JP2009257466A - 動力伝達チェーンおよびこれを備える動力伝達装置 - Google Patents

動力伝達チェーンおよびこれを備える動力伝達装置 Download PDF

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Abstract

【課題】動力伝達チェーンにおいて、ピンとプーリとの連結の剛性を高めることと、ピンがプーリに噛み込むときのピンのがたつきを低減することと、駆動音の低減と、実用上の耐久性の更なる向上と、を達成する。
【解決手段】一対のプーリ間に巻き掛けられるチェーン1が、複数のリンク2を互いに連結する複数の連結部材50を備える。連結部材50の第1のピン3と第2のピン4とは、リンク2間の屈曲角の変動に伴い変位する接触部Tで互いに転がり摺動接触する。第1のピン3の端面17は、プーリのシーブ面と接触したときに接触領域21が形成される凸湾曲部20を有する。直交方向Vに関して、凸湾曲部20の突出中心Mは、チェーン1がドライブプーリに噛み込むときの第1の接触部T1の位置S1と、ドリブンプーリに噛み込むときの第2の接触部T2の位置S2との間に配置されている。
【選択図】図4

Description

本発明は、動力伝達チェーンおよびこれを備える動力伝達装置に関する。
例えば、自動車のプーリ式無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)等の動力伝達装置に用いられる無端状の動力伝達チェーンは、複数のリンクプレートをピンで連結して形成されており、一対のプーリに巻き掛けられた状態で使用される。
ピンの一対の端面が凸湾曲状をなしてプーリのシーブ面に係合することにより、動力伝達チェーンとプーリとの間で動力が伝達される。
特開2006−226451号公報
このような動力伝達チェーンにおいて、ピンとプーリとの連結の剛性を高めることと、ピンがプーリに噛み込むときのピンのがたつきを低減することと、駆動音の低減と、実用上の耐久性の更なる向上と、が要請されている。本発明は、これらの課題を解決することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、相対向する一対の円錐面状のシーブ面(62a,63a,72a,73a)をそれぞれ有する相対的に小有効半径(D1)の第1のプーリ(60)および相対的に大有効半径(D2)の第2のプーリ(70)間に巻き掛けられる動力伝達チェーン(1)において、チェーン進行方向(X)に並ぶ複数のリンク(2)と、チェーン進行方向とは直交するチェーン幅方向(W)に延び複数のリンクを互いに屈曲可能に連結する複数の連結部材(50)とを備え、上記連結部材は、対をなす第1および第2の動力伝達部材(3,4)を含み、上記第1および第2の動力伝達部材は、互いに対向する対向部(12,19)を有し、各上記対向部は、リンク間の屈曲角(θ)の変動に伴い変位する接触部(T)で互いに転がり摺動接触し、上記第1の動力伝達部材は、上記シーブ面と接触したときに接触領域(21)が形成される凸湾曲部(20)を有する端面(17)を含み、上記チェーン進行方向およびチェーン幅方向の双方と直交する直交方向(V)に関して、上記凸湾曲部の突出中心(M)は、当該動力伝達チェーンが上記第1のプーリに噛み込むときの上記接触部(T1)の位置としての第1の位置(S1)、当該動力伝達チェーンが上記第2のプーリに噛み込むときの上記接触部(T2)の位置としての第2の位置(S2)、または上記第1の位置と第2の位置との間に配置されていることを特徴とするものである(請求項1)。
動力伝達チェーン(第1の動力伝達部材)がプーリに噛み込まれるとき、第1の動力伝達部材は、その突出中心がプーリに強圧で挟持されるとともに、第2の動力伝達部材との接触によりこの第2の動力伝達部材から力を受ける。その結果、第1の動力伝達部材には、突出中心回りのモーメントが生じる。
本発明によれば、第1の動力伝達部材が第1のプーリに噛み込むときの突出中心と接触部とを直交方向に関して近接配置でき、且つ第1の動力伝達部材が第2のプーリに噛み込むときの上記突出中心と接触部とを直交方向に関して近接配置することができる。これにより、第1の動力伝達部材が第1のプーリに噛み込むときの突出中心回りのモーメントを小さくでき、且つ、第1の動力伝達部材が第2のプーリに噛み込むときの突出中心回りのモーメントを小さくできる。その結果、第1の動力伝達部材の凸湾曲部を、第1および第2のプーリの双方に対して滑り難くできる。第1の動力伝達部材と対応する第1および第2のプーリとのそれぞれの滑りを抑制することにより、これら第1の動力伝達部材と対応する第1および第2のプーリとのそれぞれの連結の剛性を高くすることができる。さらに、第1の動力伝達部材と対応するプーリとのそれぞれの間のがたつきの低減、および第1の動力伝達部材と対応するプーリとのそれぞれの係合音の低減を達成できる。さらには、第1の動力伝達部材の凸湾曲部の摩耗を抑制でき、動力伝達チェーンの実用上の耐久性を向上することができる。
また、本発明は、相対的に小有効半径の第1のプーリおよび相対的に大有効半径の第2のプーリと、これら第1および第2のプーリ間に巻き掛けられた上記の動力伝達チェーンとを備える動力伝達装置(100)を提供するものである(請求項2)。
この場合、動力伝達チェーンと対応するプーリとのそれぞれの連結の剛性を向上できるとともに、動力伝達チェーンと対応するプーリとのそれぞれの間のがたつきを少なくでき、さらには静粛性および実用上の耐久性に優れた動力伝達装置を実現できる。
また、上記第1および第2のプーリは有効半径を変更可能な可変径プーリであり、上記チェーン進行方向およびチェーン幅方向の双方と直交する直交方向に関して、上記凸湾曲部の突出中心は、上記有効半径に拘わらず、常に、当該動力伝達チェーンが上記第1のプーリに噛み込むときの上記接触部の位置としての第1の位置、当該動力伝達チェーンが上記第2のプーリに噛み込むときの上記接触部の位置としての第2の位置、または上記第1の位置と第2の位置との間に配置されている場合がある(請求項3)。
この場合、有効半径に拘わらず、常に、動力伝達チェーンと対応するプーリとのそれぞれの、連結の剛性の向上およびがたつきの低減を達成できるとともに、静粛性および実用上の耐久性を極めて優れた状態に維持できる。
なお、上記において、括弧内の数字等は、後述する実施の形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
本発明の好ましい実施の形態を添付図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る動力伝達チェーンを備える動力伝達装置としてのチェーン式無段変速機(以下では、単に無段変速機ともいう)の要部構成を模式的に示す斜視図である。図1を参照して、無段変速機100は、自動車等の車両に搭載されるものであり、金属(構造用鋼等)製の可変径プーリとしてのドライブプーリ60と、金属(構造用鋼等)製の可変径プーリとしてのドリブンプーリ70と、これらの両プーリ60,70間に巻き掛けられた無端状の動力伝達チェーン1(以下では、単にチェーンともいう)とを備えている。なお、図1中のチェーン1は、理解を容易にするために一部断面を示している。
図2は、図1のドライブプーリ60(ドリブンプーリ70)およびチェーン1の部分的な拡大断面図である。図1および図2を参照して、ドライブプーリ60は、車両の駆動源に動力伝達可能に連なる入力軸61に同行回転可能に取り付けられるものであり、固定シーブ62と可動シーブ63とを備えている。固定シーブ62および可動シーブ63は、相対向する一対のシーブ面62a,63aをそれぞれ有している。各シーブ面62a,63aは円錐面状の傾斜面を含んでいる。
各シーブ面62a,63aは、ドライブプーリ60の中心軸線A1に直交する第1の直交平面B1に対して傾斜しており、各シーブ面62a,63aの母線と上記第1の直交平面B1とのなす角度としてのプーリ半角Cは、例えば、11°に設定されている。これらシーブ面62a,63a間に溝が区画され、この溝によってチェーン1を強圧に挟んで保持するようになっている。
また、可動シーブ63には、溝幅を変更するための油圧アクチュエータ(図示せず)が接続されており、変速時に、入力軸61の軸方向(図2の左右方向)に可動シーブ63を移動させることにより、溝幅を変化させるようになっている。それにより、入力軸61の径方向(図2の上下方向)にチェーン1を移動させて、プーリ60のチェーン1に関する有効半径D1(以下、プーリ60の有効半径D1ともいう)を変更できるようになっている。
一方、ドリブンプーリ70は、図1および図2に示すように、駆動輪(図示せず)に動力伝達可能に連なる出力軸71に同行回転可能に取り付けられており、ドライブプーリ60と同様に、チェーン1を強圧で挟む溝を形成するための相対向する一対のシーブ面73a,72aをそれぞれ有する固定シーブ73および可動シーブ72を備えている。
各シーブ面73a,72aは、ドリブンプーリ70の中心軸線A2に直交する第2の直交平面B2に対して傾斜しており、各シーブ面73a,72aの母線と上記第2の直交平面B2とのなす角度としてのプーリ半角Cは、例えば、11°に設定されている。ドライブプーリ60のプーリ半角Cとドリブンプーリ70のプーリ半角Cとは等しい。
ドリブンプーリ70の可動シーブ72には、ドライブプーリ60の可動シーブ63と同様に油圧アクチュエータ(図示せず)が接続されており、変速時に、この可動シーブ72を移動させることにより溝幅を変化させるようになっている。それにより、チェーン1を移動させて、プーリ70のチェーン1に関する有効半径D2(以下、プーリ70の有効半径D2ともいう)を変更できるようになっている。
図3は、チェーン1の要部の横断面図である。図4は、チェーン1の直線領域の要部の縦断面図である。なお、以下では、図4を参照して説明するときは、チェーン1の直線領域をチェーン幅方向Wから見た状態を基準として説明する。
図3および図4を参照して、チェーン1は、複数のリンク2と、これらのリンク2を互いに屈曲可能に連結する複数の連結部材50とを備えている。
以下では、チェーン1の進行方向に平行な方向をチェーン進行方向Xといい、チェーン進行方向Xに直交する方向のうち連結部材50の長手方向に平行な方向をチェーン幅方向Wといい、チェーン進行方向Xおよびチェーン幅方向Wの双方に直交する方向を直交方向Vという。
また、直交方向Vの一方V1は、チェーン1が屈曲しているときにおけるチェーン径方向の外側を向く方向であり、直交方向Vの他方V2は、チェーン1が屈曲しているときにおけるチェーン径方向の内側を向く方向である。
各リンク2は、平板状の鋼板を金型でプレス成形してなるものであり、チェーン進行方向Xの前後に並ぶ第1の貫通孔としての前貫通孔9と、第2の貫通孔としての後貫通孔10とがそれぞれ形成されている。リンク2は、チェーン進行方向Xに並んでいるとともにチェーン幅方向Wに並んでいる。
チェーン進行方向Xに隣接するリンク2同士は、相対的にチェーン進行方向Xの上流側にあるリンク2の前貫通孔9と、相対的にチェーン進行方向Xの下流側にあるリンク2の後貫通孔10とが、チェーン幅方向Wに並んで互いに対応している。これら対応する貫通孔9,10を挿通する連結部材50によって、チェーン進行方向Xに隣り合うリンク2同士が屈曲可能に連結されており、全体として無端状をなすチェーン1が形成されている。
各連結部材50は、第1の動力伝達部材としての第1のピン3と、第2の動力伝達部材としての第2のピン4とを含んでいる。
第1のピン3は、チェーン幅方向Wに延びる長尺の部材である。第1のピン3の外周部としての周面11は、チェーン幅方向Wと平行に延びる滑らかな面に形成されており、チェーン進行方向Xの前方を向く対向部としての前部12と、チェーン進行方向Xとは反対の方向を向く平坦な後面としての後部13と、直交方向Vに相対向する一対の端部としての一端部14および他端部15とを有している。
前部12は、対をなす第2のピン4と対向しており、第2のピン4の後述する後部平坦部19と接触部T(チェーン幅方向Wから見て、接触点)で転がり摺動接触している。後部13は、チェーン進行方向Xと直交する第3の直交平面B3に対して、所定の迎え角Eを有している。迎え角Eは、例えば5°〜12°程度とされている。
図2および図4を参照して、第1のピン3の長手方向の一対の端部16には、それぞれ、端面17が設けられている。各端面17は、チェーン幅方向Wの外側に向けて凸湾曲しており、直交方向Vの他方V2側を向いている。第1のピン3の周面11の一端部14は、他端部15よりもチェーン幅方向Wに幅広に形成されている。
各端面17には、凸湾曲部20が形成されている。凸湾曲部20は、接触領域21を形成するための部分であり、対応する端面17の少なくとも一部(本実施の形態において、全域)に形成されている。
第1のピン3が対応するプーリ60,70に噛み込むとき、端面17のうち接触領域21が、当該対応するプーリ60,70と接触する。すなわち、これらの接触領域21が、各プーリ60,70の対応するシーブ面62a,63a,72a,73aに薄膜状の潤滑油膜を介して摩擦接触(係合)する。
第1のピン3は、上記対応するシーブ面62a,63a,72a,73a間に挟持されることにより、各プーリ60,70との間で動力を伝達する。第1のピン3は、その端面17の凸湾曲部20が直接動力伝達に寄与するため、例えば、軸受用鋼(SUJ2)等の、高強度且つ耐摩耗性に優れた材料で形成されている。
図3および図4を参照して、第2のピン4(ストリップ、またはインターピースともいう)は、第1のピン3と同様の材料により形成された、チェーン幅方向Wに延びる長尺の部材である。
第2のピン4は、その一対の端部が上記各プーリのシーブ面に接触しないように、第1のピン3よりも短く形成されており、対をなす第1のピン3に対して、チェーン進行方向Xの前方に配置されている。
第2のピン4の周面18は、チェーン幅方向Wと平行に延びる滑らかな面とされており、チェーン進行方向Xとは反対の方向を向く対向部としての後部平坦部19を有している。後部平坦部19は、直交方向Vに関する第2のピン4の中間部に形成された、チェーン進行方向Xと直交する平坦面であり、対をなす第1のピン3の前部12と対向している。
チェーン1は、いわゆる圧入タイプのチェーンとされている。具体的には、各リンク2の前貫通孔9には、対応する第1のピン3が遊嵌されているとともに、対応する第2のピン4が圧入固定され、各リンク2の後貫通孔10には、対応する第1のピン3が圧入固定されているとともに、対応する第2のピン4が遊嵌されている。
上記の構成により、第1のピン3の前部12と対をなす第2のピン4の後部平坦部19とは、チェーン進行方向Xに隣接するリンク2間の屈曲に伴って移動する接触部T上で、互いに転がり摺動接触する。転がり摺動接触とは、転がり接触およびすべり接触の少なくとも一方を含む接触をいう。なお、各第1および第2のピン3,4は、対応する前貫通孔9および後貫通孔10に遊嵌されていてもよい。
前部12は、チェーン進行方向Xに凸となっている。具体的には、前部12のうち、チェーン1の直線領域における接触部T0に対して直交方向Vの一方V1側にある部分の断面形状が、インボリュート曲線とされている。また、前部12のうち、上記接触部T1に対して直交方向Vの他方V2側にある部分の断面形状は、滑らかな湾曲線を含んでいる。これにより、チェーン幅方向Wから見て、対応するリンク2間の屈曲に伴う接触部Tの移動軌跡は、第1のピン3を基準とするインボリュート曲線を含む。これにより、隣接するリンク2同士が屈曲する際に、対応する第1および第2のピン3,4が滑らかに転がり接触でき、リンク2同士の滑らかな屈曲を達成できる。その結果、チェーン1の弦振動的な運動を抑制できる。
図5(A)は、チェーン幅方向Wから見た第1および第2のピン3,4の側面図である。図5(A)を参照して、第1のピン3は、後部13に沿い且つチェーン幅方向Wとは直交する方向が、高さ方向K1とされている。高さ方向K1に関する第1のピン3の長さ(高さ)は、例えば、7mm程度とされている。
また、第1のピン3は、後部13とは直交する方向が厚み方向K2とされている。厚み方向K2に関する第1のピン3の長さ(厚み)は、例えば、3mm程度とされている。
凸湾曲部20は、端面17にクラウニング加工を施すことにより形成された、チェーン幅方向Wの外側に突出する面であり、全体が滑らかに凸湾曲している。
チェーン幅方向Wから見て、第1のピン3の凸湾曲部20は、高さ方向K1に沿ってクラウニング加工を施すとともに、厚み方向K2に沿ってクラウニング加工を施すことにより形成されている。
図2および図5(A)を参照して、凸湾曲部20は、頂部としての突出中心Mを有している。凸湾曲部20が各プーリ60,70の対応するシーブ面62a,63a,72a,73aにそれぞれ接触することで形成される接触領域21は、この突出中心Mを中心とした概ね楕円形形状となる。第1のピン3の接触領域21は、第1のピン3の外周縁部25を避けて配置されている。
図2を参照して、各プーリ60,70の有効半径D1,D2は、以下のようにして定義される。すなわち、ドライブプーリ60の有効半径D1は、ドライブプーリ60に挟持された第1のピン3の凸湾曲部20の突出中心Mと、ドライブプーリ60の中心軸線A1との間のプーリ60の径方向の距離として定義される。
同様に、ドリブンプーリ70の有効半径D2は、ドリブンプーリ70に挟持された第1のピン3の凸湾曲部20の突出中心Mと、ドリブンプーリ70の中心軸線A2との間のプーリ70の径方向の距離として定義される。
図6を参照して、チェーン1の屈曲領域において、チェーン進行方向Xに相隣接するリンク2は、互いに屈曲角θをなして屈曲している。屈曲角θは、第1の平面H1と、第2の平面H2とがなす角として定義される。
第1の平面H1は、屈曲領域の一のリンク2aの各貫通孔10,9のそれぞれに挿通された第1のピン3a,3bのそれぞれの突出中心Mを含み、且つチェーン幅方向Wと平行な平面をいう。
第2の平面H2は、上記リンク2aとチェーン進行方向Xに隣り合う他のリンク2bの各貫通孔10,9のそれぞれに挿通された、第1のピン3b,3cのそれぞれの突出中心Mを含み、且つチェーン幅方向Wと平行な平面をいう。
図7(A)に示すように、無段変速機100では、チェーン1のうちドライブプーリ60に噛み込んでいる屈曲領域としての第1の屈曲領域31と、チェーン1のうちドリブンプーリ70に噛み込んでいる屈曲領域としての第2の屈曲領域32とが形成されている。図7(A)では、第1および第2のピン3,4を誇張して拡大表示している。
無段変速機100が減速装置として機能しているときは、ドライブプーリ60の有効半径D1が相対的に小さく、ドリブンプーリ70の有効半径D2が相対的に大きいことから、ドライブプーリ60が相対的に小有効半径の第1のプーリとされ、ドリブンプーリ70が相対的に大有効半径の第2のプーリとされている。このとき、第1の屈曲領域31の屈曲角θは相対的に大きく、第2の屈曲領域32の屈曲角θは相対的に小さい。
なお、図7(A)は、ドライブプーリ60の有効半径D1が許容最小値とされるとともに、ドリブンプーリ70の有効半径D2が許容最大値とされていることにより、無段変速機100の減速比が最も大きい状態を示している。
チェーン1の第1のピン3がドライブプーリ60に噛み込むとき、すなわち、チェーン1が直線領域33から第1の屈曲領域31に移行するとき、第1のピン3の接触部Tは、図5(B)に示すように、接触部T0から第1の接触部T1に変位する。
図7(A)を参照して、同様に、チェーン1の第1のピン3がドリブンプーリ70に噛み込むとき、すなわち、チェーン1が直線領域34から第2の屈曲領域32に移行するとき、第1のピン3の接触部Tは、図5(C)に示すように、接触部T0から第2の接触部T2に変位する。
図5(A)を参照して、第1の接触部T1は、相対的に直交方向Vの一方V1(チェーン径方向外方側)に配置されており、第2の接触部T2は、相対的に直交方向Vの他方V2(チェーン径方向内方側)に配置されている。
本実施の形態の特徴の一つは、直交方向Vに関して、凸湾曲部20の突出中心Mが、第1の接触部T1の位置としての第1の位置S1、第2の接触部T2の位置としての第2の位置S2、または上記第1の位置S1と第2の位置S2との間に配置されている点にある。
より具体的には、チェーン幅方向Wから見て、突出中心Mは、チェーン進行方向Xに沿い且つ第1の接触部T1を通る第1の直線F1と、チェーン進行方向Xに沿い且つ第2の接触部T2を通る第2の直線F2と、端面17の外周縁部25とで区画された領域G内に配置されている。
直交方向Vに関して、突出中心Mは、第1および第2の直線F1,F2間の概ね中央部に配置されている。なお、直交方向Vに関して、突出中心Mは、第1および第2の直線F1,F2のうちの第2の直線F2寄りに配置されていてもよい。
チェーン進行方向Xに関して、突出中心Mは、第1のピン3の概ね中央部に配置されている。突出中心Mの位置は、接触領域21が端面17の外周縁部25に至らないように、すなわち、端面17の外周縁部25がプーリに接触するエッジ当たりが生じないように設定される。
以上より、図5(B)に示すように、第1の屈曲領域31における第1のピン3の突出中心Mと第1の接触部T1とは、直交方向Vに関して所定の第1の距離P1だけ離れて近接配置されている。このとき、チェーン幅方向Wから見て、第1の屈曲領域31の第1のピン3は、第1の接触部T1において第2のピン4から抗力としての第1の押圧力Q1を受けるとともに、凸湾曲部20が、ドライブプーリ60に強圧で接触して固定されている(図2および図5(B)参照)。その結果、チェーン幅方向Wから見て、第1の屈曲領域31の第1のピン3には、上記第1の押圧力Q1に起因する突出中心M回りのモーメントR1が生じるが、このモーメントR1のアーム長としての上記第1の距離P1は、直交方向Vにおける第1のピン3の長さに比して短いので、モーメントR1も小さい。
また、図5(C)に示すように、第2の屈曲領域32における第1のピン3の突出中心Mと第2の接触部T2とは、直交方向Vに関して所定の第2の距離P2だけ離れて近接配置されている。このとき、チェーン幅方向Wから見て、第2の屈曲領域32の第1のピン3は、第2の接触部T2において第2のピン4から抗力としての第2の押圧力Q2を受けるとともに、凸湾曲部20が、ドリブンプーリ70に強圧で接触して固定されている(図2および図5(C)参照)。その結果、チェーン幅方向Wから見て、第2の屈曲領域32の第1のピン3には、上記第2の押圧力Q2に起因する突出中心M回りのモーメントR2が生じるが、このモーメントR2のアーム長としての上記第2の距離P2は、直交方向Vにおける第1のピン3の高さに比して短いので、モーメントR2も小さい。
以上の次第で、本実施の形態によれば、第1のピン3がドライブプーリ60に噛み込むときの突出中心Mと第1の接触部T1とを直交方向Vに関して近接配置でき、且つ第1のピン3がドリブンプーリ70に噛み込むときの突出中心Mと第2の接触部T2とを直交方向Vに関して近接配置することができる。
これにより、第1のピン3がドライブプーリ60に噛み込むときの突出中心M回りのモーメントR1を小さくできる。また、第1のピン3がドリブンプーリ70に噛み込むときの突出中心M回りのモーメントR2を小さくできる。
その結果、第1のピン3の凸湾曲部20を、各プーリ60,70の双方に対して滑り難くできる。第1のピン3と対応するプーリ60,70とのそれぞれの滑りを抑制することにより、これら第1のピン3と対応するプーリ60,70とのそれぞれの連結の剛性を高くすることができる。
さらに、第1のピン3と対応するプーリ60,70とのそれぞれの間のがたつきの低減、および第1のピン3と対応するプーリ60,70とのそれぞれの係合音の低減を達成できる。さらには、各第1のピン3の凸湾曲部20の摩耗を抑制でき、チェーン1の実用上の耐久性を向上することができる。
以上の次第で、チェーン1と対応するプーリ60,70とのそれぞれの連結の剛性を向上できるとともに、チェーン1と対応するプーリ60,70とのそれぞれの間のがたつきを少なくでき、さらには静粛性および実用上の耐久性に優れた無段変速機100を実現できる。
また、直交方向Vに関して、突出中心Mを、有効半径D1,D2に拘わらず、常に、第1の位置S1、第2の位置S2、または第1の位置S1と第2の位置S2との間に配置することができる。これにより、有効半径D1,D2に拘わらず、すなわち、変速比に拘わらず、常に、チェーン1と対応するプーリ60,70とのそれぞれの、連結の剛性の向上およびがたつきの低減を達成できるとともに、静粛性および実用上の耐久性を極めて優れた状態に維持できる。
なお、図7(A)に示すように、無段変速機100が減速装置として機能している場合に則して説明したが、図7(B)に示すように、無段変速機100が増速装置として機能している場合も同様の構成が成立する。すなわち、無段変速機100が増速装置として機能している場合、ドライブプーリ60の有効半径D1が相対的に大きく、ドリブンプーリ70の有効半径D2が相対的に小さくなる。したがって、ドライブプーリ60が相対的に大有効半径の第2のプーリとなるとともに、ドリブンプーリ70が相対的に小有効半径の第1のプーリとなる。
車両用の無段変速機100は、一般的に、設計上、減速比の最大値が相対的に大きく、増速比の最大値が相対的に小さいことから、無段変速機100が減速装置として機能している場合を考慮して突出中心Mの配置を決定すればよい。
本発明は、以上の実施の形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、上記では、減速比が設計上の最大値であるときの第1および第2の接触部T1,T2を基準とする突出中心Mの配置を説明したが、これに限らない。例えば、任意の所定の変速比であるときの第1および第2の接触部T1,T2の位置S1,S2を基準として、突出中心Mの配置を設定する構成としてもよい。
また、ドライブプーリ60およびドリブンプーリ70の双方の溝幅が変動する態様に限定されるものではなく、何れか一方の溝幅のみが変動し、他方が変動しない固定幅にした態様であっても良い。また、上記では溝幅が連続的(無段階)に変動する態様について説明したが、段階的に変動したり、固定式(無変速)である等の他の動力伝達装置に適用しても良い。
本発明の一実施の形態に係る動力伝達チェーンを備える無段変速機の要部構成を模式的に示す斜視図である。 図1のドライブプーリ(ドリブンプーリ)およびチェーンの部分的な拡大断面図である。 チェーン1の要部の横断面図である。 チェーン1の直線領域の要部の縦断面図である。 (A)は、チェーン幅方向Wから見た第1および第2のピンの側面図であり、(B)は、第1の屈曲領域における第1および第2のピンの側面図であり、(C)は、第2の屈曲領域における第1および第2のピンの側面図である。 屈曲領域のチェーンの側面図である。 (A)は、無段変速機が減速装置として機能している状態を示す要部の模式図であり、(B)は、無段変速機が増速装置として機能している状態を示す要部の模式図である。
符号の説明
1…動力伝達チェーン、2…リンク、3…第1のピン(第1の動力伝達部材)、4…第2のピン(第2の動力伝達部材)、12…前部(第1の動力伝達部材の対向部)、17…端面、19…後部平坦部(第2の動力伝達部材の対向部)、20…凸湾曲部、21…接触領域、50…連結部材、60…ドライブプーリ(第1のプーリ)、62a,63a…シーブ面、70…ドリブンプーリ(第2のプーリ)、72a,73a…シーブ面、100…無段変速機(動力伝達装置)、D1,D2…有効半径、M…突出中心、S1…第1の位置、S2…第2の位置、T,T0,T1,T2…接触部、V…直交方向、W…チェーン幅方向、X…チェーン進行方向、θ…屈曲角。

Claims (3)

  1. 相対向する一対の円錐面状のシーブ面をそれぞれ有する相対的に小有効半径の第1のプーリおよび相対的に大有効半径の第2のプーリ間に巻き掛けられる動力伝達チェーンにおいて、
    チェーン進行方向に並ぶ複数のリンクと、チェーン進行方向とは直交するチェーン幅方向に延び複数のリンクを互いに屈曲可能に連結する複数の連結部材とを備え、
    上記連結部材は、対をなす第1および第2の動力伝達部材を含み、
    上記第1および第2の動力伝達部材は、互いに対向する対向部を有し、
    各上記対向部は、リンク間の屈曲角の変動に伴い変位する接触部で互いに転がり摺動接触し、
    上記第1の動力伝達部材は、上記シーブ面と接触したときに接触領域が形成される凸湾曲部を有する端面を含み、
    上記チェーン進行方向およびチェーン幅方向の双方と直交する直交方向に関して、上記凸湾曲部の突出中心は、当該動力伝達チェーンが上記第1のプーリに噛み込むときの上記接触部の位置としての第1の位置、当該動力伝達チェーンが上記第2のプーリに噛み込むときの上記接触部の位置としての第2の位置、または上記第1の位置と第2の位置との間に配置されていることを特徴とする動力伝達チェーン。
  2. 相対的に小有効半径の第1のプーリおよび相対的に大有効半径の第2のプーリと、これら第1および第2のプーリ間に巻き掛けられた請求項1記載の動力伝達チェーンとを備える動力伝達装置。
  3. 請求項2において、上記第1および第2のプーリは有効半径を変更可能な可変径プーリであり、
    上記チェーン進行方向およびチェーン幅方向の双方と直交する直交方向に関して、上記凸湾曲部の突出中心は、上記有効半径に拘わらず、常に、当該動力伝達チェーンが上記第1のプーリに噛み込むときの上記接触部の位置としての第1の位置、当該動力伝達チェーンが上記第2のプーリに噛み込むときの上記接触部の位置としての第2の位置、または上記第1の位置と第2の位置との間に配置されている動力伝達装置。
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