JP2009216862A - 発光装置用光取り出し層、およびそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

発光装置用光取り出し層、およびそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子 Download PDF

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Abstract

【課題】高効率な光取り出し層、および光取り出し効率に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子の提供。
【解決手段】本発明による光取り出し層は
反射層と、前記反射層上に形成された3次元回折層とを具備してなる。ここで、前記3次元回折層は、変動係数が10%以下の微粒子と、前記微粒子と屈折率の異なるマトリックスからなり、前記微粒子の3次元回折層の体積に対する体積分率が50%以上であり、前記微粒子が配列して短距離周期性を有する第一の領域を形成し、さらにその第一の領域がランダムな向きで隣接して集合した第二の領域を形成している。さらに本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子は前記の光取り出し層を具備してなるものである。
【選択図】図1

Description

本発明は高効率な発光装置用反射板、およびそれを用いた光取り出し効率に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子に関するものである。
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ということがある)は、一般に発光部の屈折率は約2.0であり、空気の屈折率が1.0であることから、素子界面で全反射角が存在し、発光した光の約80%が素子内を導波し、外部に取り出すことができない(非特許文献1)。この導波光を、新たに設けた光取り出し層によって素子の外部に取り出すことで、有機EL素子の高効率化が可能となる。この閉じ込め光は、有機EL素子に限らず、液晶ディスプレイや、照明装置など、空気よりも屈折率の高い部分で発光する装置一般に起こり得る問題でもある。
光取り出し層として、素子内部に2次元の回折構造を形成させる手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。素子内部の導波光は、こうした回折構造により回折されて、従来取り出すことのできなかった導波光の一部を素子外部に取り出すことが可能となる。その結果、回折構造を設けない場合と比較して、光取り出し効率は向上する。しかしながら、2次元の回折構造では、回折効率が小さく、光取り出し効率の大幅な向上は期待できない。また、回折構造はサブミクロンオーダーの周期を有するものであり、一般に半導体の微細加工にも用いられるフォトリソグラフィー工程等によって、有機EL素子の内部に形成される。この場合、高価な露光装置や複雑なプロセスが必要となり、製造コストが非常に高くなるという問題がある。また、周期構造によって、発光面方向の輝度に濃淡が生じてしまい、発光面方向の輝度均一性が必要な表示装置等への応用には工夫が必要であった。
また、光取り出し層として、有機EL素子内部の発光層と基板の間に、光散乱層を設ける手法も提案されている(例えば、特許文献2)。光散乱層は、透明な樹脂と、前記樹脂とは屈折率の異なる微粒子が分散されたものが用いられる。発光部で発光した光は、光散乱層により散乱されて、様々な方向に進行方向を変える。多重散乱の結果、空気界面の全反射角内に入射した光が取り出されることとなる。光散乱層においては、光の進行方向をランダム化するため、微粒子のサイズ分布は広いことが好ましく、微粒子の配列はランダムであることが好ましく、また微粒子の体積分率は大きいことが好ましい。ここで微粒子のサイズ分布が狭かったり、また微粒子の体積分率が小さいと、光散乱層の散乱能が低くなってしまうからである。しかし、微粒子のサイズ分布が広いと樹脂中で微粒子を理想的に配列させることが困難となり、また微粒子のサイズ分布が広い場合に体積分率を大きくしようとすると、光散乱層の平坦性が著しく低下し、それにより薄膜構造である発光部の平坦性が損なわれて、発光素子の信頼性が大きく低下するというジレンマがある。そのため、従来は微粒子の体積分率は20%程度に抑えることが一般的で、散乱効果が小さいため、大幅な光取り出し効率の向上は期待できなかった。
このように、公知の技術では有機EL素子の光取り出し効率を大幅に向上させることが困難であり、更なる高効率化が求められている。
特開平11−283751号公報 特開2006−107744号公報 C.F.Madigan、M.H.Lu、J.C.Sturm、Applied Physics Letters、Vol.76、1650(2000)
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、高効率な発光装置用反射板、およびそれを用いた光取り出し効率に優れた有機EL素子を提供することを目的とするものである。
本発明の一態様にかかる光取り出し層は、反射層と、前記反射層上に形成された、変動係数が10%以下の微粒子および前記微粒子と屈折率の異なるマトリックスを含む3次元回折層とを備え、前記微粒子の3次元回折層の体積に対する体積分率が50%以上であり、前記微粒子が配列して短距離周期性を有する第一の領域を形成し、さらにその第一の領域がランダムな向きで隣接して集合した第二の領域を形成していることを特徴とする、ものである。
また、本発明の他の態様にかかる有機EL素子は、基板と、前記基板上に設けられた光取り出し層と、前記光取り出し層上に設けられた、第一の電極と第二の電極で少なくとも1層以上の有機層を挟持してなる発光層と、を具備してなる有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記光取り出し層が、前記基板側に設けられた反射層と、前記発光層側に設けられ変動係数が10%以下の微粒子と、前記微粒子と屈折率の異なるマトリックスと含む3次元回折層とを備え、前記微粒子の3次元回折層の体積に対する体積分率が50%以上であり、前記微粒子が配列して短距離周期性を有する第一の領域を形成し、さらにその第一の領域がランダムな向きで隣接して集合した第二の領域を形成していることを特徴とするものである。
また、本発明の他の態様にかかる有機EL素子は、基板と、前記基板上に設けられた光取り出し層と、前記光取り出し層上に設けられた、第一の電極と第二の電極で少なくとも1層以上の有機層を挟持してなる発光層と、を具備してなる有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記光取り出し層が、基板側に設けられた波長550nmにおける反射率が80%以上の反射率を有する反射層と、前記発光側に設けられた平均粒子径200〜800nmで変動係数が10%以下の微粒子および前記微粒子と屈折率の異なるマトリックスを含む3次元回折層とを備え、前記微粒子の3次元回折層の体積に対する体積分率が50%以上であり、前記3次元回折層は微粒子が厚さ方向に2〜30層堆積して配列し、短距離周期性を有する第一の領域を形成し、さらにその第一の領域がランダムな向きで隣接して集合した第二の領域を形成していることを特徴とするものである。
本発明の態様によれば、高効率な発光装置用反射板、および光取り出し効率に優れた有機EL素子が提供される。
本発明の実施態様を図面を参照しながら説明すると以下の通りである。
図1は、本発明の一実施形態にかかるトップエミッション型有機EL素子の構造の一例を表わす断面図である。図1は本発明の実施形態の理解を助けるための典型的な例を示したものであって、本発明の実施形態にかかる有機EL素子が図示された構造に限定されないことは言うまでもない。
図1に示されるように、本発明の一実施形態にかかる有機EL素子は、基板1と光取り出し構造8と発光部9とを有する。図示する例においては、基板1上に光取り出し層8および発光層9が順次積層されているが、基板1と光取り出し層8との間に、駆動回路部や保護膜等が挿入されていてもよい。また、光取り出し層8と発光層9との間には、平坦化層等が挿入されていてもよい。
図1に示された有機EL素子は、基板1側とは反対側表面から面発光されるトップエミッション型構造を有するものである。基板1側から面発光させるボトムエミッション型と異なり、基板1は透明である必要がなく、素子支持体として機能しなければならないこと以外は特に限定されず、ガラス基板、Si基板、プラスチック基板などから用途に応じて選択することができる。
発光層9は、一般的に有機EL素子において用いられる発光層と同じものを用いることができる。図1に示された実施態様の発光層はその一例であって、第一の電極5および第二の電極7、ならびにこれらの間に設けられた有機層6とから構成される。第一の電極5および第二の電極7のうち一方は陽極であり、他方は陰極である。陽極は、正孔を有機層6中に注入する役割を担うため、4.0eV以上の仕事関数を有する材質であることが好ましい。例えば、酸化インジウム錫合金(ITO)、酸化錫、酸化亜鉛、金、銀、白金、銅等の金属、またはこれらの酸化物、ならびにこれらの混合物等を用いて陽極を形成させることができる。一方、陰極は電子を注入する役割を担うため、仕事関数が小さい材質であることが好ましい。特に限定されないが、陰極材料としては、インジウム、アルミニウム、マグネシウム、リチウム、スカンジウム、金、銀、白金、銅等の金属、ならびにこれらの混合物等を用いることができる。
第一の電極5および第二の電極7はどちらも、発光層9から放射される発光に対して透光性が高いことが好ましい。まず、第一の電極5は発光層9から放射された光が、第一の電極5を透過し、光取り出し層8へ入射させるときに損失が少ないことが好ましいため、透光性が高いことが好ましい。また、第二の電極7は、発光面側の電極であるため、発光層9からの放射光および光取り出し層8から反射された光を損失させることなく発光面から放射させるために、高い透光性を有することが好ましい。そのため、陽極に相当する電極は、ITOや酸化スズ、酸化亜鉛などの透明電極を使用することが好ましい。また、陰極は、極薄膜の金属半透明電極を用いることが好ましい。この場合、導電性を確保するため、金属半透明電極と、ITOなどの透明電極を積層させた多層構造にすることもできる。例えば、15nmの膜厚のマグネシウム銀合金を製膜した後、200nmのITOを製膜することで、透光性を有する陰極を形成させることができる。第一の電極、または第二の電極のうち、どちらを陽極、または陰極としてもよいが、トップエミッション型有機EL素子の製造プロセス上、第一の電極を陽極とし、第二の電極を陰極とすることが好ましい。
トップエミッション型有機EL素子は、一般的に基板側から順次製造される。すなわち、第一の電極5を形成させた後、有機層6を形成させ、続いて第二の電極7を形成させる。有機層6は、一般に低分子もしくは高分子の有機物からなるものであり、イオン衝撃、熱などのプロセス中に生じる物理的ダメージを受けたときには劣化しやすい。ITOなどの透明電極は、スパッタ法により形成させるのが一般的であるため、有機層6上に透明電極を形成させる際、熱の発生や、スパッタ分子の衝突によって有機層6はダメージを受けやすい。そのため、有機層6を形成させる前に透明電極を形成させることが好ましい。有機層6を形成させた後、金属半透明電極を形成させる必要があるが、そのときには真空蒸着によって形成させるのが一般的であるため、有機層6はほとんどダメージを受けない。金属半透明電極を形成させることで、その後ITOなどの透明電極をスパッタ法により形成させても、金属半透明膜がバリアとして働き、有機層6へのダメージを回避できる。
有機層6は、第一の電極5と、第二の電極7との間に配置され、活性層を含む一層以上の有機層が積層された構造とすることができる。活性層とは、正孔と電子とが結合する領域をさす。例えば、正孔と電荷との結合効率を向上させるため、活性層の他に、正孔輸送層および電子輸送層の少なくとも一方を含んでいてもよい。この場合、正孔輸送層は活性層と陽極との間に挿入され、電子輸送層は活性層と陰極との間に挿入される。活性層、正孔輸送層、および電子輸送層の材質は特に限定されず、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよく、有機EL素子において通常用いられる活性層材料、正孔輸送材料、あるいは電子輸送材料であれば任意の材料を用いることができる。
例えば、活性層材料としては、トリス(8−キノリノール)アルミニウム錯体(Alq)やビスジフェニルビニルビフェニル(BDPVBi)、1,3−ビス(p−t−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾールイル)フェニル(OXD−7)、N,N’−ビス(2,5−ジ−t−ブチルフェニル)ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(BPPC)、および1,4ビス(p−トリル−p−メチルスチリルフェニルアミノ)ナフタレンなどが挙げられる。また、正孔輸送材料として、例えば、ビス(ジ(p−トリル)アミノフェニル)−1,1−シクロヘキサン、トリフェニルジアミン(TPD)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)−1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(α−NPD)等のトリフェニルジアミン類や、スターバースト型分子等が挙げられる。さらに、電子輸送材料として、例えば、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(Bu−PBD)、OXD−7等のオキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、およびキノリノール系の金属錯体が挙げられる。有機層6の厚さは、特に限定されることはないが、通常用いられるように、0.01μmから1μmの範囲であることが好ましい。
基板1と発光層9の間には、光取り出し層8が形成される。光取り出し層8は、反射層2と、微粒子3とマトリックス4により構成された3次元回折層10とからなる。反射層2は基板1と発光層9の間に形成され、3次元回折層10は反射層2と発光層9の間に形成される。以下に詳細に記述するこの光取り出し層8が、本発明の効果を得るための最も特徴的な部分であり、光取り出し層8を形成することで、従来にない高効率な有機EL素子を得ることが可能となる。
反射層2は、3次元回折層10を透過してきた光を、発光面側へ反射する機能を有する。反射層2の材質は、高効率で光を発光面方向に反射するために、発光層から放射される発光の波長、例えば550nmにおける反射率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。例えば、反射層2の材質として、銀、アルミニウム等の金属や、これらを含む合金等を用いることができる。形成方法は、特に限定されず、スパッタ法、真空蒸着法など広く公知の方法を用いることができる。反射層2の膜厚は、基板1側への光が透過することによる損失を抑制するため、30nm以上にすることが好ましく、50nm以上にすることがより好ましい。また、基板1への密着性を改善するため、反射層2を形成させる前に、基板の表面処理を施したり、バッファー層等を新たに設けたりすることができる。反射層2は、反射層2を形成させた後のプロセス中に、水分、酸素、熱などの影響によって、反射特性が劣化していくことがある。これを抑制するため、反射層2上に保護膜等を形成させてもよい。例えば、可視光領域において、低吸収で高い反射率を示す銀は、銀のみを基板上に形成すると、径時変化によって銀の凝集が起こり、反射率が著しく低下する場合がある。これを抑制するため、銀と、パラジウムやマグネシウムなどとの合金を用いたり、バッファー層または保護膜として10nm程度の極薄いITO膜などを用いることで、高い反射率を保持し、かつ信頼性の高い反射層2を形成させることができる。
反射層2上には、薄膜状の3次元回折層10が形成される。この層は、微粒子3と、微粒子3と屈折率の異なるマトリックス4から構成される3次元回折構造を有する。マトリックス4中で、微粒子3は長距離周期性をもたず、短距離周期性を有する第一の領域11(ドメイン)がランダムな向きで複数集合した第二の領域12を形成した状態で配置されている。このような3次元回折層10における微粒子の配置を発光面側からみた場合には、例えば図2に示すように観察される。このような3次元回折層の構造は、微粒子3を原子、3次元回折層を結晶とみなすと、その結晶は単結晶状態ではなく多結晶状態であるということができる。具体的には、短距離三次元周期性を有する微粒子配列構造(例えば、体心立方格子構造(以下、BCC構造という)、面心立方格子構造(以下、FCC構造という)、六方最密充填構造(以下、HCP構造という)などに相当する微粒子配列構造)を持った微粒子のドメイン構造が各々集合し、全体的な3次元回折層を形成した状態となっている。
第一の領域11における微粒子は、三次元周期性をもって配列されていれば特に限定されず、BCC構造、FCC構造、HCP構造などのいずれに相当する微粒子配列構造で配列されていてもよい。第一の領域11における微粒子の間隔は、この第一の領域11での微粒子の平均間隔の80%から120%以内であることが好ましい。また、第一の領域11のそれぞれにおいては、各基本並進ベクトルの方向に、少なくとも5個の微粒子が周期的に配列されていることが好ましく、光取り出し効率をより増加させるためには、それぞれの基本並進ベクトル方向に10以上の微粒子が配列されていることがより好ましい。また、発光面方向に輝度の濃淡を生じさせないために、基本並進ベクトル方向に連続する微粒子の個数は5000以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましい。このとき、それぞれの第一の領域11に含まれる微粒子の数は同数である必要はなく、ばらつき方は特に限定されない。
微粒子3の材質は特に限定されないが、発光層から放射される発光の波長に対して吸収の小さい材質を選択することが好ましい。例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化亜鉛、酸化サマリウム、ジルコニア、またはそれらの混合物などを用いることができる。また、マトリックス中に気泡または空隙を配列させることにより、その気泡を微粒子とすることもできる。言い換えれば、微粒子は空気からなるものであってもよい。
微粒子3の平均粒子径は、200〜800nmであることが好ましい。3次元回折層に含まれる微粒子の平均粒子径が200nm未満では、可視光領域で十分な回折が起こらないため、本発明の効果が十分発揮されないことが多い。また、微粒子の平均粒子径が800nmを超えると、光取り出しの効率は改善されるが、3次元回折層が厚くなりすぎ、駆動回路とのコンタクトホールを形成する際、プロセスの煩雑さが増したり、また、素子全体の厚みが増すことがあるため好ましくない。なお、本発明において平均粒子径とは、走査型電子顕微鏡によって、100個の微粒子径を計測し、その平均値を求めることにより測定されたものをいう。
微粒子3の粒子径分布は変動係数(以下、CV値という)が10%以下であることが必要である。ここで、CV値とは、広く一般的に用いられている微粒子の粒子径分布を表す数値であって、(粒子径の標準偏差÷平均粒子径)×100によって計算される。CV値が10%を超えると、粒子径のばらつきが大きくなり、第一の領域11において微粒子を周期的に配置することが困難となるため、本発明の効果が低減する。本発明の効果をより強く発現させるためには、CV値は%以下であることが好ましい。
また、3次元回折層10中の微粒子3の体積分率が50%以上であることが必要である。体積分率が50%未満であると、第一の領域における微粒子配列がランダムになったり、ひとつの第一の領域と隣接する第一の領域との間の隙間が大きくなるためである。また3次元回折層10中における微粒子の体積分率は100%以下である。体積分率が100%であるとき、3次元回折層はマトリックスとして固形材料を含まない。しかし、この場合には空気がマトリックスを構成することになる。
また、3次元回折層10中、あるいは第一の領域11には、微粒子が厚さ方向に堆積して、層を形成している。このように堆積している微粒子3の層数は、2層以上30層以下であることが好ましい。本発明者らの検討によれば、微粒子3の層数が1層であると、多重回折の効果が極端に小さくなり、本発明の効果が低減し、一方で微粒子3の層数が30層を超えると、光取り出し効率は改善されるが、光取り出し層が厚すぎ、駆動回路とのコンタクトホール形成の際、プロセスの煩雑さが増したり、素子全体の厚みが増すことがあるので好ましくない。
マトリックス4の材質は、微粒子3と屈折率が異なり、発光層から放射される発光の波長に対する吸収が少ないものが選択される。このようなマトリックス4の材料は、有機材料、無機材料、有機−無機複合材料であってもよい。有機材料として、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、およびそれらの混合物などの有機高分子材料が例示される。無機材料としては、例えば、シリカ(SOG、ポーラスシリカを含む)、アルミナ、チタニア、酸化亜鉛、およびジルコニアなどの金属酸化物などが例示される。無機−有機複合材料としては、例えば、チタニア、セリア、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ジルコニアなどの金属酸化物の超微粒子を樹脂中に分散させた樹脂などが例示される。また、マトリックスとして空気を用いることもできる。この場合には3次元回折構造が、一見微粒子のみからなるものに見えるが、微粒子の隙間には空気が存在しており、それをマトリックスであるとみなす。微粒子3とマトリックス4との屈折率の差は、特に限定はされないが、0.02以上であることが好ましく、0.10以上であることがより好ましい。屈折率差が大きいほど、回折効率が大きくなり、光取り出し効率が改善されるためである。
続いて、光取り出し層8の効果について説明する。光取り出し構層8は、反射層2上に薄膜形成された3次元回折層10よりなる。3次元回折層10の構造は、3次元回折層中に微粒子3が、長距離周期性をもたず、短距離3次元周期性を有する第一の領域(ドメイン)が複数、ランダムな向きで集合した第二の領域を形成した状態で配置されている(図2)。この層中において微粒子3とマトリックス4との屈折率差によって回折構造が形成されることとなる。発光層9から放射された光は3次元回折層10に入射し、まず最表面の粒子層によって、その一部が回折されることとなる。回折されずに最表面の粒子層を透過した光は、二層目の粒子層によって再度その一部が回折される。これが各層で繰り返されていくことになる。その結果、多重回折効果によって回折効率は向上する。また、各粒子層で回折された光もまた、3次元回折層中で多重回折を繰り返す。このような回折光は、3次元回折層中を進行する間に様々な方向に進行していく。3次元回折層10中における微粒子配列が全体的に周期性を有する場合、多重回折の結果、3次元回折層から放射される光は、微粒子配列に由来した回折ピークとなって現れる。すなわち、3次元回折層からの反射光は、特定の位置に特定の角度で現れることになる。そのため、素子界面の全反射角に入らない角度の光は、取り出すことができない。また、特定方向に光が反射することから、発光面に輝度分布が生じることとなり、発光装置においては、視認性の低下を招くこととなる。
一方、本発明の3次元回折層10は、マトリックス4中で微粒子3が、長距離周期性をもたず、短距離周期性を有する第一の領域11が複数、ランダムな向きで集合した第二の領域12を形成した状態で配置されている。これによって、3次元回折層10中を回折されながら進む光は、第一の領域内で回折されつつ、第一の領域の境界でその進行方向が乱されることとなる。その結果、3次元回折層から放射される光は、特定の位置に特定の角度でピークが現れることはなく、正反射光と、回折光と、多重回折光とにより、反射光が不特定の角度に放射される。言い換えれば本発明によれば、基板表面に半球状の反射光が現れることとなる。その結果、本発明の光取り出し層8に入射した光は、回折能が向上したことによって、特定の方向に回折する光の量が増えるばかりではなく、それ以外の様々な方向に光が反射されるため、全反射角内へ入射する確率が増加する。その結果、光取り出しの大幅な改善が実現される。
長距離周期性が崩れた場合、通常は回折効率の低下によって、回折効果が失われることが推測される。しかしながら、第一の領域11が三次元周期性を有し、それぞれの粒子配列の基本並進ベクトル方向に対して、少なくとも5個の微粒子が連続に配列されていれば、回折効果が十分発揮される。以下に、その原理について説明する。
光が到達する表面に、ある特定の微粒子が存在する場合には、光は特定の散乱角で散乱する。さらに、周期性をもって微粒子が配置された表面に光が到達すると、特定の角度に散乱光が現われて回折光が生じる。微粒子集合体からの散乱光は、個々の微粒子による散乱光の和となるためである。一般に、このときの回折光強度I(K)は、下記数式(2)で表わされる。
I(K)=F(K)・F(−K)・Ga(K)・Gb(K)・Gc(K) (2)
上記数式(2)中、Kは回折ベクトルであり、F(K)は結晶構造因子である。また、Ga(K)、Gb(K)、およびGc(K)は、それぞれ周期方向a、b、およびcを持つ3次元周期構造におけるラウエ関数であり、下記数式(3)、(4)、および(5)で表わされる。
Ga(K)=sin[π(2Na+1)(K・a)]/sin[π(K・a)] (3)
Gb(K)=sin[π(2Nb+1)(K・b)]/sin[π(K・b)] (4)
Gb(K)=sin[π(2Nc+1)(K・c)]/sin[π(K・c)] (5)
上記数式中、a、b、およびcは、それぞれ周期a方向、b方向、およびc方向の基本並進ベクトルであり、Na、Nb、およびNcは、それぞれa方向、b方向、およびc方向の凹凸個数である。数式(3)のラウエ関数は、K・aが任意の整数のとき極大値となる関数であり、極大ピークの幅は、2Na+1に逆比例して狭まっていく。こうした傾向は、同様の関数形である数式(4)、および数式(5)についても同じである。すなわち、微粒子個数が大きいほど、回折光強度は鋭くなる。しかしながら、それぞれの基本並進ベクトル方向の微粒子の個数が5以上では、ピーク幅変化がほぼなくなる。すなわち、回折効果を得るためには、基本並進ベクトル方向の微粒子の個数が5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。
一方、それぞれの基本並進ベクトル方向の微粒子が連続して5000を超えると、発光面方向に多重回折のピークを認識できるようになる。このため、基本並進ベクトル方向の微粒子個数は、5000以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましい。
本発明の3次元回折構造の一例として、平均粒子径400nmの微粒子を含んでなる3次元回折層に波長550nmの光を−60度方向から入射させた際の、入射面内の強度断面図を測定したところ、図3に示されるような反射特性を示した。60度方向には、正反射光のピークが見られる。また、+20度方向には回折光のピークが見られ、全ての角度に、言い換えれば半球状に光が放射されており、この放射光は、反射光と、回折光と、多重回折光とからなるものであることがわかる。このように光が半球状に反射される本発明による光取り出し層は、各種の発光装置の反射板としても利用できるものである。
本発明において、光取り出し層は反射層を形成させ、さらにその上に3次元回折層を積層することで形成させるが、それらの形成方法は特に限定されない。特に反射層は従来知られている任意の方法、例えばスパッタ法やCVD法などにより形成される。また3次元回折層の形成方法も、特に限定されないが、作製の容易さ、有機EL素子プロセスとの適合性から以下に示す方法を用いることが好ましい。
3次元回折層がシリカなどの微粒子とアクリルポリマーなどのマトリックスからなるものである場合には、マトリックスの原料、例えばアクリルモノマー、を必要に応じて有機溶媒などに溶解させ、それに微粒子を分散させた組成物を準備し、それを反射層の上に塗布し、さらにマトリックスを硬化させることで3次元回折層を形成させることができる。このとき、塗布後の塗布膜中で微粒子が比較的高密度で堆積する際に、結晶構造を形成する原子のように配列する。このように微粒子が所望の配列となるようにするには、マトリックスに対する微粒子の含有率が比較的高いことが好ましい。具体的には50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。
組成物の塗布方法は従来知られている任意の方法により行うことができる。具体的にはスピンコーティング法、ディップコーティング法、スリットコーティング法などが挙げられる。塗布後、必要に応じて加熱処理などを行ってマトリックスを硬化させて、3次元回折層を形成させる。
また、上記のようにしてマトリックスを硬化させた後、微粒子を溶解などにより除去することで、マトリックス中に気泡を微粒子として存在させて3次元回折層とすることもできる。例えばシリカなどの微粒子を含む組成物を塗布して硬化させた後、シリカを溶解し、マトリックスは溶解しない薬剤によりシリカのみを除去することができる。
さらには、微粒子を含む組成物を塗布した後、組成物の媒体のみを除去することにより、微粒子と、マトリックスとしての空気からなる3次元回折構造を形成させることができる。
本発明の実施形態にかかる有機EL素子は、トップエミッション型の有機EL素子構造のみならず、ボトムエミッション型の構造としてもよい。図4にその一例の断面図を示す。ボトムエミッション型の場合、電極を反射層に用いてもよい。本発明は、有機EL素子に限らず、液晶ディスプレイや、照明装置など、空気よりも屈折率の高い部分で発光する装置一般の発光装置用反射板(図5)として適用することができる。
以下、本発明の具体例を示して説明するが、本発明はこれらの具体例に限定されないことはいうまでもない。
(実施例1)
基板として、ガラス基板(ショット日本株式会社製TEMPAX Float、屈折率1.48)を用意した。ガラス基板上に、バッファー層としてITOを10nmスパッタした後、反射層として銀を200nmスパッタし、反射層の保護膜として、さらにITOを10nmスパッタした。3官能アクリルモノマー(Aldrich社製、ETPTA:Ethoxylated trimetylolpropane triacrylate、n=1.47)中に、シランカップリング剤によって粒子表面をアクリル基により表面修飾されたシリカ粒子(扶桑化学工業株式会社製PL−30(商品名)、平均粒子径380nm、CV値5%、n=1.42)を体積分率で60%分散させた分散液を用意した。この分散液を、基板上に回転数2000rpmでスピンコート製膜した。マトリックスを構成するアクリルモノマーを熱重合させるため、150℃のホットプレート上で1時間ベーク処理を行って、シリカ粒子とアクリルポリマーマトリックスからなる3次元回折層を形成させた。この基板の断面をFE−SEM(電界放射走査型電子顕微鏡)で観察したところ、粒子層数20層の、微粒子がほぼ結晶構造のように配列された多粒子層が形成されていることが確認できた(図6)。この3次元回折層とその下の反射層とにより本発明による光取り出し層が構成されている。さらに、その表面に平坦化層としてSiOを200nmの厚さで蒸着した後、ITOをスパッタ法により100nmの膜厚で成膜して、陽極を形成させた。さらに、α−NPDを真空蒸着法にて50nm堆積させて正孔輸送層を形成させた後、Alqを真空蒸着法により80nm堆積させて活性層を形成させた。最後に、マグネシウム−銀合金を蒸着速度比10:1で真空蒸着法により15nmの膜厚で共蒸着して陰極を形成させた後、ITOを200nmスパッタ製膜した発光層を形成させた。真空中でガラス缶により封止を行い、トップエミッション型の有機EL素子が得られた。
(実施例2)
実施例1と同様にして、基板上に3次元回折層を形成させた。その後、基板を5%フッ酸水溶液中に5分間浸漬した後、流水洗浄を15分間行い、多粒子層を形成しているシリカ粒子のみを除去した。得られた基板の断面をSEM観察したところ、シリカ粒子のみがきれいに除去されており、アクリルポリマーからなるマトリックスと空気からなる微粒子とからなる3次元回折層が形成されていた(図7)。さらに、この3次元回折層の上に、実施例1と同様の方法で、発光層を形成させた。さらに真空中でガラス缶により封止を行い、トップエミッション型の有機EL素子が得られた。
(実施例3)
3官能アクリルモノマーをTrimethylolepropane triacrylate(Aldrich社製、n=1.47)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、シリカ粒子分散液を、基板上に回転数2000rpmでスピンコート製膜した。アクリルモノマーを揮発させるため、150℃のホットプレート上で1時間ベーク処理を行って、シリカ粒子と空気とからなる3次元回折層を形成させた。ここで空気は3次元回折層のマトリックスである。この基板の断面をFE−SEMで観察したところ、粒子層数15層の、微粒子がほぼ結晶構造のように配列された多粒子層が形成されていることが確認できた(図8)。この3次元回折層とその下の反射層とにより本発明による光取り出し層が構成されている。さらにこの3次元回折層の上に実施例1と同様の方法で発光層を形成した。真空中でガラス缶により封止を行い、トップエミッション型の有機EL素子が得られた。
(比較例1)
3次元回折層を形成させない以外は、実施例1と同様の手法により、比較例1の有機EL素子を作製した。
実施例1〜3および比較例1の有機EL素子に、8Vの直流電圧をそれぞれ印加して、輝度並びに発光面方向の輝度分布を比較した。実施例1〜3の有機EL素子は、比較例1の有機EL素子と比較して、それぞれ1.60倍、2.49倍、および2.65倍の輝度が得られた(図9)。
本発明は、発光装置用反射板、および有機ELディスプレイなどの光学デバイスに好適に用いることができる。
本発明の一実施形態にかかる有機EL素子の断面図。 本発明の有機EL素子の3次元回折格子の上面観察図。 本発明の3次元回折構造の反射特性。 本発明の一実施形態にかかる有機EL素子の断面図。 本発明の一実施形態にかかる発光装置用反射板の断面図。 実施例1で作製した3次元回折構造の電子顕微鏡写真。 実施例2で作製した3次元回折構造の電子顕微鏡写真。 実施例3で作製した3次元回折構造の電子顕微鏡写真。 実施例1〜3で作製した有機EL素子の発光スペクトル。
符号の説明
1 基板
2 反射層
3 微粒子
4 マトリックス
5 第一の電極
6 有機層
7 第二の電極
8 光取り出し層
9 発光部
10 3次元回折構造
11 第一の領域
12 第二の領域。

Claims (15)

  1. 反射層と、前記反射層上に形成された、変動係数が10%以下の微粒子および前記微粒子と屈折率の異なるマトリックスを含む3次元回折層とを備え、前記微粒子の3次元回折層の体積に対する体積分率が50%以上であり、前記微粒子が配列して短距離周期性を有する第一の領域を形成し、さらにその第一の領域がランダムな向きで隣接して集合した第二の領域を形成していることを特徴とする、光取り出し層。
  2. 微粒子の平均粒子径が200〜800nmである、請求項1に記載の光取り出し層。
  3. 前記第一の領域において、微粒子が厚さ方向に堆積し、2層以上30層以下の層を形成している、請求項1または2に記載の光取り出し層。
  4. 前記微粒子が、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化亜鉛、酸化サマリウム、ジルコニア、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光取り出し層。
  5. 前記微粒子が、マトリックス中に配列された気泡である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光取り出し層。
  6. 前記マトリックスが有機高分子材料である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光取り出し層。
  7. 前記マトリックスが、前記微粒子とは屈折率が異なる無機材料である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光取り出し層。
  8. 前記マトリックスが、空気である請求項1〜4のいずれか1項に記載の光取り出し層。
  9. 前記微粒子と、前記マトリックスとの屈折率の差が0.02以上である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の光取り出し層。
  10. 前記微粒子が、第一の領域において粒子配列の基本並進ベクトル方向に対して、連続して5〜5000個配列されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の光取り出し層。
  11. 前記反射層の波長550nmにおける反射率が80%以上である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の光取り出し層。
  12. 前記反射層が、金属およびその合金から選択される材質からなるものである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の光取り出し層。
  13. 基板と、前記基板上に設けられた光取り出し層と、前記光取り出し層上に設けられた、第一の電極と第二の電極で少なくとも1層以上の有機層を挟持してなる発光層と、を具備してなる有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
    前記光取り出し層が、前記基板側に設けられた反射層と、前記発光層側に設けられた、変動係数が10%以下の微粒子および前記微粒子と屈折率の異なるマトリックスを含む3次元回折層とを備え、前記微粒子の3次元回折層の体積に対する体積分率が50%以上であり、前記微粒子が配列して短距離周期性を有する第一の領域を形成し、さらにその第一の領域がランダムな向きで隣接して集合した第二の領域を形成していることを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子。
  14. 前記光取り出し層と前記発光層との間に、平坦化層をさらに具備してなる、請求項15に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  15. 基板と、前記基板上に設けられた光取り出し層と、前記光取り出し層上に設けられた、第一の電極と第二の電極で少なくとも1層以上の有機層を挟持してなる発光層と、を具備してなる有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
    前記光取り出し層が、基板側に設けられた波長550nmにおける反射率が80%以上の反射率を有する反射層と、前記発光側に設けられ平均粒子径200〜800nmで変動係数が10%以下の微粒子および前記微粒子と屈折率の異なるマトリックスを含む3次元回折層とを備え、前記微粒子の3次元回折層の体積に対する体積分率が50%以上であり、前記3次元回折層は微粒子が厚さ方向に2〜30層堆積して配列し、短距離周期性を有する第一の領域を形成し、さらにその第一の領域がランダムな向きで隣接して集合した第二の領域を形成していることを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子。
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