JP2009214338A - 液滴吐出ヘッドとその製造方法、液滴吐出ヘッドを具備した画像記録装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】記録液滴を吐出する複数のノズル孔が設けられたノズル形成基材のSiO2膜上に、少なくとも一個のパーフルオロアルキル基と少なくとも一個のアルコキシシリル基を有するポリマー又は/及びオリゴマー(A)と、式(1)で表されるシラン化合物(B)とを反応させて撥水膜を固着させ、該基材と、記録液室と、記録液を吐出させる駆動手段とを備えた液滴吐出ヘッドとする。Si(Y)(OR)3 …(1)[式(1)中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Yは置換基を有してもよいアルキル基あるいは置換基を有してもよいアリール基、又は式(1)におけるOR基(前記と同義)を表す。各々のRは同じでも異なってもよい。]
【選択図】図10
Description
例えば、第1の方法として、ノズル本体のインク吐出側表面にSiO2を主成分とするSiO2膜を設け、このSiO2膜上にパーフルオロポリエーテル鎖の末端にアルコキシシラン残基を有する化合物が結合した撥インク膜を形成し、その表面平均粗さを規定することにより、油性インクや溶剤インクに対して、撥インク性およびワイピングに対する耐擦性を向上する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、インクジェットヘッドのノズル形成部材の表面にSiO2膜を介してフッ素系撥水剤(例えば、アルコキシシラン末端変性パーフルオロポリエーテル)でコーティングすることにより、撥水膜のワイピングに対する耐久性を向上させて撥水性能を維持し、紫外線レーザによる加工性を確保する手法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
上記特許文献1、2においては、撥インク膜を形成するための材料として、いずれも直鎖状分子の一方の末端(片末端)にのみ反応基があるシランカップリング剤が用いられている。すなわち、基材に形成されたSiO2膜表面の水酸基とシランカップリング剤とが脱水反応を起こしてシロキサン結合を形成したり、水素結合により固定する方法であるが、分子の大きさに対して偏った反応サイトを末端にしか持っていないため、分子間の立体障害によって分子間での重合(3次元化)は起こりにくく、膜の密度は一般の重合性ポリマーに比べて低い上に基材への定着性もさほど良くない。
また、両末端に少なくとも一つ以上のシロキサン結合(−Si−O−)を有し中間部に炭化水素鎖を含む分子(A)と、一方の末端にフッ化炭素鎖を有し他方の末端に少なくとも一つ以上のシロキサン結合(−Si−O−)を有する分子(B)を用いて、分子(A)と分子(B)でポリマーを形成して撥水膜(固体基材上に形成された撥水膜)とすることにより、耐アルカリ性を向上する手法が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
上記特許文献3の手法では、耐アルカリ性を向上するため、例えば、基材(SUS304)上に分子(A)と分子(B)でポリマーを形成して撥水膜としており、このような基材と分子(A)と分子(B)の反応は困難であり、撥水膜のワイピングに対する耐久性向上は難しいものと考えられる。また、(A)の分子構造を有する化合物は比較的高価である上、鎖中に導入されたビニル基または/およびエチニル基は、酸化などの副反応によって劣化することが懸念されるため製造工程が制約されたり条件が規定されるといった欠点がある。また、上記特許文献4の手法では、(A)が炭化水素鎖を含む分子であることから、分子(B)との反応性や、撥水性の発現が効果的に行われ難いという欠点がある。
つまり、上記アルコキシシリル基を有するポリマーまたは/およびオリゴマーを用いて撥水膜を形成する場合、図1の模式図に示すように、基材表面(例えば、SiO2膜)の水酸基とアルコキシシリル基を有するポリマーまたは/およびオリゴマーが脱水反応を起こしてシロキサン結合を形成したり、水素結合により固定するとともに、分子間での反応(3次元架橋化)が並行して進む。しかし、ポリマーまたは/およびオリゴマーの片末端に偏って反応基が存在するため、重合が起こりにくく3次元構造化が十分とはならず膜の密度は低く、基材表面との反応も十分ではなく固着状態も良好ではない。
すなわち、基材に設けられたSiO2膜表面に存在する水酸基との反応によって形成されるシロキサン結合や水素結合を介して固定される上記ポリマーまたは/およびオリゴマー(a)と、基材表面と結合せずに上記ポリマーまたは/およびオリゴマー同士でカップリング(結合)することにより、(a)と分子鎖の絡み合いのみで基材表面に留まっている分子(b)とにより撥水膜が形成されている。このため、分子鎖の絡み合いのみで基材表面に存在している(b)は、長期に及ぶインクや充填液等との接触、あるいはワイピングなどによる物理的接触によって、(a)よりも基材から剥離しやすいと考えられる。
したがって、(b)の絡み合いの程度をより一層高くして安定した状態で確実に基材表面に固定することが課題である。
また、前記第2の方法により撥水膜を形成する際、例えば、分子鎖中にビニル基または/およびエチニル基とベンゼン環を含む分子が用いられているが、このような化合物は比較的高価である上、鎖中に導入されたビニル基または/およびエチニル基は酸化などの副反応を併発しやすく劣化を抑制するための対策が必要とされるため製造工程における条件が規制される。また、炭化水素鎖を含む分子を用いる場合には、フッ化炭素鎖を有する化合物との親和性などによって相互の反応性や、撥水性の発現効果が低減する傾向があるなどの難点があり、この対策が必要である。
したがって、より安価で簡便な手法により確実に撥水性効果を発揮することができる信頼性の高い撥水膜を形成することが課題である。
前記ノズル形成基材のSiO2膜上に形成される撥水膜が、少なくとも一個のパーフルオロアルキル基と少なくとも一個のアルコキシシリル基を有するポリマーまたは/およびオリゴマー(A)と、下記一般式(1)で表されるシラン化合物(B)とを組成分として反応、固着されたものであることを特徴とする液滴吐出ヘッドにより解決される。
Si(Y)(OR)3 …(1)
[式(1)中、Rは水素原子またはアルキル基を表し、Yは置換基を有していてもよいアルキル基あるいは置換基を有していてもよいアリール基、または式(1)におけるOR基(前記と同義)を表す。それぞれのRは同じでも異なっていてもよい。]
直鎖状の分子構造からなり、一方の末端にパーフルオロアルキル基を有し、他方の末端にアルコキシシリル基を有するポリマーまたは/およびオリゴマーと、
直鎖状の分子構造からなり、両末端、あるいは両末端および鎖中にアルコキシシリル基を有し、主鎖にパーフルオロアルキル鎖を有するポリマーまたは/およびオリゴマーと
の混合物であることを特徴とする。
前記記録液滴の吐出側表面に形成したSiO2膜上に、少なくとも一個のパーフルオロアルキル基と少なくとも一個のアルコキシシリル基を有するポリマーまたは/およびオリゴマー(A)と、下記一般式(1)で表されるシラン化合物(B)とを溶剤に溶解した撥水処理剤溶液を塗布した後、反応させて撥水膜を形成、固着することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法により解決される。
Si(Y)(OR)3 …(1)
[式(1)中、Rは水素原子またはアルキル基を表し、Yは置換基を有していてもよいアルキル基あるいは置換基を有していてもよいアリール基、または式(1)におけるOR基(前記と同義)を表す。それぞれのRは同じでも異なっていてもよい。]
前記記録液滴の吐出側表面に形成したSiO2膜上に、少なくとも一個のパーフルオロアルキル基と少なくとも一個のアルコキシシリル基を有するポリマーまたは/およびオリゴマー(A)を蒸着源とする蒸着と、下記一般式(1)で表されるシラン化合物(B)を蒸着源とする蒸着とを、真空槽中の異なるゾーンで個別に繰り返し、蒸着された(A)と(B)を反応させて撥水膜を形成、固着することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法により解決される。
Si(Y)(OR)3 …(1)
[式(1)中、Rは水素原子またはアルキル基を表し、Yは置換基を有していてもよいアルキル基あるいは置換基を有していてもよいアリール基、または式(1)におけるOR基(前記と同義)を表す。それぞれのRは同じでも異なっていてもよい。]
記録液との接触やワイピングなどの物理的な接触に対しても剥離などが生じ難く、長期使用においても安定した撥水性を発揮することができる。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、分子構造が単純な原料(合成が容易であったり、あるいは市販品として入手し易い)を用い、塗工法(ゾルゲル法)あるいは蒸着法によって製造できるため、簡便、且つ比較的安価に上記特性を発揮する液滴吐出ヘッドが得られる。
本発明の画像記録装置によれば、長期使用においても安定した撥水性を発揮する液滴吐出ヘッドを具備しているため、繰り返し画像形成においても高画像品質を維持することができる。
(1) ノズル形成基材にシロキサン結合や水素結合を介して固定されるアルコキシシリル基を有するポリマーまたは/およびオリゴマー[基材表面に結合して固着(固定)している分子(a)]の数を増やす、
(2) ノズル形成基材に結合せずアルコキシシリル基を有するポリマーまたは/およびオリゴマー同士でカップリングすることにより、分子鎖の絡み合いのみで基材表面に留まっている分子(b)の絡み合いを増やすことによってより信頼性よく固着(固定)させる、
ことが必要である。
すなわち、液滴吐出ヘッドにおいて、ノズル形成基材のSiO2膜上に形成される撥水膜が、少なくとも一個のパーフルオロアルキル基と少なくとも一個のアルコキシシリル基を有するポリマーまたは/およびオリゴマー(A)と、下記一般式(1)で表されるシラン化合物(B)とを組成分として反応、固着されたものであることを特徴とするものである。
なお、前記液滴吐出ヘッドは、記録液滴を吐出する複数のノズル孔が設けられたノズル形成基材と、該複数のノズル孔が連通する記録液室と、該記録液室の容積を変化させて記録液をノズル孔から液滴として吐出させる駆動手段とを備え、前記ノズル形成基材の記録液滴吐出側表面にSiO2膜と撥水膜が順次形成されてなる。
Si(Y)(OR)3 …(1)
[式(1)中、Rは水素原子またはアルキル基を表し、Yは置換基を有していてもよいアルキル基あるいは置換基を有していてもよいアリール基、または式(1)におけるOR基(前記と同義)を表す。それぞれのRは同じでも異なっていてもよい。]
直鎖状の分子構造からなり、両末端、あるいは両末端および鎖中にアルコキシシリル基を有し、主鎖にパーフルオロアルキル鎖を有するポリマーまたは/およびオリゴマーと
の混合物であることにより、
図4の模式図に示すように、複数末端/鎖中官能性オリゴマーまたはポリマー(c)を介して、安定した状態で基材表面に定着(固着)させることが可能となり、しかも前記ポリマーまたは/およびオリゴマー(A)同志の反応による絡み合い構造ばかりではなく基材表面に定着(固着)する成分もさらに増加するため、耐久性の一層高い撥水膜の形成可能となる。
すなわち、両末端、あるいは両末端および鎖中にアルコキシシリル基を有し、主鎖にパーフルオロアルキル鎖を有するポリマーまたは/およびオリゴマーの平均分子量が大きいことにより、前記ポリマーまたは/およびオリゴマー(A)との反応機会を高めることができ、基材表面に定着(固着)する成分もさらに確実に増加して高耐久性の撥水膜の形成可能となる。
F{CF(CF3)-CF2 O }n-CF(CF3)-X-Si(OR)3 …(2)
F{CF(CF3)-CF2 O }n-CF(CF3)-X-Si(OR)2R …(3)
Si(OR)3-X-CF(CF3)-{CF(CF3)-CF2O}n-CF(CF3)-X-Si(OR)3 …(4)
Si(OR)2R-X-CF(CF3)-{CF(CF3)-CF2O}n-CF(CF3)-X-Si(OR)2R …(5)
(CF3)-{CF(CF3)-CF2O}n-X-Si(OR)2-X-{CF(CF3)-CF2O}n-(CF3) …(6)
[一般式(2)〜(5)中、Rはアルキル基を表し、Xはパーフルオロポリエーテル鎖とアルコキシシラン残基との結合基を表す。nは1以上の自然数を表す。]
結合基としては、例えば、アルキレン基などが挙げられ、アルキレン鎖中にアミド結合、エーテル結合、エステル結合を含んでいてもよい。
Si(Y)(OR)3 …(1)
[式(1)中、Rは水素原子またはアルキル基を表し、Yは置換基を有していてもよいアルキル基あるいは置換基を有していてもよいアリール基、または式(1)におけるOR基(前記と同義)を表す。それぞれのRは同じでも異なっていてもよい。]
で表されるシラン化合物(B)としては、限定されるものではないが例えば、メチルトリメトキシシラン(トリメトキシメチルシラン)、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3メルカプトプロピルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどのシラン化合物が挙げられる。
上記ノズル形成基材(ノズル板3)の作成工程の詳細について図10を参照して説明する。なお、図10はノズル板3における1つのノズル部分を拡大した断面説明図である。このノズル板3は、ノズル孔(ノズル)4となるノズル穴を形成したNi金属プレートからなるノズル形成基材31の記録液滴吐出側表面に中間層となるSiO2膜(SiO2層)32と、撥水膜(撥水層)33を順次形成し、反対面に流路板と接合するために必要なポリイミド層34を形成してなる。なお、ノズル形成基材31としては、Ni金属プレートで説明しているが、これに限るものではない。
SiO2膜の成膜には以下のような方法を適用することができる。
(1)真空蒸着法:SiO2を真空中で蒸発させてノズル形成基材の記録液滴吐出側表面に薄膜形成する。あるいは、Siを蒸発させ、酸素プラズマ中を通過させて誘電体(SiO2)をノズル形成基材の記録液滴吐出側表面に形成する。
(2)酸化物スパッタリング法:SiO2をターゲット材料としてArプラズマなどで原子やクラスターをたたき出し、ノズル形成基材の記録液滴吐出側表面にSiO2の薄膜を形成する。
(3)反応性スパッタリング法:
Siターゲットを原料とし、酸素を含む反応性ガスで酸化しながらノズル形成基材の記録液滴吐出側表面SiO2の薄膜を形成する。
(4) メタモードスパッタリング法:ノズル形成基材を回転しながら記録液滴吐出側表面に、Siをターゲットに用いたスパッタによる金属薄膜形成と、異なるゾーンでの酸化を繰り返して実施し、SiO2薄膜を形成する。
(1)ゾルゲル法:前記記録液滴の吐出側表面に形成したSiO2膜上に、少なくとも一個のパーフルオロアルキル基と少なくとも一個のアルコキシシリル基を有するポリマーまたは/およびオリゴマー(A)と、前記一般式(1)で表されるシラン化合物(B)とを溶剤に溶解した撥水処理剤溶液を塗布した後、反応させて撥水膜を形成、固着する。
(2)蒸着法:前記記録液滴の吐出側表面に形成したSiO2膜上に、少なくとも一個のパーフルオロアルキル基と少なくとも一個のアルコキシシリル基を有するポリマーまたは/およびオリゴマー(A)を蒸着源とする蒸着と、前記一般式(1)で表されるシラン化合物(B)を蒸着源とする蒸着とを、真空槽中の異なるゾーンで個別に繰り返し、蒸着された(A)と(B)を反応させて撥水膜を形成、固着する。
(1)のゾルゲル法は、ノズル形成基材に形成されたSiO2膜上に撥水処理剤溶液を塗布し、反応させて図2〜4で説明したように(A)の官能基の数を増加した上で基材の水酸基と反応させて固着を確実十分なものとし、また分子間での反応による三次元構造化を十分に進めて絡みを蜜にして撥水膜を形成、固着するものであり、簡便な処理工程により実施できる。
(2)の蒸着法は、例えば、下記(a)〜(b):
(a)一方の末端にパーフルオロアルキル基を有し、他方の末端にアルコキシシリル基を有するポリマーまたは/およびオリゴマー、
(b)両末端、あるいは両末端および鎖中にアルコキシシリル基を有し、主鎖にパーフルオロアルキル鎖を有するポリマーまたは/およびオリゴマー、
から選択される蒸気圧の異なるポリマーまたは/およびオリゴマー(化合物)を真空槽中で混合しながら均一に成膜できるため、予め前記化合物を混合して調製した混合物を用いて蒸着させるよりも、図2〜4で説明したような分子間での絡み構造や、基材(SiO2膜)との結合が比較的均一に形成された定着性のよい撥水膜が得られる。
本発明の画像記録装置は、前記本発明の液滴吐出ヘッドを具備し、記録信号に応じて該液滴吐出ヘッドのノズル孔から記録液滴を吐出して記録媒体上に画像を記録するように構成された装置である。ここで、液滴吐出ヘッドは、記録液滴を吐出する複数のノズル孔が設けられたノズル形成金属基材と、該複数のノズル孔が連通する記録液室と、該記録液室の容積を変化させて記録液をノズル孔から液滴として吐出させる駆動手段とを備えている。
この画像形成装置は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材であるガイドロッド1001とガイドレール1002とでキャリッジ1003を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ1004で駆動プーリ1006Aと従動プーリ1006Bとの間に張架したタイミングベルト1005を介して図12で矢示方向(主走査方向)に移動走査する。
なお、搬送ベルト1021の裏面側には記録ヘッド1007による画像形成領域に対応してガイド部材1029を配置している。また、帯電ローラ1026は、搬送ベルト1021の表層に接触し、搬送ベルト1021の回動に従動して回転するように配置されている。
また、背部には両面給紙ユニット1055が着脱自在に装着されている。この両面給紙ユニット1055は搬送ベルト1021の逆方向回転で戻される用紙1012を取り込んで反転させて再度カウンタローラ1022と搬送ベルト1021との間に給紙する。
この維持回復機1056は、記録ヘッド1007の各ノズル面をキャピングするための各キャップ1057と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード1058と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け1059などを備えている。
(実施例1)
前記図5に示したのと同様な構成からなる液滴吐出ヘッドのノズル板(ノズル形成基材)3をニッケル(Ni)の金属プレートから形成した。このノズル板を前記図10に示した工程に従って、先ず記録液滴吐出側とは反対側(ノズル孔が連通する記録液室側)にポリイミドを塗布した。なお、このポリイミド層を介して熱可塑性接着剤が布設される。次に、記録液滴吐出側に回り込んだポリイミドを酸素プラズマ処理によって除去した。次いで、ノズル形成基材の記録液滴吐出側表面にSiO2をターゲットに用いて厚さ約100nmのSiO2膜を形成した。さらに、SiO2膜上に、アルコキシシラン末端変性パーフルオロポリエーテル[オプツールDSX:ダイキン工業社製]とトリメトキシメチルシランを用いてゾルゲル法により反応させて厚さ約10nmの撥水膜を形成した。
上記により作製したノズル形成基材を図5のように構成して液滴吐出ヘッドとした。この液滴吐出ヘッドの撥水性等について評価した結果、撥水性も優れ、剥離などの問題も無くワイピング性は良好であった。
また、液滴吐出ヘッドを前記図11に示すような構成の画像記録装置に配備して記録液滴の吐出実験を行ったところ、記録液滴の固着などは無く、噴射方向の曲がりや、記録液滴の大きさのばらつき、飛翔速度の不安定化などは無かった。
すなわち、本発明によれば、安定した撥水性を発揮する液滴吐出ヘッドを具備しているため、長期使用においても高品質の画像形成が可能である。
4 ノズル孔(ノズル)
31 ノズル形成基材
32 SiO2膜
33 撥水膜(撥水層)
Claims (9)
- 記録液滴を吐出する複数のノズル孔が設けられたノズル形成基材と、該複数のノズル孔が連通する記録液室と、該記録液室の容積を変化させて記録液をノズル孔から液滴として吐出させる駆動手段とを備え、前記ノズル形成基材の記録液滴吐出側表面にSiO2膜と撥水膜が順次形成されてなる液滴吐出ヘッドにおいて、
前記ノズル形成基材のSiO2膜上に形成される撥水膜が、少なくとも一個のパーフルオロアルキル基と少なくとも一個のアルコキシシリル基を有するポリマーまたは/およびオリゴマー(A)と、下記一般式(1)で表されるシラン化合物(B)とを組成分として反応、固着されたものであることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
Si(Y)(OR)3 …(1)
[式(1)中、Rは水素原子またはアルキル基を表し、Yは置換基を有していてもよいアルキル基あるいは置換基を有していてもよいアリール基、または式(1)におけるOR基(前記と同義)を表す。それぞれのRは同じでも異なっていてもよい。] - 前記ノズル形成基材が金属材料からなることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
- 前記少なくとも一個のパーフルオロアルキル基と少なくとも一個のアルコキシシリル基を有するポリマーまたは/およびオリゴマー(A)が、直鎖状の分子構造からなり、一方の末端にパーフルオロアルキル基を有し、他方の末端にアルコキシシリル基を有することを特徴とする請求項1または2に記載の液滴吐出ヘッド。
- 前記少なくとも一個のパーフルオロアルキル基と少なくとも一個のアルコキシシリル基を有するポリマーまたは/およびオリゴマー(A)が、直鎖状の分子構造からなり、両末端、あるいは両末端および鎖中にアルコキシシリル基を有し、主鎖にパーフルオロアルキル鎖を有することを特徴とする請求項1または2に記載の液滴吐出ヘッド。
- 前記少なくとも一個のパーフルオロアルキル基と少なくとも一個のアルコキシシリル基を有するポリマーまたは/およびオリゴマー(A)が、
直鎖状の分子構造からなり、一方の末端にパーフルオロアルキル基を有し、他方の末端にアルコキシシリル基を有するポリマーまたは/およびオリゴマーと、
直鎖状の分子構造からなり、両末端、あるいは両末端および鎖中にアルコキシシリル基を有し、主鎖にパーフルオロアルキル鎖を有するポリマーまたは/およびオリゴマーと
の混合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の液滴吐出ヘッド。 - 前記混合物において、両末端、あるいは両末端および鎖中にアルコキシシリル基を有し、主鎖にパーフルオロアルキル鎖を有するポリマーまたは/およびオリゴマーの平均分子量が、一方の末端にパーフルオロアルキル基を有し、他方の末端にアルコキシシリル基を有するポリマーまたは/およびオリゴマーの平均分子量より大きいことを特徴とする請求項5に記載の液滴吐出ヘッド。
- 記録液滴を吐出する複数のノズル孔が設けられ、該記録液滴の吐出側表面にSiO2膜と撥水膜が順次形成されたノズル形成基材と、該複数のノズル孔が連通する記録液室と、該記録液室の容積を変化させて記録液をノズル孔から液滴として吐出させる駆動手段とを具備した液滴吐出ヘッドの製造方法において、
前記記録液滴の吐出側表面に形成したSiO2膜上に、少なくとも一個のパーフルオロアルキル基と少なくとも一個のアルコキシシリル基を有するポリマーまたは/およびオリゴマー(A)と、下記一般式(1)で表されるシラン化合物(B)とを溶剤に溶解した撥水処理剤溶液を塗布した後、反応させて撥水膜を形成、固着することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
Si(Y)(OR)3 …(1)
[式(1)中、Rは水素原子またはアルキル基を表し、Yは置換基を有していてもよいアルキル基あるいは置換基を有していてもよいアリール基、または式(1)におけるOR基(前記と同義)を表す。それぞれのRは同じでも異なっていてもよい。] - 記録液滴を吐出する複数のノズル孔が設けられ、該記録液滴の吐出側表面にSiO2膜と撥水膜が順次形成されたノズル形成基材と、該複数のノズル孔が連通する記録液室と、該記録液室の容積を変化させて記録液をノズル孔から液滴として吐出させる駆動手段とを具備した液滴吐出ヘッドの製造方法において、
前記記録液滴の吐出側表面に形成したSiO2膜上に、少なくとも一個のパーフルオロアルキル基と少なくとも一個のアルコキシシリル基を有するポリマーまたは/およびオリゴマー(A)を蒸着源とする蒸着と、下記一般式(1)で表されるシラン化合物(B)を蒸着源とする蒸着とを、真空槽中の異なるゾーンで個別に繰り返し、蒸着された(A)と(B)を反応させて撥水膜を形成、固着することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
Si(Y)(OR)3 …(1)
[式(1)中、Rは水素原子またはアルキル基を表し、Yは置換基を有していてもよいアルキル基あるいは置換基を有していてもよいアリール基、または式(1)におけるOR基(前記と同義)を表す。それぞれのRは同じでも異なっていてもよい。] - 記録液滴を吐出する複数のノズル孔が設けられたノズル形成金属基材と、該複数のノズル孔が連通する記録液室と、該記録液室の容積を変化させて記録液をノズル孔から液滴として吐出させる駆動手段とを備えた液滴吐出ヘッドを具備し、記録信号に応じて該液滴吐出ヘッドのノズル孔から記録液滴を吐出して記録媒体上に画像を記録する画像記録装置であって、前記液滴吐出ヘッドが、請求項1乃至6のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドであることを特徴とする画像記録装置。
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