JP5019128B2 - 動力伝達チェーンおよびこれを備える動力伝達装置、ならびに動力伝達チェーンの製造方法 - Google Patents
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ピンの一対の端面がプーリのシーブ面に係合することにより、動力伝達チェーンとプーリとの間で動力が伝達される。
本発明は、かかる背景のもとでなされたもので、摩耗が生じ難く、しかも摩耗を抑制するための設計変更を容易に行える動力伝達チェーンおよびこれを備える動力伝達装置、ならびに動力伝達チェーンの製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明において、相対向する一対の円錐面状のシーブ面をそれぞれ有する第1および第2のプーリ(60,70)と、これらのプーリ間に巻き掛けられ、シーブ面に係合して動力を伝達する上記の動力伝達チェーンとを備える場合がある(請求項2)。
また、本発明は、チェーン進行方向に並ぶ複数のリンクと、チェーン進行方向とは直交するチェーン幅方向に延び、複数のリンクを互いに連結する複数の連結部材とを備え、上記連結部材は、プーリのシーブ面に動力伝達可能に接触する端面を有する長尺の動力伝達部材を含み、上記動力伝達部材は、チェーン幅方向に沿って延び且つチェーン進行方向とは反対の方向を向く平坦な後面を含み、上記端面には、上記動力伝達部材がプーリに噛み込むときに上記端面とプーリとの間に楕円形状の接触領域を形成するための凸湾曲部が形成される動力伝達チェーンの製造方法において、チェーン直線領域でのリンクに対する動力伝達部材の外周部(11)の位置を変化させることなく、プーリに対する動力伝達部材の進入角度の大きさに応じて、チェーン直線領域での動力伝達部材をチェーン幅方向から見たときの上記凸湾曲部の上記接触領域の長手方向に沿う主方向の向きを変化させることを特徴とする動力伝達チェーンの製造方法を提供するものである(請求項3)。
これに対し、本発明によれば、研削等によって形成される端面の形状を変更するというわずかな変更作業で、動力伝達部材の進入角度の変更に応じて端面形状を最適化できる。したがって、動力伝達部材が所定の進入角度を持ってプーリに噛み込まれたときに、端面のうち接触領域が形成される部分の面積を十分に確保するための設計変更作業が、簡易で済む。このように、簡易な作業で、動力伝達部材の進入角度に応じて、端面に十分な面積の接触領域を形成できることから、端面の外周縁部にプーリのシーブ面が接触するエッジ当たりを防止でき、端面の局所的な摩耗を防止して実用上の耐久性を十分に確保できる。
図1は、本発明の一実施の形態に係る動力伝達チェーンを備える動力伝達装置としてのチェーン式無段変速機(以下では、単に無段変速機ともいう)の要部構成を模式的に示す斜視図である。図1を参照して、無段変速機100は、自動車等の車両に搭載されるものであり、第1のプーリとしての金属(構造用鋼等)製のドライブプーリ60と、第2のプーリとしての金属(構造用鋼等)製のドリブンプーリ70と、これらの両プーリ60,70間に巻き掛けられた無端状の動力伝達チェーン1(以下では、単にチェーンともいう)とを備えている。なお、図1中のチェーン1は、理解を容易にするために一部断面を示している。
各シーブ面73a,72aは、ドリブンプーリ70の中心軸線A2に直交する第2の直交平面B2に対して傾斜しており、各シーブ面73a,72aの母線と上記第2の直交平面B2とのなす角度としてのプーリ半角Cは、例えば、11°に設定されている。ドライブプーリ60のプーリ半角Cとドリブンプーリ70のプーリ半角Cとは等しい。
図3および図4を参照して、チェーン1は、複数のリンク2と、これらのリンク2を互いに屈曲可能に連結する複数の連結部材50とを備えている。
また、直交方向Vの一方V1は、チェーン1が屈曲しているときにおけるチェーン径方向の外側を向く方向であり、直交方向Vの他方V2は、チェーン1が屈曲しているときにおけるチェーン径方向の内側を向く方向である。
チェーン進行方向Xに隣接するリンク2同士は、相対的にチェーン進行方向Xの上流側にあるリンク2の前貫通孔9と、相対的にチェーン進行方向Xの下流側にあるリンク2の後貫通孔10とが、チェーン幅方向Wに並んで互いに対応している。これら対応する貫通孔9,10を挿通する連結部材50によって、チェーン進行方向Xに隣り合うリンク2同士が屈曲可能に連結されており、全体として無端状をなすチェーン1が形成されている。
第1のピン3は、チェーン幅方向Wに延びる長尺の部材である。第1のピン3の外周部としての周面11は、チェーン幅方向Wと平行に延びる滑らかな面に形成されており、チェーン進行方向Xの前方を向く対向部としての前部12と、チェーン進行方向Xとは反対の方向を向く平坦な後面としての後部13と、直交方向Vに相対向する一対の端部としての一端部14および他端部15とを有している。
各端面17には、凸湾曲部20が形成されている。凸湾曲部20は、接触領域21が形成される部分であり、対応する端面17の少なくとも一部(本実施の形態において、全域)に形成されている。
第1のピン3は、上記対応するシーブ面62a,63a,72a,73a間に挟持され、これにより、第1のピン3と各プーリ60,70との間で動力が伝達される。第1のピン3は、その端面17の凸湾曲部20が直接動力伝達に寄与するため、例えば、軸受用鋼(SUJ2)等の、高強度且つ耐摩耗性に優れた材料で形成されている。
第2のピン4は、その一対の端部が上記各プーリのシーブ面に接触しないように、第1のピン3よりも短く形成されており、対をなす第1のピン3に対して、チェーン進行方向Xの前方に配置されている。
チェーン1は、いわゆる圧入タイプのチェーンとされている。具体的には、各リンク2の前貫通孔9には、対応する第1のピン3が遊嵌されているとともに、対応する第2のピン4が圧入固定され、各リンク2の後貫通孔10には、対応する第1のピン3が圧入固定されているとともに、対応する第2のピン4が遊嵌されている。
図5(A)は、チェーン幅方向Wから見た第1のピン3の側面図であり、図5(B)は、図5(A)のVB−VB線に沿う断面図であり、図5(C)は、図5(A)のVC−VC線に沿う断面図である。
また、第1のピン3は、後部13に沿い且つチェーン幅方向Wとは直交する方向が、高さ方向K1とされている。高さ方向K1に関する第1のピン3の長さ(高さ)は、例えば、7mm程度とされている。
本実施の形態の特徴の1つとして、第1のピン3をチェーン幅方向Wからみたとき、凸湾曲部20は、下記の条件1)および2)を満たす中心Mおよび第1の主方向N1を有している点にある。
上記した、厚み方向K2に関する端面17の中心とは、厚み方向K2に関する第1のピン3の最大幅部22の中心を通り後部13と平行な位置をいう。また、高さ方向K1に関する端面17の中心とは、高さ方向K1に関する最大幅部23の中心を通り後部13と直交する位置をいう。
チェーン幅方向Wから見て、第1の主方向N1が後部13(高さ方向K1)に対してなす所定の傾斜角度Pは、例えば、0°より大きく、且つ15°以下とされている。15°以下とすることにより、凸湾曲部20の現実的なレイアウトを実現できる。傾斜角度Pの上限は、10°であることが好ましい。
図5(A)を参照して、本実施の形態において、第2の主方向N2は、チェーン進行方向Xに進むに従い直交方向Xの一方V1側に進む方向となっている。なお、図5(C)は、第2の主方向N2に沿い且つチェーン幅方向Wとは平行な第2の平行平面Q2に沿って第1のピン3を切断した断面図である。
同様に、ドリブンプーリ70の有効半径D2は、ドリブンプーリ70に挟持された第1のピン3の端面17の凸湾曲部20の中心Mと、ドリブンプーリ70の中心軸線A2との間のプーリ70の径方向の距離として定義される。
図6(A)を参照して、無段変速機100の減速比が最も高い場合(アンダードライブ時)には、ドライブプーリ60の有効半径D1が最小値とされ、ドリブンプーリ70の有効半径D2が最大値とされる。無段変速機100で減速が行われる場合、有効半径D1が相対的に小さく、有効半径D2が相対的に大きい。
図6(C)を参照して、無段変速機100の増速比が最も高い場合(オーバードライブ時)には、ドライブプーリ60の有効半径D1が最大値とされ、ドリブンプーリ70の有効半径D2が最小値とされる。無段変速機100で増速が行われる場合、有効半径D1が相対的に大きく、有効半径D2が相対的に小さい。
チェーン1は、所定の進入角度Zで、ドライブプーリ60に噛み込まれる。このときの進入角度Zは、例えば、2つの平面α1,α2がなす角度として定義される。一方の平面α1は、各プーリ60,70の中心軸線A1,A2を含む平面である。他方の平面α2は、一方のチェーン直線領域Y1における、各第1のピン3の凸湾曲部20の中心Mを含む平面である。
本実施の形態では、アンダードライブ時の進入角度Zの絶対値が相対的に大きく、オーバードライブ時の進入角度Zの絶対値が相対的に小さい。よって、進入角度Zの絶対値の最大値は、正側のほうが負側よりも大きい。このため、進入角度Zが正側となるアンダードライブ時を基準として端面17の凸湾曲部20の形状が決定される。具体的には、図7を参照して、上記したように、凸湾曲部20の第1の主方向N1が、チェーン進行方向Xに進むに従い、直交方向Vの他方V2(チェーン内径側)に進むようにする。
図4および図9を参照して、傾斜角度Pを適宜設定することにより、チェーン幅方向Wから見たときの各凸湾曲部20,20Aの第1および第2の主方向N1,N2;N1A,N2Aの向きを変化することができる。なお、傾斜角度Pを変更する場合でも、チェーン直線領域Y1,Y1Aでのリンク2に対する第1のピン3,3Aの周面11の位置を変化させることはしない。
そして、ドリブンプーリ70とドライブプーリ60との間で変速が行われる場合には、各第1のピン3,3Aは、所定の進入角度Zを持ってドライブプーリ60に噛み込まれる。その結果、各第1のピン3,3Aの端面17,17Aのうち、端面17,17Aの外周縁部25(エッジ)の近傍に接触領域21,21Aが形成され易い傾向となる。
その結果、第1のピン3,3Aが進入角度Zを持ってドライブプーリ60に噛み込まれたときに、端面17,17Aのうち接触領域21,21Aが形成される部分を端面17,17Aの中心近傍に配置できるとともに、接触領域21,21Aの面積を十分に確保することができる。これにより、端面17,17Aの外周縁部25にドライブプーリ60のシーブ面62a,63aが接触するエッジ当たりを防止できる。したがって、各端面17,17Aの局所的な摩耗やドライブプーリ60に対するスリップを防止して実用上の耐久性を十分に確保できる。ドライブプーリ60のシーブ面62a,63aの摩耗も抑制でき、ドライブプーリ60の実用上の耐久性も向上できる。しかも、エッジ当たりの防止により、各第1のピン3,3Aがドライブプーリ60に接触するときの接触音を低減して騒音を低減できる。
以上より、実用上の耐久性および静粛性に優れ、さらにはドライブプーリ60への第1のピン3,3Aの進入角度Zの変更に応じた第1のピン3,3Aの設計変更を容易に行うことのできる無段変速機100を実現できる。
これに対し、本実施の形態では、クラウニング加工等の研削等によって形成される端面17,17Aの互いの形状を変更するというわずかな変更作業で、ドライブプーリ60への第1のピン3,3Aの進入角度Zの変更に応じて端面17,17Aの形状を最適化できる。したがって、各第1のピン3,3Aが進入角度Zを持ってドライブプーリ60に噛み込まれたときに、端面17,17Aのうち接触領域21,21Aが形成される部分の面積を十分に確保するための設計変更作業が、簡易で済む。このように、簡易な作業で、進入角度Zに応じて各端面17,17Aに十分な面積の接触領域21,21Aを形成できることから、端面17,17Aの外周縁部25にドライブプーリ60のシーブ面62a,63aが接触するエッジ当たりを防止でき、端面17,17Aの局所的な摩耗を防止して実用上の耐久性を十分に確保できる。
さらに、ドライブプーリ60およびドリブンプーリ70の双方の溝幅が変動する態様に限定されるものではなく、何れか一方の溝幅のみが変動し、他方が変動しない固定幅にした態様であっても良い。また、上記では溝幅が連続的(無段階)に変動する態様について説明したが、段階的に変動したり、固定式(無変速)である等の他の動力伝達装置に適用しても良い。
Claims (3)
- チェーン進行方向に並ぶ複数のリンクと、
チェーン進行方向とは直交するチェーン幅方向に延び、複数のリンクを互いに連結する複数の連結部材とを備え、
上記連結部材は、プーリのシーブ面に動力伝達可能に接触する端面を有する長尺の動力伝達部材を含み、
上記動力伝達部材は、チェーン幅方向に沿って延び且つチェーン進行方向とは反対の方向を向く平坦な後面を含み、
上記端面には、上記動力伝達部材がプーリに噛み込むときに上記端面とプーリとの間に楕円形状の接触領域を形成するための凸湾曲部が形成され、
上記動力伝達部材をチェーン幅方向から見たときに、上記凸湾曲部は、下記の条件1)および2)を満たす中心および上記接触領域の長手方向に沿う主方向を有していることを特徴とする動力伝達チェーン。
1)上記後面とは直交する方向を動力伝達部材の厚み方向とし、上記後面に沿い且つ上記チェーン幅方向とは直交する方向を動力伝達部材の高さ方向として、上記凸湾曲部の上記中心は、動力伝達部材の厚み中心および高さ中心の双方に一致する位置またはこの位置の近傍に配置されている。
2)上記動力伝達チェーンをチェーン幅方向から見たときに、上記凸湾曲部の上記主方向は、上記後面に対して、上記プーリに対する動力伝達部材の進入角度の大きさに応じて設定された所定の傾斜角度で傾斜している。 - 相対向する一対の円錐面状のシーブ面をそれぞれ有する第1および第2のプーリと、これらのプーリ間に巻き掛けられ、シーブ面に係合して動力を伝達する請求項1に記載の動力伝達チェーンとを備えることを特徴とする動力伝達装置。
- チェーン進行方向に並ぶ複数のリンクと、チェーン進行方向とは直交するチェーン幅方向に延び、複数のリンクを互いに連結する複数の連結部材とを備え、上記連結部材は、プーリのシーブ面に動力伝達可能に接触する端面を有する長尺の動力伝達部材を含み、 上記動力伝達部材は、チェーン幅方向に沿って延び且つチェーン進行方向とは反対の方向を向く平坦な後面を含み、上記端面には、上記動力伝達部材がプーリに噛み込むときに上記端面とプーリとの間に楕円形状の接触領域を形成するための凸湾曲部が形成される動力伝達チェーンの製造方法において、
チェーン直線領域でのリンクに対する動力伝達部材の外周部の位置を変化させることなく、プーリに対する動力伝達部材の進入角度の大きさに応じて、チェーン直線領域での動力伝達部材をチェーン幅方向から見たときの上記凸湾曲部の上記接触領域の長手方向に沿う主方向の向きを変化させることを特徴とする動力伝達チェーンの製造方法。
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