JP2014005917A - 前進9速後進1速の多段変速装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】各2個の遊星ギア列を用いた主変速装置と前置変速装置からなる、前進9速後進1速の多段自動変速装置をコンパクトに配置する。
【解決手段】主変速装置となる第1、第2、第3、及び第4構成要素を有した遊星ギア列と、前置変速装置となるA、B、C、及びDの構成要素を有した遊星ギア列と、6個のクラッチ及びブレーキの締結要素とからなる前進9速後進1速多段変速装置の、少なくとも構成要素Aに入力軸の回転を入力可能とし、構成要素D及びBを第1及び第2ブレーキB1、B2で制動可能とし、構成要素Cと第1構成要素を連結軸17で連結し、第1、第2、及び第4構成要素の2個の構成要素の回転を6個の締結要素で規制し、第3構成要素を出力する。
【選択図】図1

Description

本発明は、油圧クラッチ及びブレーキを用いて遊星ギアを制御する車両用自動変速機であるAT(Automatic Transmission)に関し、特に前進9速後進1速の多段変速装置に関する。
周知の如く、近年、地球環境問題のため自動車の省燃費の要求は強く、原動機の回転を低く押さえるため、乗用車用自動変速機は、従来の前進4速(4AT)から前進5、6速(5、6AT)の多段化が進められ、さらに、前進6速を超えたものも実用化されている。乗用車用手動変速機であるMT(Manual Transmission)は、通常、前進5速(5MT)であり、変速比は、前進の最低速段の変速比を最高速段の変速比で割ったギア巾が4〜5.5で、最低速段の次段へのステップ比が1.6〜1.9、最高速段の次段からのステップ比が1.2前後の設定となっている。一方、4ATでは、ギア巾が4前後で、最低速段の次段へのステップ比が1.8前後、最高速段の次段からのステップ比が1.4前後と、MTと比べワイドで牽引特性が劣っており、入力継手にトルク増幅作用のあるトルクコンバータを用いてMTとの差をカバーしている。しかしながら、トルクコンバータのトルク増幅作用はスリップ率に比例し、スリップ率の大きな低速段では効果があるが、スリップ率の小さな高速段では効果が少なく、牽引特性が劣化するばかりではなく、スリップによる効率悪化で燃費が悪くなる。そこで、ATにもMTと同じく前進5速(5AT)が必要となるが、MTほど各変速段を幅広く利用できないATでは、さらに変速段を増やす必要が生じる。
当然、変速段数を増やして、CVT(Continuously Variable Transmission)のような無段変速機に近づけ、トルクコンバータのような効率の悪い継手を用いず、原動機直結にすれば、燃費は向上する。近年、普及し始めたDCT(Dual Clutch automated mechanical Transmission)は、そのよい例であるが、変速準備可能な変速段数が1段しかないことや、カウンターギアとシンクロ装置の組み合わせでは、前輪駆動車における変速機の軸巾の制限のため変速段数の数が限られ、効率面では勝るが、ATより進化する余地が少ないといわざるを得ない。また、近年普及した金属ベルト式CVTは、10−15モードやJC08モードといった市街地での緩加速を主体とした走行モードでの燃費はよくなるが、金属ベルトの伝達効率が遊星ギアとは比較にならないほど悪く、通常の市街地走行では、4ATと燃費があまりかわらなくなるのが現実である。そればかりか、変速巾が高速側に振れ過ぎで、しかも変速巾に限度があり、トルクコンバータでカバーしなければならないのに加え、郊外や高速走行では、ロックアップしたATより燃費が悪くなるため、特にCVTが多く搭載されている前輪駆動のFF用自動変速機には、原動機直結で使用できる、変速段数を増やしたシンプルで効率のよい多段変速装置が必要となる。
一方、トラックやバスの自動変速機(AT)は、乗用車に先駆けて早くから多段化が進められてきたが、ATの用途として、発進停止が多く安全を重視するようなバスや特殊車両が多いため、一般的なATとしては6ATまでで、それ以上にはなっていない。特に、欧米では、シティバスの100%がATであり、後輪駆動のRR用自動変速機ため軸方向のコンパクトさが要求され、多段化による軸方向の伸びは制限される。加えて、市街地走行の牽引性能としては4ATで満足できることもあって、更なる多段化は進んでいない。しかしながら、省燃費の要求は強く、原動機の回転を低く抑えるため、インターシティバスや観光バス、及びトラックでは、6AT以上の多段化が必要であり、シティバスでも坂道走行や郊外走行では、多段化が要求される。また、これらの車両では、乗用車に先駆けて内燃機関と電動モータを併用するハイブリッド車両(HEV)が実用化されてきた経緯があり、HEVやフートブレーキ以外のブレーキであるリターダもATに要求される。
近年、実用化された5AT以上の多段変速装置の多くは、4個の構成要素からなる2個の遊星ギア列を備えた主変速機構と、主変速機構に入力軸の変速回転を入力する前置変速機構から成り立っている。その変速方式は、主変速機構の4個の構成要素の、2個の回転を規制することにより変速を行う形態で、2個の構成要素の回転規制は、前置変速機構と複数の締結要素で行っている。これに対し、複数の遊星ギア列の構成要素を固定せず、入力軸の回転を常時、遊星ギア列の構成要素に連結し、3列以上に配した遊星ギア列の構成要素の組み換えを行うことで変速を行う形態の多段変速装置も数多く提案され、一部実用化もされている。但し、組み換えを行うクラッチの容量が大きくなる場合や、クラッチの配置がコンパクトにならない場合が多いので、注意を要する。古くは、米国特許US3、385、134によるBorg Warnerの5ATがあり、近年では、米国特許US2002−183160A1(特開2003−35341)によるGMの6AT(SAE PAPER 2007−01−1095)が実用化された。
主変速機構と前置変速機構からなる多段自動変速機としては、3種の方式が実用化されており、1970年代にトラックやバス用に考案された特許文献1による6ATのAタイプと、1980年代に考案された特許文献2による6ATのBタイプと、1990年代に考案された特許文献3による5ATのCタイプがある。A、B、Cタイプのいずれも3個の遊星ギア列と5個の締結要素からなり、4ATと比べ遊星ギア列が1個増えただけで、クラッチの摩擦部材を遊星ギア列の外周に配することで、4ATと同じ軸方向長さが確保できる優れものである。また、A、B、Cタイプのいずれも前進の減速段において、主変速機構の4個の構成要素の主動側となる構成要素に入力軸の回転、あるいは、入力軸の減速回転を選択的に入力する同じ方式であるが、入力する回転に違いがあり、それにより特性に異なりが生じる。前進の減速段において、主変速機構の主動側となる構成要素に入力する回転を、Aタイプは入力軸の回転とし、Bタイプは、入力軸の減速回転とし、Cタイプは、入力軸の回転、及び減速回転としたものである。なお、減速回転は、入力軸の回転を、前置変速機構を通して出力させている。
その主動側となる構成要素に入力する回転の違いにより、Aタイプ6ATでは、変速比が高速側に振れやすく、Bタイプ6ATは、変速段のステップ値には若干問題があるが、変速比が概ね適切に取れ、Cタイプ5ATは、変速段のステップ値も変速比も適切に取れる。その結果、Bタイプ6ATが一番多く実用化されており、SAE PAPER 2003−01−0596(ZF)、2004−01−0651(AISIN AW)、2004−01−0652(AISIN AW)、2006−01−0846(GM)、にその概要が記載されている。しかしながら、Bタイプ6ATは、前進の減速段全てにおいて、前置変速機構を通して出力される減速回転を用いるため、前置変速機構の動力通過損失が最も多くなり、Aタイプ6ATやCタイプ5ATより遊星ギアの噛み合い効率が悪くなるのに加え、減速された大きなトルクがクラッチを介して主変速機構に入力されるため、クラッチの容量や主変速機構の遊星ギアの容量を大きくしなければならない。さらに、Bタイプ6ATの主変速機構に用いることができる2個の遊星ギア列は限られ、ラビニョー遊星ギアが用いられているが、ラビニョー遊星ギアは効率が悪いうえに、強度が上げにくい難点がある。一方、Aタイプ6ATは、前進3速と5速段で、入力軸の減速回転を、受動側の構成要素に入力動力の20〜30%しか入力しない形態となり、減速回転を伝達するクラッチの容量も大きくする必要もなく、最も遊星ギアの噛み合い効率が良くなる。また、Cタイプ5ATは、減速回転を、前進段では1速段でしか主動側の構成要素に入力しないため、Aタイプ6ATより若干遊星ギアの噛み合い効率は悪くなるが、Bタイプ6ATには負けない効率が確保できる。なお、Cタイプ5ATでは、前進1速段で、減速回転を主動側の構成要素にブレーキを介して入力させるため、Bタイプ6ATのように減速回転を伝達するクラッチの容量を大きくする等の必要性はないが、主変速機構の主動側の構成要素には大きな減速トルクが入力される。そこで、Cタイプ5ATは、主変速機構にシンプソン遊星ギアを用い、リングギアを主動側の構成要素としているため、大きなトルクが入力されても、歯面荷重を小さくすることができるとともに、動力を2列の遊星ギアに分散することができ、Bタイプ6ATのような強度上の難点は生じない。しかし、これら3種の多段変速装置を総合的に比較すると、自動変速機では、前進の変速段数は6段以上必要であることが優先されるため、同じ数の構成で6段が達成できる、A、Bタイプ6ATの方が、Cタイプ5ATを一歩リードする。
このAタイプ6AT、Bタイプ6AT、Cタイプ5ATをベースとして、さらに、多段化したものが考案されている。実用化されたものとしては、特許文献4とSAE PAPER 2004−01−0649に記載された、BenzのCタイプ7AT(前進7速後進2速)と、特許文献5とSAE PAPER 2007−01−1101に記載された、ToyotaのBタイプ8AT(前進8速後進2速)である。Cタイプ7ATは、Cタイプ5ATに減速用遊星歯車を追加し、さらに大きな減速回転を、ブレーキによりシンプソン遊星ギアの主動側の構成要素となるリングギアに入力したもので、4個の遊星ギア列と6個の締結要素からなっている。また、Bタイプ8ATは、Bタイプ6ATにクラッチを追加し、入力軸の回転を、クラッチを介して主変速機構の受動側の構成要素に入力し、さらに大きな減速回転を、ラビニョー遊星ギアの主動側の構成要素となるサンギアに入力したもので、3個の遊星ギア列と6個の締結要素からなっている。一方、3列以上に配した遊星ギア列の構成要素の組み換えを行うことで変速を行う特殊な形態(Dタイプとする)の多段変速装置として、Aタイプ6ATに匹敵する遊星ギアの優れた噛み合い効率となる4個の遊星ギア列と5個の締結要素からなる8AT(前進8速後進1速)が、ZFから特許文献6で考案され実用化されている。いずれも、後輪駆動となるFR用の多段自動変速機である。これらの構造と速度線図、及び変速比を、本願の図23に「B−Type TOYOTA 8AT」として、図24に「C−Type BENZ 7AT」として、図25に「D−Type ZF 8AT」として提示した。この図のGEAR EFFは、遊星ギアの噛み合い効率を表し、本願出願人が算出したものである。この効率計算は、動力が伝達される全ての歯車の動力通過量を求め、各歯車の噛み合い損失を算出し、合計したものである。燃費は変速比に左右されるが、多段化により悪化する遊星ギアの噛み合い効率を押さえることが、燃費向上の重要課題となるため、本出願では、提示した全ての多段自動変速機に、遊星ギアの噛み合い効率を表記した。
この実用化された7AT、8ATを比較すると、ギア比の連なりではCタイプ7AT>Bタイプ8AT>Dタイプ8AT、シンプルさではBタイプ8AT>Dタイプ8AT>Cタイプ7AT、遊星ギアの噛み合い効率ではDタイプ8AT>Cタイプ7AT>Bタイプ8ATの順によいと判別できる。但し、このように変速段数を増やすのなら、最低速段となる前進1速段の変速比を最高速段となる変速比で除したギアレンジを8以上に設定し、原動機の回転をさらに減少させて燃費をよくすることが望まれるが、Dタイプ8ATが7.3、Bタイプ8ATが6.7、Cタイプ7ATが6.0、と変速段数の割にギアレンジの値が小さく、変速比のステップ値も中速度段域でクロスになり過ぎており、多段変速装置にふさわしい変速比にはなっていない。これらの多段変速装置でギアレンジを大きくすることは、強度的なことも含めて構造上困難となっている。加えて、Bタイプ8ATでは、前進の1速〜4速段での噛み合い効率が悪くなり過ぎており、Dタイプ8ATでは、クラッチの配置位置が構造設計を複雑にし、Cタイプ7ATでは、部品点数が多い割に変速段数がとれない欠点があり、それぞれ、パワートレンの複雑さに見合った性能を取り得ていない状況にある。
このような状況下、Cタイプ7ATを進化させた多段変速機が、特許文献7と8でZFから提案された。これは、Bタイプ8ATより遊星ギア列が1個多いにもかかわらず変速段が1個少なくなる、Cタイプ7ATの欠点を解消したもので、Cタイプ7ATと同じ4個の遊星ギア列と6個の締結要素で、9AT(前進9速後進1速)を実現したものである。特許文献7と8における前置変速機構は、2個のシンプル遊星ギアの互いのプラネットキャリアを連結するとともに、一方の遊星ギアのサンギアと他方の遊星ギアのリングギアを連結して4個の構成要素を有し、入力軸の回転を2個のクラッチで一方の遊星ギアのサンギアと他方の遊星ギアのリングギアを連結した構成要素と他方の遊星ギアの独立したサンギアに入力し、他方の遊星ギアの独立したサンギアと一方の遊星ギアの独立したリングギアにブレーキを配し、連結した互いのプラネットキャリアを主変速機構の主動側の構成要素に連結するもので、この4個のクラッチ及びブレーキの締結要素の2個を選択的に締結することにより、入力軸の直結回転と逆回転、2種の減速回転、及び固定状態の5種を、連結した互いのプラネットキャリアにもたらすものである。このCタイプ9ATは、これまで実用化されたCタイプ7AT、Bタイプ8AT、Dタイプ8ATと比べ、構造的にギアレンジを大きくとることができ、Dタイプ8ATより遊星ギアの噛み合い効率は少し劣るものの、変速比の連なりもそれほど悪くはなく、優れた多段変速装置となり得るものである。
特許文献7と8では、前置変速機構の2個のシンプル遊星ギアを軸方向に2階建てにして配し、締結要素の全てを、軸方向が長くなる摩擦部材を有したアクチュエータとして用いることをせず、一部ドグクラッチとすることで、FF用に適用する形態をとっている。但し、前置変速機構の2個のシンプル遊星ギアを軸方向に2階建てにすることは、締結要素となる2個のクラッチと2個のブレーキの配置スペースがとりにくくなるため、必ずしもコンパクトになるわけではない。また、特許文献7では、主変速機構の2個のシンプル遊星ギアを軸方向に2階建てにして用いている。確かに、主変速機構の2個のシンプル遊星ギアを軸方向に2階建てにして用いているとコンパクトになるが、特許文献7における主変速機構の2個のシンプル遊星ギアの組み合わせでは、後述の段落「0013」で説明する本願の図26に提示したCタイプ9ATの速度線図のような位置関係がとれなく、第1構成要素が第3遊星歯車セット(P3)の太陽歯車(サンギア)と第4遊星歯車セット(P4)の内歯歯車(リングギア)となり、第2構成要素が第3遊星歯車セット(P3)のリブ(プラネットキャリア)となり、出力要素となる第3構成要素が第3遊星歯車セット(P3)の内歯歯車(リングギア)と第4遊星歯車セット(P4)のリブ(プラネットキャリア)となり、第4構成要素が第4遊星歯車セット(P4)の太陽歯車(サンギア)となるため、第3と第4の構成要素の間が、図24の1.5倍以上必要となり、Cタイプの特徴であるよい変速比がとれない。
また、Cタイプ9ATの利点は、発進段となる前進1速と後進段において締結するブレーキが、速度線図の端に位置する主変速機構の第4構成要素となるサンギアを制動するため、ブレーキのトルク容量がA、Bタイプ及びCタイプ7AT、さらには、Dタイプ8ATの一部のクラッチのトルク容量より小さく抑えることができることである。多段変速装置では、発進段となる前進1速と後進段の変速比を大きくとらなければ全体の変速比のバランスが悪くなるため、それに見合ったブレーキのトルク容量も大きくしなければならなくなる。遊星ギアは、サンギア、リングギア、遊星キャリアの順に負荷トルクが大きくなり、A、Bタイプ、Cタイプ7AT、及びDタイプ8ATでは、発進段となる前進1速段と後進段でリングギアまたは遊星キャリアを制動するため、制動トルク容量がどうしても大きくなってしまう。特許文献7では主変速機構の第4構成要素となるサンギアを固定し、それに匹敵するクラッチにドグクラッチを用い、特許文献8では主変速機構の第4構成要素となるサンギアのブレーキにドグクラッチを用いている。ドグクラッチは、ギアを噛み合わせるため、小さなスペースで大きな容量をとれるが、Cタイプ9ATでは、それほど大きな容量を必要としない。当然、ドグクラッチは、係脱時回転を同期させなければならないため、自動変速には不利となる。
そこで、本願出願人は、4個の構成要素からなる前置変速機構の遊星ギア列を、特許文献7と8と異ならせ、締結要素となる6個のクラッチ及びブレーキの配置と主変速機構の配置を工夫することにより、ドグクラッチを用いなくても変速装置全体がコンパクトにできるCタイプの9ATを、特許文献9で提案した。その主変速機構の一部の実施例として、特許文献7とは異なる組み合わせの2個のシンプル遊星ギアを軸方向に2階建てにして用いており、そのパワートレンのスケルトン構造と速度線図、及び変速比を、本願の図26に提示した。
これらCタイプ9ATの特許文献7、8、9に用いられた前置変速機構の、2個の遊星ギア列の組み合わせによる4個の構成要素で表される速度線図の形態は同一で、構成要素をA、B、C、Dとして順に並べ、AとDに入力軸の回転をクラッチを介して入力し、CとDをブレーキで制動し、Bを主変速機構の主動側の構成要素に連結したものである。ここでは、入力軸の前進回転と逆回転を得るため、入力軸の回転をクラッチでAとDに繋ぎかえる形態としている。
さらに、Cタイプとは別の方式として、遊星ギアの噛み合い効率のよいAタイプ6ATを、9AT(前進9速後進1速)に進化させることも可能となる。それは、Aタイプ6ATの受動側の構成要素を、入力軸の減速回転と逆回転、及び制動の3種に規制し、前進1速段と後進段でのみ主動側の構成要素として用いることによって可能となる。このAタイプ9ATは、本願出願人が提案した特許文献9の図18に参考として記載している。
Cタイプ9ATの前置変速機構により5種の回転を得る方式は、特許文献7、8,9以外にもあり、それは、Aタイプ9ATの前置変速機構により3種の回転を得る方式と相通じるところがあるため、主変速機構も含めて本願で提案するものである。特に、この前置変速機構の2列の遊星ギアには、負荷トルクが小さくなる組み合わせが適用できる利点がある。
本願で提案するCタイプ9ATは、本願出願人が提案した特許文献9と同じ機能を踏襲するものである。したがって、前置変速機構のみが異なるだけで、主変速機構や主変速機構との連結、及び全体の配置は、特許文献9と同じ優れたものが可能となり、シンプル・コンパクトな構造となる。Cタイプ9ATは、これまで実用化されたCタイプ7AT、Bタイプ8AT、Dタイプ8ATより変速比のギアレンジが大きくとれ、優れた多段変速装置となり得る可能性があるものであるが、オーバドライブの変速段が4段と多く、これら実用化された多段変速装置より、変速比が高速側に振れ過ぎる欠点がある。一方、Aタイプ9ATは、変速比が大きくなる前進1速段での負荷または負荷頻度が軽減されるため、ギアレンジとなる変速比が5 〜0.6と比較的大きくとれ、オーバドライブとなる変速段も3段でよく、Cタイプ9ATに対抗できる構造をもっている。但し、1個の逆回転の入力で、前進1速段と3速段、及び9速段の3つの変速段が生まれるが、Aタイプの特徴である遊星ギアの噛み合い効率のよさが、一旦、逆回転をする1、3速段に限り悪くなり、一部、変速比のステップ値がクロスになる欠点もある。しかしながら、主変速機構に効率の悪いラビニョー遊星ギアを用いたとしても、遊星ギアの噛み合い効率は、Bタイプ8ATよりはよく、Cタイプ7ATと大差はでない。
ところで、実用化された乗用車の前進6速以上のATでは、トルクコンバータが発進デバイスとして用いられている。これらのトルクコンバータは、トーラス内部圧を締結に用いる簡易型ロックアップクラッチを備えたもので、締結時の応答性が悪いのに加え、逆駆動時には締結できない問題がある。そのため、Cタイプ5AT、7ATでは、乗用車用として初めてトルクコンバータに独立した油圧室を備えたロックアップクラッチを用いている。この独立した油圧室を備えたロックアップクラッチは、トラックやバスでは、一般的に用いられている構造である。また、トルクコンバータは、トルク増幅作用を有効に利用するため、原動機の最大トルクがでる回転付近でマッチングさせる設定になっている。したがって、最大出力を必要としない一般的な発進状態において原動機の回転が上がり過ぎとなり、不快感をもたらすとともに燃費悪化の原因となっている。対策として、発進時、トルクコンバータのロックアップクラッチを滑らせて用いれば、原動機の余計な回転上昇を防ぐことができるが、トルクコンバータのトルク増幅作用が消され、トルクコンバータを使用する価値が薄れる。まして、AタイプやCタイプ9ATでは、前進の変速段におけるギアレンジが8〜10となり、牽引力が十二分にとれるため、トルクコンバータは過剰品質となる。特にFF用9ATでは、6ATと比べ、遊星ギア列と締結要素が各1個多くなるため、変速装置の軸幅が広がることが避けられず、軸幅を広くとるトルクコンバータをなくす必要がある。トルクコンバータの代わりにホィールステータをなくした流体継手を用いれば、トルクコンバータより20%軸幅を縮小できるため、FF用9ATには有効な発進デバイスとなり得る。ところが、流体継手に独立した油圧室を備えたロックアップクラッチを用いる場合、流体継手のトーラス循環の2通路とロックアップクラッチ作動の1通路の外部からの制御回路の確保が困難となる。そこで、既に特許文献9で適用しているが、本願でも、本願出願人が特開2008−196660で提案した、独立した油圧室を備えるにもかかわらず、外部からの油通路が2通路で済む、コンパクトなロックアップクラッチを備えた流体継手とトルクコンバータを記載した。
さらに、先進的なATとして、BENZのCタイプ7ATでは、トルクコンバータに代えて湿式クラッチを発進デバイスとして用いた方式も実用化している。それに対し、前進1速と後進段で締結する同じブレーキを滑らせて発進デバイスとする方式を、本願出願人は、特開2009−236234に提示している。この方式は、発進段で締結するブレーキの、交互に配された摩擦部材の同一径中央円周部に複数の貫通穴を設け、発進時、ブレーキにすべり制御を行うとともに、摩擦部材の端部側面から貫通穴に冷却油を供給するようにした提案である。特許文献9では、前進1速と後進段で締結するブレーキB1の負荷トルクは、減速比の小さな前置変速機構に設けてあるため小さくなり、摩擦部材の枚数や受圧面積を大きくし、摩擦部材を確実に冷却してすべりエネルギーを吸収しやすいすべり制御に適した構造となる。したがって、前置変速機構のブレーキB1の滑り制御の特許も請求している。本願のA及びBタイプ9ATにおいて、前置変速機構で締結する前進1速と後進段のブレーキは、特許文献9のようにブレーキB1の1個とはならなく、ブレーキB1とB2の2個となるが、いずれも既存の多段変速装置よりブレーキ容量が小さくでき、滑らせるには最適となるため、この2個のブレーキの構造も特許請求した。なお、発進時、原動機の回転上昇を防ぐため、トルクコンバータや流体継手の容量を大きくし、これらブレーキを滑らせて発進することも可能となる。また、発進デバイスとしてモータジェネレータを用いたHEV方式でも、ブレーキを発進デバイスとして併用できるようにしておけば、より安全性が高まる。
特開昭52−149562 特開平4−219553 US5,435,791 特開2000−266138 特開2001−182785 特表2008−527267 特開2011−513661 特開2011−513662 特願2012−5766
本発明の第1の課題は、それぞれ4個の構成要素からなる2個の遊星ギア列を有した前置変速機構と主変速機構の、前置変速機構の入力軸の減速回転と逆回転を得る変速形態を規定し、「背景技術」に記載した、ギアレンジが大きくとれるA及びCタイプとなる2種類の前進9速後進1速の多段変装置を得ることであり、その前置変速機構は、既に提案された前進9速後進1速の多段変装置である特許文献7、8、9とは異なる形態とすることである。
本発明の第2の課題は、第1の課題における本願出願人が提案した特許文献9と同様の、Cタイプの前進9速後進1速の多段変速装置の特性とコンパクトさを、入力軸と出力軸が同軸となる後輪駆動のFR用多段変速機と、入力軸と出力軸がオフセットされる前輪駆動のFF用多段変速装置において、同じ部品点数で前置変速機構の変速形態を変えて踏襲し、Cタイプの前進9速後進1速の多段変速装置の変速形態に多様性をもたせることである。
本発明の第3の課題は、第1の課題における前置変速機構の変速形態を用いて、特許文献7、8、9とは異なる変速形態となるAタイプの主変速機構と前置変速機構をシンプル・コンパクトなパワートレンとし、前進9速後進1速の多段変速装置とすることである。
本発明の第4の課題は、このA及びCタイプの前進9速後進1速の多段変装置において、一部の部品が高速回転になるのを防ぐ手段を提供することである。
本発明の第5の課題は、このA及びCタイプの前進9速後進1速の多段変速装置の、前置変速機構の前進1速と後進段で締結する第1及び第2ブレーキ(B1、B2)の摩擦部材を、熱吸収がよく冷却効果の高い構造として滑り制御を可能とし、トルクコンバータに代わり得る発進デバイスとし、モータジェネレータを用いたHEVにも併用できるようにすることである。
請求項1に係わる本発明は、それぞれ4個の構成要素からなる2個の遊星ギア列を有した前置変速機構と主変速機構と、6個の締結要素からなる前進9速後進1速の変速段が実現できる「背景技術」に記載したA及びCタイプの多段変速装置の前置変速機構の変速形態に関するもので、第1の課題を解決するための手段であり、入力軸を変速する複数の遊星ギア列を有した変速装置の共通の速度線図上に、少なくとも前記入力軸に対する前進の減速段において、第1、第2、第3、及び第4構成要素を順に並べて配した第1及び第2遊星ギア列(10、20)からなる主変速機構と、A、B、C、及びDの4個の構成要素を順に並べて配した第3及び第4遊星ギア列(30、40)からなる前置変速機構の、前置変速機構の構成要素Cと主変速機構の第1構成要素を連結軸(17)で連結し、少なくとも6個のクラッチ及びブレーキの締結要素の選択的な締結により、入力軸に対して前進9速後進1速の変速段が実現できる多段変速装置であって、前置変速機構の構成要素Aに入力軸の回転を入力、あるいは、入力可能とし、構成要素D及びBを第1及び第2ブレーキ(B1、B2)で制動可能とすることにより、 構成要素Cが、少なくとも入力軸の減速回転と逆回転を得るようになした。
請求項2に係わる本発明は、「背景技術」に記載したCタイプの前進9速後進1速の多段変装置における前置変速機構と主変速機構の変速形態に関するもので、第2と第4の課題を解決するための手段であり、前置変速機構の構成要素A及びBに第1及び第2クラッチ(C1、C2)で入力軸の回転を入力可能とし、構成要素D及びBを第1及び第2ブレーキ(B1、B2)で制動可能とし、第1及び第2クラッチ(C1、C2)又は第1及び第2ブレーキ(B1、B2)の何れか2個を選択的に締結することにより、主変速機構の第1構成要素と連結軸(17)で連結された構成要素Cが、入力軸の直結回転と逆回転、及び入力軸の2種の減速回転、それに制動を含めた5種の回転に規制されるようになし、主変速機構の第4構成要素を第3ブレーキ(B3)で制動可能にし、第2構成要素に入力軸の回転を第3クラッチ(C3)で入力可能とし、第1、第2、及び第4構成要素の2個の構成要素の回転を、第1、第2、及び第3クラッチ(C1、C2、C3)と第1、第2、及び第3ブレーキ(B1、B2、B3)で規制することにより、あるいは、主変速機構の第1、第2、及び第3構成要素を、第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)、プラネットキャリア(P2)、及びリングギア(R2)として第2遊星ギア列(20)のプラネットキャリア(P2)に第3クラッチを介して入力軸の回転を入力可能とし、主変速機構の第1又は第2構成要素を構成する第1遊星ギア列(10)の構成要素の何れか一方の構成要素と第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)又はプラネットキャリア(P2)を、第4クラッチ(C4)を介して連結可能とし、主変速機構の第4構成要素を構成する第1遊星ギア列(10)の構成要素をハウジングに固定し、第1、第2、及び第4構成要素の2個の構成要素の回転を、第1、第2、第3、及び第4クラッチ(C1、C2、C3、C4)と第1及び第2ブレーキ(B1、B2)で規制することにより、第3構成要素が、入力軸の直結回転と逆回転、及び入力軸のそれぞれ4種の減速回転と増速回転、を得るようになした。
請求項3に係わる本発明は、「背景技術」に記載したAタイプの前進9速後進1速の多段変装置における前置変速機構と主変速機構の変速形態に関するもので、第3と第4の課題を解決するための手段であり、前置変速機構の構成要素Aに第1クラッチ(C1)で入力軸の回転を入力可能とし、構成要素D及びBを第1及び第2ブレーキ(B1、B2)で制動可能とし、第1クラッチ(C1)又は第1及び第2ブレーキ(B1、B2)の何れか2個を選択的に締結することにより、あるいは、前置変速機構の構成要素Aと入力軸を連結し、構成要素D、B、及びCを第1、第2、及び第4ブレーキ(B1、B2、B4)で制動可能とし、第1、第2、及び第4ブレーキ(B1、B2、B4)の何れか1個のブレーキを選択的に締結することにより、主変速機構の第1構成要素と連結軸(17)で連結された構成要素Cが、入力軸の減速回転と逆回転、それに制動を含めた3種の回転に規制されるようになし、主変速機構の第4構成要素に入力軸の回転を第2クラッチ(C2)で入力可能とし、第2構成要素に入力軸の回転を第3クラッチ(C3)で入力可能とするとともに第3ブレーキ(B3)を配して制動可能にし、第1、第2、及び第4構成要素の2個の構成要素の回転を、第1、第2、及び第3クラッチ(C1、C2、C3)と第1、第2、及び第3ブレーキ(B1、B2、B3)、あるいは、第2及び第3クラッチ(C2、C3)と第1、第2、第3、及び第4ブレーキ(B1、B2、B3、B4)で規制することにより、あるいは、主変速機構の第1、第2、及び第3構成要素を、第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)、プラネットキャリア(P2)、及びリングギア(R2)として第2遊星ギア列(20)のプラネットキャリア(P2)に第3クラッチ(C3)を介して入力軸の回転を入力可能とするとともに第3ブレーキ(B3)を配して制動可能にし、主変速機構の第1又は第2構成要素を構成する第1遊星ギア列(10)の構成要素の何れか一方の構成要素と第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)又はプラネットキャリア(P2)を、第4クラッチ(C4)を介して連結可能とし、主変速機構の第4構成要素を構成する第1遊星ギア列(10)の構成要素と入力軸を連結し、第1、第2、及び第4構成要素の2個の構成要素の回転を、第1、第3、及び第4クラッチ(C1、C3、C4)と第1、第2、及び第3ブレーキ(B1、B2、B3)、あるいは、第3及び第4クラッチ(C3、C4)と第1、第2、第3、及び第4ブレーキ(B1、B2、B3、B4)で規制することにより、第3構成要素が、入力軸の直結回転と逆回転、及び入力軸の5種の減速回転と3種の増速回転、を得るようになした。
請求項4に係わる本発明は、「背景技術」に記載したA及びCタイプの多段変速装置の前置変速機構の第1及び第2ブレーキ(B1、B2)に関するもので、第5の課題を解決するための手段であり、前置変速機構の第1及び第2ブレーキ(B1、B2)の交互に配された摩擦部材の同一径中央円周部に複数の貫通穴を設け、摩擦部材の端部側面から貫通穴に冷却油を供給するようになした。
請求項5に係わる本発明は、「背景技術」に記載したA及びCタイプの多段変速装置の、前置変速機構の4個の構成要素からなる2個の遊星ギアの組み合わせに関するもので、第1の課題を解決するための手段であり、前置変速機構の第3及び第4遊星ギア列(30、40)は、第3及び第4遊星ギア列(30、40)をシンプル遊星ギアとして、第4遊星ギア列(40)のリングギア(R4)を構成要素Aとし、第3遊星ギア列(30)のリングギア(R3)と第4遊星ギア列(40)のプラネットキャリア(P4)を連結して構成要素Bとし、第3遊星ギア列(30)のプラネットキャリア(P3)を構成要素Cとし、第3及び第4遊星ギア列(30、40)の互いのサンギア(S3、S4)を連結して構成要素Dとした、あるいは、第3及び第4遊星ギア列(30、40)をシンプル遊星ギアとして、第3及び第4遊星ギア列(30、40)の互いのサンギア(S3、S4)を連結して構成要素Aとし、第3遊星ギア列(30)のプラネットキャリア(P3)を構成要素Bとし、第3遊星ギア列(30)のリングギア(R3)と第4遊星ギア列(40)のプラネットキャリア(P4)を連結して構成要素Cとし、第4遊星ギア列(40)のリングギア(R4)を構成要素Dとした、あるいは、第3及び第4遊星ギア列(30、40)をシンプル遊星ギアとして、第4遊星ギア列(40)のサンギア(S4)を構成要素Aとし、第3遊星ギア列(30)のリングギア(R3)と第4遊星ギア列(40)のプラネットキャリア(P4)を連結して構成要素Bとし、第3遊星ギア列(30)のプラネットキャリア(P3)と第4遊星ギア列(40)のリングギア(R4)を連結して構成要素Cとし、第3遊星ギア列(30)のサンギア(S3)を構成要素Dとした、あるいは、第3遊星ギア列(30)をダブル遊星ギアとし、第4遊星ギア列(30)をシンプル遊星ギアとし、リングギア(R)とプラネットキャリア(P)を共有させ、ダブル遊星ギアとなる第3遊星ギア列(30)のリングギア(R)と噛み合うピニオンギアをロングピニオンとして第4遊星ギア列(40)のサンギア(S4)に噛み合わせた所謂ラビニョー遊星ギアとして、第3遊星ギア列(30)のサンギア(S3)を構成要素Aとし、共有するリングギア(R)を構成要素Bとし、共有するプラネットキャリア(P)を構成要素Cとし、第4遊星ギア列(40)のサンギア(S4)を構成要素Dとした、あるいは、第3及び第4遊星ギア列(30、40)をシンプル遊星ギアとして、第4遊星ギア列(40)のサンギア(S4)を構成要素Aとし、第3遊星ギア列(30)のリングギア(R3)を構成要素Bとし、第3及び第4遊星ギア列(30、40)の互いのプラネットキャリア(P3、P4)を連結して構成要素Cとし、第3遊星ギア列(30)のサンギア(S3)と第4遊星ギア列(40)のリングギア(R4)を連結して構成要素Dとした、あるいは、第3及び第4遊星ギア列(30、40)をシンプル遊星ギアとして、第3遊星ギア列(30)のサンギア(S3)と第4遊星ギア列(40)のリングギア(R4)を連結して構成要素Aとし、第3及び第4遊星ギア列(30、40)の互いのプラネットキャリア(P3、P4)を連結して構成要素Bとし、第3遊星ギア列(30)のリングギア(R3)を構成要素Cとし、第4遊星ギア列(40)のサンギア(S4)を構成要素Dとした。
請求項6に係わる本発明は、「背景技術」に記載したA及びCタイプの多段変速装置の、主変速機構の4個の構成要素からなる2個の遊星ギアの組み合わせに関するもので、第1と第4の課題を解決するための手段であり、主変速機構の第1及び第2遊星ギア列(10、20)は、第1及び第2遊星ギア列(10、20)をシンプル遊星ギアとして、第2遊星ギア列(20)のリングギア(R2)を第1構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のリングギア(R1)と第2遊星ギア列(20)のプラネットキャリア(P2)を連結して第2構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のプラネットキャリア(P1)を第3構成要素とし、第1及び第2遊星ギア列(10、20)の互いのサンギア(S1、S2)を連結して第4構成要素とした、あるいは、第1及び第2遊星ギア列(10、20)をシンプル遊星ギアとして、第1遊星ギア列(10)のリングギア(R1)と第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)を連結して第1構成要素とし、第1及び第2遊星ギア列(10、20)の互いのプラネットキャリア(P1、P2)を連結して第2構成要素とし、第2遊星ギア列(20)のリングギア(R2)を第3構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)を第4構成要素とした、あるいは、第1及び第2遊星ギア列(10、20)をシンプル遊星ギアとして、第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)を第1構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のリングギア(R1)と第2遊星ギア列(20)のプラネットキャリア(P2)を連結して第2構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のプラネットキャリア(P1)と第2遊星ギア列(20)のリングギア(R2)を連結して第3構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)を第4構成要素とした、あるいは、第1遊星ギア列(10)をダブル遊星ギアとし、第2遊星ギア列(20)をシンプル遊星ギアとし、リングギア(R)とプラネットキャリア(P)を共有させ、ダブル遊星ギアとなる第1遊星ギア列(10)のリングギア(R)と噛み合うピニオンギアをロングピニオンとして第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)に噛み合わせた所謂ラビニョー遊星ギアとして、第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)を第1構成要素とし、共有するプラネットキャリア(P)を第2構成要素とし、共有するリングギア(R)を第3構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)を第4構成要素とした、あるいは、第1遊星ギア列(10)をダブル遊星ギアとし、第2遊星ギア列(20)をシンプル遊星ギアとし、リングギア(R)とプラネットキャリア(P)を共有させ、ダブル遊星ギアとなる第1遊星ギア列(10)のリングギア(R)と噛み合うピニオンギアをロングピニオンとして第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)に噛み合わせた所謂ラビニョー遊星ギアとして、第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)を第1構成要素とし、共有するリングギア(R)を第2構成要素とし、共有するプラネットキャリア(P)を第3構成要素とし、第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)を第4構成要素とした、あるいは、第1及び第2遊星ギア列(10、20)をシンプル遊星ギアとして、第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)を第1構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のリングギア(R1)を第2構成要素とし、第1及び第2遊星ギア列(10、20)の互いのプラネットキャリア(P1、P2)を連結して第3構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)と第2遊星ギア列(20)のリングギア(R2)を連結して第4構成要素とした、あるいは、第1及び第2遊星ギア列(10、20)をシンプル遊星ギアとして、第1、第2、及び第3構成要素を第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)、プラネットキャリア(P2)、及びリングギア(R2)とし、第1遊星ギア列(10)のリングギア(R1)と第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)、及び第1遊星ギア列(10)のプラネットキャリア(P1)と第2遊星ギア列(20)のプラネットキャリア(P2)の何れか一方を連結するとともに、何れか他方を第4クラッチ(C4)を介して連結し、第4構成要素を第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)とした、あるいは、第1及び第2遊星ギア列(10、20)をシンプル遊星ギアとして、第1、第2、及び第3構成要素を第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)、プラネットキャリア(P2)、及びリングギア(R2)とし、第1遊星ギア列(10)のリングギア(R1)と第2遊星ギア列(20)のプラネットキャリア(P2)を、第4クラッチ(C4)を介して連結し、第1遊星ギア列(10)のプラネットキャリア(P1)を第2遊星ギア列(20)のリングギア(R2)と連結し、第4構成要素を第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)とした。
請求項7に係わる本発明は、発進デバイスとしてモータジェネレータを使用した場合の、A及びCタイプの多段変速装置に関するもので、第5の課題を解決するための手段であり、変速機ケースの前方の、変速機ケースと一体となるケースに配されたモータジェネレータで、入力軸を駆動または制動するようになした、あるいは、変速機ケースの後方の、変速機ケースと一体となるケースに配されたモータジェネレータで、出力軸を駆動または制動するようになした。
請求項1記載の構成では、入力軸を変速する複数の遊星ギア列を有した変速装置の共通の速度線図上に、少なくとも入力軸に対する前進の減速段において、第1、第2、第3、及び第4構成要素を順に並べて配した第1及び第2遊星ギア列(10、20)からなる主変速機構と、A、B、C、及びDの4個の構成要素を順に並べて配した第3及び第4遊星ギア列(30、40)からなる前置変速機構の、前置変速機構の構成要素Cと主変速機構の第1構成要素を連結軸(17)で連結し、少なくとも6個のクラッチ及びブレーキの締結要素の選択的な締結により、入力軸に対して前進9速後進1速の変速段が実現できる多段変速装置であって、前置変速機構の構成要素Aに入力軸の回転を入力、あるいは、入力可能とし、構成要素D及びBを第1及び第2ブレーキ(B1、B2)で制動可能とすることにより、 構成要素Cが、少なくとも入力軸の減速回転と逆回転を得るようになしたので、前置変速機構が主変速機構を制御する範囲が広がり、シンプルな形態で2種の前進9速後進1速の変速段が実現できる。
請求項2記載の構成では、前置変速機構の構成要素A及びBに第1及び第2クラッチ(C1、C2)で入力軸の回転を入力可能とし、構成要素D及びBを第1及び第2ブレーキ(B1、B2)で制動可能とし、第1及び第2クラッチ(C1、C2)又は第1及び第2ブレーキ(B1、B2)の何れか2個を選択的に締結することにより、主変速機構の第1構成要素と連結軸(17)で連結された構成要素Cが、入力軸の直結回転と逆回転、及び入力軸の2種の減速回転、それに制動を含めた5種の回転に規制されるようになし、主変速機構の第4構成要素を第3ブレーキ(B3)で制動可能にし、第2構成要素に入力軸の回転を第3クラッチ(C3)で入力可能とし、第1、第2、及び第4構成要素の2個の構成要素の回転を、第1、第2、及び第3クラッチ(C1、C2、C3)と第1、第2、及び第3ブレーキ(B1、B2、B3)で規制することにより、あるいは、主変速機構の第1、第2、及び第3構成要素を、第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)、プラネットキャリア(P2)、及びリングギア(R2)として第2遊星ギア列(20)のプラネットキャリア(P2)に第3クラッチを介して入力軸の回転を入力可能とし、主変速機構の第1又は第2構成要素を構成する第1遊星ギア列(10)の構成要素の何れか一方の構成要素と第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)又はプラネットキャリア(P2)を、第4クラッチ(C4)を介して連結可能とし、主変速機構の第4構成要素を構成する第1遊星ギア列(10)の構成要素をハウジングに固定し、第1、第2、及び第4構成要素の2個の構成要素の回転を、第1、第2、第3、及び第4クラッチ(C1、C2、C3、C4)と第1及び第2ブレーキ(B1、B2)で規制することにより、第3構成要素が、入力軸の直結回転と逆回転、及び入力軸のそれぞれ4種の減速回転と増速回転、を得るようになしたので、特許文献9とは別の前置変速機構の変速形態で、特許文献9と同様、ギアレンジの大きくとれる優れた変速比をもつ前進9速後進1速の変速装置が、シンプル・コンパクトな構造で実現できる。また、一部の組み合わせでは、入力軸の増速時、主変速機構の2個の遊星ギアを開放することで第4構成要素を固定し、高速回転となることを防止できる。
請求項3記載の構成では、前置変速機構の構成要素Aに第1クラッチ(C1)で入力軸の回転を入力可能とし、構成要素D及びBを第1及び第2ブレーキ(B1、B2)で制動可能とし、第1クラッチ(C1)又は第1及び第2ブレーキ(B1、B2)の何れか2個を選択的に締結することにより、あるいは、前置変速機構の構成要素Aと入力軸を連結し、構成要素D、B、及びCを第1、第2、及び第4ブレーキ(B1、B2、B4)で制動可能とし、第1、第2、及び第4ブレーキ(B1、B2、B4)の何れか1個のブレーキを選択的に締結することにより、主変速機構の第1構成要素と連結軸(17)で連結された構成要素Cが、入力軸の減速回転と逆回転、それに制動を含めた3種の回転に規制されるようになし、主変速機構の第4構成要素に入力軸の回転を第2クラッチ(C2)で入力可能とし、第2構成要素に入力軸の回転を第3クラッチ(C3)で入力可能とするとともに第3ブレーキ(B3)を配して制動可能にし、第1、第2、及び第4構成要素の2個の構成要素の回転を、第1、第2、及び第3クラッチ(C1、C2、C3)と第1、第2、及び第3ブレーキ(B1、B2、B3)、あるいは、第2及び第3クラッチ(C2、C3)と第1、第2、第3、及び第4ブレーキ(B1、B2、B3、B4)で規制することにより、あるいは、主変速機構の第1、第2、及び第3構成要素を、第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)、プラネットキャリア(P2)、及びリングギア(R2)として第2遊星ギア列(20)のプラネットキャリア(P2)に第3クラッチ(C3)を介して入力軸の回転を入力可能とするとともに第3ブレーキ(B3)を配して制動可能にし、主変速機構の第1又は第2構成要素を構成する第1遊星ギア列(10)の構成要素の何れか一方の構成要素と第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)又はプラネットキャリア(P2)を、第4クラッチ(C4)を介して連結可能とし、主変速機構の第4構成要素を構成する第1遊星ギア列(10)の構成要素と入力軸を連結し、第1、第2、及び第4構成要素の2個の構成要素の回転を、第1、第3、及び第4クラッチ(C1、C3、C4)と第1、第2、及び第3ブレーキ(B1、B2、B3)、あるいは、第3及び第4クラッチ(C3、C4)と第1、第2、第3、及び第4ブレーキ(B1、B2、B3、B4)で規制することにより、第3構成要素が、入力軸の直結回転と逆回転、及び入力軸の5種の減速回転と3種の増速回転、を得るようになしたので、特許文献9とは別の形態の、ギアレンジの大きくとれる優れた変速比をもつ前進9速後進1速の変速装置が、シンプル・コンパクトな構造で実現できる。また、一部の組み合わせでは、入力軸の増速時、主変速機構の2個の遊星ギアを開放することで第4構成要素を入力軸に連結し、高速回転となることを防止できる。
請求項4記載の構成では、前置変速機構の第1及び第2ブレーキ(B1、B2)の交互に配された摩擦部材の同一径中央円周部に複数の貫通穴を設け、摩擦部材の端部側面から貫通穴に冷却油を供給するようになしたので、小容量で済む前置変速機構の前進1速と後進段で締結する第1及び第2ブレーキ(B1、B2)の摩擦部材を、熱吸収がよく冷却効果の高い構造として滑らせ、トルクコンバータに代わる発進デバイスとして用いることも可能となる。
請求項5記載の構成では、前置変速機構の第3及び第4遊星ギア列(30、40)は、第3及び第4遊星ギア列(30、40)をシンプル遊星ギアとして、第4遊星ギア列(40)のリングギア(R4)を構成要素Aとし、第3遊星ギア列(30)のリングギア(R3)と第4遊星ギア列(40)のプラネットキャリア(P4)を連結して構成要素Bとし、第3遊星ギア列(30)のプラネットキャリア(P3)を構成要素Cとし、第3及び第4遊星ギア列(30、40)の互いのサンギア(S3、S4)を連結して構成要素Dとした、あるいは、第3及び第4遊星ギア列(30、40)をシンプル遊星ギアとして、第3及び第4遊星ギア列(30、40)の互いのサンギア(S3、S4)を連結して構成要素Aとし、第3遊星ギア列(30)のプラネットキャリア(P3)を構成要素Bとし、第3遊星ギア列(30)のリングギア(R3)と第4遊星ギア列(40)のプラネットキャリア(P4)を連結して構成要素Cとし、第4遊星ギア列(40)のリングギア(R4)を構成要素Dとした、あるいは、第3及び第4遊星ギア列(30、40)をシンプル遊星ギアとして、第4遊星ギア列(40)のサンギア(S4)を構成要素Aとし、第3遊星ギア列(30)のリングギア(R3)と第4遊星ギア列(40)のプラネットキャリア(P4)を連結して構成要素Bとし、第3遊星ギア列(30)のプラネットキャリア(P3)と第4遊星ギア列(40)のリングギア(R4)を連結して構成要素Cとし、第3遊星ギア列(30)のサンギア(S3)を構成要素Dとした、あるいは、第3遊星ギア列(30)をダブル遊星ギアとし、第4遊星ギア列(30)をシンプル遊星ギアとし、リングギア(R)とプラネットキャリア(P)を共有させ、ダブル遊星ギアとなる第3遊星ギア列(30)のリングギア(R)と噛み合うピニオンギアをロングピニオンとして第4遊星ギア列(40)のサンギア(S4)に噛み合わせた所謂ラビニョー遊星ギアとして、第3遊星ギア列(30)のサンギア(S3)を構成要素Aとし、共有するリングギア(R)を構成要素Bとし、共有するプラネットキャリア(P)を構成要素Cとし、第4遊星ギア列(40)のサンギア(S4)を構成要素Dとした、あるいは、第3及び第4遊星ギア列(30、40)をシンプル遊星ギアとして、第4遊星ギア列(40)のサンギア(S4)を構成要素Aとし、第3遊星ギア列(30)のリングギア(R3)を構成要素Bとし、第3及び第4遊星ギア列(30、40)の互いのプラネットキャリア(P3、P4)を連結して構成要素Cとし、第3遊星ギア列(30)のサンギア(S3)と第4遊星ギア列(40)のリングギア(R4)を連結して構成要素Dとした、あるいは、第3及び第4遊星ギア列(30、40)をシンプル遊星ギアとして、第3遊星ギア列(30)のサンギア(S3)と第4遊星ギア列(40)のリングギア(R4)を連結して構成要素Aとし、第3及び第4遊星ギア列(30、40)の互いのプラネットキャリア(P3、P4)を連結して構成要素Bとし、第3遊星ギア列(30)のリングギア(R3)を構成要素Cとし、第4遊星ギア列(40)のサンギア(S4)を構成要素Dとしたので、前置変速機構の6種の組み合わせを用途により変え、変速比を変えて用いることができる。特に、最初に記したシンプソン遊星ギアを用いたものは、遊星ギアの負荷加重が小さくなるためギア巾を小さくでき、変速装置全体がコンパクトにできる。
請求項6記載の構成では、主変速機構の第1及び第2遊星ギア列(10、20)は、第1及び第2遊星ギア列(10、20)をシンプル遊星ギアとして、第2遊星ギア列(20)のリングギア(R2)を第1構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のリングギア(R1)と第2遊星ギア列(20)のプラネットキャリア(P2)を連結して第2構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のプラネットキャリア(P1)を第3構成要素とし、第1及び第2遊星ギア列(10、20)の互いのサンギア(S1、S2)を連結して第4構成要素とした、あるいは、第1及び第2遊星ギア列(10、20)をシンプル遊星ギアとして、第1遊星ギア列(10)のリングギア(R1)と第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)を連結して第1構成要素とし、第1及び第2遊星ギア列(10、20)の互いのプラネットキャリア(P1、P2)を連結して第2構成要素とし、第2遊星ギア列(20)のリングギア(R2)を第3構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)を第4構成要素とした、あるいは、第1及び第2遊星ギア列(10、20)をシンプル遊星ギアとして、第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)を第1構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のリングギア(R1)と第2遊星ギア列(20)のプラネットキャリア(P2)を連結して第2構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のプラネットキャリア(P1)と第2遊星ギア列(20)のリングギア(R2)を連結して第3構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)を第4構成要素とした、あるいは、第1遊星ギア列(10)をダブル遊星ギアとし、第2遊星ギア列(20)をシンプル遊星ギアとし、リングギア(R)とプラネットキャリア(P)を共有させ、ダブル遊星ギアとなる第1遊星ギア列(10)のリングギア(R)と噛み合うピニオンギアをロングピニオンとして第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)に噛み合わせた所謂ラビニョー遊星ギアとして、第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)を第1構成要素とし、共有するプラネットキャリア(P)を第2構成要素とし、共有するリングギア(R)を第3構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)を第4構成要素とした、あるいは、第1遊星ギア列(10)をダブル遊星ギアとし、第2遊星ギア列(20)をシンプル遊星ギアとし、リングギア(R)とプラネットキャリア(P)を共有させ、ダブル遊星ギアとなる第1遊星ギア列(10)のリングギア(R)と噛み合うピニオンギアをロングピニオンとして第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)に噛み合わせた所謂ラビニョー遊星ギアとして、第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)を第1構成要素とし、共有するリングギア(R)を第2構成要素とし、共有するプラネットキャリア(P)を第3構成要素とし、第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)を第4構成要素とした、あるいは、第1及び第2遊星ギア列(10、20)をシンプル遊星ギアとして、第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)を第1構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のリングギア(R1)を第2構成要素とし、第1及び第2遊星ギア列(10、20)の互いのプラネットキャリア(P1、P2)を連結して第3構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)と第2遊星ギア列(20)のリングギア(R2)を連結して第4構成要素とした、あるいは、第1及び第2遊星ギア列(10、20)をシンプル遊星ギアとして、第1、第2、及び第3構成要素を第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)、プラネットキャリア(P2)、及びリングギア(R2)とし、第1遊星ギア列(10)のリングギア(R1)と第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)、及び第1遊星ギア列(10)のプラネットキャリア(P1)と第2遊星ギア列(20)のプラネットキャリア(P2)の何れか一方を連結するとともに、何れか他方を第4クラッチ(C4)を介して連結し、第4構成要素を第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)とした、あるいは、第1及び第2遊星ギア列(10、20)をシンプル遊星ギアとして、第1、第2、及び第3構成要素を第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)、プラネットキャリア(P2)、及びリングギア(R2)とし、第1遊星ギア列(10)のリングギア(R1)と第2遊星ギア列(20)のプラネットキャリア(P2)を、第4クラッチ(C4)を介して連結し、第1遊星ギア列(10)のプラネットキャリア(P1)を第2遊星ギア列(20)のリングギア(R2)と連結し、第4構成要素を第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)としたので、主変速機構の6種の組み合わせを、その性質を利用し、用途により変えて用いることができる。例えば、最初に記したシンプソン遊星ギアを用いたものは、低速段で遊星ギアの負荷加重が小さく噛合い効率がよくなるため、発進停止の多い車両の変速装置用として、次の軸方向の縦方向に2階建てとして2列のシンプル遊星ギアを配することのできる組み合わせやラビニョー遊星ギアはコンパクトになるため、コンパクトさが必要な車両の変速装置用として用いることができる。また、主変速機構の第1及び第2遊星ギア列(10、20)の組み合わせは限られるが、入力軸の増速時、主変速機構の2個の遊星ギアの連結を開放することができ、第4構成要素が高速回転となることを防止することができる。
請求項7記載の構成では、変速機ケースの前方の、変速機ケースと一体となるケースに配されたモータジェネレータで、入力軸を駆動または制動するようになした、あるいは、変速機ケースの後方の、変速機ケースと一体となるケースに配されたモータジェネレータで、出力軸を駆動または制動するようになしたので、より一層の燃費向上が期待できる。また、トラックやバス用として、リターダ作用によりフートブレーキのフェードを防ぎ、安全性が増す。
本発明の2種の9ATの1種である、Cタイプの前置変速機構と主変速機構の変速形態を表す速度線図と各変速段における締結要素。 本発明の2種の9ATの1種である、Aタイプの前置変速機構と主変速機構の変速形態を表す速度線図と各変速段における締結要素。 本発明の2種の9ATの、主変速機構を構成する2個の遊星ギア列の6種の組み合わせを示す模式図と速度線図。 本発明の2種の9ATの、前置変速機構を構成する2個の遊星ギア列の6種の組み合わせを示す模式図と速度線図。 本発明のCタイプのFFとFR用9ATの、主変速機構の2個の遊星ギア列を2階建てとコンパクトにし、ギアレンジが小さくなる前置変速機構を用いた、模式図と速度線図、及び変速比と歯車の噛み合い効率を示す表。 本発明のCタイプのFFとFR用9ATの、主変速機構の2個の遊星ギア列を2階建てとコンパクトにし、ギアレンジが大きくなる前置変速機構を用いた、模式図と速度線図、及び変速比と歯車の噛み合い効率を示す表。 本発明のCタイプのFFとFR用9ATの、主変速機構の2個の遊星ギア列を2階建てとコンパクトにし、ギアレンジが図5と図6の中間となる前置変速機構を用いた、模式図と速度線図、及び変速比と歯車の噛み合い効率を示す表。 本発明のCタイプのFFとFR用9ATの、主変速機構の2個の遊星ギア列の負荷を押え、ギアレンジが小さくなる前置変速機構を用いた、模式図と速度線図、及び変速比と歯車の噛み合い効率を示す表。 本発明のCタイプのFFとFR用9ATの、主変速機構の2個の遊星ギア列の負荷を押え、ギアレンジが大きくなる前置変速機構を用いた、模式図と速度線図、及び変速比と歯車の噛み合い効率を示す表。 本発明のCタイプのFFとFR用9ATの、主変速機構の2個の遊星ギア列の一部が高回転になるのを防ぐ形態の、模式図と速度線図、及び変速比と歯車の噛み合い効率を示す表。 図5のFF用模式図において、乗用車用としてブレーキB1及びB2を発進デバイスとしたFF用9ATの構造図。 図6のFF用模式図において、乗用車用としてトルクコンバータを発進デバイスとしたFF用9ATの構造図。 図9のFF用模式図において、乗用車用としてトルクコンバータを発進デバイスとしたFF用9ATの構造図。 図9のFR用模式図において、乗用車用としてトルクコンバータを発進デバイスとしたFR用9ATの構造図。 図6のFR用模式図において、トラックやバス用としてトルクコンバータを発進デバイスとしたFR用9ATの構造図。 図15のFR用9ATの構造図において、モータジェネレータを発進デバイスとして後部に配した構想図。 本発明のAタイプのFFとFR用9ATの、主変速機構と前置変速機構のそれぞれ2個の遊星ギア列の負荷を押えた、模式図と速度線図、及び変速比と歯車の噛み合い効率を示す表。 本発明のAタイプのFFとFR用9ATの、主変速機構にラビニョー遊星ギアを用いてコンパクトにした、模式図と速度線図、及び変速比と歯車の噛み合い効率を示す表。 本発明のAタイプのFR用9ATの、主変速機構の一般的な2個の遊星ギア列の組み合わせ形態と、2個の遊星ギア列の一部が高回転になるのを防ぐ組み合わせ形態を示した、模式図と速度線図、及び変速比と歯車の噛み合い効率を示す表。 図18のFF用模式図において、乗用車用として流体継手を発進デバイスとしたFF用9ATの構造図。 図11,図12、及び図20のFF用9ATの構造図におけるリングギアR2または第1及び第2ブレーキ(B1、B2)の摩擦部材と、中継軸及び出力軸のギアとの干渉を示す位置関係図。 本発明の前置変速機構の第1及び第2ブレーキ(B1、B2)の摩擦部材の詳細図 従来例となるTOYOTAのBタイプ8ATの、模式図と速度線図、及び変速比と歯車の噛合い効率を示す表。 従来例となるBENZのCタイプ7ATの、模式図と速度線図、及び変速比と歯車の噛合い効率を示す表。 従来例となるZFのDタイプ8ATの、模式図と速度線図、及び変速比と歯車の噛合い効率を示す表。 従来例となる本願出願人が考案した特許文献9によるCタイプ9ATの、模式図と速度線図、及び変速比と歯車の噛合い効率を示す表。
本発明は、各2個の遊星ギア列からなる4個の構成要素を有した前置変速機構と主変速機構を、6個の締結要素により変速する前進9速後進1速の変速装置の、各2個の遊星ギアの組み合わせが同じにでき、主変速機構の変速形態は異なるが、前置変速機構の変速形態が類似するA及びCタイプの多段変速装置の構造に関するもので、図1と図2にCタイプとAタイプの変速形態を、図3と図4に主変速機構と前置変速機構の各2個の遊星ギア列の色々な組み合わせと変速形態を示す。本発明の1種であるCタイプ9ATの色々な実施例として図5から図10に、模式図と速度線図、及び変速比と遊星ギアの噛合い効率を示し、乗用車の前輪駆動方式となるFF用Cタイプ9ATとして、その具体的な全体構造を図10から図13に示し、乗用車の後輪駆動方式となるFR用Cタイプ9ATとして、その具体的な全体構造を図14に示す。また、特にトラックやバス用の後輪駆動方式となるFR及びRR用Cタイプ9ATとして、その具体的な全体構造を図15と図16に示す。本発明のもう1種であるAタイプ9ATの色々な実施例として、図17から図19に、模式図と速度線図、及び変速比と遊星ギアの噛合い効率を示し、乗用車の前輪駆動方式となるFF用Aタイプ9ATとして、その具体的な全体構造を図20に示す。なお、主変速機構(MAIN GEAR)の2個の遊星ギア列の組み合わせ6種を、(M−1)から(M−6)、前置変速機構(FRONT GEAR)の2個の遊星ギア列の組み合わせ6種を、(F−1)から(F−6)と命名し、図5から図20の実施例に表記した。さらに、FF用多段自動変速機は、入力軸がカウンターギアでオフセットされて出力されるため、図11,図12のように遊星ギア列を2階建てにしたり、図20のようにブレーキB1、B2の摩擦部材を遊星ギア列の外周に配する場合、オフセットするカウンターギアとの干渉が問題となる。そのため、その干渉状態を図21に示した。また、ブレーキB1、B2の摩擦部材の冷却構造の詳細を図22に示した。
図23から図26は、本発明と対比させるため従来技術として記載した多段自動変速機の参考仕様図で、本願の「背景技術」にその内容を説明した。図26の多段自動変速機は、本願出願人が考案したもので、特に本願と比較するために記載した。図23、図24、図25は、SAE PAPERや雑誌等に発表され実用化された多段自動変速機である。図23から図26に記載したGEAR EFFは、遊星ギアの噛み合い効率で、本願出願人の計算によるものである。
GEAR EFF(遊星ギアの噛み合い効率)は、動力を伝える遊星ギアの噛み合い損失を合計したもので、遊星ギア列の優位性を比較するためのものである。シンプル遊星ギアでは、遊星キャリアに保持される遊星ピニオンギアとサンギア及びリングギアが噛み合い、ダブル遊星ギアでは、遊星キャリアに保持される遊星ピニオンギアとサンギア及びリングギアに加えて遊星ピニオンギア同士が噛み合い、噛み合い損失が発生する。噛み合い損失は、主に歯面のころがりとすべり損失であり、噛み合うギアの歯数比やモジュール、ギア精度、転位量、等々に影響される。したがって、これらの条件を一定にしなければ、比較できないため、モデル化して計算を行った。因みに、遊星ピニオンギアとリングギアの噛み合い損失は、インボリュート曲線部の歯面が同方向の形状で噛み合うため、面圧が低くすべりも少なくなり、インボリュート曲線部の歯面が対抗して噛み合う遊星ピニオンギアとサンギアの40%程度と低くなる。なお、噛み合い損失は、通過動力に比例するため、速度線図により動力を伝達する各ギアの回転速度を求め、遊星キャリアの回転を考慮して相対速度を噛み合い速度とするとともに、遊星ギアの各構成要素の力の釣合いにより伝達トルクを求めたものである。遊星ギア列の動力伝達は、遊星ギア列が連結されているため分散される場合が多い。そこで、リングギアは、サンギアとの歯数比分だけ同方向に、サンギアより大きな力を受け、遊星キャリアは、サンギアとリングギアを加えた力を逆方向に受ける、という力の釣合いの性質を用いれば、各々のギアの負荷トルクを求めることができる。このことにより、各々に噛み合うギアの損失を求め、合計して全体の遊星ギアの噛み合い効率としたものである。
本発明の請求項1は、少なくとも入力軸に対する前進の減速段において、各2個の遊星ギア列からなる4個の構成要素を有した前置変速機構と主変速機構を、6個の締結要素により変速する前進9速後進1速の変速装置の、前置変速機構の変速形態を限定したもので、図1と図2に本発明の対象となるCタイプ9ATとAタイプ9ATの変速形態を示し、図3に主変速機構の2個の遊星ギア列の色々な組み合わせと変速形態を示し、図4に示した2個の遊星ギア列の色々な組み合わせと変速形態を表す前置変速機構の速度線図が、請求項1が限定する内容となる。なお、請求項1の実施例は、図5から図10、及び図17から図19となる。但し、図5から図9、及び図17、図18、図19の一部は、入力軸に対する前進の減速段と増速段において、前置変速機構と主変速機構が4個の構成要素を有するが、図10と図19の一部は、増速段で主変速機構が4個の構成要素とはならないものである。したがって、請求項1では、「少なくとも入力軸に対する前進の減速段において、」と条件を設定した。請求項2は、Cタイプ9ATにおける前置変速機構の構造と変速形態を限定したもので、図1、図3、図4に基本形態を示すとともに、図5から図10にその実施例を示す。請求項3は、Aタイプ9ATにおける前置変速機構の構造と変速形態を限定したもので、図2、図3、図4に基本形態を示すとともに、図17から図19にその実施例を示す。請求項4は、前置変速機構のブレーキB1とB2の摩擦部材の構造に関するもので、Cタイプ9ATの構造を表す図11から図16と、Aタイプ9ATの構造を表す図20、及びブレーキB1とB2の摩擦部材の詳細構造を表す図22にその構造を示す。請求項5は、A及びCタイプ9ATの前置変速機構の2個の遊星ギアの組み合わせに関するもので、図4にその組み合わせを示す。同じく、請求項6は、A及びCタイプ9ATの主変速機構の2個の遊星ギアの組み合わせに関するもので、図3にその組み合わせを示す。なお、請求項6における一部の2個の遊星ギア列の組み合わせの連結方法を変えるものを、図10と図19の一部にその実施例を示す。請求項7は、HEV仕様としてモータジェネレータを搭載したもので、Cタイプを図5と図10の模式図で示し、Aタイプを図17の模式図で示す。なお、トラックやバス用に、Cタイプの後部にモータジェネレータを搭載した構造図を図16に示す。
<Cタイプ9AT>
図1は、Cタイプ9ATの変速形態を表した速度線図と各変速段における締結要素を示したものである。図1の速度線図において、速度線図は、MAIN GEAR(主変速機構)とFRONT GEAR(前置変速機構)に分れている。MAIN GEAR(主変速機構)の速度線図は、図の右から順に第1、2、3、4構成要素が配置され、FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図は、図の右から順に構成要素A、B、C、Dが配置され、第1構成要素と構成要素Cが連結軸17で連結し、第3構成要素が変速装置の出力となる。速度線図の上下方向が速度を表し、1と記入された値が入力軸の回転速度を示し、0と記入された値が速度ゼロを示す。ここで、入力軸の回転は、第1、第2クラッチC1、C2を介してFRONT GEAR(前置変速機構)の構成要素A、Bに入力可能で、第3クラッチC3を介してMAIN GEAR(主変速機構)の第2構成要素に入力可能となり、FRONT GEAR(前置変速機構)の構成要素D、Bが、第1、第2ブレーキB1、B2で制動可能で、MAIN GEAR(主変速機構)の第4構成要素が、第3ブレーキB3で制動可能となっている。
変速装置の出力となるMAIN GEAR(主変速機構)の第3構成要素の回転は、第1、第2、及び第4構成要素の2個の構成要素の回転を規制することで決まり、第1構成要素と連結軸17で連結されるFRONT GEAR(前置変速機構)の構成要素Cの回転は、構成要素A,B、及びDの2個の構成要素の回転を規制することで決まる。図1の速度線図と各変速段の締結要素を示す表について、変速の動作を説明する。
<前進1速(1st)>
FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図において、第1クラッチC1と第1ブレーキB1が締結され、入力軸の回転は構成要素Aに入力され、構成要素Dが制動され、構成要素Cが大きく減速され、連結軸17を介してMAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素も大きく減速される。第3ブレーキB3で第4構成要素が制動されるため、第3構成要素の回転はさらに減速される。
<前進2速(2nd)>
FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図において、第2クラッチC2と第2ブレーキB1が締結され、入力軸の回転は構成要素Bに入力され、構成要素Dが制動され、構成要素Cが小さく減速され、連結軸17を介してMAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素も小さく減速される。第3ブレーキB3で第4構成要素が制動されるため、第3構成要素の回転はさらに減速される。
<前進3速(3rd)>
FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図において、第1クラッチC1と第2クラッチC2が締結され、入力軸の回転はそのまま連結軸17を介してMAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素に伝わる。第3ブレーキB3で第4構成要素が制動されるため、第3構成要素の回転は減速される。
<前進4速(4th)>
FRONT GEAR(前置変速機構)には動力が流れず、入力軸の回転は第3クラッチC3を介して直接MAIN GEAR(主変速機構)の第2構成要素に入力する。第3ブレーキB3で第4構成要素が制動されるため、第3構成要素の回転は減速される。
<前進5速(5th)>
FRONT GEAR(前置変速機構)の第1クラッチC1と第2クラッチC2が締結され、入力軸の回転はそのまま連結軸17を介してMAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素に伝わる、と同時に第3クラッチが締結されMAIN GEAR(主変速機構)の第2構成要素に伝わるため、全ての遊星ギアがロックされ、入力軸と同じ回転となる。
<前進6速(6th)>
FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図において、第2クラッチC2と第1ブレーキB1が締結され、入力軸の回転は構成要素Bに入力され、構成要素Dが制動され、構成要素Cが小さく減速され、連結軸17を介してMAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素も小さく減速される。また、第3クラッチC3が締結され、入力軸の回転は第3クラッチC3を介して直接MAIN GEAR(主変速機構)の第2構成要素に入力する。FRONT GEAR(前置変速機構)は、前進2速(2nd)と同じとなるが、前進2速(2nd)では第1構成要素を駆動するのに対し、前進6速(6th)では制動するように作用し、第3構成要素の回転は増速される。
<前進7速(7th)>
FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図において、第1クラッチC1と第1ブレーキB1が締結され、入力軸の回転は構成要素Aに入力され、構成要素Dが制動され、構成要素Cが大きく減速され、連結軸17を介してMAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素も大きく減速される。前進6速(6th)と同様に、第3クラッチC3が締結され、入力軸の回転は第3クラッチC3を介して直接MAIN GEAR(主変速機構)の第2構成要素に入力する。FRONT GEAR(前置変速機構)は、前進1速(1st)と同じとなるが、前進1速(1st)では第1構成要素を駆動するのに対し、前進7速(7th)では制動するように作用し、第3構成要素の回転は増速される。
<前進8速(8th)>
FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図において、第1ブレーキB1と第2ブレーキB2が締結され、構成要素Cはロックされて変速機ハウジングに固定され、MAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素も固定される。前進6速(6th)と同様に、第3クラッチC3が締結され、入力軸の回転は第3クラッチC3を介して直接MAIN GEAR(主変速機構)の第2構成要素に入力する。したがって、第3構成要素の回転は増速される。
<前進9速(9th)>
FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図において、第1クラッチC1と第2ブレーキB2が締結され、入力軸の回転は構成要素Aに入力され、構成要素Bが制動され、構成要素Cが逆回転に減速され、連結軸17を介してMAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素も逆転する。前進6速(6th)と同様に、第3クラッチC3が締結され、入力軸の回転は第3クラッチC3を介して直接MAIN GEAR(主変速機構)の第2構成要素に入力する。したがって、第3構成要素の回転は大きく増速される。
<後進(Rev)>
FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図において、前進9速(9th)と同じく、第1クラッチC1と第2ブレーキB2が締結され、入力軸の回転は構成要素Aに入力され、構成要素Bが制動され、構成要素Cが逆回転に減速され、連結軸17を介してMAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素も逆転する。第3ブレーキB3で第4構成要素が制動されるため、第3構成要素の回転はさらに逆回転に減速される。
本発明の請求項1と2は、図1のFRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図における変速形態について、請求したものである。Cタイプ9ATは、「背景技術」に記載した特許文献7、8、9で、FRONT GEAR(前置変速機構)とMAIN GEAR(主変速機構)、及び6個の締結要素による構造が公開されている。特許文献7、8、9の変速形態は、MAIN GEAR(主変速機構)に関しては本発明と同じであるが、FRONT GEAR(前置変速機構)に関して本発明と異なるものである。このFRONT GEAR(前置変速機構)の変速形態の違いを後述する図4で説明する。
<Aタイプ9AT>
図2は、Aタイプ9ATの変速形態を表した速度線図と各変速段における締結要素を示したものである。図2の速度線図において、速度線図は、MAIN GEAR(主変速機構)とFRONT GEAR(前置変速機構)に分れている。MAIN GEAR(主変速機構)の速度線図は、図の右から順に第1、2、3、4構成要素が配置され、FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図は、図の右から順に構成要素A、B、C、Dが配置され、第1構成要素と構成要素Cが連結軸17で連結し、第3構成要素が変速装置の出力となる。この構成要素の配列は、図1のCタイプ9ATと同一である。ここで、入力軸の回転は、第1クラッチC1を介してFRONT GEAR(前置変速機構)の構成要素Aに入力可能で、あるいは、直接構成要素Aに入力し、第2及び第3クラッチC2、C3を介してMAIN GEAR(主変速機構)の第4及び第2構成要素に入力可能となり、FRONT GEAR(前置変速機構)の構成要素D、Bが、第1、第2ブレーキB1、B2で制動可能で、MAIN GEAR(主変速機構)の第2構成要素が、第3ブレーキB3で、制動可能となっており、あるいは、入力軸の回転が直接構成要素Aに入力する場合は、第1構成要素、または構成要素Cが、第4ブレーキB4で、制動可能となっている。
変速装置の出力となるMAIN GEAR(主変速機構)の第3構成要素の回転は、第1、第2、及び第4構成要素の2個の構成要素の回転を規制することで決まり、第1構成要素と連結軸17で連結されるFRONT GEAR(前置変速機構)の構成要素Cの回転は、構成要素A,B、及びDの2個の構成要素の回転を規制することで決まる。図2の速度線図と各変速段の締結要素を示す表について、変速の動作を説明する。
<前進1速(1st)>
FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図において、第1クラッチC1と第2ブレーキB2が締結され、入力軸の回転は構成要素Aに入力され、あるいは、直接構成要素Aに入力され、構成要素Bが制動され、構成要素Cが逆回転に減速され、連結軸17を介してMAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素も逆転する。第3ブレーキB3で第2構成要素が制動されるため、第3構成要素は、逆転して正回転に大きく減速される。
<前進2速(2nd)>
MAIN GEAR(主変速機構)の速度線図において、第2ラッチC2と第3ブレーキB3が締結され、入力軸の回転は、第4構成要素に入力され、第3ブレーキB3で第2構成要素が制動され、第3構成要素の回転は減速される。ここで、FRONT GEAR(前置変速機構)は無負荷状態となる。
<前進3速(3rd)>
FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図において、第1クラッチC1と第2ブレーキB2が締結され、入力軸の回転は構成要素Aに入力され、あるいは、直接構成要素Aに入力され、構成要素Bが制動され、構成要素Cが逆回転に減速され、連結軸17を介してMAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素も逆転する。つまり、FRONT GEAR(前置変速機構)は、前進1速(1st)と同じ状態となる。ここで、第2クラッチC2が締結され、入力軸の回転は、MAIN GEAR(主変速機構)の第4構成要素に入力され、第1構成要素が逆転するため、第3構成要素の回転は減速される。
<前進4速(4th)>
FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図において、第1ブレーキB1と第2ブレーキB2が締結され、構成要素Cはロックされて変速機ハウジングに固定されるか、あるいは、第1構成要素または構成要素Cが第4ブレーキB4で制動され、MAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素が固定される。ここで、第2クラッチC2が締結され、入力軸の回転は、MAIN GEAR(主変速機構)の第4構成要素に入力され、第1構成要素が固定されるため、第3構成要素の回転は減速される。
<前進5速(5th)>
FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図において、第1クラッチC1と第1ブレーキB1が締結され、入力軸の回転は構成要素Aに入力され、あるいは、直接構成要素Aに入力され、構成要素Dが制動され、構成要素Cが減速され、連結軸17を介してMAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素も減速される。ここで、第2クラッチC2が締結され、入力軸の回転は、MAIN GEAR(主変速機構)の第4構成要素に入力され、第1構成要素が減速されるため、第3構成要素の回転は減速される。
<前進6速(6th)>
MAIN GEAR(主変速機構)の速度線図において、第2クラッチC2と第3クラッチC3が締結され、MAIN GEAR(主変速機構)の遊星ギアがロックされ、第3構成要素の回転は、入力軸と同じ回転となる。ここで、FRONT GEAR(前置変速機構)は無負荷状態となる。
<前進7速(7th)>
FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図において、第1クラッチC1と第1ブレーキB1が締結され、入力軸の回転は構成要素Aに入力され、あるいは、直接構成要素Aに入力され、構成要素Dが制動され、構成要素Cが減速され、連結軸17を介してMAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素も減速される。前進6速(6th)と同様に、第3クラッチC3が締結され、入力軸の回転は第3クラッチC3を介して直接MAIN GEAR(主変速機構)の第2構成要素に入力する。FRONT GEAR(前置変速機構)は、前進5速(5th)と同じとなるが、入力軸の回転が第2構成要素に入力するため、第3構成要素の回転は増速される。
<前進8速(8th)>
FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図において、第1ブレーキB1と第2ブレーキB2が締結され、構成要素Cはロックされて変速機ハウジングに固定されるか、あるいは、第1構成要素または構成要素Cが第4ブレーキB4で制動され、MAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素も固定される。前進6速(6th)と同様に、第3クラッチC3が締結され、入力軸の回転は第3クラッチC3を介して直接MAIN GEAR(主変速機構)の第2構成要素に入力する。したがって、第3構成要素の回転は増速される。
<前進9速(9th)>
FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図において、第1クラッチC1と第2ブレーキB2が締結され、入力軸の回転は構成要素Aに入力され、あるいは、直接構成要素Aに入力され、構成要素Bが制動され、構成要素Cが逆回転に減速され、連結軸17を介してMAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素も逆転する。前進6速(6th)と同様に、第3クラッチC3が締結され、入力軸の回転は第3クラッチC3を介して直接MAIN GEAR(主変速機構)の第2構成要素に入力する。FRONT GEAR(前置変速機構)は、前進1、3速(1st、3rd)と同じとなるが、入力軸の回転が第2構成要素に入力するため、第3構成要素の回転は大きく増速される。
<後進(Rev)>
FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図において、前進5、7速(5、7th)と同じく、第1クラッチC1と第2ブレーキB2が締結され、入力軸の回転は構成要素Aに入力され、あるいは、直接構成要素Aに入力され、構成要素Bが制動され、構成要素Cが減速され、連結軸17を介してMAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素も減速される。第3ブレーキB3で第2構成要素が制動されるため、第3構成要素の回転は逆回転に減速される。
図2のAタイプ9ATのMAIN GEAR(主変速機構)の変速形態は、図1のCタイプ9ATのMAIN GEAR(主変速機構)の変速形態とは全く異なるものであるが、両者とも、前進段において、減速側及び増速側の次段及び次々段への変速を、1個の締結要素の切り替えで成しうる前進9速後進1速の変速装置である。そして、図2のAタイプ9ATの構成要素Cに、入力軸の減速回転と逆回転、及び零回転をもたらすFRONT GEAR(前置変速機構)の変速形態は、図1のCタイプ9ATと同じである。
<MAIN GEAR(主変速機構)>
図3は、Cタイプ9ATとAタイプ9ATのMAIN GEAR(主変速機構)を構成する2個の遊星ギア列を組み合わせた第1、第2、第3、及び第4構成要素を形成する6種の模式図と速度線図を示す。両者の速度線図の共通点は、第1構成要素がFRONT GEAR(前置変速機構)の構成要素Cと連結し、第2構成要素に第3クラッチC3を介して入力軸の回転が入力し、第3構成要素が出力されることである。したがって、段落「0046」と「0049」に記載した如く、第2構成要素に第3クラッチC3を介して入力軸の回転が入力し、第1構成要素がFRONT GEAR(前置変速機構)の構成要素Cと連結して受動側となる増速段での変速形態は同じとなる。両者の違いは、Cタイプ9ATが第4構成要素を第3ブレーキB3で制動可能とするのに対し、Aタイプ9ATは第2クラッチC2を介して入力軸の回転を入力可能とすることである。つまり、Aタイプ9ATでは、第4構成要素を主動側として用いる変速形態があるのに対し、Cタイプ9ATでは、受動側とする変速形態があることである。また、Aタイプ9ATでは、第2構成要素を第3ブレーキB3で制動可能とし、MAIN GEAR(主変速機構)の構成要素に対する締結要素が1個多くなる。したがって、段落「0046」と「0049」に記載した如く、減速段での変速形態に違いがでる。
図3において、Cタイプ9ATとAタイプ9ATのMAIN GEAR(主変速機構)の4個の構成要素は、2個の遊星ギア列からなり、6種の組み合わせを、MAIN GEARの頭文字をとり「M−1」から「M−6」と命名し、模式図で記載する。6種の組み合わせはそれぞれ特徴があるので、構造とともに説明する。なお、記載したラビニョー遊星ギアの他に、シンプル遊星ギアとダブル遊星ギアの組み合わせや、ダブル遊星ギア同士の組み合わせがあるが、噛み合い効率や強度及び構成要素数で欠点が多く、適用しなかった。ここで、2個の遊星ギア列を第1及び第2遊星ギア列10、20とし、第1遊星ギア列10のサンギアをS1、プラネットキャリアをP1、リングギアをR1とし、第2遊星ギア列20のサンギアをS2、プラネットキャリアをP2、リングギアをR2とする。この2個の遊星ギア列からなる6種の組み合わせを、「請求項6」で請求するものである。
<M−1>
第1及び第2遊星ギア列10、20をシンプル遊星ギアとして、第2遊星ギア列20のリングギアR2を第1構成要素とし、第1遊星ギア列10のリングギアR1と第2遊星ギア列20のプラネットキャリアP2を連結して第2構成要素とし、第1遊星ギア列10のプラネットキャリアP1を第3構成要素とし、第1及び第2遊星ギア列10、20の互いのサンギアS1、S2を連結して第4構成要素とした組み合わせである。一般的に、シンプソン遊星ギアと呼ばれる組み合わせである。Cタイプ9ATでは、前進1速段から3速段、及び後進段で、Aタイプ9ATでは、前進1速段と後進段で、第1構成要素にはFRONT GEAR(前置変速機構)で減速された入力軸の大きなトルクが負荷される。第1構成要素は径の大きなリングギアR2であるため、径の小さなサンギアにトルクが作用する場合と比べ、リングギアとサンギアの歯数比分だけ負荷する歯面荷重が小さくなる(歯面荷重=トルク/噛み合い径)。したがって、強度的に有利な組み合わせとなる。加えて、Cタイプ9ATでは、前進の減速段と後進段において、第3ブレーキB3で制動する第4構成要素がサンギアS1、S2となり、サンギアには最も小さなトルクしか負荷されないため、第3ブレーキB3のブレーキトルク容量が小さくなる。因みに、サンギアに負荷するトルクとリングギアに負荷するトルクの合計が、プラネットキャリアが負荷するトルクであり、サンギアに負荷するトルクは、リングギアに負荷するトルクよりその歯数比分小さくなる。Aタイプ9ATでは、第3ブレーキB3は第2構成要素を制動し、第2構成要素はリングギアR1とプラネットキャリアP2のため、ブレーキトルク容量は大きくなる。
<M−2>
第1及び第2遊星ギア列10、20をシンプル遊星ギアとして、第1遊星ギア列10のリングギアR1と第2遊星ギア列20のサンギアS2を連結して第1構成要素とし、第1及び第2遊星ギア列10、20の互いのプラネットキャリアP1、P2を連結して第2構成要素とし、第2遊星ギア列20のリングギアR2を第3構成要素とし、第1遊星ギア列10のサンギアS1を第4構成要素とした組み合わせである。この組み合わせの特徴は、第2遊星ギア列20のリングギアR2とサンギアS2の歯数比を1.3から1.6と小さくして、第1遊星ギア列10の径方向上部に2階建てに重ねて配したことで、軸方向をコンパクトにしたことである。第1構成要素は「M−1」と同じく、径の大きなリングギアR1とサンギアS2となるが、力の釣り合いからリングギアR1の負荷トルクからサンギアS2の負荷トルクを引いた値が第1構成要素の負荷トルクとなるため、第2遊星ギア列20の強度は有利になるが、第1遊星ギア列10には「M−1」の倍の負荷が作用し、強度的に有利とはならない。Cタイプ9ATにおける第3ブレーキB3のブレーキトルク容量は、第4構成要素がサンギアS1のため、「M−1」同様小さくなる。この組み合わせは、Aタイプ9ATには、よい変速比がとりにくいので、向かない。
<M−3>
第1及び第2遊星ギア列10、20をシンプル遊星ギアとして、第2遊星ギア列20のサンギアS2を第1構成要素とし、第1遊星ギア列10のリングギアR1と第2遊星ギア列20のプラネットキャリアP2を連結して第2構成要素とし、第1遊星ギア列10のプラネットキャリアP1と第2遊星ギア列20のリングギアR2を連結して第3構成要素とし、第1遊星ギア列10のサンギアS1を第4構成要素とした組み合わせである。一般的な4ATに多く用いられており、A及びCタイプ9ATの両者において、変速比が適切にとれる。但し、強度的に有利とはならないが、Cタイプ9ATにおける第3ブレーキB3のブレーキトルク容量は、第4構成要素がサンギアS1のため、「M−1」同様小さくなる。
<M−4>
第1遊星ギア列10をダブル遊星ギアとし、第2遊星ギア列20をシンプル遊星ギアとし、リングギアRとプラネットキャリアPを共有させ、ダブル遊星ギアとなる第1遊星ギア列10のリングギアRと噛み合うピニオンギアをロングピニオンとして第2遊星ギア列20のサンギアS2に噛み合わせた所謂ラビニョー遊星ギアとして、第2遊星ギア列20のサンギアS2を第1構成要素とし、共有するプラネットキャリアPを第2構成要素とし、共有するリングギアRを第3構成要素とし、第1遊星ギア列10のサンギアS1を第4構成要素とした組み合わせである。一般的な3AT,4ATやBタイプ6AT、8ATに用いられており、軸方向がコンパクトになる利点があるが、ダブル遊星ギアを用いるため 遊星ギアの噛み合い効率が悪くなる欠点がある。また、Bタイプ6AT、8ATでは、径の小さなサンギアS1に減速された大きなトルクが入力するため、強度的に不利となる。この組み合わせは、Cタイプ9ATには、よい変速比がとりにくいので、向かない。Aタイプ9ATでは、大きなトルクが作用する第1構成要素が、径の大きなサンギアS2となり、負荷頻度も前進1速段と後進段だけで小さく、加えて、前進の減速段で径の小さなサンギアS1には入力軸のトルクしか負荷されず、入力軸の回転が減速され大きなトルクが作用する負荷頻度の大きなBタイプ6AT、8ATより強度的に有利となる。
<M−5>
第1遊星ギア列10をダブル遊星ギアとし、第2遊星ギア列20をシンプル遊星ギアとし、リングギアRとプラネットキャリアPを共有させ、ダブル遊星ギアとなる第1遊星ギア列10のリングギアRと噛み合うピニオンギアをロングピニオンとして第2遊星ギア列20のサンギアS2に噛み合わせた所謂ラビニョー遊星ギアとして、第1遊星ギア列10のサンギアS1を第1構成要素とし、共有するリングギアRを第2構成要素とし、共有するプラネットキャリアPを第3構成要素とし、第2遊星ギア列20のサンギアS2を第4構成要素とした組み合わせである。Cタイプ9ATにおける第3ブレーキB3のブレーキトルク容量は、第4構成要素がサンギアS1のため、「M−1」同様小さくなり、かつまた、よい変速比がとれるが、Aタイプ9ATには、よい変速比がとりにくいので、向かない。なお、第1構成要素が、径の小さなサンギアS1となるため、「M−1」、「M−2」、及び「M−4」に比べ、強度的に不利となる。
<M−6>
第1及び第2遊星ギア列10、20をシンプル遊星ギアとして、第2遊星ギア列20のサンギアS2を第1構成要素とし、第1遊星ギア列10のリングギアR1を第2構成要素とし、第1及び第2遊星ギア列10、20の互いのプラネットキャリアP1、P2を連結して第3構成要素とし、第1遊星ギア列10のサンギアS1と第2遊星ギア列20のリングギアR2を連結して第4構成要素とした組み合わせである。Aタイプ9ATではよい変速比がとれるが、Cタイプ9ATには向かない。この組み合わせは、シンプル遊星ギアの組み合わせである「M−1」、「M−2」、「M−3」と比べ、全体的に利点に乏しい。
MAIN GEAR(主変速機構)を構成する2個の遊星ギア列からなる「M−1」から「M−6」の6種の組み合わせのうち、「請求項2」、「請求項3」、及び「請求項6」に記載した「主変速機構の第1、第2、及び第3構成要素を第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)、プラネットキャリア(P2)、及びリングギア(R2)として」に該当する組み合わせは、「M−2」と「M−3」であり、この2種は、増速段で第2遊星ギア列20にだけ動力が伝わるため、増速段において、第1遊星ギア列10と第2遊星ギア列20の連結を解除し、第1構成要素の回転をCタイプ9ATではハウジングに固定し、Aタイプ9ATでは入力軸に固定すれば、第1構成要素の高回転化を防ぐことができる。第1遊星ギア列10と第2遊星ギア列20の連結を解除するため、第1及び第2構成要素となる連結部のどちらか一方を、第4クラッチC4を介して連結した構造を請求したものである。このことは、後述する図10と図19で説明する。
<FRONT GEAR(前置変速機構)>
図4は、Cタイプ9ATとAタイプ9ATのFRONT GEAR(前置変速機構)を構成する2個の遊星ギア列を組み合わせた構成要素A、B、C、及びDを形成する6種の模式図と速度線図を示す。両者の速度線図の共通点は、構成要素DとBを第1及び第2ブレーキB1、B2で制動可能とし、構成要素Aに第1クラッチC1を介して入力軸の回転を入力し、構成要素Cを出力してMAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素と連結させることである。第1クラッチC1を締結して構成要素Aに入力軸の回転を入力し、第1ブレーキB1を締結して構成要素Dを制動することにより入力軸の減速回転を得、第1クラッチC1を締結して構成要素Aに入力軸の回転を入力し、第2ブレーキB2を締結して構成要素Bを制動することにより入力軸の逆回転を得、第1及び第2ブレーキB1、B2を締結して構成要素DとBを制動することにより零回転を得ることができる。なお、Aタイプ9ATにおいて、1個の減速回転と逆回転、及び零回転を得る別の手段として、構成要素Aと入力軸を連結し、構成要素CまたはMAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素を、第4ブレーキB4で制動可能とすることによっても可能となる。その場合、第1ブレーキB1を締結して構成要素Dを制動することにより入力軸の減速回転を得、第2ブレーキB2を締結して構成要素Bを制動することにより入力軸の逆回転を得、第4ブレーキB4を締結して零回転を得ることができる。Cタイプ9ATは、Aタイプ9ATの1個の減速回転と逆回転、及び零回転を得る3種の変速形態に加え、構成要素Bに第2クラッチC2を介して入力軸の回転を入力する手段を有しており、第2クラッチC2を締結して構成要素Bに入力軸の回転を入力し、第1ブレーキB1を締結して構成要素Dを制動することにより、第1クラッチC1を締結して構成要素Aに入力軸の回転を入力する場合より回転数の大きな入力軸の減速回転を得、第1及び第2クラッチC1,C2を締結して入力軸と直結した回転を得、都合5種類の変速形態を得ることができる。
本発明の「請求項1」は、Cタイプ9ATとAタイプ9ATのMAIN GEAR(主変速機構)の変速形態において、FRONT GEAR(前置変速機構)の1個の減速回転と逆回転を得る共通する変速形態を請求するものである。第1及び第2ブレーキB1、B2を締結して零回転を得る変速形態も共通するが、Aタイプ9ATには、第4ブレーキB4で零回転を得る変速形態もあるので、零回転を得る変速形態は「請求項1」から外した。なお、1個の減速回転と逆回転を得る手段は、図26に記載した特許文献7、8、及び9のように、構成要素Bを出力とし、クラッチで入力軸の回転を構成要素AとDに切り換えて入力することでも可能となる。この方式は、Cタイプ9ATの5種の変速形態を得るには有効な手段となるが、Aタイプ9ATの3種の変速形態を得る手段としては、減速比が適切な値にとれないことや、クラッチが合計で4個になりコンパクトに配することができなくなる欠点がある。なお、Cタイプ9ATの5種の変速形態を得る手段として、本発明と特許文献7、8、及び9の手段はそれぞれ多少の利点欠点はあるが、大差はない。
図4において、Cタイプ9ATとAタイプ9ATのFRONT GEAR(前置変速機構)の4個の構成要素は、2個の遊星ギア列からなり、6種の組み合わせを、FRONT GEARの頭文字をとり「F−1」から「F−6」と命名し、模式図で記載する。6種の組み合わせはそれぞれ特徴があるので、構造とともに説明する。なお、記載したラビニョー遊星ギアの他に、シンプル遊星ギアとダブル遊星ギアの組み合わせや、ダブル遊星ギア同士の組み合わせがあるが、噛み合い効率や強度及び構成要素数で欠点が多く、適用しなかった。ここで、2個の遊星ギア列を第3及び第4遊星ギア列30、40とし、第3遊星ギア列30のサンギアをS3、プラネットキャリアをP3、リングギアをR4とし、第4遊星ギア列40のサンギアをS4、プラネットキャリアをP4、リングギアをR4とする。この2個の遊星ギア列からなる6種の組み合わせを、「請求項5」で請求するものである。
<F−1>
第3及び第4遊星ギア列30、40をシンプル遊星ギアとして、第4遊星ギア列40のリングギアR4を構成要素Aとし、第3遊星ギア列30のリングギアR3と第4遊星ギア列40のプラネットキャリアP4を連結して構成要素Bとし、第3遊星ギア列30のプラネットキャリアP3を構成要素Cとし、第3及び第4遊星ギア列30、40の互いのサンギアS3、S4を連結して構成要素Dとした組み合わせである。一般的に、シンプソン遊星ギアと呼ばれる組み合わせである。Cタイプ9ATでは構成要素AとBに、Aタイプ9ATでは構成要素Aに、入力軸の回転が入力される。この場合、構成要素Aは径の大きなリングギアR4であり、構成要素Bは径の大きなリングギアR3であるため、径の小さなサンギアにトルクが作用する場合と比べ、リングギアとサンギアの歯数比分だけ歯面荷重が小さくなる。したがって、第3及び第4遊星ギア列30、40のギア巾が小さくでき、強度的に有利な組み合わせとなる。加えて、第1ブレーキB1で制動する構成要素DがサンギアS3、S4となり、サンギアには最も小さなトルクしか負荷されないため、第1ブレーキB1のブレーキトルク容量が小さくなる。このシンプソン遊星ギアは、噛み合い効率もよく、3ATで最も多く使用されており、特許文献9でも主体的に用いている。但し、連結が少し複雑な構造となる難点がある。特許文献9の代表的な実施例を示す本願記載の図26では、2個の減速回転は入力軸を構成要素Aのリングギアに入力する変速形態となるが、逆回転は入力軸を構成要素Dのサンギアに入力する変速形態となり、本発明と比べ、強度的に一部不利となる。また、図26では、前進1速の発進段における第1ブレーキB1のトルク容量は本発明の1.5倍程度大きくなり、このことも、第1ブレーキB1を発進デバイスとして滑らせて用いる場合、本発明のほうが有利となる。変速比の特性としては、入力軸の回転が構成要素Aに入力し、構成要素Dが制動される場合、比較的減速比が大きくとれないので、ギアレンジを8から9にする場合に適する。それでも、従来の特許文献4、5、6に記載した7、8ATのギアレンジより20%は大きくとれる。
<F−2>
第3及び第4遊星ギア列30、40をシンプル遊星ギアとして、第3及び第4遊星ギア列30、40の互いのサンギアS3、S4を連結して構成要素Aとし、第3遊星ギア列30のプラネットキャリアP3を構成要素Bとし、第3遊星ギア列30のリングギアR3と第4遊星ギア列40のプラネットキャリアP4を連結して構成要素Cとし、第4遊星ギア列40のリングギアR4を構成要素Dとした組み合わせである。一般的に、シンプソン遊星ギアと呼ばれる組み合わせであるが、入力軸の回転が入力される構成要素AがサンギアS4となるため、第4遊星ギア列40の負荷荷重を小さくすることはできない。但し、「F−1」より軸方向がコンパクトに連結できるので、ギア巾が大きくなっても全体の軸方向の長さは、「F−1」とほぼ同じにできる。変速比の特性としては、入力軸の回転が構成要素Aに入力し、構成要素Dが制動される場合、比較的減速比が大きくなるので、Cタイプ9ATのギアレンジを10以上にする場合に適する。Aタイプ9ATには、変速比の連なりが「F−1」より悪くなるので、向かない。
<F−3>
第3及び第4遊星ギア列30、40をシンプル遊星ギアとして、第4遊星ギア列40のサンギアS4を構成要素Aとし、第3遊星ギア列30のリングギアR3と第4遊星ギア列40のプラネットキャリアP4を連結して構成要素Bとし、第3遊星ギア列30のプラネットキャリアP3と第4遊星ギア列40のリングギアR4を連結して構成要素Cとし、第3遊星ギア列30のサンギアS3を構成要素Dとした組み合わせである。変速比の自由度が高く、希望する変速比がとれるが、強度に対する利点はなく、軸方向の長さを短くはできない。したがって、FR方式には向くが、軸方向を短くしなければならないFF方式には「F−1」、「F−2」より劣る。
<F−4>
第3遊星ギア列30をダブル遊星ギアとし、第4遊星ギア列40をシンプル遊星ギアとし、リングギアRとプラネットキャリアPを共有させ、ダブル遊星ギアとなる第3遊星ギア列30のリングギアRと噛み合うピニオンギアをロングピニオンとして第4遊星ギア列40のサンギアS4に噛み合わせた所謂ラビニョー遊星ギアとして、第3遊星ギア列30のサンギアS3を構成要素Aとし、共有するリングギアRを構成要素Bとし、共有するプラネットキャリアPを構成要素Cとし、第4遊星ギア列40のサンギアS4を構成要素Dとした組み合わせである。「F−1」と同じような変速比となり、強度的な利点はないがコンパクトになるため、軸方向の長さは「F−1」と同じようにできる。但し、ダブル遊星ギアを用いるため、噛み合い効率が「F−1」より悪くなる。
<F−5>
第3及び第4遊星ギア列(30、40)をシンプル遊星ギアとして、第4遊星ギア列(40)のサンギア(S4)を構成要素Aとし、第3遊星ギア列(30)のリングギア(R3)を構成要素Bとし、第3及び第4遊星ギア列(30、40)の互いのプラネットキャリア(P3、P4)を連結して構成要素Cとし、第3遊星ギア列(30)のサンギア(S3)と第4遊星ギア列(40)のリングギア(R4)を連結して構成要素Dとした組み合わせである。「F−2」と同じような変速比となり、強度的な利点もない。
<F−6>
第3及び第4遊星ギア列(30、40)をシンプル遊星ギアとして、第3遊星ギア列(30)のサンギア(S3)と第4遊星ギア列(40)のリングギア(R4)を連結して構成要素Aとし、第3及び第4遊星ギア列(30、40)の互いのプラネットキャリア(P3、P4)を連結して構成要素Bとし、第3遊星ギア列(30)のリングギア(R3)を構成要素Cとし、第4遊星ギア列(40)のサンギア(S4)を構成要素Dとした組み合わせである。「F−1」と同じような変速比となり、強度的な利点もない。
FRONT GEAR(前置変速機構)を構成する2個の遊星ギア列からなる「F−1」から「F−6」の6種の組み合わせのうち、「F−4」と「F−6」は、「F−1」と同じ変速比となり、「F−5」は、「F−2」と同じ変速比となる。しかも、「F−1」及び「F−2」より欠点が多いため、実施例は「F−1」、「F−2」、及び「F−3」を用いた。
MAIN GEAR(主変速機構)とFRONT GEAR(前置変速機構)からなるCタイプ9ATの実施例である図5から図10と、Aタイプ9ATの実施例である図17から図19は、「M−1」から「M−6」と、「F−1」から「F−6」の各6種の組み合わせにおいて、より適切な組み合わせを用いたものである。
<C−タイプ9AT(F−1、M−2)>
図5は、MAIN GEAR(主変速機構)に「M−2」の第1遊星ギア列10の径方向上部に第2遊星ギア列20を2階建てに重ねて配した、極めてコンパクトになる変速装置である。乗用車のFF用として、原動機と入力軸との間にダンパを配して直結とし、発進デバイスを第1及び第2ブレーキB1、B2とした模式図と、トラックやバスのFR(RR)用として、発進デバイスにモータジェネレータを出力軸に連結した模式図を示す。乗用車では、変速装置の後部にモータジェネレータを配するスペースはない。本願の図26に参考として記載した特許文献9のC1−タイプ9ATと比較し、MAIN GEAR(主変速機構)は同一であり、各3個のクラッチとブレーキの配置や、変速装置への動力の入出力形態が同じとなる。したがって、大きさは同じとなる。FRONT GEAR(前置変速機構)の「F−1」となる2個の遊星ギア列の組み合わせも同じとなるが、段落「0061」で説明したように、4個の構成要素A、B、C、及びDの動力の入出力形態のみ異なるものである。特許文献9では、この極めてコンパクトになる配置を特許申請したが、本願では配置は特許申請していない。変速比を比較すると、図26の特許文献9が前進1速段の4.811から前進9速段の0.492で、ギアレンジが9.79となり、本発明の「F−1、M−2」の組み合わせが前進1速段の4.353から前進9速段の0.495で、ギアレンジが8.79となり、若干、変速比がクロスになる。ギアの噛み合い効率は図26の特許文献9と大差はなく、本願の図23に示したTOYOTAのBタイプ8ATよりかなりよく、本願の図24に示したBENZのCタイプ7ATと図25に示したZFのDタイプ8ATには若干及ばない。なお、この組み合わせは、入出力軸を同軸に配さねばならないFR用としても極めてコンパクトな配置が可能となる。乗用車にもこの方式が適用できるが、入出力軸をコンパクトに同軸に配さねばならない用途としては、車体後部にパワーラインを配さねばならないRR仕様のバスがある。特に、原動機を含めたパワーラインを車体の後部に横置きに配さなければならないインターシティバスや観光バスに最適となる。なお、トラックやバスのFR(RR)用変速装置は、乗用車と異なり、原動機にぶら下げて配されるため、ある程度胴回りを太くし、軸方向をコンパクトにして強度的に耐え得る形状にしなければならず、この組み合わせは最適となる。
<C−タイプ9AT(F−2、M−2)>
図6は、図5同様、MAIN GEAR(主変速機構)に「M−2」の第1遊星ギア列10の径方向上部に第2遊星ギア列20を2階建てに重ねて配した、極めてコンパクトになる変速装置である。FF及びFR用として、発進デバイスにトルクコンバータを用いた模式図を示す。FRONT GEAR(前置変速機構)の「F−2」となる2個の遊星ギア列の組み合わせも「F−1」と同じとなるが、段落「0064」で説明したように、4個の構成要素A、B、C、及びDの構成が異なる。FF用の模式図を構造図に表した図12からわかるように、第4遊星ギア列40のギア巾は「F−1」より大きくなるが、連結がコンパクトになるので、大きさは図26の特許文献9や図5と同じく、極めてコンパクトな配置となる。変速比を比較すると、「F−2、M−2」の組み合わせが前進1速段の5.190から前進9速段の0.507で、ギアレンジが10.24と図26の特許文献9より大きくなる。原動機の出力に対して、車体重量が大きくなるような車両に向いたギアトレンとなるが、変速比の連なりはワイドでもなく、一般の車両に適した変速比となり、ギアの噛み合い効率も「F−1、M−2」の組み合わせとほとんど同じとなる。当然、「F−1、M−2」の組み合わせと同様、トラックやバスの変速装置として、最適となる。
<C−タイプ9AT(F−3、M−2)>
図7は、図5同様、MAIN GEAR(主変速機構)に「M−2」の第1遊星ギア列10の径方向上部に第2遊星ギア列20を2階建てに重ねて配した、コンパクトになる変速装置である。FF及びFR用として、発進デバイスにトルクコンバータを用いた模式図を示す。FRONT GEAR(前置変速機構)の「F−3」となる2個の遊星ギア列の組み合わせは、段落「0065」で説明したように、強度に対する利点はなく、第3及び第4遊星ギア列30,40のギア巾を「F−1」より大きくしなければならず、FF用としては「F−1、M−2」及び「F−2、M−2」の組み合わせより劣る。変速比に関しては、「F−1、M−2」や「F−2、M−2」に対応可能な幅広い自由度がある。図7に示した変速比は、図26の特許文献9の変速比に近くなるものを記載し、前進1速段が4.858、前進9速段が0.495で、ギアレンジが9.81とした。ギアの噛み合い効率は、「F−1、M−2」及び「F−2、M−2」の組み合わせとほとんど同じとなる。当然、「F−1、M−2」の組み合わせと同様、トラックやバスの変速装置として、最適となる。
<C−タイプ9AT(F−1、M−1)>
図8は、MAIN GEAR(主変速機構)に「M−1」のシンプソン遊星ギアを配した変速装置である。FF及びFR用として、発進デバイスにトルクコンバータを用いた模式図を示す。MAIN GEAR(主変速機構)を構成する第1及び第2遊星ギア列10、20は、段落「0053」で説明したように、負荷荷重が小さくなるため、ギア巾が小さく配置できる。但し、「M−1」は第1及び第2遊星ギア列10、20を軸方向に並べて配するため、2階建てにして配する「M−2」より、第1遊星ギア列10のギア巾が小さくても、全体の配置巾は大きくなる。変速比は、FRONT GEAR(前置変速機構)に左右され、ここでは「F−1」を用いるので、図5の「F−1、M−2」の組み合わせと同じように、前進1速段が4.351、前進9速段が0.529で、ギアレンジが8.22となる。ギアの噛み合い効率は、MAIN GEAR(主変速機構)にシンプソン遊星ギアを用いたので、前進の減速段において、図5、図6、及び図7の「M−2」を用いたギアトレンよりよく、図24に示したBENZのCタイプ7ATと同等となる。なお、乗用車のFR用変速装置は、原動機と一体として変速装置も懸架され、軸方向の長さはあまり制限されないため、ギアの噛み合い効率がよいこの組み合わせは最適となる。
<C−タイプ9AT(F−2、M−1)>
図9は、図8同様、MAIN GEAR(主変速機構)に「M−1」のシンプソン遊星ギアを配した変速装置である。FF及びFR用として、発進デバイスにトルクコンバータを用いた模式図を示す。FRONT GEAR(前置変速機構)は、図6同様「F−2」を用い、変速装置の大きさは図8と変わらない。変速比は、FRONT GEAR(前置変速機構)に左右され、ここでは「F−2」を用いるので、図6の「F−2、M−2」の組み合わせと同じように、前進1速段が5.456、前進9速段が0.541で、ギアレンジが10.09となる。ギアの噛み合い効率は、図8と変わらない。当然、「F−1、M−1」の組み合わせと同様、乗用車のFR用変速装置として、最適となる。
<C−タイプ9AT(F−3、M−3)>
図10は、MAIN GEAR(主変速機構)に「M−3」の組み合わせを配した変速装置である。FF及びFR用として、発進デバイスにモータジェネレータ(MG)を入力軸と連結したHEV仕様の模式図を示す。MAIN GEAR(主変速機構)を構成する第1及び第2遊星ギア列10、20は、段落「0055」で説明したように、負荷荷重が小さくならないため、ギア巾が小さく配置できない。ここでは、第1遊星ギア列10のサンギアS1を直接ハウジングに固定し、プラネットキャリアP2と第1遊星ギア列10のリングギアR1の間にドグクラッチとなる第4クラッチC4を配する構造とした。これは、図5から図9の速度線図に記載したように、MAIN GEAR(主変速機構)の第4構成要素が増速段で高回転となるのを防ぐためである。MAIN GEAR(主変速機構)の第4構成要素が固定状態となる前進の減速段と後進段では、第1遊星ギア列10と第2遊星ギア列20は互いのプラネットキャリアとリングギアが連結して両方の遊星ギア列に動力が負荷されるが、入力軸の直結段及び増速段では、MAIN GEAR(主変速機構)の第1、第2、及び第3構成要素が、第2遊星ギア列20のサンギアS2、プラネットキャリアP2、リングギアR2となるため、第1遊星ギア列10には動力が負荷されない。第1及び第2遊星ギア列10,20が連結状態では、図5から図9の速度線図に記載したように、MAIN GEAR(主変速機構)の第4構成要素が増速段で高回転となる。そこで、MAIN GEAR(主変速機構)の第4構成要素をハウジングに常時固定し、プラネットキャリアP2と第1遊星ギア列10のリングギアR1の間にドグクラッチとなる第4クラッチC4を配し、直結段及び増速段で第4クラッチC4を開放し連結を解くと、速度線図に示すように、第1及び第2遊星ギア列10,20が、それぞれ別の速度線図を形成し、高回転化を防ぐことができる。なお、第4クラッチC4をドグクラッチとしたのは、この連結力が入力軸トルクの7倍と大きくなるためで、摩擦部材による締結では、スペース的に困難となる。ドグクラッチは回転が同期しなければ係脱が困難であり、制御性が課題となる。「請求項2」と「請求項6」の一部は、この構造に関して請求したものである。なお、FRONT GEAR(前置変速機構)には図7と同じく「F−3」を用いて変速比の自由度が高いものとし、前進1速段が5.096、前進9速段が0.565で、ギアレンジが9.02とした。ギアの噛み合い効率は、「F−1、M−2」及び「F−2、M−2」と「F−1、M−1」及び「F−2、M−1」の組み合わせの間となる。
図11から図16は、本発明におけるCタイプ9ATの実用性を確認するためにコンセプトした構造図であり、全て実用性の高いものである。乗用車のFF用の代表的な実施例として、図5、図6、及び図9の模式図を図11、図12、及び図13として構想設計し、乗用車のFR用の代表的な実施例として、図9の模式図を図14とし、トラックやバスのFR(RR)用の代表的な実施例として、図6の模式図を図15とし、図15を図5の形態のHEV仕様として図16に構想設計したものである。
<C−タイプ9AT(F−1、M−2)FF(D/R)>
図11は、図5の模式図を原動機からの入力動力を300Nmとしてコンセプト設計した構造図であり、軸方向長さが320mmと、従来の4ATよりコンパクトになる。当然、コストも低減され、将来有望な先進的ATの形態になり得るものである。各遊星ギア列の歯数や変速比は、図5に基づいて設定したものである。図11において、図の左側前方の図示しない原動機から回転変動吸収ダンパ200cに動力が伝達され、変速装置の入力軸3に導かれる。変速装置全体を収めるハウジングは、前部のフロントケース1aと後部の変速機ケース1bとからなり、並行に配された中継軸7及び出力軸を含んだディファレンシャル装置9とを軸支する母体となる。回転変動吸収ダンパ200cに連結された入力軸3は直接チャージングポンプを駆動し、前部の一端が保持部材2a、2b、2cに配された軸受け4aで、後部の一端が変速機ケース1bに配された軸受け4bで軸支される。保持部材2a、2b、2cは、乾式のフロントケース1aと湿式の変速機ケース1bを隔てる隔壁であり、入力軸3を軸支し変速装置のチャージングポンプを保持する。中継軸7は、一端がフロントケース1aに配された軸受け4gで、もう一端が変速機ケース1bに配された軸受け4fで軸支され、入力軸3と同軸上の出力カウンターギア5と噛み合うカウンターギア6がスプラインで連結されると共に、出力軸を含んだディファレンシャル装置9に動力を伝達するピニオンギアが一体成形されている。また、出力軸部はディファレンシャル装置9のキャリアとなり、一端がフロントケース1aに配された軸受け4iで、もう一端が変速機ケース1bに配された軸受け4hで軸支され、ピニオンギアと一体の中継軸7と噛み合う大歯車8がボルトで締結されている。周知の如く、ディファレンシャル装置9はピニオンギアとサイドギアからなり、サイドギアには自動変速装置の出力軸が連結される。
変速機ケース1bは、後部が閉ざされており、軸方向中央部には隔壁100が、外周でボルトにより変速機ケース1bに一体として締結されている。隔壁100は、内周部が変速機前方に突き出た逆L字型の円筒形状をしており、内周円筒部の外周にアンギュラ軸受け4eが背面合わせでネジにより固定され、出力カウンターギア5を軸支する。出力カウンターギア5の前方には、第1遊星ギア列10が配され、第1遊星ギア列10を取り巻く形で外周部に第2遊星ギア列20が2階建てで配され、さらに、その前方に第3クラッチC3が配される。第1と第2遊星ギア列10、20はシンプル遊星ギアで、第1遊星ギア列10のリングギアR1の外周に第2遊星ギア列20のサンギアS2が一体形成されて、リングギアR1の歯部にL字形状の連結軸17が第1遊星ギア列10の前方でスプライン連結をする。連結軸17は入力軸の周りにブシュ4cで回転自在に軸支され、隔壁100の内周円筒部内側を通り後部に延材される。連結軸17の周りには、ブシュ4mで、第1と第2遊星ギア列10、20の連結されたプラネットキャリアP1、P2の隔壁100の内周円筒部まで延材した円筒部に、回転自在に軸支された連結軸18が、第1遊星ギア列10のサンギアS1にスプライン連結され、隔壁100の内周円筒部内側を通り後部に延材される。第1遊星ギア列10のプラネットキャリアP1は、リングギアR1とサンギアS1に噛み合う複数の遊星ギアを保持し、出力カウンターギア5側のサイド部材が外周方向に伸びて、第2遊星ギア列20のプラネットキャリアP2のサイド部材となり第2遊星ギア列20のリングギアR2とサンギアS2に噛み合う複数の遊星ギアを保持するとともに、隔壁100の内周側に延材され、隔壁100の内周円筒部内周に配されたニードルベアリング4kに軸支される。ここで複数の遊星ギアを保持しアンバランスになりやすい大重量の一体化されたプラネットキャリアP1、P2が、隔壁100にしっかり軸支されたことになる。第2遊星ギア列20のプラネットキャリアP2のもう一方のサイド部材には、第3クラッチC3のハブが連結され、第2遊星ギア列20のリングギアR2は、出力カウンターギア5に、それぞれの歯部をスプラインとした連結部材で連結される。なお、第2遊星ギア列20は第1遊星ギア列10より歯面荷重が小さくなるため、巾が狭くて済み、中継軸7のピニオンギアとカウンターギア6の間の隙間に配される。
2階建ての第1と第2遊星ギア列10、20の前方に配された第3クラッチC3は、入力軸3に溶着されたクラッチドラムと、プラネットキャリアP2のサイド部材に連結したハブに係止される摩擦部材(ドライブプレート)と、クラッチドラムに係止される摩擦部材(ドリブンプレート)と、リティニングリングで軸方向が規制されるエンドプレートと、摩擦部材を押圧するピストンと、ピストンの作動室の遠心油圧をキャンセルするキャンセラープレートと、ピストンを開放状態に戻すリターンスプリングからなっており、入力軸3と、一体のプラネットキャリアP1、P2との締結及び開放をつかさどる。なお、クラッチドラムとピストンとの間、及びピストンとキャンセラープレートとの間の作動室には、保持部材2bのボス部外周から作動油が供給され、油圧サーボを形成する。
図11と隔壁100の後方に配された前置変速装置において、隔壁100から軸方向順に、第3ブレーキB3と、第3遊星ギア列30と、第4遊星ギア列40と、第2クラッチC2と、第1クラッチC1とが配される。外周でボルトにより変速機ケース1bに一体として締結されている隔壁100は、剛性の高い鋼で作られており、円周方向の中間部よりすこし上部に設けられた円筒状のドラムが、後部に配された第3遊星ギア列30の上部まで延材され、このドラムの内周部に第3ブレーキB3の作動油圧室が形成され、外周部に第1ブレーキB1の作動油圧室が形成される。第3ブレーキB3は、第1遊星ギア列10のサンギアS1に連結する連結軸18と、第3遊星ギア列30の外周に延材された連結軸18のスプライン部に係止される摩擦部材(ドライブプレート)と、隔壁100のドラムの内周スプラインに係止される摩擦部材(ドリブンプレート)と、リティニングリングで軸方向が規制されるエンドプレートと、摩擦部材を押圧するピストンと、ピストンを開放状態に戻すリターンスプリングとからなっており、第1遊星ギア列10のサンギアS1の制動及び開放をつかさどる。第3ブレーキB3のトルク容量は、段落「0056」で記載したように、入力軸のトルクを1として、前進1速で2.149となり、後進(Rev)で1.804と、一般的な発進段で締結するブレーキのトルク容量より小さい。加えて、変速時にすべらす必要もなく、エネルギーを吸収し放熱させる必要性がない仕様としたため、比較的摩擦部材の径と枚数が小さくできる。また、内周が小さくなる隔壁100の内周部からドラムにかけて、大きな面積がとれる位置にピストンを配することができるので、摩擦部材の押し付け力が大きくなり、第3ブレーキB3のトルク容量を満足さすことができる。通常の4ATでは、発進段のブレーキの摩擦部材は、変速機ケースの径の大きな内周に枚数6〜7枚で配せられ、それに比べると半分の容量で済む。この構想図の特徴は、第3ブレーキB3の油圧サーボを隔壁100に配したことにある。つまり、従来の発進段で締結するブレーキと比べ小さなトルク容量で済み、変速時もすべらす必要のない第3ブレーキB3の特徴を生かし、隔壁100に第3ブレーキB3の油圧サーボとなるピストンとリターンスプリングを配し、図示しないコントロールバルブから変速機ケース1bを介して隔壁100の第3ブレーキB3の大きな面積がとれる作動油圧室に作動油を導き、隔壁100に配された摩擦部材の押し付け及び開放を行うようにしたことである。この構造により、第3ブレーキB3をコンパクトに配することができる。
第3遊星ギア列30と第4遊星ギア列40は、隔壁100側から順に軸方向に並べて配される。第3遊星ギア列30の遊星ギアは、サンギアS3とリングギアR3と噛み合い、プラネットキャリアP3に軸支される。リンギギアR3は、隔壁100側でL字型の連結部材により第3遊星ギア列30の内周部内側で入力軸3に軸支され、プラネットキャリアP3の第4遊星ギア列40側のサイド部材は、リンギギアR3の外周を回り、隔壁100側の内周部まで延材されて連結軸17にスプライン連結し、サンギアS3は、 第4遊星ギア列40のサンギアS4と一体成形される。
第4遊星ギア列40の遊星ギアは、サンギアS4とリングギアR4と噛み合い、プラネットキャリアP4に軸支される。リングギアR4には、軸方向がニードルベアリングで規制された第1クラッチC1のクラッチハブが溶着され、プラネットキャリアP4の隔壁100と反対側のサイド部材は、逆L字型をして第4遊星ギア列40の内周部内側でリンギギアR3に連結したL字型の連結部材にスプライン連結し、もう一方のサイド部材は、第4遊星ギア列40の外周まで延材されて曲げられ、第2クラッチC2のクラッチハブとなる。サンギアS3と一体となるサンギアS4は、プラネットキャリアP4のサイド部材に軸支されるとともに、 歯部に第3ブレーキの外周まで延材されて曲げられた第1ブレーキB1のブレーキハブがスプライン連結される。さらに、第2クラッチC2のクラッチハブの外周には、第1及び第2クラッチC1、C2の外周まで延材されて曲げられた第2ブレーB2のブレーキハブがスプライン連結される。
変速機ケース1bの閉ざされた後部には、第2クラッチC2と第1クラッチC1が、クラッチドラムが共有された2連クラッチとして配される。第1、第2クラッチC1、C2は、共有したクラッチドラムと、クラッチドラムの内周スプラインの軸方向中央にリティニングリングで固定されたエンドプレートと、エンドプレートの後方でクラッチドラムの内周スプラインに係止される第1クラッチC1の摩擦部材(ドリブンプレート)と、リングギアR4に溶着されたた第1クラッチC1のクラッチハブの外周スプラインに係止される摩擦部材(ドライブプレート)と、摩擦部材を押圧するピストンと、エンドプレートの前方でクラッチドラムの内周スプラインに係止される第2クラッチC2の摩擦部材(ドリブンプレート)と、プラネットキャリアP4に連結された第2クラッチC2のクラッチハブの外周スプラインに係止される摩擦部材(ドライブプレート)と、摩擦部材をリティニングリングで固定されたL字型フランジで押圧するピストンと、スタッドピンでピストンに連結され、ピストンをクラッチドラムに戻すリターンスプリングの支点となるキャンセラプレートとから成っている。第1、第2クラッチC1、C2のクラッチドラムは、変速機ケース1bの閉ざされた後部の内周ボス部外周から作動油が供給される入力軸3にスプライン連結されたクラッチハブに溶着され、第1クラッチC1のピストンと第2クラッチC2のピストンは、クラッチドラムを挟んで配され、第1クラッチC1は、プッシュタイプのピストンで入力軸3とリングギアR4の締結及び開放をつかさどり、第2クラッチC2は、プルタイプのピストンで入力軸3とプラネットキャリアP4の締結及び開放をつかさどる。2連クラッチC1、C2は、クラッチドラムとリターンスプリングとキャンセラプレート及びエンドプレートを共有して軸方向にコンパクトに配することができるもので、本願出願人が特開2007−51651で提案したものである。
第3ブレーキB3の外周に配された第1ブレーキB1は、隔壁100の円筒状ドラムの外周部に形成された作動油圧室に配されたピストンと、円筒状ドラムにリティニングリングで固定されたスプリングホルダーとピストンとの間に配されたリターンスプリングと、 変速機ケース1bの内周に形成されたスプラインに係止される摩擦部材(ドリブンプレート)、及びエンドプレートと、第3及び第4遊星ギア30、40の一体となるサンギアS3、S4にスプライン連結されたブレーキハブに係止される摩擦部材(ドライブプレート)とからなり、サンギアS3、S4の制動及び開放をつかさどる。
2連クラッチとなる第1、第2クラッチC1、C2の外周に配された第2ブレーキB2は、変速機ケース1bの後端外周部に形成された作動油圧室に配されたピストンと、変速機ケース1bの外周部にリティニングリングで固定されたスプリングホルダーとピストンとの間に配されたリターンスプリングと、 変速機ケース1bの内周に形成されたスプラインに係止される摩擦部材(ドリブンプレート)、及び変速機ケース1bの外周部に軸方向がリティニングリングで規制されるエンドプレートと、クラッチハブの外周にスプライン連結されたブレーキハブに係止される摩擦部材(ドライブプレート)とからなり、プラネットキャリアP4とリングギアR3の制動及び開放をつかさどる。
第1ブレーキB1と第2ブレーキB2は、発進デバイスとしての構造を表したものである。第1ブレーキB1のトルク容量は、入力軸のトルクを1として、前進1速で1.189となり、第2ブレーキB2のトルク容量は、後進(Rev)で2.814となる。ATとして変速時にショック吸収のため短時間すべらすような使い方をするなら、本願の構造図の第1ブレーキB1では、摩擦部材(ドライブプレート)、及び(ドリブンプレート)の枚数は各3枚で十分となる。後進(Rev)ではそれほどすべらす必要もなく、第2ブレーキB2の摩擦部材(ドライブプレート)、及び(ドリブンプレート)の枚数は各2枚で十分となる。しかしながら、本願では発進デバイスとして用いるため、車両のクリープが実現できるように、低トルク低回転で常時すべらす仕様にしなければならない。問題は摩擦部材のすべりによる発熱を、いかに吸収し冷却するかである。まず第1に、本願では、摩擦部材のスティックスリップによるシャダー振動をなくすため、ディッシュプレートをドリブンプレートに保持させ、ピストンで押圧する構造とした。第2に、第1及び第2ブレーキB1、B2の摩擦部材の枚数を倍の6枚と4枚にするとともに、1枚当りの摩擦表面積を増やすことで冷却面積を増やした。第3に、摩擦部材の摩擦部の中央同一径部に複数の貫通長穴を設け、摩擦部材がすべっている間中、エンドプレートを通して変速機ケース1bから冷却油を貫通穴に流し込み、確実に冷却できる構造とした。詳細は、図22に記載している。本願出願人が提案した特開2009−236234にも同様のブレーキ構造を提案しているが、このブレーキは特許文献9のように発進段となる前進1速と後進(Rev)で共通に用いるブレーキに関しての提案である。本発明では、前進1速と後進(Rev)で用いるブレーキは、それぞれ第1ブレーキB1と第2ブレーキB2と別々になるため、「請求項6」で第1及び第2ブレーキB1、B2の構造を請求した。なお、第1及び第2ブレーキB1、B2を発進デバイスとして用いた図11以外の図面においても、第1及び第2ブレーキB1、B2の摩擦部材を発進デバイスと同じ仕様で記した。これは、トルクコンバータや流体継手を発進デバイスとして用いた場合も、トルクコンバータや流体継手の容量を上げて、第1及び第2ブレーキB1、B2の摩擦部材をすべらせて発進に用い、燃費の向上を可能としたためである。
<C−タイプ9AT(F−2、M−2)FF(T/C)>
図12は、図6の模式図を原動機からの入力動力を300Nmとしてコンセプト設計した構造図であり、軸方向長さが370mmと、6ATとかわらないか、むしろコンパクトになる。図11の発進デバイスをトルクコンバータ200aに変え、FRONT GEAR(前置変速装置)を「F−1」から「F−2」に変えたもので、MAIN GEAR(主変速装置)は同じである。回転変動吸収ダンパ200cがトルクコンバータ200aに変わったため、軸方向長さが320mmから370mmと長くなる。なお、トルクコンバータ200aは、「背景技術」の段落「0018」で説明したように、本願出願人の特開2008−196660による、独立した油圧室を備えるにもかかわらず、外部からの油通路が2通路で済む、コンパクトなロックアップクラッチを備えたトルクコンバータとした。各遊星ギア列の歯数や変速比は、図6に基づいて設定したものである。図12において、図の左側前方の図示しない原動機から流体伝導装置であるトルクコンバータ200aに動力が伝達され、変速装置の入力軸3に導かれる。トルクコンバータ200aは、インペラ、タービン、ステータ、及びインペラとタービンの係脱を行うロックアップクラッチからなり、インペラがチャージングポンプを駆動し、ステータがワンウェイクラッチ介して保持部材2cでハウジングとなるフロンとケースに固定され、タービンが入力軸3に連結される。変速装置全体を収めるハウジングは、前部のフロントケース1aが図11より長くなるだけで、MAIN GEAR(主変速装置)の「F−1」の配置構造や後部の変速機ケース1bや並行に配された中継軸7及び出力軸を含んだディファレンシャル装置9は、図11と同じとなる。しかも、隔壁100の後部に配される第1及び第2クラッチC1、C2と第1、第2、及び第3ブレーキB1、B2、B3の構造配置も図11と同じとなるので、これらの説明を省略する。
図12の隔壁100の後方に配された前置変速装置において、隔壁100から軸方向順に、第3ブレーキB3と、第4遊星ギア列40と、第3遊星ギア列30と、第2クラッチC2と、第1クラッチC1とが配される。つまり、図11とは、第3遊星ギア列30と、第4遊星ギア列40が逆に配されることになる。したがって、第4遊星ギア列40と第3遊星ギア列30は、隔壁100側から順に軸方向に並べて配され、第4遊星ギア列40の遊星ギアは、サンギアS4とリングギアR4と噛み合い、プラネットキャリアP4に軸支される。第4遊星ギア列40のリングギアR4は、軸方向がニードルベアリングで規制されるとともに、第3ブレーキB3の円筒状のドラムの外周まで延材されて曲げられた第1ブレーキB1のブレーキハブが溶着され、プラネットキャリアP4の隔壁100側のサイド部材が第4遊星ギア列40の内周部にL字状に曲げられて連結軸17とスプライン連結され、もう一方のサイド部材が第3遊星ギア列30のリングギアR3に溶着される。サンギアS4は、 第3遊星ギア列30のサンギアS3と一体成形される。
第3遊星ギア列30の遊星ギアは、サンギアS3とリングギアR3と噛み合い、プラネットキャリアP3に軸支される。第4遊星ギア列40のサンギアS4と一体成形されるサンギアS3は、入力軸3に軸支され第3遊星ギア列30の後部に延材される第1クラッチC1のクラッチハブと内周部でスプライン連結される。プラネットキャリアP3は、隔壁100側から遠ざかる方のサイド部材が第3遊星ギア列30の外周部に延材され第2クラッチC2のクラッチハブになるとともに、第1及び第2クラッチC1、C2の外周まで延材されて曲げられた第2ブレーB2のブレーキハブがスプライン連結される。前述の如く、リングギアR3は、第4遊星ギア列40のプラネットキャリアP4に連結される。
段落「0064」で説明したように、FRONT GEAR(前置変速装置)を「F−2」にした場合は、「F−1」と比べ第4遊星ギア列40の負荷荷重を小さくすることはできない。そのため、第4遊星ギア列40のギア巾を大きくしなければならないが、 第3遊星ギア列30のリングギアR3が第4遊星ギア列40のプラネットキャリアP4に連結され連結軸17と連結する構造が、「F−1」よりコンパクトになるので、ギア巾を小さくできる「F−1」と同じスペースで配置できる。なお、前進1速と後進(Rev)の変速比が「F−1」より大きくなるため、その分、第1及び第2ブレーキB1、B2の容量は大きくしなければならないが、一般的なATより小さくて済み、有利となる。
<C−タイプ9AT(F−2、M−1)FF(T/C)>
図13は、図9の模式図を原動機からの入力動力を300Nmとしてコンセプト設計した構造図であり、軸方向長さが400mmと、FFとしては限界の長さとなる。しかし、トルクコンバータ200aに代えて後述する流体継手200bを用いれば、軸方向が10mm短くなり、図11のような回転振動吸収ダンパ200cを用いれば、全長が350mmと4ATと同等、またはそれ以下となる。図13は、図12で使用しているMAIN GEAR(主変速装置)を「M−2」から「M−1」に変えたもので、発進デバイスのトルクコンバータ200aや、FRONT GEAR(前置変速装置)の「F−2」等、全体の配置や動力伝達構造は図12と同じであり、それらの説明を省略する。なお、段落「0074」で説明したように、図11や図12で用いたMAIN GEAR(主変速装置)である「M−2」の第1遊星ギア列10より、「M−1」の第1遊星ギア列10のギア巾は小さくできるが、第1遊星ギア列10と第2遊星ギア列20を軸方向に並べて配するため、2階建てに配する「M−2」より、軸方向が30mm長くなる。
図13の隔壁100の前方に配された主変速装置において、変速機ケース1bは、後部が閉ざされており、軸方向中央部には隔壁100が、外周でボルトにより変速機ケース1bに一体として締結されている。隔壁100は、内周部が変速機前方に突き出た逆L字型の円筒形状をしており、内周円筒部の外周にアンギュラ軸受け4eが背面合わせでネジにより固定され、出力カウンターギア5を軸支する。出力カウンターギア5の前方には、第1遊星ギア列10と第2遊星ギア列20が軸方向順に配され、さらに、その前方に第3クラッチC3が配される。第1遊星ギア列10の複数の遊星ギアは、リングギアR1とサンギアS1に噛み合い、プラネットキャリアP1に保持される。プラネットキャリアP1は、サイド部材と遊星ギアの軸支部材からなり、サイド部材には外周部で連結部材が溶着され、連結部材が出力カウンターギア5の歯部にスプライン連結し、プラネットキャリアP1と出力カウンターギア5を連結する。サンギアS1は、第2遊星ギア列20のサンギアS2と一体成形されて、内周に円筒状の連結軸18がスプライン連結され、リングギアR1は、第2遊星ギア列20の外周側に曲げられて、第3クラッチC3の摩擦部材(ドライブプレート)を係止するプラネットキャリアP2のサイド部材のスプラインに連結し軸方向がリティニングリングで規制されて係止される。第2遊星ギア列20の複数の遊星ギアは、リングギアR2とサンギアS2に噛み合い、プラネットキャリアP2に保持される。プラネットキャリアP2は、サイド部材と遊星ギアの軸支部材からなり、前方に配されたサイド部材は、L字型で第2遊星ギア列20の内周に曲げられて第1遊星ギア列10のサンギアS1と一体のサンギアS2をブシュで軸支し、もう一方のサイド部材は、前述の如く、第1遊星ギア列10のリングギアR1とスプライン連結し、第3クラッチC3の摩擦部材(ドライブプレート)を係止する。リングギアR2には、前方の歯部にL字型の連結軸17がスプライン連結される。主変速装置の軸中心には、入力軸3が配され、入力軸3は、円筒状の連結軸17をブシュ4cで軸支し、連結軸17は、プラネットキャリアP2のL字型のサイド部材をブシュで軸支する。また、第1遊星ギア列10のプラネットキャリアP1の隔壁100側のサイド部材は、出力カウンターギア5にインロー部Yと歯部のスプライン連結により連結され、隔壁100の内周側にL字型に曲げられ、ブシュ4mで円筒状の連結軸18を軸支する。連結軸18を、軸支しやすい連結軸17で軸支しない理由は、連結軸18が極めて高回転をし、連結軸17が逆回転をして、相対回転速度が過大になる場合があるためで、第4構成要素の連結軸18と速度線図の隣に位置する第3構成要素の出力カウンターギア5と一体のサイド部材が軸支すれば、相対回転速度が最も小さくなるよう配することができる。
第2遊星ギア列20の前方に配された第3クラッチC3は、入力軸3に溶着されたクラッチドラムと、プラネットキャリアP2のサイド部材に係止される摩擦部材(ドライブプレート)と、クラッチドラムに係止される摩擦部材(ドリブンプレート)と、リティニングリングで軸方向が規制されるエンドプレートと、摩擦部材を押圧するピストンと、ピストンの作動室の遠心油圧をキャンセルするキャンセラープレートと、ピストンを開放状態に戻すリターンスプリングからなっており、入力軸3と、第2構成要素となる第1遊星ギア列10のリングギアR1と連結した第2遊星ギア列20のプラネットキャリアP2との締結及び開放をつかさどる。なお、摩擦部材は、第2遊星ギア列20の外周に配され、クラッチドラムとピストンとの間、及びピストンとキャンセラープレートとの間の作動室には、保持部材2bのボス部外周から作動油が供給され、油圧サーボを形成する。
第1遊星ギア列10の歯数比は(ZR1/ZS1=2.800)、第2遊星ギア列20の歯数比は(ZR2/ZS2=2.200)で、第1遊星ギア列10のリングギアR1の方が、第2遊星ギア列20のリングギアR2よりかなり大きくなる。この小さい第2遊星ギア列20のリングギアR2の外周に第3クラッチC3の摩擦部材を配すれば、軸方向が短くできる。なお、主変速装置で最大外径となる第3クラッチC3のクラッチドラムの外径と、第1遊星ギア列10のリングギアR1の外径は、ほぼ同じで、この大きさでは、出力軸に配された大歯車8とは干渉しない。
<C−タイプ9AT(F−2、M−1)FR>
図14は、図9のFRの模式図を、トルクコンバータを発進デバイスとして乗用車用にコンセプト設計した構造図である。乗用車のFR用変速装置では、軸方向の長さ規制が厳しくないが、軽量化が必要なため、MAIN GEAR(主変速装置)とFRONT GEAR(前置変速装置)には、負荷荷重が小さくなり遊星ギアの噛み合い効率もよい「M−1」と「F−1」及び「F−2」が適切で、ここではギアレンジが大きくなる「F−2」を図14の実施例とした。主変速装置と前置変速装置の配置は、FRでは軸方向の長さが規制されないため、図8にFRとして記載した出力軸を内周からだす形態も可能となるが、主変速装置と前置変速装置を隔壁100で分離して隔壁100に主変速装置の第3ブレーキB3の油圧サーボを配する構造の方がシンプルになる。また、FRといえども、体積が増えると重量増につながるため、ある程度のコンパクトさは必要となる。そこで、前置変速装置を、各摩擦部材が遊星ギア列の外周に配される構造とし、主変速装置を、第3クラッチC3の摩擦部材が遊星ギア列の外周に配される構造とした。図14では、発進デバイスとしてトルクコンバータ200aを用いているが、当然、トルクコンバータに代えて後述する流体継手200bを用いることや、回転変動吸収ダンパ200cを用いて第1、第2ブレーキB1、B2を発進デバイスとすることができる。
図14において、変速機ケース1dは一体形状をしており、前部でトルクコンバータ200aを保持し、後部で出力軸3cを軸受け4i、4hで軸支する。変速機ケース1dの前部には、乾式となるトルクコンバータ側と湿式となる変速機側を隔てる保持部材2a、2bがボルトで一体として締結され、中央部には、主変速装置と前置変速装置を隔てる隔壁100が一体としてスプライン締結される。変速機の左前方には、図示しない原動機が配され、トルクコンバータ200aを介して動力が変速機に入力される。トルクコンバータ200aの出力部に連結された入力軸3aは、保持部材2a、2bに配された軸受け4a、4bで軸支され、保持部材2a、2bに隣接した第1及び第2クラッチC1、C2の共有されたクラッチドラムが溶着される。変速機の回転中心部には、入力軸3aとスプライン連結した入力軸3bが配され、後端で出力軸3cに軸受け4dで軸支されるとともに、第3クラッチC3のクラッチドラムが溶着される。ここで、入力軸3a、3bは、変速機の前端で第1及び第2クラッチC1、C2と連結し、後端で第3クラッチC3と連結したことになる。入力軸3bの外周には軸受け4cで軸支された連結軸17が配される。連結軸17は、隔壁100の内周を通して前置変速装置の出力構成要素と主変速装置の第1構成要素を連結する。
隔壁100の前方に配されたFRONT GEAR(前置変速装置)部は、隔壁100から軸方向順に、ワンウェイクラッチOWCと、第1ブレーキB1と、第4遊星ギア列40(S4、P4、R4)と、第3遊星ギア列30(S3、P3、R3)と、第2クラッチC2と、第1クラッチC1とが配される。第3遊星ギア列30と第4遊星ギア列40は、シンプル遊星ギアであり、第3遊星ギア列30のサンギアS3が第4遊星ギア列40のサンギアS4と一体成形され、第3遊星ギア列30のリングギアR3が、第4遊星ギア列40のプラネットキャリアP4のサイド部材に溶着され、プラネットキャリアP3が、第3遊星ギア列30の外周部に延材され第2クラッチC2のクラッチハブになるとともに、第1及び第2クラッチC1、C2の外周まで延材されて曲げられた第2ブレーB2のブレーキハブがスプライン連結される。第3遊星ギア列30のリングギアR3に溶着されたプラネットキャリアP4のサイド部材が、第4遊星ギア列40の内周部にL字状に曲げられて連結軸17とスプライン連結され、リングギアR4は、外周にスプライン加工がなされ軸方向がニードルベアリングで規制されて第1ブレーキB1の摩擦部材を係止し、サンギアSと一体成形されるサンギアS4が、入力軸3に軸支され第3遊星ギア列30の前部に延材される第1クラッチC1のクラッチハブと内周部でスプライン連結される。
第1及び第2クラッチC1、C2は、摩擦部材を軸方向に並べて第3遊星ギア列30の外周に配した、第2クラッチC2がプルタイプで第1クラッチC1がプッシュタイプとなる2連クラッチであり、図11、図12、及び図13の第1及び第2クラッチC1、C2と同じ構造である。ここで、第1クラッチC1は、入力軸3aの回転を第3及び第4遊星ギア列30、40のサンギアS3、S4に入力可能とし、第2クラッチC2は、入力軸3aの回転を第3遊星ギア列30のプラネットキャリアP3に入力可能とする。第1及び第2クラッチC1、C2の外周には、第2ブレーキB2が配され、前端の保持部材2aに油圧サーボが配され変速機ケース1dの内周スプラインに摩擦部材が係止される。ここで、第2ブレーキB2は、第3遊星ギア列30のプラネットキャリアP3を制動可能にする。隔壁100は、断面がT字型形状で、内周が連結軸17近くまで延材され、内周の前方が逆L字型に成形され、逆L字の外周にワンウェイクラッチOWCのアウターレースがスプライン連結され、後述する第1及び第2遊星ギア列10、20の一体成形されるサンギアS1、S2の延材部をインナーレースとしてアウターレースとの間にワンウェイクラッチOWCが配される。隔壁100のT字型形状の前方となる外周のドラム部が、第4遊星ギア列40の外周に延材され変速機ケース1dと一体になるよう変速機ケース1dの内周にスプライン連結され、外周のドラム部に第1ブレーキB1の摩擦部材が係止され、ワンウェイクラッチOWCの外周部の隔壁100に第1ブレーキB1の油圧サーボが配される。ここで、第1ブレーキB1は、第4遊星ギア列40のリングギアR4を制動可能にし、ワンウェイクラッチOWCは、第1及び第2遊星ギア列10、20のサンギアS1、S2を入力軸の回転と同方向にしか回転させない役目を担う。図14の第1及び第2ブレーキB1、B2の摩擦部材は、「請求項4」に記載しているように、同一径中央円周部に複数の貫通穴を設け、摩擦部材の端部側面から貫通穴に冷却油を供給するような構造になっている。特に、第4遊星ギア列40の外周の広い空間に摩擦部材を配することで、第1ブレーキB1のすべりによる発熱に対応できる冷却構造を実現したものである。なお、第2ブレーキB2も摩擦部材を配する空間が広くとれ、同一径中央円周部に複数の貫通穴を設け、摩擦部材の端部側面から貫通穴に冷却油を供給するような構造がとれる。なお、ワンウェイクラッチOWCは補助的な役目であり、特に装備する必要はない。
隔壁100の後方に配されたMAIN GEAR(主変速装置)部は、隔壁100から軸方向順に、第3ブレーキB3と、第1遊星ギア列10(S1、P1、R1)と、第2遊星ギア列20(S2、P2、R2)と、第3クラッチC3と、出力軸3cが配される。第1遊星ギア列10と第2遊星ギア列20は、シンプル遊星ギアであり、第4構成要素となる1遊星ギア列10のサンギアS1が第2遊星ギア列20のサンギアS2と一体成形され、第1遊星ギア列10のサンギアS1の前方の隔壁100側には第3ブレーキB3の摩擦部材を係止するハブ(連結軸)18がスプライン連結される。第3構成要素となる第1遊星ギア列10のプラネットキャリアP1は、隔壁100側のサイド部材が外周方向に延材され、第1遊星ギア列10と第2遊星ギア列20の外周部を通る出力軸3cのパーキングギア6aの直下に溶着された出力ドラム19とスプライン連結する。第1構成要素となる第2遊星ギア列20のリングギアR2は、後方で連結軸17とスプライン連結し、第2構成要素となる第2遊星ギア列20のプラネットキャリアP2は、前方のサイド部材が第2遊星ギア列の外周に延材され、後方に延材される第1遊星ギア列10のリングギアR1とスプライン連結するとともに、第3クラッチC3の摩擦部材を係止する。
T字型形状の隔壁100は、後部外周のドラムに第3ブレーキB3の摩擦部材を係止し、隔壁100の内周から外周にかけ第3ブレーキB3の油圧サーボが配される。ここで、第3ブレーキB3は、第1及び第2遊星ギア列10,20の連結されたサンギアS1、S2を制動可能にする。なお、第3ブレーキB3はすべらす必要がないため、摩擦部材の締結面圧を上げる仕様として隔壁100の内周から外周にかけ摩擦部材を押圧するピストンを配したので、受圧面積が大きくなり締結力が増し、摩擦部材の枚数や摩擦面積を減らしてコンパクトに配すことができるとともに、連れ周り損失を低減することができる。第3クラッチC3は、入力軸3bの後端に溶着されたドラムが第2遊星ギア列20の外周まで延材され摩擦部材を係止し、入力軸の回転を第1遊星ギア列10のリングギアR1に連結された第2遊星ギア列20のプラネットキャリアP2に入力可能とする。なお、第3クラッチC3の作動油は、変速機ケース1bの後部の出力軸3cを軸支する軸受け4iと4hの間に配されたスリーブ2dから、出力軸3cと入力軸3bに設けられた油穴を通って供給される。
<C−タイプ9AT(F−2、M−2)FR>
図15は、図6のFRの模式図を、トルクコンバータを発進デバイスとしてトラックやバス用にコンセプト設計した構造図である。トラックやバスのFR(RR)用変速装置では、原動機から伸びた剛性の高いベルハウジングに変速装置がぶら下がる形で搭載されるため、軸方向のコンパクトさと変速機ケースの剛性が要求される。当然、軽量化も必要なため、乗用車と同じくMAIN GEAR(主変速装置)とFRONT GEAR(前置変速装置)には、負荷荷重が小さくなり遊星ギアの噛み合い効率もよい「M−1」と「F−1」及び「F−2」が適切となるが、ここではMAIN GEAR(主変速装置)によりコンパクトとなる「M−2」を用い、FRONT GEAR(前置変速装置)にギアレンジが大きくなる図14と同じ「F−2」を用いた。なお、この組み合わせは、図12に示した乗用車用FFと同じであり、当然、乗用車用FRにも適切な組み合わせとなる。また、トラックやバスでは、リターダやクーラを変速装置に付けることが必要となるため、後部に流体式リターダやクーラが配置できるよう、変速機ケースにリアケースを取り付ける形態とした。構造的には乗用車用としてコンセプトした図14より、遊星ギアを2階建てにした分胴回りを太くするとともに隔壁100を変速機ケース1dと一体化してハウジングの剛性を上げ、ワンウェイクラッチOWCを外してブレーキB1をコンパクト設計にすることで、既存のトラックやバスの6ATと同等以下のコンパクトさを実現した。
図15において、ハウジングは変速機ケース1dとリアケース1eに2体化されており、変速機ケース1dの軸方向中央部に隔壁が設けられ、隔壁の前方にFRONT GEAR(前置変速装置)が配され、隔壁の後方にMAIN GEAR(主変速装置)が配される。これは、ブレーキやクラッチといった締結要素も含めて図14と同じ配置である。隔壁の前方には第1ブレーキB1の油圧サーボが配され、隔壁の後方には第3ブレーキB3の油圧サーボが配される。図14では、第1ブレーキB1のピストンにリターンスプリングを付けたが、変速機ケース1dの外周溝の摩擦部材の両端のエンドプレートとドリブンプレートの間にリターンスプリングを配したので、リターンスプリング分軸方向が短くなる。隔壁前方のFRONT GEAR(装置前置変速)の構造は、図14と全く同じのため、説明を省略する。変速機の回転中心部には、入力軸3aとスプライン連結した入力軸3bが配され、後端で出力軸3cに軸受け4dで軸支されるとともに、第3クラッチC3のクラッチドラムが溶着される。ここで、入力軸3a、3bは、変速機の前端で第1及び第2クラッチC1、C2と連結し、後端で第3クラッチC3と連結したことになる。入力軸3bの外周には軸受け4cで軸支された連結軸17が配される。連結軸17は、隔壁の内周を通して前置変速装置の出力構成要素と主変速装置の第1構成要素を連結する。
隔壁の後方には、隔壁から軸方向順に、第3ブレーキB3と、第1遊星ギア列10(S1、P1、R1)と、第1遊星ギア列10の外周部に2階建てとなる第2遊星ギア列20(S2、P2、R2)と、第3クラッチC3と、出力軸3cが配される。第1遊星ギア列10と第2遊星ギア列20は、シンプル遊星ギアであり、第4構成要素となる1遊星ギア列10のサンギアS1の円筒部がFRONT GEAR(装置前置変速)まで延材され、ニードルローラベアリングで連結軸17の外周に軸支され、前方で第3ブレーキB3の摩擦部材を係止するハブ(連結軸)18がスプライン連結される。第3構成要素となる第2遊星ギア列20のリングギアR2は後方に延材され、出力軸3cのパーキングギア6aの直下に溶着された連結部材19とスプライン連結する。第1構成要素となる第1遊星ギア列10のリングギアRと第2遊星ギア列20のサンギアS2は、一体成形され、後方で連結軸17とスプライン連結し、第2構成要素となる第1及び第2遊星ギア列10、20のプラネットキャリアP1,P2は、前方のサイド部材が一体となり内周部が前方に延材されてサンギアS1の円筒部外周にニードルベアリングで軸支され、第2遊星ギア列20の後方のサイド部材が後方に延材されて第3クラッチC3の摩擦部材を係止する。
隔壁後部の変速機ケース1dのスプライン部には第3ブレーキB3の摩擦部材を係止され、第1遊星ギア列10の連結されたサンギアS1を制動可能にする。なお、第3ブレーキB3はすべらす必要がないため、摩擦部材の締結面圧を上げる仕様として隔壁の内周から外周にかけ摩擦部材を押圧するピストンを配したので、受圧面積が大きくなり締結力が増し、摩擦部材の枚数や摩擦面積を減らしてコンパクトに配すことができるとともに、連れ周り損失を低減することができる。第3クラッチC3は、入力軸3bの後端に溶着されたドラムが第2遊星ギア列20の外周まで延材され摩擦部材を係止し、入力軸の回転を第1及び第2遊星ギア列20のプラネットキャリアP1,P2に入力可能とする。なお、第3クラッチC3の作動油は、変速機ケース1bの後部の出力軸3cを軸支する軸受け4iと4hの間に配されたスリーブ2fから、出力軸3cと入力軸3bに設けられた油穴を通って供給される。
<C−タイプ9AT(F−2、M−2)MG FR>
図16は、図15と変速装置部を同一にし、発進デバイスとして後端にモータジェネレータを配したトラックやバス用にコンセプト設計した構造図である。乗用車と異なり、トラックやバスの変速装置は、後部にスペースがあるため補 機の搭載が可能となる。当然、トルクコンバータは必要としなく、原動機直結となる回転吸収ダンパ200cを用いた。欧米では多くの場合、トラックやバスのATには流体式リターダがクーラとともに搭載される。当然、図16の後部に流体式リターダを搭載することも可能となるが、発進デバイスとリターダの両特性を兼ね備えたモータジェネレータの方が、より燃費が向上する。
図16において、ハウジングは変速機ケース1dとリアケース1eに2体化されており、変速装置部は図15と同一のため説明を省略する。図15のトルクコンバータに変えて回転吸収ダンパ200cとして高性能な油圧ダンパ(ハイドロダンパ)を用いた。リアケース1eには玉軸受け4i、4hで出力軸3cが軸支され出力フランジ3dがスプライン連結される。出力フランジ3dの外周はリアケース1eに沿って前方に延材され外周にモータジェネレータ300のロータが装着される。リアケース1eの外周部には後方にフランジが設けられ、モータケース1fがボルトで取り付けられる。モータケース1fにはモータジェネレータ300のステータが装着され、ロータの駆動と制動を行う。
<A−タイプ9AT(F−1、M−1)>
図17は、本発明のもう1種の変速形態であるAタイプ9ATに関する実施例を示す。原動機と入力軸との間に回転変動吸収ダンパを配し、発進デバイスは第1及び第2ブレーキB1、B2としてもよいが、原動機をアシストするモータジェネレータ(MG)とし、所謂モータアシスト型ハイブリッド車両(HEV)の変速装置とした。当然、Cタイプ9ATにも発進デバイスとして図17のようなモータジェネレータ(MG)の配置が可能となる。FRONT GEAR(前置変速機構)の「F−1」とMAIN GEAR(主変速機構)の「M−1」の、両方ともシンプソン遊星ギアを使った組み合わせは、図8のCタイプ9ATと同じである。FRONT GEAR(前置変速機構)の「F−1」は、段落「0063」で説明したように、第3及び第4遊星ギア列30、40のギア巾が小さくでき、強度的に有利な組み合わせとなる。FRONT GEAR(前置変速機構)とMAIN GEAR(主変速機構)の組み合わせが同じとなる図8と変速比を比較すると、Cタイプ9ATである図8が、前進1速段の4.351から前進9速段の0.529で、ギアレンジが8.22となり、Aタイプ9ATである図17が、前進1速段の5.179から前進9速段の0.591で、ギアレンジが8.76となり、ギア比の連なりはAタイプ9ATが前進2速段と前進3速段の間でクロスになるが、高速段ではAタイプ9ATの方がよく、全体的には若干Aタイプ9ATの方が勝っている。遊星ギアの噛み合い効率を比較すると、Aタイプ9ATである図17が、入力軸の逆回転を用いる前進1速段と前進3速段でCタイプ9ATである図8より悪いが、その他の前進段では、Aタイプ9ATが勝っている。しかし、各部位の配置構造を比較すると、Aタイプ9ATである図17は、入力軸の回転がMAIN GEAR(主変速機構)の2構成要素に入力する第2及び第3クラッチC2、C3の配置が難しく、図8のCタイプ9ATのようにコンパクトにはならない。また第3ブレーキB3の容量が前進1速段と後進段で入力軸トルクの7倍程度となり、図8のCタイプ9ATの前進1速段の2.147倍、後進段の1.803倍と比べ、3倍以上の容量が必要となる。但し、図8のCタイプ9AT同様、減速した動力の100%が第1構成要素に入力する前進1速段と後進段で、リングギア入力となるため遊星ギアが負荷する荷重が小さくなり、強度的に有利となる。
図17のFFとFRの模式図において、FRONT GEAR(前置変速機構)の配置は、FFでは変速装置の後端部で、FRでは前端部で、図8のCタイプ9ATと同じ配置となる。但し、FRONT GEAR(前置変速機構)には、入力軸の回転は構成要素Aの1箇所となるので、構成要素A、Bの2箇所となるCタイプ9ATより第2クラッチC2の配置がないのでコンパクトになる。FFの模式図では、出力カウンターギアを軸支する隔壁の前方に第2及び第3クラッチC2、C3と、出力カウンターギアが配され、隔壁の後方に第1、第2、第3、及び第4遊星ギア列10、20、30、40が順に並べて配され、第1遊星ギア列10の外周部に第3ブレーキB3の摩擦部材が配され、第3、及び第4遊星ギア列30、40の外周部に第1及び第2ブレーキB1、B2と第1クラッチC1の摩擦部材が配される。FRの模式図では、FFとは逆に、変速装置の後方から第1、第2、第3、及び第4遊星ギア列10、20、30、40が順に並べて配され、第2及び第3クラッチC2、C3が、第1及び第2遊星ギア列10、20と第3、及び第4遊星ギア列30、40の間に配される。
<A−タイプ9AT(F−1、M−4)>
図18は、図17のFRONT GEAR(前置変速機構)の「F−1」とMAIN GEAR(主変速機構)の「M−1」の、両方ともシンプソン遊星ギアを使った組み合わせの、MAIN GEAR(主変速機構)のみを「M−1」から「M−4」のラビニョー遊星ギアに変えたもので、Aタイプ9ATで、変速比がよく、最もコンパクトに配置できる組み合わせである。但し、ラビニョー遊星ギアを用いるため遊星ギアの噛み合い効率は、前進4速段以下の前進段で悪くなる。それでも、既存の図23に記載したBタイプ TOYOTA 8ATよりよくなる。MAIN GEAR(主変速機構)にリングギアを出力する同じラビニョー遊星ギアを用いた図23のBタイプ8ATと比較すると、Bタイプ8ATの変速比が、前進1速段の4.596から前進8速段の0.685でギアレンジが6.71となるのに対し、図16のAタイプ9ATが、前進1速段の4.900から前進9速段の0.610でギアレンジが8.03となり、Aタイプ9ATの方が大きく取れる。ギア比の連なりもAタイプ9ATの方がよく、変速比に関しては相当に勝っているといえる。但し、Bタイプ TOYOTA 8ATは、FRONT GEAR(前置変速機構)がダブル遊星ギアながら遊星ギアが1個で済み、シンプルにできる利点がある。Bタイプ8ATでは、FRONT GEAR(前置変速機構)で減速された大きなトルクが径の小さなサンギア(S2)に入力するが、Aタイプ9ATでは径の大きなサンギアS2に入力し、径の小さなサンギアS1には、入力軸のトルクしか入力しない。しかも、Bタイプ8ATでは、前進1速段から前進5速段まで径の小さなサンギア(S2)に動力が主導的に加わるため、Aタイプ9ATの前進1速段と後進段でしか主導的に負荷が加わらない径の大きなサンギアS2は、負荷頻度においても強度的に有利で、入力軸のトルクしか主導的に入力しない径の小さなサンギアS1と合わせてAタイプ9ATのラビニョー遊星ギアの方が、Bタイプ8ATと比較し、強度的に相当有利となる。
図18のFFとFRの模式図において、FRONT GEAR(前置変速機構)はMAIN GEAR(主変速機構)の前方に配され、クラッチ及びブレーキの配置もFF、FRともにほぼ同じとなる。FFの模式図では、出力カウンターギアを軸支する隔壁の前方に、FRONT GEAR(前置変速機構)の第3遊星ギア列30と第4遊星ギア列40及び第1クラッチC1が順に配され、第1クラッチC1と第1及び第2ブレーキB1、B2の摩擦部材が第3及び第4遊星ギア列30、40の外周に配され、隔壁の後方に、出力カウンターギアとラビニョー遊星ギアと第2及び第3クラッチC2、C3が順に配され、ラビニョー遊星ギアの外周に第3ブレーキB3と第3クラッチC3の摩擦部材が配される。FRの模式図では、ラビニョー遊星ギアの出力となるリングギアRから、第2及び第3クラッチC2、C3の外周を通って変速装置の後部に出力される形態がFFと異なるだけで、その他はFFと同じ構造配置となる。ここで、図17との違いは、第3クラッチC3の摩擦部材をMAIN GEAR(主変速機構)の遊星ギア列の外周に配し、ラビニョー遊星ギアとともにコンパクトにしたことである。但し、図17のMAIN GEAR(主変速機構)にシンプソン遊星ギアを用いた構造と異なり、径の大きなサンギアS2に入力することでBタイプ8ATよりはラビニョー遊星ギアの負荷を小さくしたが、径の大きなリングギアに入力するシンプソン遊星ギアほど負荷を小さくできないため、ギアレンジを図17の8.76から8.03と小さくし負荷を軽減した。
<A−タイプ9AT(F−3、M−3)>
図19は、FRONT GEAR(前置変速機構)の「F−3」とMAIN GEAR(主変速機構)の「M−3」の、両方とも互いのリングギアとプラネットキャリアを連結した4ATに多く実用化されている4個の構成要素で、各変速段で動力が通過するギア数が少なく、図17及び図18のAタイプ9ATより遊星ギアの噛み合い効率もよく、無理のない配置ができる。図17及び図18のような強度的な有利性はないが、変速比の設定に自由度が高く、図19は、前進1速段の5.000から前進9速段の0.600で、ギアレンジが8.33とし、ギア比の連なりも悪くはなく、理想に近い変速比がとれる。図19の2種のFRの模式図は、左図が通常の形態で、入力軸の回転を、第2クラッチC2を介してMAIN GEAR(主変速機構)の第4構成要素であるサンギアS1に入力したもので、右図は、入力軸を直接MAIN GEAR(主変速機構)の第4構成要素であるサンギアS1に入力し、第2遊星ギア列20のプラネットキャリアP2と第1遊星ギア列10のリングギアR1の間にドグクラッチとなる第4クラッチC4を配する構造とした。これは、図17及び図18の速度線図に記載したように、MAIN GEAR(主変速機構)の第4構成要素が増速段で高回転となるのを防ぐためである。MAIN GEAR(主変速機構)の前進1速段を除く前進の減速段では、第1遊星ギア列10と第2遊星ギア列20は互いのプラネットキャリアとリングギアが連結して両方の遊星ギア列に動力が負荷されるが、前進1速段と後進段、及び入力軸の直結段と増速段では、MAIN GEAR(主変速機構)の第1、第2、及び第3構成要素が、第2遊星ギア列20のサンギアS2、プラネットキャリアP2、リングギアR2となるため、第1遊星ギア列10には動力が負荷されない。第1及び第2遊星ギア列10,20が連結状態では、図17と図18の速度線図に記載したように、MAIN GEAR(主変速機構)の第4構成要素が増速段で高回転となる。そこで、MAIN GEAR(主変速機構)の第4構成要素を入力軸に直結し、第2遊星ギア列20のプラネットキャリアP2と第1遊星ギア列10のリングギアR1の間にドグクラッチとなる第4クラッチC4を配し、直結段及び増速段で第4クラッチC4を開放し連結を解くと、速度線図の点線部に示すように、第1遊星ギア列10が、第2遊星ギア列20と別の速度線図を形成し、高回転化を防ぐことができる。なお、第4クラッチC4をドグクラッチとしたのは、この連結力が最大入力軸トルクの7倍と大きくなるためで、摩擦部材による締結では、スペース的に困難となる。ドグクラッチは回転が同期しなければ係脱が困難であり、制御性が課題となる。「請求項3」と「請求項6」は、この構造に関して請求したものである。
<A−タイプ9AT(F−1、M−4)FF>
図20は、図18の模式図を原動機からの入力動力を300Nmとしてコンセプト設計した構造図であり、軸方向長さが380mmとなる。発進デバイスを流体継手200bにしたもので、A及びCタイプ9ATでは、トルクコンバータ200aを用いなくても、ギアレンジが大きいため、十分牽引性能が確保できる。なお、流体継手200bは、「背景技術」の段落「0018」で説明したように、本願出願人の特開2008−196660による、独立した油圧室を備えるにもかかわらず、外部からの油通路が2通路で済む、コンパクトなロックアップクラッチを備えた流体継手とした。流体継手は、羽根車の羽角度を通常のトルクコンバータとは逆に傾けると、とてつもなく大きな容量を得ることができるので、流体継手200bの容量を上げ、第1及び第2ブレーキB1、B2の摩擦部材をすべらせて発進に用い、燃費の向上を可能とすることもできる。
図20において、図の左側前方の図示しない原動機から流体伝導装置である流体継手200bに動力が伝達され、変速装置の入力軸3に導かれる。流体継手200bはインペラがチャージングポンプを駆動し、タービンが入力軸3に連結される。変速装置全体を収めるハウジングは、前部のフロントケース1aと変速機ケース1b及びリアケース1cからなり、並行に配された中継軸7及び出力軸を含んだディファレンシャル装置9は、Cタイプ9ATの図11と同じとなるので、これらの説明を省略する。
入力軸3は、前部の一端が保持部材2a、2b、2cに配された軸受け4aで、後部の一端がリアケース1cに配された軸受け4bで軸支される。変速機ケース1bの軸方向中央部には変速機ケース1bと一体となる隔壁が、内周部を変速機後方に突き出たL字型の円筒形状で、内周円筒部の外周にアンギュラ軸受け4eが背面合わせでネジにより固定され、出力カウンターギア5を軸支する。隔壁の前方には前置変速装置が配され、隔壁から軸方向順に、第3遊星ギア列30と、第4遊星ギア列40と、第1クラッチC1とが配され、第3遊星ギア列30の外周部に第1ブレーキB1と第2ブレーキB2が配される。隔壁の後方には主変速装置が配され、隔壁から軸方向順に、ラビニョー遊星ギアと、第3クラッチC3と第2クラッチC2が配され、ラビニョー遊星ギアの外周部に第3ブレーキB3が配される。
第3遊星ギア列30の遊星ギアは、サンギアS3とリングギアR3と噛み合い、プラネットキャリアP3に軸支される。リンギギアR3は、隔壁側で逆L字型の連結部材により第3遊星ギア列30の内周部内側で入力軸3に軸支され、プラネットキャリアP3の第4遊星ギア列40側のサイド部材は、リンギギアR3の外周を回り、隔壁の内周部を通って延材された連結軸17に連結し、サンギアS3は、 第4遊星ギア列40のサンギアS4と一体成形される。
第4遊星ギア列40の遊星ギアは、サンギアS4とリングギアR4と噛み合い、プラネットキャリアP4に軸支される。リングギアR4は、軸方向がニードルベアリングで規制されるとともに外周にスプライン加工がなされて第1クラッチC1のクラッチハブとなり、プラネットキャリアP4の隔壁と反対側のサイド部材は、L字型をして第4遊星ギア列40の内周部内側でリンギギアR3に連結した逆L字型の連結部材にスプライン連結し、もう一方のサイド部材は、第3遊星ギア列30の外周まで延材されて曲げられ、第2ブレーキB2のブレーキハブとなる。サンギアS3と一体となるサンギアS4は、プラネットキャリアP4のサイド部材に軸支されるとともに、歯部に第2ブレーキB2の内周まで延材されて曲げられた第1ブレーキB1のブレーキハブがスプライン連結される。
第1クラッチC1は、入力軸3に溶着したクラッチドラムと、クラッチドラムの内周スプラインの端にリティニングリングで固定されたエンドプレートと、エンドプレートの前方でクラッチドラムの内周スプラインに係止される摩擦部材(ドリブンプレート)と、リングギアR4の外周スプラインに係止される摩擦部材(ドライブプレート)と、摩擦部材を押圧するピストンと、ピストンをクラッチドラムに戻すリターンスプリングの支点となるキャンセラプレートとから成っている。第1クラッチC1のクラッチドラムは、フロントケース1aに固定された保持部材2a、2bの内周ボス部外周から作動油が供給され、入力軸3とリングギアR4の締結及び開放をつかさどる。第4遊星ギア列40は、リングギアR4とサンギアS4の歯数比が1.802と小さいので、第4遊星ギア列40の外周に第1クラッチC1の摩擦部材を配することができ、軸方向をコンパクトにすることができる。
第1ブレーキB1は、隔壁100の前方外周部に形成された作動油圧室に配されたピストンと、変速機ケース1bの外周部にリティニングリングで固定されたスプリングホルダーとピストンとの間に配されたリターンスプリングと、 変速機ケース1bの内周に形成されたスプラインに係止される摩擦部材(ドリブンプレート)、及び変速機ケース1bの外周部に軸方向がリティニングリングで規制されるエンドプレートと、第3及び第4遊星ギア30、40の一体となるサンギアS3、S4にスプライン連結されたブレーキハブに係止される摩擦部材(ドライブプレート)とからなり、サンギアS3、S4の制動及び開放をつかさどる。第1ブレーキB1の部位は、全て第3遊星ギア列30の外周部に配される。
第2ブレーキB2は、フロントケース1aに固定された保持部材2aに形成された作動油圧室に配されたピストンと、円筒状ドラムにリティニングリングで固定されたスプリングホルダーとピストンとの間に配されたリターンスプリングと、 変速機ケース1bの内周に形成されたスプラインに係止される摩擦部材(ドリブンプレート)、及びエンドプレートと、第3遊星ギア列30の外周まで延材されて曲げられた第4遊星ギア40のプラネットキャリアP4のサイド部材であるブレーキハブに係止される摩擦部材(ドライブプレート)とからなり、プラネットキャリアP4とリングギアR3の制動及び開放をつかさどる。ここで、第2ブレーキB2は、第1ブレーキB1とエンドプレートを共有して第1ブレーキB1と対峙して配され、前方のフロントケース1aに固定された保持部材2aに配されるピストンは、中継軸7のピニオンギア(小歯車)と噛み合う大歯車8との干渉を避けるため一部を切り欠いた形状となる。
第1ブレーキB1と第2ブレーキB2は、発進デバイスとしての構造を表したものである。第2ブレーキB2のトルク容量は、入力軸のトルクを1として、前進1速で3.589となり、第1ブレーキB1のトルク容量は、後進(Rev)で1.083となる。Cタイプ9ATとは、第2ブレーキB2のトルク容量が少し高くなるだけである。Cタイプ9ATと同様に、摩擦部材の摩擦部の中央同一径部に複数の貫通長穴を設け、摩擦部材がすべっている間中、エンドプレートを通して変速機ケース1bから冷却油を貫通穴に流し込み、確実に冷却できる構造とした。詳細は、図22に記載している。前述したように、トルクコンバータ200aや流体継手200bの容量を上げて、第1及び第2ブレーキB1、B2の摩擦部材をすべらせて発進に用い、燃費の向上を可能としたためである。
主変速機構となるラビニョー遊星ギアは、隔壁に軸支された出力カウンターギア5の後方に配され、プラネットキャリアPにはロングピニオンギアとショートピニオンギアが噛み合って配され、ロングピニオンギアと噛み合うサンギアS2とリングギアRが、出力カウンターギア5側に配され、ショートピニオンギアが噛み合うサンギアS1がサンギアS2の後方に配される。当然、サンギアS2の方がサンギアS1より径が大きくなり、サンギアS2は、隔壁の内周を通って前置変速装置と連結する入力軸3にブシュ4cで軸支される連結軸17とスプライン連結し、サンギアS1には、入力軸3の回転を入力する第2クラッチC2のクラッチハブが溶着される。また、プラネットキャリアPは、隔壁100側のサイド部材が隔壁100の内周に延材されて連結軸17にブシュ4mで軸支されるとともに、もう一方のサイド部材がラビニョー遊星ギアの外周に延材され、第3クラッチC3のクラッチハブと第3ブレーキB3のブレーキハブとなる。リングギアRは、出力カウンターギア5と連結部材でスプライン連結される。
変速機ケース1b後部のリアケース1cには、第3クラッチC3と第2クラッチC2が、クラッチドラムが共有された2連クラッチとして配される。第2、第3クラッチC2、C3は、共有したクラッチドラムと、クラッチドラムの内周スプラインの軸方向中央にリティニングリングで固定されたエンドプレートと、エンドプレートの後方でクラッチドラムの内周スプラインに係止される第2クラッチC2の摩擦部材(ドリブンプレート)と、サンギアS1に溶着されたた第2クラッチC2のクラッチハブの外周スプラインに係止される摩擦部材(ドライブプレート)と、摩擦部材を押圧するピストンと、エンドプレートの前方でクラッチドラムの内周スプラインに係止される第3クラッチC3の摩擦部材(ドリブンプレート)と、プラネットキャリアPの外周スプラインを第3クラッチC3のクラッチハブとして係止される摩擦部材(ドライブプレート)と、摩擦部材をリティニングリングで固定されたL字型フランジで押圧するピストンと、スタッドピンでピストンに連結され、ピストンをクラッチドラムに戻すリターンスプリングの支点となるキャンセラプレートとから成っている。第2、第3クラッチC2、C3のクラッチドラムは、リアケース1cの内周ボス部外周から作動油が供給される入力軸3にスプライン連結されたクラッチハブに溶着され、第2クラッチC2のピストンと第3クラッチC3のピストンは、クラッチドラムを挟んで配され、第2クラッチC2は、プッシュタイプのピストンで入力軸3とサンギアS1の締結及び開放をつかさどり、第3クラッチC3は、プルタイプのピストンで入力軸3とプラネットキャリアPの締結及び開放をつかさどる。2連クラッチC2、C3は、クラッチドラムとリターンスプリングとキャンセラプレート及びエンドプレートを共有して軸方向にコンパクトに配することができるもので、本願出願人が特開2007−51651で提案したものである。
ラビニョー遊星ギアの外周部に配された第3ブレーキB3は、隔壁100に形成された作動油圧室に配されたピストンと、変速機ケース1bの外周部にリティニングリングで固定されたスプリングホルダーとピストンとの間に配されたリターンスプリングと、 変速機ケース1bの内周に形成されたスプラインに係止される摩擦部材(ドリブンプレート)、及び変速機ケース1bの内周部に軸方向がリティニングリングで規制されるエンドプレートと、プラネットキャリアPの外周スプラインを第3ブレーキB3のブレーキハブとして係止される摩擦部材(ドライブプレート)とからなり、プラネットキャリアPの制動及び開放をつかさどる。ここで、第3ブレーキB3のトルク容量はCタイプ9ATのように小さくはできず、入力軸トルクの7倍程度と大きな容量となる、そこで、ピストンの押し付け面積を、隔壁の内周ボス部から外周にかけて大きくとり、摩擦部材の枚数を増やした。なお、ピストンをリアケース1cに配することも可能である。
図20のAタイプ9ATでは、段落「0110」でBタイプ8ATと比較説明したように、Bタイプ8ATよりラビニョー遊星ギアが強度的に有利となり、ギア巾を短くできる。加えて、コンパクトな2連クラッチを用い、第2クラッチC2を除く2個のクラッチと3個のブレーキの摩擦部材を遊星ギア列の外周部に配したので、FFとして成立させることができる。なお、FFとして中継軸7のピニオンギア(小歯車)と噛み合う大歯車8と、第1及び第2ブレーキB1、B2の摩擦部材との干渉を考慮しなければならない。後述する図21でその位置関係を説明する。
図21は、FF用の変速装置を後部から見た各カウンターギアの噛み合いを示す図である。入力軸3と同軸の出力カウンターギア5は、中継軸7に連結されたカウンターギア6と噛み合い、中継軸7と一体のピニオンギアが出力軸を含んだディファレンシャル装置9のキャリアに連結された大歯車8と噛み合っている。図21において、図11及び図12の第2遊星歯車列20のリングギアR2と、図20の第1及び第2ブレーキB1、B2の摩擦部材が、図21の黒で塗りつぶしたところで干渉する。したがって、図11、図12、及び図20の断面図に示したように、出力カウンターギア5とカウンターギア6の噛み合う位置と、中継軸7と一体のピニオンギアと大歯車8の噛み合う位置の間に、リングギアR2または第1及び第2ブレーキB1、B2の摩擦部材を配すれば、これらのギアとの干渉を避けることができる。
図22は、本発明で用いる第1及び第2ブレーキB1、B2の摩擦部材の詳細を示したものである。 図22において、図の右方向にピストンが配され、図の左方向にエンドプレートがハウジングに規制され配置されている。摩擦部材となる複数のドリブンプレート52とドライブプレート51は交互に配され、ハウジングにドリブンプレート52とフロントプレート54が回転不能で軸方向移動可能な状態で配され、制動される部材のスプラインにドライブプレート51が回転不能で軸方向移動可能な状態で配される。図示しないピストンによりフロントプレート54が押圧され、ドライブプレート51が制動される。ドライブプレート51には芯金となる金属プレートの両面に0.5mm程度のペーパフェーシングが貼り付けられており、円周に深さ0.15mm程度の油溝Vと油溝Vから外周に繋がる油溝Wが形成され、油溝Vの位置の複数箇所に芯金とともに長孔Xが開けられている。同じく、ドリブンプレート52には、油溝Vとなる円周溝位置に複数の長孔Yが開けられている。第1及び第2ブレーキB1、B2を発進デバイスとして用いる場合、図示しないコントロールバルブから低圧の冷却油がハウジングを通ってエンドプレートに供給され、ドリブンプレート52の長孔Yとドライブプレート51の長孔Xを通り、ドライブプレート51の油溝Vと油溝Wを通り排出される。この間、ドリブンプレート52とドライブプレート51の摩擦面が、むらなく確実に冷却される。この構造は、高負荷状態では短時間しかすべらすことはできないが、発進デバイスとして必須となる車両のクリープが必要な低負荷状態で長時間すべらす場合の有効な手段となる。
1a フロントケース
1b 変速機ケース
1c、1e リアケース
2a、2b、2c 保持部材
3、3a、3b 入力軸
4a〜4m 軸受け
10、20、30、40 遊星ギア列
17、18 連結軸
100 隔壁
200a トルクコンバータ
200b 流体継手
200c 回転変動吸収ダンパ
300 モータジェネレータ
C1、C2、C3、C4 クラッチ
B1、B2、B3、B4 ブレーキ
本発明は、油圧クラッチ及びブレーキを用いて遊星ギアを制御する車両用自動変速機であるAT(Automatic Transmission)に関し、特に前進9速後進1速の多段変速装置に関する。
周知の如く、近年、地球環境問題のため自動車の省燃費の要求は強く、原動機の回転を低く押さえるため、乗用車用自動変速機は、従来の前進4速(4AT)から前進5、6速(5、6AT)の多段化が進められ、さらに、前進6速を超えたものも実用化されている。乗用車用手動変速機であるMT(Manual Transmission)は、通常、前進5速(5MT)であり、変速比は、前進の最低速段の変速比を最高速段の変速比で割ったギア巾が4〜5.5で、最低速段の次段へのステップ比が1.6〜1.9、最高速段の次段からのステップ比が1.2前後の設定となっている。一方、4ATでは、ギア巾が4前後で、最低速段の次段へのステップ比が1.8前後、最高速段の次段からのステップ比が1.4前後と、MTと比べワイドで牽引特性が劣っており、入力継手にトルク増幅作用のあるトルクコンバータを用いてMTとの差をカバーしている。しかしながら、トルクコンバータのトルク増幅作用はスリップ率に比例し、スリップ率の大きな低速段では効果があるが、スリップ率の小さな高速段では効果が少なく、牽引特性が劣化するばかりではなく、スリップによる効率悪化で燃費が悪くなる。そこで、ATにもMTと同じく前進5速(5AT)が必要となるが、MTほど各変速段を幅広く利用できないATでは、さらに変速段を増やす必要が生じる。
当然、変速段数を増やして、CVT(Continuously Variable Transmission)のような無段変速機に近づけ、トルクコンバータのような効率の悪い継手を用いず、原動機直結にすれば、燃費は向上する。近年、普及し始めたDCT(Dual Clutch automated mechanical Transmission)は、そのよい例であるが、変速準備可能な変速段数が1段しかないことや、カウンターギアとシンクロ装置の組み合わせでは、前輪駆動車における変速機の軸巾の制限のため変速段数の数が限られ、効率面では勝るが、ATより進化する余地が少ないといわざるを得ない。また、近年普及した金属ベルト式CVTは、10−15モードやJC08モードといった市街地での緩加速を主体とした走行モードでの燃費はよくなるが、金属ベルトの伝達効率が遊星ギアとは比較にならないほど悪く、通常の市街地走行では、4ATと燃費があまりかわらなくなるのが現実である。そればかりか、変速巾が高速側に振れ過ぎで、しかも変速巾に限度があり、トルクコンバータでカバーしなければならないのに加え、郊外や高速走行では、ロックアップしたATより燃費が悪くなるため、特にCVTが多く搭載されている前輪駆動のFF用自動変速機には、原動機直結で使用できる、変速段数を増やしたシンプルで効率のよい多段変速装置が必要となる。
一方、トラックやバスの自動変速機(AT)は、乗用車に先駆けて早くから多段化が進められてきたが、ATの用途として、発進停止が多く安全を重視するようなバスや特殊車両が多いため、一般的なATとしては6ATまでで、それ以上にはなっていない。特に、欧米では、シティバスの100%がATであり、後輪駆動のRR用自動変速機ため軸方向のコンパクトさが要求され、多段化による軸方向の伸びは制限される。加えて、市街地走行の牽引性能としては4ATで満足できることもあって、更なる多段化は進んでいない。しかしながら、省燃費の要求は強く、原動機の回転を低く抑えるため、インターシティバスや観光バス、及びトラックでは、6AT以上の多段化が必要であり、シティバスでも坂道走行や郊外走行では、多段化が要求される。また、これらの車両では、乗用車に先駆けて内燃機関と電動モータを併用するハイブリッド車両(HEV)が実用化されてきた経緯があり、HEVやフートブレーキ以外のブレーキであるリターダもATに要求される。
近年、実用化された5AT以上の多段変速装置の多くは、4個の構成要素からなる2個の遊星ギア列を備えた主変速機構と、主変速機構に入力軸の変速回転を入力する前置変速機構から成り立っている。その変速方式は、主変速機構の4個の構成要素の、2個の回転を規制することにより変速を行う形態で、2個の構成要素の回転規制は、前置変速機構と複数の締結要素で行っている。これに対し、複数の遊星ギア列の構成要素を固定せず、入力軸の回転を常時、遊星ギア列の構成要素に連結し、3列以上に配した遊星ギア列の構成要素の組み換えを行うことで変速を行う形態の多段変速装置も数多く提案され、一部実用化もされている。但し、組み換えを行うクラッチの容量が大きくなる場合や、クラッチの配置がコンパクトにならない場合が多いので、注意を要する。古くは、米国特許US3、385、134によるBorg Warnerの5ATがあり、近年では、米国特許US2002−183160A1(特開2003−35341)によるGMの6AT(SAE PAPER 2007−01−1095)が実用化された。
主変速機構と前置変速機構からなる多段自動変速機としては、3種の方式が実用化されており、1970年代にトラックやバス用に考案された特許文献1による6ATのAタイプと、1980年代に考案された特許文献2による6ATのBタイプと、1990年代に考案された特許文献3による5ATのCタイプがある。A、B、Cタイプのいずれも3個の遊星ギア列と5個の締結要素からなり、4ATと比べ遊星ギア列が1個増えただけで、クラッチの摩擦部材を遊星ギア列の外周に配することで、4ATと同じ軸方向長さが確保できる優れものである。また、A、B、Cタイプのいずれも前進の減速段において、主変速機構の4個の構成要素の主動側となる構成要素に入力軸の回転、あるいは、入力軸の減速回転を選択的に入力する同じ方式であるが、入力する回転に違いがあり、それにより特性に異なりが生じる。前進の減速段において、主変速機構の主動側となる構成要素に入力する回転を、Aタイプは入力軸の回転とし、Bタイプは、入力軸の減速回転とし、Cタイプは、入力軸の回転、及び減速回転としたものである。なお、減速回転は、入力軸の回転を、前置変速機構を通して出力させている。
その主動側となる構成要素に入力する回転の違いにより、Aタイプ6ATでは、変速比が高速側に振れやすく、Bタイプ6ATは、変速段のステップ値には若干問題があるが、変速比が概ね適切に取れ、Cタイプ5ATは、変速段のステップ値も変速比も適切に取れる。その結果、Bタイプ6ATが一番多く実用化されており、SAE PAPER 2003−01−0596(ZF)、2004−01−0651(AISIN AW)、2004−01−0652(AISIN AW)、2006−01−0846(GM)、にその概要が記載されている。しかしながら、Bタイプ6ATは、前進の減速段全てにおいて、前置変速機構を通して出力される減速回転を用いるため、前置変速機構の動力通過損失が最も多くなり、Aタイプ6ATやCタイプ5ATより遊星ギアの噛み合い効率が悪くなるのに加え、減速された大きなトルクがクラッチを介して主変速機構に入力されるため、クラッチの容量や主変速機構の遊星ギアの容量を大きくしなければならない。さらに、Bタイプ6ATの主変速機構に用いることができる2個の遊星ギア列は限られ、ラビニョー遊星ギアが用いられているが、ラビニョー遊星ギアは効率が悪いうえに、強度が上げにくい難点がある。一方、Aタイプ6ATは、前進3速と5速段で、入力軸の減速回転を、受動側の構成要素に入力動力の20〜30%しか入力しない形態となり、減速回転を伝達するクラッチの容量も大きくする必要もなく、最も遊星ギアの噛み合い効率が良くなる。また、Cタイプ5ATは、減速回転を、前進段では1速段でしか主動側の構成要素に入力しないため、Aタイプ6ATより若干遊星ギアの噛み合い効率は悪くなるが、Bタイプ6ATには負けない効率が確保できる。なお、Cタイプ5ATでは、前進1速段で、減速回転を主動側の構成要素にブレーキを介して入力させるため、Bタイプ6ATのように減速回転を伝達するクラッチの容量を大きくする等の必要性はないが、主変速機構の主動側の構成要素には大きな減速トルクが入力される。そこで、Cタイプ5ATは、主変速機構にシンプソン遊星ギアを用い、リングギアを主動側の構成要素としているため、大きなトルクが入力されても、歯面荷重を小さくすることができるとともに、動力を2列の遊星ギアに分散することができ、Bタイプ6ATのような強度上の難点は生じない。しかし、これら3種の多段変速装置を総合的に比較すると、自動変速機では、前進の変速段数は6段以上必要であることが優先されるため、同じ数の構成で6段が達成できる、A、Bタイプ6ATの方が、Cタイプ5ATを一歩リードする。
このAタイプ6AT、Bタイプ6AT、Cタイプ5ATをベースとして、さらに、多段化したものが考案されている。実用化されたものとしては、特許文献4とSAE PAPER 2004−01−0649に記載された、BenzのCタイプ7AT(前進7速後進2速)と、特許文献5とSAE PAPER 2007−01−1101に記載された、ToyotaのBタイプ8AT(前進8速後進2速)である。Cタイプ7ATは、Cタイプ5ATに減速用遊星歯車を追加し、さらに大きな減速回転を、ブレーキによりシンプソン遊星ギアの主動側の構成要素となるリングギアに入力したもので、4個の遊星ギア列と6個の締結要素からなっている。また、Bタイプ8ATは、Bタイプ6ATにクラッチを追加し、入力軸の回転を、クラッチを介して主変速機構の受動側の構成要素に入力し、さらに大きな減速回転を、ラビニョー遊星ギアの主動側の構成要素となるサンギアに入力したもので、3個の遊星ギア列と6個の締結要素からなっている。一方、3列以上に配した遊星ギア列の構成要素の組み換えを行うことで変速を行う特殊な形態(Dタイプとする)の多段変速装置として、Aタイプ6ATに匹敵する遊星ギアの優れた噛み合い効率となる4個の遊星ギア列と5個の締結要素からなる8AT(前進8速後進1速)が、ZFから特許文献6で考案され実用化されている。いずれも、後輪駆動となる乗用車に用いられるFRの多段自動変速機である。これらの構造と速度線図、及び変速比を、本願の図23に「B−Type TOYOTA 8AT」として、図24に「C−Type BENZ 7AT」として、図25に「D−Type ZF 8AT」として提示した。いずれも、締結要素となるクラッチの一部が軸方向に並べられた遊星ギア列の間に配置されるため、軸方向が長くなるとともに油圧サーボへの油路構造が複雑となっている。軸方向に余裕がある乗用車用FR変速機としては大きな問題とはならないが、軸方向に余裕のない乗用車用FF変速機やバス用RR変速機としては問題が出る。なお、内燃機関に懸架されるトラック用FR変速機としても強度的に軸方向のコンパクトさが要求され、クラッチの一部が軸方向に並べられた遊星ギア列の間に配置される構造は不利となる。また、この図のGEAR EFFは、遊星ギアの噛み合い効率を表し、本願出願人が算出したものである。この効率計算は、動力が伝達される全ての歯車の動力通過量を求め、各歯車の噛み合い損失を算出し、合計したものである。燃費は変速比に左右されるが、多段化により悪化する遊星ギアの噛み合い効率を押さえることが、燃費向上の重要課題となるため、本出願では、提示した全ての多段自動変速機に、遊星ギアの噛み合い効率を表記した。
この実用化された7AT、8ATを比較すると、ギア比の連なりではCタイプ7AT>Bタイプ8AT>Dタイプ8AT、シンプルさではBタイプ8AT>Dタイプ8AT>Cタイプ7AT、遊星ギアの噛み合い効率ではDタイプ8AT>Cタイプ7AT>Bタイプ8ATの順によいと判別できる。但し、このように変速段数を増やすのなら、最低速段となる前進1速段の変速比を最高速段となる変速比で除したギアレンジを8以上に設定し、原動機の回転をさらに減少させて燃費をよくすることが望まれるが、Dタイプ8ATが7.3、Bタイプ8ATが6.7、Cタイプ7ATが6.0、と変速段数の割にギアレンジの値が小さく、変速比のステップ値も中速度段域でクロスになり過ぎており、多段変速装置にふさわしい変速比にはなっていない。これらの多段変速装置でギアレンジを大きくすることは、強度的なことも含めて構造上困難となっている。加えて、Bタイプ8ATでは、前進の1速〜4速段での噛み合い効率が悪くなり過ぎており、Dタイプ8ATでは、クラッチの配置位置が構造設計を複雑にし、Cタイプ7ATでは、部品点数が多い割に変速段数がとれない欠点があり、それぞれ、パワートレンの複雑さに見合った性能を取り得ていない状況にある。
このような状況下、Cタイプ7ATを進化させた多段変速機が、特許文献7と8でZFから提案された。これは、Bタイプ8ATより遊星ギア列が1個多いにもかかわらず変速段が1個少なくなる、Cタイプ7ATの欠点を解消したもので、Cタイプ7ATと同じ4個の遊星ギア列と6個の締結要素で、9AT(前進9速後進1速)を実現したものである。特許文献7と8における前置変速機構は、2個のシンプル遊星ギアの互いのプラネットキャリアを連結するとともに、一方の遊星ギアのサンギアと他方の遊星ギアのリングギアを連結して4個の構成要素を有し、入力軸の回転を2個のクラッチで一方の遊星ギアのサンギアと他方の遊星ギアのリングギアを連結した構成要素と他方の遊星ギアの独立したサンギアに入力し、他方の遊星ギアの独立したサンギアと一方の遊星ギアの独立したリングギアにブレーキを配し、連結した互いのプラネットキャリアを主変速機構の主動側の構成要素に連結するもので、この4個のクラッチ及びブレーキの締結要素の2個を選択的に締結することにより、入力軸の直結回転と逆回転、2種の減速回転、及び固定状態の5種を、連結した互いのプラネットキャリアにもたらすものである。このCタイプ9ATは、これまで実用化されたCタイプ7AT、Bタイプ8AT、Dタイプ8ATと比べ、構造的にギアレンジを大きくとることができ、Dタイプ8ATより遊星ギアの噛み合い効率は少し劣るものの、変速比の連なりもそれほど悪くはなく、優れた多段変速装置となり得るものである。
特許文献7と8では、前置変速機構の2個のシンプル遊星ギアを軸方向に2階建てにして配し、締結要素の全てを、軸方向が長くなる摩擦部材を有したアクチュエータとして用いることをせず、一部ドグクラッチとすることで、FF用に適用する形態をとっている。但し、前置変速機構の2個のシンプル遊星ギアを軸方向に2階建てにすることは、締結要素となる2個のクラッチと2個のブレーキの配置スペースがとりにくくなるため、必ずしもコンパクトになるわけではない。また、特許文献7では、主変速機構の2個のシンプル遊星ギアを軸方向に2階建てにして用いている。確かに、主変速機構の2個のシンプル遊星ギアを軸方向に2階建てにして用いているとコンパクトになるが、特許文献7における主変速機構の2個のシンプル遊星ギアの組み合わせでは、後述の段落「0013」で説明する本願の図26に提示したCタイプ9ATの速度線図のような位置関係がとれなく、第1構成要素が第3遊星歯車セット(P3)の太陽歯車(サンギア)と第4遊星歯車セット(P4)の内歯歯車(リングギア)となり、第2構成要素が第3遊星歯車セット(P3)のリブ(プラネットキャリア)となり、出力要素となる第3構成要素が第3遊星歯車セット(P3)の内歯歯車(リングギア)と第4遊星歯車セット(P4)のリブ(プラネットキャリア)となり、第4構成要素が第4遊星歯車セット(P4)の太陽歯車(サンギア)となるため、第3と第4の構成要素の間が、図24の1.5倍以上必要となり、Cタイプの特徴であるよい変速比がとれない。
また、Cタイプ9ATの利点は、発進段となる前進1速と後進段において締結するブレーキが、速度線図の端に位置する主変速機構の第4構成要素となるサンギアを制動するため、ブレーキのトルク容量がA、Bタイプ及びCタイプ7AT、さらには、Dタイプ8ATの一部のクラッチのトルク容量より小さく抑えることができることである。多段変速装置では、発進段となる前進1速と後進段の変速比を大きくとらなければ全体の変速比のバランスが悪くなるため、それに見合ったブレーキのトルク容量も大きくしなければならなくなる。遊星ギアは、サンギア、リングギア、遊星キャリアの順に負荷トルクが大きくなり、A、Bタイプ、Cタイプ7AT、及びDタイプ8ATでは、発進段となる前進1速段と後進段でリングギアまたは遊星キャリアを制動するため、制動トルク容量がどうしても大きくなってしまう。特許文献7では主変速機構の第4構成要素となるサンギアを固定し、それに匹敵するクラッチにドグクラッチを用い、特許文献8では主変速機構の第4構成要素となるサンギアのブレーキにドグクラッチを用いている。ドグクラッチは、ギアを噛み合わせるため、小さなスペースで大きな容量をとれるが、Cタイプ9ATでは、それほど大きな容量を必要としない。当然、ドグクラッチは、係脱時回転を同期させなければならないため、自動変速には不利となる。
そこで、本願出願人は、4個の構成要素からなる前置変速機構の遊星ギア列を、特許文献7と8と異ならせ、締結要素となる6個のクラッチ及びブレーキの配置と主変速機構の配置を工夫することにより、ドグクラッチを用いなくても変速装置全体がコンパクトにできるCタイプの9ATを、特許文献9で提案した。その主変速機構の一部の実施例として、特許文献7とは異なる組み合わせの2個のシンプル遊星ギアを軸方向に2階建てにして用いており、そのパワートレンのスケルトン構造と速度線図、及び変速比を、本願の図26に提示した。
これらCタイプ9ATの特許文献7、8、9に用いられた前置変速機構の、2個の遊星ギア列の組み合わせによる4個の構成要素で表される速度線図の形態は同一で、構成要素をA、B、C、Dとして順に並べ、AとDに入力軸の回転をクラッチを介して入力し、CとDをブレーキで制動し、Bを主変速機構の主動側の構成要素に連結したものである。ここでは、入力軸の前進回転と逆回転を得るため、入力軸の回転をクラッチでAとDに繋ぎかえる形態としている。
さらに、Cタイプとは別の方式として、遊星ギアの噛み合い効率のよいAタイプ6ATを、9AT(前進9速後進1速)に進化させることも可能となる。それは、Aタイプ6ATの受動側の構成要素を、入力軸の減速回転と逆回転、及び制動の3種に規制し、前進1速段と後進段でのみ主動側の構成要素として用いることによって可能となる。このAタイプ9ATは、本願出願人が提案した特許文献9の図18に参考として記載している。
Cタイプ9ATの前置変速機構により5種の回転を得る方式は、特許文献7、8,9以外にもあり、それは、Aタイプ9ATの前置変速機構により3種の回転を得る方式と相通じるところがあるため、主変速機構も含めて本願で提案するものである。特に、この前置変速機構の2列の遊星ギアには、負荷トルクが小さくなる組み合わせが適用できる利点がある。加えて、締結要素となる6個のクラッチ及びブレーキの配置が特許文献9と同じようにコンパクトに配置でき、特許文献9同様、この配置を提案するものである。
本願で提案するCタイプ9ATは、本願出願人が提案した特許文献9と同じ機能を踏襲するものである。したがって、前置変速機構のみが異なるだけで、主変速機構や主変速機構との連結、及び全体の配置は、特許文献9と同じ優れたものが可能となり、シンプル・コンパクトな構造となる。Cタイプ9ATは、これまで実用化されたCタイプ7AT、Bタイプ8AT、Dタイプ8ATより変速比のギアレンジが大きくとれ、優れた多段変速装置となり得る可能性があるものであるが、オーバドライブの変速段が4段と多く、これら実用化された多段変速装置より、変速比が高速側に振れ過ぎる欠点がある。一方、Aタイプ9ATは、変速比が大きくなる前進1速段での負荷または負荷頻度が軽減されるため、ギアレンジとなる変速比が5 〜0.6と比較的大きくとれ、オーバドライブとなる変速段も3段でよく、Cタイプ9ATに対抗できる構造をもっている。但し、1個の逆回転の入力で、前進1速段と3速段、及び9速段の3つの変速段が生まれるが、Aタイプの特徴である遊星ギアの噛み合い効率のよさが、一旦、逆回転をする1、3速段に限り悪くなり、一部、変速比のステップ値がクロスになる欠点もある。しかしながら、主変速機構に効率の悪いラビニョー遊星ギアを用いたとしても、遊星ギアの噛み合い効率は、Bタイプ8ATよりはよく、Cタイプ7ATと大差はでない。
ところで、実用化された乗用車の前進6速以上のATでは、トルクコンバータが発進デバイスとして用いられている。これらのトルクコンバータは、トーラス内部圧を締結に用いる簡易型ロックアップクラッチを備えたもので、締結時の応答性が悪いのに加え、逆駆動時には締結できない問題がある。そのため、Cタイプ5AT、7ATでは、乗用車用として初めてトルクコンバータに独立した油圧室を備えたロックアップクラッチを用いている。この独立した油圧室を備えたロックアップクラッチは、トラックやバスでは、一般的に用いられている構造である。また、トルクコンバータは、トルク増幅作用を有効に利用するため、原動機の最大トルクがでる回転付近でマッチングさせる設定になっている。したがって、最大出力を必要としない一般的な発進状態において原動機の回転が上がり過ぎとなり、不快感をもたらすとともに燃費悪化の原因となっている。対策として、発進時、トルクコンバータのロックアップクラッチを滑らせて用いれば、原動機の余計な回転上昇を防ぐことができるが、トルクコンバータのトルク増幅作用が消され、トルクコンバータを使用する価値が薄れる。まして、AタイプやCタイプ9ATでは、前進の変速段におけるギアレンジが8〜10となり、牽引力が十二分にとれるため、トルクコンバータは過剰品質となる。特にFF用9ATでは、6ATと比べ、遊星ギア列と締結要素が各1個多くなるため、変速装置の軸幅が広がることが避けられず、軸幅を広くとるトルクコンバータをなくす必要がある。トルクコンバータの代わりにホィールステータをなくした流体継手を用いれば、トルクコンバータより20%軸幅を縮小できるため、FF用9ATには有効な発進デバイスとなり得る。ところが、流体継手に独立した油圧室を備えたロックアップクラッチを用いる場合、流体継手のトーラス循環の2通路とロックアップクラッチ作動の1通路の外部からの制御回路の確保が困難となる。そこで、既に特許文献9で適用しているが、本願でも、本願出願人が特開2008−196660で提案した、独立した油圧室を備えるにもかかわらず、外部からの油通路が2通路で済む、コンパクトなロックアップクラッチを備えた流体継手とトルクコンバータを記載した。
さらに、先進的なATとして、BENZのCタイプ7ATでは、トルクコンバータに代えて湿式クラッチを発進デバイスとして用いた方式も実用化している。それに対し、前進1速と後進段で締結する同じブレーキを滑らせて発進デバイスとする方式を、本願出願人は、特開2009−236234に提示している。この方式は、発進段で締結するブレーキの、交互に配された摩擦部材の同一径中央円周部に複数の貫通穴を設け、発進時、ブレーキにすべり制御を行うとともに、摩擦部材の端部側面から貫通穴に冷却油を供給するようにした提案である。特許文献9では、前進1速と後進段で締結するブレーキB1の負荷トルクは、減速比の小さな前置変速機構に設けてあるため小さくなり、摩擦部材の枚数や受圧面積を大きくし、摩擦部材を確実に冷却してすべりエネルギーを吸収しやすいすべり制御に適した構造となる。したがって、前置変速機構のブレーキB1の滑り制御の特許も請求している。本願のA及びタイプ9ATにおいて、前置変速機構で締結する前進1速と後進段のブレーキは、特許文献9のようにブレーキB1の1個とはならなく、ブレーキB1とB2の2個となるが、いずれも既存の多段変速装置よりブレーキ容量が小さくでき、滑らせるには最適となるため、この2個のブレーキの構造も特許請求した。なお、発進時、原動機の回転上昇を防ぐため、トルクコンバータや流体継手の容量を大きくし、これらブレーキを滑らせて発進することも可能となる。また、発進デバイスとしてモータジェネレータを用いたHEV方式でも、ブレーキを発進デバイスとして併用できるようにしておけば、より安全性が高まる。
特開昭52−149562 特開平4−219553 US5,435,791 特開2000−266138 特開2001−182785 特表2008−527267 特開2011−513661 特開2011−513662 特願2012−5766
本発明の第1の課題は、それぞれ4個の構成要素からなる2個の遊星ギア列を有した前置変速機構と主変速機構の、前置変速機構の入力軸の減速回転と逆回転を得る変速形態を規定し、「背景技術」に記載した、ギアレンジが大きくとれるA及びCタイプとなる2種類の前進9速後進1速の、軸方向がコンパクトとなる多段変装置を得ることであり、その前置変速機構は、既に提案された前進9速後進1速の多段変装置である特許文献7、8、9とは異なる形態とすることである。
本発明の第2の課題は、第1の課題における本願出願人が提案した特許文献9と同様の、Cタイプの前進9速後進1速の多段変速装置の特性とコンパクトさを、入力軸と出力軸が同軸となる後輪駆動のFR用多段変速機と、入力軸と出力軸がオフセットされる前輪駆動のFF用多段変速装置において、同じ部品点数で前置変速機構の変速形態を変えて踏襲し、Cタイプの前進9速後進1速の多段変速装置の変速形態に多様性をもたせることである。
本発明の第3の課題は、第1の課題における前置変速機構の変速形態を用いて、特許文献7、8、9とは異なる変速形態となるAタイプの主変速機構と前置変速機構をシンプル・コンパクトなパワートレンとし、前進9速後進1速の多段変速装置とすることである。
本発明の第4の課題は、このA及びCタイプの前進9速後進1速の多段変装置において、一部の部品が高速回転になるのを防ぐ手段を提供することである。
本発明の第5の課題は、このA及びCタイプの前進9速後進1速の多段変速装置の、前置変速機構の前進1速と後進段で締結する第1及び第2ブレーキ(B1、B2)の摩擦部材を、熱吸収がよく冷却効果の高い構造として滑り制御を可能とし、トルクコンバータに代わり得る発進デバイスとし、モータジェネレータを用いたHEVにも併用できるようにすることである。
請求項1に係わる本発明は、それぞれ4個の構成要素からなる2個の遊星ギア列を有した前置変速機構と主変速機構と、6個の締結要素からなる前進9速後進1速の変速段が実現できる「背景技術」に記載したA及びCタイプの多段変速装置の前置変速機構の変速形態と各構成部位の、特にクラッチの配置に関するもので、第1の課題を解決するための手段であり、入力軸を変速する複数の遊星ギア列を有した変速装置の共通の速度線図上に、少なくとも前記入力軸に対する前進の減速段において、第1、第2、第3、及び第4構成要素を順に並べて配した第1及び第2遊星ギア列(10、20)からなる主変速機構と、A、B、C、及びDの4個の構成要素を順に並べて配した第3及び第4遊星ギア列(30、40)からなる前置変速機構の、第1及び第2遊星ギア列(10、20)と第3及び第4遊星ギア列(30、40)、あるいは、第1及び第2遊星ギア列(10、20)と出力カウンターギアギア(5)、及び第3及び第4遊星ギア列(30、40)を軸方向に並べて配し、前置変速機構の構成要素Cと主変速機構の第1構成要素を連結軸(17)で連結し、少なくとも6個のクラッチ及びブレーキの締結要素の選択的な締結により、入力軸に対して前進9速後進1速の変速段が実現できる多段変速装置であって、前置変速機構の構成要素Aに入力軸の回転を入力、あるいは、入力可能とし、構成要素D及びBを第1及び第2ブレーキ(B1、B2)で制動可能とすることにより、 構成要素Cが、少なくとも入力軸の減速回転と逆回転を得るようになし、全てのクラッチの油圧サーボを、第1及び第2遊星ギア列(10、20)と第3及び第4遊星ギア列(30、40)、あるいは、第1及び第2遊星ギア列(10、20)と出力カウンターギア(5)、及び第3及び第4遊星ギア列(30、40)の軸方向外側に配するようになした。
請求項2に係わる本発明は、「背景技術」に記載したCタイプの前進9速後進1速の多段変装置における前置変速機構と主変速機構の変速形態に関するもので、第2と第4の課題を解決するための手段であり、前置変速機構の構成要素A及びBに第1及び第2クラッチ(C1、C2)で入力軸の回転を入力可能とし、構成要素D及びBを第1及び第2ブレーキ(B1、B2)で制動可能とし、第1及び第2クラッチ(C1、C2)又は第1及び第2ブレーキ(B1、B2)の何れか2個を選択的に締結することにより、主変速機構の第1構成要素と連結軸(17)で連結された構成要素Cが、入力軸の直結回転と逆回転、及び入力軸の2種の減速回転、それに制動を含めた5種の回転に規制されるようになし、主変速機構の第4構成要素を第3ブレーキ(B3)で制動可能にし、第2構成要素に入力軸の回転を第3クラッチ(C3)で入力可能とし、第1、第2、及び第4構成要素の2個の構成要素の回転を、第1、第2、及び第3クラッチ(C1、C2、C3)と第1、第2、及び第3ブレーキ(B1、B2、B3)で規制することにより、あるいは、主変速機構の第1、第2、及び第3構成要素を、第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)、プラネットキャリア(P2)、及びリングギア(R2)として第2遊星ギア列(20)のプラネットキャリア(P2)に第3クラッチを介して入力軸の回転を入力可能とし、主変速機構の第1又は第2構成要素を構成する第1遊星ギア列(10)の構成要素の何れか一方の構成要素と第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)又はプラネットキャリア(P2)を、第4クラッチ(C4)を介して連結可能とし、主変速機構の第4構成要素を構成する第1遊星ギア列(10)の構成要素をハウジングに固定し、第1、第2、及び第4構成要素の2個の構成要素の回転を、第1、第2、第3、及び第4クラッチ(C1、C2、C3、C4)と第1及び第2ブレーキ(B1、B2)で規制することにより、第3構成要素が、入力軸の直結回転と逆回転、及び入力軸のそれぞれ4種の減速回転と増速回転、を得るようになし、第1及び第2クラッチ(C1、C2)を、第3及び第4遊星ギア列(30、40)側の第1及び第2遊星ギア列(10、20)から遠ざかる位置に配すると共に、第3クラッチ(C3)、あるいは、第4クラッチ(C4)を、第1及び第2遊星ギア列(10、20)側の第3及び第4遊星ギア列(30、40)から遠ざかる位置に配するようになした。
請求項3に係わる本発明は、「背景技術」に記載したAタイプの前進9速後進1速の多段変装置における前置変速機構と主変速機構の変速形態に関するもので、第3と第4の課題を解決するための手段であり、前置変速機構の構成要素Aに第1クラッチ(C1)で入力軸の回転を入力可能とし、構成要素D及びBを第1及び第2ブレーキ(B1、B2)で制動可能とし、第1クラッチ(C1)又は第1及び第2ブレーキ(B1、B2)の何れか2個を選択的に締結することにより、あるいは、前置変速機構の構成要素Aと入力軸を連結し、構成要素D、B、及びCを第1、第2、及び第4ブレーキ(B1、B2、B4)で制動可能とし、第1、第2、及び第4ブレーキ(B1、B2、B4)の何れか1個のブレーキを選択的に締結することにより、主変速機構の第1構成要素と連結軸(17)で連結された構成要素Cが、入力軸の減速回転と逆回転、それに制動を含めた3種の回転に規制されるようになし、主変速機構の第4構成要素に入力軸の回転を第2クラッチ(C2)で入力可能とし、第2構成要素に入力軸の回転を第3クラッチ(C3)で入力可能とするとともに第3ブレーキ(B3)を配して制動可能にし、第1、第2、及び第4構成要素の2個の構成要素の回転を、第1、第2、及び第3クラッチ(C1、C2、C3)と第1、第2、及び第3ブレーキ(B1、B2、B3)、あるいは、第2及び第3クラッチ(C2、C3)と第1、第2、第3、及び第4ブレーキ(B1、B2、B3、B4)で規制することにより、あるいは、主変速機構の第1、第2、及び第3構成要素を、第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)、プラネットキャリア(P2)、及びリングギア(R2)として第2遊星ギア列(20)のプラネットキャリア(P2)に第3クラッチ(C3)を介して入力軸の回転を入力可能とするとともに第3ブレーキ(B3)を配して制動可能にし、主変速機構の第1又は第2構成要素を構成する第1遊星ギア列(10)の構成要素の何れか一方の構成要素と第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)又はプラネットキャリア(P2)を、第4クラッチ(C4)を介して連結可能とし、主変速機構の第4構成要素を構成する第1遊星ギア列(10)の構成要素と入力軸を連結し、第1、第2、及び第4構成要素の2個の構成要素の回転を、第1、第3、及び第4クラッチ(C1、C3、C4)と第1、第2、及び第3ブレーキ(B1、B2、B3)、あるいは、第3及び第4クラッチ(C3、C4)と第1、第2、第3、及び第4ブレーキ(B1、B2、B3、B4)で規制することにより、第3構成要素が、入力軸の直結回転と逆回転、及び入力軸の5種の減速回転と3種の増速回転、を得るようになし、第1クラッチ(C1)を、第3及び第4遊星ギア列(30、40)側の第1及び第2遊星ギア列(10、20)から遠ざかる位置に配すると共に、第2及び3クラッチ(C2、C3)を、第1及び第2遊星ギア列(10、20)の第3及び第4遊星ギア列(30、40)から遠ざかる位置に配するようになし、あるいは、第1、第2及び第3クラッチ(C1、C2、C3)を、第3及び第4遊星ギア列(30、40)側の第1及び第2遊星ギア列(10、20)から遠ざかる位置に配するようになし、あるいは、第1及び第3クラッチ(C1、C3)を、第3及び第4遊星ギア列(30、40)側の第1及び第2遊星ギア列(10、20)から遠ざかる位置に配すると共に、第4クラッチ(C4)を、第1及び第2遊星ギア列(10、20)側の第3及び第4遊星ギア列(30、40)から遠ざかる位置に配するようになした。
請求項4に係わる本発明は、「背景技術」に記載したA及びCタイプの多段変速装置の前置変速機構の第1及び第2ブレーキ(B1、B2)に関するもので、第5の課題を解決するための手段であり、前置変速機構の第1及び第2ブレーキ(B1、B2)の交互に配された摩擦部材の同一径中央円周部に複数の貫通穴を設け、摩擦部材の端部側面から貫通穴に冷却油を供給するようになした。
請求項5に係わる本発明は、「背景技術」に記載したA及びCタイプの多段変速装置の、前置変速機構の4個の構成要素からなる2個の遊星ギアの組み合わせに関するもので、第1の課題を解決するための手段であり、前置変速機構の第3及び第4遊星ギア列(30、40)は、第3及び第4遊星ギア列(30、40)をシンプル遊星ギアとして、第4遊星ギア列(40)のリングギア(R4)を構成要素Aとし、第3遊星ギア列(30)のリングギア(R3)と第4遊星ギア列(40)のプラネットキャリア(P4)を連結して構成要素Bとし、第3遊星ギア列(30)のプラネットキャリア(P3)を構成要素Cとし、第3及び第4遊星ギア列(30、40)の互いのサンギア(S3、S4)を連結して構成要素Dとした、あるいは、第3及び第4遊星ギア列(30、40)をシンプル遊星ギアとして、第3及び第4遊星ギア列(30、40)の互いのサンギア(S3、S4)を連結して構成要素Aとし、第3遊星ギア列(30)のプラネットキャリア(P3)を構成要素Bとし、第3遊星ギア列(30)のリングギア(R3)と第4遊星ギア列(40)のプラネットキャリア(P4)を連結して構成要素Cとし、第4遊星ギア列(40)のリングギア(R4)を構成要素Dとした、あるいは、第3及び第4遊星ギア列(30、40)をシンプル遊星ギアとして、第4遊星ギア列(40)のサンギア(S4)を構成要素Aとし、第3遊星ギア列(30)のリングギア(R3)と第4遊星ギア列(40)のプラネットキャリア(P4)を連結して構成要素Bとし、第3遊星ギア列(30)のプラネットキャリア(P3)と第4遊星ギア列(40)のリングギア(R4)を連結して構成要素Cとし、第3遊星ギア列(30)のサンギア(S3)を構成要素Dとした、あるいは、第3遊星ギア列(30)をダブル遊星ギアとし、第4遊星ギア列(30)をシンプル遊星ギアとし、リングギア(R)とプラネットキャリア(P)を共有させ、ダブル遊星ギアとなる第3遊星ギア列(30)のリングギア(R)と噛み合うピニオンギアをロングピニオンとして第4遊星ギア列(40)のサンギア(S4)に噛み合わせた所謂ラビニョー遊星ギアとして、第3遊星ギア列(30)のサンギア(S3)を構成要素Aとし、共有するリングギア(R)を構成要素Bとし、共有するプラネットキャリア(P)を構成要素Cとし、第4遊星ギア列(40)のサンギア(S4)を構成要素Dとした、あるいは、第3及び第4遊星ギア列(30、40)をシンプル遊星ギアとして、第4遊星ギア列(40)のサンギア(S4)を構成要素Aとし、第3遊星ギア列(30)のリングギア(R3)を構成要素Bとし、第3及び第4遊星ギア列(30、40)の互いのプラネットキャリア(P3、P4)を連結して構成要素Cとし、第3遊星ギア列(30)のサンギア(S3)と第4遊星ギア列(40)のリングギア(R4)を連結して構成要素Dとした、あるいは、第3及び第4遊星ギア列(30、40)をシンプル遊星ギアとして、第3遊星ギア列(30)のサンギア(S3)と第4遊星ギア列(40)のリングギア(R4)を連結して構成要素Aとし、第3及び第4遊星ギア列(30、40)の互いのプラネットキャリア(P3、P4)を連結して構成要素Bとし、第3遊星ギア列(30)のリングギア(R3)を構成要素Cとし、第4遊星ギア列(40)のサンギア(S4)を構成要素Dとした。
請求項6に係わる本発明は、「背景技術」に記載したA及びCタイプの多段変速装置の、主変速機構の4個の構成要素からなる2個の遊星ギアの組み合わせに関するもので、第1と第4の課題を解決するための手段であり、主変速機構の第1及び第2遊星ギア列(10、20)は、第1及び第2遊星ギア列(10、20)をシンプル遊星ギアとして、第2遊星ギア列(20)のリングギア(R2)を第1構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のリングギア(R1)と第2遊星ギア列(20)のプラネットキャリア(P2)を連結して第2構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のプラネットキャリア(P1)を第3構成要素とし、第1及び第2遊星ギア列(10、20)の互いのサンギア(S1、S2)を連結して第4構成要素とした、あるいは、第1及び第2遊星ギア列(10、20)をシンプル遊星ギアとして、第1遊星ギア列(10)のリングギア(R1)と第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)を連結して第1構成要素とし、第1及び第2遊星ギア列(10、20)の互いのプラネットキャリア(P1、P2)を連結して第2構成要素とし、第2遊星ギア列(20)のリングギア(R2)を第3構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)を第4構成要素とした、あるいは、第1及び第2遊星ギア列(10、20)をシンプル遊星ギアとして、第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)を第1構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のリングギア(R1)と第2遊星ギア列(20)のプラネットキャリア(P2)を連結して第2構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のプラネットキャリア(P1)と第2遊星ギア列(20)のリングギア(R2)を連結して第3構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)を第4構成要素とした、あるいは、第1遊星ギア列(10)をダブル遊星ギアとし、第2遊星ギア列(20)をシンプル遊星ギアとし、リングギア(R)とプラネットキャリア(P)を共有させ、ダブル遊星ギアとなる第1遊星ギア列(10)のリングギア(R)と噛み合うピニオンギアをロングピニオンとして第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)に噛み合わせた所謂ラビニョー遊星ギアとして、第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)を第1構成要素とし、共有するプラネットキャリア(P)を第2構成要素とし、共有するリングギア(R)を第3構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)を第4構成要素とした、あるいは、第1遊星ギア列(10)をダブル遊星ギアとし、第2遊星ギア列(20)をシンプル遊星ギアとし、リングギア(R)とプラネットキャリア(P)を共有させ、ダブル遊星ギアとなる第1遊星ギア列(10)のリングギア(R)と噛み合うピニオンギアをロングピニオンとして第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)に噛み合わせた所謂ラビニョー遊星ギアとして、第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)を第1構成要素とし、共有するリングギア(R)を第2構成要素とし、共有するプラネットキャリア(P)を第3構成要素とし、第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)を第4構成要素とした、あるいは、第1及び第2遊星ギア列(10、20)をシンプル遊星ギアとして、第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)を第1構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のリングギア(R1)を第2構成要素とし、第1及び第2遊星ギア列(10、20)の互いのプラネットキャリア(P1、P2)を連結して第3構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)と第2遊星ギア列(20)のリングギア(R2)を連結して第4構成要素とした、あるいは、第1及び第2遊星ギア列(10、20)をシンプル遊星ギアとして、第1、第2、及び第3構成要素を第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)、プラネットキャリア(P2)、及びリングギア(R2)とし、第1遊星ギア列(10)のリングギア(R1)と第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)、及び第1遊星ギア列(10)のプラネットキャリア(P1)と第2遊星ギア列(20)のプラネットキャリア(P2)の何れか一方を連結するとともに、何れか他方を第4クラッチ(C4)を介して連結し、第4構成要素を第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)とした、あるいは、第1及び第2遊星ギア列(10、20)をシンプル遊星ギアとして、第1、第2、及び第3構成要素を第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)、プラネットキャリア(P2)、及びリングギア(R2)とし、第1遊星ギア列(10)のリングギア(R1)と第2遊星ギア列(20)のプラネットキャリア(P2)を、第4クラッチ(C4)を介して連結し、第1遊星ギア列(10)のプラネットキャリア(P1)を第2遊星ギア列(20)のリングギア(R2)と連結し、第4構成要素を第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)とした。
請求項7に係わる本発明は、発進デバイスとしてモータジェネレータを使用した場合の、A及びCタイプの多段変速装置に関するもので、第5の課題を解決するための手段であり、変速機ケースの前方の、変速機ケースと一体となるケースに配されたモータジェネレータで、入力軸を駆動または制動するようになした、あるいは、変速機ケースの後方の、変速機ケースと一体となるケースに配されたモータジェネレータで、出力軸を駆動または制動するようになした。
請求項1記載の構成では、入力軸を変速する複数の遊星ギア列を有した変速装置の共通の速度線図上に、少なくとも入力軸に対する前進の減速段において、第1、第2、第3、及び第4構成要素を順に並べて配した第1及び第2遊星ギア列(10、20)からなる主変速機構と、A、B、C、及びDの4個の構成要素を順に並べて配した第3及び第4遊星ギア列(30、40)からなる前置変速機構の、第1及び第2遊星ギア列(10、20)と第3及び第4遊星ギア列(30、40)、あるいは、第1及び第2遊星ギア列(10、20)と出力カウンターギアギア(5)、及び第3及び第4遊星ギア列(30、40)を軸方向に並べて配し、前置変速機構の構成要素Cと主変速機構の第1構成要素を連結軸(17)で連結し、少なくとも6個のクラッチ及びブレーキの締結要素の選択的な締結により、入力軸に対して前進9速後進1速の変速段が実現できる多段変速装置であって、前置変速機構の構成要素Aに入力軸の回転を入力、あるいは、入力可能とし、構成要素D及びBを第1及び第2ブレーキ(B1、B2)で制動可能とすることにより、 構成要素Cが、少なくとも入力軸の減速回転と逆回転を得るようになし、全てのクラッチの油圧サーボを、第1及び第2遊星ギア列(10、20)と第3及び第4遊星ギア列(30、40)、あるいは、第1及び第2遊星ギア列(10、20)と出力カウンターギア(5)、及び第3及び第4遊星ギア列(30、40)の軸方向外側に配するようになしたので、前置変速機構が主変速機構を制御する範囲が広がると共に全てのクラッチの油圧サーボへの供給油路が簡素化されクラッチがコンパクトに配され、シンプルな形態で軸方向がコンパクトな2種の前進9速後進1速の変速段が実現できる。
請求項2記載の構成では、前置変速機構の構成要素A及びBに第1及び第2クラッチ(C1、C2)で入力軸の回転を入力可能とし、構成要素D及びBを第1及び第2ブレーキ(B1、B2)で制動可能とし、第1及び第2クラッチ(C1、C2)又は第1及び第2ブレーキ(B1、B2)の何れか2個を選択的に締結することにより、主変速機構の第1構成要素と連結軸(17)で連結された構成要素Cが、入力軸の直結回転と逆回転、及び入力軸の2種の減速回転、それに制動を含めた5種の回転に規制されるようになし、主変速機構の第4構成要素を第3ブレーキ(B3)で制動可能にし、第2構成要素に入力軸の回転を第3クラッチ(C3)で入力可能とし、第1、第2、及び第4構成要素の2個の構成要素の回転を、第1、第2、及び第3クラッチ(C1、C2、C3)と第1、第2、及び第3ブレーキ(B1、B2、B3)で規制することにより、あるいは、主変速機構の第1、第2、及び第3構成要素を、第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)、プラネットキャリア(P2)、及びリングギア(R2)として第2遊星ギア列(20)のプラネットキャリア(P2)に第3クラッチを介して入力軸の回転を入力可能とし、主変速機構の第1又は第2構成要素を構成する第1遊星ギア列(10)の構成要素の何れか一方の構成要素と第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)又はプラネットキャリア(P2)を、第4クラッチ(C4)を介して連結可能とし、主変速機構の第4構成要素を構成する第1遊星ギア列(10)の構成要素をハウジングに固定し、第1、第2、及び第4構成要素の2個の構成要素の回転を、第1、第2、第3、及び第4クラッチ(C1、C2、C3、C4)と第1及び第2ブレーキ(B1、B2)で規制することにより、第3構成要素が、入力軸の直結回転と逆回転、及び入力軸のそれぞれ4種の減速回転と増速回転、を得るようになし、第1及び第2クラッチ(C1、C2)を、第3及び第4遊星ギア列(30、40)側の第1及び第2遊星ギア列(10、20)から遠ざかる位置に配すると共に、第3クラッチ(C3)、あるいは、第4クラッチ(C4)を、第1及び第2遊星ギア列(10、20)側の第3及び第4遊星ギア列(30、40)から遠ざかる位置に配するようになしたので、特許文献9とは別の前置変速機構の変速形態で、特許文献9と同様、ギアレンジの大きくとれる優れた変速比をもつ前進9速後進1速の変速装置が、シンプル・コンパクトな構造で実現できる。また、一部の組み合わせでは、入力軸の増速時、主変速機構の2個の遊星ギアを開放することで第4構成要素を固定し、高速回転となることを防止できる。
請求項3記載の構成では、前置変速機構の構成要素Aに第1クラッチ(C1)で入力軸の回転を入力可能とし、構成要素D及びBを第1及び第2ブレーキ(B1、B2)で制動可能とし、第1クラッチ(C1)又は第1及び第2ブレーキ(B1、B2)の何れか2個を選択的に締結することにより、あるいは、前置変速機構の構成要素Aと入力軸を連結し、構成要素D、B、及びCを第1、第2、及び第4ブレーキ(B1、B2、B4)で制動可能とし、第1、第2、及び第4ブレーキ(B1、B2、B4)の何れか1個のブレーキを選択的に締結することにより、主変速機構の第1構成要素と連結軸(17)で連結された構成要素Cが、入力軸の減速回転と逆回転、それに制動を含めた3種の回転に規制されるようになし、主変速機構の第4構成要素に入力軸の回転を第2クラッチ(C2)で入力可能とし、第2構成要素に入力軸の回転を第3クラッチ(C3)で入力可能とするとともに第3ブレーキ(B3)を配して制動可能にし、第1、第2、及び第4構成要素の2個の構成要素の回転を、第1、第2、及び第3クラッチ(C1、C2、C3)と第1、第2、及び第3ブレーキ(B1、B2、B3)、あるいは、第2及び第3クラッチ(C2、C3)と第1、第2、第3、及び第4ブレーキ(B1、B2、B3、B4)で規制することにより、あるいは、主変速機構の第1、第2、及び第3構成要素を、第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)、プラネットキャリア(P2)、及びリングギア(R2)として第2遊星ギア列(20)のプラネットキャリア(P2)に第3クラッチ(C3)を介して入力軸の回転を入力可能とするとともに第3ブレーキ(B3)を配して制動可能にし、主変速機構の第1又は第2構成要素を構成する第1遊星ギア列(10)の構成要素の何れか一方の構成要素と第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)又はプラネットキャリア(P2)を、第4クラッチ(C4)を介して連結可能とし、主変速機構の第4構成要素を構成する第1遊星ギア列(10)の構成要素と入力軸を連結し、第1、第2、及び第4構成要素の2個の構成要素の回転を、第1、第3、及び第4クラッチ(C1、C3、C4)と第1、第2、及び第3ブレーキ(B1、B2、B3)、あるいは、第3及び第4クラッチ(C3、C4)と第1、第2、第3、及び第4ブレーキ(B1、B2、B3、B4)で規制することにより、第3構成要素が、入力軸の直結回転と逆回転、及び入力軸の5種の減速回転と3種の増速回転、を得るようになし、第1クラッチ(C1)を、第3及び第4遊星ギア列(30、40)側の第1及び第2遊星ギア列(10、20)から遠ざかる位置に配すると共に、第2及び3クラッチ(C2、C3)を、第1及び第2遊星ギア列(10、20)の第3及び第4遊星ギア列(30、40)から遠ざかる位置に配するようになし、あるいは、第1、第2及び第3クラッチ(C1、C2、C3)を、第3及び第4遊星ギア列(30、40)側の第1及び第2遊星ギア列(10、20)から遠ざかる位置に配するようになし、あるいは、第1及び第3クラッチ(C1、C3)を、第3及び第4遊星ギア列(30、40)側の第1及び第2遊星ギア列(10、20)から遠ざかる位置に配すると共に、第4クラッチ(C4)を、第1及び第2遊星ギア列(10、20)側の第3及び第4遊星ギア列(30、40)から遠ざかる位置に配するようになしたので、特許文献9とは別の形態の、ギアレンジの大きくとれる優れた変速比をもつ前進9速後進1速の変速装置が、シンプル・コンパクトな構造で実現できる。また、一部の組み合わせでは、入力軸の増速時、主変速機構の2個の遊星ギアを開放することで第4構成要素を入力軸に連結し、高速回転となることを防止できる。
請求項4記載の構成では、前置変速機構の第1及び第2ブレーキ(B1、B2)の交互に配された摩擦部材の同一径中央円周部に複数の貫通穴を設け、摩擦部材の端部側面から貫通穴に冷却油を供給するようになしたので、小容量で済む前置変速機構の前進1速と後進段で締結する第1及び第2ブレーキ(B1、B2)の摩擦部材を、熱吸収がよく冷却効果の高い構造として滑らせ、トルクコンバータに代わる発進デバイスとして用いることも可能となる。
請求項5記載の構成では、前置変速機構の第3及び第4遊星ギア列(30、40)は、第3及び第4遊星ギア列(30、40)をシンプル遊星ギアとして、第4遊星ギア列(40)のリングギア(R4)を構成要素Aとし、第3遊星ギア列(30)のリングギア(R3)と第4遊星ギア列(40)のプラネットキャリア(P4)を連結して構成要素Bとし、第3遊星ギア列(30)のプラネットキャリア(P3)を構成要素Cとし、第3及び第4遊星ギア列(30、40)の互いのサンギア(S3、S4)を連結して構成要素Dとした、あるいは、第3及び第4遊星ギア列(30、40)をシンプル遊星ギアとして、第3及び第4遊星ギア列(30、40)の互いのサンギア(S3、S4)を連結して構成要素Aとし、第3遊星ギア列(30)のプラネットキャリア(P3)を構成要素Bとし、第3遊星ギア列(30)のリングギア(R3)と第4遊星ギア列(40)のプラネットキャリア(P4)を連結して構成要素Cとし、第4遊星ギア列(40)のリングギア(R4)を構成要素Dとした、あるいは、第3及び第4遊星ギア列(30、40)をシンプル遊星ギアとして、第4遊星ギア列(40)のサンギア(S4)を構成要素Aとし、第3遊星ギア列(30)のリングギア(R3)と第4遊星ギア列(40)のプラネットキャリア(P4)を連結して構成要素Bとし、第3遊星ギア列(30)のプラネットキャリア(P3)と第4遊星ギア列(40)のリングギア(R4)を連結して構成要素Cとし、第3遊星ギア列(30)のサンギア(S3)を構成要素Dとした、あるいは、第3遊星ギア列(30)をダブル遊星ギアとし、第4遊星ギア列(30)をシンプル遊星ギアとし、リングギア(R)とプラネットキャリア(P)を共有させ、ダブル遊星ギアとなる第3遊星ギア列(30)のリングギア(R)と噛み合うピニオンギアをロングピニオンとして第4遊星ギア列(40)のサンギア(S4)に噛み合わせた所謂ラビニョー遊星ギアとして、第3遊星ギア列(30)のサンギア(S3)を構成要素Aとし、共有するリングギア(R)を構成要素Bとし、共有するプラネットキャリア(P)を構成要素Cとし、第4遊星ギア列(40)のサンギア(S4)を構成要素Dとした、あるいは、第3及び第4遊星ギア列(30、40)をシンプル遊星ギアとして、第4遊星ギア列(40)のサンギア(S4)を構成要素Aとし、第3遊星ギア列(30)のリングギア(R3)を構成要素Bとし、第3及び第4遊星ギア列(30、40)の互いのプラネットキャリア(P3、P4)を連結して構成要素Cとし、第3遊星ギア列(30)のサンギア(S3)と第4遊星ギア列(40)のリングギア(R4)を連結して構成要素Dとした、あるいは、第3及び第4遊星ギア列(30、40)をシンプル遊星ギアとして、第3遊星ギア列(30)のサンギア(S3)と第4遊星ギア列(40)のリングギア(R4)を連結して構成要素Aとし、第3及び第4遊星ギア列(30、40)の互いのプラネットキャリア(P3、P4)を連結して構成要素Bとし、第3遊星ギア列(30)のリングギア(R3)を構成要素Cとし、第4遊星ギア列(40)のサンギア(S4)を構成要素Dとしたので、前置変速機構の6種の組み合わせを用途により変え、変速比を変えて用いることができる。特に、最初に記したシンプソン遊星ギアを用いたものは、遊星ギアの負荷加重が小さくなるためギア巾を小さくでき、変速装置全体がコンパクトにできる。
請求項6記載の構成では、主変速機構の第1及び第2遊星ギア列(10、20)は、第1及び第2遊星ギア列(10、20)をシンプル遊星ギアとして、第2遊星ギア列(20)のリングギア(R2)を第1構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のリングギア(R1)と第2遊星ギア列(20)のプラネットキャリア(P2)を連結して第2構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のプラネットキャリア(P1)を第3構成要素とし、第1及び第2遊星ギア列(10、20)の互いのサンギア(S1、S2)を連結して第4構成要素とした、あるいは、第1及び第2遊星ギア列(10、20)をシンプル遊星ギアとして、第1遊星ギア列(10)のリングギア(R1)と第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)を連結して第1構成要素とし、第1及び第2遊星ギア列(10、20)の互いのプラネットキャリア(P1、P2)を連結して第2構成要素とし、第2遊星ギア列(20)のリングギア(R2)を第3構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)を第4構成要素とした、あるいは、第1及び第2遊星ギア列(10、20)をシンプル遊星ギアとして、第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)を第1構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のリングギア(R1)と第2遊星ギア列(20)のプラネットキャリア(P2)を連結して第2構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のプラネットキャリア(P1)と第2遊星ギア列(20)のリングギア(R2)を連結して第3構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)を第4構成要素とした、あるいは、第1遊星ギア列(10)をダブル遊星ギアとし、第2遊星ギア列(20)をシンプル遊星ギアとし、リングギア(R)とプラネットキャリア(P)を共有させ、ダブル遊星ギアとなる第1遊星ギア列(10)のリングギア(R)と噛み合うピニオンギアをロングピニオンとして第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)に噛み合わせた所謂ラビニョー遊星ギアとして、第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)を第1構成要素とし、共有するプラネットキャリア(P)を第2構成要素とし、共有するリングギア(R)を第3構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)を第4構成要素とした、あるいは、第1遊星ギア列(10)をダブル遊星ギアとし、第2遊星ギア列(20)をシンプル遊星ギアとし、リングギア(R)とプラネットキャリア(P)を共有させ、ダブル遊星ギアとなる第1遊星ギア列(10)のリングギア(R)と噛み合うピニオンギアをロングピニオンとして第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)に噛み合わせた所謂ラビニョー遊星ギアとして、第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)を第1構成要素とし、共有するリングギア(R)を第2構成要素とし、共有するプラネットキャリア(P)を第3構成要素とし、第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)を第4構成要素とした、あるいは、第1及び第2遊星ギア列(10、20)をシンプル遊星ギアとして、第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)を第1構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のリングギア(R1)を第2構成要素とし、第1及び第2遊星ギア列(10、20)の互いのプラネットキャリア(P1、P2)を連結して第3構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)と第2遊星ギア列(20)のリングギア(R2)を連結して第4構成要素とした、あるいは、第1及び第2遊星ギア列(10、20)をシンプル遊星ギアとして、第1、第2、及び第3構成要素を第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)、プラネットキャリア(P2)、及びリングギア(R2)とし、第1遊星ギア列(10)のリングギア(R1)と第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)、及び第1遊星ギア列(10)のプラネットキャリア(P1)と第2遊星ギア列(20)のプラネットキャリア(P2)の何れか一方を連結するとともに、何れか他方を第4クラッチ(C4)を介して連結し、第4構成要素を第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)とした、あるいは、第1及び第2遊星ギア列(10、20)をシンプル遊星ギアとして、第1、第2、及び第3構成要素を第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)、プラネットキャリア(P2)、及びリングギア(R2)とし、第1遊星ギア列(10)のリングギア(R1)と第2遊星ギア列(20)のプラネットキャリア(P2)を、第4クラッチ(C4)を介して連結し、第1遊星ギア列(10)のプラネットキャリア(P1)を第2遊星ギア列(20)のリングギア(R2)と連結し、第4構成要素を第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)としたので、主変速機構の6種の組み合わせを、その性質を利用し、用途により変えて用いることができる。例えば、最初に記したシンプソン遊星ギアを用いたものは、低速段で遊星ギアの負荷加重が小さく噛合い効率がよくなるため、発進停止の多い車両の変速装置用として、次の軸方向の縦方向に2階建てとして2列のシンプル遊星ギアを配することのできる組み合わせやラビニョー遊星ギアはコンパクトになるため、コンパクトさが必要な車両の変速装置用として用いることができる。また、主変速機構の第1及び第2遊星ギア列(10、20)の組み合わせは限られるが、入力軸の増速時、主変速機構の2個の遊星ギアの連結を開放することができ、第4構成要素が高速回転となることを防止することができる。
請求項7記載の構成では、変速機ケースの前方の、変速機ケースと一体となるケースに配されたモータジェネレータで、入力軸を駆動または制動するようになした、あるいは、変速機ケースの後方の、変速機ケースと一体となるケースに配されたモータジェネレータで、出力軸を駆動または制動するようになしたので、より一層の燃費向上が期待できる。また、トラックやバス用として、リターダ作用によりフートブレーキのフェードを防ぎ、安全性が増す。
本発明の2種の9ATの1種である、Cタイプの前置変速機構と主変速機構の変速形態を表す速度線図と各変速段における締結要素。 本発明の2種の9ATの1種である、Aタイプの前置変速機構と主変速機構の変速形態を表す速度線図と各変速段における締結要素。 本発明の2種の9ATの、主変速機構を構成する2個の遊星ギア列の6種の組み合わせを示す模式図と速度線図。 本発明の2種の9ATの、前置変速機構を構成する2個の遊星ギア列の6種の組み合わせを示す模式図と速度線図。 本発明のCタイプのFFとFR用9ATの、主変速機構の2個の遊星ギア列を2階建てとコンパクトにし、ギアレンジが小さくなる前置変速機構を用いた、模式図と速度線図、及び変速比と歯車の噛み合い効率を示す表。 本発明のCタイプのFFとFR用9ATの、主変速機構の2個の遊星ギア列を2階建てとコンパクトにし、ギアレンジが大きくなる前置変速機構を用いた、模式図と速度線図、及び変速比と歯車の噛み合い効率を示す表。 本発明のCタイプのFFとFR用9ATの、主変速機構の2個の遊星ギア列を2階建てとコンパクトにし、ギアレンジが図5と図6の中間となる前置変速機構を用いた、模式図と速度線図、及び変速比と歯車の噛み合い効率を示す表。 本発明のCタイプのFF用9ATの、主変速機構の2個の遊星ギア列の負荷を押え、ギアレンジが小さくなる前置変速機構を用いた、模式図と速度線図、及び変速比と歯車の噛み合い効率を示す表と、本発明とは異なるクラッチの配置をしたCタイプのFR用9ATの参考模式図 本発明のCタイプのFFとFR用9ATの、主変速機構の2個の遊星ギア列の負荷を押え、ギアレンジが大きくなる前置変速機構を用いた、模式図と速度線図、及び変速比と歯車の噛み合い効率を示す表。 本発明のCタイプのFFとFR用9ATの、主変速機構の2個の遊星ギア列の一部が高回転になるのを防ぐ形態の、模式図と速度線図、及び変速比と歯車の噛み合い効率を示す表。 図5のFF用模式図において、乗用車用としてブレーキB1及びB2を発進デバイスとしたFF用9ATの構造図。 図6のFF用模式図において、乗用車用としてトルクコンバータを発進デバイスとしたFF用9ATの構造図。 図9のFF用模式図において、乗用車用としてトルクコンバータを発進デバイスとしたFF用9ATの構造図。 図9のFR用模式図において、乗用車用としてトルクコンバータを発進デバイスとしたFR用9ATの構造図。 図6のFR用模式図において、トラックやバス用としてトルクコンバータを発進デバイスとしたFR用9ATの構造図。 図15のFR用9ATの構造図において、モータジェネレータを発進デバイスとして後部に配した構想図。 本発明とは異なるクラッチの配置をしたAタイプのFFとFR用9ATの参考図 本発明のAタイプのFFとFR用9ATの、主変速機構にラビニョー遊星ギアを用いてコンパクトにした、模式図と速度線図、及び変速比と歯車の噛み合い効率を示す表。 本発明のAタイプのFR用9ATの、主変速機構の一般的な2個の遊星ギア列の組み合わせ形態と、2個の遊星ギア列の一部が高回転になるのを防ぐ組み合わせ形態を示した、模式図と速度線図、及び変速比と歯車の噛み合い効率を示す表。 図18のFF用模式図において、乗用車用として流体継手を発進デバイスとしたFF用9ATの構造図。 図11,図12、及び図20のFF用9ATの構造図におけるリングギアR2または第1及び第2ブレーキ(B1、B2)の摩擦部材と、中継軸及び出力軸のギアとの干渉を示す位置関係図。 本発明の前置変速機構の第1及び第2ブレーキ(B1、B2)の摩擦部材の詳細図 従来例となるTOYOTAのBタイプ8ATの、模式図と速度線図、及び変速比と歯車の噛合い効率を示す表。 従来例となるBENZのCタイプ7ATの、模式図と速度線図、及び変速比と歯車の噛合い効率を示す表。 従来例となるZFのDタイプ8ATの、模式図と速度線図、及び変速比と歯車の噛合い効率を示す表。 従来例となる本願出願人が考案した特許文献9によるCタイプ9ATの、模式図と速度線図、及び変速比と歯車の噛合い効率を示す表。
本発明は、各2個の遊星ギア列からなる4個の構成要素を有した前置変速機構と主変速機構を、6個の締結要素により変速する前進9速後進1速の変速装置の、各2個の遊星ギアの組み合わせが同じにでき、主変速機構の変速形態は異なるが、前置変速機構の変速形態が類似するA及びCタイプの多段変速装置の構造に関するもので、図1と図2にCタイプとAタイプの変速形態を、図3と図4に主変速機構と前置変速機構の各2個の遊星ギア列の色々な組み合わせと変速形態を示す。本発明の1種であるCタイプ9ATの色々な実施例として図5から図10に、模式図と速度線図、及び変速比と遊星ギアの噛合い効率を示し、乗用車の前輪駆動方式となるFF用Cタイプ9ATとして、その具体的な全体構造を図1から図13に示し、乗用車の後輪駆動方式となるFR用Cタイプ9ATとして、その具体的な全体構造を図14に示す。但し、図8に本発明とは異なるFR用Cタイプ9ATの模式図を参考として示す。また、特にトラックやバス用の後輪駆動方式となるFR及びRR用Cタイプ9ATとして、その具体的な全体構造を図15と図16に示す。本発明のもう1種であるAタイプ9ATの色々な実施例として、図18と図19に、模式図と速度線図、及び変速比と遊星ギアの噛合い効率を示し、乗用車の前輪駆動方式となるFF用Aタイプ9ATとして、その具体的な全体構造を図20に示す。特に、図11から図16と図20は、本発明の主変速機構と前置変速機構の各2個の遊星ギア列に対するクラッチとその油圧サーボの配置、及びその構造を具体的に示す実施例である。但し、図17に本発明とは異なるFFとFR用Aタイプ9ATの模式図を参考として示す。なお、主変速機構(MAIN GEAR)の2個の遊星ギア列の組み合わせ6種を、(M−1)から(M−6)、前置変速機構(FRONT GEAR)の2個の遊星ギア列の組み合わせ6種を、(F−1)から(F−6)と命名し、図5から図20の実施例に表記した。さらに、FF用多段自動変速機は、入力軸がカウンターギアでオフセットされて出力されるため、図11,図12のように遊星ギア列を2階建てにしたり、図20のようにブレーキB1、B2の摩擦部材を遊星ギア列の外周に配する場合、オフセットするカウンターギアとの干渉が問題となる。そのため、その干渉状態を図21に示した。また、ブレーキB1、B2の摩擦部材の冷却構造の詳細を図22に示した。
図23から図26は、本発明と対比させるため従来技術として記載した多段自動変速機の参考仕様図で、本願の「背景技術」にその内容を説明した。図26の多段自動変速機は、本願出願人が考案したもので、特に本願と比較するために記載した。図23、図24、図25は、SAE PAPERや雑誌等に発表され実用化された多段自動変速機である。図23から図26に記載したGEAR EFFは、遊星ギアの噛み合い効率で、本願出願人の計算によるものである。
GEAR EFF(遊星ギアの噛み合い効率)は、動力を伝える遊星ギアの噛み合い損失を合計したもので、遊星ギア列の優位性を比較するためのものである。シンプル遊星ギアでは、遊星キャリアに保持される遊星ピニオンギアとサンギア及びリングギアが噛み合い、ダブル遊星ギアでは、遊星キャリアに保持される遊星ピニオンギアとサンギア及びリングギアに加えて遊星ピニオンギア同士が噛み合い、噛み合い損失が発生する。噛み合い損失は、主に歯面のころがりとすべり損失であり、噛み合うギアの歯数比やモジュール、ギア精度、転位量、等々に影響される。したがって、これらの条件を一定にしなければ、比較できないため、モデル化して計算を行った。因みに、遊星ピニオンギアとリングギアの噛み合い損失は、インボリュート曲線部の歯面が同方向の形状で噛み合うため、面圧が低くすべりも少なくなり、インボリュート曲線部の歯面が対抗して噛み合う遊星ピニオンギアとサンギアの40%程度と低くなる。なお、噛み合い損失は、通過動力に比例するため、速度線図により動力を伝達する各ギアの回転速度を求め、遊星キャリアの回転を考慮して相対速度を噛み合い速度とするとともに、遊星ギアの各構成要素の力の釣合いにより伝達トルクを求めたものである。遊星ギア列の動力伝達は、遊星ギア列が連結されているため分散される場合が多い。そこで、リングギアは、サンギアとの歯数比分だけ同方向に、サンギアより大きな力を受け、遊星キャリアは、サンギアとリングギアを加えた力を逆方向に受ける、という力の釣合いの性質を用いれば、各々のギアの負荷トルクを求めることができる。このことにより、各々に噛み合うギアの損失を求め、合計して全体の遊星ギアの噛み合い効率としたものである。
本発明の請求項1は、少なくとも入力軸に対する前進の減速段において、各2個の遊星ギア列からなる4個の構成要素を有した前置変速機構と主変速機構を、6個の締結要素により変速する前進9速後進1速の変速装置の変速形態を限定し、そのクラッチの油圧サーボの配置を請求したもので、図1と図2に本発明の対象となるCタイプ9ATとAタイプ9ATの変速形態を示し、図3と図4に主変速機構と前置変速機構の2個の遊星ギア列の色々な組み合わせを示して、その変速形態を限定したものである。なお、請求項1の実施例は、図5から図10、及び図1と図19にその模式図と変速形態を表し、模式図では不明瞭なクラッチの油圧サーボの配置を図11から図16と図20の具体的な構造図に表したものである。但し、図5から図9、及び図18、図19の一部は、入力軸に対する前進の減速段と増速段において、前置変速機構と主変速機構が4個の構成要素を有するが、図10と図19の一部は、増速段で主変速機構が4個の構成要素とはならないものである。したがって、請求項1では、「少なくとも入力軸に対する前進の減速段において、」と条件を設定した。なお、図18のFR図と図17の模式図は、クラッチの配置が本発明とは異なるが、変速形態が同じであるCタイプとAタイプの9ATを参考として示したものである。請求項2は、Cタイプ9ATにおける前置変速機構の構造と変速形態を限定したもので、図1、図3、図4に基本形態を示すとともに、図5から図10と図11から図16にその実施例を示す。請求項3は、Aタイプ9ATにおける前置変速機構の構造と変速形態を限定したもので、図2、図3、図4に基本形態を示すとともに、図1から図19と図20にその実施例を示す。請求項4は、前置変速機構のブレーキB1とB2の摩擦部材の構造に関するもので、Cタイプ9ATの構造を表す図11から図16と、Aタイプ9ATの構造を表す図20、及びブレーキB1とB2の摩擦部材の詳細構造を表す図22にその構造を示す。請求項5は、A及びCタイプ9ATの前置変速機構の2個の遊星ギアの組み合わせに関するもので、図4にその組み合わせを示す。同じく、請求項6は、A及びCタイプ9ATの主変速機構の2個の遊星ギアの組み合わせに関するもので、図3にその組み合わせを示す。なお、請求項6における一部の2個の遊星ギア列の組み合わせの連結方法を変えるものを、図10と図19の一部にその実施例を示したが、10と図19は、請求項6の「あるいは、第1及び第2遊星ギア列(10、20)をシンプル遊星ギアとして、第1、第2、及び第3構成要素を第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)、プラネットキャリア(P2)、及びリングギア(R2)とし、第1遊星ギア列(10)のリングギア(R1)と第2遊星ギア列(20)のプラネットキャリア(P2)を、第4クラッチ(C4)を介して連結し、第1遊星ギア列(10)のプラネットキャリア(P1)を第2遊星ギア列(20)のリングギア(R2)と連結し、第4構成要素を第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)とした、」を示したもので、「あるいは、第1及び第2遊星ギア列(10、20)をシンプル遊星ギアとして、第1、第2、及び第3構成要素を第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)、プラネットキャリア(P2)、及びリングギア(R2)とし、第1遊星ギア列(10)のリングギア(R1)と第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)、及び第1遊星ギア列(10)のプラネットキャリア(P1)と第2遊星ギア列(20)のプラネットキャリア(P2)の何れか一方を連結するとともに、何れか他方を第4クラッチ(C4)を介して連結し、第4構成要素を第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)とした、」の実施例は本願では示していない。しかし、成立することは明白である。そのため、請求項2では、「あるいは、前記主変速機構の第1、第2、及び第3構成要素を、第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)、プラネットキャリア(P2)、及びリングギア(R2)として第2遊星ギア列(20)のプラネットキャリア(P2)に第3クラッチを介して前記入力軸の回転を入力可能とし、前記主変速機構の第1又は第2構成要素を構成する第1遊星ギア列(10)の構成要素の何れか一方の構成要素と第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)又はプラネットキャリア(P2)を、第4クラッチ(C4)を介して連結可能とし、前記主変速機構の第4構成要素を構成する第1遊星ギア列(10)の構成要素をハウジングに固定し、」という表現をし、請求項3では、「あるいは、前記主変速機構の第1、第2、及び第3構成要素を、第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)、プラネットキャリア(P2)、及びリングギア(R2)として第2遊星ギア列(20)のプラネットキャリア(P2)に第3クラッチ(C3)を介して前記入力軸の回転を入力可能とするとともに第3ブレーキ(B3)を配して制動可能にし、前記主変速機構の第1又は第2構成要素を構成する第1遊星ギア列(10)の構成要素の何れか一方の構成要素と第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)又はプラネットキャリア(P2)を、第4クラッチ(C4)を介して連結可能とし、前記主変速機構の第4構成要素を構成する第1遊星ギア列(10)の構成要素と前記入力軸を連結し、」という表現をして、複数の遊星ギアの組み合わせを包括する請求とした。請求項7は、HEV仕様としてモータジェネレータを搭載したもので、Cタイプを図5と図10の模式図で示し、Aタイプを参考とした図17の模式図で示す。なお、トラックやバス用に、Cタイプの後部にモータジェネレータを搭載した構造図を図16に示す。
<Cタイプ9AT>
図1は、Cタイプ9ATの変速形態を表した速度線図と各変速段における締結要素を示したものである。図1の速度線図において、速度線図は、MAIN GEAR(主変速機構)とFRONT GEAR(前置変速機構)に分れている。MAIN GEAR(主変速機構)の速度線図は、図の右から順に第1、2、3、4構成要素が配置され、FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図は、図の右から順に構成要素A、B、C、Dが配置され、第1構成要素と構成要素Cが連結軸17で連結し、第3構成要素が変速装置の出力となる。速度線図の上下方向が速度を表し、1と記入された値が入力軸の回転速度を示し、0と記入された値が速度ゼロを示す。ここで、入力軸の回転は、第1、第2クラッチC1、C2を介してFRONT GEAR(前置変速機構)の構成要素A、Bに入力可能で、第3クラッチC3を介してMAIN GEAR(主変速機構)の第2構成要素に入力可能となり、FRONT GEAR(前置変速機構)の構成要素D、Bが、第1、第2ブレーキB1、B2で制動可能で、MAIN GEAR(主変速機構)の第4構成要素が、第3ブレーキB3で制動可能となっている。
変速装置の出力となるMAIN GEAR(主変速機構)の第3構成要素の回転は、第1、第2、及び第4構成要素の2個の構成要素の回転を規制することで決まり、第1構成要素と連結軸17で連結されるFRONT GEAR(前置変速機構)の構成要素Cの回転は、構成要素A,B、及びDの2個の構成要素の回転を規制することで決まる。図1の速度線図と各変速段の締結要素を示す表について、変速の動作を説明する。
<前進1速(1st)>
FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図において、第1クラッチC1と第1ブレーキB1が締結され、入力軸の回転は構成要素Aに入力され、構成要素Dが制動され、構成要素Cが大きく減速され、連結軸17を介してMAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素も大きく減速される。第3ブレーキB3で第4構成要素が制動されるため、第3構成要素の回転はさらに減速される。
<前進2速(2nd)>
FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図において、第2クラッチC2と第2ブレーキB1が締結され、入力軸の回転は構成要素Bに入力され、構成要素Dが制動され、構成要素Cが小さく減速され、連結軸17を介してMAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素も小さく減速される。第3ブレーキB3で第4構成要素が制動されるため、第3構成要素の回転はさらに減速される。
<前進3速(3rd)>
FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図において、第1クラッチC1と第2クラッチC2が締結され、入力軸の回転はそのまま連結軸17を介してMAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素に伝わる。第3ブレーキB3で第4構成要素が制動されるため、第3構成要素の回転は減速される。
<前進4速(4th)>
FRONT GEAR(前置変速機構)には動力が流れず、入力軸の回転は第3クラッチC3を介して直接MAIN GEAR(主変速機構)の第2構成要素に入力する。第3ブレーキB3で第4構成要素が制動されるため、第3構成要素の回転は減速される。
<前進5速(5th)>
FRONT GEAR(前置変速機構)の第1クラッチC1と第2クラッチC2が締結され、入力軸の回転はそのまま連結軸17を介してMAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素に伝わる、と同時に第3クラッチが締結されMAIN GEAR(主変速機構)の第2構成要素に伝わるため、全ての遊星ギアがロックされ、入力軸と同じ回転となる。
<前進6速(6th)>
FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図において、第2クラッチC2と第1ブレーキB1が締結され、入力軸の回転は構成要素Bに入力され、構成要素Dが制動され、構成要素Cが小さく減速され、連結軸17を介してMAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素も小さく減速される。また、第3クラッチC3が締結され、入力軸の回転は第3クラッチC3を介して直接MAIN GEAR(主変速機構)の第2構成要素に入力する。FRONT GEAR(前置変速機構)は、前進2速(2nd)と同じとなるが、前進2速(2nd)では第1構成要素を駆動するのに対し、前進6速(6th)では制動するように作用し、第3構成要素の回転は増速される。
<前進7速(7th)>
FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図において、第1クラッチC1と第1ブレーキB1が締結され、入力軸の回転は構成要素Aに入力され、構成要素Dが制動され、構成要素Cが大きく減速され、連結軸17を介してMAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素も大きく減速される。前進6速(6th)と同様に、第3クラッチC3が締結され、入力軸の回転は第3クラッチC3を介して直接MAIN GEAR(主変速機構)の第2構成要素に入力する。FRONT GEAR(前置変速機構)は、前進1速(1st)と同じとなるが、前進1速(1st)では第1構成要素を駆動するのに対し、前進7速(7th)では制動するように作用し、第3構成要素の回転は増速される。
<前進8速(8th)>
FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図において、第1ブレーキB1と第2ブレーキB2が締結され、構成要素Cはロックされて変速機ハウジングに固定され、MAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素も固定される。前進6速(6th)と同様に、第3クラッチC3が締結され、入力軸の回転は第3クラッチC3を介して直接MAIN GEAR(主変速機構)の第2構成要素に入力する。したがって、第3構成要素の回転は増速される。
<前進9速(9th)>
FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図において、第1クラッチC1と第2ブレーキB2が締結され、入力軸の回転は構成要素Aに入力され、構成要素Bが制動され、構成要素Cが逆回転に減速され、連結軸17を介してMAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素も逆転する。前進6速(6th)と同様に、第3クラッチC3が締結され、入力軸の回転は第3クラッチC3を介して直接MAIN GEAR(主変速機構)の第2構成要素に入力する。したがって、第3構成要素の回転は大きく増速される。
<後進(Rev)>
FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図において、前進9速(9th)と同じく、第1クラッチC1と第2ブレーキB2が締結され、入力軸の回転は構成要素Aに入力され、構成要素Bが制動され、構成要素Cが逆回転に減速され、連結軸17を介してMAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素も逆転する。第3ブレーキB3で第4構成要素が制動されるため、第3構成要素の回転はさらに逆回転に減速される。
本発明の「請求項1」「請求項2」は、図1と、図5から図10のFRONT GEAR(前置変速機構)とMAIN GEAR(主変速機構)の速度線図における変速形態について、クラッチC1、C2、C3、C4とその油圧サーボの配置を、図5から図10、及び図11から図16を実施例として請求したものであり、「請求項1」「請求項3」は、図2と、図18及び図19のFRONT GEAR(前置変速機構)とMAIN GEAR(主変速機構)の速度線図における変速形態について、クラッチC1、C2、C3、C4とその油圧サーボの配置を、図18と図19、及び図20を実施例として請求したものである。Cタイプ9ATは、「背景技術」に記載した特許文献7、8、9で、FRONT GEAR(前置変速機構)とMAIN GEAR(主変速機構)、及び6個の締結要素による構造が公開されている。特許文献7、8、9の変速形態は、MAIN GEAR(主変速機構)に関しては本発明と同じであるが、FRONT GEAR(前置変速機構)に関して本発明と異なるものである。このFRONT GEAR(前置変速機構)の変速形態の違いを後述する図4で説明する。
<Aタイプ9AT>
図2は、Aタイプ9ATの変速形態を表した速度線図と各変速段における締結要素を示したものである。図2の速度線図において、速度線図は、MAIN GEAR(主変速機構)とFRONT GEAR(前置変速機構)に分れている。MAIN GEAR(主変速機構)の速度線図は、図の右から順に第1、2、3、4構成要素が配置され、FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図は、図の右から順に構成要素A、B、C、Dが配置され、第1構成要素と構成要素Cが連結軸17で連結し、第3構成要素が変速装置の出力となる。この構成要素の配列は、図1のCタイプ9ATと同一である。ここで、入力軸の回転は、第1クラッチC1を介してFRONT GEAR(前置変速機構)の構成要素Aに入力可能で、あるいは、直接構成要素Aに入力し、第2及び第3クラッチC2、C3を介してMAIN GEAR(主変速機構)の第4及び第2構成要素に入力可能となり、FRONT GEAR(前置変速機構)の構成要素D、Bが、第1、第2ブレーキB1、B2で制動可能で、MAIN GEAR(主変速機構)の第2構成要素が、第3ブレーキB3で、制動可能となっており、あるいは、入力軸の回転が直接構成要素Aに入力する場合は、第1構成要素、または構成要素Cが、第4ブレーキB4で、制動可能となっている。
変速装置の出力となるMAIN GEAR(主変速機構)の第3構成要素の回転は、第1、第2、及び第4構成要素の2個の構成要素の回転を規制することで決まり、第1構成要素と連結軸17で連結されるFRONT GEAR(前置変速機構)の構成要素Cの回転は、構成要素A,B、及びDの2個の構成要素の回転を規制することで決まる。図2の速度線図と各変速段の締結要素を示す表について、変速の動作を説明する。
<前進1速(1st)>
FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図において、第1クラッチC1と第2ブレーキB2が締結され、入力軸の回転は構成要素Aに入力され、あるいは、直接構成要素Aに入力され、構成要素Bが制動され、構成要素Cが逆回転に減速され、連結軸17を介してMAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素も逆転する。第3ブレーキB3で第2構成要素が制動されるため、第3構成要素は、逆転して正回転に大きく減速される。
<前進2速(2nd)>
MAIN GEAR(主変速機構)の速度線図において、第2ラッチC2と第3ブレーキB3が締結され、入力軸の回転は、第4構成要素に入力され、第3ブレーキB3で第2構成要素が制動され、第3構成要素の回転は減速される。ここで、FRONT GEAR(前置変速機構)は無負荷状態となる。
<前進3速(3rd)>
FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図において、第1クラッチC1と第2ブレーキB2が締結され、入力軸の回転は構成要素Aに入力され、あるいは、直接構成要素Aに入力され、構成要素Bが制動され、構成要素Cが逆回転に減速され、連結軸17を介してMAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素も逆転する。つまり、FRONT GEAR(前置変速機構)は、前進1速(1st)と同じ状態となる。ここで、第2クラッチC2が締結され、入力軸の回転は、MAIN GEAR(主変速機構)の第4構成要素に入力され、第1構成要素が逆転するため、第3構成要素の回転は減速される。
<前進4速(4th)>
FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図において、第1ブレーキB1と第2ブレーキB2が締結され、構成要素Cはロックされて変速機ハウジングに固定されるか、あるいは、第1構成要素または構成要素Cが第4ブレーキB4で制動され、MAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素が固定される。ここで、第2クラッチC2が締結され、入力軸の回転は、MAIN GEAR(主変速機構)の第4構成要素に入力され、第1構成要素が固定されるため、第3構成要素の回転は減速される。
<前進5速(5th)>
FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図において、第1クラッチC1と第1ブレーキB1が締結され、入力軸の回転は構成要素Aに入力され、あるいは、直接構成要素Aに入力され、構成要素Dが制動され、構成要素Cが減速され、連結軸17を介してMAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素も減速される。ここで、第2クラッチC2が締結され、入力軸の回転は、MAIN GEAR(主変速機構)の第4構成要素に入力され、第1構成要素が減速されるため、第3構成要素の回転は減速される。
<前進6速(6th)>
MAIN GEAR(主変速機構)の速度線図において、第2クラッチC2と第3クラッチC3が締結され、MAIN GEAR(主変速機構)の遊星ギアがロックされ、第3構成要素の回転は、入力軸と同じ回転となる。ここで、FRONT GEAR(前置変速機構)は無負荷状態となる。
<前進7速(7th)>
FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図において、第1クラッチC1と第1ブレーキB1が締結され、入力軸の回転は構成要素Aに入力され、あるいは、直接構成要素Aに入力され、構成要素Dが制動され、構成要素Cが減速され、連結軸17を介してMAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素も減速される。前進6速(6th)と同様に、第3クラッチC3が締結され、入力軸の回転は第3クラッチC3を介して直接MAIN GEAR(主変速機構)の第2構成要素に入力する。FRONT GEAR(前置変速機構)は、前進5速(5th)と同じとなるが、入力軸の回転が第2構成要素に入力するため、第3構成要素の回転は増速される。
<前進8速(8th)>
FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図において、第1ブレーキB1と第2ブレーキB2が締結され、構成要素Cはロックされて変速機ハウジングに固定されるか、あるいは、第1構成要素または構成要素Cが第4ブレーキB4で制動され、MAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素も固定される。前進6速(6th)と同様に、第3クラッチC3が締結され、入力軸の回転は第3クラッチC3を介して直接MAIN GEAR(主変速機構)の第2構成要素に入力する。したがって、第3構成要素の回転は増速される。
<前進9速(9th)>
FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図において、第1クラッチC1と第2ブレーキB2が締結され、入力軸の回転は構成要素Aに入力され、あるいは、直接構成要素Aに入力され、構成要素Bが制動され、構成要素Cが逆回転に減速され、連結軸17を介してMAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素も逆転する。前進6速(6th)と同様に、第3クラッチC3が締結され、入力軸の回転は第3クラッチC3を介して直接MAIN GEAR(主変速機構)の第2構成要素に入力する。FRONT GEAR(前置変速機構)は、前進1、3速(1st、3rd)と同じとなるが、入力軸の回転が第2構成要素に入力するため、第3構成要素の回転は大きく増速される。
<後進(Rev)>
FRONT GEAR(前置変速機構)の速度線図において、前進5、7速(5、7th)と同じく、第1クラッチC1と第2ブレーキB2が締結され、入力軸の回転は構成要素Aに入力され、あるいは、直接構成要素Aに入力され、構成要素Bが制動され、構成要素Cが減速され、連結軸17を介してMAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素も減速される。第3ブレーキB3で第2構成要素が制動されるため、第3構成要素の回転は逆回転に減速される。
図2のAタイプ9ATのMAIN GEAR(主変速機構)の変速形態は、図1のCタイプ9ATのMAIN GEAR(主変速機構)の変速形態とは全く異なるものであるが、両者とも、前進段において、減速側及び増速側の次段及び次々段への変速を、1個の締結要素の切り替えで成しうる前進9速後進1速の変速装置である。そして、図2のAタイプ9ATの構成要素Cに、入力軸の減速回転と逆回転、及び零回転をもたらすFRONT GEAR(前置変速機構)の変速形態は、図1のCタイプ9ATと同じである。
<MAIN GEAR(主変速機構)>
図3は、Cタイプ9ATとAタイプ9ATのMAIN GEAR(主変速機構)を構成する2個の遊星ギア列を組み合わせた第1、第2、第3、及び第4構成要素を形成する6種の模式図と速度線図を示す。両者の速度線図の共通点は、第1構成要素がFRONT GEAR(前置変速機構)の構成要素Cと連結し、第2構成要素に第3クラッチC3を介して入力軸の回転が入力し、第3構成要素が出力されることである。したがって、段落「0046」と「0049」に記載した如く、第2構成要素に第3クラッチC3を介して入力軸の回転が入力し、第1構成要素がFRONT GEAR(前置変速機構)の構成要素Cと連結して受動側となる増速段での変速形態は同じとなる。両者の違いは、Cタイプ9ATが第4構成要素を第3ブレーキB3で制動可能とするのに対し、Aタイプ9ATは第2クラッチC2を介して入力軸の回転を入力可能とすることである。つまり、Aタイプ9ATでは、第4構成要素を主動側として用いる変速形態があるのに対し、Cタイプ9ATでは、受動側とする変速形態があることである。また、Aタイプ9ATでは、第2構成要素を第3ブレーキB3で制動可能とし、MAIN GEAR(主変速機構)の構成要素に対する締結要素が1個多くなる。したがって、段落「0046」と「0049」に記載した如く、減速段での変速形態に違いがでる。
図3において、Cタイプ9ATとAタイプ9ATのMAIN GEAR(主変速機構)の4個の構成要素は、2個の遊星ギア列からなり、6種の組み合わせを、MAIN GEARの頭文字をとり「M−1」から「M−6」と命名し、模式図で記載する。6種の組み合わせはそれぞれ特徴があるので、構造とともに説明する。なお、記載したラビニョー遊星ギアの他に、シンプル遊星ギアとダブル遊星ギアの組み合わせや、ダブル遊星ギア同士の組み合わせがあるが、噛み合い効率や強度及び構成要素数で欠点が多く、適用しなかった。ここで、2個の遊星ギア列を第1及び第2遊星ギア列10、20とし、第1遊星ギア列10のサンギアをS1、プラネットキャリアをP1、リングギアをR1とし、第2遊星ギア列20のサンギアをS2、プラネットキャリアをP2、リングギアをR2とする。この2個の遊星ギア列からなる6種の組み合わせを、「請求項6」で請求するものである。
<M−1>
第1及び第2遊星ギア列10、20をシンプル遊星ギアとして、第2遊星ギア列20のリングギアR2を第1構成要素とし、第1遊星ギア列10のリングギアR1と第2遊星ギア列20のプラネットキャリアP2を連結して第2構成要素とし、第1遊星ギア列10のプラネットキャリアP1を第3構成要素とし、第1及び第2遊星ギア列10、20の互いのサンギアS1、S2を連結して第4構成要素とした組み合わせである。一般的に、シンプソン遊星ギアと呼ばれる組み合わせである。Cタイプ9ATでは、前進1速段から3速段、及び後進段で、Aタイプ9ATでは、前進1速段と後進段で、第1構成要素にはFRONT GEAR(前置変速機構)で減速された入力軸の大きなトルクが負荷される。第1構成要素は径の大きなリングギアR2であるため、径の小さなサンギアにトルクが作用する場合と比べ、リングギアとサンギアの歯数比分だけ負荷する歯面荷重が小さくなる(歯面荷重=トルク/噛み合い径)。したがって、強度的に有利な組み合わせとなる。加えて、Cタイプ9ATでは、前進の減速段と後進段において、第3ブレーキB3で制動する第4構成要素がサンギアS1、S2となり、サンギアには最も小さなトルクしか負荷されないため、第3ブレーキB3のブレーキトルク容量が小さくなる。因みに、サンギアに負荷するトルクとリングギアに負荷するトルクの合計が、プラネットキャリアが負荷するトルクであり、サンギアに負荷するトルクは、リングギアに負荷するトルクよりその歯数比分小さくなる。Aタイプ9ATでは、第3ブレーキB3は第2構成要素を制動し、第2構成要素はリングギアR1とプラネットキャリアP2のため、ブレーキトルク容量は大きくなる。
<M−2>
第1及び第2遊星ギア列10、20をシンプル遊星ギアとして、第1遊星ギア列10のリングギアR1と第2遊星ギア列20のサンギアS2を連結して第1構成要素とし、第1及び第2遊星ギア列10、20の互いのプラネットキャリアP1、P2を連結して第2構成要素とし、第2遊星ギア列20のリングギアR2を第3構成要素とし、第1遊星ギア列10のサンギアS1を第4構成要素とした組み合わせである。この組み合わせの特徴は、第2遊星ギア列20のリングギアR2とサンギアS2の歯数比を1.3から1.6と小さくして、第1遊星ギア列10の径方向上部に2階建てに重ねて配したことで、軸方向をコンパクトにしたことである。第1構成要素は「M−1」と同じく、径の大きなリングギアR1とサンギアS2となるが、力の釣り合いからリングギアR1の負荷トルクからサンギアS2の負荷トルクを引いた値が第1構成要素の負荷トルクとなるため、第2遊星ギア列20の強度は有利になるが、第1遊星ギア列10には「M−1」の倍の負荷が作用し、強度的に有利とはならない。Cタイプ9ATにおける第3ブレーキB3のブレーキトルク容量は、第4構成要素がサンギアS1のため、「M−1」同様小さくなる。この組み合わせは、Aタイプ9ATには、よい変速比がとりにくいので、向かない。
<M−3>
第1及び第2遊星ギア列10、20をシンプル遊星ギアとして、第2遊星ギア列20のサンギアS2を第1構成要素とし、第1遊星ギア列10のリングギアR1と第2遊星ギア列20のプラネットキャリアP2を連結して第2構成要素とし、第1遊星ギア列10のプラネットキャリアP1と第2遊星ギア列20のリングギアR2を連結して第3構成要素とし、第1遊星ギア列10のサンギアS1を第4構成要素とした組み合わせである。一般的な4ATに多く用いられており、A及びCタイプ9ATの両者において、変速比が適切にとれる。但し、強度的に有利とはならないが、Cタイプ9ATにおける第3ブレーキB3のブレーキトルク容量は、第4構成要素がサンギアS1のため、「M−1」同様小さくなる。
<M−4>
第1遊星ギア列10をダブル遊星ギアとし、第2遊星ギア列20をシンプル遊星ギアとし、リングギアRとプラネットキャリアPを共有させ、ダブル遊星ギアとなる第1遊星ギア列10のリングギアRと噛み合うピニオンギアをロングピニオンとして第2遊星ギア列20のサンギアS2に噛み合わせた所謂ラビニョー遊星ギアとして、第2遊星ギア列20のサンギアS2を第1構成要素とし、共有するプラネットキャリアPを第2構成要素とし、共有するリングギアRを第3構成要素とし、第1遊星ギア列10のサンギアS1を第4構成要素とした組み合わせである。一般的な3AT,4ATやBタイプ6AT、8ATに用いられており、軸方向がコンパクトになる利点があるが、ダブル遊星ギアを用いるため 遊星ギアの噛み合い効率が悪くなる欠点がある。また、Bタイプ6AT、8ATでは、径の小さなサンギアS1に減速された大きなトルクが入力するため、強度的に不利となる。この組み合わせは、Cタイプ9ATには、よい変速比がとりにくいので、向かない。Aタイプ9ATでは、大きなトルクが作用する第1構成要素が、径の大きなサンギアS2となり、負荷頻度も前進1速段と後進段だけで小さく、加えて、前進の減速段で径の小さなサンギアS1には入力軸のトルクしか負荷されず、入力軸の回転が減速され大きなトルクが作用する負荷頻度の大きなBタイプ6AT、8ATより強度的に有利となる。
<M−5>
第1遊星ギア列10をダブル遊星ギアとし、第2遊星ギア列20をシンプル遊星ギアとし、リングギアRとプラネットキャリアPを共有させ、ダブル遊星ギアとなる第1遊星ギア列10のリングギアRと噛み合うピニオンギアをロングピニオンとして第2遊星ギア列20のサンギアS2に噛み合わせた所謂ラビニョー遊星ギアとして、第1遊星ギア列10のサンギアS1を第1構成要素とし、共有するリングギアRを第2構成要素とし、共有するプラネットキャリアPを第3構成要素とし、第2遊星ギア列20のサンギアS2を第4構成要素とした組み合わせである。Cタイプ9ATにおける第3ブレーキB3のブレーキトルク容量は、第4構成要素がサンギアS1のため、「M−1」同様小さくなり、かつまた、よい変速比がとれるが、Aタイプ9ATには、よい変速比がとりにくいので、向かない。なお、第1構成要素が、径の小さなサンギアS1となるため、「M−1」、「M−2」、及び「M−4」に比べ、強度的に不利となる。
<M−6>
第1及び第2遊星ギア列10、20をシンプル遊星ギアとして、第2遊星ギア列20のサンギアS2を第1構成要素とし、第1遊星ギア列10のリングギアR1を第2構成要素とし、第1及び第2遊星ギア列10、20の互いのプラネットキャリアP1、P2を連結して第3構成要素とし、第1遊星ギア列10のサンギアS1と第2遊星ギア列20のリングギアR2を連結して第4構成要素とした組み合わせである。Aタイプ9ATではよい変速比がとれるが、Cタイプ9ATには向かない。この組み合わせは、シンプル遊星ギアの組み合わせである「M−1」、「M−2」、「M−3」と比べ、全体的に利点に乏しい。
MAIN GEAR(主変速機構)を構成する2個の遊星ギア列からなる「M−1」から「M−6」の6種の組み合わせのうち、「請求項2」、「請求項3」、及び「請求項6」に記載した「主変速機構の第1、第2、及び第3構成要素を第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)、プラネットキャリア(P2)、及びリングギア(R2)として」に該当する組み合わせは、「M−2」と「M−3」であり、この2種は、増速段で第2遊星ギア列20にだけ動力が伝わるため、増速段において、第1遊星ギア列10と第2遊星ギア列20の連結を解除し、第1構成要素の回転をCタイプ9ATではハウジングに固定し、Aタイプ9ATでは入力軸に固定すれば、第1構成要素の高回転化を防ぐことができる。第1遊星ギア列10と第2遊星ギア列20の連結を解除するため、第1及び第2構成要素となる連結部のどちらか一方を、第4クラッチC4を介して連結した構造を請求したものである。このことは、後述する図10と図19で説明する。
<FRONT GEAR(前置変速機構)>
図4は、Cタイプ9ATとAタイプ9ATのFRONT GEAR(前置変速機構)を構成する2個の遊星ギア列を組み合わせた構成要素A、B、C、及びDを形成する6種の模式図と速度線図を示す。両者の速度線図の共通点は、構成要素DとBを第1及び第2ブレーキB1、B2で制動可能とし、構成要素Aに第1クラッチC1を介して入力軸の回転を入力し、構成要素Cを出力してMAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素と連結させることである。第1クラッチC1を締結して構成要素Aに入力軸の回転を入力し、第1ブレーキB1を締結して構成要素Dを制動することにより入力軸の減速回転を得、第1クラッチC1を締結して構成要素Aに入力軸の回転を入力し、第2ブレーキB2を締結して構成要素Bを制動することにより入力軸の逆回転を得、第1及び第2ブレーキB1、B2を締結して構成要素DとBを制動することにより零回転を得ることができる。なお、Aタイプ9ATにおいて、1個の減速回転と逆回転、及び零回転を得る別の手段として、構成要素Aと入力軸を連結し、構成要素CまたはMAIN GEAR(主変速機構)の第1構成要素を、第4ブレーキB4で制動可能とすることによっても可能となる。その場合、第1ブレーキB1を締結して構成要素Dを制動することにより入力軸の減速回転を得、第2ブレーキB2を締結して構成要素Bを制動することにより入力軸の逆回転を得、第4ブレーキB4を締結して零回転を得ることができる。Cタイプ9ATは、Aタイプ9ATの1個の減速回転と逆回転、及び零回転を得る3種の変速形態に加え、構成要素Bに第2クラッチC2を介して入力軸の回転を入力する手段を有しており、第2クラッチC2を締結して構成要素Bに入力軸の回転を入力し、第1ブレーキB1を締結して構成要素Dを制動することにより、第1クラッチC1を締結して構成要素Aに入力軸の回転を入力する場合より回転数の大きな入力軸の減速回転を得、第1及び第2クラッチC1,C2を締結して入力軸と直結した回転を得、都合5種類の変速形態を得ることができる。
本発明の「請求項1」は、Cタイプ9ATとAタイプ9ATのFRONT GEAR(前置変速機構)とMAIN GEAR(主変速機構)の変速形態において、クラッチC1、C2、C3、C4とその油圧サーボの配置を請求するものである。第1及び第2ブレーキB1、B2を締結して零回転を得る変速形態も共通するが、Aタイプ9ATには、第4ブレーキB4で零回転を得る変速形態もある。なお、1個の減速回転と逆回転を得る手段は、図26に記載した特許文献7、8、及び9のように、構成要素Bを出力とし、クラッチで入力軸の回転を構成要素AとDに切り換えて入力することでも可能となる。この方式は、Cタイプ9ATの5種の変速形態を得るには有効な手段となるが、Aタイプ9ATの3種の変速形態を得る手段としては、減速比が適切な値にとれないことや、クラッチが合計で4個になりコンパクトに配することができなくなる欠点がある。なお、Cタイプ9ATの5種の変速形態を得る手段として、本発明と特許文献7、8、及び9の手段はそれぞれ多少の利点欠点はあるが、大差はない。
図4において、Cタイプ9ATとAタイプ9ATのFRONT GEAR(前置変速機構)の4個の構成要素は、2個の遊星ギア列からなり、6種の組み合わせを、FRONT GEARの頭文字をとり「F−1」から「F−6」と命名し、模式図で記載する。6種の組み合わせはそれぞれ特徴があるので、構造とともに説明する。なお、記載したラビニョー遊星ギアの他に、シンプル遊星ギアとダブル遊星ギアの組み合わせや、ダブル遊星ギア同士の組み合わせがあるが、噛み合い効率や強度及び構成要素数で欠点が多く、適用しなかった。ここで、2個の遊星ギア列を第3及び第4遊星ギア列30、40とし、第3遊星ギア列30のサンギアをS3、プラネットキャリアをP3、リングギアをR4とし、第4遊星ギア列40のサンギアをS4、プラネットキャリアをP4、リングギアをR4とする。この2個の遊星ギア列からなる6種の組み合わせを、「請求項5」で請求するものである。
<F−1>
第3及び第4遊星ギア列30、40をシンプル遊星ギアとして、第4遊星ギア列40のリングギアR4を構成要素Aとし、第3遊星ギア列30のリングギアR3と第4遊星ギア列40のプラネットキャリアP4を連結して構成要素Bとし、第3遊星ギア列30のプラネットキャリアP3を構成要素Cとし、第3及び第4遊星ギア列30、40の互いのサンギアS3、S4を連結して構成要素Dとした組み合わせである。一般的に、シンプソン遊星ギアと呼ばれる組み合わせである。Cタイプ9ATでは構成要素AとBに、Aタイプ9ATでは構成要素Aに、入力軸の回転が入力される。この場合、構成要素Aは径の大きなリングギアR4であり、構成要素Bは径の大きなリングギアR3であるため、径の小さなサンギアにトルクが作用する場合と比べ、リングギアとサンギアの歯数比分だけ歯面荷重が小さくなる。したがって、第3及び第4遊星ギア列30、40のギア巾が小さくでき、強度的に有利な組み合わせとなる。加えて、第1ブレーキB1で制動する構成要素DがサンギアS3、S4となり、サンギアには最も小さなトルクしか負荷されないため、第1ブレーキB1のブレーキトルク容量が小さくなる。このシンプソン遊星ギアは、噛み合い効率もよく、3ATで最も多く使用されており、特許文献9でも主体的に用いている。但し、連結が少し複雑な構造となる難点がある。特許文献9の代表的な実施例を示す本願記載の図26では、2個の減速回転は入力軸を構成要素Aのリングギアに入力する変速形態となるが、逆回転は入力軸を構成要素Dのサンギアに入力する変速形態となり、本発明と比べ、強度的に一部不利となる。また、図26では、前進1速の発進段における第1ブレーキB1のトルク容量は本発明の1.5倍程度大きくなり、このことも、第1ブレーキB1を発進デバイスとして滑らせて用いる場合、本発明のほうが有利となる。変速比の特性としては、入力軸の回転が構成要素Aに入力し、構成要素Dが制動される場合、比較的減速比が大きくとれないので、ギアレンジを8から9にする場合に適する。それでも、従来の特許文献4、5、6に記載した7、8ATのギアレンジより20%は大きくとれる。
<F−2>
第3及び第4遊星ギア列30、40をシンプル遊星ギアとして、第3及び第4遊星ギア列30、40の互いのサンギアS3、S4を連結して構成要素Aとし、第3遊星ギア列30のプラネットキャリアP3を構成要素Bとし、第3遊星ギア列30のリングギアR3と第4遊星ギア列40のプラネットキャリアP4を連結して構成要素Cとし、第4遊星ギア列40のリングギアR4を構成要素Dとした組み合わせである。一般的に、シンプソン遊星ギアと呼ばれる組み合わせであるが、入力軸の回転が入力される構成要素AがサンギアS4となるため、第4遊星ギア列40の負荷荷重を小さくすることはできない。但し、「F−1」より軸方向がコンパクトに連結できるので、ギア巾が大きくなっても全体の軸方向の長さは、「F−1」とほぼ同じにできる。変速比の特性としては、入力軸の回転が構成要素Aに入力し、構成要素Dが制動される場合、比較的減速比が大きくなるので、Cタイプ9ATのギアレンジを10以上にする場合に適する。Aタイプ9ATには、変速比の連なりが「F−1」より悪くなるので、向かない。
<F−3>
第3及び第4遊星ギア列30、40をシンプル遊星ギアとして、第4遊星ギア列40のサンギアS4を構成要素Aとし、第3遊星ギア列30のリングギアR3と第4遊星ギア列40のプラネットキャリアP4を連結して構成要素Bとし、第3遊星ギア列30のプラネットキャリアP3と第4遊星ギア列40のリングギアR4を連結して構成要素Cとし、第3遊星ギア列30のサンギアS3を構成要素Dとした組み合わせである。変速比の自由度が高く、希望する変速比がとれるが、強度に対する利点はなく、軸方向の長さを短くはできない。したがって、FR方式には向くが、軸方向を短くしなければならないFF方式には「F−1」、「F−2」より劣る。
<F−4>
第3遊星ギア列30をダブル遊星ギアとし、第4遊星ギア列40をシンプル遊星ギアとし、リングギアRとプラネットキャリアPを共有させ、ダブル遊星ギアとなる第3遊星ギア列30のリングギアRと噛み合うピニオンギアをロングピニオンとして第4遊星ギア列40のサンギアS4に噛み合わせた所謂ラビニョー遊星ギアとして、第3遊星ギア列30のサンギアS3を構成要素Aとし、共有するリングギアRを構成要素Bとし、共有するプラネットキャリアPを構成要素Cとし、第4遊星ギア列40のサンギアS4を構成要素Dとした組み合わせである。「F−1」と同じような変速比となり、強度的な利点はないがコンパクトになるため、軸方向の長さは「F−1」と同じようにできる。但し、ダブル遊星ギアを用いるため、噛み合い効率が「F−1」より悪くなる。
<F−5>
第3及び第4遊星ギア列(30、40)をシンプル遊星ギアとして、第4遊星ギア列(40)のサンギア(S4)を構成要素Aとし、第3遊星ギア列(30)のリングギア(R3)を構成要素Bとし、第3及び第4遊星ギア列(30、40)の互いのプラネットキャリア(P3、P4)を連結して構成要素Cとし、第3遊星ギア列(30)のサンギア(S3)と第4遊星ギア列(40)のリングギア(R4)を連結して構成要素Dとした組み合わせである。「F−2」と同じような変速比となり、強度的な利点もない。
<F−6>
第3及び第4遊星ギア列(30、40)をシンプル遊星ギアとして、第3遊星ギア列(30)のサンギア(S3)と第4遊星ギア列(40)のリングギア(R4)を連結して構成要素Aとし、第3及び第4遊星ギア列(30、40)の互いのプラネットキャリア(P3、P4)を連結して構成要素Bとし、第3遊星ギア列(30)のリングギア(R3)を構成要素Cとし、第4遊星ギア列(40)のサンギア(S4)を構成要素Dとした組み合わせである。「F−1」と同じような変速比となり、強度的な利点もない。
FRONT GEAR(前置変速機構)を構成する2個の遊星ギア列からなる「F−1」から「F−6」の6種の組み合わせのうち、「F−4」と「F−6」は、「F−1」と同じ変速比となり、「F−5」は、「F−2」と同じ変速比となる。しかも、「F−1」及び「F−2」より欠点が多いため、実施例は「F−1」、「F−2」、及び「F−3」を用いた。
MAIN GEAR(主変速機構)とFRONT GEAR(前置変速機構)からなるCタイプ9ATの実施例である図5から図10と、Aタイプ9ATの実施例である図18と図19は、「M−1」から「M−6」と、「F−1」から「F−6」の各6種の組み合わせにおいて、より適切な組み合わせを用いたものである。
<C−タイプ9AT(F−1、M−2)>
図5は、MAIN GEAR(主変速機構)に「M−2」の第1遊星ギア列10の径方向上部に第2遊星ギア列20を2階建てに重ねて配した、極めてコンパクトになる変速装置である。乗用車のFF用として、原動機と入力軸との間にダンパを配して直結とし、発進デバイスを第1及び第2ブレーキB1、B2とした模式図と、トラックやバスのFR(RR)用として、発進デバイスにモータジェネレータを出力軸に連結した模式図を示す。乗用車では、変速装置の後部にモータジェネレータを配するスペースはない。本願の図26に参考として記載した特許文献9のC1−タイプ9ATと比較し、MAIN GEAR(主変速機構)は同一であり、各3個のクラッチとブレーキの配置や、変速装置への動力の入出力形態が同じとなる。したがって、大きさは同じとなる。FRONT GEAR(前置変速機構)の「F−1」となる2個の遊星ギア列の組み合わせも同じとなるが、段落「0061」で説明したように、4個の構成要素A、B、C、及びDの動力の入出力形態のみ異なるものである。特許文献9では、この極めてコンパクトになる配置を特許申請しており、本願でも同様、軸方向に並んで配された「F−1」と「M−2」の、「M−2」の「F−1」から遠ざかる位置にクラッチC3と、その軸方向外側に油圧サーボを配し、「F−1」の「M−2」から遠ざかる位置にクラッチC1、C2と、その軸方向外側に油圧サーボを配した構造を特許申請するものである。変速比を比較すると、図26の特許文献9が前進1速段の4.811から前進9速段の0.492で、ギアレンジが9.79となり、本発明の「F−1、M−2」の組み合わせが前進1速段の4.353から前進9速段の0.495で、ギアレンジが8.79となり、若干、変速比がクロスになる。ギアの噛み合い効率は図26の特許文献9と大差はなく、本願の図23に示したTOYOTAのBタイプ8ATよりかなりよく、本願の図24に示したBENZのCタイプ7ATと図25に示したZFのDタイプ8ATには若干及ばない。なお、この組み合わせは、入出力軸を同軸に配さねばならないFR用としても極めてコンパクトな配置が可能となる。乗用車にもこの方式が適用できるが、入出力軸をコンパクトに同軸に配さねばならない用途としては、車体後部にパワーラインを配さねばならないRR仕様のバスがある。特に、原動機を含めたパワーラインを車体の後部に横置きに配さなければならないインターシティバスや観光バスに最適となる。なお、トラックやバスのFR(RR)用変速装置は、乗用車と異なり、原動機にぶら下げて配されるため、ある程度胴回りを太くし、軸方向をコンパクトにして強度的に耐え得る形状にしなければならず、この組み合わせは最適となる。
<C−タイプ9AT(F−2、M−2)>
図6は、図5同様、MAIN GEAR(主変速機構)に「M−2」の第1遊星ギア列10の径方向上部に第2遊星ギア列20を2階建てに重ねて配した、極めてコンパクトになる変速装置である。クラッチC1、C2、C3の配置に関しては、図5同様、軸方向に並んで配された「F−2」と「M−2」の、「M−2」の「F−2」から遠ざかる位置にクラッチC3と、その軸方向外側に油圧サーボを配し、「F−2」の「M−2」から遠ざかる位置にクラッチC1、C2と、その軸方向外側に油圧サーボを配した構造となる。FF及びFR用として、発進デバイスにトルクコンバータを用いた模式図を示す。FRONT GEAR(前置変速機構)の「F−2」となる2個の遊星ギア列の組み合わせも「F−1」と同じとなるが、段落「0064」で説明したように、4個の構成要素A、B、C、及びDの構成が異なる。FF用の模式図を構造図に表した図12からわかるように、第4遊星ギア列40のギア巾は「F−1」より大きくなるが、連結がコンパクトになるので、大きさは図26の特許文献9や図5と同じく、極めてコンパクトな配置となる。変速比を比較すると、「F−2、M−2」の組み合わせが前進1速段の5.190から前進9速段の0.507で、ギアレンジが10.24と図26の特許文献9より大きくなる。原動機の出力に対して、車体重量が大きくなるような車両に向いたギアトレンとなるが、変速比の連なりはワイドでもなく、一般の車両に適した変速比となり、ギアの噛み合い効率も「F−1、M−2」の組み合わせとほとんど同じとなる。当然、「F−1、M−2」の組み合わせと同様、トラックやバスの変速装置として、最適となる。
<C−タイプ9AT(F−3、M−2)>
図7は、図5同様、MAIN GEAR(主変速機構)に「M−2」の第1遊星ギア列10の径方向上部に第2遊星ギア列20を2階建てに重ねて配した、コンパクトになる変速装置である。クラッチC1、C2、C3の配置に関しては、図5同様、軸方向に並んで配された「F−3」と「M−2」の、「M−2」の「F−3」から遠ざかる位置にクラッチC3と、その軸方向外側に油圧サーボを配し、「F−3」の「M−2」から遠ざかる位置にクラッチC1、C2と、その軸方向外側に油圧サーボを配した構造となる。FF及びFR用として、発進デバイスにトルクコンバータを用いた模式図を示す。FRONT GEAR(前置変速機構)の「F−3」となる2個の遊星ギア列の組み合わせは、段落「0065」で説明したように、強度に対する利点はなく、第3及び第4遊星ギア列30,40のギア巾を「F−1」より大きくしなければならず、FF用としては「F−1、M−2」及び「F−2、M−2」の組み合わせより劣る。変速比に関しては、「F−1、M−2」や「F−2、M−2」に対応可能な幅広い自由度がある。図7に示した変速比は、図26の特許文献9の変速比に近くなるものを記載し、前進1速段が4.858、前進9速段が0.495で、ギアレンジが9.81とした。ギアの噛み合い効率は、「F−1、M−2」及び「F−2、M−2」の組み合わせとほとんど同じとなる。当然、「F−1、M−2」の組み合わせと同様、トラックやバスの変速装置として、最適となる。
<C−タイプ9AT(F−1、M−1)>
図8は、MAIN GEAR(主変速機構)に「M−1」のシンプソン遊星ギアを配した変速装置である。FF用として記載した模式図のクラッチC1、C2、C3の配置に関しては、図5同様、軸方向に並んで配された「F−1」と「M−1」の、「M−1」の「F−1」から遠ざかる位置にクラッチC3と、その軸方向外側に油圧サーボを配し、「F−1」の「M−1」から遠ざかる位置にクラッチC1、C2と、その軸方向外側に油圧サーボを配した構造となる。但し、FR用として記載した模式図は、本発明とは異なり、クラッチC3が「F−1」と「M−1」の間に配される組み合わせとなる。後述する図9と図9のFR用模式図の具体的な構造を示した図14のMAIN GEAR(主変速機構)を構成する「M−1」のシンプソン遊星ギアは、歯数比も含めて図8と全く同一のものであり、図14から明確なように、図8のFRとして記載した模式図のようにクラッチC3の摩擦部材を第1遊星ギア列10の径方向外側に配置すると径が大きくなりすぎる。当然、変速装置の軸方向を長くしてクラッチC3の摩擦部材を「F−1」と「M−1」の間に配せば成立するが、クラッチC3の油圧サーボの油路と「M−1」の第1及び第2遊星ギア列10、20への潤滑油路が混在するため構造が複雑となる。本発明は、変速装置の軸長がコンパクトで構造がシンプルになるクラッチの配置を請求したもので、図8のFRとして記載した模式図からはわかりにくいが、図9及び図14と比較すれば一目瞭然である。MAIN GEAR(主変速機構)を構成する第1及び第2遊星ギア列10、20は、段落「0053」で説明したように、負荷荷重が小さくなるため、ギア巾が小さく配置できる。但し、「M−1」は第1及び第2遊星ギア列10、20を軸方向に並べて配するため、2階建てにして配する「M−2」より、第1遊星ギア列10のギア巾が小さくても、全体の配置巾は大きくなる。変速比は、FRONT GEAR(前置変速機構)に左右され、ここでは「F−1」を用いるので、図5の「F−1、M−2」の組み合わせと同じように、前進1速段が4.351、前進9速段が0.529で、ギアレンジが8.22となる。ギアの噛み合い効率は、MAIN GEAR(主変速機構)にシンプソン遊星ギアを用いたので、前進の減速段において、図5、図6、及び図7の「M−2」を用いたギアトレンよりよく、図24に示したBENZのCタイプ7ATと同等となる。なお、乗用車のFR用変速装置は、原動機と一体として変速装置も懸架され、軸方向の長さはあまり制限されないため、ギアの噛み合い効率がよいこの組み合わせは最適となる。
<C−タイプ9AT(F−2、M−1)>
図9は、図8同様、MAIN GEAR(主変速機構)に「M−1」のシンプソン遊星ギアを配した変速装置である。FF及びFR用として、発進デバイスにトルクコンバータを用いた模式図を示す。クラッチC1、C2、C3の配置に関しては、図5同様、軸方向に並んで配された「F−2」と「M−1」の、「M−1」の「F−2」から遠ざかる位置にクラッチC3と、その軸方向外側に油圧サーボを配し、「F−2」の「M−1」から遠ざかる位置にクラッチC1、C2と、その軸方向外側に油圧サーボを配した構造となる。FRONT GEAR(前置変速機構)は、図6同様「F−2」を用い図8の「F−1」とは異なるが、FF用としての変速装置の大きさは図8と変わらない。但し、FR用としてのクラッチC3とその油圧サーボの配置が図8と異なり、本発明の「F−2」から遠ざかる「M−1」の後部に配される。変速比は、FRONT GEAR(前置変速機構)に左右され、ここでは「F−2」を用いるので、図6の「F−2、M−2」の組み合わせと同じように、前進1速段が5.456、前進9速段が0.541で、ギアレンジが10.09となる。ギアの噛み合い効率は、図8と変わらない。当然、乗用車のFR用変速装置として、最適となる。
<C−タイプ9AT(F−3、M−3)>
図10は、MAIN GEAR(主変速機構)に「M−3」の組み合わせを配した変速装置である。FF及びFR用として、発進デバイスにモータジェネレータ(MG)を入力軸と連結したHEV仕様の模式図を示す。MAIN GEAR(主変速機構)を構成する第1及び第2遊星ギア列10、20は、段落「0055」で説明したように、負荷荷重が小さくならないため、ギア巾が小さく配置できない。ここでは、第1遊星ギア列10のサンギアS1を直接ハウジングに固定し、プラネットキャリアP2と第1遊星ギア列10のリングギアR1の間にドグクラッチとなる第4クラッチC4を配する構造とした。これは、図5から図9の速度線図に記載したように、MAIN GEAR(主変速機構)の第4構成要素が増速段で高回転となるのを防ぐためである。MAIN GEAR(主変速機構)の第4構成要素が固定状態となる前進の減速段と後進段では、第1遊星ギア列10と第2遊星ギア列20は互いのプラネットキャリアとリングギアが連結して両方の遊星ギア列に動力が負荷されるが、入力軸の直結段及び増速段では、MAIN GEAR(主変速機構)の第1、第2、及び第3構成要素が、第2遊星ギア列20のサンギアS2、プラネットキャリアP2、リングギアR2となるため、第1遊星ギア列10には動力が負荷されない。第1及び第2遊星ギア列10,20が連結状態では、図5から図9の速度線図に記載したように、MAIN GEAR(主変速機構)の第4構成要素が増速段で高回転となる。そこで、MAIN GEAR(主変速機構)の第4構成要素をハウジングに常時固定し、プラネットキャリアP2と第1遊星ギア列10のリングギアR1の間にドグクラッチとなる第4クラッチC4を配し、直結段及び増速段で第4クラッチC4を開放し連結を解くと、速度線図に示すように、第1及び第2遊星ギア列10,20が、それぞれ別の速度線図を形成し、高回転化を防ぐことができる。なお、第4クラッチC4をドグクラッチとしたのは、この連結力が入力軸トルクの7倍と大きくなるためで、摩擦部材による締結では、スペース的に困難となる。ドグクラッチは回転が同期しなければ係脱が困難であり、制御性が課題となる。「請求項2」と「請求項6」の一部は、この構造に関して請求したものである。なお、FRONT GEAR(前置変速機構)には図7と同じく「F−3」を用いて変速比の自由度が高いものとし、前進1速段が5.096、前進9速段が0.565で、ギアレンジが9.02とした。ギアの噛み合い効率は、「F−1、M−2」及び「F−2、M−2」と「F−1、M−1」及び「F−2、M−1」の組み合わせの間となる。なお、図10に関して、次の図11から図16示す構造図は示さなかったが、クラッチC3とドグクラッチとなるクラッチC4とを、「M−3」の「F−3」から遠ざかる位置に配することができるので、これらのクラッチの油圧サーボを、「M−3」の軸方向外側に配することができる。クラッチC1,C2は、図5同様、軸方向に並んで配された「F−3」と「M−3」の、「M−3」から遠ざかる「F−3」の軸方向外側にクラッチC1、C2の油圧サーボを配した構造となる。
図11から図16は、本発明におけるCタイプ9ATの実用性を確認するためにコンセプトした構造図であり、全て実用性の高いもので、「請求項1」と「請求項2」に示したクラッチとその油圧サーボの配置が、変速装置をコンパクトする具体的な事例である。乗用車のFF用の代表的な実施例として、図5、図6、及び図9の模式図を図11、図12、及び図13として構想設計し、乗用車のFR用の代表的な実施例として、図9の模式図を図14とし、トラックやバスのFR(RR)用の代表的な実施例として、図6の模式図を図15とし、図15を図5の形態のHEV仕様として図16に構想設計したものである。
<C−タイプ9AT(F−1、M−2)FF(D/R)>
図11は、図5の模式図を原動機からの入力動力を300Nmとしてコンセプト設計した構造図であり、軸方向長さが320mmと、従来の4ATよりコンパクトになる。当然、コストも低減され、将来有望な先進的ATの形態になり得るものである。各遊星ギア列の歯数や変速比は、図5に基づいて設定したものである。図11において、図の左側前方の図示しない原動機から回転変動吸収ダンパ200cに動力が伝達され、変速装置の入力軸3に導かれる。変速装置全体を収めるハウジングは、前部のフロントケース1aと後部の変速機ケース1bとからなり、並行に配された中継軸7及び出力軸を含んだディファレンシャル装置9とを軸支する母体となる。回転変動吸収ダンパ200cに連結された入力軸3は直接チャージングポンプを駆動し、前部の一端が保持部材2a、2b、2cに配された軸受け4aで、後部の一端が変速機ケース1bに配された軸受け4bで軸支される。保持部材2a、2b、2cは、乾式のフロントケース1aと湿式の変速機ケース1bを隔てる隔壁であり、入力軸3を軸支し変速装置のチャージングポンプを保持する。中継軸7は、一端がフロントケース1aに配された軸受け4gで、もう一端が変速機ケース1bに配された軸受け4fで軸支され、入力軸3と同軸上の出力カウンターギア5と噛み合うカウンターギア6がスプラインで連結されると共に、出力軸を含んだディファレンシャル装置9に動力を伝達するピニオンギアが一体成形されている。また、出力軸部はディファレンシャル装置9のキャリアとなり、一端がフロントケース1aに配された軸受け4iで、もう一端が変速機ケース1bに配された軸受け4hで軸支され、ピニオンギアと一体の中継軸7と噛み合う大歯車8がボルトで締結されている。周知の如く、ディファレンシャル装置9はピニオンギアとサイドギアからなり、サイドギアには自動変速装置の出力軸が連結される。
変速機ケース1bは、後部が閉ざされており、軸方向中央部には隔壁100が、外周でボルトにより変速機ケース1bに一体として締結されている。隔壁100は、内周部が変速機前方に突き出た逆L字型の円筒形状をしており、内周円筒部の外周にアンギュラ軸受け4eが背面合わせでネジにより固定され、出力カウンターギア5を軸支する。出力カウンターギア5の前方には、第1遊星ギア列10が配され、第1遊星ギア列10を取り巻く形で外周部に第2遊星ギア列20が2階建てで配され、さらに、その前方に第3クラッチC3が配される。第1と第2遊星ギア列10、20はシンプル遊星ギアで、第1遊星ギア列10のリングギアR1の外周に第2遊星ギア列20のサンギアS2が一体形成されて、リングギアR1の歯部にL字形状の連結軸17が第1遊星ギア列10の前方でスプライン連結をする。連結軸17は入力軸の周りにブシュ4cで回転自在に軸支され、隔壁100の内周円筒部内側を通り後部に延材される。連結軸17の周りには、ブシュ4mで、第1と第2遊星ギア列10、20の連結されたプラネットキャリアP1、P2の隔壁100の内周円筒部まで延材した円筒部に、回転自在に軸支された連結軸18が、第1遊星ギア列10のサンギアS1にスプライン連結され、隔壁100の内周円筒部内側を通り後部に延材される。第1遊星ギア列10のプラネットキャリアP1は、リングギアR1とサンギアS1に噛み合う複数の遊星ギアを保持し、出力カウンターギア5側のサイド部材が外周方向に伸びて、第2遊星ギア列20のプラネットキャリアP2のサイド部材となり第2遊星ギア列20のリングギアR2とサンギアS2に噛み合う複数の遊星ギアを保持するとともに、隔壁100の内周側に延材され、隔壁100の内周円筒部内周に配されたニードルベアリング4kに軸支される。ここで複数の遊星ギアを保持しアンバランスになりやすい大重量の一体化されたプラネットキャリアP1、P2が、隔壁100にしっかり軸支されたことになる。第2遊星ギア列20のプラネットキャリアP2のもう一方のサイド部材には、第3クラッチC3のハブが連結され、第2遊星ギア列20のリングギアR2は、出力カウンターギア5に、それぞれの歯部をスプラインとした連結部材で連結される。なお、第2遊星ギア列20は第1遊星ギア列10より歯面荷重が小さくなるため、巾が狭くて済み、中継軸7のピニオンギアとカウンターギア6の間の隙間に配される。
2階建ての第1と第2遊星ギア列10、20の前方に配された第3クラッチC3は、入力軸3に溶着されたクラッチドラムと、プラネットキャリアP2のサイド部材に連結したハブに係止される摩擦部材(ドライブプレート)と、クラッチドラムに係止される摩擦部材(ドリブンプレート)と、リティニングリングで軸方向が規制されるエンドプレートと、摩擦部材を押圧するピストンと、ピストンの作動室の遠心油圧をキャンセルするキャンセラープレートと、ピストンを開放状態に戻すリターンスプリングからなっており、入力軸3と、一体のプラネットキャリアP1、P2との締結及び開放をつかさどる。なお、クラッチドラムとピストンとの間、及びピストンとキャンセラープレートとの間の作動室には、保持部材2bのボス部外周から作動油が供給され、油圧サーボを形成する。
図11と隔壁100の後方に配された前置変速装置において、隔壁100から軸方向順に、第3ブレーキB3と、第3遊星ギア列30と、第4遊星ギア列40と、第2クラッチC2と、第1クラッチC1とが配される。外周でボルトにより変速機ケース1bに一体として締結されている隔壁100は、剛性の高い鋼で作られており、円周方向の中間部よりすこし上部に設けられた円筒状のドラムが、後部に配された第3遊星ギア列30の上部まで延材され、このドラムの内周部に第3ブレーキB3の作動油圧室が形成され、外周部に第1ブレーキB1の作動油圧室が形成される。第3ブレーキB3は、第1遊星ギア列10のサンギアS1に連結する連結軸18と、第3遊星ギア列30の外周に延材された連結軸18のスプライン部に係止される摩擦部材(ドライブプレート)と、隔壁100のドラムの内周スプラインに係止される摩擦部材(ドリブンプレート)と、リティニングリングで軸方向が規制されるエンドプレートと、摩擦部材を押圧するピストンと、ピストンを開放状態に戻すリターンスプリングとからなっており、第1遊星ギア列10のサンギアS1の制動及び開放をつかさどる。第3ブレーキB3のトルク容量は、段落「0056」で記載したように、入力軸のトルクを1として、前進1速で2.149となり、後進(Rev)で1.804と、一般的な発進段で締結するブレーキのトルク容量より小さい。加えて、変速時にすべらす必要もなく、エネルギーを吸収し放熱させる必要性がない仕様としたため、比較的摩擦部材の径と枚数が小さくできる。また、内周が小さくなる隔壁100の内周部からドラムにかけて、大きな面積がとれる位置にピストンを配することができるので、摩擦部材の押し付け力が大きくなり、第3ブレーキB3のトルク容量を満足さすことができる。通常の4ATでは、発進段のブレーキの摩擦部材は、変速機ケースの径の大きな内周に枚数6〜7枚で配せられ、それに比べると半分の容量で済む。この構想図の特徴は、第3ブレーキB3の油圧サーボを隔壁100に配したことにある。つまり、従来の発進段で締結するブレーキと比べ小さなトルク容量で済み、変速時もすべらす必要のない第3ブレーキB3の特徴を生かし、隔壁100に第3ブレーキB3の油圧サーボとなるピストンとリターンスプリングを配し、図示しないコントロールバルブから変速機ケース1bを介して隔壁100の第3ブレーキB3の大きな面積がとれる作動油圧室に作動油を導き、隔壁100に配された摩擦部材の押し付け及び開放を行うようにしたことである。この構造により、第3ブレーキB3をコンパクトに配することができる。
第3遊星ギア列30と第4遊星ギア列40は、隔壁100側から順に軸方向に並べて配される。第3遊星ギア列30の遊星ギアは、サンギアS3とリングギアR3と噛み合い、プラネットキャリアP3に軸支される。リンギギアR3は、隔壁100側でL字型の連結部材により第3遊星ギア列30の内周部内側で入力軸3に軸支され、プラネットキャリアP3の第4遊星ギア列40側のサイド部材は、リンギギアR3の外周を回り、隔壁100側の内周部まで延材されて連結軸17にスプライン連結し、サンギアS3は、 第4遊星ギア列40のサンギアS4と一体成形される。
第4遊星ギア列40の遊星ギアは、サンギアS4とリングギアR4と噛み合い、プラネットキャリアP4に軸支される。リングギアR4には、軸方向がニードルベアリングで規制された第1クラッチC1のクラッチハブが溶着され、プラネットキャリアP4の隔壁100と反対側のサイド部材は、逆L字型をして第4遊星ギア列40の内周部内側でリンギギアR3に連結したL字型の連結部材にスプライン連結し、もう一方のサイド部材は、第4遊星ギア列40の外周まで延材されて曲げられ、第2クラッチC2のクラッチハブとなる。サンギアS3と一体となるサンギアS4は、プラネットキャリアP4のサイド部材に軸支されるとともに、 歯部に第3ブレーキの外周まで延材されて曲げられた第1ブレーキB1のブレーキハブがスプライン連結される。さらに、第2クラッチC2のクラッチハブの外周には、第1及び第2クラッチC1、C2の外周まで延材されて曲げられた第2ブレーB2のブレーキハブがスプライン連結される。
変速機ケース1bの閉ざされた後部には、第2クラッチC2と第1クラッチC1が、クラッチドラムが共有された2連クラッチとして配される。第1、第2クラッチC1、C2は、共有したクラッチドラムと、クラッチドラムの内周スプラインの軸方向中央にリティニングリングで固定されたエンドプレートと、エンドプレートの後方でクラッチドラムの内周スプラインに係止される第1クラッチC1の摩擦部材(ドリブンプレート)と、リングギアR4に溶着されたた第1クラッチC1のクラッチハブの外周スプラインに係止される摩擦部材(ドライブプレート)と、摩擦部材を押圧するピストンと、エンドプレートの前方でクラッチドラムの内周スプラインに係止される第2クラッチC2の摩擦部材(ドリブンプレート)と、プラネットキャリアP4に連結された第2クラッチC2のクラッチハブの外周スプラインに係止される摩擦部材(ドライブプレート)と、摩擦部材をリティニングリングで固定されたL字型フランジで押圧するピストンと、スタッドピンでピストンに連結され、ピストンをクラッチドラムに戻すリターンスプリングの支点となるキャンセラプレートとから成っている。第1、第2クラッチC1、C2のクラッチドラムは、変速機ケース1bの閉ざされた後部の内周ボス部外周から作動油が供給される入力軸3にスプライン連結されたクラッチハブに溶着され、第1クラッチC1のピストンと第2クラッチC2のピストンは、クラッチドラムを挟んで配され、第1クラッチC1は、プッシュタイプのピストンで入力軸3とリングギアR4の締結及び開放をつかさどり、第2クラッチC2は、プルタイプのピストンで入力軸3とプラネットキャリアP4の締結及び開放をつかさどる。2連クラッチC1、C2は、クラッチドラムとリターンスプリングとキャンセラプレート及びエンドプレートを共有して軸方向にコンパクトに配することができるもので、本願出願人が特開2007−51651で提案したものである。ここで、2連クラッチC1、C2の油圧サーボは、第3及び第4遊星ギア列30、40の後方に配される。
第3ブレーキB3の外周に配された第1ブレーキB1は、隔壁100の円筒状ドラムの外周部に形成された作動油圧室に配されたピストンと、円筒状ドラムにリティニングリングで固定されたスプリングホルダーとピストンとの間に配されたリターンスプリングと、 変速機ケース1bの内周に形成されたスプラインに係止される摩擦部材(ドリブンプレート)、及びエンドプレートと、第3及び第4遊星ギア30、40の一体となるサンギアS3、S4にスプライン連結されたブレーキハブに係止される摩擦部材(ドライブプレート)とからなり、サンギアS3、S4の制動及び開放をつかさどる。
2連クラッチとなる第1、第2クラッチC1、C2の外周に配された第2ブレーキB2は、変速機ケース1bの後端外周部に形成された作動油圧室に配されたピストンと、変速機ケース1bの外周部にリティニングリングで固定されたスプリングホルダーとピストンとの間に配されたリターンスプリングと、 変速機ケース1bの内周に形成されたスプラインに係止される摩擦部材(ドリブンプレート)、及び変速機ケース1bの外周部に軸方向がリティニングリングで規制されるエンドプレートと、クラッチハブの外周にスプライン連結されたブレーキハブに係止される摩擦部材(ドライブプレート)とからなり、プラネットキャリアP4とリングギアR3の制動及び開放をつかさどる。
第1ブレーキB1と第2ブレーキB2は、発進デバイスとしての構造を表したものである。第1ブレーキB1のトルク容量は、入力軸のトルクを1として、前進1速で1.189となり、第2ブレーキB2のトルク容量は、後進(Rev)で2.814となる。ATとして変速時にショック吸収のため短時間すべらすような使い方をするなら、本願の構造図の第1ブレーキB1では、摩擦部材(ドライブプレート)、及び(ドリブンプレート)の枚数は各3枚で十分となる。後進(Rev)ではそれほどすべらす必要もなく、第2ブレーキB2の摩擦部材(ドライブプレート)、及び(ドリブンプレート)の枚数は各2枚で十分となる。しかしながら、本願では発進デバイスとして用いるため、車両のクリープが実現できるように、低トルク低回転で常時すべらす仕様にしなければならない。問題は摩擦部材のすべりによる発熱を、いかに吸収し冷却するかである。まず第1に、本願では、摩擦部材のスティックスリップによるシャダー振動をなくすため、ディッシュプレートをドリブンプレートに保持させ、ピストンで押圧する構造とした。第2に、第1及び第2ブレーキB1、B2の摩擦部材の枚数を倍の6枚と4枚にするとともに、1枚当りの摩擦表面積を増やすことで冷却面積を増やした。第3に、摩擦部材の摩擦部の中央同一径部に複数の貫通長穴を設け、摩擦部材がすべっている間中、エンドプレートを通して変速機ケース1bから冷却油を貫通穴に流し込み、確実に冷却できる構造とした。詳細は、図22に記載している。本願出願人が提案した特開2009−236234にも同様のブレーキ構造を提案しているが、このブレーキは特許文献9のように発進段となる前進1速と後進(Rev)で共通に用いるブレーキに関しての提案である。本発明では、前進1速と後進(Rev)で用いるブレーキは、それぞれ第1ブレーキB1と第2ブレーキB2と別々になるため、「請求項6」で第1及び第2ブレーキB1、B2の構造を請求した。なお、第1及び第2ブレーキB1、B2を発進デバイスとして用いた図11以外の図面においても、第1及び第2ブレーキB1、B2の摩擦部材を発進デバイスと同じ仕様で記した。これは、トルクコンバータや流体継手を発進デバイスとして用いた場合も、トルクコンバータや流体継手の容量を上げて、第1及び第2ブレーキB1、B2の摩擦部材をすべらせて発進に用い、燃費の向上を可能としたためである。
<C−タイプ9AT(F−2、M−2)FF(T/C)>
図12は、図6の模式図を原動機からの入力動力を300Nmとしてコンセプト設計した構造図であり、軸方向長さが370mmと、6ATとかわらないか、むしろコンパクトになる。図11の発進デバイスをトルクコンバータ200aに変え、FRONT GEAR(前置変速装置)を「F−1」から「F−2」に変えたもので、MAIN GEAR(主変速装置)は同じである。回転変動吸収ダンパ200cがトルクコンバータ200aに変わったため、軸方向長さが320mmから370mmと長くなる。なお、トルクコンバータ200aは、「背景技術」の段落「0018」で説明したように、本願出願人の特開2008−196660による、独立した油圧室を備えるにもかかわらず、外部からの油通路が2通路で済む、コンパクトなロックアップクラッチを備えたトルクコンバータとした。各遊星ギア列の歯数や変速比は、図6に基づいて設定したものである。図12において、図の左側前方の図示しない原動機から流体伝導装置であるトルクコンバータ200aに動力が伝達され、変速装置の入力軸3に導かれる。トルクコンバータ200aは、インペラ、タービン、ステータ、及びインペラとタービンの係脱を行うロックアップクラッチからなり、インペラがチャージングポンプを駆動し、ステータがワンウェイクラッチ介して保持部材2cでハウジングとなるフロンとケースに固定され、タービンが入力軸3に連結される。変速装置全体を収めるハウジングは、前部のフロントケース1aが図11より長くなるだけで、MAIN GEAR(主変速装置)の「F−1」の配置構造や後部の変速機ケース1bや並行に配された中継軸7及び出力軸を含んだディファレンシャル装置9は、図11と同じとなる。しかも、隔壁100の後部に配される第1及び第2クラッチC1、C2と第1、第2、及び第3ブレーキB1、B2、B3の構造配置も図11と同じとなるので、これらの説明を省略する。
図12の隔壁100の後方に配された前置変速装置において、隔壁100から軸方向順に、第3ブレーキB3と、第4遊星ギア列40と、第3遊星ギア列30と、第2クラッチC2と、第1クラッチC1とが配される。つまり、図11とは、第3遊星ギア列30と、第4遊星ギア列40が逆に配されることになる。したがって、第4遊星ギア列40と第3遊星ギア列30は、隔壁100側から順に軸方向に並べて配され、第4遊星ギア列40の遊星ギアは、サンギアS4とリングギアR4と噛み合い、プラネットキャリアP4に軸支される。第4遊星ギア列40のリングギアR4は、軸方向がニードルベアリングで規制されるとともに、第3ブレーキB3の円筒状のドラムの外周まで延材されて曲げられた第1ブレーキB1のブレーキハブが溶着され、プラネットキャリアP4の隔壁100側のサイド部材が第4遊星ギア列40の内周部にL字状に曲げられて連結軸17とスプライン連結され、もう一方のサイド部材が第3遊星ギア列30のリングギアR3に溶着される。サンギアS4は、 第3遊星ギア列30のサンギアS3と一体成形される。
第3遊星ギア列30の遊星ギアは、サンギアS3とリングギアR3と噛み合い、プラネットキャリアP3に軸支される。第4遊星ギア列40のサンギアS4と一体成形されるサンギアS3は、入力軸3に軸支され第3遊星ギア列30の後部に延材される第1クラッチC1のクラッチハブと内周部でスプライン連結される。プラネットキャリアP3は、隔壁100側から遠ざかる方のサイド部材が第3遊星ギア列30の外周部に延材され第2クラッチC2のクラッチハブになるとともに、第1及び第2クラッチC1、C2の外周まで延材されて曲げられた第2ブレーB2のブレーキハブがスプライン連結される。前述の如く、リングギアR3は、第4遊星ギア列40のプラネットキャリアP4に連結される。
段落「0064」で説明したように、FRONT GEAR(前置変速装置)を「F−2」にした場合は、「F−1」と比べ第4遊星ギア列40の負荷荷重を小さくすることはできない。そのため、第4遊星ギア列40のギア巾を大きくしなければならないが、 第3遊星ギア列30のリングギアR3が第4遊星ギア列40のプラネットキャリアP4に連結され連結軸17と連結する構造が、「F−1」よりコンパクトになるので、ギア巾を小さくできる「F−1」と同じスペースで配置できる。なお、前進1速と後進(Rev)の変速比が「F−1」より大きくなるため、その分、第1及び第2ブレーキB1、B2の容量は大きくしなければならないが、一般的なATより小さくて済み、有利となる。
<C−タイプ9AT(F−2、M−1)FF(T/C)>
図13は、図9の模式図を原動機からの入力動力を300Nmとしてコンセプト設計した構造図であり、軸方向長さが400mmと、FFとしては限界の長さとなる。しかし、トルクコンバータ200aに代えて後述する流体継手200bを用いれば、軸方向が10mm短くなり、図11のような回転振動吸収ダンパ200cを用いれば、全長が350mmと4ATと同等、またはそれ以下となる。図13は、図12で使用しているMAIN GEAR(主変速装置)を「M−2」から「M−1」に変えたもので、発進デバイスのトルクコンバータ200aや、FRONT GEAR(前置変速装置)の「F−2」等、全体の配置や動力伝達構造は図12と同じであり、それらの説明を省略する。なお、段落「0074」で説明したように、図11や図12で用いたMAIN GEAR(主変速装置)である「M−2」の第1遊星ギア列10より、「M−1」の第1遊星ギア列10のギア巾は小さくできるが、第1遊星ギア列10と第2遊星ギア列20を軸方向に並べて配するため、2階建てに配する「M−2」より、軸方向が30mm長くなる。
図13の隔壁100の前方に配された主変速装置において、変速機ケース1bは、後部が閉ざされており、軸方向中央部には隔壁100が、外周でボルトにより変速機ケース1bに一体として締結されている。隔壁100は、内周部が変速機前方に突き出た逆L字型の円筒形状をしており、内周円筒部の外周にアンギュラ軸受け4eが背面合わせでネジにより固定され、出力カウンターギア5を軸支する。出力カウンターギア5の前方には、第1遊星ギア列10と第2遊星ギア列20が軸方向順に配され、さらに、その前方に第3クラッチC3が配される。第1遊星ギア列10の複数の遊星ギアは、リングギアR1とサンギアS1に噛み合い、プラネットキャリアP1に保持される。プラネットキャリアP1は、サイド部材と遊星ギアの軸支部材からなり、サイド部材には外周部で連結部材が溶着され、連結部材が出力カウンターギア5の歯部にスプライン連結し、プラネットキャリアP1と出力カウンターギア5を連結する。サンギアS1は、第2遊星ギア列20のサンギアS2と一体成形されて、内周に円筒状の連結軸18がスプライン連結され、リングギアR1は、第2遊星ギア列20の外周側に曲げられて、第3クラッチC3の摩擦部材(ドライブプレート)を係止するプラネットキャリアP2のサイド部材のスプラインに連結し軸方向がリティニングリングで規制されて係止される。第2遊星ギア列20の複数の遊星ギアは、リングギアR2とサンギアS2に噛み合い、プラネットキャリアP2に保持される。プラネットキャリアP2は、サイド部材と遊星ギアの軸支部材からなり、前方に配されたサイド部材は、L字型で第2遊星ギア列20の内周に曲げられて第1遊星ギア列10のサンギアS1と一体のサンギアS2をブシュで軸支し、もう一方のサイド部材は、前述の如く、第1遊星ギア列10のリングギアR1とスプライン連結し、第3クラッチC3の摩擦部材(ドライブプレート)を係止する。リングギアR2には、前方の歯部にL字型の連結軸17がスプライン連結される。主変速装置の軸中心には、入力軸3が配され、入力軸3は、円筒状の連結軸17をブシュ4cで軸支し、連結軸17は、プラネットキャリアP2のL字型のサイド部材をブシュで軸支する。また、第1遊星ギア列10のプラネットキャリアP1の隔壁100側のサイド部材は、出力カウンターギア5にインロー部Yと歯部のスプライン連結により連結され、隔壁100の内周側にL字型に曲げられ、ブシュ4mで円筒状の連結軸18を軸支する。連結軸18を、軸支しやすい連結軸17で軸支しない理由は、連結軸18が極めて高回転をし、連結軸17が逆回転をして、相対回転速度が過大になる場合があるためで、第4構成要素の連結軸18と速度線図の隣に位置する第3構成要素の出力カウンターギア5と一体のサイド部材が軸支すれば、相対回転速度が最も小さくなるよう配することができる。
第2遊星ギア列20の前方に配された第3クラッチC3は、入力軸3に溶着されたクラッチドラムと、プラネットキャリアP2のサイド部材に係止される摩擦部材(ドライブプレート)と、クラッチドラムに係止される摩擦部材(ドリブンプレート)と、リティニングリングで軸方向が規制されるエンドプレートと、摩擦部材を押圧するピストンと、ピストンの作動室の遠心油圧をキャンセルするキャンセラープレートと、ピストンを開放状態に戻すリターンスプリングからなっており、入力軸3と、第2構成要素となる第1遊星ギア列10のリングギアR1と連結した第2遊星ギア列20のプラネットキャリアP2との締結及び開放をつかさどる。なお、摩擦部材は、第2遊星ギア列20の外周に配され、クラッチドラムとピストンとの間、及びピストンとキャンセラープレートとの間の作動室には、保持部材2bのボス部外周から作動油が供給され、油圧サーボを形成する。
第1遊星ギア列10の歯数比は(ZR1/ZS1=2.800)、第2遊星ギア列20の歯数比は(ZR2/ZS2=2.200)で、第1遊星ギア列10のリングギアR1の方が、第2遊星ギア列20のリングギアR2よりかなり大きくなる。この小さい第2遊星ギア列20のリングギアR2の外周に第3クラッチC3の摩擦部材を配すれば、軸方向が短くできる。なお、主変速装置で最大外径となる第3クラッチC3のクラッチドラムの外径と、第1遊星ギア列10のリングギアR1の外径は、ほぼ同じで、この大きさでは、出力軸に配された大歯車8とは干渉しない。
<C−タイプ9AT(F−2、M−1)FR>
図14は、図9のFRの模式図を、トルクコンバータを発進デバイスとして乗用車用にコンセプト設計した構造図である。乗用車のFR用変速装置では、軸方向の長さ規制が厳しくないが、軽量化が必要なため、MAIN GEAR(主変速装置)とFRONT GEAR(前置変速装置)には、負荷荷重が小さくなり遊星ギアの噛み合い効率もよい「M−1」と「F−1」及び「F−2」が適切で、ここではギアレンジが大きくなる「F−2」を図14の実施例とした。主変速装置と前置変速装置の配置は、FRでは軸方向の長さが規制されないため、図8にFRとして記載した出力軸を内周からだす形態も可能となるが、主変速装置と前置変速装置を隔壁100で分離して隔壁100に主変速装置の第3ブレーキB3の油圧サーボを配する構造の方がシンプルになる。また、FRといえども、体積が増えると重量増につながるため、ある程度のコンパクトさは必要となる。そこで、前置変速装置を、各摩擦部材が遊星ギア列の外周に配される構造とし、主変速装置を、第3クラッチC3の摩擦部材が遊星ギア列の外周に配される構造とした。図14では、発進デバイスとしてトルクコンバータ200aを用いているが、当然、トルクコンバータに代えて後述する流体継手200bを用いることや、回転変動吸収ダンパ200cを用いて第1、第2ブレーキB1、B2を発進デバイスとすることができる。
図14において、変速機ケース1dは一体形状をしており、前部でトルクコンバータ200aを保持し、後部で出力軸3cを軸受け4i、4hで軸支する。変速機ケース1dの前部には、乾式となるトルクコンバータ側と湿式となる変速機側を隔てる保持部材2a、2bがボルトで一体として締結され、中央部には、主変速装置と前置変速装置を隔てる隔壁100が一体としてスプライン締結される。変速機の左前方には、図示しない原動機が配され、トルクコンバータ200aを介して動力が変速機に入力される。トルクコンバータ200aの出力部に連結された入力軸3aは、保持部材2a、2bに配された軸受け4a、4bで軸支され、保持部材2a、2bに隣接した第1及び第2クラッチC1、C2の共有されたクラッチドラムが溶着される。変速機の回転中心部には、入力軸3aとスプライン連結した入力軸3bが配され、後端で出力軸3cに軸受け4dで軸支されるとともに、第3クラッチC3のクラッチドラムが溶着される。ここで、入力軸3a、3bは、変速機の前端で第1及び第2クラッチC1、C2と連結し、後端で第3クラッチC3と連結したことになる。入力軸3bの外周には軸受け4cで軸支された連結軸17が配される。連結軸17は、隔壁100の内周を通して前置変速装置の出力構成要素と主変速装置の第1構成要素を連結する。
隔壁100の前方に配されたFRONT GEAR(前置変速装置)部は、隔壁100から軸方向順に、ワンウェイクラッチOWCと、第1ブレーキB1と、第4遊星ギア列40(S4、P4、R4)と、第3遊星ギア列30(S3、P3、R3)と、第2クラッチC2と、第1クラッチC1とが配される。第3遊星ギア列30と第4遊星ギア列40は、シンプル遊星ギアであり、第3遊星ギア列30のサンギアS3が第4遊星ギア列40のサンギアS4と一体成形され、第3遊星ギア列30のリングギアR3が、第4遊星ギア列40のプラネットキャリアP4のサイド部材に溶着され、プラネットキャリアP3が、第3遊星ギア列30の外周部に延材され第2クラッチC2のクラッチハブになるとともに、第1及び第2クラッチC1、C2の外周まで延材されて曲げられた第2ブレーB2のブレーキハブがスプライン連結される。第3遊星ギア列30のリングギアR3に溶着されたプラネットキャリアP4のサイド部材が、第4遊星ギア列40の内周部にL字状に曲げられて連結軸17とスプライン連結され、リングギアR4は、外周にスプライン加工がなされ軸方向がニードルベアリングで規制されて第1ブレーキB1の摩擦部材を係止し、サンギアSと一体成形されるサンギアS4が、入力軸3に軸支され第3遊星ギア列30の前部に延材される第1クラッチC1のクラッチハブと内周部でスプライン連結される。
第1及び第2クラッチC1、C2は、摩擦部材を軸方向に並べて第3遊星ギア列30の外周に配した、第2クラッチC2がプルタイプで第1クラッチC1がプッシュタイプとなる2連クラッチであり、図11、図12、及び図13の第1及び第2クラッチC1、C2と同じ構造で、第1及び第2クラッチC1、C2の油圧サーボは、第3及び第4遊星ギア列30、40の前方に配される。ここで、第1クラッチC1は、入力軸3aの回転を第3及び第4遊星ギア列30、40のサンギアS3、S4に入力可能とし、第2クラッチC2は、入力軸3aの回転を第3遊星ギア列30のプラネットキャリアP3に入力可能とする。第1及び第2クラッチC1、C2の外周には、第2ブレーキB2が配され、前端の保持部材2aに油圧サーボが配され変速機ケース1dの内周スプラインに摩擦部材が係止される。ここで、第2ブレーキB2は、第3遊星ギア列30のプラネットキャリアP3を制動可能にする。隔壁100は、断面がT字型形状で、内周が連結軸17近くまで延材され、内周の前方が逆L字型に成形され、逆L字の外周にワンウェイクラッチOWCのアウターレースがスプライン連結され、後述する第1及び第2遊星ギア列10、20の一体成形されるサンギアS1、S2の延材部をインナーレースとしてアウターレースとの間にワンウェイクラッチOWCが配される。隔壁100のT字型形状の前方となる外周のドラム部が、第4遊星ギア列40の外周に延材され変速機ケース1dと一体になるよう変速機ケース1dの内周にスプライン連結され、外周のドラム部に第1ブレーキB1の摩擦部材が係止され、ワンウェイクラッチOWCの外周部の隔壁100に第1ブレーキB1の油圧サーボが配される。ここで、第1ブレーキB1は、第4遊星ギア列40のリングギアR4を制動可能にし、ワンウェイクラッチOWCは、第1及び第2遊星ギア列10、20のサンギアS1、S2を入力軸の回転と同方向にしか回転させない役目を担う。図14の第1及び第2ブレーキB1、B2の摩擦部材は、「請求項4」に記載しているように、同一径中央円周部に複数の貫通穴を設け、摩擦部材の端部側面から貫通穴に冷却油を供給するような構造になっている。特に、第4遊星ギア列40の外周の広い空間に摩擦部材を配することで、第1ブレーキB1のすべりによる発熱に対応できる冷却構造を実現したものである。なお、第2ブレーキB2も摩擦部材を配する空間が広くとれ、同一径中央円周部に複数の貫通穴を設け、摩擦部材の端部側面から貫通穴に冷却油を供給するような構造がとれる。なお、ワンウェイクラッチOWCは補助的な役目であり、特に装備する必要はない。
隔壁100の後方に配されたMAIN GEAR(主変速装置)部は、隔壁100から軸方向順に、第3ブレーキB3と、第1遊星ギア列10(S1、P1、R1)と、第2遊星ギア列20(S2、P2、R2)と、第3クラッチC3と、出力軸3cが配される。第1遊星ギア列10と第2遊星ギア列20は、シンプル遊星ギアであり、第4構成要素となる1遊星ギア列10のサンギアS1が第2遊星ギア列20のサンギアS2と一体成形され、第1遊星ギア列10のサンギアS1の前方の隔壁100側には第3ブレーキB3の摩擦部材を係止するハブ(連結軸)18がスプライン連結される。第3構成要素となる第1遊星ギア列10のプラネットキャリアP1は、隔壁100側のサイド部材が外周方向に延材され、第1遊星ギア列10と第2遊星ギア列20の外周部を通る出力軸3cのパーキングギア6aの直下に溶着された出力ドラム19とスプライン連結する。第1構成要素となる第2遊星ギア列20のリングギアR2は、後方で連結軸17とスプライン連結し、第2構成要素となる第2遊星ギア列20のプラネットキャリアP2は、前方のサイド部材が第2遊星ギア列の外周に延材され、後方に延材される第1遊星ギア列10のリングギアR1とスプライン連結するとともに、第3クラッチC3の摩擦部材を係止する。
T字型形状の隔壁100は、後部外周のドラムに第3ブレーキB3の摩擦部材を係止し、隔壁100の内周から外周にかけ第3ブレーキB3の油圧サーボが配される。ここで、第3ブレーキB3は、第1及び第2遊星ギア列10,20の連結されたサンギアS1、S2を制動可能にする。なお、第3ブレーキB3はすべらす必要がないため、摩擦部材の締結面圧を上げる仕様として隔壁100の内周から外周にかけ摩擦部材を押圧するピストンを配したので、受圧面積が大きくなり締結力が増し、摩擦部材の枚数や摩擦面積を減らしてコンパクトに配すことができるとともに、連れ周り損失を低減することができる。第3クラッチC3は、入力軸3bの後端に溶着されたドラムが第2遊星ギア列20の外周まで延材され摩擦部材を係止し、入力軸の回転を第1遊星ギア列10のリングギアR1に連結された第2遊星ギア列20のプラネットキャリアP2に入力可能とする。なお、第3クラッチC3の油圧サーボは第1及び第2遊星ギア列10、20の後方に配され、作動油は、変速機ケース1bの後部の出力軸3cを軸支する軸受け4iと4hの間に配されたスリーブ2dから、出力軸3cと入力軸3bの後方に設けられた油穴を通って供給され、入力軸3bの前方に設けられた第1及び第2遊星ギア列10、20の潤滑油路と混在することはない。
<C−タイプ9AT(F−2、M−2)FR>
図15は、図6のFRの模式図を、トルクコンバータを発進デバイスとしてトラックやバス用にコンセプト設計した構造図である。トラックやバスのFR(RR)用変速装置では、原動機から伸びた剛性の高いベルハウジングに変速装置がぶら下がる形で搭載されるため、軸方向のコンパクトさと変速機ケースの剛性が要求される。当然、軽量化も必要なため、乗用車と同じくMAIN GEAR(主変速装置)とFRONT GEAR(前置変速装置)には、負荷荷重が小さくなり遊星ギアの噛み合い効率もよい「M−1」と「F−1」及び「F−2」が適切となるが、ここではMAIN GEAR(主変速装置)によりコンパクトとなる「M−2」を用い、FRONT GEAR(前置変速装置)にギアレンジが大きくなる図14と同じ「F−2」を用いた。なお、この組み合わせは、図12に示した乗用車用FFと同じであり、当然、乗用車用FRにも適切な組み合わせとなる。また、トラックやバスでは、リターダやクーラを変速装置に付けることが必要となるため、後部に流体式リターダやクーラが配置できるよう、変速機ケースにリアケースを取り付ける形態とした。構造的には乗用車用としてコンセプトした図14より、遊星ギアを2階建てにした分胴回りを太くするとともに隔壁100を変速機ケース1dと一体化してハウジングの剛性を上げ、ワンウェイクラッチOWCを外してブレーキB1をコンパクト設計にすることで、既存のトラックやバスの6ATと同等以下のコンパクトさを実現した。
図15において、ハウジングは変速機ケース1dとリアケース1eに2体化されており、変速機ケース1dの軸方向中央部に隔壁が設けられ、隔壁の前方にFRONT GEAR(前置変速装置)が配され、隔壁の後方にMAIN GEAR(主変速装置)が配される。これは、ブレーキやクラッチといった締結要素も含めて図14と同じ配置である。隔壁の前方には第1ブレーキB1の油圧サーボが配され、隔壁の後方には第3ブレーキB3の油圧サーボが配される。図14では、第1ブレーキB1のピストンにリターンスプリングを付けたが、変速機ケース1dの外周溝の摩擦部材の両端のエンドプレートとドリブンプレートの間にリターンスプリングを配したので、リターンスプリング分軸方向が短くなる。隔壁前方のFRONT GEAR(装置前置変速)の構造は、図14と全く同じのため、説明を省略する。変速機の回転中心部には、入力軸3aとスプライン連結した入力軸3bが配され、後端で出力軸3cに軸受け4dで軸支されるとともに、第3クラッチC3のクラッチドラムが溶着される。ここで、入力軸3a、3bは、変速機の前端で第1及び第2クラッチC1、C2と連結し、後端で第3クラッチC3と連結し、第1及び第2クラッチC1、C2の油圧サーボは第3及び第4遊星ギア列30、40の前方に配され、第3クラッチC3の油圧サーボは第1及び第2遊星ギア列10、20の後ろ方に配されたことになる。入力軸3bの外周には軸受け4cで軸支された連結軸17が配される。連結軸17は、隔壁の内周を通して前置変速装置の出力構成要素と主変速装置の第1構成要素を連結する。
隔壁の後方には、隔壁から軸方向順に、第3ブレーキB3と、第1遊星ギア列10(S1、P1、R1)と、第1遊星ギア列10の外周部に2階建てとなる第2遊星ギア列20(S2、P2、R2)と、第3クラッチC3と、出力軸3cが配される。第1遊星ギア列10と第2遊星ギア列20は、シンプル遊星ギアであり、第4構成要素となる1遊星ギア列10のサンギアS1の円筒部がFRONT GEAR(装置前置変速)まで延材され、ニードルローラベアリングで連結軸17の外周に軸支され、前方で第3ブレーキB3の摩擦部材を係止するハブ(連結軸)18がスプライン連結される。第3構成要素となる第2遊星ギア列20のリングギアR2は後方に延材され、出力軸3cのパーキングギア6aの直下に溶着された連結部材19とスプライン連結する。第1構成要素となる第1遊星ギア列10のリングギアRと第2遊星ギア列20のサンギアS2は、一体成形され、後方で連結軸17とスプライン連結し、第2構成要素となる第1及び第2遊星ギア列10、20のプラネットキャリアP1,P2は、前方のサイド部材が一体となり内周部が前方に延材されてサンギアS1の円筒部外周にニードルベアリングで軸支され、第2遊星ギア列20の後方のサイド部材が後方に延材されて第3クラッチC3の摩擦部材を係止する。
隔壁後部の変速機ケース1dのスプライン部には第3ブレーキB3の摩擦部材を係止され、第1遊星ギア列10の連結されたサンギアS1を制動可能にする。なお、第3ブレーキB3はすべらす必要がないため、摩擦部材の締結面圧を上げる仕様として隔壁の内周から外周にかけ摩擦部材を押圧するピストンを配したので、受圧面積が大きくなり締結力が増し、摩擦部材の枚数や摩擦面積を減らしてコンパクトに配すことができるとともに、連れ周り損失を低減することができる。第3クラッチC3は、入力軸3bの後端に溶着されたドラムが第2遊星ギア列20の外周まで延材され摩擦部材を係止し、入力軸の回転を第1及び第2遊星ギア列20のプラネットキャリアP1,P2に入力可能とする。なお、第3クラッチC3の作動油は、変速機ケース1bの後部の出力軸3cを軸支する軸受け4iと4hの間に配されたスリーブ2fから、出力軸3cと入力軸3bに設けられた油穴を通って供給され、入力軸3bの前方に設けられた第1及び第2遊星ギア列10、20の潤滑油路と混在することはない。
<C−タイプ9AT(F−2、M−2)MG FR>
図16は、図15と変速装置部を同一にし、発進デバイスとして後端にモータジェネレータを配したトラックやバス用にコンセプト設計した構造図である。乗用車と異なり、トラックやバスの変速装置は、後部にスペースがあるため補 機の搭載が可能となる。当然、トルクコンバータは必要としなく、原動機直結となる回転吸収ダンパ200cを用いた。欧米では多くの場合、トラックやバスのATには流体式リターダがクーラとともに搭載される。当然、図16の後部に流体式リターダを搭載することも可能となるが、発進デバイスとリターダの両特性を兼ね備えたモータジェネレータの方が、より燃費が向上する。
図16において、ハウジングは変速機ケース1dとリアケース1eに2体化されており、変速装置部は図15と同一のため説明を省略する。図15のトルクコンバータに変えて回転吸収ダンパ200cとして高性能な油圧ダンパ(ハイドロダンパ)を用いた。リアケース1eには玉軸受け4i、4hで出力軸3cが軸支され出力フランジ3dがスプライン連結される。出力フランジ3dの外周はリアケース1eに沿って前方に延材され外周にモータジェネレータ300のロータが装着される。リアケース1eの外周部には後方にフランジが設けられ、モータケース1fがボルトで取り付けられる。モータケース1fにはモータジェネレータ300のステータが装着され、ロータの駆動と制動を行う。
<A−タイプ9AT(F−1、M−1)>
図17は、本発明のもう1種の変速形態であるAタイプ9ATと同じ変速形態でありながら、クラッチの配置が本発明とは異なる模式図であり、次の図18、図19の発進デバイスをモータジェネレータ(MG)とした場合の参考として示したものである。図18、図19のAタイプ9ATにも発進デバイスとしてモータジェネレータ(MG)の配置が可能となる。原動機と入力軸との間に回転変動吸収ダンパを配し、発進デバイスは第1及び第2ブレーキB1、B2としてもよいが、原動機をアシストするモータジェネレータ(MG)とし、所謂モータアシスト型ハイブリッド車両(HEV)の変速装置とした。当然、Cタイプ9ATにも発進デバイスとして図17のようなモータジェネレータ(MG)の配置が可能となる。FRONT GEAR(前置変速機構)の「F−1」とMAIN GEAR(主変速機構)の「M−1」の、両方ともシンプソン遊星ギアを使った組み合わせは、図8のCタイプ9ATと同じである。FRONT GEAR(前置変速機構)の「F−1」は、段落「0063」で説明したように、第3及び第4遊星ギア列30、40のギア巾が小さくでき、強度的に有利な組み合わせとなる。FRONT GEAR(前置変速機構)とMAIN GEAR(主変速機構)の組み合わせが同じとなる図8と変速比を比較すると、Cタイプ9ATである図8が、前進1速段の4.351から前進9速段の0.529で、ギアレンジが8.22となり、Aタイプ9ATである図17が、前進1速段の5.179から前進9速段の0.591で、ギアレンジが8.76となり、ギア比の連なりはAタイプ9ATが前進2速段と前進3速段の間でクロスになるが、高速段ではAタイプ9ATの方がよく、全体的には若干Aタイプ9ATの方が勝っている。遊星ギアの噛み合い効率を比較すると、Aタイプ9ATである図17が、入力軸の逆回転を用いる前進1速段と前進3速段でCタイプ9ATである図8より悪いが、その他の前進段では、Aタイプ9ATが勝っている。しかし、各部位の配置構造を比較すると、Aタイプ9ATである図17は、入力軸の回転がMAIN GEAR(主変速機構)の2構成要素に入力する第2及び第3クラッチC2、C3の配置が難しく、図8のCタイプ9ATのようにコンパクトにはならない。また第3ブレーキB3の容量が前進1速段と後進段で入力軸トルクの7倍程度となり、図8のCタイプ9ATの前進1速段の2.147倍、後進段の1.803倍と比べ、3倍以上の容量が必要となる。但し、図8のCタイプ9AT同様、減速した動力の100%が第1構成要素に入力する前進1速段と後進段で、リングギア入力となるため遊星ギアが負荷する荷重が小さくなり、強度的に有利となる。
図17のFFとFRの模式図において、FRONT GEAR(前置変速機構)の配置は、FFでは変速装置の後端部で、FRでは前端部で、図8のCタイプ9ATと同じ配置となる。但し、FRONT GEAR(前置変速機構)には、入力軸の回転は構成要素Aの1箇所となるので、構成要素A、Bの2箇所となるCタイプ9ATより第2クラッチC2の配置がないのでコンパクトになる。FFの模式図では、出力カウンターギアを軸支する隔壁の前方に第2及び第3クラッチC2、C3と、出力カウンターギアが配され、隔壁の後方に第1、第2、第3、及び第4遊星ギア列10、20、30、40が順に並べて配され、第1遊星ギア列10の外周部に第3ブレーキB3の摩擦部材が配され、第3、及び第4遊星ギア列30、40の外周部に第1及び第2ブレーキB1、B2と第1クラッチC1の摩擦部材が配される。隔壁の前方に第2及び第3クラッチC2、C3が独立して配されるため、本発明のようにコンパクトさには不利となる。FRの模式図では、FFとは逆に、変速装置の後方から第1、第2、第3、及び第4遊星ギア列10、20、30、40が順に並べて配され、第2及び第3クラッチC2、C3が、第1及び第2遊星ギア列10、20と第3、及び第4遊星ギア列30、40の間に配されるため、コンパクトにはならない。
<A−タイプ9AT(F−1、M−4)>
図18は、図17のFRONT GEAR(前置変速機構)の「F−1」とMAIN GEAR(主変速機構)の「M−1」の、両方ともシンプソン遊星ギアを使った組み合わせの、MAIN GEAR(主変速機構)のみを「M−1」から「M−4」のラビニョー遊星ギアに変えたもので、Aタイプ9ATで、変速比がよく、最もコンパクトに配置できる組み合わせである。但し、ラビニョー遊星ギアを用いるため遊星ギアの噛み合い効率は、前進4速段以下の前進段で悪くなる。それでも、既存の図23に記載したBタイプ TOYOTA 8ATよりよくなる。MAIN GEAR(主変速機構)にリングギアを出力する同じラビニョー遊星ギアを用いた図23のBタイプ8ATと比較すると、Bタイプ8ATの変速比が、前進1速段の4.596から前進8速段の0.685でギアレンジが6.71となるのに対し、図16のAタイプ9ATが、前進1速段の4.900から前進9速段の0.610でギアレンジが8.03となり、Aタイプ9ATの方が大きく取れる。ギア比の連なりもAタイプ9ATの方がよく、変速比に関しては相当に勝っているといえる。但し、Bタイプ TOYOTA 8ATは、FRONT GEAR(前置変速機構)がダブル遊星ギアながら遊星ギアが1個で済み、シンプルにできる利点がある。Bタイプ8ATでは、FRONT GEAR(前置変速機構)で減速された大きなトルクが径の小さなサンギア(S2)に入力するが、Aタイプ9ATでは径の大きなサンギアS2に入力し、径の小さなサンギアS1には、入力軸のトルクしか入力しない。しかも、Bタイプ8ATでは、前進1速段から前進5速段まで径の小さなサンギア(S2)に動力が主導的に加わるため、Aタイプ9ATの前進1速段と後進段でしか主導的に負荷が加わらない径の大きなサンギアS2は、負荷頻度においても強度的に有利で、入力軸のトルクしか主導的に入力しない径の小さなサンギアS1と合わせてAタイプ9ATのラビニョー遊星ギアの方が、Bタイプ8ATと比較し、強度的に相当有利となる。
図18のFFとFRの模式図において、FRONT GEAR(前置変速機構)はMAIN GEAR(主変速機構)の前方に配され、クラッチ及びブレーキの配置もFF、FRともにほぼ同じとなる。クラッチC1、C2、C3の配置に関しては、軸方向に並んで配された「F−1」と「M−4」の、「M−4」の「F−1」から遠ざかる位置にクラッチC2、C3と、その軸方向外側に油圧サーボを配し、「F−1」の「M−4」から遠ざかる位置にクラッチC1と、その軸方向外側に油圧サーボを配した構造となる。FFの模式図では、出力カウンターギアを軸支する隔壁の前方に、FRONT GEAR(前置変速機構)の第3遊星ギア列30と第4遊星ギア列40及び第1クラッチC1が順に配され、第1クラッチC1と第1及び第2ブレーキB1、B2の摩擦部材が第3及び第4遊星ギア列30、40の外周に配され、隔壁の後方に、出力カウンターギアとラビニョー遊星ギアと第2及び第3クラッチC2、C3が順に配され、ラビニョー遊星ギアの外周に第3ブレーキB3と第3クラッチC3の摩擦部材が配される。FRの模式図では、ラビニョー遊星ギアの出力となるリングギアRから、第2及び第3クラッチC2、C3の外周を通って変速装置の後部に出力される形態がFFと異なるだけで、その他はFFと同じ構造配置となる。ここで、図17との違いは、第2及び第3クラッチC2、C3の油圧サーボの配置をMAIN GEAR(主変速機構)の後方とし、摩擦部材をラビニョー遊星ギアの外周に配してラビニョー遊星ギアとともにコンパクトにしたことである。但し、図17のMAIN GEAR(主変速機構)にシンプソン遊星ギアを用いた構造と異なり、径の大きなサンギアS2に入力することでBタイプ8ATよりはラビニョー遊星ギアの負荷を小さくしたが、径の大きなリングギアに入力するシンプソン遊星ギアほど負荷を小さくできないため、ギアレンジを図17の8.76から8.03と小さくし負荷を軽減した。
<A−タイプ9AT(F−3、M−3)>
図19は、FRONT GEAR(前置変速機構)の「F−3」とMAIN GEAR(主変速機構)の「M−3」の、両方とも互いのリングギアとプラネットキャリアを連結した4ATに多く実用化されている4個の構成要素で、各変速段で動力が通過するギア数が少なく、図17及び図18のAタイプ9ATより遊星ギアの噛み合い効率もよく、無理のない配置ができる。図17及び図18のような強度的な有利性はないが、変速比の設定に自由度が高く、図19は、前進1速段の5.000から前進9速段の0.600で、ギアレンジが8.33とし、ギア比の連なりも悪くはなく、理想に近い変速比がとれる。図19の2種のFRの模式図は、左図が通常の形態で、入力軸の回転を、第2クラッチC2を介してMAIN GEAR(主変速機構)の第4構成要素であるサンギアS1に入力したもので、クラッチC1、C2、C3の配置に関しては、軸方向に並んで配された「F−3」と「M−4」の、「F−3」の「M−4」から遠ざかる位置にクラッチC1,C2、C3と、その軸方向外側に油圧サーボを配する構造となる。右図は、入力軸を直接MAIN GEAR(主変速機構)の第4構成要素であるサンギアS1に入力し、第2遊星ギア列20のプラネットキャリアP2と第1遊星ギア列10のリングギアR1の間にドグクラッチとなる第4クラッチC4を配する構造とした。これは、図17及び図18の速度線図に記載したように、MAIN GEAR(主変速機構)の第4構成要素が増速段で高回転となるのを防ぐためである。MAIN GEAR(主変速機構)の前進1速段を除く前進の減速段では、第1遊星ギア列10と第2遊星ギア列20は互いのプラネットキャリアとリングギアが連結して両方の遊星ギア列に動力が負荷されるが、前進1速段と後進段、及び入力軸の直結段と増速段では、MAIN GEAR(主変速機構)の第1、第2、及び第3構成要素が、第2遊星ギア列20のサンギアS2、プラネットキャリアP2、リングギアR2となるため、第1遊星ギア列10には動力が負荷されない。第1及び第2遊星ギア列10,20が連結状態では、図17と図18の速度線図に記載したように、MAIN GEAR(主変速機構)の第4構成要素が増速段で高回転となる。そこで、MAIN GEAR(主変速機構)の第4構成要素を入力軸に直結し、第2遊星ギア列20のプラネットキャリアP2と第1遊星ギア列10のリングギアR1の間にドグクラッチとなる第4クラッチC4を配し、直結段及び増速段で第4クラッチC4を開放し連結を解くと、速度線図の点線部に示すように、第1遊星ギア列10が、第2遊星ギア列20と別の速度線図を形成し、高回転化を防ぐことができる。なお、第4クラッチC4をドグクラッチとしたのは、この連結力が最大入力軸トルクの7倍と大きくなるためで、摩擦部材による締結では、スペース的に困難となる。ドグクラッチは回転が同期しなければ係脱が困難であり、制御性が課題となる。「請求項3」と「請求項6」は、この構造に関して請求したものである。ここで、クラッチC1、C3、C4の配置に関しては、軸方向に並んで配された「F−3」と「M−3」の、「M−3」の「F−3」から遠ざかる位置にクラッチC4と、その軸方向外側に油圧サーボを配し、「F−3」の「M−3」から遠ざかる位置にクラッチC1、C3と、その軸方向外側に油圧サーボを配した構造となる。
<A−タイプ9AT(F−1、M−4)FF>
図20は、図18の模式図を原動機からの入力動力を300Nmとしてコンセプト設計した構造図であり、軸方向長さが380mmとなる。発進デバイスを流体継手200bにしたもので、A及びCタイプ9ATでは、トルクコンバータ200aを用いなくても、ギアレンジが大きいため、十分牽引性能が確保できる。なお、流体継手200bは、「背景技術」の段落「0018」で説明したように、本願出願人の特開2008−196660による、独立した油圧室を備えるにもかかわらず、外部からの油通路が2通路で済む、コンパクトなロックアップクラッチを備えた流体継手とした。流体継手は、羽根車の羽角度を通常のトルクコンバータとは逆に傾けると、とてつもなく大きな容量を得ることができるので、流体継手200bの容量を上げ、第1及び第2ブレーキB1、B2の摩擦部材をすべらせて発進に用い、燃費の向上を可能とすることもできる。
図20において、図の左側前方の図示しない原動機から流体伝導装置である流体継手200bに動力が伝達され、変速装置の入力軸3に導かれる。流体継手200bはインペラがチャージングポンプを駆動し、タービンが入力軸3に連結される。変速装置全体を収めるハウジングは、前部のフロントケース1aと変速機ケース1b及びリアケース1cからなり、並行に配された中継軸7及び出力軸を含んだディファレンシャル装置9は、Cタイプ9ATの図11と同じとなるので、これらの説明を省略する。
入力軸3は、前部の一端が保持部材2a、2b、2cに配された軸受け4aで、後部の一端がリアケース1cに配された軸受け4bで軸支される。変速機ケース1bの軸方向中央部には変速機ケース1bと一体となる隔壁が、内周部を変速機後方に突き出たL字型の円筒形状で、内周円筒部の外周にアンギュラ軸受け4eが背面合わせでネジにより固定され、出力カウンターギア5を軸支する。隔壁の前方には前置変速装置が配され、隔壁から軸方向順に、第3遊星ギア列30と、第4遊星ギア列40と、第1クラッチC1とが配され、第3遊星ギア列30の外周部に第1ブレーキB1と第2ブレーキB2が配される。隔壁の後方には主変速装置が配され、隔壁から軸方向順に、ラビニョー遊星ギアと、第3クラッチC3と第2クラッチC2が配され、ラビニョー遊星ギアの外周部に第3ブレーキB3が配される。
第3遊星ギア列30の遊星ギアは、サンギアS3とリングギアR3と噛み合い、プラネットキャリアP3に軸支される。リンギギアR3は、隔壁側で逆L字型の連結部材により第3遊星ギア列30の内周部内側で入力軸3に軸支され、プラネットキャリアP3の第4遊星ギア列40側のサイド部材は、リンギギアR3の外周を回り、隔壁の内周部を通って延材された連結軸17に連結し、サンギアS3は、 第4遊星ギア列40のサンギアS4と一体成形される。
第4遊星ギア列40の遊星ギアは、サンギアS4とリングギアR4と噛み合い、プラネットキャリアP4に軸支される。リングギアR4は、軸方向がニードルベアリングで規制されるとともに外周にスプライン加工がなされて第1クラッチC1のクラッチハブとなり、プラネットキャリアP4の隔壁と反対側のサイド部材は、L字型をして第4遊星ギア列40の内周部内側でリンギギアR3に連結した逆L字型の連結部材にスプライン連結し、もう一方のサイド部材は、第3遊星ギア列30の外周まで延材されて曲げられ、第2ブレーキB2のブレーキハブとなる。サンギアS3と一体となるサンギアS4は、プラネットキャリアP4のサイド部材に軸支されるとともに、歯部に第2ブレーキB2の内周まで延材されて曲げられた第1ブレーキB1のブレーキハブがスプライン連結される。
第1クラッチC1は、入力軸3に溶着したクラッチドラムと、クラッチドラムの内周スプラインの端にリティニングリングで固定されたエンドプレートと、エンドプレートの前方でクラッチドラムの内周スプラインに係止される摩擦部材(ドリブンプレート)と、リングギアR4の外周スプラインに係止される摩擦部材(ドライブプレート)と、摩擦部材を押圧するピストンと、ピストンをクラッチドラムに戻すリターンスプリングの支点となるキャンセラプレートとから成っている。第1クラッチC1のクラッチドラムは、フロントケース1aに固定された保持部材2a、2bの内周ボス部外周から作動油が供給され、入力軸3とリングギアR4の締結及び開放をつかさどる。第4遊星ギア列40は、リングギアR4とサンギアS4の歯数比が1.802と小さいので、第4遊星ギア列40の外周に第1クラッチC1の摩擦部材を配することができ、軸方向をコンパクトにすることができる。
第1ブレーキB1は、隔壁100の前方外周部に形成された作動油圧室に配されたピストンと、変速機ケース1bの外周部にリティニングリングで固定されたスプリングホルダーとピストンとの間に配されたリターンスプリングと、 変速機ケース1bの内周に形成されたスプラインに係止される摩擦部材(ドリブンプレート)、及び変速機ケース1bの外周部に軸方向がリティニングリングで規制されるエンドプレートと、第3及び第4遊星ギア30、40の一体となるサンギアS3、S4にスプライン連結されたブレーキハブに係止される摩擦部材(ドライブプレート)とからなり、サンギアS3、S4の制動及び開放をつかさどる。第1ブレーキB1の部位は、全て第3遊星ギア列30の外周部に配される。
第2ブレーキB2は、フロントケース1aに固定された保持部材2aに形成された作動油圧室に配されたピストンと、円筒状ドラムにリティニングリングで固定されたスプリングホルダーとピストンとの間に配されたリターンスプリングと、 変速機ケース1bの内周に形成されたスプラインに係止される摩擦部材(ドリブンプレート)、及びエンドプレートと、第3遊星ギア列30の外周まで延材されて曲げられた第4遊星ギア40のプラネットキャリアP4のサイド部材であるブレーキハブに係止される摩擦部材(ドライブプレート)とからなり、プラネットキャリアP4とリングギアR3の制動及び開放をつかさどる。ここで、第2ブレーキB2は、第1ブレーキB1とエンドプレートを共有して第1ブレーキB1と対峙して配され、前方のフロントケース1aに固定された保持部材2aに配されるピストンは、中継軸7のピニオンギア(小歯車)と噛み合う大歯車8との干渉を避けるため一部を切り欠いた形状となる。
第1ブレーキB1と第2ブレーキB2は、発進デバイスとしての構造を表したものである。第2ブレーキB2のトルク容量は、入力軸のトルクを1として、前進1速で3.589となり、第1ブレーキB1のトルク容量は、後進(Rev)で1.083となる。Cタイプ9ATとは、第2ブレーキB2のトルク容量が少し高くなるだけである。Cタイプ9ATと同様に、摩擦部材の摩擦部の中央同一径部に複数の貫通長穴を設け、摩擦部材がすべっている間中、エンドプレートを通して変速機ケース1bから冷却油を貫通穴に流し込み、確実に冷却できる構造とした。詳細は、図22に記載している。前述したように、トルクコンバータ200aや流体継手200bの容量を上げて、第1及び第2ブレーキB1、B2の摩擦部材をすべらせて発進に用い、燃費の向上を可能としたためである。
主変速機構となるラビニョー遊星ギアは、隔壁に軸支された出力カウンターギア5の後方に配され、プラネットキャリアPにはロングピニオンギアとショートピニオンギアが噛み合って配され、ロングピニオンギアと噛み合うサンギアS2とリングギアRが、出力カウンターギア5側に配され、ショートピニオンギアが噛み合うサンギアS1がサンギアS2の後方に配される。当然、サンギアS2の方がサンギアS1より径が大きくなり、サンギアS2は、隔壁の内周を通って前置変速装置と連結する入力軸3にブシュ4cで軸支される連結軸17とスプライン連結し、サンギアS1には、入力軸3の回転を入力する第2クラッチC2のクラッチハブが溶着される。また、プラネットキャリアPは、隔壁100側のサイド部材が隔壁100の内周に延材されて連結軸17にブシュ4mで軸支されるとともに、もう一方のサイド部材がラビニョー遊星ギアの外周に延材され、第3クラッチC3のクラッチハブと第3ブレーキB3のブレーキハブとなる。リングギアRは、出力カウンターギア5と連結部材でスプライン連結される。
変速機ケース1b後部のリアケース1cには、第3クラッチC3と第2クラッチC2が、クラッチドラムが共有された2連クラッチとして配される。第2、第3クラッチC2、C3は、共有したクラッチドラムと、クラッチドラムの内周スプラインの軸方向中央にリティニングリングで固定されたエンドプレートと、エンドプレートの後方でクラッチドラムの内周スプラインに係止される第2クラッチC2の摩擦部材(ドリブンプレート)と、サンギアS1に溶着されたた第2クラッチC2のクラッチハブの外周スプラインに係止される摩擦部材(ドライブプレート)と、摩擦部材を押圧するピストンと、エンドプレートの前方でクラッチドラムの内周スプラインに係止される第3クラッチC3の摩擦部材(ドリブンプレート)と、プラネットキャリアPの外周スプラインを第3クラッチC3のクラッチハブとして係止される摩擦部材(ドライブプレート)と、摩擦部材をリティニングリングで固定されたL字型フランジで押圧するピストンと、スタッドピンでピストンに連結され、ピストンをクラッチドラムに戻すリターンスプリングの支点となるキャンセラプレートとから成っている。第2、第3クラッチC2、C3のクラッチドラムは、リアケース1cの内周ボス部外周から作動油が供給される入力軸3にスプライン連結されたクラッチハブに溶着され、第2クラッチC2のピストンと第3クラッチC3のピストンは、クラッチドラムを挟んで配され、第2クラッチC2は、プッシュタイプのピストンで入力軸3とサンギアS1の締結及び開放をつかさどり、第3クラッチC3は、プルタイプのピストンで入力軸3とプラネットキャリアPの締結及び開放をつかさどる。2連クラッチC2、C3は、クラッチドラムとリターンスプリングとキャンセラプレート及びエンドプレートを共有して軸方向にコンパクトに配することができるもので、本願出願人が特開2007−51651で提案したものである。ここで、2連クラッチC2、C3の油圧サーボは、ラビニョー遊星ギアの後方に配される。
ラビニョー遊星ギアの外周部に配された第3ブレーキB3は、隔壁100に形成された作動油圧室に配されたピストンと、変速機ケース1bの外周部にリティニングリングで固定されたスプリングホルダーとピストンとの間に配されたリターンスプリングと、 変速機ケース1bの内周に形成されたスプラインに係止される摩擦部材(ドリブンプレート)、及び変速機ケース1bの内周部に軸方向がリティニングリングで規制されるエンドプレートと、プラネットキャリアPの外周スプラインを第3ブレーキB3のブレーキハブとして係止される摩擦部材(ドライブプレート)とからなり、プラネットキャリアPの制動及び開放をつかさどる。ここで、第3ブレーキB3のトルク容量はCタイプ9ATのように小さくはできず、入力軸トルクの7倍程度と大きな容量となる、そこで、ピストンの押し付け面積を、隔壁の内周ボス部から外周にかけて大きくとり、摩擦部材の枚数を増やした。なお、ピストンをリアケース1cに配することも可能である。
図20のAタイプ9ATでは、段落「0110」でBタイプ8ATと比較説明したように、Bタイプ8ATよりラビニョー遊星ギアが強度的に有利となり、ギア巾を短くできる。加えて、コンパクトな2連クラッチを用い、第2クラッチC2を除く2個のクラッチと3個のブレーキの摩擦部材を遊星ギア列の外周部に配したので、FFとして成立させることができる。なお、FFとして中継軸7のピニオンギア(小歯車)と噛み合う大歯車8と、第1及び第2ブレーキB1、B2の摩擦部材との干渉を考慮しなければならない。後述する図21でその位置関係を説明する。
図21は、FF用の変速装置を後部から見た各カウンターギアの噛み合いを示す図である。入力軸3と同軸の出力カウンターギア5は、中継軸7に連結されたカウンターギア6と噛み合い、中継軸7と一体のピニオンギアが出力軸を含んだディファレンシャル装置9のキャリアに連結された大歯車8と噛み合っている。図21において、図11及び図12の第2遊星歯車列20のリングギアR2と、図20の第1及び第2ブレーキB1、B2の摩擦部材が、図21の黒で塗りつぶしたところで干渉する。したがって、図11、図12、及び図20の断面図に示したように、出力カウンターギア5とカウンターギア6の噛み合う位置と、中継軸7と一体のピニオンギアと大歯車8の噛み合う位置の間に、リングギアR2または第1及び第2ブレーキB1、B2の摩擦部材を配すれば、これらのギアとの干渉を避けることができる。
図22は、本発明で用いる第1及び第2ブレーキB1、B2の摩擦部材の詳細を示したものである。 図22において、図の右方向にピストンが配され、図の左方向にエンドプレートがハウジングに規制され配置されている。摩擦部材となる複数のドリブンプレート52とドライブプレート51は交互に配され、ハウジングにドリブンプレート52とフロントプレート54が回転不能で軸方向移動可能な状態で配され、制動される部材のスプラインにドライブプレート51が回転不能で軸方向移動可能な状態で配される。図示しないピストンによりフロントプレート54が押圧され、ドライブプレート51が制動される。ドライブプレート51には芯金となる金属プレートの両面に0.5mm程度のペーパフェーシングが貼り付けられており、円周に深さ0.15mm程度の油溝Vと油溝Vから外周に繋がる油溝Wが形成され、油溝Vの位置の複数箇所に芯金とともに長孔Xが開けられている。同じく、ドリブンプレート52には、油溝Vとなる円周溝位置に複数の長孔Yが開けられている。第1及び第2ブレーキB1、B2を発進デバイスとして用いる場合、図示しないコントロールバルブから低圧の冷却油がハウジングを通ってエンドプレートに供給され、ドリブンプレート52の長孔Yとドライブプレート51の長孔Xを通り、ドライブプレート51の油溝Vと油溝Wを通り排出される。この間、ドリブンプレート52とドライブプレート51の摩擦面が、むらなく確実に冷却される。この構造は、高負荷状態では短時間しかすべらすことはできないが、発進デバイスとして必須となる車両のクリープが必要な低負荷状態で長時間すべらす場合の有効な手段となる。
1a フロントケース
1b 変速機ケース
1c、1e リアケース
2a、2b、2c 保持部材
3、3a、3b 入力軸
4a〜4m 軸受け
10、20、30、40 遊星ギア列
17、18 連結軸
100 隔壁
200a トルクコンバータ
200b 流体継手
200c 回転変動吸収ダンパ
300 モータジェネレータ
C1、C2、C3、C4 クラッチ
B1、B2、B3、B4 ブレーキ

Claims (7)

  1. 入力軸を変速する複数の遊星ギア列を有した変速装置の共通の速度線図上に、少なくとも前記入力軸に対する前進の減速段において、第1、第2、第3、及び第4構成要素を順に並べて配した第1及び第2遊星ギア列(10、20)からなる主変速機構と、A、B、C、及びDの4個の構成要素を順に並べて配した第3及び第4遊星ギア列(30、40)からなる前置変速機構の、
    前記前置変速機構の構成要素Cと前記主変速機構の第1構成要素を連結軸(17)で連結し、少なくとも6個のクラッチ及びブレーキの締結要素の選択的な締結により、前記入力軸に対して前進9速後進1速の変速段が実現できる多段変速装置であって、
    前記前置変速機構の構成要素Aに前記入力軸の回転を入力、あるいは、入力可能とし、構成要素D及びBを第1及び第2ブレーキ(B1、B2)で制動可能とすることにより、 構成要素Cが、少なくとも前記入力軸の減速回転と逆回転を得るようになした前進9速後進1速の多段変速装置。
  2. 前記前置変速機構の構成要素A及びBに第1及び第2クラッチ(C1、C2)で前記入力軸の回転を入力可能とし、構成要素D及びBを第1及び第2ブレーキ(B1、B2)で制動可能とし、前記第1及び第2クラッチ(C1、C2)又は第1及び第2ブレーキ(B1、B2)の何れか2個を選択的に締結することにより、前記主変速機構の第1構成要素と連結軸(17)で連結された構成要素Cが、前記入力軸の直結回転と逆回転、及び前記入力軸の2種の減速回転、それに制動を含めた5種の回転に規制されるようになし、
    前記主変速機構の第4構成要素を第3ブレーキ(B3)で制動可能にし、第2構成要素に前記入力軸の回転を第3クラッチ(C3)で入力可能とし、第1、第2、及び第4構成要素の2個の構成要素の回転を、第1、第2、及び第3クラッチ(C1、C2、C3)と第1、第2、及び第3ブレーキ(B1、B2、B3)で規制することにより、
    あるいは、前記主変速機構の第1、第2、及び第3構成要素を、第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)、プラネットキャリア(P2)、及びリングギア(R2)として第2遊星ギア列(20)のプラネットキャリア(P2)に第3クラッチを介して前記入力軸の回転を入力可能とし、前記主変速機構の第1又は第2構成要素を構成する第1遊星ギア列(10)の構成要素の何れか一方の構成要素と第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)又はプラネットキャリア(P2)を、第4クラッチ(C4)を介して連結可能とし、前記主変速機構の第4構成要素を構成する第1遊星ギア列(10)の構成要素をハウジングに固定し、第1、第2、及び第4構成要素の2個の構成要素の回転を、第1、第2、第3、及び第4クラッチ(C1、C2、C3、C4)と第1及び第2ブレーキ(B1、B2)で規制することにより、
    第3構成要素が、前記入力軸の直結回転と逆回転、及び前記入力軸のそれぞれ4種の減速回転と増速回転、を得るようになした請求項1記載の前進9速後進1速の多段変速装置。
  3. 前記前置変速機構の構成要素Aに第1クラッチ(C1)で前記入力軸の回転を入力可能とし、構成要素D及びBを第1及び第2ブレーキ(B1、B2)で制動可能とし、第1クラッチ(C1)又は第1及び第2ブレーキ(B1、B2)の何れか2個を選択的に締結することにより、
    あるいは、前記前置変速機構の構成要素Aと前記入力軸を連結し、構成要素D、B、及びCを第1、第2、及び第4ブレーキ(B1、B2、B4)で制動可能とし、第1、第2、及び第4ブレーキ(B1、B2、B4)の何れか1個のブレーキを選択的に締結することにより、
    前記主変速機構の第1構成要素と連結軸(17)で連結された構成要素Cが、前記入力軸の減速回転と逆回転、それに制動を含めた3種の回転に規制されるようになし、
    前記主変速機構の第4構成要素に前記入力軸の回転を第2クラッチ(C2)で入力可能とし、第2構成要素に前記入力軸の回転を第3クラッチ(C3)で入力可能とするとともに第3ブレーキ(B3)を配して制動可能にし、第1、第2、及び第4構成要素の2個の構成要素の回転を、第1、第2、及び第3クラッチ(C1、C2、C3)と第1、第2、及び第3ブレーキ(B1、B2、B3)、あるいは、第2及び第3クラッチ(C2、C3)と第1、第2、第3、及び第4ブレーキ(B1、B2、B3、B4)で規制することにより、
    あるいは、前記主変速機構の第1、第2、及び第3構成要素を、第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)、プラネットキャリア(P2)、及びリングギア(R2)として第2遊星ギア列(20)のプラネットキャリア(P2)に第3クラッチ(C3)を介して前記入力軸の回転を入力可能とするとともに第3ブレーキ(B3)を配して制動可能にし、前記主変速機構の第1又は第2構成要素を構成する第1遊星ギア列(10)の構成要素の何れか一方の構成要素と第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)又はプラネットキャリア(P2)を、第4クラッチ(C4)を介して連結可能とし、前記主変速機構の第4構成要素を構成する第1遊星ギア列(10)の構成要素と前記入力軸を連結し、
    第1、第2、及び第4構成要素の2個の構成要素の回転を、第1、第3、及び第4クラッチ(C1、C3、C4)と第1、第2、及び第3ブレーキ(B1、B2、B3)、あるいは、第3及び第4クラッチ(C3、C4)と第1、第2、第3、及び第4ブレーキ(B1、B2、B3、B4)で規制することにより、
    第3構成要素が、前記入力軸の直結回転と逆回転、及び前記入力軸の5種の減速回転と3種の増速回転、を得るようになした請求項1記載の前進9速後進1速の多段変速装置。
  4. 前記前置変速機構の第1及び第2ブレーキ(B1、B2)の交互に配された摩擦部材の同一径中央円周部に複数の貫通穴を設け、該摩擦部材の端部側面から該貫通穴に冷却油を供給するようになした請求項1記載の前進9速後進1速の多段変速装置。
  5. 前記前置変速機構の第3及び第4遊星ギア列(30、40)は、
    第3及び第4遊星ギア列(30、40)をシンプル遊星ギアとして、第4遊星ギア列(40)のリングギア(R4)を構成要素Aとし、第3遊星ギア列(30)のリングギア(R3)と第4遊星ギア列(40)のプラネットキャリア(P4)を連結して構成要素Bとし、第3遊星ギア列(30)のプラネットキャリア(P3)を構成要素Cとし、第3及び第4遊星ギア列(30、40)の互いのサンギア(S3、S4)を連結して構成要素Dとした、
    あるいは、第3及び第4遊星ギア列(30、40)をシンプル遊星ギアとして、第3及び第4遊星ギア列(30、40)の互いのサンギア(S3、S4)を連結して構成要素Aとし、第3遊星ギア列(30)のプラネットキャリア(P3)を構成要素Bとし、第3遊星ギア列(30)のリングギア(R3)と第4遊星ギア列(40)のプラネットキャリア(P4)を連結して構成要素Cとし、第4遊星ギア列(40)のリングギア(R4)を構成要素Dとした、
    あるいは、第3及び第4遊星ギア列(30、40)をシンプル遊星ギアとして、第4遊星ギア列(40)のサンギア(S4)を構成要素Aとし、第3遊星ギア列(30)のリングギア(R3)と第4遊星ギア列(40)のプラネットキャリア(P4)を連結して構成要素Bとし、第3遊星ギア列(30)のプラネットキャリア(P3)と第4遊星ギア列(40)のリングギア(R4)を連結して構成要素Cとし、第3遊星ギア列(30)のサンギア(S3)を構成要素Dとした、
    あるいは、第3遊星ギア列(30)をダブル遊星ギアとし、第4遊星ギア列(30)をシンプル遊星ギアとし、リングギア(R)とプラネットキャリア(P)を共有させ、ダブル遊星ギアとなる第3遊星ギア列(30)のリングギア(R)と噛み合うピニオンギアをロングピニオンとして第4遊星ギア列(40)のサンギア(S4)に噛み合わせた所謂ラビニョー遊星ギアとして、第3遊星ギア列(30)のサンギア(S3)を構成要素Aとし、共有するリングギア(R)を構成要素Bとし、共有するプラネットキャリア(P)を構成要素Cとし、第4遊星ギア列(40)のサンギア(S4)を構成要素Dとした、
    あるいは、第3及び第4遊星ギア列(30、40)をシンプル遊星ギアとして、第4遊星ギア列(40)のサンギア(S4)を構成要素Aとし、第3遊星ギア列(30)のリングギア(R3)を構成要素Bとし、第3及び第4遊星ギア列(30、40)の互いのプラネットキャリア(P3、P4)を連結して構成要素Cとし、第3遊星ギア列(30)のサンギア(S3)と第4遊星ギア列(40)のリングギア(R4)を連結して構成要素Dとした、
    あるいは、第3及び第4遊星ギア列(30、40)をシンプル遊星ギアとして、第3遊星ギア列(30)のサンギア(S3)と第4遊星ギア列(40)のリングギア(R4)を連結して構成要素Aとし、第3及び第4遊星ギア列(30、40)の互いのプラネットキャリア(P3、P4)を連結して構成要素Bとし、第3遊星ギア列(30)のリングギア(R3)を構成要素Cとし、第4遊星ギア列(40)のサンギア(S4)を構成要素Dとした、
    請求項2と3記載の前進9速後進1速の多段変速装置。
  6. 前記主変速機構の第1及び第2遊星ギア列(10、20)は、
    第1及び第2遊星ギア列(10、20)をシンプル遊星ギアとして、第2遊星ギア列(20)のリングギア(R2)を第1構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のリングギア(R1)と第2遊星ギア列(20)のプラネットキャリア(P2)を連結して第2構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のプラネットキャリア(P1)を第3構成要素とし、第1及び第2遊星ギア列(10、20)の互いのサンギア(S1、S2)を連結して第4構成要素とした、
    あるいは、第1及び第2遊星ギア列(10、20)をシンプル遊星ギアとして、第1遊星ギア列(10)のリングギア(R1)と第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)を連結して第1構成要素とし、第1及び第2遊星ギア列(10、20)の互いのプラネットキャリア(P1、P2)を連結して第2構成要素とし、第2遊星ギア列(20)のリングギア(R2)を第3構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)を第4構成要素とした、
    あるいは、第1及び第2遊星ギア列(10、20)をシンプル遊星ギアとして、第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)を第1構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のリングギア(R1)と第2遊星ギア列(20)のプラネットキャリア(P2)を連結して第2構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のプラネットキャリア(P1)と第2遊星ギア列(20)のリングギア(R2)を連結して第3構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)を第4構成要素とした、
    あるいは、第1遊星ギア列(10)をダブル遊星ギアとし、第2遊星ギア列(20)をシンプル遊星ギアとし、リングギア(R)とプラネットキャリア(P)を共有させ、ダブル遊星ギアとなる第1遊星ギア列(10)のリングギア(R)と噛み合うピニオンギアをロングピニオンとして第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)に噛み合わせた所謂ラビニョー遊星ギアとして、第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)を第1構成要素とし、共有するプラネットキャリア(P)を第2構成要素とし、共有するリングギア(R)を第3構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)を第4構成要素とした、
    あるいは、第1遊星ギア列(10)をダブル遊星ギアとし、第2遊星ギア列(20)をシンプル遊星ギアとし、リングギア(R)とプラネットキャリア(P)を共有させ、ダブル遊星ギアとなる第1遊星ギア列(10)のリングギア(R)と噛み合うピニオンギアをロングピニオンとして第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)に噛み合わせた所謂ラビニョー遊星ギアとして、第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)を第1構成要素とし、共有するリングギア(R)を第2構成要素とし、共有するプラネットキャリア(P)を第3構成要素とし、第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)を第4構成要素とした、
    あるいは、第1及び第2遊星ギア列(10、20)をシンプル遊星ギアとして、第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)を第1構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のリングギア(R1)を第2構成要素とし、第1及び第2遊星ギア列(10、20)の互いのプラネットキャリア(P1、P2)を連結して第3構成要素とし、第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)と第2遊星ギア列(20)のリングギア(R2)を連結して第4構成要素とした、
    あるいは、第1及び第2遊星ギア列(10、20)をシンプル遊星ギアとして、第1、第2、及び第3構成要素を第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)、プラネットキャリア(P2)、及びリングギア(R2)とし、第1遊星ギア列(10)のリングギア(R1)と第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)、及び第1遊星ギア列(10)のプラネットキャリア(P1)と第2遊星ギア列(20)のプラネットキャリア(P2)の何れか一方を連結するとともに、何れか他方を第4クラッチ(C4)を介して連結し、第4構成要素を第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)とした、
    あるいは、第1及び第2遊星ギア列(10、20)をシンプル遊星ギアとして、第1、第2、及び第3構成要素を第2遊星ギア列(20)のサンギア(S2)、プラネットキャリア(P2)、及びリングギア(R2)とし、第1遊星ギア列(10)のリングギア(R1)と第2遊星ギア列(20)のプラネットキャリア(P2)を、第4クラッチ(C4)を介して連結し、第1遊星ギア列(10)のプラネットキャリア(P1)を第2遊星ギア列(20)のリングギア(R2)と連結し、第4構成要素を第1遊星ギア列(10)のサンギア(S1)とした、
    請求項2及び3記載の前進9速後進1速の多段変速装置。
  7. 変速機ケースの前方の、該変速機ケースと一体となるケースに配されたモータジェネレータで、入力軸を駆動または制動するようになした、
    あるいは、変速機ケースの後方の、該変速機ケースと一体となるケースに配されたモータジェネレータで、出力軸を駆動または制動するようになした、
    請求項1記載の前進9速後進1速の多段変速装置。
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CN106763550A (zh) * 2016-12-30 2017-05-31 中国第汽车股份有限公司 九挡双离合器式自动变速器

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