JP2005046767A - 防汚性ハードコートおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 優れた防汚性および光学特性を実現できる防汚性ハードコートおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】 アクリル系ハードコート層11、カップリング剤層12およびフッ素系防汚層13が基材1の一主面に順次積層されている。カップリング剤層12を構成するカップリング剤は、アクリル系ハードコート層11を構成する材料と結合性を有する反応性基と、フッ素系防汚層13を構成する材料と結合性を有する反応性基とを有する。カップリング剤層12がアクリル系ハードコート層11とフッ素系防汚層13との結合を仲介し、アクリル系ハードコート層11とフッ素系防汚層13との間の親和性を高めることができる。
【選択図】 図1

Description

この発明は、ハードコート表面に防汚性が付与された防汚性ハードコートおよびその製造方法に関する。
従来、アクリル系ハードコートは、優れた強度特性および透明性などを有するため、様々な分野に広く応用されるようなっている。例えば、アクリル系ハードコートは、ガラスに成り代わる透明有機基材、特に光学用基材として利用されている。また、アクリル系ハードコートは、アクリル系ハードコート層と金属層とからなる積層板を形成するために、蒸着法またはスパッタ法により金属層上に積層されることもある。さらに、アクリル系ハードコートは、光ディスクやタッチパネル等の表面保護材料としても広く使用されてもいる。
ところが、従来のアクリル系ハードコートは、指紋、油性ペンに対する表面の防汚性が乏しく、光学特性の劣化を招いてしまうという問題を有している。そこで、耐久性、撥水性、耐汚染性に優れ、有機溶剤に可溶な塗料用樹脂であるフッ素含有樹脂を用いて、アクリル系ハードコートの防汚性を改善することが提案されている。具体的には、アクリル系ハードコートの防汚性を改善するために以下の手段が開示されている。
(1)アクリルモノマーに防汚性を持った物質(例えば、非架橋型フッ素系界面活性剤)を混合してなる防汚性ハードコート剤(例えば、特許文献1参照)
(2)紫外線硬化性アクリルモノマーとフッ素化(メタ)アクリレートとポリシロキサン基含有(メタ)アクリレートとの共重合体と、フッ素化オレフィン系重合体を含有してなる被覆用防汚性組成物(例えば、特許文献2参照)
特開平10−110118号公報 特開平7−228820号公報
ところが、上述の従来技術では、すでに硬化されたアクリル系ハードコート表面に防汚性を持たせようとすると、膜厚による透過率の減少から、光学特性が劣化してしまうという問題が生じる。また、上述の従来技術では、ハードコートの表面に十分な数のフッ素基が存在しないため、良好な防汚性を得ることができない。
したがって、この発明の目的は、優れた防汚性および光学特性を実現できる防汚性ハードコートおよびその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、第1の発明は、アクリル系ハードコート層と、
アクリル系ハードコート層上に形成されたカップリング剤層と、
カップリング剤層上に形成されたフッ素系防汚層と
を備えることを特徴とする防汚性ハードコートである。
第2の発明は、アクリル系ハードコート層上にカップリング剤層を形成する工程と、
カップリング剤層上にフッ素系防汚層を形成する工程と
を備えることを特徴とする防汚性ハードコートの製造方法できる。
この発明の防汚性ハードコートは、アクリル系ハードコート層と、アクリル系ハードコート層上に形成されたカップリング剤層と、カップリング剤層上に形成されたフッ素系防汚層とを備えるため、カップリング剤層がアクリル系ハードコート層とフッ素系防汚層との結合を仲介し、アクリル系ハードコートとフッ素系防汚層との間の親和性を高めることができる。
この発明によれば、アクリル系ハードコート層とフッ素系防汚層との間の親和性を高めることができ、これにより、優れた防汚性、耐久性および光学特性を有する防汚性ハードコートを提供することができる。
以下、この発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、この発明の一実施形態による防汚性ハードコートが形成された基材の断面を示す。図1に示すように、この防汚性ハードコート2は、アクリル系ハードコート層11、カップリング剤層12、フッ素系防汚層13が基材1上に順次積層された構成を有する。
基材1は、例えばフィルムまたは基板である。基材1の材料としては、例えばガラスおよびプラスチックなどが挙げられる。ガラスとしては、例えば、ソーダガラス、鉛ガラス、硬質ガラス、石英ガラス、液晶化ガラスなどが挙げられる。プラスチックとしては、透明性、屈折率、分散などの光学特性、さらには耐衝撃性、耐熱性、耐久性などの観点から、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレートと他のアルキル(メタ)アクリレート、スチレンなどといったビニルモノマーとの共重合体などの(メタ)アクリル樹脂;ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR−39)などのポリカーボネート系樹脂;(臭素化)ビスフェノールA型のジ(メタ)アクリレートの単独重合体ないし共重合体、(臭素化)ビスフェノールA型のモノ(メタ)アクリレートのウレタン変性モノマーの重合体および共重合体などといった熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂;ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよび不飽和ポリエステル;アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが好ましい。また、耐熱性を考慮したアラミド系樹脂の使用も可能である。この場合には加熱温度の上限が200℃以上となり、その温度範囲が広くなることが予想される。基材1がプラスチックからなる場合には、例えば、上述の樹脂を伸延、あるいは溶剤に希釈後フィルム状に成膜する、または、射出成形するなどの方法で基材1は作製される。
アクリル系ハードコート層11は、透明な有機膜である。このアクリル系ハードコート層11の材料としては、例えばラジカル重合系の紫外線硬化型樹脂や、硬度を高めるために有機物により被覆されたコロイダルシリカを含有する紫外線硬化樹脂、また、帯電防止性を改善した紫外線硬化樹脂などが挙げられる。また、アクリル系ハードコート層11の形成方法としては、例えば、スピンコート、グラビアコート、Dipコート、スプレーコートなどが挙げられる。
ここで、アクリル系ハードコート層11は、膜厚が数10nmの薄膜から、厚みが数100μmのシート状物も含めた広義のアクリル系ハードコート層を意味する。アクリル系ハードコート層11を広義に定義する理由は、アクリル系ハードコートの種類に関わらず、光硬化および熱硬化によって硬化された場合の未反応アクリル基と以下に示すカップリング剤とが選択的に結合または吸着することにより、表面に均一なカップリング剤層12が形成され、その後の乾燥により、カップリング剤層12の表面に均一にOH基が形成されることが明らかであり、アクリル基に由来するためである。
カップリング剤層12は、以下の一般式(1)で示される1つの分子中に反応性の異なる2種類の官能基を持つ化合物からなる。
Figure 2005046767
(但し、式中、Xは反応性末端基(ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基、イソシアネ−ト基など)を、Raはアルキレン基を、Rbはアルキル基を示す。)
具体的には、カップリング剤層12を構成するカップリング剤としては、例えば、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、又はジルコアルミニウム系のカップリング剤が挙げられ、これらカップリング剤は単独で用いても、また数種を混合して用いても良く、経験的に設定することができるが、シラン系のカップリング剤を用いることが特に好ましい。中でも、末端のアルコキシ基が、エトキシであることが好ましい。これらは、分子中にアクリル系ハードコート層11の表面成分と結合性を持つ反応性基(例えば、アクリル基、アミノ基、エポキシ基など)と、フッ素系防汚層13を構成する防汚剤成分と結合性を持つ反応性基(例えば、メトキシ基、エトキシ基など)とを合わせもっており、アクリル系ハードコート層11とフッ素系防汚層13との結合を仲介(カップリング)し、両者間の親和性を高めることができる。
カップリング剤を具体的に列挙すると、シラン系カップリング剤においては、アクリルシラン系では、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等を挙げることができる。
また、アミノシラン系では、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(フェニルメチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N,N−トリメチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N,N−トリブチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ω(アミノヘキシル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N{N’−β(アミノエチル)}−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
エポキシシラン系では、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等を挙げることができる。
チタネート系カップリング剤においては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1- ブチル)ビス(ジ- トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル- アミノエチル)チタネート、ジクミフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等を挙げることができる。
なお、カップリング剤は溶媒に溶解させて溶液として用いても良いし、原液で用いても良い。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、2ーメトキシプロパノール、ブチルセルソルブ、又はこれらの混合溶媒であるソルミクッス等のアルコール系溶媒、アセトン、MEK、2−ペンタノン、3−ペンタノン等のケトン系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。これらは単独で用いても、数種を混合させて用いてもよく、また水と混合して用いてもよい。特にはブチルセルソルブが好ましい。
また、カップリング剤溶液の膜厚は、好ましくは0.1nm〜100μmの範囲であり、さらに好ましくは0.1nm〜1μmである。一方、膜厚が100μmより大きいとクラックが入る傾向がある。また、0.1nm未満の場合は、アクリル系ハードコート層とフッ素防汚層を仲介し、両者間の親和性を高めることができなくなる。
アクリル系ハードコート層11へカップリング剤を塗布する前に、コロナ放電処理、酸素プラズマ、UV処理等の表面処理をアクリル系ハードコート層11の表面に施すことが好ましい。このコロナ放電の電力密度は、アクリル系ハードコートの種類や厚さ等を考慮して選ぶことが好ましく、例えば100〜700W・min/m2の範囲に設定することが好ましい。また、酸素プラズマ処理の電力密度は、100〜200W・min/m2の範囲に設定することが好ましく、また、酸素流量は、30〜100mm3、電極の材質は特に制限されず、経験的に適宜選択される。
また、カップリング剤溶液をアクリル系ハードコート層11上に付着させる方法としては、例えばアクリル系ハードコート層11の表面上にカップリング剤溶液を塗布する方法、アクリル系ハードコート層11の表面をカップリング剤溶液でラビングする方法、アクリル系ハードコート層11の表面にカップリング剤溶液を吹き付ける方法、アクリル系ハードコート層11をカップリング剤溶液に浸漬させる方法などが挙げられる。なお、カップリング剤溶液でラビングする方法としては、例えば、カップリング剤溶液存在下でアクリル系ハードコート層11の表面に物理的機械力を加える方法が挙げられ、具体的には例えば、カップリング剤溶液を含浸させた布等でアクリル系ハードコート表面を擦る(又は拭く)方法、カップリング剤溶液中でアクリル系ハードコート層11の表面を擦る方法、またカップリング剤溶液を付着させたアクリル系ハードコート層11の表面を擦る方法などが挙げられる。
具体的には、フッ素系防汚層13は、フッ素系樹脂からなる。このフッ素系樹脂は、パーフルオロポリエーテル基又はフルオロアルキル基をもつアルコキシシラン化合物である。
パーフルオロポリエーテル基又はフルオロアルキル基をもつアルコキシシラン化合物は、低い表面エネルギーを持つため、優れた防汚・撥水性効果を発揮し、パーフルオロポリエーテル基を含むことにより潤滑効果を発揮する。
フッ素系防汚層13は、下記一般式(2)若しくは(3)で示されるパーフロルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物、または下記一般式(4)若しくは(5)で示されるフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物を含有する。
Figure 2005046767
但し、式中、Rfはパーフルオロポリエーテル基を、R1は2価の原子又は基(例えば、O、NH、Sのいずれか)を、R2は炭化水素基(例えば、アルキレン基)を、R3はアルキル基を示す。
Figure 2005046767
但し、式中、Rfはパーフルオロポリエーテル基を、R1はO、NH、Sのいずれかを、R2はアルキレン基を、R3はアルキル基を示す。
Figure 2005046767
但し、式中、Rf`はフルオロアルキル基を、R1は二価の原子又は原子団を、R2はアルキレン基を、R3はアルキル基を示す。
Figure 2005046767
但し、式中、Rf`はフルオロアルキル基を、R1は炭素数7未満のアルキル基を、R2はアルキル基を示す。
また、一般式(2)で示されるRfとしてのパーフルオロポリエーテル基の分子構造は、特に限定されるものではなく、各種鎖長のパーフルオロポリエーテル基が含まれるが、下記に示す分子構造のものが好ましい。
Figure 2005046767
一般式(6)で示されるパーフルオロポリエーテル基中、p、qは1〜50の範囲にあることが好ましい。
一般式(6)で示されるパーフルオロポリエーテル基をもつアルコキシシラン化合物の分子量は、特に限定されるものではないが、安定性、取扱いやすさ等の点から、数平均分子量で400〜10000のものが好ましく、500〜4000のものがより好ましく用いられる。
一般式(6)で示されるパーフルオロポリエーテル基をもつアルコキシシラン化合物中、R1は、2価の原子又は基を示し、R2とパーフルオロポリエーテル基との結合基であり、特に制限はないが、合成上、炭素以外のO、NH、S等の原子あるいは原子団が好ましい。R2は炭化水素基であり、炭素数は2〜10の範囲が好ましい。R2としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基、フェニレン基などを例示することができる。
一般式(6)で示されるパーフルオロポリエーテル基をもつアルコキシシラン化合物中、R3はアルコキシ基を構成するアルキル基であり、通常は炭素数が3以下、つまりイソプロピル基、プロピル基、エチル基、メチル基を例示することができるが、炭素数はこれ以上でもよい。
また、フッ素系防汚層13は、次の一般式(3)で示されるRfとしてのパーフルオロポリエーテル基の分子構造としては、特に限定されるものではなく、各種鎖長のパーフルオロポリエーテル基が含まれるが、下記に示す分子構造のものが好ましい。
Rfは、アルキル基の水素原子がフッ素原子に置換されたものであり、下記の化学式(7)〜(9)にて示されるものが挙げられる。但し、全てのアルキル基の水素原子がフッ素原子に置換されている必要はなく、部分的に水素が含まれていてもよい。
Figure 2005046767
但し、nは、1以上の整数である。
Figure 2005046767
但し、l、mは、1以上の整数である。
Figure 2005046767
但し、kは、1以上の整数である。
なお、化合物(8)中、m/lは、0.5〜2.0の範囲にあることが好ましい。
パーフルオロポリエーテル基をもつアルコキシシラン化合物の分子量は、特に限定されるものではないが、安定性、取扱いやすさ等の点から、数平均分子量で400〜10000のものが好ましく、500〜4000のものがより好ましく用いられる。
Rf`としてのフルオロアルキル基の分子構造としても、特に限定されるものではなく、アルキル基の水素原子をフッ素原子で置換したものが挙げられ、各種鎖長および各種フッ素置換度のフルオロアルキル基が含まれるが、下記に示す分子構造のものが好ましい。
Figure 2005046767
Figure 2005046767
この式中、sは6〜12の整数、tは20以下の整数を示す。
化合物からなるフッ素系防汚層13の膜厚は、特に限定されるものではないが、撥水性、耐汚染性、塗布性とのバランス及び表面硬度の関係から、0.5〜100nmが好ましい。
また、パーフルオロポリエーテル基を含む防汚剤としては、当業者に公知の材料を採用することができる。その材料としては、例えば、末端に極性基を持つパーフルオロポリエーテル(特開平9−127307号公報参照)、特定構造を有するパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を含有する防汚膜形成用組成物(特開平9−255919号公報参照)、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を各種材料と組み合わせて得られる表面改質剤(特開平9−326240号公報、特開平10−26701号公報、特開平10−120442号公報、特開平10−148701号公報参照)などが挙げられる。
フッ素系防汚層13を形成する方法としては、有機フッ素化合物を溶剤に溶解させてそれをグラビアコーターにより塗布する方法、ディッピング法あるいは噴霧により塗布する方法、スピンコート法、擦り付けて塗布する方法の他、真空法により形成させる方法等が挙げられる。
一般には有機フッ素化合物を基材1の表面に塗布することにより、基材1の表面エネルギーを低下させることができる。しかしながら有機フッ素化合物を塗布するだけでは、十分な効果は得られない。つまり分子が配向するような極性基と疎水基のバランスを持った有機化合物が必要となる。その基材1との親和性については容易に類推することはできない。
防汚剤溶液は、通常、式(1)若しくは(2)で示されるパーフルオロポリエーテル基を持つアルコキシシラン化合物、または式(3)若しくは(4)で示されるフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物を溶媒に希釈して用いる。溶媒は、特に限定されないが、使用にあたっては組成物の安定性、被塗布面の最表面層に対する濡れ性、揮発性などを考慮して決められ、例えばフッ化炭化水素系溶媒が用いられる。フッ素化炭化水素系溶媒は、脂肪族炭化水素、環式炭化水素、エーテル等の炭化水素系溶媒の水素原子の一部又は全部をフッ素原子で置換した化合物である。例えば日本ゼオン社製の商品名ZEORORA−HXE(沸点78℃)、パーフルオロヘプタン(沸点80℃)、パーフルオロオクタン(沸点102℃)、アウトジモント社製の商品名H−GALDEN−ZV75(沸点75℃)、H−GALDEN−ZV85(沸点85℃)、H−GALDEN−ZV100(沸点95℃)、H−GALDEN−C(沸点130℃)、H−GALDEN−D(沸点178℃)等のハイドロフルオロポリエーテル或いはSV−110(沸点110℃)、SV−135(沸点135℃)等のパーフルオロポリエーテル、住友3M社製のFCシリーズ等のパーフルオロアルカン等が挙げられる。これらのフッ素化炭化水素系溶媒の中でも、一般式(1)、(2)又は(3)のフッ素系化合物を溶解する溶媒として、ムラのない、膜厚が均一な有機膜を得るために、沸点が70〜240℃の範囲のものを選択し、さらにはハイドロフルオロポリエーテル(HFPE)若しくはハイドロフルオロカーボン(HFC)を選択し、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることが好ましい。沸点が低すぎると、例えば塗布ムラになりやすい傾向があり、一方沸点が高すぎると乾燥がうまく行かず塗布形態が良くならない傾向がある。また、HFPE又はHFCは、一般式(1)、(2)又は(3)で表される化合物に対する溶解性が優れており、優れた塗布面を得ることができる。
この発明の一実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
アクリル系ハードコート層11、カップリング剤層12およびフッ素系防汚層13が基材1の一主面に順次積層されているため、以下のような効果を得ることができる。
(1)指紋、手垢等による汚れを付き難く、また目立ち難くでき、更にはこれらの効果を永続的に保持できる。
(2)水垢などが付着し、乾燥されてもこれらを容易に除去できる。
(3)表面の滑り性を良好にできる。
(4)ほこりなどの汚れをつき難くでき、使用性を向上できる。
(5)磨耗に対する耐久性を向上できる。
また、カップリング剤層12を形成する材料は、分子中にアクリル系ハードコート層11を形成する材料と結合性を持つ反応性基(例えば、アクリル基、アミノ基、エポキシ基など)と、フッ素系防汚層13を形成する材料と結合性を持つ反応性基(例えば、メトキシ基、エトキシ基など)とを合わせもっているため、カップリング剤層12は、アクリル系ハードコート層11とフッ素系防汚層13との結合を仲介(カップリング)し、両者間の親和性を高めることができる。これにより、優れた防汚性および耐摩耗性を実現することができる、という有利な効果を得ることができる。
また、化合物によるフッ素系防汚層13をカップリング剤層12上へ化学結合により形成することにより、耐汚水性、撥水性、表面滑り性に優れ、表面に指紋やゴミが付着した際の汚染や、傷付き等の問題を解決することができる。
以下に実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。表1に、各実施例におけるカップリング剤層12を構成するカップリング剤の化学式を示す。表2に、各実施例および各比較例におけるフッ素系防汚層13を構成する防汚剤の化学式を示す。
Figure 2005046767
Figure 2005046767
(実施例A−1)
(1)アクリル系ハードコート層11の作製
押し出し成形法により作製したシート厚79μmのポリカーボネートシート1上に、グラビアコーターにより、アクリル系紫外線硬化樹脂を均一に塗布した。そして、塗布された紫外線硬化樹脂に紫外線を照射し硬化させて、厚さ2.7μmを有するアクリル系ハードコート層11をポリカーボネートシート1上に形成した。
(2)カップリング剤層形成用組成物の調製
表1に示す他カップリング剤(1)10重量部を2―メトキシプロパノールに溶解し、カップリング剤層形成用組成物を得た。
(3)防汚層形成用組成物の調製
表2に示す防汚剤A0.1部を、沸点が178℃のハイドロフルオロポリエーテル(アウジモント社製、商品名H−GALDEN)フッ素系溶剤100部に溶解し、防汚膜形成用組成物を得た。
(4)カップリング剤層12の形成
(1)において形成したアクリル系ハードコート層11上にコロナ処理を700W・min/m2の条件で2秒間の処理を施した後、(2)において得たカップリング剤層形成用組成物を引き上げ速度1cm/secでアクリル系ハードコート層11上にディップコーティングした後、摂氏40度の環境下で1時間乾燥させカップリング剤層12を形成した。
(5)フッ素系防汚層13の形成
(4)において形成したカップリング剤層12上に、(3)において作製した防汚層形用成組成物を引き上げ速度1cm/secでディップコーティングした後、摂氏40度、湿度90%の環境下で1時間乾燥させてフッ素系防汚層13をカップリング剤層12上に形成した。これにより、防汚性ハードコート2が一主面に形成されたポリカーボネートシート1を得た。
(6)性能評価
得られた防汚性ハードコート2の性能は下記の方法に従い試験を行なうことにより評価した。表3および表4に、各実施例および各比較例の評価結果を示す。
(a)接触角
純水の接触角を測定した。測定には、協和界面化学社製CA−XE型を用いた。そして、耐溶媒性を見るために、エタノール洗浄を行った後に再度接触角を測定した。ここで、測定された純水の接触角の値が90度以上であれば、防汚性ハードコート2が良好な耐汚染性を有するもと評価できる。なお、表3において、「前」、「後」の項目は、それぞれ、エタノール洗浄前の接触角、エタノール洗浄後の接触角を示す。
(b)防汚耐久性
防汚性ハードコート2が形成されたポリカーボネートシート1をエタノールが染み込んだ布に2kgの荷重をかけ、20往復させて払拭後、純水の接触角を測定した。測定には、同様に、協和界面化学社製CA−XE型を用いた。そして、測定した接触角に基づき防汚耐久性を判定した。表3中の「○」、「×」は、以下の判定結果を示す。
○:接触角の値が90度以上
×:接触角の値が90度未満
なお、上述の試験後に測定された純水の接触角の値が90度以上に保たれていれば、作製された防汚性ハードコート2は良好な防汚耐久性を有すると評価できる。
(c)指紋付着性
(1)指紋の付着し易さ
防汚性ハードコート2上に指で触れ、指紋が付着したか否かを目視で判定した。表3中の「○」、「×」、「△」は、以下の判定結果を示す。
○:指紋の付着が少なく、付いた指紋が目立たない。
×:未処理のガラス板と同程度に指紋が付着する。
△:どちらとも判定しにくい。
(2)指紋の拭取り易さ
指紋を付着させ、キムワイプ(十滌キンバリー社製)で一往復拭き取り、指紋の取れ易さを目視により判定した。表3中の「○」、「×」、「△」は、以下の判定結果を示す。
○:指紋を完全に拭き取ることができる。
△:指紋の拭き取り跡が残る。
×:指紋の拭き取り跡が広がり、除去することが困難である。
(d)油性ペンの付着性
防汚性ハードコート2上に油性ペンで文字を書き、油性ペンの付着性を目視により判定した。表3中の「○」、「×」は、以下の判定結果を示す。
○:油性ペンで文字を書くことができない。
×:油性ペンではっきり文字を書くことができる。
(e)スチールウール耐摩耗試験
#0000のスチールウールを径25mmの円形パット面に装着し、防汚性ハードコート2が形成されたポリカーボネートシート1を往復摩耗試験機の台上に、防汚性ハードコート2の側の面を上にして固定し、この防汚性ハードコート2に上述の円形パット面を当接し、荷重200g/cm2をかけた状態でポリカーボネートシート1を1000往復させて摩耗性試験を行った。そして、この摩耗性試験終了後に、ポリカーボネートシート1を光学顕微鏡にて50倍で観察し、耐摩耗性を判定した。表3中の「○」、「×」、「△」は、以下の判定結果を示す。
○:傷が無い。
△:細かい傷がある。
×:傷が著しい。
(実施例A−2〜A−10)
実施例A−1のカップリング剤層形成用組成物における化合物1の代わりに表1に示す化合物2〜10を使用する以外は全て実施例A−1と同様にしてポリカーボネートシート1上に防汚性ハードコート2を作製した。そして、実施例A−1と同様にして、この防汚性ハードコート2の性能評価を行った。性能評価の結果を表3に併記する。
(実施例B−1)
実施例A−1の防汚層形成用組成物における化合物Aの代わりに表2に示す化合物Bを使用する以外は全て実施例A−1と同様にしてポリカーボネートシート1上に防汚性ハードコート2を作製した。そして、実施例1と同様にして、この防汚性ハードコート2の性能評価を行った。性能評価の結果を表4に示す。
(実施例B−2〜B−10)
実施例B−1のカップリング剤層形成用組成物における化合物1の代わりに表1に示す化合物2〜10を使用する以外は全て実施例B−1と同様にしてポリカーボネートシート1上に防汚性ハードコート2を作製した。そして、実施例1と同様にして、この防汚性ハードコート2の性能評価を行った。性能評価の結果を表4に併記する。
(比較例1)
実施例A―1と同様にしてアクリル系ハードコート層11をポリカーボネートシート1上に形成した。そして、このアクリル系ハードコート層11上に、カップリング剤層12およびフッ素系防汚層13を形成せずに、実施例A―1と同様にして性能評価を行った。性能評価の結果を表3に併記する。
(比較例A)
カップリング剤層12の形成を省略する以外は実施例A―1と全て同様に行いアクリル系ハードコート層11、フッ素系防汚層13が一主面に順次形成されたポリカーボネートシート1を得た。そして、実施例A−1と同様にして性能評価を行った。性能評価の結果を表3に併記する。
(比較例B)
カップリング剤層12の形成を省略する以外は実施例B―1と全て同様に行いアクリル系ハードコート層11、フッ素系防汚層2が一主面に順次形成されたポリカーボネートシート1を得た。そして、実施例A−1と同様にして性能評価を行った。性能評価の結果を表3に併記する。
Figure 2005046767
Figure 2005046767
表3および表4より、実施例A−1〜A−7,A−10および実施例B−1〜B−7,B−10では、良好な防汚性、耐久性および耐摩耗性が得られることが分かる。また、手垢および油性ペンなどに対しても優れた防汚性が得られることが分かる。一方、比較例1では、明らかにどの評価項目も実施例に比べ特性が劣り、比較例AおよびBでは、明らかに接触角が実施例に比べ劣っていることが分かる。また、比較例AおよびBでは、エタノール洗浄により接触角が大きく劣化することが分かる。
以上、この発明の一実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の一実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の一実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよい。
この発明の一実施形態による防汚性ハードコートが形成された基材の断面を示す。
符号の説明
1・・・基材、2・・・防止性ハードコート、11・・・ハードコート層、12・・・カップリング剤層、13・・・フッ素系防汚層

Claims (16)

  1. アクリル系ハードコート層と、
    上記アクリル系ハードコート層上に形成されたカップリング剤層と、
    上記カップリング剤層上に形成されたフッ素系防汚層と
    を備えることを特徴とする防汚性ハードコート。
  2. 上記カップリング剤層を構成するカップリング剤は、
    上記アクリル系ハードコート層を構成する材料と親和性を有する反応性基と、
    上記防汚層を構成する材料と結合性を有する反応性基と
    を有することを特徴とする請求項1記載の防汚性ハードコート。
  3. 上記カップリング剤層は、下記一般式(1)で示される1つの分子中に反応性の異なる2種類の官能基を持つ化合物からなることを特徴とする請求項1記載の防汚性ハードコート。
    Figure 2005046767
    (但し、式中、Xは反応性末端基を、Raはアルキレン基を、Rbはアルキル基を示す。)
  4. 上記フッ素系防汚層は、下記一般式(2)で示されるパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を含有することを特徴とする請求項1記載の防汚性ハードコート。
    Figure 2005046767
    (但し、式中、Rfはパーフルオロポリエーテル基を、R1はO、NH、Sのいずれかを、R2はアルキレン鎖を、R3はアルキル鎖を示す。)
  5. 上記フッ素系防汚層は、下記一般式(3)で示されるパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を含有することを特徴とする請求項1記載の防汚性ハードコート。
    Figure 2005046767
    (但し、式中、Rfはパーフルオロポリエーテル基を、R1はO、NH、Sのいずれかを、R2はアルキレン基を、R3はアルキル基を示す。)
  6. 上記フッ素系防汚層は、下記一般式(4)で示されるフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物を含有することを特徴とする請求項1記載の防汚性ハードコート。
    Figure 2005046767
    (但し、式中、Rf`はフルオロアルキル基を、R1は二価の原子又は原子団を、R2はアルキレン基を、R3はアルキル基を示す。)
  7. 上記フッ素系防汚層は、下記一般式(5)で示されるフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物を含有することを特徴とする請求項1記載の防汚性ハードコート。
    Figure 2005046767
    (但し、式中、Rf`はフルオロアルキル基を、R1は炭素数7未満のアルキル基を、R2はアルキル基を示す。)
  8. アクリル系ハードコート層が、光硬化または熱硬化により形成された透明な有機膜であることを特徴とする請求項1記載の防汚性ハードコート。
  9. アクリル系ハードコート層上にカップリング剤層を形成する工程と、
    上記カップリング剤層上にフッ素系防汚層を形成する工程と
    を備えることを特徴とする防汚性ハードコートの製造方法。
  10. 上記カップリング剤層を構成するカップリング剤は、
    上記アクリル系ハードコート層を構成する材料と親和性を有する反応性基と、
    上記防汚層を構成する材料と結合性を有する反応性基と
    を有することを特徴とする請求項9記載の防汚性ハードコートの製造方法。
  11. 上記カップリング剤層は、下記一般式(1)で示される1つの分子中に反応性の異なる2種類の官能基を持つ化合物からなることを特徴とする請求項9記載の防汚性ハードコートの製造方法。
    Figure 2005046767
    (但し、式中、Xは反応性末端基を、Raはアルキレン基を、Rbはアルキル基を示す。)
  12. 上記フッ素系防汚層は、下記一般式(2)で示されるパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を含有することを特徴とする請求項9記載の防汚性ハードコートの製造方法。
    Figure 2005046767
    (但し、式中、Rfはパーフルオロポリエーテル基を、R1はO、NH、Sのいずれかを、R2はアルキレン鎖を、R3はアルキル鎖を示す。)
  13. 上記フッ素系防汚層は、下記一般式(3)で示されるパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を含有することを特徴とする請求項9記載の防汚性ハードコートの製造方法。
    Figure 2005046767
    (但し、式中、Rfはパーフルオロポリエーテル基を、R1はO、NH、Sのいずれかを、R2はアルキレン基を、R3はアルキル基を示す。)
  14. 上記フッ素系防汚層は、下記一般式(4)で示されるフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物を含有することを特徴とする請求項9記載の防汚性ハードコートの製造方法。
    Figure 2005046767
    (但し、式中、Rf`はフルオロアルキル基を、R1は二価の原子又は原子団、R2はアルキレン基を、R3はアルキル基を示す。)
  15. 上記フッ素系防汚層は、下記一般式(5)で示されるフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物を含有することを特徴とする請求項9記載の防汚性ハードコートの製造方法。
    Figure 2005046767
    (但し、式中、Rf`はフルオロアルキル基を、R1は炭素数7未満のアルキル基を、R2はアルキル基を示す。)
  16. 上記アクリル系ハードコート層は、光硬化または熱硬化により形成された透明な有機膜であることを特徴とする請求項9記載の防汚性ハードコートの製造方法。
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