図1は、燃料供給装置を有する内燃機関の一実施例の概略構成を示す模式図である。また、図2は、図1に示す内燃機関の燃料供給装置の概略構成を示す模式図である。
図1に示すように、内燃機関1は、燃料供給装置2と、気筒30を備えた内燃機関本体3と、内燃機関本体3に接続される吸気経路5と、この内燃機関本体3に接続される排気経路6とを備える。内燃機関1の運転は、制御装置である機関ECU(Electronic Control Unit)7によって制御される。図2に示すように、内燃機関1は、複数の気筒301〜304を備えており、複数の気筒301〜304は、例えば、直列に4個配置される。なお、本実施例において、内燃機関1の気筒の数や配置は、直列4気筒に限定されるものではない。ここで、本実施例において、複数の気筒を区別しない場合には、単に気筒30という。
この内燃機関1は、燃料供給装置2により燃料タンク22内に貯留されている燃料Fが気筒30に供給される。なお、本実施例の燃料Fは、ガソリン等の無極性分子燃料に、エタノール、アンモニア(NH3)等の極性分子燃料が添加された液体燃料である。つまり、無極性分子燃料と極性分子燃料とが混合された燃料である。なお、極性分子燃料とは、自然の状態で電気双極子を持つ分子(有極性分子ともいう。)で構成された燃料であり、無極性分子燃料とは、自然状態では電気双極子を持たない分子で構成された燃料である。この燃料供給装置2は、燃料噴射弁21と、燃料タンク22と、低圧燃料ポンプ23と、高圧燃料ポンプ24と、燃料分配管(いわゆる燃料デリバリパイプ)25と、燃料供給配管26、28と、燃料リリーフ通路27と、微細気泡混入手段91とを含んでいる。この燃料供給装置2を構成する燃料噴射弁21は、内燃機関本体3のシリンダヘッド32に取り付けられるとともに、燃料噴射口が気筒内燃焼部B内に開口する。これによって、気筒内燃焼部B内に開口した燃料噴射弁21の燃料噴射口から内燃機関1の気筒内燃焼部B内へ直接燃料Fが噴射され、気筒内燃焼部B内に燃料噴霧Fmが形成される。このように、本実施例に係る内燃機関1は、いわゆる直噴方式によって燃料Fが供給される。燃料噴射弁21の燃料噴射量(内燃機関1に供給する燃料Fの燃料供給量)や噴射タイミング等に関する燃料噴射制御は、制御装置である機関ECU7が実行する。
図2に示すように、本実施例の内燃機関1は、それぞれの気筒301〜304にそれぞれ燃料噴射弁211〜214が備えられる。それぞれの燃料噴射弁211〜214は、燃料分配管25に取り付けられている。そして、燃料分配管25からそれぞれの燃料噴射弁211〜214へ燃料Fが供給される。ここで、本実施例において、それぞれの燃料噴射弁を区別しない場合には、単に燃料噴射弁21という。
燃料タンク22中の燃料Fは、低圧燃料ポンプ23によって燃料圧送手段である高圧燃料ポンプ24へ送られ、高圧燃料ポンプ24から燃料分配管25へ圧送される。燃料分配管25内における燃料Fの圧力は、例えば十数MPaに設定される。燃料分配管25内における燃料Fの圧力は、燃料圧力センサ29によって検出され、機関ECU7に取り込まれて、燃料噴射弁21の燃料噴射制御に用いられる。また、燃料供給配管26の、低圧燃料ポンプ23と高圧燃料ポンプ24との間の部分には、スピル弁93が設けられている。スピル弁93は、低圧燃料ポンプ23から供給された燃料を高圧燃料ポンプ側に排出するタイミングを調整し、高圧燃料ポンプ24から燃料分配管25に供給される燃料の量及び圧力を調整する。
微細気泡混入手段91は、燃料タンク22の燃料が貯留されている領域に配置されており、燃料タンク22に貯留されている燃料に微細気泡を混入させる。ここで、微細気泡混入手段91としては、種々のマイクロバブル発生装置を用いることができ、例えば、液体燃料に激しい流れを発生させ、その流れの中に空気を吹き込むことで、燃料の中で発生したせん断力により空気を粉砕し、燃料に微細気泡を混入させる装置を用いることができる。また、燃料を加圧状態にして、より多くの空気を燃料に溶解させた状態から、液体燃料を攪拌する等でキャビテーションを発生させて、燃料に微細気泡を混入させる装置も用いることができる。さらに、燃料に超音波振動を与え、燃料内の気泡を分裂させることで、燃料に微細気泡を混入させる装置も用いることができる。また、本実施例において、微細気泡とは、気泡同士が合体したり、気泡が他の気泡に吸収されたりすることを抑制することができる微細な気泡であり、具体的には、粒径数十μm以下のマイクロバブルや、数nm以上数百nm以下のナノバブルである。
燃料分配管25には、燃料濃度センサ92が挿入されており、燃料分配管25内を流れる燃料中の極性分子燃料濃度を検出する。燃料濃度センサ92は、検出した極性分子燃料濃度を機関ECU7に送る。ここで、燃料濃度検出センサ92としては、燃料の光学特性から燃料中の極性分子燃料濃度を検出するセンサや、燃料の電気的特性から燃料中の極性分子燃料濃度を検出するセンサを用いることができる。なお、燃料濃度センサ92は、微細気泡混入手段91を制御しない場合は、必ずしも設けなくてもよい。
内燃機関1の内燃機関本体3は、シリンダブロック31と、このシリンダブロック31に締結して一体化したシリンダヘッド32と、気筒30に設けられるピストン33及びコネクティングロッド34と、クランク軸35と、気筒30に設けられる点火プラグ36と、弁装置4とを備える。
内燃機関本体3が備える気筒30には、ピストン33と、シリンダブロック31と、シリンダヘッド32とにより囲まれた気筒内燃焼部Bが形成される。気筒30の気筒内燃焼部Bには、吸気経路5に接続する吸気ポート37と、排気経路6に接続する排気ポート38とが形成される。なお、吸気ポート37と排気ポート38とは、シリンダヘッド32に形成される。
ピストン33は、コネクティングロッド34に回転自在に取り付けられ、また、コネクティングロッド34は、クランク軸35に回転自在に取り付けられる。これによって、ピストン33は、コネクティングロッド34を介してクランク軸35と連結される。内燃機関本体3においては、気筒30の気筒内燃焼部B内で空気Aと燃料Fとの混合気を燃焼させることによりピストン33をシリンダブロック31内で往復運動させ、この往復運動をクランク軸35によって回転運動に変換して出力する。
内燃機関本体3は、機関回転数検出手段として機能するクランク角度センサ39を備える。クランク角度センサ39は、クランク軸35の角度であるクランク角度(CA)を検出して機関ECU7に出力する。なお、機関ECU7は、このクランク角度センサ39により検出されたクランク角度から内燃機関1の回転数(単位時間あたりの回転数、であり機関回転数ともいう)を算出したり、気筒301〜304を判別したり、それぞれの気筒301〜304における行程(吸気行程であるか、圧縮行程であるか、膨張行程であるか、排気行程であるか)を判別したりする。
内燃機関本体3のシリンダヘッド32には、点火プラグ36が取り付けられている。点火プラグ36の電極36Sは、気筒30の気筒内燃焼部Bへ突き出している。また、点火プラグ36には、ダイレクトイグニッション36DIが取り付けられている。ダイレクトイグニッション36DIは、点火時期調整手段として機能する機関ECU7からの点火信号によって点火プラグ36を放電させ、気筒30の気筒内燃焼部B内の混合気に着火する。これによって、混合気は燃焼して高温、高圧の燃焼ガスとなり、ピストン33を駆動する。ここで、点火プラグ36の放電タイミング等に関する点火動作は、制御装置である機関ECU7が制御する。
内燃機関本体3は、吸気弁41と排気弁42とを開閉させるための弁装置4を備える。弁装置4は、気筒30に設けられる吸気弁41及び排気弁42と、吸気カムシャフト43と、排気カムシャフト44と、吸気弁タイミング変更機構45と、排気弁タイミング変更機構47とを含んで構成される。弁装置4を構成する吸気弁41は、吸気ポート37と気筒内燃焼部Bとの間の開口部分に配置され、吸気カムシャフト43が回転することにより開閉する。また、弁装置4を構成する排気弁42は、排気ポート38と気筒内燃焼部Bとの間の開口部分に配置され、排気カムシャフト44が回転することにより開閉する。
弁装置4の吸気カムシャフト43及び排気カムシャフト44は、タイミングチェーンやタイミングベルトを介して、クランク軸35の回転に連動して回転する。弁装置4の吸気弁タイミング変更機構45は、吸気カムシャフト43とクランク軸35との間に配置されている。吸気弁タイミング変更機構45及び排気弁タイミング変更機構47は、可変動弁機構であり、吸気弁タイミング変更機構45が吸気カムシャフト43の位相を連続的に変化させ、排気弁タイミング変更機構47が排気カムシャフト44の位相を連続的に変化させる。これによって、吸気弁タイミング変更機構45及び排気弁タイミング変更機構47は、吸気弁41の開閉時期と排気弁42の開閉時期とを連続的に変化させることができるので、内燃機関1の運転状態に応じて吸気弁41の開閉時期と排気弁42の開閉時期とを最適なタイミングに制御することができる。
弁装置4は、吸気カムシャフト43の回転位置を検出して機関ECU7に出力するための吸気カムポジションセンサ46、及び排気カムシャフト44の回転位置を検出して機関ECU7に出力するための排気カムポジションセンサ48を備える。吸気カムポジションセンサ46及び排気カムポジションセンサ48の出力は、機関ECU7に取り込まれ、点火プラグ36の点火時期の制御や吸気弁タイミング変更機構45及び排気弁タイミング変更機構47の制御に用いられる。
吸気カムシャフト43には吸気カム43Cが取り付けられており、排気カムシャフト44には排気カム44Cが取り付けられている。吸気カム43Cは、吸気側ロッカーアーム11に接しており、また、排気カム44Cは、排気側ロッカーアーム13に接している。吸気カムシャフト43及び排気カムシャフト44が回転することにより、吸気カム43C及び排気カム44Cが回転する。これによって、吸気カム43Cは、吸気側ロッカーアーム11を介して吸気弁41を開閉し、排気カム44Cは、排気側ロッカーアーム13を介して排気弁42を開閉する。
吸気側ロッカーアーム11の吸気弁41とは反対側の支点には、吸気側ラッシュアジャスタ12が配置されており、排気側ロッカーアーム13の排気弁42とは反対側の支点には、排気側ラッシュアジャスタ14が配置されている。吸気側ラッシュアジャスタ12及び排気側ラッシュアジャスタ14は、吸気カム43Cと吸気側ロッカーアーム11との間の隙間、及び排気カム44Cと排気側ロッカーアーム13との間の隙間を常に0にするものであり、内燃機関1の摺動部を潤滑するための潤滑油によって動作する。
内燃機関本体3の吸気経路5は、大気中の空気Aを吸気し、この吸入された空気Aを内燃機関本体3の気筒30の気筒内燃焼部Bに導入する。吸気経路5は、エアクリーナ51と、スロットル弁53と、エアクリーナ51から気筒30の吸気ポート37までを連通する吸気通路54とを有する。吸気経路5は、エアクリーナ51によってごみや塵等が除去された空気Aを、吸気通路54及び吸気ポート37を介して、それぞれの気筒30の気筒内燃焼部Bに導入する。
吸気経路5には、気筒内燃焼部Bに供給する吸入空気量を調整制御する吸入空気量調整手段として機能するスロットル弁53が設けられる。スロットル弁53は、気筒30の気筒内燃焼部Bに導入する吸入空気量を調整する。スロットル弁53は、ステッピングモータ等のアクチュエータ53aにより開閉される。吸入空気量調整手段として機能するスロットル弁53のバルブ開度、すなわちスロットル弁の開度は、機関ECU7がアクチュエータ53aによってスロットル弁53の開度を調整することにより制御される。
内燃機関本体3に接続される排気経路6には、気筒30の気筒内燃焼部Bで燃焼してピストン33を駆動した後の燃焼ガスが、排ガスとして排出される。排気経路6は、排ガス通路62と、排ガス通路62に設けられる排ガス浄化触媒61とを含んで構成される。排気経路6に設けられる排ガス浄化触媒61は、排ガス通路62から送られる排ガスExに含まれる窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)を浄化するものである。以下、排ガス浄化触媒61を単に浄化触媒61という。浄化触媒61で浄化された後の排ガスは、消音装置を通って大気中に排気される。
上述したように、機関ECU7には、内燃機関1を制御して運転するために車両の各所に取り付けられたセンサから、各種入力信号が入力される。機関ECU7に入力される入力信号には、例えば、クランク軸35に取り付けられたクランク角度センサ39によって検出されたクランク角度、燃料圧力センサ29によって検出された圧力値、燃料濃度センサ92により検出された極性分子の濃度等がある。
機関ECU7は、内燃機関1の運転制御のため、上述した入力信号及び記憶部73に格納されている燃料噴射量が記述されたマップや点火時期が記述されたマップ等の各種マップに基づいて、制御対象である燃料噴射弁21やダイレクトイグニッション36DI等に対して、制御信号を出力する。機関ECU7が内燃機関1の運転制御を実行するために出力する制御信号には、例えば、燃料噴射弁21の燃料噴射を制御する燃料噴射信号、点火プラグ36の点火を制御する点火信号、スロットル弁53の弁開度を制御する弁開度信号等がある。
機関ECU7は、上述した入力信号や出力信号の入出力を行う入出力部(I/O)71と、処理部72と、燃料噴射量マップなどの各種マップなどを格納する記憶部73とを有する。処理部72は、例えば、メモリ及びCPU(Central Processing Unit:中央演算装置)により構成されている。処理部72は、微細気泡混入手段91の動作を制御する微細気泡混入制御部74を含んでいる。なお、微細気泡混入手段91が、流入される燃料に自動的に微細気泡を混入させる手段である場合等、電気的、機械的に制御しない場合は、微細気泡混入制御部74は、設けなくてもよい。
また、記憶部73は、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ、ROM(Read Only Memory)のような読み出しのみが可能なメモリ、あるいはRAM(Random Access Memory)のような読み書きが可能なメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。
この燃料供給装置2が燃料を供給する内燃機関1は、4気筒の内燃機関であるが、本実施例の適用対象はこれに限られず、6気筒、8気筒、あるいは単気筒の内燃機関でもよい。燃料タンク22の燃料は、低圧燃料ポンプ23によって燃料供給配管26を介して燃料圧送手段である高圧燃料ポンプ24に送られる。燃料は、低圧燃料ポンプ23と高圧燃料ポンプ24との間の燃料供給配管26の通過時にスピル弁93で一定圧力に調整される。そのため、高圧燃料ポンプ24には、一定圧力の燃料が送られる。高圧燃料ポンプ24は、内燃機関1の吸気カムシャフト43又は排気カムシャフト44のいずれかによって駆動されるプランジャポンプであり、燃料を燃料噴射弁211〜214から噴射させるために必要な圧力まで昇圧させる。高圧燃料ポンプ24から送り出された燃料は、燃料分配管25の入口25iから燃料分配管25内へ供給される。燃料分配管25内の燃料Fは、各気筒301〜304内へ燃料を噴射するそれぞれの燃料噴射弁211〜214へ分配される。
燃料分配管25の出口25oには、リリーフ弁84が取り付けられている。リリーフ弁84は、燃料分配管25内の燃料圧力が設定圧力を超えた場合に開弁して、燃料分配管25内の燃料が設定した圧力を超えないようにするものである。リリーフ弁84は、スプリング84sにより弁体84vをリリーフ弁入口84iへ押し付けるように構成される。そして、燃料分配管25内の燃料の圧力が上昇してスプリング84sの押し付け力を上回ると、弁体84vが押し上げられて、燃料分配管25内の燃料Fは、燃料リリーフ通路27を通して燃料タンク22へ戻される。
本実施例に係る内燃機関1は、以上のような構成である。内燃機関1の燃料供給装置2は、微細気泡混入手段91を駆動させることで燃料タンク22内に貯留されている燃料に微細気泡を混入させることができる。ここで、上述したように、炭化水素燃料は、微細気泡を混入させても、微細気泡が短時間で消滅してしまうため、燃料噴射弁21から噴射する際に微細気泡が少なくなり、燃料を十分に微粒化することができなかった。これに対して、燃料タンク22内に貯留されている燃料を極性分子が混入された燃料とすることで、生成された微細気泡を同一の極性に帯電させることができ、微細気泡同士を接触しにくくさせ、微細気泡同士が接触して消滅することを抑制することができる。したがって、燃料供給装置2は、混入させた微細気泡を、燃料内で長時間維持させることができ、燃料噴射弁21から、燃料をより多くの微細気泡が混入した状態で噴射させることができる。微細気泡が混入された燃料は、燃料噴射弁21から噴射される際に、高圧燃料ポンプ24により高圧が負荷されている状態から大気圧状態となるため、急激に減圧される。燃料は、急激に減圧されると内部の微細気泡の体積が増加し、最終的に気泡が破裂する。内部の気泡が破裂した燃料は、細かく分散され、微粒化される。燃料供給装置2は、多くの微細気泡が混入された燃料を燃料噴射弁21から噴射できるため、燃料を好適に微粒化することができる。このように、燃料を微粒化できることで、燃料の燃焼状態を向上させることができる。具体的には、燃焼に必要な炭化水素の量を減らすことができ、燃費効率を高くすることができる。これにより、燃費を向上させることができる。
また、燃料を微粒化できるので、噴射された燃料をより確実に燃焼させることができ、燃焼室や吸気通路に燃料が残留し、付着することも抑制することができる。さらに、噴射された燃料をより確実に燃焼できるため、内燃機関1の始動時、特に極低温始動時や冷間始動時でも、気筒内燃焼部や吸気通路に付着する燃料の量を大幅に低減させることができ、未燃炭化水素(つまり、未燃HC)の排出量を低減し、極低温始動時に黒煙が発生することを抑制することができる。また、燃焼室や吸気通路に付着する燃料の量を低減できることで、始動時に噴射する燃料の量を大幅に低減することができる。また、本実施例のような、高圧筒内噴射システムでは、始動時に使用する燃料が少なくなることで、始動時の燃料圧力の上昇速度を速くすることができる。また、極低温時に必要とされる燃料の噴射量により決定する高圧燃料ポンプの要求吐出量を低減することができるため、高圧燃料ポンプを小型化することができる。また、燃料に混入させた微細気泡を破裂させることで、燃料を改質することができ、燃料自体の燃焼性を向上させることもできる。また、噴射時に、微細気泡が混入された燃料が減圧されながら、乱流となりながら、微細気泡を崩壊させながら、噴射孔等を通過することで、通過する領域の壁面に付着したデポジットを除去し、洗浄することができる。また、微細気泡を混入させることで、燃料としてE85(エタノールの割合が85%のガソリンとエタノールの混合燃料)、E100等の低温時に微粒化しにくい燃料の場合も、低温時に微粒化することができる。これにより、低温時でも高い始動性を得ることができる。
ここで、内燃機関1では、燃料噴射弁の形状について特に説明しなかったが、燃料噴射弁は、燃料を噴射する噴射孔の形状を燃料噴射時に負圧が発生する形状とすることが好ましい。
図3−1は、燃料噴射弁の一例の先端部分を示す断面図であり、図3−2は、図3−1に示す燃料噴射弁の先端部分を図3−1の切断面に直交する面で切断して示す断面図であり、図3−3は、図3−1に示す燃料噴射弁の一部を拡大して示す拡大断面図であり、図3−4は、図3−1に示す燃料噴射弁のIII−III線断面図である。
以下、図3−1〜図3−4を用いて、燃料噴射弁の好適な一例について説明する。
図3−1に示すように、燃料噴射弁21aは、燃料分配管25と連通しているバルブボディ95aとバルブボディ95aの内部に移動可能な状態で配置されたニードル96aとを備えている。
バブルボディ95aは、中空円筒形状をなし、先端部にほぼ半球状をなす燃料溜まりとしてのサック部97aが形成されているとともに、サック部97aと外部とを連通する噴射孔98aが形成されている。噴射孔98aについては、後ほど説明する。
このバルブボディ95a内には、ニードル96aが軸方向(図3−1にて上下方向)に移動自在に支持されている。ニードル96aの先端部には、円錐形状をなすシール部99aが形成されている。また、バルブボディ95aの内周面とニードル96aとの間が、燃料通路120となる。
バルブボディ95aとニードル96aとは、ニードル96aが所定位置に移動すると、シール部99aがバルブボディ95a内周面にはまり、燃料通路120を塞ぎ、ニードル96aが該所定位置から移動すると、シール部99aと燃料通路120との間には、一定の空間がある状態となる。このように、バルブボディ95aとニードル96aとは、ニードル96aの移動に伴い、燃料通路120がサック部97aおよび噴射孔98aと遮断または連通されるように構成されている。
なお、ニードル96aは、バルブボディ95a内に設けられたスプリングにより燃料通路を遮断する方向に付勢されている。また、バルブボディ95a内に設けられたソレノイドへ通電することで吸引力が発生し、上記スプリングの付勢力に抗してニードル96aを上方に移動し、燃料通路とサック部97aとを連通することができる。このようにニードル96aを移動制御することにより、燃料通路にある燃料を、サック部97aを介して噴射孔98aから気筒内燃焼部B(図1参照)に噴射することができる。
噴射孔98aは、図3−1に示すように、ニードル96aの中心軸Znに対して所定角度傾斜した方向に貫通し、その断面が細長い長方形であり、かつ、図3−2に示すように、該傾斜している方向を軸として90度回転させた方向の断面が、所定角度の広がりをもった扇形形状である。また、噴射孔98aは、図3−4に示すように、ニードル96aの中心軸に直交する方向に切断した断面が、細長い形状つまりアスペクト比が高い形状となる。また、本実施例の噴射孔98aは、その内周面のうちニードル96aの中心軸Znと対面する部分122、124、126と、噴射孔98aの、サック部97aと連通している側の開口128の接線とのなす角θ1が80度以上となっている。噴射孔98aをこのような形状とすることで、燃料が噴射されると、図3−2及び図3−3に示すように、噴射孔98aの、ニードル96aの中心軸Znと対面している表面近傍の領域A1、A2、A3に、燃料の流れによる剥離領域が生成され、噴射されている燃料に負荷される圧力が負圧となる領域が生成される。燃料の噴射時に噴射孔98aの一部に負圧領域が生成されることで、燃料の飽和蒸気圧力以下の圧力となる領域が増え、燃料が蒸発しやすくなり、気泡も膨張しやすくなる。また、噴射孔内の流れも乱流となるため、気泡も破裂しやすくなり、燃料が分裂しやすくなる。これにより、噴射する燃料をより微粒化させることができる。
なお、噴射孔は、燃料の噴射時に負圧となる領域を形成できる形状であれば、特に限定はなく、種々の形状とすることができる。図4−1は、燃料噴射弁の他の一例の先端部分の断面を拡大して示す拡大断面図であり、図4−2は、図4−1に示す燃料噴射弁を、図4−1に切断面に直交する面で切断し、拡大して示す拡大断面図である。図4−1及び図4−2に示す燃料噴射弁21bは、噴射孔の形状以外の基本構成を図3−1〜図3−4に示す燃料噴射弁21aと同様の構成である。以下、燃料噴射弁21bに特有の点について説明する。燃料噴射弁21bは、バブルボディ95bの、ニードルの中心軸に対して所定角度傾斜した方向を貫通しており、その断面が略細長い長方形であり、かつ、図4−2に示すように、該傾斜している方向を軸として90度回転させた方向の断面が、所定角度の広がりをもった扇形形状である。また、噴射孔98bは、サック部97b側の端部付近で、開口径が急激に狭くなる形状となっている。具体的には、噴射孔98bは、内周面のうちニードルの中心軸に対面する面132、134、136の傾斜角が、サック部97b側の端部付近で変化し、サック部97b側の一部で中心軸Znに直交する断面の面積が急激に小さくなる形状である。つまり、噴射孔98bは、内周面が、サック部97b側の開口138と接する端部から燃料が噴射される出口側に所定距離離れた位置132a、134a、136aで、サック部97b側の開口138の接線とのなす角が大きくなるように傾斜角が変化する形状である。このように、噴射孔98bの内周面をサック部97b側で中心軸Znに直交する断面の面積が急激に小さくなる形状とすることで、燃料の噴射時に、噴射孔98bのうちで傾斜角が変化する領域A4、A5、A6で、燃料の流れに剥離渦が形成されやすくなり、負圧領域を形成しやすくすることができる。
図5−1は、燃料噴射弁の他の一例の先端部分を示す断面図であり、図5−2は、図5−1に示す燃料噴射弁の一部を拡大して示す拡大断面図である。図5−1及び図5−2に示す燃料噴射弁21cは、バブルボディ95cとニードル96bとで構成されている。バブルボディ95cは、中空円筒形状をなし、先端部に燃料溜まりとしてのサック部97cが形成されているとともに、サック部97cと外部とを連通する噴射孔98cが形成されている。噴射孔98cは、ニードル96bの中心軸を中心とする円周上に複数形成されている。噴射孔98cは、サック部97cと連通している側の開口144が円または正方形となる形状である。また、噴射孔98cは、その内周面のうちニードル96bの中心軸Znに対面する部分142と、噴射孔98cのサック部97cと連通している側の開口144の接線とのなす角θ2が110度以上となっている。ニードル96bは、バブルボディ95c内に、軸方向に移動自在に支持されている。また、ニードル96bは、先端部に円柱形状をなすシール部99bが形成されている。
燃料噴射弁21cのように、噴射孔98cを、サック部97cと連通している側の開口144が円または正方形となる形状とした場合も、燃料の噴射時に負圧となる領域が生成される形状とすることで、噴射する燃料をより微粒化することができる。また、燃料噴射弁21cのように、開口を、円、正方形等、縦横比が略同じとなる形状とする場合は、噴射孔の内周面のうちニードル96bの中心軸Znに対面する部分と、噴射孔98cのサック部97cと連通している側の開口144の接線とのなす角θ2を110度以上とすることで、負圧領域をより確実に形成することができる。
図6−1は、燃料噴射弁の他の一例の先端部分を示す断面図であり、図6−2は、図6−1に示す燃料噴射弁の一部を拡大して示す拡大断面図である。図6−1及び図6−2に示す燃料噴射弁21dも、バブルボディ95dに、ニードル96cの中心軸を中心とする円周上に複数の噴射孔98dが形成されている。噴射孔98dは、その内周面のうちニードル96cの中心軸に対面する部分152が、サック部97d側の開口154と接する端部から燃料が噴射される出口側に所定距離離れた位置152aで、サック部97d側の開口154とのなす角が大きくなるように傾斜角が変化する形状である。つまり、噴射孔98dは、開口154側の端部で中心軸Znに直交する断面の面積が小さくなる形状である。このように、噴射孔98dを、開口154側の端部で中心軸Znに直交する断面の面積が小さくなる形状とすることで、燃料の噴射時に、噴射孔98dのうち位置152a周辺部で燃料の流れに剥離渦が形成されやすくなり、負圧領域を形成しやすくすることができる。また、噴射孔98dの傾斜角が変化する場合はその内周面のうちニードル96bの中心軸Znに対面する部分152のサック部97dと接する側の端部と、サック部97d側の開口154とのなす角θ3を110度以上とすることで、負圧領域をより確実に生成することが可能となる。
また、燃料供給装置2では、微細気泡混入手段91を燃料タンク22の内部に低圧燃料ポンプ23とは別部材として設置したが、微細気泡混入手段の設置位置はこれに限定されず、燃料タンク22に燃料を供給する供給装置から燃料噴射弁21までの間の燃料供給経路の種々の位置に設置することができる。図7−1〜図7−7は、それぞれ燃料供給装置の他の一例の概略構成を示す模式図である。なお、図7−1〜図7−7に示す燃料供給装置は、微細気泡混入手段の配置位置を除いて、他の構成は基本的に図1及び図2に示す燃料供給装置2と同様の構成であるので、同一の部分には、同様の符号を付して、その詳細な説明は省略し、以下、各燃料供給装置に特有の点について説明する。
図7−1に示す燃料供給装置2aは、微細気泡混入手段91aが、燃料に空気を吹き込み、燃料内に微細気泡を混入させるエゼクタ部101aと、エゼクタ部101aに空気を供給する空気取込管102aとで構成されている。エゼグタ部101aは、外部から吸引した空気を燃料内に混入させる装置であり、低圧燃料ポンプ23の燃料吸引口に取り付けられている。空気取込管102aは、一方の端部が燃料タンク22内の空間部に開放されており、他方の端部がエゼクタ部101aに連結されている。
燃料供給装置2aは、以上のような構成であり、燃料タンク22に貯留された燃料は、低圧燃料ポンプ23により低圧燃料ポンプ23側に吸引されると、微細気泡混入手段91aで、微細気泡を混入させられた後、低圧燃料ポンプ23内に吸引される。低圧燃料ポンプ23に吸引された燃料は、その後、燃料供給配管26、高圧燃料ポンプ24、燃料分配管25を通過して、燃料噴射弁21に供給され、燃料噴射弁21から噴射される。このように、微細気泡混入手段91aを低圧燃料ポンプ23の燃料吸引口に取り付けることでも燃料に微細気泡を好適に混入させることができる。
図7−2に示す燃料供給装置2bは、微細気泡混入手段91bが、エゼクタ部101bと、燃料吸引管103と、燃料排出管104と、エゼクタ部101bに付設されたポンプ部とで構成されている。微細気泡混入手段91bは、エゼクタ部101bが燃料タンク22の外側に設置され、燃料吸引管103及び燃料排出管104が燃料タンク22内に挿入されている。エゼクタ部101bは、燃料タンク22の上面に設置されている。燃料吸引管103は、一方の端部が燃料タンク22の中の下面近傍に配置され、他方の端部がエゼクタ部101bに接続されている。燃料排出管104は、一方の端部がエゼクタ部101bに接続され、他方の端部が燃料タンク22の中の下面、かつ、燃料吸引管103よりも低圧燃料ポンプ23に近い位置に配置されている。
燃料供給装置2bは、以上のような構成であり、燃料タンク22に貯留されている燃料は、微細気泡混入手段91bのポンプ部により燃料吸引管103から吸引されエゼクタ部101bまで送られる。エゼクタ部101bに送られた燃料は、微細気泡が吸引される。その後、微細気泡を混入された燃料は、燃料排出管104から燃料タンク22内に排出される。ここで、燃料供給装置2bは、燃料排出管104が、燃料吸引管103よりも低圧燃料ポンプ23の近傍に配置されているため、燃料タンク22内の低圧燃料ポンプ23の近傍は、微細気泡が混入された燃料が支配的となる。そのため、低圧燃料ポンプ23に吸引される燃料は、基本的に微細気泡混入手段91bにより微細気泡が混入された燃料となる。このように、微細気泡混入手段を燃料タンクと別体として設け、かつ、エゼクタ部を燃料タンクの外側に設けても、燃料に微細気泡を好適に混入させることができる。
図7−3に示す燃料供給装置2cは、微細気泡混入手段91cが、エゼクタ部101cと空気取込管102bとで構成されている。エゼクタ部101cは、低圧燃料ポンプ23aの内部に設置されている。また、空気取込管102bは、一方の端部が燃料タンク22内の空間部に開放されており、他方の端部がエゼクタ部101cに連結されている。
燃料供給装置2cは、以上のような構成であり、低圧燃料ポンプ23aに吸引された燃料は、エゼクタ部101cで微細気泡が混入された後、低圧燃料ポンプ23aから燃料供給配管26に供給される。このように、微細気泡混入手段を低圧燃料タンクの内部に設け、微細気泡供給手段と低圧燃料タンクとを一体として設けても、燃料に好適に微細気泡を混入させることができる。
図7−4に示す燃料供給装置2dは、微細気泡混入手段91dが、エゼクタ部101dと空気取込管102cとで構成されている。エゼクタ部101dは、低圧燃料ポンプ23の燃料排出口に取り付けられている。つまり、エゼクタ部101dは、低圧燃料ポンプ23と燃料供給配管26との間に配置されている。空気取込管102cは、一方の端部が燃料タンク22内の空間部に開放されており、他方の端部がエゼクタ部101dに連結されている。
燃料供給装置2dは、以上のような構成であり、燃料タンク22から低圧燃料ポンプ23に吸引され、排出された燃料は、エゼクタ部101dで微細気泡が混入された後、燃料供給配管26に供給される。このように、微細気泡混入手段を低圧燃料ポンプ23の燃料排出口に取り付けることでも、燃料に好適に微細気泡を混入させることができる。
図7−5に示す燃料供給装置2eは、微細気泡混入手段91eが、エゼクタ部101eと空気取込管102dとで構成されている。エゼクタ部101eは、燃料供給配管26の、低圧燃料ポンプ23とスピル弁93との間に配置されている。つまり、エゼクタ部101eは、燃料の供給流路において、低圧燃料ポンプ23の下流側かつスピル弁93の上流側に配置されている。空気取込管102dは、一方の端部が大気に開放されており、他方の端部がエゼクタ部101eに連結されている。
燃料供給装置2eは、以上のような構成であり、燃料タンク22から低圧燃料ポンプ23に吸引された燃料は、燃料供給配管26に排出される。燃料供給配管26を流れる燃料は、エゼクタ部101eの通過時に微細気泡が混入される。微細気泡が混入された燃料は、その後、燃料供給配管26を流れ、スピル弁93に供給される。このように、微細気泡混入手段を低圧燃料ポンプ23の下流側に取り付けることでも、燃料に好適に微細気泡を混入させることができる。
図7−6に示す燃料供給装置2fは、微細気泡混入手段91fが、エゼクタ部101fと空気取込管102eとで構成されている。エゼクタ部101fは、燃料供給配管26の、高圧燃料ポンプ24と燃料分配管25との間に配置されている。つまり、エゼクタ部101fは、燃料の供給流路において、高圧燃料ポンプ24の下流側かつ燃料分配管25の上流側に配置されている。空気取込管102eは、一方の端部が大気に開放されており、他方の端部がエゼクタ部101fに連結されている。
燃料供給装置2fは、以上のような構成であり、燃料タンク22から低圧燃料ポンプ23に吸引され、燃料供給配管26に排出され、スピル弁93を通過し、高圧燃料ポンプ24で加圧された燃料は、エゼクタ部101fの通過時に微細気泡が混入される。微細気泡が混入された燃料は、その後、燃料供給配管26を流れ、燃料分配管25に供給される。このように、微細気泡混入手段を高圧燃料ポンプ24の下流側に取り付けることでも、燃料に好適に微細気泡を混入させることができる。
図7−7に示す燃料供給装置2gは、上述した燃料供給装置2の構成に加え、さらに、燃料タンク22に燃料を供給する供給手段105を有する。また、燃料タンク22は、供給手段105と接続する給油口106を有する。微細気泡混入手段91gは、供給手段105の内部に設けられている。供給手段105は、給油口106と着脱可能な構成であり、内部に極性分子を含む燃料を溜めている。供給手段105は、燃料タンク22の給油口106と接続し、極性分子を含む燃料を燃料タンク22に供給する。微細気泡混入手段91gは、供給手段105に貯留されている燃料に微細気泡を混入させる。
燃料供給装置2gは、以上のような構成であり、供給手段105に溜められた極性分子を含む燃料は、微細気泡混入手段91gにより微細気泡が混入される。その後、必要に応じて、供給手段105は、給油口106と接続され、供給手段105から燃料タンク22に微細気泡が混入され、かつ、極性分子を含む燃料を供給させる。燃料タンク22に供給された燃料は、低圧燃料ポンプ23により吸引され、上述と同様にして各部を通り、燃料噴射弁21から噴射される。このように、微細気泡混入手段を燃料タンクから燃料分配管までの間に設けることに限定されず、燃料タンクに燃料を供給する供給手段に微細気泡混入手段を設けることでも、燃料に好適に微細気泡を混入させることができる。また、極性分子を含む燃料であるため、微細気泡を長時間維持することができ、燃料噴射弁から噴射される燃料を微細気泡が混入した燃料とすることができる。
また、燃料供給装置2gでは、1つの供給手段105で1つの燃料タンク22に燃料を供給する構成としたが、供給手段105と接続する燃料タンクを切り替えることで、1つの供給手段105で順次、複数の燃料タンク22に燃料を供給するようにしてもよい。つまり、必要に応じて、複数の中から選択した燃料タンク22の給油口106と供給手段105とを接続させ、接続した燃料タンク22に燃料を供給するようにしてもよい。
また、上記実施例では、燃料として予め無極性分子燃料に極性分子燃料が添加された燃料を燃料タンクに貯留させたが、燃料タンクに、極性分子燃料を供給する供給部と無極性分子燃料を供給する供給部とを設け、極性分子燃料の割合が一定の割合になるように各供給部からそれぞれの燃料を供給するようにしてもよい。
次に、燃料供給装置2の好適な制御方法について説明する。図8は、燃料供給装置の制御方法の一例を示すフロー図である。なお、以下で説明する制御方法は、微細気泡混入手段として、燃料に微細気泡を混入させるか否かを切り替えられる手段を用いる必要がある。
まず、微細気泡混入制御部74は、ステップST101として、燃料濃度センサ92により燃料内の極性分子の割合、つまり、無極性分子燃料に混合された極性分子燃料の混合割合を検出する。次に、微細気泡混入制御部74は、ステップST102として、検出した極性分子燃料の混合割合が閾値以上であるか否かを判定する。ここで、閾値とは、微細気泡混入手段を一定期間作動させて燃料中に微細気泡を混入させた場合に、混入させた微細気泡の寿命が要求寿命となる極性分子燃料の混合割合である。微細気泡の要求寿命とは、微細気泡混入手段により燃料に微細気泡を混入させてから、燃料に混入させた微細気泡が本実施例の効果を発現できる限界まで減少する時間である。微細気泡混入制御部74は、ステップST102にて、検出した混合割合が閾値以上、つまり、燃料中の極性分子燃料の濃度が閾値と同じか、閾値よりも高い場合は、ステップST103として微細気泡混入手段を一定期間作動させ、その後、処理を終了する。他方、微細気泡混入制御部74は、ステップST102にて、検出した混合割合が閾値よりも低い場合は、微細気泡混入手段を作動させずに処理を終了する。
図9は、極性分子燃料混合割合と、気泡寿命及び作動期間(正確には、微細気泡混入手段を作動させる時間)との関係を示すグラフである。図9では、横軸を極性分子燃料混合割合とし、上段のグラフの縦軸を微細気泡混入手段一定時間作動時の気泡寿命とし、下段のグラフの縦軸を作動期間とした。図9の上段のグラフに示すように、極性分子燃料を含有する燃料は、微細気泡混入手段を一定時間作動させ、燃料に微細気泡を混入させる場合、極性分子燃料割合が高くなるほど混入された微細気泡の寿命は長くなるという特性がある。そこで、図8のフローチャートに示す制御により、図9の下段のグラフに示すように、極性分子燃料濃度、つまり極性分子の混合割合が閾値以上の場合は、微細気泡混入手段を一定時間作動させ、極性分子混合割合が閾値未満の場合は、微細気泡混入手段を作動させないようにすることで、気泡寿命が短い場合は、微細気泡混入手段を作動させないようにすることができる。
このように、燃料の微細気泡の寿命に応じて、微細気泡混入手段を作動させるか否かを切り替えることで、極性分子燃料の濃度が所望の濃度以上で、微細気泡を混入させる効果が高い場合のみ、微細気泡混入手段を作動させることができる。その結果、不要なエネルギ消費を少なくすることができ、エネルギの利用効率を高くすることができる。
また、燃料に微細気泡が混入させているか否かで、内燃機関の制御を切り替えることができるため、微細気泡を混入させても効果が小さい燃料の場合には、微細気泡を混入させていない燃料として、燃料の噴射等の制御を行うことができ、燃料に応じて適切な制御を行うことができる。
次に、燃料供給装置2の制御方法の他の一例について説明する。図10は、燃料供給装置の制御方法の他の一例を示すフロー図である。まず、微細気泡混入制御部74は、ステップST111として、燃料濃度センサ92により、無極性分子燃料に混合された極性分子燃料の混合割合を検出する。次に、微細気泡混入制御部74は、ステップST112として、検出した極性分子燃料の混合割合が閾値以上であるか否かを判定する。微細気泡混入制御部74は、ステップST112にて、検出した混合割合が閾値以上、つまり、燃料中の極性分子燃料の濃度が閾値と同じか、閾値よりも高い場合は、ステップST113として、記憶部73から後述する微細気泡混入手段作動期間マップA(以下単に「作動期間マップA」という。)を読み込み、さらに、作動期間マップAから、検出した濃度に対応する作動期間を読み込む。ここで、作動期間マップAは、燃料中の極性分子燃料の混合割合と微細気泡混入手段の作動期間との対応関係を示すマップである。その後、微細気泡混入制御部74は、ステップST114として、微細気泡混入手段を読み込んだ作動期間、作動させ、処理を終了する。他方、微細気泡混入制御部74は、ステップST112にて、検出した混合割合が閾値よりも低い場合は、微細気泡混入手段を作動させずに処理を終了する。
図11は、極性分子燃料混合割合と、気泡寿命、作動期間及び制御後の気泡寿命との関係を示すグラフである。図11では、横軸を極性分子燃料混合割合とし、上段のグラフの縦軸を微細気泡混入手段一定時間作動時の気泡寿命とし、中段のグラフの縦軸を作動期間とし、下段のグラフの縦軸を作動期間マップAに応じて微細気泡混入手段を作動させた場合の気泡寿命とした。図11の中段に示すグラフは、上述した作動期間マップAである。この作動期間マップAは、予め実験、測定等を行うことで作成することができる。具体的には、それぞれの混合割合の場合について、種々の作動期間で気泡寿命を検出し、検出した気泡寿命から気泡寿命が要求寿命となる作動期間を割り出すことで作成することができる。また、図11の上段のグラフに示すように、作動期間を一定期間とした場合でも要求寿命とならない混合割合、つまり閾値以下の混合割合の場合は、閾値未満の混合割合として微細気泡混入手段を作動させないため、作動期間を割り出さない。これにより、図11の中段のグラフに示すように、閾値以下の混合割合の場合は、作動期間が0となる。また、作動期間マップAは、混合割合が閾値よりも大きくなるに従って、作動時間が短くなる対応関係となっている。
このように、図10のフロー図に示す制御方法では、図11の中段のグラフに示す作動期間マップAに基づいて、混合割合に応じて微細気泡混入手段の作動期間を制御することで、具体的には、混入割合が閾値よりも大きくなるに従って、作動時間を短くすることで、図11の下段のグラフに示すように、閾値以上の混合割合の燃料の場合は、燃料に同一寿命の気泡を混入させることができる。燃料内の気泡寿命を一定にできることで、極性分子燃料の混合割合によらず、一定の気泡が混入された燃料を燃料室等に供給することが可能となり、噴射した燃料を適切に微粒化させることができる。
次に、燃料供給装置2の制御方法の他の一例について説明する。図12は、燃料供給装置の制御方法の他の一例を示すフロー図である。まず、微細気泡混入制御部74は、ステップST131として、燃料濃度センサ92により、無極性分子燃料に混合された極性分子燃料の混合割合を検出する。次に、微細気泡混入制御部74は、ステップST132として、検出した極性分子燃料の混合割合が閾値以上であるか否かを判定する。微細気泡混入制御部74は、ステップST132にて、検出した混合割合が閾値以上、つまり、燃料中の極性分子燃料の濃度が閾値と同じか、閾値よりも高い場合は、ステップST133として、後述する微細気泡混入手段作動期間マップB(以下単に「作動期間マップB」という。)を読み込み、さらに、作動期間マップBから、検出した濃度に対応する作動期間を読み込む。ここで、作動期間マップBも、燃料中の極性分子燃料の混合割合と微細気泡混入手段の作動期間との対応関係を示すマップである。その後、微細気泡混入制御部74は、ステップST134として、微細気泡混入手段を読み込んだ作動期間、作動させ、処理を終了する。他方、微細気泡混入制御部74は、ステップST132にて、検出した混合割合が閾値よりも低い場合は、微細気泡混入手段を作動させずに処理を終了する。
図13は、極性分子燃料混合割合と、気泡寿命、作動期間及び制御後の気泡割合との関係を示すグラフである。図13では、横軸を極性分子燃料混合割合とし、上段のグラフの縦軸を微細気泡混入手段一定時間作動時の気泡寿命とし、中段のグラフの縦軸を作動期間とし、下段のグラフの縦軸を作動期間マップBに応じて微細気泡混入手段を作動させた場合の燃料中に混入される気泡の割合(以下単に「気泡割合」ともいう。)とした。ここで、図13の中段に示すグラフは、上述した作動期間マップBである。まず、作動期間マップBは、他の制御方法と同様に、図13の上段のグラフに示すように、作動期間を一定期間とした時に気泡寿命が要求寿命を超えない混合割合の燃料の場合には、作動期間を0としている。また、本実施例の作動期間マップBは、極性分子燃料混合割合が閾値よりも高くなる(大きく)にしたがって作動期間が長くなる。このように、混合割合が高くなるに従って作動期間を長くすることで、図13の下段のグラフに示すように、混合割合が高くなるに従って燃料内に混入させる気泡の割合を高くすることができる。
図14は、極性分子燃料の混合割合とリード蒸気圧(Reid Vapor Pressure)との関係の一例を示すグラフである。なお、図14では、極性分子燃料としてエタノールを用いている。図14に示すように、燃料は、極性分子燃料の混合割合が大きくなるにつれてリード蒸気圧が低くなり、蒸発特性が悪化するため、噴射された燃料が燃焼しにくくなり、始動性が悪化する。これに対して、本実施例では、混合割合が高くなるに従って燃料内に混入させる気泡の割合を高くすることで、リード蒸気圧の低い燃料ほど燃料の噴射時により微粒化することができる。これにより、燃料中の極性分子燃料の混合割合が高く、リード蒸気圧が低くなる場合も、燃料の燃焼効率を高くすることができ、始動性を高くすることができる。なお、本実施例の制御は、内燃機関の始動時のみに行ってもよい。
また、燃料供給装置の制御方法は上記方法に限定されず、極性分子の混合割合に応じて、作動期間つまり作動時間、作動間隔、作動タイミング等を適宜設定すればよい。また、極性分子の混合割合に加え、燃料の温度に応じて、作動期間、作動間隔、作動タイミングを設定してもよい。