JP2009500344A - マルチドメインタンパク質治療薬を製造するための統合的手法 - Google Patents

マルチドメインタンパク質治療薬を製造するための統合的手法 Download PDF

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Abstract

本発明は、初期スクリーニング工程に治療および/または製剤化および/または製造上の要件を組み込む、治療用タンパク質薬剤開発の方法を提供する。この手法は、所望の治療特性を備えると決定されたドメインの複数の様々な変異体をスクリーニングすることにより、所望の治療および/または製剤化特性を備える1以上の変異体を同定し、同定したドメイン変異体を用いて、完全なマルチドメインタンパク質を構築することを含む。本発明はまた、製剤におけるマルチドメインタンパク質の貯蔵寿命を決定する方法も提供する。この方法は、アンフォールディングにより、溶液中のタンパク質の凝集を招く当該タンパク質のドメインの熱変性および/または再生曲線を決定することを含む。この方法は、変性/再生曲線に基づき、マルチドメインタンパク質の貯蔵寿命を評価する。本発明はまた、マルチドメインタンパク質を操作することにより、それらの治療および/または製剤化特性を改善する方法も提供する。

Description

1.発明の分野
本発明は、高い治療効力と最適な製剤化特性(例えば、高い溶解性および長い貯蔵寿命)の両方を併せ持つタンパク質の生産を可能にする治療用タンパク質の開発方法に関する。本発明はまた、マルチドメインタンパク質製剤の貯蔵寿命の指標を提供する1以上の測定基準を評価する方法にも関する。
2.発明の背景
現在、非常に多様な生物学的に活性のタンパク質およびポリペプチドは、薬物としての用途に十分多くの量を生産することができる。例えば、ハイブリドーマ方法および組換えDNA技術の開発により、ラージスケールで抗体を生産することができるようになった。これによって、様々な疾患を治療するための、タンパク質(例えば、抗体)を含む医薬組成物の広範な使用が可能になった。このような治療法では、通常、高濃度のタンパク質を患者に投与する必要がある。
しかし、所望の治療特性を備えたタンパク質の溶解度は十分に高くないことがある。溶解度が高いタンパク質であっても、高濃度液体製剤は貯蔵寿命が短い傾向があり、貯蔵中の化学および物理的不安定性のために、生物活性を失う可能性がある。加えて、タンパク質は一般に、高濃度で粘度が高くなることから、タンパク質治療薬のパッケージング、貯蔵および配達を複雑にすることになる。さらに、アミド分解、ラセミ化、加水分解、酸化、β脱離もしくはジスルフィド交換によって化学的不安定が、またタンパク質変性、凝集、沈降もしくは吸着により物理的不安定が起こりうる。中でも、凝集、アミド分解および酸化は、抗体分解の最も一般的原因であることがわかっている(Wangら、1988, J. of Parenteral Science & Technology 42 (Suppl.):S4-S26;Clelandら、1993, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 10(4):307-377;Manningら、1989, Pharm. Res. 6:903-918)。液体タンパク質組成物の貯蔵中に凝集体が形成されると、タンパク質の生物活性に有害な影響を及ぼし、治療効力の喪失および/またはヒトにおける免疫原性の増大を招きうる。また、凝集体の形成は、注入装置によりタンパク質組成物を投与するとき、管、膜もしくはポンプの閉塞といった他の問題を引き起こすこともある。
液体医薬製剤におけるタンパク質の不安定性のために、タンパク質治療薬は、再形成に適した液体媒質と一緒に凍結乾燥した形態でパッケージングされることが多い。凍結乾燥は組成物の貯蔵安定性を高めるが、多くのタンパク質は、乾燥状態での貯蔵のために(Pikal, 1990, Biopharm. 27:26-30)、あるいは液体製剤として再形成する際の凝集体形成または触媒活性の喪失によって(例えば、Carpenter ら、1991, Develop. Biol. Standard 74:225-239;Broadheadら、1992, Drug Devel. Ind. Pharm. 18:1169-1206;Mumenthalerら、1994, Pharm. Res. 11:12-20;Carpenterら、1988, Cryobiology 25:459-470;ならびにRoser, 1991, Biopharm. 4:47-53を参照)、活性の低下を呈示する。また、抗体の凍結乾燥製剤は、凍結乾燥のために長時間の工程と、製造のために高いコストを必要とする。凍結乾燥製剤は、患者への投与の前に、担当医師により無菌かつ正確に再形成しなければならない。再形成の手順は煩雑で、再形成後の時間的制約のために、患者への製剤の投与に大きな不都合が生じ、適切に再形成されなかったり、再形成した用量を6時間以内に使用しなかったりして、廃棄しなければない場合、有意な無駄を招くことになる。従って、より安定し、かつ効能がほとんどの失われずに容易に再形成できる凍結乾燥製剤が望ましい。
凍結乾燥製剤に代わる望ましい薬剤は、再形成した凍結乾燥製剤と同等か、それより高い濃度を有するタンパク質治療薬の液体製剤である。このようなタンパク質治療薬の液体製剤は、再形成を必要とせずに、被検者に投与することができるため、医師が行う患者へのタンパク質治療薬の投与をはるかに速くかつ容易にすることができる。加えて、液体製剤タンパク質治療薬の製造方法は、液体製剤の全製造工程が水溶液中で実施され、凍結乾燥のような乾燥工程を必要としないため、凍結乾燥製剤の製造方法より単純かつ効率的である。従って、費用有効性も高い。そのため、タンパク質治療薬の高濃度で、すぐに使用可能な液体製剤の開発が、生物薬剤産業において大きな関心を集めている。
液体および凍結乾燥両方の医薬製剤におけるタンパク質およびポリペプチドの安定性は、例えば、pH、イオン強度、温度、凍結−解凍の反復サイクル、ならびに加工中に起こるような機械的せん断力への暴露により、影響を受ける可能性がある。様々な高度安定性の高濃度液体製剤の開発が成功している。例えば、4℃で貯蔵すると5年以上安定な抗体の液体製剤が報告されている。米国特許第6,524,102号は、安定化液体ポリペプチド含有医薬組成物を開示している。この組成物は、ポリペプチドの主要安定剤の役割を果たすアミノ酸塩基と、ポリペプチドの安定性に許容可能なpH範囲内で溶液を緩衝するための酸および/またはその塩形態とを含む。組成物はほぼ等張力性である。前記’102特許はまた、液体医薬組成物中のポリペプチドの安定性を高める方法、およびこのような医薬組成物の貯蔵安定性を高める方法も開示している。凍結乾燥製剤は普及しており、その安定性および再形成特性は、安定剤および/または賦形剤の添加により改変することができる。しかし、このような液体および凍結乾燥製剤の開発は、具体的なタンパク質治療薬によってまちまちであり、最適化のための有意な労力を要することが多い。従って、薬学的に有効な濃度のタンパク質治療薬を含む医薬組成物の安定性を向上させることは未だに課題のままである。さらに別の課題は、容易に製造および/または高濃度で投与するのに十分低い粘度を有する製剤を提供することである。
治療用タンパク質(例えば、抗体)開発の伝統的手法では、まず、所望の活性および/または特性(例えば、結合アフィニティー)を有するタンパク質を作製する。次に、タンパク質を製剤化開発に付すことにより、最適な製剤および貯蔵条件を決定する。伝統的スクリーニングおよび最適化工程では、いずれも時間のかかる長々しい安定試験を必要とするため、限られた数の候補製剤しか試験することができない。万が一、タンパク質が製剤化要件を満たさない場合には、薬剤開発プロセス全体が実質的に失敗することになる。従って、薬剤開発プロセスの初期段階に製剤化要件を組み込むことができる方法が求められる。加えて、所望の貯蔵寿命は1年以上の長さとなりうることから、リアルタイムでの薬剤のモニタリングに依存する方法は非効率的である。製剤を高速でスクリーニングする方法を開発する試みがなされている。例えば、米国特許第6,232,085号は、温度変化によって変性しうるタンパク質の貯蔵寿命を最適化する多変量法を開示している。この方法は以下のことを含む:多数の様々な分子、または多数の容器の各々における様々な生化学的条件のうちの1以上と標的分子を接触させ、上記多数の容器を同時に加熱し、該容器の各々において加熱による標的分子の熱変性に伴う物理的変化を測定し、上記容器の各々について温度の関数としての標的分子の熱変性曲線を作成し、該変性曲線の各々を(i)他の熱変性曲線の各々、および(ii)一連の対照生化学的条件下の標的について得られた熱変性曲線とそれぞれ比較した後、熱変性曲線の各々における変化に従い、多数の様々な分子または様々な生化学的条件の効力を順位付ける。しかし、このような方法は煩雑であり、しかも、製剤化しようとするタンパク質の固有性質または特性(例えば、pI及びTm)を扱っていない。
タンパク質の固有性質は、その製剤化特性に影響を与えるだけでなく、その治療用途にも密接に関わってくると考えられる。例えば、様々な研究から、毒素に融合させた抗体の細胞ターゲッティングFv部分からなる組換え毒素は、非特異的用量制限的毒性(例えば、非特異的肝毒性)を有するが、これは、該分子のFv部分の高い等電点(pI)に起因することが明らかにされている。部位特異的突然変異誘発により、これら組換え毒素のFv部分のpIを低下させると、それらの抗腫瘍活性を改変、低下させることなく、動物モデルでその非特異的毒性が低減した(Ondaら、1999, J. Immunol., 163:6072-77、Ondaら、2001, Cancer Res., 61:5070-77)。同様に、化学的改変により放射性標識抗腫瘍dsFv(ジスルフィド安定化Fv)のpIを低下させると、腎クリアランスが増大し、これによって腎臓内の放射能の蓄積が減少した(Kimら、2002, Nucl. Med. Biol., 29:795-801)。
その他の研究では、抗体の経内皮移動およびエンドサイトーシスがカチオン化により増強され、pIを高めた。カチオン化抗体はその結合アフィニティーを保持し、最小限の非特異的毒性または免疫原性で、急速に細胞に内在化した(Pardrigeら、1998, J. Pharmaol. Exp. Therap., 286:548-54)。また、抗体のカチオン化は、血液−脳関門を介した抗体の送達を増強することもわかっている(Trigueroら、1989, PNAS, 86:4761-4765)。これらのデータは、特定の治療用タンパク質、例えば、抗体、または抗体ドメインからなるキメラタンパク質について最適pIが存在しうることを示している。特に、毒素を保有するタンパク質は、最適治療応答、あるいは、細胞内で、または脈管外コンパートメント内で要求される応答のために大きな用量が必要である。
従って、タンパク質の固有性質に基づくタンパク質製剤の貯蔵寿命および/または臨床特性を速やかに示すことができる、より効率的な方法が求められる。加えて、治療タンパク質(例えば、抗体)を開発する際、pIおよびTmのような特定の固有性質は一般に選択基準ではないため、治療に活性のタンパク質が準最適製剤または臨床特性を有するとされている可能性がある。開発の下流(downstream)、または開発と同時にpIおよびTmのような特定の固有性質を操作する方法により、好ましい製剤および治療特性を有するタンパク質の高速生産が可能になるであろう。
本明細書に示す参照文献の記述または引用は、これらの参照文献が、本発明より先行するとの承認として解釈すべきではない。
3.発明の概要
本発明は、マルチドメインタンパク質の特定の治療および/または製剤化および/または製造特性が、タンパク質を形成する個々のドメインを調べることにより評価できるという、本発明者らの知見に一部基づく。タンパク質ドメインの物理的および/または化学的および/または構造的性質を表す1以上の測定基準を決定した後、これらの測定基準に基づき個々のドメインを選択する。インタクトなマルチドメインタンパク質に関して、または単離されたドメインとして、個々のドメインを調べてもよい。例えば、抗体のFabまたはFcドメインの物理的/化学的(構造的を含む)性質は、抗体の生体分布および/または非特異的毒性および/または安定性および/または溶解性および/または粘性を決定しうる。全タンパク質の作製前、または作製と同時に、最適な治療および/または製剤化特性を備える適切なドメインの選択を組み込む方法は、薬剤開発全体の効率を高める。従って、この手法により、高い治療効力と最適な製剤化特性(例えば、高い溶解度および長い貯蔵寿命)の両方を備えるタンパク質の作製が可能になる。
本発明は、初期スクリーニングおよび開発工程に治療および/または製剤化および/または製造上の要件を組み込む、治療用タンパク質開発の統合的方法を提供する。この方法は、タンパク質の1以上の個別ドメインを評価することにより、所望の生物活性と所望の治療および/または製剤化特性の両方を備えるドメインを同定することを含む。例えば、所望の生物活性を有すると決定されたドメインの複数の様々な変異体をスクリーニングして、所望の治療および/または製剤化特性、例えば、所望の安定性および/または溶解性を有する1以上の変異体を同定することができる。次に、同定したドメイン変異体を全マルチドメインタンパク質の構築に用いる。例えば、治療用抗体の開発では、発現ライブラリー(例えば、ファージ展示ライブラリー)のアフィニティースクリーニング後、高い結合アフィニティーを有するFabドメインをそれらの製剤化特性、例えば、溶解性および/または安定性についてスクリーニングすることができる。所望の製剤化特性、例えば、高い溶解性および/または安定性を有する1以上のFabドメインを選択し、各々を適切なFcドメインと一緒に全抗体の構築に用いる。また、様々な候補(変異体/改変ドメインを含む)を製剤化特性、例えば、溶解性および安定性についてスクリーニングすることにより、所望の製剤化特性を有するFcドメインを選択することも可能である。次に、構築した抗体を製剤開発に供する。
本発明はさらに、所望の治療および/または製剤化特性、例えば、生体分布、非特異的毒性、溶解性および/または安定性を備えるようにマルチドメインタンパク質の1以上のドメインを操作することにより、治療用マルチドメインタンパク質を開発する方法も提供する。例えば、所望の生物活性を有するドメインは、該ドメイン内の1以上のアミノ酸残基を置換することにより改変して、改変ドメインまたは改変ドメインの集団を作製することができ、次に、これらをその治療特性、例えば、生体分布および/または非特異的毒性についてスクリーニングする。所望の治療特性を有する1以上の改変ドメインを選択し、各々を全マルチドメインタンパク質の構築に用いる。
本発明はまた、液体タンパク質製剤におけるマルチドメインタンパク質の熱変性および/または再生挙動に基づき、マルチドメインタンパク質を含むタンパク質製剤の貯蔵寿命、すなわち、長期安定性を評価する方法も提供する。マルチドメインタンパク質は、アンフォールディング(unfolding)により、液体タンパク質製剤におけるマルチドメインタンパク質の凝集を招くドメインを含む可能性があると考えられる。液体タンパク質製剤は、特定の濃度、例えば、濃度:約5〜300 mg/mlのマルチドメインタンパク質の溶液でよい。液体タンパク質製剤はまた、他の物質、限定するものではないが、塩、リガンド、補因子などを含んでいてもよい。本方法を用いて、最適条件、例えば、成分、および/またはこのような各成分の最適濃度を決定することもできる。
本発明は、1以上のマルチドメインタンパク質を作製する方法であって、(a)複数の候補ドメインの各々について、該ドメインの1以上の治療および/または製剤化および/または製造特性を表す1以上の測定基準を評価するが、その際、複数の候補ドメインが、予め定めた閾値レベルを超える生物活性を呈示する、ステップと;(b)上記測定基準に基づき、複数のドメインから1以上のドメインを選択するステップと;(c)随意に、ステップ(b)で選択した各ドメインと1以上の他のドメインを用いて、完全マルチドメインタンパク質を構築するステップとを含む、上記方法を提供する。一実施形態では、本発明の方法を用いて、1以上の抗体を作製する。具体的実施形態では、ドメインは抗原結合ドメイン(例えば、Fabドメイン)である。一実施形態では、本発明の測定基準は、候補ドメインの安定性を表す1以上のパラメーターを含む。別の実施形態では、本発明の測定基準は、候補ドメインの溶解性、生体分布または非特異的毒性を表す1以上のパラメーターを含む。具体的実施形態では、候補ドメインの安定性を表すパラメーターは、ドメインのTm値を含み、候補ドメインの溶解性、生体分布または非特異的毒性を表すパラメーターは、ドメインのpI値を含む。本発明の測定基準はさらに、様々なpH値、様々な温度、様々なせん断応力、および様々な凍結/解凍サイクルからなる群より選択される1以上の様々な条件下における候補ドメインの安定性を表す測定基準を含んでもよい。
複数の候補ドメインは、抗原結合ドメイン(例えば、Fabドメイン)でよい。このような場合、生物活性は、標的抗原に対する抗原結合ドメインの結合アフィニティーであってもよい。特定の実施形態では、抗原結合ドメインの少なくともいくつかは抗原の様々なエピトープに結合する。具体的実施形態では、複数の抗原結合ドメインは、抗原と一緒に発現ライブラリー(例えば、ファージ展示ライブラリー)をスクリーニングすることにより得られる。別の具体的実施形態では、複数の抗原結合ドメインは、複数のモノクローナル抗体を消化することにより得られる。次に、選択した各抗原結合ドメインを1以上の他のドメイン(例えば、定常領域ドメイン)と結合させることにより、1以上のマルチドメインタンパク質を作製する。
複数の候補ドメインは、定常領域ドメインでよい。このような場合、生物活性は、定常領域ドメイン受容体および/またはリガンド(例えば、FcRn、C1q、FcγRs)に対する定常領域ドメインの結合アフィニティーおよび/またはエフェクター機能(例えば、ADCC、CDC)を媒介する能力であってもよい。具体的実施形態では、複数の定常領域ドメインは、定常領域ドメインリガンドと一緒に発現ライブラリーをスクリーニングすることにより得られる。次に、選択した各定常領域ドメインを別のドメイン(例えば、抗原結合ドメイン、細胞受容体ドメイン)と結合することにより、1以上のマルチドメインタンパク質を作製する。
一実施形態では、本発明の測定基準は、抗原結合ドメイン(例えば、Fabドメイン)の安定性を表す1以上のパラメーターを含む。別の実施形態では、測定基準は、抗原結合ドメインの溶解性、生体分布または非特異的毒性を表す1以上のパラメーターを含む。具体的実施形態では、抗原結合ドメインの安定性を表すパラメーターは、抗原結合ドメインのTm値を含み、抗原結合ドメインの溶解性、生体分布または非特異的毒性を表すパラメーターは、抗原結合ドメインのpI値を含む。本発明の測定基準はさらに、様々なpH値、様々な温度、様々なせん断応力、および様々な凍結/解凍サイクルからなる群より選択される1以上の様々な条件下における抗原結合ドメインの安定性を表す測定基準を含んでもよい。
一実施形態では、本発明の測定基準は、定常領域ドメイン(例えば、Fcドメイン)の安定性を表す1以上のパラメーターを含む。別の実施形態では、本発明の測定基準は、定常領域ドメインの溶解性、生体分布または非特異的毒性を表す1以上のパラメーターを含む。具体的実施形態では、定常領域ドメインの安定性を表すパラメーターは、定常領域ドメインのTm値を含み、定常領域ドメインの溶解性、生体分布または非特異的毒性を表すパラメーターは、定常領域ドメインのpI値を含む。本発明の測定基準はさらに、様々なpH値、様々な温度、様々なせん断応力、および様々な凍結/解凍サイクルからなる群より選択される1以上の様々な条件下における定常領域ドメインの安定性を表す測定基準を含んでもよい。
一実施形態では、1以上のマルチドメインタンパク質を作製する方法は、選択したドメインを用いて完全マルチドメインタンパク質を構築する前に(前記ステップ(c)の前に)、(i)他の候補ドメインの各々について1以上の測定基準を評価するステップと;(ii)測定基準に基づいて、複数の他の候補ドメインからもう一つのドメインを選択するステップとをさらに含む。一実施形態では、上記測定基準は、第2ドメインの安定性を表す1以上のパラメーターを含む。別の実施形態では、本発明の測定基準は、第2ドメインの溶解性、生体分布または非特異的毒性を表す1以上のパラメーターを含む。一実施形態では、第2ドメインの安定性を表すパラメーターは、第2ドメインのTm値を含み、第2ドメインの溶解性、生体分布または非特異的毒性を表すパラメーターは、第2ドメインのpI値を含む。本発明の測定基準はさらに、様々なpH値、様々な温度、様々なせん断応力、および様々な凍結/解凍サイクルからなる群より選択される1以上の様々な条件下における第2ドメインの安定性を表す測定基準を含んでもよい。一実施形態では、第2ドメインは定常領域ドメインである。具体的実施形態では、第1ドメインが抗原結合ドメイン(例えば、Fabドメイン)であり、第2ドメインは定常領域ドメインである。
具体的実施形態では、本発明は、所与の標的に結合する1以上の抗体を作製する方法であって、(a)予め定めた閾値レベルを超える標的との結合アフィニティーを呈示する複数の候補抗原結合ドメインを同定するステップと;(b)該複数の候補抗原結合ドメインの各々についてTmおよび/またはpI値を決定するステップと;(c)そのTmおよび/またはpI値に基づき、複数のドメインから1以上の抗原結合ドメインを選択するステップと;(d)ステップ(c)で選択した各抗原結合ドメインと1以上の他のドメインを用いて抗体を構築するステップとを含む、上記方法を提供する。一実施形態では、抗原結合ドメインの少なくともいくつかは標的の様々なエピトープに結合する。
本発明はまた、所与の標的に結合する1以上のマルチドメインタンパク質、例えば、抗体をスクリーニングする方法であって、(a)複数のマルチドメインタンパク質の各々について、マルチドメインタンパク質の候補ドメインの1以上の治療および/または製剤化および/または製造特性を表す1以上の測定基準を評価するが、その際、複数の候補マルチドメインタンパク質が、予め定めた閾値レベルを超える生物活性を呈示する、ステップと;(b)上記マルチドメインタンパク質の1以上の治療および/または製剤化および/または製造特性を表す測定基準に基づき、複数のドメインから1以上のマルチドメインタンパク質を選択するステップとを含む、上記方法も提供する。
本発明はまた、他の生物活性を有意に改変することなく、1以上の治療および/または製剤化および/または製造特性が改善されるようにマルチドメインタンパク質を操作する方法も提供する。この方法は、1以上の改変(例えば、アミノ酸置換)の実施を含むが、その際、この改変(例えば、アミノ酸置換)は、マルチドメインタンパク質の1以上の特徴を改善するようなものである。
他の生物活性を有意に改変することなく、1以上の治療および/または製剤化および/または製造特性が改善されるようにマルチドメインタンパク質を操作する前記方法において、マルチドメインタンパク質は抗体でよく、生物活性は、限定するものではないが、生物活性:抗体の抗原結合、血清半減期、補体固定、Fc受容体結合および抗原依存性細胞傷害性の1以上を含む。
本発明はまた、溶液中のマルチドメインタンパク質の長期安定性を評価する方法も提供し、その際、長期安定性とは、予め定めた温度(例えば、4℃)で予め定めた期間(例えば、1〜6ヶ月)貯蔵時の凝集が5%未満、10%未満、もしくは20%未満であるものとして定義する。本方法は、(a)マルチドメインタンパク質の溶液を用意するステップと;(b)該マルチドメインタンパク質溶液を加熱することによりマルチドメインタンパク質の1以上のドメインを変性させるステップと;(c)冷却時にドメインがリフォールディング(refolding)するか否かを決定するステップと;(d)ステップ(c)でドメインがリフォールディングすると決定された場合、溶液において長期安定性を持つものとして上記マルチドメインタンパク質を分類するステップとを含む。
本発明はまた、マルチドメインタンパク質において、アンフォールディングにより、溶液中の該マルチドメインタンパク質の凝集を引き起こす1以上のドメインを同定する方法であって、(a)該マルチドメインタンパク質の溶液を加熱することにより1以上のドメインを変性させるステップと;(b)冷却時にドメインがリフォールディングするか否かを決定するステップと;(c)ステップ(b)で冷却時にリフォールディングしない1以上のドメインを同定し、これにより、アンフォールディングにより、溶液中のマルチドメインタンパク質の凝集を引き起こす1以上のドメインを同定するステップとを含む。
本発明はまた、溶液中での長期安定性が改善されるようにマルチドメインタンパク質を操作する方法も提供し、その際、長期安定性とは、予め定めた温度で予め定めた期間貯蔵時の凝集が5%未満、10%未満、もしくは20%未満であるものとして定義する。本方法は、ドメイン内の1以上のアミノ酸残基を置換することによりマルチドメインタンパク質のドメインを改変して、改変ドメインを作製するステップと;(b)該改変ドメインを含むマルチドメインタンパク質の溶液を加熱することにより改変ドメインを変性させるステップと;(c)冷却時に、上記マルチドメインタンパク質中の改変ドメインがリフォールディングするか否かを決定するステップと;(d)ステップ(c)で改変ドメインがリフォールディングすると決定された場合には、長期安定性が改善されたものとして、上記改変ドメイン含有マルチドメインタンパク質を分類するステップとを含む。特定の実施形態では、改変前のドメインのアンフォールディングがマルチドメインタンパク質の凝集を引き起こす。長期安定性が改善されるようにマルチドメインタンパク質を操作する方法では、マルチドメインタンパク質は抗体でよい。ステップ(a)〜(d)は単離されたドメインで実施してもよい。例えば、Fabドメインを、単離、改変、変性、再生および分類することができる。一実施形態では、長期安定性が改善されたものとして同定したドメインをマルチドメインの作製に用いる。別の実施形態では、改変ドメインは抗原結合ドメイン(例えば、Fabドメイン)である。さらに別の実施形態では、改変ドメインは定常領域ドメイン(例えば、Fcドメイン)である。
本発明はさらに、溶液中での長期安定性が改善されたマルチドメインタンパク質をスクリーニングする方法であって(尚、長期安定性とは、予め定めた温度で予め定めた期間貯蔵時の凝集が5%未満、10%未満、もしくは20%未満であるものとして定義する)、(a)マルチドメインタンパク質の集団のメンバーであるそれぞれ2以上のマルチドメインタンパク質を変性させるが、その際、各マルチドメインはそれぞれ異なる改変ドメインを含んでおり、該改変ドメインは、1以上のアミノ酸残基が置換されており、ここで、変性は、改変ドメインを含むマルチドメインタンパク質の1つの溶液を加熱することにより達成される、ステップと;(b)ステップ(a)で変性させたマルチドメインタンパク質の各々における改変ドメインが冷却時にリフォールディングするか否かを決定するステップと;(c)ステップ(b)でリフォールディングすると決定された改変ドメインを含むマルチドメインタンパク質を、長期安定性が改善されたものとして同定するステップとを含む。一実施形態では、本方法はさらに、様々な改変ドメインを含むマルチドメインタンパク質の集団を作製することを含む。特定の実施形態では、改変前のドメインのアンフォールディングはマルチドメインタンパク質の凝集を引き起こす。
長期安定性が改善されたマルチドメインタンパク質をスクリーニングする方法では、マルチドメインタンパク質は抗体でよい。一実施形態では、上記ドメインは抗原結合ドメイン(例えば、Fabドメイン)である。別の実施形態では、上記ドメインは定常領域ドメイン(例えば、Fcドメイン)である。本発明の方法を1以上の単離されたドメインで実施することも考慮される。一実施形態では、冷却時にリフォールディングすると決定された改変ドメインをマルチドメインタンパク質の作製に用いる。一実施形態では、前記変性および再生ステップは、熱変性/再生曲線を作成する(例えば、示差走査熱量測定を用いて)ことにより実施する。
本発明は、安定性が改善されるようにマルチドメインタンパク質を操作する方法を提供する。本方法は、(a)1以上のアミノ酸残基を置換することにより、マルチドメインタンパク質のドメインを改変して、改変ドメインを作製するステップと;(b)改変ドメインのTmを決定するステップと;(c)ステップ(b)で該ドメインがより高いTmを有すると決定された場合には、安定性が改善されたものとして、該改変ドメイン含有マルチドメインタンパク質を分類するステップを含む。従って、本発明はまた、操作する前のマルチドメインタンパク質と比較して高いTmを有する操作マルチドメインタンパク質も提供する。本発明はまた、操作する前のマルチドメインタンパク質と比較して安定性が改善された操作マルチドメインタンパク質も提供する。特定の実施形態では、改変前のドメインのTmは低いか、またはTmが低いマルチドメインタンパク質に寄与するかのいずれかである。
本発明は、改善された溶解性および/または低い粘性を備えるようにマルチドメインタンパク質を操作する方法を提供する。本方法は、(a)ドメイン内の1以上のアミノ酸残基を置換することにより、マルチドメインタンパク質のドメインを改変して、改変ドメインを作製するステップと;(b)改変ドメインのpIを決定するステップと;(c)ステップ(b)で該改変ドメインがより高いpIを有すると決定された場合には、溶解性および/または粘性が改善されたものとして、該改変ドメイン含有マルチドメインタンパク質を分類するステップとを含む。本方法の別の実施形態では、改変ドメインを含むマルチドメインタンパク質のpIをステップ(b)で決定し、ステップ(b)で該改変ドメイン含有マルチドメインタンパク質がより高いpIを有すると決定された場合には、溶解性および/または粘性が改善されたものとして、この改変ドメイン含有マルチドメインタンパク質を分類する。従って、本発明はまた、操作する前のマルチドメインタンパク質と比較して高いpIを有する操作マルチドメインタンパク質も提供する。本発明はまた、操作する前のマルチドメインタンパク質と比較して改善された溶解性および/または低い粘性を備える操作マルチドメインタンパク質も提供する。特定の実施形態では、改変前のドメインのpIは低いか、またはpIが低いマルチドメインタンパク質に寄与するかのいずれかである。
本発明はさらに、非特異的毒性が低減するようにマルチドメインタンパク質を操作する方法も提供する。本方法は、(a)ドメイン内の1以上のアミノ酸残基を置換することにより、マルチドメインタンパク質のドメインを改変して、改変ドメインを作製するステップと;(b)改変ドメインのpIを決定するステップと;(c)ステップ(b)で該改変ドメインがより低いpIを有すると決定された場合には、非特異的毒性が低減したものとして、該改変ドメイン含有マルチドメインタンパク質を分類するステップとを含む。本方法の別の実施形態では、改変ドメインを含むマルチドメインタンパク質のpIをステップ(b)で決定し、ステップ(b)で該改変ドメイン含有マルチドメインタンパク質がより低いpIを有すると決定された場合には、非特異的毒性が低減したものとして、この改変ドメイン含有マルチドメインタンパク質を分類する。従って、本発明はまた、操作する前のマルチドメインタンパク質と比較して低いpIを有する操作マルチドメインタンパク質も提供する。本発明はまた、操作する前のマルチドメインタンパク質と比較して、非特異的毒性が低減した操作マルチドメインタンパク質も提供する。特定の実施形態では、改変前のドメインは、非特異的毒性をもたらすpIを有するか、あるいは、そのようなpIのマルチドメインタンパク質に寄与する。
加えて、本発明は、特定の生体分布(例えば、細胞内、脈管外(血管外)、細胞外)を有するようにマルチドメインタンパク質を操作する方法も提供する。本方法は、(a)ドメイン内の1以上のアミノ酸残基を置換することにより、マルチドメインタンパク質のドメインを改変して、改変ドメインを作製するステップと;(b)改変ドメインのpIを決定するステップと;(c)ステップ(b)で該改変ドメインがより低いpIを有すると決定された場合には、細胞内局在化が低減したものとして、あるいは、ステップ(b)で該改変ドメインがより高いpIを有すると決定された場合には、細胞内および/または脈管外局在化が増大したものとして、上記改変ドメイン含有マルチドメインタンパク質を分類するステップとを含む。本方法の別の実施形態では、改変ドメインを含むマルチドメインタンパク質のpIをステップ(b)で決定し、ステップ(b)で該改変ドメイン含有マルチドメインタンパク質がより低いpIを有すると決定された場合には、細胞内局在化が低減したものとして、あるいは、ステップ(b)で該改変ドメイン含有マルチドメインタンパク質がより高いpIを有すると決定された場合には、細胞内および/または脈管外局在化が増大したものとして、上記改変ドメイン含有マルチドメインタンパク質を分類する。従って、本発明はまた、特定の生体分布を有する操作マルチドメインタンパク質も提供する。具体的には、本発明は、操作する前のマルチドメインタンパク質と比較して、細胞内および/または脈管外局在化が増大した操作マルチドメインタンパク質を提供する。本発明はまた、操作する前のマルチドメインタンパク質と比較して、細胞内局在化が低減した操作マルチドメインタンパク質も提供する。特定の実施形態では、改変前のドメインは、前記生体分布を決定するpIを有するか、あるいは、そのようなpIを持つマルチドメインタンパク質に寄与する。
4.図面の簡単な説明
図面の簡単な説明は後述する通りである。
5.発明の詳細な説明
本発明は、マルチドメインタンパク質(例えば、抗体)の特定の治療および/または製剤化および/または製造特性が、タンパク質を形成する個々のドメインを調べることにより評価できるという、本発明者らの発見に一部基づく。タンパク質ドメインの物理的および/または化学的および/または構造的性質を表す1以上の測定基準を決定した後、個々のドメインをそれらの測定基準に基づき選択する。インタクトなマルチドメインタンパク質に関して、または単離されたドメインとして、個々のドメインを調べてもよい。例えば、抗体のFabまたはFcドメインの物理的/化学的(構造的を含む)性質は、抗体の生体分布および/または非特異的毒性および/または安定性および/または溶解性および/または粘性を決定しうる。完全タンパク質の作製前、または作製と同時に、最適な治療および/または製剤化特性を備えた適切なドメインの選択を組み込む方法は、薬物開発全体の効率を高める。従って、この方法により、高い治療効力と最適の製剤化特性(例えば、高い溶解度および長い貯蔵寿命)の両方を備えるタンパク質の作製が可能になる。
本発明は、初期スクリーニングおよび開発工程に治療および/または製剤化および/または製造上の要件を組み込む、治療用タンパク質開発の統合的方法を提供する。この方法は、タンパク質の1以上の個別候補ドメインを評価することにより、所望の生物活性と所望の治療および/または製剤化特性の両方を備えるドメインを同定することを含む。例えば、所望の生物活性を備えると決定されたドメインの複数の様々な変異体(「ドメイン変異体」、「変異型ドメイン」および「候補ドメイン」などの用語でも表す)をスクリーニングして、特定の測定基準(例えば、Tmおよび/またはpI)に基づき、所望の治療および/または製剤化特性を有する1以上の変異体を同定することができる。次に、同定したドメインを全マルチドメインタンパク質の構築に用いる。例えば、治療用抗体の開発では、発現ライブラリー(例えば、ファージ展示ライブラリー)のアフィニティースクリーニングの後、高い結合アフィニティーを有する候補Fabドメインをそれらの製剤化特性、例えば、溶解性および/または安定性についてスクリーニングすることができる。所望の製剤化特性、例えば、高い溶解性および/または安定性を有する1以上のFabドメインを選択し、各々を適切なFcドメインと一緒に全抗体の構築に用いる。また、様々な候補Fcドメインを製剤化特性、例えば、溶解性および安定性についてスクリーニングすることにより、所望の製剤化特性を備えたFcドメインを選択することも可能である。その後、構築した抗体をさらなる製剤開発に供する。
本発明はさらに、所望の治療および/または製剤化特性、例えば、生体分布、非特異的毒性、溶解性および/または安定性を備えるようにマルチドメインタンパク質の1以上のドメインを操作することにより、治療用マルチドメインタンパク質を開発する方法も提供する。例えば、所望の生物活性を備えるドメインは、該ドメイン内の1以上のアミノ酸残基を置換することにより改変して、改変ドメイン(「ドメイン変異体」、「変異型ドメイン」および「候補ドメイン」などの用語でも表す)または改変ドメインの集団を作製することができ、次に、これらをその治療特性、例えば、生体分布および/または非特異的毒性について、改変ドメインの特定の測定基準(例えば、Tmおよび/またはpI)を非改変ドメインのそれと比較することにより、スクリーニングする。該当する測定基準に基づいて、所望の治療特性を有する(例えば、所望のTmおよび/またはpIを有する)1以上の改変ドメインを選択し、各々を全マルチドメインタンパク質の構築に用いる。
本発明はまた、液体タンパク質製剤中のマルチドメインタンパク質の熱変性および/または再生挙動に基づき、マルチドメインタンパク質を含むタンパク質製剤の貯蔵寿命、すなわち、長期安定性を評価する方法も提供する。マルチドメインタンパク質は、アンフォールディングにより、液体タンパク質製剤中のマルチドメインタンパク質の凝集を招くドメインを含む可能性があると考えられる。液体タンパク質製剤は、特定の濃度、例えば、濃度:約5〜300 mg/mlのマルチドメインタンパク質の溶液でよい。液体タンパク質製剤はまた、他の物質、限定するものではないが、塩、リガンド、補因子などを含んでいてもよい。従って、本方法は、最適条件、例えば、成分およびこのような各成分の最適濃度を決定するのに用いることもできる。
本発明者らは、溶液中のマルチドメインタンパク質の凝集が、タンパク質における特定のドメインの熱アンフォールディング(本明細書では「熱変性」または単に「変性」とも称する)の結果であり、上記特定のドメインを含むマルチドメインタンパク質の熱変性および/または再生挙動が、マルチドメインタンパク質の液体製剤の長期安定性、従って、貯蔵寿命の示度を提供することをみいだした。
特定の治療用マルチドメインタンパク質のpIは、その生物分布および/またはその非特異的毒性プロフィールに影響を与えることがわかっている。本発明者らはさらに、溶液中のマルチドメインタンパク質の粘性および溶解性が、マルチドメインタンパク質および/または該タンパク質における特定のドメインのpIと相関することもみいだした。従って、マルチドメインタンパク質および/または1以上の個別ドメインのpIは、他の治療特性に加えて、マルチドメインタンパク質の粘性および溶解性の示度を提供する。さらに、本発明者らは、マルチドメインタンパク質のpIを変更することにより、タンパク質のpIに左右される特性を改変できることもみいだした。
5.1.マルチドメインタンパク質治療薬の開発方法
本発明は、初期スクリーニング工程に治療および/または製剤化および/または製造上の要件を組み込む、タンパク質薬剤開発の方法を提供する。タンパク質薬剤は、疾患の治療または予防に用いることができる治療用タンパク質の製剤化された薬物形態である。薬物の製剤化によって、タンパク質の臨床的効果、すなわち、タンパク質の薬理学的効果を補助および/または最適化する。治療用タンパク質の開発は、タンパク質の物理的、化学的、および薬物動力学的性質に応じて変わってくる。タンパク質の生産、精製、貯蔵、およびあらゆる下流加工を含むタンパク質薬の製造工程もまた、タンパク質の物理的および化学的性質に応じて変わってくる。
本明細書で用いるタンパク質の「治療特性」とは、タンパク質薬剤形態の薬理学的効果に影響するタンパク質の物理的、化学的、および薬物速度論的性質を包含する。タンパク質の治療特性の例として、限定するものではないが、タンパク質の生物分布、非特異的毒性およびクリアランスプロフィールが挙げられる。
本明細書で用いるタンパク質の製剤化および/または製造特性とは、タンパク質薬剤形態の薬理学的効果、および/またはタンパク質の生産、精製、貯蔵、およびあらゆる下流加工に影響するタンパク質の物理的、化学的、および薬物速度論的性質を包含する。簡単にするため、タンパク質の製剤化および/または製造特性は、本明細書ではまとめて単純に「製剤化特性」と称することが多い。タンパク質の製剤化特性の例として、限定するものではないが、タンパク質の安定性(例えば、熱安定性および/または貯蔵安定性、また貯蔵寿命とも呼ぶ)、溶解性および粘性が挙げられる。
本発明は、高い生物活性と最適な治療および/または製剤化および/または製造特性の両方を備えたマルチドメインタンパク質の作製方法を提供する。本方法は、マルチドメインタンパク質の個別ドメインの生物活性と治療および/または製剤化および/または製造特性とを評価し、所望の生物活性(例えば、所望レベルの標的結合アフィニティーおよび/または所望の血清半減期など)と、所望の治療および/または製剤化および/または製造特性(例えば、所望レベルの溶解性および/または安定性)の両方を呈示するドメインを同定することを含む。所定の実施形態では、マルチドメインタンパク質の個別ドメインの治療および/または製剤化および/または製造特性を本発明の測定基準により評価するが、このような測定基準は、限定するものではないが、安定性、溶解性、生体分布および非特異的毒性などの治療および/または製剤化特性を表す1以上のパラメーターを含む。特定の実施形態では、生物活性と治療および/または製剤化および/または製造特性との最適な組合せを呈示する個々のドメインを同定する。特定の他の実施形態では、タンパク質において組み合わせたとき、生物活性と治療および/または製剤化および/または製造特性との最適な組合せを呈示する様々なドメインを同定する。次に、同定したドメインを用いて、全タンパク質を構築する。
一実施形態では、治療用途の1以上のマルチドメインタンパク質を作製する方法は、(a)複数の候補ドメインの各々について、第1ドメインの1以上の治療および/または製剤化および/または製造特性を表す1以上の測定基準を評価するが、その際、複数の候補ドメインが、予め定めた閾値レベルを超える生物活性を呈示するステップと;(b)上記測定基準に基づいて、複数のドメインから1以上のドメインを選択するステップと;(c)随意に、ステップ(b)で選択した各ドメインと1以上の別のドメインを用いて、全マルチドメインタンパク質を構築するステップとを含む。一実施形態では、上記測定基準は、候補ドメインの安定性を表す1以上のパラメーターを含む。別の実施形態では、上記測定基準は、候補ドメインの溶解性、生体分布または非特異的毒性を表す1以上のパラメーターを含む。
従って、本発明は、複数の候補ドメインをスクリーニングすることにより、所望の生物活性、例えば、所望の標的結合アフィニティーと、所望の治療および/または製剤化特性、例えば、生体分布、非特異的毒性、安定性、溶解性および粘性の両方を備えた1以上のドメインを同定することを含む。候補ドメインは各々、ドメインの変異体とも呼ばれる。本方法は、生物活性と治療および/または製剤化特性の両方について候補ドメインを評価することを含む。全マルチドメインタンパク質を構築するために、生物活性と治療および/または製剤化特性との最適な組合せを呈示する1以上の候補ドメインを選択する。
一実施形態では、治療に用いる1以上のマルチドメインタンパク質を作製する方法は、選択したドメインを用いて完全マルチドメインタンパク質を構築する前(ステップ(c)の前)に、(i)複数の他の候補ドメインの各々について、1以上の測定基準を評価するステップと;(ii)上記測定基準に基づいて、上記複数の他の候補ドメインから別のドメインを選択するステップをさらに含む。一実施形態では、上記測定基準は、他の候補ドメインの安定性を表す1以上のパラメーターを含む。別の実施形態では、上記測定基準は、他の候補ドメインの溶解性、生体分布または非特異的毒性を表す1以上のパラメーターを含む。
本発明はまた、全マルチドメインタンパク質に関して、複数の候補ドメインをスクリーニングすることにより、所望の生物活性(例えば、所望の標的結合アフィニティー)と、所望の治療および/または製剤化特性を表す測定基準の両方を備えた1以上のドメインを同定することを含む。従って、本発明は、インタクトなマルチドメインタンパク質におけるマルチドメインタンパク質の1以上のドメインを評価する方法を提供する。生物活性と治療および/または製剤化特性との最適な組合せを呈示する1以上の候補ドメインについて、複数のインタクトなマルチドメインタンパク質をスクリーニングすることにより、全マルチドメインタンパク質を構築する必要がなくなる。一実施形態では、本方法は、インタクトな全長抗体分子に関して、所与の標的抗原に結合する複数の抗原結合ドメインをスクリーニングすることにより、所望の治療および/または製剤化特性を備える1以上の抗原結合ドメインを同定することを含む。
本発明はまた、1以上の治療および/または製剤化特性を改善するようにドメインを操作する方法も提供する。一実施形態では、特定の改変(例えば、アミノ酸置換、添加または欠失)をドメインに導入操作することにより、1以上の所望の治療および/または製剤化特性を改変する。
一実施形態では、候補タンパク質ドメインの製剤特性は、候補ドメインの製剤化特性を表す本発明の1以上の測定基準(また、単に「測定基準」とも呼ぶ)を評価することにより評価する。一実施形態では、上記測定基準は、ドメインの安定性を表す1以上のパラメーターを含む。別の実施形態では、上記測定基準は、ドメインの溶解性、生体分布または非特異的毒性を表す1以上のパラメーターを含む。具体的実施形態では、ドメインの安定性を表す1以上のパラメーターとして、ドメインの熱融解温度(Tm)値が挙げられる。候補ドメイン、例えば、FabドメインのTmは、該ドメインを含むタンパク質の熱安定性の優れた指標となり、しかも、該ドメインを含むタンパク質の貯蔵寿命の示度を提供することにもなる。Tmが低いほど、高い凝集/低い安定性を示すのに対し、Tmが高いほど、低い凝集/高い安定性を示す。従って、Tmが高い候補ドメインほど、全マルチドメインタンパク質(例えば、抗体)への組込みに好ましい。一実施形態では、予め定めた閾値より高いTmを有する候補ドメインを選択する。いくつかの実施形態では、少なくとも50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃もしくは120℃以上のTmを有する1以上の候補ドメインを全マルチドメインタンパク質の構築のために選択する。具体的実施形態では、候補ドメインは、抗原結合ドメイン(例えば、Fabドメイン、scFvなど)である。
タンパク質ドメインの熱融解温度(Tm)は、当分野で周知のあらゆる標準的方法で測定することができる。例えば、Vermeerらは、示差走査熱量測定(DSC)および円二色性(CD)スペクトロスコピーにより、イソタイプ2bのモノクローナルマウス抗ラットIgGのアンフォールディングおよび変性を研究した(Vermeerら、2000, Biophys. J. 78:394-404;Vermeerら、2000, Colloids Surfaces A: Physicochem. Eng. Aspects. 161:139-150;Vermeerら、2000, J. Colloid Interface Sci. 225:394-397;Vermeerら、2000, Biophys. J. 79:2150-2154)。その結果、IgGのフォールディング/アンフォールディングは、2つの主要トランジションを特徴とすると考えられ、これらのトランジション自体も様々なステップの重なり合ったものであることがわかった。DSCおよびCD実験の両方で認められる双峰分布は、実験における走査速度には左右されなかった。2つのトランジションは独立しているようであり、アンフォールディングは不可逆であった。次に、IgGを単離FabおよびFcフラグメントに消化した(Vermeerら、2000, Biophys. J.79:2150-2154)。2つの単離されたフラグメントの二次構造および熱力学的安定性を試験し、インタクトな免疫グロブリンのそれと比較した。インタクトなIgGに認められる2つのピークは、それぞれFabおよびFcフラグメントに割り当てられることがわかった。Vermeerらはまた、熱による誘発以外に、一般にIgGの構造的摂動をpHの変更(Vermeerら、2000, Biophys. J. 78:394-404)または疎水性環境との相互作用、例えば、テフロン表面への吸着または界面活性剤との相互作用(Vermeerら、1998, Biochim. Biophys. Acta. 1425:1-12;Vermeerら、2000, Colloids Surfaces A: Physicochem. Eng. Aspects. 161:139-150;Vermeerら、2000, J. Colloid Interface Sci. 225:394-397)により誘発できることも明らかにした。
一実施形態では、単離したタンパク質ドメイン分子を含むサンプルを用いて、タンパク質ドメインのTmを測定する。別の実施形態では、分析しようとするドメインを含むインタクトなマルチドメインタンパク質含有のサンプルを用いて、タンパク質ドメインのTmを測定する。後者の場合には、目的とするドメインに対応するデータ点だけを分析することにより、ドメインのTmを該タンパク質のデータから推定する。一実施形態では、タンパク質またはタンパク質ドメインのTmは、VP-DSC(MicroCal、LLC)で、走査速度:1.0℃/分および温度範囲:25〜120℃を用いて測定する。5分の走査前調温とともに、フィルター時間8秒を用いる。具体例では、Pierce透析カップ(3.5 kD)を用いて、25 mMヒスチジン−HClへの透析によりサンプルを調製する。平均Mab濃度は50μg/mLであり、これはA280により決定する。装置と一緒に提供されたOriginソフトウエアを用いて、製造者の手順に従い、融解温度を決定する。手短には、サンプルと対照細胞の両方に、多数のベースラインをバッファーと一緒に流し込むことにより、熱平衡を確立する。ベースラインをサンプルサーモグラムから差し引いた後、データを濃度基準化し、デコンボリューション(deconvolution)関数を用いて適合させる。別の実施形態では、候補ドメインの安定性は、第5.2節に記載した方法を用いて評価する。1以上の測定基準はさらに、様々なpH値、様々な温度、様々なせん断応力、および様々な凍結/解凍サイクルからなる群より選択される1以上の様々な条件下におけるドメインの安定性を表す測定基準を含んでもよい。
別の具体的実施形態では、ドメインの溶解性、生体分布または非特異的毒性を表す1以上のパラメーターは、ドメインの等電点(pI)値を含む。タンパク質のpIは、ポリペプチドが実効電荷を帯びるpHとして定義される。当分野では、タンパク質溶解性は、典型的に、該溶液のpHがタンパク質の等電点(pI)に等しいとき、最も低いことがわかっている。従って、そのpIに基づき、所与のpH、例えば、pH6についてタンパク質の溶解性を評価することが可能である。タンパク質のpIはまた、液体製剤におけるタンパク質の粘性の優れた指標でもある。高いpIは高い溶解性および低い粘性を示す(高濃度製剤の場合、特に重要である)。一実施形態では、予め定めた閾値より高いpIをもつ候補ドメインを選択する。前述したように、タンパク質のpIは、マルチドメインタンパク質の生体分布および非特異的毒性においても特定の役割を果たす。例えば、当分野では、組換え毒素のpIを低下させると、非特異的毒性および腎蓄積が低減することがわかっている。あるいは、抗体のpIが高くなると、その細胞内および/または脈管外局在化が増大することもわかっている。当業者は、どの治療特性が、特定のマルチドメインタンパク質に最も望ましいかを容易に決定することができる。いくつかの実施形態では、pI値が約5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5もしくは9.0以上である1以上の候補ドメインを全マルチドメインタンパク質の構築のために選択する。別の実施形態では、pI値が約9.0、8.5、8.0、7.5、7.0、6.5、6.0、5.5もしくは5.0未満である1以上の候補ドメインを全マルチドメインタンパク質の構築のために選択する。当業者には、単一のタンパク質が複数の電荷形態を持ちうることは理解されよう。特定の理論に拘束されるわけではないが、タンパク質の電荷は、多数の様々な作用機構によって改変することができ、このような機構として、限定するものではないが、アミノ酸置換、カチオン化、脱アミノ、カルボキシル−末端アミノ酸不均質性、リン酸化およびグリコシル化などが挙げられる。本明細書で用いるpIは主要電荷形態のpIとして定義する。
タンパク質のpIは、様々な方法によって決定することができ、そのような方法として、限定するものではないが、等電点電気泳動および各種コンピューターアルゴリズム(例えば、Bjellqvistら、1993, Electrophoresis 14:1023を参照)が挙げられる。一実施形態では、多温度(multi temp)3冷却浴再循環ユニットおよびEPS 3501 XL電源を備えたPharmacia Biotech Multiphor 2電気泳動装置を用いて決定する。プレキャストアンホリンゲル(Amersham Biosciences、pI範囲:2.5〜10)を5μgのタンパク質と一緒にローディングする。広範なpIマーカー標準(Amersham、pI範囲:3〜10、8μL)を用いて、Mabの相対pIを決定する。1,500V、50 mAで105分電気泳動を実施する。精製水で1xに希釈したSigma固定溶液(5x)を用いて、ゲルを固定する。シンプリーブルー(Simply Blue)染料(Invitrogen)を用いて、室温で一晩染色を実施する。25%エタノール、8%酢酸および67%精製水からなる溶液で脱染を実施する。Bio-Radデンシトメーターを用いて、標準の較正曲線に対し等電点を決定する。前記1以上の測定基準はさらに、様々なpH値、様々な温度、様々なせん断応力、および様々な凍結/解凍サイクルからなる群より選択される1以上の様々な条件下におけるドメインの安定性を表す測定基準を含んでもよい。
当業者は、単離したドメインについて候補ドメインの評価を実施してもよいし、あるいは、各ドメインをインタクトなマルチドメインタンパク質に関して評価してもよいことを理解されよう。後者の方法は、複数のマルチドメインタンパク質同士相違するのが単一のドメインである場合、特に有用である。さらに、改変ドメインを含むインタクトなマルチドメインタンパク質を評価することにより、1以上の治療および/または製剤化および/または製造特性を表す本発明の1以上の測定基準に対する、改変ドメインの作用を決定できることも理解されよう。また、当業者は、選択したドメインが、単離ドメインとして、あるいは、インタクトなマルチドメインタンパク質に関して評価されたかどうかに関わらず、このドメインをマルチドメインタンパク質に組み込んでもよいことも理解されよう。例えば、インタクトな抗体に関して評価および選択したFabフラグメントを、毒素を含むキメラタンパク質の作製に使用してもよい。本明細書で用いる用語「候補ドメインを評価する」およびその文法上の変形は、単離した候補ドメインの評価、ならびに、インタクトなマルチドメインタンパク質またはそのフラグメントに関する候補ドメインの評価の両方を具体的に包含する。
従って、本発明は、複数のマルチドメインタンパク質をスクリーニングすることにより、所望の生物活性と、所望の治療および/または製剤化特性を有する1以上のマルチドメインタンパク質を同定する方法であって、(a)複数の様々なマルチドメインタンパク質の各々について、マルチドメインタンパク質の候補ドメインの1以上の治療および/または製剤化および/または製造特性を表す1以上の測定基準を評価するが、その際、上記複数の様々なマルチドメインタンパク質が、予め定めた閾値レベルを超える生物活性を呈示する、ステップと;(b)上記候補ドメインの測定基準に基づき、上記複数のマルチドメインタンパク質から1以上のマルチドメインタンパク質を選択するステップとを含む、上記方法を提供する。一実施形態では、本方法はさらに、様々なマルチドメインタンパク質の集団を作製することを含む。特定の実施形態では、マルチドメインタンパク質は抗体である。別の実施形態では、改変ドメインは抗原結合ドメインである。さらに別の実施形態では、改変ドメインはFcドメインまたはそのフラグメントである。
本発明はまた、好ましい治療および/または製剤化特性のためにマルチドメインタンパク質を操作する方法も提供する。一実施形態では、本方法は、1以上のドメインを操作することにより、タンパク質の製剤化特性を改善することを含む。別の実施形態では、本方法は、1以上のドメインを操作することにより、マルチドメインタンパク質の治療特性を改善することを含む。さらに別の実施形態では、本方法は、1以上のドメインを操作することにより、マルチドメインタンパク質の治療および製剤化特性の両方を改善することを含む。具体的実施形態では、操作したドメインは、タンパク質の薬理学的特性を有意に低減することなく、改善された治療および/または製剤化特性を呈示する。別の具体的実施形態では、操作したドメインは、タンパク質の薬理学的特性に実質的に影響することなく、改善された治療および/または製剤化特性を呈示する。従って、本発明はまた、好ましい治療および/または製剤化特性を備える操作マルチドメインタンパク質も提供する。特定の実施形態では、好ましい治療および/または製剤化特性を備える操作マルチドメインタンパク質は、改変ドメインを含む。具体的実施形態では、好ましい治療および/または製剤化特性を備える操作マルチドメインタンパク質は、改変抗体ドメイン(例えば、抗原結合ドメイン、Fcドメイン)を含む。
具体的実施形態では、本発明は、安定性が改善されるようにマルチドメインタンパク質を操作する方法も提供する。特定の実施形態では、マルチドメインタンパク質は、低いTmを有するか、またはTmが低いマルチドメインタンパク質に寄与するドメインを含む。一実施形態では、マルチドメインタンパク質のドメインは、該ドメインの安定性を高めるように、該ドメイン内の1以上のアミノ酸残基を置換することにより改変する。別の実施形態では、ドメインのTm値が上昇するように該ドメインを改変する。本方法は、(a)1以上のアミノ酸残基を置換することにより、マルチドメインタンパク質のドメインを改変して、改変ドメインを作製するステップと;(b)改変ドメインのTmを決定するステップと;(c)ステップ(b)で該ドメインがより高いTmを有すると決定された場合には、安定性が改善されたものとして上記改変ドメイン含有マルチドメインタンパク質を分類するステップを含む。いくつかの実施形態では、ドメインは、改変前のドメインのTmより高いTmを持つように改変する。特定の実施形態では、改変ドメインのTmは、少なくとも2℃、少なくとも4℃、少なくとも6℃、少なくとも8℃、少なくとも10℃、少なくとも15℃、少なくとも20℃、少なくとも25℃、少なくとも30℃、もしくは少なくとも40℃上昇させる。いくつかの実施形態では、予め定めた閾値より高いTmを持つようにドメインを操作する。特定の実施形態では、予め定めたTm閾値は、少なくとも50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、もしくは120℃である。特定の実施形態では、マルチドメインタンパク質は抗体である。別の実施形態では、上記改変ドメインは抗原結合ドメインである。さらに別の実施形態では、上記改変ドメインはFcドメインまたはそのフラグメントである。
前述したように、インタクトなマルチドメインタンパク質のドメインのTmを評価してもよい。従って、本発明は、安定性が改善されるようにマルチドメインタンパク質を操作する方法であって、改変ドメインを含むインタクトなマルチドメインタンパク質のTmを決定する、上記方法を提供する。随意に、またはこれに代わり、安定性が改善されるようにマルチドメインタンパク質を操作する方法は、(a)ドメイン内の1以上のアミノ酸残基を置換することにより、該ドメインを改変して、改変ドメインを作製するステップと;(b)改変ドメインを含むマルチドメインタンパク質のTmを決定するステップと;(c)ステップ(b)で決定した改変ドメインを含むマルチドメインタンパク質のTmに基づいて、上記改変ドメインを含むマルチドメインタンパク質を分類するステップを含む。
タンパク質のイオン化可能残基の数および位置を変更してpIを調節することにより、タンパク質の非特異的毒性および/または生体分布および/または溶解性および/または粘性を最適化することもできる。例えば、適切なアミノ酸置換を実施することにより、ポリペプチドのpIを操作することができる。例えば、タンパク質の各アミノ酸残基で、実施することができる複数の変更が考えられる。すなわち、荷電残基を非荷電残基、または反対の電荷を帯びる残基に変更したり、非荷電残基を陽または陰電荷を帯びる残基に変更したりすることができる。電荷に関して起こりうる最大の変更は、荷電アミノ酸を反対電荷の別のアミノ酸で置換する(例えば、リシンまたはアルギニンをアスパラギン酸で置換することにより)場合である。荷電残基を非荷電残基で置換する(例えば、リシンのような荷電アミノ酸をアラニンのような非荷電残基で置換することにより)のは、電荷を除去するのに役立つが、反対電荷を付加するわけではないため、これにより得られるpIの変化は小さくなる。酸性アミノ酸アスパルギン酸(D)およびグルタミン酸(E)を生理学的pHまたはその付近で脱プロトン化すると、陰電荷を帯びる。塩基性アミノ酸リシン(K)およびアルギニン(R)を生理学的pHまたはその付近でプロトン化すると、陽電荷を帯びる。DおよびEをKまたはRで(またはその逆)置換すると、pIに最大の影響を与えるようである。具体的アミノ酸置換については以下に記載し、実施例4に詳述する。
特定の理論に束縛されるわけではないが、タンパク質のpIに変化をもたらすタンパク質のアミノ酸置換により、タンパク質の非特異的毒性および/または生体分布および/または溶解性および/または粘性を改善することができる。当業者であれば、所望のpIを達成する上で特定のタンパク質に最も適切なアミノ酸置換を決定することができる。タンパク質のpIは様々な方法で決定することができ、そのような方法として、限定するものではないが、等電点電気泳動が挙げられる。これは、各種コンピューターアルゴリズムのいずれかを用いて推定することも可能である(例えば、Bjellqvistら、1993, Electrophoresis 14:1023を参照)。特定の実施形態では、本発明は、改善された非特異的毒性および/または生体分布および/または溶解性および/または低い粘性を備える操作マルチドメインタンパク質を提供する。具体的実施形態では、改善された非特異的毒性および/または生体分布および/または溶解性および/または低い粘性を備える上記操作マルチドメインタンパク質は、pIが改変前の同一ドメインとは異なる改変ドメインを含む。
具体的実施形態では、本発明は、改善された溶解性および/または低い粘性を備えるようにマルチドメインタンパク質を操作する方法を提供する。特定の実施形態では、上記マルチドメインタンパク質は、低いpIを持つか、またはpIが低いマルチドメインタンパク質に寄与するドメインを含む。本方法は、(a)ドメイン内の1以上のアミノ酸残基を置換することにより、マルチドメインタンパク質のドメインを改変して、改変ドメインを作製するステップと;(b)改変ドメインのpIを決定するステップと;(c)改変ドメインが、ステップ(b)で高いpIをもつと決定されれば、該改変ドメインを含むマルチドメインタンパク質を、溶解性および/または粘性が改善されたものとして分類するステップを含む。一実施形態では、pIが改変前のドメインより高くなるように、ドメインを操作する。いくつかの具体的実施形態では、改変ドメインのpIは、少なくとも0.5、少なくとも1.0、少なくとも2.0、少なくとも3.0、少なくとも4.0、少なくとも5.0、もしくは少なくとも10.0増加する。一実施形態では、pIが予め定めた閾値より高くなるように、ドメインを操作する。いくつかの具体的実施形態では、予め定めたpI閾値は、約5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、もしくは9.0である。
特定の実施形態では、本発明は、改善された溶解性および/または低い粘性を備える、操作マルチドメインタンパク質を提供する。具体的実施形態では、改善された溶解性および/または低い粘性を備える、操作マルチドメインタンパク質は、pIが改変前のドメインのpIより高い改変ドメインを含む。特定の実施形態では、マルチドメインタンパク質は抗体である。別の実施形態では、上記改変ドメインは抗原結合ドメインである。さらに別の実施形態では、上記改変ドメインはFcドメインまたはそのフラグメントである。
別の具体的実施形態では、本発明は、非特異的毒性が低減するようにマルチドメインタンパク質を操作する方法を提供する。特定の実施形態では、上記マルチドメインタンパク質は、非特異的毒性をもたらすpIを持つか、またはそのようなpIを持つマルチドメインタンパク質に寄与するドメインを含む。本方法は、(a)ドメイン内の1以上のアミノ酸残基を置換することにより、マルチドメインタンパク質のドメインを改変して、改変ドメインを作製するステップと;(b)改変ドメインのpIを決定するステップと;(c)改変ドメインが、ステップ(b)で低いpIを持つと決定されれば、該改変ドメインを含むマルチドメインタンパク質を、非特異的毒性が低減したものとして分類するステップを含む。一実施形態では、pIが改変前のドメインのより低くなるように、該ドメインを操作する。いくつかの具体的実施形態では、改変ドメインのpIは、少なくとも0.5、少なくとも1.0、少なくとも2.0、少なくとも3.0、少なくとも4.0、少なくとも5.0、もしくは少なくとも10.0低下する。一実施形態では、pIが予め定めた閾値より低くなるようにドメインを操作する。いくつかの具体的実施形態では、予め定めたpI閾値は、約9.0、8.5、8.0、7.5、7.0、6.5、6.0、5.5もしくは5.0である。
特定の実施形態では、本発明は、非特異的毒性が低減した、操作マルチドメインタンパク質を提供する。具体的実施形態では、非特異的毒性が低減した、操作マルチドメインタンパク質は、pIが改変前の同じドメインより低い改変ドメインを含む。特定の実施形態では、マルチドメインタンパク質は抗体である。別の実施形態では、上記改変ドメインは抗原結合ドメインである。さらに別の実施形態では、上記改変ドメインはFcドメインまたはそのフラグメントである。
別の実施形態では、本発明は、特定の生体分布(例えば、細胞内、脈管外、細胞外)を備えるようにマルチドメインタンパク質を操作する方法を提供する。特定の実施形態では、上記マルチドメインタンパク質は、生体分布を決定するpIを持つか、またはそのようなpIを持つマルチドメインタンパク質に寄与するドメインを含む。本方法は、(a)ドメイン内の1以上のアミノ酸残基を置換することにより、マルチドメインタンパク質のドメインを改変して、改変ドメインを作製するステップと;(b)改変ドメインのpIを決定するステップと;(c)改変ドメインが、ステップ(b)で低いpIを持つと決定されれば、細胞内局在化が低減したものとして、あるいは、改変ドメインが、ステップ(b)で高いpIを持つと決定されれば、細胞内および/または脈管外局在化が増大したものとして、該改変ドメインを含むマルチドメインタンパク質を分類するステップを含む。一実施形態では、pIが改変前のドメインのpIより高くなるように、該ドメインを改変する。いくつかの具体的実施形態では、改変ドメインのpIは、少なくとも0.5、少なくとも1.0、少なくとも2.0、少なくとも3.0、少なくとも4.0、少なくとも5.0、もしくは少なくとも10.0高くなる。一実施形態では、pIが予め定めた閾値より高くなるようにドメインを操作する。別の実施形態では、pIが改変前のドメインより低くなるようにドメインを操作する。いくつかの具体的実施形態では、改変ドメインのpIは、少なくとも0.5、少なくとも1.0、少なくとも2.0、少なくとも3.0、少なくとも4.0、少なくとも5.0、もしくは少なくとも10.0低下する。別の実施形態では、ドメインは、pIが予め定めた閾値より低くなるようにドメインを操作する。いくつかの具体的実施形態では、予め定めたpI閾値は、約9.0、8.5、8.0、7.5、7.0、6.5、6.0、5.5もしくは5.0である。
特定の実施形態では、本発明は、細胞内および/または脈管外局在化が増大した、操作マルチドメインタンパク質を提供する。具体的実施形態では、細胞内および/または脈管外局在化が増大した、操作マルチドメインタンパク質は、pIが改変前の同じドメインより高い改変ドメインを含む。別の実施形態では、本発明は、細胞内局在化が低減した、操作マルチドメインタンパク質を提供する。具体的実施形態では、細胞内局在化が低減した、操作マルチドメインタンパク質は、pIが改変前の同一ドメインより低い改変ドメインを含む。特定の実施形態では、マルチドメインタンパク質は抗体である。別の実施形態では、上記改変ドメインは抗原結合ドメインである。さらに別の実施形態では、上記改変ドメインはFcドメインまたはそのフラグメントである。
前述したように、インタクトなマルチドメインタンパク質においてドメインのpIを評価してもよい。従って、本発明は、改善された非特異的毒性および/または生体分布および溶解性および/または低い粘性を備えるようにマルチドメインタンパク質を操作する方法であって、改変ドメインを含むインタクトなマルチドメインタンパク質のpIを決定する、上記方法を提供する。随意に、またはこれに代わり、改善された非特異的毒性および/または生体分布および溶解性および/または低い粘性を備えるようにマルチドメインタンパク質を操作する方法は、(a)ドメイン内の1以上のアミノ酸残基を置換することにより、該ドメインを改変して、改変ドメインを作製するステップと;(b)改変ドメインを含むマルチドメインタンパク質のpIを決定するステップと;(c)ステップ(b)で決定した改変ドメインを含むマルチドメインタンパク質のpIに基づき、改変ドメインを含むマルチドメインタンパク質を分類するステップを含む。
特定の実施形態では、改変Fcドメインは、K338、A339、K340、G341、Q342、R344、E345、R355、E356、E357、M358、T359、K360、N361、Q362、L365、T366、K370、N390、Y391、K392、T393、T394、V397、L398、D399、S400、D401、F405、K409、L410、D413およびK414(尚、番号付けは、Kabatに記載されるEUインデックスに従う)からなる群より選択される1以上のアミノ酸残基での置換を含む。具体的実施形態では、改変Fcドメインは、以下のものからなる群より選択される1以上のアミノ酸置換を含む:K338を任意の非荷電残基(例えば、Q、但し、一般にPまたはCは除く)に、K338D、K338E、A339D、A339E、A339K、A339R、K340 を任意の非荷電残基(例えば、Q、但し、一般にPまたはCは除く)に、K340D、K340E、G314D、G314E、G314K、G314R、Q342D、Q342E、Q342K、Q342R、R344を任意の非荷電残基(例えば、Q、但し、一般にPまたはCは除く)に、R344D、R344E、E345を任意の非荷電残基(例えば、Q、但し、一般にPまたはCは除く)に、E345K、E345R、R355を任意の非荷電残基(例えば、Q、但し、一般にPまたはCは除く)に、R355D、R355E、E356を任意の非荷電残基(例えば、Q、但し、一般にPまたはCは除く)に、E356K、E356R、E357を任意の非荷電残基(例えば、Q、但し、一般にPまたはCは除く)に、E357K、E357R、M358D、M358E、M358K、M358R、T359D、T359E、T359K、T359R、K360を任意の非荷電残基(例えば、Q、但し、一般にPまたはCは除く)に、K360D、K360E、N361D、N361E、N361K、N361R、Q362D、Q362E、Q362K、Q362R、L365D、L365E、L365K、L365R、T366D、T366E、T366K、T366R、K370を任意の非荷電残基(例えば、Q、但し、一般にPまたはCは除く)に、K370D、K370E、N390D、N390E、N390K、N390R、Y391D、Y391E、Y391K、Y391R、K392を任意の非荷電残基(例えば、Q、但し、一般にPまたはCは除く)に、K392D、K392E、T393D、T393E、T393K、T393R、T394D、T394E、T394K、T394R、V397D、V397E、V397K、V397R、L398D、L398E、L398K、L398R、D399を任意の非荷電残基(例えば、Q、但し、一般にPまたはCは除く)に、D399K、D399R、S400D、S400E、S400K、S400R、D401を任意の非荷電残基(例えば、Q、但し、一般にPまたはCは除く)に、D401K、D401R、F405D、F405E、F405K、F405R、K409を任意の非荷電残基(例えば、Q、但し、一般にPまたはCは除く)に、K409D、K409E、L410D、L410E、L410K、L410R、D413を任意の非荷電残基(例えば、Q、但し、一般にPまたはCは除く)に、D413K、D413R、K414を任意の非荷電残基(例えば、Q、但し、一般にPまたはCは除く)に、K414DおよびK414E(尚、番号付けはKabatに記載されるEUインデックスに従う)。
特定の実施形態では、pIが高い操作Fcドメインは、A339、G341、Q342、E345、E356、E357、M358、T359、N361、Q362、L365、T366、N390、Y391、T393、T394、V397、L398、D399、S400、D401、F405、L410およびD413(尚、番号付けはKabatに記載されるEUインデックスに従う)からなる群より選択される1以上のアミノ酸残基での置換を含む。具体的実施形態では、pIが高い操作Fcドメインは、以下のものからなる群より選択される1以上のアミノ酸置換を含む:A339K、A339R、G314K、G314R、Q342K、Q342R、E345を任意の非荷電残基(例えば、Q、但し、一般にPまたはCは除く)に、E345K、E345R、E356を任意の非荷電残基(例えば、Q、但し、一般にPまたはCは除く)に、E356K、E356R、E357を任意の非荷電残基(例えば、Q、但し、一般にPまたはCは除く)に、E357K、E357R、M358K, M358R、T359K、T359R、N361K、N361R、Q362K、Q362R、L365K、L365R、T366K、T366R、N390K、N390R、Y391K、Y391R、T393K、T393R、T394K、T394R、V397K、V397R、L398K、L398R、D399を任意の非荷電残基(例えば、Q、但し、一般にPまたはCは除く)に、D399K、D399R、S400K、S400R、D401を任意の非荷電残基(例えば、Q、但し、一般にPまたはCは除く)に、D401K、D401R、F405K、F405R、L410K、L410R、D413を任意の非荷電残基(例えば、Q、但し、一般にPまたはCは除く)に、D413KおよびD413R(尚、番号付けはKabatに記載されるEUインデックスに従う)。
特定の実施形態では、pIが低い操作Fcドメインは、K338、A339、K340、G341、Q342、R344、R355、M358、T359、K360、N361、Q362、L365、T366、K370、N390、Y391、K392、T393、T394、V397、L398、S400、F405、K409、L410、およびK414(Kabatに記載されるEUインデックスによる番号付けに従う)からなる群より選択される1以上のアミノ酸残基での置換を含む。具体的実施形態では、pIが低い操作Fcドメインは、以下のものからなる群より選択される1以上のアミノ酸置換を含む:K338を任意の非荷電残基(例えば、Q、但し、一般にPまたはCは除く)に、K338D、K338E、A339D、A339E、K340 を任意の非荷電残基(例えば、Q、但し、一般にPまたはCは除く)に、K340D、K340E、G314D、G314E、Q342D、Q342E、R344を任意の非荷電残基(例えば、Q、但し、一般にPまたはCは除く)に、R344D、R344E、R355を任意の非荷電残基(例えば、Q、但し、一般にPまたはCは除く)に、R355D、R355E、M358D、M358E、T359D、T359E、K360を任意の非荷電残基(例えば、Q、但し、一般にPまたはCは除く)に、K360D、K360E、N361D、N361E、Q362D、Q362E、L365D、L365E、T366D、K370を任意の非荷電残基(例えば、Q、但し、一般にPまたはCは除く)に、K370D、K370E、N390D、N390E、Y391D、Y391E、K392を任意の非荷電残基(例えば、Q、但し、一般にPまたはCは除く)に、K392D、K392E、T393D、T393E、T394D、T394E、V397D、V397E、L398D、L398E、S400D、S400E、F405D、F405E、K409を任意の非荷電残基(例えば、Q、但し、一般にPまたはCは除く)に、K409D、K409E、L410D、L410E、K414を任意の非荷電残基(例えば、Q、但し、一般にPまたはCは除く)に、K414DおよびK414E(尚、番号付けは、Kabatに記載されるEUインデックスに従う)。
候補ドメインの評価は、実質的に同様の条件下で実施すべであると考えられる。例えば、インタクトなマルチドメインタンパク質として、またはその単離ドメインとして評価される各候補ドメインは、類似または同一濃度で、しかも類似または同一バッファー中にあることが好ましい。さらに、操作(例えば、ピペットを用いた操作、混合、加熱、冷却など)はすべて、いかなるときも、評価しようとする各候補ドメインについて実質的に同様の方法で実施すべきである。
別の実施形態では、1以上の具体的な生化学的条件(例えば、製剤化した薬物を貯蔵および/または使用する条件)下で、候補ドメインをさらに評価する。例えば、pHは、タンパク質の貯蔵寿命に影響する。溶剤(例えば、水)の組成もタンパク質の貯蔵寿命に影響する。グリセロールはタンパク質の天然の配座に好都合になるように水の溶媒和特性を改変する。また、溶液中のリガンドおよび補因子もタンパク質の貯蔵寿命に影響する。タンパク質の貯蔵寿命に影響することがわかっているその他の生化学パラメーターとして、タンパク質濃度、温度、グルタチオンレドックスバッファー(GSH、GSSG)、デタージェントの存在、ならびにグリセロール、アルギニン−HCl、ポリエチレングリコール(PEG)、および有機溶剤など、その他の添加剤の存在が挙げられる。従って、候補ドメインを様々な条件下で評価することにより、ドメイン製剤化特性、例えば、pH依存性、イオン強度依存性、ホフマイスター系列の塩の濃度、グリセロール濃度、ショ糖濃度、アルギニン濃度、ジチオトレイトール濃度、金属イオン濃度、せん断応力、ならびに凍結/解凍ストレスなどに関しさらに多くの情報を得ることができる。例えば、候補ドメインの安定性は、様々な生化学的条件下、すなわち、ある種類の条件の様々なレベル、例えば、様々なpH値、様々な温度、様々なショ糖濃度で、または様々な種類およびレベルの条件を組み合わせて、決定することができる。
以下に記載するいくつかの生化学的条件例は特に興味深い。いくつかの実施形態において、製剤は、濃度:約1mM〜約100 mM、約10 mM〜約50 mM、約20 mM〜約30 mMの範囲のヒスチジンを含んでもよい。ヒスチジンは、L-ヒスチジン、D-ヒスチジン、もしくはそれらの混合物の形態でよいが、L-ヒスチジンが最も好ましい。ヒスチジンは水和物の形態であってもよい。ヒスチジンは、薬学的に許容可能な塩、例えば、塩酸塩(例:一塩酸塩および二塩酸塩)、臭化水素酸塩、硫酸塩、酢酸塩などの形態で用いてもよい。ヒスチジンの純度は少なくとも98%、または少なくとも99%、もしくは99.5%でなければならない。
製剤のpHは、用いようとする具体的マルチドメインタンパク質(例えば、抗体)の等電点と等しくならないようにし、約5.0〜約7、または約5.5〜約6.5、または約5.8〜約6.2もしくは約6.0の範囲でよい。
ヒスチジンおよびマルチドメインタンパク質(例えば、抗体)のほかに、製剤は、濃度:約100 mM未満、約50 mM未満、約3.0 mM未満、約2.0 mM未満、または約1.8 mM未満、最も好ましくは1.6 mM未満の1以上のアミノ酸(例えば、グリシン)をさらに含む。製剤中のアミノ酸の量が有意な緩衝作用を引き起こさないようにして、等電点でのタンパク質沈降を回避できるようにしなければならない。アミノ酸は、薬学的に許容可能な塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、酢酸塩などの形態で用いてもよい。アミノ酸の純度は少なくとも98%、または少なくとも99%、もしくは99.5%でなければならない。具体的実施形態では、グリシンは本発明の製剤に含まれている。
随意に、さらにその他の賦形剤、例えば、サッカリド(ショ糖、マンノース、トレハロースなど)、ポリオール(例えば、Tween)および糖アルコール(例えば、マンニトール、ソルビトールなど)を製剤に含有させてもよい。一実施形態では、その他の賦形剤はサッカリドである。具体的実施形態では、サッカリドはショ糖であり、その濃度は、約1%〜約20%、または約5%〜約15%、もしくは約8%〜約10%の範囲である。別の実施形態では、その他の賦形剤はポリオールである。しかし、本発明の製剤はマンニトールを含まないのが好ましい。具体的実施形態では、ポリオールはポリソルベート(例えば、Tween 20)であり、その濃度は、約0.001%〜約1%、または約0.01%〜約0.1%の範囲である。
一実施形態では、1以上の特定の物理的操作により候補ドメインを評価する。例えば、候補ドメインをせん断力(例えば、ポンピング、振盪、渦形成など)に繰り返し付すことにより、製造および輸送時に起こりうるせん断応力にそれらが耐える能力を決定する。
具体的実施形態では、本発明は、治療用抗体開発の方法を提供する。本明細書で用いる用語「抗体(単数および複数)」とは、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、キメラ抗体および抗イディオタイプ抗体を意味する。用語「抗体フラグメント」および「抗体ドメイン」とは、抗体のあらゆる明確な領域を意味し、そのようなものとして、限定するものではないが、エピトープに結合する「抗原結合ドメイン」、例えば、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、Fvドメイン、Fdドメイン、「定常領域ドメイン」、例えば、CH1、ヒンジドメインおよびFcドメイン、ならびにそれらの任意の部分(例えば、CH2およびCH3ドメインなど)が挙げられる。また、一本鎖Fvs(scFv)、ジスルフィド結合Fvs(sdFv)、ならびに組換えにより作製された同様の抗原結合ドメインも用語「抗体フラグメント」および「抗体ドメイン」に含まれる。特に、抗体には、免疫グロブリン分子、および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性のフラグメント、ならびに抗体ドメイン融合タンパク質、すなわち、限定するものではないが、非免疫グロブリンタンパク質、Fcドメインまたはそのフラグメントなどの別のタンパク質ドメインに融合した、抗原結合部位またはその他の抗体ドメインを含む分子も含まれる。本明細書に概説したように、用語「抗体(単数および複数)」は具体的に、本明細書に記載したFc変異体、全長抗体、ならびに、Fcドメインを含む変異型Fc融合物、またはそれらのフラグメント(免疫グロブリン分子の免疫学的に活性のフラグメント、または本明細書に記載したその他のタンパク質に融合した本明細書に記載の少なくとも1つの新規アミノ酸残基を含む)を包含する。このような変異型Fc融合物としては、限定するものではないが、scFv-Fc融合物、可変領域(例えば、VLおよびVH)−Fc融合物、scFv- scFv-Fc融合物などが挙げられる。免疫グロブリン分子は、いずれのタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)もしくはサブクラスでもよい。
本発明はまた、具体的に、多重特異性を備える抗体(例えば、2以上の個別抗原に対する特異性を備える抗体(詳しくは、Caoら、2003, Adv Drug Deliv Rev 55:171;Hudsonら、2003, Nat med 1:129))を包含する。例えば、二重特異性抗体は、互いに融合した2つの異なる結合特異性を含む。最も単純なケースでは、二重特異性抗体は、単一標的抗原上の2つの隣接するエピトープに結合し、このような抗体は、他の抗原と交差反応しないと考えられる。あるいは、二重特異性抗体は2つの異なる抗原に結合することができ、このような抗体は、異種ポリペプチドまたは固体支持材料のような2つの異なる分子に特異的に結合するが、他の無関係の分子(例えば、BSA)には結合しない。例えば、PCT公開WO 93/17715;WO 92/08802;WO91/00360;WO 92/05793;Tuttら、J. Immunol. 147:60-69 (1991);米国特許第4,474,893号;第4,714,681号;第4,925,648号;第5,573,920号;第5,601,819号;Kostelnyら、J. Immunol. 148:1547-1553(1992)を参照されたい。このような分子は通常、2つの抗原にしか結合しない(すなわち、二重特異性抗体)が、さらに別の特異性を備える抗体、例えば、三重特異性抗体も本発明に含まれる。従って、本発明のマルチドメインタンパク質は、単一特異性、二重特異性、三重特異性、もしくはそれ以上の多重特異性を備える抗体でもよい。
本明細書で用いるFcドメインには、第1定常領域免疫グロブリンドメインを排除した抗体の定常領域を含むポリペプチドが含まれることは理解されよう。従って、Fcとは、IgA、IgD、およびIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリン、およびIgEおよびIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリン、ならびに、これらドメインに対する可変ヒンジN末端を指す。IgAおよびIgMの場合、FcはJ鎖を含んでもよい。IgGの場合、Fcドメインは、免疫グロブリンドメインCガンマ2およびCガンマ3(Cγ2およびCγ3)と、Cガンマ1(Cγ1)およびCガンマ2(Cγ2)間のヒンジとを含む。Fcドメインの境界は変動しうるが、ヒトIgG重鎖Fcドメインは通常、C226またはP230からそのカルボキシル末端までを含むと定義され、その際、番号付けはKabatらに記載されているようにEUインデックスに従う(1991, NIH Publication 91-3242, National technical Information Service, バージニア州スプリングフィールド)。「Kabatに記載されているようなEUインデックス」とは、Kabatら(前掲)に記載されているようなヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。Fcは、このドメインを単独で指すこともあるし、または抗体、抗体フラグメント、もしくはFc融合タンパク質に関連してこのドメインを意味することもある。Fc含有タンパク質は、Fcドメインを含む抗体、Fc融合物、またはどんなタンパク質もしくはタンパク質ドメインでもよい。本発明はまた、変異型Fcドメイン(Fcの天然に存在する変異体ではないもの)を含むタンパク質も包含する。注:多数のFc位置(限定するものではないが、Kabat270、272、312、315、356、および358)に多型性が観察されていることから、表示した配列(単数および複数)の間に若干の相違が存在する可能性もある。
治療用抗体の開発方法は、高い生物活性(例えば、標的抗原(例:抗原、Fc-受容体)に対する結合アフィニィティー)、エフェクター機能(例:ADCC、CDC))を備える多数の候補抗体ドメイン(例えば、Fab、FcおよびFv)を、治療および/または製剤化特性を表す1以上の測定基準についてスクリーニングすることを含む。一実施形態では、上記測定基準は、該抗体ドメインの安定性を表す1以上のパラメーターを含む。別の実施形態では、測定基準は、抗体ドメインの溶解性、生体分布または非特異的毒性を表す1以上のパラメーターを含む。具体的実施形態では、抗体ドメインの安定性を表す1以上のパラメーターは、上記抗体ドメインのTm値を含み、抗体ドメインの溶解性、生体分布または非特異的毒性を表すパラメーターは、上記抗体ドメインのpI値を含む。
本発明は、治療に用いる1以上の抗体を作製する方法も提供する。一実施形態では、1以上の抗体を作製する方法は、(a)複数の候補抗体ドメインの各々について、該抗体ドメインの1以上の治療および/または製剤化および/または製造特性を表す1以上の測定基準を評価するが、その際、複数の候補抗体ドメインが、予め定めた閾値レベルを超える生物活性を呈示する、ステップと;(b)上記測定基準に基づき、上記複数のドメインから1以上の抗体ドメインを選択するステップと;(c)随意に、ステップ(b)で選択した各抗体ドメインと1以上の他のドメインを用いて、抗体を構築するステップとを含む。
別の実施形態では、治療に用いる1以上の抗体を作製する方法は、選択した抗体ドメインを用いて抗体を構築する前に(前記ステップ(c)の前に)、(i)複数の他の候補抗体ドメインの各々について1以上の測定基準を評価するステップと;(ii)測定基準に基づき、上記複数の他の候補抗体ドメインから別の抗体ドメインを選択するステップとをさらに含む。
一実施形態では、複数の候補抗体ドメインは、抗原結合ドメイン(例えば、Fabドメイン)でよい。このような場合、生物活性は、標的抗原に対する抗原結合ドメインの結合アフィニティーであってもよい。特定の実施形態では、抗原結合ドメインの少なくともいくつかは標的抗原の様々なエピトープに結合する。具体的実施形態では、複数の抗原結合ドメインは、標的抗原と一緒に発現ライブラリー(例えば、ファージ展示ライブラリー)をスクリーニングすることにより得られる。別の具体的実施形態では、複数の抗原結合ドメインは、複数のモノクローナル抗体を消化することにより得られる。次に、選択した各抗原結合ドメインを別のタンパク質ドメイン(例えば、Fcドメイン)と結合させることにより、1以上のマルチドメインタンパク質を作製する。具体的実施形態では、選択した各抗原結合ドメインを、同じまたは異なる標的抗原に結合しうる別の抗原結合ドメインと結合させる。別の具体的実施形態では、選択した各抗原結合ドメインを抗体定常ドメインと結合させる。
別の実施形態では、複数の候補抗体ドメインは、Fcドメインでよい。このような場合、生物活性は、定常領域ドメイン受容体および/またはリガンド(例えば、FcRn、C1q、FcγRs)に対するFcドメインの結合アフィニティーおよび/またはエフェクター機能(例えば、ADCC、CDC)を媒介する能力であってもよい。具体的実施形態では、複数のFcドメインは、1以上の定常領域ドメイン受容体および/またはリガンドと一緒に発現ライブラリー(例えば、ファージ展示ライブラリー)をスクリーニングすることにより得られる。次に、選択した各Fcを別のタンパク質ドメイン(例えば、Fabドメイン、細胞受容体ドメイン)と結合させることにより、1以上のマルチドメインタンパク質を作製する。
非特異的毒性、生体分布、溶解性および熱安定性についてタンパク質ドメインをスクリーニングおよび/または操作する前記方法を用いることができる。低減した非特異的毒性および/または所望の生体分布および/または高い溶解性および/または熱安定性を備える1以上の抗体ドメインを選択し、これを用いて、適切なドメインと結合して全抗体を構築することにより、完全抗体を作製する。一実施形態では、Tm値が少なくとも50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、もしくは120℃より高い1以上の候補抗体ドメインを選択して、全抗体を構築する。別の実施形態では、pI値が約5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5もしくは9.0より高い1以上の候補抗体ドメインを選択して、マルチドメインタンパク質を含む完全抗体を構築する。別の実施形態では、pI値が約9.0、8.5、8.0、7.5、7.0、6.5、6.0、5.5もしくは5.0より低い1以上の候補抗体ドメインを選択して、マルチドメインタンパク質を含む完全抗体を構築する。
具体的実施形態では、選択した閾値レベルを超えるアフィニティーを有する所与の標的抗原に結合する複数の抗原結合ドメイン(例えば、Fab、scFvなど)を、発現ライブラリー(例えば、ファージ展示ライブラリー)のアフィニティースクリーニングにより取得する。次に、抗体結合ドメインの治療および/または製剤化特性を表す1以上の測定基準について抗原結合ドメインの各々を評価する。複数の抗原結合ドメインを1以上の測定基準に従って順位付けする。一実施形態では、複数の抗原結合ドメインをそのTm値に従って順位付けし、1以上の抗原結合ドメインを順位付けリストの上位から選択する。別の実施形態では、複数の抗原結合ドメインをそのpI値に従って順位付けし、1以上の抗原結合ドメインを順位付けリストの上位から選択する。さらに別の実施形態では、複数の抗原結合ドメインをそのTmおよびpIの合計順位に従って順位付けし、1以上の抗原結合ドメインを順位付けリストの上位から選択する。選択した抗原結合ドメインを用いて、マルチドメインタンパク質(例えば、抗体、ダイアボディなど)を含む全抗原結合ドメインを構築する。
別の実施形態では、定常領域ドメインの治療および/または製剤化特性(例えば、溶解性および熱安定性)を表す1以上の測定基準について複数の抗体定常ドメイン(例えば、Fc、CH2、CH3など)を評価する。複数の抗原結合ドメインを1以上の測定基準に従って順位付けする。一実施形態では、複数の定常領域ドメインをそのTm値に従って順位付けし、1以上の定常領域ドメインを順位付けリストの上位から選択する。別の実施形態では、複数の定常領域ドメインをそのpI値に従って順位付けし、1以上の定常領域ドメインを順位付けリストの上位から選択する。さらに別の実施形態では、複数の定常領域ドメインをそのTmおよびpIの合計順位に従って順位付けし、1以上の定常領域ドメインを順位付けリストの上位から選択する。選択した定常領域ドメインを用いて、マルチドメインタンパク質(例えば、抗体、ダイアボディなど)を含む全抗原結合ドメインを構築する。特定の実施形態では、Tm値が少なくとも50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、もしくは120℃より高い1以上の候補抗体定常領域ドメインを選択して、マルチドメインタンパク質(例えば、抗体)を含む全抗体定常領域ドメインを構築する。別の実施形態では、pI値が約5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5もしくは9.0より高い1以上の候補抗体定常領域ドメインを選択して、マルチドメインタンパク質(例えば、抗体、Fc融合タンパク質など)を含む完全抗体定常領域ドメインを構築する。さらに別の実施形態では、pI値が約9.0、8.5、8.0、7.5、7.0、6.5、6.0、5.5、もしくは5.0より低い1以上の候補抗体定常領域ドメインを選択して、マルチドメインタンパク質を含む全抗体定常領域ドメインを構築する。
具体的実施形態では、本発明は、好ましい治療および/または製剤化特性のために抗体を操作する方法を提供する。一実施形態では、本方法は、抗原結合(例えば、Fab)および/または定常領域(例えば、Fc)ドメインを操作することにより、タンパク質の治療および/または製剤化特性を改善することを含む。本方法は、1以上の改変(例えば、アミノ酸置換)を実施することを含み、この改変は、該抗体の1以上の特性を改善するものである。
結合抗原に加えて、抗体は、その定常領域ドメイン、例えば、Fc受容体(例えば、FcRn、FcγRs)および補体タンパク質C1qを介して多数のリガンドと結合することがわかっている。定常領域ドメインの結合相互作用は、多様なエフェクター機能、ならびに、下流シグナル化事象(例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性および補体依存性細胞傷害(CDC)活性に必須である。特定の実施形態では、操作された抗体は、抗体の薬理学的特性、例えば、抗体の結合特異性、結合アフィニティーおよび/またはその標識に対するアビディティー、あるいは、抗体のエフェクター機能、例えば、Fc-受容体(FcR)および/またはC1q結合、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)、および/または血清半減期を有意に低減することなく、改善された治療および/または製剤化特性を呈示する。別の実施形態では、操作された抗体は、改善された治療および/または製剤化特性と、改善された薬理学的特性、例えば、標識に対する抗体の結合特異性、結合アフィニティーおよび/またはアビディティー、あるいは、抗体のFcエフェクター機能、例えば、FcR結合、ADCC、CDC、および/または血清半減期を呈示する。
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」または「ADCC」とは、特定の細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)に結合した分泌Igによって、これらの細胞傷害性エフェクター細胞が抗原担持標的細胞に特異的に結合した後、細胞毒で標的細胞を特異的に殺傷することができる、細胞毒性の形態を意味する。標的細胞の表面に指定された特定の高アフィニティーIgGは、細胞傷害性細胞を「アーミング(arm)」することから、このような殺傷には不可欠である。標的細胞の溶解には、細胞と細胞が直に接触する必要があり、補体を必要としない。抗体に加えて、抗体担持標的細胞に特異的に結合する能力がある、Fcドメイン、具体的にはFc融合タンパク質を含む別のタンパク質が、細胞媒介性細胞傷害に作用することができると考えられる。単純にするため、Fc融合タンパク質の活性に由来する細胞媒介性細胞傷害も本明細書ではADCC活性と称する。
Fcを含む特定のタンパク質がADCCによる標的細胞の溶解を媒介する能力をアッセイすることができる。ADCC活性を評価するために、Fcを含むタンパク質を免疫エフェクター細胞と一緒に標的細胞に添加するが、このエフェクター細胞は、抗原抗体複合体により活性化されて、標的細胞の細胞溶解を引き起こす。細胞溶解は一般に、溶解細胞からの標識(例えば、放射性物質、蛍光染料または天然の細胞内タンパク質)の放出により検出する。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞として、末梢血液単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。in vitro ADCCアッセイの具体例は、Wisecarverら、1985 79:277-282;Bruggemannら、1987, J Exp Med 166:1351-1361;Wilkinsonら、2001, J Immunol Methods 258:183-191;Patelら、1995 J Immunol Methods 184:29-38、ならびに、本明細書(実施例3を参照)に記載されている。これらに代わり、またはこれらに加えて、Fcを含むタンパク質のADCC活性は、in vivo、例えば、Clynesら、1988, Pnas USA 95:652-656に開示されているような動物モデルで評価することもできる。
「補体依存性細胞傷害」および「CDC」とは、補体の存在下で標的細胞を溶解することを意味する。補体活性化経路は、補体系(C1q)の第1成分と分子(例えば、コグネイト抗原と複合体化した抗体)との結合により開始される。補体活性化を評価するために、CDCアッセイ(例えば、Gazzano-Santoroら、1996, J. Immunol. Methods, 202:163に記載のもの)を実施することができる。
一実施形態では、操作された抗体結合ドメインのpIはpH5.0〜pH10.0である。一実施形態では、抗原結合ドメインのpIに変化をもたらす置換は、抗原に対する結合アフィニティーを有意に低減しない。一実施形態では、操作された定常領域ドメインのpIはpH5.0〜pH10.0である。さらに別の実施形態では、定常領域ドメインのpIに変化をもたらす置換は、そのエフェクター結合および/または機能を有意に低減しない。また、抗体ドメインのpIに変化をもたらす置換は、抗体ドメインのpIと、その他の薬理学的特性、例えば、標的に対する抗体の結合特異性、結合アフィニティーおよび/またはアビディティー、もしくは抗体のFcエフェクター機能の両方が改善されるように選択できることも考慮される。本発明者らは、ヒンジ領域の特定の改変では抗体のpIおよびTmが有意に変化しないことをみいだしている。従って、一実施形態では、本発明は、抗体の治療および/または製剤化特性を低下させることなく、抗体の生物活性を改善するように抗体を操作する方法を提供する。
一実施形態では、本明細書に記載する抗体ドメインの改変は、以下の文献に開示されているようなFcドメインの周知の改変と組み合わせることができる:Duncanら、1988, Nature 332:563-564;Lundら、1991, J. Immunol 147:2657-2662;Lundら、1992, Mol Immunol 29:53-59;Alegreら、1994, Transplantation 57:1537-1543;Hutchinsら、1995, Proc Natl. Acad Sci U S A 92:11980-11984;Jefferisら、1995, Immunol Lett. 44:111-117;Lundら、1995, Faseb J 9:115-119;Jefferisら、1996, Immunol Lett 54:101-104;Lundら、1996, Immunol 157:4963-4969;Armourら、1999, Eur J Immunol 29:2613-2624;Idusogieら、2000, J Immunol 164:4178-4184;Reddyら、2000, J Immunol 164:1925-1933;Xuら、2000, Cell Immunol 200:16-26;Idusogieら、2001, J Immunol 166:2571-2575;Shieldsら、2001, J Biol Chem 276:6591-6604;Jefferisら、2002, Immunol Lett 82:57-65;Prestaら、2002, Biochem Soc Trans 30:487-490);米国特許第5,624,821号;第5,885,573号;第5,677,425号;第6,165,745号;第6,277,375号;第5,869,046号;第6,121,022号;第5,624,821号;第5,648,260号;第6,528,624号;第6,194,551号;第6,737,056号;第6,821,505号;第6,277,375号;米国特許公開番号2004/0002587;PCT公開番号WO 00/42072およびWO 99/58572;WO 94/29351;WO 02/060919;WO 04/029207;WO
04/099249;WO 04/063351。また、欠失、付加および/または改変を含むFcドメインも本発明に包含される。Fcドメインのさらに別の改変/置換/付加/欠失は当業者には容易に理解されよう。
一実施形態では、抗体を操作して、抗体のpIおよびTmを低下させることなく、Fcドメインに改変を導入することができ、典型的には、抗体の1以上の機能的特性、例えば、血清半減期、補体固定、Fc受容体結合、および/または抗原依存性細胞の細胞傷害を改変することができる。さらに、抗体を化学的に改変(例えば、1以上の化学成分を抗体に付着させる)または改変して、そのグリコシル化を改変したり、やはり抗体の1以上の機能的特性改変したりすることもできる。
一実施形態では、少なくとも1つのアミノ酸残基を欠失、添加および/または置換することにより、Fcドメインのアミノ酸配列を改変して、前述した抗体の機能的特性を改変する。この方法は、以下の文献にさらに詳しく記載されている:Duncanら、1988, Nature 332:563-564;Lundら、1991, J. Immunol 147:2657-2662;Lundら、1992, Mol Immunol 29:53-59;Alegreら、1994, Transplantation 57:1537-1543;Hutchinsら、1995, Proc Natl. Acad Sci U S A 92:11980-11984;Jefferisら、1995, Immunol Lett. 44:111-117;Lundら、1995, Faseb J 9:115-119;Jefferisら、1996, Immunol Lett 54:101-104;Lundら、1996, Immunol 157:4963-4969;Armourら、1999, Eur J Immunol 29:2613-2624;Idusogieら、2000, J Immunol 164:4178-4184;Reddyら、2000, J Immunol 164:1925-1933;Xuら、2000, Cell Immunol 200:16-26;Idusogieら、2001, J Immunol 166:2571-2575;Shieldsら、2001, J Biol Chem 276:6591-6604;Jefferisら、2002, Immunol Lett 82:57-65;Prestaら、2002, Biochem Soc Trans 30:487-490);米国特許第5,624,821号;第5,885,573号;第5,677,425号;第6,165,745号;第6,277,375号;第5,869,046号;第6,121,022号;第5,624,821号;第5,648,260号;第6,194,551号;第6,737,056号;米国特許公開番号10/370,749;PCT公開番号WO 94/2935;WO 99/58572;WO 00/42072;WO 04/029207。
さらに別の実施形態では、抗体のグリコシル化を改変する。例えば、非グリコシル化抗体を作製することができる(例えば、グリコシル化を欠失した抗体)。グリコシル化を改変することにより、例えば、標的抗原に対する抗体のアフィニティーを増大することができる。このような炭水化物改変は、例えば、抗体配列におけるグリコシル化の1以上の部位を改変することにより達成することができる。例えば、1以上の可変領域フレームワークグリコシル化部位を排除させることにより、その部位でのグリコシル化を排除するような1以上のアミノ酸置換を実施することができる。このような非グリコシル化は抗原に対する抗体のアフィニティーを増大すると考えられる。このような方法は、米国特許第5,714,350号および第6,350,861号にさらに詳しく記載されている。
上記に加え、または上記に代わり、改変されたタイプのグリコシル化を有する抗体、例えば、フコシル残基の量が減少した低フコシル化抗体、または二分GlcNAc構造が増加した抗体を作製することもできる。このような改変グリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を増強することが証明されている。このような炭水化物改変は、例えば、グリコシル化機構が改変された宿主細胞に抗体を発現させることにより操作することができる。グリコシル化機構が改変された細胞は当分野では記載されており、これを宿主細胞として用い、そこで、本発明の組換え抗体を発現させることにより、グリコシル化が改変された抗体を産生させることができる。例えば、以下の文献を参照されたい:Shields, R.L.ら、 (2002) J. Biol. Chem. 277:26733-26740;Umanaら、(1999) Nat. Biotech. 17:176-1、ならびに欧州特許番号EP1,176,195号:PCT 公開番号WO 03/035835;WO 99/54342。操作された糖形態を作製する別の方法は当分野で周知であり、限定するものではないが、以下の文献に記載されているものなどがある:Davies ら、 20017 Biotechnol Bioeng 74:288-294;Shieldsら、 2002, J Biol Chem 277:26733-26740;Shinkawaら、2003, J Biol Chem 278:3466-3473;米国特許第6,602,684号;米国特許出願番号10/277,370;米国特許出願番号10/113,929;PCT WO 00/61739A1;PCT WO 01/292246A1;PCT WO 02/311140A1;PCT WO 02/30954A1;Potillegent(商標)technology (Biowa, Inc. ニュージャージー州プリンストン);GlycoMAb(商標)glycosylation engineering technology (GLYCART biotechnology AG, スイス国ズーリッヒ)。 例えば、WO 00061739; EA01229125; US 20030115614;Okazakiら、2004, JMB, 336: 1239-49を参照されたい。
別の実施形態では、抗体を操作して、抗原結合ドメインに改変を導入することにより、抗原に対する抗体の結合特性を低下させることなく、抗体の治療および/または製剤化特性を改変することができる。本方法は、1以上の改変(例えば、アミノ酸置換)を実施することを含み、この改変は該抗体の治療および/または製剤化特性を改善するようなものである。当業者であれば、抗体のアミノ酸置換およびその他の改変によりその結合特性(結合特性の例として、限定するものではないが、結合特異性、平衡解離定数(KD)、解離および会合速度(それぞれKoffおよびKon)、結合アフィニティーおよび/またはアビディティー)を改変できること、また、特定の改変はある程度望ましいことを理解されよう。例えば、抗原結合を保存または増強する改変は、一般に、抗原結合を低下または変質させるものより好ましい。さらに、抗体を操作して、定常領域ドメインに改変を導入することにより、定常領域とその受容体またはリガンド(例えば、FcRs、C1q)との結合特性を低下させることなく、抗体の治療および/または製剤化特性を改変することができる。標的抗原または定常領域ドメインリガンドに対する抗体の結合特異性は、様々な方法により決定することができ、そのような方法として、限定するものではないが、例えば、平衡法(例:酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)もしくはラジオイムノアッセイ(RIA)、または速度論(例:BIACORE(登録商標)分析;実施例2を参照)などが挙げられる。抗体の結合特性を試験するのに一般に用いられるその他の方法は、以下の文献に記載されている:Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY, Harrowら、1999および Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY; Harlow ら、1989。
当分野では、アフィニティー定数(Ka)は、Kon/Koffとして定義され、平衡解離定数(KD)は、Koff/Konとして定義される。一般に、Kaが高い抗体の方が、Kaが低い抗体より好ましく、KDが低い抗体の方が、KDが高い抗体より好ましいと理解されている。しかし、場合によっては、KonまたはKoffの値の方がKDの値より重要なこともある。当業者は、どの速度論パラメーターが所与の抗原結合ドメインおよび適用に最も重要であるかを決定することができる。一実施形態では、本発明の方法により、改善された治療および/または製剤化特性と、改変のない抗原結合および/または定常領域ドメインの速度論パラメーターと比較して、少なくとも2%、または少なくとも5%、または少なくとも10%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%改善された1以上の結合特性(例えば、結合特異性、KD、Koff、Kon、結合アフィニティーおよび/またはアビディティー)とを備える改変された抗原結合および/または定常領域ドメインが得られる。
別の実施形態では、本発明の方法により、治療および/または製剤化特性が改善されているが、結合特性は実質的に低下していない、改変された抗原結合および/または定常領域ドメインが得られる。例えば、本発明の方法により、改善された治療特性を呈示するが、好ましくはいずれの結合特性(例えば、結合特異性、KD、Koff、Kon、結合アフィニティーおよび/またはアビディティー)も低下していない、あるいは、置換のない抗体の抗原結合と比較して、1以上の結合特性の低下が1%未満、または5%未満、または10%未満、または20%未満、または30%未満、または40%未満、または50%未満、または60%未満、または70%未満、または80%未満である、抗原結合および/または定常領域ドメインが作製される。
さらに別の実施形態では、本発明の方法により、治療および/または製剤化特性が改善され、予め定めた閾値を超える結合活性を備える抗原結合および/または定常領域ドメインが選択される。特定の実施形態では、結合活性は、特定の標的/リガンド/受容体に対するドメインのアフィニティー定数またはKa(Kon/Koff)である。具体的実施形態では、Kaは、少なくとも102M-1、少なくとも5×102M-1、少なくとも103M-1、少なくとも5×103M-1、少なくとも104M-1、少なくとも5×104M-1、少なくとも105M-1、少なくとも5×105M-1、少なくとも106M-1、少なくとも5×106M-1、少なくとも107M-1、少なくとも5×107M-1、少なくとも108M-1、少なくとも5×108M-1、少なくとも109M-1、少なくとも5×109M-1、少なくとも1010M-1、少なくとも5×101M-1、少なくとも1011M-1、少なくとも 5×1011M-1、少なくとも1012M-1、少なくとも5×1012M、少なくとも1013M-1、少なくとも5×1013M-1、少なくとも1014M-1、少なくとも5×1014M-1、少なくとも1015M-1、少なくとも5×1015M-1である。別の実施形態では、結合活性は、特定の標的/リガンド/受容体に対するドメインの平衡解離定数(KD)である。前述したように、当業者は、結合活性が高い分子ほど一般にそのKDは低いことを認識するであろう。従って、具体的実施形態では、KDは、10-5M未満、または10-6M未満、または10-7M未満、または10-8M未満、または10-9M未満、または10-10M未満、または10-11M未満、または10-12M未満、または10-13M未満である。
一実施形態では、選択または操作した抗原結合および/または定常領域ドメインを用いて、当分野で周知の方法により、マルチドメインタンパク質(例えば、抗体)を含む全抗原結合および/または抗体定常ドメインを構築する。次に、このようなマルチドメインタンパク質を製剤開発に供することにより、最適な製剤を決定することができる。
タンパク質(例えば、抗体またはそのフラグメント)の物理的および化学的構造、ならびにその生物活性に基づき、タンパク質製剤(例えば、マルチドメインタンパク質製剤)の安定性を評価するのに用いることができる様々な方法がある。例えば、タンパク質の変性を調べるためには、電荷移動吸収、熱分析、蛍光分光学、円二色性、NMR、およびHPSPECが使用可能である。例えば、Wangら、1988, J. of Parenteral Science & Technology 42 (Suppl):S4-S26を参照されたい。
rCGEおよびHPSPECは、タンパク質凝集体の形成、タンパク質分解、およびタンパク質フラグメント化を評価するのに最も一般的かつ単純な方法である。従って、製剤の安定性をこれらの方法で評価してもよい。
特定の実施形態では、マルチドメインタンパク質製剤の濃度は、少なくとも15 mg/ml、少なくとも20 mg/ml、少なくとも25 mg/ml、少なくとも30 mg/ml、少なくとも35 mg/ml、少なくとも40 mg/ml、少なくとも45 mg/ml、少なくとも50 mg/ml、少なくとも55 mg/ml、少なくとも60 mg/ml、少なくとも65 mg/ml、少なくとも70 mg/ml、少なくとも75 mg/ml、少なくとも80 mg/ml、少なくとも85 mg/ml、少なくとも90 mg/ml、少なくとも95 mg/ml、少なくとも100 mg/ml、少なくとも105 mg/ml、少なくとも110 mg/ml、少なくとも115 mg/ml、少なくとも120 mg/ml、少なくとも125 mg/ml、少なくとも130 mg/ml、少なくとも135 mg/ml、少なくとも140 mg/ml、少なくとも150 mg/ml、少なくとも200 mg/ml、少なくとも250 mg/ml, もしくは、少なくとも300 mg/mlである。
特定の実施形態では、マルチドメインタンパク質の製剤は、高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HPSPEC)により評価して、38℃〜42℃の温度範囲で、少なくとも30日、少なくとも45日、もしくは少なくとも60日、いくつかの実施形態では、120日以下、20℃〜24℃の温度範囲で、少なくとも6ヶ月、もしくは少なくとも1年、2℃〜8℃の温度範囲(特に4℃)で、少なくとも6ヶ月、少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年、もしくは少なくとも5年、ならびに−20℃で少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年、もしくは少なくとも5年、安定性を呈示する。すなわち、前述した規定期間の貯蔵後、本明細書に記載するように、製剤が呈示する凝集および/またはフラグメント化は、低レベルから検出不能レベルである。好ましくは、前述した規定期間の貯蔵後、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下のタンパク質またはタンパク質フラグメントが、HPSECにより測定される凝集体を形成する。具体的実施形態では、マルチドメインタンパク質の製剤は、前記条件下でさらに長期にわたる貯蔵中、マルチドメインタンパク質の生物活性がほとんど失われない。その際、この生物活性は、様々なアッセイにより評価され、そのようなアッセイとして限定するものではないが、例えば、抗体または抗体フラグメントが標的抗原に特異的に結合する能力を測定する酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)およびラジオイムノアッセイ、抗体の補体活性化能力を測定するC3a/C4aアッセイ、抗体のADCC活性を測定するクロム放出アッセイが挙げられる。製剤は、前記規定期間の貯蔵後に、貯蔵前の製剤の初期生物活性の80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上を保持する。
例えば、HPSECまたはrCGEにより製剤の安定性を評価することができ、そこでは、ピークの面積比率(%)が非分解タンパク質を示す。具体的には、例えば、標的抗原に特異的に結合する約250μgの抗体または抗体フラグメント(10 mg/mlの該抗体または抗体フラグメントを含む約25μlの液体製剤)を、TSK SW x1ガードカラム(6.0 mm CX 4.0 cm)を備えたTosoH Biosep TSK G3000SWXLカラム(7.8 mm x 30 cm)に注入する。0.1 M硫酸ナトリウムと0.05%アジ化ナトリウムを含む0.1 Mリン酸二ナトリウムと一緒に、0.8〜1.0 ml/分の流量で、上記抗体または抗体フラグメントをアイソクラチック溶出させる。280 nmでのUV吸光度を用いて、溶出タンパク質を検出する。対照として、好適な対照標準をアッセイにランし、約12〜14分で観察した総合体積ピークを除く他のすべてのピークと比較した産物単量体ピークの面積比率(%)として、結果を記録する。単量体ピークより早期に溶出するピークを凝集体比率(%)として記録する。
特定の実施形態では、マルチドメインタンパク質の製剤は、HSPECまたはrCGEにより測定される低レベルから検出不能レベルの凝集、すなわち、タンパク質の重量に基づき5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、もしくは0.5%以下の凝集とともに、低レベルから検出不能レベルのフラグメント化、すなわち、インタクトなタンパク質を表すピークにおける総ピーク面積の80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上を呈示する。SDS-PAGEの場合には、染色または放射性同位元素で標識した各バンドの密度または放射能を測定し、非分解マルチドメインタンパク質を表すバンドの密度(%)または放射能(%)を求めることができる。
また、製剤の安定性は、製剤中のマルチドメインタンパク質の生物活性を測定するいずれのアッセイで評価してもよい。例えば、抗体の生物活性として、限定するものではないが、抗原結合活性、補体活性化活性、Fc受容体結合活性などが挙げられる。抗体の抗原結合活性は、当業者には周知のいずれの方法でも測定することができ、そのような方法として、限定するものではないが、ELISA、ラジオイムノアッセイ、ウエスタンブロット、BIAcoreなどが挙げられる。補体活性化活性は、抗原に特異的に結合する抗体を、補体成分の存在下で、抗原を発現させる細胞と反応させる系において、C3a/C4aアッセイにより測定することができる。また、Harlowら、Antibodies: A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 第2版 1988)を参照されたい。例えば、ELISAによるアッセイを用いて、抗体またはそのフラグメントが標的抗原に特異的に結合する能力を好適な対照標準と比較することもできる。このアッセイでは、プレートに標的抗原を塗布し、設定濃度の好適な対照標準の結合シグナルを同じ濃度の試験抗体または抗体フラグメントの結合シグナルと比較する。
当業者には周知のいずれの方法(例えば、HPSEC)でマルチドメインタンパク質製剤の純度を測定してもよい。当分野で周知の方法によりマルチドメインタンパク質製剤の不稔性を評価することができる。例えば、呼称孔径が0.45μmの無菌フィルターを介して液体タンパク質製剤をろ過することにより、無菌ダイズカゼイン消化培地と液体チオグリコレート培地に試験タンパク質製剤を接種する。Sterisure(商標)またはSteritest(商標)法を用いる場合には、各フィルター装置に無菌状態で約100 mlの無菌ダイズカゼイン消化培地または液体チオグリコレート培地を充填する。通常の方法を用いる場合には、攻撃したフィルターを無菌状態で約100 mlの無菌ダイズカゼイン消化培地または液体チオグリコレート培地に移す。培地を適温でインキュベートし、細菌または真菌増殖の確認のため14日にわたり3回観察する。
前述した方法を用いて、感染性生物(限定するものではないが、あらゆるウイルスおよび細菌など)をターゲッティングする抗体治療薬を作製することができる。
また、前記の方法を用いて、限定するものではないが、以下に挙げるその他の抗原をターゲッティングする抗体治療薬を作製することもできる:17-1A、α4β7インテグリン受容体、AFP、CBL、CD11、CD11a、CD14、CD147、CD18、CD20、CD22、CD23、CD25、CD3、CD33、CD4、CD40、CD40L、CD44、CD52、CD64 (FcR) 、CD80、CEA、補体(C5)、CTLA-4、EGF受容体、Ep-CAM、E-セレクチン、因子VII、FcRI受容体、γインターフェロン、GD2-ガングリオシド、gp IIIb/IIIa、gp72、HER-2、HLA-DR 10β、HLA-DR抗原、ICAM-3、IgE、IL-4、IL5、IL-5、IL-8、P38MAPキナーゼのインヒビター、イノシンモノホスフェートデヒドロゲナーゼ、ガングリオシドGD3、MUC-1、nuC242、PEM抗原、SK-1抗原、TNFα、VEGF、VEGF受容体、およびVLA-4。
特定の具体的実施形態では、前記方法を用いて、RSVの抗原、ヒトメタプノウイルス(hMPV)、インテグリンαvβ3、CD2、CD19、EphA2、EphA4、もしくはIL-9に特異的に結合する抗体治療薬を作製することもできる。さらに別の非制限的治療薬標的を以下の第5.3節に記載する。
5.2.マルチドメインタンパク質を含む製剤の貯蔵寿命を評価および/または改善する方法
本発明はまた、マルチドメインタンパク質製剤の貯蔵寿命を評価する方法も提供する。本発明の方法は、アンフォールディングにより、液体タンパク質製剤中のマルチドメインタンパク質の凝集を招くドメインを有する目的のマルチドメインタンパク質を含む、液体製剤中のマルチドメインタンパク質の熱変性および/または再生挙動を評価することを含む。一実施形態では、液体タンパク質製剤の変性/再生挙動は、熱変性/再生曲線を測定することにより決定する。従って、本方法は、熱変性および/または再生曲線に基づく製剤の貯蔵寿命の指標を提供する。例えば、ドメインが冷却時にリフォールディングしない、または低温で変性する場合には、マルチドメインタンパク質の貯蔵寿命は短いと考えられる。
本発明はまた、溶液中のマルチドメインタンパク質の長期安定性を評価する方法も提供し、その際、長期安定性とは、予め定めた温度で予め定めた期間貯蔵時の凝集が5%未満、10%未満、もしくは20%未満であるものとして定義する。本方法は、(a)マルチドメインタンパク質の溶液を用意するステップと;(b)該マルチドメインタンパク質溶液を加熱することによりマルチドメインタンパク質の1以上のドメインを変性させるステップと;(c)冷却時にドメインがリフォールディングするか否かを決定するステップと;(d)ステップ(c)でドメインがリフォールディングすると決定された場合、溶液中で長期安定性を持つものとして上記マルチドメインタンパク質を分類するステップとを含む。マルチドメインタンパク質の安定性を多数種の溶液で評価することにより、マルチドメインタンパク質を安定化させるのに有用な具体的溶液を同定することもできる。これに代わり、または随意に、本方法を用いて、予め定めた閾値レベルを超える所望の生物活性を備える数種のマルチドメインタンパク質を比較することもでき、その際、マルチドメインタンパク質以外は同じ成分を含む溶液中に各マルチドメインタンパク質を製剤化する。
マルチドメインタンパク質は、アンフォールディングにより、マルチドメインタンパク質の凝集を招くドメインを含みうると考えられる。従って、本発明はまた、タンパク質の凝集を引き起こす、マルチドメインタンパク質におけるドメインを同定する方法も提供する。一実施形態では、マルチドメインタンパク質において、凝集を引き起こす1以上のドメインを同定する方法は、(a)上記溶液を加熱することによりマルチドメインタンパク質の1以上のドメインを変性させるステップと;(b)冷却時に1以上のドメインがリフォールディングするか否かを決定するステップと;(c)ステップ(b)で冷却時にリフォールディングしない1以上のドメインを同定し、これにより、アンフォールディングにより、上記溶液中のマルチドメインタンパク質の凝集を引き起こす1以上のドメインを同定するステップとを含む。
本発明はまた、溶液中での長期安定性が改善されるようにマルチドメインタンパク質を操作する方法も提供し、その際、長期安定性とは、予め定めた温度で予め定めた期間貯蔵時の凝集が5%未満、10%未満、もしくは20%未満であるものとして定義する。溶液中での長期安定性が改善されるようにマルチドメインタンパク質のドメインを操作する方法は、(a)ドメイン内の1以上のアミノ酸残基を置換することにより、マルチドメインタンパク質のドメインを改変して、改変ドメインを作製するステップと;(b)該改変ドメインを含むマルチドメインタンパク質の溶液を加熱することにより改変ドメインを変性させるステップと;(c)冷却時にマルチドメインタンパク質中の上記改変ドメインがリフォールディングするか否かを決定するステップと;(d)ステップ(c)で改変ドメインがリフォールディングすると決定された場合には、長期安定性が改善されたものとして、上記改変ドメイン含有マルチドメインタンパク質を分類するステップとを含む。一実施形態では、マルチドメインタンパク質は抗体である。ステップ(a)〜(d)は単離されたドメインで実施してもよい。例えば、アンフォールディングにより、抗体の凝集を引き起こすFabドメインを、単離、改変、変性、再生および分類することができる。一実施形態では、長期安定性が改善されたものとして同定したドメインをマルチドメインタンパク質の作製に用いる。一実施形態では、マルチドメインタンパク質は抗体である。別の実施形態では、上記ドメインは抗原結合ドメインである。さらに別の実施形態では、上記ドメインは定常領域ドメインである。特定の実施形態では、マルチドメインタンパク質は、アンフォールディングにより、溶液中のマルチドメインタンパク質の凝集を引き起こすドメインを含む。
本発明はさらに、溶液中での長期安定性が改善されたマルチドメインタンパク質をスクリーニングする方法を提供し、その際、長期安定性とは、予め定めた温度で予め定めた期間貯蔵時の凝集が5%未満、10%未満、もしくは20%未満であるものとして定義する。特定の実施形態では、マルチドメインタンパク質は、アンフォールディングにより、溶液中のマルチドメインタンパク質の凝集を引き起こすドメインを含む。一実施形態では、本方法は、(a)集団マルチドメインタンパク質のメンバーであるそれぞれ2以上のマルチドメインタンパク質を変性させるが、その際、各マルチドメインタンパク質は異なる改変ドメインを含んでおり、該改変ドメインは、1以上の置換されたアミノ酸残基を有し、ここで、変性は、改変ドメインを含むマルチドメインタンパク質の1つの溶液を加熱することにより達成される、ステップと;(b)ステップ(a)で変性したマルチドメインタンパク質の各々における様々な改変ドメインが冷却時にリフォールディングするか否かを決定するステップと;(c)ステップ(b)でリフォールディングすると決定された改変ドメインを含むマルチドメインタンパク質を、長期安定性が改善されたものとして同定するステップとを含む。一実施形態では、本方法はさらに、様々なマルチドメインタンパク質の集団を作製することを含む。ステップ(a)〜(c)を単離ドメインに対し実施することも考慮される。例えば、アンフォールディングにより、抗体の凝集を引き起こすFabドメインを単離および改変して、様々な改変ドメインの集団を作製した後、そのうちの2つ以上を本方法によりスクリーニングすることができる。一実施形態では、長期安定性が改善された改善されたものとして同定したドメインをマルチドメインタンパク質の作製に用いる。具体的実施形態では、マルチドメインタンパク質は抗体である。一実施形態では、上記ドメインは抗原結合ドメイン(例えば、Fabドメイン)である。さらに別の実施形態では、上記ドメインは定常領域ドメインである。
特定の実施形態では、前記変性および再生(すなわち、冷却時のリフォールディング)ステップは、熱変性/再生曲線を作成する(例えば、示差走査熱量測定を用いて)ことにより実施する。加熱によるマルチドメインタンパク質の熱変性に関連する物理的性質の変化の大きさを所定範囲の温度について測定することにより、熱変性/再生曲線を作成する。温度範囲は所望の貯蔵温度範囲を包含することが考慮される。
本明細書で用いる「熱変性/再生曲線」とは、温度の関数としてのタンパク質の変性または再生に関連する物理的性質の変化のグラフである。例えば、Davidsonら、Nature Structure Biology 2:859 (1995);Clegg, R. Mら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:2994-2998 (1993)を参照されたい。変性中に変化するタンパク質のいずれかの物理的性質、例えば、光または熱の放出、光または熱の吸収、光の散乱、および二色性を用いて、タンパク質の構造的変化をモニタリングしてもよい。このような物理的性質の例として、蛍光放射、蛍光エネルギー移動、紫外線または可視光線の吸収、偏光の変化、および光散乱が挙げられる。蛍光放射はタンパク質に固有であり、蛍光リポーター分子によるものと考えられる。
本明細書で用いる「凝集」とは、多量体の形成をもたらす、タンパク質またはポリペプチド分子同士の物理的相互作用を意味する。多量体は、可溶性のままのこともあるし、溶液から沈降することもある。
マルチドメインタンパク質製剤は、好適な濃度、例えば、20、30、40、50、100 mg/ml以上の濃度のマルチドメインタンパク質の溶液でよい。液体マルチドメインタンパク質はまた、他の成分、限定するものではないが、例えば、塩、リガンド、補因子など、その他の成分を含んでもよい。マルチドメインタンパク質製剤の濃度および成分の選択は、液体マルチドメインタンパク質製剤におけるマルチドメインタンパク質の熱変性/再生挙動が、貯蔵寿命を評価しようとする液体マルチドメインタンパク質製剤の長期安定性を表すように実施する。一実施形態では、分析しようとする液体マルチドメインタンパク質製剤中のマルチドメインタンパク質と、液体タンパク質製剤中のマルチドメインタンパク質との濃度の差は50%、20%、10%、5%もしくは1%以下である。具体的実施形態では、分析しようとする液体マルチドメインタンパク質製剤中のマルチドメインタンパク質の濃度は、マルチドメインタンパク質製剤中のマルチドメインタンパク質の濃度と実質的に同じである。
マルチドメインタンパク質は、凝集を引き起こすドメインに加えて、他のアミノ酸残基またはドメインを含んでもよい。
液体製剤中のマルチドメインタンパク質の濃度は、少なくとも15 mg/ml、少なくとも20 mg/ml、少なくとも25 mg/ml、少なくとも30 mg/ml、少なくとも35 mg/ml、少なくとも40 mg/ml、少なくとも45 mg/ml、少なくとも50 mg/ml、少なくとも55 mg/ml、少なくとも60 mg/ml、少なくとも65 mg/ml、少なくとも70 mg/ml、少なくとも75 mg/ml、少なくとも80 mg/ml、少なくとも85 mg/ml、少なくとも90 mg/ml、少なくとも95 mg/ml、少なくとも100 mg/ml、少なくとも105 mg/ml、少なくとも110 mg/ml、少なくとも115 mg/ml、少なくとも120 mg/ml、少なくとも125 mg/ml、少なくとも130 mg/ml、少なくとも135 mg/ml、少なくとも140 mg/ml、少なくとも150 mg/ml、少なくとも200 mg/ml、少なくとも250 mg/ml, もしくは少なくとも300 mg/mlである。
製剤はまた、その他の物質、例えば、ヒスチジン、グリシン、サッカリド(例えば、ショ糖、マンノース、トレハロースなど)、ポリオール、(例えば、Tween)および糖アルコール(例えば、マンニトール、ソルビトールなど)を含んでもよい。製剤に含まれるヒスチジンの濃度は、1mM〜100 mM、または5mM〜50 mMの範囲である。ヒスチジンは、L-ヒスチジン、D-ヒスチジン、もしくはその混合物の形態でよいが、L-ヒスチジンが一般に好ましい。ヒスチジンはまた、水和物の形態であってもよい。ヒスチジンは、薬学的に許容される塩、例えば、塩酸塩(例:一塩酸塩、二塩酸塩)、臭化水素酸塩、硫酸塩、酢酸塩などの形態で用いることができる。ヒスチジンの純度は、少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%、そして最も好ましくは少なくとも99.5%でなければならない。
製剤に用いようとするアミノ酸の濃度は、150 mM未満、100 mM未満、75 mM未満、50 mM未満、25 mM未満、10 mM未満、5.0 mM未満、もしくは2.0 mM未満の濃度でよい。製剤中のアミノ酸の濃度は、その等電点でのタンパク質沈降を防止できるように、有意な緩衝作用を引き起こさないようにすべきである。また、アミノ酸は、薬学的に許容される塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、酢酸塩などの形態で用いてもよい。アミノ酸の純度は、少なくとも98%、または少なくとも99%、または少なくとも99.5%でなければならない。
サッカリドは、約1%〜約20%、好ましくは約5%〜約15%、さらに好ましくは約8%〜約10%の範囲にある濃度のショ糖でよい。ポリオールは、約0.001%〜約1%、または約0.01%〜約0.1%の範囲にある濃度のポリソルベート(例えば、Tween 20)でよい。
製剤のpHは、製剤に用いようとする特定のマルチドメインの等電点と等しくならないようにし、約5.0〜約8.0、または約5.5〜約6.5、または約6.0〜約7.0、または約6.5〜約7.5、または約7.0〜約8.0、または約5.8〜約6.2、または約6.0の範囲でよい。
液体製剤は、高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)により評価して、38℃〜42℃の温度範囲で少なくとも15日、いくつかの実施形態では25日以下、20℃〜24℃の温度範囲で少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも4ヶ月、もしくは少なくとも6ヶ月、2℃〜8℃の温度範囲(特に4℃)で少なくとも6ヶ月、少なくとも1年、少なくとも1.5年、少なくとも2年、少なくとも3年もしくは少なくとも4年、ならびに−20℃で少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年、もしくは少なくとも5年、安定性を呈示する。すなわち、前述した規定期間の貯蔵後、製剤、さらに具体的には液体製剤が呈示する凝集および/またはフラグメント化は、本明細書に記載のように、低レベルから検出不能レベルである。特定の実施形態では、前述した規定期間の貯蔵後、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、および0.5%以下のマルチドメインタンパク質が、HPSECにより測定される凝集体を形成する。
一実施形態では、アンフォールディングにより、マルチドメインタンパク質(その貯蔵寿命に関心がある)の凝集を招くドメインを含むマルチドメインタンパク質の好適な溶液が提供され、その際、溶液が該ドメインを安定化する。別の実施形態では、長期安定性が改善された操作ドメインを含むマルチドメインタンパク質の好適な溶液が提供される。
凍結乾燥製剤は、冷蔵温度(2〜8℃)で少なくとも12ヶ月、好ましくは2年、さらに好ましくは3年;室温(23〜27℃)で少なくとも3ヶ月、好ましくは6ヶ月、さらに好ましくは1年、観察される有意な変化を呈示しないのが好ましい。安定性の基準は次の通りである:HPSECでの測定により、タンパク質ドメインの10%以下、または5%以下が分解される。再水和溶液は、視覚分析により無色、または透明からやや乳白色を帯びている。製剤の濃度、pHおよび重量オスモル濃度の変化は±10%以下である。力価は、対照の70〜130、好ましくは80〜120%である。10%以下、好ましくは5%以下のクリッピングが観察される。10%以下、または5%以下の凝集が形成される。
本発明の溶液におけるマルチドメインタンパク質の長期安定性をスクリーニングおよび/または評価する方法は、様々なマルチドメインタンパク質(例えば、多種のモノクローナル抗体)の複数の製剤の貯蔵寿命に関する指標を提供することができる。一実施形態では、マルチドメインタンパク質の好適な溶液を各マルチドメインタンパク質について用意する。あるいは、本発明の溶液におけるマルチドメインタンパク質の長期安定性をスクリーニングおよび/または評価する方法は、同じマルチドメインタンパク質を含む多種溶液の貯蔵寿命に関する指標を提供することができる。別の実施形態では、マルチドメインタンパク質を多数の溶液中に製剤化する。特定の実施形態では、各マルチドメインタンパク質は、アンフォールディングにより、対応マルチドメインタンパク質の凝集を招くドメインを含む。別の実施形態では、各マルチドメインタンパク質は、アンフォールディングにより、対応マルチドメインタンパク質の凝集を招くドメインの変異体を含む。このようなマルチドメインタンパク質の各々について熱変性曲線を測定する。次に、マルチドメインタンパク質の変性温度に基づいて、マルチドメインタンパク質を順位付けする。変性温度が低いほど安定性も低くなることから、これは短い貯蔵寿命を示している。
一実施形態では、溶液におけるマルチドメインタンパク質の長期安定性をスクリーニングおよび/または評価する方法を様々な改変マルチドメインタンパク質の複数の製剤の貯蔵寿命に関する指標として用いる。複数の改変マルチドメインタンパク質の各々は、改変形態のドメイン(例えば、該ドメイン内に置換された1以上のアミノ酸残基を有する)を含む。改変ドメインを含むマルチドメインタンパク質の好適な溶液を各改変マルチドメインタンパク質について用意する。このような改変マルチドメインタンパク質の各々について熱変性曲線を測定する。次に、マルチドメインタンパク質の変性温度に基づいて、改変マルチドメインタンパク質を順位付けする。この順位に基づき、1以上の改変モノクローナルマルチドメインタンパク質を選択することができる。具体的実施形態では、マルチドメインタンパク質は抗体である。
また、溶液中のマルチドメインタンパク質の長期安定性をスクリーニングおよび/または評価する方法を用いて、マルチドメインタンパク質製剤の安定性、従って、貯蔵寿命を最適化する生化学的条件を同定することもできる。例えば、pHはタンパク質の貯蔵寿命に影響する。液体製剤の場合には、溶剤、例えば、水の組成もタンパク質の貯蔵寿命に影響する。例えば、グリセロールは、タンパク質の天然の配座に好都合になるように水の溶媒和特性を改変する。溶液中のリガンドおよび補因子もタンパク質の貯蔵寿命に影響しうる。タンパク質のフォールディングに作用することがわかっているその他の生化学パラメーターとして、タンパク質濃度、温度、グルタチオンレドックスバッファー(GSH、GSSG)、デタージェントの存在、ならびにグリセロール、アルギニン−HCl、ポリエチレングリコール(PEG)、および有機溶剤など、その他の添加剤の存在が挙げられる。最適pH、イオン強度依存性、ホフマイスター系列の塩の濃度、グリセロール濃度、ショ糖濃度、アルギニン濃度、ジチオトレイトール濃度、金属イオン濃度など、様々な条件下を最適化することができる。このような生物学的条件は、該条件下でのマルチドメインタンパク質の熱変性曲線に基づいて評価することができる。一実施形態では、複数の様々な条件を順位付けし、最適なものを選択する。
一実施形態では、示差走査熱量測定(DSC)を用いて、熱変性/再生曲線を作成する。この実施形態では、マルチドメインタンパク質の熱変性/再生のDSCサーモグラムを取得する。DSCを用いて、タンパク質の変性を調べる方法は当分野で周知である(例えば、Vermeerら、2000, Biophys. J. 78:394-404;Vermeerら、2000, Biophys. J. 79:2150-2154を参照)。DSCにより、タンパク質の個別ドメイン同士の相互作用の微調整(fine-tuning)を検出することができる(Privalovら、1986, Methods Enzymol. 131:4-51)。
一実施形態では、DSC測定はSetaram Micro-DSC III(Setaram、Caluire、フランス)を用いて実施する。適当なブランク溶液を含む1mlの対照細胞に対して1mlのサンプル細胞で、熱量計にサンプルを配置する。熱量計内で4時間25℃にて細胞を安定化した後、選択した加熱速度で最終温度まで加熱する。Setaramソフトウエア(Setaram、バージョン1.3)を用いて、転移温度およびエンタルピーを決定する。
別の実施形態では、DSC測定はVP-DSC(MicroCal、LLC)を用いて実施する。一実施形態では、走査速度:1.0℃/分および温度範囲:25〜120℃を使用する。5分の走査前調温とともに、フィルター時間:8秒を用いる。サンプルおよび対照細胞の両方に、多数のベースラインをバッファーと一緒に流し込むことにより、熱平衡を確立する。ベースラインをサンプルサーモグラムから差し引いた後、データを濃度基準化し、デコンボリューション(deconvolution)関数を用いて適合させる。融解温度は、装置と一緒に提供されたOriginソフトウエアを用いて、製造者の手順に従い決定する。
別の実施形態では、熱変性/再生曲線は、円二色性(CD)スペクトロスコピーを用いて取得する。温度および/または例えば、pHの関数としてのIgGの二次構造の変化をCDスペクトロスコピーで調べることができる(Fasman, 1996, Circular Dichroism and the Conformational Analysis of Biomolecules. Plenum Press、ニューヨーク)。この方法の利点は、分光信号が周囲の溶液の存在に影響されないことと、明確な手順を用いて、様々な構造エレメントの基準スペクトルに基づき、二次構造を解明できることである(de Jonghら、1994, Biochemistry. 33:14521-14528)。二次構造エレメントの画分はCDスペクトルから取得することができる。
一実施形態では、JASCO分光偏光計、モデルJ-715(JASCO International Co., 日本国東京)で測定する。0.1 cm光路長さの石英キュベットも用いる。温度調節は、JASCO PTC-348WI(JASCO International)熱電対を用いて実施する。分解能:0.2℃および時定数:16秒のPeltier熱電対を用いて、温度走査を記録する。遠紫外線領域(0.2 nm分解能)での波長走査は、好適な走査速度をもつ複数の走査の蓄積により取得する。
熱変性/再生曲線は、分光法により測定することもできる。溶液中のタンパク質が加熱に応答して変性すると、分子は凝集し、溶液はさらに強く光を散乱する。凝集によりサンプルの光学的透明性に変化が起こるため、規定波長の可視または紫外線の吸収の変化をモニタリングすることにより、凝集を測定することができる。
さらに別の実施形態では、蛍光分光学を用いて、熱変性/再生曲線を取得する。一実施形態では、固有タンパク質蛍光、例えば、固有トリプトファン蛍光をモニタリングする。別の実施形態では、蛍光プローブ分子をモニタリングする。蛍光分光学実験を実施する方法は当業者には周知である。例えば、Bashford, C. L.ら、Spectrophotometry and Spectrofluorometry: A Practical Approach, pp. 91-114, IRL Press Ltd. (1987);Bell, J. E., Spectroscopy in Biochemistry, Vol. I, pp. 155-194, CRC Press (1981);Brand, L.ら、Ann. Rev. Biochem. 41:843 (1972)を参照されたい。
アレイフォーマットを用いて、本発明の方法を実施することができ、該フォーマットでは、多種の液体マルチドメインタンパク質製剤を同時に評価する(米国特許第6,232,085号を参照)。アレイフォーマットは、様々なマルチドメインタンパク質(例えば、複数の改変モノクローナル抗体)の複数の製剤の潜在的貯蔵寿命、または多様な生化学的条件下のマルチドメインタンパク質の貯蔵寿命を評価する上で特に有用である。
5.3.マルチドメインタンパク質
一実施形態では、本発明の方法は、標的分子に特異的に結合する製造特性が改善されたマルチドメインタンパク質(本明細書では、「本発明のマルチドメインタンパク質」と呼ぶ)の作製に有用である。このようなマルチドメインタンパク質として、限定するものではないが、抗体ドメイン融合タンパク質などの抗体が挙げられる。一実施形態では、本発明のマルチドメインタンパク質は、非ポリペプチド標識に特異的に結合する。別の実施形態では、本発明のマルチドメインタンパク質は、ポリペプチド標識に特異的に結合する。別の実施形態では、疾患または障害に罹患した哺乳動物に本発明のマルチドメインタンパク質を投与することにより、該動物に治療利益をもたらすことができる。
抗体ドメイン融合タンパク質としては、Fcドメインまたはそのフラグメントを融合パートナーと結合させたFc融合タンパク質があり、その際、該融合パートナーは一般に、いずれのタンパク質、ポリペプチド、ペプチドでもよく、例えば、限定するものではないが、受容体の標的結合領域、接着性分子、リガンド、酵素、またはその他のタンパク質もしくはタンパク質ドメインが挙げられる。また、抗体ドメイン融合タンパク質には、抗原結合ドメイン融合タンパク質も含まれ、これは抗原結合ドメインまたはそのフラグメントを融合パートナーと結合させたもので、その際、該融合パートナーは一般に、いずれのタンパク質、ポリペプチド、ペプチドでもよく、例えば、限定するものではないが、別の抗原結合ドメイン、受容体の標的結合領域、接着性分子、リガンド、酵素、毒素またはその他のタンパク質もしくはタンパク質ドメインが挙げられる。融合パートナーの役割が治療目標により決定されることは理解されよう。例えば、Fc融合物の非Fc部分の役割は一般に、標的結合を媒介することであるため、抗体の可変領域と機能的に類似しているが、抗原結合ドメイン融合タンパク質の融合パートナーの役割は、第2抗原結合ドメインの場合、第2標的との結合を媒介することであり、また、毒素の場合には、細胞傷害性因子を賦与することである。
実質的にあらゆる分子を本発明のマルチドメインタンパク質によりターゲッティングする、および/または本発明のマルチドメインタンパク質に組み込むことができ、そのような分子として、限定するものではないが、以下のタンパク質、サブユニット、ドメイン、モチーフのリスト、ならびに以下の細胞タンパク質のリストに属するエピトープが挙げられる:レニン;ヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモンなどの成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α1-抗トリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルチトニン;黄体化ホルモン;グルカゴン;凝固因子、例えば、因子VII、因子VIIIC、因子IX、組織因子(TF)およびフォン・ビルブランド因子;抗凝固因子、例えば、プロテインC;心房性ナトリウム利尿因子;肺界面活性物質;プラスミノーゲン活性化因子、例えば、ウロキナーゼもしくはヒト尿または組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA);ボンベシン;トロンビン;造血成長因子;腫瘍壊死因子(TNF)タンパク質、例えば、TNF-α、TNF-β、TNF-β2、TNFc、TNF-αβ、4-1BBL、ならびにTNFスーパーファミリーのメンバー、例えば、アポトーシスのTNF様ウィークインデューサー(TWEAK)、およびLIGHT、Bリンパ球刺激因子(BlyS);TNF受容体スーパーファミリーのメンバー、例えば、TNF-RI、TNF-RII、TRAIL受容体-1、貫膜活性化因子およびCAML相互作用因子(TACI)ならびにOX40L;Fasリガンド(FasL);エンケファリナーゼ;RANTES(通常、活性化時に調節され、T細胞が発現および分泌する);ヒトマクロファージ炎症タンパク質(MIP-1-α);血清アルブミン、例えば、ヒト血清アルブミン;ミュラー管抑制物質;リラキシンA鎖;リラキシンB鎖;プロリラキシン;マウスゴナフォトロピン関連ペプチド;微生物タンパク質、例えば、β-ラクタマーゼ;DNase;IgE;細胞傷害性Tリンパ球関連抗原(CTLA)、例えば、CTLA-4;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子(VEGF);ホルモンまたは成長因子の受容体、例えば、EGFR(ErbB-1)、VGFR;αインターフェロン(α-IFN)、βインターフェロン(β-IFN)およびγインターフェロン(γ-IFN)のようなインターフェロン;インターフェロンα受容体(IFNAR)サブユニット1および/または2ならびにその他の受容体、例えば、A1、アデノシン受容体、リンホトキシンβ受容体、BAFF-R、エンドセリン受容体;プロテインAまたはD;リウマトイド因子;神経栄養因子、例えば、骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5、もしくは-6(NT-3、NT-3、NT-4、NT-5、もしくはNT-6)、または神経成長因子;血小板由来増殖因子(PDGF);αFGFおよびβFGFのような繊維芽細胞増殖因子;上皮増殖因子(EGF);TGF-αおよびTGF-βのようなトランスフォーミング増殖因子(TGF)、例えば、TGF-1、TGF-2、TGF-3、TGF-4、もしくはTGF-5など;インスリン様増殖因子IおよびII(IGF-IおよびIGF-II);des(1-2)-IGF-I(脳IGF-I)、インスリン様増殖因子結合タンパク質、角質細胞増殖因子;増殖因子受容体、例えば、FGFR-3、IGFR;CDタンパク質、例えば、CD2、CD3、CD3E、CD4、CD8、CD11、CD11a、CD14、CD16、CD18、CD19、CD20、CD22、CD23、CD25、CD27、CD27L、CD28、CD29、CD30、CD30L、CD32、CD33(p67タンパク質)、CD34、CD38、CD40、CD40L、CD52、CD54、CD56、CD63、CD64、CD80およびCD147;エチロトロポイエチン;骨誘導因子;イムノトキシン;骨形成因子(BMP);インターフェロン-α、-βおよび-γのようなインターフェロン;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M-CSF、GM-CSF、およびG-CSF;インターロイキン(IL)、例えば、IL-1〜IL-13およびIL-15、IL-18、IL-23;EPO;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体α/β;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;調節タンパク質;ケモカインファミリーメンバー、例えば、エオタキシン、MIP、MCP-1、RANTES;細胞接着分子、例えば、セレクチン(L-セレクチン、P-セレクチン、E-セレクチン)、LFA-1、LFA-3、Mac1、p150.95、VLA-1、VLA-4、ICAM-1、ICAM-3、EpCAMおよびVCAM、a4/p7インテグリン、およびXv/p3インテグリン、インテグリンαサブユニット、例えば、CD49a、CD49b、CD49c、CD49d、CD49e、CD49f、α7、α8、α9、αD、CD11a、CD11b、CD51、CD11c、CD41、αIIb、αIELb;インテグリンβサブユニット、例えば、CD29、CD 18、CD61、CD104、β5、β6、β7およびβ8;限定するものではないが、αVβ3、αVβ5およびα4β7などのインテグリンサブユニットの組合せ;細胞リガンド、例えば、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、A増殖誘導リガンド(APRIL)、B細胞活性化因子(BAFF)、アポトーシス経路のメンバー;IgE;血液群抗原;flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA-4;プロテインC;EphA2、EphA4、EphB2などのようなEph受容体;免疫系マーカー、受容体およびリガンド、例えば、CTLA-4、T細胞受容体、B7-1、B7-2、IgE、ヒト白血球抗原(HLA)、例えば、HLA-DR、CBL;補体タンパク質、例えば、補体受容体CR1、C1Rq、ならびにC3およびC5のような他の補因子;組織因子、因子VIIのような血液因子;GpIbα、GpIIb/IIIaおよびCD200のような糖タンパク質受容体;ならびに、上記ポリペプチドいずれかのフラグメント。
また、限定するものではないが、以下に挙げるような癌抗原に特異的に結合する本発明のマルチドメインタンパク質も考慮される:ALK受容体(プレイオトロフィン受容体)、プレイオトロフィン;KS 1/4汎癌抗原;卵巣癌抗原(CA125);前立腺酸性フォスフェート;前立腺特異的抗原(PSA);黒色腫関連抗原p97;黒色腫抗原gp75;高分子量黒色腫抗原(HMW-MAA);前立腺特異的膜抗原;癌胎児性抗原(CEA);癌胎児性抗原関連細胞接着分子(CEACAM1);サイトケラチン腫瘍関連抗原;ヒト乳球(HMFG)抗原;ルイスY関連炭水化物を発現する腫瘍関連抗原;直腸結腸腫瘍関連抗原、例えば、CEA、腫瘍関連糖タンパク質-72(TAG-72)、CO17-1A、GIGA 19-9、CTA-1およびLEA;バーキットリンパ腫抗原-38.13;CD19;ヒトBリンパ腫抗原-CD20;CD33;黒色腫特異的抗原、例えば、ガングリオシドGD2、ガングリオシドGD3、ガングリオシドGM2およびガングリオシドGM3;腫瘍特異的移植型細胞表面抗原(TSTA);ウイルス誘導腫瘍抗原、例えば、T抗原、DNA腫瘍ウイルスおよびRNA腫瘍ウイルスのエンベロープ抗原;癌胎児性抗原αフェトプロテイン、例えば、結腸のCEA、5T4癌胎児性栄養芽層糖タンパク質および膀胱腫瘍癌胎児性抗原;分化抗原、例えば、ヒト肺癌抗原L6およびL20;繊維肉腫の抗原;ヒト白血病T細胞抗原Gp37;ネオ糖タンパク質;スフィンゴ脂質;EGFR(表皮増殖因子受容体)のような乳癌抗原;NY-BR-16;NY-BR-16およびHER2抗原(p185HER2);Her2/neu(ErbB-2)、Her3(ErbB-3)、Her4(ErbB-4)、多型上皮ムチン(PEM)抗原;上皮膜抗原(EMA);黒色腫関連抗原MUC18;MUC1;悪性ヒトリンパ球抗原-APO-1;分化抗原、例えば、胎児赤血球に存在するI抗原;成体赤血球に存在する一次内胚葉I抗原;前移植胚;胃腺癌に存在するI(Ma);乳房上皮に存在するM18、M39;骨髄性細胞に存在するSSEA-1;VEP8;VEP9;Myl;VIM-D5;結腸直腸癌に存在するD156-22;TRA-1-85(血液群H);精巣および卵巣癌に存在するSCP-1;結腸腺癌に存在するC14;肺腺癌に存在するF3;胃癌に存在するAH16;Yハプテン;胚性癌細胞に存在するLey;TL5(血液群A);A431細胞に存在するEGF受容体;膵臓癌に存在するE1系列(血液群B);胚性癌細胞に存在するFC10.2;胃腺癌抗原;腺癌に存在するCO-514(血液群Lea);腺癌に存在するNS-10;CO-43(血液群Leb);A431細胞のEGFに存在するG49;結腸腺癌に存在するMH2(血液群Aleb/Ley);結腸癌に存在する19.9;胃癌ムチン;骨髄性細胞に存在するT5A7;黒色腫に存在するR24;胚性癌細胞に存在する4.2、GD3、D1.1、OFA-1、GM2、OFA-2、GD2、およびM1:22:25:8、ならびに、4〜8細胞期胚に存在するSSEA-3およびSSEA-4;皮膚T細胞リンパ腫抗原;MART-1抗原;シアリルTn(STn)抗原;大細胞リンパ腫に存在する未分化リンパ腫キナーゼ(ALK);結腸癌抗原NY-CO-45;肺癌抗原NY-LU-12変異体A;腺癌抗原ART1;腫瘍随伴病変関連脳−精巣癌抗原(神経癌抗原MA2;腫瘍随伴性神経抗原);神経−腫瘍学腹側抗原2(NOVA2);肝細胞癌抗原遺伝子520;腫瘍関連抗原CO-029;腫瘍関連抗原MAGE-C1(癌/精巣抗原CT7)、MAGE-B1(MAGE-XP抗原)、MAGE-B2(DAM6)、MAGE-2、MAGE-4a、MAGE-4bおよびMAGE-X2;癌‐精巣抗原(NY-EOS-1);胎盤アルカリ性ホスファターゼ(PLAP)および精巣PLAP様アルカリ性ホスファターゼ、トランスフェリン受容体;ヘパラネーゼI;多種の癌に関連するEphA2、ならびに上記ポリペプチドいずれかのフラグメント。
その他のポリペプチド標的の例として、限定するものではないが、以下のタンパク質、サブユニット、ドメイン、モチーフのリスト、ならびに、以下の微生物タンパク質のリストに属するおよびエピトープが挙げられる:ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)タンパク質、例えば、エンベロープ糖タンパク質、gB、ウイルスの内部マトリックスタンパク質、pp65およびpp150、前初期(IE)タンパク質;ヒト免疫不全ウイルス(HIV)タンパク質、例えば、Gag、Pol、VifおよびNef(Vogtら、1995, Vaccine 13: 202-208);HIV抗原gp120およびgp160(Achourら、1995, Cell. Mol. Biol. 41: 395-400;Honeら、1994, Dev. Biol. Stand. 82: 159-162);ヒト免疫不全ウイルスのgp41エピトープ(Eckhartら、1996, J. Gen. Virol. 77:2001-2008);C型肝炎ウイルス(HCV)タンパク質、例えば、分泌または非分泌形態のヌクレオキャプシドタンパク質、コアタンパク質(pC);E1(pE1)、E2(pE2)(Saitoら、1997, Gastroenterology 112:1321-1330)、NS3、NS4a、NS4bおよびNS5(Chenら、1992, Virology 188:102-113);重度急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルスタンパク質、限定するものではないが、S(スパイク)糖タンパク質、小エンベロープタンパク質E(Eタンパク質)、膜糖タンパク質M(Mタンパク質)、血球凝集素エステラーゼタンパク質(HEタンパク質)、およびヌクレオキャプシドタンパク質(Nタンパク質)(例えば、Marraら、“The Genome Sequence of the SARS-Associated Coronavirus,” Science Express, May 2003を参照);マイコバクテリウム結核タンパク質、例えば、通常、細胞表面上のリポ糖タンパク質である30-35 kDa(a.k.a.抗原85、α抗原)、65-kDa熱ショックタンパク質、および36-kDaプロリンリッチ抗原(Tasconら、(1996) Nat. Med. 2: 888-92)、Ag85A、Ag85b(Huygenら、1996, Nat. Med. 2: 893-898)、65-kDa、熱ショックタンパク質、hsp65 (Tasconら、1996, Nat. Med. 2: 888-892)、MPB/MPT51(Mikiら、2004, Infect. Immun. 72:2014-21)、MTSP11、MTSP17(Limら、2004, FEMS Microbiol. Lett. 232:51-9および前掲);単純ヘルペスウイルス(HSV)タンパク質、例えば、gD 糖タンパク質、gB糖タンパク質;ルーシュマニアのような細胞内寄生虫由来のタンパク質、例えば、LPG、gp63(XuおよびLiew、1994, Vaccine 12: 1534- 1536;XuおよびLiew, 1995, Immunology 84: 173-176)、P-2(Nylenら、2004, Scand. J. Immunol. 59:294-304)、P-4(Karら、2000, J Biol. Chem. 275:37789-97)、LACK(Kellyら、2003, J Exp. Med. 198:1689-98);ウエルシュ菌毒素のような細菌毒素タンパク質;さらには、ヒト呼吸器合胞体ウイルス(hRSV)、ヒトメタニューモウイルス(HMPV)およびパラインフルエンザウイルス(PIV)の抗原ペプチド例が、Youngらによる特許公開WO04010935A2に詳述されている。
当業者は、前記リストの標的が特定のタンパク質および生体分子だけではなく、これらを含む1以上の生化学的経路を意味することは理解されよう。例えば、標的抗原としてCTLA-4を挙げた場合、これは、T細胞共刺激経路(CTLA-4、B7-1、B7-2、CD28など)を構成するリガンドおよび受容体、ならびに、これらのタンパク質に結合するその他未知のあらゆるリガンドまたは受容体も標的であることを意味する。従って、本明細書で用いる標的は、特定の生体分子だけではなく、標的と相互作用するタンパク質、ならびに、標的が属する生化学的経路のメンバーのセットも意味する。当業者はさらに、前記標的抗原、これらに結合するリガンドもしくは受容体、またはそれらの対応する生化学的経路の他のメンバーのいずれかを本発明のマルチドメインタンパク質またはその一部に機能的に結合させることにより、融合タンパク質を作製できることも理解されよう。このように、例えば、EGFRをターゲッティングするマルチドメイン融合物は、マルチドメインタンパク質またはその一部と、EGF、TGFα、またはEGFRに結合するその他いずれかのリガンド(既知または未知に関わらず)を機能的に結合させることにより、構築することができる。従って、本発明のマルチドメインタンパク質またはその一部をEGFRと機能的に結合させることにより、EGF、TGFα、またはEGFRに結合するその他いずれかのリガンド(みいだされているかいないかに関わらず)に結合する融合物を作製することができる。このように、リガンド、受容体、または他のタンパク質またはタンパク質ドメイン(限定するものではないが、前記標的、ならびに、対応する生化学的経路を構成するタンパク質など)に関わらず、実質的にすべてのポリペプチドを本発明のマルチドメインタンパク質またはその一部に機能的に結合させることにより、融合物を作製することができる。
一実施形態では、本発明のマルチドメインタンパク質は抗体または抗体ドメイン融合タンパク質である。抗体または抗体ドメイン融合タンパク質を作製するのに有用な多数の方法が当分野では周知である。いくつかの非制限的例を第5.4節に記載する。具体的実施形態では、本発明の方法を用いて、好ましい/改善された製造特性を備える抗体または抗体ドメイン融合タンパク質を作製および/またはスクリーニングする。
多数の具体的マルチドメインタンパク質、すなわち、臨床試験または開発における使用が認可されている抗体および抗体ドメイン融合タンパク質(例えば、Fc融合物)を本発明の方法に用いれば有利である。上記抗体および抗体ドメイン融合タンパク質(例えば、Fc融合物)は本明細書において「臨床製剤および候補」と称する。従って、具体的実施形態では、本発明の方法を多種の臨床製剤および候補に使用することができる。例えば、本発明の操作およびスクリーニング方法は、以下の薬剤と実質的に類似した結合および機能的特性を備える、製造特性が改善された抗体を開発するために使用することができる:リツキシマブ(Rituxan(登録商標)、IDEC/Genentech/Roche)(例えば、米国特許第5,736,137号を参照)、非ホジキンリンパ腫を治療することが認可されているキメラ抗CD20 IgG1抗体;HuMax-CD20(Genmab)、抗CD20(例えば、PCT WO 04/035607を参照);米国特許第5,500,362号に記載されている抗CD20抗体; AME-I33(Applied Molecular Evolution)、ヒト化および最適化抗CD20 Mab;hA20(Immunomedics, Inc.)、ヒト化抗CD20 Mab;HumaLYM(商標)(Intracel)、完全ヒト抗CD20 Mab;トラツズマブ(Herceptin(登録商標)、Genentech)、乳癌を治療することが認可されているヒト化抗Her2/neu抗体(例えば、米国特許第5,677,171号を参照);ペルツマブ(rhuMab-2C4, Omnitarg(商標)、Genentech);米国特許第4,753,894号に記載の抗Her2抗体;セツキシマブ(Erbitux(登録商標)、Imclone)(米国特許第4,943,533号;PCT WO 96/40210)、各種癌の臨床試験に用いられるキメラ抗EGFR抗体;米国特許第6,235,883号に記載のABX-EGF(Abgenix/Immunex/Amgen);米国特許出願番号10/172,317に記載のHuMax-EGFr(Genmab);425、EMD55900、EMD62000、およびEMD72000(Merck KgaA)(米国特許第5,558,864号);ICR62(Institute of Cancer Research)(PCT WO 95/20045);TheraCIM hR3(YM Biosciences, Canada and Centro de Immunologia Molecular、キューバ)(米国特許第5,891,996号;第6,506,883号);mAb-806(Ludwig Institute for Cancer Research, Memorial Sloan-Kettering)(Jungbluthら、2003, Proc Natl Acad Sci USA. 100(2):639-44);KSB-102(KS Biomedix);MR1-1(IVAX, National Cancer Institute)(PCT WO 01/62931);およびSC100(Scancell)(PCT WO 01/88138);アレムツズマブ(Campath(登録商標)、Genzyme)、B細胞慢性リンパ性白血病の治療用に現在認可されているヒト化モノクローナル抗CD52 IgG1抗体;ムロモナブ-CD3(Orthoclone OKT3(登録商標)、Ortho Biotech/Johnson & Johnson)、抗CD3抗体; オルトクローン(OrthoClone)OKT4A(Ortho Biotech)、ヒト化抗CD4 IgG抗体;イブリツモマブチウケセタン(Zevalin(登録商標)、IDEC/Schering AG)、放射標識した抗CD20抗体;ゲムツズマブオゾガミシン (Mylotarg(登録商標)、Celltech/Wyeth)、抗CD33(p67タンパク質)抗体;アレファセプト(Amevive(登録商標)、Biogen)、抗LFA-3 Fc融合物;アブシキシマブ(ReoPro(登録商標)、Centocor/Lilly)、血餅形成予防のための血小板上の抗糖タンパク質IIb/IIIa受容体;バシリキシマブ(Simulect(登録商標)、Novartis)、抗CD25抗体;インフリキシマブ(Remicade(登録商標)、Centocor)、抗TNFα抗体;アダリムマブ(Humira(登録商標)、Abbott)、抗TNFα抗体;フミケード(商標)(CellTech)、抗TNFα抗体;エタネルセプト(Enbrel(登録商標)、Immunex/Amgen)、抗TNFαFc融合物;ABX-CBL(Abgenix)、抗CD147 抗体; ABX-IL8(Abgenix)、抗lL8抗体;ABX-MA1(Abgenix)、抗MUC18 抗体;ペムツモマブ(R1549, 90Y-muHMFG1, Antisoma)、抗MUC1抗体;セレクス(R1550, Antisoma)、抗MUC1抗体;アンギオマブ(AS1405, Antisoma)、Antisoma により開発されたHuBC-1およびチオプラチン(AS1407);ナタリズマブ(Antegren(登録商標)、Biogen)、抗α-4-β-1 (VLA-4) およびα-4-β-7抗体; ANTOVA(商標)(Biogen)、ヒト化抗CD40L IgG抗体;VLA-1 mAb(Biogen)、抗VLA-1インテグリン抗体;LTBR mAb(Biogen)、抗リンホトキシンβ受容体(LTBR)抗体;CAT-152(Cambridge Antibody Technology)、抗TGFβ2抗体;J695(Cambridge Antibody Technology/Abbott)、抗IL-12 抗体;CAT-192(Cambridge Antibody Technology/Genzyme);抗TGFβ1抗体;CAT-213(Cambridge Antibody Technology)、抗Eotaxin1抗体;LymphoStat-B(商標)、抗Blys抗体およびTRAIL-R1mAb、抗TRAIL-R1抗体、いずれもCambridge Antibody Technology and Human Genome Sciences, Inc.により開発中;ベバシズマブ(Avastin(商標)、rhuMAb-VEGF, Genentech)、抗VEGF抗体;抗HER受容体ファミリー抗体(Genentech);抗組織因子抗体(Genentech);オマリズマブ(Xolair(商標)、Genentech)、抗IgE抗体;エファリズマブ(Raptiva(商標)、Genentech/Xoma)、抗CD11a抗体;MLN-02抗体(以前はLDP-02、Genentech /Millenium Pharmaceuticals)、ヒト化抗α4β7抗体;フマックスCD4(Genmab)、抗CD4 抗体;フマックス-IL 15(Genmab and Amgen)、抗IL15抗体;フマックス-インフラム(Genmab/Medarex);フマックス-キャンサー(Genmab/Medarex/Oxford GcoSciences)、抗ヘパラナーゼI抗体; フマックス-リンフォーマ(Genmab/Amgen);フマックス-TAC (Genmab);IDEC-131(IDEC Pharmaceuticals)、抗CD40L抗体;クレノシキシマブ(IDEC-151, IDEC Pharmaceuticals)、抗CD4抗体;IDEC-114(IDEC Pharmaceuticals)、抗CD80抗体;IDEC-152(IDEC Pharmaceuticals)、抗CD23;IDEC Pharmaceuticalsにより開発中の抗マクロファージ遊走因子(MIF)抗体); BEC2(Imclone)、抗イディオタイプ抗体;IMC-1C11(Imclone)、抗KDR抗体;DC101(Imclone)、Imcloneにより開発中の抗flk-1抗体;抗VEカドヘリン抗体; ラベツズマブ(CEA-Cide(商標)、Immunomedics)、抗癌胎児性抗原(CEA)抗体;エパラツズマブ(LymphoCide(商標)、Immunomedics)、抗CD22抗体;AFP-シド(Immunomedics);ミエローマシド(Immunomedics);LkoCide(Immunomedics);プロスタシド(Immunomedics); MDX-010(Medarex)、抗CTLA4抗体;MDX-060(Medarex)、抗CD30抗体;MDX-070(Medarex);MDX-018(Medarex);MDX-CD4(Medarex/Eisai/Genmab)、ヒト抗CD4 IgG抗体;オシデム(商標)(IDM-1, Medarex/Immuno-Designed Molecules)、抗Her2抗体;フマックス(商標)-CD4(Medarex/Genmab)、抗CD4抗体;フマックス-IL15(Medarex/Genmab);CNTO 148(Medarex/Centocor/J&J)、抗TNFα抗体;CNTO 1275(Centocor/J&J)、抗サイトカイン抗体;CNTO 95(Centocor/J&J)、ヒトインテグリンαv抗体(PCT公開WO 02/12501);MOR101およびMOR102(MorphoSys)、抗細胞間接着分子-1(ICAM-1)(CD54)抗体;MOR201(MorphoSys)、抗繊維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR-3)抗体;ビシリズマブ(Nuvion(登録商標)、Protein Design Labs)、抗-CD3抗体;HuZAF(商標)(Protein Design Labs)、抗γインターフェロン抗体;抗-α5β1インテグリン(Protein Design Labs);抗IL-12(Protein Design Labs);ING-1(Xoma)、抗Ep-CAM抗体;MLN01(Xoma)、抗β2インテグリン抗体;ZENAPAX(登録商標)(ダクリズマブ、Roche Pharmaceuticals)、急性腎同種移植拒絶予防のための免疫抑制性ヒト化抗CD25モノクローナル抗体;CDP860(Celltech、英国)、ヒト化、PEG化抗CD18 F(ab’)2;PRO542(Progenics/Genzyme Transgenics)、CD4と融合した抗HIV gp120抗体;C14(ICOS Pharm)、抗CD14抗体;OVAREX(商標)(Altarex)、マウス抗CA 125抗体; PANOREX(商標)(Glaxo Wellcome/Centocor)、マウス抗17-IA細胞表面抗原IgG2a抗体; VITAXIN(商標)(MedImmune, PCT publication No. WO 2003/075957)、ヒト化抗αVβ3インテグリン抗体;シプリズマブ(MEDI-507、MedImmune、WO 99/03502)、マウスモノクローナル抗CD2抗体のヒト化形態;BTI-322;パリビズマブ(Synagis(登録商標)、MedImmune)、ヒト化中和抗RSV抗体;MEDI-524(Numax, MedImmune)、アフィニティー最適化ヒト化抗RSV抗体;ザミル(Smart M195、Protein Design Lab/Kanebo)、ヒト化抗CD33 IgG抗体;ヒト化抗HLA抗体であるレミトーゲン(Smart 1D10、Protein Design Lab/Kanebo);放射標識したマウス抗HLA DR抗体であるONCOLYM(商標)(Lym-1, Techniclone);エファリズマブ(Genetech/Xoma)、ヒト化モノクローナル抗CD11a抗体;ICM3(ICOS Pharm)、ヒト化抗ICAM3抗体;IDEC-114(IDEC Pharm/Mitsubishi)、霊長類化抗CD80抗体;エクリズマブ(5G1.1、Alexion Pharm)、ヒト化抗補因子5(C5)抗体;ペキセリズマブ(5G1.1-SC, Alexion Pharm)、完全ヒト化一本鎖モノクローナル抗体;LDP-01(Millennium/Xoma)、ヒト化抗β2-インテグリンIgG抗体。具体的実施形態では、本発明のマルチドメインタンパク質はNumax(登録商標)またはその抗原結合フラグメント(例えば、Numax(登録商標)のFabフラグメント)ではない。
5.4.抗体の作製
一実施形態では、本発明のマルチドメインタンパク質は、標的分子に特異的に結合する抗体である。標的分子の非制限的例は前文に記載している(第5.3節参照)。任意の標的に特異的に結合する抗体(本明細書では「抗原」とも呼ぶ)は、当分野で周知のいずれかの抗体合成方法により、特に、化学的合成、または好ましくは組換え発現技術により生産することができる。
抗原に特異的なポリクローナル抗体は、当分野で周知の多様な方法により生産することができる。例えば、ヒト抗原を様々な宿主動物(限定するものではないが、ウサギ、マウス、ラットなど)に投与することにより、ヒト抗原に特異的なポリクローナル抗体を含む血清の産生を誘発することができる。宿主の種に応じて、各種アジュバントを用いて免疫応答を増大することもでき、このようなアジュバントとして、限定するものではないが、フロイント(完全および不完全)アジュバント、無機ゲル(例えば、水酸化アルミニウム)、界面活性物質(例えば、リゾレシチン)、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油性エマルション、スカシガイヘモシアニン、ジニトロフェノール、ならびに、BCG(カルメット・ゲラン菌)やコリネバクテリウム・パルバムなど、有用であると見込まれるヒトアジュバントが挙げられる。このようなアジュバントも当分野では周知である。
当分野で周知の多様な方法を用いて、モノクローナル抗体を作製することができ、このようなものとして、ハイブリドーマ、組換え体、およびファージ展示技術、ならびにこれらの組合せを使用するものが挙げられる。例えば、ハイブリドーマ技術を用いて、モノクローナル抗体を生産することができ、このような技術として、当分野で周知のもの、例えば、以下の文献に教示されているものがある:Harlowら、 Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988);Hammerlingら、Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681 (Elsevier, N.Y., 1981)。本明細書で用いる用語「モノクローナル抗体」は、ハイブリドーマ技術により生産される抗体に限定されるわけではない。用語「モノクローナル抗体」とは、単一クローン(真核細胞、原核細胞、またはファージクローンなど)に由来する抗体を意味するのであって、それを生産する方法を指すのではない。
ハイブリドーマ技術を用いて特定の抗体を生産およびスクリーニングする方法は一般的であり、当分野では周知である。手短には、マウスを非マウス抗原で免疫し、免疫応答が検出される、例えば、この抗原に特異的な抗体たマウス血清中で検出されたら、マウス脾臓を採取し、脾細胞を単離する。次に、周知の方法で脾細胞を好適な骨髄腫細胞(例えば、ATCCから入手可能な細胞系SP20)と融合させる。ハイブリドーマを選択し、限定希釈法によりクローン化する。次に、当分野では周知の方法により、抗原に結合することができる抗体を分泌する細胞について、上記ハイブリドーマクローンをアッセイする。陽性ハイブリドーマクローンでマウスを免疫することにより、概して高レベルの抗体を含む腹水を産生させることができる。
モノクローナル抗体は、本発明の抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を培養することを含む方法により生産することができ、その際、好ましくは、非マウス抗原で免疫したマウスから単離した脾細胞を骨髄腫細胞と融合させた後、融合により得られたハイブリドーマを、抗原に結合することができる抗体を分泌するハイブリドーマクローンについてスクリーニングする。
特定のエピトープを認識する抗体フラグメント(本明細書では「抗原結合ドメイン」と称する)は、当業者には周知の技術により生産することができる。例えば、本発明のFabおよびF(ab)’2フラグメントは、パパイン(Fabフラグメントを生産する場合)またはペプシン(F(ab)’2フラグメントを生産する場合)のような酵素を用いた免疫グロブリン分子のタンパク質分解切断により、生産することができる。F(ab)’2フラグメントは、可変領域、軽鎖定常領域および重鎖のCH1ドメインを含む。さらに、当分野で周知の各種ファージ展示方法を用いて、本発明の抗体を生産することもできる。
ファージ展示方法では、機能的抗体ドメインは、それらをコードするポリヌクレオチド配列を担持するファージ粒子の表面に展示される。特に、VHおよびVLドメインをコードするDNA配列を動物cDNAライブラリー(例えば、罹患組織のヒトまたはマウスcDNAライブラリー)から増幅する。VHおよびVLドメインをコードするDNAをPCRによりscFvリンカーと一緒に再結合した後、これをファージミドベクターにクローン化する。ベクターを大腸菌にエレクトロポレーションし、この大腸菌をヘルパーファージに感染させる。これらの方法に用いるファージは典型的に繊維状ファージ(fdおよびM13など)であり、VHおよびVLドメインは、ファージ遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIのいずれかに組換えにより融合させる。例えば、標識抗原、あるいは固体表面もしくはビーズに結合または捕捉された抗原を用いて、特定の抗原に結合する抗原結合ドメインを発現するファージを選択または同定することができる。本発明の抗体を作製するのに用いることができるファージ展示方法の例として、以下の文献に開示されているものが挙げられる:Brinkmanら、1995, J. Immunol. Methods 182:41-50;Amesら、1995, J. Immunol. Methods 184:177-186;Kettleboroughら、1994, Eur. J. Immunol. 24:952-958;Persicら、1997, Gene 187:9-18;Burtonら、1994, Advances in Immunology 57:191-280;国際出願番号PCT/GB91/O1 134;国際公開番号WO 90/02809、WO 91/10737、WO 92/01047、WO 92/18619、WO 93/11236、WO 95/15982、WO 95/20401、およびWO97/13844;ならびに米国特許第5,698,426号、第5,223,409号、第5,403,484号、第5,580,717号、第5,427,908号、第5,750,753号、第5,821,047号、第5,571,698号、第5,427,908号、第5,516,637号、第5,780,225号、第5,658,727号、第5,733,743号および第5,969,108号。
前記参照文献に記載されているように、ファージ選択の後、ファージ由来の領域をコードする抗体を単離し、これを用いて全抗体(ヒト抗体、またはその他いずれかの所望の抗原結合フラグメント)を作製した後、以下に記載するように、いずれか所望の宿主(例えば、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母、および細菌など)に発現させる。組換えによりFab、Fab’およびF(ab’)2フラグメントを生産する技術を使用してもよく、その際、以下の文献に開示されているような当分野で周知の方法を用いる:PCT公開番号WO 92/22324;Mullinaxら、1992, BioTechniques 12(6):864-869;Sawaiら、1995, AJRI 34:26-34;およびBetterら、1988, Science 240:1041-1043。
全抗体を作製するために、VHまたはVLヌクレオチド配列、制限部位、および制限部位を保護するフランキング配列などのPCRプライマーを用いて、scFvクローンにおいてVHまたはVL配列を増幅することができる。当業者には周知のクローン化技術を用いて、PCR増幅VHドメインは、VH定常領域(例えば、ヒトγ4定常領域)を発現するベクターにクローン化し、PCR増幅VLドメインは、VL定常領域(例えば、ヒトκまたはλ定常領域)を発現するベクターにクローン化することができる。好ましくは、VHまたはVLドメインを発現するベクターは、プロモーター、分泌シグナル、可変ドメインのクローン化部位、定常ドメイン、およびネオマイシンのような選択マーカーを含む。また、必要な定常領域を発現する1つのベクターにVHまたはVLドメインをクローン化してもよい。次に、重鎖変換ベクターおよび軽鎖変換ベクターを細胞系に共トランスフェクションすることにより、当業者には周知の方法を用いて、全長抗体(例えば、IgG)を発現する安定または一過性細胞系を作製することができる。
二重特異性抗体を作製する方法は当分野では周知である。全長二重特異性抗体の伝統的生産は、2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の共発現に基づいて実施されるが、その際、上記2本の鎖は異なる特異性を有する(Millsteinら、1983, Nature, 305:537-539)。免疫グロブリン重鎖−軽鎖対のランダムな組合せのために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、異なる抗体分子の候補混合物を生産し、そのうちの1つだけが正しい二重特異性構造を有する。通常アフィニティークロマトグラフィーステップにより実施される正しい分子の精製はかなり煩雑であり、産物の収率は低い。同様の手順が、WO 93/08829、およびTrauneckerら、1991, EMBO J., 10:3655-3659に記載されている。さらに方向性の高い方法は、ジ−ダイアボディ、四価二重特異性抗体の作製である。ジ−ダイアボディの生産方法は当分野では周知である(例えば、Luら、2003, J Immunol Methods 279:219-32;Marvinら、2005, Acta Pharmacolical Sinica 26:649を参照)。
別の方法によれば、所望の結合特異性(抗体−抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインを免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合させる。好ましくは、ヒンジ、CH2およびCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインと、融合を実施する。融合物の少なくとも1つに、軽鎖結合に必要な部位を含む第1重鎖定常領域(CH1)が存在するのが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合物、また、所望であれば免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを個別の発現ベクターに挿入して、好適な宿主生物に共トランスフェクションする。これにより、構築に用いる3つのポリペプチド鎖の等しくない比によって最適収率が達成されるような実施形態において、3つのポリペプチドフラグメントの相対比率を調節する上での融通性が大きくなる。しかし、等しい比の少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現によって高収率が得られるか、またはそのような比が特に重要ではない場合には、2つまたは3つ全部のポリペプチド鎖のコード配列を1つのベクターに挿入することも可能である。
この方法の一実施形態では、二重特異性抗体は、一方のアームに第1の結合特異性を有し、他方のアームにハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第2の結合特異性をもたらす)を有するハイブリッドから構成される。免疫グロブリン軽鎖が二重特異性分子の一方の半分だけに存在すれば、分離が容易になることから、この非対称構造により、不要な免疫グロブリン鎖の組合せから所望の二重特異性化合物の分離が促進されることがわかっている。この方法はWO94/04690に開示されている。二重特異性抗体の作製についてさらに詳細には、例えば、Sureshら、1986, Methods in Enzymology, 121:210を参照されたい。WO96/27011に記載される別の方法によれば、一対の抗体分子を操作して、組換え細胞培養物から回収したヘテロ二量体のパーセンテージを最大限にすることができる。好ましい界面は、抗体定常ドメインのCH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1抗体分子の界面からの1以上の小アミノ酸側鎖をこれより大きい側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置換する。大きなアミノ酸側鎖をこれより小さいもの(例えば、アラニンまたはトレオニン)で置換することにより、大きな側鎖と同じか同等サイズの補償「キャビティ」を作成する。これによって、ホモ二量体のような他の不要な最終産物に対して、ヘテロ二量体の収率を高める機構が提供される。
二重特異性抗体としては、架橋または「ヘテロコンジュゲート」抗体が挙げられる。例えば、へテロコンジュゲートの一方の抗体をアビジンに、他方をビオチンに結合させてもよい。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞にターゲッティングさせるため(米国特許第4,676,980号)、およびHIV感染の治療のため(WO 91/00360、WO 92/200373、およびEP 03089)に提案されている。へテロコンジュゲートは、通常の架橋方法のいずれを用いて作製してもよい。好適な架橋剤は当分野で周知であり、米国特許第4,676,980号に多数の架橋方法とともに開示されている。
ヒトにおける抗体のin vivoでの使用、およびin vitroでの検出アッセイのような用途の場合、ヒト化抗体またはキメラ抗タンパク質抗体を用いるのが好ましい。ヒト被検者の治療のためには、完全ヒト抗体およびヒト化抗体が特に望ましい。ヒト抗体は、当分野で周知の様々な方法で作製することができ、そのような方法として、ヒト免疫グロブリン配列由来の抗体ライブラリーを用いた前記ファージ展示方法が挙げられる。また、米国特許第4,444,887号および第4,716,111号;ならびに国際公開番号WO 98/46645、WO 98/50433、WO 98/24893、WO98/16654、WO 96/34096、WO 96/33735、およびWO 91/10741が挙げられる。
ヒト抗体はまた、機能的内在性免疫グロブリンを発現することはできないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現することができるトランスジェニックマウスを用いて生産することもできる。例えば、ヒト重および軽鎖免疫グロブリン複合体をランダムに、または相同組換えにより、マウス胚幹細胞に導入することができる。あるいは、ヒト重および軽鎖遺伝子に加えて、ヒト可変領域、定常領域、および多様性領域をマウス胚幹細胞に導入してもよい。相同組換えによるヒト免疫グロブリン遺伝子座の導入とは別に、またはこれと同時に、マウス重および軽鎖免疫グロブリン遺伝子を非機能的にすることもできる。特に、JH領域の同型接合の欠失によって内性抗体産生が阻止される。改変した胚幹細胞を増殖してから、これらを胚盤胞にマイクロインジェクションすることにより、キメラマウスを作製する。次に、キメラマウスを繁殖させて、ヒト抗体を発現する同型接合子孫を生産する。選択した抗原、例えば、ポリペプチドの全部または一部で、通常の方法によりトランスジェニックマウスを免疫する。通常のハイブリドーマ技術を用いて、上記免疫トランスジェニックマウスから、上記抗原に対して指定されたモノクローナル抗体を取得することができる。トランスジェニックマウスが保有するヒト免疫グロブリントランスジーンは、B細胞分化中に再編成し、その後、クラススイッチおよび体細胞突然変異を被る。従って、このような技術を用いて、治療に有用なIgG、IgA、IgMおよびIgE抗体を生産することができる。ヒト抗体を生産するこの技術の概要については、LongergおよびHuszar(1995, Int. Rev. Immunol. 13:65-93)を参照されたい。ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を生産するこの技術、およびこのような抗体を生産するプロトコルについては、例えば、国際公開番号WO 98/24893、WO 96/34096、およびWO 96/33735;ならびに米国特許第5,413,923号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,569,825号、第5,661,016号、第5,545,806号、第5,814,318号および第5,939,598号を参照されたい。加えて、Abgenix, Inc.(カリフォルニア州フリーモント)およびGenpharm(カリフォルニア州サンホセ)のような会社と契約して、前述したものと同様の技術を用いて、選択抗原に対して指定されたヒト抗体を提供させることも可能である。
キメラ抗体は、抗体の各部分がそれぞれ異なる免疫グロブリン分子に由来する分子である。キメラ抗体を生産する方法は当分野では周知である。例えば、Morrison, 1985, Science 229:1202;Oiら、1986, BioTechniques 4:214;Gilliesら、1989, J. Immunol. Methods 125:191-202;ならびに米国特許第5,807,715号、第4,816,567号、第4,8 16397号および第6,311,415号を参照されたい。
ヒト化抗体は、予め定めた抗原に結合することができ、かつ、実質的にヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有するフレームワーク領域と、実質的に非ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有するCDRとを含んでなる、抗体またはその変異体もしくはそのフラグメントである。ヒト化抗体は、CDR領域の全部またはほぼ全部が、非ヒト免疫グロブリン(すなわち、ドナー抗体)のそれに対応し、しかもフレームワーク領域の全部またはほぼ全部が、ヒト免疫グロブリン共通配列のそれである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメイン(Fab、Fab’、F(ab’).sub2、Fabc、Fv)のほぼ全部を含む。好ましくは、ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的には、ヒト免疫グロブリンのそれも含む。通常、抗体は、軽鎖と、重鎖の少なくとも可変ドメインの両方を含むことになる。抗体はまた、重鎖のCH1、ヒンジ、CH2、CH3、およびCH4領域を含んでもよい。IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEなどのあらゆるクラス、ならびに、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4などのあらゆるアイソタイプの免疫グロブリンからヒト化抗体を選択することができる。通常、ヒト化抗体が細胞傷害活性を呈示するのが望ましい場合、定常ドメインは、補体固定定常ドメインであり、クラスは典型的にIgG1である。このような細胞傷害活性が望ましくない場合には、定常ドメインはIgG2クラスでよい。ヒト化抗体は、1以上のクラスまたはアミノイソタイプ由来の配列を含んでもよく、特定の定常ドメインを選択して、所望のエフェクター機能を最適化することは、当業者の技術の範囲内である。ヒト化抗体のフレームワークおよびCDRが、親配列と厳密に一致する必要はなく、例えば、ドナーCDRまたは共通フレームワークに少なくとも1つの残基の置換、挿入または欠失により突然変異誘発を起こし、その部位のCDRまたはフレームワーク残基が共通または移入抗体と一致しないようにしてもよい。しかし、このような突然変異は広範囲ではない。通常、少なくとも75%のヒト化抗体残基が、親フレームワークおよびCDR配列のそれと一致し、さらに多くの場合90%以上、最も好ましくは95%以上が一致する。ヒト化抗体は、当分野では周知の様々な技術を用いて生産することができ、このような技術として、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:CDR移植(例えば、欧州特許番号EP 239,400;国際公開番号WO 91/09967;および米国特許第5,225,539号、第5,530,101号および第5,585,089号を参照)、ベニアリングまたはリサーフェーシング(例えば、欧州特許番号EP 592,106およびEP 519,596;Padlan, 1991, Molecular Immunology 28(4/5):489-498;Studnickaら、1994, Protein Engineering 7(6):805-814;ならびにRoguska etら、1994, PNAS 91:969-973を参照)、チェーンシャッフリング(例えば、米国特許第5,565,332号を参照)、ならびに、下記文献に開示された技術: 例えば、米国特許第6,407,213号、米国特許第5,766,886号、国際公開番号WO 9317105、Tanら、J. Immunol. 169:1119-25 (2002)、Caldasら、Protein Eng. 13(5):353-60 (2000)、Moreaら、Methods 20(3):267-79 (2000)、Bacaら、J. Biol. Chem. 272(16):10678-84 (1997)、Roguskaら、Protein Eng. 9(10):895-904 (1996)、Coutoら、Cancer Res. 55 (23 Supp):5973s - 5977s (1995)、Coutoら、Cancer Res. 55(8):1717-22 (1995), Sandhu JS, Gene 150(2):409-10 (1994)、およびPedersenら、J. Mol. Biol. 235(3):959-73 (1994)。往々にして、フレームワーク領域内のフレームワーク残基をCDRドナー抗体由来の対応残基で置換することにより、抗原結合を改変、好ましくは改善する。これらのフレームワーク置換は、当分野で周知の方法により同定するが、このような方法として、例えば、CDRとフレームワーク残基の相互作用のモデル化により、抗原結合に重要なフレームワーク残基を同定する、ならびに、配列比較により、特定位置の特異なフレームワーク残基を同定するなどがある(例えば、Queenら、米国特許第5,585,089号;およびRiechmannら、1988, Nature 332:323を参照)。
さらに、本発明の抗体を用いて、当業者には周知の技術により、受容体を「模倣」する抗イディオタイプ抗体を作製することも可能である。(例えば、Greenspan & Bona, 1989, FASEB J. 7(5): 437-444;およびNissinoff, 1991, J. Immunol. 147(8): 2429-2438を参照)。例えば、受容体に結合する、および受容体とそのリガンドの結合を競合的に阻害する(当分野で周知の、および以下に開示するアッセイにより決定される)本発明の抗体を用いて、リガンドを「模倣」し、その結果、受容体および/またはそのリガンドに結合してこれを中和する抗イディオタイプ抗体を作製することができる。このような中和抗イディオタイプまたはこのような抗イディオタイプのFabフラグメントを治療計画に用いて、リガンドおよび/またはその受容体を中和することができる。本発明は、本発明の抗体またはそのフラグメントをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドの使用を含む方法を提供する。
本発明はまた、特定の抗原に特異的に結合する抗体またはそのフラグメントをコードし、かつ、治療および/または製剤化および/または製造特性を改善するための1以上のアミノ酸置換を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。本発明は、高ストリンジェンシー、中または低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件下で、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドも包含する。
ポリヌクレオチドの取得、およびポリヌクレオチドのヌクレオチド配列の決定は、当分野で周知の方法のいずれにより実施してもよい。所望の抗原に特異的な抗体のヌクレオチド配列は、例えば、GenBankのような文献またはデータベースから取得することができる。特定の抗原に特異的に結合する抗体またはそのフラグメントのアミノ酸配列は知られており、抗体またはそのフラグメント(例えば、CDR)をコードするヌクレオチドは、当分野で周知の方法を用いて決定することができる。すなわち、特定のアミノ酸をコードすることがわかっているヌクレオチドコドンを集合させることにより、抗体をコードする核酸を作製する。抗体をコードするこのようなポリヌクレオチドは、化学的に合成したオリゴヌクレオチドから集合させてもよく(例えば、Kutmeierら、1994, BioTechniques 17:242に記載のように)、これは、手短に言うと、抗体をコードする配列の部分を含むオーバーラッピングオリゴヌクレオチドを合成し、該オリゴヌクレオチドをアニーリングおよび結合した後、結合したオリゴヌクレオチドをPCRにより増幅することを含む。
あるいは、抗体をコードするポリヌクレオチドは、好適な供給源に由来する核酸から作製してもよい。特定の抗体をコードする核酸を含むクローンが入手できないが、該抗体分子の配列がわかっている場合には、免疫グロブリンをコードする核酸を化学的に合成するか、あるいは、好適な供給源(抗体cDNAライブラリー、あるいは、該抗体を発現するいずれかの組織もしくは細胞、例えば、本発明の抗体を発現するように選択したハイブリドーマ細胞から作製した抗体cDNAライブラリー、または上記組織もしくは細胞から単離した核酸、好ましくはポリA+ RNA)から、該配列の3’および5’末端にハイブリダイズ可能な合成プライマーを用いたPCR増幅により、または特定の遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを用いたクローン化により、例えば、上記抗体をコードするcDNAライブラリー由来のcDNAを同定することによって、取得することもできる。その後に、当分野で周知のいずれかの方法を用いて、PCRにより増幅した核酸を、複製可能なクローニングベクターにクローン化してもよい。
抗体のヌクレオチド配列を決定したら、ヌクレオチド配列操作のための当分野では周知の方法を用いて、抗体のヌクレオチド配列を操作することにより、異なるアミノ酸配列を有する抗体を作製する、例えば、アミノ酸置換、欠失、および/または挿入を実施することもでき、このような方法の例として、以下のものが挙げられる:組換えDNA技術、部位指定突然変異誘発、PCRなど(例えば、下記に記載の技術:Current Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubelら編、John Wiley & Sons(英国チチェスター、1998);Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第3版、J. Sambrookら編、Cold Spring Harbor Laboratory Press(Cold Spring Harbor, NY, 2001); Antibodies: A Laboratory Manual, E. HarlowおよびD. Lane編、Cold Spring Harbor Laboratory Press (Cold Spring Harbor, NY, 1988);およびUsing Antibodies: A Laboratory Manual, E. HarlowおよびD. Lane編、Cold Spring Harbor Laboratory (Cold Spring Harbor, NY, 1999))。
具体的実施形態では、通常の組換えDNA技術を用いて、1以上のCDRをフレームワーク領域内に挿入する。フレームワーク領域は、天然に存在するものでも、共通フレームワーク領域でもよく、ヒトフレームワーク領域が好ましい(ヒトフレームワーク領域の一覧については、例えば、Chotiaら、1998, J. Mol. Biol. 278: 457-479を参照)。好ましくは、フレームワーク領域とCDRの結合により作製したポリヌクレオチドは、特定の抗原に特異的に結合する抗体をコードする。好ましくは、前述したように、1以上のアミノ酸置換をフレームワーク領域内に実施してもよく、アミノ酸置換により、抗体の抗原に対する結合を改善するのが好ましい。さらには、このような方法を用いて、鎖内ジスフィルド結合に参加する1以上の可変領域システイン残基のアミノ酸置換または欠失を実施することにより、1以上の鎖内ジスフィルド結合を欠失した抗体分子を作製することもできる。ポリヌクレオチドに対するその他の改変も本発明に含まれ、当業者であれば容易に実施が可能である。
5.5.抗体ドメイン融合タンパク質コンジュゲートおよび誘導体の作製
既述したように、マルチドメインタンパク質には、限定するものではないが、抗体様および抗体−ドメイン融合タンパク質も包含する抗体が含まれる。抗体様分子は、所望の結合特性を備えるよう作製されたあらゆる分子であり、例えば、PCT公開番号WO 04/044011; WO 04/058821;WO 04/003019およびWO 03/002609を参照されたい。抗体−ドメイン融合タンパク質は、一般にタンパク質(限定するものではないが、リガンド、酵素、受容体のリガンド部分、接着タンパク質、またはその他のタンパク質もしくはドメイン)である融合パートナーと一緒に、1以上の抗体ドメインまたはそのフラグメント(例えば、Fcドメイン)または可変ドメインを組み込んだものでよい。例えば、異種ポリペプチドをFabフラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメント、F(ab)2フラグメント、VHドメイン、VLドメイン、VH CDR、VL CDR、もしくはそのフラグメントと融合または結合させることができる。多数の抗体−ドメイン分子が当分野において周知であり、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:ダイアボディ(dsFv)2(Beraら、1998, J. Mol. Biol. 281:475-83);ミニボディ(scFv-CH3融合タンパク質のホモ二量体)(Pessiら、1993, Nature 362:367-9)、三価ジダイアボディ(Luら、2003 J. Immunol. Methods 279:219-32)、Bs(scFv)4-IgG と呼ばれる四価二重特異性抗体(Zuoら、2000, Protein Eng. 13:361-367)およびFcドメイン融合物(例えば、Chamow ら、1996, Trends Biotechnol 14:52-60;Ashkenaziら、1997, Curr Opin Immunol 9:195-200;Heidaranら、1995, FASEB J. 9:140-5.)。
一実施形態では、マルチドメインは、特定の分子(例えば、標的抗原)に結合する抗体ドメインを含み、このような分子として、限定するものではないが、本明細書に開示するように融合パートナーに融合したもの(第5.3節を参照)などがある。融合パートナーとして、限定するものではないが、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、小分子、模擬物質、合成薬物、無機分子、および有機分子などが挙げられる。一実施形態では、融合パートナーは、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個もしくは少なくとも100個の連続したアミノ酸残基を含むポリペプチドであり、抗体ドメインのアミノ酸配列とは異種である。特定の実施形態では、融合パートナーは生物活性分子である。生物活性分子をコードするヌクレオチド配列は、当業者が入手可能なあらゆる情報(すなわち、GenBank、文献、または通常のクローニング)から取得することができる。
融合は必ずしも直接でなくてもよく、リンカー配列を介して実施してもよい。このようなリンカー分子は、当分野において周知であり、下記文献に記載されている:Denardoら、1998, Clin Cancer Res 4:2483;Petersonら、1999, Bioconjug Chem 10:553;Zimmermanら、1999, Nucl Med Biol 26:943;Garnett, 2002, Adv Drug Deliv Rev 53:171。例えば、抗体ドメインを用いて、特定の細胞表面受容体に特異的な抗体ドメインに異種タンパク質を融合または結合することにより、in vitroまたはin vivoのいずれでも、異種ポリペプチドを特定の細胞型にターゲッティングすることができる。また、異種ポリペプチドと融合または結合した抗体ドメインは、当分野で周知の方法を用いて、in vitroイムノアッセイおよび精製方法に用いることもできる。例えば、国際公開番号WO 93/21232;欧州特許番号439,095;Naramuraら、1994, Immunol. Lett. 39:91-99;米国特許第5,474,981号;Gilliesら、1992, PNAS 89:1428-1432;およびFellら、1991, J. Immunol. 146:2446-2452を参照されたい。
ポリペプチドを抗体部分に融合または結合する方法は当分野において周知である。例えば、米国特許第5,336,603号、第5,783,181号、第5,622,929号、第5,359,046号、第5,349,053号、第5,447,851号、第5,723,125号、第5,908,626号、第5,844,095号および第5,112,946;欧州特許番号EP307,434およびEP 367,166およびEP 394,827;PCT公開番号WO 96/04388、WO 91/06570、WO 96/22024、WO 97/34631、およびWO 99/04813;Ashkenaziら、1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 10535-10539;Trauneckerら、1988, Nature, 331:84-86;Zhengら、1995, J. Immunol. 154:5590-5600;およびVilら、1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:11337- 11341を参照されたい。
マルチドメインタンパク質(例えば、抗体ドメイン融合タンパク質)は、標準的組換えDNA技術、またはタンパク質合成技術、例えば、ペプチド合成装置の使用により生産することができる。例えば、自動化DNA合成装置など、通常の技術により、マルチドメインタンパク質(例えば、抗体ドメイン融合タンパク質)を合成することができる。あるいは、2つの連続した遺伝子断片の間に相補的突出部を形成させるアンカープライマーを用いて、遺伝子断片のPCR増幅を実施した後、これをアニーリングおよび再増幅することにより、キメラ遺伝子配列を作製することも可能である(例えば、Current Protocols in Molecular Biology, Ausubelら、編、John Wiley & Sons, 1992を参照)。マルチドメインタンパク質をコードするヌクレオチド配列(例えば、抗体ドメイン融合タンパク質)を適切な発現ベクター、すなわち、挿入されたタンパク質コード配列の転写および翻訳に必要なエレメントを含むベクターに挿入することができる。本発明に様々な宿主ベクター系を用いて、タンパク質コード配列を発現させてもよい。このような系として、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:ウイルス(例えば、ワクシニア、アデノウイルスなど)に感染した哺乳動物細胞系;ウイルス(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;酵母ベクターを含む酵母などの微生物;またはバクテリオファージ、DNA、プラスミドDNA、もしくはコスミドDNAで形質転換した細菌。ベクターの発現エレメントは、その強度および特異性がまちまちである。用いる宿主ベクター系に応じて、多数の好適な転写および翻訳エレメントのいずれか1つを用いることができる。
例えば、特定の抗原(例えば、前記のもの)に特異的に結合する抗体の、さらに別の融合タンパク質を遺伝子シャッフリング、モチーフシャッフリング、エクソン−シャッフリング、および/またはコドン−シャッフリング(集合的に、「DNAシャッフリング」と呼ぶ)の技術により作製してもよい。DNAシャッフリングを用いて、本発明の抗体またはそのフラグメントの活性を改変してもよい(例えば、アフィニティーが増大し、解離速度が低下した抗体またはそのフラグメント)。概要については、米国特許第5,605,793号;第5,811,238号;第5,830,721号;第5,834,252号および第5,837,458号、ならびに、Pattenら、1997, Curr. Opinion Biotechnol. 8:724-33;Harayama, 1998, Trends Biotechnol. 16(2): 76-82;Hanssonら、1999, J. Mol. Biol. 287:265-76;LorenzoおよびBlasco, 1998, Biotechniques 24(2): 308- 313を参照されたい。抗体もしくはそのフラグメント、またはコードされた抗体もしくはそのフラグメントは、組換えの前に、誤りがちのPCR、ランダムヌクレオチド挿入またはその他の方法によるランダム突然変異誘発にこれらを付すことにより、改変することもできる。抗体またはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチドの1以上の部分(該部分が、特定の抗原に特異的に結合する)を1以上の異種分子の1以上の成分、モチーフ、セクション、部分、ドメイン、断片などで組換えてもよい。
さらには、抗体またはそのフラグメントをマーカー配列、例えば、ペプチドと融合させて、精製を容易にすることもできる。特定の実施形態では、マーカーアミノ酸配列はヘキサ−ヒスチジンペプチドであり、中でも、例えば、pQEベクター(QIAGEN, Inc., 9259 Eton Avenue, Chatsworth, CA 91311)に賦与されるタグが挙げられ、その多くは市販されている。例えば、Gentzら、1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:821-824に記載されているように、ヘキサ−ヒスチジンは、融合タンパク質の好都合な精製を可能にする。精製に有用なその他のペプチドタグとして、限定するものではないが、インフルエンザタンパク質由来のエピトープに対応する血球凝集素「HA」タグ(Wilsonら、1984, Cell 37:767)および「フラッグ」タグが挙げられる。
抗体および抗体ドメイン融合タンパク質には、改変された(すなわち、抗体または抗体ドメイン融合タンパク質と任意タイプの分子の共有結合により)誘導体も含まれ、このような誘導体を本明細書では集合的に「抗体誘導体」と呼ぶ。例えば、限定するものではないが、抗体誘導体は、グリコシル化、アセチル化、ペギル化、リン酸化、アミド化、周知の保護/遮断基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質との結合などにより、改変されている抗体および抗体ドメイン融合タンパク質を含む。多数の化学改変のいずれかを周知の技術、限定するものではないが、特異的化学切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などにより実施することができる。加えて、誘導体は、1以上の非古典的アミノ酸を含んでもよい。
in vivo半減期が増加した抗体または抗体ドメイン融合タンパク質は、該抗体および抗体ドメイン融合タンパク質に高分子量ポリエチレングリコール(PEG)のようなポリマー分子を結合させることにより作製することができる。上記抗体または抗体ドメイン融合タンパク質のN-またはC-末端に対するPEGの部位特異的結合により、あるいは、リシン残基に存在するエプシロン−アミノ基を介して、多機能リンカーを用いて、または用いずにPEGを上記抗体または抗体ドメイン融合タンパク質に結合させることができる。生物活性の喪失を最小限に抑える線状または枝分れポリマー誘導体化を用いる。PEG分子と抗体の適正な結合を確実にするため、結合度をSDS-PAGEおよび質量分析により厳密にモニタリングする。例えば、サイズ排除またはイオン交換クロマトグラフィーにより、未反応PEGを抗体−PEGコンジュゲートから分離することができる。
さらに、抗体または抗体ドメイン融合タンパク質をアルブミンと結合させることにより、これらをin vivoでさらに安定にする、またはin vivoでの半減期を延長することができる。このような技術は当分野では周知であり、例えば、. 国際公開番号WO 93/15199、WO 93/15200、およびWO 01/77137;ならびに欧州特許番号EP 413, 622を参照されたい。本発明は、1以上の部分、例えば、限定するものではないが、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、融合タンパク質、核酸分子、小分子、模擬物質、合成薬物、無機分子、ならびに有機分子に結合または融合した抗体または抗体ドメイン融合タンパク質の使用を包含する。
特定の実施形態では、抗体ドメインを診断または検出可能な薬剤に結合させる。このようなマルチドメインタンパク質は、特定の治療薬の効力を決定するなどの臨床試験手順の一環として、癌の発生または進行をモニタリングまたは予知する上で有用となりうる。このような診断および検出は、検出可能な物質に上記抗体を結合させることにより達成することができ、このような物質を以下に挙げるが、これらに限定されるわけではない:各種酵素、例えば、限定するものではないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、βグラクトシダーゼ、もしくはアセチルコリンエステラーゼ;補欠分子族、例えば、限定するものではないが、ストレプタビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチン;蛍光材料、例えば、限定するものではないが、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルもしくはフィコエリトリン;発光材料、例えば、限定するものではないが、ルミノール;生物発光材料、例えば、限定するものではないが、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリン;放射性材料、例えば、限定するものではないが、ヨウ素(131I、125I、123I、121I)、炭素(14C)、イオウ(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(115In、113In、112In、111In)、ならびにテクネチウム(99Tc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re、142 Pr、105Rh、97Ru、68Ge、57Co、65Zn、85Sr、32P、153Gd、169Yb、51Cr、54Mn、75Se、113Sn、および117Tin;各種陽電子放射断層撮影法を用いた陽電子放射金属、非放射性常磁性金属イオン、および放射標識された、または特定の放射性同位体に結合した分子。
抗体または抗体ドメインは、細胞毒(例えば、静細胞もしくは細胞致死性物質、治療薬または放射性金属イオン、例えば、α線放射物質)のような治療成分と結合させてもよい。細胞毒または細胞傷害性物質は、細胞に有害なあらゆる物質を包含する。その例として以下のものが挙げられる:リボヌクレアーゼ、モノメチラウリスタチンEおよびF、パクリタキセル、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、ミトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルチシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロパノロール、プロマイシン、エピルビシン、およびシクロホスファミド、ならびにこれらの類似体もしくは相同体。治療薬としては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:抗代謝物(例えば、メトトレキセート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BCNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ミトマイシンC、およびシスジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラシクリン(例えば、ダウノルビシン(以前のダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前のアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、ならびに有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)。治療成分のさらに詳細なリストは、PCT公開WO 03/075957にみいだすことができる。
さらに、抗体または抗体ドメインは、所与の生物学的応答を改変する治療薬または薬物成分と結合させてもよい。治療薬または薬物成分が、従来の化学治療薬に限定されると解釈すべきではない。例えば、薬物成分は、所望の生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドでもよい。このようなタンパク質の例として、以下のものが挙げられる:毒素、例えば、アブリン、リシンA、オンコナーゼ(または別の細胞傷害性RNase)、シュードモナス外毒素、コレラ毒素、もしくはジフテリア毒素;タンパク質、例えば、腫瘍壊死因子、αインターフェロン、βインターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノーゲン活性化因子;アポトーシス因子、例えば、TNF-α、TNF-β、AMI I(国際公開番号WO 97/33899を参照)、AIM II(国際公開番号WO 97/34911を参照)、Fasリガンド(Takahashiら、1994, J. Immunol., 6:1567)およびVEGI(国際公開番号No. WO 99/23105を参照)、血栓症薬または抗血管新生薬、例えば、アンギオスタチンまたはエンドスタチン;あるいは、免疫調節剤、例えば、リンホカイン(例:インターロイキン-1(“IL-1”)、インターロイキン-2(“IL-2”)、インターロイキン-6(“IL-6”)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(“GM-CSF”)、および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(“G-CSF”))、または成長因子(例:成長ホルモン(“GH”))。
さらには、放射性金属イオンを結合する上で有用な放射性材料または大環状キレート剤のような治療成分に抗体を結合させてもよい(放射性材料の例については前記を参照)。特定の実施形態では、大環状キレート剤は、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N’’,N’’-四酢酸(DOTA)であり、これはリンカー分子を介して抗体に結合させることができる。このようなリンカー分子は当分野において周知であり、下記文献に記載されている:Denardoら、1998, Clin Cancer Res. 4:2483;Petersonら、1999, Bioconjug. Chem. 10:553;およびZimmら、1999, Nucl. Med. Biol. 26:943。
治療成分を抗体に結合する技術はよく知られている。当分野で周知の任意の方法を用いて、上記成分を抗体に結合することができ、このような方法として、限定するものではないが、アルデヒド/シッフ結合、スルフィドリル結合、酸不安定結合、シス−アコニチル結合、ヒドラゾン結合、酵素により分解可能な結合などが挙げられる(概要については、Garnett, 2002, Adv Drug Deliv Rev 53:171を参照)。治療成分を抗体に結合する技術は当分野で周知であり、例えば、下記文献を参照されたい:Arnonら、“Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy、Reisfeldら、(編)、pp. 243-56(Alan R. Liss, Inc. 1985);Hellstromら、“Antibodies For Drug Delivery”, in Controlled Drug Delivery (2nd Ed.), Robinson、(編)、pp. 623-53(Marcel Dekker, Inc. 1987);Thorpe, “Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review”, in Monoclonal Antibodies ‘84: Biological And Clinical Applications、(編)、pp. 475-506 (1985);“Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwin、(編)、pp. 303-16 (Academic Press 1985)、およびThorpeら、 1982, Immunol. Rev. 62:119。
前記以外にも、Segalにより米国特許第4,676,980号に記載されているように、抗体または抗体ドメインを第2の抗体に結合することにより、抗体ヘテロコンジュゲートを形成することもできる。
5.6.マルチドメインタンパク質の生産
マルチドメインタンパク質、誘導体、類似体もしくはそのフラグメント(例えば、抗体または融合タンパク質)の組換え発現には、マルチドメインタンパク質(例えば、抗体、または融合タンパク質)をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターの構築が必要である。マルチドメインタンパク質(例えば、抗体、または融合タンパク質)をコードするポリヌクレオチドを取得したら、マルチドメインタンパク質(例えば、抗体、または融合タンパク質)生産のためのベクターを、当分野で周知の方法を用いて組換えDNA技術により生産することができる。従って、マルチドメインタンパク質(例えば、抗体、または融合タンパク質)コードヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを発現することにより、タンパク質を作製する方法を本明細書に記載する。当業者には周知の方法を用いて、マルチドメインタンパク質(例えば、抗体、または融合タンパク質)コード配列と、適切な転写および翻訳制御シグナルとを含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法として、例えば、in vitro組換えDNA技術、合成技術、およびin vivo遺伝子組換えなどが挙げられる。本発明は、従って、プロモーターに機能的に結合した、本発明のマルチドメインタンパク質をコードするヌクレオチドを含む複製可能なベクターを提供する。このようなベクターは、抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列(例えば、国際公開番号WO 86/05807;国際公開番号WO 89/01036;および米国特許第5,122,464号を参照)および抗体の可変領域をコードするヌクレオチド配列を含んでもよいし、あるいは、マルチドメインタンパク質を作製するためのポリペプチドを、全長抗体鎖(例えば、重または軽鎖)の発現、または、非抗体由来のポリペプチドと抗体ドメインの融合物を含む完全マルチドメインタンパク質の発現用ベクターにクローン化してもよい。
通常の方法により発現ベクターを宿主細胞に転移した後、このトランスフェクションした細胞を通常の方法で培養することにより、マルチドメインを作製する。従って、本発明は、異種プロモーターに機能的に結合した、本発明のマルチドメインタンパク質をコードするヌクレオチドを含む宿主細胞を包含する。二本鎖抗体を含むマルチドメインタンパク質発現のための具体的実施形態では、以下に詳述するように、全免疫グロブリン分子の発現のための宿主細胞に、重および軽鎖の両方をコードするベクターを共発現させる。
様々な宿主発現ベクター系を用いて、本発明のマルチドメインタンパク質(例えば、抗体または融合タンパク質)を発現させることができる(例えば、米国特許第5,807,715号を参照)。このような宿主発現系とは、目的とするコード配列を生産した後、精製することができるビヒクルを指すが、好適なヌクレオチドをコードする配列で形質転換またはトランスフェクションすると、本発明のマルチドメインタンパク質をin situで発現することができる細胞も含まれる。このような系を以下に挙げるが、これらに限定するわけではない:マルチドメインタンパク質コード配列を含む組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAもしくはコスミドDNA発現ベクターで形質転換した細菌(例:大腸菌および枯草菌);マルチドメインタンパク質コード配列を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換した酵母(例:サッカロミセス・ピキア);マルチドメインタンパク質コード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例:バキュロウイルス)に感染させた昆虫細胞系;マルチドメインタンパク質コード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例:カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)に感染させた、またはマルチドメインタンパク質コード配列を含む組換えプラスミド発現ベクター(例:Tiプラスミド)で形質転換した植物細胞系;あるいは、哺乳動物細胞のゲノム由来のプロモーター(例:メテロチオネインプロモーター)または哺乳動物ウイルス由来のプロモーター(例:アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含む組換え発現構築物を保有する哺乳動物細胞系(例:COS、CHO、BHK、293、NSO、および3T3細胞)。特定の実施形態では、組換え抗体または融合タンパク質分子であるマルチドメインタンパク質の発現のために、大腸菌のような細菌細胞、または真核生物細胞を用いる。例えば、ヒトサイトメガロウイルス由来の主要中間初期遺伝子プロモーターエレメントのようなベクターと一緒に用いるチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)のような哺乳動物細胞は、抗体の有効な発現系である(Foeckingら、1986, Gene 45:101; and Cockettら、1990, Bio/Technology 8:2)。具体的実施形態では、本発明のマルチドメインタンパク質(例えば、抗体または融合タンパク質)をコードするヌクレオチド配列の発現は、構成プロモーター、誘導プロモーターまたは組織特異的プロモーターにより調節する。
細菌系では、発現しようとするマルチドメインタンパク質(例えば、抗体または融合タンパク質)について意図する用途に応じて、多数の発現ベクターを有利に選択することができる。例えば、このようなタンパク質を大量に生産しようとする場合には、容易に精製される高レベル融合タンパク質産物の発現を指令するベクターが望ましい。このようなベクターとして、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:大腸菌発現ベクターpUR278(Rutherら、1983, EMBO 12:1791)、その際、lac Z融合タンパク質を生産するように、lac Zコード領域を有するフレーム内のベクターに、マルチドメインタンパク質コード配列を個別に結合させることができる;pINベクター(Inouye & Inouye, 1985, Nucleic Acids Res. 13:3101-3109;Van Heeke & Schuster, 1989, J. Biol. Chem. 24:5503-5509)など。また、pGEXベクターを用いて、グルタチオン5-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として、外来ポリペプチドを発現させてもよい。一般に、このような融合タンパク質は可溶性であり、マトリックスグルタチオンアガロースビーズへの吸着および結合後、遊離グルタチオンの存在下での溶離により得られた溶解細胞から、容易に精製することができる。トロンビンまたは因子Xaプロテアーゼ切断部位を含有するようにpGEXベクターを設計して、クローン化標的遺伝子産物をGST成分から放出させることもできる。
昆虫系では、異種遺伝子を発現するためのベクターとして、オートグラファ・カリフォルニアNPV(AcNPV)を用いる。このウイルスをヨトウガ細胞において増殖させる。上記ウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)に、マルチドメインタンパク質(例えば、抗体または融合タンパク質)コード配列を個別にクローン化した後、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御下に置くことができる。
哺乳動物宿主細胞の場合、多数のウイルス発現系を用いることができる。アデノウイルスを発現ベクターとして用いる場合には、目的とするマルチドメインタンパク質(例えば、抗体または融合タンパク質)コード配列をアデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば、後期プロモーターおよび三部分リーダー配列と結合することができる。次に、このキメラ遺伝子をin vitroまたはin vivo組換えによりアデノウイルスゲノムに挿入する。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば、E1またはE3)への挿入により、生存能があり、しかも、感染宿主(例えば、Logan & Shenk, 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 8 1:355-359を参照)においてマルチドメインタンパク質(例えば、抗体または融合タンパク質)を発現することができる組換えウイルスが得られる。挿入したマルチドメインタンパク質コード配列の効率的翻訳のためには、特定の開始シグナルが必要となることもある。これらのシグナルは、ATG開始コドンと、隣接の配列とを含む。さらに、全挿入片の翻訳を確実にするために、開始コドンは、所望のコード配列のリーディングフレームと位相が同じでなければならない。これらの外性翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、天然および合成の様々な起原のものでよい。適切な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどの含有により、発現の効率を高めることができる(例えば、Bittner et al., 1987, Methods in Enzymol. 153:516-544を参照)。
マルチドメインタンパク質(例えば、抗体または融合タンパク質)の発現は、当分野で周知の任意のプロモーターまたはエンハンサーにより制御してもよい。マルチドメインタンパク質(例えば、抗体または融合タンパク質)をコードする遺伝子の発現を制御するのに用いることができるプロモーターとして、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:SV40初期プロモーター領域(BernoistおよびChambon, 1981, Nature 290:304-310)、ラウス肉腫ウイルスの3’長末端反復に含まれるプロモーター(Yamamotoら、1980, Cell 22:787-797)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら、1981, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78:1441-1445)、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinster et al., 1982, Nature 296:39-42)、テトラサイトカイン(Tet)プロモーター(Gossenら、1995, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 89:5547-5551);βラクタマーゼのような原核発現ベクター(Villa-Kamaroffら、1978, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 75:3727-3731)、またはtacプロモーター(DeBoerら、1983, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80:21-25;また “Useful proteins from recombinant bacteria” in Scientific American, 1980, 242:74-94も参照);ノパリンシンテターゼプロモーター領域を含む植物発現ベクター(Herrera-Estrellaら、Nature 303:209-213)もしくはカリフラワーモザイクウイルス35S RNAプロモーター(Gardnerら、1981, Nucl. Acids Res. 9:2871)、ならびに光合成酵素リブロースビリン酸カルボキシラーゼのプロモーター(Herrera-Estrellaら、1984, Nature 310:115-120);酵母またはその他の真菌由来のプロモーターエレメント、例えば、Gal 4プロモーター、ADC(アルコールデヒドロゲナーゼ)プロモーター、PGK(ホスホグリセロールキナーゼ)プロモーター、アルカリ性ホスファターゼプロモーター;ならびに、組織特異性を呈示すると共に、トランスジェニック動物に用いられている下記の動物転写制御領域:膵腺房細胞で活性のエラスターゼI遺伝子制御領域(Swiftら、1984, Cell 38:639-646;Ornitzら、1986, Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 50:399-409;MacDonald, 1987, Hepatology 7:425-515);膵ベータ細胞で活性のインスリン遺伝子制御領域(Hanahan, 1985, Nature 315:115-122)、免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedlら、1984, Cell 38:647-658;Adamesら、1985, Nature 318:533-538;Alexanderら、1987, Mol. Cell. Biol. 7:1436-1444)、精巣、乳房、リンパ系およびマスト細胞で活性のマウス乳腺癌ウイルス制御領域(Lederら、1986, Cell 45:485-495)、肝臓で活性のアルブミン遺伝子制御領域(Pinkertら、1987, Genes and Devel. 1:268-276)、肝臓で活性のαフェトプロテイン遺伝子制御領域(Krumlauf ら、1985, Mol. Cell. Biol. 5:1639-1648;Hammerら、1987, Science 235:53-58);肝臓で活性のα1-抗トリプシン遺伝子制御領域(Kelseyら、1987, Genes and Devel. 1:161-171)、骨髄細胞で活性のβグロビン遺伝子制御領域(Mogramら、1985, Nature 315:338-340;Kolliasら、1986, Cell 46:89-94);脳のオリゴデンドロサイト細胞で活性のミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readheadら、1987, Cell 48:703-712);骨格筋で活性のミオシン軽鎖-2遺伝子制御領域(Sani, 1985, Nature 314:283-286);ニューロン細胞で活性のニューロン特異的エノラーゼ(NSE)(Morelliら、1999, Gen. Virol. 80:571-83);ニューロン細胞で活性の脳由来神経栄養因子(BDNF)遺伝子制御領域(Tabuchiら、1998, Biochem. Biophysic. Res. Com. 253:818-823);星状細胞で活性のグリア繊維酸性タンパク質(GFAP)プロモーター(Gomesら、1999, Braz J Med Biol Res 32(5): 619-631;Morelliら、1999, Gen. Virol. 80:571-83)および視床下部で活性の性腺刺激ホルモン放出ホルモン(Masonら、1986, Science 234:1372-1378)。
マルチドメインタンパク質(例えば、抗体または融合タンパク質)をコードする遺伝子の挿入物を含む発現ベクターは、3つの一般的手法:(a)核酸ハイブリダイゼーション、(b)「マーカー」遺伝子機能の存在または非存在、ならびに(c)挿入した配列の発現により同定することができる。第1の手法では、発現ベクターにおけるペプチド、ポリペプチド、タンパク質もしくは融合タンパク質をコードする遺伝子の存在は、該ペプチド、ポリペプチド、タンパク質もしくは融合タンパク質をそれぞれコードする挿入遺伝子に相同的な配列を含むプローブを用いた核酸ハイブリダイゼーションにより検出することができる。第2の手法では、マルチドメインタンパク質(例えば、抗体または融合タンパク質)をコードするヌクレオチド配列をベクターに挿入することによって起こる、特定の「マーカー」遺伝子機能(例えば、チミジン活性、抗体に対する耐性、形質転換表現型、バキュロウイルスにおける包埋体の形成など)の存在または非存在に基づき、組換えベクター/宿主系を同定および選択することができる。例えば、マルチドメインタンパク質(例えば、抗体または融合タンパク質)をコードするヌクレオチド配列を、ベクターのマーカー遺伝子配列内に挿入する場合には、マルチドメインタンパク質(例えば、抗体または融合タンパク質)挿入片コード遺伝子を含む組換え体は、マーカー遺伝子機能の非存在により同定することができる。第3の手法では、組換え体により発現させた遺伝子産物(例えば、抗体または融合タンパク質)をアッセイすることにより、組換え発現ベクターを同定することができる。このようなアッセイは、例えば、in vitroアッセイ系における融合タンパク質の物理的または機能的特性(例えば、抗生物活性分子抗体との結合)に基づいて実施することができる。
加えて、挿入配列の発現をモジュレートする、または所望の具体的様式で遺伝子産物を改変およびプロセシングする宿主細胞系を選択してもよい。特定のプロモーターからの発現は、特定の誘導物質の存在下で増強することができ;従って、遺伝子操作した融合タンパク質の発現を制御することができる。さらに、様々な宿主細胞が、転写ならびに翻訳後プロセシングおよび改変(例えば、タンパク質のグリコシル化、リン酸化)に関する特性および特定の機構を有する。発現した外来タンパク質の所望の改変およびプロセシングを確実にするように、適切な細胞系または宿主系を選択することができる。例えば、細菌系における発現では非グリコシル化産物を生産し、酵母における発現では、非グリコシル化産物を生産する。遺伝子産物の一次転写物の適正なプロセシング(例えば、グリコシル化、リン酸化)のための細胞機構を有する真核宿主細胞を用いてもよい。このような哺乳動物宿主細胞としては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:CHO、VERY、BHK、Hela、COS, MDCK、293、3T3、WI38、NS0、および特に、ニューロン細胞系、例えば、SK-N-AS、SK-N-FI、SK-N-DZヒト神経芽細胞腫(Sugimotoら、1984, J. Natl. Cancer Inst. 73: 51-57)、SK-N-SHヒト神経芽細胞腫(Biochim. Biophys. Acta, 1982, 704: 450-460)、Daoyヒト小脳髄芽腫(Heら、1992, Cancer Res. 52: 1144-1148)、DBTRG-05MGグリア芽腫細胞(Kruseら、1992, In Vitro Cell. Dev. Biol. 28A: 609-614)、IMR-32ヒト神経芽細胞腫(Cancer Res., 1970, 30: 2110-2118)、1321N1ヒト星状細胞腫(Proc. Natl Acad. Sci. USA, 1977, 74: 4816)、MOG-G-CCMヒト星状細胞腫(Br. J. Cancer, 1984, 49: 269)、U87MGヒトグリア芽腫‐星状細胞腫(Acta Pathol. Microbiol. Scand., 1968, 74: 465-486)、A172ヒトグリア芽腫(Olopadeら、1992, Cancer Res. 52: 2523-2529)、C6ラットグリオーマ細胞(Bendaら、1968, Science 161: 370-371)、Neuro-2aマウス神経芽細胞腫(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1970, 65: 129-136)、NB41A3マウス神経芽細胞腫(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1962, 48: 1184-1190)、SCPヒツジ脈絡叢(Bolinら、1994, J. Virol. Methods 48: 211-221)、G355-5, PG-4ネコ正常星状細胞(Haapalaら、1985, J. Virol. 53: 827-833)、Mpfフェレット脳(Trowbridgeら、1982, In Vitro 18: 952-960)、ならびに正常細胞系、例えば、CRL7030およびHs578BstのようなCTX TNA2ラット正常大脳皮質(Radanyら、1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 6467-6471)。さらに、様々な程度のベクター/宿主発現系がプロセシング反応を実施しうる。
組換えタンパク質の長期にわたる高収率生産のためには、多くの場合、安定した発現が好ましい。例えば、本発明のマルチドメインタンパク質(例えば、抗体または融合タンパク質)を安定に発現する細胞系を操作してもよい。ウイルスの複製起点を含む発現ベクターを用いるのではなく、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)および選択マーカーにより、宿主細胞を形質転換することができる。外来DNAの導入後、操作した細胞を濃縮培地において1〜2日増殖させた後、選択性培地に移す。組換えプラスミドにおける選択マーカーは選択に耐性を賦与するため、細胞がその染色体にプラスミドを安定して組み込み、増殖してフォーカスを形成することを可能にし、次にこのフォーカスをクローン化および増殖させることができる。この方法を用いて、特定の抗原に特異的に結合するマルチドメインタンパク質を発現する細胞を操作すれば有利である。このような操作細胞系は、特定の抗原に特異的に結合するマルチドメインタンパク質(例えば、ポリペプチドまたは融合タンパク質)の活性に作用する化合物のスクリーニングおよび評価に特に有用であろう。
多数の選択系を用いることができ、そのような系として、限定するものではないが、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wiglerら、1977, Cell 11:223)、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski, 1962, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48:2026)、およびアデニンンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyら、1980, Cell 22:817)遺伝子が挙げられ、これらの遺伝子をそれぞれ、tk-、hgprt-もしくはaprt-細胞で使用することができる。また、dhfr(メトトレキセートに対する耐性を賦与する(Wiglerら、1980, Natl. Acad. Sci. USA 77:3567;O’Hareら、1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:1527));gpt(ミコフェノール酸に対する耐性を賦与する(Mulligan & Berg, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2072))遺伝子;neo(アミノグリコシドG-418に対する耐性を賦与する(Colberre-Garapinら、1981, J. Mol. Biol. 150:1))遺伝子;およびhygro(ヒグロマイシンに対する耐性を賦与する(Santerreら、1984, Gene 30:147))遺伝子の選択の基準として、抗代謝物質耐性を用いることもできる。
マルチドメインタンパク質(例えば、抗体または融合タンパク質)を組換え発現により生産したら、タンパク質精製のために当分野で周知のいずれかの方法、例えば、クロマトグラフィー(例:イオン交換、アフィニティー、特に、プロテインA後の特定の抗原に対するアフィニティーによるもの、およびサイジングカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、示差溶解度、もしくは上記以外のいずれかのタンパク質精製の標準的方法により精製することができる。
マルチドメインタンパク質(例えば、抗体または融合タンパク質)の発現レベルは、ベクター増幅により高めることができる(例えば、BebbingtonおよびHentschel, The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning, Vol.3. (Academic Press, New York, 1987を参照)。例えば、マルチドメインタンパク質(例えば、抗体または融合タンパク質)を発現するベクター系中のマーカーが増幅可能であるとき、宿主細胞の培養物に存在する阻害物質のレベルが上昇すると、マーカー遺伝子のコピー数が増加する。増幅領域はマルチドメインタンパク質遺伝子を伴うことから、マルチドメインタンパク質の生産も増加する(Crouseら、1983, Mol. Cell. Biol. 3:257)。
宿主細胞を本発明の2つの発現ベクターで共トランスフェクションすることもできる。例えば、重鎖由来のポリペプチドをコードする第1ベクターと軽鎖由来のポリペプチドをコードする第2ベクターが挙げられる。これら2つのベクターは、重および軽鎖ポリペプチドの等しい発現を可能にする、同一の選択マーカーを含んでいてもよい。あるいは、融合タンパク質、または重および軽鎖ポリペプチドの両方をコードし、発現することができる単一のベクターを用いてもよい。融合タンパク質、または重および軽鎖のコード配列は、cDNAまたはゲノムDNAを含んでもよい。
5.7.マルチドメインタンパク質の液体製剤の調製
当分野で周知のいずれかの方法を用いて、マルチドメインタンパク質(例えば、抗体)の液体製剤を調製することができる。一実施形態では、馴化培地(培地の単一ロットまたはプールしたロットのいずれか)からマルチドメインタンパク質を精製し、精製したマルチドメインタンパク質の画分を最終濃度:約15 mg/m、約20 mg/ml、約30 mg/ml、約40 mg/ml、約50 mg/ml、約60 mg/ml、約70 mg/ml、約80 mg/ml、約90 mg/ml、約100 mg/ml、約110 mg/ml、約125 mg/ml、約150 mg/ml、約200 mg/ml、約250 mg/ml、もしくは約300 mg/mlまで濃縮することを含む方法により、液体製剤を作製することができる。
具体的実施形態では、適切な分子量(MW)カットオフ(例えば、全抗体分子およびF(ab’)2フラグメントの場合は30 kDカットオフ;また、Fabフラグメントのような抗体フラグメントの場合には10 kDカットオフ)を備える半透膜を用いて、精製抗体またはフラグメントを含む画分を最終抗体またはフラグメント濃度:約15 mg/ml、約20 mg/ml、約30 mg/ml、約40 mg/ml、約50 mg/ml、約60 mg/ml、約70 mg/ml、約80 mg/ml、約90 mg/ml、約100 mg/ml、約110 mg/ml、約125 mg/ml、約150 mg/ml、約200 mg/ml、約250 mg/ml、もしくは約300 mg/mlまで濃縮した後、同じ膜を用いて、濃縮した抗体画分を製剤用バッファー中に透析ろ過することを含む方法により、液体製剤を調製することができる。標的抗原に特異的に結合する抗体またはフラグメントを含む馴化培地をCUNOろ過に付し、ろ過した抗体をHS50カチオン交換クロマトグラフィーに付す。次に、HS50カチオン交換クロマトグラフィーからの画分をrプロテインAアフィニティークロマトグラフィーに付した後、低pH処理を施す。低pH処理の後、抗体画分をスーパーQ 650アニオン交換クロマトグラフィー、次にナノろ過に付す。ナノろ過で得られた抗体の画分を前記と同じ膜での透析ろ過に付すことにより、抗体画分を製剤用バッファー中に濃縮する。
製剤用バッファーは、約1 mM〜約100 mM、約10 mM〜約50 mM、または約20 mM〜約30 mMの範囲の濃度でヒスチジンを含有してもよい。製剤はさらに、100 mM未満、50 mM未満、3.0 mM未満、2.0 mM未満、もしくは1.8 mM未満の濃度でアミノ酸をを含有してもよい。製剤中のアミノ酸の量は、等電点でのマルチドメインタンパク質の沈降を回避するため、有意な緩衝を引き起こさないような量にすべきである。製剤のpHは、約5.0〜約7.0、または約5.5〜約6.5、または約5.8〜約6.2、もしくは約6.0の範囲でよい。特定のマルチドメインタンパク質に適したpHを得るために、まずヒスチジンを水に溶解させることにより、所望のpHより高いpHのバッファー溶液を取得してから、HClを添加することにより、pHを所望のレベルまで下げることが一般に理解される。このようにして、無機塩の形成(例えば、ヒスチジンとして塩酸ヒスチジンを使用し、NaOHの添加により、pHを所望のレベルまで上げる場合、NaClの形成)を回避することができる。
1回の使用のための1アリコートの液体製剤を含むバイアルを調製することにより、液体製剤を単位用量形態として調製することができる。例えば、1バイアル当たりの単位用量は、約15 mg/ml〜約300 mg/mlの範囲にある様々な濃度のマルチドメインタンパク質を1 ml、2 ml、3 ml、4 ml、5 ml、6 ml、7 ml、8 ml、9 ml、10 ml、15 ml、もしくは20 ml含有しうる。必要であれば、無菌希釈剤を各バイアルに添加することにより、上記製剤を所望の濃度に調節することもできる。具体的実施形態では、上記マルチドメインタンパク質は、標的抗原に結合する抗体である。
様々な滅菌方法、例えば、滅菌ろ過、放射線などにより、本発明の液体製剤を滅菌してもよい。具体的実施形態では、透析ろ過した抗体製剤を前滅菌した0.2または0.22ミクロンフィルターでろ過滅菌する。
5.8.マルチドメインタンパク質の凍結乾燥製剤の調製
凍結乾燥は、医薬品の調製において、その生物活性を保存するためによく用いられるフリーズドライ方法である。液体化合物を調製した後、凍結乾燥することにより、乾燥したケーク状物質を形成する。この方法は一般に、事前に凍結したサンプルを減圧下で乾燥させた後、粉末状またはケーク状物質の形態をした、インタクトな無水成分を得ることを含む。凍結乾燥した物質は、生物活性を失うことなく、長期間、上昇した温度で貯蔵が可能であり、しかも、適切な希釈剤の添加により、容易に無粒子溶液に再形成することができる。適切な希釈剤は、生物学的に許容されるもので、かつ、それに対して凍結粉末が完全に可溶性であれば、どんな液体でもよい。希釈剤としては、マルチドメインタンパク質の安定性に作用しうる塩、もしくはその他の化合物を含まないことから、水、特に無菌で、発熱物質を含まない水が好ましい。凍結乾燥の利点は、長期保存時に製剤の不安定性を招く様々な分子事象を大幅に低減するレベルまで、水分を減少させることである。凍結乾燥製剤はまた、輸送の物理的ストレスに比較的容易に耐えることができる。好ましくは、再形成した製剤は実質的に粒子を含まないため、事前のろ過なしに投与が可能である。
安定した凍結乾燥タンパク質製品を開発するには、以下の基準が重要である。凍結乾燥中のタンパク質アンフォールディングを最小限にしなければならない。様々な分解経路を最小限にしなければならない。残留水分は低くなければならない。強く、良質の(elegant)ケーク構造を取得しなければならない。再形成時間15は短くすべきで、例えば、60分未満、または40分未満、または20分未満、または10分未満、または5分未満、または2分未満、または1分未満にすべきである。
前凍結乾燥製剤中のタンパク質は、少なくとも5mg/ml、または少なくとも10 mg/ml、または少なくとも25 mg/ml、または少なくとも50 mg/ml以上の高濃度を有する。製剤のphは、約5.0〜約7.0、または約5.5〜約6.5、または約5.8〜約6.2、もしくは約6.0の範囲でよい。この範囲内にphを制御するバッファーの例として、スクシン酸塩(例えば、スクシン酸ナトリウム)、グルコン酸塩、ヒスチジン、クエン酸塩、およびその他の有機酸バッファーが挙げられる。ヒスチジンは、皮下、筋内および腹膜注射に好ましいバッファーである。特定のバッファーは約5〜30 mmのヒスチジンを含む。
タンパク質製剤に界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤の例として、ノニオン性界面活性剤、例えば、ポリソルベート(例:tween20、10 tween 80などのポリソルベート20、80)またはポロキサマー(例:ポロキサマー188)が挙げられる。添加する界面活性剤の量は、製剤化タンパク質の凝集を低減する、および/または製剤中の粒子の形成を最小限にする、および/または容器へのタンパク質の吸着を低減するようなものにする。界面活性剤はまた、凍結乾燥製剤の再形成時間も短縮する。例えば、界面活性剤は、約0.001%〜約0.5%、または約0.005%〜約0.1%、または約0.01%〜約0.05%の量で存在する。
凍結乾燥製剤は、随意に下記のもののうち1以上を含んでもよい:賦形剤、例えば、サッカリド、ポリオールおよび糖アルコール、優れた凍結乾燥ケーク特性を賦与する増量剤、例えば、セリン、グリシン、マンニトール、ならびに、塩(NaCl、KCl、MgCl2、CaCl2)のような張性改変剤。
5.9.マルチドメインタンパク質製剤の投与
製剤化されたタンパク質製剤は、被検者の病的状態を治療または予防するのに有効な量を被検者に投与することができる。被検者は好ましくは、哺乳動物、例えば、非霊長類(例:ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)、および霊長類(例:カニクイザルのようなサルおよびヒト)である。具体的実施形態では、被検者はヒトである。
様々な送達系が知られており、これらを用いて、製剤化した薬物を投与することができる。製剤を投与する方法として、限定するものではないが、非経口投与(例えば、皮内、筋内、腹腔内、静脈内および皮下)、硬膜外投与、局所投与、肺投与、ならびに粘膜投与(例えば、鼻内および口内経路)が挙げられる。具体的実施形態では、治療用タンパク質の液体製剤(再形成した凍結乾燥製剤を含む)を筋内、静脈内、皮下、もしくは筋内投与する。製剤は、任意の好都合な経路、例えば、注入またはボーラス注射、上皮または粘膜皮膚内膜(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜など)により投与することができ、他の生物活性物質と一緒に投与してもよい。投与は全身または局所のいずれでもよい。加えて、例えば、吸入器または噴霧器の使用により、肺投与を実施してもよい。
本発明の製剤は、マルチドメインタンパク質の量を示すアンプルまたはサシェットのような密閉容器にパッケージングすることができる。マルチドメインタンパク質の量および濃度を示す密閉容器に本発明の製剤をパッケージングすることが考慮される。特定の実施形態では、約1ml、2ml、3ml、4ml、5ml、6ml、7ml、8ml、9ml、10 ml、15 ml、もしくは20 mlの量の本発明の製剤を少なくとも15 mg/m、約20 mg/ml、約30 mg/ml、約40 mg/ml、約50 mg/ml、約60 mg/ml、約70 mg/ml、約80 mg/ml、約90 mg/ml、約100 mg/ml、約150 mg/ml、約200 mg/ml、約250 mg/ml、もしくは約300 mg/mlの濃度で密閉容器に充填する。
疾患、1以上のその症状、または該疾患に関連する望ましくない状態の治療、予防、マネージメントもしくは改善に有効となる本発明の製剤の量は、標準的臨床技法により決定することができる。例えば、疾患の治療、予防、マネージメントもしくは改善に有効となる本発明の製剤の用量は、動物モデル(例えば、コットンラットまたはサル)に製剤を投与し、活性タンパク質の血清力価、例えば、マルチドメインタンパク質の力価を測定することにより、決定することができる。従って、少なくとも1μg/ml、少なくとも2μg/ml、少なくとも5μg/ml、少なくとも10μg/ml、少なくとも20μg/ml、少なくとも25μg/ml、少なくとも35μg/ml、少なくとも40μg/ml、少なくとも50μg/ml、少なくとも75μg/ml、少なくとも100μg/ml、少なくとも125μg/ml、少なくとも150μg/ml、少なくとも200μg/ml、少なくとも250μg/ml、少なくとも300μg/ml、少なくとも350μg/ml、少なくとも400μg/ml、または少なくとも450μg/mlの血清力価をもたらす製剤の用量を疾患の治療、予防、マネージメントもしくは改善のためにヒトに投与することができる。加えて、最適な用量の範囲を確認するために、in vitroアッセイを随意に実施してもよい。具体的実施形態では、マルチドメインタンパク質は、標的抗原に結合する抗体である。
製剤に用いようとする正確な用量は、投与経路、ならびに疾患の重症度にも左右され、医師の判断および各患者の状況に従って決定しなければならない。In vitroまたは動物モデル(例えば、コットンラットまたはカニクイザル)試験系から得た用量応答曲線から有効な用量を推定することもできる。
抗体、タンパク質、ポリペプチド、ペプチドおよび融合タンパク質の場合、患者に投与する用量は、患者の体重1kg当たり約0.1 mg〜30 mgでよい。例えば、一般に、ヒト抗体は、異種ポリペプチドに対する免疫応答がないために、他の種由来の抗体に比べ、ヒト身体において長い半減期を有する。従って、ヒト抗体の場合、用量を減らし、しかも投与頻度を少なくすることが往々にして可能である。さらに、製剤中の抗体またはそのフラグメントの濃度を高める、抗体またはそのフラグメントのアフィニティーおよび/またはアビディティーを増大する、および/または抗体またはそのフラグメントの半減期を長くすることにより、本発明の液体製剤(再形成された凍結乾燥製剤を含む)の量および投与頻度を減少させることもできる。
小分子の用量例として、被検者またはサンプル重量の1キログラム当たり数ミリグラムまたはミクログラムの量(例えば、1キログラム当たり約1マイクログラム〜約500ミリグラム、1キログラム当たり約100マイクログラム〜約5ミリグラム、もしくは1キログラム当たり約1マイクログラム〜約50マイクログラム)が挙げられる。
6.実施例
以下の実施例を本発明の説明のために記載するが、本発明を何ら制限する意図はない。実施例において、抗体間の構造上の関係を示すために、図23に表示するネーミング方式を用いる。このネーミング方式では、最初の3文字が抗原結合ドメインを表している:頭文字は標的を示し、小文字が標的の具体的エピトープを、また数字が抗体の変異体を示している(単純にするため、数字0は省かれることが多い)。最後の4文字はFcドメインを表す:最初の3文字は、Fcドメインの供給源とサブクラスを表し、最後の小文字はFc変異体を示している。従って、図23に示す例のAa1-hG1aは、標的“A”のエピトープ“a”に結合し、そのFcドメインとしてヒトγ-1(hG1)の変異体“a”を有する抗体の変異体“1”を表している。このようなネーミング方式により、例えば、抗体Aa-hG1およびAa1-hG1は、両者とも、同じ標的の同じエピトープに結合し、同じFcドメインを有する抗体の異なる変異体であること、あるいは、、抗体Aa-hG1およびAb-hG1は、同じ標的の異なるエピトープに結合し、同じFcドメインを有する抗体の異なる変異体であることなどが容易にわかる。
6.1.実施例1:Tm値および安定性に対するFabおよびFcドメインの寄与
抗体成分の特性についてさらに詳しく知るために、Ca-hG1およびBa-hG1のFabおよびFcフラグメントを作製した。インタクトなMabsおよびそのフラグメントの研究における1つの長期目標は、安定性と構造の関係を理解することである。現在、Ca-hG1は、Ba-hG1と比較して、凝集に対し安定していることがわかっている。この安定性は、分析安定性を示す一連のアッセイを用いて、さらに確認する。この安定性の差によって、各抗体の特性を比較し、測定可能な差があるか否かを決定する機会がもたらされ、これらの差は、これらの具体的Mabsの安定性を理解するために利用が可能であり、さらに別の抗体にも広範に適用することができる。
パパインを用いて、FabおよびFcドメインを全Mabs Ca-hG1およびBa-hG1から作製した。Pierce製の市販のキット(Immunopure Fab調製キットPierce製品#44885:Immunopure IgG結合バッファー、Immunopure IgG溶出バッファー、Affinitypak固定化プロテインAカラム、固定化パパイン、一塩酸システイン、リン酸バッファー、および血清分離装置)を用いて、インタクトな抗体を消化した。キットに記載の方法を用いて、Ca-hG1を首尾よく消化した。Ba-hG1は、別のクロマトグラフィーステップを必要とした。Ba-hG1の場合、FabおよびFcの両方がプロテインAカラムに結合した。これら成分の精製には、アニオン交換クロマトグラフィー(Hitrap DEAE FF 5 ml‐Amersham製品#17-5154-01)を必要とした。クロマトグラフィー最適化に加えて、妥当な時間でのMabの最良の切断を達成するために、酵素学を最適化した。
下記のステップを用いて、Ca-hG1からFabおよびFcドメインを作製した:A)パパインに抗体を添加し、1消化につき〜10 mgのIgGを37℃で一晩インキュベートするステップ;B)固定化酵素から粗消化物を分離するステップ;C)消化物をプロテインAカラムに載せるステップ;D)pH8.0で非保留画分におけるFabフラグメントを溶離するステップ;F)フラグメントを必要なバッファーに透析するステップ。
下記の変更を含む前記手順を用いて、Ba-hG1からFabおよびFcドメインを作製した:2倍の酵素対Mab比を用い、攪拌を増強し、インキュベーション時間を24時間に増し、プロテインAカラムを省き、消化溶液をDEAEカラム用の平衡バッファー中で緩衝する(開始バッファー:10 mM NaCl、10 mM Tris pH-7.8、溶出バッファー:100 mM NaCl、10 mM Tris pH-7.8)。抗体のFab部分は、サンプルのローディング中に溶離した非保留画分中に存在した。Fcフラグメントを100 mM NaClバッファーで溶離した。表1に、上記手順により得られたFabおよびFcフラグメントをまとめて示す。
Figure 2009500344
示差走査熱量測定(DSC)を用いて、全長モノクローナル抗体(Mab)Ca-hG1(図1、上)の融解曲線を調べた。全長Mabのサーモグラムのデコンボリューションから、少なくとも3つの個別Tm値(Tm1=69℃、Tm2=83℃、Tm3=87℃)が曲線(図2)を構成することがわかる。FabおよびFcドメインフラグメントをCa-hG1から作製した後、精製したフラグメントをDSCにより個別に分析した(図1、下)。これらの結果から、全抗体における個々のTm値は、Fabドメインが生成した最大ピークを持つ個別のドメインに割り当てられることがわかる(図1下、また図10下も参照)。Fcドメインにより生成されるピークの分析から、CH2領域のTmはFc DSCプロフィールの第1ピークによって示され、CH3領域のTmは第2ピークによって示されることがわかる(図1下、また図10下も参照)。
全長Ca-hG1 Mab(図3および4)、Fabドメイン(図5および6)およびFcドメイン(図7および8)について、2つの異なる温度で融解の可逆性を調べた。その結果から、全抗体の不安定は、Fabドメインの不安定性によるものであることが明らかである。
無関係の全長MabであるBa-hG1のDSCプロフィールも測定し、Ca-hG1と比較した(図9)。どのドメインがTmプロフィールの相違に最も寄与するかを決定するために、Ba-hG1のFabおよびFcのDSCプロフィールを個別に決定した。図10では、上部パネルがインタクトなBa-hG1抗体のDSCプロフィールを示し、下部パネルがFabおよびFcドメインのプロフィールを示す。Ca-hG1に関しては、Fabドメインの融解により最大ピークが生成される。予想したように、Fc領域は、2つの小さいピークを生成したが、これらは、Ca-hG1から単離した同じFcドメインについて観察されるものと一致する(図1と10の下部パネルを比較)。全抗体DSCプロフィールのデコンボリューションから、少なくとも3つの個別Tm値(Tm1=71℃、Tm2=82℃、Tm3=93℃)が全長Ba-hG1の曲線を構成することがわかる(図11)。全長Ba-hG1 Mab(図12および13)、Fabドメイン(図14および15)およびFcドメイン(図16)について、融解の可逆性を調べた。その結果も、全長抗体の不安定が、Fabドメインの不安定性によるものであることを示している。
Ba-hG1とCa-hG1のDSCプロフィールの比較から、Fabドメインが、2つの異なるMab分子に関するプロフィール同士の相違に最も寄与することがわかる(図1の下部パネルと図9の下部パネルを比較)。その結果により、Ba-hG1のFabドメインは、Ca-hG1のFabドメインより安定性が低いため、Ba-hG1はCa-hG1より安定していないことが明らかになった。従って、Fabドメインの安定性を評価することにより、抗体の安定性を推定することができる。
6.2.実施例2:TmおよびpI値に対する可変ドメインの寄与についての試験
6個の個別抗体(そのうちの数個は同じエピトープを認識する(Ca-hG1、Ca1-hG1、Ca1-hG1a))からFabフラグメントを単離した。各々についてTmおよびpIを決定した。Ca-hG1およびCa1-hG1由来のFabフラグメントは、約13個のアミノ酸だけ相違したが、Ca1-hG1とCa1-hG1aは、約3個のアミノ酸しか違わなかった。これら3つの高度に関係する分子は、そのTmおよびpI値にわずかな差しか呈示しない。対照的に、完全に無関係の分子、Aa-hG1、Ba-hG1およびDa-hG1は非常に相違したプロフィールを示す(図17)。
全長抗体に関してTmおよびpI値に対するFab領域の寄与を調べるために、単一のファージ展示ライブラリーから単離した18個の個別Fabクローンを全長IgG1に変換した後、一過性トランスフェクションから精製した。これらの分子はその可変領域だけが異なる。これらのクローンを後に分析したところ、これらが非常に多様な特徴をもつことがわかった。例えば、これらは、高いものでは約330 nMから、低いものではわずか22 nMまでの解離定数(Kd)を呈示する(データは示していない)。インタクトな抗体のDSC分析により決定されるFabフラグメントのTm値は、低いものでは約70℃から、高いものは約90℃までの範囲であった(図18Bおよび18C)。インタクトな抗体のpI値も広い範囲を示し、抗体のpIは7.8〜9.0であった(図18Aおよび18C)。
図19は、単一タンパク質、ならびに、前に分析したCa-hG1、および2つの異なる抗体からの重および軽鎖を結合して作製した2つのキメラ抗体(Ha-hG1、Ia-hG1)に存在する様々なエピトープに結合する抗体のさらに別のパネルのTmおよびpI値を示す。これらの抗体はまた、共通のFcドメインを有し、そのFabだけが異なっている。既述したように、異なるFabドメインによって、いずれも広い範囲のTmおよびpI値がもたらされる。対照的に、図20は、ヒンジドメインにおいて少数のアミノ酸だけが異なる抗体のパネルのTmおよびpI値を示す。同じFabドメインを有するこれらのヒンジ変異体は、そのpIまたはTmのいずれもほとんど違わない。pIを決定したヒンジ変異体の場合、アミノ酸の変更によって、アミノ酸配列に基づく実効電荷は変化しなかったことに留意されたい。
図21は、温度の関数としてのCa-hG1、Ca1-hG1、Ba-hG1およびDa-hG1の100 mg/mL溶液の粘度を示す。最も低いpIを有する抗体Da-hG1が、測定した条件下での粘度が最も高かったことがわかる。また、濃度が増加する(100、126、138および150 mg/mL)Ba-hG1の粘度が、温度の関数として示されている。濃度が高ければ高いほど、抗体溶液の粘度も高くなる。従って、高濃度液体製剤の製剤化のためには、一般に、固有粘度が比較的低い抗体を用いるのが望ましい。これらの試験から、抗体のpIは、溶液中の抗体の粘度を示す測度を提供することがわかる。
図22Aには、FabのTmの関数としての、〜40℃でのBa-hG1、Ca-hG1、Ca1-hG1およびDa-hG1抗体の凝集速度を示す。凝集速度は、Fab Tmが低い抗体ほど高くなる。また、表2からも認められるように、この傾向は、室温(25℃)および5℃で貯蔵した場合の上記分子にも一貫している。これらの結果から、高いFab Tm値は、広い温度範囲にわたって、低い凝集速度と相関することがわかる。上記抗体のうちの2つ(Ba-hG1およびCa-hG1)をさらなる分析のために選択した。
Ba-hG1とCa-hG1のFabおよびFcフラグメントを単離し、各フラグメントの40℃での安定性を調べた。図22Bには、40℃での、Ba-hG1とCa-hG1のFabおよびFcフラグメントの時間経過による凝集プロフィールを示す。両Fabフラグメントおよび全長Mabの凝集速度の比を表2に示す。Fabフラグメント(Ba-hG1/Ca-hG1)の比は約2.8であり、これはインタクトな抗体の凝集速度の比、約2.4(表2参照)と同等である。Fc領域の凝集速度は、Ba-hG1 Fabフラグメントについて観察されたものと同等である。これらのデータから、Fabドメインが、インタクトな抗体における凝集体の形成に有意な役割を果たすことと、インタクトな抗体の凝集速度はFabドメインのTmに影響されることがわかる。さらに、上記データは、Fab領域のTmが高くなると、抗体が時間経過により凝集する傾向が低下し、より安定した分子をもたらすことも示している。従って、DSCを用いた冷却サイクルの加熱による高速スクリーニングは、抗体が貯蔵時に凝集体を形成する傾向の測度として使用することができる。
Figure 2009500344
これらの結果から、該当するin vitroおよびin vivo試験を用いて、最も望ましい特性の組合せを決定することにより、各種の好ましい特性を備えた抗体をスクリーニングできることがわかる。例えば、特定の標的(例:標的“E”)をターゲッティングする場合、標的の様々な抗原に結合する抗体のパネルは様々なTm値を有するが、様々なpI値をスクリーニングして、このような特性の所望の組合せを備えた1以上の抗体を取得することもできる。
6.3.実施例3:TmおよびpI値に対するFcヒンジ領域の寄与についての試験
抗体Fa6-hG1のヒンジ領域に多数の様々な突然変異を誘発した。インタクトな抗体のDSC分析により、親抗体のFabドメインのTmおよび各ヒンジ突然変異体を決定した(図20)。加えて、親および突然変異体のいくつかのpI値を決定した(図20)。pIを決定したヒンジ変異体の場合、アミノ酸の変更によって、アミノ酸配列に基づく実効電荷は変化せず、予想通り、pIにほとんど影響がないことに留意されたい。加えて、これらの密接に関係する分子のTm値はほぼ同じであり、これは、ヒンジの配列がFabのTmにほとんど影響しないことを示している。
6.4.実施例4:pIを変えるためのFcドメインの操作
等電点(pI)を高く、または低くするために、抗IL-9抗体のFcドメイン(ヒトIgG1)に一連のアミノ酸残基置換を実施した。その際、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)および補体依存性細胞傷害(CDC)などのエフェクター機能に対する影響が最小限となるように、置換を選択した。また、プロテインA(抗体精製に用いるタンパク質)およびFcRn(IgGホメオスタシスを媒介する受容体)の結合部位の破壊を阻止するように、置換を選択した。ヒトFcの結晶構造を案内(guide)として用いて、次の領域:339-375および390-414(Kabatら、1991, NIH Publication 91-3242, National Technical Information Service, Springfield, VAに記載されるEU番号付け方式を用いて)を置換のために選択した。これらの領域内で、タンパク質フォールドを維持するのにプロリンが必要であると考えられるため、置換の候補部位としてプロリンを排除した。ヒトFc CH2-CH3領域のリボンダイアグラムを図24および25に示す。赤色は、突然変異がC1q、FcγR、FcRn、およびプロテインA結合に作用しうる領域、また青色は、置換がFcγRおよびFcRn結合に作用しうる領域、そして緑色は、置換がFcRnおよびプロテインA結合に作用しうる領域をそれぞれ示す。黄色の領域は、2つのCH3ドメインが互いにパッキングする領域である。置換のために選択した残基の位置はピンク色で示し、これらは塗りつぶされている。
タンパク質のpIは、タンパク質が実効電荷を帯びていないpHとして定義する。タンパク質のpIより低いpHでは、タンパク質は実効陽電荷を帯び、タンパク質のpIを超えるpHでは、タンパク質は実効陰電荷を帯びる。酸性アミノ酸アスパラギン酸(D)およびグルタミン酸(E)は、生理学的pHまたはその付近で脱プロトン化し、陰電荷を帯びる。塩基性アミノ酸リシン(K)およびアルギニン(R)は、生理学的pHまたはその付近でプロトン化し、陽電荷を帯びる。タンパク質の各アミノ酸残基で、実施することができる2つの変更がある。すなわち、荷電残基を非荷電残基に、または反対の電荷を帯びた残基に変えることと、非荷電残基を陽または陰電荷を帯びた残基に変えることである。電荷の最大の変化が起こりうるのは、アミノ酸を反対の電荷のアミノ酸で置換する場合である。荷電残基の非荷電残基による置換は、電荷を除去するだけで、反対の電荷を加えるわけではないため、荷電残基を反対の電荷を帯びた荷電残基に置換するより有効性が低い。DおよびEのKまたはRのいずれかによる置換、またはその逆は、pIに最大の影響を与えると考えられる。野生型配列における所与の残基をどの残基で置換すべきかを選択する際、ウェブサイト:http://www.syfpeithi.de/scripts/MHCServer.dll/home.htmを用いて、新規残基のMHCクラスII免疫原性を確認した。荷電残基に代わり極性非荷電残基を導入することは、荷電残基に代わり非極性残基を導入するより免疫原性が低い傾向があった。
初め、置換のために5つの部位:K340、E345、R355、Q362、およびD401を選択した(図24)。Stratagene QuikChange II XLキットを用いて、抗IL9抗体に部位指定突然変異誘発を実施した。改変した抗体を293H細胞において生産し、プロテインAを用いて精製した。等電点電気泳動ゲル(IEF)を流し込み、pIの変動を決定した。IEFゲルを図26および27に示し、pI値と正味変動を表3にまとめる。pI変動の傾向は予想通りであった。293H細胞に生産した野生型を図26および27での比較の基準に用いた。NSO細胞に生産した野生型のpIは、293H細胞に生産した抗体に観察されるものとほぼ同じであることがわかった(図27、レーン1と2を比較)。K340EのpIは、K349Qより低く、両方のpIが野生型のpIより低かった。同じパターンがR355EとR355Qにも認められた。W345KのpIはE345Qより高く、これら突然変異体両方のpIが野生型より高かった。これと同じパターンがD401KおよびD401Nについても認められた。電荷を帯びていない残基Q362をEで置換すると、pIが低下し、残基Q362をKで置換すると、pIは上昇した。pI低下の最大幅の変動は、-0.62、R355Eであり、pI上昇の最大幅の変動は、0.47、E345Kであった。
単一置換に関するデータを分析した後、組合せ置換を実施した。予想したように、組合せ置換は、pIに、単一突然変異だけの場合より大きな影響を与えた(図27および表3)。K340E R355E二重置換は、R355E Q362E二重置換より大きい電荷の減少(それぞれ、-1.03と-0.82)を呈示した。この減少は、両残基の電荷の転換により起こったものだが、R355E Q362E二重置換では、残基R355だけがその反対電荷に転換した。E345K D401NおよびE345K D401K二重置換の両方とも、単一突然変異のいずれより大きいpI上昇をもたらしたが、両残基の電荷の転換は、これより大きなpI上昇をもたらさなかった。これらのpIは、互いに非常に類似しており、恐らく、ゲルの実験誤差の範囲内にあると思われる(図27におけるバンドのしみに注意)。K340E R355E Q362EおよびK340Q R355E Q362E三重置換は、予想パターン通りであり、pI低下が置換の中で最も小さかった、E345K Q362K D401KおよびE345K Q362K D401N三重置換は、図27に示すゲルを脱離した(ran off)が、これは、そのpIが大幅に上昇したことを示唆している。
置換のための数個のさらに別の部位(Q341、Q342、R344、E356、M358、T359、N361、L365、N390、L398、およびK409)も選択した(図25)。M348K置換については、タンパク質が弱すぎて明瞭な決定ができなかったため、そのpIを決定できなかった。残る置換のpIの変動は、第1セットの単一置換と同様の傾向であった(図28および表3)。これらのデータから、Fcドメイン内にターゲッティングした置換が、抗体のpIを操作する上で有用であることが明らかにされた。加えて、これらのデータは、ターゲッティングした置換が、Fc融合タンパク質のような他の治療薬分子のpIを操作する上で有用であることも示している。
示差走査熱量測定(DSC)を用いて、単一および三重置換の融解曲線を作成することにより、置換抗体のTmに対する各置換の作用を調べた。E345Q、R355Q、R355E、Q362EおよびQ362K置換は、野生型と同様のTmプロフィールを有する(図30、左側パネル)が、K340Q、K340EおよびD401K置換により、Tmプロフィールは変化した(図30、右側パネル)。いずれも位置D401に置換を含む三重置換が、単一置換D401Kと同じTmプロフィールの変化を呈示する。これらの結果から、例えば、Fcドメインのようなタンパク質ドメインのpIおよびTmの両方を操作するために置換を選択できることがわかる。
Figure 2009500344
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6.5.実施例5:候補選択のためのpIおよびTm分析
臨床候補として考慮するため、抗体(Fa-hG1と称する)の2つの変異体を作製した。投与を容易にするために、高濃度の液体製剤が望まれる。第1変異体(Fa-hG1bと称する)は、分子のFc領域に複数の置換を実施することにより作製したが、そのうちの1つ(L235E)は、電荷を1.0減少させ、pIをやや低下させることが予想される(実施例4を参照)。第2変異体(Fa-hG4aと称する)は、ヒトIgG1 Fc領域をヒトIgG4 Fc領域で置換し、複数の置換(L235Eを含む)を操作することにより、作製した。アミノ酸分析によれば、Fa-hG4aは、野生型抗体と比較して−4の電荷変動を呈示することになる。3つの抗体を分析して、そのTmおよびpI値を決定した。
各抗体のDSCプロフィールを図32に重ねて示す。既述したように、最大ピークのTmをFabドメインのTmとして用いる。親抗体のFabドメインのTmは、70.4℃であることが認められ、Fa-hG4aおよびFa-hG1b変異体のTmはそれぞれ、70.4℃および70.9℃であった。これらのデータから、Fc領域の改変によってFab領域の主要Tmピークは変化しないことがわかる。しかし、Fa-hG4aのDSCプロフィールは、〜71℃を超えると急激に下降しており、これは、この抗体が、変異体IgG4 Fc領域の添加により導入された不安定性のために沈降した可能性があることを示している。
等電点電気泳動ゲル(IEF)を泳動して、各抗体のpIを決定した。野生型抗体は、〜8.35のpIを有した(図33における主要タンパク質ピークの位置)。Fa-hG1b変異体は、〜8.18へのわずかな低下を示したが、Fa-hG4aのpIは〜7.13まで有意に低下した(図33)。Fa-hG1b変異体に認められたpIの低下は、類似の置換に認められたpIの変化と一致する(表3を参照)。Fa-hG4a 変異体は、正味pI変動:-1.22および総電荷変動:-4を呈示し、これらも類似の置換に認められたpIの変動と一致する(表3を参照)。
臨床候補の選択のために、抗体のTmおよびpIの両方を考慮に入れる。この場合、変異体各々のFabドメインのTmの差は0.5℃未満であったが、Fa-hG4aのDSCプロフィールから、この変異体は何らかの別の不安定性を被る可能性があることがわかった。pIの分析から、Fa-hG4a変異体が比較的低いpI(〜7.13)を有することが明らかにされた。従って、Fa-hG4a変異体のDSC分析により明らかにされた、低いpIと高い粘度および潜在的不安定性の相関性に基づき、Fa-hG1b変異体を臨床候補として選択した。
6.6.方法
等電点電気泳動ゲル電気泳動:
多温度(multi temp)3冷却浴再循環ユニットと、EPS 3501XL電源を備えたPharmacia Biotech Multiphor 2電気泳動装置を用いて、等電点を決定した。プレキャストアンホリンゲル(Amersham Biosciences、pI範囲:2.5〜10またはpI範囲:3.5〜9.5)に5〜8μgのタンパク質をローディングした。タンパク質サンプルを10 mMヒスチジンpH6において透析した後、必要に応じて上記ゲルにローディングした。広範なpIマーカー標準(Amersham、pI範囲:3.5〜10、8μL)を用いて、Mabの相対pIを決定した。1,500V、50 mAで105分電気泳動を実施した。精製水で1xに希釈したSigma固定溶液(5x)を用いて、ゲルを固定した。シンプリーブルー(Simply Blue)染料(Invitrogen)を用いて、室温で一晩染色を実施した。25%エタノール、8%酢酸および67%精製水からなる溶液で脱染を実施した。標準の較正曲線に対するBio-RadのGS-800較正デンシトメーターを用いて、等電点を決定した。
示差走査熱量測定:
走査速度:1.0℃/分および温度範囲:25〜120℃を用いたVP-DSC(MicroCal、LLC)で熱溶解温度(Tm)を測定した。5〜15分の前走査調温と一緒に、8秒のろ過時間を用いた。Pierce透析カップ(3.5 kD)を用いて、10 mMヒスチジン−HCl、PH6への透析によりサンプルを調製した。平均Mab濃度は、A280で決定したところ、50μg/mL〜790μg/mLであった。装置と共に提供されたOriginソフトウエアを用いて、製造者の手順に従い、融解温度を決定した。手短には、サンプルと対照細胞の両方に、多数のベースラインをバッファーと一緒に流し込むことにより、熱平衡を確立した。ベースラインをサンプルサーモグラムから差し引いた後、データを濃度基準化し、デコンボリューション(deconvolution)関数を用いて適合させた。
粘度決定:
ViscoLabピストン(SN:7497, 0.3055"、1-20 cP)とS6S対照標準(Koehler Instrument Company、InciscoLab 4000)を備えるViscoLab 4000粘度測定装置(Cambridge Applied Systems)を用いて、Mab溶液の粘度を決定した。粘度測定装置を水浴に接続し、装置を20℃に平衡させた。S6S粘度対照標準(20.00℃で8.530 cP)を用いて、ピストンを確認した。また、RODI H2O(20.0℃で1.00 cP)でもピストンを確認した。様々な溶液を各々測定する度に、ピストンを洗剤と水で念入りに洗浄し、すすいだ。次に、装置を≦2℃まで冷却した。装置の温度が2℃、または2℃を下回ったとき、サンプルをチャンバにローディングし、ピストンをサンプルの中まで下げた。サンプルをチャンバの温度まで平衡させた後、測定を開始した。温度は、7〜10分毎に1℃ずつ、最終温度≧25℃まで上昇させた。水浴で温度を調節したが、記録した温度は粘度計に表示されたものである。粘度の測定結果を記録した後、直ちに温度を上げた。再平衡の必要性を最小限にするため、測定中、ピストンは運動状態に維持した。
部位特異的突然変異誘発:
Stratagene QuikChange II XLキットと、表4に記載するプライマーを用いて、製造者の指示書に従い、突然変異誘発を実施した。
Figure 2009500344
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突然変異した抗IL-9抗体の発現および精製:
L-グルタミン、およびピリドキシンHClを含むが、ピルビン酸ナトリウムは含まず、さらに、1%非必須アミノ酸と10%ウシ胎仔血清を加えたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)液体(4.5 g/L D-グルコース)において293H細胞を増殖させた。T175フラスコ(1突然変異体に2個のフラスコを用いた)1個当たり、各々20μgの重および軽鎖ベクターと1.5 mlのOpti-MEM Iを混合することにより、トランスフェクションを実施した。次に、この混合物を、70μlのリポフェクタミン2000含有のOpti-MEM Iと混合してから、室温で半時間静置した。27 mlのDMEMと、1%非必須アミノ酸および5%超低IgGウシ胎仔血清を含むT175に上記混合物を3ml添加した。3日置きに3回の回収を実施した。回収した培地を10,000 rpmでスピンさせた後、0.2μmフィルターでろ過した。次に、プロテインAを用いて抗体を精製してから、0.1〜1mg/mlまで濃縮した。サンプルを10 mMヒスチジンpH6に透析し、タンパク質濃度を約1mg/mlに調節した。
インタクトな抗体の安定性:
インタクトな抗体を10 mMヒスチジンpH6において100 mg/mlに濃縮した。サンプルを3つの温度:2〜8℃、23〜27℃、および38〜42℃でインキュベートし、予め定めた時点でSECにより分析した。サンプルを10 mg/mlに希釈した後、250μgをSECカラムに注入した(SEC分析を参照)。
FabおよびFcフラグメントの安定性:
パパイン消化の後、カラムクロマトグラフィーを用いて、FabおよびFcフラグメントを単離した(実施例1も参照)。試験した抗体はすべて、同じFc領域を有した。SDS-PAGEおよびSECによりサンプル純度を分析および確認した。10 mMヒスチジンpH6においてFabおよびFcフラグメントを50 mg/mlに濃縮した。濃縮した材料を38〜42℃でインキュベートし、サンプリングして凝集体をモニタリングした。サンプルを2mg/mlに希釈した後、70μgをSECカラムに注入した(サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析を参照)。
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析:
流量1mL/分のAgilent 1100高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)装置でSEC分析を実施した。ガードカラムを備えたTODOH BIOSEP TSK G3000SWXLカラム(7.8 mm×30 cm)を分析に用いた。移動相は100 mM無水リン酸水素二ナトリウム、100 mM硫酸ナトリウム、および0.05%アジ化ナトリウムpH6.8から構成された。
7.引用した参照文献
本明細書に引用したすべての参照文献は、個々の刊行物または特許もしくは特許出願が各々、具体的かつ個別に、あらゆる目的のためにその全文を参照として組み込むと記載されているのと同様に、あらゆる目的のために同じ範囲までその全文を参照として本明細書に組み込む。加えて、2005年7月1日に提出された米国特許仮出願番号60/696,113と、2006年4月4日に提出された米国特許仮出願番号60/788,692は、あらゆる目的のためにその全文を参照として組み込むものとする。
当業者には明らかなように、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、本発明の多くの変更および改変を実施することができる。本明細書に記載した具体的実施形態は、例として提供するにすぎず、本発明は、添付の特許請求の範囲とともに、このような特許請求の範囲が権利を与えられる同等物の全範囲によってしか制限されることはない。
全長Ca-hG1 Mab分子のDSCサーモグラムを上部パネルに示し、下部パネルには、Ca-hG1 Mab分子の精製FabおよびFcフラグメントから得たサーモグラムを重ねて示す。Fcドメインには、約68℃と83℃に2つの異なるピークが認められる。Fabフラグメントの場合、約87℃に単一のピークが認められる。 全長Ca-hG1 MabのDSCサーモグラム(図1参照)のデコンボリューションを示す。60℃、83℃および87℃のTm値に3つの異なる異なるピークが認められる。 全長Ca-hG1 Mabの複数のDSC走査を重ねて示す。これにより、72℃に加熱した場合の反復加熱および冷却サイクルに関する可逆性がわかる。 全長Ca-hG1 Mabの複数のDSC走査を重ねて示す。これにより、72℃に加熱した場合(図3参照)より、87℃に加熱した場合の方が、反復加熱および冷却サイクルに関する可逆性が低いことがわかる。 Ca-hG1 MabのFabフラグメントの複数のDSC走査を重ねて示す。これにより、72℃に加熱した場合(図3参照)より、85℃に加熱した場合の方が、反復加熱および冷却サイクルに関する可逆性が低いことがわかる。 Ca-hG1 MabのFabフラグメントの複数のDSC走査を重ねて示す。これにより、68℃に加熱した場合(図7参照)より、87℃に加熱した場合の方が、反復加熱および冷却サイクルに関する可逆性が低いことがわかる。 Ca-hG1 MabのFcフラグメントの複数のDSC走査を重ねて示す。これにより、68℃に加熱した場合の反復加熱および冷却サイクルに関する可逆性がわかる。 Ca-hG1 MabのFcフラグメントの複数のDSC走査を重ねて示す。これにより、68℃に加熱した場合(図7参照)より、83℃に加熱した場合の方が、反復加熱および冷却サイクルに関する可逆性が乏しいことがわかる。 全長Mab:Ba-hG1およびCa-hG1のDSC走査を重ねて示す。これにより、顕著に異なるプロフィールが明らかにされる。Ba-hG1は、約72℃で主要ピークを有するのに対し、Ca-hG1の主要ピークは約87℃で認められる。 全長Ba-hG1 Mab分子のDSCサーモグラムを上のパネルに示し、また、下のパネルには、Ba-hG1 Mab分子の精製FabおよびFcフラグメントから得られたサーモグラムを重ねて示す。Fcドメインについては、約67℃と約83℃で2つの異なるピークが認められる。Fabフラグメントについては、約72℃と約76℃で2つの重複したピークが認められる。 全長Ba-hG1 MabのDSCサーモグラム(図10を参照)のデコンボリューションを示す。Tm値:71℃、82℃および93℃において3つの異なるピークが認められる。 全長Ba-hG1 Mabの複数のDSC走査を重ねて示す。これにより、Fabフラグメントを単独で71℃に加熱した場合(図14参照)より、70℃に加熱した場合の方が、反復加熱および冷却サイクルに関する可逆性が低いことがわかる。 全長Ba-hG1 Mabの複数のDSC走査を重ねて示す。これにより、Fabフラグメントを単独で71℃に加熱した場合(図14参照)より、73℃に加熱した場合の方が、反復加熱および冷却サイクルに関する可逆性が低いことがわかる。 Ba-hG1 MabのFabフラグメントの複数のDSC走査を重ねて示す。これにより、71℃に加熱した場合の反復加熱および冷却サイクルに関する可逆性がわかる。 Ba-hG1 MabのFabフラグメントの複数のDSC走査を重ねて示す。これにより、71℃に加熱した場合(図14参照)より、76℃に加熱した場合の方が、反復加熱および冷却サイクルに関する可逆性が低いことがわかる。 Ba-hG1 MabのFcフラグメントの複数のDSC走査を重ねて示す。これにより、67℃に加熱した場合の反復加熱および冷却サイクルに関する可逆性がわかる。 様々な抗体のパネルについてのIEFおよびDSC分析をグラフに表したものである。抗体:Ca-hG1、Ca1-hG1およびCa1-hG1aは高度に関係しており、同じタンパク質エピトープを認識し、少数のアミノ酸しか違っていない。残りの抗体:As-hG1、Ba-hG1およびDa-hG1は無関係である。 単一のタンパク質に存在する様々なエピトープに結合する様々な抗体のパネルの分析を示す。これらの抗体は共通のFcドメインを有し、そのFab領域だけが違っている。A)等電点電気泳動(IEF)により、各抗体について広い範囲のpI値(例えば、約7.8〜約9.2)が存在することがわかる。B)示差走査熱量測定(DSC)分析により、各抗体について広い範囲のTm値(例えば、約66℃〜約90℃)が存在することがわかる。C)抗体のパネルについてのIEFおよびDSC分析をグラフに表したものである。 図18Aの続きである。 図18Bの続きである。 単一のタンパク質に存在する様々なエピトープに結合する様々な抗体のパネルのIEFおよびDSC分析をグラフに表したものである。また、初期の試験で用いた複数の抗体と、2つの異なる抗体に由来する重鎖および軽鎖を組合わせて作製した2つのキメラ抗体についてもプロットした。これら抗体はすべて、共通のFcドメインを有し、そのFab領域だけが違っている。 ヒンジ領域における突然変異以外は同一である抗体のパネルのIEFおよびDSC分析をグラフに表したものである。 図17に分析した抗体の数個についての粘度分析を示す。各抗体は、100 mg/mlで分析したが、Ba-hG1については、これに加え、126 mg/ml、138 mg/mlおよび150 mg/mlでも分析した。 FabのTmに対する凝集速度を示す。パネルAは、Fab領域のTmに対するBa-hG1、Da-hG1、Ca-hG1およびCa1-hG1の凝集速度をプロットしたものである。パネルBは、単離されたFc領域並びにCa-hG1およびBa-hG1のFabドメインについて、時間経過による凝集をプロットしたものである。 図22Aの続きである。 本明細書で用いる抗体ネーミングスキームを示す。最初の3文字が抗原結合ドメインを表している:頭文字は標的を示し、小文字が標的の特定のエピトープを、また数字が抗体の変異体を示している(単純にするため、数字0は省かれることが多い)。最後の4文字はFcドメインを表す:最初の3文字は、Fcドメインを表し、最後の小文字はFc変異体を示している。従って、図23に示す例:Aa1-hG1aは、標的“A”のエピトープ“a”に結合し、そのFcドメインとしてヒトγ-1(hG1)の変異体“a”を有する抗体の変異体“1”を表している。 置換が実施された最初の5残基の位置を示す、ヒトFc のCH2およびCH3のリボンダイアグラムである。この図は、ただ1つのCH2ドメイン(上部)と1つのCH3ドメイン(下部)を示すヒトFcの側面図である。置換された残基は塗りつぶされている。赤色は、突然変異がC1q、FcγR、FcRn、およびプロテインA結合に影響しうる領域、また青色は、突然変異がFcγRおよびFcRn結合に影響しうる領域、そして緑色は、突然変異がFcRnおよびプロテインA結合に影響しうる領域をそれぞれ示す。黄色の領域は、2つのCH3ドメインが互いにパッキングする領域である。 置換が実施されたさらに別の6残基の位置を示す、ヒトFc のCH2およびCH3のリボンダイアグラムである。方針は図24と同じであり、色分けも図24に示した意味と同じである。置換された残基は塗りつぶされている。 実施された最初の10個の単一置換のIEFゲルを示す。所与のレーンにおける最高強度を有するバンドの泳動を測定することにより、pIを決定した。野生型抗体対照(WT)はNSO細胞において生産した。 二重および三重置換のIEFゲルを示す。三重置換E345K Q362K D401NおよびE345K Q362K D401Kは、恐らくこのゲル上で解像されるにはpIが高すぎたため、脱離した(ran off)と考えられる。293HおよびNSO細胞の両方で生産したWT抗体を比較のため泳動した。 実施された第2の12個の単一置換のIEFゲルを示す。所与のレーンにおける最高強度を有するバンドの泳動を測定することにより、pIを決定した。293HおよびNSO細胞の両方で生産した野生型(WT)抗体を比較のため泳動した。 公称電荷変動に対するpIシフトの相関を示す。置換した抗体各々について電荷のデルタ変動に対するpIのデルタ変動の値をプロットした。相関は概して線状である。 野生型抗体と、pIを改変した単一置換抗IL9抗体のDSCサーモグラムを重ねて示す。E345Q、E345K、R355Q、R355E、Q362EおよびQ362KのTmプロフィール(左側パネル)は、野生型抗体のものと酷似しており、いずれも約76℃に1つの主要ピークを有する。K340Q、K340EおよびD401KのTmプロフィールは、約76℃の主要ピークに加えて、約62℃と約70℃の間に別個のピークを有する。 野生型抗体と、pIを改変した三重置換抗IL9抗体のDSCサーモグラムを重ねて示す。 野生型Fa-hG1抗体と、2つの変異体Fa-hG1bおよびFa-hG4aのDSCサーモグラムを重ねて示す。FabドメインのTmを示す主要ピークは、Fa-hG1とFa-hG4aの両方について70.4℃で、Fa-hG1bについては70.9℃であった。 野生型Fa-hG1抗体と、2つの変異体Fa-hG1bおよびFa-hG4aのIEFゲルを示す。主要タンパク質バンドのpIは、Fa-hG1、Fa-hG1bおよびFa-hG4aについて、それぞれ8.35、8.18および7.13であった。

Claims (79)

  1. マルチドメインタンパク質を作製する方法であって、
    (a)予め定めた特定の結合特異性を有する複数のタンパク質ドメインの各々についてpIおよび/またはTmを決定するステップと、
    (b)そのpIおよび/またはTmに基づき、1以上のタンパク質ドメインを選択するステップと、
    (c)ステップ(b)で選択した1以上のドメインと1以上の他のドメインを用いてマルチドメインタンパク質を構築するステップと、
    を含む、上記方法。
  2. 選択したタンパク質ドメインの各々が、少なくとも50℃のTmおよび少なくとも6.5のpI、または少なくとも50℃のTmおよび6.5未満のpIを有する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記マルチドメインタンパク質が抗体であり、前記予め定めた結合特異性が標的に対する結合特異性である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記複数のタンパク質ドメインが、抗原結合ドメインである、請求項3に記載の方法。
  5. 前記抗原結合ドメインの少なくともいくつかが、標的の様々なエピトープに結合する、請求項4に記載の方法。
  6. 前記抗原結合ドメインが、標的を用いて発現ライブラリーをスクリーニングすることにより得られる、請求項4に記載の方法。
  7. 前記抗原結合ドメインが、複数のモノクローナル抗体を消化することにより得られる、請求項4に記載の方法。
  8. 選択した各抗原結合ドメインを抗体定常領域ドメインと組合わせることにより、マルチドメインタンパク質を作製する、請求項4〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記ステップ(c)の前に、
    (i)複数の抗体定常領域ドメインの各々について、pIおよび/またはTmを決定するステップと、
    (ii)そのpIおよび/またはTmに基づき、抗体定常領域ドメインを選択するステップと、
    をさらに含む、請求項8に記載の方法。
  10. 複数のタンパク質ドメインが抗体定常領域ドメインであり、かつ、予め定めた結合特異性が、Fcリガンドに対する結合特異性である、請求項3に記載の方法。
  11. 選択した各定常領域ドメインを抗原結合ドメインと組合わせることにより、マルチドメインタンパク質を作製する、請求項10に記載の方法。
  12. マルチドメインタンパク質を選択する方法であって、
    (a)予め定めた特定の結合特異性を有する複数のマルチドメインタンパク質の各々について、マルチドメインタンパク質内の1以上のドメインのpIおよび/またはTmを決定するステップと、
    (b)上記1以上のドメインのpIおよび/またはTmに基づき、1以上のマルチドメインタンパク質を選択するステップと、
    を含む、上記方法。
  13. 前記マルチドメインタンパク質が抗体であり、前記予め定めた結合特異性が標的に対する結合特異性である、請求項12に記載の方法。
  14. 前記1以上のドメインが、抗原結合ドメインである、請求項13に記載の方法。
  15. 前記抗原結合ドメインの少なくともいくつかが、標的の様々なエピトープに結合する、請求項14に記載の方法。
  16. 前記複数のマルチドメインタンパク質が、標的を用いて発現ライブラリーをスクリーニングすることにより得られる、請求項14または15に記載の方法。
  17. 選択したマルチドメインタンパク質の抗原結合ドメインが、少なくとも50℃のTmおよび少なくとも6.5のpI、または少なくとも50℃のTmおよび6.5未満のpIを有する、請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
  18. 前記1以上のタンパク質ドメインが、Fcドメインである、請求項13に記載の方法。
  19. 選択したマルチドメインタンパク質の抗体定常領域ドメインが、少なくとも50℃のTmおよび少なくとも6.5のpI、または少なくとも50℃のTmおよび6.5未満のpIを有する、請求項18に記載の方法。
  20. 前記pIおよび/またはTmが、様々なpH値、様々な温度、様々なせん断応力、および様々な凍結/解凍サイクルからなる群より選択される1以上の様々な条件下で決定される、請求項1または12に記載の方法。
  21. 予め定めた抗原をターゲッティングする1以上の抗体を作製する方法であって、
    (a)予め定めた閾値レベルを超える、抗原に対する結合アフィニティーを呈示する複数の抗原結合ドメインを同定するステップと、
    (b)同定した各抗原結合ドメインについて、TmおよびpI値を決定するステップと、
    (c)決定したTmおよびpI値に基づき、1以上の抗原結合ドメインを選択するステップと、
    (d)ステップ(c)で選択した抗原結合ドメインと定常領域ドメインを含む抗体を構築するステップと、
    を含む、上記方法。
  22. 選択した抗原結合ドメインの各々が、少なくとも50℃のTmおよび少なくとも6.5のpI、または少なくとも50℃のTmおよび6.5未満のpIを有する、請求項21に記載の方法。
  23. 前記複数の抗原結合ドメインが、標的を用いて発現ライブラリーをスクリーニングすることにより得られる、請求項21または22に記載の方法。
  24. 前記複数の抗原結合ドメインが、標的に結合する複数のモノクローナル抗体を消化することにより得られる、請求項21または22に記載の方法。
  25. 前記抗原結合ドメインの少なくともいくつかが、標的の様々なエピトープに結合する、請求項22〜24のいずれか1項に記載の方法。
  26. 前記ステップ(d)の前に、
    (i)複数の抗体定常領域ドメインの各々についてpIおよび/またはTmを決定するステップと、
    (ii)そのpIおよび/またはTmに基づき、抗体定常領域ドメインを選択するステップと、
    をさらに含む、請求項21に記載の方法。
  27. 選択した抗体定常領域ドメインの各々が、少なくとも50℃のTmおよび少なくとも6.5のpI、または少なくとも50℃のTmおよび6.5未満のpIを有する、請求項26に記載の方法。
  28. 抗体を操作することにより、抗体の血清半減期、補体固定、Fc受容体結合および抗原依存的細胞傷害性からなる群より選択される1以上の生物活性を有意に低減することなく、1以上の治療および/または製剤化特性を改善する方法であって、抗体において1以上のアミノ酸を置換および/または挿入することを含み、その際、上記アミノ酸置換および/または挿入が、抗体の1以上の治療および/または製剤化特性を改善するようなものである、上記方法。
  29. 前記1以上の製剤化特性が、安定性、溶解性および粘性からなる群より選択される、請求項28に記載の方法。
  30. 前記1以上の治療特性が、非特異的毒性および生体分布からなる群より選択される、請求項28に記載の方法。
  31. 前記安定性が、Tmを特徴付けることにより決定され、非特異的毒性、生体分布、溶解性および粘性が、pIを特徴付けることにより決定される、請求項29または30に記載の方法。
  32. 操作した抗体のTmを高くする、請求項31に記載の方法。
  33. 操作した抗体のpIを高くする、請求項31に記載の方法。
  34. 操作した抗体のpIを低くする、請求項31に記載の方法。
  35. 前記アミノ酸置換が、抗体の血清半減期、補体固定、Fc受容体結合および抗原依存的細胞傷害性からなる群より選択される1以上の生物活性をさらに改善するようなものである、請求項28に記載の方法。
  36. 溶液中のマルチドメインタンパク質の長期安定性を評価する方法であって、
    (a)マルチドメインタンパク質の溶液を用意するステップであって、その際、マルチドメインタンパク質は、アンフォールディングにより、マルチドメインタンパク質の凝集を招くドメインを含む、ステップと、
    (b)上記マルチドメインタンパク質溶液を少なくとも50℃の温度に加熱するステップと、
    (c)上記ドメインが変性するか否かを決定するステップと、
    (d)マルチドメインタンパク質中のドメインが、ステップ(c)で変性しないと決定された場合、溶液中で長期安定性を有するものとして上記マルチドメインタンパク質を分類するステップと、
    を含む、上記方法。
  37. 前記ステップ(c)において、50℃未満の温度に冷却すると、前記ドメインがリフォールディングするか否かを決定し、マルチドメインタンパク質中のドメインが、ステップ(c)でリフォールディングすると決定された場合、溶液中で長期安定性を有するものとして上記マルチドメインタンパク質を分類することをさらに含む、請求項36に記載の方法。
  38. 前記マルチドメインタンパク質が抗体である、請求項36または37に記載の方法。
  39. 前記ドメインが、抗原結合ドメインである、請求項38に記載の方法。
  40. 前記ドメインが、定常領域ドメインである、請求項38に記載の方法。
  41. 熱変性曲線を作製することにより、前記ステップ(b)および(c)を実施する、請求項36〜40のいずれか1項に記載の方法。
  42. 示差走査熱量測定を用いて、前記熱変性曲線を作製する、請求項41に記載の方法。
  43. アンフォールディングにより、溶液中のマルチドメインタンパク質の凝集を引き起こす1以上のドメインをマルチドメインタンパク質において同定する方法であって、
    (a)上記溶液を少なくとも50℃の温度に加熱することにより、1以上のドメインを変性させるステップと、
    (b)上記1以上のドメインが、50℃未満の温度への冷却時に、リフォールディングするか否かを決定するステップと、
    (c)上記ステップ(b)において冷却時にリフォールディングしない1以上のドメインを同定し、これによって、アンフォールディングにより、溶液中のマルチドメインタンパク質の凝集を引き起こす1以上のドメインを同定するステップと、
    を含む、上記方法。
  44. 前記マルチドメインタンパク質が抗体である、請求項43に記載の方法。
  45. 前記ドメインが、抗原結合ドメインである、請求項43または44に記載の方法。
  46. 前記ドメインが、定常領域ドメインである、請求項43または44に記載の方法。
  47. 熱変性/再生曲線を作製することにより、前記ステップ(a)および(b)を実施する、請求項43〜46のいずれか1項に記載の方法。
  48. 示差走査熱量測定を用いて、前記熱変性/再生曲線を作製する、請求項47に記載の方法。
  49. 長期安定性が改善されるようにマルチドメインタンパク質を操作する方法であって、該マルチドメインタンパク質は、アンフォールディングにより、溶液中のマルチドメインタンパク質の凝集を引き起こすドメインを含んでおり、
    (a)上記ドメイン内の1以上のアミノ酸残基を置換することにより、上記ドメインを改変して、改変ドメインを作製するステップと、
    (b)上記改変ドメインを含むマルチドメインタンパク質の溶液を少なくとも50℃の温度に加熱するステップと、
    (c)上記マルチドメインタンパク質中の改変ドメインがステップ(b)において変性するか否かを決定するステップと、
    (d)上記改変ドメインが、ステップ(c)で変性しないと決定された場合、長期安定性が改善されたものとして、上記改変ドメイン含有マルチドメインタンパク質を分類するステップと、
    を含む、上記方法。
  50. 前記ステップ(c)において、50℃未満の温度に冷却すると、前記改変ドメインがリフォールディングするか否かを決定し、上記改変ドメインがステップ(c)でリフォールディングすると決定された場合、溶液中で長期安定性を有するものとして上記マルチドメインタンパク質を分類することをさらに含む、請求項49に記載の方法。
  51. 前記マルチドメインタンパク質が抗体である、請求項49または50に記載の方法。
  52. 前記ドメインが、抗原結合ドメインである、請求項49または50に記載の方法。
  53. 前記ドメインが、定常領域ドメインである、請求項49または50に記載の方法。
  54. 熱変性曲線を作製することにより、前記ステップ(b)および(c)を実施する、請求項50〜53のいずれか1項に記載の方法。
  55. 示差走査熱量測定を用いて、前記熱変性曲線を作製する、請求項54に記載の方法。
  56. 改善された溶解性および/または低下した粘性を有するようにマルチドメインタンパク質を操作する方法であって、
    (a)マルチドメインタンパク質のドメイン内の1以上のアミノ酸残基を置換および/または挿入することにより、該ドメインを改変して、改変ドメインを作製するステップと、
    (b)上記改変ドメインのpIを決定するか、または上記改変ドメインを含むマルチドメインタンパク質のpIを決定するステップと、
    (c)上記改変ドメインまたは上記改変ドメインを含むマルチドメインタンパク質が、ステップ(b)で、上昇したpIを有すると決定された場合、溶解性および/または粘性が改善されたものとして、上記改変ドメイン含有マルチドメインタンパク質を分類するステップと、
    を含む、上記方法。
  57. 請求項56に記載の方法により生産されたマルチドメインタンパク質。
  58. 非特異的毒性が低減されるようにマルチドメインタンパク質を操作する方法であって、
    (a)マルチドメインタンパク質のドメイン内の1以上のアミノ酸残基を置換および/または挿入することにより、該ドメインを改変して、改変ドメインを作製するステップと、
    (b)上記改変ドメインのpIを決定するか、または上記改変ドメインを含むマルチドメインタンパク質のpIを決定するステップと、
    (c)上記改変ドメインまたは上記改変ドメインを含むマルチドメインタンパク質が、ステップ(b)で、低下したpIを有すると決定された場合、非特異的毒性が低減されたものとして、上記改変ドメイン含有マルチドメインタンパク質を分類するステップと、
    を含む、上記方法。
  59. 請求項58に記載の方法により生産されたマルチドメインタンパク質。
  60. 肝毒性が低減されるようにマルチドメインタンパク質を操作する方法であって、
    (a)マルチドメインタンパク質のドメイン内の1以上のアミノ酸残基を置換および/または挿入することにより、該ドメインを改変して、改変ドメインを作製するステップと、
    (b)上記改変ドメインのpIを決定するか、または上記改変ドメインを含むマルチドメインタンパク質のpIを決定するステップと、
    (c)上記改変ドメインまたは上記改変ドメインを含むマルチドメインタンパク質が、ステップ(b)で、低下したpIを有すると決定された場合、非特異的毒性が低減されたものとして、上記改変ドメイン含有マルチドメインタンパク質を分類するステップと、
    を含む、上記方法。
  61. 請求項60に記載の方法により生産されたマルチドメインタンパク質。
  62. 特異的生体分布を有するようにマルチドメインタンパク質を操作する方法であって、
    (a)マルチドメインタンパク質のドメイン内の1以上のアミノ酸残基を置換および/または挿入することにより、該ドメインを改変して、改変ドメインを作製するステップと、
    (b)上記改変ドメインのpIを決定するか、または上記改変ドメインを含むマルチドメインタンパク質のpIを決定するステップと、
    (c)上記改変ドメインまたは上記改変ドメインを含むマルチドメインタンパク質が、ステップ(b)で、低下したpIを有すると決定された場合、細胞内局在化が低減したものとして、あるいは、上記改変ドメインまたは上記改変ドメインを含むマルチドメインタンパク質が、ステップ(b)で、上昇したpIを有すると決定された場合、細胞内および/または脈管外局在化が増大したものとして、上記改変ドメイン含有マルチドメインタンパク質を分類するステップと、
    を含む、上記方法。
  63. 請求項62に記載の方法により生産されたマルチドメインタンパク質。
  64. 前記マルチドメインタンパク質が抗体である、請求項56、58、60および61のいずれか1項に記載の方法。
  65. 前記ドメインが、抗原結合ドメインである、請求項56、58、60および62のいずれか1項に記載の方法。
  66. 前記ドメインが、定常領域ドメインである、請求項56、58、60および62のいずれか1項に記載の方法。
  67. 等電点電気泳動により、前記ステップ(b)を実施する、請求項56、58、60、61および64〜66のいずれか1項に記載の方法。
  68. 前記改変が、K338、A339、K340、G341、Q342、R344、E345、R355、E356、E357、M358、T359、K360、N361、Q362、L365、T366、K370、N390、Y391、K392、T393、T394、V397、L398、D399、S400、D401、F405、K409、L410、D413およびK414(番号付けは、Kabatに記載されるEUインデックスに従う)からなる群より選択される1以上のアミノ酸残基での置換を含む、請求項66に記載の方法。
  69. 前記アミノ酸置換が、K338を任意の非荷電残基に;K338D;K338E;A339D;A339E;A339K;A339R;K340 を任意の非荷電残基に;K340D;K340E;G314D;G314E;G314K;G314R;Q342D;Q342E;Q342K;Q342R;R344を任意の非荷電残基に;R344D;R344E;E345を任意の非荷電残基に;E345K;E345R;R355を任意の非荷電残基に;R355D;R355E;E356を任意の非荷電残基に;E356K;E356R;E357を任意の非荷電残基に;E357K;E357R;M358D;M358E;M358K;M358R;T359D;T359E;T359K;T359R;K360を任意の非荷電残基に;K360D;K360E;N361D;N361E;N361K;N361R;Q362D;Q362E;Q362K;Q362R;L365D;L365E;L365K;L365R;T366D;T366E;T366K;T366R;K370を任意の非荷電残基に;K370D;K370E;N390D;N390E;N390K;N390R;Y391D;Y391E;Y391K;Y391R;K392を任意の非荷電残基に;K392D;K392E;T393D;T393E;T393K;T393R;T394D;T394E;T394K;T394R;V397D;V397E;V397K;V397R;L398D;L398E;L398K;L398R;D399を任意の非荷電残基に;D399K;D399R;S400D;S400E;S400K;S400R;D401を任意の非荷電残基に;D401K;D401R;F405D;F405E;F405K;F405R;K409を任意の非荷電残基に;K409D;K409E;L410D;L410E;L410K;L410R;D413を任意の非荷電残基に;D413K;D413R;K414を任意の非荷電残基に;K414D;およびK414E(番号付けはKabatに記載されるEUインデックスに従う)からなる群より選択される、請求項68に記載の方法。
  70. 請求項64〜69のいずれか1項に記載の方法により生産されたマルチドメインタンパク質。
  71. Fcドメインを含む操作されたマルチドメインタンパク質であって、該FcドメインはpIが上昇または低下するように改変されている、前記マルチドメインタンパク質。
  72. 前記改変が、K338、A339、K340、G341、Q342、R344、E345、R355、E356、E357、M358、T359、K360、N361、Q362、L365、T366、K370、N390、Y391、K392、T393、T394、V397、L398、D399、S400、D401、F405、K409、L410、D413およびK414(番号付けは、Kabatに記載されるEUインデックスに従う)からなる群より選択される1以上のアミノ酸残基での置換を含む、請求項71に記載の方法。
  73. 前記アミノ酸置換が、K338を任意の非荷電残基に;K338D;K338E;A339D;A339E;A339K;A339R;K340 を任意の非荷電残基に;K340D;K340E;G314D;G314E;G314K;G314R;Q342D;Q342E;Q342K;Q342R;R344を任意の非荷電残基に;R344D;R344E;E345を任意の非荷電残基に;E345K;E345R;R355を任意の非荷電残基に;R355D;R355E;E356を任意の非荷電残基に;E356K;E356R;E357を任意の非荷電残基に;E357K;E357R;M358D;M358E;M358K;M358R;T359D;T359E;T359K;T359R;K360を任意の非荷電残基に;K360D;K360E;N361D;N361E;N361K;N361R;Q362D;Q362E;Q362K;Q362R;L365D;L365E;L365K;L365R;T366D;T366E;T366K;T366R;K370を任意の非荷電残基に;K370D;K370E;N390D;N390E;N390K;N390R;Y391D;Y391E;Y391K;Y391R;K392を任意の非荷電残基に;K392D;K392E;T393D;T393E;T393K;T393R;T394D;T394E;T394K;T394R;V397D;V397E;V397K;V397R;L398D;L398E;L398K;L398R;D399を任意の非荷電残基に;D399K;D399R;S400D;S400E;S400K;S400R;D401を任意の非荷電残基に;D401K;D401R;F405D;F405E;F405K;F405R;K409を任意の非荷電残基に;K409D;K409E;L410D;L410E;L410K;L410R;D413を任意の非荷電残基に;D413K;D413R;K414を任意の非荷電残基に;K414D;およびK414E(番号付けはKabatに記載されるEUインデックスに従う)からなる群より選択される、請求項72に記載の方法。
  74. 前記pIを低下させた、請求項71に記載の操作されたマルチドメインタンパク質。
  75. 前記改変が、A339、G341、Q342、E345、E356、E357、M358、T359、N361、Q362、L365、T366、N390、Y391、T393、T394、V397、L398、D399、S400、D401、F405、L410およびD413(番号付けはKabatに記載されるEUインデックスに従う)からなる群より選択される1以上のアミノ酸残基での置換を含む、請求項74に記載の操作されたマルチドメインタンパク質。
  76. 前記アミノ酸置換が、A339K;A339R;G314K;G314R;Q342K;Q342R;E345を任意の非荷電残基に;E345K;E345R;E356を任意の非荷電残基に;E356K;E356R;E357を任意の非荷電残基に;E357K;E357R;M358K;M358R;T359K;T359R;N361K;N361R;Q362K;Q362R;L365K;L365R;T366K;T366R;N390K;N390R;Y391K;Y391R;T393K;T393R;T394K;T394R;V397K;V397R;L398K;L398R;D399を任意の非荷電残基に;D399K;D399R;S400K;S400R;D401を任意の非荷電残基に;D401K;D401R;F405K;F405R;L410K;L410R;D413を任意の非荷電残基に;D413K;およびD413R(番号付けはKabatに記載されるEUインデックスに従う)からなる群より選択される、請求項75に記載の操作されたマルチドメインタンパク質。
  77. 前記pIを上昇させた、請求項71に記載の操作されたマルチドメインタンパク質。
  78. 前記改変が、K338、A339、K340、G341、Q342、R344、R355、M358、T359、K360、N361、Q362、L365、T366、K370、N390、Y391、K392、T393、T394、V397、L398、S400、F405、K409、L410、およびK414(番号付けはKabatに記載されるEUインデックスに従う)からなる群より選択される1以上のアミノ酸残基での置換を含む、請求項77に記載の操作されたマルチドメインタンパク質。
  79. 前記改変が、K338を任意の非荷電残基に;K338D;K338E;A339D;A339E;K340 を任意の非荷電残基に;K340D;K340E;G314D;G314E;Q342D;Q342E;R344を任意の非荷電残基に;R344D;R344E;R355を任意の非荷電残基に;R355D;R355E;M358D;M358E;T359D;T359E;K360を任意の非荷電残基に;K360D;K360E;N361D;N361E;Q362D;Q362E;L365D;L365E;T366D;K370を任意の非荷電残基に;K370D;K370E;N390D;N390E;Y391D;Y391E;K392を任意の非荷電残基に;K392D;K392E;T393D;T393E;T394D;T394E;V397D;V397E;L398D;L398E;S400D;S400E;F405D;F405E;K409を任意の非荷電残基に;K409D;K409E;L410D;L410E;K414を任意の非荷電残基に;K414D;およびK414E(番号付けはKabatに記載されるEUインデックスに従う)からなる群より選択される、1以上のアミノ酸残基での置換を含む、請求項78に記載の操作されたマルチドメインタンパク質。
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