JP5218804B2 - 動力伝達チェーンおよびこれを備える動力伝達装置 - Google Patents
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Description
上記のインボリュート曲線は、チェーンの直線領域におけるピンとインターピースとの接触部を起点としている。インボリュート曲線は、起点付近の曲率半径が小さく、ピンの側面のうちチェーンの直線領域において接触部を形成する部分の曲率半径が小さく、インターピースとの接触面積が小さい。
本発明は、かかる背景のもとでなされたもので、弦振動的運動を抑制できると共に許容伝達容量を大きくでき、且つ直線領域における挙動を安定することのできる動力伝達チェーンおよびこれを備える動力伝達装置を提供することを目的とする。
本発明によれば、屈曲角が零または零に近い状態において、所定の動力伝達部材の対向部のうち接触部を形成している部分の形状を、曲率半径の大きい円弧状に形成でき、接触部の面積を十分に確保できる。これにより、所定の動力伝達部材と対偶部材と間の許容伝達荷重を大きくでき、チェーンの許容伝達容量を大きくできる。また、屈曲角が零または零に近い状態において、所定の動力伝達部材と対偶部材との接触面積が大きいことにより、両者が面接触して安定して係合でき、所定の動力伝達部材が対偶部材に対して不用意に転がり運動することを抑制できる。チェーン直線領域における挙動を安定することができる。さらに、屈曲角が境界角より大きくなったときには、変化率増大部分が接触部を形成する。これにより、チェーンがプーリ等に噛み込まれる際のチェーンの弦振動的運動を抑制することができる。
また、本発明において、上記動力伝達チェーン(1)は、少なくとも所定の屈曲角(θ)をなした状態でプーリ(60,70)に巻き掛けられるようにされており、上記境界角(θ0)は、所定の屈曲角(θm)未満に設定される場合がある(請求項3)。この場合、チェーンがプーリに噛み込まれるときに変化率増大部分が接触部を形成でき、チェーンの弦振動的運動を確実に抑制できる。
x=−{R−Rcos(πθ/180)}
y=Rsin(πθ/180)
θ0<θのとき
x=−Rbsin(πθ/180)+Rb(πθ/180)cos(πθ/180)
−Ixp0+Irx0
y=Rbcos(πθ/180)+Rb(πθ/180)sin(πθ/180)
−Rb−Iyp0+Iry0
ただし、
θ0:境界角(deg)、
θ:屈曲角(deg)、
R:円弧状部の曲率半径(mm)、
Rb:変化率増大部分における接触部の投影点の軌跡に関する基礎円の半径(mm)、
Irx0:−{R−Rcos(πθ0/180)}、
Iry0:Rsin(πθ0/180)、
Ixp0:−Rbsin(πθ0/180)+Rb(πθ0/180)cos(πθ0
/180)、
Iyp0:Rbcos(πθ0/180)+Rb(πθ0/180)sin(πθ0/
180)−Rb。
また、本発明において、相対向する一対の円錐面状のシーブ面(62a,63a,72a,73a)をそれぞれ有する第1および第2のプーリ(60,70)と、これらのプーリ(60,70)間に巻き掛けられ、シーブ面(62a,63a,72a,73a)に係合して動力を伝達する上記の動力伝達チェーン(1)とを備える場合がある(請求項5)。この場合、振動が少なくて静粛性に優れると共に許容伝達容量の大きい動力伝達装置を実現することができる。
図1は、本発明の一実施の形態に係る動力伝達チェーンを備える動力伝達装置としてのチェーン式無段変速機(以下では、単に無段変速機ともいう)の要部構成を模式的に示す斜視図である。図1を参照して、無段変速機100は、自動車等の車両に搭載されるものであり、第1のプーリとしての金属(構造用鋼等)製のドライブプーリ60と、第2のプーリとしての金属(構造用鋼等)製のドリブンプーリ70と、これらの両プーリ60,70間に巻き掛けられた無端状の動力伝達チェーン1(以下では、単にチェーンともいう)とを備えている。なお、図1中のチェーン1は、理解を容易にするために一部断面を示している。
ドリブンプーリ70の可動シーブ72には、ドライブプーリ60の可動シーブ63と同様に油圧アクチュエータ(図示せず)が接続されており、変速時に、この可動シーブ72を移動させることにより溝幅を変化させるようになっている。それにより、チェーン1を移動させて、プーリ70のチェーン1に関する有効半径r(以下、プーリ70の有効半径rともいう)を、最大値r2(図3(A)参照)から最小値r1(図3(B)参照)までの間で変更できるようになっている。
一方、無段変速機100の増速比が最も高い場合(オーバードライブ時)には、図3(B)に示すように、ドライブプーリ60の有効半径rが最大値r2とされ、ドリブンプーリ70の有効半径rが最小値r1とされる。
以下では、図5を参照して説明するときは、チェーン幅方向からみたときのチェーン1の直線領域を基準として説明し、図6または図7を参照して説明するときは、チェーン幅方向からみたときのチェーン1の屈曲領域を基準として説明する。
以下では、チェーン1の進行方向に平行な方向をチェーン進行方向Xといい、チェーン進行方向Xに直交する方向のうち連結部材50の長手方向に平行な方向をチェーン幅方向Wといい、チェーン進行方向Xおよびチェーン幅方向Wの双方に直交する方向を直交方向Vという。直交方向Vは、チェーン1の径方向に相当する。
前部12は、断面形状が滑らかな曲線に形成されて、対をなす第2のピン4と対向しており、この第2のピン4と接触部Tで転がり摺動接触している。前部12は、第1のピン3のうち対をなす第2のピン4と接触し得る部分といえる。チェーン1の直線領域における接触部T1は、前部12のうち、チェーン内径側寄りに配置されている。後部13は、平坦面に形成されており、チェーン進行方向Xと直交する所定の平面Aに対して、所定の傾斜角Bを有している。
図2および図6を参照して、一対の端面17は、チェーン幅方向Wに相対向しており、互いに対称な形状を有している。これらの端面17は、各プーリ60,70の対応するシーブ面62a,63a,72a,73aに潤滑油膜を介して摩擦接触(係合)するためのものである。
第1のピン3の端面17は、チェーン幅方向Wの外側に凸湾曲しており、チェーン内径側を向いている。端面17は、その接触領域24が各プーリ60,70と接触する。接触領域24は、チェーン幅方向Wからみて、例えば、楕円形形状をなしており、図心としての接触中心点Cを有している。チェーン幅方向Wからみて、接触中心点Cの位置は、例えば、端面17の図心の位置と一致している。
同様に、ドリブンプーリ70の有効半径rは、ドリブンプーリ70に挟持された第1のピン3の動力伝達面17の接触中心点Cと、ドリブンプーリ70の中心軸線E2との間のプーリ70の径方向の距離として定義される。
この迎え角Fは、例えば、第1のピン3の後部13の傾斜角B(図5参照)と等しくされている(F=B)。なお、F≠Bでもよい。
第2のピン4は、上記各プーリのシーブ面に接触しないように、第1のピン3よりも短く形成されている。第2のピン4の周面18は、チェーン幅方向Wに延びており、チェーン進行方向Xの後方を向く対向部としての後部19を有している。
チェーン1は、いわゆる圧入タイプのチェーンとされている。具体的には、各リンク2の前貫通孔9に、対応する第1のピン3が相対移動可能に遊嵌されていると共に、対応する第2のピン4が圧入固定され、各リンク2の後貫通孔10に、対応する第1のピン3が圧入固定されていると共に、対応する第2のピン4が相対移動可能に遊嵌されている。
図6を参照して、チェーン1の屈曲領域において、チェーン進行方向Xに相隣接するリンク2は、互いに屈曲角θをなして屈曲している。屈曲角θは、第1の平面H1と、第2の平面H2とがなす角として定義される。
第2の平面H2は、上記リンク2aとチェーン進行方向Xに隣り合う他のリンク2bの各貫通孔9,10のそれぞれに挿通された、第1のピン3b,3cのそれぞれの接触中心点Cを含み、且つチェーン幅方向Wと平行な平面をいう。
具体的には、図3(A)および図6を参照して、無段変速機100の減速比が最も大きいアンダードライブ時において、ドリブンプーリ70に係合するチェーン1の屈曲領域21における屈曲角θが、所定の屈曲角θmとなる。図3(B)および図6を参照して、同様に、無段変速機100の増速比が最も大きいオーバードライブ時において、ドライブプーリ60に係合するチェーン1の屈曲領域21における屈曲角θが、所定の屈曲角θmとなる。
すなわち、曲率半径Rは、後述する予張工程においてチェーン1に所定の引っ張り荷重が付与されたときに、円弧状部22と対応する第2のピン4の後部19との接触により後部19に圧痕がつかない程度の低い接触圧となるように大きく、且つ、円弧状部22における単位屈曲角(屈曲角1°)あたりの接触部Tの変位量が過大とならないように小さく設定される。具体的には、曲率半径Rは、2mm〜5mmの範囲に設定される。本実施の形態において、曲率半径Rは、3mmに設定されている。
上記の構成により、円弧状部22において、屈曲角θの変化に対する接触部Tの変位量の変化率は零である。チェーン幅方向Wからみて、円弧状部22の曲率中心Kは、チェーン直線領域における接触部T1を含み且つ直交方向Vと直交する平面L上に位置している。これにより、チェーン幅方向Wからみて、円弧状部22は、上記平面Lを中心とする線対称形状を有している。
θ0≧θのとき
x=−{R−Rcos(πθ/180)}・・・・・(1)
y=Rsin(πθ/180)・・・・・・・・・・(2)
θ0<θのとき
x=−Rbsin(πθ/180)+Rb(πθ/180)cos(πθ/180)
−Ixp0+Irx0・・・・・・・・・・・・(3)
y=Rbcos(πθ/180)+Rb(πθ/180)sin(πθ/180)
−Rb−Iyp0+Iry0・・・・・・・・・(4)
ただし、
θ0:境界角(deg)、
θ:屈曲角(deg)、
R:円弧状部22の曲率半径(mm)、
Rb:変化率増大部分23における接触部Tの投影点の軌跡に関する基礎円Mの半径(mm)、
Irx0:−{R−Rcos(πθ0/180)}・・(5)、
Iry0:Rsin(πθ0/180)・・・・・・・(6)、
Ixp0:−Rbsin(πθ0/180)+Rb(πθ0/180)cos(πθ0
/180)・・・・・・・・・・・・・・・(7)、
Iyp0:Rbcos(πθ0/180)+Rb(πθ0/180)sin(πθ0/
180)−Rb・・・・・・・・・・・・・(8)。
上記式(1)、(2)は、境界角θ0≧屈曲角θ(負の屈曲角θを含む)のときの接触部Tの投影点の軌跡を示しており、この軌跡は、投影平面Sに円弧状部22を投影したときの形状と合致する。屈曲角θが境界角θ0となるときのx座標、y座標(Irx0,Iry0)は、それぞれ、上記式(1)、(2)にθ=θ0を代入して、上記式(5)、(6)となる。
図10は、変化率増大部分23のインボリュート曲線INVについて説明するための図である。図10を参照して、投影平面Sにおいて、変化率増大部分23のインボリュート曲線INVの投影線は、原点0を起点とする仮想のインボリュート曲線INVsの投影線の起点側の一部(2点鎖線で示す部分)を削除し、残りの部分(実線で示す部分)を、円弧状部22のチェーン外径側部24の一端部24aの投影点に接続されるように移動したものに相当する。
Ixp=−Rbsin(πθ/180)+Rb(πθ/180)cos(πθ/180)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(9)
Iyp=Rbcos(πθ/180)+Rb(πθ/180)sin(πθ/180)−Rb・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(10)
仮想のインボリュート曲線INVsに関する基礎円Msの投影線は、半径Rbを有する円である。上記式(9)、(10)より、θ=θ0のときの仮想のインボリュート曲線INVsの投影点の座標(Ixp0,Iyp0)は、それぞれ、上記式(7)、(8)となる。
仮想のインボリュート曲線INVsをインボリュート曲線INVに合致させるためのx方向に関する仮想のインボリュート曲線INVsの移動量は、図10より、−Ixp0+Irx0となり、y方向に関する移動量は、−Iyp0+Iry0となる。
x=(仮想のインボリュート曲線INVsの投影線のx座標)−Ixp0+Irx0
=Ixp−Ixp0+Irx0
={−Rbsin(πθ/180)+Rb(πθ/180)cos(πθ/180)}−Ixp0+Irx0
、すなわち式(3)となる。
y=(仮想のインボリュート曲線INVsの投影線のy座標)−Iyp0+Iry0
=Iyp−Iyp0+Iry0
={Rbcos(πθ/180)+Rb(πθ/180)sin(πθ/180)−Rb}−Iyp0+Iry0
、すなわち式(4)となる。
円弧状部22が接触部Tを形成しているときにおいて、原点0(接触部T1)から接触部Tまでの、前部12に沿っての距離Lsr(mm)は、下記式(11)で表される。
Lsr=R(π×|θ|/180)・・・・・(11)
原点0からチェーン外径側部24の一端部24aにおける接触部Tまでの距離Lsr0は、
Lsr0=R(πθ0/180)・・・・・・(12)
となる。
Ls=0.5Rb(πθ/180)2−Ls0+Lsr0・・・(13)
ただし、0.5Rb(πθ/180)2:仮想のインボリュート曲線INVsに沿っての原点0からの距離、
Ls0:θ=θ0の位置における、仮想のインボリュート曲線INVsに沿っての原点0からの距離であって、Ls0=0.5Rb(πθ0/180)2で表される。
さらに、屈曲角θが境界角θ0より大きくなったときには、変化率増大部分23が接触部Tを形成する。これにより、チェーン1が各プーリ60,70に噛み込まれる際のチェーン1の弦振動的運動を抑制することができる。
また、チェーン1は、少なくとも所定の屈曲角θmをなした状態で各プーリ60,70に巻き掛けられるようにされており、境界角θ0は、所定の屈曲角θm未満に設定されている。これにより、チェーン1が各プーリ60,70に噛み込まれるときに変化率増大部分23が接触部Tを形成でき、チェーン1の弦振動的運動を確実に抑制できる。
また、円弧状部22の断面形状が、チェーン直線領域における接触部T1を含む平面Lであって直交方向Vと直交する平面Lを中心とする対称形状を含んでいる。これにより、円弧状部22が接触部Tを形成する場合において、屈曲角θが零の状態から正の状態に移行したときの第1および第2のピン3,4の相対運動と、屈曲角θが零の状態から負の状態に移行したときの第1および第2のピン3,4の相対運動とを、互いに同様なものにすることができる。その結果、屈曲角θが零に近いときのチェーン1の挙動をより安定することができる。
これにより、各第1のピン3の各端面17が各プーリ60,70の対応するシーブ面62a,63a,72a,73aに接触する際、対をなす第2のピン4が、上記第1のピン3に対して転がり摺動接触することにより、リンク2同士の屈曲が可能とされている。
このように、振動が少なくて静粛性、耐久性および伝動効率に優れ、且つ許容伝達容量の大きい無段変速機100を実現することができる。
さらに、第1のピンの一対の端部のそれぞれの近傍に、第1のピンの端面と同様の動力伝達部を有する部材が配置された、いわゆるブロックタイプの動力伝達チェーンに本発明を適用してもよい。
Claims (5)
- チェーン進行方向に並ぶ複数のリンクと、
複数のリンクを互いに屈曲可能に連結する複数の連結部材とを備え、
連結部材は、隣接して配置される対偶部材に対向する対向部を有する所定の動力伝達部材を含み、
上記対向部は、対偶部材に対して、リンク間の屈曲に伴って変位する接触部で転がり摺動接触し、
チェーン進行方向とは直交するチェーン幅方向からみて、上記対向部は、所定の曲率半径を有する円弧状部と、リンク間の屈曲角の増大に応じて接触部の変位量の変化率が増大する変化率増大部分とを含み、
円弧状部は、屈曲角が零以上且つ正の所定の境界角以下のときに接触部を形成する部分と、動力伝達チェーンが正規の屈曲方向とは反対の方向に屈曲されて屈曲角が負となるときに接触部を形成する部分とを含み、変化率増大部分は、屈曲角が上記正の所定の境界角より大きいときに接触部を形成することを特徴とする動力伝達チェーン。 - 請求項1において、上記変化率増大部分は、インボリュート曲線を含むことを特徴とする動力伝達チェーン。
- 請求項1または2において、上記動力伝達チェーンは、少なくとも所定の屈曲角をなした状態でプーリに巻き掛けられるようにされており、上記境界角は、所定の屈曲角未満に設定されることを特徴とする動力伝達チェーン。
- 請求項1〜3の何れか1項において、上記所定の動力伝達部材をチェーン幅方向と直交する投影平面に投影し、チェーン進行方向に沿う方向をx方向とするとともに、チェーン進行方向およびチェーン幅方向の双方に直交する直交方向に沿う方向をy方向としたときの、投影平面内における接触部の投影点の軌跡は、チェーン直線領域での接触部の投影点を原点として下記式で示されることを特徴とする動力伝達チェーン。
θ0≧θのとき
x=−{R−Rcos(πθ/180)}
y=Rsin(πθ/180)
θ0<θのとき
x=−Rbsin(πθ/180)+Rb(πθ/180)cos(πθ/180)
−Ixp0+Irx0
y=Rbcos(πθ/180)+Rb(πθ/180)sin(πθ/180)
−Rb−Iyp0+Iry0
ただし、
θ0:境界角(deg)、
θ:屈曲角(deg)、
R:円弧状部の曲率半径(mm)、
Rb:変化率増大部分における接触部の投影点の軌跡に関する基礎円の半径(mm)、
Irx0:−{R−Rcos(πθ0/180)}、
Iry0:Rsin(πθ0/180)、
Ixp0:−Rbsin(πθ0/180)+Rb(πθ0/180)cos(πθ0
/180)、
Iyp0:Rbcos(πθ0/180)+Rb(πθ0/180)sin(πθ0/
180)−Rb。 - 相対向する一対の円錐面状のシーブ面をそれぞれ有する第1および第2のプーリと、これらのプーリ間に巻き掛けられ、シーブ面に係合して動力を伝達する請求項1〜4の何れか1項に記載の動力伝達チェーンとを備えることを特徴とする動力伝達装置。
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