JP2009541107A - シート部分とアンチサブマリン拘束装置とを備えた車両シート、拘束装置および製造方法 - Google Patents

シート部分とアンチサブマリン拘束装置とを備えた車両シート、拘束装置および製造方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、シート部分を含む車両シートと、拘束装置と、対応する製造方法とに関する。この車両シートは、衝突による減速の際に乗員が車両シート上を滑り抜けるのを防止するためのアンチサブマリン拘束装置を含んでいる。この拘束装置は、後退した非作動位置にセットすることができ、かつ、伸張した作動位置に動かすことができる。シート部分は、車両の縦方向において、シート両側の側部材と、シート表面を規定するパッドと、そのパッドの下部にあるパッドサポート(34)とを有する。拘束装置は、パッドサポートとパッドとの間で、尚且つ側部材から離れた位置に傾斜要素(24)を含み、前記傾斜要素は、エネルギー消散要素としての少なくとも1つの変形要素(24)を有している。

Description

本発明は、シート部分と、事故で減速する間に車両シート上にいる乗員のサブマリン現象を防止する拘束装置とを有する車両シートに関する。この車両シートでは、拘束装置を後退した非作動位置にセットできるとともに、伸張した作動位置に拘束装置を動かすことができる。また、シート部分は、シート表面を規定するパッドと、そのパッドの下部に設けられるパッドサポートとを有する。
このような車両シートは一般に知られている。例えば、パッドの表面にシート表面を有する自動車シートが独国特許出願公開第10231794A1号明細書から知られているが、この自動車シートでは、シート表面の下部にシートパンが設けられ、シートパンとシート部分のシート表面との間にU字形の可動要素が配置されている。この可動要素は、衝突が生じた際に初期位置から動くことが可能であり、それによってシート表面および可動要素は、シート表面に着座する乗員の骨盤が車両の縦方向の前方に変位することに対抗する。この車両シートの場合、可動要素は、使用者(特に使用者の骨盤)が加える力によって塑性変形し得るように構成されている。これは次のような欠点を有する。すなわち、使用者を抑え留めるために、相対的に小さな力伝達可能面積が提供されるだけなので、これは衝突の際に面積当たりの被伝達力が、それに対応して高くなるという結果をもたらすのである。さらに、この既知の車両シートはモジュール性が全くないという欠点を有する。すなわち、車両シートに着座する乗員のサブマリン現象を防止する能動的拘束装置(いわゆるアンチサブマリン拘束装置)、つまり非作動位置から伸張した作動位置に移行させ得る拘束装置を実現するために、通常は車両シートの組み立てにおいて、拘束装置を、シートの側部材またはシート部分のフレーム材等のような車両シートの構造要素に連結しなければならないので、その結果、シート製造またはシート完成の後段になって初めて車両シートに拘束装置を装備すべきか否かを決定し得るという欠点である。このため、既に知られたいくつかの車両シートの場合には、車両シートの製造ラインの大部分にわたって多数の車両シートの変形モデルを考慮しなければならず、これは全体として物流および生産面において高コストをもたらすことになる。シートフレームとシートクッションとシートクッションサポートとを含む車両シートが独国特許出願公開第19943595A1号明細書で知られている。この車両シートでは、アンチサブマリンの傾斜面が、縦方向においてシートパッドサポートのほぼ中央に取り付けられてシートパッドサポートの前端に延びており、シートパッドサポートのほぼ前半分をカバーしている。衝突の際には膨張する通常折り畳まれたエアバッグが、傾斜面とシートパッドサポートとの間に設けられているか、あるいは、傾斜面内に内設されている。しかし、このタイプのエアバッグは相対的に高価であり、従って、このような既知の車両シートは全体で相対的にコスト高になる。
従って、本発明は、事故によって減速する場合に車両シート上にいる乗員のサブマリン現象を防止するための拘束装置を備えた車両シートを提供するという目的に基づいており、一方では、このような拘束装置を可能とする最低のコストで、尚且つ車両シートの製造ラインにおいてできる限り遅く車両シートに容易かつ簡単に装着することができ、もう一方では(事故状況における)使用者と拘束装置との間の力の伝達において、面圧力ができるだけ小さく維持されるような拘束装置を装備した車両シートを提供するという目的に基づいている。
この目的は、シート部分と、車両シート上にいる乗員のサブマリン現象を防止する拘束装置とを有する車両シートであって、後退した非作動位置に拘束装置をセットでき、かつ伸張した作動位置に拘束装置を動かすことができ、シート部分は車両の縦方向において両側に側部材を有し、かつシート部分はシート表面を規定するパッドとそのパッドの下部に設置されるパッドサポートとを有し、さらに、拘束装置はパッドサポートとパッドとの間で、尚且つシートの側部材から距離をおいた位置決め要素を有すると共に、その位置決め要素とパッドとの間に上部部分を有し、位置決め要素および/または上部部分は、エネルギー消散手段として少なくとも1つの変形要素を有する車両シートによって実現することができる。この結果、一方では、拘束装置のモジュール性の確保を有利に実現することができる。すなわち、車両シートの製造ラインの時間的に後の段階になって初めて特定の車両シートに本発明による拘束装置を装備すべきか否かを決定し得るという可能性が保証されている。もう一方で、これは、拘束装置の正しい機能性を特に容易かつ安全に確保し得ることによって可能になる。この場合、特に、車両シート上にいる使用者の身体部分(特に骨盤部分)と拘束装置との間の面圧力(すなわち面積当たりの力の作用)を事故状況の経過の範囲内で低減でき、最大値を低減させる効果が得られるのである。本発明によれば、位置決め要素および/または上部部分のエネルギー消散特性を変化させることによって、異なるタイプの車両への適合(適用)が特に容易、かつコスト面で効率的に有利に可能となる。本発明によれば、拘束装置が、作動手段、特にパイロ技術のリニアアクチュエータおよび/または可逆操作のアクチュエータを有することが特に好ましい。この場合、作動手段は、パッドサポートとパッドとの間に配置されるか、あるいはその間に支持されており、特に作動手段の操作は、時間的に事故による減速が生じる前にすでに発動されている。作動手段をパッドサポートとパッドとの間に支持する場合には、作動手段をパッドサポートの下部にも部分的に延び込ませるか、あるいはパッドサポートの下部に配置することが可能である。リニアアクチュエータは相対的に小さく、組み込み空間の点で小型に実現できるので、その結果、組み込み空間に関して拘束装置を特に小型に構成でき、かつ、本発明によれば、車両シートにおける拘束装置のモジュール化された組み込み方法を特に容易に実現できる。本発明の趣旨において、パッドサポートは、シート部分の単一または複数の構造要素として理解される。この複数の構造要素は、後にシートに固定される可能性があるパッドの少なくとも近傍に設けられ、パッドを保持または支持する。例えば、ほぼ一体連続的なクッションパンまたはシートパンとして、シート表面のほぼ全面にわたって連続するパッドサポートは、この場合、パッドサポートとして可能な対象である。さらに、本発明によれば、例えばいわゆる分割型シートパンまたは区分シートパンが可能な対象である。この場合は、分割型シートパンは、パッドのほぼ前半分、あるいはパッドの前方または後方の約20%または10%のみを支持する。さらにまた、管状または開放型補強要素のような構造要素も、パッドサポートの一部分として可能な対象である。本発明の趣旨におけるパッドサポートの場合、パッドサポートは部分的に下部スプリングをも含むことができる。本発明によれば、非可逆性の操作作動手段、例えばパイロ技術のリニアアクチュエータに対して代替的にまたは重複的に、可逆性の操作作動手段、例えば電気モータ駆動のリニアアクチュエータを設けることもできる。このアクチュエータは、事故を予期する対応センサ(プレクラッシュセンサ)と協動して、時間的に事故が発生する前、従って時間的に事故による減速(すなわち事故発生における典型的な減速)が生じる前に、すでに拘束装置を、拘束装置の伸張した作動位置、または拘束装置の(非作動位置と伸張した作動位置との間の)中間位置に動かすことになる。
さらに、拘束装置は、作動手段によって動かすことができる位置決め要素を有することが望ましい。この場合、位置決め要素は、作動手段によって拘束装置の非作動位置に相当する後退位置から拘束装置の作動位置に相当する伸張位置に動かすことができる。この結果、位置決め要素を、作動手段とは独立にそれぞれの適用案件に対して、例えばその圧縮性に関して(例えば事故状況の間のエネルギー消散に対して)最適化でき、あるいはまた、例えば拘束装置の伸張程度に影響を有するその寸法に関して最適化できる。
さらに、位置決め要素の後退位置と伸張位置との間において、ほぼ水平にかつ車両方向に対して特に横方向に延びる軸の回りの回転が可能になることが望ましい。この場合、位置決め要素はプレート形状の位置決め要素として設けられることが望ましく、ほぼ水平に延びる軸の回りの回転は、走行方向における回転とすることが望ましい。その結果、好ましくはモジュール方式で組み込み可能な拘束装置のほぼ全幅に延びるプレートを、位置決め要素として用いることができる。この場合、このプレートは、位置決め要素の後退位置においてはシート表面にほぼ平行に、またはパッドサポートにほぼ平行に配置され、位置決め要素の伸張位置においては、シート表面にほぼ垂直に、またはパッドサポートにほぼ垂直に配置される。本発明によれば、位置決め要素とシート部分のパッドとの間に、アンチサブマリンの傾斜面の意味をもつ拘束装置のカバーの形の上部部分があることが望ましい。これによって、事故状況(すなわち、所定の限界値を超える負の加速度または減速度)の場合に、シート乗員の身体が、拘束装置の可能最大面積の範囲に力の作用を加え、その結果、シート乗員の傷害のリスクを軽減することが有利に保証される。位置決め要素が車両の方向に動くことによる特に有利な点は、作動手段の力の作用またはその伸張がともかくシート乗員の主たる身体部分の方向(特に骨盤の方向もしくは胴体の方向)に向かないように、作動手段、特にパイロ技術のリニアアクチュエータの力の作用を選択できるという点にある。これによって、傷害のリスクが同様に低下する。
本発明によれば、位置決め要素の後退位置と伸張位置との間において、位置決め要素の少なくとも一部分が、ほぼ垂直に延びる軸の回りに回転し得ることがさらに望ましい。この場合、位置決め要素は、1つ以上の伸張可能要素を備え、入れ子式に伸張可能な位置決め要素として設けることが望ましい。これによって、位置決め要素を、例えば入れ子式に相互に嵌合するカップ状の構成要素によって、小型の構造型式で有利に実現でき、後退位置から伸張位置を実現するために、少なくとも1つのカップ状構成要素がその中心の回りに回転動作することが可能になる。この場合、本発明によれば、回転動作を伸張動作に変換するために、少なくとも2つのカップ状構成要素のらせん形構成のピンおよびスロットガイドを設けることが望ましい。このような位置決め手段のロックを実現するために、ピンおよびスロットガイドを、例えば非対称の歯列によって、伸張動作の方向における動きのみが可能になるように構成することが可能である。ピンおよびスロットガイドの例とは別に、入れ子式に伸張可能な位置決め要素の変形形態の場合には、本発明によって、例えば2つのカップ状の構成要素をネジのように相互に嵌合させ、これらの構成要素の一方を他方に対して回転させることによって位置決めが行われるような方式も可能である。
さらに、位置決め要素および/または上部部分は異なる材料の複数の材料帯域であって、異なる変形挙動を有する複数の材料帯域を有するか、あるいは、位置決め要素および/または上部部分は少なくとも部分的に可逆的に変形可能であるように設けられることが望ましい。後者の場合、位置決め要素は、緩衝装置またはガス圧力ダンパまたは複数のこのような要素を有することが望ましい。この手段によって、本発明によれば、重要度が異なる事故状況に対して、あるいは車両シートの使用者および車両シートの間に伝達される力の強さが異なる場合に、異なる変形挙動を有利に実現できる。さらに、本発明によれば、位置決め要素または上部部分の事故による負荷状況が異なるために、特定のシート位置、または使用者の身長による特定の力の伝達比によって制約されても、それぞれの状況に適合した拘束装置の変形挙動を生じさせることが特に有利に可能になる。
拘束装置がさらに別の変形要素を有することが特に望ましい。これによって、拘束装置の変形応答を、発生した事故状況に一層良好に整合させることが可能になる。
さらに、拘束装置が下部部分および上部部分を有し、その下部部分が拘束装置をパッドサポートに連結する固定要素を有するか、あるいはパッドサポートが拘束装置をパッドサポートに連結する固定要素を有することが望ましい。これによって、拘束装置とパッドサポートとの間の連結を、高価な工具を要することなく、または高品質な作業を必要とすることなく簡易に作り出すことが可能となる。この場合、本発明によれば、押進操作または摺動操作またはクリップ操作による固定、あるいは接着固定が、特に好ましいと判明している。例えば押進操作連結または摺動操作連結を確実にするために、このような固定方式を2つ以上組み合わせて用いることもできる。下部部分および上部部分を有する拘束装置の変形された実施形態に代わる方式として、本発明によれば、下部部分の機能(例えば、レバー等の連結点の提供)をパッドサポートが担う方式(パッドサポートへの下部部分の完全な一体組み込み)も可能であり、その結果、下部部分を省略できるので、重量の低減とコストの節減とが可能になる。例えば、この場合には、拘束装置、従って例えば拘束装置のレバー連結等を、下部部分にネジ止めおよび/またはリベット付けおよび/またはピン連結することが想定される。
さらに、本発明によれば、拘束装置がロック手段を有することが望ましい。この場合、ロック手段は位置決め要素の動きによって動作可能となるように設けることが望ましい。さらに、ロック手段は、特にスロットおよびボルトを有し、このボルトは、直径が小さい軸方向の第1部分と、直径が大きい軸方向の第2部分とを有し、このボルトの軸方向の動きがロック操作をもたらすように構成される。例えば、本発明によれば、引きずりレバーが、位置決め要素の反対側の端部において、ハウジング内にガイドされることが可能になり、この場合にハウジングは、位置決め要素の後退位置において引きずりレバー上に押し付けられ、スプリングで付勢された複数のラッチボルトを収納している。引きずりレバーが位置決め要素の伸張位置の方向に十分に伸張すると、直ちにラッチボルトの1つが引きずりレバーの戻る動きをロックする。複数のこのようなラッチボルトによって複数の嵌合位置を規定することができる。これは、(作動手段の機能不全のために、あるいは、シートが例えばシート乗員としては異常に大きな人物もしくは異常に小さい人物によって占められている特殊な状況のために、)位置決め要素の最大伸張位置への動作が実行されない場合に特に有利である。ロック手段を実現させる代わりの方式として、本発明による拘束装置の別の変形された実施形態は、始動部分および終端部分を備えたスロットを提供することができる。この場合、位置決め要素と共に動くボルトがそのスロットに嵌合し、そのボルトは、拘束装置の非作動位置においてスロットの始動部分に位置し、拘束装置の作動位置においてスロットの終端部分に位置する。さらに、スロットの形状は、少なくとも拘束装置が(完全に)能動化された位置またはその作動位置において、位置決め要素またはボルトの逆の動きが防止されるように構成されている。この場合、ロック手段の別の変形形態によれば、スロットが、例えば曲線または折り曲げ点を有することができ、これによって、位置決め要素と共に動くボルトが始動部分に戻り得ないように、あるいは、事故状況において存在する力の比率のためにこのような逆動作がほとんど不可能となるようにすることができる。さらに、別の変形形態においては、スロットの代わりに、ボルトに対する始動部分および終端部分を備えた操作カムを設けることができる。この場合、この操作カムはその終端部分に1つの窪みを有することができ、これによって位置決め要素と共に動くボルトが同様に始動部分に戻り得ないように、あるいは、事故状況において存在する力の比率のためにこのような逆動作がほとんど不可能となるようにすることができる。この場合、操作カムを構成する要素または構成部品を非作動位置の方向にスプリングで付勢することが望ましい。スロットを有する変形実施形態の場合にも、同様に、スロットを構成する要素または構成部品を非作動位置の方向にスプリングで付勢することが有利になる可能性がある。さらに、また別の実施形態においては、内法が縮減された開口を有する始動部分と、内法が拡大された開口を有する終端部分とを具備するように鍵穴様式に構成された方式のスロットを、次のような態様に形成してボルトと相互作用させることができる。すなわち、ボルトが第1軸方向部分において直径が小さくて始動部分と相互作用し、ボルトがスロットの終端部分に達すると(位置決め要素が作動位置の方向に動く間に生じることになる)、ボルトがスプリングで付勢されているために、直径が大きいボルトの第2軸方向部分によって終端部分に押し込まれるような態様に構成するのである。ロック手段を実現する代わりの方式として本発明の拘束装置のさらに別の変形実施形態では、位置決め要素が作動位置に達するとその逆の動きが防止されるように、位置決め要素が上部部分、特に孔または窪みと相互作用することができる。本発明によれば、さらに、ロック手段を備えた拘束装置の異なる変形形態の部分的な態様を、互いに組み合わせ得ることが想定されている。この方法で、例えば、最後に述べた変形形態(位置決め要素における孔または窪み)を他の変形形態と組み合わせることができる。
本発明のさらに別の主題は、車両シート用の本発明による拘束装置に関し、また、本発明による車両シートの製造方法にも関する。この製造方法においては、第1段階において車両シートの支持構造体を製造し、第2段階において拘束装置をパッドサポートに連結する。これによって、車両シートの構造要素、例えばシートのフレーム、バック部分のフレーム、シート部分のサブ構造物等を製造する全製造ステップを第1製造段階において実施すること、例えばシート部分の製造者の工場で遂行することが特に可能になる。拘束装置の車両シートへの組み込み、または拘束装置を装備すべき車両シートのシート部分との結合は、その後、車両シートまたは車両シートが組み込まれるべき車両の最終製造に近い製造工場において行うことができる。この場合、本発明によれば、拘束装置の車両シートへの組み込みに対して、例えば溶接継手の製造が必要な車両シートの構造要素を製造する場合よりも、大幅に低い装備要件が求められるだけであり、組み込み作業を行う従業員のさらに大幅に低い資格要件が求められるだけである。
本発明の実施形態を図面に示しており、以下、これを詳細に説明する。
本発明に係る車両シートの側面図を概略的に示したものであり、また、本発明に係る車両シートのシート部分のシートパンまたはパッドサポートの斜視図であり、本発明に係る拘束装置の部分断面を含む斜視図を示したものである。 シート部分のシート側部材および拘束装置を一緒に含むシート部分のパッドサポートの1つの実施形態の斜視図を概略的に示したものである。 図1aとは別のパッドサポートの実施形態の斜視図を示したものである。 本発明に係る車両シートのシート部分のシート側部材を一緒に含むシート部分のシートパンまたはパッドサポートの斜視図であり、本発明に係る拘束装置の外観を含む斜視図を概略的に示したものである。 非作動位置にある拘束装置の実施形態を含んだ本発明に係る車両シートのシートパンまたはパッドサポートを斜視図において概略的に示したものである。 拘束装置が作動位置にある場合の図3のシートパンまたはパッドサポートを斜視図において概略的に示したものである。 拘束装置の1つの変形実施形態を側面図において示したものである。 拘束装置の別の変形された実施形態を非作動位置における斜視図として示したものである。 拘束装置が作動位置にある場合の図4bの変形された実施形態を斜視図として示したものである。 エネルギー消散手段の1つの実施形態を備えた本発明による拘束装置の詳細部分を側面図として概略的に示したものである。 エネルギー消散手段の別の実施形態を備えた本発明による拘束装置の詳細部分を側面図として概略的に示したものである。 エネルギー消散手段のさらに別の実施形態を備えた本発明による拘束装置の詳細部分を側面図として概略的に示したものである。 位置決め要素の概略断面図を示したものである。 別の実施形態の位置決め要素を有する本発明に係る拘束装置の詳細部分を側面図として概略的に示したものである。 拘束装置の1つの変形実施形態において、拘束装置が非作動位置にある場合の変形実施形態を斜視図として示したものである。 作動位置にある場合の図9aの拘束装置を斜視図として示したものである。 図9bの部分拡大図を斜視図として示したものである。 拘束装置のさらに別の変形実施形態において、拘束装置が非作動位置にある場合の変形実施形態を斜視図として示したものである。 作動位置にある場合の図9dの拘束装置を斜視図として示したものである。 図9eの部分拡大図を斜視図として示したものである。 拘束装置のさらに別の変形実施形態において、拘束装置が非作動位置にある場合の変形実施形態を斜視図として示したものである。 作動位置にある場合の図9gの拘束装置を斜視図として示したものである。 拘束装置のさらに別の変形実施形態において、拘束装置が非作動位置にある場合の変形実施形態を斜視図として示したものである。 作動位置にある場合の図9iの拘束装置を斜視図として示したものである。 拘束装置のさらに別の変形実施形態において、拘束装置が作動位置にある場合の変形実施形態を斜視図として示したものである。 非作動位置にある場合の図9kの拘束装置を斜視図として示したものである。
図1(図の左側部分)において、本発明による車両シート10の側面図を概略的に示している。車両シート10は、シート部分30と、さらに通常はバック部分とを含んでいる。バック部分には符号を付していない。本発明によれば、シート部分30は、特に、側面に少なくとも2つのシート側部材31を含むフレーム状の構造を有する。シート部分30は、このフレーム状構造の内部に、シートパン34またはパッドサポート34を有する。パッド33またはシートクッション33は、シートパン34またはパッドサポート34に連結される。シート部分30は、シートのサブ構造部材15によって、車両内部のフロアサブアセンブリ16または車両の車体構造16に連結される。本発明によれば、シートのサブ構造部材15によって、全車両シート10を、縦方向に調整可能におよび/または垂直方向に調整可能におよび/または傾斜調整可能に連結することが可能になる。このため、図1の左側の部分において、シートのサブ構造部材15は、回転または回動によって対応するシートの設定をもたらすことができる概略表示のリンクとして表現されている。パッド33はシート表面32を有し、そのシート表面32の上に、車両シート10の使用者、車両の乗員または乗客が着座できる。本発明によれば、シートパン34またはパッドサポート34を、パッド33およびシート表面32と共に、シート部分30の残りの部分に対して垂直調整可能および/または傾斜調整可能となるように構成することが、特に好ましい形として想定されている。
本発明による車両シート10のシート部分30は、例えば、2重または4重または6重または8重またはさらに多重に調整可能なサブ構造部材として設けることが可能である。この結果として、例えば、シートの高さおよび/またはシートの傾斜および/またはシートの縦方向調整および/またはシートの長さ設定(大腿部支持長さ)を調整できる。図において、パッドサポートは、大部分、分離シートパンおよび単一品シートパン34として、あるいはそれに相当するパッドサポート34として示しているが、図1aおよび図1bに示すパッドサポート34の変形された実施形態の例を参照すれば分かるように、分割型パッドサポート34またはそれに相当するシートパン34として設けることも可能である。シート部分の単一の構造要素または複数の構造要素であって、シートのパッドに少なくとも接する構造要素、あるいは、このようなパッドの近傍に設けられる構造要素、例えばこのようなパッドから最大約10mmの距離に設けられる構造要素は、特にパッドサポートとして理解され、そして、このようなパッドが、このパッドサポートまたはその構成要素によって担持され、あるいは、支持または保持される。この場合、パッドサポートとして、例えば、連続型のパッドサポート(クッションパンまたはシートパン)(図1)、あるいは、分割型シートパンまたは分割型シートバケット(図1a)が可能な対象であり、さらにまたは、管状または開放型補強要素のような構造要素(図1b)もパッドサポートの一部として可能な対象になる。
本発明によれば、拘束装置20がパッドサポート34とシート表面32との間に配置され、その拘束装置20によって、事故で減速した場合に車両シート10の使用者のサブマリン現象を回避または低減できる。拘束装置20は、能動的アンチサブマリン装置として設けられ、本発明によれば、車両シート10への組み込みの可否を(顧客の装着希望または製造者の仕様に基づいて)選択的に決定し得る、いわゆる付加(add−on)要素として特に好適に設計されている。このような能動的アンチサブマリン装置の構成要素は、正面衝突の場合における乗員保護の改善に本質的な貢献をもたらすことができる。このユニットは、付加要素として、ほとんどすべての前部シートおよび後部シートに好適に組み込むことができる。この場合、拘束装置20は、いわゆるJIT工場(ジャスト・イン・タイム工場)において車両シート10に特に好適に組み込むことができる。すなわち、車両または完成シートモジュールの最終組み立てに相対的に近接して、例えばクリップ固定、ネジ込み、リベット付け、接着固定等のような周知の固定技術によってパッドサポート34に固定するだけで、拘束装置20を組み込むことができるのである。この場合、好ましくは、いかなるものであれ溶接操作が不要であること、およびまたは、シート部分30の構造要素において変更が全く不要であることが特に有利である。さらに、本発明によれば、拘束装置20を具備する車両シート10と拘束装置20を具備しない車両シート10との両者に対して、同一のシートパン34または同一のパッドサポート34を使用できる点が特に有利である。これによって、このような車両シート10の製造コストを大幅に低減することができ、あるいは、拘束装置20を任意のこのような車両シートに弾力的に用いるための物流的な付加費用が大きく節減される。
図1の右側には、本発明による車両シート10のシート部分30のシートパン34またはパッドサポート34の斜視図であって、本発明による拘束装置20の部分断面を含む斜視図を示している。
図2は、本発明による車両シート10のシート部分30のシート側部材31を一緒に含むシート部分30のシートパン34またはパッドサポート34の斜視図であって、本発明による拘束装置20の外観を含む斜視図を概略的に示している。また、図2には、シートサブ構造部材15の一部が表現されているが、この場合、サブ構造部材15は、車両シート10の高さ調整および/または傾斜調整用の調整リンク機構として構成され、シート側部材31に連結されている。
図3および図4は、拘束装置20の1つの実施形態を含む本発明による車両シート10のシートパン34を斜視図において概略的にかつ断面化して示している。この場合、拘束装置20は、それぞれ非作動位置21(図3)または作動位置22(図4)として示している。図示した拘束装置20の実施形態において、拘束装置20が、上部外殻46および下部外殻45からなるハウジングを有することが分かる。拘束装置20のハウジングは、例えば、鋼材、アルミニウム材、マグネシウム材、プラスチック材、またはこれらの組合せを含むことができる。また、作動位置22(図4)においては、上部外殻46が、作動手段23によって、上方にすなわちシート表面32(但し図4には示していない)に向かって伸張していることも分かる。これによって、図示していないシート使用者の骨盤(または坐骨隆起)は、正面衝突の場合に、特に早期の時点で大きな抵抗を受け、その結果、使用者の骨盤または臀部のサブマリン現象(いわゆるHポイントまたはヒップポイントの前方への変位(X方向の変位))が回避されるか、あるいは、その可能性または程度が大幅に減少する。従って、好ましくはダッシュボード内に配置されるニーエアバッグおよび/またはベルト緊張手段を、有利に省略または縮小できる。本発明によれば、これは特に3ドア車両の場合に有利である。
拘束装置20の上部外殻46を位置決めするために、拘束装置20は位置決め要素24を含んでいる。この位置決め要素24は、図3および図4において、作動手段23によって駆動される単に1つのレバーとして示されている。この実施形態において、拘束装置20の位置決め要素24は、拘束装置20が非作動位置21と作動位置22との間で動く間に、(シート表面32に平行に延びる)ほぼ水平の回転軸の回りに回転または回動される。これによって、位置決め要素24は、拘束装置20の非作動位置21に相当する後退位置21’から拘束装置20の作動位置22に相当する伸張位置22’に動かされ、その結果、上部外殻46が伸張される。従って、本発明によれば、事故状況において使用者の骨盤領域に対して相対的に大きな衝突表面が提供される。位置決め要素24の別の実施形態は、ほぼプレート形態で構成された位置決め要素24である。ほぼ平坦に延びる位置決め要素24が、ほぼプレート形態で構成された位置決め要素24に相当し、この場合、この要素は、例えば長さ(通常ほぼY方向に向けられる)が幅(非作動位置において通常ほぼX方向に向けられる)の少なくとも2倍であり、その深さはその幅の高々1/3である。位置決め要素としてのこのようなほぼプレート形態の要素の代わりに、本発明によれば、プレートを溶接接合したチューブ、あるいは拘束装置20の別の構造要素を位置決め要素24として用いることも想定できる。
本発明による位置決め要素24は、図3および図4の実施例において、下部外殻45に回転可能または回動可能に連結されるか、あるいは、パッドサポート34に直接連結されている。下部外殻45が存在しない場合には、位置決め要素24の後者の連結方式が特に有利である。位置決め要素24の下部外殻45および/またはパッドサポート34に対する連結は、1つまたは2つまたは3つまたは3つより多い支持点によって行うことができる。2つの支持点は、位置決め要素24の側端部に(Y方向に)有利に設けられる。
本発明によれば、位置決め要素24および/または上部部分46は、所定の変形挙動またはエネルギー消散挙動をもたらすために、複数の材料帯域を好適に有することができる。この場合、異なる材料帯域は、特に異なる変形挙動を有する。位置決め要素24および/または上部部分46は、代替的にまたは重複的に、少なくとも部分的に可逆的に変形可能であるように設けられている。この場合、位置決め要素24は、緩衝装置またはガス圧力ダンパを有することが望ましい。この手段によって、重要度が異なる事故状況に対して、あるいは車両シートの使用者と車両シートとの間に伝達される力が異なる状況に対して、異なる変形挙動を実現できる。例えば、ガス圧力ダンパによって所定の態様でかつ少なくとも部分的に可逆的に、位置決め要素24を変形させることができ、弾性変形によって少なくとも部分的に可逆的に、上部部分46を変形させることができる。
ほぼ水平な回転軸の回りに回転可能な位置決め要素24に代わる方式として、位置決め要素24が、ほぼ垂直な(シート表面32に対してほぼ垂直な)回転軸の回りに回転可能であるか、あるいは、少なくとも部分的に回転可能である方式も、本発明によれば可能であり、この方式を位置決め要素の別の実施形態に基づいて図8に概略的に示している。この場合、位置決め要素24は、例えば、特にカップ状の形状を有する2つの往復運動ピストンを有するが、この2つの往復運動ピストンは、らせん形のピンおよびスロットガイドを含み、さらに相互に回転可能であり、回転の際に、例えば共通の中心軸に沿って軸方向の伸張動作を行う。共通の中心軸の回りに回転する代わりに、1つの往復運動ピストンをその往復運動ピストンに対して、あるいはもう一方の往復運動ピストンに対して偏心回転させる方式も可能である。これによって、拘束装置20に要求される組み込み空間を縮小することができ、また重量も低減できる。位置決め要素24の伸張位置におけるロックは、相互に回転可能に配置された2つの部分間の(ロック手段25としての)好ましくは非対称の歯列によって実現できる。さらに、この方式で設けられる位置決め要素24のエネルギー消散挙動を、比較的簡単に設置することができる。これは、カップ状に構成される往復運動ピストンの中心領域内に、緩衝装置要素、またはガス圧力ダンパ、または発泡金属、ハニカム構造のような変形材料、または変形の際にエネルギーを消散する類似の材料のいずれかを配置することによって実現する。位置決め要素24の第3実施形態の場合には、2つ以上の往復運動ピストンユニットを設けることも可能である。
拘束装置20の別の変形された実施形態を、図4a、図4bおよび図4c、また図9a、図9b、図9c、図9d、図9e、図9f、図9g、図9h、図9i、図9j、図9kおよび図9lに、場合に応じて側面図または斜視図によって示している。
図4aにおいて、上部部分46の可変連結を備えた拘束装置20の変形形態を側面図に示す。拘束装置20の上部部分46の可変連結は、位置決め要素24から離れた側の領域において、レバー101によって実現される。このレバー101は、初期位置(拘束装置20の非作動位置)において、位置決め要素24の方に動かされ、または回動されている。拘束装置20が作動すると、レバー101および位置決め要素24の両者が反対の回転方向に回転し、その場合に、上部部分46は、位置決め要素24の領域(前部)および位置決め要素24から離れた側にあるパッドサポート34の領域の両方において、持ち上げられるか、または位置決めされ、それによって特に良好な拘束作用を実現する。拘束装置20を作動させる時には、位置決め要素のピン102も、長穴103の内部でX方向に動く。この長穴103は、ピン102と共にロック手段25の1つの例を構成するラッチ留め窪みを有するように設計できる。図示していない拘束装置20の1つの変形形態において、上部部分46が、図4aのようにレバー101によって可変に連結されるが、レバーは、非作動位置では位置決め要素24から離れる方向に回転されるように動かされ、位置決め要素24の領域では長穴103はないが、上部部分46の単に回動可能な軸受が存在するので、レバー101と、上部部分46と、位置決め要素24とが四棒リンク機構を形成する。これによって、組み込み空間の最適化を効果的に実現できる。四棒リンク機構の運動機構(または、図4aに対応する上部部分46の可変連結を備えた相応の運動機構)は、図3および図4の実施形態に比べて、拘束装置20のハウジングの上部外殻46が後部領域においても持ち上げられるという利点を有する。これは、拘束機能の改善に寄与し得る。本発明によるこのような四棒リンク機構の運動機構(または図4aに相当する上部部分46の可変連結を備えた相応の運動機構)は、走行方向に平行にも、かつそれに対して横方向にも、あるいはそれに対して斜めにも配置できる。
図4b(非作動位置)および図4c(作動位置)には、次のような上部部分46を備えた拘束装置20のさらに別の変形形態を斜視図で示している。すなわち、この変形形態の場合には、上部部分46が、基本的に概略表示された直線ガイド内においてのみ直線的に動くことができ、それが直線的に、または少なくともほぼ直線的に作動する間に、位置決め要素24が位置決めするのである。この場合、上部部分46は、例えばコイルスプリングとして設けられる作動手段23によって駆動される。あるいは、例えばパイロ技術によって操作されるリニアアクチュエータのような他の型式の作動手段23が設けられる。
本発明によれば、作動手段23を、パイロ技術によるユニットとして、またはパイロ技術によるアクチュエータとして、好ましくはリニアアクチュエータとして設計できることが望ましい。しかし、本発明によれば、作動手段23を、代替的にまたは重複的に、(機械的に貯蔵された作動エネルギーを有する)スプリング付勢要素として、または電磁ユニットとして設計することも可能である。この場合、本発明によれば、作動手段23が車両シート10の使用者に対して比較的近接して配置されているにも拘らず、作動手段23の作動方向が、使用者あるいは使用者の(胴体または骨盤部分のような)敏感な身体部分に決して向けられていないことが特に有利である。これによって、例えば材料欠陥の場合に起きる傷害のリスクを大幅に低減できる。本発明によれば、作動手段23の作動方向は、車両の方向に対してほぼ平行にセットするか、あるいは車両の方向に対して横方向に、または車両の方向に対して斜めに設定するかのいずれかにすることができる。
本発明によれば、ロック手段(図示されていない)を、位置決め要素24の、特にその上端に固定できる。本発明によれば、このようなロック手段によって、拘束装置20の良好な防護機能を確実にする方策を好適に提供し、作動手段23が作動した場合に、システムが非作動位置21に戻らないようにロック手段によって直ちにロックする。これによって、考えられるあらゆる状況において、拘束装置20が完全作動した伸張終端位置に達していない場合でも、可能最大防護作用が実現される。
本発明によれば、拘束装置20は、位置決め要素24の領域内および/または上部部分46(またはカバー46またはハウジングカバー46)の領域内に、エネルギー消散手段としての変形要素を有する。この目的のために、例えば、拘束装置20の作動位置22に動かされる(すなわち伸張される)上部外殻46を次のように構成することができる。すなわち、正面衝突の場合に乗員の骨盤に対して生じる力、つまり乗員がシートパン34またはシート外殻34またはパッドサポート34に衝突する結果として、あるいは乗員が上部外殻46に衝突する結果として乗員の骨盤に発生する力が、例えば上部外殻46そのものの適切なエネルギー吸収によって著しく低減されるように、上部外殻46を構成することができる。さらに、位置決め要素24の構造を、(最大点において)生じる力、特に骨盤への力が低減されるように、(例えばプレート、任意の種類の発泡体、ハニカム構造等によって)構成することも可能である。さらに、本発明によれば、位置決め要素24または上部部分46に属さない拘束装置20の領域内に、別の変形要素を設けることも可能である。
図9a、図9b、図9c、図9d、図9eおよび図9fにおいて、拘束装置20のさらに別の2つの変形形態を、作動位置(図9b、図9c、図9eおよび図9f)または非作動位置(図9aおよび図9d)の斜視図として示している。この場合、側部に配置されるロック用レバー84にスロット80が設けられている。スロット80は始動部分81および終端部分82を有する。位置決め要素24と共に動くことができるボルト85は、スロット80に嵌合して、拘束装置20が作動位置に動くと、始動部分81から終端部分82に向かう方向にスロット80に沿って動く。ここで、スロット80の形状は、位置決め要素24またはボルト85の逆の動きが、少なくとも拘束装置20の(完全に)能動化された位置または作動位置22において防止されるように構成される。図9a、図9bおよび図9cに示す変形実施形態と図9d、図9eおよび図9fに示す変形実施形態との間の差異は、基本的にスロット80の形状に基づくものであり、図9a、図9bおよび図9cの変形実施形態がどちらかと言えば折り曲げられた形状のスロット80を有するのに対して、図9d、図9eおよび図9fの変形実施形態はどちらかと言えば曲線化された形状のスロット80を有する。この場合のロック用レバー84は、非作動位置に相当するその位置の方向に、予備張力をかけるか、またはスプリング付勢することができる。
図9g(非作動位置)および図9h(作動位置)に示すロック手段25のさらに別の変形実施形態によれば、スロット80の代わりに、同様にボルト85用の始動部分および終端部分82’を有する操作カム80’が設けられている。この場合、操作カムはその終端部分に窪みを有しており、これによって事故状況において存在する力の比率のために、位置決め要素24と共に動くボルト85が始動部分に戻ることができない、または、逆の動きがほとんど起こり得ないことになる。この場合も同様に、ロック用レバー84は、非作動位置に相当するその位置の方向に、予備張力をかけるか、またはスプリング付勢することができる。
図9i(非作動位置)および図9j(作動位置)に示すロック手段25のさらに別の変形実施形態によれば、内法が縮減された開口を有する始動部分81と、内法が拡大された開口を有する終端部分82とを有するスロット80が、次のような態様に形成されている。すなわち、ボルト85は第1軸方向部分85’において直径の小さい始動部分81と相互作用し、ボルト85がスロット80の終端部分82に達すると(これは位置決め要素24が作動位置22の方向に動く間に生じることになる)、ボルトはスプリング手段86によって軸方向にスプリング付勢されているために、直径が大きいボルトの第2軸方向部分85’’が終端部分82に押し込まれるような態様として形成されている。
図9k(作動位置)および図9l(非作動位置)に示すロック手段25のさらに別の変形実施形態によれば、位置決め要素24が作動位置22に達すると、その逆の動きが防止されるように、位置決め要素24が、上部部分46、特に上部部分46の孔または窪み46’と相互作用する方式が用いられる。この場合、位置決め要素24は、上部部分の窪み46’に嵌合するためのロック用ラグ24’’’を有するように特に配慮されている。さらに、上部部分46が、位置決め要素24の位置決めの動きを制限するストッパ、例えば適合フランジを有することを追加的に想定することができる。
図5、図6、図7および図7aは、それぞれ、このタイプのエネルギー消散手段の実施形態を備えた本発明による拘束装置20の詳細部分を側面図として概略的に示したものである。図において、下部部分45と、上部部分46と、位置決め要素24と、作動手段(単に破線で示している)とを概略的に示している。
図5に示すエネルギー消散手段または変形要素の実施形態において、このタイプのエネルギー消散手段は、位置決め要素24内部の第1材料領域24’として構成された変形要素の形で設けられている。この場合に、第1材料領域24’は、例えば位置決め要素24内部の第2材料領域24’’よりも小さい程度に、あるいは大きい程度に圧縮し得るように構成された材料領域である。本発明によれば、これは、例えば第1材料領域24’を第2材料領域とは異なる材料で構成することによって、すなわち、塑性変形に関してより柔らかい材料で構成することによって実現できる。本発明によれば、第1材料領域24’内部の材料構造を第2材料領域24’’と異なるものにすることによって、同様の効果が得られる。この手段によって、例えば、事故状況においてシート使用者の加速力による力(図5に矢印Fで示す)が加えられた場合に、位置決め要素24が第1材料領域24’において圧縮され、その結果、事故の場合に運動エネルギーが第1材料領域24’の塑性変形に変換され、従って使用者およびシート構造の残りの部分には小さい力または低いピーク値の力しか作用しないようにすることができる。これによって、使用者の健全性が守られ、かつシート構造の負荷が低減されるので、従ってシート構造をコスト面で効率的に設計することができる。代わりの方式として、本発明によれば、第1事故段階においては第1材料領域24’が変形し、第2事故段階(例えばより大きな力が作用した場合)においては第2材料領域24’’が変形するように、位置決め要素24の内部に複数の材料領域24’、24’’を設けることも可能である。この手段によって、変形要素24’、24’’の段階化された変形挙動を実現できる。この変形挙動は、(例えば、使用者の身長および体重が異なることによって、および事故前の使用者の着座位置が異なることによって引き起こされる)異なる事故状況および力の比率に対して、特に容易かつ柔軟に応答する。このような複数の材料領域24’、24’’は、例えば鋼およびアルミニウムの組合せ、またはマグネシウムおよびアルミニウムの組合せの形で設けることができる。
図6は、緩衝装置51またはガス圧力ダンパ51の形の変形要素を備えた変形実施形態を側面図で概略的に示したものである。これは、事故による負荷状況に基づいて、位置決め要素24の部分的に可逆的な動作、すなわちスプリングバックの動きを可能にする。
図7は、上部部分46に結合された(または上部部分46の一部分として設けられた)参照番号52を変形要素として示した変形実施形態を示したものである。使用者の側から上部部分46に力が作用すると、上部部分46自体が最初に変形し(図示していない)、次いで、上部部分46が(例えば図5または図6の実施形態のような)位置決め要素24の圧縮によって下向きに押し込まれる。その結果、参照番号52の変形要素が塑性変形する。これに代わる変形要素の別の実施形態として、通常は支持要素(この場合例えばボルト)の動きを阻止するシアウェブ材(詳細には図示していない)を有する長穴53を形成することができる。事故の場合には、このタイプのウェブ材が衝撃によって変形する。
図7aは位置決め要素24のみの概略断面図を示したものである。この位置決め要素24は、(図示の例では)エネルギー消散手段またはエネルギー貯蔵手段としてのスプリング要素によって相互に連結された2つの部分から構成されているものとして表されている。
本発明によれば、図5および/または図6および/または図7および/または図7aによる変形実施形態を互いに組み合わせることを、同様に想定している。これによって、異なる負荷状況に対して特に弾力的に対応することができる。
図8は、シート表面に対してほぼ垂直な回転軸の回りに少なくとも部分的に回転可能な位置決め要素24を備えた本発明による拘束装置20の詳細部分を側面図として概略的に示したものである。互いに対してらせん状に回転可能なカップ状のシリンダ要素の場合には、材料領域24’、24’’の形の変形要素、さもなければ緩衝装置51の形、または渦巻きスプリングの形、あるいは一般的なスプリング要素の形の変形要素をその中心領域内に設けることができる。図8に概略的に示すロック手段25の実施形態においては、一緒に位置決め要素24を形成する2つの入れ子式相互嵌合シリンダ要素の間に、非対称の歯列41が設けられている。この場合、非対称の歯列41は、シリンダ要素の伸張動作は可能であるが、逆の動きは不可能であるように構成されている。ロック手段25のこの実施形態で図示していない1つの変形形態によれば、シリンダ要素の周囲領域にらせん状に配置されたピンのスロットガイドまたはピンのガイドトラックが、作動位置(シリンダ要素の伸張位置)に相当する端部部分において縮小したピッチを有し、この縮小ピッチによって、拘束装置20が解放される場合に拘束装置の非作動位置への動きを防止するという方式が提供される。
10 車両シート
15 シートのサブ構造部材
16 フロアサブアセンブリ
20 拘束装置
21 非作動位置
21’ 後退位置
22 作動位置
22’ 伸張位置
23 作動手段
24 位置決め要素
24’、24’’ 変形要素としての位置決め要素の材料領域
30 シート部分
31 シート側部材
32 シート表面
33 パッド/シートクッション
34 シートパン/パッドサポート/シートバケット
45 下部外殻
46 上部外殻
51 変形要素としての緩衝装置/ガス圧力ダンパ
52 変形要素としての材料領域
53 変形要素としての長穴
80 スロット
80’ 操作カム
81 始動部分
82 スロットの終端部分
82’ 操作カムの終端部分
84 ロック用レバー
85 ボルト
85’ ボルトの第1軸方向部分(小さい直径)
85’’ ボルトの第2軸方向部分(大きい直径)

Claims (12)

  1. シート部分(30)と、事故による減速で車両シート(10)上にいる乗員のサブマリン現象を防止する拘束装置(20)とを有する車両シート(10)であって、
    前記拘束装置(20)を後退した非作動位置(21)にセットすることができ、かつ前記拘束装置(20)を伸張した作動位置(22)に動かすことができ、前記シート部分(30)は車両の縦方向において両側にシート側部材(31)を有し、かつ前記シート部分(30)はシート表面(32)を規定するパッド(33)と前記パッド(33)の下部に設けられるパッドサポート(34)とを有し、
    前記拘束装置(20)は、前記パッドサポート(34)と前記パッド(33)との間であり、尚且つ前記シート側部材(31)から距離をおいた位置に位置決め要素(24)を有し、前記位置決め要素(24)と前記パッド(33)との間に上部部分(46)を有し、
    前記位置決め要素(24)および/または前記上部部分(46)は、エネルギー消散手段としての少なくとも1つの変形要素(24’、24’’、51、52、53)を有することを特徴とする車両シート(10)。
  2. 前記拘束装置(20)は作動手段(23)、特にパイロ技術のリニアアクチュエータおよび/または可逆操作のアクチュエータを有し、
    前記作動手段(23)は前記パッドサポート(34)と前記パッド(33)との間に配置されるか、あるいは前記パッドサポート(34)と前記パッド(33)との間に支持され、
    前記作動手段(23)の操作は時間的に事故による減速が生じる前にすでに発動されていることを特徴とする請求項1に記載の車両シート(10)。
  3. 前記位置決め要素(24)は、前記作動手段(23)によって動かすことができるように設けられ、
    前記位置決め要素(24)は前記作動手段(23)によって、前記拘束装置(20)の非作動位置(21)に相当する後退位置(21’)から前記拘束装置(20)の作動位置(22)に相当する伸張位置(22’)に動かすことができることを特徴とする請求項1または2に記載の車両シート(10)。
  4. 前記位置決め要素(24)は、前記位置決め要素(24)の後退位置(21’)と伸張位置(22’)との間においてほぼ水平に延びる軸の回りの回転が可能であり、好ましくはプレート形状の位置決め要素(24)として設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両シート(10)。
  5. 前記ほぼ水平に延びる軸の回りの回転は走行方向における回転として与えられることを特徴とする請求項4に記載の車両シート(10)。
  6. 前記位置決め要素(24)の後退位置(21’)と伸張位置(22’)との間において、前記位置決め要素(24)の少なくとも一部分がほぼ垂直に延びる軸の回りに回転することができ、前記位置決め要素(24)は、好ましくは入れ子式に伸張可能な位置決め要素(24)として構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両シート(10)。
  7. 前記位置決め要素(24)および/または前記上部部分(46)は異なる材料の複数の材料帯域(24’、24’’、52)を有し、異なる材料帯域(24’、24’’、52)は異なる変形挙動を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両シート(10)。
  8. 前記位置決め要素(24)および/または前記上部部分(46)は少なくとも部分的に可逆的に変形可能であるように設けられ、前記位置決め要素(24)は好ましくは緩衝装置(51)またはガス圧力ダンパ(51)を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の車両シート(10)。
  9. 前記拘束装置(20)はさらに別の変形要素を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の車両シート(10)。
  10. 前記拘束装置(20)はロック手段(25)を有し、前記ロック手段は好ましくは前記位置決め要素(24)の動きによって動作可能となるように設けられ、
    さらに、前記ロック手段(25)はスロットおよびボルト(85)を有し、前記ボルト(85)は直径が小さい軸方向の第1部分(85’)と、直径が大きい軸方向の第2部分(85’’)とを有し、前記ボルト(85)の軸方向の動きはロック操作をもたらすことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の車両シート(10)。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の車両シート(10)用の拘束装置(20)。
  12. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の車両シート(10)の製造方法であって、
    第1段階において車両シート(10)の支持構造体を製造し、
    第2段階において前記拘束装置(20)を前記パッドサポート(34)に、押進操作および/または摺動操作および/またはクリップ操作および/または接着固定および/またはネジ込みおよび/またはリベット付けによって連結することを特徴とする製造方法。
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