JP2009257466A - 動力伝達チェーンおよびこれを備える動力伝達装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】一対のプーリ間に巻き掛けられるチェーン1が、複数のリンク2を互いに連結する複数の連結部材50を備える。連結部材50の第1のピン3と第2のピン4とは、リンク2間の屈曲角の変動に伴い変位する接触部Tで互いに転がり摺動接触する。第1のピン3の端面17は、プーリのシーブ面と接触したときに接触領域21が形成される凸湾曲部20を有する。直交方向Vに関して、凸湾曲部20の突出中心Mは、チェーン1がドライブプーリに噛み込むときの第1の接触部T1の位置S1と、ドリブンプーリに噛み込むときの第2の接触部T2の位置S2との間に配置されている。
【選択図】図4
Description
ピンの一対の端面が凸湾曲状をなしてプーリのシーブ面に係合することにより、動力伝達チェーンとプーリとの間で動力が伝達される。
本発明によれば、第1の動力伝達部材が第1のプーリに噛み込むときの突出中心と接触部とを直交方向に関して近接配置でき、且つ第1の動力伝達部材が第2のプーリに噛み込むときの上記突出中心と接触部とを直交方向に関して近接配置することができる。これにより、第1の動力伝達部材が第1のプーリに噛み込むときの突出中心回りのモーメントを小さくでき、且つ、第1の動力伝達部材が第2のプーリに噛み込むときの突出中心回りのモーメントを小さくできる。その結果、第1の動力伝達部材の凸湾曲部を、第1および第2のプーリの双方に対して滑り難くできる。第1の動力伝達部材と対応する第1および第2のプーリとのそれぞれの滑りを抑制することにより、これら第1の動力伝達部材と対応する第1および第2のプーリとのそれぞれの連結の剛性を高くすることができる。さらに、第1の動力伝達部材と対応するプーリとのそれぞれの間のがたつきの低減、および第1の動力伝達部材と対応するプーリとのそれぞれの係合音の低減を達成できる。さらには、第1の動力伝達部材の凸湾曲部の摩耗を抑制でき、動力伝達チェーンの実用上の耐久性を向上することができる。
この場合、動力伝達チェーンと対応するプーリとのそれぞれの連結の剛性を向上できるとともに、動力伝達チェーンと対応するプーリとのそれぞれの間のがたつきを少なくでき、さらには静粛性および実用上の耐久性に優れた動力伝達装置を実現できる。
なお、上記において、括弧内の数字等は、後述する実施の形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
図1は、本発明の一実施の形態に係る動力伝達チェーンを備える動力伝達装置としてのチェーン式無段変速機(以下では、単に無段変速機ともいう)の要部構成を模式的に示す斜視図である。図1を参照して、無段変速機100は、自動車等の車両に搭載されるものであり、金属(構造用鋼等)製の可変径プーリとしてのドライブプーリ60と、金属(構造用鋼等)製の可変径プーリとしてのドリブンプーリ70と、これらの両プーリ60,70間に巻き掛けられた無端状の動力伝達チェーン1(以下では、単にチェーンともいう)とを備えている。なお、図1中のチェーン1は、理解を容易にするために一部断面を示している。
各シーブ面73a,72aは、ドリブンプーリ70の中心軸線A2に直交する第2の直交平面B2に対して傾斜しており、各シーブ面73a,72aの母線と上記第2の直交平面B2とのなす角度としてのプーリ半角Cは、例えば、11°に設定されている。ドライブプーリ60のプーリ半角Cとドリブンプーリ70のプーリ半角Cとは等しい。
図3および図4を参照して、チェーン1は、複数のリンク2と、これらのリンク2を互いに屈曲可能に連結する複数の連結部材50とを備えている。
また、直交方向Vの一方V1は、チェーン1が屈曲しているときにおけるチェーン径方向の外側を向く方向であり、直交方向Vの他方V2は、チェーン1が屈曲しているときにおけるチェーン径方向の内側を向く方向である。
チェーン進行方向Xに隣接するリンク2同士は、相対的にチェーン進行方向Xの上流側にあるリンク2の前貫通孔9と、相対的にチェーン進行方向Xの下流側にあるリンク2の後貫通孔10とが、チェーン幅方向Wに並んで互いに対応している。これら対応する貫通孔9,10を挿通する連結部材50によって、チェーン進行方向Xに隣り合うリンク2同士が屈曲可能に連結されており、全体として無端状をなすチェーン1が形成されている。
第1のピン3は、チェーン幅方向Wに延びる長尺の部材である。第1のピン3の外周部としての周面11は、チェーン幅方向Wと平行に延びる滑らかな面に形成されており、チェーン進行方向Xの前方を向く対向部としての前部12と、チェーン進行方向Xとは反対の方向を向く平坦な後面としての後部13と、直交方向Vに相対向する一対の端部としての一端部14および他端部15とを有している。
図2および図4を参照して、第1のピン3の長手方向の一対の端部16には、それぞれ、端面17が設けられている。各端面17は、チェーン幅方向Wの外側に向けて凸湾曲しており、直交方向Vの他方V2側を向いている。第1のピン3の周面11の一端部14は、他端部15よりもチェーン幅方向Wに幅広に形成されている。
第1のピン3が対応するプーリ60,70に噛み込むとき、端面17のうち接触領域21が、当該対応するプーリ60,70と接触する。すなわち、これらの接触領域21が、各プーリ60,70の対応するシーブ面62a,63a,72a,73aに薄膜状の潤滑油膜を介して摩擦接触(係合)する。
図3および図4を参照して、第2のピン4(ストリップ、またはインターピースともいう)は、第1のピン3と同様の材料により形成された、チェーン幅方向Wに延びる長尺の部材である。
第2のピン4の周面18は、チェーン幅方向Wと平行に延びる滑らかな面とされており、チェーン進行方向Xとは反対の方向を向く対向部としての後部平坦部19を有している。後部平坦部19は、直交方向Vに関する第2のピン4の中間部に形成された、チェーン進行方向Xと直交する平坦面であり、対をなす第1のピン3の前部12と対向している。
上記の構成により、第1のピン3の前部12と対をなす第2のピン4の後部平坦部19とは、チェーン進行方向Xに隣接するリンク2間の屈曲に伴って移動する接触部T上で、互いに転がり摺動接触する。転がり摺動接触とは、転がり接触およびすべり接触の少なくとも一方を含む接触をいう。なお、各第1および第2のピン3,4は、対応する前貫通孔9および後貫通孔10に遊嵌されていてもよい。
また、第1のピン3は、後部13とは直交する方向が厚み方向K2とされている。厚み方向K2に関する第1のピン3の長さ(厚み)は、例えば、3mm程度とされている。
チェーン幅方向Wから見て、第1のピン3の凸湾曲部20は、高さ方向K1に沿ってクラウニング加工を施すとともに、厚み方向K2に沿ってクラウニング加工を施すことにより形成されている。
同様に、ドリブンプーリ70の有効半径D2は、ドリブンプーリ70に挟持された第1のピン3の凸湾曲部20の突出中心Mと、ドリブンプーリ70の中心軸線A2との間のプーリ70の径方向の距離として定義される。
第1の平面H1は、屈曲領域の一のリンク2aの各貫通孔10,9のそれぞれに挿通された第1のピン3a,3bのそれぞれの突出中心Mを含み、且つチェーン幅方向Wと平行な平面をいう。
図7(A)に示すように、無段変速機100では、チェーン1のうちドライブプーリ60に噛み込んでいる屈曲領域としての第1の屈曲領域31と、チェーン1のうちドリブンプーリ70に噛み込んでいる屈曲領域としての第2の屈曲領域32とが形成されている。図7(A)では、第1および第2のピン3,4を誇張して拡大表示している。
チェーン1の第1のピン3がドライブプーリ60に噛み込むとき、すなわち、チェーン1が直線領域33から第1の屈曲領域31に移行するとき、第1のピン3の接触部Tは、図5(B)に示すように、接触部T0から第1の接触部T1に変位する。
図5(A)を参照して、第1の接触部T1は、相対的に直交方向Vの一方V1(チェーン径方向外方側)に配置されており、第2の接触部T2は、相対的に直交方向Vの他方V2(チェーン径方向内方側)に配置されている。
より具体的には、チェーン幅方向Wから見て、突出中心Mは、チェーン進行方向Xに沿い且つ第1の接触部T1を通る第1の直線F1と、チェーン進行方向Xに沿い且つ第2の接触部T2を通る第2の直線F2と、端面17の外周縁部25とで区画された領域G内に配置されている。
チェーン進行方向Xに関して、突出中心Mは、第1のピン3の概ね中央部に配置されている。突出中心Mの位置は、接触領域21が端面17の外周縁部25に至らないように、すなわち、端面17の外周縁部25がプーリに接触するエッジ当たりが生じないように設定される。
これにより、第1のピン3がドライブプーリ60に噛み込むときの突出中心M回りのモーメントR1を小さくできる。また、第1のピン3がドリブンプーリ70に噛み込むときの突出中心M回りのモーメントR2を小さくできる。
さらに、第1のピン3と対応するプーリ60,70とのそれぞれの間のがたつきの低減、および第1のピン3と対応するプーリ60,70とのそれぞれの係合音の低減を達成できる。さらには、各第1のピン3の凸湾曲部20の摩耗を抑制でき、チェーン1の実用上の耐久性を向上することができる。
また、直交方向Vに関して、突出中心Mを、有効半径D1,D2に拘わらず、常に、第1の位置S1、第2の位置S2、または第1の位置S1と第2の位置S2との間に配置することができる。これにより、有効半径D1,D2に拘わらず、すなわち、変速比に拘わらず、常に、チェーン1と対応するプーリ60,70とのそれぞれの、連結の剛性の向上およびがたつきの低減を達成できるとともに、静粛性および実用上の耐久性を極めて優れた状態に維持できる。
本発明は、以上の実施の形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、上記では、減速比が設計上の最大値であるときの第1および第2の接触部T1,T2を基準とする突出中心Mの配置を説明したが、これに限らない。例えば、任意の所定の変速比であるときの第1および第2の接触部T1,T2の位置S1,S2を基準として、突出中心Mの配置を設定する構成としてもよい。
Claims (3)
- 相対向する一対の円錐面状のシーブ面をそれぞれ有する相対的に小有効半径の第1のプーリおよび相対的に大有効半径の第2のプーリ間に巻き掛けられる動力伝達チェーンにおいて、
チェーン進行方向に並ぶ複数のリンクと、チェーン進行方向とは直交するチェーン幅方向に延び複数のリンクを互いに屈曲可能に連結する複数の連結部材とを備え、
上記連結部材は、対をなす第1および第2の動力伝達部材を含み、
上記第1および第2の動力伝達部材は、互いに対向する対向部を有し、
各上記対向部は、リンク間の屈曲角の変動に伴い変位する接触部で互いに転がり摺動接触し、
上記第1の動力伝達部材は、上記シーブ面と接触したときに接触領域が形成される凸湾曲部を有する端面を含み、
上記チェーン進行方向およびチェーン幅方向の双方と直交する直交方向に関して、上記凸湾曲部の突出中心は、当該動力伝達チェーンが上記第1のプーリに噛み込むときの上記接触部の位置としての第1の位置、当該動力伝達チェーンが上記第2のプーリに噛み込むときの上記接触部の位置としての第2の位置、または上記第1の位置と第2の位置との間に配置されていることを特徴とする動力伝達チェーン。 - 相対的に小有効半径の第1のプーリおよび相対的に大有効半径の第2のプーリと、これら第1および第2のプーリ間に巻き掛けられた請求項1記載の動力伝達チェーンとを備える動力伝達装置。
- 請求項2において、上記第1および第2のプーリは有効半径を変更可能な可変径プーリであり、
上記チェーン進行方向およびチェーン幅方向の双方と直交する直交方向に関して、上記凸湾曲部の突出中心は、上記有効半径に拘わらず、常に、当該動力伝達チェーンが上記第1のプーリに噛み込むときの上記接触部の位置としての第1の位置、当該動力伝達チェーンが上記第2のプーリに噛み込むときの上記接触部の位置としての第2の位置、または上記第1の位置と第2の位置との間に配置されている動力伝達装置。
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