以下、図面を参照し、本発明の実施例について詳細に説明する。
[第1の参考例]
第1の参考例のミラー装置1について以下に説明する。図1、図2に示すように、単結晶シリコンからなる下部基板101の中央部にはシリコン酸化膜からなる絶縁層102を介して4つの駆動電極103−1〜103−4が設けられている。また、下部基板101の上面の両側には単結晶シリコンからなる支柱104が設けられている。
また、本参考例では、支柱104の表面の絶縁層102を一部除去してコンタクトホール106を形成し、このコンタクトホール106上にAu等からなる金属層105を形成している。
一方、上部基板151の内側には円環状のジンバル152が設けられ、さらにジンバル152の内側にミラー153が設けられている。ミラー153の上面には、例えば3層のTi/Pt/Au層(不図示)が形成されている。上部基板151とジンバル152とは、180゜隔てた2か所においてトーションバネ154により連結され、同様にジンバル152とミラー153とは、180゜隔てた2か所においてトーションバネ155により連結されている。一対のトーションバネ154を通るx軸と、一対のトーションバネ155を通るy軸は直交する。結果として、ミラー153は、x軸とy軸の2軸を回動軸として回動することができる。
また、本参考例では、上部基板151、ジンバル152、ミラー153及びトーションバネ154,155の下面に帯電防止構造としてAu等からなる金属層156が形成されている。
ミラー装置においては、ミラー153の表面の平坦度とトーションバネ154,155の信頼性の要求から単結晶シリコン、特に10μm程度の厚さの単結晶シリコン板を容易に得られるSOI(Silicon On Insulator)基板を用いることが一般的である。ミラー153をSOI基板上に形成し、このミラー153と駆動電極103−1〜103−4とを対向させ、AuSn合金などの半田、Agペーストなどの導電性接着剤で金属層105と金属層156と接着することにより、下部基板101上に上部基板151がボンディングされる。
このようなミラー装置は、ミラー153を接地し、駆動電極103−1〜103−4に正または負の電圧を与えて、しかも駆動電極103−1〜103−4間で非対称な電位差を生じさせることにより、ミラー153を静電力で吸引し、ミラー153を任意の方向へ回動させることができる。
次に、ミラーのドリフトの原因について、図107、図108に示した従来のミラー装置を例に、図3を参照して説明する。
図3において、R1はミラー8103の接地抵抗、R2は駆動電極8003−1〜8003−4の表面に形成された絶縁層(図107、図108では不図示)の抵抗、R3は下部基板8001の接地抵抗、R4は駆動電極8003−1〜8003−4及びこれらの電極に第1の電位V(本参考例では、V≧0)を供給する配線(図107、図108では不図示)から絶縁層8002を介して下部基板8001にリーク電流が流れる際の絶縁リーク抵抗、C1はミラー8103と駆動電極8003−1〜8003−4との間に形成される容量、C2は駆動電極8003−1〜8003−4の表面に形成された絶縁層の容量、C3は駆動電極8003−1〜8003−4及びこれらの電極に第1の電位を供給する配線と下部基板8001との間に形成される配線浮遊容量(絶縁層8002の容量)、REGは配線を介して駆動電極8003−1〜8003−4に第1の電位を印加すると同時に、ミラー8103及び下部基板8001に第2の電位(第1の電位と同一もしくは異なる電位であり、本参考例では、接地電位)を印加する電源である。
ミラー8103のドリフトには大きく分けて2つの種類がある。1つは、ミラー8103と駆動電極8003−1〜8003−4との間に電圧を印加するための電気配線が不完全なために、配線に印加した電圧に対してミラー8103と駆動電極8003−1〜8003−4間の電圧が追随しないことにより生じるものである。もう1つは、電位を確定することのできない電気的に浮遊した部位が電圧印加により分極する、何らかの理由で徐々に帯電する、または、帯電した電荷が徐々に放電することにより、ミラー8103の駆動力に影響を与えることによって生じるものである。このような分極あるいは帯電が起きる部位としては、その他に第1の電位または第2の電位と高抵抗で接続されている部位がある。
つまり、ドリフトの基本的な発生メカニズムは、ミラー8103の駆動に関わりを持つ部位(ミラー8103、駆動電極8003−1〜8003−4あるいは駆動電極8003−1〜8003−4近傍の構造物)への電荷の充電と放電の時定数が大きいと、ドリフトが発生するということである。このようなドリフトを抑制するには、2つの対処法があり、1つは充放電の時定数を小さくすること、もう1つは充放電の時定数が大きい部位を駆動電極8003−1〜8003−4の近傍から排除することである。
静電力によりミラー8103を回動させ光ビームを偏向させるミラー装置では、ミラー8103の僅かな傾斜角の変位が光ビームの投影箇所の変位に拡大されるため、ミラー8103のドリフトを極力抑制する必要がある。特に、ミラー装置を用いた空間型光スイッチの場合、ミラー8103の傾斜角の変位は挿入損失変動になるので、ドリフトがあると実用的に使うことができなくなる。
そこで、本参考例では、2つの対処法に基づき、ミラー153の駆動に関わりを持つ部位(ミラー153、駆動電極103−1〜103−4あるいは駆動電極103−1〜103−4近傍の構造物)に帯電防止構造を設ける。
前述のとおり、上部基板151、ジンバル152、ミラー153及びトーションバネ154,155はSOI基板の単結晶シリコンで一体形成されており、ミラー153には、上部基板151とトーションバネ154とジンバル152とトーションバネ155とを介して、接地電位が印加される。しかし、実際のミラー153の電位は、図3のA点の電位であり、ミラー153と駆動電極103−1〜103−4との間に形成される容量C1の充電が完了するまで、接地電位よりも高くなる。その理由は、図3に示したミラー153(シリコン層)の接地抵抗R1が存在するためである。
駆動電極103−1〜103−4と対向するミラー153の下面の電位を確定するために電気的な接続を確実にすることがドリフト防止には必要だが、これを実現することは一般的に容易ではない。まず、ミラー153となるシリコン層は、SOI基板のベースのシリコン層からは絶縁層で電気的に分離されている。光ビームを反射するという機能を実現するため、ミラー153の上面にはAu等からなる金属層が蒸着されている。しかし、この蒸着された金属層でミラー153のシリコン層とSOI基板のベースのシリコン層とが電気的に接続されることは通常期待できない。さらに、シリコン表面には通常、自然酸化膜すなわち絶縁性のシリカ層が形成されているので、ミラー153となるシリコン層の上面に金属層を蒸着して、この金属層を電気的にある電位に接続したとしても、ミラー153のシリコン層自体がその電位に接続されるとは限らない。
したがって、駆動電極103−1〜103−4と対向するミラー153の下面の電位を確定するためには、駆動電極103−1〜103−4と対向する側からミラー153の下面に直接電気的接触をとることが有効である。
そこで、本参考例では、図1,2に示すように、上部基板151、ジンバル152、ミラー153及びトーションバネ154,155の下面に帯電防止構造としてAu等からなる金属層156を形成し、この金属層156に第2の電位を与える。このような構造は、図3の接地抵抗R1を下げることを意味する。
上部基板151、ジンバル152、ミラー153及びトーションバネ154,155は単結晶シリコンで一体形成されているのであるから、これらの下面に金属層156を形成して、金属層156の端から第2の電位を印加すれば、ミラー153の下面は第2の電位に確定される。しかし、ミラー装置の側面から金属層156に第2の電位を直接与えることは難しい場合がある。
そこで、本参考例では、下部基板101と支柱104とを介して金属層156に第2の電位を与える。このような電気的接続を実現するため、本参考例では、支柱104の表面の絶縁層102を一部除去してコンタクトホール106を形成し、このコンタクトホール106上にAu等からなる金属層105を形成し、この金属層105を上部基板151側の金属層156と接続する。これにより、配線が困難な金属層156への電気的接続を容易に行うことができる。
以上のように、駆動電極103−1〜103−4と対向するミラー153の下面に帯電防止構造として金属層156を形成し、この金属層156に第2の電位を与えることにより、ミラー153の下面の電位を確定することができ、ミラー153のドリフトを抑制することができる。
[第2の参考例]
次に、本発明の第2の参考例について、図4を参照して説明する。なお、図4において、図1、図2と同一の構成には同一の符号を付してある。第1の参考例では、単結晶シリコンからなる下部基板101と支柱104とを介して金属層156に第2の電位を与えているが、図4に示すように絶縁層102の上に形成した金属製の支柱107を介して金属層156に第2の電位を与えるようにしてもよい。支柱107を形成するには、Au等の金属をメッキなどの方法で堆積させればよい。これにより、本参考例では、シリコン層を介すことなく金属層156への電気的接続を行うことができるので、ミラー153の下面の電位設定を確かなものとすることができる。
[第3の参考例]
次に、本発明の第3の参考例について、図5を参照して説明する。なお、図5において、図1、図2と同一の構成には同一の符号を付してある。第1の参考例では、単結晶シリコンからなる下部基板101と支柱104とを介して金属層156に第2の電位を与えているが、図5に示すように、下部基板101上の絶縁層102を一部除去してコンタクトホール109を形成し、このコンタクトホール109上にAu等からなる支柱108を形成して、支柱108を介して金属層156に第2の電位を与えるようにしてもよい。これにより、支柱108への電気的接続を容易に行うことができる。
なお、第1〜第3の参考例において、金属層156との電気的接続を確実にするため、金属層105,156や支柱107,108の表面の酸化膜を酸などで除去した上で接続するようにしてもよい。また、金属層105と156との電気的接続、あるいは金属層156と支柱107,108との電気的接続には、機械的な接触のほかに、AuSn合金などの半田、Agペーストなどの導電性接着剤を使うことができる。
[第4の参考例]
次に、本発明の第4の参考例について、図6を参照して説明する。なお、図6において、図1、図2と同一の構成には同一の符号が付してある。本参考例は、下部基板101側に帯電防止構造を設けたものである。駆動電極103−1〜103−4への第1の電位の供給は、通常、金属配線で行われるので、駆動電極103−1〜103−4の電位が不確定になることはない。したがって、配線に印加した電圧に対して駆動電極103−1〜103−4の電圧が追随しないという問題は避けることができる。
一方、電位を確定することのできない電気的に浮遊した部位は、いくつかに分類することができる。このような部位としては、まず下部基板101がある。通常、ミラー153は、対向する駆動電極103−1〜103−4より面積が広い。そのため、ミラー153と対向する位置に下部基板そのものが存在することがある。下部基板101の電位がミラー153と同じでない場合は、ミラー153と対向する下部基板101に存在する電荷に応じた静電力がミラー153に加わることになる。この電荷は、図3の抵抗R4を介して第1の電位側に、あるいは抵抗R3を介して第2の電位側に徐々に移動するので、そのためにミラー153のドリフトが発生することになる。
このような下部基板101を原因とするミラー153のドリフトを防ぐには、下部基板101をミラー153と同じ第2の電位にすることが重要である。そこで、本参考例では、帯電防止構造として下部基板101に導電性材料(本参考例では、単結晶シリコン)を用い、さらに下部基板101の裏面あるいは側面の酸化膜を除去した上で、酸化膜を除去した箇所に金属層110を堆積し、この金属層110を介して下部基板101に第2の電位を与えるようにすればよい。このような構造は、図3の接地抵抗R3を下げることを意味する。
以上のように、本参考例では、下部基板101に導電性材料を用い、下部基板101の裏面あるいは側面の酸化膜を除去した上で、酸化膜を除去した箇所に金属層110を堆積し、この金属層110を介して下部基板101に第2の電位を与えることにより、下部基板101をミラー153と同じ電位に確定することができ、ミラー153のドリフトを抑制することができる。
[第5の参考例]
次に、本発明の第5の参考例について、図7を参照して説明する。なお、図7において、図1、図2と同一の構成には同一の符号が付してある。
第4の参考例により下部基板101の電気的接続を確実にすることができるが、次に問題になるのが、駆動電極103−1〜103−4の表面に存在する絶縁層である。図1,図2,図4,図5や図107、図108では図示していないが、駆動電極103−1〜103−4の表面には電極保護や短絡防止のために絶縁層を形成するのが一般的である。この絶縁層は駆動電極103−1〜103−4に第1の電位が印加されると分極する。絶縁層とはいっても電気伝導度は非常に低いが有限の値をもっているので、ある時定数で電荷が移動し、最終的には駆動電極103−1〜103−4と同じ電位になる。
したがって、最終的には絶縁層の厚さ分だけ駆動電極103−1〜103−4とミラー153との距離が短縮されたことになり、駆動電極103−1〜103−4とミラー153とが引き合う力は距離が短縮された分だけ増し、ミラー153のドリフトが発生することになる。この絶縁層内の分極の放電は通常時定数が大きく、数分から数時間の程度となる。
そこで、本参考例では、図7に示すように駆動電極103−1〜103−4の表面の絶縁層111に、帯電防止構造として開口部112を設ける。これは、図3の容量C2と抵抗R2を除去(短絡)することを意味する。
以上のように、本参考例では、駆動電極103−1〜103−4の表面の絶縁層111に開口部112を設けることにより、充放電の時定数が大きい部位を駆動電極103−1〜103−4の近傍から排除することができ、ミラー153のドリフトを抑制することができる。
[第6の参考例]
次に、本発明の第6の参考例について、図8,図9を参照して説明する。なお、図8,9において、図1、図2と同一の構成には同一の符号が付してある。
図8、図9において、113−1〜113−4はそれぞれ駆動電極103−1〜103−4に第1の電位を供給する配線、114は駆動電極103−1〜103−4の周囲に形成された金属層である。
第5の参考例により駆動電極103−1〜103−4上の絶縁層で分極・放電が発生することを回避できるが、次に問題になるのが、下部基板101の表面に存在する絶縁層102である。第5の参考例のように駆動電極103−1〜103−4上の絶縁層を除去することは容易であるが、絶縁層102を除去することは、絶縁層102の上に駆動電極103−1〜103−4や配線を形成する関係で不可能なことが多い。
そこで、本参考例では、絶縁層102上の駆動電極103−1〜103−4の周囲に、帯電防止構造として金属層114を形成し、この金属層114にミラー153と同じ第2の電位を与える。前述のように、ミラー153は駆動電極103−1〜103−4より面積が広い。そのため、駆動電極103−1〜103−4の周囲の絶縁層102はミラー153の外周部と対向することになる。このミラー153と対向する絶縁層102上に金属層114を形成する。金属層114は、駆動電極103−1〜103−4や配線113−1〜113−4と同時に形成することができる。
複数の金属層114に第2の電位を与えるためには、それぞれの金属層114と接続する配線を設ける必要があるが、配線数が増え、また駆動電極103−1〜103−4への配線113−1〜113−4を跨って形成する必要があるので、現実的でない。そこで、図9に示すように、下部基板101上の絶縁層102を一部除去してコンタクトホール115を形成し、このコンタクトホール115上に金属層114を形成することにより、金属層114を下部基板101と同電位にする。これにより、表層での配線の引き回しを行うことなく、金属層114への電気的接続を容易に行うことができる。
以上のように、本参考例では、絶縁層102上の駆動電極103−1〜103−4の周囲に、帯電防止構造として金属層114を形成し、この金属層114に第2の電位を与えることにより、充放電の時定数が大きい部位を駆動電極103−1〜103−4の近傍から排除することができ、ミラー153のドリフトを抑制することができる。
[第7の参考例]
次に、本発明の第7の参考例について、図10を参照して説明する。なお、図10において、図1,図2,図8,図9と同一の構成には同一の符号を付してある。
第6の参考例では、配線113−1〜113−4を駆動電極103−1〜103−4と同一平面に形成しているが、図10に示すように、配線113−1〜113−4と駆動電極103−1〜103−4とを別の平面に形成するようにしてもよい。本参考例の場合、絶縁層102上に配線113−1〜113−4を形成し、絶縁層102及び配線113−1〜113−4上に絶縁層115を堆積し、絶縁層115上に駆動電極103−1〜103−4及び金属層114を形成する。このとき、絶縁層102上には、金属層114と接続する配線116も配線113−1〜113−4と同時に形成し、配線116を介して金属層114にミラー153と同じ第2の電位または第2の電位にオフセットを付加した電位を与える。これにより、表層での配線の引き回しを行うことなく、金属層114への電気的接続を容易に行うことができる。
また、本参考例において、絶縁層102上に配線117も配線113−1〜113−4と同時に形成し、配線117の一端部が露出した絶縁層115上に上部基板153を支持する金属製の支柱118を形成するようにしてもよい。このとき、駆動電極103−1〜103−4は、金属層114及び支柱118と放電を起こさない程度(例えば数μm〜25μm程度)支柱118と間隔を空けて形成される。支柱118を形成するには、Au等の金属をメッキなどの方法で堆積させればよい。これにより、金属層156に、支柱118及び配線117を介して第2の電位を与えることができ、ミラー153下面の電位設定を確かなものとすることができる。
なお、本参考例において、支柱118の代わりに、第1の参考例と同様、下部基板101と支柱104とを介して金属層156に第2の電位を与えるようにしてもよい。この場合、図2によく示されるように、支柱104の表面の絶縁層102を一部除去してコンタクトホール106を形成し、このコンタクトホール106上にAu等からなる金属層105を形成し、この金属層105を上部基板151側の金属層156と接続する。このようにしても、金属層156に第2の電位を与えることができ、ミラー153下面の電位設定を確かなものとすることができる。
以上のように、本参考例では、絶縁層102上の駆動電極103−1〜103−4の周囲に、帯電防止構造として金属層114を形成し、この金属層114に配線116を介して第2の電位を与えることにより、充放電の時定数が大きい部位を駆動電極103−1〜103−4の近傍から排除することができ、ミラー153のドリフトを抑制することができる。
なお、図10において、金属層114と接続する配線116と支柱118と接続する配線117とが別に設けられているが、それぞれを接続するようにしてもよい。
また、第1〜第7の参考例では、第1の電位≧第2の電位としたが、これに限るものではなく、第1の電位≦第2の電位としてもよい。
[第8の参考例]
次に、本発明の第8の参考例について説明する。
まず、従来のミラーアレイの一例を図11,図12に示す。なお、図11,12は、主にミラーアレイの1構成単位である一つのミラーを備えたミラー装置を部分的に示している。ミラーアレイは、複数のミラー装置を2次元的に格子状に配設したものである。
ミラー装置8200は、ミラーが形成されたミラー基板8201と、電極が形成された電極基板8301とが平行に配設された構造を有する。
ミラー基板8201は、枠部8210と、一対の可動枠連結部8211a,8211bにより枠部8210の開口内に配設された可動枠8220と、一対のミラー連結部8221a,8221bにより可動枠8220の開口内に配設された平面視略円形のミラー8230とを有する。また、枠部8210の上面には、可動枠8220及びミラー8230を取り囲むような枠状部材8240が形成されている。
一対の可動枠連結部8211a,8211bは、可動枠8220の切り欠き内に設けられており、つづら折りの形状を有するトーションバネから構成され、枠部8210と可動枠8220とを連結している。一対のミラー連結部8221a,8221bは、可動枠8220の切り欠き内に設けられており、つづら折りの形状を有するトーションバネから構成され、可動枠8220とミラー8230とを連結している。
電極基板8301は、板状の基部8310と、基部8310の表面(上面)から突出した突出部8320を有する。ここで、突出部8320は、基部8310の上面に形成された第3テラス8323と、この第3テラス8323の上面に形成された第2テラス8322と、この第2テラス8322の上面に形成された第1テラス8321と、この第1テラス8321の上面に形成されたピボット8330とから構成される。
また、突出部8320の外面を含む基部8310の上面には、4つの扇形の電極8340a〜8340dが形成されており、これらの電極8340a〜8340dの周囲には、対向するミラー基板8201の可動枠連結部8211a,8211b及びミラー連結部8221a,8221bに対向する位置に、それぞれ平面視略矩形の凹部8350a〜8350dが形成されている。また、基部8310の上面には、第1〜第3テラス8321〜8323及び凹部8350a〜8350dを挟むように並設された一対の凸部8360a,8360bが形成されている。さらに、基部8310の上面の凹部8350aと凸部8360a及び凹部8350cと凸部8360bの間の箇所には、配線8370が形成されており、この配線8370には、引き出し線8341a〜8341dを介して電極8340a〜8340dが接続されている。
上述したようなミラー基板8201と電極基板8301とは、ミラー8230とこのミラー8230に対応する電極8340a〜8340dとが対向配置されるように、枠部8210の下面と凸部8360a,8360bの上面とを接合することにより、図12に示すようなミラー装置8200が形成される。このようなミラー装置8200がマトリクス状に複数配設された構成を有するミラーアレイは、以下に説明するような方法により製造される。
ミラー基板8201は、SOI(Silicon On Insulator)基板から形成される。
まず、SOI基板の埋め込み絶縁層8241が形成されている側(主表面:SOI層)より、公知のフォトリソグラフィ技術とDEEP RIEなどのエッチングによって、単結晶シリコン層に枠部8210、可動枠連結部8211a,8211b、可動枠8220、ミラー連結部8221a,8221b及びミラー8230の形状に対応する溝を形成する。
次に、上記溝に対応する所定の領域が開口したレジストパターンをSOI基板の裏面に形成し、水酸化カリウムなどのエッチング液を用い、SOI基板の裏面より選択的にシリコンをエッチングする。このエッチングでは、埋め込み絶縁層8241をエッチングストッパ層として用い、SOI基板の裏面に開口部及び枠状部材8240を形成する。
次いで、埋め込み絶縁層8241の上記開口部に露出している領域を、フッ酸等のウエットエッチングやCF系ガスを用いたドライエッチングで除去する。
これにより、上述した形状を有するミラー基板8201が形成される。
一方、電極基板8301は、例えばシリコン基板から形成される。
まず、シリコン基板をシリコン窒化膜またはシリコン酸化膜からなる所定のマスクパターンをマスクとし、水酸化カリウム溶液等を用いたアルカリ溶液で選択的にエッチングを行う。これを繰り返し行うことにより、基部8310、第1〜3テラス8321〜8323、ピボット8330、凹部8350、凸部8360a,8360bが形成された状態とする。
次に、シリコン基板のエッチングを行った側の面を酸化し、シリコン酸化膜を形成する。
続いて、シリコン酸化膜上に蒸着法などにより金属膜を形成し、この金属膜を公知のフォトリソグラフィ技術とエッチング技術とによりパターニングし、電極8340a〜8340d、引き出し線8341a〜8341d及び配線8370を形成する。
これにより、上述した形状を有する電極基板8301が形成される。
この後、ミラー基板8201及び電極基板8301を貼り合わせることで、図12に示すように、電極8340a〜8340dに対する電界印加によってミラー8230を可動するミラー装置8200を有するミラーアレイが製造できる。なお、ミラー8230の反射率を向上させるためにミラー8230の上面に金などの金属膜を形成してもよい。
このようなミラーアレイのミラー装置8200は、配線8370を介して電極8340a〜8340dに個別の電圧を加えることによって生じる電界でミラー8230に吸引力を与え、ミラー8230を数度の角度で回動させるものである。このミラー8230を回動動作について、図13を参照して説明する。なお、便宜上、図13を正面視した状態で上下方向を高さまたは深さ方向、図13の上方を上側、図13の下方を下側と言う。
光MEMS型のミラー装置の特徴として、ミラーの回動角は、電極基板の電極構造により一意に決定される角度までしか静的に安定に回動させることができない。図13に示すように、ミラー8230のプルイン回動角をθP、突出部8320上に形成された電極8340a〜8340dの傾斜角をθとすると、それぞれの関係は概ね下式(1)で表される。
θP=(1/3)θ ・・・(1)
したがって、ミラー8230をなるべく大きくかつ低い電圧で回動させるには、ミラー8230に対向する電極8340a〜8340dをミラー8230と同じ面積を有するように配置し、かつ、電極8340a〜8340dが形成される突出部8320の傾斜角を大きくすることが必要である。これには、例えば、突出部8320の高低差を大きくすることが考えられる。
しかしながら、従来では、配線8370を突出部8320の底面と同一面に形成していたため、突出部8320の高低差を大きくするのが困難であった。
上述したように、電極基板8301上の配線8370は、金属膜上にフォトレジストを塗布し、露光装置により配線8370となるパターンをフォトレジストに転写して、エッチングを行うことにより形成される。露光装置が精密にパターンを転写できる深さ(被写体深度)には限界(最大50〜70ミクロン)があり、この限界を超えて露光するとフォトレジストに転写するパターンのピントがボケてしまい、細かな配線パターンを形成することが困難である。特に、配線8370には多くの配線を配設する関係上、数ミクロンの精度で配線のパターン形成が要求されている。
従来では、図11〜図13に示すように、配線8370を基部8310上、すなわち突出部8320の第3テラス8323の底面の層に形成している。このため、配線8370に露光装置の焦点の下限を合わせて露光する関係上、突出部8320の高低差は50〜70ミクロン以下に制限せざるを得なかった。ところが、ミラー8230の回動角を大きくするためには、突出部8320の高低差を上述の制限以上、望ましくは100ミクロン以上にする必要がある。これを実現するには、焦点の範囲が広い特殊な露光装置を使用したり、高さ毎に複数回に分けて露光しなければならず、高コストになってしまう。
そこで、本参考例は、上述したような課題を解決するためになされたものであり、低電圧での駆動及び低コストを実現し、かつ、ミラーの回動角が大きいミラー装置、ミラーアレイ及びミラー装置の製造方法を提供することを目的とするものである。
次に、図14〜図16Bを参照して本参考例について説明する。なお、図14〜図16Bでは、主にミラーアレイの1構成単位である一つのミラーを備えたミラー装置を部分的に示している。なお、本参考例に係るミラーアレイは、複数のミラー装置が2次元的に格子状に形成されたものである。
本参考例に係るミラー装置は、ミラーが形成されたミラー基板200と、電極が形成された電極基板300とが平行に配設された構造を有する。
ミラー基板200は、平面視略円形の開口を有する板状の枠部210と、平面視略円形の開口を有し、一対の可動枠連結部211a,211bにより枠部210の開口内に配設された可動枠220と、一対のミラー連結部221a,221bにより可動枠220の開口内に配設された平面視略円形のミラー230とを有する。また、枠部210の上面には、可動枠210及びミラー230を取り囲むような枠状部材240が形成されている。
一対の可動枠連結部211a,211bは、可動枠220の切り欠き内に設けられており、つづら折りの形状を有するトーションバネから構成され、枠部210と可動枠220とを連結している。これにより、可動枠220は、一対の可動枠連結部211a,211bを通る回動軸(可動枠回動軸)を中心に、回動可能とされている。
一対のミラー連結部221a,221bは、可動枠220の切り欠き内に設けられており、つづら折りの形状を有するトーションバネから構成され、可動枠220とミラー230とを連結している。これにより、ミラー230は、一対のミラー連結部221a,221bを通る回動軸(ミラー回動軸)を中心に回動可能とされている。
なお、可動枠回動軸とミラー回動軸とは、互いに直交している。
電極基板300は、板状の基部320と、この基部320上に形成された平面視略矩形の外堀トレンチ330と、この外堀トレンチ330内に形成された略錐状の形状を有する突出部340とを有する。基部320の外堀トレンチ330及び突出部340が形成された側の面には、絶縁膜321が形成されている。
突出部340の外面及び外堀トレンチ330の上面には、ミラー230とほぼ同じ大きさの同心の円形をなすように、それぞれ扇形の形状を有する4つの電極360a〜360dが形成されている。また、基部320の上面320aには、外堀トレンチ330を挟むように並設された一対の凸部370a,370bが形成されており、この凸部370a,370bと外堀トレンチ330との間の基部320の上面320a上に配線380が形成されている。この配線380は、引き出し線361a〜361dを介して電極360a〜360dと接続されている。
外堀トレンチ330は、基部320の表面からから堀り込まれた凹部からなり、この凹部は開口部(上面)が底面部よりも大きい角錐台の形状を有する。このような外堀トレンチ330の表面に突出部340が形成される。このように基部320上ではなく、基部320上から堀り込まれた外堀トレンチ330上に突出部340を形成することにより、突出部340の高低差を高くすることが可能となる。
このような外堀トレンチ330及び突出部340上に、電極360a〜360dが形成される。
突出部340は、外堀トレンチ330の表面(底面)に形成された角錐台の形状を有する第3テラス343と、この第3テラス343の上面に形成された角錐台の形状を有する第2テラス342と、この第2テラス342の上面に形成された角錐台の形状を有する第1テラス341と、この第1テラス341の上面に形成された角錐台の形状を有するピボット350とから構成される。
ここで、図14に示すように、第2テラス342の下面、すなわち第3テラス343の上面の高さは、基部320の上面320aの高さと同じ高さに形成されている。
このように構成される電極基板300にミラー基板200を接合する、具体的には、ミラー基板200のミラー230とこのミラー230に対応する電極基板300の電極360a〜360dとが対向配置されるように、ミラー基板200の枠部210の下面に電極基板300の凸部370a,370bの上面を接合することによって、複数のミラー装置が2次元的にマトリクス状に配設されたミラーアレイが形成される。
次に、図17A〜図20Fを参照して、電極基板300の製造方法について説明する。
はじめに、シリコン基板300上にピボット350を形成するため、図17Aに示すように、シリコン基板400を酸化して、シリコン基板400の表面にSiO2からなる絶縁膜401が形成された状態とする。
次いで、図17Bに示すように、絶縁膜401上にフォトレジスト材料を塗布して、保護膜402が形成された状態とする。
次いで、図17Cに示すように、公知のフォトリソグラフィ技術により保護膜402をパターニングして、マスクパターン(ピボット形成準備用マスクパターン)403が形成された状態とする。
次いで、図17Dに示すように、ピボット形成準備用マスクパターン403をマスクとして絶縁膜401をエッチングし、絶縁膜401にマスクパターン(ピボット形成用マスク)404が形成された状態とする。このエッチングは、例えば公知のウエットエッチングやドライエッチングにより行うことができる。
次いで、図18Aに示すように、例えば灰化処理等によりピボット形成準備用マスクパターン403が除去された状態とする。
次いで、図18Bに示すように、ピボット形成用マスクパターン404をマスクとしてシリコン基板400をエッチングし、ピボット350が形成された状態とする。このエッチングは、例えば水酸化カリウム溶液等のアルカリ溶液を用いたウエットエッチングにより行う。
次いで、図18Cに示すように、例えばフッ酸等により、シリコン基板400上からピボット形成用マスクパターン404が除去された状態とする。これにより、シリコン基板400の表面にピボット350が形成される。
次いで、図17A〜図18Cに示した工程と同等の工程を行うことにより、図19Aに示すように、シリコン基板400の表面に第1テラス341が形成された状態とする。
次いで、第1テラス341を形成したのと同等の工程を行うことにより、図19Bに示すように、シリコン基板400の表面に第2テラス342が形成された状態とする。
次いで、第2テラス342を形成したのと同等の工程を行うことにより、図19Cに示すように、シリコン基板400の表面に外堀トレンチ330、第3テラス343及び凸部370a,370bが形成された状態とする。これにより、基部320の形状が形成される。
ここで、突出部340は、高低差、すなわち第3テラス343の下面からピボット350の端部までの距離が所望の値、例えば100ミクロン程度になるように形成される。また、第3テラス343の上面と基部320の上面320aとは、同一の高さとなる。
次いで、図20Aに示すように、基部320を酸化して、基部320の突出部340が形成された側の表面にSiO2からなる絶縁膜321を形成する。
次いで、図20Bに示すように、例えばスパッタ法や蒸着法により、基部320の絶縁膜321が形成された側の表面にAl等からなる金属膜(電極・配線用金属膜)405が形成された状態とする。
次いで、図20Cに示すように、金属膜405の表面にフォトレジスト材料からなる保護膜406が形成された状態とする。
次いで、図20Dに示すように、公知のフォトリソグラフィ技術により保護膜406をパターニングして、図14,図16A,図16Bに示す電極360a〜360d、引き出し線361a〜361d及び配線380の配線パターンが形成されたパターン407が形成された状態とする。
ここで、上記配線パターンを保護膜406に転写する際の露光装置の焦点は、配線380を形成する基部320の上面320aの高さに合わせる。これにより、配線380を最も高い解像度で形成することが可能となる。
一方、電極360a〜360d及び引き出し線361a〜361dは、高さ方向(図16Aを正面視した状態で上下方向)において、基部320の上面320aから掘り込まれた外堀トレンチ330から第1テラス341の間、すなわち基部320の上面320aをほぼ中心としてこの上面320aの上方から下方にかけて位置している。このため、基部320の上面320aに露光装置の焦点を合わせて露光を行うと、電極360a〜360d及び引き出し線361a〜361dについても、露光装置が精密にパターンを転写できる範囲内またはこの範囲近傍の比較的像のボケが少ない領域でパターンの転写が行われるので、精度よく形成することが可能となる。
次いで、図20Eに示すように、パターン407をマスクとして、金属膜405をエッチングし、図14〜図16Bに示す電極360a〜360d、引き出し線361a〜361d及び配線380等からなる配線層408が形成された状態とする。
次いで、図20Fに示すように、例えば灰化処理等により、パターン407が除去された状態とする。
このようにして製造された電極基板300を有する本参考例に係るミラーアレイは、配線380を介して電極360a〜360d全体に一定のバイアス電圧をかけたうえで、各電極360a〜360dに個別の変位電圧を加えることにより、ミラー230を回動させることができる。
本参考例によれば、従来の露光装置を利用した場合であっても、突出部340の高低差を所望する値、例えば約100ミクロン程度にすることが可能なので、突出部340の傾斜角を大きくして、従来よりミラー230の回動角を大きくすることが可能となる。また、電極360a〜360dがミラー230と同等の大きさを有するので、ミラー230を低電圧で駆動させることが可能となる。
なお、外堀トレンチは、上述したような1段の構造のみならず、多段構造にしてもよい。外堀トレンチを多段構造としたミラーアレイを図21に示す。なお、図21において、図14〜図16Bに示すミラー装置と同等の構成要素には、同じ名称及び符号を付し、適宜説明を省略する。また、図21は、図16A,図16Bと同等の切断面の断面図を示す。
図21に示す電極基板301は、板状の基部320と、この基部320上に形成された平面視略矩形の凹部からなる第1外堀トレンチ331と、この第1外堀トレンチ331上に形成された平面視略矩形の凹部からなる第2外堀トレンチ322と、この第2外堀トレンチ332上に形成された略錐状の突出部340とを有する。基部320の第1外堀トレンチ331、第2外堀トレンチ332及び突出部340が形成された側の面には、絶縁膜321が形成されている。また、突出部340の外面及び第2外堀トレンチ332の上面には、ミラー230と同心の円形をなすように、それぞれ扇形の形状を有する4つの電極360a〜360dが形成されている。また、基部320の上面320aには、第1外堀トレンチ331を挟むように並設された図示しない一対の凸部370a,370bが形成されており、この凸部370a,370bと第1外堀トレンチ331との間の基部320上に配線380が形成されている。この配線380は、引き出し線361a〜361dを介して電極360a〜360dと接続されている。
第1外堀トレンチ331は、基部320から掘り込まれた凹部からなり、この凹部は上面が底面よりも大きい角錐台の形状を有する。このような第1外堀トレンチ331の上面は、第2テラスの上面と同じ高さに形成される。
第2外堀トレンチ332は、第1外堀トレンチ331の底面から掘り込まれた凹部からなり、この凹部は上面が底面よりも大きい角錐台の形状を有する。この第2外堀トレンチ332の底面に突出部340が形成される。また、第2外堀トレンチ332及び突出部340上に、電極360a〜360dが形成される。
突出部340は、第2外堀トレンチ332の表面(底面)に形成された角錐台の形状を有する第3テラス343と、この第3テラス343の上面に形成された角錐台の形状を有する第2テラス342と、この第2テラス342の上面に形成された角錐台の形状を有する第1テラス341と、この第1テラス341の上面に形成された角錐台の形状を有するピボット350とから構成される。
ここで、図21に示すように、第1テラス341の下面、すなわち第2テラス342の上面の高さは、基部320の高さと同じになるように形成されている。また、第2テラス342の下面、すなわち第3テラスの上面の高さは、第1外堀トレンチ331の上面の高さと同じになるように形成されている。
このような突出部340は、高低差が所望の値、例えば100ミクロン程度となるように形成される。
図21に示す場合も、電極360a〜360d、引き出し線361a〜361d及び配線380となるパターンをフォトレジストに転写する際に、露光装置の焦点を基部320の高さに合わせる。これにより、配線380を数ミクロンの精度で形成することが可能となる。また、電極360a〜360d及び引き出し線361a〜361dについても、露光装置が精密にパターンを転写できる範囲内またはこの範囲近傍の比較的像のボケが少ない領域でパターンの転写が行われるので、精度よく形成することができる。
結果として、突出部340の高低差を所望する値、例えば100ミクロン程度にすることが可能となるので、突出部340の傾斜角を大きくして、従来よりミラー230の回動角を大きくすることができる。
特に、図21に示す電極基板の場合、図16A,図16Bに示す電極基板と比較して、基部320の上面320aからピボット350までの高低差を小さくすることができる。このため、ピボット350形成時の露光装置によるパターン転写の際、基部320の上面320aからの上下方向のボケをより小さくすることができ、結果としてより高精度なパターン形成が可能となる。
図21に示す外堀トレンチが多段構造のミラーアレイは、上述した図14〜図16Bに示すミラーアレイと同等の製造方法により製造することができる。
また、外堀トレンチは、上述したような一体形成された構造のみならず、分割された構造にしてもよい。外堀トレンチを分割構造としたミラーアレイを図22に示す。図22は、本参考例に係るミラーアレイの電極基板の変形例を示す断面図である。なお、図22において、図14〜図16Bに示すミラー装置と同等の構成要素には、同じ名称及び符号を付し、適宜説明を省略する。
図22に示す電極基板302は、板状の基部320と、この基部320上に形成された4つの平面視略L字状の凹部からなる外堀トレンチ333a〜333dと、基部320上に形成された略錐状の突出部340とを有する。ここで、基部320の外堀トレンチ333a〜333d及び突出部340が形成された側の面には、絶縁膜(図示せず)が形成されている。この絶縁膜が形成された基部320、外堀トレンチ333a〜333d及び突出部340の上面には、ミラー230と同心の円形をなすように、それぞれ扇形の形状を有する4つの電極360a〜360dが形成されている。また、基部320の上面320aには、外堀トレンチ333a〜333dを挟むように並設された一対の凸部370a,370bが形成されており、この凸部370a,370bと外堀トレンチ333a〜333dとの間の基部320の上面320a上に配線380が形成されている。この配線380は、基部320上に形成された引き出し線361a〜361dを介して電極360a〜360dと接続されている。
外堀トレンチ333a〜333dは、基部320から掘り込まれた凹部からなり、この凹部は上面が底面よりも大きい錐台の形状を有する。このような外堀トレンチ333a〜333dは、突出部340を取り囲み、かつ、突出部340及び電極360a〜360dと同心の矩形をなすように、それぞれ点対称に形成されている。
突出部340は、外堀トレンチ333a〜333dに囲まれた基部320の上面320aに形成された角錐台の形状を有する第2テラス342と、この第2テラス342の上面に形成された角錐台の形状を有する第1テラス341と、この第1テラス341の上面に形成された角錐台の形状を有するピボット350とから構成される。したがって、当然ではあるが、第2テラス342の下面の高さは、基部320の高さと同じになる。なお、外堀トレンチ333a〜333dに囲まれ、上面が基部320の上面320aに対応する略角錐台の部分は、図14〜図16B及び図21に示した第3テラス343に相当する。
このような突出部340は、高低差を所望する値に形成することができる。例えば、第3テラスに相当する上記略角錐台部分を突出部340に含めた場合、突出部340の高低差を例えば100ミクロン程度にすることが可能となるので、突出部340の傾斜角を大きくして、従来よりミラー230の回動角を大きくすることができる。
引き出し線361a〜361dは、基部320上の隣り合う外堀トレンチ333a〜333dに挟まれた部分に形成される。したがって、引き出し線361a〜361dと配線380は、基部320上に形成されることになる。
図22に示す場合も、電極360a〜360d、引き出し線361a〜361d及び配線380となるパターンをフォトレジストに転写する際に、露光装置の焦点を基部320の高さに合わせる。これにより、配線380を数ミクロンの精度で形成することが可能となる。特に、図22の場合は、引き出し線361a〜361dを基部320上に形成するため、配線380のみならず引き出し線361a〜361dも数ミクロンの精度で形成することが可能となる。さらに、電極360a〜360dについても、露光装置が精密にパターンを転写できる範囲内またはこの範囲近傍の比較的像のボケが少ない領域でパターンの転写が行われるので、精度よく形成することができる。
結果として、突出部340の高低差を所望する値にすることが可能となるので、突出部340の傾斜角を大きくして、従来よりもミラー230の回動角を大きくすることが実現できる。
図22に示す外堀トレンチが分割されたミラーアレイは、上述した図14,図15,16A,図16Bに示すミラーアレイと同等の製造方法により製造することができる。
なお、本参考例では、シリコン基板400を掘り込むことにより突出部340等を有する電極基板300,301,302を形成したが、任意の基板上から任意の物質を堆積することによって、突出部340等を有する電極基板300,301,302を形成するようにしてもよい。
以上説明したように、本参考例によれば、基部から掘り込まれたトレンチ内に突出部を形成することにより、突出部の高低差を大きくすることができるので、ミラーの回動角を大きくすることが可能となる。このとき、配線は基部上に、電極は基板から掘り込まれたトレンチ及びこのトレンチから突出した突出部上にそれぞれ形成される。したがって、配線及び電極を形成する際に、露光装置の焦点を基部上に合わせることにより、配線を必要とされる精度で形成することが可能となる。
[第9の参考例]
まず、従来のミラー装置について説明する。従来のミラー装置8200は、図13によ示されるように、配線8370を介して電極8340a〜8340dに個別の電圧を加えることによって生じる電界でミラー8230に吸引力を与え、ミラー8230を数度の角度で回動させるものである。電極8340a〜8340dに電圧が印加されていない場合、ミラー8230は、図13の実線で示すように、電極基板8301に対して略平行な状態(以下、初期位置という)となる。この状態で、電極8340a〜8340dに個別の電圧を加えると、ミラー8230は、図13の点線に示すように傾動する。
このようなミラー装置8200を備えた光スイッチを図23に示す。光スイッチ8400は、複数の光ファイバを2次元的に配列した一対のコリメータアレイ8410,8420と、上述したミラー装置8200を2次元的に配列した一対のミラーアレイ8430,8440とから構成される。このような光スイッチ8400では、入力ポートとなるコリメータアレイ8410から入力された光ビームは、ミラーアレイ8430,8440により反射されて、出力ポートとなるコリメータアレイ8420に到達し、このコリメータアレイ8420から出力される。ここで、例えば、コリメータアレイ8410の光ファイバ8410aから光スイッチ8400内部に導入された光ビームaは、ミラーアレイ8430のミラー装置8200aに照射される。すると、その光ビームは、ミラー装置8200aのミラー8230により反射されて、ミラーアレイ8440のミラー装置8200bに到達する。このミラーアレイ8440でもミラーアレイ8430の場合と同様、上記光ビームは、ミラー装置8200bのミラー8230により反射されて、コリメータアレイ8420の光ファイバ8420aに到達する。このように、光スイッチ8400は、コリメータアレイ8410から入力されたコリメート光を電気信号に変換することなく、光ビームのままでコリメータアレイ8420へ空間的にクロスコネクトすることが可能となる。
このような光スイッチ8400において、ミラーアレイ8430,8440に2次元的に配設される各ミラー装置8200は、いずれも各構成要素が同一の形状を有するように形成されている。例えば、ミラー8230の大きさ、可動枠連結部8211a,8211b及びミラー連結部8221a,8221bの形状、ミラー8230と可動枠連結部8211a,8211bまたはミラー連結部8221a,8221bとの相対位置、ミラー8230と電極8340a〜8340dとの相対位置、電極8340a〜8340dの大きさ等は、いずれのミラー装置も同一の形状を有するように形成されている。このように、従来の光スイッチ8400では、同一の形状を有するミラー装置8200をミラーアレイ8430,8440に配設しているので、ミラーアレイ8430,8440の各ミラー8230は、図24に示すように電極基板8301に対して略平行に配設される。なお、図24は、ミラーアレイ8430,8440それぞれに複数配設されたミラー装置8200のミラー8230の断面を模式的に示したものであり、ミラーアレイ8430はミラー8230に対応するミラー8431〜8435を、ミラーアレイ8440はミラー8230に対応するミラー8441〜8445をそれぞれ有するものとする。
ミラーアレイ8430の各ミラー8431〜8435は、初期位置において、電極基板8301に対して略平行に位置し、かつ、対となるミラーアレイ8440の対応するミラーに光ビームが当たるように配設されている。例えば、ミラー8431は、図24において符号aで示す光ビーム(以下、光ビームaという)を、ミラー8431に対応するミラー8441に反射する。また、ミラー8433は、図24において符号bで示す光ビーム(以下、光ビームbという)を、ミラー8433に対応するミラー8443に反射される。また、ミラー8435は、図24において符号cで示す光ビーム(以下、光ビームcという)を、ミラー8435に対応するミラー8445に照射される。ここで、対応するミラーとは、例えば対となるミラーアレイにおいて、一方のミラーアレイをビーム反射面の裏面より投影視し、他方のミラーアレイをビーム反射面より見た場合に同じ位置に位置するミラーのことを言う。
このような光スイッチ8400のミラーアレイ8430において、各ミラー8431〜8435に対応する電極8340a〜8340dに個別の電圧を印加して各ミラー8431〜8435を傾動させると、各ミラー8431〜8435に照射される光ビームを、ミラーアレイ8440の任意のミラーに照射することが可能となる。
しかしながら、従来のミラーアレイでは、ミラー装置のミラーを傾動させて2次元的なターゲットに光ビームを照射する際、ミラーアレイ内の各ミラー装置の位置によって、ミラーを傾動させる角度が異なる。
例えば、図24に示すような一対のミラーアレイ8430,8440を有する光スイッチ8400の場合、ミラーアレイ8430のミラー8431では、初期位置から正の方向(図24を正面視した状態で右側の方向)にθ1の半分の角度だけミラー8431を傾かせると、光ビームaは、ターゲットとなるミラーアレイ8440のミラー8445に照射される。したがって、ミラー8431の場合、対向するミラーアレイ8440の全てのミラー8441〜8445に光ビームaを照射するためには、初期位置から正の方向にθ1の半分の角度まで傾動可能でなければならない。
ミラー8433では、初期位置から負の方向(図24を正面視した状態で左側の方向)にθ2の半分の角度だけミラー8433を傾かせると、光ビームbは、ミラー8441に照射される。また、初期位置から正の方向にθ3の半分の角度だけミラー8433を傾かせると、光ビームbは、ミラー8445に照射される。したがって、ミラー8433の場合、対向するミラーアレイ8440の全てのミラー8441〜8445に光ビームbを照射するには、初期位置から負の方向にθ2の半分の角度、初期位置から正の方向にθ3の半分の角度だけそれぞれ傾動可能でなければならない。
ミラー8435では、初期位置から負の方向にθ4の半分の角度だけミラー8435を傾かせると、光ビームcは、ミラー8441に照射される。したがって、ミラー8435の場合、対向するミラーアレイ8440の全てのミラー8441〜8445に光ビームcを照射するには、初期位置から負の方向にθ4の半分の角度まで傾動可能でなければならない。
このように従来のミラーアレイでは、ミラーアレイ内の位置によってミラーを傾動させる角度が異なるが、各ミラー装置は同一の形状を有するように形成されている。このため、各ミラー装置は、同じミラーアレイに含まれるミラー装置が必要とするのと同じ角度だけ傾動可能でなければならない。例えば、図24の場合、各ミラー8431〜8435は、正の方向にθ1の半分の角度、負の方向にθ4の半分の角度だけ傾動可能でなければならない。しかしながら、MEMS技術を用いたミラー装置では、低電圧でミラーの傾動角度を大きくするのが困難なため、ミラーの傾動角度を小さくできるミラー装置が望まれていた。
そこで、本参考例は、上述したような課題を解決するためになされたものであり、ミラーの傾動角度を小さくすることができるミラー装置、ミラーアレイ及び光スイッチを提供することを目的とする。
次に、本参考例について説明する。本参考例は、支点突起をミラーの中心からずれた位置に設けることにより、ミラーの傾動角度を小さくするものである。なお、本参考例において、第8の参考例と同等の構成要素には同じ符号を付してある。また、図25A,図25Bでは、主にミラーアレイの1構成単位である一つのミラーを備えたミラー装置を部分的に示している。
本参考例に係るミラー装置2は、ミラーが形成されたミラー基板200と、電極が形成された電極基板300とが平行に配設された構造を有し、図25Aに示すように、電極基板300の第1テラス341の上面において、この上面の中央部からずれた位置に略柱状の突起からなるピボット(支点突起)350を設けたものである。ここで、電極基板300の突出部320は、ミラー基板200のミラー230と対向するように配設されている。これにより、ミラー230に対するピボット350の位置は、ミラー230の平面に垂直な中心軸からずれることになる。すなわち、ミラー230の中心を電極基板300上に投影したとすると、そのミラー230の中心とピボット350とは、一致せず、電極基板300上の異なった箇所に位置する。なお、ピボット350を第1テラス341の略中央から移動させる距離及び方向は、ミラーアレイ中のミラー装置2の位置に応じて設定される。
図26に示すように、従来のミラー装置8200では、ピボット8330がミラー8230の略中心に対向するように配設されている。このため、電極8340a〜8340dに一様な電圧をかけると、ミラー8230全体に一様な吸引力が働き、ミラー8230は、電極基板8301側に引き寄せられてピボット8330に当接するが、電極基板8301に対して略平行な状態、すなわちピボット8330の軸線(図26中に一点鎖線で示す)に対して垂直な状態となる。
これに対して、本参考例のミラー装置2では、図27に示すように、ピボット350の位置が対向するミラー230の中心からずれるように配設されている。このため、電極360a〜360dに一様な電圧(以下、バイアス電圧という)をかけると、ミラー230は、ピボット350に当接し、ピボット350の軸線(図27中に一点鎖線で示す)に対して垂直な状態(図27中に点線で示す)から所定の角度だけ傾いた状態(以下、初期状態という)となる。本参考例では、この状態から各電極360a〜360dに個別の変位電圧を加え、ピボット350を支点としてミラー230を傾動させる。
次に、本参考例に係るミラーアレイ及びこのミラーアレイを備えた光スイッチについて説明する。
図28に示すように、本参考例に係るミラーアレイ500は、図25A,図25B,図27を参照して説明したミラー装置2が2次元的にマトリクス状に配設されたものである。
図29に示すように、本参考例に係る光スイッチ600は、複数の光ファイバを2次元的に配列した一対のコリメータアレイ610,620と、上述したミラーアレイ500からなる一対のミラーアレイ510,520とから構成される。このような光スイッチ600では、入力ポートとなるコリメータアレイ610から入力された光ビームは、ミラーアレイ510,520により反射されて、出力ポートとなるコリメータアレイ620に到達し、このコリメータアレイ620から出力される。ここで、例えば、コリメータアレイ610の光ファイバ610aから光スイッチ600内部に導入された光ビームaは、ミラーアレイ510のミラー装置2−1に照射される。すると、その光ビームは、ミラー装置2−1のミラー230により反射されて、ミラーアレイ520のミラー装置2−2に到達する。このミラーアレイ520でもミラーアレイ510の場合と同様、上記光ビームは、ミラー装置2−2のミラー230により反射されて、コリメータアレイ620の光ファイバ620aに到達する。このように、光スイッチ600は、コリメータアレイ610から入力されたコリメート光を電気信号に変換することなく、光ビームのままでコリメータアレイ620へ空間的にクロスコネクトすることが可能となる。
ミラーアレイ500において、各ミラー装置のピボット350の位置(図28中に点線丸印で示す)は、初期状態において対向するミラーアレイの中央部に位置するミラーに光ビームを反射するように、ミラー230の中心(図28中に×印で示す)からずらした位置に設定される。一例として、図28に示すミラーアレイ500では、各ミラー装置2のピボット350は、ミラーアレイ500の中央部に位置するミラー装置2aと、各ミラー装置2のミラー230の中心とを結ぶ直線上に位置し、かつ、ミラー装置2aから離れるにつれて徐々に各ミラー装置2のミラー230の中心からミラー装置2aと反対側に離れた位置に配設されている。ミラー装置2aのピボット350は、ミラー230の中心に対向する位置に配設される。これにより、ミラーアレイ500の各ミラー装置2は、電極360a〜360dにバイアス電圧が印加されると、ミラー230がピボット350に当接して傾動し、照射される光ビームを対となるミラーアレイの中央のミラーに反射させる。
図30に、ミラーアレイ510,520の断面の模式図を示す。なお、図30は、ミラーアレイ510,520に複数配設されたミラー装置2のミラー230の断面を模式的に示したものである。ここで、ミラーアレイ510のミラー511〜515及びミラーアレイ520のミラー521〜525は、それぞれ上述したミラー230に対応するものである。
ミラーアレイ510の各ミラー装置2の電極360a〜360dにバイアス電圧が印加されると、ミラー511〜515は、図30に示すように、ミラーアレイ510内の位置に応じて傾動し、所定の角度で傾いた状態となる。この初期状態では、ミラー511〜515は、ミラーアレイ510に入力された光ビームをミラーアレイ520の中央部に位置するミラー523に反射するように傾いている。このため、ミラー511〜515は、ミラーアレイ520のミラー521〜525それぞれに光ビームを照射するには、正の方向(図30を正面視した状態で右側の方向)と負の方向(図30を正面視した状態で左側の方向)に同程度だけ傾動可能であればよい。
例えば、図30のミラー511では、初期状態から負の方向にθ5の半分の角度だけミラー511を傾かせると、光ビームaは、ミラー521に照射される。また、初期状態から正の方向にθ6の半分の角度だけミラー511を傾かせると、光ビームaは、ミラー525に照射される。したがって、ミラー511の場合、対向するミラーアレイ520の全てのミラー521〜525に光ビームaを照射するためには、初期状態から負の方向にθ5の半分の角度、正の方向にθ6の半分の角度だけそれぞれ傾動可能であればよい。
また、ミラー515では、初期状態から負の方向にθ7の半分の角度だけミラー515を傾かせると、光ビームcは、ミラー521に照射される。また、初期状態から正の方向にθ8の半分の角度だけミラー515を傾かせると、光ビームcは、ミラー525に照射される。したがって、ミラー515の場合、対向するミラーアレイ520の全てのミラー521〜525に光ビームcを照射するためには、初期状態から負の方向にθ7の半分の角度、正の方向にθ8の半分の角度だけそれぞれ傾動可能であればよい。
図24に示した従来のミラーアレイ8430では、本参考例のミラーアレイ510のミラー511に対応するミラー8431は、対向するミラーアレイ8440の全てのミラー8441〜8445に光ビームaを照射するためには、初期位置から正の方向にθ1(=θ5+θ6)の半分の角度まで傾動可能でなければならなかった。また、本参考例のミラーアレイ510のミラー515に対応するミラー8435は、初期位置から負の方向にθ4(=θ7+θ8)の半分の角度まで傾動可能でなければならなかった。このため、従来のミラーアレイ8430の各ミラー装置8200は、それぞれ同一の形状を有するように形成されていたので、正の方向にθ1の半分の角度、負の方向にθ4の半分の角度だけミラー230を傾動可能でなければならなかった。
これに対して本参考例では、例えばミラー511の場合、上述したように初期状態から負の方向にθ5の半分の角度、正の方向にθ6の半分の角度だけそれぞれ傾動可能であればよい。これは、従来のミラーアレイ8430のミラー装置8200がミラー230を傾動可能とする角度よりも小さく、ほぼ半分の値である。このように、本参考例に係るミラーアレイは、ミラーの傾動角度を小さくすることが可能となる。また、これにより、ミラー装置及びミラーアレイの駆動電圧を低くすることができる。
次に、本参考例に係るミラー装置及びミラーアレイの製造方法について説明する。ここで、ミラー基板200は、SOI(Silicon On Insulator)基板から形成される。
まず、SOI基板の埋め込み絶縁層250が形成されている側(主表面:SOI層)より、公知のフォトリソグラフィ技術とDEEP RIEなどのエッチングによって、単結晶シリコン層に枠部210、可動枠連結部211a,211b、可動枠220、ミラー連結部221a,221b及びミラー230の形状に対応する溝を形成する。
次いで、上記溝に対応する所定の領域が開口したレジストパターンをSOI基板の裏面に形成し、SF6などを用いたドライエッチングによりSOI基板の裏面から選択的にシリコンをエッチングする。このエッチングでは、埋め込み絶縁層250をエッチングストッパ層として用い、SOI基板の裏面に開口部及び枠状部材240を形成する。なお、上記シリコンのエッチングは、水酸化カリウムなどを用いたウエットエッチングにより行うようにしてもよい。
次いで、埋め込み絶縁層250の上記開口部に露出している領域を、CF4などを用いたドライエッチングにより除去する。これにより、ミラー基板200が形成される。なお、上記埋め込み絶縁層250の除去は、フッ酸を用いて除去するようにしてもよい。
一方、電極基板300は、例えばシリコン基板から形成される。まず、シリコン基板をシリコン窒化膜またはシリコン酸化膜からなる所定のマスクパターンをマスクとし、水酸化カリウム溶液で選択的にエッチングを行う。これを繰り返し行うことにより、基部310、第1,2テラス321,322、ピボット350、凸部360a,360bが形成された状態とする。ここで、ピボット350は、ミラーアレイ500内の位置に応じて第1テラス341の中央部からずれた位置に形成する。なお、ミラーアレイ500内の中央部に位置するミラー装置2のピボット350については、第1テラス341のほぼ中央に位置するように形成する。
次いで、シリコン基板のエッチングを行った側の面を酸化し、シリコン酸化膜を形成する。次いで、シリコン酸化膜上に蒸着法などにより金属膜を形成し、この金属膜を公知のフォトリソグラフィ技術とエッチング技術とによりパターニングし、電極360a〜360d、引き出し線341a〜341d及び配線370を形成する。これにより、上述した形状を有する電極基板300が形成される。
この後、ミラー基板200及び電極基板300を貼り合わせることにより、電極360a〜360dに対する電界印加によってミラー230を可動するミラー装置2を有するミラーアレイ500が製造できる。このように製造されたミラーアレイ500は、ミラーアレイ500内の位置に応じて各ミラー装置2のピボット350の位置が調整されており、電極360a〜360dにバイアス電圧を印加した際に対向するミラーアレイ520の中央のミラーに光ビームを反射する。これにより、各ミラー装置2のミラー230を傾動させる角度を小さくすることが可能となる。
なお、本参考例において、図28に示すミラーアレイ500は、縦横にそれぞれ5つのミラー装置2を設けるようにしたが、ミラーアレイ500に設けるミラー装置2の数量は縦横5つに限定されず適宜自由に設定することができる。
また、本参考例に示すミラーアレイ520は、ミラーアレイ510と同等の構成を有するようにしてもよい。
また、本参考例に示すミラー装置2のミラー230は、図30に示すように1次元的に傾動するのみならず、可動枠回動軸及びミラー回動軸を中心に2次元的に傾動するものである。したがって、ミラー装置2のピボット350を第1テラス341上に配設する位置は、ミラー装置2のミラーアレイ500内の位置に応じて2次元的に調整される。
また、本参考例では、ピボット350は、突出部320上に設けるようにしたが、電極基板300上に設けるようにしてよい。この場合、電極360a〜360dは、電極基板300上に設けられる。
また、本参考例では、電極360a〜360dにバイアス電圧及び変位電極を印加するようにしたが、変位電圧のみを印加するようにしてもよい。
また、本参考例において、突出部340には第3テラス343が形成されていないが、第3テラス343も形成されたミラー装置にも適用することができる。同様に、本参考例では外堀トレンチが形成されていないが、外堀トレンチが形成されたミラー装置にも適用することができる。
また、本参考例に示すミラー装置2及びミラーアレイは、光スイッチのみならず、計測機器、ディスプレイ、スキャナ等に使用することが可能である。この場合、ミラー装置2のピボット350は、用途や仕様に応じて任意の位置に設けられる。
以上説明したように、本参考例によれば、支点突起をミラーの中心からずれた位置に設けることにより、電極にバイアス電圧を印加するとミラーが所定の角度だけ傾く。この傾いた状態から、ミラーを傾動させるので、ミラーの傾動角度を小さくすることが可能となる。また、これにより、ミラー装置を低電圧で駆動させることも可能となる。
[第10の参考例]
次に、本発明の第10の参考例について説明する。本参考例は、連結部が対となる連結部と異なる構成とすることにより、ミラーの傾動角度を小さくするものである。
なお、本参考例において、第8,9の参考例と同等の構成要素には同じ符号を付してある。また、図31では、主にミラーアレイの1構成単位である一つのミラーを備えたミラー装置2を部分的に示している。なお、本参考例に係るミラーアレイは、複数のミラー装置が2次元的にマトリクス状に配設されたものである。
ミラー装置2は、ミラーが形成されたミラー基板200と、電極が形成された電極基板300とが平行に配設された構造を有する。ここで、ミラー基板200は、平面視略円形の開口を有する板状の枠部210と、平面視略円形の開口を有し、一対の可動枠連結部211a,211bにより枠部210の開口内に配設された可動枠220と、一対のミラー連結部221a,221bにより可動枠220の開口内に配設された平面視略円形のミラー230と、可動枠220及びミラー230を取り囲むように枠部210の上面に形成された枠状部材240とを有する。
一対の可動枠連結部211a,211bは、可動枠220の第1切り欠き222a,222b内に設けられており、つづら折りの形状を有するトーションバネから構成され、枠部210と可動枠220とを連結している。これにより、可動枠220は、一対の可動枠連結部211a,211bを通る可動枠回動軸を中心に回動可能とされている。ここで、可動枠連結部211aと可動枠連結部211bとは、異なる構成、具体的にはバネ定数が異なるように形成されている。例えば、図31の場合、可動枠連結部211aは、可動枠連結部211bよりも太く形成されている。これより、可動枠連結部211aのバネ定数は、可動枠連結部211bよりも大きな値となっている。
一対のミラー連結部221a,221bは、可動枠220の第2切り欠き内223a,223bに設けられており、つづら折りの形状を有するトーションバネから構成され、可動枠220とミラー230とを連結している。これにより、ミラー230は、一対のミラー連結部221a,221bを通るミラー回動軸を中心に回動可能とされている。ここで、ミラー連結部221aとミラー連結部221bとは、異なる構成、具体的にはバネ定数が異なるように形成されている。例えば、図31の場合、ミラー連結部221aは、ミラー連結部221bよりも太く形成されている。これにより、ミラー連結部221aのバネ定数は、ミラー連結部221bよりも大きな値となっている。なお、可動枠回動軸とミラー回動軸とは、互いに直交している。
ここで、可動枠連結部211a,211b及びミラー連結部221a,221bのバネ定数の大小関係について図32を参照して説明する。図32は、可動枠連結部211a,211b及びミラー連結部221a,221bを構成するトーションバネの模式図である。本参考例に係るミラーアレイの可動枠連結部211a,211b及びミラー連結部221a,221bのバネ定数とは、主にミラー基板200と電極300との距離方向、すなわちZ軸方向のバネ定数を意味する。このZ軸方向のバネ定数の大小関係は、以下に示す要素に依存する。
まず、Z軸方向のバネ定数の大小関係は、図32に符号l1で示すトーションバネのX方向の長さに依存する。l1が長くなるほど、バネ定数は小さくなる。逆に、l1が短くなるほど、バネ定数は大きくなる。
また、Z軸方向のバネ定数の大小関係は、図32に符号l2で示すトーションバネのY方向の長さにも依存する。l2が長くなるほど、バネ定数は小さくなる。逆に、l2が短くなるほど、バネ定数は小さくなる。
また、Z軸方向のバネ定数の大小関係は、図32に符号tで示すトーションバネの幅にも依存する。tが小さくなる、すなわちトーションバネが細くなるほど、バネ定数は小さくなる。逆に、tが大きくなる、すなわちトーションバネが太くなるほど、バネ定数は大きくなる。
また、Z軸方向のバネ定数の大小関係は、図32に符号pで示す隣接するトーションバネの間隔、すなわちトーションバネのつづら折り形状のピッチにも依存する。pが大きくなるほど、バネ定数は小さくなる。逆に、pが小さくなるほど、バネ定数は大きくなる。
また、Z軸方向のバネ定数の大小関係は、図32に符号nで示すトーションバネのつづら折り形状の折り返し回数にも依存する。nが大きくなる、すなわちトーションバネの折り返し回数が増えると、バネ定数は小さくなる。逆に、nが小さくなる、すなわちトーションバネの折り返し回数が少なくなると、バネ定数は大きくなる。
また、Z軸方向のバネ定数の大小関係は、図32に符号hで示すトーションバネの厚さにも依存する。hが小さくなる、すなわちトーションバネが薄くなると、バネ定数は小さくなる。逆に、hが大きくなる、すなわちトーションバネが厚くなると、バネ定数は大きくなる。
本参考例に係るミラーアレイでは、上述した要素のうち少なくとも一つの要素を、可動枠連結部211a,211b及びミラー連結部221a,221bの対となる部材間で異ならせる。これにより、可動枠連結部211a,211b及びミラー連結部221a,221bの対となる部材同士のバネ定数を異ならせる。
なお、X,Y方向とX軸回りの回転のバネ定数も、上述したZ軸方向のバネ定数の大小関係と同様、トーションバネの形状により変化する。これについて、図33A〜図34Bを参照して説明する。なお、図33A〜図34Bでは、一例としてSiからなる矩形断面の単純梁の構造を有するトーションバネにおける幅とバネ定数との関係を示している。図33A,図34Aにおいて、右側の縦軸はトーションバネの長手方向回り、すなわちX軸回りの回転のバネ定数を表している。同様に、左側の縦軸はトーションバネの高さ方向、すなわちZ軸方向のバネ定数を表しており、横軸はトーションバネの幅、すなわちY軸方向の長さをそれぞれ表している。また、図33A、図34Aにおいて、符号aで示す曲線はトーションバネのX軸回りの回転のバネ定数とトーションバネの幅との関係、符号bで示す曲線はトーションバネのZ軸方向のバネ定数とトーションバネの幅との関係をそれぞれ表している。
図33A,図34Aの符号aの曲線に示されるように、トーションバネのX軸回りの回転のバネ定数は、トーションバネの幅が細くなるほど小さくなり、トーションバネの幅が太くなるほど大きくなる。このように、トーションバネの幅などトーションバネの形状に関するパラメータを変化させると、上述したトーションバネのZ軸方向のバネ定数のみならず、トーションバネのX,Y方向とX軸回りの回転のバネ定数も変化する。このX軸回りの回転のバネ定数が変化すると、ミラーを所定の角度まで傾動させるのに必要な電圧も変化してしまう。したがって、トーションバネのZ軸方向のバネ定数を変化させる際には、トーションバネのX,Y方向とX軸回りの回転のバネ定数が変化しないようにトーションバネの形状を設定する必要がある。この設定は、例えばトーションバネのX,Y方向とX軸回りの回転のバネ定数を任意の値に固定することにより行うことができる。
一例として、図33Bに示すX軸方向の長さが180μm、高さ10μmのトーションバネにおいて、X軸回りの回転のバネ定数を1.0×10-8と設定すると、図33Aに示すように、符号aで示す曲線からトーションバネの幅が1.8μm、符号bに示す曲線からZ軸方向のバネ定数が69と算出される。ここで、図33BのトーションバネのX軸方向の長さを図34Bに示すように210μmとした場合、X軸回りの回転のバネ定数を図33Bのトーションバネと同様に1.0×10-8に設定すると、図34Aに示すように、符号aで示す曲線からトーションバネの幅が1.9μm、符号bで示す曲線からZ軸方向のバネ定数が47と算出される。
このように、トーションバネの幅や長さなどトーションバネの形状に関するパラメータを変更することにより、トーションバネのX軸回りの回転のバネ定数を変化させることなく、トーションバネのZ軸方向のバネ定数を変化させることが可能となる。
次に、本参考例に係るミラーアレイのミラー装置の動作について、図31,図35,36を参照して説明する。なお、図35,図36は、図31のI-I線の要部断面であり、ミラー230とミラー連結部221a,221bとの関係を示すものである。また、図35,図36では、一例として突出部が形成されていない平板状の電極を有するミラー装置について説明するが、本参考例は突出部が形成されたミラー装置にも適用することができる。同様に、図35,図36では、一例として外堀トレンチが形成されていないミラー装置について説明するが、本参考例はトレンチが形成されたミラー装置にも適用することができる。
まず、ミラー装置の一次元的な傾き動作について説明する。図35に示す従来のミラー装置8200の場合、ミラー連結部8221a,8221bは、それぞれ同じ構成を有するように形成されている。このため、ミラー8230は、ミラー連結部8221a,8221bにより支持される両端部が同等の吊着力で可動枠8220に接続されていることになる。したがって、電極8340a〜8340d一様な電圧をかけると、ミラー8230全体に一様な吸引力が働き、ミラー8230は、図35の点線で示すように基部8310に対して略平行な状態となる。
これに対して、図36に示す本参考例のミラー装置2では、ミラー連結部221a,221bは、対となる部材同士で異なる構成、具体的には異なるバネ定数を有するように形成されている。このため、ミラー230は、ミラー連結部221a,221bにより支持される各端部が対となる端部と異なる吊着力で可動枠220に接続されていることになる。したがって、電極340a〜340dに一様な電圧(以下、バイアス電圧という)が印加されてミラー230に吸引力が働くと、ミラー230は、図36の点線で示すように、基部310に対して所定の角度だけ傾いた状態(以下、初期状態という)となる。
次に、ミラー装置の2次元的な傾き動作について説明する。図31に示すミラー装置2の場合、可動枠連結部211aは可動枠連結部211bよりも、ミラー連結部221aはミラー連結部221bよりも、それぞれバネ定数が大きくなるように形成されている。このため、電極340a〜340dにバイアス電圧が印加されると、可動枠220は、Y方向へ進むほど基部300に近接する、枠部210と平行な状態から基部300側に傾いた状態(以下、「Y方向に傾く」という)となる。同様に、ミラー230は、X方向に進むほど基部300に近接する、可動枠220と平行な状態から基部300側に傾いた状態(以下、「X方向に傾く」という)となる。したがって、本参考例のミラー装置2では、電極340a〜340dに一様な大きさの電圧が印加されると、ミラー230は、図31中の矢印aで示す方向へ進むほど基部300に近接する、枠部210と平行な状態から基部310側に傾いた状態(以下、「a方向に傾く」という)となる。本参考例では、この状態から各電極340a〜340dに個別の制御電圧を加えることにより、ミラー230を傾動させる。
本参考例のミラー装置2から構成されるミラーアレイの一例を図37に示す。この図37は、電極340a〜340dに一定のバイアス電圧を印加した状態を示している。また、図37に示す各ミラー装置は、図31を正面視した状態、すなわち左右方向にミラー連結部221a,221b、上下方向に可動枠連結部211b,211aが設けられているものとする。
本参考例に係るミラーアレイ700は、図31,図36を参照して説明したミラー装置2が2次元的にマトリクス状に配設されたものであり、図29に示す光スイッチ600のミラーアレイ510,520に対応する。このようなミラーアレイ700において、各ミラー装置の可動枠連結部211a,211b及びミラー連結部221a,221bは、電極340a〜340dに一様なバイアス電圧を印加した初期状態においてミラー230が対向するミラーアレイの中央部に位置するミラーに光ビームを反射するように、対となる部材と異なるバネ定数を有するように形成される。なお、ミラーアレイ700の中央部に位置するミラー装置では、可動枠連結部211a,211b及びミラー連結部221a,221bは、それぞれ対となる部材と同じバネ定数を有するように形成される。
例えば、ミラー装置2aとX方向と逆方向(以下、「−X方向」という)に隣接するミラー装置2bでは、初期状態においてミラー230がミラー装置2aよりもX方向に傾くように、ミラー連結部221bよりもミラー連結部221aのZ軸方向のバネ定数を大きくする。このミラー装置2bと−X方向に隣接するミラー装置2cでは、初期状態においてミラー230をミラー装置2bのミラー230よりもさらにX方向に傾かせる。例えば、ミラー装置2cとミラー装置2bのミラー連結部221bのZ軸方向のバネ定数が等しい場合、ミラー装置2cのミラー連結部221aのZ軸方向のバネ定数を、ミラー装置2bのミラー連結部221bよりも大きくする。
また、ミラー装置2aとY方向と逆方向(以下「−Y方向という)に隣接するミラー装置2dでは、初期状態においてミラー230がミラー装置2aよりもY方向に傾くように、可動枠連結部211bよりも可動枠連結部211aのZ軸方向のバネ定数を大きくする。このミラー装置2dと−Y方向に隣接するミラー装置2eでは、初期状態においてミラー230をミラー装置2dのミラー230よりもさらにY方向に傾かせる。例えば、ミラー装置2dとミラー装置2eの可動枠連結部211bのZ軸方向のバネ定数が等しい場合、ミラー装置2eの可動枠連結部211aのZ軸方向のバネ定数を、ミラー装置2dの可動枠連結部211aよりも大きくする。
また、ミラー装置2aと−X方向及び−Y方向、すなわち図37中の矢印aの方向と反対方向(以下、「−a方向」という)に隣接するミラー装置2fでは、初期状態においてミラー230がミラー装置2aよりもX方向及びY方向、すなわち図37中の矢印aの方向(以下、a方向という)に傾くように、可動枠連結部211bよりも可動枠連結部211aのZ軸方向のバネ定数を大きくし、かつ、ミラー連結部221bよりもミラー連結部221aのZ軸方向のバネ定数を大きくする。このミラー装置2fと−a方向に隣接するミラー装置2gでは、初期状態においてミラー230をミラー装置2fのミラー230よりもさらにa方向に傾かせる。例えば、ミラー装置2fとミラー装置2gの可動枠連結部211b及びミラー連結部221bのZ軸方向のバネ定数が等しい場合、ミラー装置2gの可動枠連結部211a及びミラー連結部221aのZ軸方向のバネ定数と、ミラー装置2fの可動枠連結部211a及びミラー連結部221aよりもそれぞれ大きくする。
また、ミラー装置2cと−Y方向に隣接するミラー装置2hでは、初期状態においてミラー230がX方向にミラー装置2c,2gと同程度、Y方向にミラー装置2d,2fと同程度傾くようにする。したがって、例えば、ミラー装置2c,2d,2f,2g,2hの可動枠連結部211b及びミラー連結部221bのZ軸方向のバネ定数がそれぞれ等しい場合、ミラー装置2hの可動枠連結部211aは、ミラー装置2d、2fの可動枠連結部211aと同じZ軸方向のバネ定数を有するようにする。また、ミラー装置hのミラー連結部221aは、ミラー装置2c,2gのミラー連結部221aと同じZ軸方向のバネ定数を有するようにする。
上述したようにミラーアレイ700内の位置に応じて可動枠連結部211a,211b及びミラー連結部221a,221bのバネ定数を設定することにより、ミラーアレイ700の各ミラー装置2は、電極340a〜340dに一様な大きさのバイアス電圧が印加されるとミラー230が傾き、照射される光ビームを対となるミラーアレイの中央のミラーに反射させる。この反射動作については、第9の参考例において図30を参照して説明したのと同等である。
なお、図30は、図37のII-II線の断面図であり、ミラーアレイ700からなるミラーアレイ510,520に複数配設されたミラー装置2のミラー230の断面を模式的に示したものである。ここで、ミラーアレイ510のミラー511〜515及びミラーアレイ520のミラー521〜525は、それぞれ上述したミラーアレイ700に含まれるミラー装置2のミラー230に対応するものである。また、図30に示すミラーアレイ510,520は、図29に示す光スイッチ600のミラーアレイ510,520にそれぞれ対応するものである。
このように、本参考例では、可動枠連結部211a,211b及びミラー連結部221a,221bが対となる部材同士でバネ定数が異なるようにすることより、初期状態で所定の角度だけ傾いた状態となるため、結果としてミラーの傾動角度を小さくすることが可能となる。
本参考例に係るミラー装置及びミラーアレイは、上述した第9の参考例と同等の製造方法により製造される。
なお、本参考例では、単結晶シリコン層に枠部210、可動枠連結部211a,211b、可動枠220、ミラー連結部221a,221b及びミラー230の形状に対応する溝を形成する工程の際、可動枠連結部211a,211b及びミラー連結部221a,221bをミラーアレイ内の位置に応じてバネ定数を変化させて形成する。
このように製造されたミラーアレイ700は、ミラーアレイ700内の位置に応じて各ミラー装置2の可動枠連結部211a,211b及びミラー連結部221a,221bのバネ定数が調整されており、電極340a〜340dに一定のバイアス電圧を印加した際に対向するミラーアレイ80の中央のミラーに光ビームを反射する。これにより、各ミラー装置2のミラー230を傾動させる角度を小さくすることが可能となる。
図38は、ミラー基板200の変形例である。本参考例では、上述したように、可動枠連結部211a,211bは、可動枠220に形成した第1切り欠き部222a,222b内に設けるようにした。しかしながら、可動枠連結部211a,211bを設ける場所はこれに限定されず、図38に示すように、枠部210に形成した第3切り欠き224a,224b内に設けるようにしてもよい。
また、電極340a〜340dを設ける場所は基部310上に限定されず、例えば、基部310上に突出部を設け、この突出部上に設けるようにしてもよい。または、その突出部及び基部310上に設けるようにしてもよい。
また、本参考例において、図37に示すミラーアレイ700は、縦横にそれぞれ5つのミラー装置2を設けるようにしたが、ミラーアレイ700に設けるミラー装置2の数量は縦横5つに限定されず適宜自由に設定することができる。また、本参考例のミラーアレイ80は、ミラーアレイ700と同等の構成を有するようにしてもよい。
また、本参考例に示すミラー装置2及びミラーアレイは、光スイッチのみならず、計測機器、ディスプレイ、スキャナ等に使用することが可能である。この場合、ミラー装置2の突出部320及び電極340a〜340dは、用途や仕様に応じて任意の位置に設けられる。
また、本参考例では、可動枠連結部211a,211b及びミラー連結部221a,221bを構成するトーションバネのZ軸方向のバネ定数を調整することにより、初期状態でのミラー230を傾かせるようにしたが、トーションバネのX軸回りの回転のバネ定数を調整するようにしてもよい。このようにしても、初期状態においてミラー230を傾かせることが可能となる。
また、本参考例では、電極340a〜340dにバイアス電圧及び変位電極を印加するようにしたが、変位電圧のみを印加するようにしてもよい。
以上説明したように、本参考例によれば、連結部が対となる連結部と異なる構成を有することにより、電極にバイアス電圧を印加するとミラーが所定の角度だけ傾く。この傾いた状態から制御電圧を印加してミラーを傾動させるので、ミラーの傾動角度を小さくすることが可能となる。したがって、ミラーを大きく傾けなければならない場合であっても、低電圧で動作させることが可能となる。
[第11の参考例]
次に、本発明の第11の参考例について説明する。本参考例は、電極基板上に投影したミラーの回動軸に対して非対称となる基板上の任意の位置に電極を設けることにより、ミラーの傾動角度を小さくするものである。なお、本参考例において、第8〜10の参考例と同等の構成要素には同じ符号を付してある。また、図39A,図39Bでは、主にミラーアレイの1構成単位である一つのミラーを備えたミラー装置2を部分的に示している。本参考例では、一例として突出部が形成されていない平板状の電極を有するミラー装置について説明する。
ミラー装置2は、円形のミラー230が形成されたミラー基板200と、電極340a〜340dが形成された電極基板300とが平行に配設された構造を有し、図39A,図39Bに示すように、電極基板300上に投影したミラー230の可動枠回動軸及びミラー回動軸の少なくとも一方に対して非対称となる電極基板300上の任意の位置に電極340a〜340dを形成したものである。ここで、電極340a〜340dは、ミラー230と同等の大きさの円を可動枠回動軸及びミラー回動軸に平行な分割線により等しい大きさに4分割した扇型の形状を有する。電極340a〜340dの中心とは、その円の中心のことをいい、この中心は上記分割線の交点を通る。なお、電極340a〜340dを電極基板300の略中央から移動させる距離及び方向は、ミラーアレイ中のミラー装置2の位置に応じて設定される。また、分割線は、直線のみならず、任意の曲線等から構成されるようにしてもよい。
図40に示すように、従来のミラー装置8200では、電極8340a〜8340dは、電極基板8301上に投影したミラー8230の可動枠回動軸及びミラー回動軸に対して自身が対称となる基部8310上の位置に形成されている。このため、図40に示すように、ミラー8230の中心軸(図40中に一点鎖線で示す)と電極8340a〜8340dの中心軸(図40中に二点鎖線で示す)とは、一致する。したがって、電極8340a〜8340dに一様な電圧をかけると、ミラー8230全体に一様な吸引力が働き、ミラー230は、電極基板8301の基部8310の主表面に対して略平行な状態、すなわちミラー8230の中心軸に対して略垂直な状態となる。なお、ミラー230の中心軸とは、ミラー8230の中心を通り、かつ、ミラー8230の平面に対して垂直、すなわちミラー基板8201と電極基板8301との距離方向に平行な直線のことを言う。また、電極8340a〜8340dの中心軸とは、電極8340a〜8340dの中心を通り、かつ、電極8340a〜8340dの平面、すなわちミラー基板8201と電極基板8301との距離方向に平行な直線のことを言う。
これに対して、本参考例のミラー装置2では、電極340a〜340dは、電極基板300上に投影したミラー230の可動枠回動軸及びミラー回動軸の少なくとも一方に対して自身が対称とならない基部310上の位置に形成されている。このため、図41に示すように、ミラー230の中心軸(図41中に一点鎖線で示す)と電極340a〜340dの中心軸(図41中に二点鎖線で示す)とは、一致しない。したがって、電極340a〜340dに一様な電圧(以下、バイアス電圧という)をかけると、ミラー230には、電極340a〜340dと対向する部分に引力が働くため、ミラー230の中心軸に対して垂直な状態(図41中に点線で示す)から所定の角度だけ傾いた状態となる(以下、初期状態という)。本参考例では、この状態から各電極340a〜340dに個別の制御電圧を加えることにより、ミラー230を傾動させる。
次に、図42を参照して、本参考例に係るミラーアレイについて説明する。本参考例に係るミラーアレイ800は、図39A,図39B,図41を参照して説明したミラー装置2が2次元的にマトリクス状に配設されたものであり、図29に示す光スイッチ600のミラーアレイ510,520に対応する。このようなミラーアレイ800において、各ミラー装置の電極340a〜340d(図42中に点線で示す)は、ミラー230が初期状態において対向するミラーアレイの中央部に位置するミラーに光ビームを反射するように、電極基板300上に投影したミラー230の回動軸に対して自身が非対称となる電極基板300上の位置に形成される。なお、ミラー230の傾きは、バイアス電圧の大きさで調整することも可能である。
一例として、図42に示すミラーアレイ800では、各ミラー装置2の電極340a〜340dは、ミラーアレイ800の中央部に位置するミラー装置2aと、各ミラー装置2のミラー230の中心とを結ぶ直線上に位置し、ミラー装置2aから離れるにつれて徐々に各ミラー装置2のミラー230の中心からミラー装置2a側に離れた位置に配設されている。これは、ミラー装置2aから離れたミラー装置2ほど、ミラー230の傾きが大きくなるようにするためである。なお、ミラー装置2aの電極340a〜340dは、中心軸がミラー230の中心軸と一致するように配設される。これにより、ミラーアレイ800の各ミラー装置2は、電極340a〜340dに一様な大きさのバイアス電圧が印加されると、ミラー230が傾き、照射される光ビームを対となるミラーアレイの中央のミラーに反射させる。この反射動作については、第9の参考例で図30を参照して説明したのと同等である。
なお、図30は、図42のI-I線断面図であり、ミラーアレイ800からなるミラーアレイ510,520に複数配設されたミラー装置2のミラー230の断面を模式的に示したものである。ここで、ミラーアレイ510のミラー511〜515及びミラーアレイ520のミラー521〜525は、それぞれ上述したミラー230に対応するものである。また、図30に示すミラーアレイ510,520は、図29に示す光スイッチ600のミラーアレイ510,520にそれぞれ対応するものである。
このように、本参考例では、ミラーの傾動角度を小さくすることが可能となる。また、これにより、ミラー装置及びミラーアレイの駆動電圧を低くすることができる。
本参考例に係るミラー装置及びミラーアレイは、上述した第9の参考例と同等の製造方法により製造される。
なお、本参考例では、金属膜を公知のフォトリソグラフィ技術とエッチング技術とによりパターニングし、電極340a〜340d、引き出し線341a〜341d及び配線370を形成する工程の際、電極340a〜340dをミラーアレイ800内の位置に応じて基部310の中央部からずれた位置に形成する。ミラーアレイ800内の中央部に位置するミラー装置2の電極340a〜340dについては、基部310の略中央部に位置するように形成する。これにより、上述した形状を有する電極基板300が形成される。
このように製造されたミラーアレイ800は、ミラーアレイ800内の位置に応じて各ミラー装置2の電極340a〜340dの位置が調整されており、電極340a〜340dに一様なバイアス電圧を印加した際に対向するミラーアレイ800の中央のミラーに光ビームを反射する。これにより、各ミラー装置2のミラー230を傾動させる角度を小さくすることが可能となる。また、初期状態においてミラー230が傾いているため、ミラー230の動作範囲が小さくなり、結果として低電圧駆動が可能となる。
以上説明したように、本参考例によれば、電極基板上に投影したミラーの回動軸に対して非対称となる基板上の任意の位置に電極を設けることにより、電極にバイアス電圧を印加するとミラーが所定の角度だけ傾く。この傾いた状態から制御電圧を印加してミラーを傾動させるので、ミラーの傾動角度を小さくすることができる。また、傾動角度が小さくなるので、低電圧駆動も可能となる。
[第12の参考例]
次に、本発明の第12の参考例について説明する。なお、本参考例は、図43,図44に示すように、第11の参考例の電極基板300上に突出部を設け、この突出部及び電極基板300上にかけて電極340a〜340dを設けたものである。したがって、第11の参考例と同等の構成要素については、同一の符号及び名称を付し、適宜説明を省略する。
ミラー装置2は、ミラーが形成されたミラー基板200と、電極が形成された電極基板300とが平行に配設された構造を有する。
電極基板300は、板状の基部310と、基部310の表面(上面)から突出した錐状の形状の突出部320とを有する。この突出部320は、基部310の上面に形成された角錐台の形状を有する第2テラス322と、この第2テラス322の上面に形成された角錐台の形状を有する第1テラス321と、この第1テラス321の上面に形成された柱状の形状を有するピボット330とから構成される。このような突出部320は、ミラーアレイ内の位置に応じて中心が基部310の中央部からずれた位置に形成される。なお、突出部320を基部310の中央部から移動させる距離及び方向は、ミラーアレイ中のミラー装置2の位置に応じて設定される。
突出部320の外面を含む基部310の上面には、対向するミラー基板200のミラー230と同等の大きさの円内に4つの扇形の電極340a〜340dが形成されている。ミラー装置2を平面視した際、電極340a〜340dの中心は、ピボット330の中心とほぼ一致する。上述したように、突出部320がミラーアレイ800内の位置に応じて基部310の中央部からずれた位置に形成されているので、電極340a〜340dとミラー230とは、それぞれの中心軸が一致せず、平面視した際に一部が重なる状態となる。
本参考例のミラー装置2では、図44に示すように、ミラー230の中心軸(図44中に一点鎖線で示す)と表面に電極340a〜340dが形成された突出部320の中心軸(図44中に二点鎖線で示す)とがずれるように配設されている。このため、電極340a〜340dに一様なバイアス電圧をかけると、ミラー230は、ミラー230の中心軸に対して垂直な状態(図44中に点線で示す)から所定の角度だけ傾いた状態(以下、初期状態という)となる。本参考例では、この状態から各電極340a〜340dに個別の制御電圧を加えることにより、ミラー230を傾動させる。
このようなミラー装置2を2次元的にマトリクス状に配設することにより、図42に示すようなミラーアレイ800が形成される。図42に示すミラー装置2を有するミラーアレイ800は、各ミラー装置2の突出部320の中心軸及び電極340a〜340dの中心軸は、ミラーアレイ800の中央部に位置するミラー装置2aと、各ミラー装置2のミラー230の中心とを結ぶ直線上に位置し、かつ、ミラー装置2aから離れるにつれて徐々に各ミラー装置2のミラー230の中心からミラー装置2a側に離れた位置に配設されている。なお、ミラー装置2aの突出部320及び電極340a〜340dは、中心軸がミラー230の中心軸と一致するように配設される。これにより、ミラーアレイ800の各ミラー装置2は、電極340a〜340dに一様にバイアス電圧が印加されると、ミラー230が傾き、照射される光ビームを対となるミラーアレイの中央のミラーに反射させる。これにより、本参考例に係るミラーアレイは、ミラーの傾動角度を小さくすることが可能となる。
次に、本参考例に係るミラーアレイの製造方法について説明する。なお、ミラー基板200の製造方法については、第11の参考例と同等である。
なお、本参考例では、基部310、第1,2テラス321,322、ピボット330、凸部360a,360bを形成する工程の際、突出部320をミラーアレイ内の位置に応じて基部310の中央部からずれた位置に形成する。ミラーアレイ内の中央部に位置するミラー装置2の突出部320については、基部310の略中央部に位置するように形成する。これにより、上述した形状を有する電極基板300が形成される。
このように製造されたミラーアレイ800は、ミラーアレイ800内の位置に応じて各ミラー装置2の突出部320の位置、すなわち電極340a〜340dの位置が調整されており、電極340a〜340dに一様なバイアス電圧を印加した際に対向するミラーアレイ800の中央のミラーに光ビームを反射する。これにより、各ミラー装置2のミラー230を傾動させる角度を小さくすることが可能となる。
なお、第11、第12の参考例において、図42に示すミラーアレイ800は、縦横にそれぞれ5つのミラー装置2を設けるようにしたが、ミラーアレイ800に設けるミラー装置2の数量は縦横5つに限定されず適宜自由に設定することができる。
また、第11,第12の参考例に示すミラー装置2のミラー230は、図30に示すように1次元的に傾動するのみならず、可動枠回動軸及びミラー回動軸を中心に2次元的に傾動するものである。したがって、ミラー装置2の電極340a〜340d及び突出部320を電極基板300上に配設する位置は、ミラー装置2のミラーアレイ800内の位置に応じて2次元的に調整される。
また、第11,第12の参考例に示すミラー装置2及びミラーアレイは、光スイッチのみならず、計測機器、ディスプレイ、スキャナ等に使用することが可能である。この場合、ミラー装置2の突出部320及び電極340a〜340dは、用途や仕様に応じて任意の位置に設けられる。
また、第11,第12の参考例では、電極基板300上の突出部320または電極340a〜340dの位置を調整することにより、ミラー230の中心軸と突出部320及び電極340a〜340dの中心軸とがずれるようにしたが、ミラー基板200上のミラー230の位置を調整することによって、ミラー230の中心軸と突出部320及び電極340a〜340dの中心軸とがずれるようにしてもよい。
また、第11,第12の参考例では、電極340a〜340dにバイアス電圧及び変位電極を印加するようにしたが、変位電圧のみを印加するようにしてもよい。
以上説明したように、本参考例によれば、電極基板上に投影したミラーの回動軸に対して非対称となる基板上の任意の位置に電極を設けることにより、電極にバイアス電圧を印加するとミラーが所定の角度だけ傾く。この傾いた状態から制御電圧を印加してミラーを傾動させるので、ミラーの傾動角度を小さくすることができる。また、傾動角度が小さくなるので、低電圧駆動も可能となる。
[第13の参考例]
次に、本発明の第13の参考例について説明する。本参考例は、ミラー装置の可動枠回動軸及びミラー回動軸の少なくとも一方が、ミラーの重心を通らないようにすることにより、ミラーの傾動角度を小さくするものである。なお、本参考例において、第8〜第12の参考例と同等の構成要素には同じ符号を付してある。また、図45では、主にミラーアレイの1構成単位である一つのミラーを備えたミラー装置2を部分的に示している。本参考例では、一例として突出部が形成されていない平板状の電極を有するミラー装置について説明する。
ミラー装置2は、ミラーが形成されたミラー基板200と、電極が形成された電極基板300とが平行に配設された構造を有する。ここで、ミラー基板200は、平面視略円形の開口を有する板状の枠部210と、平面視略円形の開口を有し、一対の可動枠連結部211a,211bにより枠部210の開口内に配設された可動枠220と、一対のミラー連結部221a,221bにより可動枠220の開口内に配設された平面視略円形のミラー230と、可動枠220及びミラー230を取り囲むように枠部210の上面に形成された枠状部材240とを有する。
一対の可動枠連結部211a,211bは、可動枠220の第1切り欠き222a,222b内に設けられており、つづら折りの形状を有するトーションバネから構成され、枠部210と可動枠220とを連結している。これにより、可動枠220は、一対の可動枠連結部211a,211bを通る可動枠回動軸を中心に回動可能とされている。図45に示すミラー装置2の場合、可動枠連結部211a,211bは、図45中に一点鎖線kで示す可動枠回動軸がミラー230の重心Gを通るように枠部210と可動枠220とに接続されている。なお、本参考例では、ミラー230が平面視略円形に形成されているので、ミラー230の重心は、ミラー230の外形をなす円の中心に対応する。
一対のミラー連結部221a,221bは、可動枠220の第2切り欠き内223a,223bに設けられており、つづら折りの形状を有するトーションバネから構成され、可動枠220とミラー230とを連結している。これにより、ミラー230は、一対のミラー連結部221a,221bを通るミラー回動軸を中心に回動可能とされている。図45に示すミラー装置2の場合、ミラー連結部221a,221bは、図45中に点線lで示す重心Gを通る従来のミラー装置のミラー回動軸からも可動枠連結部211bの側、すなわち図45に示すY方向側に平行移動した位置に設けられている。したがって、ミラー回動軸は、従来のミラー回動軸lからY方向側に平行移動するため、図45中に二点鎖線mで示すようにミラー230の重心を通らない。なお、可動枠回動軸とミラー回動軸とは、互いに直交している。
次に、本参考例のミラー装置の動作について、図45〜図47を参照して説明する。なお、図46,図47は、図45のI-I線の要部断面図に対応するものであり、ミラー回動軸とミラー230との関係を示すものである。
図46に示す従来のミラー装置8200の場合、ミラー連結部8221a,221bは、ミラー回動軸がミラー8230の重心Gを通るように配設されている。このため、ミラー8230は、ミラー回動軸に対して対称に支持されている。したがって、電極8340a〜8340dに一様な電圧をかけると、ミラー8230全体に一様な吸引力が働き、ミラー8230及び可動枠8220は、図46の点線で示すように、基部8310に対して略平行な状態のまま基部8310側に引き寄せられる。
これに対して、図47に示す本参考例のミラー装置2では、ミラー連結部221a,221bは、上述したように可動枠連結部211bの側、すなわちY方向に平行移動した位置に設けられており、ミラー回動軸mがミラー230の重心Gを通らない。このため、図45,図47に示すように、ミラー回動軸m上において、ミラー230の可動枠連結部211a側の端部とミラー回動軸との距離は、ミラー230の可動枠連結部211b側の端部とミラー回動軸との距離よりも長くなる。したがって、電極340a〜340dに一様な電圧(以下、バイアス電圧という)を印加してミラー230に吸引力が働くと、図47の点線で示すように、ミラー230は、可動枠220と基部310側に引き寄せられるとともに、ミラー回動軸を回動中心として傾き、可動枠連結部211a側の端部が基部310側に引き寄せられた状態(以下、初期状態という)となる。本参考例では、この状態、すなわち図45においてY方向と反対側の方向(以下、「−Y方向」という)のミラー230の端部が基部310側に引き寄せられた状態(以下、「−Y方向に傾く」という)から、各電極340a〜340dに個別の制御電圧を加えることにより、ミラー230を傾動させる。
なお、図45、図47に示すミラー装置2において、ミラー連結部221a,221bを移動させる距離及び方向は、ミラー装置2のミラーアレイ内の位置に応じて適宜自由に設定される。
また、図45に示すミラー装置2では、ミラー連結部221a,221bを同時にY方向に移動させることにより、ミラー回動軸がミラー230の重心Gを通らないようにしたが、ミラー連結部221a,221bのうち一方をY方向に移動することにより、ミラー回動軸がミラー230の重心Gを通らないようにしてもよい。この場合について、図48を参照して説明する。図48では、主にミラーアレイの1構成単位である一つのミラーを備えたミラー装置2のミラー基板を部分的に示している。ここで、図45で示したミラー装置と同等の構成については、同じ名称及び符号を付して、適宜説明を省略する。
図48に示すミラー装置2の場合、ミラー連結部221aは、図48中に点線lで示す重心Gを通る従来のミラー装置8200のミラー回動軸から可動枠連結部211b側、すなわちY方向に移動した位置に設けられている。このため、ミラー回動軸は、従来のミラー回動軸lのミラー連結部221a側の端部がY方向に移動した状態、すなわち図48中に二点差線mで示す状態となり、ミラー230の重心を通らない。このように、ミラー回動軸mは、可動枠回動軸kと直交せず、可動枠回動軸kに対して任意の角度で交わる。このとき、可動枠回動軸k上において、ミラー230の可動枠連結部211a側の端部とミラー回動軸との距離は、ミラー230の可動枠連結部211b側の端部とミラー回動軸との距離よりも長くなっている。したがって、電極340a〜340dに一様な大きさのバイアス電圧が印加されてミラー230に吸引力が働くと、ミラー230は、可動枠回動軸kに対して任意の角度で交わったミラー回動軸mを回動中心として傾き、可動枠連結部211a側の端部が基部310側に引き寄せられた状態となる。本参考例では、このような初期状態、すなわち図48おいてミラー回動軸mと直交するa方向と反対側の方向(以下、「−a方向」という)のミラー230の端部が基部310側に引き寄せられた状態(以下、「−a方向に傾く」という)から、各電極340a〜340dに個別の制御電圧を加えることにより、ミラー230を傾動させる。
なお、図48に示すミラー装置2では、ミラー連結部221aをY方向に移動させるようにしたが、ミラー連結部221bをY方向に移動させるようにしてもよい。さらに、ミラー連結部221a,221bを移動させる距離は、ミラー装置2のミラーアレイ内の位置に応じて適宜自由に設定される。また、ミラー連結部221a,221bを移動させる方向、すなわち、従来のミラー装置8200のミラー回動軸からY方向における正負の方向は、ミラー装置2のミラーアレイ内の位置に応じて適宜自由に設定される。
また、ミラー連結部221a,221bそれぞれをY方向に移動させるようにしてもよい。この場合、ミラー連結部221a,221bは、ミラー回動軸がミラー230の重心を通らない位置であれば、適宜自由に移動させることができる。
次に、図49を参照して、可動枠回動軸がミラーの重心を通らないミラー装置について説明する。図49では、主にミラーアレイの1構成単位である一つのミラーを備えたミラー装置2のミラー基板200を部分的に示している。なお、図45で示したミラー装置と同等の構成については、同じ名称及び符号を付して、適宜説明を省略する。
図49に示すミラー装置2の場合、可動枠連結部211a,211bは、図49中に点線nで示す重心Gを通る従来のミラー装置8200の可動枠回動軸からミラー連結部221b側、すなわちX方向に移動した位置に設けられている。したがって、可動枠回動軸はうに、ミラー230の重心を通らない。これにより、可動枠回動軸k上において、ミラー230のミラー連結部221a側の端部と可動枠回動軸との距離は、ミラー230のミラー連結部221b側の端部とミラー回動軸との距離よりも長くなる。このため、電極340a〜340dに一定のバイアス電圧が印加されてミラー230に吸引力が働くと、ミラー230は、可動枠回動軸を回動中心として傾き、ミラー連結部221a側の端部が基部310側に引き寄せられた状態となる。本参考例では、このような初期状態、すなわち図49においてX方向と反対側の方向(以下、「−X方向」という)の端部が基部310側に引き寄せられた状態(以下、「−X方向に傾く」という)から、各電極340a〜340dに個別の制御電圧を加えることにより、ミラー230を傾動させる。
なお、図49に示すミラー装置2において、可動枠連結部211a,211bを移動させる距離は、ミラー装置2のミラーアレイ内の位置に応じて適宜自由に設定される。また、可動枠連結部211a,211bを移動させる方向、すなわち、従来のミラー装置8200の可動枠回動軸からX方向における正負の方向は、ミラー装置2のミラーアレイ内の位置に応じて適宜自由に設定される。
また、図48の場合と同様、図49に示すミラー装置2の場合も、可動枠連結部211a,211bのうち一方を移動することにより、可動枠回動軸がミラー230の重心を通らないようにしてもよい。この場合、電極340a〜340dに一様なバイアス電圧が印加されてミラー230に吸引力が働くと、ミラー230は、ミラー回動軸に対して任意の角度で交わった可動枠回動軸を回動中心として傾き、ミラー連結部221a,221bの一方の側の端部が基部310側に引き寄せられた状態となる。この場合も、可動枠連結部211a,211bを移動させる距離及び方向は、ミラー装置2のミラーアレイ内の位置に応じて適宜自由に設定される。
また、可動枠連結部211a,211bそれぞれをX方向に移動させるようにしてもよい。この場合、可動枠連結部211a,211bは、可動枠回動軸がミラー230の重心を通らない位置であれば、適宜自由に移動させることができる。
次に、図50を参照して、可動枠回動軸及びミラー回動軸がミラーの重心Gを通らないミラー装置について説明する。図50では、主にミラーアレイの1構成単位である一つのミラーを備えたミラー装置2のミラー基板200を部分的に示している。なお、図45,49で示したミラー装置と同等の構成については、同じ名称及び符号を付して、適宜説明を省略する。
図50に示すミラー装置2の場合、可動枠連結部211a,211bは、図50中に点線nで示す重心Gを通る従来のミラー装置8200の可動枠回動軸からミラー連結部221b側、すなわちX方向に移動した位置に設けられている。また、ミラー連結部221a,221bは、図50中の点線lで示す重心Gを通る従来のミラー装置8200のミラー回動軸から可動枠連結部211b側、すなわちY方向に移動した位置に設けられている。したがって、図50中に一点鎖線kで示す可動枠回動軸及び二点差線mで示すミラー回動軸は、従来の可動枠回動軸n及びミラー回動軸lからそれぞれX方向及びY方向に平行移動するため、ミラー230の重心を通らない。これにより、可動枠回動軸k上において、ミラー230のミラー連結部221a側の端部と可動枠回動軸との距離は、ミラー230のミラー連結部221b側の端部とミラー回動軸との距離よりも長くなる。また、ミラー回動軸m上において、ミラー230の可動枠連結部211a側の端部とミラー回動軸との距離は、ミラー230の可動枠連結部211b側の端部とミラー回動軸との距離よりも長くなる。このため、電極340a〜340dに一定のバイアス電圧が印加されてミラー230に吸引力が働くと、ミラー230は、可動枠回動軸k及びミラー回動軸mを回動中心として傾き、図50においてa方向と反対側の方向(以下、「−a方向」という)の端部が基部310側に引き寄せられた状態(以下、「−a方向に傾く」という)となる。本参考例では、このような初期状態から、各電極340a〜340dに個別の制御電圧を加えることにより、ミラー230を傾動させる。
なお、図50に示すミラー装置2において、可動枠連結部211a,211b及びミラー連結部221a,221bを移動させる距離は、ミラー装置2のミラーアレイ内の位置に応じて適宜自由に設定される。また、可動枠連結部211a,211b及びミラー連結部221a,221bを移動させる方向、すなわち、X及びY方向における正負の方向は、ミラー装置2のミラーアレイ内の位置に応じて適宜自由に設定される。
また、図50に示すミラー装置2では、可動枠連結部211a,211b及びミラー連結部221a,221bをそれぞれ同時にY方向に移動させることにより、可動枠回動軸及びミラー回動軸がミラー230の重心Gを通らないようにしたが、可動枠連結部211a,211b及びミラー連結部221a,221bのそれぞれのうち一方を移動することにより、ミラー回動軸がミラー230の重心Gを通らないようにしてもよい。
次に、図51を参照して、本参考例に係るミラーアレイについて説明する。図51は、電極340a〜340dに一定のバイアス電圧を印加した状態を示している。また、図51に示す各ミラー装置は、図45,48,49,50を正面視した状態、すなわち左右方向にミラー連結部221a,211b、上下方向に可動枠連結部211b,211aが設けられているものとする。
本参考例に係るミラーアレイ900は、図45,48,49,50を参照して説明したミラー装置2が2次元的にマトリクス状に配設されたものであり、図29に示す光スイッチ600のミラーアレイ510,520に対応する。このようなミラーアレイ900において、可動枠連結部211a,211b及びミラー連結部221a,221bは、電極340a〜340dに一様なバイアス電圧を印加した初期状態においてミラー230が対向するミラーアレイの中央部に位置するミラーに光ビームを反射させるため、可動枠回動軸及びミラー回動軸の少なくとも一方がミラー230の重心を通らない位置に形成される。なお、ミラーアレイ900の中央部に位置するミラー装置2aでは、可動枠連結部211a,211b及びミラー連結部221a,221bは、可動枠回動軸及びミラー連結部がミラー230の重心を通り、かつ、可動枠回動軸とミラー連結部が直交する位置に形成される。
例えば、図51において、ミラー装置2aとY方向に隣接するミラー装置2bでは、図45に示すミラー装置2の場合と同様、初期状態においてミラー230が−Y方向に傾くように、ミラー連結部221a,221bを重心GよりもY方向における正の方向に移動させる。このミラー装置2bとY方向に隣接するミラー装置2cでは、初期状態においてミラー230がミラー装置2bのミラー230よりもさらに−Y方向に傾くように、ミラー連結部221a,221bをミラー装置2bのミラー連結部221a,221bよりもさらにY方向における正の方向に移動させる。
また、ミラー装置2aとX方向に隣接するミラー装置2dでは、図49に示すミラー装置2の場合と同様、初期状態においてミラー230が−X方向に傾くように、可動枠連結部211a,211bを重心GよりもX方向における正の方向に移動させる。このミラー装置2dとX方向に隣接するミラー装置2eでは、初期状態においてミラー230がミラー装置2dのミラー230よりもさらに−X方向に傾くように、可動枠連結部211a,211bをミラー装置2dの可動枠連結部211a,211bよりもさらにX方向における正の方向に移動させる。
また、ミラー装置2aとX方向及びY方向、すなわち図50中の矢印aの方向に隣接するミラー装置2fでは、図48に示すミラー装置2の場合と同様、初期状態においてミラー230がミラー装置2aよりも−X方向及び−Y方向、すなわち図50中の矢印aと反対方向(以下、「−a方向」という)に傾くように、ミラー連結部221aを重心GもY方向における正の方向に移動させる。このミラー装置2fとa方向に隣接するミラー装置2gでは、初期状態においてミラー230がミラー装置2fのミラー230よりもさらに−a方向に傾くように、ミラー連結部221aをミラー装置2fのミラー連結部221aよりもさらにY方向における正の方向に移動させる。
なお、ミラー装置2f,2gの場合、可動枠連結部211aをX方向における正の方向に移動させるようにしてもよい。また、ミラー装置2f、2gの場合、可動枠連結部211a,211b及びミラー連結部221a,221bをそれぞれX方向及びY方向の正の方向に移動させるようにしてもよい。また、ミラー装置2f、2gの場合、可動枠連結部211a及びミラー連結部221aをそれぞれY方向及びX方向の正の方向に移動させるようにしてもよい。
上述したようにミラーアレイ900内の位置に応じて可動枠連結部211a,211b及びミラー連結部221a,221bの位置を設定することにより、ミラーアレイ900の各ミラー装置2は、電極340a〜340dに一様な大きさのバイアス電圧が印加されるとミラー230が傾き、照射される光ビームを対となるミラーアレイの中央のミラーに反射させる。この反射動作については、第9の参考例において図30を参照して説明したのと同等である。
なお、図30は、図51のII-II線の断面図であり、ミラーアレイ900からなるミラーアレイ510,520に複数配設されたミラー装置2のミラー230の断面を模式的に示したものである。ここで、ミラーアレイ510のミラー511〜515及びミラーアレイ520のミラー521〜525は、それぞれ上述したミラーアレイ900に含まれるミラー230に対応するものである。また、図30に示すミラーアレイ510,520は、図29に示す光スイッチ600のミラーアレイ510,520にそれぞれ対応するものである。
このように、本参考例では、可動枠回動軸及びミラー回動軸のうち少なくとも一方がミラー230の重心を通らない位置に可動枠連結部211a,211b及びミラー連結部221a,221bを設けることより、初期状態で所定の角度だけ傾いた状態となるため、結果としてミラーの傾動角度を小さくすることが可能となる。また、これにより、ミラー装置及びミラーアレイの駆動電圧を低くすることができる。
本参考例に係るミラー装置及びミラーアレイは、上述した第9の参考例と同等の製造方法により製造される。
なお、本参考例では、単結晶シリコン層に枠部210、可動枠連結部211a,211b、可動枠220、ミラー連結部221a,221b及びミラー230の形状に対応する溝を形成する工程の際、可動枠連結部211a,211b及びミラー連結部221a,221bを、ミラーアレイ内の位置に応じて上述したX方向及びY方向に移動させて形成する。
このように製造されたミラーアレイ900は、ミラーアレイ900内の位置に応じて各ミラー装置2の可動枠連結部211a,211b及びミラー連結部221a,221bのミラー基板200上の位置が調整されており、電極340a〜340dに一定のバイアス電圧を印加した際に対向するミラーアレイの中央のミラーに光ビームを反射する。これにより、各ミラー装置2のミラー230を傾動させる角度を小さくすることが可能となる。また、初期状態においてミラー230が傾いているため、ミラー230の動作範囲が小さくなり、結果として低電圧駆動が可能となる。
図38は、ミラー基板200の変形例である。本参考例では、上述したように、可動枠連結部211a,211bは、可動枠220に形成した第1切り欠き部222a,222b内に設けるようにした。しかしながら、可動枠連結部211a,211bを設ける場所はこれに限定されず、図38に示すように、枠部210に形成した第3切り欠き224a,224b内に設けるようにしてもよい。このようなミラー基板200においても、可動枠回動軸及びミラー回動軸がミラー230の重心を通らないようにすることにより、ミラー230を傾動させる角度を小さくすることが可能となる。
また、電極340a〜340dを設ける場所は基部310上に限定されず、例えば、基部310上に突出部を設け、この突出部上に設けるようにしてもよい。または、その突出部及び基部310上に設けるようにしてもよい。
また、本参考例において、図51に示すミラーアレイ900は、縦横にそれぞれ5つのミラー装置2を設けるようにしたが、ミラーアレイ900に設けるミラー装置2の数量は縦横5つに限定されず適宜自由に設定することができる。
また、本参考例に示すミラー装置2及びミラーアレイは、光スイッチのみならず、計測機器、ディスプレイ、スキャナ等に使用することが可能である。この場合、ミラー装置2の突出部320及び電極340a〜340dは、用途や仕様に応じて任意の位置に設けられる。
また、本参考例では、電極340a〜340dにバイアス電圧及び変位電極を印加するようにしたが、変位電圧のみを印加するようにしてもよい。
以上説明したように、本参考例によれば、ミラーの回動軸が重心を通らないので、電極にバイアス電圧を印加するとミラーが所定の角度だけ傾く。この傾いた状態から制御電圧を印加してミラーを傾動させるので、ミラーの傾動角度を小さくすることができる。また、傾動角度が小さくなるので、低電圧駆動も可能となる。
[第14の参考例]
次に、本発明の第14の参考例について説明する。
従来、図107、図108では電気配線について記載していないが、ミラーアレイに複数のミラー8103(ミラー装置)を2次元的に集積配置する場合、あるミラー装置(以下、第1のミラー装置と呼ぶ)のミラー8103の近傍を、別の第2のミラー装置の駆動電極8003−1〜8003−4に電圧を供給するための配線が通過する配線レイアウトになる。この配線には駆動電圧が印加されるため、第1のミラー装置のミラー8103はこの配線からも静電力を受けることになり、ミラー8103の傾斜角θは、第1のミラー装置の駆動電極8003−1〜8003−4に印加された電圧で決まる本来の角度からずれた値になる。しかも、第2のミラー装置の駆動電極8003−1〜8003−4に印加される駆動電圧は光スイッチの状態により随時変化するため、複数の第2のミラー装置に向かう配線からの影響を受けると、第1のミラー装置のミラー8103の傾斜角制御が困難になる。
このような配線からの干渉は、ミラー8103から配線を極端に遠ざければ無視できるが、ミラー8103の配置間隔が広がって、ミラーアレイ全体の寸法が大きくなり、経済的でない。また、光スイッチでは一対のミラーアレイを対向させてミラーアレイ間で光ビームを授受する関係上、ミラーアレイのミラー配置間隔が広がると、各ミラー8103に要求される傾斜角θも大きくなり、製作が困難になるという問題が発生する。したがって、複数のミラー8103をできるだけ近接して配置したいという要求がある。駆動電極8003−1〜8003−4を配置する下部基板8001に垂直に孔を穿ち、配線を下部基板8001の裏面側に引き出すことができれば、複数のミラー8103を近接配置しながら、配線からの干渉を抑制できるが、下部基板8001の裏面側に配線を引き出すことは技術的に困難である。つまり、配線は下部基板8001の表面に平面的に形成することが製造上好ましい。しかし、配線がミラー8103の近傍にあると、前述のように配線によるミラー8103への干渉が無視できない。
そこで、本参考例は、上記課題を解決するためになされたもので、ミラー装置及び複数のミラー装置を2次元的に配置したミラーアレイにおいて、近接する配線からの干渉による予期しないミラーの傾斜角の変動を抑制することを目的とするものである。
本参考例は、図52、図53に示すように、単結晶シリコンからなる下部基板1001の中央部に4つの駆動電極1003−1〜1003−4が設けられている。また、下部基板1001の上面の両側には単結晶シリコンからなる支柱1004が設けられている。
一方、上部基板1101の内側には円環状のジンバル1102が設けられ、さらにジンバル1102の内側にミラー1103が設けられている。ミラー1103の上面には、例えば3層のTi/Pt/Au層が形成されている。上部基板1101とジンバル1102とは、180゜隔てた2か所においてトーションバネ1104により連結され、同様にジンバル1102とミラー1103とは、180゜隔てた2か所においてトーションバネ1105により連結されている。一対のトーションバネ1104を通るx軸と、一対のトーションバネ1105を通るy軸は直交する。結果として、ミラー1103は、x軸とy軸の2軸を回動軸として回動することができる。上部基板1101、ジンバル1102、ミラー1103、トーションバネ1104,1105は単結晶シリコンで一体形成されている。
図52、図53に示したような下部基板1001の構造と上部基板1101の構造とが別々に作製され、はんだにより支柱1004に上部基板1101が取り付けられ、下部基板1001に上部基板1101がボンディングされている。このミラー装置においては、ミラー1103を接地し、駆動電極1003−1〜1003−4に正の電圧を与えて、しかも駆動電極1003−1〜1003−4間で非対称な電位差を生じさせることにより、ミラー1103を静電力で吸引し、ミラー1103を任意の方向へ回動させることができる。
また、本参考例では、上部基板1101上に配線1005−1〜1005−4が形成されている。配線配線1005−1〜1005−4は、それぞれ駆動電極1003−1〜1003−4と接続され、図示しない電源から駆動電極1003−1〜1003−4に駆動電圧を供給する。配線1006は、図52、図53のミラー装置と同一の基板1001,1101に形成された他のミラー装置の駆動電極(不図示)と接続され、この駆動電極に駆動電圧を供給する。
図52、図53のようなミラー装置において、配線1005−1〜1005−4,1006がx軸、y軸と平行に存在すると、x軸を回動軸とするジンバル1102及びy軸を回動軸とするミラー1103の回動への影響が強く現れる。特に、ミラー1103の外側にあるジンバル1102は配線1005−1〜1005−4,1006からの影響を受けやすい。その理由は、ミラー1103に比べて配線1005−1〜1005−4,1006に近い位置にあるからである。
一方、x軸と垂直な方向に配線1005−1〜1005−4,1006がある場合、このx軸を回動軸とするジンバル1102の回動への干渉は起きにくくなる。これは、回動軸回りのモーメントが発生しにくいためである。同様に、y軸と垂直な方向に配線1005−1〜1005−4,1006を配置すれば、y軸を回動軸とするミラー1103の回動への干渉は起きにくくなる。
そこで、本参考例では、配線1005−1〜1005−4,1006からの影響を受けやすいジンバル1102について、この影響を抑制することを重視し、ジンバル1102の回動軸と直交するy軸の方向に配線1005−1〜1005−4,1006を設ける。ミラー1103の回動への影響については、以下のようにミラー1103と配線1005−1〜1005−4,1006との距離を離すことで対処する。
ミラー1103の傾斜角制御の精度を、全傾斜角の1000分の1程度とすれば、配線1005−1〜1005−4,1006からの影響もその程度以下であれば許容される。全傾斜角の1000分の1程度の精度とは、例えばミラー1103の直径が500μmで、ミラー1103の配置間隔が1mm、ミラー1103を縦10個×横10個配置したとき、約10μmのビーム位置精度に相当する。
図54,図55を参照して、配線からの静電力がミラー1103に与える影響を実測した結果について説明する。図54において、横軸はミラー1103の端から配線までの水平距離h、縦軸は配線からの静電力によって生じるミラー1103の傾斜角のずれである。ここでは、トーションバネ1105の回転バネ剛性を2.4×10-9Nm、配線に印加される電圧を80V、配線の幅Wを9μm、ミラー1103と駆動電極1003−1〜1003−4との距離dを87.7μmとする。
この条件で実測した結果が図54の特性A1である。ただし、実際の使用条件では、駆動電圧が最大で例えば240V程度になるので、駆動電圧240Vの条件で特性A1を換算すると、図54の特性A2になる。特性A2は、特性A1に対してミラー1103の角度ずれが約9倍になる。さらに、特性A1,A2は配線が1本の条件で求めているため、12本の配線(合計の配線幅Wが200μm)に駆動電圧240Vが印可される条件で特性A1を換算すると、図54の特性A3になる。特性A3は、特性A1に対してミラー1103の角度ずれが約30倍になる。
図54の特性A3から分かるように、水平距離hがミラー1103と駆動電極1003−1〜1003−4との距離dに等しくなると、h=0の場合に比べて角度ずれが約1桁減少する。さらに、h=2dになると、h=0の場合に比べて角度ずれが約2桁減少し、h=4dになると、角度ずれが約3桁減少する。この結果から、配線1005−1〜1005−4,1006をミラー1103から例えば4d程度離せば、配線の影響を実効的に無視できるレベルに抑制できることが分かる。
以上により、本参考例では、ジンバル1102の回動軸と直交する方向に配線1005−1〜1005−4,1006を設けることで、配線1005−1〜1005−4,1006からの干渉による予期しないミラー1103の傾斜角の変動を抑制することができ、ミラー1103から配線1005−1〜1005−4,1006を離すことで、この抑制効果をさらに高めることができる。なお、ジンバルがない1軸回動のミラー装置の場合は、ミラー1103の回動軸と直交する方向に配線1005−1〜1005−4,1006を設けるようにすればよい。
以上説明したように、本参考例によれば、上部基板に対して回動可能に支持されるミラーを備えた1軸回動のミラー装置において、駆動電極と接続される配線を下部基板上にミラーの回動軸と直交させて配置することにより、この配線からの干渉による予期しないミラーの傾斜角の変動を抑制することができる。また、配線を下部基板の裏面側に形成する必要がないので、製造の容易さを維持しつつ、ミラーの傾斜角の変動を抑制することができる。
また、本参考例によれば、上部基板に対して回動可能に支持される環状のジンバルと、ジンバルに対して回動可能に支持されるミラーとを備え、直交する2軸で回動する2軸回動のミラー装置において、駆動電極と接続される配線を下部基板上にジンバルの回動軸と直交させて配置することにより、この配線からの干渉による予期しないミラーの傾斜角の変動を抑制することができる。また、配線を下部基板の裏面側に形成する必要がないので、製造の容易さを維持しつつ、ミラーの傾斜角の変動を抑制することができる。
[第15の参考例]
第14の参考例では、ミラー装置単体での配線について説明したが、本参考例では、複数のミラー装置を2次元的に配置するミラーアレイの配線について図56を参照して説明する。なお、図56において、図52、図53と同一の構成には同一の符号を付してある。図56において、1007は各ミラー装置の駆動電極と接続される配線(図52、図53の配線1005−1〜1005−4,1006に相当)、1008は配線1007と接続されるワイヤーボンディング用の電極端子である。
図56に示すミラーアレイでは、矩形のミラー配置領域1201の周縁に外部の電源との接続用の電極端子1008を配置し、電極端子1008から中央に向かって配線1007を配置する。これにより、効率的な配線レイアウトを実現する。
さらに、本参考例では、ミラー配置領域1201を2本の対角線1202,1203で4つの分割領域1204〜1207に分け、ミラー配置領域1201の交差する2辺と対角線1202,1203によって囲まれた任意の隣接する2つの分割領域では、ジンバル1102の回動軸(一対のトーションバネ1104を通る軸)が互いに直交するように各ミラー装置を配置する。例えば、分割領域1204では、ジンバル1102の回動軸が図56の左右方向に配置されるのに対し、これに隣接する分割領域1205では、ジンバル1102の回動軸が図56の上下方向に配置される。各分割領域1204〜1207において、ジンバル1102の回動軸と直交する方向に配線1007を設けることは第14の参考例と同じである。
こうして、本参考例では、配線1007からの干渉による予期しないミラー1103の傾斜角の変動を抑制することができる。
以上説明したように、本参考例によれば、2軸回動のミラー装置を2次元的に複数配置したミラーアレイにおいて、矩形のミラー配置領域の交差する2辺と対角線によって囲まれた任意の隣接する2つの分割領域では、ジンバルの回動軸が互いに直交するように各ミラー装置を配置し、分割領域の各々においては、駆動電極と接続される配線を下部基板上にジンバルの回動軸と直交させて配置することにより、配線からの干渉による予期しないミラーの傾斜角の変動を抑制することができる。
[第16の参考例]
次に、本発明の第16の参考例について説明する。本参考例は、ミラーよりも配線に近い位置に、ミラーと同電位の導電性部材を配設することにより、配線からの干渉による予期しないミラーの傾斜角の変動を抑制するものである。なお、本参考例において、第14の参考例と同等の構成要素については、同じ名称が付してある。
図57、図58に示すように、単結晶シリコンからなる下部基板1001の中央部にはシリコン酸化膜からなる絶縁層1002を介して4つの駆動電極1003−1〜1003−4が設けられている。また、下部基板1001の上面の両側には単結晶シリコンからなる支柱1004が設けられている。配線1005−1〜1005−4は、それぞれ駆動電極1003−1〜1003−4と接続され、図示しない電源から駆動電極1003−1〜1003−4に駆動電圧を供給する。配線1006は、図57、図58のミラー装置と同一の基板1001,1101に形成された他のミラー装置の駆動電極(不図示)と接続され、この駆動電極に駆動電圧を供給する。
一方、上部基板1101の内側には円環状のジンバル1102が設けられ、さらにジンバル1102の内側にミラー1103が設けられている。ミラー1103の上面には、例えば3層のTi/Pt/Au層が形成されている。上部基板1101とジンバル1102とは、180゜隔てた2か所においてトーションバネ1104により連結され、同様にジンバル1102とミラー1103とは、180゜隔てた2か所においてトーションバネ1105により連結されている。一対のトーションバネ1104を通るx軸と、一対のトーションバネ1105を通るy軸は直交する。結果として、ミラー1103は、x軸とy軸の2軸を回動軸として回動することができる。上部基板1101、ジンバル1102、ミラー1103、トーションバネ1104,1105は単結晶シリコンで一体形成されている。
図57、図58に示したような下部基板1001の構造と上部基板1101の構造とが別々に作製され、はんだにより支柱1004に上部基板1101が取り付けられ、下部基板1001に上部基板1101がボンディングされている。このミラー装置においては、ミラー1103を接地し、駆動電極1003−1〜1003−4に正の電圧または負の電圧を与えて、しかも駆動電極1003−1〜1003−4間で非対称な電位差を生じさせることにより、ミラー1103を静電力で吸引し、ミラー1103を任意の方向へ回動させることができる。
前述のとおり、上部基板1101、ジンバル1102、ミラー1103及びトーションバネ1104,1105は単結晶シリコンで一体形成されており、ミラー1103には、上部基板1101とトーションバネ1104とジンバル1102とトーションバネ1105とを介して所定の電位(例えば接地電位)が印加される。
本参考例の特徴は、ミラー1103よりも配線1005−1〜1005−4,1006に近い位置に、ミラー1103と同電位の導電性部材を配設することである。これにより、配線1005−1〜1005−4,1006からの干渉による予期しないミラー1103の傾斜角の変動を抑制する。そして、本参考例では、ミラー1103と同電位の導電性部材として、単結晶シリコンからなる下部基板(導電性基板)1001を用いる。すなわち、図59に示すように、下部基板1001をミラー1103と同電位にする。
ミラー1103と駆動電極1003−1〜1003−4との距離dは例えば90μm程度である。これに対して、配線1005−1〜1005−4,1006と下部基板1001との間に存在する絶縁層1002は距離dよりも薄いので、下部基板1001はミラー1103よりも配線1005−1〜1005−4,1006に近い。このため、下部基板1001をミラー1103と同電位にすると、配線1005−1に電圧Vを印加することによって生じる電気力線Eの大半は、図59に示すように下部基板1001側に終端される。図59では、記載を容易にするために配線1005−1のみ電気力線を示しているが、他の配線1005−2〜1005−4,1006についても同様である。したがって、本参考例によれば、配線1005−1〜1005−4,1006からの干渉による予期しないミラー1103の傾斜角の変動を抑制することができる。
なお、下部基板として絶縁性基板を使用する場合、配線からの電気力線はミラー側基板に終端されるため、ミラーへの干渉が強くなる。このような絶縁性基板の場合でも、配線に隣接してミラーと同電位の遮蔽用の配線を配置すれば、本参考例と同様の効果が得られる。しかし、この遮蔽用の配線のために余分な面積を消費し、配線とミラー間の間隙を広く維持することができなくなる。
以上説明したように、本参考例によれば、ミラーよりも配線に近い位置に、ミラーと同電位の導電性部材を配設することにより、配線からの干渉による予期しないミラーの傾斜角の変動を抑制することができる。また、本参考例では、配線を下部基板の裏面側に形成する必要がないので、製造の容易さを維持しつつ、ミラーの傾斜角の変動を抑制することができる。また、本参考例では、下部基板をミラーと同電位の導電性部材として用いることにより、ミラーよりも配線に近い位置にある導電性部材を容易に実現することができる。
[第17の参考例]
次に、本発明の第17の参考例について説明する。なお、図60において、図57、図58と同一の構成には同一の符号を付してある。
本参考例では、第16の参考例と同様に下部基板1001をミラー1103と同電位の導電性部材として用いると共に、配線1005−1〜1005−4,1006の上に絶縁層1007を介して形成した導電層1008を、ミラー1103と同電位の導電性部材として用いる。
導電層1008により配線1005−1〜1005−4,1006を静電シールドすることで、配線1005−1〜1005−4,1006からの干渉による予期しないミラー1103の傾斜角の変動を抑制するという第1の参考例の効果をより高めることができる。
導電層1008をミラー1103と同電位にするには、下部基板1001の表面の絶縁層1002を一部除去してコンタクトホール1009を形成すればよく、これにより導電層1008をミラー1103と同電位にするための配線を引き回すことなく、導電層1008を下部基板1001に直接接続することができ、配線が困難な孤立した導電層1008への電気接続を容易に行うことができる。
以上説明したように、本参考例によれば、また、配線の上に絶縁層を介して形成された導電層を、ミラーと同電位の導電性部材とすることにより、配線からの干渉によるミラーの傾斜角の変動を抑制するという効果をより高めることができる。
[第18の参考例]
次に、本発明の第18の参考例について説明する。なお、図61において、図57、図58と同一の構成には同一の符号を付してある。
本参考例では、第16の参考例と同様に下部基板1001をミラー1103と同電位の導電性部材として用いると共に、ミラー1103と配線1005−1〜1005−4,1006との間に配置した導電性の壁状部材1010を、ミラー1103と同電位の導電性部材として用いる。
壁状部材1010によりミラー1103から配線1005−1〜1005−4,1006を遮蔽することで、配線1005−1〜1005−4,1006からの干渉による予期しないミラー1103の傾斜角の変動を抑制するという第16の参考例の効果をより高めることができる。
壁状部材1010をミラー1103と同電位にするには、第17の参考例と同様に絶縁層1002の一部を除去してコンタクトホール1011を形成し、このコンタクトホール1011の部分に壁状部材1010を形成すればよい。これにより、壁状部材1010を容易にミラー1103と同電位にすることができる。
以上説明したように、本参考例によれば、ミラーと配線との間に配置された導電性の壁状部材を、ミラーと同電位の導電性部材とすることにより、配線からの干渉によるミラーの傾斜角の変動を抑制するという効果をより高めることができる。
なお、第16〜第18の参考例において、ミラー1103と配線1005−1〜1005−4,1006との距離を離せば、第16〜第18の参考例の効果をより高めることができる。ミラー1103の傾斜角制御の精度を、全傾斜角の1000分の1程度とすれば、配線1005−1〜1005−4,1006からの影響もその程度以下であれば許容される。全傾斜角の1000分の1程度の精度とは、例えばミラー1103の直径が500μmで、ミラー1103の配置間隔が1mm、ミラー1103を縦10個×横10個配置したとき、約10μmのビーム位置精度に相当する。
[第19の参考例]
次に、本発明の第19の参考例について説明する。
まず、従来のミラー装置について、図62,図63を参照して説明する。なお、図62,図63において、図107,図108と同等の構成要素には同じ符号が付してある。
図62、図63に示すように、単結晶シリコンからなる下部基板8001の中央部に段丘状をなす突出部8005が設けられ、突出部8005の四隅とこの四隅に続く下部基板8001の上面には、シリコン酸化膜からなる絶縁層8002を介して4つの駆動電極8003−1〜8003−4が設けられている。また、下部基板8001の上面の両側には単結晶シリコンからなる支柱8004が設けられている。
一方、上部基板8101の内側には円環状のジンバル8102が設けられ、さらにジンバル8102の内側にミラー8103が設けられている。ミラー8103の上面には、例えば3層のTi/Pt/Au層が形成されている。上部基板8101とジンバル8102とは、180゜隔てた2か所においてトーションバネ8104により連結され、同様にジンバル8102とミラー8103とは、180゜隔てた2か所においてトーションバネ8105により連結されている。一対のトーションバネ8104を通るx軸と、一対のトーションバネ8105を通るy軸は直交する。結果として、ミラー8103は、x軸とy軸の2軸を回動軸として回動することができる。上部基板8101、ジンバル8102、ミラー8103、トーションバネ8104,8105は単結晶シリコンで一体形成されている。
図62、図63に示したような下部基板8001の構造と上部基板8101の構造とが別々に作製され、はんだにより支柱8004に上部基板8101が取り付けられ、下部基板8001に上部基板8101がボンディングされている。このミラー装置においては、ミラー8103を接地し、駆動電極8003−1〜8003−4に正の電圧を与えて、しかも駆動電極8003−1〜8003−4間で非対称な電位差を生じさせることにより、ミラー8103を静電力で吸引し、ミラー8103を任意の方向へ回動させることができる。
図62、図63に示したミラー装置では、駆動電極8003−1〜8003−4に印加する駆動電圧Vとミラー8103の傾斜角θとの関係が非線形であるという問題点があった。特に、傾斜角θが大きくなると、駆動電圧Vに対する傾斜角θの変化が急激に大きくなり、ついにはdθ/dVが無限大となり、駆動電極8003−1〜8003−4にミラー8103が吸引される、プルインあるいはスナップダウンと呼ばれる不安定な状態になる。駆動電圧を印加していない状態でのミラー8103と駆動電極8003−1〜8003−4の斜面とのなす角のおよそ1/3がプルイン角となる。図64に、駆動電圧−傾斜角特性曲線の1例を示す。図64において、θpはプルイン角、Vpはプルイン角θpを与えるプルイン電圧である。
また、図62、図63に示したミラー装置では、ミラー8103の自由な回動を実現するために、トーションバネ8104,8105でミラー8103を支持するのであるが、回動方向のバネ剛性のみ低く、その他の変位については無限大の剛性を示すことがトーションバネ8104,8105として理想的である。しかし、現実には、回動方向のバネ剛性を低くするためには上下方向のバネ剛性や伸び縮み方向のバネ剛性も低くせざるをえない。そのため、駆動電極8003−1〜8003−4に電圧を印加してミラー8103を回動させるモーメントを発生させると、単にミラー8103が回動するだけでは済まず、ミラー8103が駆動電極8003−1〜8003−4側に引き寄せられてしまう。
ミラー8103の重心位置、すなわち回動中心が動かないままでミラー8103が回動する場合と、ミラー8103が駆動電極8003−1〜8003−4の方向に沈み込んで回動する場合とでは、同じ駆動電圧で得られるミラー8103の傾斜角θはミラー8103が沈み込んで回動する場合の方が大きくなる。その理由は、駆動電極8003−1〜8003−4とミラー8103間の距離の2乗に反比例して静電力が増大するからである。このようなミラー8103の沈みこみがあると、ミラー8103の傾斜角θの駆動電圧に対する増加は、回動中心が固定されている場合よりも大きな非線形性を示す。図65に、ミラー8103が沈み込んで回動する場合の駆動電圧−傾斜角特性曲線の1例を示す。図65における実線がミラー8103が沈み込んで回動する場合の特性を示し、破線はミラー8103が沈み込まない場合の特性(図64の特性)を示している。
図65から分かるように、ミラー8103の沈みこみがあると、傾斜角θの駆動電圧Vに対する非線形性はより著しくなり、プルイン角θpとプルイン電圧Vpも低下する。ミラー8103の沈み込みを起こさないようなトーションバネの構造であれば、以上のような間題は起きないのであるが、上述したように現実の設計では、ミラー8103の回動方向のみ柔らかく、ミラー8103の沈み込み方向に堅いトーションバネ8104,8105を実現することは難しい。
そこで、本参考例は、上記課題を解決するためになされたもので、ミラー装置において駆動電圧に対するミラーの傾斜角の線形応答性を改善することを目的とするものである。
以下、本発明の参考例について図面を参照して説明する。本参考例のミラー装置は、図66、図67に示すように、単結晶シリコンからなる下部基板1301の中央部に段丘状をなす突出部1305が設けられ、突出部1305の四隅とこの四隅に続く下部基板1301の上面には、シリコン酸化膜からなる絶縁層1302を介して4つの駆動電極1303−1〜1303−4が設けられている。また、下部基板1301の上面の両側には単結晶シリコンからなる支柱1304が設けられている。
一方、上部基板1401の内側には円環状のジンバル1402が設けられ、さらにジンバル1402の内側にミラー1403が設けられている。ミラー1403の上面には、例えば3層のTi/Pt/Au層が形成されている。上部基板1401とジンバル1402とは、180゜隔てた2か所においてトーションバネ1404により連結され、同様にジンバル1402とミラー1403とは、180゜隔てた2か所においてトーションバネ1405により連結されている。一対のトーションバネ1404を通るx軸と、一対のトーションバネ1405を通るy軸は直交する。結果として、ミラー1403は、x軸とy軸の2軸を回動軸として回動することができる。上部基板1401、ジンバル1402、ミラー1403、トーションバネ1404,1405は単結晶シリコンで一体形成されている。
図66、図67に示したような下部基板1301の構造と上部基板1401の構造とが別々に作製され、はんだにより支柱1304に上部基板1401が取り付けられ、下部基板1301に上部基板1401がボンディングされている。このミラー装置においては、ミラー1403を接地し、駆動電極1303−1〜1303−4に正の電圧を与えて、しかも駆動電極1303−1〜1303−4間で非対称な電位差を生じさせることにより、ミラー1403を静電力で吸引し、ミラー1403を任意の方向へ回動させることができる。
本参考例では、ミラー1403の沈み込みを防ぐために、ミラー1403の回動中心を支えるピボット(支柱)1306を突出部1305の上面に形成する。ミラー1403の回動中心の位置に先鋭構造のピボット1306を配置することでミラー1403の回動中心の位置を固定し、ミラー1403の沈みこみを防止し、本来のプルイン角度までミラー1403を回動させることが可能となる。
また、本参考例では、ピボット1306によりミラー1403の沈み込みを防ぐことができるので、トーションバネ1404,1405の沈み込み方向(図67の下方向)のバネ剛性を下げることができ、回動方向(図67の矢印の方向)のバネ剛性も下げることができる。その結果、ミラー1403を回動させるのに必要な駆動電圧を従来よりも低くすることができる。下部基板1301、突出部1305及びピボット1306は単結晶シリコンで一体形成されるが、ピボット1306は、シリコンの異方性エッチングや、RIEによる高アスペクト比構造加工などで形成することができる。
また、本参考例では、図68に示すように、4分割の駆動電極1303−1〜1303−4に電源1501から一定のバイアス電圧Vbを印加する。従来と同様に、上部基板1401、ジンバル1402、ミラー1403及びトーションバネ1404,1405は単結晶シリコンで一体形成されており、ミラー1403には、上部基板1401とトーションバネ1404とジンバル1402とトーションバネ1405とを介して接地電位が印加される。駆動電極1303−1〜1303−4にバイアスVbのみを印加した状態では、ミラー1403は回動することなく、平衡状態(θ=0)を保つ。
この平衡状態からミラー1403を回動させる方法について説明する。なお、説明を簡単にするため、1軸回動の場合について説明し、2軸回動については後述する。ミラー1403を例えばy軸周りに回動させるには、図69に示すように、駆動電極1303−1〜1303−4のうち、ミラー1403と近づく駆動電極(以下、正側駆動電極と呼ぶ)1303−1,1303−2にVb+Vaを印加し、ミラー1403と離れる駆動電極(以下、負側駆動電極と呼ぶ)1303−3,1303−4にVb+Vcを印加する。バイアス電圧Vbと共に印加する電圧Va,Vcは、ミラー1403の傾斜角θを得るのに必要な駆動電圧をVとすると、Va=V、Vc=−Vである。なお、バイアス電圧Vbと駆動電圧Vとの関係はV<Vbとなる。
本参考例では、バイアス電圧Vbを印加した状態で、正側駆動電極と負側駆動電極との間に電圧差を生じさせることで、ミラー1403を回動させることができ、駆動電圧Vに対する傾斜角θの線形応答性を改善することができる。図70に、本参考例のミラー装置における駆動電圧−傾斜角特性曲線の1例を示す。本参考例によれば、θ=0からプルイン角θpに近い角度まで比較的広い領域で線形に近い応答性が得られることが分かる。バイアス電圧Vbを印加しない場合は、図64、図65に示したように大きな電圧を印加するまでミラー1403は顕著な傾斜を示さず、その後急激に回動してプルインに至る。一方、本参考例のように、バイアス電圧Vbを印加すると、正側駆動電極と負側駆動電極の電圧差に比例してミラー1403が回動する。そのため、ミラー1403の回動の制御性を向上させることができる。
以下、バイアス電圧Vbの印加によって駆動電圧に対する傾斜角θの線形応答性を改善できる理由について説明する。ミラー1403の傾斜角θは、駆動電極1303−1〜1303−4とミラー1403との間に印加した電圧に応じて増大するが、この傾斜角θは、トーションバネ1404,1405の回転のばね剛性kによるトーションバネ1404,1405の復元力と駆動電極1303−1〜1303−4からの静電力との釣り合いによって決まる。
トーションバネ1404,1405の復元力によるモーメントをMS 、静電力によるモーメントをME とすると、モーメントMS,MEは以下のようになる。
MS=−kθ ・・・(2)
ME=ME(V,θ) ・・・(3)
静電力によるモーメントME は、駆動電極1303−1〜1303−4の形状に依存するため、モーメントME を関数ME(V,θ)で表す。ばね剛性kは、トーションバネ1404,1405の形状に依存する。
説明を単純化するため、図71に示すように、正側駆動電極1303aと負側駆動電極1303bとが、ミラー1403の回動中心を通る鉛直線Lに対して左右対称となるように角度θaの斜面に配置されているものとする。正側駆動電極1303aと負側駆動電極1303bとは、それぞれ鉛直線Lから距離x1とx2との間に配置されているものとする。また、ミラー1403はy軸(図71の紙面に垂直な方向)周りに回動するものとし、x軸周りの回動は無視する。
バイアス電圧をVb、駆動分の電圧をVとして、負側駆動電極1303bにはVb−V、正側駆動電極1303aにはVb+Vの電圧を印加する。このとき、駆動電極1303a,1303bからの静電力によるモーメントME は次のように表すことができる。
式(4)において、右辺第1項は正側駆動電極1303aによるモーメント、右辺第2項は負側駆動電極1303bによるモーメントである。式(4)を計算すると次式のようになる。
さらに、θ/θa<<1と仮定して式(5)を近似すると次式が得られる。
式(6)の括弧内の第1項はモーメントME が電圧Vの1乗に比例することを表し、しかも、θ<θa/3かつV<Vbなので、比較的広い角度範囲で式(6)の括弧内の第2項は第1項に比べ無視できるほど小さな値であることが分かる。静電力によるモーメントとトーションバネ1404,1405の復元力との釣り合いからミラー1403の傾斜角θが求まるので、以下のようになる。
MS+ME=0 ・・・(7)
したがって、式(2)と式(6)と式(7)から次式が求まる。
さらに、式(8)を近似すると、次式が求まる。
式(9)より、バイアス電圧Vbを印加した場合、ミラー1403の傾斜角θが電圧Vに線形応答することが分かる。
バイアス電圧Vbを印加しない場合を比較のために示すと、静電力によるモーメントME は次のようになる。
式(10)を計算すると次式のようになる。
θ/θa<<1と仮定して式(11)を近似し、この近似した式と式(2)と式(7)から次式が求まる。
式(12)より、バイアス電圧Vbを印加しない場合、ミラー1403の傾斜角θは角度の小さい領域でも電圧Vの2乗に比例することが分かる。
なお、バイアス電圧Vbには明瞭な上限値がある。その理由は、バイアス電圧Vbをある値以上に大きくすると、θ=0においてもミラー1403の状態が不安定になり、復元できない現象が生じるからである。この現象は、θ=0のときのトーションバネ1404,1405の復元力によるモーメントと静電力によるモーメントとの和の微分値が0以上になることを意味する。つまり、ミラー1403をθ=0の状態に復元することができなくなり、傾斜角θが増大する方向にミラー1403が勝手に回動するということである。したがって、バイアス電圧Vbの条件は次の関係式から求められる。
すなわち、dMS/dθ<k を満たすバイアス電圧Vbとなる。図71の電極構造の場合は、次式のようになる。
したがって、次式が求まる。
以上説明したとおり、バイアス電圧Vbの印加によって駆動電圧Vに対するミラー1403の傾斜角θの線形応答性を改善することができる。ただし、駆動電極にバイアス電圧Vbを印加することは、ミラー1403を駆動電極側に吸引することを意味し、トーションバネ1404,1405のみでミラー1403を支持する場合、ミラー1403が沈み込み、線形性応答性の改善は期待できなくなる。極端な場合は単に駆動電極にプルインするだけという結果になる。これに対して、本参考例では、ミラー1403の回動中心の位置にピボット1306を配置して、バイアス電圧Vbを印加した状態でもピボット1306でミラー1403の沈み込みを抑えることで、電圧Vに対する傾斜角θの線形応答性の改善を実現することができる。
バイアス電圧Vbを印加して駆動した場合でも、プルイン角はバイアス電圧Vbを印加しない場合とほとんど変わらない。また、プルイン電圧(VbとVの加算値)は、バイアス電圧Vbを印加しない場合とあまり変わらない。したがって、駆動電極にバイアス電圧Vbを印加して駆動する方法は、ミラー1403の回転可能な角度を減少させたり、電源1501への負担を増やしたりすることなく、電圧Vに対する傾斜角θの線形応答性を改善することができる。
最後に、2軸回動の場合の駆動方法について説明する。図72に示すように、2軸回動の場合、4分割の駆動電極1303−1,1303−2,1303−3,1303−4にそれぞれVb+V1,Vb+V2,Vb+V3,Vb+V4を印加することになる。
ミラー1403の任意の傾斜角について必要な駆動電圧V1,V2,V3,V4を求めるには、ミラー1403と駆動電極1303−1〜1303−4との位置関係から、ミラー1403と駆動電極1303−1〜1303−4との間の静電容量を算出し、微小なミラー傾斜角に対する静電容量の変化からその傾斜角における静電力を算出する。この値から静電力によるモーメントが求まり、このモーメントとトーションバネ1404,1405の復元力との釣り合いで駆動電圧V1,V2,V3,V4とミラー1403の傾斜角との関係が求まる。
ミラー1403と駆動電極1303−1〜1303−4との間の静電容量を算出するには、ミラー1403と駆動電極1303−1〜1303−4との位置関係を境界条件として電磁界の解析を行う必要があり、通常、有限要素法を用いた数値解析を行うのが一般的な方法である。有限要素法を用いた数値解析については、例えば文献「M.Fischer et al.,“Electrostatically deflectable polysilicon micromirrors-dynamic behaviour and comparison with the results from FEM modelling with ANSYS”,Sensors and Actuators,Vol.A67,pp.89-95,1998」、あるいは文献「M.Urano et al.,“Novel Fabrication Process and Structure of a Low-Voltage-Operation Micromirror Array for Optical MEMS Switches”,Technical digest of Electron Dvice Meeting(IEDM'03),8-10,Dec.2003 」に開示されている。
こうして、求めたミラー1403のx軸方向の傾斜角及びy軸方向の傾斜角と駆動電圧V1,V2,V3,V4との関係をテーブル(記憶部)1502に予め記憶させておく。制御回路(取得部)1503は、ミラー1403の所望の傾斜角に応じた駆動電圧V1,V2,V3,V4の値をテーブル1502から取得して電源1501に設定する。電源1501は、設定された駆動電圧V1,V2,V3,V4を所定のバイアス電圧Vbと共に駆動電極1303−1〜1303−4に印加することになる。
次に、バイアス電圧Vbの設定方法について説明する。上述したようにミラー装置にある値以上の電圧を駆動電極に印加すると、プルインあるいはスナップダウンと呼ばれる不安定な状態になる。これを防ぐには、駆動電極に印加する電圧に制限を設ける、すなわち駆動電圧Vとバイアス電圧Vbの和で表される印加電圧の最大値(以下、印加電圧最大値という)を設定する必要がある。既に述べたように、ミラーの傾斜角は駆動電圧の値より変化するので、バイアス電圧Vbの値を適切に設定しないとミラーの姿勢変位量を制限することとなり、所望するミラーの傾斜角を実現できなくなる。このため、本参考例では、バイアス電圧Vbを以下に示すように設定する。
一例として、図73では、駆動電極1303−1と駆動電極1303−3とがx軸を挟んで対称、かつ、駆動電極1303−2と駆動電極1303−4とがy軸を挟んで対称になるように配設している。このような場合において、駆動電極1303−1〜1303−4の上方に配設されたミラー1403(図示せず)をy軸周りに回動させるには、駆動電極1303−1〜1303−4のうち、正側駆動電極1303−1にVb+Vaを印加し、負側駆動電極1303−3にVb+Vcを印加する。バイアス電圧Vbとともに印加する駆動電圧Va,Vcは、ミラー1403の傾斜角θyを得るのに必要な駆動電圧をVyとすると、Va=Vy、Vc=−Vyである。同様に、ミラー1403をx軸周りに回動させるには、正側駆動電極1303−2にVb+Vdを印加し、負側駆動電極1303−4にVb+Veを印加する。駆動電圧Vd、Veは、ミラー1403の傾斜角θxを得るのに必要な駆動電圧をVxとすると、Vd=Vx、Ve=−Vxである。
図73に示す駆動電極に対して、印加電圧最大値を140[V]、駆動電圧Vxを0[V]とし、駆動電圧Vyを変化させたときのミラー1403の傾斜角θyの測定結果を図74に示す。図74において、符号aで示す実線は、バイアス電圧Vbを0[V]としたときの駆動電圧Vyと傾斜角θyとの関係を示している。同様に、符号b〜lで示す実線も駆動電圧Vyと傾斜角θyとの関係を示しており、それぞれはバイアス電圧Vbを10〜110[V]まで10[V]刻みで異ならせたものである。
図74に示すように、バイアス電圧Vbを変化させることにより、傾斜角θyも変化することが分かる。特に、符号h,iで示す実線(Vb=70,80[V])のようにバイアス電圧Vbを印加電圧最大値の約1/2にしたとき、傾斜角θyは最も大きくなる。したがって、本参考例では、バイアス電圧Vbを印加電圧最大値の約1/2に設定する。これにより、ミラー1403の傾斜角を大きくすることができる。
このように設定されたバイアス電圧Vbは、テーブル1502に予め記憶される。制御回路1503は、ミラー1403の所望の傾斜角に応じた駆動電圧V1,V2,V3,V4の値及びバイアス電圧Vbをテーブル1502から取得して電源1501に設定する。電源1501は、設定された駆動電圧V1,V2,V3,V4をバイアス電圧Vbと共に駆動電極1303−1〜1303−4に印加することになる。
なお、図74では、駆動電圧Vyと傾斜角θyの関係について述べたが、駆動電圧Vyと傾斜角θyとの関係についても同様である。また、図73に示すような2軸を回動させるミラー装置のみならず、1軸を回動させるミラー装置や並進させるミラー装置においても、駆動電極に印加するバイアス電圧の値を印加電圧最大値の約1/2にすることにより、傾斜角を大きくすることができる。
以上説明したように、本参考例によれば、下部基板上に形成したピボットによりミラーの回動中心を支え、かつミラーと対向する複数の駆動電極に同一のバイアス電圧を印加することにより、駆動電圧に対するミラーの傾斜角の線形応答性を改善することができる。
また、本参考例によれば、ミラーの傾斜角と各駆動電極に印加する駆動電圧との関係を記憶手段に予め記憶させ、記憶手段からミラーの所望の傾斜角を得るのに必要な駆動電圧の値を駆動電極毎に取得することにより、各駆動電極に印加する電圧を駆動電極毎に個別に決定することができる。
さらに、本参考例によれば、駆動電極に印加するバイアス電圧を、駆動電極に印加することができる最大の電圧値の約1/2にすることにより、ミラーの傾斜角を大きくすることができる。
[第20の参考例]
以下、本発明の第20の参考例について説明する。本参考例は、低電圧での駆動でミラーのより大きい回動角度が得られる状態を、高いコストをかけることなく実現できるようにすることを目的とするものである。
図75は、主にミラーアレイの1構成単位であるミラー装置を部分的に示している。ミラーアレイは、図75に示すミラー装置が、例えば2次元的に正方配列されたものである。ミラー装置は、ミラーが形成されたミラー基板1500と、電極が形成された電極基板1530とを備え、これらが平行に配設されている。図75において、ミラー基板1500は、電極基板1530に対向する面が示されており、図11の斜視図とは異なる状態を示している。
ミラー基板1500は、板状の基部1501とリング状の可動枠1502と円板状のミラー1503とを備える。基部1501は、平面視略円形の開口を備える。可動枠1502は、基部1501の開口内に配置され、一対の連結部1501a,1501bにより基部1501に連結している。また、可動枠1502も、平面視略円形の開口を備えている。ミラー1503は、可動枠1502の開口内に配置され、一対のミラー連結部1502a,1502bにより可動枠1502に連結されている。また、基部1501の周辺部には、可動枠1502及びミラー1503を取り囲むような枠部1504が形成されている。枠部1504は、絶縁層1505を介して基部1501に固定されている。
連結部1501a,1501bは、可動枠1502の切り欠き内に設けられており、つづら折りの形状を有するトーションバネから構成され、基部1501と可動枠1502とを連結している。このように基部1501に連結された可動枠1502は、連結部1501a,1501bを通る回動軸(可動枠回動軸)を中心に、回動可能とされている。また、ミラー連結部1502a,1502bは、可動枠1502の切り欠き内に設けられており、つづら折りの形状を有するトーションバネから構成され、可動枠1502とミラー1503とを連結している。このように可動枠1502に連結されたミラー1503は、ミラー連結部1502a,1502bを通る回動軸(ミラー回動軸)を中心に回動可能とされている。なお、図75に示す構成例では、可動枠回動軸とミラー回動軸とは、互いに直交している。
一方、電極基板1530は、突出部1536と、突出部1536の周辺部に設けられたリブ構造体1531とを備える。突出部1536は、角錐台の形状を有する第3テラス1532と、第3テラス1532の上面に形成された角錐台の形状を有する第2テラス1533と、第2テラス1533の上面に形成された角錐台の形状を有する第1テラス1534と、第1テラス1534の上面に形成された角錐台の形状を有するピボット1535とから構成される。
また、突出部1536の外面を含む電極基板1530の上面には、例えば、対向するミラー基板1500のミラー1503と同心の円内に、一体に形成された共通電極1541が形成されている。また、電極基板1530の突出部1536周囲には、配線1537が形成され、配線1537には、引き出し線1542を介して共通電極1541が接続されている。共通電極1541は、突出部1536の領域が含まれる領域に一体の金属膜として形成されていればよい。従って、共通電極1541の形成には、高い加工精度が必要とならず、大きな段差のある突出部1536においても、複雑なプロセスを必要とせずに、容易に共通電極1541が形成できる。例えば、フォトリソグラフィの工程において、微細なパターンである配線1537用のマスクパターンの形成に合わせた焦点位置による露光により、焦点位置が大きく異なる共通電極1541用のマスクパターンが、同時に形成できる。
加えて、図75に示すミラー基板1500は、ミラー1503の表面に、駆動電極1503a,駆動電極1503b,駆動電極1503c,駆動電極1503dを備える。また、各駆動電極は、ミラー(ミラー構造体)1503の中心に対して対称に配置されている。これらのように構成されたミラー基板1500と電極基板1530とは、各々対応するミラー1503と共通電極1541とが対向配置され、基部1501の下面とリブ構造体1531の上面とが接合されてミラー装置が形成される。また、図75に示すミラー装置では、ミラー1503に形成された駆動電極1503a,駆動電極1503b,駆動電極1503c,駆動電極1503dと、電極基板1530に形成された共通電極1541とが対向している。
図75に示すミラー装置では、例えば、共通電極1541が接地された状態とし、駆動電極1503a,駆動電極1503b,駆動電極1503c,駆動電極1503dに正または負の電圧を与え、これらの間で非対称な電位差を生じさせ、発生した静電力でミラー1503が共通電極1541の側へ吸引される状態とすることで、ミラー1503が任意の方向へ回動する状態が得られる。上記正または負の電圧は、ミラー装置外部に設けた電源により印加される。
ここで、複数のテラスを備えて階段状に形成された突出部1536に共通電極1541が設けられているので、ミラー1503の傾斜角θを犠牲にすることなく、駆動電極1503a,駆動電極1503b,駆動電極1503c,駆動電極1503dと、共通電極1541との距離を狭めることができる。この結果、図75に示すミラー装置によれば、ミラー1503の高いプルイン角と低電圧駆動が実現できる。なお、プルイン角とは、これ以上の傾斜角θではミラー1503を静的には安定に制御できない角度のことであり、プルイン角以上の傾斜角θでは、静電力が連結部の復元力に勝って、ミラー1503が電極基板1530側に接触する。図75に示すミラー装置によれば、前述したように、大きな段差のある突出部1536を備えていても、共通電極1541が容易に形成できるので、突出部1536の傾斜角度を従来に比較してより大きくすることが容易となる。この結果、図75に示すミラー装置によれば、従来に比較して、ミラー1503の傾斜角度をより大きくすることができるようになる。
従来では、高いプルイン角と低電圧駆動を実現するために、図11に示すように、電極基板8301に突出部8320を設け、突出部8320の斜面に電極を形成するようにしている。一方、配線8370は、電極基板8301の基部8310の上に形成している。ところで、電極や配線などのパターン形成では、電極に比較してより微細なパターンである配線8370に、露光装置の焦点の下限を合わせ、形成されるパターンの精度を確保するようにしている。ところが、露光装置の被写体深度には限界があり、突出部8320の高低差は50〜70μm以下に制限せざるを得ない。
しかしながら、より高いプルイン角とより低電圧駆動を実現するためには、突出部8320の高低差をより高くした方がよく、望ましくは100μm以上にした方がよい。この状態は、焦点の範囲が広い特殊な露光装置を用いることや、段差の高さ毎に複数回に分けて露光するなどのことにより実現可能である。しかしながら、特殊な露光装置は高額であり、また工程数の増加はプロセスコストの上昇を招くため、上述した構成を実現するために、従来では高コストになるという問題があった。
そこで、本参考例に係るミラー装置は、電極基板の上に形成された共通電極と、電極基板の上に離間して共通電極と対向して回動可能に配置されたミラー構造体と、ミラー構造体の共通電極との対向面に設けられた複数の駆動電極とを備えるようにしたものである。従って、例えば、共通電極が接地された状態とし、いずれかの駆動電極に正または負の電圧を与えることで発生した静電力により、ミラー構造体が回動する。
上記ミラー装置において、電極基板の上に形成された略錐状に形成された突出部を備え、共通電極の少なくとも一部は、突出部の上に形成されているようにすればよい。また、ミラー構造体は、このミラー構造体の中心を通る回動軸を軸中心として回動可能に配置され、複数の駆動電極は、ミラー構造体の中心に対して対称に配置されていてもよい。また、共通電極の周囲の電極基板の上に設けられたリブ構造体と、ミラー構造体が回動可能に連結されたミラー基板とを備え、ミラー基板は、リブ構造体の上に固定されているようにすることで、電極基板の上に離間して共通電極と対向してミラー構造体が配置された状態が得られる。
以上説明したように、本発明によれば、ミラー構造体に駆動電極が配置されているようにしたので、電極基板側には一体に形成された共通電極が配置されていればよく、微細なパターンを形成する必要がないなど、電極基板側により大きな段差が形成可能となるので、低電圧での駆動でミラーのより大きい回動角度が得られる状態を、高いコストをかけることなく実現できるという優れた効果が得られる。
次に、図75に示したミラー基板1500の製造方法例について説明する。まず、図76Aに示すように、面方位が(100)であるシリコン基部1601の上に、膜厚1μm程度の酸化シリコンからなる埋め込み絶縁層1602と、膜厚10μmのシリコン単結晶層(SOI層)1603とが形成されているSOI基板を用意する。次いで、例えば熱酸化法などにより、SOI層1603の表面に酸化層1604が形成され、シリコン基部1601の裏面に酸化層1605が形成された状態とする。
次に、図76Bに示すように、酸化層1604の上に金属層1606が形成された状態とする。例えば、スパッタ法や蒸着法などによりアルミニウムの膜を形成することで、金属層1606が形成された状態が得られる。次に、図76Cに示すように、公知のフォトリソグラフィ技術により形成されたフォトレジストからなるパターンが形成されたレジストマスク層1701が、金属層1606の上に形成された状態とする。次いで、レジストマスク層1701をマスクとして金属層1606がエッチング加工された状態とし、この後レジストマスク層1701を除去することで、図76Dに示すように、酸化層1604の上に、駆動電極1503a,駆動電極1503cが形成された状態とする。これらの加工は、例えば、リアクティブイオンエッチングなどのよく知られたドライエッチング法を用いればよい。なお、図76C〜図76Lでは、断面を示しているため、図75には示されている駆動電極1503b,駆動電極1503dが、図示されていない。
次に、図76Eに示すように、公知のフォトリソグラフィ技術により形成されたフォトレジストからなるパターンが形成されたレジストマスク層1702が、駆動電極1503a,駆動電極1503cを含めた酸化層1604の上に形成された状態とする。次いで、レジストマスク層1702をマスクとして酸化層1604がエッチング加工された状態とする。このエッチングでは、例えばリアクティブイオンエッチングなどの方向性エッチングにより行い、エッチング箇所においてSOI層1603の表面を露出させる。このことにより、図76Fに示すように、酸化シリコンからなるマスクパターンが形成された無機マスク層1604aが形成された状態とする。なおこのとき、レジストマスク層1702の図示していない領域に、ダイシングの際にガイドとなるスクライブラインを形成するためのパターンが備えられた状態としておく。
次に、オゾンや酸素プラズマを用いた灰化処理によりレジストマスク層1702が除去された状態とした後、図76Gに示すように、無機マスク1604aをマスクとしたドライエッチングにより、SOI層1603がエッチング加工された状態とする。このエッチングにより、基部1501,可動枠1502,ミラー(ミラー構造体)1503,及び図示していない連結部,ミラー連結部が形成され、ミラー基板の基本的な構成が形成された状態が得られる。また、レジストマスク層1702の図示していない領域に備えられているスクライブラインのパターンも、無機マスク層1604aに転写され、SOI層1603に転写された状態となる。なお、可動枠を設けずに、ミラー構造体が基部に連結した構成としてもよい。
次に、駆動電極1503a,駆動電極1503cを含めた無機マスク1604aの上に樹脂を塗布し、図76Hに示すように、無機マスク1604aのパターン間及びSOI層1603に形成された各構造体の間が樹脂で充填された状態に、樹脂膜1711が形成された状態とする。次いで、樹脂膜1711をエッチバックし、図76Iに示すように、駆動電極1503a,駆動電極1503c及び無機マスク層1604aの表面が露出し、無機マスク1604aのパターン間及びSOI層1603に形成された各構造体の間を充填する保護層1712が形成された状態とする。
次に、駆動電極1503a,駆動電極1503cをマスクとして無機マスク層1604aをエッチング除去し、図76Jに示すように、SOI層1603の上に、絶縁層1506を介して駆動電極1503a,駆動電極1503cが配置された状態とする。なお、無機マスク層1504aを選択的に除去せずに、このまま絶縁層1506として用いるようにしてもよい。次に、公知のフォトリソグラフィ技術により形成されたマスクパターン(枠形成マスクパターン)を用いて酸化層1605及びシリコン基部1601をエッチング加工し、図76Kに示すように、枠部1504が形成された状態とする。次いで、上記マスクパターンが除去された状態とした後、例えば、アルカリ溶液によるウエットエッチングやドライエッチングにより、図76Lに示すように、酸化層1605が除去され、かつ、枠部1504の内部に露出している部分の埋め込み絶縁層1602が除去された状態とし、枠部1504が、絶縁層1505を介して基部1501に固定されている状態とする。
この後、例えば、ミラー1503の枠部1504が形成されている側の表面に蒸着法などによりAuなどの金属膜からなる反射膜が形成された状態とし、次いで、形成されたミラー基板を電極基板に貼り合わせてミラー装置が形成された状態とする工程,ミラー装置がパッケージに収容されてダイボンディングなどにより固定された状態とする工程,パッケージの端子と電極基板の端子とがワイヤーボンディングされた状態とする工程などを経た後、酸素プラズマを用いた灰化処理などにより、保護層1712が除去された状態とすれば、基部1501,可動枠1502,ミラー1503の間に空間が形成され、可動枠1502及びミラー1503が回動可能な状態が得られる。上述した貼り合わせにより、ミラー基板1500は、電極基板1530に設けられているリブ構造体1531の上に固定された状態となる。なお、保護層1712の除去は、上述したパッケージングのいずれかの工程の間に行うようにしてもよい。
例えば、上述した反射膜の形成において、蒸着装置にミラー基板1500を搬入して固定する際などに外部より機械的な振動が加わった場合においても、各連結部の破損などが抑制できる。同様に、ミラー基板を電極基板に貼り合わせてミラー装置とする工程,ミラー装置をパッケージに収容してダイボンディングなどにより固定する工程,パッケージの端子と電極基板の端子とをワイヤーボンディングする工程などにおいても、各連結部の破損などが抑制できる。
なお、上述した製造方法は、一例であり、図75に示すミラー基板は他の製造方法によっても形成できることは言うまでもない。例えば、駆動電極が形成された後でミラーや可動枠などの構造体が形成されるようにしたが、ミラーや可動枠が形成された後に駆動電極が形成されるようにしてもよい。また、駆動電極は、マスクパターンをマスクとしたエッチングにより形成するようにしたが、これに限るものではなく、所謂リフトオフ法により形成してもよい。
次に、ミラー1503に形成された駆動電極1503a,駆動電極1503b,駆動電極1503c,駆動電極1503dに接続する配線について説明する。例えば、簡略化した図77の平面図に示すように、各駆動電極1503a,駆動電極1503b,駆動電極1503c,駆動電極1503dは、連結部1501a,1501b及びミラー連結部1502a,1502bを通る、配線1803a,配線1803b,配線1803c,配線1803dにより、基部1501の側に引き出すことができる。なお、各駆動電極は、ミラー(ミラー構造体)1503の中心に対して対称に配置されている。
また、図78の部分拡大した斜視図に示すように、ミラー連結部1502aの一方の面に形成されている絶縁層1506の上に設けられた配線1813bが駆動電極1503bに接続し、他方の面に形成されている絶縁層1516の上に設けられた配線1813aが駆動電極1503aに接続されているようにしてもよい。なお、絶縁層1506,ミラー1503,及び絶縁層1516を貫通する図示しないプラグにより、配線1813aと駆動電極1503aとは接続されている。なお、駆動電極1503c,駆動電極1503dも同様である。
また、図79の部分拡大した斜視図に示すように、ミラー連結部1502aの一方の面に形成されている絶縁層1506の上に設けられた配線1823bが駆動電極1503bに接続し、この上の絶縁層1516aを介して設けられた配線1823aが駆動電極1503aに接続されているようにしてもよい。なお、駆動電極1503c,駆動電極1503dも同様である。
また、簡略化した図80の平面図に示すように、ミラー1503に、2分割された駆動電極1833a,駆動電極1833bを備えるようにしてもよい。各駆動電極1833a,駆動電極1833bは、連結部1501a,1501b及びミラー連結部1502a,1502bを通る、配線1843a,配線1843bにより、基部1501の側に引き出すことができる。なお、各駆動電極は、ミラー(ミラー構造体)1503の中心に対して対称に配置されている。
また、簡略化した図81の平面図に示すように、ミラー1503に、2分割された駆動電極1853a,駆動電極1853bを備え、可動枠1502に、2分割された駆動電極1853c,駆動電極1853dを備えるようにしてもよい。各駆動電極1853a,駆動電極1853bは、連結部1501a,1501b及びミラー連結部1502a,1502bを通る、配線1863a,配線1863bにより、基部1501の側に引き出すことができる。また、駆動電極1853c,駆動電極1853dは、連結部1501a,1501bを通る、配線1863c,配線1863dにより、基部1501の側に引き出すことができる。
また、上述では、突出部1536が覆われる程度の領域に、共通電極1541が配置されているようにしたが、これに限るものではなく、電極基板1530の側には、パターニングされた電極が配置されている必要はない。例えば、ミラー基板1500に対向している側の電極基板1530の全域に、接地電位に接続された金属層を配置し、これを共通電極としてもよい。このようにすることで、共通電極をパターニングする工程が省略され、より簡便で低コストに製造できるようになる。また、電極基板1530に、突出部1536を設けずに、平坦な状態で共通電極が形成されているようにしてもよい。
[第21の参考例]
次に、本発明の第21の参考例について説明する。本参考例は、ミラー基板がギャップ補助層を介してリブ構造体に接合することにより、ミラー基板と電極基板とが、ギャップ補助層とリブ構造体とにより離間させ、ミラー基板と電極基板との間隔をより容易に大きくできるようにしたものである。
まず、図82,図83を用いて、本参考例におけるミラー装置の構成例について説明する。なお、図82,図83は、主にミラーアレイの1構成単位であるミラー装置を部分的に示している。ミラーアレイは、例えば、図82に示すミラー装置が、2次元的に正方配列されたものである。ミラーアレイは、複数のミラーが形成されたミラー基板1900と、複数の電極部分が形成された電極基板2000とから構成されている。ミラー基板1900と電極基板2000とは、平行に配設されている。
ミラー基板1900は、板状の基部1910とリング状の可動枠1920と円板状のミラー1930とを備える。基部1910は、平面視略円形の開口を備える。可動枠1920は、基部1910の開口内に配置され、一対の連結部1911a,1911bにより基部1910に連結している。また、可動枠1920も、平面視略円形の開口を備えている。ミラー1930は、可動枠1920の開口内に配置され、一対のミラー連結部1921a,1921bにより可動枠1920に連結されている。また、基部1910の周辺部には、可動枠1920及びミラー1930を取り囲むような枠部1940が形成されている。枠部1940は、絶縁層1950を介して基部1910に固定されている。加えて、図82,図83に示すミラー装置では、電極基板2000に対向する面(下面)において、基部1910の周縁部にギャップ補助層2101を備えている。ギャップ補助層2101は、枠状に形成されていてもよい。
なお、連結部1911a,1911bは、可動枠1920の切り欠き内に設けられており、つづら折りの形状を有するトーションバネから構成され、基部1910と可動枠1920とを連結している。このように基部1910に連結された可動枠1920は、連結部1911a,1911bを通る回動軸(可動枠回動軸)を中心に、回動可能とされている。また、ミラー連結部1921a,1921bは、可動枠1920の切り欠き内に設けられており、つづら折りの形状を有するトーションバネから構成され、可動枠1920とミラー1930とを連結している。このように可動枠1920に連結されたミラー1930は、ミラー連結部1921a,1921bを通る回動軸(ミラー回動軸)を中心に回動可能とされている。なお、可動枠回動軸とミラー回動軸とは、互いに直交している。
一方、電極基板2000は、突出部2020と、突出部2020の周辺部に設けられたリブ構造体2010とを備える。突出部2020は、角錐台の形状を有する第3テラス2023と、第3テラス2023の上面に形成された角錐台の形状を有する第2テラス2022と、第2テラス2022の上面に形成された角錐台の形状を有する第1テラス2021とから構成される。また、突出部2020の外面を含む電極基板2000の上面には、対向するミラー基板1900のミラー1930と同心の円内に、扇形の電極2040a,電極2040b,電極2040c,電極2040dが形成されている。さらに、電極基板2000の突出部2020周囲には、配線2070が形成され、配線2070には、引き出し線2041a〜2041dを介して電極2040a〜2040dが接続されている。なお、突出部2020を設けずに各電極が配設されていてもよい。また、各配線は、各電極が形成されている電極基板の表面に形成されている必要はなく、貫通配線などにより電極基板の内部に配設されていてもよい。
上述した構成とされたミラー基板1900と電極基板2000とは、各々対応するミラー1930と電極2040a〜2040dとが対向配置され、基部1910の下面に設けられたギャップ補助層2101とリブ構造体2010の上面とが接合される。なお、図82,図83では、便宜上、ミラー基板1900と電極基板2000とが離間した状態を示している。このように、図82,図83に示すミラー装置によれば、ミラー基板1900と電極基板2000とのギャップが、リブ構造体2010とギャップ補助層2101により形成される。言い換えると、ミラー基板1900と電極基板2000とは、ギャップ補助層2101とリブ構造体2010とを介して接合されている。
従って、所望とするギャップを、リブ構造体2010とギャップ補助層2101とにより構成すればよく、リブ構造体2010及びギャップ補助層2101の厚さを抑制することが可能となる。この結果、例えばミラー基板1900においては、ギャップ補助層2101が存在していてもあまり大きな段差とはならず、連結部1911a,1911b及びミラー連結部1921a,1921bなどの微細なパターンが、高精度に形成可能となる。なお、リブ構造体2010及びギャップ補助層2101は、ミラー基板1900と電極基板2000とを所定距離離間して互いに支持された状態とし、ミラー基板1900と電極基板2000との間にミラー1930などの可動構造体が可動する空間を形成するものである。従って、例えば、リブ構造体2010は、電極基板2000の上で、各電極が配置されていない領域に形成されていればよい。また、このように形成されたリブ構造体2010の位置に合わせてギャップ補助層2101が配置されていればよい。
突出部の高低差を大きくするためには、ミラー基板と電極基板との間隔(ギャップ)をより大きくすることになるが、従来では、ギャップを大きくすることが容易ではないという問題があった。従来では、例えば、図13の断面図に示すように、電極基板8301を加工することで形成した凸部(リブ構造体)8360a,8360bにより、ミラー基板8201と電極基板8301との間にギャップを形成している。また、図86の断面図に示すように、ミラー基板8200の枠部8241により、ミラー基板8200と電極基板8300との間にギャップを形成する構成がある。また、図87の断面図に示すように、ミラー基板8200の枠部(基部)8210上に形成した支持部8260により、ミラー基板8200と電極基板8300との間にギャップを形成する構成がある。
しかしながら、まず、図13に示す構成では、凸部8360a,8360bが形成された状態で電極及び配線を形成するため、凸部8360a,8360bの高さをあまり大きくできない。一般に、電極及び配線は、フォトリソグラフィ技術により形成されるため、大きな段差のある領域では、フォトレジストの塗布及び露光が非常に困難である。例えば、通常のフォトリソグラフィ工程では、パターンが形成可能な段差は70μm程度である。
また、図86に示す構成では、SOI基板は、シリコンからなる厚い基体部を加工することで枠部8241が形成できるが、ギャップは100〜200μm程度とするため、上記基体部を100〜200μm程度にまで薄層化することになる。しかしながら、このように薄層化すると、ミラー基板の強度が著しく低下し、ミラーの形成過程や実装過程におけるハンドリングなどで、容易に破壊される状態となる。また、図87に示す構成では、支持部8260を設けることにより、ミラー8230及び枠部8210などが形成されるSOI層の上に大きな段差が形成されることになる。このように大きな段差が存在すると、連結部などの微細な構造体のパターニングが非常に困難な状態となる。
そこで、本参考例に係るミラー素子は、上述した構成を有するようにしたものである。したがって、ミラー基板は、ギャップ補助層を介してリブ構造体に接合されているようにしたので、ミラー基板と電極基板とが、ギャップ補助層とリブ構造体とにより離間しているようになり、ミラー基板と電極基板との間隔が、より容易に大きくできるようになるという優れた効果が得られる。なお、電極基板は、基部からミラーと対向して略錐状に形成された突出部を備え、この突出部に電極が形成されているようにしてもよい。
次に、本参考例におけるミラー装置を構成するミラー基板1900の製造方法例について説明する。まず、図84Aに示すように、面方位が(100)であるシリコン基部1940aの上に、例えば膜厚1μmの酸化シリコンからなる絶縁層1950と、膜厚10μmのシリコン単結晶層(SOI層)1901とが形成されているSOI基板を用意する。絶縁層1950は、埋め込み絶縁層である。次に、図84Bに示すように、シリコン基部1940a上に、ギャップ補助層2101が形成された状態とする。例えば、ギャップ補助層2101の形成領域に、選択的にシード層を形成し、電界メッキ法によりシード層の上に金属層が形成された状態とすることで、ギャップ補助層2101が形成された状態とすることができる。ギャップ補助層2101は、リブ構造体19010の位置に合わせ、1つのミラー装置となる領域の境界部分に配置されればよい。
次に、図84Cに示すように、SOI層1901の上にマスクパターン2102が形成された状態とする。次いで、マスクパターン2102をマスクとし、SOI層1901がエッチング加工された状態とする。このエッチングでは、例えばリアクティブイオンエッチングなどの方向性エッチングにより行い、エッチング箇所において絶縁層1950の表面を露出させる。このエッチングにより、図84Dに示すように、基部1910,可動枠1920,ミラー(ミラー構造体)1930,及び図示していない連結部,ミラー連結部が形成され、ミラー基板の基本的な構成が形成された状態が得られる。
次に、マスクパターン2102を除去した後、シリコン基部1940aの裏面にマスクパターン(図示せず)が形成された状態とする。マスクパターンは、ミラーアレイを構成する1つのミラー部分に対応するパターンであり、ミラー毎に各々1つの正方形の領域が開口しているパターンである。この後、上記マスクパターンをマスクにし、CF系ガスを用いたドライエッチングにより、シリコン基部1940aを絶縁層1950が露出するまでエッチングされた状態とする。なお、上記エッチングにおいて、ウエットエッチングを用いるようにしてもよい。
この後、上記マスクパターンを除去する。マスクパターンは、灰化処理や適当なエッチング方法により除去すればよい。次に、形成した開口領域の内部に露出している部分の絶縁層1950が除去された状態とすることで、図84Eに示すように、枠部1940が形成された状態が得られる。なお、図84A〜図84Eでは、ギャップ補助層が形成された後、連結部及びミラー連結部などが形成されるようにしたが、これに限るものではない。高精度な微細パターンである連結部及びミラー連結部などが形成された後、ギャップ補助層が形成されるようにしてもよい。
次に、本参考例におけるミラー装置を構成するミラー基板1900の他の製造方法例について説明する。まず、図85Aに示すように、面方位が(100)であるシリコン基部1940aの上に、例えば膜厚1μmの酸化シリコンからなる絶縁層1950と、膜厚10μmのシリコン単結晶層(SOI層)1901とが形成されているSOI基板を用意する。これらは、図84A〜図84Eを用いて説明した製造方法と同様である。
次に、図85Bに示すように、SOI層1901上にマスクパターン2111が形成された状態とする。次いで、マスクパターン2111をマスクとしてSOI層1901がエッチング加工された状態とする。このエッチングでは、例えばリアクティブイオンエッチングなどの方向性エッチングにより行い、エッチング箇所において絶縁層1950の表面を露出させる。このエッチングにより、図85Cに示すように、基部1910,可動枠1920,ミラー(ミラー構造体)1930,及び図示していない連結部,ミラー連結部が形成され、ミラー基板の基本的な構成が形成された状態が得られる。
次に、マスクパターン2111を除去した後、図85Dに示すように、基部1910(SOI層1901)の上に、例えば、ガラスから構成されたギャップ補助層2101aが形成された状態とする。例えば、公知の陽極接合により、シリコンからなる基部1910の上にガラスからなるギャップ補助層2101aが接合された状態が得られる。
次に、シリコン基部1940aの裏面にマスクパターンが形成された状態とする。マスクパターンは、ミラーアレイを構成する1つのミラー部分に対応するパターンであり、ミラー毎に各々1つの正方形の領域が開口しているパターンである。この後、上記マスクパターンをマスクにし、CF系ガスを用いたドライエッチングにより、シリコン基部1940aを絶縁層1950が露出するまでエッチングされた状態とする。なお、上記エッチングにおいて、ウエットエッチングを用いるようにしてもよい。
この後、上記マスクパターンを除去する。マスクパターンは、灰化処理や適当なエッチング方法により除去すればよい。次に、形成した開口領域の内部に露出している部分の絶縁層1950が除去された状態とすることで、図85Eに示すように、枠部1940が形成された状態が得られる。
[第22の参考例]
次に、本発明の第22の参考例について説明する。
図11〜図13に示すような従来のミラー装置8200の構成要素、特に、可動枠8220、ミラー8230、可動枠連結部8211a,8211b及びミラー連結部8221a,8221b等のミラー基板8201の構成要素(以下、可動部材という)は、ミラー8230をミラー回転軸及び可動枠回転軸を中心に回動可能とするために隣接する部材と離間して配設されている。このため、外部からミラー装置8200に衝撃が加わると、ミラー基板8201の可動部材は、隣接する部材と衝突して破損する恐れがある。したがって、ミラー基板8201の可動部材とこの可動部材に隣接する部材の間隔は、外部から衝撃を受けても隣接する構成要素と衝突しないように設定する必要がある。
そこで、本参考例は上述したような課題を解決するためになされたものであり、耐衝撃性に優れたミラー装置及びミラーアレイを提供することを目的とするものである。
以下、図面を参照して本参考例について詳細に説明する。本参考例に係るミラーアレイは、このミラーアレイを構成するミラー措置におけるミラー基板の可動部材とこの可動部材と隣接する部材との間隔を所定の値に設定するものである。本参考例を示す図88において、図14,図15,16A,図16Bに示すミラー装置と同等の構成要素には、同じ名称及び符号を付し、適宜説明を省略する。
本参考例に係るミラーアレイを構成するミラー装置は、ミラー基板200における次の4つの間隔d1〜d4を所定の値に設定するものである。
間隔d1は、図88の符号aの拡大図によく示されるように、枠部210の開口210aの縁部と、可動枠220の円弧状の縁部との間隔である。
間隔d2は、図88の符号bの拡大図によ示されるように、ミラー連結部221bと第2切り欠き部223bとの間隔、具体的には、ミラー連結部221bのミラー回動軸と直交する方向の端部と、この端部に隣接する第2切り欠き部223bのミラー回動軸に平行な縁部との間隔である。また、ミラー連結部221bのミラー回動軸に沿った方向の端部と、この端部に隣接する第2切り欠き部223bのミラー回動軸と直交する縁部との間隔も含まれる。
なお、間隔d2には、ミラー連結部221aと第2切り欠き部223aとの間隔、可動枠連結部211aと第1切り欠き部222aとの間隔、及び、可動枠連結部211bと第1切り欠き部222bとの間隔も含まれる。それぞれの具体的な内容は次の通りである。
ミラー連結部221aと第2切り欠き部223aとの間隔とは、ミラー連結部221aのミラー回動軸と直交する方向の端部と、この端部に隣接する第2切り欠き部223aのミラー回動軸に平行な縁部との間隔である。また、ミラー連結部221aのミラー回動軸に沿った方向の端部と、この端部に隣接する第2切り欠き部223aのミラー回動軸と直交する縁部との間隔も含まれる。
可動枠連結部211aと第1切り欠き部222aとの間隔とは、可動枠連結部211aの可動枠回動軸と直交する方向の端部と、この端部に隣接する第1切り欠き部222aの可動枠回動軸に平行な縁部との間隔である。また、可動枠連結部211aの可動枠回動軸に沿った方向の端部と、この端部に隣接する第1切り欠き部222aの可動枠回動軸と直交する縁部との間隔も含まれる。
可動枠連結部211bと第1切り欠き部222bとの間隔とは、可動枠連結部211bの可動枠回動軸と直交する方向の端部と、この端部に隣接する第1切り欠き部222bの可動枠回動軸に平行な縁部との間隔である。また、可動枠連結部211bの可動枠回動軸に沿った方向の端部と、この端部に隣接する第1切り欠き部222bの可動枠回動軸と直交する縁部との間隔も含まれる。
間隔d3は、図88の符号cの拡大図によく示されるように、可動枠220の開口220aの縁部と、ミラー230の縁部との間隔である。
間隔d4は、図88の符号dの拡大図によ示されるように、ミラー連結部221aと可動枠220との間隔、具体的には、ミラー回動軸に沿うように形成され、ミラー230と接続される側のミラー連結部221aの端部と、可動枠220の第2切り欠き部223aと開口220aとを連通する連通部224aの縁部との間隔である。
なお、間隔d4は、ミラー連結部221aと対となるミラー連結部221bと可動枠220との間隔、具体的には、ミラー回動軸に沿うように形成され、ミラー230と接続される側のミラー連結部221bの端部と、可動枠220の第2切り欠き部223bと開口220bとを連通する連通部224bの縁部との間隔も含まれる。
このような間隔d1〜d4は、次のように設定される。
ミラー装置の可動部分の質量をm[kg]、その可動部分に加わる加速度をG[m/s2]とすると、可動部分には、mGの力が加わることになる。このときの可動部分の変位量をd、可動部分を支持している可動枠連結部211a,211b及びミラー連結部221a,221bのバネ定数をkとすると、m、G、k及びdの関係は下式(15)で表される。
mG=kd ・・・(15)
式(15)より、変位量dは、下式(16)により算出することができる。
d=mG/k ・・・(16)
よって、間隔d1〜d4は、式(16)の変位量dの値より大きくなるように設定する。これにより、本参考例に係るミラーアレイに加速度Gが加わった場合でも、ミラー基板200の可動部材は、この可動部材と隣接する部材に接触しないので、破損するのを防ぐことができる。
なお、加速度Gの値は、本参考例に係るミラーアレイに付与したい耐衝撃性の値に基づいて適宜自由に設定することができる。
ここで、ミラー装置の可動部分とは、可動枠220及びミラー230を意味する。可動枠220は、開口220a、第1切り欠き部222a,222b及び第2切り欠き部223a,223b等の開口した部分が存在するが、より確実にミラー装置の破損を防ぐためにも、その開口した部分が存在しない完全円として質量を設定する。したがって、可動部分の質量mは、可動枠220の半径をr、可動枠220及びミラー230を構成する材料の密度をρ、可動枠220及びミラー230の厚さをhとすると、πr2ρhで表される。
なお、ミラー連結部221a,221bは、ミラー230を支持するものであり、ミラー230に加わる加速度によって変位する。したがって、ミラー連結部221a,221bに関連する間隔、すなわち間隔d2のうちミラー連結部221a,221bに関連するもの並びに間隔d3及びd4は、質量mにミラー230の質量を代入して式(16)より算出された変位dよりも大きくなるように設定すればよい。本参考例では、より確実にミラー装置の破損を防ぐためにも、式(16)の質量mには、上述したように可動枠220の半径rを用いてπr2ρhで算出される値を使用する。
また、可動枠連結部211a,211b及びミラー連結部221a,221bを構成するつづら折りのトーションバネは、図89に示すようにx方向及びy方向に変位する。このため、可動枠連結部211a,211bとミラー連結部221a,221bのバネ定数kは、x方向のバネ定数kx及びy方向のバネ定数kyについて考慮する必要がある。そこで、本参考例に係るミラーアレイでは、バネ定数kx、kyのうち最も小さい値を採用し、上式(16)に代入する。これにより、ミラー装置にGの加速度が加わった場合でも、ミラー基板200の可動部材が、この可動部材と隣接する部材に接触するのをより確実に防ぐことができる。したがって、本参考例に係るミラーアレイは、耐衝撃性に優れている。
なお、本参考例では、一対の可動枠連結部211a,211bで可動枠230を支持しており、一対のミラー連結部221a,221bでミラー230を支持している。したがって、上式(15),(16)のバネ定数kは、一対の可動枠連結部211a,211bのバネ定数または一対のミラー連結部221a,221bのバネ定数の値を示している。
また、予め間隔d1〜d4を設定しておき、可動枠連結部211a,211bとミラー連結部221a,221bのバネ定数を算出するようにしてもよい。この場合、式(15)を変形した式(17)に、ミラー装置の可動部分の質量m及びその可動部分に加わる加速度Gとともに、予め設定した間隔d1〜d4の値を変位量dに代入することにより、バネ定数kを算出する。この算出したバネ定数kに基づいて可動枠連結部211a,211b及びミラー連結部221a,221bの形状やサイズを設定し、可動枠連結部211a,211b及びミラー連結部221a,221bの各方向のバネ定数kx、kyが式(17)により算出したバネ定数kを上回るようにする。このようにしても、ミラー基板200の可動部材が、この可動部材と隣接する部材に接触するのを防ぐことができる。
k=mG/d ・・・(17)
次に、具体的なバネ定数の設定例について説明する。
例えば、ミラー装置の可動部分の質量が1.6×10-8[kg]、ミラー装置に加わる加速度を100G、間隔d1〜d4を10[μm]とする場合、バネ定数kは、次のように算出される。
(1.6×10-8)×(100×9.81)/10×10-6≒1.57
よって、可動枠連結部211a,211b及びミラー連結部221a,221bのバネ定数が1.57を上回るように可動枠連結部211a,211b及びミラー連結部221a,221bの形状等を設定することにより、ミラー基板200の可動部材が、この可動部材と隣接する部材に接触するのを防ぐことができる。
次に、本参考例に係るミラーアレイの製造方法について説明する。
ここで、ミラー基板200は、SOI(Silicon On Insulator)基板から形成される。
まず、SOI基板の埋め込み絶縁層250が形成されている側(主表面:SOI層)より、公知のフォトリソグラフィ技術とDEEP RIEなどのエッチングによって、単結晶シリコン層に枠部210、可動枠連結部211a,211b、可動枠220、ミラー連結部221a,221b及びミラー230の形状に対応する溝を形成する。
このとき、上述した間隔d1〜d4が、上式(16)に基づいて算出した変位量d以上となるように上記溝を形成する。具体的には、上記溝の形状等から可動枠220とミラー230等からなる可動部材の質量mを算出し、上記溝の形状等から可動枠連結部211a,211b及びミラー連結部221a,221bのバネ定数kを算出し、ミラーアレイに耐えさせたい加速度Gを設定し、これらの値を上式(16)に代入して変位量dを算出し、間隔d1〜d4が算出した変位量d以上となるように上記溝を形成する。
次いで、上記溝に対応する所定の領域が開口したレジストパターンをSOI基板の裏面に形成し、SF6などを用いたドライエッチングによりSOI基板の裏面から選択的にシリコンをエッチングする。このエッチングでは、埋め込み絶縁層250をエッチングストッパ層として用い、SOI基板の裏面に開口部及び枠状部材240を形成する。なお、上記シリコンのエッチングは、水酸化カリウムなどを用いたウエットエッチングにより行うようにしてもよい。
次いで、埋め込み絶縁層250の上記開口部に露出している領域を、CF4ガスなどを用いたドライエッチングにより除去する。これにより、ミラー基板200が形成される。なお、上記埋め込み絶縁層250の除去は、フッ酸を用いて除去するようにしてもよい。
一方、電極基板300は、例えばシリコン基板から形成される。
まず、シリコン基板をシリコン窒化膜またはシリコン酸化膜からなる所定のマスクパターンをマスクとし、水酸化カリウム溶液で選択的にエッチングを行う。これを繰り返し行うことにより、基部310、第1〜3テラス321,322,323、ピボット330、外堀トレンチ350、凸部360a,360bが形成された状態とする。
次に、シリコン基板のエッチングを行った側の面を酸化し、シリコン酸化膜を形成する。
次に、シリコン酸化膜上に蒸着法などにより金属膜を形成し、この金属膜を公知のフォトリソグラフィ技術とエッチング技術とによりパターニングし、電極340a〜340d、引き出し線341a〜341d及び配線370を形成する。
これにより、上述した形状を有する電極基板300が形成される。
この後、ミラー基板200及び電極基板300を貼り合わせることにより、電極340a〜340dに対する電界印加によってミラー230を可動するミラー装置を有するミラーアレイが製造できる。
このように製造されたミラーアレイは、加速度Gが加わった場合でも、ミラー基板200の可動部材がこの可動部材と隣接するミラー基板200の他の構成要素と衝突しないので、ミラー装置が破損することを防ぐことができる。よって、本参考例に係るミラーアレイは、耐衝撃性に優れている。
なお、本参考例では、可動枠220に形成した第1切り欠き部222a,222b内に可動枠連結部211a,211bを設けるようにしたが、枠部210に形成した切り欠き内に可動枠連結部211a,211bを設けるようにしてもよい。この場合の可動部材とこの可動部材と隣接する部材との間隔について、図90を参照して説明する。図90において、図88に示すミラー基板200と同等の構成要素には同じ名称及び符号を付して適宜説明を省略する。
図90に示すミラー基板200において、一対の可動枠連結部211a,211bは、枠部210の一対の第3切り欠き部212a,212b内に設けられており、つづら折りの形状を有するトーションバネから構成され、枠部210と可動枠220とを連結している。これにより、可動枠220は、一対の可動枠連結部211a,211bを通る回動軸(可動枠回動軸)を中心に、回動可能とされている。
このような図90に示すミラーアレイの場合は、ミラー基板200における次の5つの間隔d1〜d5を式(16)により算出した値より大きくなるように設定する。
なお、間隔d1,d3,d4については、図88に示すミラー基板200の場合と同様であるので、適宜説明を省略する。
間隔d2は、図90の符号bの拡大図によ示されるように、ミラー連結部221bと第2切り欠き部223bとの間隔、具体的には、ミラー連結部221bのミラー回動軸と直交する方向の端部と、この端部にそれぞれ隣接する第2切り欠き部223bのミラー回動軸に平行な縁部との間隔である。また、ミラー連結部221bのミラー回動軸に沿った方向の端部と、この端部に隣接する第2切り欠き部223bのミラー回動軸と直交する縁部との間隔も含まれる。
なお、間隔d2には、ミラー連結部221aと第2切り欠き部223aとの間隔、可動枠連結部211aと第3切り欠き部212aとの間隔,可動枠連結部211bと第3切り欠き部212bとの間隔も含まれる。それぞれの具体的な内容は次の通りである。
ミラー連結部221aと第2切り欠き部223aとの間隔とは、ミラー連結部221aのミラー回動軸と直交する方向の端部と、この端部に隣接する第2切り欠き部223aのミラー回動軸に平行な縁部との間隔である。また、ミラー連結部221aのミラー回動軸に沿った方向の端部と、この端部に隣接する第2切り欠き部223aのミラー回動軸と直交する縁部との間隔も含まれる。
可動枠連結部211aと第3切り欠き部212aとの間隔とは、可動枠連結部211aの可動枠回動軸と直交する方向の端部と、この端部に隣接する第3切り欠き部212aの可動枠回動軸に平行な縁部との間隔である。また、可動枠連結部211aの可動枠回動軸に沿った方向の端部と、この端部に隣接する第3切り欠き部212aの可動枠回動軸と直交する縁部との間隔も含まれる。
可動枠連結部211bと第3切り欠き部212bとの間隔とは、可動枠連結部211bの可動枠回動軸と直交する方向の端部と、この端部に隣接する第3切り欠き部212bの可動枠回動軸に平行な縁部との間隔である。また、可動枠連結部211bの可動枠回動軸に沿った方向の端部と、この端部に隣接する第3切り欠き部212bの可動枠回動軸と直交する縁部との間隔も含まれる。
間隔d5は、図90の符号eの拡大図によく示されるように、可動枠連結部211aと枠部210との間隔、具体的には、可動枠回動軸に沿うように形成され、可動枠220と接続される側の可動枠連結部211aの端部と、枠部210の第3切り欠き部212aと開口210aとを連通する連通部213aの縁部との間隔である。
なお、間隔d5は、可動枠連結部211aと対となる可動枠連結部211bと枠部210との間隔、具体的には、可動枠回動軸に沿うように形成され、可動枠220と接続される側の可動枠連結部211bの端部と、枠部210の第3切り欠き部212bと開口210aとを連通する連通部213bの縁部との間隔も含まれる。
このようなミラーアレイにおいても、間隔d1〜d5を式(16)の変位量dの値より大きくなるように設定することにより、加速度Gが加わった場合でも、ミラー基板200の可動部材は、この可動部材と隣接する部材に接触しないので、破損するのを防ぐことが可能となる。
以上説明したように、本参考例によれば、ミラーの質量をm、ミラー装置またはミラーアレイに加わる加速度をG、弾性部材のバネ定数をkとしたとき、ミラーとこのミラーを支持する枠部材との間隔をmG/k以上と設定することにより、ミラー装置またはミラーアレイにGの加速度が加わった場合でも、ミラーが枠部材と衝突せず、ミラー装置が破損することを防ぐことができる。よって、本発明のミラー装置及びミラーアレイは、耐衝撃性に優れている。
[第1の実施例]
以下、本発明の第1の実施例について説明する。
大規模光スイッチを実現するハードウェア技術として、2軸回転方式の3D−MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)光スイッチが注目されている。従来の光スイッチを図91に示す。この図91において、8511aは入力光ファイバアレイ、8511bは出力光ファイバアレイ、8512aは入力側コリメータアレイ、8512bは出力側コリメータアレイ、8513aは入力側ミラーアレイ、8513bは出力側ミラーアレイである。光ファイバアレイ8511a,8511bは、それぞれ2次元的に配列された複数の光ファイバからなり、コリメータアレイ8512a,8512bは、それぞれ2次元的に配列された複数のマイクロレンズからなり、ミラーアレイ8513a,8513bは、それぞれ2次元的に配列された複数のミラー装置8514a,8514bからなる。図91における矢印は光ビームの進行方向を示している。
入力光ファイバアレイ8511aのある入力ポートから出射した光信号は、入力側コリメータアレイ8512aのマイクロレンズにより光ビームに変換され、入力側ミラーアレイ8513a、出力側ミラーアレイ8513bで順次反射され、出力側コリメータアレイ8512bのマイクロレンズにより集光され、出力光ファイバアレイ8511bの光ファイバに導かれる。ミラーアレイ8513a,8513bを構成するミラー装置8514a,8514bのミラーは、2軸周りに回動可能であり、入射光をミラーの傾斜角に応じた所望の方向に反射させることができる。したがって、入力側ミラーアレイ8513aと出力側ミラーアレイ8513bのミラーの傾斜角を適当に制御することにより、2次元的に配列された任意の入力光ファイバと出力光ファイバ間を接続することができ、光路の切り替えを行うことができる。
以上の光スイッチの構成部品として最も特徴的なものがミラーアレイ8513a,8513bである。このミラーアレイ8513a,8513bを構成するミラー装置8514a,8514bの構造は、図107,図108で示した通りである。
図107、図108に示したミラー装置では、静電力によるモーメントに対するミラー8103の傾斜角θには方向依存性はない。x軸回りの回動でもy軸回りの回動でも、トーションバネ8104,8105の構造が同じで、静電力によるモーメントが同じであれば、ミラー8103は同じ挙動を示す。また、x軸とy軸の間の任意の方向への回動についても、ミラー8103は同じモーメントであれば同じ傾斜角θを示す。
ところが、ミラー8103の2軸方向の回動を制御する静電力を与えるためにミラー8103と対向して配されている駆動電極8003−1〜8003−4は4分割で構成されるのが普通で、かつ電源電圧には通常上限があり、そのためにミラー8103の傾斜角θに方向依存性が発生する。もちろん、ミラー8103の回動を4つの駆動電極8003−1〜8003−4に印加する駆動電圧で制御するので、ミラー8103の傾斜角θの異方性は傾斜角θが小さい領域では問題にならない。電源電圧に制限があり、ある有限な傾斜角θまでしかミラー8103を回動させることができないとき、ミラー8103の傾斜角θは、4分割駆動電極8003−1〜8003−4の分割線と平行な方向(図107のx軸、y軸の方向)に回動する場合は大きく、分割線に対して45度の方向に回動する場合は小さくなる。その理由は、駆動電極8003−1〜8003−4の分割線と平行な方向では2つの駆動電極でミラー8103を静電力で引き付けることができるのに対して、分割線に対して45度の方向では1つの駆動電極のみでミラー8103を引き付けなければならないからである。
したがって、図91のようにミラーアレイ8513aと8513bを対向させたとき、ミラーアレイ8513aに配設された入力側ミラー装置8514aのミラー8103で走査可能な出力側ミラーアレイ8513b上の領域(ミラー8103の反射光が届く領域)301は、図92に示すように入力側ミラー装置8514aの駆動電極8003−1〜8003−4の分割線に対して平行な方向では広く、分割線に対して45度の方向では狭くなることが分かる。ミラーアレイ8513bに配設された出力側ミラー装置8514bのミラー8103で走査可能な入力側ミラーアレイ8513a上の領域についても同様である。
これに対して、出力側ミラーアレイ8513bの矩形の領域8602内にミラー8103を配置すると、走査可能領域8601より外側の領域に配置されたミラー8103も有効に機能させる必要があるので、入力側ミラー装置8514aのミラー8103をより大きく傾けることになり、入力側ミラー装置8514aの駆動電極8003−1〜8003−4に印加する駆動電圧をより高くする必要がある。ミラー制御のための駆動電圧を高くすることは、電源の仕様を変更するだけでなく、配線の絶縁性やコネクタ及びケーブル等の耐圧を高めねばならず、技術的な困難が増し、コストが高くなるという問題点があった。
一方、出力側ミラーアレイ8513bの矩形の領域303内にミラー8103を配置すると、入力側ミラー装置8514aのミラー8103を大きく傾ける必要がなくなるので、駆動電圧を低電圧化することができる。しかし、図92に示した走査可能領域8601のうち斜線部にはミラー8103を配置しないので、走査可能領域8601を有効利用していないことになる。光スイッチには多チャネル化が要求されるので、走査可能領域8601を有効利用して、ミラー8103を可能な限り多く配置することが好ましい。
言うまでもなく、駆動電極を4分割でなく、8分割や16分割といったように分割数を増やして、ミラー8103の回動する方向にかかわらず全駆動電極面積の半分に当たる駆動電極に電圧を印加すれば、ミラー8103の傾斜角θの異方性は発生しない。しかし、ミラーアレイ8513a,8513bにおいては数十個から数百個のミラー8103を同時に制御する必要があるので、1つのミラー8103のために用意する駆動電極の数は制御に必要な最低数にしたいという強い要請がある。100個のミラー8103を配したミラーアレイ8513a,8513bでは、4分割駆動電極で少なくとも400本の配線が必要であり、この配線の処理は容易ではない。駆動電極の分割数をさらに増やすと、配線数が現実的ではなくなり、製造の困難性は極めて高くなる。
以上のように、従来の光スイッチでは、ミラーアレイ8513a,8513bに配置するミラー装置8514a,8514bのミラー8103の傾斜角θの異方性により、ミラー装置8514a,8514bの駆動電極8003−1〜8003−4に印加する駆動電圧を高くしなければならないという問題点があり、ミラー配置領域の縮小によって駆動電圧を下げようとすると、ミラー配置の効率が悪くなるという問題点があった。また、駆動電圧の低減を駆動電極の多分割化で実現しようとすると、製造が困難になるという問題点があった。
そこで、本実施例は、上記課題を解決するためになされたもので、光スイッチに設けられる一対のミラーアレイにおいて、駆動電圧の高電圧化や製造の難しさを回避しつつ、ミラーを効率的に配置することを目的とするものである。
次に、図93を参照して本実施例の光スイッチについて説明する。図93において、2201aは入力光ファイバアレイ、2201bは出力光ファイバアレイ、2202aは入力側コリメータアレイ、2202bは出力側コリメータアレイ、2203aは入力側ミラーアレイ、2203bは出力側ミラーアレイである。光ファイバアレイ2201a,2201bは、それぞれ2次元的に配列された複数の光ファイバからなり、コリメータアレイ2202a,2202bは、それぞれ2次元的に配列された複数のマイクロレンズからなり、ミラーアレイ2203a,2203bは、それぞれ2次元的に配列された複数のミラー装置2214a,2214bからなる。図93における矢印は光ビームの進行方向を示している。
入力光ファイバアレイ2201aの光ファイバと入力側コリメータアレイ2202aのマイクロレンズとは、矩形の領域2204a内にマトリクス状に配置され、領域2204aに対応する入力側ミラーアレイ2203aの矩形の領域2205a内にミラー装置2214aがマトリクス状に配置されている。同様に、出力光ファイバアレイ2201bの光ファイバと出力側コリメータアレイ2202bのマイクロレンズとは、矩形の領域2204b内にマトリクス状に配置され、領域2204bに対応する出力側ミラーアレイ2203bの矩形の領域2205b内にミラー装置2214bがマトリクス状に配置されている。
従来と同様に、入力光ファイバアレイ2201aの入力ポートから出射した光信号は、入力側コリメータアレイ2202aのマイクロレンズにより光ビームに変換され、入力側ミラーアレイ2203a、出力側ミラーアレイ2203bで順次反射され、出力側コリメータアレイ2202bのマイクロレンズにより集光され、出力光ファイバアレイ2201bの光ファイバに導かれる。
本実施例のミラー装置2214a,2214bの構造を、図94に示す。なお、図94において、図1に示すミラー装置と同等の構成要素には、同じ名称及び符号を付し、適宜説明を省略する。
図91に示した従来の光スイッチでは、ミラー装置8514aが配置されるミラーアレイ8513aの矩形の領域8515aの1組の対辺とこれと対向するミラー装置8514bの駆動電極8003−1〜8003−4の第1の分割線(例えばx軸の方向)とが平行で、かつ矩形の領域8515aの他の1組の対辺とミラー装置8514bの駆動電極8003−1〜8003−4の第2の分割線(例えばy軸の方向)とが平行であった。同様に、ミラー装置8514bが配置されるミラーアレイ8513bの矩形の領域8515bの1組の対辺とミラー装置8514aの駆動電極8003−1〜8003−4の第1の分割線とが平行で、かつ矩形の領域8515bの他の1組の対辺とミラー装置8514aの駆動電極8003−1〜8003−4の第2の分割線とが平行であった。
これに対して、本実施例では、図95に示すように、ミラー装置2214bが配置されるミラーアレイ2203bの矩形の領域2205bの1組の対辺(例えば図95の2206,2207)とこれと対向するミラー装置2214aの駆動電極103−1〜103−4の第1の分割線(例えばx軸の方向)とが45度の角度で交差し、かつ矩形の領域2205bの他の1組の対辺(例えば図95の2208,2209)とミラー装置2214aの駆動電極103−1〜103−4の第2の分割線(例えばy軸の方向)とが45度の角度で交差するように、ミラー装置2214aが配置される。
同様に、本実施例では、ミラー装置2214aが配置されるミラーアレイ2203aの矩形の領域2205aの1組の対辺とこれと対向するミラー装置2214bの駆動電極103−1〜103−4の第1の分割線とが45度の角度で交差し、かつ矩形の領域2205aの他の1組の対辺とミラー装置2214bの駆動電極103−1〜103−4の第2の分割線とが45度の角度で交差するように、ミラー装置2214bが配置される。
本実施例のミラーの配置方法は、ミラー装置2214a,2214bの配置領域2205a,2205bを、x軸、y軸に対して平行な方向には広くとり、x軸、y軸に対して45度の方向には狭くすることを意味する。すなわち、本実施例では、ミラー装置2214a,2214bの配置領域2205a,2205bを、x軸、y軸に対して45度の方向については図92の領域8603と同じ広さとしつつ、x軸,y軸に対して平行な方向については領域8601の斜線部まで広げることを意味する。領域8601はミラー装置2214a,2214bのミラー153の走査可能領域であるから、駆動電極103−1〜103−4に印加する最大電圧を高くする必要はない。
したがって、本実施例では、ミラーアレイ2203a,2203bのミラー203(ミラー装置2214a,2214b)の配置をミラー153の傾斜角θの異方性を考量して最適化することにより、駆動電圧を高電圧化することなく、ミラー153の走査可能領域を有効利用することができ、効率的なミラー配置を実現することができる。また、本実施例では、8分割や16分割といった多分割の駆動電極を使用しておらず、駆動電極103−1〜103−4の分割線の方向を変えるだけでよいので、従来と同等の製造の容易さでミラーアレイ2203a,2203bを実現することができる。
以上説明したように、本実施例によれば、第1のミラーアレイの第1の駆動電極の分割線の方向によって決まる第1のミラーの傾斜角の異方性に応じて、第2のミラーアレイのミラー配置領域を設定すると共に、第2のミラーアレイの第2の駆動電極の分割線の方向によって決まる第2のミラーの傾斜角の異方性に応じて、第1のミラーアレイのミラー配置領域を設定することにより、第1の駆動電極と第2の駆動電極に印可する駆動電圧を高電圧化することなく、第1のミラーと第2のミラーの走査可能領域を有効利用することができ、効率的なミラー配置を実現することができる。また、本発明では、8分割や16分割といった多分割の駆動電極を使用しておらず、従来と同等の製造の容易さでミラーアレイを実現することができる。
[第2の実施例]
第1の実施例では、ミラーアレイ2203a,2203bのミラー153の配置をミラー153の傾斜角θの異方性を考量して最適化したが、図96に示すように駆動電極103−1〜103−4を階段状にすると駆動電圧を低減できることが知られている。その理由は、ミラー153の傾斜角θを犠牲にすることなく、駆動電極103−1〜103−4とミラー153との距離を狭めることができるからである。図96に示したミラー装置では、下部基板101の中央部に段丘状の突出部120を形成して、この突出部120に駆動電極103−1〜103−4を設けている。
理想的には、図97に示すように、ミラー153の中心の位置に頂点がある円錐形の突出部120を形成して、この突出部120の斜面に駆動電極103−1〜103−4を形成すると、高いプルイン角と低電圧駆動が実現できる。プルイン角とは、これ以上の傾斜角θではミラー153を静的には安定に制御できない角度のことである。つまり、プルイン角以上の傾斜角θでは、静電力がトーションバネの復元力に勝って、ミラー153が駆動電極103−1〜103−4に引き付けられてしまう。円錐形の突出部120に駆動電極103−1〜103−4を形成した場合、電圧印加していない状態でのミラー153と突出部120の斜面とのなす角のおよそ1/3がプルイン角となる。
実際にはこのような円錐構造をつくることは難しいため、シリコンの異方性エッチングを用いて、円錐構造を近似した段丘状の突出部120を作製し、この段丘状の突出部120に駆動電極103−1〜103−4を形成している。異方性エッチングは、シリコンのKOHに対するエッチングレートが結晶方位によって極端に異なることを利用したものである。そのため、掘り込む方向にはシリコンの(100)面が露出し、(111)面が突出部120の斜面を形成する。斜面の傾斜角は57.4度である。任意の斜面角度を近似的に得るため何段階かに分けて異方性エッチングを行い、所望の傾斜角に近い段丘状の突出部120を形成する。
ここで、突出部120の各段の上面の形状は、異方性エッチングの制約により図98の106,107に示すように平面視略正方形である。このように上面121,122が略正方形であるため、理想的な円錐の斜面とは異なり、ミラー153と斜面が成す角度は方向によって異なる。すなわち、突出部120の上面121の1組の対辺と直交する方向(例えば図98のz軸の方向)及び上面121の他の1組の対辺と直交する方向(図98のw軸の方向)については、ミラー153と突出部120の斜面とのなす角は大きいが、z軸、w軸に対して45度の方向(上面121,122の角にあたる方向)については、ミラー153と突出部120の斜面とのなす角が小さくなる。その結果、z軸、w軸に対して45度の方向にミラー153が回動するときのプルイン角は、ミラー153がz軸、w軸の方向に回動する場合に比べて小さくなることが分かる。実際に、図96のような構造のサンプルを作製して測定して見ると、z軸、w軸に対して45度の方向への回動ではプルイン角度が20%程度低くなる。
プルイン角が充分に大きく、ミラーアレイ内の任意の箇所に対して光パスを形成可能であれば問題ないのであるが、プルイン角を大きくすることは、突出部120の斜面の角度を大きくすることになり、突出部120の各段の高低差を大きくすることになる。突出部120の各段の高低差を大きくするには、異方性エッチングの加工深さを大きくしなければならない。また、高低差の大きな構造物の表面に駆動電極103−1〜103−4を形成することになるので、製造が困難になる。このように、突出部120の形状でプルイン角を確保しようとすると、製造が極めて困難になる。また、プルイン角を大きくしようとすると、駆動電圧を高くする必要がある。
したがって、プルイン角は必要最小限にして設計することが現実には要求され、プルイン角、すなわちミラー153を傾斜可能な最大の角度が駆動電極103−1〜103−4の立体形状によって方向依存性を持つことを許容して設計せざるを得ない。この方向依存性により、例えば入力側ミラーアレイのミラー153で走査可能な出力側ミラーアレイ上の領域は、z軸、w軸の方向では広く、z軸、w軸に対して45度の方向では狭くなる。
そこで、本実施例では、第1の実施例の構成に加えて、さらに駆動電極103−1〜103−4の分割線の方向をz軸、w軸と平行にする。例えば、図99に示すように、突出部120とその周囲に駆動電極103−1〜103−4を形成する場合、駆動電極103−1〜103−4の第1の分割線(x軸の方向)とz軸とを平行とし、駆動電極103−1〜103−4の第2の分割線(y軸の方向)とw軸とを平行とする。つまり、駆動電極103−1〜103−4は、突出部120の4隅とこの4隅に続く下部基板101の上面に形成されることになる。
以上により、駆動電極103−1〜103−4の分割線の方向に応じて決まるミラー153の走査可能領域(図92の301)と、駆動電極103−1〜103−4の立体形状に応じて決まるミラー153の走査可能領域とが重なる範囲を最大にすることができ、この2種類の走査可能領域によって決まるミラー153の最終的な走査可能領域の広さを最大にすることができる。その結果、ミラーアレイ2203a,2203bのミラー配置領域2205a,2205bの広さを最大にすることができる。
以上説明したように、本実施例によれば、平面視略正方形の上面を有する段丘状の突出部に4分割で形成した4分割駆動電極を使用する場合に、突出部の上面の1組の対辺と直交する方向を第1の分割線として設定すると共に、上面の他の1組の対辺と直交する方向を第2の分割線として設定し、突出部の4隅に電極を形成することにより、第1のミラーアレイと第2のミラーアレイのミラー配置領域の広さを最大にすることができる。
[第23の参考例]
次に、本発明の第23の参考例について説明する。
図23で示すような従来の光スイッチでは、ミラー8230の平坦度が、接続損失やクロストークに影響を及ぼすことが報告されている(Xiaoming Zhu and Joseph M. Kahn、Computing Insertion Loss in MEMS Optical Switches Caused By Non-Flat Mirrors、CLEO2001 CtuM43、2001年5月8日、p.185−186)。このため、図13に示すような従来のミラー装置8200のミラー基板8201では、平坦度の優れた単結晶シリコンから形成しているが、このシリコンは通信波長帯の透過性が高いので、上述したようにミラー8230の反射面に金などの金属層を設けるのが一般である。しかしながら、この金属層をミラー8230上に形成する際にミラー8230は加熱されるので、金属層を形成後にミラー8230を常温下におくと、金属層が冷却されて収縮する。このため、金属層とシリコンとの間に内部応力が生じ、ミラー8230に反りが発生してしまう。特に、シリコンと金との密着性を向上させるためにクロム層をさらに設ける場合には、内部応力がさらに高くなり、反りが大きくなってしまう。このため、ミラー8230の反りを制御することが従来より望まれていた。
また、光スイッチの低損失化は、ミラー8230の形状を平坦にするのみならず、凹面にすることによっても光学設計により実現することができる。しかしながら、従来では、ミラー230の反り量を自在に制御することが困難であった。
そこで、本参考例は、上述したような課題を解決するためになされたものであり、所望する反り量のミラーを製造することができるミラー装置の製造方法を提供することを目的とするものである。
次に、本参考例について図100A〜図100Cを参照して説明する。なお、本参考例に係るミラーアレイは、複数のミラー装置が2次元的にマトリクス状に配設されたものであり、このミラー装置のミラーの構造に特徴を有するものである。本参考例に係るミラーアレイにおいて、背景技術の欄で図11,図12,図29を参照して説明したミラー装置、ミラーアレイ及び光スイッチと同等の構成要素については、同一の符号及び名称を付し、適宜説明を省略する。
光スイッチ600を構成するミラーアレイ510,520に含まれるおけるミラー装置のミラー230は、基板層231と、この基板層231の枠状部材240が形成された側の面に形成された表面層232と、基板層231の表面層232と反対側の面に形成された裏面層233とから構成される。
基板層231は、例えば単結晶シリコンからなり、平面視略円形の形状を有し、ミラー連結部221a,221bにより可動枠220に対して回動可能に支持されている。
表面層232は、例えば、金、銀、アルミニウム等の金属から構成される金属層232aと、この金属層232aと基板層231との間に設けられ、クロム等からなる中間層232bとから構成される。このような表面層232は、基板層231と同等の形状及び大きさを有し、任意の厚さで形成される。
裏面層233は、例えば、金、銀、アルミニウム等の金属からなる金属層233aと、この金属層233aと基板層231との間に設けられ、クロム等からなる中間層233bとから構成される。このような裏面層233は、基板層231と同等の形状及び大きさを有し、任意の厚さで形成される。
このような構成からなるミラー230の反り量は、表面層232と裏面層233の厚さに依存する。これについて、図101A〜図102Cを参照して以下に説明する。なお、図101A、図101Bにおいて、縦軸は、ミラー230の反り量、横軸は、直径600μmのミラー230の直径方向の距離をそれぞれ示している。ここで、図101Aは、金からなる表面層232の厚さが0.23μmのときのミラー230の裏面側の反り量、図101Bは、金からなる表面層232の厚さが0.15μmのときのミラー230裏面側の反り量を示すものである。このような図101A,図101Bは、Zygo社のNewView200という3次元表面構造解析顕微鏡による測定結果である。
なお、ミラー230の反りとは、ミラー230が平面の状態、すなわちミラー230の曲率半径が無限大の状態から、ミラー230が曲面の状態、すなわちミラー230の曲率半径が無限大より小さい状態になることを言う。また、ミラー230の反り量とは、図101に示すようにミラー230を端部を基準(図101A,図101Bの縦軸において0の位置)としたとき、平面状態のミラー230と、反りが発生して曲面となったミラー230との間の、ミラー230の平面に垂直な方向における差分を意味する。
図101A,図101Bに示すように、ミラー230の反り量は、表面層232の厚さを厚くすればするほど大きくなるという性質がある。例えば、図101Aに示すように、表面層232の厚さが0.23μmのときは、ミラー230の反り量が最大で0.2μmを超えてしまう。一方、図101Bに示すように、表面層232の厚さが0.15μmのときは、ミラー230の反り量が最大でも0.1μmを下回る。したがって、表面層232と裏面層233の厚さ制御することによって、ミラー230の反り量を制御することが可能となる。
例えば、図102Aに示すように、表面層232を裏面層233よりも厚く形成すると、表面層232側が凹む、すなわち表面層232側に反った凹面状のミラー230を形成することができる。逆に、図102Bに示すように、裏面層233を表面層232よりも厚く形成すると、裏面層233側が凹む、すなわち裏面層233側に反った凸面状のミラー230を形成することが可能となる。また、図102Cに示すように、表面層232と裏面層233の厚さを同程度にすると、平坦なミラー230を形成することができる。
次に、図103A〜図103Eを参照して、本参考例に係るミラーアレイの製造方法について説明する。なお、本参考例は、ミラーアレイを構成するミラー装置のミラーの構造に特徴を有するものであり、電極基板の構成は、上述した参考例で説明したミラーアレイと同等である。したがって、電極基板の製造方法については、適宜説明を省略する。
まず、図103Aに示すように、SOI(Silicon On Insulator)基板の埋め込み絶縁層250が形成されている側(以下、表面という)より、公知のフォトリソグラフィ技術とDEEP RIEなどのエッチングによって、単結晶シリコン層に枠部210、可動枠連結部211a,211b、可動枠220、ミラー連結部221a,221b、ミラー230等の形状に対応する溝を形成する。
次いで、図103Bに示すように、上記溝に対応する所定の領域が開口したレジストパターンをSOI基板の裏面に形成し、水酸化カリウムなどのエッチング液を用い、SOI基板の裏面より選択的にシリコンをエッチングする。このエッチングでは、埋め込み絶縁層250をエッチングストッパ層として用い、SOI基板の裏面に開口部及び枠状部材240を形成する。
次いで、図103Cに示すように、埋め込み絶縁層250の上記開口部に露出している領域を、フッ酸を用いて除去する。
次いで、図103Dに示すように、ミラー230に対応する所定の領域が開口したマスクをSOI基板の表面に形成し、公知の蒸着法やスパッタ法により、中間層232bと、金属層232aとを順次形成し、表面層232を設ける。このとき、金属層232aは、ミラー230が所望する反り量を有する、すなわち所望する曲率半径となるよう、任意の厚さで形成する。
次いで、図103Eに示すように、ミラー230に対応する所定の領域が開口したマスクをSOI基板の裏面に形成し、公知の蒸着法やスパッタ法により、中間層233bと、金属層233aとを順次形成し、裏面層233を設ける。このとき、金属層233aは、ミラー230が所望する曲率半径となるよう、任意の厚さで形成する。
次いで、ミラー230の曲率半径を測定する。所望の曲率半径と計測された曲率半径との間に差がある場合、この差に基づいて、図103D、図103Eを参照して説明した同等の方法により、さらにミラー230に金属層232a及び233bの少なくとも一方を重ねて形成する。これにより、所望する形状を有するミラー230が形成される。
このように本参考例によれば、表面層232及び裏面層233の少なくとも一方の厚さを制御することにより、ミラー230の反り量を制御して、所望の曲率半径を有するミラー230を製造することが可能となる。
なお、本参考例において、表面層232及び裏面層233形成後、または、表面層232及び裏面層233が形成されたミラー基板200と電極基板300とを接合後、ミラー基板230を加熱処理して徐冷する焼きなましを行うようにしてもよい。このときの加熱温度は、表面層232及び裏面層233形成時の温度の高い方の温度以上とする。これにより、表面層232及び裏面層233の形成時の温度のばらつきに影響されることなく、ミラー230の形状を制御することが可能となる。
[第24の参考例]
次に、本発明の第24の参考例について説明する。なお、本参考例は、表面層232と裏面層233形成時の温度を変化させることにより、ミラー230の反り量を制御するものである。したがって、第23の参考例と同等の構成要素には同じ名称及び符号を付し、適宜説明を省略する。
基板層231は、例えば単結晶シリコンからなり、平面視略円形の形状を有し、ミラー連結部221a,221bにより可動枠220に対して回動可能に支持されている。
表面層232は、例えば、金、銀、アルミニウム等の金属から構成される金属層232aと、この金属層232aと基板層231との間に設けられ、クロム等からなる中間層232bとから構成される。このような表面層232は、基板層231と同等の形状及び大きさを有し、任意の温度下で形成される。
裏面層233は、例えば、金、銀、アルミニウム等の金属からなる金属層233aと、この金属層233aと基板層231との間に設けられ、クロム等からなる中間層233bとから構成される。このような裏面層233は、基板層231と同等の形状及び大きさを有し、任意の温度下で形成される。
ミラー230の反り量は、表面層232及び裏面層233形成時の温度にも依存する。このミラー230の反り量は、表面層232及び裏面層233形成時の温度と常温との温度差が大きいほど、大きくなる。例えば、表面層232形成時の温度を裏面層233形成時の温度よりも高くすると、図104Aに示すように、表面層232側に反った凹面状のミラー230を形成することができる。逆に、裏面層233形成時の温度を表面層232形成時の温度よりも高くすると、図104Bに示すように、裏面層233側に反った凸面状のミラー230を形成することができる。また、表面層232と裏面層233の形成時の温度を同程度にすると、図104Cに示すように、平坦なミラー230を形成することができる。
次に、図103A〜図103Eを参照して、本参考例に係るミラーアレイの製造方法について説明する。
まず、図103Aに示すように、SOI(Silicon On Insulator)基板の埋め込み絶縁層250が形成されている側(以下、表面という)より、公知のフォトリソグラフィ技術とDEEP RIEなどのエッチングによって、単結晶シリコン層に枠部210、可動枠連結部211a,211b、可動枠220、ミラー連結部221a,221b、ミラー230等の形状に対応する溝を形成する。
次いで、図103Bに示すように、上記溝に対応する所定の領域が開口したレジストパターンをSOI基板の裏面に形成し、水酸化カリウムなどのエッチング液を用い、SOI基板の裏面より選択的にシリコンをエッチングする。このエッチングでは、埋め込み絶縁層250をエッチングストッパ層として用い、SOI基板の裏面に開口部及び枠状部材240を形成する。
次いで、図103Cに示すように、埋め込み絶縁層250の上記開口部に露出している領域を、フッ酸を用いて除去する。
次いで、ミラー230の凹形状となる側の面、すなわち反らせる側の面に金属層を形成する。例えば、表面層232側を反らせる場合、図103Dに示すように、ミラー230に対応する所定の領域が開口したマスクをSOI基板の表面に形成し、公知の蒸着法やスパッタ法により、中間層232bと、金属層232aとを順次形成し、表面層232を設ける。このとき、金属層232aは、ミラー230が所望する反り量を有する、すなわち所望する曲率半径となるよう、第1の任意の温度で形成する。例えば、金属層232aを形成する装置内において、SOI基板を固定する台にヒータを設け、このヒータによりSOI基板を任意の温度に加熱した状態で、金属層232aを形成する。ここで、上記第1の任意の温度は、後述する第2の任意の温度よりも高く設定される。
次いで、ミラー230の凸形状となる側の面に金属層を形成する。例えば、裏面層233側を凸形状とする場合、図103Eに示すように、ミラー230に対応する所定の領域が開口したマスクをSOI基板の裏面に形成し、公知の蒸着法やスパッタ法により、中間層233bと、金属層233aとを順次形成し、裏面層233を設ける。このとき、金属層233aは、ミラー230が所望する反り量を有する、すなわち所望する曲率半径となるよう、第2の任意の温度で形成する。例えば、金属層233aを形成する装置内において、SOI基板を固定する台にヒータを設け、このヒータによりSOI基板を任意の温度に加熱した状態で、金属層233aを形成する。
これにより、所望する形状のミラー230が形成される。このように本参考例によれば、表面層232及び裏面層233のうち少なくとも一方を形成する際の温度を制御することにより、ミラー230の反り量を制御して、所望の曲率半径を有するミラー230を製造することが可能となる。
なお、ミラー230の形状を平坦にする場合、第2の任意の温度は、第1の任意の温度よりも高く設定する。これにより、表面層232及び裏面層233は、それぞれ第2の任意の温度まで加熱された後に常温まで冷却されることになるので、ミラー230は平坦に形成される。
また、本参考例において、第23の参考例で示したように、表面層232及び裏面層233の少なくとも一方の厚さを制御するようにしてもよい。これにより、より精密にミラー230の形状を制御することが可能となる。
[第25の参考例]
次に、本発明の第25の参考例について説明する。なお、本参考例は、熱膨張率に基づいて表面層232と裏面層233を構成する材料を設定することにより、ミラー230の反り量を制御するものである。したがって、第22,第24の参考例と同等の構成要素には同じ名称及び符号を付し、適宜説明を省略する。
基板層231は、例えば単結晶シリコンからなり、平面視略円形の形状を有し、ミラー連結部221a,221bにより可動枠220に対して回動可能に支持されている。
表面層232は、ミラー230の形状に応じて例えば、金、銀、アルミニウム等の金属のうち何れかから構成される金属層232aと、この金属層232aと基板層231との間に設けられ、クロム等からなる中間層232bとから構成される。このような表面層232は、基板層231と同等の形状及び大きさを有する。
裏面層233は、ミラー230の形状に応じて例えば、金、銀、アルミニウム等の金属のうち何れかからなる金属層233aと、この金属層233aと基板層231との間に設けられ、クロム等からなる中間層233bとから構成される。このような裏面層233は、基板層231と同等の形状及び大きさを有する。
ミラー230の反り量は、表面層232及び裏面層233を構成する材料の熱膨張率にも依存する。上述したように、形成時に加熱された表面層232または裏面層233が常温へと冷却されて収縮することにより、ミラー230には反りが発生する。したがって、表面層232及び裏面層233を構成する材料の熱膨張率が異なると、冷却される際の収縮量も変化するので、ミラー230の反り量も変化する。このように、本参考例では、熱膨張率に基づいて表面層232及び裏面層233を構成する材料を設定することにより、ミラー230の反り量を制御する。
例えば、表面層232を構成する材料の熱膨張率を裏面層233を構成する材料の熱膨張率よりも大きくすると、図104Aに示すように、表面層232側に反った凹面状のミラー230を形成することができる。逆に、裏面層233を構成する材料の熱膨張率を表面層232を構成する材料の熱膨張率よりも大きくすると、図104Bに示すように、裏面層233側に反った凸面状のミラー230を形成することができる。また、表面層232と裏面層233を構成する材料を同じにすると、図104Cに示すように、平坦なミラー230を形成することができる。
次に、図103A〜図103Eを参照して、本参考例に係るミラーアレイの製造方法について説明する。
まず、図103Aに示すように、SOI(Silicon On Insulator)基板の埋め込み絶縁層250が形成されている側(以下、表面という)より、公知のフォトリソグラフィ技術とDEEP RIEなどのエッチングによって、単結晶シリコン層に枠部210、可動枠連結部211a,211b、可動枠220、ミラー連結部221a,221b、ミラー230等の形状に対応する溝を形成する。
次いで、図103Bに示すように、上記溝に対応する所定の領域が開口したレジストパターンをSOI基板の裏面に形成し、水酸化カリウムなどのエッチング液を用い、SOI基板の裏面より選択的にシリコンをエッチングする。このエッチングでは、埋め込み絶縁層250をエッチングストッパ層として用い、SOI基板の裏面に開口部及び枠状部材240を形成する。
次いで、図103Cに示すように、埋め込み絶縁層250の上記開口部に露出している領域を、フッ酸を用いて除去する。
次いで、図103Dに示すように、ミラー230に対応する所定の領域が開口したマスクをSOI基板の表面に形成し、公知の蒸着法やスパッタ法により、中間層232bと、金属層232aとを順次形成し、表面層232を設ける。このとき、金属層232aは、ミラー230が所望する反り量を有する、すなわち所望する曲率半径となるよう、任意の熱膨張率を有する材料で形成する。
次いで、図103Eに示すように、ミラー230に対応する所定の領域が開口したマスクをSOI基板の裏面に形成し、公知の蒸着法やスパッタ法により、中間層233bと、金属層233aとを順次形成し、裏面層233を設ける。このとき、金属層233aは、ミラー230が所望する曲率半径となるよう、任意の熱膨張率を有する材料で形成する。これにより、所望する形状のミラー230を形成することができる。
このように本参考例によれば、熱膨張率に基づいて表面層232及び裏面層233を構成する材料を設定することにより、ミラー230の反り量を制御して、所望の曲率半径を有するミラー230を製造することが可能となる。
なお、本参考例において、表面層232及び裏面層233形成後、または、表面層232及び裏面層233が形成されたミラー基板200と電極基板300とを接合後、ミラー基板230を加熱処理して徐冷する焼きなましを行うようにしてもよい。このときの加熱温度は、表面層232及び裏面層233形成時の温度の高い方の温度以上とする。これにより、表面層232及び裏面層233の形成時の温度のばらつきに影響されることなく、ミラー230の形状を制御することが可能となる。
また、本参考例において、第23の参考例で示したように、表面層232及び裏面層233の少なくとも一方の厚さも併せて制御するようにしてもよい。これにより、より精密にミラー230の形状を制御することが可能となる。
また、本参考例において、第24の参考例で示したように、表面層232及び裏面層233形成時の温度も併せて制御するようにしてもよい。このようにしても、より精密にミラー230の形状を制御することが可能となる。
さらに、第23〜第25の参考例では、それぞれ金属層232a,233aの厚さ、形成する際の温度、熱膨張率のうちいずれか1つの要素に基づいてミラー230の反り量を制御するようにしたが、これらの全ての要素を組み合わせてミラー230の反り量を制御するようにしてもよい。これにより、より精密にミラー230の形状を制御することが可能となる。
また、第23〜第25の参考例では、基板層231と金属層232a,233aとの間にそれぞれ中間層232b,233bを設けるようにしたが、この中間層232b,233bを設けないようにしてもよい。
また、第23〜第25の参考例では、表面層232を形成した後に裏面層233形成するようにしたが、逆にしてもよい。
また、第23〜第25の参考例に係るミラーアレイ及びミラー装置は、光スイッチのみならず、計測機器、ディスプレイ、スキャナ等に使用することが可能である。
以上説明したように、第23〜第25の参考例によれば、ミラーの片面のみならず他の面にも金属層を設けることにより、ミラーの反りを制御することが可能となる。
[第26の参考例]
次に、本発明の第26の参考例について説明する。
まず、図11,図12に示す従来のミラー装置の製造方法について簡単に説明する。ミラー基板8201は、SOI(Silicon On Insulator)基板から形成できる。SOI基板は、シリコンからなる厚い基体部の上に埋め込み絶縁層を介して薄いシリコン層(SOI層)を備えたものであり、SOI層を加工することで、前述した基部8210,可動枠8220,ミラー8230などの板状の構造体が形成できる。また、SOI基板の厚い基体部を枠状に残すように除去することで、枠部240が形成できる。なお、図11,図12に示す絶縁層8241が、SOI基板の埋め込み絶縁層に対応している。
また、電極基板8301は、主表面の結晶方位が(100)面の単結晶シリコン基板を、水酸化カリウムなどのアルカリ溶液でエッチング加工することで形成できる。よく知られているように、単結晶シリコンは、(111)面が、(100)面や(110)面に比べて著しくアルカリによるエッチング速度が小さい。この現象を利用することで、角錐台の突出部8320や、凸部(リブ構造体)8360a,8360bが形成可能である。
以上のように、ミラー基板8201及び電極基板8301が形成された後、これらを貼り合わせることで、図12に示すように、電極8340a〜8340dに対する電界印加によってミラー8230が可動(回動)するミラー装置が形成できる。また、ミラー8230における光の反射率を向上させるために、ミラー8230の表面(図11及び図12に示されている面)に金などの金属膜を形成する。
ところで、上述したように作製されるミラー基板は、例えば、ミラー連結部で連結されたミラーの部分が形成された後は、これらが回動可能な状態で取り扱われる。例えば、パターニングや選択エッチングなどによりミラーを構成する構造体が形成される工程(スピンコートなどによる基板の回転,各製造装置における基板の搬送,基板の洗浄乾燥)、ウエハのダイシング工程、ミラー表面への金属膜形成工程、ミラー駆動用電極配線を形成した基板との貼り合わせ工程、パッケージへのダイボンディング工程、ワイヤホンディング工程及びポッティング工程などにおいて、ミラーや可動枠などの可動部分が、脆弱な連結部で連結された状態で取り扱われる。
前述したミラー装置は、電極基板に形成された電極に印加された電圧によって生じる電界で、ミラーに吸引力を与えてミラーを数度の角度で回転駆動させるものである。このように、高い位置精度でミラーの回動(位置)を制御するため、連結部は小さな力でも変形するように構成されている。例えば、連結部は、幅2μm厚さ10μm程度のトーションスプリングから構成されている。従って、連結部に大きな力が加わると、破損などがおきやすい。また、ミラー自身も薄く形成されているため、やはり、大きな力が加わると欠損や破損などがおきやすい。
ところが、前述したような工程の処理においては、水流やウエハ乾燥時の遠心力あるいは振動や衝撃などが発生し、これらが連結部やミラーなどに加わるため、連結部の破損や、ミラーの欠損が発生しやすい。この結果、ミラー基板の製造歩留まりを低下させるという問題がある。特に多数のミラー装置が、正方配列されたミラーアレイの場合、1つでもミラーが不良となるとミラーアレイとしては使用できず不良品となるので、歩留の低下をより一層招くことになる。
本参考例は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、良品歩留まりの高い状態でミラー基板が形成できるようにすることを目的とするものである。
次に、本参考例ついて図105A〜図105Kを参照して説明する。まず、図105Aに示すように、面方位が(100)であるシリコン基部2301の上に、膜厚1μm程度の酸化シリコンからなる埋め込み絶縁層2302と、膜厚10μmのシリコン単結晶層(SOI層)2303とが形成されているSOI基板を用意する。次いで、例えば熱酸化法などにより、SOI層2303の表面に酸化層2304が形成され、シリコン基部2301の裏面に酸化層2305が形成された状態とする。
次に、図105Bに示すように、酸化層2304の上に公知のフォトリソグラフィ技術により形成されたフォトレジストからなるパターンが形成されたレジストマスク層2306が形成された状態とし、レジストマスク層2306をマスクとして酸化層2304がエッチング加工された状態とする。このエッチングでは、例えばリアクティブイオンエッチングなどの方向性エッチングにより行い、エッチング箇所においてSOI層2303の表面を露出させる。このことにより、図105Cに示すように、酸化シリコンからなるマスクパターンが形成された無機マスク層(可動部形成マスクパターン)2304aが形成された状態とする。なおこのとき、レジストマスク層2306の図示していない領域に、ダイシングの際にガイドとなるスクライブラインを形成するためのパターンが備えられた状態としておく。
次に、オゾンや酸素プラズマを用いた灰化処理によりレジストマスク層2306が除去された状態とした後、図105Dに示すように、無機マスク2304aをマスクとしたドライエッチングにより、SOI層2303がエッチング加工された状態とする。このエッチングにより、基部2301,可動枠2303,ミラー(ミラー構造体)2305,及び図示していない連結部,ミラー連結部が形成され、ミラー基板の基本的な構成が形成された状態が得られる。また、レジストマスク層2306の図示していない領域に備えられているスクライブラインのパターンも、無機マスク層2304aに転写され、SOI層2303に転写された状態となる。なお、可動枠を設けずに、ミラー構造体が基部に連結した構成としてもよい。
次に、無機マスク2304aの上に樹脂を塗布し、図105Eに示すように、無機マスク2304aのパターン間及びSOI層2303に形成された各構造体の間が樹脂で充填された状態に、樹脂膜2307が形成された状態とする。次いで、樹脂膜2307をエッチバックし、図105Fに示すように、無機マスク層2304aの表面が露出し、無機マスク2304aのパターン間及びSOI層2303に形成された各構造体の間を充填する保護層2307aが形成された状態とする。
次に、例えばよく知られた化学的機械的研磨(CMP)法により無機マスク層2304aを研削研磨して除去し、図105Gに示すように、SOI層2303の表面が平坦化された状態で、SOI層2303に形成された各構造体の間を充填する保護層2307aが形成された状態とする。以降に説明するように、シリコン基部2301をエッチング加工する際に、SOI層2303の表面が、各加工装置において固定される面となるため、無機マスク層2304aを除去した状態で、SOI層2303の表面は、平坦化されていた方がよい。
次に、公知のフォトリソグラフィ技術により形成されたマスクパターン(枠形成マスクパターン)を用いて酸化層2305及びシリコン基部2301をエッチング加工し、図105Hに示すように、枠部2301aが形成された状態とする。次いで、上記マスクパターンが除去された状態とした後、例えば、アルカリ溶液によるウエットエッチングやドライエッチングにより、図105Iに示すように、酸化層2305が除去され、かつ、枠部2301aの内部に露出している部分の埋め込み絶縁層2302が除去された状態とする。
続いて、図105Jに示すように、ミラー2335の枠部2301aが形成されている側の表面に蒸着法などによりAuなどの金属膜2308が形成された状態とする。この際、ステンシルマスクなどを用いることにより、選択的にミラー2335の部分に金属膜2308が形成された状態が得られる。この後、ミラー基板2300を電極基板に貼り合わせてミラー装置が形成された状態とする工程,ミラー装置がパッケージに収容されてダイボンディングなどにより固定された状態とする工程,パッケージの端子と電極基板の端子とがワイヤーボンディングされた状態とする工程などを経た後、酸素プラズマを用いた灰化処理などにより、保護層2307aが除去された状態とすれば、図105Kに一部を示すように、基部2301,可動枠2303,ミラー2335の間に空間が形成され、可動枠2303及びミラー2335が回動可能な状態が得られる。なお、保護層2307aの除去は、ミラー装置が形成された段階で行ってもよく、また、上述したパッケージングのいずれかの工程の間に行うようにしてもよい。
図106は、図105A〜図105Iで説明したことにより形成されたミラー基板2300の概略的な構成を模式的に示す斜視図である。図106に示すように、ミラー基板2300は、SOI層2303に形成された基部2301と可動枠2303とミラー2335とを備える。可動枠2303は、基部2301の開口内に配置され、一対の連結部2332a,2332bにより基部2301に連結している。また、ミラー2335は、可動枠2303の開口内に配置され、一対のミラー連結部2334a,2334bにより可動枠2303に連結されている。また、基部2301の周辺部には、可動枠2303及びミラー2335を取り囲むように枠部2301aが形成されている。枠部2301aは、埋め込み絶縁層2302を介して基部2301に固定されている。
連結部2332a,2332bは、可動枠2303の切り欠き内に設けられ、基部2301と可動枠2303とを連結している。このように基部2301に連結された可動枠2303は、連結部2332a,2332bを通る回動軸(可動枠回動軸)を中心に、回動可能とされている。また、ミラー連結部2334a,2334bは、可動枠2303の切り欠き内に設けられ、可動枠2303とミラー2335とを連結している。このように可動枠2303に連結されたミラー2335は、ミラー連結部2334a,2334bを通るミラー回動軸を中心に回動可能とされている。
以上の構成は、図11に示したミラー基板8201と同様である。ただし、図106に示すミラー基板2300では、基部2301,連結部2332a,連結部2332b,可動枠2303,ミラー連結部2334a,ミラー連結部2334b,及びミラー2335の各間隙に、充填された状態で保護層2307aを備えている。従って、図106に示すミラー基板2300によれば、上述した構造体が回動などの動作を抑制された状態となり、外部からの機械的振動による破損や損傷から保護されるようになる。
例えば、図105Jを用いて説明した金属膜2308の形成において、蒸着装置にミラー基板2300を搬入して固定する際などに外部より機械的な振動が加わった場合においても、各連結部の破損などが抑制できる。同様に、ミラー基板2300を電極基板に貼り合わせてミラー装置とする工程,ミラー装置をパッケージに収容してダイボンディングなどにより固定する工程,パッケージの端子と電極基板の端子とをワイヤーボンディングする工程などにおいても、各連結部の破損などが抑制できる。
以上説明したように、本参考例によれば、基部,連結部,及びミラー構造体が埋め込み絶縁層の上に形成されている段階で、これらの間に充填して形成された保護層を備えるようにしたので、ミラー形成領域における埋め込み絶縁層が除去されてシリコン層の両面が露出し、ミラー構造体が可動する状態となった段階でも、ミラー構造体の可動が抑制されるようになる。この結果、本発明によれば、ミラー構造体や連結部が破損から保護されるなど、良品歩留まりの高い状態でミラー基板が形成できるようになるという優れた効果が得られる。
なお、第1,2の実施例および第8〜第26の参考例において、第1〜第7の参考例で示した帯電防止構造を有するようにしてもよい。