により入力軸上に配される部材の位置と径が制限を受ける。特にクラッチ1個を追加して前進8速とする場合このクラッチとリングギアの干渉が問題となる。
特開昭52−149562 特開平4−219553 特開2003−35341 SAE PAPER 2004−01−0651 特開2000−220703 特開2000−220704 SAE PAPER 2007−01−1101 特開昭62−113946 特開2008−196660 特願2008−83909
本発明の第1の課題は、前進6速及び8速度段の多段自動変速機に用いる4個の構成要素からなるラビニョー遊星歯車の形態を変えずに各構成歯車の耐久強度を増し、共有する遊星キャリアの軸支を安定させることである。
本発明の第2の課題は、前進6速及び8速度段の多段自動変速機に用いる4個の構成要素からなるラビニョー遊星歯車の形態を変えて高トルク対応の複合遊星歯車として各構成歯車の耐久強度を増し、共有する遊星キャリアの軸支を安定させることである。
本発明の第3の課題は、複合遊星歯車と減速用遊星歯車及びクラッチ、ブレーキからなる前進6速及び8速度段の多段自動変速機の隣り合う変速段の変速比の段間差を小さくし、伝達ロスの大きな流体伝導装置を無くすか或いはロックアップ領域が拡大出来る流体伝導装置を用いてシンプルに配置するとともに、締結要素に配される摩擦部材の連れまわりロスの低減も含め燃費を向上さすことである。
本発明の第4の課題は、FWD車用の変速機に配される効率的に負の要因となる中継軸を廃止し、流体伝導装置を無くした前進6速から8速度段の多段自動変速機の燃費を更に向上させるとともに、エンジンルームのスペースを広げることである。
請求項1に係わる本発明は、前進6速後進1速或いは前進8速後進2速の変速段を得る多段自動変速機の複合遊星歯車に用いられるピニオン遊星歯車の個数をスペース限界まで増やすもので、第1と第2及び第3の課題を解決するための手段であり、シングルピニオン遊星歯車とダブルピニオン遊星歯車を軸方向2列に保持し、シングルピニオン遊星歯車とダブルピニオン遊星歯車の一方のピニオン遊星歯車を同一軸上で軸支するする遊星キャリアPと、シングルピニオン遊星歯車と噛合うサンギアS1及びリングギアR1と、ダブルピニオン遊星歯車のもう一方のピニオン遊星歯車と噛合うサンギアS2或いはシングルピニオン遊星歯車と同一軸上で軸支される一方のピニオン遊星歯車と噛合うリングギアR2とからなり、リングギアR1或いはリングギアR2に連結したリングギアR1を出力構成要素とする複合遊星歯車と、変速機の入力軸1の回転を減速する減速用遊星歯車と、複合遊星歯車のサンギアS2に減速用遊星歯車を経由した入力軸1の減速回転を入力するクラッチC1と、複合遊星歯車の遊星キャリアPに入力軸1の回転を入力するクラッチC2と、複合遊星歯車のサンギアS1に減速用遊星歯車を経由した入力軸1の減速回転或いは入力軸1の回転を入力するクラッチC3或いはC4と、複合遊星歯車の遊星キャリアPを制動するブレーキB1と、複合遊星歯車のサンギアS1を制動するブレーキB2とからなり、クラッチC1、C2、C3或いはC4及びブレーキB1、B2の何れか2個を選択的に締結することにより前進6速後進1速或いは前進8速後進2速の変速段を得る複合遊星歯車を用いた多段自動変速機であって、複合遊星歯車の各ピニオン遊星歯車を4個で構成するとともに遊星キャリアPを構成する両サイド部材を2分割し、シングルピニオン遊星歯車とダブルピニオン遊星歯車の一方のピニオン遊星歯車を同一軸上で軸支する4本の長梁軸と、ダブルピニオン遊星歯車のサンギアS2と噛合うもう一方のピニオン遊星歯車を軸支する4本の短梁軸で両サイド部材を連結するようになした。
請求項2に係わる本発明は、前進6速後進1速或いは前進8速後進2速の変速段を得る多段自動変速機の複合遊星歯車の軸支に関するもので、第1と第2の課題を解決するための手段であり、変速機の入力軸1と出力軸を平行に配し、入力軸1を変速機ハウジングの両端で軸受け7a、7bで軸支し、入力軸1と同軸上の変速機ハウジングの中央部で出力軸に動力を伝達するカウンターギア3を軸受け7cで軸支し、カウンターギア3を挟んで入力軸1と同軸上の一方側に、複合遊星歯車とクラッチC2とブレーキB1を配し、入力軸1と同軸上のもう一方側に、減速用遊星歯車とクラッチC1、C3或いはC4とブレーキB2を配し、クラッチC1とサンギアS2を連結する連結部材12とクラッチC3或いはC4とサンギアS1を連結する連結部材11を、カウンターギア3の内周部を通して入力軸1の周りに径方向順に軸支させて配し、複合遊星歯車の遊星キャリアPを構成するシングルピニオン遊星歯車側サイド部材の内径L1とダブルピニオン遊星歯車側サイド部材の内径L2をサンギアS1の外径L3より小径としてラジアル軸受け7h、7iを配し、サンギアS1又はサンギアS1の連結部材11と入力軸1又は入力軸1とクラッチC2を連結する連結部材に軸支するとともにシングルピニオン遊星歯車側のサイド部材の両側にスラスト軸受け37a、37cを配し、複合遊星歯車の遊星キャリアPを保持するようになした。
請求項3に係わる本発明は、前進6速後進1速或いは前進8速後進2速の変速段を得る多段自動変速機の複合遊星歯車の構造に関するもので、第1と第2の課題を解決するための手段であり、複合遊星歯車の各ピニオン遊星歯車は4本の長梁軸及び短梁軸上でニードルローラベアリングにより軸支され、4本の長梁軸及び短梁軸の両端をニードルローラベアリングの軸支径より小径とし、遊星キャリアPを構成するシングルピニオン遊星歯車側サイド部材の側面に貫通穴を有した4個の座aとサンギアS1の歯幅まで突き出た4個のボスbを円周方向に交互に設け、ダブルピニオン遊星歯車側サイド部材の外周を筒状に延材して径方向外周部外側にブレーキB1とクラッチC2の摩擦部材を係止するスプラインを設けるとともにシングルピニオン遊星歯車側サイド部材の座aとボスbの貫通穴に対抗する側面の同一円周位置に貫通穴を設け、両サイド部材の座a及び座aに対抗する貫通穴に4本の長梁軸の両端小径部をニードルローラベアリングの軸支径となる段付き部まで圧入し、両サイド部材のボスb及びボスbに対抗する貫通穴に4本の短梁軸の両端小径部をニードルローラベアリングの軸支径となる段付き部まで圧入し、4本の長梁軸と短梁軸の両端を絞めて両サイド部材を連結するようになした。
請求項4に係わる本発明は、前進6速後進1速或いは前進8速後進2速の変速段を得る多段自動変速機の複合遊星歯車の構造に関するもので、第1の課題を解決するための手段であり、複合遊星歯車の長梁軸に配したシングルピニオン遊星歯車とダブルピニオン遊星歯車の一方のピニオン遊星歯車を一体のロングピニオン遊星歯車として形成し、長梁軸上の両サイドにロングピニオン遊星歯車を軸支するニードルローラベアリングを配し、両ニードルローラベアリングの軸方向を規制する突起部を長梁軸の軸方向中央部に一体として設け、ロングピニオン遊星歯車をサンギアS1とリングギアR1に噛合わせるとともに、サンギアS2と噛合う短梁軸に配したピニオン遊星歯車と噛合わせるようになした。
請求項5に係わる本発明は、前進6速後進1速或いは前進8速後進2速の変速段を得る多段自動変速機の複合遊星歯車の構造に関するもので、第2の課題を解決するための手段であり、複合遊星歯車の長梁軸に配したシングルピニオン遊星歯車とダブルピニオン遊星歯車の一方のピニオン遊星歯車を各々ニードルローラベアリングで長梁軸上に隣接して軸支し、シングルピニオン遊星歯車をサンギアS1とリングギアR1に噛合わせるとともに、ダブルピニオン遊星歯車の一方のピニオン遊星歯車をサンギアS2と噛合う短梁軸に配したピニオン遊星歯車とリングギアR2に噛合わせ、リングギアR1とR2を連結するようになした。
請求項6に係わる本発明は、前進6速後進1速或いは前進8速後進2速の変速段を得る複合遊星歯車を用いた多段自動変速機のFWD車用に対する流体伝導装置を用いない伝達軸の配置に関するもので、第3と第4の課題を解決するための手段であり、変速機ハウジングは変速機前方に配された原動機との隔壁2dを保持するフロントケース2aとメインケース2b或いはリアケース2cからなり、回転変動吸収ダンパを介して原動機と連結した変速機の入力軸1を前端の隔壁2dに装着された円筒部材2fと後端のメインケース2b或いはリアケース2cに配された軸受け7a、7bで軸支し、フロントケース2aをメインケース2b内側の入力軸1の軸方向中央部まで延材してカウンターギア3を軸受け7cで軸支し、フロントケース2aと隔壁2dに囲まれたカウンターギア3前方に減速用遊星歯車とクラッチC1、C3或いはC4及びブレーキB2を配し、メインケース2b或いはリアケース2cに囲まれたカウンターギア3後方に複合遊星歯車とクラッチC2及びブレーキB1を配し、複合遊星歯車の出力構成要素となるリングギアR1或いはリングギアR2に連結したリングギアR1をサンギアS3とシングルピニオン遊星歯車を支持する遊星キャリアP3とリングギアR3からなる遊星減速歯車40のサンギアS3に連結し、遊星キャリアP3をメインケース2bに固定し、リングギアR3をカウンターギア3に連結し、カウンターギア3を出力軸が配されたディファレンシャル装置30のキャリアに連結したカウンターギア6と噛合わせるようになした。
請求項7に係わる本発明は、前進6速後進1速或いは前進8速後進2速の変速段を得る複合遊星歯車を用いた多段自動変速機のFWD車用に対する構成部位の配置に関するもので、第3の課題を解決するための手段であり、変速機ハウジングは変速機前方に配された原動機との隔壁2dを保持するフロントケース2aとメインケース2bとリアケース2cからなり、回転変動吸収ダンパ又は流体伝導装置を介して原動機と連結した変速機の入力軸1を前端の隔壁2dに装着された円筒部材2fと後端のリアケース2cに配された軸受け7a、7bで軸支し、メインケース2bの軸方向中央部に設けられたL字型側壁でカウンターギア3を軸受け7cで軸支し、複合遊星歯車の出力構成要素となるリングギアR1或いはリングギアR2に連結したリングギアR1をカウンターギア3に連結し、カウンターギア3を入力軸1に平行に配した中継軸に連結されたカウンターギア4と噛合わせ、フロントケース2a側に中継軸と一体となるカウンターギア5を設け、出力軸が配されたディファレンシャル装置30のキャリアに連結したカウンターギア6と噛合わせるようになした。
請求項8に係わる本発明は、前進6速後進1速或いは前進8速後進2速の変速段を得る多段自動変速機の長梁軸に配したピニオン遊星歯車が偏荷重を受けない構造の複合遊星歯車を用いたFWD車用に対する配置に関するもので、第2と第3の課題を解決するための手段であり、カウンターギア3の前方に、リングギアR1、R2を有した複合遊星歯車とクラッチC2及びブレーキB1が配されたもので、リングギアR1、R2を有した複合遊星歯車のダブルピニオン遊星歯車側サイド部材の外周に、リングギアR1、R2の外径より小径となるクラッチC2のクラッチハブを前方に円筒状に延材して設けるとともにリングギアR1、R2の外径より大径となるブレーキB1のブレーキハブを後方に円筒状に延材して設け、ディファレンシャル装置30のキャリアに連結したカウンターギア6と軸方向同一位置に、内周とクラッチC2のクラッチハブ外周との間に摩擦部材を有するとともに入力軸1と連結するクラッチC2のクラッチドラムを配し、カウンターギア6と干渉しない軸方向後方位置に、ブレーキB1のブレーキハブを制動する摩擦部材或いはワンウェイクラッチOWCをメインケース2bとの間に配し、ダブルピニオン遊星歯車側のサイド部材の内径をサンギアS2の外径より小径にして軸受け7hで入力軸1に軸支するようになした。
請求項9に係わる本発明は、前進6速後進1速の変速段を得る多段自動変速機の複合遊星歯車に入力する減速機構の構造に関するもので、第3と第4の課題を解決するための手段であり、カウンターギア3の一方側に配される減速用遊星歯車とクラッチC1、C3及びブレーキB2は、サンギアS0とシングルピニオン遊星歯車を軸支する遊星キャリアP0とリングギアR0からなる減速用遊星歯車のサンギアS0が変速機ハウジングの内周円筒ボスに固定され、リングギアR0が変速機の入力軸1に連結され、遊星キャリアP0を構成する反カウンターギア3側のサイド部材の内周にクラッチC1、C3一体のクラッチドラムが連結され、減速用遊星歯車の外周径方向外側に円筒状に延材されて円筒部内周に反カウンターギア3側から軸方向順にクラッチC1とC3の摩擦部材を配するクラッチC1、C3一体のクラッチドラムが変速機ハウジングの内周円筒ボスに軸支されて減速用遊星歯車の反カウンターギア3側に配され、クラッチC1、C3一体のクラッチドラムの外周径方向外側に位置する変速機ハウジング内周にブレーキB2の摩擦部材が配されたもので、サンギアS2、S1に連結する連結部材12、11を減速用遊星歯車の外周径方向外側に連結部材12を連結部材11より反カウンターギア3側に位置するよう円筒状に延材して外周にクラッチC1、C3の摩擦部材を配し、連結部材11を前記クラッチC1、C3一体のクラッチドラムの外周径方向外側に円筒状に延材して外周にブレーキB2の摩擦部材を配し、変速機ハウジングの内周円筒ボスにクラッチC1、C2一体のクラッチドラムへの作動油供給回路を設けるようになした。
請求項10に係わる本発明は、前進8速後進2速の変速段を得る多段自動変速機の複合遊星歯車に入力する減速機構の構造に関するもので、第3と第4の課題を解決するための手段であり、カウンターギア3の一方側に配される減速用遊星歯車とクラッチC1、C3、C4及びブレーキB2は、サンギアS0とダブルピニオン遊星歯車を軸支する遊星キャリアP0とリングギアR0からなる減速用遊星歯車のサンギアS0が変速機ハウジングの内周円筒ボスに固定され、遊星キャリアP0を構成するカウンターギア3側のサイド部材に入力軸1が連結されるとともにもう一方のサイド部材に反カウンターギア3側に円筒状に延材するクラッチC4のクラッチハブが連結され、リングギアR0の外周にクラッチC1、C3一体のクラッチハブがクラッチC4のクラッチハブの外周径方向外側に円筒状に延材して連結され、カウンターギア3側が開口されクラッチC3を外周側として円周方向に2段となり、クラッチC1、C3一体のクラッチハブ及びクラッチC4のクラッチハブとの間に各々摩擦部材を配するクラッチC3、C4一体のクラッチドラムが変速機ハウジングの内周円筒ボスに軸支されて減速用遊星歯車の反カウンターギア3側に配され、反カウンターギア3側が開口されリングギアR0の外周径方向外側でクラッチC1、C3一体のクラッチハブとの間に摩擦部材を配するクラッチC1のクラッチドラムが減速用遊星歯車を挟んでクラッチC3、C4と対峙して配され、クラッチC3、C4一体のクラッチドラムの外周と変速機ハウジング内周の間にブレーキB2の摩擦部材が配されたもので、クラッチC3、C4一体のクラッチドラムをクラッチC1のクラッチドラムの外周径方向外側に延材してサンギアS1に連結する連結部材11と連結し、クラッチC1のクラッチドラムをサンギアS2に連結する連結部材12と連結し、変速機ハウジングの内周円筒ボスにクラッチC3、C4一体のクラッチドラムとクラッチC1のクラッチドラムへの作動油供給回路を設けるとともにクラッチC3、C4の摩擦部材専用の潤滑油供給回路を設けるようになした。
請求項1記載の構成では、シングルピニオン遊星歯車とダブルピニオン遊星歯車を軸方向2列に保持し、シングルピニオン遊星歯車とダブルピニオン遊星歯車の一方のピニオン遊星歯車を同一軸上で軸支するする遊星キャリアPと、シングルピニオン遊星歯車と噛合うサンギアS1及びリングギアR1と、ダブルピニオン遊星歯車のもう一方のピニオン遊星歯車と噛合うサンギアS2或いはシングルピニオン遊星歯車と同一軸上で軸支される一方のピニオン遊星歯車と噛合うリングギアR2とからなり、リングギアR1或いはリングギアR2に連結したリングギアR1を出力構成要素とする複合遊星歯車と、変速機の入力軸1の回転を減速する減速用遊星歯車と、複合遊星歯車のサンギアS2に減速用遊星歯車を経由した入力軸1の減速回転を入力するクラッチC1と、複合遊星歯車の遊星キャリアPに入力軸1の回転を入力するクラッチC2と、複合遊星歯車のサンギアS1に減速用遊星歯車を経由した入力軸1の減速回転或いは入力軸1の回転を入力するクラッチC3或いはC4と、複合遊星歯車の遊星キャリアPを制動するブレーキB1と、複合遊星歯車のサンギアS1を制動するブレーキB2とからなり、クラッチC1、C2、C3或いはC4及びブレーキB1、B2の何れか2個を選択的に締結することにより前進6速後進1速或いは前進8速後進2速の変速段を得る複合遊星歯車を用いた多段自動変速機であって、複合遊星歯車の各ピニオン遊星歯車を4個で構成するとともに遊星キャリアPを構成する両サイド部材を2分割し、シングルピニオン遊星歯車とダブルピニオン遊星歯車の一方のピニオン遊星歯車を同一軸上で軸支する4本の長梁軸と、ダブルピニオン遊星歯車のサンギアS2と噛合うもう一方のピニオン遊星歯車を軸支する4本の短梁軸で両サイド部材を連結するようになしたので、サンギアS2に入力する減速用遊星歯車を経由した大きなトルクによる歯面荷重が4個のピニオン遊星歯車に分散され歯幅を増やすことなく歯車の耐久強度を増すことができるとともに、サンギアS2と噛合うピニオン遊星歯車の効率及び耐久強度悪化に繋がる歯数減少を伴わずにサンギアS2の歯数をサンギアS1に近づけることが可能となり、低速度段に於ける変速比の段間差を小さくできる。
請求項2記載の構成では、変速機の入力軸1と出力軸を平行に配し、入力軸1を変速機ハウジングの両端で軸受け7a、7bで軸支し、入力軸1と同軸上の変速機ハウジングの中央部で出力軸に動力を伝達するカウンターギア3を軸受け7cで軸支し、カウンターギア3を挟んで入力軸1と同軸上の一方側に、複合遊星歯車とクラッチC2とブレーキB1を配し、入力軸1と同軸上のもう一方側に、減速用遊星歯車とクラッチC1、C3或いはC4とブレーキB2を配し、クラッチC1とサンギアS2を連結する連結部材12とクラッチC3或いはC4とサンギアS1を連結する連結部材11を、カウンターギア3の内周部を通して入力軸1の周りに径方向順に軸支させて配し、複合遊星歯車の遊星キャリアPを構成するシングルピニオン遊星歯車側サイド部材の内径L1とダブルピニオン遊星歯車側サイド部材の内径L2をサンギアS1の外径L3より小径としてラジアル軸受け7h、7iを配し、サンギアS1又はサンギアS1の連結部材11と入力軸1又は入力軸1とクラッチC2を連結する連結部材に軸支するとともにシングルピニオン遊星歯車側のサイド部材の両側にスラスト軸受け37a、37cを配し、複合遊星歯車の遊星キャリアPを保持するようになしたので、複合遊星歯車全体の振動が低減し耐久性が向上する。
請求項3記載の構成では、複合遊星歯車の各ピニオン遊星歯車は4本の長梁軸及び短梁軸上でニードルローラベアリングにより軸支され、4本の長梁軸及び短梁軸の両端をニードルローラベアリングの軸支径より小径とし、遊星キャリアPを構成するシングルピニオン遊星歯車側サイド部材の側面に貫通穴を有した4個の座aとサンギアS1の歯幅まで突き出た4個のボスbを円周方向に交互に設け、ダブルピニオン遊星歯車側サイド部材の外周を筒状に延材して径方向外周部外側にブレーキB1とクラッチC2の摩擦部材を係止するスプラインを設けるとともにシングルピニオン遊星歯車側サイド部材の座aとボスbの貫通穴に対抗する側面の同一円周位置に貫通穴を設け、両サイド部材の座a及び座aに対抗する貫通穴に4本の長梁軸の両端小径部をニードルローラベアリングの軸支径となる段付き部まで圧入し、両サイド部材のボスb及びボスbに対抗する貫通穴に4本の短梁軸の両端小径部をニードルローラベアリングの軸支径となる段付き部まで圧入し、4本の長梁軸と短梁軸の両端を絞めて両サイド部材を連結するようになしたので、遊星キャリアの剛性が確保出来るとともに成形が簡素化される。
請求項4記載の構成では、複合遊星歯車の長梁軸に配したシングルピニオン遊星歯車とダブルピニオン遊星歯車の一方のピニオン遊星歯車を一体のロングピニオン遊星歯車として形成し、長梁軸上の両サイドにロングピニオン遊星歯車を軸支するニードルローラベアリングを配し、両ニードルローラベアリングの軸方向を規制する突起部を長梁軸の軸方向中央部に一体として設け、ロングピニオン遊星歯車をサンギアS1とリングギアR1に噛合わせるとともに、サンギアS2と噛合う短梁軸に配したピニオン遊星歯車と噛合わせるようになしたので、長梁軸の曲げに対する剛性が上がり、偏荷重が加わった場合のロングピニオン遊星歯車の傾きを押さえることができるとともに総ころ方式の両ニードルローラベアリングの間座も必要としない。
請求項5記載の構成では、複合遊星歯車の長梁軸に配したシングルピニオン遊星歯車とダブルピニオン遊星歯車の一方のピニオン遊星歯車を各々ニードルローラベアリングで長梁軸上に隣接して軸支し、シングルピニオン遊星歯車をサンギアS1とリングギアR1に噛合わせるとともに、ダブルピニオン遊星歯車の一方のピニオン遊星歯車をサンギアS2と噛合う短梁軸に配したピニオン遊星歯車とリングギアR2に噛合わせ、リングギアR1とR2を連結するようになしたので、2個のピニオン遊星歯車を配した長梁軸には各々1方向の荷重しか作用せずピニオン遊星歯車の噛合いが悪くなることはない。
請求項6記載の構成では、変速機ハウジングは変速機前方に配された原動機との隔壁2dを保持するフロントケース2aとメインケース2b或いはリアケース2cからなり、回転変動吸収ダンパを介して原動機と連結した変速機の入力軸1を前端の隔壁2dに装着された円筒部材2fと後端のメインケース2b或いはリアケース2cに配された軸受け7a、7bで軸支し、フロントケース2aをメインケース2b内側の入力軸1の軸方向中央部まで延材してカウンターギア3を軸受け7cで軸支し、フロントケース2aと隔壁2dに囲まれたカウンターギア3前方に減速用遊星歯車とクラッチC1、C3或いはC4及びブレーキB2を配し、メインケース2b或いはリアケース2cに囲まれたカウンターギア3後方に複合遊星歯車とクラッチC2及びブレーキB1を配し、複合遊星歯車の出力構成要素となるリングギアR1或いはリングギアR2に連結したリングギアR1をサンギアS3とシングルピニオン遊星歯車を支持する遊星キャリアP3とリングギアR3からなる遊星減速歯車40のサンギアS3に連結し、遊星キャリアP3をメインケース2bに固定し、リングギアR3をカウンターギア3に連結し、カウンターギア3を出力軸が配されたディファレンシャル装置30のキャリアに連結したカウンターギア6と噛合わせるようになしたので、隣り合う変速段の変速比の段間差を小さく出来る前進6速から8速度段の変速装置部とその出力を逆回転に換える遊星減速歯車40を入力軸1の周りにコンパクトに配することができるとともに、効率的に負の要因となる中継軸が廃止でき、FWD車用のATとして最高の燃費向上が可能となる。又、出力軸に配されるカウンターギア6との干渉がなくなるため、入力軸1の前方側の径を上げクラッチC4を追加した前進8速の入力装置部をコンパクトに配することができる。尚、フロントケース2aにカウンターギア3を配したことによりメインケース2bをリアケース2cと一体にできることや、ブレーキB1の冷却供給孔を配した端部をメインケース2bに一体として設けることができる。
請求項7記載の構成では、変速機ハウジングは変速機前方に配された原動機との隔壁2dを保持するフロントケース2aとメインケース2bとリアケース2cからなり、回転変動吸収ダンパ又は流体伝導装置を介して原動機と連結した変速機の入力軸1を前端の隔壁2dに装着された円筒部材2fと後端のリアケース2cに配された軸受け7a、7bで軸支し、メインケース2bの軸方向中央部に設けられたL字型側壁でカウンターギア3を軸受け7cで軸支し、複合遊星歯車の出力構成要素となるリングギアR1或いはリングギアR2に連結したリングギアR1をカウンターギア3に連結し、カウンターギア3を入力軸1に平行に配した中継軸に連結されたカウンターギア4と噛合わせ、フロントケース2a側に中継軸と一体となるカウンターギア5を設け、出力軸が配されたディファレンシャル装置30のキャリアに連結したカウンターギア6と噛合わせるようになしたので、隣り合う変速段の変速比の段間差を小さくできるFWD車用の前進6速から8速度段の変速装置部を入力軸1の周りにコンパクトに配することができるとともに燃費向上が可能となる。尚、回転変動吸収ダンパを介して原動機と連結した場合、他に類を見ないコンパクトさとなる。
請求項8記載の構成では、第1と第2及び第4の課題を解決するための手段であり、カウンターギア3の前方に、リングギアR1、R2を有した複合遊星歯車とクラッチC2及びブレーキB1が配されたもので、リングギアR1、R2を有した複合遊星歯車のダブルピニオン遊星歯車側サイド部材の外周に、リングギアR1、R2の外径より小径となるクラッチC2のクラッチハブを前方に円筒状に延材して設けるとともにリングギアR1、R2の外径より大径となるブレーキB1のブレーキハブを後方に円筒状に延材して設け、ディファレンシャル装置30のキャリアに連結したカウンターギア6と軸方向同一位置に、内周とクラッチC2のクラッチハブ外周との間に摩擦部材を有するとともに入力軸1と連結するクラッチC2のクラッチドラムを配し、カウンターギア6と干渉しない軸方向後方位置に、ブレーキB1のブレーキハブを制動する摩擦部材或いはワンウェイクラッチOWCをメインケース2bとの間に配し、ダブルピニオン遊星歯車側のサイド部材の内径をサンギアS2の外径より小径にして軸受け7hで入力軸1に軸支するようになしたので、特にFWD車用に前進6速度段にクラッチC4を追加して径が大きくなる複合遊星歯車への入力装置部をカウンターギア3の後方に配することができ、偏荷重を受ける噛合いをしない複合遊星歯車を用いた前進8速後進2速の燃費の良いコンパクトな多段自動変速機が可能となる。
請求項9記載の構成では、カウンターギア3の一方側に配される減速用遊星歯車とクラッチC1、C3及びブレーキB2は、サンギアS0とシングルピニオン遊星歯車を軸支する遊星キャリアP0とリングギアR0からなる減速用遊星歯車のサンギアS0が変速機ハウジングの内周円筒ボスに固定され、リングギアR0が変速機の入力軸1に連結され、遊星キャリアP0を構成する反カウンターギア3側のサイド部材の内周にクラッチC1、C3一体のクラッチドラムが連結され、減速用遊星歯車の外周径方向外側に円筒状に延材されて円筒部内周に反カウンターギア3側から軸方向順にクラッチC1とC3の摩擦部材を配するクラッチC1、C3一体のクラッチドラムが変速機ハウジングの内周円筒ボスに軸支されて減速用遊星歯車の反カウンターギア3側に配され、クラッチC1、C3一体のクラッチドラムの外周径方向外側に位置する変速機ハウジング内周にブレーキB2の摩擦部材が配されたもので、サンギアS2、S1に連結する連結部材12、11を減速用遊星歯車の外周径方向外側に連結部材12を連結部材11より反カウンターギア3側に位置するよう円筒状に延材して外周にクラッチC1、C3の摩擦部材を配し、連結部材11を前記クラッチC1、C3一体のクラッチドラムの外周径方向外側に円筒状に延材して外周にブレーキB2の摩擦部材を配し、変速機ハウジングの内周円筒ボスにクラッチC1、C2一体のクラッチドラムへの作動油供給回路を設けるようになしたので、FWD車用の前進6速の複合遊星歯車への入力装置部をコンパクトにすることができるとともに、高速一定走行となる前進6速度段でクラッチC3のクラッチドラムが制動されることなく遠心力で潤滑油を排出するため摩擦部材による連れ回りロスが低減される。
請求項10記載の構成では、カウンターギア3の一方側に配される減速用遊星歯車とクラッチC1、C3、C4及びブレーキB2は、サンギアS0とダブルピニオン遊星歯車を軸支する遊星キャリアP0とリングギアR0からなる減速用遊星歯車のサンギアS0が変速機ハウジングの内周円筒ボスに固定され、遊星キャリアP0を構成するカウンターギア3側のサイド部材に入力軸1が連結されるとともにもう一方のサイド部材に反カウンターギア3側に円筒状に延材するクラッチC4のクラッチハブが連結され、リングギアR0の外周にクラッチC1、C3一体のクラッチハブがクラッチC4のクラッチハブの外周径方向外側に円筒状に延材して連結され、カウンターギア3側が開口されクラッチC3を外周側として円周方向に2段となり、クラッチC1、C3一体のクラッチハブ及びクラッチC4のクラッチハブとの間に各々摩擦部材を配するクラッチC3、C4一体のクラッチドラムが変速機ハウジングの内周円筒ボスに軸支されて減速用遊星歯車の反カウンターギア3側に配され、反カウンターギア3側が開口されリングギアR0の外周径方向外側で前記クラッチC1、C3一体のクラッチハブとの間に摩擦部材を配するクラッチC1のクラッチドラムが減速用遊星歯車を挟んでクラッチC3、C4と対峙して配され、クラッチC3、C4一体のクラッチドラムの外周と変速機ハウジング内周の間にブレーキB2の摩擦部材が配されたもので、クラッチC3、C4一体のクラッチドラムをクラッチC1のクラッチドラムの外周径方向外側に延材してサンギアS1に連結する連結部材11と連結し、クラッチC1のクラッチドラムをサンギアS2に連結する連結部材12と連結し、変速機ハウジングの内周円筒ボスにクラッチC3、C4一体のクラッチドラムとクラッチC1のクラッチドラムへの作動油供給回路を設けるとともにクラッチC3、C4の摩擦部材専用の潤滑油供給回路を設けるようになしたので、FWD車用の前進8速の複合遊星歯車への入力装置部をコンパクトにすることができるとともに、高速一定走行となる前進8速度段でクラッチC3、C4一体のクラッチドラムが制動されても専用の潤滑油供給回路で潤滑油の供給を止めれば摩擦部材による連れ回りロスが低減される。
本発明は入力軸と出力軸が同一軸となるRWD(Rear Wheel Drive)車にも適用出来るが、実施例は本発明の特徴を活かしたコンパクトさが要求される前進6速以上の入力軸と出力軸がオフセットするFWD(Front Wheel Drive)車用の多段自動変速機とした。但し、RWD車用として本発明を前進8速後進2速の多段自動変速機に適用すれば複合遊星歯車の強度が向上するのに加えより適切な変速比を得ることができる。本発明は流体伝導装置を用いないことを主願としているが、流体伝導装置を用いた場合背景技術で述べた<入力継ぎ手内に独立した油圧係合室を備え、複面の摩擦面を持つロックアップクラッチを有する入力継手>との組み合わせも有効な燃費向上の手段としている。本発明ではこの入力継手との組み合わせの特許請求はしていないが、実施例では本件出願人が特開2008−196660で提案したものを用いた。
本発明の請求項1はFWD車とRWD車に於ける複合遊星歯車と複合遊星歯車を用いた多段自動変速機であり、そのFWD車用の多段自動変速機を請求項2として図8、図9、図18、図28及び図29を除く全ての図面に示す。請求項3は複合遊星歯車の構造に関するもので図1から図7に示し、請求項4はその1種であるラビニョー遊星歯車方式の複合遊星歯車100Aの構造を図1、図3、図4、図5及び図6に示し、請求項5はもう1種のラビニョー遊星歯車方式とは異なる複合遊星歯車100Bの構造を図2、図3、図4、図5及び図6に示したものである。尚、本発明に於ける複合遊星歯車の各歯車の配置を示す図6と比較するため、非特許文献4と7に用いられたラビニョー遊星歯車の各歯車の配置を図29に示した。又、複合遊星歯車100Aと100Bの内部歯車に対する動力の流れ方、及び力の加わり方の違いを図8と図9に示した。請求項6は本発明の複合遊星歯車を用いた前進6速<A−1>と前進8速<A−2>の2軸式多段自動変速機であり、全体構造を図10と図11にスケルトンと変速比を図16と図17に示し、詳細構造を図19から図22に示す。請求項7は本発明の複合遊星歯車を用いた流体伝導装置を無くした前進6速<B−1>と前進8速<B−2>及び流体伝導装置を用いた前進6速<C−1>と前進8速<C−2>の3軸式多段自動変速機であり、全体構造を図12から図17にスケルトンと変速比を図16と図17に示し、詳細構造を図23から図26に示す。尚、2軸と3軸式多段自動変速機の動力を伝達するカウンターギアの配置を図18に示した。請求項8は請求項5の複合遊星歯車100Bを請求項7に於ける3軸式多段自動変速機の前方に配置したものでその全体構造を図13と図15に示し、詳細構造を図25に示す。請求項9は本発明の前進6速後進1速の多段自動変速機に於ける複合遊星歯車の入力装置に関するもので、構造を図23に示す。同じく請求項10は本発明の前進8速後進2速の多段自動変速機に於ける複合遊星歯車の入力装置に関するもので、構造を図21と図26に示す。特に本発明の主願として流体伝導装置を用いない前進6速<A−1>と前進8速<A−2>の2軸式多段自動変速機及び前進6速<B−1>と前進8速<B−2>の3軸式多段自動変速機に於ける流体伝導装置の代わりとなるブレーキB1に関し、多段自動変速機の全体構造を図10から図13に示し、ブレーキB1の詳細構造を図27に示す。尚、流体伝導装置を用いないこの方式の前進1速度段に於ける各クラッチブレーキの連れ回りトルクが出力に及ぼすモーメント力を速度線図として図28に示した。
図10から図15に用いた6種の多段自動変速機の実施例に於いて、前進6速後進1速の多段自動変速機には図1の100Aに示したラビニョー遊星歯車方式の複合遊星歯車を用い、前進8速後進2速の多段自動変速機には図2の100Bに示したラビニョー遊星歯車方式とは異なる複合遊星歯車を用いたが、変速段の数に関係なくどのタイプの複合遊星歯車をどの多段自動変速機に用いても良い。同様に図10から図13に用いた原動機と入力軸1の間の湿式と油圧式の回転変動吸収ダンパ及び図14と図15に用いたトルクコンバータとフルードカップリングの流体伝導装置に関しても適用が限定されるものではない。尚、ラビニョー遊星歯車の定義としては特許文献US2194954他多数の特許がラビニョー氏から提案されており、何れも同一遊星キャリア上にシンプルピニオン遊星歯車とダブルピニオン遊星歯車を複数列軸方向に配置し、ピニオン遊星歯車をロングピニオン遊星歯車として複数列の遊星歯車と共有させており、この構造をラビニョー遊星歯車と定義する。
本発明に於けるラビニョー遊星歯車方式の複合遊星歯車100Aの構造を図1、図3、図4、図5及び図6に示す。複合遊星歯車100Aの遊星キャリアPとなるサイド部材34aと34bは分割されておりサイド部材34aを図4に、サイド部材34bを図5に示す。サイド部材34aを示す図4に於いて、側面には円周方向に4等分された位置に座aとボスbが交互に成形されており、座aとボスbの端面は機械加工でそれぞれ同じ高さに揃えられている。座aとボスbにはそれぞれ相対位置関係を有した円周方向同径となる4等分位置に機械加工でそれぞれ同じ大きさの貫通穴が開けられており、貫通穴の端部はテーパの面取りがなされている。もう一方のサイド部材34bを示す図5に於いて、側面にはサイド部材34aの座aとボスbに設けられた貫通穴に対抗する同一円周位置にそれぞれ同じ大きさの貫通穴が開けられており、貫通穴の端部はテーパの面取りがなされている。又、サイド部材34bの外周は円筒状に2段に延材されて径方向外周部外側に側面から順に後述するクラッチC2とブレーキB1の摩擦部材を係止するスプラインが設けられている。
複合遊星歯車100Aの組み立て構造を示す図1、図3及び図6に於いて、サイド部材34aの座aに設けられた4個の貫通穴及び対抗するサイド部材34bの4個の貫通穴に、両端をニードルローラベアリング36aの軸支径より小径となる4本の長梁軸35aがニードルローラベアリング36aの軸支径となる段付き部まで圧入され両端が絞められている。長梁軸35aは両サイドでロングピニオン遊星歯車Pa(32a)をそれぞれニードルローラベアリング36aにより軸支し、長梁軸35aの軸方向中央部に一体となる突起部を設けて両ニードルローラベアリング36aの軸方向移動を規制している。ロングピニオン遊星歯車Pa(32a)の両サイドにはサイド部材34a、34bとの間にスラスト方向の軸受けとなるサイドワッシャ38aが設けられている。サイド部材34aのボスbはサンギアS1(31a)の歯幅まで突き出され4個の貫通穴及び対抗するサイド部材34bの4個の貫通穴に、両端をニードルローラベアリング36bの軸支径より小径となる4本の短梁軸35bがニードルローラベアリング36bの軸支径となる段付き部まで圧入され両端が絞められている。短梁軸35bはピニオン遊星歯車Pb(32b)をニードルローラベアリング36bで軸支し、サイド部材34a、34bの両サイドに配されたサイドワッシャ38bはピニオン遊星歯車Pb(32b)のスラスト方向の軸受けとなる。サイド部材34bには案内板39が接合され長梁軸35aと短梁軸35b上のニードルローラベアリング36a、36bに潤滑油を供給する。又、サイド部材34a、34bの内径L1とL2はサンギアS1の外径L3より小さくなっており、後述する複合遊星歯車100AへのサンギアS1の外径L3より小径となる連結部材に軸支されるブシュ7hと7iが圧入されている。ここでサンギアS1(31a)はサイド部材34a側にスラストニードルベアリング37aを介して配され4等分に配されたロングピニオン遊星歯車Pa(32a)と噛合っており、同じ軸位置でロングピニオン遊星歯車Pa(32a)はリングギアR1と噛合ってシングルピニオン遊星歯車の形態をなしている。サンギアS2(31b)はサイド部材34b側にサンギアS1(31a)との間にスラストニードルベアリング37aを介して配され4等分に配されたピニオン遊星歯車Pb(32b)と噛合っており、ピニオン遊星歯車Pb(32b)はロングピニオン遊星歯車Pa(32a)と噛合ってダブルピニオン遊星歯車の形態をなしている。サンギアS2(31b)の歯幅は歯面荷重のためサンギアS1(31a)の歯幅より少なくとも噛合いピッチ円径分の比率分大きくなっており、長梁軸35aのサイド部材34a側に配されるニードルローラベアリング36aの軸方向スペースL3はサンギアS1(31a)の歯幅となっている。
本発明に於けるラビニョー遊星歯車方式とは異なるロングピニオン遊星歯車を用いない複合遊星歯車100Bの構造を図2に示す。複合遊星歯車100Aとの違いは長梁軸35c上にピニオン遊星歯車Pd(32d)とピニオン遊星歯車Pc(32c)が隣接してそれぞれニードルローラベアリング36d、36cにより軸支されており、それぞれサンギアS1(31a)とリングギアR1及びピニオン遊星歯車Pb(32b)とリングギアR1に一体のリングギアR2に噛合っていることである。従って、図4、図5及び図6では()内の数値が複合遊星歯車100Bとなる。両端をニードルローラベアリング36d、36cの軸支径より小径となる4本の長梁軸35cがニードルローラベアリング36d、36cの軸支径となる段付き部まで圧入され両端が絞められている。又、リングギアR2がピニオン遊星歯車Pc(32c)と噛合うためサイド部材34cに於ける外周円筒状の延材部が同径となり、外周部には後述するクラッチC2とブレーキB1の摩擦部材を係止するスプラインが設けられている。ここではピニオン遊星歯車Pd(32d)とPc(32c)の歯数及びリングギアR1とR2の歯数を同じとしている。その他は複合遊星歯車100Aと同じ形状となっており、説明を省略する。
本発明の複合遊星歯車100Aと100Bの各歯車の噛合い配置を示す図6と従来例として記載した非特許文献4と7の噛合い配置を示す図29に於いて、サンギアS1とリングギアR1及び4個のピニオン遊星歯車Paの歯数は所望の変速比により決定される絶対的なものである。図29では歯車のトルク容量を増す目的でピニオン遊星歯車Pa、Pbの個数を各4個とし歯面荷重を分散減少させたもので、遊星キャリアの両サイド部材を連結する連結部材Pの配置のためピニオン遊星歯車Paと噛合う4個のピニオン遊星歯車Pbのスペースが小さくなり、ピニオン遊星歯車Paと比べ歯数を減らして配さなければならなくなる。このことはピニオン遊星歯車Pbの回転数がアップし効率的にも耐久的も不利となる。加えてピニオン遊星歯車Pbを軸支する短梁軸を保持するサイド部材の肉厚δはサンギアS1の大径と短梁軸の軸支径で決まり軸支径が制限を受ける。又、ピニオン遊星歯車Pbと噛合うサンギアS2の歯数をサンギアS1の歯数に近づける場合、ピニオン遊星歯車Pbの歯数をより小さくしなければならずこの構造では種々不利な制限を受けることになる。一方、本発明を示す図6ではピニオン遊星歯車Pa、Pbを軸支する各4本の長梁軸と短梁軸で遊星キャリアの両サイド部材を連結するため、ピニオン遊星歯車Pbの歯数をピニオン遊星歯車Paと同等に出来る。後述の図16、図17で説明するが、低速度段に於ける変速比の段間差を小さくするにはサンギアS2の歯数をサンギアS1の歯数に近づけなければならず、歯型の転移も含めて本発明の構造では容易となる。当然短梁軸の軸支径も大きくなり、長梁軸と合わせて8本の太い軸支軸で両サイド部材を連結したので遊星キャリアの剛性が確保出来る。このように本発明では余計で複雑となる連結部材Pを用いず機能部品となる各4本の長梁軸と短梁軸を連結部材に利用したので、軽量でシンプルな構造となる。又、各部品の成形も簡単となる。
複合遊星歯車に於ける遊星キャリアの長梁軸及び長梁軸に軸支されるピニオン歯車の種々の形態を示した図7に於いて、TYPE0は一般的なラビニョー遊星歯車のロングピニオン遊星歯車の軸支形態を示し、TYPE1と2は本発明の複合遊星歯車100Aと100Bに用いた軸支形態である。尚、TYPE3はTYPE2と同じ形態の別の実施例である。従来のロングピニオン遊星歯車の軸支形態を示すTYPE0に於いて、長梁軸35は径がストレートで遊星キャリアのサイド部材34aと34bに挿入され両端で回り止めがなされており、ロングピニオン遊星歯車Pa(32a)を2列のニードルローラベアリング36とサイドワッシャ38aで軸支している。TYPE1は図1の複合遊星歯車100Aに用いたもので、長梁軸35aは両端が小径となり所謂スタッドピンの機能でサイド部材34aと34bを連結する。長梁軸35aには図8と図9で後述する歯車の噛合い力が作用して曲げが発生し歯当たりを悪くする。従って長梁軸35aの軸方向中央部に設けた太い径の突起部はニードルローラベアリング36aの軸方向移動を規制するとともにこの曲げを減少さす役目を担う。従来方式のTYPE0では組み立て不能となるため軸方向中央部に突起部を設けることは出来ない。又、図8と図9で後述する歯車の噛合い力はロングピニオン遊星歯車Pa(32a)を傾けるよう作用し、ニードルローラベアリング36aとのラジアル隙間分ロングピニオン遊星歯車Pa(32a)が傾き歯当たりを悪くする。この根本対策はロングピニオン遊星歯車Pa(32a)を2分割することで、TYPE2及び3の構造とすることである。TYPE2がピニオン遊星歯車Pd(32d)とPc(32c)の歯数及び長梁軸35cの軸支径を同じとしているのに対し、TYPE3はピニオン遊星歯車Pd(32e)とPc(32c)の歯数及び長梁軸35dの軸支径を異ならせピニオン遊星歯車Pd(32e)とPc(32c)の間にサイドワッシャ38aを配したものである。
この長梁軸と短梁軸に作用する歯車の噛合い力と複合遊星歯車内部の動力の流れを説明する図8と図9に於いて、ロングピニオン遊星歯車を用いたTYPE0、1と2分割されたピニオン遊星歯車を用いたTYPE2、3とは図7に示した構造のものである。尚、図8の上部に揚げた図は変速機後部から原動機を見た歯車の噛合いベクトル線図である。
<前進1速度段(1st)>
図8のTYPE0、1に於いて、入力動力(Input)は減速用遊星歯車(S0、P0、R0)を通過し締結されたクラッチC1を通って複合遊星歯車のサンギアS2に入力し、遊星キャリアがブレーキB1で固定されている。動力はサンギアS2からピニオン遊星歯車Pbとロングピニオン遊星歯車Paを通りリングギアR1から出力される。ベクトル線図に於いて、ロングピニオン遊星歯車Paはピニオン遊星歯車Pbとの噛合いで図面右部にV1のベクトルを受けると同時にリングギアR1との噛合いで図面左部に反力Wのベクトルを受ける。従ってロングピニオン遊星歯車Paの異なる位置に90°以上方向の異なるV1とWの力が作用することになる。この結果ロングピニオン遊星歯車Paは長梁軸上でニードルローラベアリングとのラジアル隙間分傾く。尚、ピニオン遊星歯車PbはサンギアS2との噛合いとロングピニオン遊星歯車Paとの噛合いで異なる方向の力を受けるが、短梁軸の同位置に力が作用するため短梁軸には合力Uが作用することになる。次に図8のTYPE2、3於いて、複合遊星歯車までの動力はTYPE0,1と同じであり、サンギアS2に入力された動力はピニオン遊星歯車Pbとピニオン遊星歯車Pcを通りリングギアR2と連結したR1から出力される。ピニオン遊星歯車Pcはピニオン遊星歯車Pbとの噛合いで図面右部にV1のベクトルを受けると同時にリングギアR2との噛合いで図面右部に反力Wのベクトルを受けるが、長梁軸の同位置に力が作用するため長梁軸には合力V2が作用することになる。尚、ピニオン遊星歯車Pbの短梁軸にはTYPE0,1と同じ合力Uが作用する。従ってピニオン遊星歯車Pb、Pcとも傾く力が作用せず良好な噛合いとなる。尚、図8に示したベクトルは歯車の噛合い圧力角を20°としたものである。
同様に前進2速度段(2nd)から前進6速度段(6th)及び後進段(Rev)に於ける複合遊星歯車内部の動力の流れを図9に示す。
<前進2速度段(2nd)>
入力動力(Input)は減速用遊星歯車(S0、P0、R0)を通過し締結されたクラッチC1を通って複合遊星歯車のサンギアS2に入力し、サンギアS1がブレーキB2で固定されている。TYPE0、1に於いて、動力はサンギアS2からピニオン遊星歯車Pbとロングピニオン遊星歯車Paを通りサンギアS1を反力としてリングギアR1から出力される。ここでピニオン遊星歯車Pbとロングピニオン遊星歯車Paの噛合いは前進1速度段(1st)と同じでロングピニオン遊星歯車Paの図面右部にはV1のベクトルが作用する。又、ロングピニオン遊星歯車Paは前進1速度段(1st)と異なりサンギアS1を反力としてリングギアR1と噛合っているので、ロングピニオン遊星歯車Paの図面左部にはサンギアS1とロングピニオン遊星歯車Paの噛合いベクトルとリングギアR1とロングピニオン遊星歯車Paの噛合いベクトルの合力Wが作用する。V1とWは方向が異なるためロングピニオン遊星歯車Paは長梁軸上でニードルローラベアリングとのラジアル隙間分傾く。一方、TYPE2、3ではピニオン遊星歯車Pcに作用するベクトルV2は前進1速度段(1st)と同じでピニオン遊星歯車PdはサンギアS1とリングギアR1との噛合いベクトルの合力Wを受ける。長梁軸には異なる位置でV2とWの力が作用するがピニオン遊星歯車がPcとPdに分割されているためピニオン遊星歯車が傾くことはない。
<前進3速度段(3rd)>
入力動力(Input)は減速用遊星歯車(S0、P0、R0)を通過し締結されたクラッチC1、C3を通って複合遊星歯車のサンギアS2とS1に分配されて入力する。TYPE0、1では2分配された動力がロングピニオン遊星歯車Paで合成され、ロングピニオン遊星歯車Paは前進2速度段(2nd)と同じ方向に力を受けるが、動力が分配されているので大きさは異なる。この変速段では各歯車が相対回転することなく遊星キャリアPと一体となり回転するため、ロングピニオン遊星歯車Paは長梁軸に対し傾くが噛合いが悪くなる心配はない。TYPE2、3では2分配された動力がリングギアR1とR2で合成され、ピニオン遊星歯車PcとPdが前進2速度段(2nd)と同じ方向に分配された力を受けピニオン遊星歯車が傾くことはない。
<前進4速度段(4th)>
入力動力(Input)はクラッチC2を通って直接遊星キャリアPに入力するとともに減速用遊星歯車(S0、P0、R0)に分配されクラッチC1を通ってサンギアS2に入力する。TYPE0、1に於いて、ロングピニオン遊星歯車Paにはピニオン遊星歯車Pbとの分配された動力の噛合いで前進1速度段(1st)と同じ方向のベクトルV1とリングギアR1との噛合いで前進1速度段(1st)と同じ方向のベクトルWが作用する。ベクトルV1とWは動力が分配されるため前進1速度段(1st)よりは小さい値となるが、長梁軸の異なる位置に作用するので長梁軸上でニードルローラベアリングとのラジアル隙間分傾く。一方、TYPE2、3ではピニオン遊星歯車Pcで分配された動力を合成してリングギアR2から出力するためピニオン遊星歯車Pc作用するベクトルV2はピニオン遊星歯車PbとリングギアR2との噛合いベクトルと直接遊星キャリアPから受けるベクトルの3個の合成となりピニオン遊星歯車が傾くことはない。
<前進5速度段(5th)、前進6速度段(6th)、後進段(Rev)>
この3種の変速段ではTYPE0、1及びTYPE2、3に於いても、動力がサンギアS1、ロングピニオン遊星歯車Pa又はロングピニオン遊星歯車Pdを軸支する遊星キャリアP及びリングギアR1からなるシンプル遊星歯車のみを通るため、良好な噛合いとなる。
以上のことよりラビニョー遊星歯車では前進1速度段(1st)から前進4速度段(4th)までロングピニオン遊星歯車Paが動力の橋渡しをするため、長梁軸の異なる位置の異なる方向に力が作用し、ロングピニオン遊星歯車Paは長梁軸上でニードルローラベアリングとのラジアル隙間分傾く。一般的なTYPE0ではこの力により長梁軸が曲がり傾きが更に助長されるため、その曲がりを押さるように工夫したのがTYPE1であり、噛合いによる傾く力をなくしたのがTYPE2、3である。尚、多段自動変速機では高速連続走行となる高速度段に於いて、図9の前進6速度段(6th)に示したように、最低限の歯車噛合いとして噛合いロスを減らす構造が必須となる。ラビニョー遊星歯車ではロングピニオン遊星歯車を用いることによりリングギアを1個で済ます利点があるが、これが歯当たりを悪くする欠点となる。このロングピニオン遊星歯車の利点に背理する欠点を、ロングピニオン遊星歯車を2分割しリングギアを2個にすれば変速パターン及び変速比を変えずに改良できる。
<A−1>
図10は本発明の流体伝導装置を無くした前進6速後進1速の2軸式多段自動変速機を示す全体構造である。図10に於いて、図の左側前方の図示しない原動機の出力軸9にボルトで固定されたの回転変動吸収の湿式ダンパ10aから、スプライン連結により変速装置の入力軸1に動力が導かれる。変速装置全体を収める変速機ハウジングは前部のフロントケース2aと中央及び後部に跨るメインケース2bからなり、入力軸1と並行に配された出力軸8a、8bを含んだディファレンシャル装置30とを軸支する母体となる。入力軸1は前端の隔壁2dに装着された円筒部材2fと後端のメインケース2bに配された軸受け7a、7bで軸支される。隔壁2dは乾式の原動機側と湿式の変速機側を隔てる隔壁であり、隔壁2dがフロントケース2a及び変速機ケース2bにボルト締めされ、軸受け7aを圧入した円筒部材2fが隔壁2dに圧入され、隔壁2dには入力軸1で駆動されるチャージングポンプ20を保持する保持部材2eがボルト締めされる。フロントケース2aはメインケース2bの内側を入力軸1の軸方向中央部まで円筒ボス部を形成して延材されており、入力軸1と同軸上の出力となるカウンターギア3を円筒ボス部外周で軸受け7cによりで軸支する。出力軸8a、8bを含んだディファレンシャル装置30のキャリアは一端がフロントケース2aに配された軸受け7fで、もう一端がメインケース2bに配された軸受け7gで軸支され、キャリアにはカウンターギア3と噛合うカウンターギア6がボルトで締結されている。そして、出力軸8a、8bはディファレンシャル装置30のキャリアで軸支される。周知の如く、ディファレンシャル装置30はピニオンギアとサイドギアからなり、サイドギアには自動変速装置の出力軸8a、8bが連結される。
図10とカウンターギア3前方の詳細を示す図19に於いて、フロントケース2aと隔壁2dに囲まれた部屋に減速用遊星歯車とクラッチC1、C3及びブレーキB2が配される。減速用遊星歯車はピニオン遊星歯車22をサイド部材24aと24bに固定された軸22上のニードルローラベアリング26で軸支する遊星キャリアP0(25)と、ピニオン遊星歯車22と噛合うサンギアS0(21)と、同じくピニオン遊星歯車22と噛合うリングギアR0(23)とからなるシンプル遊星歯車であり、サンギアS0が隔壁2dに圧入された円筒部材2fに固定され、リングギアR0の内歯に入力軸1に溶着されるハブがリティニングリング27で連結される。入力軸1は円筒部材2fの内径に配されたニードルローラベアリングである軸受け7aで軸支される。ここで、遊星キャリアP0が入力軸1に対して減速される。
クラッチC1、C3はクラッチドラムを共有した2連クラッチであり、遊星キャリアP0の図左側サイド部材24aにスプライン連結されるとともに円筒部材2fの外周にブシュ7mで軸支される円筒部材55と溶着し、隔壁2dに沿って減速用遊星歯車列の外周部に延材されたクラッチドラム54と、クラッチドラム54の側壁の両側に配され隔壁2dからクラッチ作動油が供給されるピストン56、76aと、ピストン56、76aに作用する遠心油圧キャンセラープレート57及びリターンスプリング58と、摩擦部材51、52a、71、72及びクラッチハブとなる連結部材12、11からなり、クラッチドラム54の外周円筒部内側スプラインの中央部にリティニングリング88で固定されるエンドプレート52cとエンドプレート52cを挟んでクラッチC1とC3の各一方の摩擦部材52a、72が係止されもう一方の各摩擦部材51、71がクラッチC1とC3のクラッチハブとなる連結部材12、11に係止される。ここで、隔壁2dの内周円筒部から供給される油圧でクラッチドラム54の外周のピストン76aがリティニングリング73で固定された逆L字部材76bを介してクラッチC3の摩擦部材71、72を図面左方向に押圧して遊星キャリアP0とクラッチハブとなる連結部材11を接合し、内周のピストン56がクラッチC1の摩擦部材51、52aを図面右方向に押圧して遊星キャリアP0とクラッチハブとなる連結部材12を接合し、内周のピストン56の右側には外周のピストン76aとスタッドピン53で連結された遠心油圧キャンセラープレート57が配され、遠心油圧キャンセラープレート57と内周のピストン56の間にはスプリングフォルダー59を介してリターンスプリング58が配され隔壁2dの内周円筒部から供給される油の遠心力も加わり2つのピストン56、76aをクラッチドラム54の側壁に戻して遊星キャリアP0とクラッチハブとなる連結部材11,12を開放する。したがって、クラッチC1、C3は1個のクラッチドラムと遠心油圧キャンセラープレート及びリターンスプリングが2個のピストンに作用するシンプルな2連クラッチとなる。この構造は本件出願人が特開2007−51651で提案したものである。
ブレーキB2はピストン103と、リターンスプリング104と、摩擦部材101、102aとエンドプレート102b及びブレーキハブ15からなり、一方の摩擦部材102aとエンドプレート102bがフロントケース2aの円筒部内側スプラインに係止され、摩擦部材102aとエンドプレート102bの間に交互に配されたもう一方の摩擦部材101がクラッチC3のクラッチハブとなる連結部材11にリティニングリング16で連結され2連クラッチC1,C3の外周径方向外側に延材されたブレーキハブ15に係止される。ここで、ピストン103は隔壁2dに配され、隔壁2dから供給される油圧で摩擦部材101、102a及びエンドプレート102bを押圧して連結部材11の制動を行い、リターンスプリング104はフロントケース2aの円筒部内側スプラインにリティニングリング106で固定されたスプリングフォルダー105で保持されピストン103を隔壁2dに戻し、連結部材11の開放を行う。
図10とカウンターギア3後方の詳細を示す図20に於いて、メインケース2bの後部にカウンターギア3側から順に、遊星減速歯車40と複合遊星歯車100Aが配され、複合遊星歯車100Aの外周径方向外側にはカウンターギア3側から順にブレーキB1とクラッチC2の摩擦部材が配される。複合遊星歯車100Aは前述の図1及び図3〜図6と同一である。軸中心に配される入力軸1はメインケース2bの後端内径に配されたニードルローラベアリングである軸受け7bで軸支される。
クラッチC2は入力軸1にスプライン連結されメインケース2bの内周ボスの外周部に沿って複合遊星歯車100Aの外周径方向外側まで延材されるクラッチドラム63と、クラッチドラム63に保持されメインケース2bの内周ボスからクラッチ作動油が供給されるピストン65と、ピストン65に作用する遠心油圧キャンセラープレート66及びリターンスプリング67と、摩擦部材61、62a、フロントプレート62cとエンドプレート62b及び複合遊星歯車100Aの遊星キャリアPを構成するサイド部材34bの外周に設けられたクラッチハブから構成される。クラッチドラム63の外周円筒部内側スプラインの開口部左端にはリティニングリング64でエンドプレート62bが保持されるとともに、複数の摩擦部材62aとフロントプレート62cが係止され、エンドプレート62bと複数の摩擦部材62a及びフロントプレート62cの間には交互に摩擦部材61が配されサイド部材34bの外周に設けられたクラッチハブの外周スプラインに係止される。ここで、メインケース2bの内周ボスから供給される油圧でピストン65はフロントプレート62cと摩擦部材61、62a及びエンドプレート62bを押圧して入力軸1と遊星キャリアPの接合を行い、リティニングリング68で保持される遠心油圧キャンセラープレート66とピストン65の間にはスプリングフォルダー69を介してリターンスプリング67が配されメインケース2bの内周ボスから供給される油の遠心力も加わりピストン65をクラッチドラム63の側壁に戻して入力軸1と遊星キャリアPの開放を行う。
ブレーキB1はピストン93と、リターンスプリング94と、摩擦部材91、92a、フロントプレート92b、ディッシュプレート95とエンドプレート92c及び複合遊星歯車100Aの遊星キャリアPを構成するサイド部材34bの外周に設けられたクラッチハブから構成される。メインケース2bの円筒部内側にはスプラインが設けられ、リティニングリング99で固定されるエンドプレート92cにはメインケース2bから摩擦部材91、92aの円周方向中央部に供給される油路が形成される。後述する図27で詳細を説明するが、摩擦部材91、92aの摩擦面の同一円周部にはピストン93側に配されるディッシュプレート95を保持するL字型のフロントプレート92bまで貫通穴が明けられており、エンドプレート92c側壁の摩擦部材91の接触面にはこの貫通穴と連通し押圧時に接触面から油が飛散しない円周溝が設けられている。エンドプレート92cを含め摩擦部材92aとフロントプレート92bがメインケース2bの円筒部内側スプラインに係止され、エンドプレート92cと複数の摩擦部材92a及びフロントプレート92bの間には交互に摩擦部材91が配され、リングギアR1の外周径方向外側に延材されたサイド部材34bの外周に設けられたブレーキハブの外周スプラインに係止される。ここで、ピストン93はメインケース2bの後端の外周側板に配されクラッチC2の外周径方向外側に延材して、メインケース2bから供給される油圧でディッシュプレート95、フロントプレート92b及び摩擦部材91、92aを押圧して遊星キャリアPの制動を行い、リターンスプリング94はメインケース2bの外周円筒部内側のリティニングリング97で固定されたスプリングフォルダー98で保持され、ピストン93を後端に戻し遊星キャリアPの開放を行う。又、ディッシュプレート95は締結時のショックを和らげるもので、摩擦部材のスティックスリップ(シャダー現象)の防止や車両のクリープ状態での滑りの安定性のため用いられ、摩擦部材が滑っている状態では大量の冷却油がメインケース2bからエンドプレート92cの円周方向中央部の油路を介して摩擦部材91、92aに供給される。尚、通常のATでは遊星キャリアP2の筒状延材部には内周から外周までブレーキB1の摩擦部材を冷却潤滑する複数の貫通油穴が明けられているが、ブレーキB1の開放時この冷却潤滑油のため摩擦部材に大きな連れ回りロスが発生する。本構造はこの大きな連れ回りロスを減少する目的で貫通油穴を設けていない。
複合遊星歯車100AのサンギアS2は入力軸1にスプライン連結されたクラッチドラム63にスラストニードルベアリングを挟んで隣接して配されるとともに入力軸1の外周にブシュ7jで軸支される連結部材12にスプライン連結され、サンギアS2にスラストニードルベアリングを挟んで隣接して配されるサンギアS1は連結部材12の外周にブシュ7kで軸支される連結部材11にスプライン連結される。複合遊星歯車100Aの遊星キャリアPを構成するサンギアS2側のサイド部材は内径に圧入されたブシュ7iで入力軸1にスプライン連結されたクラッチドラム63に軸支され、サンギアS1側のサイド部材は内径に圧入されたブシュ7hで連結部材11に軸支されるるとともに両側面がスラストニードルベアリング37a、37cで保持される。複合遊星歯車100Aの動力が出力するリングギアR1(33a)はサンギアS1側に配される。ここで遊星キャリアPは両端でブシュ7iと7hでラジアル方向が、スラストニードルベアリング37aと37cでスラスト方向が軸支される。
遊星減速歯車40はピニオン遊星歯車42をサイド部材44aと44bにピン49で固定された軸45上のニードルローラベアリング46で軸支する遊星キャリアP3と、ピニオン遊星歯車42と噛合うサンギアS3(41)と、同じくピニオン遊星歯車42と噛合うリングギアR3(43)とからなるシンプル遊星歯車であり、サンギアS3が両サイドをスラストニードルベアリングで保持されるとともに連結部材11にブシュ7Lで軸支され、遊星キャリアP3のサイド部材44bがメインケース2bの円筒部内側スプラインにリティニングリング47で固定される。サンギアS3と複合遊星歯車100AのリングギアR1はそれぞれの歯部をスプラインとしてリングギアR1にリティニングリング14で固定された連結部材13で連結される。遊星減速歯車40のリングギアR3は外周にパーキングブレーキ用ギア4aが形成され内歯をスプラインとしてリティニングリング3dで固定され、カウンターギア3に溶着されたプレートに連結される。カウンターギア3はフロントケース2aの中央円筒ボス部外周に回り止め3bで回り止めされたロックナット3aで固定される背面合わせのアンギュラ玉軸受け7cにリティニングリング3cで固定軸支される。ここで、遊星減速歯車40の遊星キャリアP3がメインケース2bに固定されるため、リングギアR3はサンギアS3に対して逆回転に減速され出力される。逆転されたカウンターギア3は出力軸8a、8bを含んだディファレンシャル装置30のキャリアにボルト締めされたカウンターギア6と噛合い出力軸8a、8bは前進段で入力軸1と同じ方向に回転する。今リングギアR3の歯数ZR3を82、サンギアS3の歯数ZS3を30とし、カウンターギア3及びカウンターギア3と噛合うカウンターギア6の歯数をZ3=56、Z6=76とすると減速比は以下の如くなる。
<遊星減速歯車40の減速比=−ZR3/ZS3=−2.733>
<カウンターギア部の減速比=−Z3/Z6=−1.357>
<終減速比=2.733×1.357=3.709>
A−1の特色は隣り合う変速段の変速比の段間差を小さくした前進6速後進1速の複合遊星歯車を用いた多段自動変速機を、流体伝導装置を用いずに2軸にコンパクトに配したことであり、軸方向の長さ及び重量は4ATよりも小さく出来、構造のシンプルさによるコスト低減と省燃費が可能となる。又体積も減るため、エンジンルームのスペースを広げることができる。省燃費となる第1要因は伝達ロスの大きな流体伝導装置を無くしたことであり、第2要因は締結要素となるクラッチ及びブレーキの摩擦部材の連れ回りロスを低減したことであり、第3要因は中継軸を無くし効率の悪い小歯車と大歯車のカウンターギアの噛合いを無くしたことである。締結要素の連れ回りロスに関しては5個の締結要素のうち、最も大きな容量で大きな連れ回りロスが発生するブレーキB1に於いて、冷却潤滑油を開放時摩擦部材に供給しないで済む構造とし、高速連続走行となる前進6速度段でブレーキB2により制動されるクラッチC3に於いて、クラッチドラムを常時回転させサンギアS1の連結部材11に繋がるクラッチハブを制動して摩擦部材に供給される冷却潤滑油を遠心力で吐き出す構造とした。又、フロントケース2aを延材して中央ボス部でカウンターギア3を軸支したのでメインケース2bの後端を一体として閉ざすことが出来る。尚、メインケース2bの後端を開放してリアケースを塞ぎ、ブレーキB1の摩擦部材の端面となり冷却油の供給孔を設けた側壁をメインケース2bに設けてもよい。パーキングブレーキ用ギアに関しては遊星減速歯車40のリングギアR3に設けたが、ディファレンシャル装置30のキャリアに設けてもよい。特に流体伝導装置の代わりに回転変動吸収の機械式ダンパ(湿式ダンパ10a)を用いる伝達系には衝撃負荷が発生するので、複合遊星歯車100Aを用いA−1のような配置構造にすると複合遊星歯車の耐久性が向上する。
<A−2>
図11は本発明の流体伝導装置を無くした前進8速後進2速の2軸式多段自動変速機を示す全体構造である。前進6速後進1速の2軸式多段自動変速機を図10に示すA−1との基本的な違いはカウンターギア3前方に配される減速用遊星歯車をシンプル遊星歯車からダブル遊星歯車とし、クラッチC4を追加したことであり、複合遊星歯車にはA−1で用いた100Aではなく100Bを用いた。当然複合遊星歯車はどちらを用いてもよい。したがって、遊星減速歯車40から出力軸8a、8bまでの構造はA−1と同一であり説明を省略する。図11に於いて、図の左側前方の図示しない原動機の出力軸9にボルトで固定されたの回転変動吸収の湿式ダンパ10aから、スプライン連結により変速装置の入力軸1に動力が導かれる。変速装置全体を収める変速機ハウジングは前部のフロントケース2aと中央部のメインケース2bとリアケース2cからなり、入力軸1と並行に配された出力軸8a、8bを含んだディファレンシャル装置30とを軸支する母体となる。入力軸1は前端の隔壁2dに装着された円筒部材2fと後端のリアケース2cに配された軸受け7a、7bで軸支される。隔壁2dは乾式の原動機側と湿式の変速機側を隔てる隔壁であり、隔壁2dがフロントケース2a及び変速機ケース2bにボルト締めされ、軸受け7aを圧入した円筒部材2fが隔壁2dに圧入され、隔壁2dには入力軸1で駆動されるチャージングポンプ20を保持する保持部材2eがボルト締めされる。フロントケース2aはメインケース2bの内側を入力軸1の軸方向中央部まで円筒ボス部を形成して延材されており、入力軸1と同軸上の出力となるカウンターギア3を円筒ボス部外周で軸受け7cによりで軸支する。
図11とカウンターギア3前方の詳細を示す図21に於いて、フロントケース2aと隔壁2dに囲まれた部屋に減速用遊星歯車とクラッチC1、C3、C4及びブレーキB2が配される。減速用遊星歯車は互いに噛合うピニオン遊星歯車22a、22bをサイド部材に固定された軸上のニードルローラベアリング26で軸支する遊星キャリアP0(25)と、ピニオン遊星歯車22bと噛合うサンギアS0(21)と、ピニオン遊星歯車22aと噛合うリングギアR0(23)とからなるダブル遊星歯車であり、サンギアS0が隔壁2dの内周側円筒部外周のスプラインで固定され、遊星キャリアP0の図右側サイド部材が入力軸1に溶着され、ダブルピニオン遊星歯車22a、22bを挟んだ図左側サイド部材24aに隔壁2dの側壁側に円筒状に延材されたクラッチC4のクラッチハブが連結され、リングギアR0を遊星キャリアP0の図右側サイド部材でスラストニードルベアリングにより保持しリティニングリング29で連結固定したクラッチC1、C3一体のクラッチハブ27がクラッチC4のクラッチハブの径方向外周に円筒状に延材され配される。入力軸1は円筒部材2fの内径に配されたニードルローラベアリングである軸受け7aで軸支される。ここで、リングギアR0が入力軸1の回転に対して減速されクラッチC1、C3のクラッチハブ27から出力され、入力軸1の回転が遊星キャリアP0のサイド部材24aを介してクラッチC4のクラッチハブから出力される。
クラッチC3、C4はクラッチドラムを共有した摩擦部材を二階建てに配する2連クラッチであり減速用遊星歯車と隔壁2dの間に配され、隔壁2dの内周側円筒部外周にブシュ7mで軸支されるとともに隔壁2dの側壁とフロントケース2aの内周に沿って延材しカウンターギア3側を開口部とするクラッチドラム74と、クラッチドラム74の側壁に円周方向に複数に配されたスタッドピン84で連結されるクラッチC4のクラッチドラム83と、クラッチドラム74に保持され隔壁2dの内周側円筒部からクラッチ作動油が供給されるピストン75、85と、ピストン75、85に作用する遠心油圧キャンセラープレート86及びリターンスプリング88と、クラッチC3の摩擦部材71、72a、フロントプレート72cとエンドプレート72b及びクラッチC1、C3一体のクラッチハブ27と、クラッチC4の摩擦部材81、82とエンドプレート82b及びクラッチハブから構成される。クラッチドラム74の外周円筒部は後述する減速用遊星歯車の外周径方向外側に配されるクラッチC1のクラッチドラム54の外周径方向外側を通ってカウンターギア3を軸支するフロントケース2aの側壁近くまで延材され連結部材11に連結される。又、クラッチドラム74の減速用遊星歯車より隔壁2d側の外周円筒部内側スプラインにはリティニングリング73でエンドプレート72bが保持されるとともに、複数の摩擦部材72aとフロントプレート72cが係止され、摩擦部材72a、フロントプレート72cとエンドプレート72bの間には交互に摩擦部材71が配されクラッチC1、C3一体のクラッチハブ27の隔壁2d側に延材された外周スプラインに係止される。クラッチドラム83のストッパを有した円筒部内側スプラインにはクラッチC4の摩擦部材82とエンドプレート82bが係止され、摩擦部材82aとエンドプレート82bの間に交互に摩擦部材81が配され遊星キャリアP0のサイド部材24aに連結され隔壁2d側に延材された連結部材の外周スプラインに係止される。ここでクラッチドラム74との間に油圧室を有するピストン75はスタッドピン84部に貫通孔を設けてクラッチドラム83の外周まで延材され隔壁2dの内周円筒部から供給される油圧でクラッチC3のフロントプレート72c、摩擦部材71、72aとエンドプレート72bを図面右方向に押圧してリングギアR0と連結部材11を接合し、クラッチドラム74にピストン75と重なって配されピストン75との間に油圧室を有するピストン85は隔壁2dの内周円筒部から供給される油圧でクラッチC4の摩擦部材81、82とエンドプレート82bを図面右方向に押圧して入力軸1と連結部材11を接合する。ピストン85リティニングリング88で保持される遠心油圧キャンセラープレート86とピストン85の間にはスプリングフォルダー89を介してリターンスプリング87が配され隔壁2dの内周円筒部から供給される油の遠心力も加わり2重に重ねられたピストン75,85をクラッチドラム74の側壁に戻してリングギアR0及び入力軸1と連結部材11の開放を行う。尚、入力軸1の回転と入力軸1の減速回転のどちらか一方を連結部材11に伝達するクラッチC3、C4の2連クラッチに於いて、2重に重ねられたピストン75,85には同時に油圧が供給されることはなく、正常な油圧制御が出来る。むしろ、本件出願人が特開2008−8432の図29で提案した2重ピストンの油圧制御を行えばよりシンプルで優れた制御が可能となる。又、遠心油圧キャンセラープレート86に隔壁2dの内周円筒部から供給される油はクラッチC3、C4の摩擦部材の潤滑にも用いられ、最高速度段となる前進8速度段でクラッチドラム74が制動され遠心力による潤滑油の排出が出来なくなった時この潤滑油の供給を止めて摩擦部材の連れ回りロスを低減する。
クラッチC1は減速用遊星歯車を挟んで2連クラッチC3、C4のクラッチドラム74と開口部を対抗してリングギアR0の外周径方向外側まで延材されるとともに連結部材12と連結するクラッチドラム54と、クラッチドラム54に保持され隔壁2dの内周側円筒部から入力軸1の遊星キャリアP0の連結部を介してクラッチ作動油が供給されるピストン55と、ピストン55に作用する遠心油圧キャンセラープレート56及びリターンスプリング57と、摩擦部材51、52aとエンドプレート52b及びクラッチC1、C3一体のクラッチハブ27から構成される。クラッチドラム54の外周円筒部内側スプラインの開口部左端にはリティニングリング53でエンドプレート52bが保持されるとともに、複数の摩擦部材52aが係止され、エンドプレート52bと複数の摩擦部材52aの間には交互に摩擦部材51が配されリングギアR0の外周径方向外側でリングギアR0に連結されたクラッチC1、C3一体のクラッチハブ27の外周スプラインに係止される。ここで、隔壁2dの内周側円筒部から入力軸1の遊星キャリアP0の連結部を介してクラッチ作動油が供給される油圧でピストン55は摩擦部材51、52aとエンドプレート52b押圧してリングギアR0と連結部材12の接合を行い、リティニングリング59で保持される遠心油圧キャンセラープレート56とピストン55の間にはスプリングフォルダー58を介してリターンスプリング57が配され隔壁2dの内周側円筒部から供給される油の遠心力も加わりピストン55をクラッチドラム54の側壁に戻してリングギアR0と連結部材12の開放を行う。
ブレーキB2はピストン103と、リターンスプリング104と、摩擦部材101、102a及びブレーキハブとなるクラッチドラム74からなり、一方の摩擦部材102aがフロントケース2aの円筒部内側スプラインに係止され、摩擦部材102aと交互に配されるもう一方の摩擦部材101が2連クラッチC3、C4のクラッチドラム74の外周スプラインに係止される。ここで、ピストン103は隔壁2dに配され、隔壁2dから供給される油圧で摩擦部材101、102aを押圧してクラッチドラム74の制動を行い、リターンスプリング104はフロントケース2aの円筒部内側スプラインにリティニングリング106で固定されたスプリングフォルダー105で保持されピストン103を隔壁2dに戻し、クラッチドラム74の開放を行う。
図11とカウンターギア3後方の詳細を示す図22に於いて、メインケース2bの後部にカウンターギア3側から順に、遊星減速歯車40と複合遊星歯車100Bが配され、複合遊星歯車100Bの外周径方向外側にはカウンターギア3側から順にブレーキB1とクラッチC2の摩擦部材が配される。複合遊星歯車100Bは前述の図2及び図3〜図6と同一である。軸中心に配される入力軸1はリアケース2cの内径に配されたニードルローラベアリングである軸受け7bで軸支される。
A−1に用いた複合遊星歯車100AとA−2に用いた複合遊星歯車100Bの違いは遊星キャリアPの長梁軸に配したピニオン遊星歯車が一体か分割されているかの違いであり、ピニオン遊星歯車が一体となる複合遊星歯車100AではリングギアR1がサンギアS1側で一体となるピニオン遊星歯車Paと噛合い、ピニオン遊星歯車が分割された複合遊星歯車100BではリングギアR1がサンギアS1側のピニオン遊星歯車Pdと噛合うとともにリングギアR1に連結されたリングギアR2がサンギアS2側のピニオン遊星歯車Pcと噛合う。ここでピニオン遊星歯車PaとPc及びPdの歯数は同じでありリングギアR1とR2の歯数は同じとする。したがって、A−1ではクラッチC2の摩擦部材61とブレーキB1の摩擦部材91を係止する遊星キャリアPに於けるサンギア2側のサイド部材の円周径がクラッチC2の摩擦部材61の方が小径となる2段としたのに対し、A−2ではリングギアR2がピニオン遊星歯車Pdと噛合うため遊星キャリアPに於けるサンギア2側のクラッチC2の摩擦部材61とブレーキB1の摩擦部材91を係止するサイド部材の円周径が同じとなる。
クラッチC2はクラッチドラム63の外径がA−1より大きくなるだけであり、構造及び作動はA−1と同じであるため説明を省略する。尚、メインケース2bは後方が開口され開口部にリアケース2cを配したので、クラッチC2のピストン65はリアケース2cから油圧の供給を受ける。
ブレーキB1は摩擦部材への冷却油の供給部がA−1と異なるだけであり、その他の構造及び作動はA−1と同じであるため説明は冷却油の供給部のみとする。尚、ブレーキB1のピストン93はリアケース2cから油圧の供給を受ける。メインケース2bは複合遊星歯車100Bの外周径方向外側の図左端に側壁が設けられ摩擦部材摩擦部材91、92aの円周方向中央部に供給される油路が形成される。又、この側壁を挟んで遊星減速歯車40に於ける遊星キャリアP3のサイド部材44bがメインケース2bの固定される。
複合遊星歯車100Bの配置もA−1に於ける複合遊星歯車100Aと同一であり説明を省略するが、入力軸1の外周にブシュ7jで軸支される連結部材12はサンギアS2とクラッチC1のクラッチドラム54を連結し、連結部材12の外周にブシュ7kで軸支される連結部材11はサンギアS1と2連クラッチC3、C4のクラッチドラム74を連結する。又、遊星キャリアPは両端でブシュ7iと7hでラジアル方向が、スラストニードルベアリング37aと37cでスラスト方向が軸支される。
A−2の特色は隣り合う変速段の変速比の段間差を小さくした前進8速後進2速の複合遊星歯車を用いた多段自動変速機を、流体伝導装置を用いずに2軸にコンパクトに配したことであり、軸方向の長さは通常の4ATと同等で重量は4ATよりも軽くなり、構造のシンプルさによるコスト低減と省燃費が可能となる。A−1と比べ変速段の変速比の段間差が更に小さくなることにより、原動機の回転を低く保つことが出来るため燃費はA−1より良くなる。但し、A−1より減速遊星歯車の減速比が大きくなるので複合遊星歯車の負荷は増える。省燃費となる要因はA−1で説明した内容と同じであり説明は省略するが、A−1にクラッチC4を追加したため摩擦部材の連れ回りロスは増える。しかし、高速連続走行となる前進8速度段でブレーキB2により制動される2連クラッチC3、C4のクラッチドラム74の摩擦部材の配置を独立させ、摩擦部材に冷却潤滑油を送らないことで極力連れ回りロスを低減した。一般的な中継軸を用いた3軸式では隔壁2dの後部は大歯車のカウンターギアによる干渉のため、入力軸1上の径が制限され2連クラッチC3、C4をこの位置に2階建構造として配することが困難となるが、2軸方式としたのでこの配置が可能となる。又、フロントケース2aを延材して中央ボス部でカウンターギア3を軸支したのでブレーキB1の摩擦部材の端面に側壁を設けることが出来、そこから冷却油の供給を可能とした。特に流体伝導装置の代わりに回転変動吸収の機械式ダンパ(湿式ダンパ10a)を用いる伝達系には衝撃負荷が発生し、更に大きく減速して複合遊星歯車に動力を入力させることも加わり複合遊星歯車の負荷が増大するので、複合遊星歯車100Bを用いA−2のような配置構造にすると複合遊星歯車の耐久性が向上する。
<B−1>
図12は本発明の流体伝導装置を無くした前進6速後進1速の3軸式多段自動変速機を示す全体構造である。2軸式としたA−1との基本的な違いは遊星減速歯車40の代わりに中継軸5を用いたことであり、この他の動力伝達構造及び作動はA−1と同一である。A−1ではその利点を特長付けるためフロントケース2aを軸方向に延材させ円筒ボス部でカウンターギア3を軸支する2軸方式としたが、メインケース2bの中央部に円筒ボス部を設けカウンターギア3を軸支する3軸方式の方が一般的である。図12に於いて、図の左側前方の図示しない原動機の出力軸9にボルトで固定されたの回転変動吸収の湿式ダンパ10aから、スプライン連結により変速装置の入力軸1に動力が導かれる。変速装置全体を収める変速機ハウジングは前部のフロントケース2aと中央及び後部に跨るメインケース2b及びリアケース2cからなり、入力軸1と並行に配された中継軸5と出力軸8a、8bを含んだディファレンシャル装置30とを軸支する母体となる。入力軸1は前端の隔壁2dにボルト締めされた保持部材2eに装着された円筒部材2fと後端のリアケース2cに配された軸受け7a、7bで軸支される。隔壁2dは乾式の原動機側と湿式の変速機側を隔てる隔壁であり、隔壁2dがフロントケース2a及び変速機ケース2bにボルト締めされ、軸受け7aを圧入した円筒部材2fが保持部材2eに圧入され、隔壁2dと保持部材2eの間で入力軸1により駆動される変速装置のチャージングポンプ20を保持する。中継軸5は一端がフロントケース2aに配された軸受け7dで、もう一端が変速装機ケース2bに配された軸受け7eで軸支され、入力軸1と同軸上の出力となるカウンターギア3と噛合うカウンターギア4がスプラインで連結されるとともに、出力軸8a、8bを含んだディファレンシャル装置30に動力を伝達するカウンターギアが一体成形されている。又、ディファレンシャル装置30のキャリアは一端がフロントケース2aに配された軸受け7fで、もう一端が変速装機ケース2bに配された軸受け7gで軸支され、カウンターギアと一体の中継軸5と噛合うカウンターギア6がボルトで締結されている。そして、出力軸8a、8bはディファレンシャル装置30のキャリアで軸支される。周知の如く、ディファレンシャル装置30はピニオンギアとサイドギアからなり、サイドギアには自動変速装置の出力軸8a、8bが連結される。
図12とカウンターギア3前方の詳細を示す図23に於いて、メインケース2bの軸方向中央部にはカウンターギア3の軸受け7cを円筒部外周で軸支するL字型の側壁が設けられ、隔壁2dとの間に減速用遊星歯車とクラッチC1、C3及びブレーキB2が配される。ここで減速用遊星歯車とクラッチC1、C3の配置及び構造は図10及び図19のA−1と同一となり説明を省略する。尚、ブレーキB2を含め作動形態はA−1と同一となるが、ブレーキB2の摩擦部材がフロントケース2aではなくメインケース2bに配される。
ブレーキB2はピストン103と、リターンスプリング104と、摩擦部材101、102aとエンドプレート102b及びブレーキハブ15からなり、一方の摩擦部材102aとエンドプレート102bがカウンターギア3を軸支するL字型の側壁側の円筒部内側スプラインに係止され、摩擦部材102aとエンドプレート102bの間に交互に配されたもう一方の摩擦部材101がクラッチC3のクラッチハブとなる連結部材11にリティニングリング16で連結され2連クラッチC1,C3の外周径方向外側に延材されたブレーキハブ15に係止される。ここで、ピストン103は隔壁2dに配され、隔壁2dから供給される油圧で摩擦部材101、102a及びエンドプレート102bを押圧して連結部材11の制動を行い、リターンスプリング104はピストン103が装着される隔壁2dの鍔にリティニングリング106で固定されたスプリングフォルダー105で保持されピストン103を隔壁2dに戻し、連結部材11の開放を行う。このピストン103とリターンスプリング104が装着される隔壁2dと摩擦部材101、摩擦部材102aの間にカウンターギア6が位置し、ピストン103はカウンターギア6との干渉を避けるため一部切り欠きが設けられている。
図12とカウンターギア3後方の詳細を示す図24に於いて、メインケース2bのL字型側壁で軸支されるカウンターギア3の後部には複合遊星歯車100Aが配され、複合遊星歯車100Aの外周径方向外側にはカウンターギア3側から順にブレーキB1とクラッチC2の摩擦部材が配される。複合遊星歯車100Aは前述の図1及び図3〜図6と同一であり、且つ又図10と図20に示したA−1に用いたものと同一である。軸中心に配される入力軸1はリアケース2cの内径に配されたニードルローラベアリングである軸受け7bで軸支される。
クラッチC2の構造及び作動はA−1と同じであり、ブレーキB1は摩擦部材への冷却油の供給部がA−2と同じメインケース2bに設けた側壁となり、その他の構造及び作動はA−1と同じであるため説明を省略する。尚、メインケース2bは後方が開口され開口部にリアケース2cを配したので、クラッチC2のピストン65とブレーキB1のピストン93はリアケース2cから油圧の供給を受ける。
カウンターギア3はメインケース2bの軸方向中央部に設けられたL字型の側壁の円筒ボス部外周に回り止め3bで回り止めされたロックナット3aで固定される背面合わせのアンギュラ玉軸受け7cに、リティニングリング3cで固定軸支される。複合遊星歯車100Aの配置はA−1と同一のため説明は省略する。一部A−1と異なる遊星キャリアPの軸方向の保持とリングギアR1の連結について説明する。複合遊星歯車100Aの遊星キャリアPを構成するサンギアS1側のサイド部材は、内径に圧入されたブシュ7hで連結部材11に軸支されるるとともにメインケース2bのL字型の側壁内周で前方に延材され端面がスラストニードルベアリング37cで保持され、サンギアS1側がスラストニードルベアリング37aで保持される。複合遊星歯車100Aの動力が出力するリングギアR1(33a)はサンギアS1側に配されカウンターギア3側に延材され内歯をスプラインとしてリティニングリング14でカウンターギア3に連結固定される。尚、複合遊星歯車100Aの遊星キャリアPを構成するサンギアS2側のサイド部材は内径に圧入されたブシュ7iで入力軸1にスプライン連結されたクラッチドラム63に軸支され、遊星キャリアPは両端でブシュ7iと7hでラジアル方向が、スラストニードルベアリング37aと37cでスラスト方向が軸支される。
B−1の特色は隣り合う変速段の変速比の段間差を小さくした前進6速後進1速の複合遊星歯車を用いた多段自動変速機を、流体伝導装置を用いずに3軸にコンパクトに配したことであり、軸方向の長さは4ATよりもと言うより5速MT、CVTを含んだ全ての変速機で最小となり、構造のシンプルさによるコスト低減と省燃費が可能となる。A−1と比べ中継軸の小歯車と大歯車のカウンターギアの噛合いが不利になるだけで、A−1と同じく省燃費の特性を持つ。特に流体伝導装置の代わりに回転変動吸収の機械式ダンパ(湿式ダンパ10a)を用いる伝達系には衝撃負荷が発生するので、複合遊星歯車100Aを用いB−1のような配置構造にすると複合遊星歯車の耐久性が向上する。
<B−2>
図13は本発明の流体伝導装置を無くした前進8速後進2速の3軸式多段自動変速機を示す全体構造である。2軸式としたA−2との基本的な違いは遊星減速歯車40の代わりに中継軸5を用いたこと及び複合遊星歯車100Bの配置であり、動力伝達構造及び作動はA−2と同一である。複合遊星歯車100Bに入力軸の回転及び入力軸の減速回転を入力する減速用遊星歯車と減速用遊星歯車を挟んだクラッチC1と2連クラッチC3、C4及びブレーキB2は径が大きく出力軸に配されるカウンターギア6と干渉するためカウンターギア3の後方に配し、複合遊星歯車100BとクラッチC2及びブレーキB1をカウンターギア3の前方に配して、A−2とは逆にしたものである。尚、クラッチC2はカウンターギア6との干渉を避けるため摩擦部材を複合遊星歯車100Bの前方に配した。図13の左側前方の図示しない原動機の出力軸9にボルトで固定された回転変動吸収の油圧(ハイドロ)ダンパ10bからスプライン連結により変速装置の入力軸1に動力が導かれる。変速装置全体を収めるハウジングは前部のフロントケース2aと中央部のメインケース2bと後部のリアケース2cとからなり、入力軸1と並行に配された中継軸5及び出力軸を含んだディファレンシャル装置30とを軸支する母体となる。入力軸1は保持部材2eに一体となり圧入された円筒部材2fに配された軸受け7aとリアケース2cに配された軸受け7bで軸支される。隔壁2dは乾式の原動機側と湿式のメインケース2bを隔てる隔壁であり、隔壁2dがフロントケース2a及びメインケース2bにボルト締めされ、軸受け7aが圧入された円筒部材2fと一体の保持部材2eが隔壁2dにボルト締めされ、隔壁2dと保持部材2eの間で変速装置のチャージングポンプ20を保持する。中継軸5は一端がフロントケース2aに配された軸受け7dで、もう一端がメインケース2bに配された軸受け7eで軸支され、入力軸1と同軸上の出力となるカウンターギア3と噛合うカウンターギア4がスプラインで連結されるとともに、出力軸8a、8bを含んだディファレンシャル装置30に動力を伝達するカウンターギアが一体成形されている。又、ディファレンシャル装置30のキャリアは一端がフロントケース2aに配された軸受け7fで、もう一端がメインケース2bに配された軸受け7gで軸支され、カウンターギアと一体の中継軸5と噛合うカウンターギア6がボルトで締結されている。そして、出力軸8a、8bはディファレンシャル装置30のキャリアで軸支される。周知の如く、ディファレンシャル装置30はピニオンギアとサイドギアからなり、サイドギアには自動変速装置の出力軸8a、8bが連結される。
メインケース2bの軸方向中央部にはカウンターギア3の軸受け7cを円筒外周部で軸支する逆L字型の側壁が設けられ、この側壁と内周ボス部が側壁付近まで延材されたリアケース2cの間には減速用遊星歯車列と減速用遊星歯車列を挟んだ外周径方向外側には側壁側から順にクラッチC1と摩擦材を2階建てに有した2連クラッチC3、C4が、更に外周径方向外側にはブレーキB2が配される。側壁と隔壁2d及び保持部材2eの間には側壁側から順にカウンターギア3と複合遊星歯車100Bが配され、複合遊星歯車100Bの外周径方向外側にはブレーキB1が配され、複合遊星歯車100Bの前方にクラッチC2が配される。
図13とカウンターギア3前方の詳細を示す図25に於いて、カウンターギア3はメインケース2bの軸方向中央部に配された逆L字型をした側壁の円筒ボス部外周に回り止め3bで回り止めされたロックナット3aで固定される背面合わせのアンギュラ玉軸受け7cにリティニングリング3cで固定軸支される。複合遊星歯車100Bはカウンターギア3側をサンギアS1とピニオン遊星歯車Pd及びリングギアR1によるシンプル遊星歯車の噛合いとしてカウンターギア3の前方に配され、複合遊星歯車100Bの動力が出力するリングギアR1、R2(33b)はカウンターギア3側に延材され内歯をスプラインとしてリティニングリング14でカウンターギア3に連結固定される。複合遊星歯車100BはA−2で用いたものと同じ仕様であり詳細説明は省略するが、リングギアR1がサンギアS1側のピニオン遊星歯車Pdと噛合うとともにリングギアR1に連結されたリングギアR1と同歯数のリングギアR2がピニオン遊星歯車Pa及びPdと同歯数のピニオン遊星歯車Pcと噛合う。入力軸1は保持部材2eに一体となり圧入された円筒部材2fに配された軸受け7aで変速機前方が軸支され、サンギアS2に連結する連結部材12が入力軸1に軸受け7jで軸支され、サンギアS1に連結する連結部材11が連結部材12に軸受け7kで軸支される。複合遊星歯車100Bの遊星キャリアPを構成するサンギアS2側のサイド部材は内径に圧入されたブシュ7iで入力軸1に軸支され、サンギアS1側のサイド部材は内径に圧入されたブシュ7hで連結部材11に軸支されるるとともにメインケース2bの逆L字型の側壁内周で後方に延材され端面がスラストニードルベアリング37cで保持され、サンギアS1側がスラストニードルベアリング37aで保持される。
クラッチC2は入力軸1に溶着され、隔壁2dにボルト締めされた保持部材2eの内周ボスの外周部に沿って複合遊星歯車100Bの外周まで円筒状に延材されるクラッチドラム63と、クラッチドラム63に保持され保持部材2eの内周ボスからクラッチ作動油が供給されるピストン65と、ピストン65に作用する遠心油圧キャンセラープレート66及びリターンスプリング67と、摩擦部材61、62a、フロントプレート62cとエンドプレート62b及び複合遊星歯車100Bの遊星キャリアPを構成するサンギアS2側のサイド部材の外周を隔壁2d側に円筒状に延材したクラッチハブから構成される。作動はA−1と同一のため説明を省略する。ここでクラッチドラム63の外径は出力軸に配されるカウンターギア6との干渉を避けるため複合遊星歯車100Bの前方にリングギアR1、R2より少し大きくなる径で配した。
ブレーキB1はピストン93と、リターンスプリング94と、摩擦部材91、92a、フロントプレート92b、ディッシュプレート95とエンドプレート92c及び複合遊星歯車100Bの遊星キャリアPを構成するサンギアS2側のサイド部材のリングギアR1、R2の外周径方向外側に沿って設けられたクラッチハブから構成される。メインケース2bのリングギアR1、R2とカウンターギア3の連結部外周外側のメインケース2bには側壁が設けられ摩擦部材摩擦部材91、92aの円周方向中央部に供給される油路が形成される。ディッシュプレート95、フロントプレート92b及び摩擦部材91、92aの仕様及びブレーキB1の作動はA−1と同一のため説明を省略する。ここで、ピストン93は隔壁2dに配され、隔壁2dから供給される油圧でディッシュプレート95、フロントプレート92b及び摩擦部材91、92aを押圧して遊星キャリアPの制動を行い、リターンスプリング94はピストン93が装着される隔壁2dの鍔にリティニングリング98で固定されたスプリングフォルダー97で保持されピストン93を隔壁2dに戻し、遊星キャリアPの開放を行う。このピストン93とリターンスプリング94が装着される隔壁2dとディッシュプレート95間にカウンターギア6が位置し、ピストン93はカウンターギア6との干渉を避けるため一部切り欠きが設けられている。
図13とカウンターギア3後方の詳細を示す図26に於いて、減速用遊星歯車と減速用遊星歯車を挟んだクラッチC1と2連クラッチC3、C4及びブレーキB2の配置は、A−2のカウンターギア3の前方に配された減速用遊星歯車と減速用遊星歯車を挟んだクラッチC1と2連クラッチC3、C4及びブレーキB2の配置をカウンターギア3に対して対称に配したもので、A−2の隔壁2dがリアケース2cであり、ブレーキB2が配されるA−2のフロントケース2aがメインケース2bとなる。A−2が入力軸1と減速用遊星歯車の遊星キャリアP0との連結を溶着したのに対しスプライン連結とした等の異なりはあるものの、基本的な配置構造はA−2と同一であるため説明は省略する。リアケース2cの内周ボスはメインケース2bの軸方向中央部に配された逆L字型をした側壁近くまで延材され、その先端内周で軸受け7bにより入力軸1を軸支するため入力軸1は短くなる。
B−2の特色は隣り合う変速段の変速比の段間差を小さくした前進8速後進2速の複合遊星歯車を用いた多段自動変速機を、流体伝導装置を用いずに3軸にコンパクトに配したことであり、軸方向の長さは4ATの一番短いものと同等で重量は4ATよりも軽くなり、構造のシンプルさによるコスト低減と省燃費が可能となる。A−2と比べ中継軸の小歯車と大歯車のカウンターギアの噛合いが不利になるだけでA−2より軸方向の長さが短くなり、A−2と同じく省燃費の特性を持つ。流体伝導装置の代わりに回転変動吸収の機械式ダンパは高性能な油圧(ハイドロ)ダンパ10bを用いた。
<C−1>
図14は本発明の流体伝導装置としてトルクコンバータを用いた前進6速後進1速の3軸式多段自動変速機を示す全体構造である。トルクコンバータ10cは本願出願人が特開2008−196660で提案した独立ピストン型の高性能なロックアップクラッチを持った流体伝導装置であり、車両の発進時や変速時以外は全て原動機直結のロックアップが可能となる。変速機部の配置構造はブレーキB1を除いてB−1と同等である。図14の左側前方の図示しない原動機の出力軸9にボルトで固定されたフレキシブルプレートからトルクコンバータ10cのタービンランナを介して変速装置の入力軸1に動力が導かれる。トルクコンバータ10cはフレキシブルプレートでフロントカバーを介して駆動されるとともに変速機のチャージングポンプ20を駆動するポンプインペラとタービンランナ及び変速機ハウジングに固定された円筒部材2fにワンウェイクラッチを介して固定されるホィールステータからなる流体伝導装置部と、ポンプインペラに係止された摩擦部材をフロントカバーに独立した油圧室で押圧し回転変動吸収ダンパを介してタービンランナとの断接を行うピストンを有したロックアップクラッチとからなる。変速装置全体を収める変速機ハウジングは前部のフロントケース2aと中央及び後部に跨るメインケース2b及びリアケース2cからなり、入力軸1と並行に配された中継軸5と出力軸8a、8bを含んだディファレンシャル装置30とを軸支する母体となる。入力軸1は前端の隔壁2dにボルト締めされた保持部材2eに装着された円筒部材2fと後端のリアケース2cに配された軸受け7a、7bで軸支される。隔壁2dは乾式の原動機側と湿式の変速機側を隔てる隔壁であり、隔壁2dがフロントケース2a及び変速機ケース2bにボルト締めされ、トルクコンバータ10cのホィールステータを保持するとともに軸受け7aを圧入した円筒部材2fが保持部材2eに圧入され、隔壁2dと保持部材2eの間でトルクコンバータ10cのポンプインペラにより駆動される変速装置のチャージングポンプ20を保持する。中継軸5は一端がフロントケース2aに配された軸受け7dで、もう一端が変速装機ケース2bに配された軸受け7eで軸支され、入力軸1と同軸上の出力となるカウンターギア3と噛合うカウンターギア4がスプラインで連結されるとともに、出力軸8a、8bを含んだディファレンシャル装置30に動力を伝達するカウンターギアが一体成形されている。又、ディファレンシャル装置30のキャリアは一端がフロントケース2aに配された軸受け7fで、もう一端が変速装機ケース2bに配された軸受け7gで軸支され、カウンターギアと一体の中継軸5と噛合うカウンターギア6がボルトで締結されている。そして、出力軸8a、8bはディファレンシャル装置30のキャリアで軸支される。周知の如く、ディファレンシャル装置30はピニオンギアとサイドギアからなり、サイドギアには自動変速装置の出力軸8a、8bが連結される。
C−1は入力継手となるトルクコンバータ10cとブレーキB1を除いて図12に示したB−1と同等であり、説明はブレーキB1部のみとする。図14に於いて複合遊星歯車100AのリングギアR1の外周径方向外側にカウンターギア3側から順にワンウェイクラッチOWCとブレーキB1の摩擦部材が配される。ワンウェイクラッチOWCはメインケース2bの内周スプラインにリティニングリングで固定保持されたアウターレースと、遊星キャリアPを構成するサンギアS2側のサイド部材の外周に溶着された円筒部材のインナーレースの間に配され、遊星キャリアPが入力軸1とは逆方向に回るのを阻止し同方向に回るのを自由とする役目を担う。ブレーキB1の摩擦部材はワンウェイクラッチOWC側からエンドプレートと複数の摩擦部材がワンウェイクラッチOWCを保持するメインケース2bの内周スプラインに係止され、エンドプレートと複数の摩擦部材の間に交互に配される摩擦部材は遊星キャリアPを構成するサンギアS2側のサイド部材の外周に溶着された円筒部材の外周スプラインに係止される。但し、B−1と異なり運転操作におけるシフトタワー位置がD(ドライブ)レンジの前進1速度段ではワンウェイクラッチOWCを用い、ブレーキB1は後進段と1レンジでしか締結しないので仕事量は少なくて済み、ディッシュプレートも用いてなく摩擦部材はB−1のように特別な冷却はしていない。又、トルクコンバータ10cを発進時に滑らせるのでブレーキB1の摩擦部材の負荷は小さく、摩擦部材の内外径差と板厚も小さくできるのでB−1の摩擦部材の配置スペースにワンウェイクラッチOWCと摩擦部材の両方を配することができる。
C−1の特色は隣り合う変速段の変速比の段間差を小さくした前進6速後進1速の複合遊星歯車を用いた多段自動変速機を、トルクコンバータを用いて3軸にコンパクトに配したことであり、軸方向の長さは6ATでは最小となる。C−1は流体伝導装置を用いないA、B型と違って一般的な多段自動変速機である。トルクコンバータは独立ピストン型の高性能なロックアップクラッチを有しており、従来のトーラス内圧で押圧する簡易型ロックアップクラッチと異なり応答性等制御性が良く、発進及び変速時以外は全てロックアップが可能となり燃費を低減することができる。但し、トルクコンバータやブレーキB−1の摩擦部材の空転ロスがあり、B−1よりは燃費が劣る。当然ロックアップを多用すると伝達系特に変速用歯車には衝撃負荷が発生するので、C−1では複合遊星歯車100Aを用い遊星キャリアPの軸支を安定させ複合遊星歯車の耐久性を向上させた。
<C−2>
図15は本発明の流体伝導装置として流体継手を用いた前進8速後進2速の3軸式多段自動変速機を示す全体構造である。流体継手10dは本願出願人が特開2008−196660で提案した独立ピストン型の高性能なロックアップクラッチを持った流体伝導装置であり、車両の発進時や変速時以外は全て原動機直結のロックアップが可能となる。変速機部の配置構造はブレーキB1を除いてB−2と同等である。図15の左側前方の図示しない原動機の出力軸9にボルトで固定されたフレキシブルプレートから流体継手10dのタービンランナを介して変速装置の入力軸1に動力が導かれる。流体継手10dはフレキシブルプレートでフロントカバーを介して駆動されるとともに変速機のチャージングポンプ20を駆動するポンプインペラとタービンランナからなる流体伝導装置部と、ポンプインペラに係止された摩擦部材をフロントカバーに独立した油圧室で押圧し回転変動吸収ダンパを介してタービンランナとの断接を行うピストンを有したロックアップクラッチとからなる。変速装置全体を収めるハウジングは前部のフロントケース2aと中央部のメインケース2bと後部のリアケース2cとからなり、入力軸1と並行に配された中継軸5及び出力軸を含んだディファレンシャル装置30とを軸支する母体となる。入力軸1は保持部材2eに一体となり圧入された円筒部材2fに配された軸受け7aとリアケース2cに配された軸受け7bで軸支される。隔壁2dは乾式の原動機側と湿式の変速機ケース2bを隔てる隔壁であり、隔壁2dがフロントケース2a及び変速機ケース2bにボルト締めされ、軸受け7aが圧入された円筒部材2fと一体の保持部材2eが隔壁2dにボルト締めされ、隔壁2dと保持部材2eの間で流体継手10dのポンプインペラにより駆動される変速装置のチャージングポンプ20を保持する。中継軸5は一端がフロントケース2aに配された軸受け7dで、もう一端が変速装機ケース2bに配された軸受け7eで軸支され、入力軸1と同軸上の出力となるカウンターギア3と噛合うカウンターギア4がスプラインで連結されるとともに、出力軸8a、8bを含んだディファレンシャル装置30に動力を伝達するカウンターギアが一体成形されている。又、ディファレンシャル装置30のキャリアは一端がフロントケース2aに配された軸受け7fで、もう一端が変速装機ケース2bに配された軸受け7gで軸支され、カウンターギアと一体の中継軸5と噛合うカウンターギア6がボルトで締結されている。そして、出力軸8a、8bはディファレンシャル装置30のキャリアで軸支される。周知の如く、ディファレンシャル装置30はピニオンギアとサイドギアからなり、サイドギアには自動変速装置の出力軸8a、8bが連結される。
C−2は入力継手となる流体継手10dとブレーキB1を除いて図13に示したB−2と、又ブレーキB1部は図14に示したC−1と同一であり、詳細な説明は省略する。図15に於いて複合遊星歯車100BのリングギアR1、R2の外周径方向外側にカウンターギア3側から順にワンウェイクラッチOWCとブレーキB1の摩擦部材が配される。B−2ではブレーキB1がワンウェイクラッチOWCとブレーキ及び流体伝導装置の役目を担ったため仕事量も多くエネルギー吸収量も多いため、摩擦部材の内外径差と板厚を大きくし径方向中央部に貫通孔を設けメインケース2bから冷却油を供給する構造としたが、C−2では流体継手10dを発進時に滑らせるのでブレーキB1の摩擦部材の負荷は小さく、摩擦部材の内外径差と板厚も小さくできるのでB−2の摩擦部材の配置スペースにワンウェイクラッチOWCと摩擦部材の両方を配することができる。
C−2の特色は隣り合う変速段の変速比の段間差を小さくした前進8速後進2速の複合遊星歯車を用いた多段自動変速機を、流体継手を用いて3軸にコンパクトに配したことであり、軸方向の長さは一般的な4ATと同等となる。前進8速段であるためトルク増幅作用のあるトルクコンバータは必要なく、シンプルではあるが独立ピストン型の高性能なロックアップクラッチを有した流体継手を用い、発進及び変速時以外は全てロックアップを可能とした。隣り合う変速段の段間差が極めて小さく出来るので原動機の回転を下げることで燃費を低減することができる。但し、流体継手やブレーキB−1の摩擦部材の空転ロスがあり、B−2よりは燃費が劣る。当然ロックアップを多用すると伝達系特に変速用歯車には衝撃負荷が発生するので、C−2では複合遊星歯車100Bを用い遊星キャリアPの軸支を及び歯車の噛合いを安定させ複合遊星歯車の耐久性を向上させた。
<A−1、B−1、C−1の変速比>
本発明に於ける前進6速後進1速の複合遊星歯車を用いた多段自動変速機として、流体伝導装置を用いない2軸式をA−1、3軸式をB−1とし、流体伝導装置を用いた3軸式をC−1とした。この3種の多段自動変速機に用いる複合遊星歯車を100Aタイプとしスケルトンと速度線図及び変速比を図16に示す。尚、3種とも変速用歯車の歯数は同じとした。減速用遊星歯車及び複合遊星歯車100Aを構成する各歯車の歯数はピニオン遊星歯車が4等分位置に配されることを噛合い条件として以下の如く決定した。
(減速用遊星歯車:ZS0=40、ZR0=68)
(複合遊星歯車100A:ZS1=42、ZS2=34、ZR1=86)
したがって、速度線図を形成する歯数比は以下の如くなり、速度線図が描ける。
(減速用遊星歯車:ZR0/ZS0=68/40=1.700)
(複合遊星歯車100A:ZR1/ZS1=86/42=2.047、ZR1/ZS2=86/34=2.529)
変速段は5個のクラッチ又はブレーキの2個を締結することにより決まり、その内の1個のみの繋ぎ換えで次段及び次々段への変速が出来る。各変速段の締結要素はA−1、B−1、C−1とも同じであるが発進段となる前進1速段及び後進段では流体伝導装置を用いないA−1、B−1と、用いるC−1とでは制御が異なる。A−1、B−1では発進段となる前進1速段から前進2速段及び3速段への変速又はその逆の変速では、クラッチC1が締結状態のままブレーキB1とブレーキB2及びブレーキB1とクラッチC3を滑らせながら繋ぎ換え変速を行う。又、クラッチC1とブレーキB1が締結する前進1速段と、クラッチC3とブレーキB1が締結する後進段の発進段では車両をクリープさせる機能が必要となり、それぞれクラッチC1及びC3を締結してブレーキB1を滑らせればその滑りトルクの反力がクリープ力となる。尚、前進1速段と後進段の変速はブレーキB1を滑らせた状態でクラッチC1とクラッチC3を滑らせて繋ぎ換えれば良い。一方C−1は前進1速段と後進段ではトルクコンバータを滑らせ車両をクリープさせるため、前進1速段から前進2速段及び3速段への変速又はその逆の変速では、ブレーキB1は締結せずワンウェイクラッチOWCを作用させスムースな変速となる。ブレーキB1は前進1速段固定時と後進段で締結する。前進2速段から前進6速段の変速ではA−1、B−1、C−1とも締結側を滑らせて締結すると同時に開放側を滑らせて開放させる制御となる。
図16の速度線図に於いて、S1−PとP−R1間の長さはサンギアS1とリングギアR1の歯数比で決定され、S1−P間を大きくすると高速段の前進5速と6速段の段間差が小さくなり、S1−P間を小さくすると低速段の前進1速と2速段の段間差が小さくなる。又、P−R1とR1−S2間の長さはサンギアS2とリングギアR1の歯数比で決定され、R1−S2間を小さくすると低速段の前進1速と2速段の段間差が小さくなる。遊星歯車のリングギアとサンギアの歯数比は1.5〜3の値が実用的で、車両の特性により歯数を選定し変速比を決定しなければならない。図16の実用例ではR1−S2間を1.529と小さくして低速段の前進1速と2速段の段間差を1.68と小さくし、前進1速段と前進6速段のギアレンジが6になるよう全体のバランスを考慮し選定した。これは流体伝導装置を用いないA−1、B−1用の変速比に向いている。尚、R1−S2間を小さくするにはリングギアR1とサンギアS2の歯数比を小さくしなければならない。つまりサンギアS2の歯数を大きくすることとなり、サンギアS1の歯数にサンギアS2の歯数を近づけなければならないことになる。因みに、現在実用化されたラビニョー遊星歯車を用いた6ATではR1−S2間は全て1.6以上であり前進1速と2速段の段間差は1.7以上となっている。本提案で用いたピニオン遊星歯車を4個とした複合遊星歯車ではR1−S2間を更に小さくすることも可能であり、変速比選定の自由度が増す。尚、前進6速後進1速の複合遊星歯車を用いた多段自動変速機では減速用遊星歯車の減速比を1.5〜1,6としなければならない。したがって、複合遊星歯車には入力軸トルクの1.5倍のトルクが入力され各歯車の負担が大きくなるため複合遊星歯車は100Aのような構造で耐久性を考慮した。
<A−2、B−2、C−2の変速比>
本発明に於ける前進8速後進2速の複合遊星歯車を用いた多段自動変速機として、流体伝導装置を用いない2軸式をA−2、3軸式をB−2とし、流体伝導装置を用いた3軸式をC−2とした。この3種の多段自動変速機に用いる複合遊星歯車を100Bタイプとしスケルトンと速度線図及び変速比を図17に示す。尚、3種とも変速用歯車の歯数は同じとした。減速用遊星歯車及び複合遊星歯車100Bを構成する各歯車の歯数はピニオン遊星歯車が4等分位置に配されることを噛合い条件として以下の如く決定した。
(減速用遊星歯車:ZS0=38、ZR0=74)
(複合遊星歯車100B:ZS1=39、ZS2=35、ZR1=ZR2=81)
したがって、速度線図を形成する歯数比は以下の如くなり、速度線図が描ける。
(減速用遊星歯車:ZR0/ZS0=74/38=1.947)
(複合遊星歯車100B:ZR1/ZS1=81/39=2.077、ZR2/ZS2=81/35=2.314)
変速段は6個のクラッチ又はブレーキの2個を締結することにより決まり、その内の1個のみの繋ぎ換えで次段及び次々段への変速が出来る。各変速段の締結要素はA−2、B−2、C−2とも同じであるが発進段となる前進1速段及び後進段では流体伝導装置を用いないA−2、B−2と、用いるC−2とでは制御が異なる。A−2、B−2では発進段となる前進1速段から前進2速段及び3速段への変速又はその逆の変速では、クラッチC1が締結状態のままブレーキB1とブレーキB2及びブレーキB1とクラッチC3を滑らせながら繋ぎ換え変速を行う。又、クラッチC1とブレーキB1が締結する前進1速段と、クラッチC3とブレーキB1が締結する後進段の発進段では車両をクリープさせる機能が必要となり、それぞれクラッチC1及びC3を締結してブレーキB1を滑らせればその滑りトルクの反力がクリープ力となる。尚、前進1速段と後進段の変速はブレーキB1を滑らせた状態でクラッチC1とクラッチC3を滑らせて繋ぎ換えれば良い。一方C−2は前進1速段と後進段では流体継手を滑らせ車両をクリープさせるため、前進1速段から前進2速段及び3速段への変速又はその逆の変速では、ブレーキB1は締結せずワンウェイクラッチOWCを作用させスムースな変速となる。ブレーキB1は前進1速段固定時と後進段で締結する。前進2速段から前進8速段の変速ではA−2、B−2、C−2とも締結側を滑らせて締結すると同時に開放側を滑らせて開放させる制御となる。
図17の速度線図に於いて、S1−PとP−R1間の長さはサンギアS1とリングギアR1の歯数比で決定され、S1−P間を大きくすると高速段の前進5速−6速段−7速段−8速段の段間差が小さくなり、S1−P間を小さくすると低速段の前進1速と2速段の段間差が小さくなる。又、P−R2とR2−S2間の長さはサンギアS2とリングギアR2の歯数比で決定され、R2−S2間を小さくすると低速段の前進1速−2速段−3速段の段間差が小さくなる。遊星歯車のリングギアとサンギアの歯数比は1.5〜3の値が実用的で、車両の特性により歯数を選定し変速比を決定する。図17の実用例ではサンギアS2の歯数をサンギアS1の歯数に近づけてR2−S2間を1.314と小さくして低速段の前進1速−2速段−3速段の段間差を1.62及び1・43と小さくし、前進1速段と前進6速段のギアレンジが7になるよう全体のバランスを考慮し選定した。この変速比ではトルクコンバータのようなトルク増幅作用のある入力継手は必要なく、流体伝導装置を用いたC−2に於いてもトルク増幅作用のないシンプルな流体継手を用いた。因みに、現在実用化されたラビニョー遊星歯車を用いた8ATはRWD車用として1例しかなく、FWD車用としては実用化されていない。尚、流体継手を用いたC−2では前進1速−2速段−3速段の段間差をもう少し大きくし、前進5速−6速段−7速段−8速段の段間差をもう少し小さくする選定も可能である。前進8速後進2速の複合遊星歯車を用いた多段自動変速機では減速用遊星歯車の減速比を2前後としなければならない。したがって、複合遊星歯車には入力軸トルクの2倍のトルクが入力され各歯車の負担が大きくなるため複合遊星歯車は100Bのような構造で耐久性を増した。このように本提案ではピニオン遊星歯車Pbの配置スペースが大きく取れるのでサンギアS2の歯数をサンギアS1の歯数に近づけることができ、段間差を小さくすることが可能となる。因みにサンギアS1とサンギアS2の歯数比ZS1/ZS2は図16ではZS1/ZS2=1.235とし、図17ではZS1/ZS2=1.114とした。
図18は本発明に於ける前進6速後進1速及び前進8速後進2速の複合遊星歯車を用いた多段自動変速機に於ける2軸と3軸式の違いを、変速機後部から透視したカウンターギアの噛合いで各軸の配置を示したもので、図の上部が2軸式のA−1、A−2であり、下部が3軸式のB−1、B−2、C−1、C−2である。図の左側が車両の前方となり、原動機の出力軸と同軸の入力軸1に対し出力軸8a、8bは原動機を避けた右下の位置となる。2軸式では入力軸1と同軸上のカウンターギア3が出力軸8a、8bと同軸上のカウンターギア6と小さな減速比になるよう噛合う。一方3軸式では入力軸1と同軸上のカウンターギア3が入力軸1と出力軸8a、8bの間の入力軸1上部に位置する中継軸上で同一か又は小さな減速比でカウンターギア4と噛合い、中継軸と一体となるカウンターギア5が出力軸8a、8bと同軸上のカウンターギア6と大きな減速比になるよう噛合う。したがって、2軸式は変速機上部が小さくなり、狭いエンジンルームのなかに多くの部品を収納しなければならないFWD車では有利となる。
図27は本発明に於ける流体伝導装置を用いない前進6速後進1速及び前進8速後進2速の複合遊星歯車を用いたA−1、A−2、B−1、B−2に示す多段自動変速機のブレーキB1に関し、その摩擦部材の詳細を示すものである。尚、この仕様は本願出願人が特願2008−083909の図3で示したものと同一である。図27及びブレーキB1の構造を示す図20、図22、図24、図25に於いて、摩擦部材は複数のドライブプレート91とドリブンプレート92aからなり、ドライブプレート91とドリブンプレート92aは交互に配されるとともにピストン93側にはディッシュプレート95を保持するL字型のフロントプレート92bが配される。ドライブプレート91は金属板の両面に摩擦部材が貼られ径方向中央に位置する同一径円周部の摩擦面に摩擦部材と金属板を貫通する複数の貫通穴Z2が設けらており、摩擦部材の摩擦面には貫通穴Z2を含有する円周溝J1と円周溝J1から外周に連通する溝J2が形成され、遊星歯車列の発進段の制動構成要素となる遊星キャリアPのサイド部材の円筒外周スプライン部に回り止めされるとともに軸方向に移動可能に係止され、ドリブンプレート92aは金属板で貫通穴Z2と同一径円周部の摩擦面に貫通穴Z1が設けらており、メインケース2bのスプライン部に回り止めされるとともに軸方向に移動可能に係止される。貫通穴Z1、Z2は円周方向の長穴でありメインケース2bの側壁に設けられた円周溝(A−1の場合はエンドプレートの円周溝)に通じ、図示しないコントロールバルブから供給される冷却油がドライブプレート91とドリブンプレート92aの貫通穴Z1、Z2を通過し、ドライブプレート91の摩擦面に設けられた円周溝J1と円周溝J1から外周に連通する溝J2から排出される。この時、メインケース2bの側壁に設けられた円周溝とドリブンプレート92aの間は密着されるため、この間で油が排出される量は極めて少なく冷却油には排出圧が発生し、複数のドライブプレート91の摩擦面は全域に亘り隈なく冷却油により冷却される。尚、特願2008−083909には図1や図4に示す油圧制御で図2、図5に示す摩擦部材の冷却方式も提案しており、これらの方式でA−1、A−2、B−1、B−2のブレーキB1が制御される。そのため、流体伝導装置は不要となる。
図28は本発明に於ける流体伝導装置を用いない前進6速後進1速の複合遊星歯車を用いたA−1、B−1に示す多段自動変速機の前進1速段に於ける特性を図上部の速度線図で示し、前進8速後進2速の複合遊星歯車を用いたA−2、B−2に示す多段自動変速機の前進1速段に於ける特性を図下部の速度線図で示したものである。流体伝導装置を用いない多段自動変速機の前進1速段に於ける発進及びクリープ制御はクラッチC1を締結しブレーキB1を滑らす制御となる。図28の縦方向が回転速度を示す速度線図に於いて、入力軸1の回転を1とすると、A−1、B−1では減速用遊星歯車のリングギアR0が入力軸1と連結しておりサンギアS0が変速機ハウジングに固定されるため遊星キャリアP0の回転は1.588の減速比で複合遊星歯車のサンギアS2に入力され、A−2、B−2では減速用遊星歯車の遊星キャリアP0が入力軸1と連結しておりサンギアS0が変速機ハウジングに固定されるためリングギアR0の回転は2.056の減速比で複合遊星歯車のサンギアS2に入力される。車両が停止しているストール状態に於いて、タイアと連結するR1の回転は0であり、遊星キャリアPは入力軸1に対し逆回転をし、サンギアS1は更に大きな逆回転をする。ここでA−1、B−1では遊星キャリアPにはクラッチC2とブレーキB1の摩擦部材が配されており、入力軸1と同回転をするクラッチC2のクラッチドラムに配される摩擦部材及びブレーキB1の変速機ハウジングに配される摩擦部材と、遊星キャリアPに配される摩擦部材との間にはそれぞれHC2とHB1の相対回転が生じ、両摩擦部材の間には矢印で示す連れ回り力が発生する。同様にサンギアS1にはクラッチC3のクラッチドラムに配される摩擦部材及びブレーキB1の変速機ハウジングに配される摩擦部材と、遊星キャリアPに配される摩擦部材との間にはそれぞれHC3とHB2の相対回転が生じ、両摩擦部材の間には矢印で示す連れ回り力が発生する。この連れ回り力は冷却油の量と摩擦部材の枚数及び相対回転差が大きい程大きくなり、サンギアS2のクラッチC1締結ポイントの回りにモーメントとして作用し、タイアと連結するR1の回転を前進方向に上げようとする。A−2、B−2に於いても遊星キャリアPとサンギアS1にはA−1、B−1と同じ連れ回り力が発生するが、サンギアS1には更にクラッチC4のクラッチドラムとのHC4の相対回転による連れ回り力が加算される。したがってブレーキB1を強制的に滑らす力は小さくて済み、摩擦部材の吸収エネルギーを減少さす。例えばブレーキB1を締結しクラッチC1を滑らす制御をする場合、遊星キャリアPに於けるブレーキB1締結ポイントの回りのモーメントとなり、サンギアS1に作用するクラッチC3、C4及びブレーキB2の連れ回り力と、サンギアS2に作用するクラッチC1の締結力が喧嘩する方向に作用するため、クラッチC1を滑らす力が逆に増える結果となり好ましくない。このようにブレーキB1を滑らす形態は冷却構造の確実性以外にも利点があり、流体伝導装置を用いない方式では最良となる。
図29はラビニョー遊星歯車を用いた極めてコンパクトとなる6ATとしてSAE TECHNICAL PAPER(2004−01−0651)のFig4 Structure of Ravigneaux gear setに記載された4Pinion set の図を分かり易く拡大したものである。この図には従来例として3Pinion set も記載されている。尚、この説明は本発明の図6と対比させて[0043]項で説明しているので説明を省略する。結論としては本発明より図29の方が効率及び耐久上不利で、変速比設定の自由度も低く、複雑で成形し難い構造となっている。
本発明の多段自動変速機に用いる複合遊星歯車の構造を示す第1実施例 本発明の多段自動変速機に用いる複合遊星歯車の構造を示す第2実施例 図1と図2の円周方向断面図 図1と図2のサンギアS1側サイド部材の単体図 図1と図2のサンギアS2側サイド部材の単体図 図1と図2の円周方向歯車噛合い図 図1と図2の長梁軸に配されるピニオン歯車の形態図 図1と図2の1stに於ける歯車噛合いベクトルと動力フロー図 図1と図2の2ndから6th及びRevに於ける動力フロー図 本発明の多段自動変速機A−1の全体構造図を示す第1実施例 本発明の多段自動変速機A−2の全体構造図を示す第2実施例 本発明の多段自動変速機B−1の全体構造図を示す第3実施例 本発明の多段自動変速機B−2の全体構造図を示す第4実施例 本発明の多段自動変速機C−1の全体構造図を示す第5実施例 本発明の多段自動変速機C−2の全体構造図を示す第6実施例 本発明のA−1、B−1、C−1の模式図と速度線図及び変速比 本発明のA−2、B−2、C−2の模式図と速度線図及び変速比 2軸式と3軸式の各カウンターギアの円周方向噛合い配置図 本発明のA−1の前方部詳細図 本発明のA−1の後方部詳細図 本発明のA−2の前方部詳細図 本発明のA−2の後方部詳細図 本発明のB−1、C−1の前方部詳細図 本発明のB−1、C−1の後方部詳細図 本発明のB−2、C−2の前方部詳細図 本発明のB−2、C−2の後方部詳細図 本発明に使用されるブレーキB1の摩擦部材の詳細図 前進1速段におけるクリープ及び発進状態を示す速度線図 4ピニオン式ラビニョー遊星歯車の従来配置例
符号の説明
1 入力軸
2a、2b、2c ケース
3、4、5,6 カウンターギア
7a〜7m 軸受け
8a、8b 出力軸
10a、10b 回転変動吸収ダンパ
10c、10d 流体伝導装置
11,12 連結部材
20 チャージングポンプ
30 ディファレンシャル装置
37a、37b、37c スラストニードルベアリング
S0、S1、S2、S3 サンギア
P0、P、P3 遊星キャリア
R0、R1、R2、R3 リングギア
Pa、Pb、Pc、Pd ピニオン遊星歯車
C1、C2、C3、C4 クラッチ
B1、B2 ブレーキ












Claims (10)

  1. シングルピニオン遊星歯車とダブルピニオン遊星歯車を軸方向2列に保持し、前記シングルピニオン遊星歯車とダブルピニオン遊星歯車の一方のピニオン遊星歯車を同一軸上で軸支するする遊星キャリアPと、前記シングルピニオン遊星歯車と噛合うサンギアS1及びリングギアR1と、前記ダブルピニオン遊星歯車のもう一方のピニオン遊星歯車と噛合うサンギアS2或いは前記シングルピニオン遊星歯車と同一軸上で軸支される一方のピニオン遊星歯車と噛合うリングギアR2とからなり、リングギアR1或いはリングギアR2に連結したリングギアR1を出力構成要素とする複合遊星歯車と、
    変速機の入力軸1の回転を減速する減速用遊星歯車と、
    前記複合遊星歯車のサンギアS2に前記減速用遊星歯車を経由した入力軸1の減速回転を入力するクラッチC1と、
    前記複合遊星歯車の遊星キャリアPに入力軸1の回転を入力するクラッチC2と、
    前記複合遊星歯車のサンギアS1に前記減速用遊星歯車を経由した入力軸1の減速回転或いは入力軸1の回転を入力するクラッチC3或いはC4と、
    前記複合遊星歯車の遊星キャリアPを制動するブレーキB1と、
    前記複合遊星歯車のサンギアS1を制動するブレーキB2とからなり、
    前記クラッチC1、C2、C3或いはC4及びブレーキB1、B2の何れか2個を選択的に締結することにより前進6速後進1速或いは前進8速後進2速の変速段を得る複合遊星歯車を用いた多段自動変速機であって、
    前記複合遊星歯車の各ピニオン遊星歯車を4個で構成するとともに前記遊星キャリアPを構成する両サイド部材を2分割し、前記シングルピニオン遊星歯車とダブルピニオン遊星歯車の一方のピニオン遊星歯車を同一軸上で軸支する4本の長梁軸と、前記ダブルピニオン遊星歯車のサンギアS2と噛合うもう一方のピニオン遊星歯車を軸支する4本の短梁軸で前記両サイド部材を連結するようになした複合遊星歯車を用いた多段自動変速機。
  2. 前記変速機の入力軸1と出力軸を平行に配し、入力軸1を変速機ハウジングの両端で軸受け7a、7bで軸支し、入力軸1と同軸上の前記変速機ハウジングの中央部で出力軸に動力を伝達するカウンターギア3を軸受け7cで軸支し、
    カウンターギア3を挟んで入力軸1と同軸上の一方側に、前記複合遊星歯車とクラッチC2とブレーキB1を配し、入力軸1と同軸上のもう一方側に、前記減速用遊星歯車とクラッチC1、C3或いはC4とブレーキB2を配し、
    クラッチC1とサンギアS2を連結する連結部材12とクラッチC3或いはC4とサンギアS1を連結する連結部材11を、カウンターギア3の内周部を通して入力軸1の周りに径方向順に軸支させて配し、
    前記複合遊星歯車の遊星キャリアPを構成する前記シングルピニオン遊星歯車側サイド部材の内径L1と前記ダブルピニオン遊星歯車側サイド部材の内径L2をサンギアS1の外径L3より小径としてラジアル軸受け7h、7iを配し、サンギアS1又はサンギアS1の連結部材11と入力軸1又は入力軸1とクラッチC2を連結する連結部材に軸支するとともに前記シングルピニオン遊星歯車側のサイド部材の両側にスラスト軸受け37a、37cを配し、前記複合遊星歯車の遊星キャリアPを保持するようになした請求項1記載の複合遊星歯車を用いた多段自動変速機。
  3. 前記複合遊星歯車の各ピニオン遊星歯車は前記4本の長梁軸及び短梁軸上でニードルローラベアリングにより軸支され、前記4本の長梁軸及び短梁軸の両端をニードルローラベアリングの軸支径より小径とし、
    遊星キャリアPを構成する前記シングルピニオン遊星歯車側サイド部材の側面に貫通穴を有した4個の座aとサンギアS1の歯幅まで突き出た4個のボスbを円周方向に交互に設け、前記ダブルピニオン遊星歯車側サイド部材の外周を筒状に延材して径方向外周部外側にブレーキB1とクラッチC2の摩擦部材を係止するスプラインを設けるとともに前記シングルピニオン遊星歯車側サイド部材の座aとボスbの貫通穴に対抗する側面の同一円周位置に貫通穴を設け、
    前記両サイド部材の座a及び座aに対抗する貫通穴に前記4本の長梁軸の両端小径部をニードルローラベアリングの軸支径となる段付き部まで圧入し、前記両サイド部材のボスb及びボスbに対抗する貫通穴に前記4本の短梁軸の両端小径部をニードルローラベアリングの軸支径となる段付き部まで圧入し、前記4本の長梁軸と短梁軸の両端を絞めて前記両サイド部材を連結するようになした請求項1及び2記載の複合遊星歯車を用いた多段自動変速機。
  4. 前記複合遊星歯車の長梁軸に配した前記シングルピニオン遊星歯車とダブルピニオン遊星歯車の一方のピニオン遊星歯車を一体のロングピニオン遊星歯車として形成し、前記長梁軸上の両サイドに前記ロングピニオン遊星歯車を軸支するニードルローラベアリングを配し、両ニードルローラベアリングの軸方向を規制する突起部を前記長梁軸の軸方向中央部に一体として設け、前記ロングピニオン遊星歯車をサンギアS1とリングギアR1に噛合わせるとともに、サンギアS2と噛合う前記短梁軸に配したピニオン遊星歯車と噛合わせるようになした請求項1と2及び3記載の複合遊星歯車を用いた多段自動変速機。
  5. 前記複合遊星歯車の長梁軸に配した前記シングルピニオン遊星歯車とダブルピニオン遊星歯車の一方のピニオン遊星歯車を各々ニードルローラベアリングで前記長梁軸上に隣接して軸支し、前記シングルピニオン遊星歯車をサンギアS1とリングギアR1に噛合わせるとともに、前記ダブルピニオン遊星歯車の一方のピニオン遊星歯車をサンギアS2と噛合う前記短梁軸に配したピニオン遊星歯車とリングギアR2に噛合わせ、リングギアR1とR2を連結するようになした請求項1と2及び3記載の複合遊星歯車を用いた多段自動変速機。
  6. 前記変速機ハウジングは前記変速機前方に配された原動機との隔壁2dを保持するフロントケース2aとメインケース2b或いはリアケース2cからなり、回転変動吸収ダンパを介して原動機と連結した前記変速機の入力軸1を前端の隔壁2dに装着された円筒部材2fと後端のメインケース2b或いはリアケース2cに配された軸受け7a、7bで軸支し、フロントケース2aをメインケース2b内側の入力軸1の軸方向中央部まで延材してカウンターギア3を軸受け7cで軸支し、
    フロントケース2aと隔壁2dに囲まれたカウンターギア3前方に前記減速用遊星歯車とクラッチC1、C3或いはC4及びブレーキB2を配し、メインケース2b或いはリアケース2cに囲まれたカウンターギア3後方に前記複合遊星歯車とクラッチC2及びブレーキB1を配し、
    前記複合遊星歯車の出力構成要素となるリングギアR1或いはリングギアR2に連結したリングギアR1をサンギアS3とシングルピニオン遊星歯車を支持する遊星キャリアP3とリングギアR3からなる遊星減速歯車40のサンギアS3に連結し、遊星キャリアP3をメインケース2bに固定し、リングギアR3をカウンターギア3に連結し、カウンターギア3を出力軸が配されたディファレンシャル装置30のキャリアに連結したカウンターギア6と噛合わせるようになした請求項1から5記載の複合遊星歯車を用いた多段自動変速機。
  7. 前記変速機ハウジングは前記変速機前方に配された原動機との隔壁2dを保持するフロントケース2aとメインケース2bとリアケース2cからなり、回転変動吸収ダンパ又は流体伝導装置を介して原動機と連結した前記変速機の入力軸1を前端の隔壁2dに装着された円筒部材2fと後端のリアケース2cに配された軸受け7a、7bで軸支し、メインケース2bの軸方向中央部に設けられたL字型側壁でカウンターギア3を軸受け7cで軸支し、
    前記複合遊星歯車の出力構成要素となるリングギアR1或いはリングギアR2に連結したリングギアR1をカウンターギア3に連結し、カウンターギア3を入力軸1に平行に配した中継軸に連結されたカウンターギア4と噛合わせ、フロントケース2a側に前記中継軸と一体となるカウンターギア5を設け、出力軸が配されたディファレンシャル装置30のキャリアに連結したカウンターギア6と噛合わせるようになした請求項1から5記載の複合遊星歯車を用いた多段自動変速機。
  8. 前記カウンターギア3の前方に、リングギアR1、R2を有した前記複合遊星歯車とクラッチC2及びブレーキB1が配されたもので、
    リングギアR1、R2を有した前記複合遊星歯車の前記ダブルピニオン遊星歯車側サイド部材の外周に、リングギアR1、R2の外径より小径となるクラッチC2のクラッチハブを前方に円筒状に延材して設けるとともにリングギアR1、R2の外径より大径となるブレーキB1のブレーキハブを後方に円筒状に延材して設け、
    前記ディファレンシャル装置30のキャリアに連結したカウンターギア6と軸方向同一位置に、内周と前記クラッチC2のクラッチハブ外周との間に摩擦部材を有するとともに入力軸1と連結するクラッチC2のクラッチドラムを配し、
    カウンターギア6と干渉しない軸方向後方位置に、前記ブレーキB1のブレーキハブを制動する摩擦部材或いはワンウェイクラッチOWCを前記メインケース2bとの間に配し、
    前記ダブルピニオン遊星歯車側のサイド部材の内径をサンギアS2の外径より小径にして軸受け7hで入力軸1に軸支するようになした請求項1から3及び5と7記載の複合遊星歯車を用いた多段自動変速機。
  9. 前記カウンターギア3の一方側に配される減速用遊星歯車とクラッチC1、C3及びブレーキB2は、
    サンギアS0とシングルピニオン遊星歯車を軸支する遊星キャリアP0とリングギアR0からなる減速用遊星歯車のサンギアS0が前記変速機ハウジングの内周円筒ボスに固定され、リングギアR0が前記変速機の入力軸1に連結され、遊星キャリアP0を構成する反カウンターギア3側のサイド部材の内周にクラッチC1、C3一体のクラッチドラムが連結され、
    前記減速用遊星歯車の外周径方向外側に円筒状に延材されて円筒部内周に反カウンターギア3側から軸方向順にクラッチC1とC3の摩擦部材を配する前記クラッチC1、C3一体のクラッチドラムが前記変速機ハウジングの内周円筒ボスに軸支されて前記減速用遊星歯車の反カウンターギア3側に配され、
    前記クラッチC1、C3一体のクラッチドラムの外周径方向外側に位置する前記変速機ハウジング内周にブレーキB2の摩擦部材が配されたもので、
    前記サンギアS2、S1に連結する連結部材12、11を前記減速用遊星歯車の外周径方向外側に連結部材12を連結部材11より反カウンターギア3側に位置するよう円筒状に延材して外周に前記クラッチC1、C3の摩擦部材を配し、連結部材11を前記クラッチC1、C3一体のクラッチドラムの外周径方向外側に円筒状に延材して外周に前記ブレーキB2の摩擦部材を配し、前記変速機ハウジングの内周円筒ボスに前記クラッチC1、C2一体のクラッチドラムへの作動油供給回路を設けるようになした請求項1から8記載の複合遊星歯車を用いた多段自動変速機。
  10. 前記カウンターギア3の一方側に配される減速用遊星歯車とクラッチC1、C3、C4及びブレーキB2は、
    サンギアS0とダブルピニオン遊星歯車を軸支する遊星キャリアP0とリングギアR0からなる減速用遊星歯車のサンギアS0が前記変速機ハウジングの内周円筒ボスに固定され、遊星キャリアP0を構成するカウンターギア3側のサイド部材に入力軸1が連結されるとともにもう一方のサイド部材に反カウンターギア3側に円筒状に延材するクラッチC4のクラッチハブが連結され、リングギアR0の外周にクラッチC1、C3一体のクラッチハブが前記クラッチC4のクラッチハブの外周径方向外側に円筒状に延材して連結され、
    カウンターギア3側が開口されクラッチC3を外周側として円周方向に2段となり、前記クラッチC1、C3一体のクラッチハブ及び前記クラッチC4のクラッチハブとの間に各々摩擦部材を配するクラッチC3、C4一体のクラッチドラムが前記変速機ハウジングの内周円筒ボスに軸支されて前記減速用遊星歯車の反カウンターギア3側に配され、
    反カウンターギア3側が開口されリングギアR0の外周径方向外側で前記クラッチC1、C3一体のクラッチハブとの間に摩擦部材を配するクラッチC1のクラッチドラムが前記減速用遊星歯車を挟んで前記クラッチC3、C4と対峙して配され、
    前記クラッチC3、C4一体のクラッチドラムの外周と前記変速機ハウジング内周の間にブレーキB2の摩擦部材が配されたもので、
    前記クラッチC3、C4一体のクラッチドラムを前記クラッチC1のクラッチドラムの外周径方向外側に延材してサンギアS1に連結する連結部材11と連結し、前記クラッチC1のクラッチドラムをサンギアS2に連結する連結部材12と連結し、前記変速機ハウジングの内周円筒ボスに前記クラッチC3、C4一体のクラッチドラムと前記クラッチC1のクラッチドラムへの作動油供給回路を設けるとともに前記クラッチC3、C4の摩擦部材専用の潤滑油供給回路を設けるようになした請求項1から8記載の複合遊星歯車を用いた多段自動変速機。























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