図1と図2に本発明の前進6速から10速までをなし得る多様な多段自動変速装置の共通となる2個の遊星歯車列及び第2構成要素の制御部と多様な形態をとる第1と第4構成要素の入力装置部との2種の分離形態を模式化し、第1と第4構成要素の入力装置部をREとして空白で示す。図3と図4は図1と図2の模式図に対応した実際の構造を示したものである。図5から図10に1個の構成要素に減速回転を入力し、他の2個の構成要素に非減速回転を入力した前進6速後進1速の自動変速装置を、図11から図13に2個の構成要素に減速回転を入力し、他の1個の構成要素に非減速回転を入力した前進6速後進1速の自動変速装置を、図14から図16に2個の構成要素に減速回転とその1個の構成要素に非減速回転を入力し、他の1個の構成要素に非減速回転を入力した前進8速後進1速の自動変速装置を、図17から図19に2個の構成要素に減速回転とその1個の構成要素に非減速回転を入力し、他の1個の構成要素に非減速回転を入力した前進10速後進1速の自動変速装置を表し、その模式図、速度線図、変速比と全体の構造図及び第1と第4構成要素の入力装置部の詳細図を示す。また、これら多様な多段自動変速装置の共通となる2個の遊星歯車列及び第2構成要素の制御部の詳細図を図20から図23に示し、前進8速と10速の配置を換えた第1と第4構成要素の入力装置部の詳細図を図24と図25に示す。尚、本発明と対比させた前進6速後進1速の自動変速装置の模式図と速度線図及び変速比を図26から図28に示す。図6、図7、図12、図15、図18に示した自動変速装置の構造図は原動機のトルクを300Nmとしてコンセプトしたものであり、全長が350mm前後となる。
本発明の請求項1は前進6速から10速までをなし得る多様な多段自動変速装置の共通となる2個の遊星歯車列及び第2構成要素の制御部と、多様な形態をとる第1と第4構成要素の入力装置部の分離形態を図1から図25までの全図で示したものである。請求項2は前進6速から10速までをなし得る多様な多段自動変速装置の共通となる2個の遊星歯車列及び第2構成要素の制御部を図20で示したもので、多様な入力装置部により2個の遊星歯車列のリングギアとサンギアの歯数比が変わり具体的なリングギアと遊星ギア及びサンギアの配置形状を図21、図22、図23に示したものである。請求項3は多様な形態をとる第1と第4構成要素の入力装置部の共通する形態について示したもので、その具体的な構造を請求項4として図8から図11に、請求項5として図13に、請求項6として図16と図24に、請求項7として図19と図25に示したものである。請求項8は前進8速と10速の変速比及び流体伝導装置について図14、図15と図17、図18に示したものである。尚、図1と図2及び図3と図4では流体伝導装置に前進6速に使用するトルクコンバータを記したが、前進8速と10速では流体継ぎ手となる。
模式図で表した図1と図1の構造を表す図3において、図の左側前方の図示しない原動機から流体伝導装置であるトルクコンバータ10に動力が伝達され、変速装置の入力軸3に導かれる。変速装置全体を収めるハウジングは前部のトルクコンバータケース1aと中央部の変速機ケース1bと後部のリアケース1cとからなり、並行に配された入力軸3aと中継軸7及び出力軸を含んだディファレンシャル装置9とを軸支する母体となる。入力軸3は前部の一端が保持部材2a、2b、2cに配された軸受け4aで、後部の一端がリアケース1cに配された軸受け4bで軸支される。保持部材2a、2b、2cは乾式のトルクコンバータケース1aと湿式の変速機ケース1bを隔てる隔壁であり、トルクコンバータ10を軸支し変速装置のチャージングポンプを保持する。中継軸7は一端がトルクコンバータケース1aに配された軸受け4eで、もう一端が変速装機ケース1bに配された軸受け4dで軸支され、入力軸3と同軸上の出力となるカウンターギア5と噛み合うカウンターギア6がスプラインで連結されると共に、出力軸を含んだディファレンシャル装置9に動力を伝達するカウンターギアが一体成形されている。又、出力軸部はディファレンシャル装置9のキャリアとなり、一端がトルクコンバータケース1aに配された軸受け4gで、もう一端が変速装機ケース1bに配された軸受け4fで軸支され、カウンターギアと一体の中継軸7と噛み合うカウンターギア8がボルトで締結されている。周知の如く、ディファレンシャル装置9はピニオンギアとサイドギアからなり、サイドギアには自動変速装置の出力軸が連結される。尚、図1と図3とでは流体伝導装置を前進6速に使用するトルクコンバータ10としたが、前進8速と10速では流体伝導装置は流体継ぎ手10となる。
変速機ケース1bの軸方向中央部にはカウンターギア5の軸受け4cを軸支するL字型の側壁が設けられ、この側壁とリアケース1cの間に前進6速から10速までをなし得る多様な多段自動変速装置の共通となる2個の遊星歯車列である第1及び第2遊星歯車列20、30と第2構成要素の制御部であるワンウェイクラッチOWCとブレーキB1及びクラッチC2が配され、側壁と保持部材2a、2b、2cの間に多様な形態をとる第1及び第2遊星歯車列20、30の第1と第4構成要素への入力装置部REが図の空白部に配される。ここで請求項2の保持部材Aとはリアケース1cを示し、請求項3の保持部材Bとは保持部材2a、2b、2cを示す。
模式図で表した図2と図2の構造を表す図4において、変速機ケース1bの軸方向中央部にカウンターギア5の軸受け4cを軸支する逆L字型の側壁が設けられ、この側壁と保持部材2a、2b、2cの間に前進6速から10速までをなし得る多様な多段自動変速装置の共通となる2個の遊星歯車列である第1及び第2遊星歯車列20、30と第2構成要素の制御部であるワンウェイクラッチOWCとブレーキB1及びクラッチC2が配され、側壁とリアケース1cの間に多様な形態をとる第1及び第2遊星歯車列20、30の第1と第4構成要素への入力装置部REが図の空白部に配される。これは図1と図3に示した入力軸3上の変速部位の配置を逆にしたものである。ここで請求項2の保持部材Aとは保持部材2a、2b、2cを示し、請求項3の保持部材Bとはリアケース1cを示す。
前進6速から10速までをなし得る多様な多段自動変速装置3を表す図3及び図3における共通となる2個の遊星歯車列及び第2構成要素の制御部の詳細を示す図20において、変速機ケース1bの軸方向中央部に設けられた側壁は内周部がL字状に曲げられ、その円周外径部にカウンターギア5を軸支する背面合わせのアンギュラ玉軸受4cが、回り止めを施されたナット19で固定される。側壁側から軸方向順に第1と第2遊星歯車列20、30及びクラッチC1のクラッチドラム64が配され、第1と第2遊星歯車列20、30の外周径方向外側にはワンウェイクラッチOWCとブレーキB1及びクラッチC2の摩擦部材が軸方向順に配される。第1遊星歯車列20はサンギアS1(21)と、サンギアS1に噛み合うピニオン遊星歯車22を支持する遊星キャリアP1(24)と、ピニオン遊星歯車22に噛み合うリングギアR1(23)とからなり、第2遊星歯車列30はサンギアS2(31)と、サンギア31に噛み合うピニオン遊星歯車32を支持する遊星キャリアP2(34)と、ピニオン遊星歯車32に噛み合うリングギアR2(33)とからなっており、サンギアS1とリングギアR2を連結し第1構成要素とし、遊星キャリアP1と遊星キャリアP2を連結し第2構成要素とし、リングギアR1を第3構成要素とし、サンギアS2を第4構成要素として4個の構成要素からなっている。
第1構成要素を構成する一方の第1遊星歯車列20のサンギアS1は、半径方向直下の内径部で、後述する第2遊星歯車列30の遊星キャリアP2のサイド部材35b上にブシュ4kで軸支されるとともに、L字状に曲げられた側壁の内周径方向内側に筒状で延材され連結部材Z(12)に連結されるとともに後述する第2遊星歯車列30のサンギアS2に連結する連結部材Y(11)上にブシュ4jで軸支される。第1構成要素を構成するもう一方の第2遊星歯車列30のリングギアR2は、第1遊星歯車列20側で内歯の内周が段付になり、サンギア21に溶着されるとともに外径部に歯を形成したハブ26と段付歯部が嵌合され、リティニングリング27で軸方向が脱着可能に係止される。
第2構成要素を形成する一方の第2遊星歯車列30の遊星キャリアP2は、ピニオン遊星歯車32を挟むサイド部材35aと35bが溶接等で一体成形され、第1遊星歯車列20側のサイド部材35bが、第1遊星歯車列20のサンギアS1の内周径方向内側に筒状に延材され、ブシュ4Lで連結部材Y上に軸支されるとともに、もう一方のサイド部材35aが、第2遊星歯車列30のリングギア33の外周径方向外側を第1遊星歯車列20側まで筒状に延材され、筒状延材部の外周にはスプラインが形成されクラッチC2の摩擦部材61が軸方向移動自在に係止される。第2構成要素を形成するもう一方の第1遊星歯車列20の遊星キャリアP1は、ピニオン遊星歯車22を挟むサイド部材25aと25bが溶接等で一体成形され、第2遊星歯車列30側のサイド部材25aが外周方向に延材され、サイド部材35aとともに外径部でワンウェイクラッチ13とブレーキB1の摩擦部材91を係止するスプラインが形成された筒状の係止部材15とスプライン連結されリティニングリング18で脱着可能に連結される。
第3構成要素を形成する第1遊星歯車列20のリングギアR1は、出力カウンターギア5のサイド部の鍔に形成された歯と嵌合するとともにリティニングリングで脱着可能に係止され、第4構成要素を形成する第2遊星歯車列30のサンギア31は、L字状に曲げられた側壁の内周径方向内側に筒状で延材され、入力軸3と入力軸3に連結された連結部材Xに軸受け4iと4hで軸支される連結部材Yにスプライン連結される。
クラッチC2は保持部材Aとなるリアケース1cのボス部内周に配された軸受け4bで一端が軸支されボス部外周に沿って延材する入力軸3に溶着されるクラッチドラム64と、遊星キャリアP2のサイド部材35aに係止される摩擦部材61と、摩擦部材61との間に交互に配されクラッチドラム64の外周円筒部内側スプラインにエンドプレート62bとリティニングリング63で係止される摩擦部材62aと、摩擦部材61、62aを押圧するピストン65と、入力軸3の延材部にリティニングリング68で係止されピストン65の作動室の遠心油圧をキャンセルするキャンセラープレート66と、ピストン65を開放状態に戻すリターンスプリング67からなっており、入力軸3と第2構成要素を形成する一方の第2遊星歯車列30の遊星キャリアP2との締結及び開放をつかさどる。尚、クラッチドラム64及びピストン65との間及びピストン65とキャンセラープレート66との間の作動室にはリアケース1cのボス部外周から入力軸3の延材部を介して作動油が供給され油圧サーボを形成する。
遊星キャリアP1、P2と連結する筒状の係止部材15の外周部には、側壁側から順にワンウェイクラッチ13と段付きに形成された外周のスプラインにブレーキB1の摩擦部材91が係止される。変速機ケース1bの内周部には側壁側が閉鎖され他端が開口されたスプライン形状の複数の歯が軸方向に形成され、閉鎖部側にアウターレース14が複数の歯と嵌合しリティニングリング16により固定される。ワンウェイクラッチOWCはワンウェイクラッチ13とアウターレース14及びインナーレースとなる係止部材15とからなっており、ワンウェイクラッチ13はアウターレース14にリティニングリング17により保持され、インナーレースとなる係止部材15を入力軸3の回転方向には自由に回転させる一方、逆方向には回転させない役目をする。ブレーキB1は係止部材15の外周スプラインに係止される摩擦部材91と、摩擦部材91との間に交互に配され変速機ケース1bの内周部に形成されたスプライン形状の複数の歯にアウターレース14で側壁側が固定されて係止される摩擦部材92aと、リアケース1cの外周側に配されクラッチドラム64の外周径方向外側に延材して摩擦部材91、92aを押圧するピストン93と、変速機ケース1bとの間でピストン93を開放状態に戻すリターンスプリング94からなっており、第2構成要素を形成する遊星キャリアP1、P2と連結する筒状の係止部材15の制動及び開放をつかさどる。図20は図3の共通となる2個の遊星歯車列及び第2構成要素の制御部を変速装置の後部に配した状態を示したものであり、図4で示すように共通となる2個の遊星歯車列及び第2構成要素の制御部を変速装置の前部に配した場合は変速機ケース1bの側壁に対し対称に配される。
1個の構成要素に減速回転を入力し、他の2個の構成要素に非減速回転を入力した前進6速後進1速の多段自動変速装置の特許文献1及び10と同じ変速形態をA1とし図5から図10に示す。図5の速度線図において、第1、第2遊星歯車列20、30のサンギアS1とリングギアR2を連結した第1構成要素をAとし、遊星キャリアP1、P2を連結した第2構成要素をBとし、リングギアR1の第3構成要素をCとし、サンギアS2の第4構成要素をDとすると、入力軸3の回転は直接クラッチC1とC2を介して第4、第2構成要素D、B及びダブルピニオン遊星歯車からなる減速用遊星歯車40の遊星キャリアP0に入力され、サンギアS0を固定した減速用遊星歯車40のリングギアR0を介した入力軸3の減速回転はクラッチC3を介して第1構成要素Aに入力され、第1、第2構成要素A,BはブレーキB2、B1で制動される。ここで、多様な形態をとる第1と第4構成要素の入力装置部REは減速用遊星歯車40と、クラッチC1、C3と、ブレーキB2とからなっている。図5の2種の模式図及び図6、図7は図1、図2及び図3、図4の空白となる入力装置部REにA1タイプの構造を挿入したものである。
A1タイプの入力装置部REを多段自動変速装置前方に配した図6と図6の詳細を示す図8において、トルクコンバータケース1aとチャージングポンプを保持する保持部材2aが変速装機ケース1bにボルト締めされ、ボス部が変速機ケース1b中央のL字型の側壁側に円筒状に延材されトルクコンバータ10及び入力軸3を軸支する保持部材2cを圧入した保持部材2bが保持部材2aにボルト締めされる。保持部材2bのボス部外周には保持部材2a側から順にクラッチC3と減速用遊星歯車40とクラッチC1とが配される。保持部材2bのボス部外周に配された減速用遊星歯車40は、保持部材2bのボス部外周にスプラインで固定されるサンギアS0(41)と、リングギアR0(43)と、サンギアS0とリングギアR0との間を噛み合い連結するピニオン遊星歯車42a、42bのダブルピニオン遊星歯車を軸支する遊星キャリアP0からなり、遊星キャリアP0のサイド部材45aが保持部材2bのボス部外周に沿って延材され入力軸3と芯出しのための嵌め合い部を設けて連結部材Xとして入力軸3にスプライン連結され、リングギアR0の外周スプラインにクラッチC3の摩擦部材71が係止される。
クラッチC3は、保持部材2bのボス部外周に軸受け4mで回転自在に軸支される円筒部材75に一体として溶着され外周を変速機ケース1b中央のL字型の側壁側に開口部を有し、側壁側まで延材し端部で連結部材Z(12)と連結するクラッチドラム74と、リングギアR0の外周スプラインに係止される摩擦部材71と、摩擦部材71との間に交互に配されクラッチドラム74の外周円筒部内側スプラインにエンドプレート72bとリティニングリング73で係止される摩擦部材72aと、摩擦部材71、72aを押圧するピストン76と、ピストン76の作動室の遠心油圧をキャンセルするキャンセラープレート77と、ピストン76を開放状態に戻すリターンスプリング78からなっており、リングギアR0と第1、第2遊星歯車列20、30の第1構成要素を形成する一方のサンギアS1と連結する連結部材Zとの締結及び開放をつかさどる。尚、クラッチドラム74及びピストン76との間及びピストン76とキャンセラープレート77との間に形成される油圧室には保持部材2bのボス部外周から作動油が供給され油圧サーボを形成する。
ブレーキB2はクラッチドラム74の変速機ケース1b中央のL字型の側壁側外周スプラインに係止される摩擦部材101と、摩擦部材101との間に交互に配され変速機ケース1bの内周部に形成されたスプライン形状の複数の歯に係止される摩擦部材102aと、側壁側端に配されたエンドプレート102bと、保持部材2aに配されクラッチドラム74の外周径方向外側に延材して摩擦部材101、102aを押圧するピストン103と、リティニングリング106で保持部材2aに係止されるプレート105と、ピストン103を開放状態に戻すリターンスプリング104からなっており、第1、第2遊星歯車列20、30の第1構成要素を形成する一方のサンギアS1と連結する連結部材Zの制動及び開放をつかさどる。
減速用遊星歯車40の平面図となる図10と図10のA−O断面で示される図8及びB−O−C断面で示される減速用遊星歯車40とクラッチC1の組立体となる図9において、遊星キャリアP0はサイド部材45a、45bと、ピニオン遊星歯車42a、42bを軸支するとともに両サイド部材45a、45bを連結するピン44aと、両サイド部材45a、45bを連結するピン44bとからなっており、サイド部材45bはリングギア43の側面まで外周が延材され、サイド部材45aは外周にクラッチC1のクラッチドラム54が溶着される。サイド部材45bとクラッチドラム54の側面にはスラスト軸受け49が配され、リングギア43を保持する。両サイド部材45a、45bを連結するピン44a、44bは両サイドの径が中央より小さくなるよう階段状に形成され両サイド部材45a、45bに小径部を挿入して端部が絞められる。クラッチC1はサイド部材45aに溶着されるクラッチドラム54と、連結部材Y(11)に溶着したクラッチハブの外周スプラインに係止される摩擦部材51と、摩擦部材51との間に交互に配されクラッチドラム54の外周円筒部内側スプラインにエンドプレート52bとリティニングリング53で係止される摩擦部材52aと、サイド部材45a上に配され摩擦部材51、52aを押圧するピストン56と、サイド部材45a上にリティニングリング58で係止されピストン56の作動室の遠心油圧をキャンセルするキャンセラープレート55と、ピストン56を開放状態に戻すリターンスプリング57からなっており、入力軸3と第1、第2遊星歯車列20、30の第4構成要素を形成するサンギアS2と連結する連結部材Yとの締結及び開放をつかさどる。サイド部材45aとピストン56の間及びピストン56とキャンセラープレート55との間の作動室には保持部材2bのボス部外周から作動油が供給され油圧サーボを形成する。サイド部材45aとピストン56の間の作動室にはサイド部材45aにピン44a、44bが圧入で挿入されており密閉状態となっている。尚、前進段で減速用遊星歯車40を通過する入力側トルクは前進3速と5速段で入力軸トルクの3割以下となるため、はす歯となるリングギアR0にも大きなスラスト力が作用しなく上述したようにシンプルなリングギアR0の保持方法が成立する。
A1の変速形態は図5の速度線図で示されるように、前進1速から4速段において構成要素Dへの入力が減速用遊星歯車を介さない点、前進4速段では動力が全く遊星歯車を通らない減速比1:1の状態ができる点、前進段で減速用遊星歯車を通過する入力側トルクは前進3速と5速段で入力軸トルクの3割以下となり減速用遊星歯車が軽負荷となる点等、効率及び強度やトルク容量の両面で優れた形態を有している。この変速形態を有効に活かすには第1、第2遊星歯車列20、30の構成要素A、B、C、Dの位置関係が重要となる。尚、最高速段となる前進6速段で動力はシンプル遊星歯車列のみを通過するのが効率上の条件となることより必然的に構成要素A、B、Cが第1遊星歯車列20のサンギアS1、遊星キャリアP1、リングギアR1となる。また、牽引力の関係上前進6速と5速の変速比の比率を1.2倍とし前進5速と4速の変速比の比率を1.3倍程度とするのが望ましく、前進4速段の変速比が1に固定されるため前進6速段の変速比が1.2×1.3=1.56の逆数となる0.64、前進5速段の変速比が0.64×1.2=0.77と自ずと決定される。前進6速段の変速比を0.64とするには構成要素A、B間を構成要素B、C間の1.8倍程度とすればよく、第1遊星歯車列20のリングギアとサンギアの歯数をZR1、ZS1とするとZR1/ZS1=1.8となる。また、前進5速段の変速比を0.77にするための減速用遊星歯車40のリングギアとサンギアの歯数をZR0、ZS0とするとその歯数比も自ずと決定される。実際の遊星歯車では歯車が噛み合うための条件があるため、図5の如くZR1/ZS1=1.8、ZR0/ZS0=1.938として前進6速段の変速比0.643、前進5速段の変速比0.777を得ることができる。
前進の1速から3速段の減速段における変速比は構成要素B、C間と構成要素C、D間の比率で決まり、その比率を2.7から3.3とすると前進1速を前進6速段の変速比で除したギアレンジが5.8のクロスなものから6.8のワイドなものまで選定できる。実際の自動変速装置における遊星歯車においては、スペースの関係上リングギアの歯数をサンギアの歯数で割った値が1.5〜2.8の範囲内とするのが好ましく、構成要素B、C間と構成要素C、D間の比率を2.7から3.3にした場合構成要素B、C、Dをシンプル遊星歯車にはできなく、図5のように第2遊星歯車列30のリングギアR2を構成要素Aとし、遊星キャリアP2を構成要素Bとし、サンギアS2を構成要素DとすればリングギアR2とサンギアS2の歯数比ZR2/ZS2=2〜2.4の比較的小さな値で構成要素B、C間と構成要素C、D間の比較的大きな比率2.7〜3.3を得ることができる。図5では歯数比ZR2/ZS2=2.25の中間値をとりギアレンジを6.3とした。
A1の変速形態における1st(前進1速段)から6th(前進6速段)及びRev(後進段)の作動と減速比を図5により説明する。
<1st>
クラッチC1とブレーキB1を締結し、構成要素D(S2)に非減速回転を入力し構成要素B(P1、P2)を固定する。実際の遊星歯車列における動力の伝達は、第2遊星歯車列30のサンギアS2に入力された動力は遊星キャリアP2が固定されるためリングギアR2が逆転し減速され第1遊星歯車列20のサンギアS1に入力され、遊星キャリアP1が固定されるためさらにリングギアR1が正回転に減速され出力される。したがって、大きな減速比が得られる。尚、図5には示されていないが、ブレーキB1の代わりにワンウェイクラッチOWCで構成要素B(P1、P2)を固定しても同じとなる。
<2nd>
クラッチC1とブレーキB2を締結し、構成要素D(S2)に非減速回転を入力し構成要素A(S1、R2)を固定する。実際の遊星歯車列における動力の伝達は、第2遊星歯車列30のサンギアS2に入力された動力はリングギアR2が固定されるため遊星キャリアP2が減速され、第1遊星歯車列20の遊星キャリアP1に入力され、サンギアS1が固定されるため増速されてリングギアR1からトータル的に減速されて出力される。
<3rd>
クラッチC1とクラッチC3を締結し、構成要素D(S2)に非減速回転を入力し、構成要素A(S1、R1)に減速回転を入力する。実際の遊星歯車列における動力の伝達は、第2遊星歯車列30のサンギアS2に非減速回転が入力され、リングギアR2に減速回転が入力されるため、遊星キャリアP2が減速され、第1遊星歯車列20のリングギアR1がサンギアS1と遊星キャリアP1により僅かに増速され、トータル的に減速され出力される。
<4th>
クラッチC1とC2を締結し、構成要素D(S2)と構成要素B(P1、P2)に非減速回転を入力する。実際の遊星歯車列における動力の伝達は、第2遊星歯車列30のサンギアS2と遊星キャリアP2が連結され、リングギアR2は入力回転と同じ回転となる。したがって、第1遊星歯車列20のサンギアS1と遊星キャリアP1も連結され、リングギア23は入力回転と同じ回転で出力される。
<5th>
クラッチC2とクラッチC3を締結し、構成要素B(P1、P2)に非減速回転を入力し、構成要素A(S1、R2)に減速回転を入力する。実際の遊星歯車列における動力の伝達は、第1遊星歯車列20の遊星キャリアP1に非減速回転が入力され、サンギアS1に減速回転が入力されるため、リングギアR1は少し増速されて出力される。この場合、第2遊星歯車列30は動力の伝達はしない。
<6th>
クラッチC2とブレーキB1を締結し、構成要素B(P1、P2)に非減速回転を入力し、構成要素A(S1、R2)を固定する。実際の遊星歯車列における動力の伝達は、第1遊星歯車列20の遊星キャリアP1に非減速回転が入力され、サンギアS1が固定されるため、リングギアR1が増速されて出力される。この場合、動力第2遊星歯車列30は動力の伝達はしない。
<Rev>
ブレーキB1とクラッチC3を締結し、構成要素A(S1、R2)に減速回転を入力し、構成要素B(P1、P2)を固定する。実際の遊星歯車列における動力の伝達は、第1遊星歯車列20のサンギアS1に減速回転が入力され、遊星キャリアP1が固定されるため、リングギアR1が減速され逆回転で出力される。
A1の変速形態において、減速比が大きくとれる前進1速段では第2遊星歯車列30で約2.25倍に減速された動力が第1遊星歯車列20のサンギアS1に入力されサンギアS1には大きなトルクが加わる。そこで、図21と図22に示すように第2遊星歯車列30ではピニオン遊星歯車の個数を4個としたのに対し、第1遊星歯車列20ではピニオン遊星歯車の個数を1.5倍の6個としサンギアの径を1.2倍とすれば歯面荷重が減少し歯幅の増加を押さえることができる。
2個の構成要素に減速回転を入力し、他の1個の構成要素に非減速回転を入力した前進6速後進1速の多段自動変速装置の特許文献2と同じ変速形態をA2とし図11から図13に示す。図11の速度線図の構成要素A、B、C、Dは変速形態をA1とする図5と同じ第1、第2遊星歯車列20、30の構成要素である。したがって、第1、第2遊星歯車列20、30とクラッチC2、ブレーキB1及びワンウェイクラッチOWCの配置はA1の変速形態と同じくできる。入力軸3の回転は直接クラッチC2を介して第2構成要素B及びシングルピニオン遊星歯車からなる減速用遊星歯車40のリングギアR0に入力され、サンギアS0を固定した減速用遊星歯車40の遊星キャリアP0を介した入力軸3の減速回転はクラッチC1、C3を介して第4、第1構成要素D、Aに入力され、第1、第2構成要素A,BはブレーキB2、B1で制動される。ここで、多様な形態をとる第1と第4構成要素の入力装置部REは減速用遊星歯車40と、クラッチC1、C3と、ブレーキB2とからなっている。図11の模式図及び図12は図1、図3の空白となる入力装置部REにA2タイプの構造を挿入したものである。
A2タイプの入力装置部REを多段自動変速装置前方に配した図12と図12の詳細を示す図13において、トルクコンバータケース1aとチャージングポンプを保持する保持部材2aが変速機ケース1bにボルト締めされ、ボス部が変速機ケース1b中央のL字型の側壁側に円筒状に延材されトルクコンバータ10及び入力軸3を軸支する保持部材2cを圧入する保持部材2bが保持部材2aにボルト締めされ、基本形態はA1と同じとなる。保持部材2bのボス部及び保持部材2cの外周には保持部材2a側から順にクラッチC1、C3の2連クラッチと減速用遊星歯車40が配される。保持部材2cのボス部外周に配された減速用遊星歯車40は、保持部材2cのボス部先端外周にスプラインで固定されるサンギアS0(41)と、リングギアR0(43)と、サンギアS0とリングギアR0との間を噛み合い連結するピニオン遊星歯車42を軸支する遊星キャリアP0からなり、遊星キャリアP0のサイド部材45bがサンギア41の一部内周に入り込んで2連クラッチC1、C3の円筒部材55にスプライン連結され、リングギアR0の歯部にリティニングリング48で連結された連結部材X(47)が入力軸3と芯出しのための嵌め合い部を設けて入力軸3にスプライン連結される。
2連クラッチC1、C3は、保持部材2bのボス部外周に筒状に配され且つ保持部材2cのボス部外周に軸受け4mで回転自在に軸支される円筒部材55に一体として溶着され外周を変速機ケース1b中央の側壁側まで延材したクラッチドラム54と、リングギア43の外周径方向外側でクラッチドラム54の外周延材部内側スプラインに保持部材2a側から順に係止されるクラッチC1の摩擦部材52a、リティニングリング53で係止されるクラッチC1、C3共通のエンドプレート52c、クラッチC3の摩擦部材72aと、摩擦部材52aとの間に交互に配されリングギアR0の外周径方向外側に筒状に配された連結部材Y(11)に溶着されるクラッチハブの外周スプラインに係止される摩擦部材51と、摩擦部材72aとの間に交互に配され連結部材Yに溶着されるクラッチハブの外周径方向外側に筒状に配された連結部材Z(12a)の外周スプラインに係止される摩擦部材71と、摩擦部材51、52aを押圧するピストン56と、リティニングリング53で係止されるフランジ76bで摩擦部材71、72aを押圧するピストン76aと、ピストン76aにスタッドピン75aで一定距離に固定されピストン56、76aの作動室の遠心油圧をキャンセルする共通のキャンセラープレート57と、スタッドピン75aの外周に配されピストン56、76aを開放状態に戻すピストン56に係止されるバネホルダ−に挿入される共通のリターンスプリング58からなっており、クラッチC1は遊星キャリアP0と第1、第2遊星歯車列20、30の第4構成要素を形成するサンギアS2と連結する連結部材Yとの締結及び開放をつかさどり、クラッチC3は遊星キャリアP0と第1、第2遊星歯車列20、30の第1構成要素を形成する一方のサンギアS1と連結する連結部材Zとの締結及び開放をつかさどる。
尚、本構造はピストン56、76aをクラッチドラム54の両サイドに配しピストン56側に配したキャンセラープレート57とピストン76aをクラッチドラム54とピストン56を貫通するスタットピン75aで一定距離に連結したもので、クラッチドラム54とピストン76aとの間及びクラッチドラム54とピストン56との間、ピストン56とキャンセラープレート57との間に形成される油圧室には保持部材2bのボス部外周から作動油が供給され油圧サーボを形成する。この2連クラッチC1、C3は本願発明者が特願2005−235161で提案した構造であるが、請求項5では本案に限らず、クラッチドラムを共有し減速用遊星歯車40の外周径方向外側でクラッチC1、C3の摩擦部材を軸方向直列に配す構造であればキャンセラープレートやリターンスプリングを共有しない構造を用いてもよいとしている。
ブレーキB2は連結部材Z(12a)の外周スプラインにリティニングリング12cで係止されるフランジ12bの外周スプラインに係止される摩擦部材101と、摩擦部材101との間に交互に配され変速機ケース1bの内周部に形成されたスプライン形状の複数の歯に係止される摩擦部材102aと、側壁側端に配されたエンドプレート102bと、保持部材2aに配されピストン76aの外周径方向外側に延材して摩擦部材101、102aを押圧するピストン103と、リティニングリング106で保持部材2aに係止されるプレート105と、ピストン103を開放状態に戻すリターンスプリング104からなっており、第1、第2遊星歯車列20、30の第1構成要素を形成する一方のサンギアS1と連結する連結部材Zの制動及び開放をつかさどる。
A2の変速形態は図11の速度線図で示されるように、前進1速から4速段において構成要素Dへの入力が減速用遊星歯車を通過するので、A1の変速形態と比べ効率及び強度やトルク容量の面で不利となる。この変速形態において第1、第2遊星歯車列20、30の構成要素A、B、C、Dの位置関係はA1の変速形態のように前進1速段の変速比を前進6速段の変速比で割った値が6前後とクロスな変速比を得るのには不向きではあるが、さらなる燃費及び牽引特性向上のため大きな値を要求される場合に適している。構成要素A、B間と構成要素B、C間の比率と構成要素C、D間と構成要素B、C間の比率を1.9前後とし、減速用遊星歯車40の歯数比を1.5前後にとればワイドで適切な変速比を得ることができる。したがって図11のようにZR1/ZS1=1.897、ZR2/ZS2=1.535、ZR0/ZS0=1.809にとれば前進1速段4.523から前進6速段0.655の前進1速を前進6速段の変速比で除したギアレンジが6.91となるA1の変速形態以上のワイドなものが選定できる。
A2の変速形態における1st(前進1速段)から6th(前進6速段)及びRev(後進段)の作動と変速比を示す図11において、全ての変速段におけるクラッチ、ブレーキの締結要素はA1の変速形態と同じとなる。A1の変速形態と異なるのは前進1速から前進4速段まで構成要素Dへの入力が減速用遊星歯車40を通過することである。従って前進3速段では第1、第2遊星歯車列20、30の歯車が固定され、前進4速段では回転することがA1の変速形態と異なる。前進5,6速段及び後進段はA1の変速形態と同じとなる。
A2の変速形態において、減速比が大きくとれる前進1速段では減速用遊星歯車40で入力トルクが1.55倍に増幅され第2遊星歯車列30のサンギアS2に加わる。しかし、A1の変速形態のZR2/ZS2=2.25に対しA2の変速形態ではZR2/ZS2=1.535であるためリングギアの径を同じとすればサンギアS2の径は2.25/1.535=1.46倍となり強度的にはA1の変速形態とほぼ同じとなる。さらに、図23に示すようにピニオン遊星歯車の個数をA1の変速形態の図21に示す4個の1.5倍の6個としているので強度的にはA1の変速形態より有利になる。第1遊星歯車列20のサンギアS1には減速用遊星歯車40で入力トルクが1.55倍に増幅されさらに第2遊星歯車列30で約1.535倍の1.55×1.535=2.38倍に入力トルクが増幅される。A1の変速形態では2.25倍に入力トルクが増幅されA2の変速形態の1.55倍より大きなトルクがサンギアS1に加わり、ZR1/ZS1の比率もほぼ同じため、A1、A2の両変速形態とも第1遊星歯車列20の強度は同じにできる。このように、A2の変速形態はA1の変速形態と比べ減速用遊星歯車40を通過する頻度が増え効率の面で不利となるが、強度に有利な第1、第2遊星歯車列20,30の歯数となるのでA1の変速形態と強度面ではかわらない。
A2の変速形態の構成要素Aに、減速回転に加え非減速回転を入力して前進8速とした特許文献8と同じ変速形態をA3とし図14から図16及び図24に示す。図14の速度線図の構成要素A、B、C、Dは変速形態をA1とする図5と同じ第1、第2遊星歯車列20、30の構成要素である。したがって、第1、第2遊星歯車列20、30とクラッチC2、ブレーキB1及びワンウェイクラッチOWCの配置はA1の変速形態と同じくできる。入力軸3の回転は直接クラッチC2を介して第2構成要素B及びダブルピニオン遊星歯車からなる減速用遊星歯車40の遊星キャリアP0に入力されると同時に遊星キャリアP0からクラッチC4を介して第1構成要素Aに入力され、サンギアS0を固定した減速用遊星歯車40のリングギアR0を介した入力軸3の減速回転はクラッチC1、C3を介して第4、第1構成要素D、Aに入力され、第1、第2構成要素A,BはブレーキB2、B1で制動される。ここで、多様な形態をとる第1と第4構成要素の入力装置部REは減速用遊星歯車40と、クラッチC1、C3、C4と、ブレーキB2とからなっている。図14の模式図及び図15は図1、図3の空白となる入力装置部REにA3タイプの構造を挿入したものである。
A3タイプの入力装置部REを多段自動変速装置前方に配した図15と図15の詳細を示す図16において、トルクコンバータケース1aとチャージングポンプを保持する保持部材2aが変速機ケース1bにボルト締めされ、ボス部が変速機ケース1b中央のL字型の側壁側に円筒状に延材され流体継ぎ手10及び入力軸3を軸支する保持部材2cを圧入する保持部材2bが保持部材2aにボルト締めされ、基本形態はA1と同じとなる。保持部材2bのボス部外周には保持部材2a側から順にクラッチC3、C4の2連クラッチと減速用遊星歯車40及びクラッチC1が配される。保持部材2bのボス部外周に配された減速用遊星歯車40は、保持部材2bのボス部外周にスプラインで固定されるサンギアS0(41)と、リティニングリング48で係止される側板47及びスラストニードルベアリングにより軸方向が保持されるリングギアR0(43)と、サンギアS0とリングギアR0との間を噛み合い連結するピニオン遊星歯車42a、42bのダブルピニオン遊星歯車を軸支する遊星キャリアP0からなり、遊星キャリアP0のサイド部材45aが保持部材2bのボス部外周に沿って延材され入力軸3と芯出しのための嵌め合い部を設けて連結部材X(46)として入力軸3にスプライン連結される。
クラッチC3、C4の2連クラッチは、保持部材2bのボス部外周に軸受け4mで回転自在に軸支される円筒部材77に一体として溶着され変速機ケース1b中央のL字型の側壁側に開口部を有するクラッチC3のクラッチドラム74と、リングギア43の外周を保持部材2a側に延材し外周スプラインに係止される摩擦部材71と、摩擦部材71との間に交互に配されクラッチドラム74の外周円筒部内側スプラインにエンドプレート72bとリティニングリング73で係止される摩擦部材72aと、クラッチドラム74の側壁から一定距離で複数のスタッドピン75により一体としてL字断面鍔状の側壁を絞め固定されリングギア43の外周延材部の内周径方向内側に設けたクラッチC4のクラッチドラム84と、クラッチドラム84の円筒部内側スプラインにエンドプレート82bとリティニングリング83で係止される摩擦部材82aと、摩擦部材82aとの間に交互に配され遊星キャリアP0のサイド部材45bに溶着したクラッチハブ45cの外周スプラインに係止される摩擦部材81と、クラッチドラム74、84間の複数のスタッドピン75を貫通し軸方向に移動可能でクラッチドラム74の側壁との間に油圧室を形成し摩擦部材72cを押圧するピストン76と、ピストン76との間に油圧室を形成し摩擦部材82aを押圧するピストン85と、ピストン85との間に遠心油圧キャンセラー室を形成しリティニングリング88で円筒部材77に係止されるキャンセラープレート86と、ピストン85とキャンセラープレート86との間に配されピストン85、76を開放状態に戻すリターンスプリング87とからなっており、クラッチC3はリングギアR0と、クラッチC4は遊星キャリアP0とクラッチドラム74を介して第1、第2遊星歯車列20、30の第1構成要素を形成する一方のサンギアS1と連結する連結部材Z(12)との締結及び開放をつかさどる。
尚、クラッチC3、C4のクラッチドラム74、84はリングギア43の外周延材部を挟んで円周方向に2段となるクラッチドラムとしてスタッドピン75により一体形成され、クラッチドラム74とピストン76との間及びピストン76とピストン85との間、ピストン85とキャンセラープレート86との間に形成される油圧室には保持部材2bのボス部外周から作動油が供給され油圧サーボを形成する。本案では2連クラッチC3、C4のクラッチドラム74、84をスタッドピン75で一体的に連結したが請求項6における2連クラッチC3、C4では本案に限らず別の方式でリングギアR0の外周延材部を挟んで円周方向に2段となるよう連結しピストン85、76及びキャンセラープレート86を重ね合わせて配してもよいとしている。
クラッチC1はクラッチC3のクラッチドラム74と相対抗する開口部を有し連結部材Y(11)に溶着するクラッチドラム54と、リングギアR0の外周スプラインに係止される摩擦部材51と、摩擦部材51との間に交互に配されクラッチドラム54の外周円筒部内側スプラインにエンドプレート52bとリティニングリング53で係止される摩擦部材52aと、クラッチドラム54との間に油圧室を形成し摩擦部材52aを押圧するピストン56と、ピストン56との間に遠心油圧キャンセラー室を形成しリティニングリング59で連結部材Yに係止されるキャンセラープレート57と、ピストン56とキャンセラープレート57との間に配されピストン56を開放状態に戻すリターンスプリング58とからなっており、クラッチC1は遊星キャリアP0と第1、第2遊星歯車列20、30の第4構成要素を形成するサンギアS2と連結する連結部材Yとの締結及び開放をつかさどる。
クラッチドラム54とピストン56との間及びピストン56とキャンセラープレート57との間に形成される油圧室には保持部材2bのボス部外周から減速用遊星歯車40の遊星キャリアP0のサイド部材45aと一体となる連結部材Xを介して作動油が供給され油圧サーボを形成する。尚、クラッチドラム54は入力軸3と一体としてスプライン連結される連結部材Xのスプラインボス上で軸受け4hにより回転自在に軸支され、クラッチC3のクラッチドラム74と第1遊星歯車列20のサンギアS1を連結する連結部材Zはクラッチドラム74の外周にスプライン連結されクラッチC1のクラッチドラム54の外周径方向外側を変速機ケース1b中央のL字型の側壁まで筒状に延材され側壁とクラッチドラム54の間を内周方向に延材しサンギアS1の延材部とスプライン連結するとともに連結部材Y上で軸受け4jにより回転自在に軸支される。
ブレーキB2は連結部材Zの外周スプラインの変速機ケース1b中央のL字型の側壁側に係止される摩擦部材101と、摩擦部材101との間に交互に配され変速機ケース1bの内周部に形成されたスプライン形状の複数の歯に係止される摩擦部材102aと、側壁側端に配されたエンドプレート102bと、保持部材2aに配されクラッチドラム74の外周径方向外側に延材して摩擦部材101、102aを押圧するピストン103と、リティニングリング106で保持部材2aに係止されるプレート105と、ピストン103を開放状態に戻すリターンスプリング104からなっており、第1、第2遊星歯車列20、30の第1構成要素を形成する一方のサンギアS1と連結する連結部材Zの制動及び開放をつかさどる。
A3の変速形態は図14の速度線図で示されるように、前進8速のため前進1速段の減速比が大きくさらに前進8速段を小さくとれるよう減速用遊星歯車40の減速比を2前後とし、第1、第2遊星歯車列20、30の構成要素A、B、C、Dの位置関係を構成要素A、B間と構成要素B、C間の比率と構成要素C、D間と構成要素B、C間の比率を1.6前後としたものである。尚、一般車両では変速装置の変速比は変速装置からタイヤまでに配される終減速比も考慮し6〜0.6が適切とされる。したがって図14のようにZR1/ZS1=1.636、ZR2/ZS2=1.571、ZR0/ZS0=2.063にとれば前進1速段4.991から前進8速段0.621の前進1速を前進8速段の変速比で除したギアレンジが8.04となるA1、A2の変速形態以上のワイドなものが選定できる。
A3の変速形態における1st(前進1速段)から8th(前進8速段)及びRev(後進段)の作動と変速比を示す図14において、A2の前進6速の変速形態にクラッチC4を介して入力軸3の非減速回転を構成要素Aに入力したもので、クラッチ、ブレーキの締結要素はC1、C4とC2、C4の締結による2種の変速段が追加される。したがって、締結要素はC1、C4の締結が前進4速段となりC2、C4の締結が前進6速段となる。つまり、A2の変速形態の前進4速段は前進5速段となり、前進5,6速段が前進7、8速段となる。尚、B1、C4の締結でも後進の高速段が得られるが、通常車両では利用する必要がないためここでは記さなかった。
A3の変速形態の特色として構成要素Aの同一要素に入力軸3の減速回転と非減速回転の2種がクラッチC3、C4を介して入力する点にある。構成要素Aに2種の回転が同時に入力することは有得ないことより、クラッチドラムを共通の出力としピストンを重ね合わせた2連クラッチC3、C4の適用が考えられる。本発明ではリングギア43の外周延材部を挟んで円周方向に2段となるクラッチドラムとしたことでより一層のコンパクト化を実現している。ピストンを重ね合わせる方式では遠心油圧キャンセラー室とリターンスプリングが共用化できシンプル・コンパクトとなるが、これにとどまらず変速特性が良くなる利点がある。前進3速段と4速段及び前進6速段と7速段の変速ではクラッチC3とクラッチC4の切り換えで変速が行われる。クラッチC4の油圧室はクラッチC4のピストン85とクラッチC3のピストン76とで形成されるためクラッチC4の油圧室の作動油圧が両ピストンに作用する。つまりクラッチC4の締結力を加えるようピストン85に作用する作動油圧はクラッチC3の締結力を減少するようピストン76に作用する。クラッチC3を開放してクラッチC4を締結する場合クラッチC4の油圧を上げることで自動的にクラッチC3を開放し、クラッチC4を開放してクラッチC3を締結する場合クラッチC4の油圧を下げることで自動的にクラッチC3を締結してクラッチC3とC4を切り換えて変速する前進3速と4速の間及び前進6速と7速の間のスムースな変速制御が可能となる。この変速制御特性は本件発明者が特願2006−180590の図29で詳細説明をしている。
A3の変速形態において、減速比が大きくとれる前進1速段では減速用遊星歯車40で入力トルクが1.94倍に増幅され第2遊星歯車列30のサンギアS2に加わる。しかし、A1の変速形態ではZR2/ZS2=2.25に対しA3の変速形態ではZR2/ZS2=1.571であるためリングギアの径を同じとすればサンギアS2の径は2.25/1.571=1.43倍となる。しかし、図23に示すようにピニオン遊星歯車の個数をA1の変速形態の図21に示す4個の1.5倍の6個としているので強度的には1.43×1.5=2.14と入力トルクが1.94倍となってもA1の変速形態より有利になる。第1遊星歯車列20のサンギアS1には減速用遊星歯車40で入力トルクが1.94倍に増幅されさらに第2遊星歯車列30で約1.571倍の1.94×1.571=3.05倍に入力トルクが増幅される。2.25倍に入力トルクが増幅されサンギアS1に加わるA1の変速形態より1.35倍強度が足りなくなる。ピニオン遊星歯車の個数を8個にすれば強度的には同等となるが、ギアレンジが8.04と十分牽引力が確保できる大きさのためトルクコンバータによるトルク増幅が必要なくなる。減速用遊星歯車40で入力トルクが1.94倍に増幅されるためクラッチC1、ブレーキB1のトルク容量も増やさねばならないが、トルクコンバータによる通常1.8倍前後のストールトルク比特性を持つトルク増幅をなくすと容量も押さえることができる。
そこで、図15に示すようにトルクコンバータに代えてインペラとタービンの2個の羽根車からなるトルク増幅のない流体継ぎ手10を流体伝導装置に用いる。流体継ぎ手はトルクコンバータにおけるトルク増幅のためのリアクタ羽根車及びワンウェイクラッチがないためその分軸方向が短縮できる。加えてリアクタ羽根車によるインペラ羽根車への入力トルクの減少作用が働かないため羽根車のトーラス断面も小さく出来、重量及びコスト面で有利となる。円周方向に2段となるクラッチドラムとピストンを軸方向に重ね合わせてコンパクト化とコストダウンを図り前進8速段としたが、前進6速段と比べクラッチC4を追加したため軸方向の長さとコスト及び重量面では不利となる。当然クラッチ4に繋がる第1構成要素のイナーシャも増え、変速に際しては変速装置における回転部位のイナーシャを吸収する必要があるため、各クラッチ及びブレーキの容量も前進6速に比べ大きくしなければならない。しかし、流体継ぎ手では入力軸3と一体となるタービンのトーラス断面が小さくできタービンのイナーシャが小さくなるためトルクコンバータを用いる前進6速と比べ各クラッチ及びブレーキのイナーシャ吸収容量を大きくする必要はない。流体継ぎ手10を流体伝導装置に用いることで軸方向の長さ及び重量は前進6速段より有利となりコストは油圧制御部のみ高くなるだけで済む。当然ギアレンジが8.04と大きく各変速段の段間差も小さくなるため発進以外のフルロックアップによる原動機直結も可能となり燃費の向上が図れる。
図24はA3の変速形態における第1及び第2遊星歯車列20、30の第1と第4構成要素への入力装置部REを図4の如く変速装置の後方に配した入力装置部REの詳細である。図24はA3の変速形態の入力装置部REを変速装置の前方に配した図16を変速装機ケース1b中央の側壁に対し対象に配したもので、図16の保持部材2a、2b、2cが図24ではリアケース1cとなる以外同一である。
A2の変速形態の構成要素Dに、減速回転に加え非減速回転を入力して前進10速とした特許文献9と同じ変速形態をA4とし図17から図19及び図25に示す。図17の速度線図の構成要素A、B、C、Dは変速形態をA1とする図5と同じ第1、第2遊星歯車列20、30の構成要素である。したがって、第1、第2遊星歯車列20、30とクラッチC2、ブレーキB1及びワンウェイクラッチOWCの配置はA1の変速形態と同じくできる。入力軸3の回転は直接クラッチC2を介して第2構成要素B及びダブルピニオン遊星歯車からなる減速用遊星歯車40の遊星キャリアP0に入力されると同時に遊星キャリアP0からクラッチC4を介して第4構成要素Dに入力され、サンギアS0を固定した減速用遊星歯車40のリングギアR0を介した入力軸3の減速回転はクラッチC1、C3を介して第4、第1構成要素D、Aに入力され、第1、第2構成要素A,BはブレーキB2、B1で制動される。ここで、多様な形態をとる第1と第4構成要素の入力装置部REは減速用遊星歯車40と、クラッチC1、C3、C4と、ブレーキB2とからなっている。図17の模式図及び図18は図1、図3の空白となる入力装置部REにA4タイプの構造を挿入したものである。
A4タイプの入力装置部REを多段自動変速装置前方に配した図18と図18の詳細を示す図19において、トルクコンバータケース1aとチャージングポンプを保持する保持部材2aが変速機ケース1bにボルト締めされ、ボス部が変速機ケース1b中央のL字型の側壁側に円筒状に延材され流体継ぎ手10及び入力軸3を軸支する保持部材2cを圧入する保持部材2bが保持部材2aにボルト締めされ、基本形態はA1と同じとなる。保持部材2bのボス部外周には保持部材2a側から順にクラッチC3と減速用遊星歯車40及びクラッチC1、C4の2連クラッチが配される。保持部材2bのボス部外周に配された減速用遊星歯車40は、保持部材2bのボス部外周にスプラインで固定されるサンギアS0(41)と、リティニングリング48で係止される側板47及びスラストニードルベアリングにより軸方向が保持されるリングギアR0(43)と、サンギアS0とリングギアR0との間を噛み合い連結するピニオン遊星歯車42a、42bのダブルピニオン遊星歯車を軸支する遊星キャリアP0からなり、遊星キャリアP0のサイド部材45aが保持部材2bのボス部外周に沿って延材され入力軸3と芯出しのための嵌め合い部を設けて保持部材2bのボス部外周に軸受け4nで回転自在に軸支される連結部材X(46)として入力軸3にスプライン連結される。
クラッチC3は、保持部材2bのボス部外周に軸受け4mで回転自在に軸支される円筒部材75に一体として溶着され変速機ケース1b中央のL字型の側壁側に開口部を有するクラッチドラム74と、リングギア43の外周スプラインに係止される摩擦部材71と、摩擦部材71との間に交互に配されクラッチドラム74の外周円筒部内側スプラインにエンドプレート72bとリティニングリング73で係止される摩擦部材72aと、クラッチドラム74との間に油圧室を形成し摩擦部材72aを押圧するピストン76と、ピストン76との間に遠心油圧キャンセラー室を形成しリティニングリング79で円筒部材75に係止されるキャンセラープレート77と、ピストン76とキャンセラープレート77との間に配されピストン76を開放状態に戻すリターンスプリング78とからなっており、リングギアR0と第1、第2遊星歯車列20、30の第1構成要素を形成する一方のサンギアS1と連結する連結部材Z(12)との締結及び開放をつかさどる。
クラッチC1、C4の2連クラッチは、クラッチC3のクラッチドラム74と相対抗する開口部を有し連結部材Xの外周に軸受け4hで回転自在に軸支され連結部材Xの外周に沿って形成される連結部材Y(11)に一体として溶着されるクラッチドラム54と、リングギアR0の外周を変速装機ケース1b中央のL字型の側壁側に延材し外周スプラインに係止される摩擦部材51と、摩擦部材51との間に交互に配されクラッチドラム54の外周円筒部内側スプラインにエンドプレート52bとリティニングリング53で係止される摩擦部材52aと、クラッチドラム54の側壁から一定距離で複数のスタッドピン55により一体として逆L字断面鍔状の側壁を絞め固定されリングギア43の外周延材部の内周径方向内側に設けたクラッチC4のクラッチドラム84と、クラッチドラム84の円筒部内側スプラインにエンドプレート82bとリティニングリング83で係止される摩擦部材82aと、摩擦部材82aとの間に交互に配され連結部材Xにスプライン連結したクラッチハブ45cの外周スプラインに係止される摩擦部材81と、クラッチドラム54、84間の複数のスタッドピン55を貫通し軸方向に移動可能でクラッチドラム54との間に油圧室を形成し摩擦部材52cを押圧するピストン56と、ピストン56との間に油圧室を形成し摩擦部材82aを押圧するピストン85と、ピストン85との間に遠心油圧キャンセラー室を形成しリティニングリング88で連結部材Yに係止されるキャンセラープレート86と、ピストン85とキャンセラープレート86との間に配されピストン85、56を開放状態に戻すリターンスプリング87とからなっており、クラッチC1はリングギアR0と、クラッチC4は遊星キャリアP0とクラッチドラム74を介して第1、第2遊星歯車列20、30の第4構成要素を形成するサンギアS2と連結する連結部材Yとの締結及び開放をつかさどる。
尚、クラッチC1、C4のクラッチドラム54、84はリングギア43の外周延材部を挟んで円周方向に2段となるクラッチドラムとしてスタッドピン55により一体形成され、クラッチドラム54とピストン56との間及びピストン56とピストン85との間、ピストン85とキャンセラープレート86との間に形成される油圧室には保持部材2bのボス部外周から連結部材Xを介して作動油が供給され油圧サーボを形成する。本案では2連クラッチC1、C4のクラッチドラム54、84をスタッドピン55で一体的に連結したが請求項7における2連クラッチC1、C4では本案に限らず別の方式でリングギア43の外周延材部を挟んで円周方向に2段となるよう連結しピストン85、56及びキャンセラープレート86を重ね合わせて配してもよいとしている。
クラッチC3のクラッチドラム74と第1遊星歯車列20のサンギアS1を連結する連結部材Z(12)はクラッチドラム74の外周にスプライン連結されクラッチC1のクラッチドラム54の外周径方向外側を変速装機ケース1b中央のL字型の側壁まで筒状に延材され側壁とクラッチドラム54の間を内周方向に延材しサンギアS1の延材部とスプライン連結するとともに連結部材Y上で軸受け4jにより回転自在に軸支される。
ブレーキB2は連結部材Zの外周スプラインの変速装機ケース1b中央のL字型の側壁側に係止される摩擦部材101と、摩擦部材101との間に交互に配され変速装機ケース1bの内周部に形成されたスプライン形状の複数の歯に係止される摩擦部材102aと、側壁側端に配されたエンドプレート102bと、保持部材2aに配されクラッチドラム74の外周径方向外側に延材して摩擦部材101、102aを押圧するピストン103と、リティニングリング106で保持部材2aに係止されるプレート105と、ピストン103を開放状態に戻すリターンスプリング104からなっており、第1、第2遊星歯車列20、30の第1構成要素を形成する一方のサンギアS1と連結する連結部材Zの制動及び開放をつかさどる。
A4とA3の変速形態における入力装置部REの構造の違いはクラッチC4のクラッチドラム84がクラッチC1のクラッチドラム54と一体に連結されるかクラッチC3のクラッチドラム74と一体に連結されるかであり、2連クラッチC1、C4及びC3、C4の構造は同じとなる。
A4の変速形態は図17の速度線図で示されるように、A3の変速形態と同様の理由で構成要素A、B、C、Dの位置関係をA3の変速形態と同じくする。したがってA3の変速形態同様前進1速段4.991から前進10速段0.621の前進1速を前進10速段の減速比で除したギアレンジが8.04となるA1、A2の変速形態以上のワイドなものが選定できる。
A4の変速形態における1st(前進1速段)から10th(前進10速段)及びRev(後進段)の作動と減速比を示す図17において、A2の前進6速の変速形態にクラッチC4を介して入力軸3の非減速回転を構成要素Dに入力したもので、クラッチ、ブレーキの締結要素はC4、B1とC4、B2及びC4、C3さらにC4、C2の締結による4種の変速段が追加される。したがって、締結要素はC4、B1の締結が前進3速段となりC4、B2の締結が前進5速段となりC4、C3締結が前進7速段となりC4、C2の締結が前進8速段となる。つまり、A2の変速形態の前進3速段が前進4速段となり、前進4速段が前進6速段となり、前進5,6速段が前進9、10速段となる。また、A4の変速形態はA1とA2の変速形態を合わせたものであり、両方の変速形態の特性を有する。
通常変速は変速特性悪化を避けるため2個の締結要素の1個を切り換えることで行われる。図17のA〜Eの変速パターンを示した表は、クラッチC1から始まるA2の変速形態をA1の変速形態であるクラッチC4に切り換えるその変速段位置を変えたものである。クラッチC1は1st、2nd、4th、6thのA2変速形態の4変速段で締結し、クラッチC4は3rd、5th、7th、8thのA1変速形態の4変速段で締結しそれぞれ締結要素の1個を切り換えることで変速が行われる。変速パターンAではA2変速形態の1stからA1変速形態の3rd、5th、7th、8thに変速し、変速パターンBではA2変速形態の1st、2nd、4thからA1変速形態の6th、8thに変速し、変速パターンCではA2変速形態の1st、2ndからA1変速形態の5th、7th、8thに変速し、変速パターンDではA2変速形態の1st、2nd、4thからA1変速形態の7th、8thに変速し、変速パターンEでは3rdの締結要素クラッチC4とブレーキB1のブレーキB1の代わりに自動的に切り換わり変速特性のよいワンウェイクラッチOWCを用いたものを変速パターンAに追加し、A1、A2変速形態共通の9th、10thを含めて1stの変速比を10thの変速比で割った値が8.04とワイドになる前進7速段又は8速段とした。
A4の変速形態の特色として構成要素Dの同一要素に入力軸3の減速回転と非減速回転の2種がクラッチC1、C4を介して入力する点にある。構成要素Dに2種の回転が同時に入力することは有得ないことより、クラッチドラムを共通の出力としピストンを重ね合わせた2連クラッチC1、C4の適用が考えられる。前項で述べたAからEの変速パターンはクラッチC1とC4をどの変速段で切り換えるかにより5種類のパターンが生じるもので、クラッチC1とC4の切り換え以外の変速はA1、A2の変速形態と同じとなる。クラッチC1とC4の切り換えはA3の変速形態で述べたクラッチC3とC4の切り換えと同じく独立したクラッチの切り換え制御より簡単でスムースな変速が可能となる。
A4の変速形態において、減速比が大きくとれる前進1速段では減速用遊星歯車40で入力トルクが1.94倍に増幅され第2遊星歯車列30のサンギアS2に加わり、A3の変速形態で述べた如くA3の変速形態と同じ力が各歯車に作用するため説明は省略する。但しクラッチC1からC4に切り換わった後は動力が減速用遊星歯車40を通過しないため各歯車に作用する力が減少する。加えてA1の変速形態ではZR2/ZS2=2.25に対しA4の変速形態ではZR2/ZS2=1.571であるためリングギアの径を同じとすればサンギアS2の径は2.25/1.571=1.43倍となりA1の変速形態より1.43倍強度的に有利となる。A3及びA4の変速形態における変速比は類似しているがA4の変速形態の方が強度的には有利となる。尚、ギアレンジが8.04と十分牽引力が確保できる大きさのためトルクコンバータによるトルク増幅が必要なくなる点A3の変速形態と同じでありトルクコンバータを用いる必要もなくなる。
そこで、図18に示すようにトルクコンバータに代えてインペラとタービンの2個の羽根車からなるトルク増幅のない流体継ぎ手10を流体伝導装置に用いることで、軸方向の長さと重量面でA1、A2の前進6速段の変速形態より有利にすることができる。又、各クラッチ及びブレーキの変速時のイナーシャ吸収容量もA3の変速形態と同じで大きくする必要はない。当然ギアレンジが8.04と大きく各変速段の段間差も小さくなるため発進以外のフルロックアップによる原動機直結も可能となり燃費の向上が図れる。
図25はA4の変速形態における第1及び第2遊星歯車列20、30の第1と第4構成要素への入力装置部REを図4の如く変速装置の後方に配した入力装置部REの詳細である。図25はA4の変速形態の入力装置部REを変速装置の前方に配した図19を変速装機ケース1b中央の側壁に対し対象に配したもので、図19の保持部材2a、2b、2cが図25ではリアケース1cとなる以外同一である。