JP2009185208A - オレフィン−芳香族ビニル化合物系クロス共重合体を含む樹脂組成物を用いた電線被覆材 - Google Patents

オレフィン−芳香族ビニル化合物系クロス共重合体を含む樹脂組成物を用いた電線被覆材 Download PDF

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鈴木  茂
Kunihiko Konishi
邦彦 小西
Takeshi Oda
威 尾田
Tetsuya Niimura
哲也 新村
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Abstract

【課題】従来のエチレン−芳香族ビニル化合物共重合体からなる電線被覆材の耐熱性を改良し、さらに良好な外観、皮むき性示す新規クロス共重合体及び樹脂組成物からなる電線被覆材を提供することである。
【解決手段】特定のオレフィン−芳香族ビニル化合物系クロス共重合体、ポリエチレン、無機充填剤を配合することで十分な電気絶縁性(1015 Ω・cm以上)、耐熱性を有し、可撓性、皮むき性、耐薬品性の改良された電線被覆材が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。

【選択図】 なし

Description

本発明は、軟質性に優れる特定のオレフィン−芳香族ビニル化合物系クロス共重合体を含む樹脂組成物からなる電線被覆材およびこの被覆材で被覆された電線、電力ケーブル、通信ケーブルに関する。
家庭用、住宅用組電線に広く使われている600Vビニル絶縁ビニルシースケーブル平型は、代表的な低圧用電力ケーブルであり、このものは、主にポリ塩化ビニルによって構成されその絶縁体は可撓性および皮むき性に優れて、施工の容易な優れた物である。
ところが、塩化ビニル樹脂は分子中に塩素を多量に含むため、環境に対する負荷が大きいことが懸念され有効な代替材料が求められている。非塩化ビニル樹脂を用いた、電線被覆材などの電気絶縁体にはポリエチレン、特に低密度ポリエチレンの架橋物が用いられている。しかし、このようなポリエチレン系樹脂を用いた被覆層は、従来のポリ塩化ビニルからなる被覆層に比べ、可撓性および皮むき性、印刷性、充填剤分散性、難燃剤分散性に劣っているため施工などに際して不利であり改善が求められていた。
また上記問題点の解決策として、エチレン−スチレン(芳香族ビニル化合物)共重合体も検討されている(特許文献1)。エチレン−スチレン(芳香族ビニル化合物)共重合体は、エラストマ−としての性質を示し、さらには軟質塩ビ類似の力学物性を示し、耐油性、耐傷つき摩耗性等の機能性を有するので、可撓性および皮むき性に優れているが、耐薬品性が十分でない問題がある。
特開2000−119456号公報
本発明は、上記の従来技術に係る欠点を解決する、すなわち、十分な電気絶縁性、耐熱性を有し、可撓性および皮むき性の改良された樹脂組成物からなる電線被覆材を提供することを目的とする。
本発明者らは電線に用いる優れた絶縁材料を得るべく、鋭意研究を重ねた結果、特定のクロス共重合体、ポリオレフィン、水酸化化合物、炭酸塩を配合することで十分な電気絶縁性(1015 Ω・cm以上)、耐熱性を有し、可撓性、皮むき性、耐薬品性の改良された電線被覆材が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明のオレフィン−芳香族ビニル化合物系クロス共重合体(以下クロス共重合体と略す)の製造方法は、配位重合工程とアニオン重合工程を含む製造方法であって、配位重合工程として、シングルサイト配位重合触媒を用いてオレフィンモノマー、芳香族ビニル化合物モノマーおよび芳香族ポリエンの共重合を行って、芳香族ビニル化合物ユニット含量15モル%以上50モル%以下、芳香族ポリエンユニット含量0.01モル%以上3モル%以下、残部がオレフィンユニット含量であるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体を合成し、次にアニオン重合工程として、このオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体とアニオン重合性ビニル化合物モノマーをアニオン重合開始剤を用いて重合することを特徴とする。
本方法で得られるクロス共重合体には、主鎖であるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体にクロス鎖であるアニオン重合性モノマ−から構成されるポリマ−鎖が、主鎖芳香族ポリエンユニットを介し結合している構造(クロス共重合構造、またはSegregated star copolymer構造)を含むと考えられる。本クロス共重合体の構造や含まれる割合は、特性の範囲に規定され、本発明のクロス共重合体は本発明の製造方法により得られる共重合体と規定される。
配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の組成が、芳香族ビニル化合物ユニット含量15モル%以上50モル%以下、芳香族ポリエンユニット含量0.01モル%以上3モル%以下、残部がオレフィンユニット含量である条件を満たすことにより、オレフィン連鎖構造を含む総結晶融解熱が一定以下で、優れた軟質性を有するクロス共重合体を得ることが出来る。オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の組成は、公知の一般的方法により上記範囲に制御することが達成できるが、最も簡単にはモノマ−仕込み組成比を変更することにより達成できる。
オレフィン連鎖構造に由来する結晶構造、例えばエチレン連鎖やプロピレン連鎖に基づく結晶構造が一定以上存在すると軟質性が損なわれてしまう場合があり、さらに成型加工時に結晶化による収縮等成型体の寸法安定性が損なわれてしまう場合がある。本発明により得られるクロス共重合体は、本オレフィン結晶性および他の結晶性も含めた総結晶融解熱としては40J/g以下、好ましくは30J/g以下である。総結晶融解熱はDSCにより50℃〜ほぼ200℃の範囲に観測される融点に由来するピ−クの面積の総和から求めることが出来る。
さらに、配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の組成が、芳香族ビニル化合物ユニット含量15モル%以上50モル%以下、芳香族ポリエンユニット含量0.01モル%以上3モル%以下、残部がオレフィンユニット含量である条件を満たすことにより、より透明性や軟質性のクロス共重合体を得ることが可能となる。
さらに、本製造方法の配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の質量割合が、アニオン重合工程を経て最終的に得られるクロス共重合体に対して40質量%以上90質量%以下であることが必要であり、好ましくは50質量%以上90質量%以下、最も好ましくは55質量%以上90質量%以下であることを特徴とするクロス共重合体であり、本製造方法により得られるA硬度50以上85以下が好ましく、特に好ましくはA硬度60以上85以下のクロス共重合体である。
さらに本製造方法の配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の芳香族ポリエンユニット含量は、0.01モル%以上3モル%以下である。0.01モル%未満ではクロス共重合体としての特性が充分ではなく、3モル%より高いと成形加工性が悪化してしまう。最終的に得られるクロス共重合体の力学物性、成形加工性(流動性、MFRで評価できる)を考慮すると、好ましい芳香族ポリエンユニット含量は0.01モル%以上0.5モル%以下であり、最も好ましい芳香族ポリエンユニット含量は0.02モル%以上0.2モル%以下である。さらに芳香族ポリエンユニット含量が0.02モル%以上0.2モル%以下の範囲である場合、クロス共重合体の物性に主鎖であるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の機能性が十分に生かされ好ましい。芳香族ポリエンユニット含量が0.2モル%以上である場合、主鎖の芳香族ポリエンユニット間の平均鎖長が短くなり、主鎖であるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の機能性が十分に生かされない場合がある。
また、クロス共重合体のMFRは高すぎても、電線被覆材の押し出し成形時に表面外観が悪化するので、メルトフローレートは20g/10min(200℃、試験荷重5kg)以下が望ましく、引張破断強度が低いと皮むき性が悪化してしまう傾向があるので、引張破断強度は、10MPa以上が望ましい。
以下に、本発明の製造方法について詳細に説明する。
<配位重合工程>
本製造方法の配位重合工程においては、シングルサイト配位重合触媒が用いられる。好ましくは、下記の一般式(1)または(2)で表される遷移金属化合物と助触媒から構成されるシングルサイト配位重合触媒を用いる。

式中、A、Bは同一でも異なっていてもよく、非置換もしくは置換シクロペンタフェナンスリル基、非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、非置換もしくは置換シクロペンタジエニル基、非置換もしくは置換インデニル基、または非置換もしくは置換フルオレニル基から選ばれる基である。
YはA、Bと結合を有し、他に置換基として水素もしくは炭素数1〜15の炭化水素基(1〜3個の窒素、酸素、硫黄、燐、珪素原子を含んでもよい)を有するメチレン基、シリレン基、エチレン基、ゲルミレン基、硼素残基である。置換基は互いに異なっていても同一でもよい。また、Yは環状構造を有していてもよい。
Xは、水素、水酸基、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜4の炭化水素置換基を有するシリル基、または炭素数1〜20の炭化水素置換基を有するアミド基である。2個のXは結合を有しても良い。
Mはジルコニウム、ハフニウム、またはチタンである。
好ましくは、A、Bは非置換もしくは置換シクロペンタフェナンスリル基、非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、非置換もしくは置換インデニル基から選ばれる基である。
好ましくは、YはA、Bと結合を有し、他に置換基として水素もしくは炭素数1〜15の炭化水素基(1〜3個の窒素、酸素、硫黄、燐、珪素原子を含んでもよい)を有するメチレン基または硼素基である。
さらに本遷移金属化合物はラセミ体であることが好ましい。かかる遷移金属化合物の好適な例としては、EP−0872492A2公報、特開平11−130808号公報、特開平9−309925号公報に具体的に例示した置換メチレン架橋構造を有する遷移金属化合物や、WO01/068719号公報に具体的に例示した硼素架橋構造を有する遷移金属化合物である。

式中、Cpは非置換もしくは置換シクロペンタフェナンスリル基、非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、非置換もしくは置換シクロペンタジエニル基、非置換もしくは置換インデニル基、または非置換もしくは置換フルオレニル基から選ばれる基である。Y’は、Cp、Zと結合を有し、他に水素もしくは炭素数1〜15の炭化水素基を有するメチレン基、シリレン基、エチレン基、ゲルミレン基、硼素残基である。置換基は互いに異なっていても同一でもよい。また、Y’は環状構造を有していてもよい。Zは窒素、酸素またはイオウを含み、窒素、酸素またはイオウでM’に配位する配位子でY’と結合を有し、他に水素、炭素数1〜15の置換基を有する基である。
M’はジルコニウム、ハフニウム、またはチタンである。
X’は、水素、ハロゲン、炭素数1−15のアルキル基、炭素数6−10のアリール基、炭素数8−12のアルキルアリール基、炭素数1−4の炭化水素置換基を有するシリル基、炭素数1−10のアルコキシ基、または炭素数1−6のアルキル置換基を有するジアルキルアミド基である。
nは、1または2の整数である。
本製造方法の配位重合工程においては、さらに好ましくは、上記の一般式(1)で表されるシングルサイト配位重合触媒と助触媒から構成される重合触媒が用いられる。
本製造方法の配位重合工程で用いる助触媒としては、従来遷移金属化合物と組み合わせて用いられている公知の助触媒を使用することができるが、そのような助触媒として、メチルアルミノキサン(またはメチルアルモキサンまたはMAOと記す)等のアルモキサンまたは硼素化合物が好適に用いられる。用いられる助触媒の例としては、EP−0872492A2号公報、特開平11−130808号公報、特開平9−309925号公報、WO00/20426号公報、EP0985689A2号公報、特開平6−184179号公報に記載されている助触媒やアルキルアルミニウム化合物が挙げられる。
アルモキサン等の助触媒は、遷移金属化合物の金属に対し、アルミニウム原子/遷移金属原子比で0.1〜100000、好ましくは10〜10000の比で用いられる。0.1より小さいと有効に遷移金属化合物を活性化出来ず、100000を超えると経済的に不利となる。
助触媒として硼素化合物を用いる場合には、硼素原子/遷移金属原子比で0.01〜100の比で用いられるが、好ましくは0.1〜10、特に好ましくは1で用いられる。0.01より小さいと有効に遷移金属化合物を活性化出来ず、100を超えると経済的に不利となる。遷移金属化合物と助触媒は、重合設備外で混合、調製しても、重合時に設備内で混合してもよい。
本発明に用いられるオレフィンとしては、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィン、すなわちプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、ビニルシクロヘキサンや環状オレフィン、すなわちシクロペンテン、ノルボルネンが挙げられる。好ましくは、エチレンまたはエチレンとα−オレフィンすなわちプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、または1−オクテン等の混合物が用いられ、更に好ましくは、エチレンが用いられる。
本発明に用いられる芳香族ビニル化合物は、スチレンおよび各種の置換スチレン、例えばp−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、o−t−ブチルスチレン、m−t−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−クロロスチレン、o−クロロスチレン等が挙げられる。工業的には好ましくはスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、特に好ましくはスチレンが用いられる。
本発明に用いられる芳香族ポリエンは10以上30以下の炭素数を持ち、複数の二重結合(ビニル基)と単数または複数の芳香族基を有し配位重合可能な芳香族ポリエンであり、二重結合(ビニル基)の1つが配位重合に用いられて重合した状態において残された二重結合がアニオン重合可能な芳香族ポリエンである。好ましくは、オルトジビニルベンゼン、パラジビニルベンゼンまたはメタジビニルベンゼンのいずれか1種または2種以上の混合物が好適に用いられる。
本発明の配位重合工程でオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体を製造するにあたっては、上記に例示した各モノマー、遷移金属化合物および助触媒を接触させるが、接触の順番、接触方法は任意の公知の方法を用いることができる。
以上の共重合の方法としては溶媒を用いずに液状モノマー中で重合させる方法、あるいはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、クロロ置換ベンゼン、クロロ置換トルエン、塩化メチレン、クロロホルム等の飽和脂肪族または芳香族炭化水素またはハロゲン化炭化水素の単独または混合溶媒を用いる方法がある。好ましくは混合アルカン系溶媒やシクロヘキサンやトルエン、エチルベンゼンを用いる。重合形態は溶液重合、スラリ−重合いずれでもよい。また、必要に応じ、バッチ重合、連続重合、予備重合、多段式重合等の公知の方法を用いることが出来る。
単数や連結された複数のタンク式重合缶やリニアやル−プの単数、連結された複数のパイプ重合設備を用いることも可能である。パイプ状の重合缶には、動的、あるいは静的な混合機や除熱を兼ねた静的混合機等の公知の各種混合機、除熱用の細管を備えた冷却器等の公知の各種冷却器を有しても良い。また、バッチタイプの予備重合缶を有していても良い。さらには気相重合等の方法を用いることができる。
重合温度は、−78℃から200℃が適当である。−78℃より低い重合温度は工業的に不利であり、200℃を超えると遷移金属化合物の分解が起こるので適当ではない。さらに工業的に好ましくは、0℃〜160℃、特に好ましくは30℃〜160℃である。
重合時の圧力は、0.1気圧〜100気圧が適当であり、好ましくは1〜30気圧、特に工業的に特に好ましくは、1〜10気圧である。
本発明の製造方法の配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体は、芳香族ビニル化合物ユニット含量15モル%以上50モル%以下、芳香族ポリエンユニット含量0.01モル%以上3モル%以下、残部がオレフィンユニット含量である組成を有する。本共重合体がこの組成を有することで、従来にない軟質性をクロス共重合体に与えることが可能となる。
さらに用いられるシングルサイト配位重合触媒の遷移金属化合物が一般式(1)で示される構造を有し、かつA、Bは非置換もしくは置換シクロペンタフェナンスリル基、非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、非置換もしくは置換インデニル基から選ばれる基であり、YはA、Bと結合を有し、他に置換基として水素もしくは炭素数1〜15の炭化水素基(1〜3個の窒素、酸素、硫黄、燐、珪素原子を含んでもよい)を有するメチレン基または硼素基であり、かつ本遷移金属化合物はラセミ体である場合、得られる本組成範囲のオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体は、オレフィン−芳香族ビニル化合物の交互構造、好ましくはエチレン−芳香族ビニル化合物交互構造にアイソタクティックの立体規則性を有し、そのため本発明のクロス共重合体は本交互構造に由来する微結晶性を有することが出来る。そのため、本オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体は、立体規則性がない場合と比較し交互構造の微結晶性に基づく良好な力学物性や耐油性を与えることができ、この特徴は最終的に本発明のクロス共重合体にも受け継ぐことが出来る。
オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の交互構造の微結晶性による結晶融点は概ね50℃〜120℃の範囲にありDSCによるその結晶融解熱は1〜30J/g以下であるので、本発明のクロス共重合体は総体として、1〜40J/g以下、好ましくは1〜30J/g以下の結晶融解熱を有することができる。本範囲の結晶融解熱の結晶性は、本クロス共重合体の軟質性、成型加工性に悪影響は与えず、むしろ優れた力学物性や耐油性の面で有益である。
本発明の製造方法において、配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の質量割合はアニオン重合工程を経て最終的に得られるクロス共重合体質量に対して40質量%以上90質量%以下、好ましくは50質量%以上90質量%以下、最も好ましくは55質量%以上90質量%以下である条件を満たす。本条件を満たすことで、アニオン重合工程で重合されるポリマ−の種類によらず、オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の有する軟質性が得られるクロス共重合体に反映され、A硬度50以上85以下、好ましくは、A硬度50以上80以下の軟質性を示すことが出来る。配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の質量がクロス共重合体質量の50質量%未満である場合、例えばアニオン重合工程で重合されるポリマ−がポリスチレン等の剛直なポリマ−である場合、得られるクロス共重合体のA硬度が本発明の範囲より高くなり軟質性は失われてしまう。逆に配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の質量がクロス共重合体質量の90質量%より高い場合、アニオン重合工程で重合されるポリマ−鎖が有する特性が十分に発揮されない。アニオン重合工程で重合されるポリマ−鎖が有する特性としては、例えばアニオン重合工程で重合されるポリマ−がポリスチレンである場合、耐熱性やポリスチレン系ポリマ−との相溶性が挙げられる。
<アニオン重合工程>
本発明の製造方法のアニオン重合工程では、配位重合工程で得られたオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体とアニオン重合性ビニル化合物モノマーの共存下、アニオン重合開始剤を用いて重合を行う。
アニオン重合工程においては、アニオン重合性ビニル化合物モノマーであれば、いずれも使用することが可能である。
特に、本発明においてはスチレン、p−メチルスチレン、p−ターシャリ−ブチルスチレン、p−クロロスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等の芳香族ビニル化合物、ブタジエン、イソプレン等のジエン化合物、メチルアクリレート等のアクリル酸エステル、メチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル等及びこれらの混合物が用いられる。好ましくは芳香族ビニル化合物または芳香族ビニル化合物とこれらアニオン重合可能なモノマ−との混合物、最も好ましくは芳香族ビニル化合物が用いられる。
本発明のアニオン重合工程では上記アニオン重合性モノマ−以外に、配位重合工程で重合されずに重合液中に少量残存する芳香族ポリエンも重合されても良い。
本発明のアニオン重合工程は、上記の配位重合工程の後に実施される。この際、配位重合工程で得られた共重合体を、クラムフォーミング法、スチームストリッピング法、脱揮槽、脱揮押出し機等を用いた直接脱溶媒法等、任意のポリマー回収法を用いて、重合液から分離、精製してアニオン重合工程に用いても良い。しかし、配位重合後の重合液から、残留オレフィンを放圧後、あるいは放圧せずに、次のアニオン重合工程に用いるのが、経済的に好ましい。重合体を重合液から分離せずに、重合体を含んだ重合溶液をクロス化工程に用いることができることが本発明の特徴の1つである。
溶媒はアニオン重合工程で、アニオン重合の際に連鎖移動等の不都合を生じない混合アルカン系溶媒やシクロヘキサンやベンゼン等の溶媒が特に好ましいが、重合温度が150℃以下であれば、トルエン、エチルベンゼン等の他の溶媒も用いることが可能である。
重合形態は、アニオン重合に用いられる任意の公知の方法を用いることができる。
重合温度は、−78℃から200℃が適当である。−78℃より低い重合温度は工業的に不利であり、150℃を超えると連鎖移動等が起こるので適当ではない。さらに工業的に好ましくは、0℃〜200℃、特に好ましくは30℃〜150℃である。
重合時の圧力は、0.1気圧〜100気圧が適当であり、好ましくは1〜30気圧、特に工業的に特に好ましくは、1〜10気圧である。
本発明のアニオン重合工程には、公知のアニオン重合開始剤を用いることができる。好ましくは、アルキルリチウム化合物やビフェニル、ナフタレン、ピレン等のリチウム塩あるいはナトリウム塩、特に好ましくは、sec−ブチルリチウム、n(ノルマル)−ブチルリチウムが用いられる。また、多官能性開始剤、ジリチウム化合物、トリリチウム化合物を用いても良い。さらに必要に応じて公知のアニオン重合末端カップリング剤を用いてもよい。
アニオン重合工程では、開始剤量を適宜調節することで、クロス鎖の長さ、クロス化されなかったホモポリマーの分子量を任意に変更することが可能である。
クロス鎖部分の長さ(分子量)は、クロス化されなかったホモポリマーの分子量から推定できるが、その長さは、重量平均分子量として、好ましくは5000以上20万以下である。また、その分子量分布(Mw/Mn)は好ましくは3以下、特に好ましくは1.5以下である。
さらに本発明のクロス共重合体では、アニオン重合工程において用いられるアニオン重合性ビニル化合物モノマーが芳香族ビニル化合物モノマ−であることが好ましい。ここで、配位重合工程に用いられる芳香族ビニル化合物モノマ−とアニオン重合工程において用いられる芳香族ビニル化合物モノマ−は同一であることが好ましい。最も好ましくは配位重合工程で用いられる芳香族ビニル化合物モノマ−がスチレンであり、かつアニオン重合工程において用いられるアニオン重合性ビニル化合物モノマーがスチレンでありその一部または全部が配位重合工程における未反応スチレンであることを特徴とするクロス共重合体である。
本発明で用いるポリエチレンは、通常の成形材料として用いられる数平均分子量が3万以上のポリエチレンである。例えば、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンやエチレン、プロピレン、他のα―オレフィン、不飽和カルボン酸またはその誘導体から選ばれる2種以上の化合物の共重合体が挙げられる。
本発明で用いる無機充填剤は、水酸化マグネシウム 、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム等があり、難燃性を付与するためである。これらの無機充填剤のメジアン径は、0.5〜5μmの範囲である。メジアン径が、0.5μm未満であったり5μmを超えると力学物性(引張強度、破断伸度等)の低下が生じるとともに柔軟性の低下やピンホールの発生を引き起こしてしまうことがある。メジアン径は以下の方法で測定出来る。
メジアン径の測定方法:200mlビーカーに試料1gをはかり採り、これに脱イオン水150mlを加えて撹拌下、超音波で2分間分散させる。次いでこの分散液をコールターカウンタ社製コールターカウンターTAII型を使用し、アパーチャーチューブ100μmを用いて測定する。この時得られた累積分布図よりメジアン径(μm)を求める。
クロス共重合体は10〜90質量部、好ましくは20〜80質量部である。この配合量が10質量部より少ないと可撓性が不十分である。一方、90質量部より多いと耐熱性の低下を招く。
ポリエチレンは90〜10質量部、好ましくは80〜20質量部である。この配合量が90質量部より多いと、可撓性が不十分である。一方、10質量部より少ないと耐熱性の低下を招く。
無機充填剤はクロス共重合体とポリエチレンの合計100質量部に対して50〜200質量部、好ましくは100〜150質量部である。この配合量が50質量部より少ないと難燃性が不十分であり、200質量部より多いと可撓性が低下する。
本発明のクロス共重合体を含む樹脂組成物には、従来塩ビや他の樹脂に用いられる公知の任意の可塑剤を配合することが出来る。好ましく用いられる可塑剤は含酸素または含窒素系可塑剤であり、エステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、エ−テル系可塑剤、またはアミド系可塑剤から選ばれる可塑剤である。
これらの可塑剤は、本発明のクロス共重合体に用いられるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体との相溶性が比較的良好でブリ−ドし難く、またガラス転移温度が低下する度合いで評価できる可塑化効果も大きく、好適に用いることが出来る。またこれらの可塑剤を用いた場合、特異的な効果として本発明のクロス共重合体に用いられるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体、特にエチレン−芳香族ビニル化合物−ジビニルベンゼン共重合体中のエチレンと芳香族ビニル化合物ユニットのアイソタクティック交互構造の結晶化を促進し結晶化度を上げる効果があり、通常の可塑化効果に加え耐熱性や耐油性の向上効果をも示すことが出来る。
本発明に好適に用いることができるエステル系可塑剤の例としては、各種フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、アジピン酸エステル、セバチン酸エステル、アゼレート系エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、グルタミン酸エステル、コハク酸エステル、酢酸エステル等のモノ脂肪酸エステル、リン酸エステルやこれらのポリエステルである。
本発明に好適に用いることができるエポキシ系可塑剤の例としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油が挙げられる。
本発明に好適に用いることができるエ−テル系可塑剤の例としては、ポリエチレングリコ−ルやポリプロピレングリコ−ルやこれらの共重合物、混合物が挙げられる。
本発明に好適に用いることができるアミド系可塑剤の例としては、各種スルホン酸アミドが挙げられる。これら可塑剤は単独で用いても、複数を用いても良い。
可塑剤の配合量は、本発明のクロス共重合体またはその樹脂組成物100質量部に対して、可塑剤1以上〜30質量部以下である。1質量部未満では上記効果が不足し、30質量部より高いとブリ−ドや、過度の軟化、それによる過度のべたつきの発現等の原因となる場合がある。
本発明の樹脂組成物、可塑剤組成物、フィラ−組成物を製造する方法は特に限定されず、公知の適当なブレンド法を用いることができる。例えば、単軸、二軸のスクリュー押出機、バンバリー型ミキサー、プラストミル、コニーダー、加熱ロールなどで溶融混合を行うことができる。溶融混合を行う前に、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、スーパーミキサー、タンブラーなどで各原料を均一に混合しておくこともよい。溶融混合温度はとくに制限はないが、100〜300℃、好ましくは150〜250℃が一般的である。
本発明の電線被覆材の成形法としては、押出し成形、異型押し出し成形、中空成形、射出成形等公知の成形法を用いることができる。
以下、実施例により、本発明を説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
実施例で得られたクロス共重合体の分析は以下の手段によって実施した。
13C−NMRスペクトルは、日本電子社製α−500を使用し、重クロロホルム溶媒または重1,1,2,2−テトラクロロエタン溶媒を用い、TMSを基準として測定した。ここでいうTMSを基準とした測定は以下のような測定である。先ずTMSを基準として重1,1,2,2−テトラクロロエタンの3重線13C−NMRピークの中心ピークのシフト値を決めた。次いで共重合体を重1,1,2,2−テトラクロロエタンに溶解して13C−NMRを測定し、各ピークシフト値を、重1,1,2,2−テトラクロロエタンの3重線中心ピークを基準として算出した。重1,1,2,2−テトラクロロエタンの3重線中心ピークのシフト値は73.89ppmであった。測定は、これら溶媒に対し、ポリマーを3質量/体積%溶解して行った。
ピーク面積の定量を行う13C−NMRスペクトル測定は、NOEを消去させたプロトンゲートデカップリング法により、パルス幅は45°パルスを用い、繰り返し時間5秒を標準として行った。
クロス共重合体中のスチレン含量の決定は、H−NMRで行い、機器は日本電子社製α−500及びBRUCKER社製AC−250を用いた。重1,1,2,2−テトラクロロエタンに溶解し、測定は、80〜100℃で行った。TMSを基準としてフェニル基プロトン由来のピーク(6.5〜7.5ppm)とアルキル基由来のプロトンピーク(0.8〜3ppm)の面積強度比較で行った。
クロス共重合体の分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて標準ポリスチレン換算の重量平均分子量を求めた。THFを溶媒とし、東ソー社製HLC−8020を用い測定した。
分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて標準ポリスチレン換算の重量平均分子量と数平均分子量を求めた。高温GPC測定は、東ソー社製HLC−8121GPC/HTを用い、カラムはTSKgelGMHHR−H HT(東ソー社製)、オルトジクロロベンゼンを溶媒として送液流量1.0ml/min、145℃で測定した。また、常温での測定は、日立製作所社製L−5030 カラムはTSK−GEL MultiporeHXL-M(東ソ−社製)を2本直列し、テトラヒドロフランを溶媒として送液流量1.0ml/min、40℃で測定した。
DSC測定は、セイコー電子社製DSC200を用い、窒素気流下で行った。すなわち樹脂組成物10mgを用い、昇温速度10℃/分で−50℃から240℃までDSC測定を行い、融点、結晶融解熱及びガラス転移点を求めた。1回目の測定後液体窒素で急冷した後に行う2度目の測定は行わなかった。
なお、物性評価用の試料は加熱プレス法(温度180℃、時間3分間、圧力50kg/cm2)により成形した厚さ1.0mmのシ−トを用いた。
<引張試験>
JIS K−6251に準拠し、シートを2号1/2号型テストピース形状にカットし、島津製作所AGS−100D型引張試験機を用い、引張速度500mm/minにて測定した。
<硬度>
硬度はJIS K−7215プラスチックのデュロメーター硬さ試験法に準じてタイプAのデュロメーター硬度を求めた。この硬度は瞬間値である。
<MFR>
MFRはJIS K−7210熱可塑性プラスチックの流れ試験方法に準じて測定した。測定温度200℃、試験荷重5kgで行った。
<体積固有抵抗>
体積固有抵抗はJIS K−6723に準拠して測定した。
<外観>
600Vビニルシースケーブル平型(サイズ2×1.6mm)を押出成形機を用いて
作成(押し出し温度=200℃)した。このようにして得たケーブルについて、表面の平滑性を比較例1の軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物と比較して、下記の3段階評価を行った。
○ :比較例1と同様で良好
△ :比較例1よりも若干劣る
× :比較例1よりも明らかに劣る
<耐熱変形試験>
上記のケーブルをギヤオーブン内で100℃×3時間加熱処理し、処理前後の長さを測定し、変形率が5%以内であれば ○、 変形率が5%超であれば×と評価した。
変形率=100×(試験後の長さ−試験前の長さ)/試験前の長さ
<可撓性>
上記のケーブルを手で屈曲させた時の感触を比較例1と比較して、下記3段階評価を行った。
○ :比較例1と同様で良好
△ :比較例1よりも若干劣る
× :比較例1よりも明らかに劣る
<皮むき性>
上記のケーブル端部から30mmの絶縁体をはさみを用いて皮むきした時の感触を、比較例1と比較して、下記3段階評価を行った。
○ :比較例1と同様で良好
△ :比較例1よりも若干劣る
× :比較例1よりも明らかに劣る
<難燃性>
上位ケーブルを200mmに切り取り、上端をクランプで固定し、垂直にぶら下げ、下端にガスバーナーで3秒接炎した後、炎を取り去り、自己消火性の有無を観察した。
n=5で実施し、全て自己消火性があるものを○、全て燃焼したものを×、混在した場合は△とした。
<耐薬品性>
上記のケーブルをメチルエチルケトン中で室温×24時間放置し、処理前後の長さを測定し、変形率が5%以内であれば ○、 変形率が5%超であれば×と評価した。
変形率=100×(試験後の長さ−試験前の長さ)/試験前の長さ
<ジビニルベンゼン>
以下の実施例、比較例で用いたメタジビニルベンゼンは、旭化成ファインケム社製のメタジビニルベンゼン(異性体純度97%以上)である。この場合の異性体純度とは、オルト、メタ、パラの各種ジビニルベンゼン異性体に対するメタジビニルベンゼンの割合である。実施例Cで用いたパラジビニルベンゼンは、旭化成ファインケム社製のパラジビニルベンゼン(異性体純度95%以上)である。
<触媒(遷移金属化合物)>
以下の実施例A〜C、比較例A〜Cでは、触媒(遷移金属化合物)として、rac(ラセミ)−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライド(化3)を用いた。
実施例A
<クロス共重合体の合成>
触媒としてrac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを用い、以下のように実施した。
容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。
シクロヘキサン4100ml、スチレン590ml及び旭化成ファインケム社製のメタジビニルベンゼン(メタジビニルベンゼンとして7mmol)を仕込み、内温70℃に加熱攪拌した。窒素を約200Lバブリングして系内及び重合液をパージした。トリイソブチルアルミニウム8.2mmol、メチルアルモキサン(東ソーアクゾ社製、PMAO−3A)をAl基準で12.3mmol加え、ただちにエチレンを導入し、圧力0.3MPa(2.0Kg/cmG)で安定した後に、オートクレーブ上に設置した触媒タンクから、rac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを20μmol、トリイソブチルアルミニウム0.82mmolを溶かしたトルエン溶液約50mlをオートクレーブに加えた。内温を70℃、圧力を0.3MPaに維持しながら1.4時間重合を実施した(配位重合工程)。この段階でのエチレンの消費量は標準状態で約150Lであった。重合液の少量(数十ml)をサンプリングし、メタ析により配位重合工程のポリマーサンプルを得た。本サンプリング液より、配位重合工程でのポリマ−収量、組成、分子量等を求めた。
重合缶へのエチレンの供給を停止し、急速にエチレンを放圧した。Sec−ブチルリチウム27.0mmolを触媒タンクから窒素ガスに同伴させて重合缶内に導入した。直ちにアニオン重合が開始し、内温は70℃から一時80℃まで上昇した。そのまま30分間温度を70〜80℃に維持し攪拌を継続し重合を続けた(アニオン重合工程)。
重合終了後、得られたポリマー液を、激しく攪拌した大量のメタノール液中に少量ずつ投入して、ポリマーを回収した。このポリマーを、室温で1昼夜風乾した後に80℃、真空中、質量変化が認められなくなるまで乾燥した。771gのポリマー(クロス共重合体)を得た。
実施例B、C:実施例Aと同様の手順で表1記載の条件で重合を行った。
比較例A,B
クロス共重合体の破断点応力あるいはMFRが特許請求範囲外に外れる重合条件を選択して、重合を行った。重合条件は表1に示す。
比較例C
実施例Aと同じ条件で配位重合のみ実施し、アニオン重合を行わないで、サンプルを得た。重合条件は表1に示す。
また表2、3に、実施例A〜C、比較例A〜Cで得られたポリマーの分析結果を示す。
配位重合工程で得られたポリマ−の分析値は、配位重合工程終了時にサンプリングした少量(数十ml)の重合液をメタノールに析出させてポリマ−を回収し、分析を行うことで配位重合工程でのポリマ−収量、組成、分子量等を求めた。配位重合工程で得られたポリマ−のジビニルベンゼン含有量は、ガスクロ分析により求めた重合液中の未反応ジビニルベンゼン量と重合に用いたジビニルベンゼン量の差から求めた。
参考例1:ポリエチレンの調整
ポリエチレン(ハイゼックス 5305E ;プライムポリマー製)をb−1とした。
参考例2:水酸化化合物の調整
水酸化マグネシウムを3種類準備した。メジアン径が1.5μmをc−1とし、メジアン径が0.3μmのものをc−2、同じく8μmのものをc−3とした。
実施例1〜3及び比較例1〜8
樹脂成分、酸化防止剤を表4に示す質量比で混合し、30mmφ2軸押出機で230℃で溶融混練して組成物とした。また比較のため従来技術に係わる被覆材として軟質塩化ビニル系樹脂(比較例1)を準備した。各実施例、比較例について600Vビニルシースケーブル平型(サイズ2×1.6mm)を押出成形機を用いて作成(押し出し温度=200℃)した。このようにして得たケーブルについて、評価を実施した。
表4において注1、注2は以下の通りである。
注1:軟質塩化ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニル 平均分子量1300 100質量部に可塑剤 DINP 50質量部、 炭酸カルシウム 80質量部を配合したもの。
注2:酸化防止材: チバガイギースペシャリティケミカル製 イルガノックス1010
表4に示すように本発明の無機充填剤はメジアン径が0.5〜5μmの範囲内でないと電線被覆材としては可撓性が不足している。 又、クロス共重合体は破断点応力が10MPa以上且つMFRが20g/10min以下であることが望ましい。
又、比較例4に示すように、配位重合のみのスチレンーエチレン共重合体は破断点応力MFRが請求範囲外であっても外観、皮むき性は良好であるが、耐熱性は不十分であり、電線被覆材としては十分な性能ではない。又、比較例7、8からクロス共重合体とポリエチレンを併用しないと、電線被覆材として十分な性能が発現しない。

Claims (6)

  1. オレフィン−芳香族ビニル化合物系クロス共重合体10〜90質量部およびポリエチレン90〜10質量部、ならびにオレフィン−芳香族ビニル化合物系クロス共重合体とポリエチレンの合計100質量部に対してメジアン径が、0.5〜5μmの無機充填剤50〜200質量部を含有する熱可塑性樹脂組成物。
  2. 無機充填剤が水酸化マグネシウム 、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウムより選らばれた少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 請求項1または請求項2記載の熱可塑性樹脂組成物を含有する電線被覆材。
  4. オレフィン−芳香族ビニル化合物系クロス共重合体の引張破断強度が、10MPa以上であり且つメルトフローレートが、20g/min(200℃、荷重5kg)以下である請求項3記載の電線被覆材。
  5. オレフィン−芳香族ビニル化合物系クロス共重合体の製造は、配位重合工程とアニオン重合工程を含む製造方法であって、配位重合工程として、シングルサイト配位重合触媒を用いてオレフィンモノマー、芳香族ビニル化合物モノマーおよび芳香族ポリエンの共重合を行って、オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体を合成し、次にアニオン重合工程として、このオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体とアニオン重合性ビニル化合物モノマーをアニオン重合開始剤を用いて重合することを特徴とする、下記(1)、(2)の条件を満足する製造方法。
    (1)配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の芳香族ビニル化合物ユニット含量が、15モル%以上50モル%以下、芳香族ポリエンユニット含量が、0.01モル%以上3モル%以下、残部がオレフィンユニット含量である。
    (2)配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の質量割合が、アニオン重合工程を経て最終的に得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物系クロス共重合体に対して40質量%以上90質量%以下である。
  6. 請求項5記載の製造方法により得られたオレフィン−芳香族ビニル化合物系クロス共重合体を用いた請求項3または請求項4記載の電線被覆材。
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