JP4414513B2 - プロピレン系樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明性、柔軟性、低温衝撃性に優れ、ベタツキ感のないプロピレン系樹脂組成物、その製造方法および用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、経済性と性能のバランスに優れ、また軽量化、リサイクル化が可能なことから、バンパー等の自動車部品をはじめ、種々の工業部品、家電部品、およびフィルム、シート分野において幅広く利用されている。
【0003】
従来、オレフィン系熱可塑性エラストマーの製造には、エチレン−プロピレンゴム(以下、EPRという。)やエチレン−プロピレンターポリマー(以下、EPDMという。)とポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を押出機により混練する機械的な混合方法と、両成分を一連の重合により製造し両成分の混合物を得る方法(重合法)が知られている。かかる重合法による製造では、第一段階においてプロピレンを重合し、第二段階においてエチレンとプロピレンの共重合を行う2段階重合法が一般的に行われる。
【0004】
しかしながら、従来のEPRや、EPDMは、低温での耐衝撃性に優れるもののベタツキ感があり、またそれらとポリプロピレンの混合物からなる成形品においても低温での耐衝撃性に優れるものの、ベタツキ感があるとともに、白色または乳白色であり、透明性が要求される容器、シート、フィルム等の成形品の材料として使用することが出来なかった。
【0005】
また、重合法により製造された熱可塑性エラストマーは、機械的混合によって得られたものに比べて透明性が良好であるが、この方法により得られた樹脂においてもベタツキ感があり、しかも、その成形品は白色または乳白色であり透明性が要求される分野において使用することが出来なかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、上記EPRやEPDMとポリプロピレンの混合物が有している柔軟性、低温での耐衝撃性等の良好な性状を備え、かつ透明性が優れ、ベタツキ感のない材料の開発が課題となっている。
【0007】
上記課題を解決するために、特許第2677920号公報ならびに特開平07−118354号公報には、特定の組成を有するプロピレン系共重合体が良好な柔軟性、透明性を示すことが開示されている。
【0008】
しかしながら、上記方法により得られたプロピレン系重合体には低結晶性成分の他に、ベタツキ感、透明性阻害要因である非結晶性成分が多く混在しているために、ベタツキ感、透明性において未だ改良の余地が残っており、更なる改良が望まれていた。
【0009】
また、特願平10−366652には、o−ジクロロベンゼン溶媒を用いた温度昇温分別法による0℃までの温度で溶出する成分が全体の10重量%以下である特定の結晶性分布を有するプロピレン系樹脂組成物が示されている。しかしながら、上記方法により得られたプロピレン系樹脂組成物は、良好な柔軟性および透明性を示すものの低温での耐衝撃性において未だ改良の余地が残っており、低温での耐衝撃性が必要な用途においては、更なる改良が望まれていた。
【0010】
従って、本発明の目的は、低温での耐衝撃性に優れ、透明性、柔軟性が良好で、しかもベタツキ感のないプロピレン系樹脂組成物を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、非結晶性成分の量が制限されたプロピレンとエチレンおよび/またはC4〜C18のα−オレフィンとの低結晶性の共重合体成分を特定量配合してなるプロピレン系樹脂組成物の開発に成功し、かかる組成物が、上記目的をすべて満たすことを見出し本発明を完成した。
【0012】
即ち、本発明は、ポリプロピレン成分およびプロピレンとエチレンおよび/またはC4〜C18のα−オレフィンとの共重合体成分から成り、(I)o−ジクロロベンゼン溶媒を用いた温度昇温溶離分別法により、80℃までの温度で溶出する成分(以下中低温溶出成分という)が全体の50〜99重量%で、80℃以上の温度で溶出する成分(以下高温溶出成分という)が、全体の50〜1重量%であり、且つ0℃までの温度で溶出する成分(以下低温溶出成分という)が全体の10重量%以上であり、且つ、(II)−40℃の温度で測定したトルエン可溶分量が全体の5重量%未満であることを特徴とするプロピレン系樹脂組成物である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0014】
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、ポリプロピレン成分と、プロピレンとエチレンおよび/またはC4〜C18のα−オレフィンとの共重合体成分とから構成される。
【0015】
上記ポリプロピレン成分とプロピレンと、エチレンおよび/またはC4〜C18のα−オレフィンとの共重合体成分との比率は、o−ジクロロベンゼンを溶媒として用いた温度昇温溶離分別(以下TREFという)法による溶出曲線から求められる溶出成分量によって特定することができる。
【0016】
即ち、ポリプロピレン成分は、TREF法による溶出曲線において主として80℃以上の溶出成分からなる。また、プロピレンとエチレンおよび/またはC4〜C18のα−オレフィンとの共重合体成分は、主として80℃に至るまでの温度で溶出する成分からなる。
【0017】
ここでTREF法とは、例えば、Journal of Applied Polymer Science; Applied Polymer Symposium 45, 1-24(1990)に詳細に記述されている方法である。即ち、高温の高分子溶液を、珪藻土の充填剤を充填したカラムに導入し、カラム温度を徐々に低下させることにより充填剤表面に結晶性の高い成分から順に結晶化させ、次にカラム温度を徐々に上昇させることにより、結晶性の低い成分から順に溶出させて溶出ポリマー成分を分取する方法である。この方法により、高分子の結晶性分布を測定することができる。
【0018】
本発明において、本発明の効果である低温での衝撃性、透明性、柔軟性に優れ、ベタツキ感のないという特徴は、ポリプロピレン成分と、プロピレンとエチレンおよび/またはC4〜C18のα−オレフィンとの共重合体成分の構成比率を間接的に表すTREF法で測定した溶出成分の比率(結晶性の分布)および低温溶出成分中の−40℃でのトルエン可溶分量で示される非結晶成分量が低いことが極めて重要である。
【0019】
本発明のプロピレン系樹脂組成物において、80℃以上での溶出成分(以下、高温溶出成分という)は、プロピレン単位含有量が97〜100重量%である。具体的には、高温溶出成分は、プロピレンの単独重合体、或いはプロピレンを主成分とし、プロピレン以外のα−オレフィン又はエチレンよりなる単量体単位が3重量%以下、好ましくは1.5重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下のランダム共重合体である。上記ランダム共重合体において、かかるプロピレン以外の単量体単位が3重量%を超えると製品の耐熱性が低下する。
【0020】
上記α−オレフィンとしては、炭素数4〜18のα−オレフィンが使用できるが、好ましくは炭素数4〜8のα−オレフィンであり、特に1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好適に使用できる。
【0021】
本発明のプロピレン系樹脂組成物において、高温溶出成分の割合は、1〜50重量%、好ましくは3〜30重量%、さらに好ましくは5〜20重量%である。即ち、高温溶出成分の割合が、1重量%より低い場合は、耐熱性が悪くなり、50重量%以上では、柔軟性および透明性が著しく悪化する。
【0022】
本発明のプロピレン系樹脂組成物において、TREF法により80℃に至るまでの温度で溶出する成分(以下中低温溶出成分という)は、製品に柔軟性を付与する為に必要な成分であり、8重量%以上50重量%未満、好ましくは、10〜40重量%、さらに好ましくは、15〜30重量%のエチレンおよび/またはC4〜C18のα−オレフィン単位を含む主に低結晶性のプロピレン系共重合体から構成される。上記共重合体は、製品に柔軟性をより有効に付与するために、プロピレンとエチレンおよび/またはC4〜C18のα−オレフィンとをランダム共重合してなる共重合体であることが好ましい。
【0023】
上記中低温溶出成分においてエチレンおよび/またはC4〜C18のα−オレフィンの単位含有量が8重量%より少ない場合は製品の柔軟性および低温での耐衝撃性に劣り、また、50重量%を超える場合は、透明性が低下するとともにベタツキ感が増大する。
【0024】
本発明のプロピレン系樹脂組成物において、中低温溶出成分量は50〜99重量%、好ましくは、70〜97重量%、さらに好ましくは80〜95重量%である。該中低温溶出成分が50重量%より少ない場合は、製品の柔軟性が少なく、透明性が劣る結果となる。また、該中低温溶出成分が99重量%より多い場合は、耐熱性が悪くなる。
【0025】
また、本発明のプロピレン系樹脂組成物は、0℃までの溶出成分(以下低温溶出成分という)の量が多く、且つ−40℃トルエン可溶分量で示されるベタツキ性発現の主要因である非結晶性成分の量がが少ないことも特徴の一つである。即ち、かかる0℃までの溶出成分量が全体(中低温溶出成分及び高温溶出成分の総量)の10重量%以上、好ましくは15重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上であり、且つ−40℃トルエン可溶分量が5重量%未満、好ましくは4.5重量%未満、さらに好ましくは4重量%未満であることが重要である。0℃までの溶出成分量が10重量%未満の場合には、製品の低温での耐衝撃性が劣り、−40℃トルエン可溶分量が5重量%以上の場合は、ベタツキ感が増大し、本発明の目的を達成することができない。
【0026】
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、以上の構成を満足するものであれば、他の構成は特に制限されないが、例えば、上記高温溶出成分の示差走査熱量計(以下DSCという)により測定される融点は、製品であるフィルムの透明性および耐熱性向上のために120〜170℃であることが好ましく、130〜155℃であることがより好ましい。
【0027】
また、本発明のプロピレン系樹脂組成物のゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)で測定した分子量分布分散度(Mw/Mn)は、フィルム製品の耐ブロッキング性向上の為に、5以下、好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下であることが好ましい。
【0028】
また、135℃テトラリン中でウベローデ粘度計を用いて測定した極限粘度[η]は、成形加工性もしくは製品の耐ブロッキング性を向上させる為に0.5〜5.0dl/g、好ましくは0.5〜3.0dl/gであり、さらに好ましくは0.8〜2.0dlであることが望ましい。
【0029】
さらに、本発明のプロピレン系樹脂組成物は、ASTM−D1238に準拠して230℃、2.16kg荷重下で測定されるメルトフローレートは、成形加工性を勘案すると0.01〜50g/10分、好ましくは、0.1〜30g/10分、さらに好ましくは、0.5〜20g/10分であるものが好適である。
【0030】
更にまた、DSCにより測定される吸熱ピークの熱量は80mJ/mg以下、好ましくは70mJ以下、更に好ましくは50mJ以下であることが製品の透明性を向上させるために好ましい。
【0031】
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、樹脂成分として、上記したポリプロピレン成分およびプロピレンとエチレンおよび/またはC4〜18のα−オレフィンの共重合体成分に加えて、本発明のプロピレン系樹脂組成物の効果を阻害しない範囲で、例えば5重量%以下の範囲で他のα−オレフィンの重合体を成分として含んでいてもよい。α−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、4−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等を例示することができる。
【0032】
本発明で用いるプロピレン系樹脂組成物は、如何なる方法によって得られても良い。
【0033】
例えば、高温溶出成分と中低温溶出成分とをそれぞれ個別に重合し、これらを混合する方法を用いてもよいが、ポリプロピレン成分およびプロピレンとエチレンおよび/またはC4〜C18のα−オレフィンとのランダム共重合体成分が一分子鎖中に配列した状態および/またはポリプロピレン成分とプロピレンと、エチレンおよび/またはC4〜C18のα−オレフィンとのランダム共重合体成分とのそれぞれ単独よりなる分子鎖とが機械的な混合では達成できない程度にミクロに混合した状態を達成できる、いわゆるブロック共重合体として得る方法が、より良好な透明性を有するフィルムとすることができるプロピレン系樹脂組成物を得るので好ましい。
【0034】
本発明のプロピレン系樹脂組成物をブロック共重合体として得るための製造方法は、本発明の要件を満たす限り特に限定されるものではないが、例えば、以下の方法により好適に製造することができる。
【0035】
即ち、メタロセン化合物(以下、成分[I]と略す)とアルミノキサン化合物および/または非配位性イオン化化合物(以下、成分[II]と略す)からなる触媒の存在下にポリプロピレン成分(A)とプロピレンとエチレンの共重合体成分(B)を段階的に製造する方法が挙げられる。
【0036】
上記成分[I]は、オレフインの重合に使用されることが公知の化合物が何ら制限なく使用できるが、その中でも下記一般式(1)
Q(C5H4-mR1 m)(C5H4-nR2 n)MX1X2 (1)
(式中、Mは、周期律表第IVb族の遷移金属原子を示す。(C5H4-mR1 m)、(C5H4-nR2 n)は置換シクロペンタジエニル基を示し、mおよびnは、1〜3の整数であり、R1およびR2は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜20の炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、またはシクロペンタジエニル環上の2個の炭素原子と結合して炭化水素基で置換されていてもよい1つ以上の炭化水素環を形成している炭化水素基である。Qは、(C5H4-mR1 m)および(C5H4-nR2 n)を架橋可能な基であって、2価の、炭化水素基、非置換シリレン基または炭化水素置換シリレン基である。X1およびX2は、同一または異なっていてもよく水素、ハロゲンまたは炭化水素基を示す。)
で表されるキラルな化合物が好適に用いることができる。
【0037】
より好ましくは、上記式(1)において、Mがジルコニウム、ハフニウム原子であり、R1、R2が同一もしくは異なる炭素数1〜20の炭化水素基、X1およびX2が、同一もしくは異なるハロゲン原子または炭化水素基、Qが、炭化水素置換シリレン基であるキラルなメタロセン化合物が好適である。
【0038】
具体的な成分[I]を例示するとrac−ジメチルシリレン(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,5’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、rac−ジメチルシリレン(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,5’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、rac−ジメチルシリレン(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2’,4’,5’トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、rac−ジメチルシリレン(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2’,4’5’,5’−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−インデニル)ジルコニウムジクロライド、rac−ジフェニルシリレンビス(2−メチル−インデニル)ジルコニウムジクロライド、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−インデニル)ジルコニウムジメチル、rac−ジフェニルシリレンビス(2−メチル−インデニル)ジルコニウムジメチル、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライド、rac−ジフェニルシリレンビス(2−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライド、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジメチル、rac−ジフェニルシリレンビス(2−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジメチル、rac−ジメチルシリレンビス(2,4−ジメチル−インデニル)ジルコニウムジクロライド、rac−ジフェニルシリレンビス(2,4−ジメチル−インデニル)ジルコニウムジクロライド、rac−ジメチルシリレンビス(2,4−ジメチル−インデニル)ジルコニウムジメチル、rac−ジフェニルシリレンビス(2,4−ジメチル−インデニル)ジルコニウムジメチル、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロライド、rac−ジフェニルシリレンビス(2−メチル−4−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロライド、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジメチル、rac−ジフェニルシリレンビス(2−メチル−4−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジメチル、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,6−ジイソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロライド、rac−ジフェニルシリレンビス(2−メチル−4,6−ジイソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロライド、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,6−ジイソプロピルインデニル)ジルコニウムジメチル、rac−ジフェニルシリレンビス(2−メチル−4,6−ジイソプロピルインデニル)ジルコニウムジメチル、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−t−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロライド、rac−ジフェニルシリレンビス(2−メチル−4−t−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロライド、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−t−ブチルインデニル)ジルコニウムジメチル、rac−ジフェニルシリレンビス(2−メチル−4−t−ブチルインデニル)ジルコニウムジメチル、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロライド、rac−ジフェニルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロライド、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジメチル、rac−ジフェニルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジメチル、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−ナフチルインデニル)ジルコニウムジクロライド、rac−ジフェニルシリレンビス(2−メチル−4−ナフチルインデニル)ジルコニウムジクロライド、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−ナフチルインデニル)ジルコニウムジメチル、rac−ジフェニルシリレンビス(2−メチル−4−ナフチルインデニル)ジルコニウムジメチル、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−ベンズインデニル)ジルコニウムジクロライド、rac−ジフェニルシリレンビス(2−メチル−ベンズインデニル)ジルコニウムジクロライド、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−ベンズインデニル)ジルコニウムジメチル、rac−ジフェニルシリレンビス(2−メチル−ベンズインデニル)ジルコニウムジメチル等が挙げられる。
【0039】
また、上記のジルコニウムをハフニウムに代えた化合物も好適に用いられる。
【0040】
また、上記メタロセン化合物を組み合わせて用いることもできる。
【0041】
前記成分[II]は、公知のものを何ら制限なく使用できるが、その中でも以下に示すものが好適に使用できる。アルミノキサン化合物としては、一般式(2)または(3)で表されるアルミニウム化合物が好適である。
【0042】
【化1】
【0043】
【化2】
一般式(2)または(3)において、Rは炭素数が、1〜6、好ましくは1〜4のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基が挙げられる。これらのうち特に好ましいのはメチル基であり、一部炭素数2〜6のアルキル基を含んでいてもよい。mは、4〜100の整数であり、好ましくは、6〜80、特に好ましくは10〜60である。
【0044】
上記のアルミノキサン化合物の製造方法は、公知の種々の方法を採用すればよく、例えば、トリアルキルアルミニウムを炭化水素溶媒中、直接水と反応させる方法。結晶水を有する硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、含水させたシリカゲル等を用いて炭化水素溶媒中で吸着した水分とトリアルキルアルミニウムを反応させる方法等が例示できる。
【0045】
非配位性イオン化化合物としては、公知のものが特に制限なく使用される。特にホウ素原子を含有するイオン化化合物が好適に用いることができる。
【0046】
ホウ素原子を含有するイオン化化合物を具体的に例示すればホウ素原子を含有するルイス酸及びホウ素原子を含有するイオン性化合物が挙げられる。
【0047】
上記ホウ素原子を含有するルイス酸としては一般式(4)で表される化合物が例示できる。
【0048】
BR3 (4)
上記一般式中、Rは、フッ素、メチル基、トリフルオロメチル基等の置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素である。
【0049】
かかる一般式で表される化合物として具体的には、トリフルオロボラン、トリフェニルボラン、トリス(4−フルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(4−フルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(p−トリル)ボラン、トリス(o−トリル)ボラン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ボラン等が挙げられる。中でも、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランが好適に用いられる。
【0050】
ホウ素を含有するイオン性化合物は、カチオン性化合物とホウ素を含有するアニオン性化合物の塩であり、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N−ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩などを挙げることができる。トリアルキル置換アンモニウム塩としては、トリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p−トリル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(o−トリル)ホウ素、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p−ジメチルフェニル)ホウ素、トリブチルアンモニウムテトラ(m,m−ジメチルフェニル)ホウ素、トリブチルアンモニウムテトラ(p−トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(o−トリル)ホウ素などが挙げられ、N,N−ジアルキルアニリニウム塩としては、N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N−ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられ、ジアルキルアンモニウム塩としては、ジ(1−プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられ、トリアリールホスフォニウム塩としては、トリフェニルホスフォニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(メチルフェニル)ホスフォニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(ジメチルフェニル)ホスフォニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0051】
また、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートも挙げることができる。中でもトリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが好適に用いられる。
【0052】
成分[I]および成分[II]の使用量は任意であるが、成分[II]にアルミノキサン化合物を用いた場合の該成分[II]の使用量(成分[II]中のAl原子のモル量)は、成分[I]中の遷移金属1モルに対して、0.1〜100,000モルが好ましく、より好ましくは1〜50,000モル、さらに好ましくは10〜30,000モルが好適である。また、成分[II]に非配位性イオン化化合物を用いた場合の成分[II]の使用量(成分[II]中のホウ素原子のモル量)は、成分[I]中の遷移金属1モルに対して、0.01〜10,000モルが好ましく、より好ましくは0.1〜5,000モル、さらに好ましくは1〜3,000モルが好適である。
【0053】
成分[I]および成分[II]からなる触媒の存在下にポリプロピレン成分(A)とプロピレンとエチレンおよび/またはC4〜C18のα−オレフィンの共重合体成分(B)を段階的に製造する方法において必要に応じて有機アルミニウム化合物(以下成分[III]と略す)を併用することもできる。成分[III]は、一般式(5)で表わされる化合物である。
【0054】
AlRmX3-m (5)
(式中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基等の炭化水素基またはアルコキシ基を示す。Xはハロゲン原子を示す。mは、Alの原子価で1〜3の整数である。)
上記、一般式で表わされる化合物として具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムトリn−ヘキシルアルミニウム、トリn−オクチルアルミニウム、トリn−デシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム類、ジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノブロマイド、ジエチルアルミニウムモノフルオライド等のジアルキルアルミニウムモノハライド類、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド類のアルキルアルミニウムハライド類、ジエチルアルミニウムモノエトキシド、エチルアルミニウムジエトキシド等のアルコキシアルミニウム類が挙げられる。中でも、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウムが好適に用いられる。
【0055】
成分[III]の使用量は、特に制限されないが、一般には、成分[I]中の遷移金属原子1モルに対して、1〜50,000モルであり、好ましくは5〜10,000モルである。さらに好ましくは10〜5,000モルである。
【0056】
成分[I]及び/または成分[II]は、微粒子状担体(以下成分[IV]と略す)に担持して使用することも可能である。担体に上記触媒成分を担持すると、得られる重合体の粒子性状が向上し、反応器への重合スケールの防止等、樹脂製造におけるプロセス適合性を大幅に改良することができる。
【0057】
微粒子状担体は、担体としての機能を有するものが制限なく使用されるが、特に無機酸化物が好ましい。
【0058】
具体的にはSiO2、Al2O3、MgO、ZrO2、TiO2、B2O3、CaO、ZnO、BaO、ThO2等またはこれらの混合物例えば、SiO2−Al2O3、SiO2−MgO、SiO2−TiO2、SiO2−V2O5、SiO2−Cr2O3、SiO2−TiO2−MgOなどが好適に用いることができる。これらの中でも特にSiO2およびAl2O3からなる群から選ばれたすくなくとも1種の成分を主成分として含有する担体がより好ましい。
【0059】
無機微粒子担体は、通常150〜1000℃、好ましくは200〜800℃で焼成して用いられる。
【0060】
担体はその種類および製法により性状は異なるが、本発明に好ましく用いられる担体は比表面積が50〜1000m3/g、好ましくは100〜700m3/gである。
【0061】
これら担体の粒径は、一般に0.1〜500μmであり、好ましくは1〜200μm、さらに好ましくは10〜100μmである。粒径が小さいと生成粒子が微粉状の重合体になり、また大きすぎると粗大な粒子となるために粉体の取り扱いが困難となる。
【0062】
これら担体の細孔容積は通常0.1〜5cm3/gであり、好ましくは0.3〜3cm3/gである。細孔容積はBET法や水銀圧入法などにより測定することができる。
【0063】
上記成分 [IV]1gに対する成分 [I]の使用量は、遷移金属原子で0.005〜1mmol、好ましくは0.05〜0.5mmolの割合が望ましい。また、成分[II]としてアルミノキサン化合物を使用する場合には、成分[I]に対するアルミノキサン化合物の使用量は、Al原子のモル量に換算して、成分[I]中の遷移金属原子1モルに対して1〜200モルであり、好ましくは15〜150モルである。
【0064】
非配位性イオン化化合物を用いる場合には、成分[I]に対する非配位性イオン化化合物の使用量は、非配位性イオン化化合物中のホウ素原子のモル量に換算して、成分[I]中の遷移金属原子1モルに対して0.1〜20モルであり、好ましくは1〜15モルである。
【0065】
得られる重合体を更に優れた粒子性状で得るために以下の方法を採用することもできる。
【0066】
即ち、前記成分[I]、成分[II]、成分[IV]及び必要に応じて成分[III]の各成分の存在下に、先ず、オレフィンの予備重合が行われる。予備重合における成分[III]の使用量は、特に制限されないが、一般には、成分[I]中の遷移金属原子1モルに対して、1〜50,000モルであり、好ましくは5〜10,000モルである。さらに好ましくは10〜5,000モルである。予備重合で用いる上記の各成分は一成分ずつ逐次添加してもよく、混合したものを一括添加してもよい。好ましくは触媒成分[IV]に成分[I]及び[II]をあらかじめ接触させる方法が採用される。より好ましくは触媒成分[IV]に成分[II]を担持せしめた後、成分[I]を担持せしめる方法がより優れた嵩比重でブロック共重合体を得るために有効である。
【0067】
予備重合で用いられるオレフィンとしては、エチレン;プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、4−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等のα−オレフィン;シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン等の環状オレフィンが挙げられる。さらにスチレン、ジメチルスチレン類、アリルノルボルナン、アリルベンゼン、アリルナフタレン、アリルトルエン類、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロペプタン、ジエンなどを用いることもできる。好ましくは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、4−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、シクロペンテン、ビニルシクロヘキサンであり、特に好ましくは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンである。
予備重合はオレフィンが95モル%以上の実質的に単独重合を行なうことが好ましい。
本発明の予備重合で最初に施こされるオレフィンの重合量は、触媒成分[I]、[II]及び[IV]から形成される触媒1g当り0.1〜1000g、好ましくは1〜50gの範囲から選べばよい。
また、特に好ましい予備重合の実施形態としては、上記の予備重合に於いて、[I]、[II]、[IV]及び必要に応じて [III]の各成分の存在下に、先ず、プロピレンを予備重合せしめて第一予備重合触媒を得、次いで該第一予備重合触媒と上記成分[III]の存在下に更に1−ブテンの予備重合が段階的に行なわれる方法が好適に用いられる。
予備重合における成分[III]の使用量は、特に制限されないが、一般には、成分[I]中の遷移金属原子1モルに対して、1〜50,000モルであり、好ましくは5〜10,000モルである。さらに好ましくは10〜5,000モルである。上記のプロピレンの予備重合により第一予備重合触媒を得た後、通常、未反応のプロピレン及び必要に応じて用いられる成分[III]を洗浄により除去して続く予備重合に供することが望ましい。
各予備重合段階ではプロピレン及び1−ブテンが夫々95モル%以上、好ましくは98モル%以上の実質的に単独重合を行なうことが好ましい。
該予備重合で最初に施こされるプロピレンの重合量は、触媒成分[I]、[II]、[IV]から形成される触媒1g当り0.1〜1000g、好ましくは1〜10gの範囲から選べばよく、次いで行なわれる1−ブテンの重合量は触媒成分[I]、[II]、[III]から形成される触媒1g当り0.1〜1000g、好ましくは1〜500gの範囲から選べばよい。プロピレン重合量と1−ブテン重合量の比率は、プロピレン重合量/1−ブテン重合量の重量比で0.001〜100、好ましくは0.005〜10の範囲であることが好適である。
【0068】
予備重合は通常スラリー重合を適用させるのが好ましく、溶媒として、ヘキサン,ヘプタン,シクロヘキサン,ベンゼン,トルエンなどの飽和脂肪族炭化水素若しくは芳香族炭化水素を単独で、又はこれらの混合溶媒を用いることができる。各予備重合温度は、−20〜100℃、特に0〜60℃の温度が好ましく、予備重合の各段階は夫々異なる温度の条件下で行ってもよい。予備重合時間は、予備重合温度及び予備重合での重合量に応じ適宜決定すれば良く、予備重合における圧力は、限定されるものではないが、スラリー重合の場合は、一般に大気圧〜5kg/cm2程度である。
【0069】
各予備重合は、回分,半回分,連続のいずれの方法で行ってもよい。
【0070】
各予備重合終了後には,ヘキサン,ヘプタン,シクロヘキサン,ベンゼン,トルエン等の飽和脂肪族炭化水素若しくは芳香族炭化水素を単独で、またはこれらの混合溶媒で洗浄することが好ましく、洗浄回数は通常の場合5〜6回が好ましい。
【0071】
本発明のプロピレン系樹脂組成物を重合によりポリプロピレンブロックとプロピレンとエチレンおよび/またはC4〜C18のα−オレフィンとよりなる共重合ブロックとよりなるブロック共重合体として得る方法においては、上記した触媒成分の存在下にポリプロピレン成分とプロピレンとエチレンおよび/またはC4〜C18のα−オレフィンとの共重合体成分の重合が段階的に行われる。重合順序は、特に制限されないが、第一段階でポリプロピレン成分を第2段階でプロピレンとエチレンおよび/またはC4〜C18のα−オレフィンとの共重合体成分の製造を行うことが良好な粒子性状で重合体を製造するために好ましい。
【0072】
重合条件については、本発明の効果が認められる限り、特に制限はされないが、一般に次の条件が好ましい。
【0073】
ポリプロピレン成分の重合は、プロピレン単独または、本発明の要件を満足する範囲内でのプロピレンと、他のα−オレフィンおよび/またはエチレンの混合物を供給して実施すればよい。ポリプロピレン成分の重合における重合温度は、0〜100℃、好ましくは、20〜80℃の範囲から採用することが好適である。
【0074】
上記重合において、分子量調節剤として水素を共存させることもできる。また、重合に用いるモノマー自身を溶媒とするスラリー重合、気相重合、溶液重合等の何れの方法でも良い。プロセスの簡略性および反応速度、また、生成する共重合体の粒子性状を勘案するとプロピレン自身を溶媒とするスラリー重合が好ましい形態である。
【0075】
重合形式は回分式、半回分式、連続式の何れの方法でも良い。更に重合を水素濃度、重合温度等の条件の異なる2段階以上に分けて行うこともできる。
【0076】
上記ポリプロピレン成分を得るための重合に続いて、プロピレンとエチレンおよび/またはC4〜C18のα−オレフィンのランダム共重合が行われる。プロピレンとエチレンおよび/またはC4〜C18のα−オレフィンとのランダム共重合は、プロピレン自身を溶媒とするスラリー重合の場合には前記プロピレン重合に引き続いてエチレンガスおよび/またはC4〜C18の液化α−オレフィンを供給することで、また気相重合の場合はプロピレンとエチレンおよび/またはC4〜C18のα−オレフィンの混合ガスを供給することで実施される。
【0077】
本発明のプロピレンとエチレンおよび/またはC4〜C18のα−オレフィンのランダム共重合ではプロピレン重合に続いて1段のランダム共重合を行うことが好ましいが、エチレンおよび/またはC4〜C18のα−オレフィンの供給濃度を多段階に変化させて製造することもできる。プロピレンとエチレンおよび/またはC4〜C18のα−オレフィンのランダム共重合の重合温度は、0〜100℃、好ましくは、20〜80℃の範囲から採用することが好適である。また、必要に応じて分子量調節剤として水素を用いることもでき、その際の水素濃度を多段階または連続的に変化させて重合を実施することもできる。
【0078】
プロピレンとエチレンおよび/またはC4〜C18のα−オレフィンのランダム共重合は回分式、半回分式、連続式のいずれの方法でもよく、重合を多段階に分けて実施することもできる。また、本工程の重合は、スラリー重合、気相重合、溶液重合のいずれの方法を採用してもよい。
【0079】
本重合の終了後には、重合系からモノマーを蒸発させ本発明のプロピレン系樹脂を得ることができる。このプロピレン系樹脂は、炭素数7以下の炭化水素で公知の洗浄又は向流洗浄を行うことができる。
【0080】
本発明のプロピレン系樹脂組成物には、酸化防止剤、熱安定剤、塩素補捉剤等の市販の添加剤を添加してもよい。この場合、これらの添加剤は樹脂組成物に混合した後、押出機でペレットにして用いてもよい。また、上記添加剤に加えて有機過酸化物も添加して熱分解を行い、本発明の要件を満足する範囲で分子量の調節を行ってもよい。
【0081】
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、透明性に優れ、従来にない優れた柔軟性、低温での耐衝撃性を有すると共に、ベタツキ感の顕著な低減効果を示すためにフィルム、特に軟質フィルムとして好適である。フィルムの用途は特に制限されず、食品、衣料、文具、雑貨等の包装用途に用いられるが、それら用途の中で、透明性に優れ、ベタツキ感がなく、且つ低温での耐衝撃性が優れるため特に食品用途に対して好適に用いることができる。
【0082】
上記プロピレン系樹脂組成物をフィルムに成形する方法は、公知のフィルム成形法が特に制限されることなく採用できる。その際の成形温度は、メルトフラクチャーの発生やフィルムの成形性、樹脂の熱劣化等を勘案すると、通常、200〜300℃、好ましくは220〜270℃であるのが好適である。フィルムの成形方法としては、Tダイによる無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルム、あるいはカレンダー成形やインフレーション成形等のあらゆる成形方法が使用できる。
【0083】
なお、本発明においてフィルムとは、特に厚みに関して厳密な意味を有するものではなく、シートを含めて総称するものであり、通常10〜1000μm程度が好適に使用される。
【0084】
上記ポリプロピレン系樹脂組成物は、単層フィルムとして用いても良く、また他の樹脂を積層して多層化して用いることもできる。層構成は、特に制限されず、表層または内層いずれでも良い。積層して用いる樹脂に関して特に制限されないが、プロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等のエチレン系樹脂等を挙げる事ができる。また、フィルム表面をコロナ処理を施すこともできる。
【0085】
さらに、本発明により得られたプロピレン系樹脂組成物は、柔軟性、引張伸度、耐熱性、低温での耐衝撃性に優れ、べたつき感がないため、従来の熱可塑性エラストマーが用いられている種々の分野に好適に用いることができる。例えば射出成形分野では自動車部品におけるバンパー、マットガード、ランプパッキン類、また、家電分野においては、各種パッキン類、およびスキーシューズ、グリップ、ローラースケート類が挙げられる。一方、押出成形分野では、各種自動車内装材、家電・電線材として各種絶縁シート、コード類の被覆材料および土木建材分野における防水シート、止水材、目地材、包装用ストレッチフィルム等を挙げることができる。
【0086】
成形法も特に制限されず、押出成形、射出成形、プレス成形、真空成形など任意の成形方法による各種用途に好適に用いることができる。
【0087】
成形する際に各種安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、凝集防止剤、滑剤、可塑剤、顔料、無機または有機の充填剤を配合することもできる。これら添加剤を例示すると、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、トコフェノール類、アスコルビン酸、ジラウリルチオジプロピオネート、リン酸系安定剤、脂肪酸モノグリセライド、N,N−(ビス−2−ヒドロキシエチル)アルキルアミン、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、ステアリン酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、シリカ、ハイドロタルサイト、タルク、クレイ、石膏、ガラス繊維、チタニア、炭酸カルシウム、カーボンブラック、石油樹脂、ポリブテン、ワックス、合成または天然ゴムを挙げることができる。
【0088】
さらに、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には、本発明の特性を著しく影響を与えない範囲で他樹脂を添加することができる。例えば、プロピレンの90%モル以上とプロピレン以外のα−オレフィン、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテン等の1種以上の10モル%以下とのランダム共重合体、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレンとC4〜C10との共重合によりなる線状ポリエチレン(LLDPE)、エチレン酢酸ビニル共重合(EVA)、エチレンメチルメタクリレート共重合体(EMMA)等のポリエチレン系樹脂、エチレン・プロピレン共重合体(EPR,EPDM)、エチレン・ブテン−1共重合体(EBM)、プロピレン・ブテン−1共重合体(PBM)等のオレフィン系軟質樹脂、スチレン・ブタジエンブロック共重合体(SBR)、石油樹脂・テルペン樹脂またはそれらの水素添加物等公知のものが制限無く使用することができる。
【0089】
本発明において、使用するポリプロピレン系樹脂組成物は、必要に応じて上記原料等を配合した後に混合および溶融混練することにより得られる。溶融混練の方法はとくに限定されないが、例えば、スクリュー押出機、バンバリーミキサー、ミキシングロールなどを用いて、160〜300℃、好ましくは、180〜270℃の温度下に行うのがよい。また、この溶融混練は、窒素ガスなどの不活性ガス気流下で行うこともできる。なお、溶融混練前に公知の混合装置、例えば、タンブラー、ヘンシェルミキサー等が何ら制限無く使用することができる。
【0090】
【発明の効果】
以上の説明から理解されるように、TREF法で測定される結晶性分布が特定の様式をなし、−40℃トルエン可溶分量で示される非結晶成分の量が制限されたポリプロピレン系樹脂組成物は、透明性、柔軟性、低温での耐衝撃性に優れ、かつ、ベタツキ感がないため、軟質フィルムとして好適に用いることができる。
【0091】
また、従来の熱可塑性エラストマーが用いられている種々の分野に好適に用いられる。
【0092】
【実施例】
本発明を更に具体的に説明するために以下実施例および比較例を掲げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0093】
尚、以下の実施例および比較例において得られた重合体の諸物性の測定方法は次の通りである。
【0094】
(1)メルトフローレート(MFRと略す)
ASTM D1238に準拠した。
【0095】
(2)嵩密度
ASTM D1895に準拠した。
【0096】
(3)融点
セイコー電子社製DSC−6200Rを用いて、試料約5mgをアルミパンに詰め10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持したのち20℃/分で室温まで降温し、次いで10℃/分で昇温する際の吸熱曲線より求めた。
【0097】
(4)エチレン含有量
JEOL GSX−270を用いて13C−NMRスペクトルを測定した。
【0098】
(5)分子量分布
ウォーターズ社製150C型ゲルパーミェーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、カラムGMH6HT(東ソー社製)にて展開した。得られた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比から分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
【0099】
(6)TREF(温度上昇溶離分別)溶出曲線
センシュウ科学社製の自動TREF装置(SSC−7300、ATREF)を用いて以下の条件で測定した。
【0100】
溶媒 :オルトジクロロベンゼン
流速 :150ml/時間
昇温速度:4℃/時間
検出器 :赤外検出器
測定波数:3.41μm
カラム :センシュウ科学社製「パックドカラム30Φ」、30mmΦ×300mm
濃度 :1g/120ml
注入量 :100ml
この場合、カラム内に試料溶液を145℃で導入した後、2℃/時間の速度で−10℃まで徐冷して試料ポリマーを充填剤表面に吸着させた後、溶媒を流し始めると同時にカラム温度を上記条件で昇温することにより各温度で溶出してきたポリマー濃度を、赤外検出器で測定して、溶出温度−溶出量の曲線を得た。
【0101】
(7)透明性(ヘイズ値)
JIS K6714に準拠した。
【0102】
(8)曲げ弾性率
ASTM D−790に準拠した。
【0103】
(9)ビカット軟化温度
JIS K7206に準じて荷重250gの条件で測定した。
【0104】
(10)ヤング率
JIS K6758に準拠し、樹脂の流れ方向のヤング率を測定した。
【0105】
(11)−30℃アイゾッド衝撃強度
−30℃にて、東洋精機(株)製、フィルムインパクトテスターを用いて直径1センチの衝撃ヘッドを使用し、容量30kg−cmの条件下で得られたエネルギー値を厚みで除することにより算出した。
【0106】
(12)表面の粘着性評価
射出成形により、縦50mm×横40mm×厚さ10mmの平板を作成し、2枚の平板を重ね合わせて、3kgfの荷重下に、40℃、3日間放置した後、重ね合わせた2枚の平板を、テストスピード300mm/分の速度にて接着面に対して垂直方向に引っ張り、剥離した時の最大応力により評価した(図1参照)。
【0107】
(13)−40℃トルエン可溶分量
ポリマー1gをトルエン100mlに加え攪拌しながら100℃まで昇温した後、更に30分間攪拌を続け、ポリマーを完全に溶かした後、トルエン溶液を−40℃恒温室で6時間放置した。−40℃恒温室で析出物を濾別し、トルエン溶液を完全に蒸発することで可溶分を得た。
【0108】
−40℃トルエン可溶分量(wt%)=(トルエン可溶分(g)/ポリマー1g)×100
で表される。
実施例1
[担持メタロセン触媒の調製]
シリカゲル担持メチルアルミノキサン(MAO on SiO2、ウイットコ社製、25wt%−Al品)10gにrac−ジメチルシリレンビス−1−(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液100ml(0.005mmol/mlトルエン溶液)を加え、室温で30分間撹拌した。
次に、その反応混合物を濾過し、得られた固体をトルエン50mlで2回洗浄後、減圧下乾燥させることによりシリカゲルに担持されたメタロセン触媒を得た。触媒1g当たり0.045mmolのメタロセンが担持されていた。
【0109】
[重合]
(前段、プロピレンの重合)
内容積2m3の重合槽にプロピレンを600kg挿入し、トリイソブチルアルミニウム612mmolを導入した。その後、重合槽の内温を55℃に昇温した。次いで前記のシリカゲルに担持されたメタロセン触媒5gを装入した。続いてオートクレーブの内温を60℃まで昇温し、70分間重合を行った。
【0110】
(後段、プロピレンとエチレンの共重合)
前段の重合を行った後に、気相濃度でエチレンガスを35.2mol%の濃度まで供給し、更にエチレンの気相濃度を一定に保つように供給しながら70分間共重合を行った。重合終了後、未反応のプロピレンをパージし、50℃で1時間乾燥を行うことにより白色顆粒状の重合体162kgを得た。
【0111】
得られた重合体のTREFにより分取した80℃以上の溶出成分と80℃未満の溶出成分の分析を行ったところ、80℃以上の成分の融点は146℃であった。
【0112】
更に、80℃未満の溶出成分はエチレン含有量18.5wt%であり、DSCによる融点ピークは検出されなかった。また、−40℃で測定したトルエン可溶分は、1.9wt%であった。
【0113】
表1に得られたポリマーのMFR、分子量分布、嵩密度、TREF溶出成分量、高温溶出成分量と融点、中低温溶出成分の成分量とエチレン含有量および−40℃で測定したトルエン可溶分量を示す。
【0114】
[物性評価]
得られたポリマー100重量部に、酸化防止剤として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.1重量部および塩素捕捉剤としてステアリン酸カルシウム0.05重量部を添加し、ヘンシェルミキサーで5分間混合した後、スクリュー径65mmΦの押出造粒機を用いて230℃で押し出し、ペレットを造粒し原料ペレットを得、物性測定に供した。尚、ヘイズ値は、射出成形により得た3mm厚の透明性評価用試験片の値である。結果を表2に示す。
【0115】
参考例1
実施例1の前段での重合時間を30分、後段重合における気相エチレン濃度を35.5mol%、重合時間を110分とした以外は実施例1と同様に行った。結果を表1、表2に示す。
【0116】
実施例2
実施例1の前段での重合時間を90分、後段重合における気相エチレン濃度を35.0mol%、重合時間を50分とした以外は実施例1と同様に行った。結果を表1、表2に示す。
【0117】
実施例3
実施例1の前段での重合時間を110分、後段重合における気相エチレン濃度を35.3mol%、重合時間を30分とした以外は実施例1と同様に行った。結果を表1、表2に示す。
【0118】
実施例4
実施例1の前段での重合時間を80分、後段重合における気相エチレン濃度を40.3mol%、重合時間を60分とした以外は実施例1と同様に行った。結果を表1、表2に示す。
【0119】
実施例5
実施例1の前段で重合時間を60分、後段重合における気相エチレン濃度を16.0mol%とするとともに、液化ブテン−1を気相ブテン−1濃度で5.0mol%まで張り込み、重合時間を80分とした以外は実施例1と同様に行った。結果を表1、表2に示す。
【0120】
実施例6
実施例1においてプロピレンの挿入量を350kg、前段での重合時間を14分、後段重合においてエチレンに代えて液化ブテン−1を気相ブテン−1濃度で26モル%まで張り込み、重合時間を126分とした以外は実施例1と同様に行った。結果を表1、表2に示す。
【0121】
実施例7
[担持触媒メタロセン触媒の調製]
実施例1と同様に行った。
【0122】
[予備重合]
N2置換を施した1Lオートクレーブ中に精製ヘプタン200ml、トリイソブチルアルミニウム50mmol、及び担持メタロセン触媒成分をZr原子換算で5mmol装入した後、プロピレンを担持メタロセン触媒成分1gに対し5gとなるように1時間連続的に反応器に導入し予備重合を施した。なお、この間の温度は15℃に保持した。
【0123】
1時間後プロピレンの導入を停止し、反応器内をN2で充分に置換した。得られたスラリーの固体成分を生成ヘプタンで6回洗浄した。
【0124】
[重合]
上記の予備重合触媒を用いて、実施例1の[重合]と同様に行った。結果を表1に示す。
【0125】
[物性評価]
実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0126】
実施例8
[担持触媒メタロセン触媒の調製]
実施例1と同様に行った。
【0127】
[予備重合]
N2置換を施した1Lオートクレーブ中に精製ヘプタン200ml、トリイソブチルアルミニウム50mmol、及び担持メタロセン触媒成分をZr原子換算で5mmol装入した後、プロピレンを担持メタロセン触媒成分1gに対し5gとなるように1時間連続的に反応器に導入し予備重合を施した。
【0128】
なお、この間の温度は15℃に保持した。1時間後プロピレンの導入を停止し、反応器内をN2で充分に置換した。得られたスラリーの固体成分(第一予備重合触媒)を精製ヘプタンで6回洗浄した。
【0129】
更に、この第一予備重合触媒をN2置換を施した1Lオートクレーブ中に装入し、精製ヘプタン200ml、トリイソブチルアルミニウム50mmolを加えた後、1−ブテンを担持メタロセン触媒成分1gに対し20gとなるように1時間、連続的に反応器内に導入し、予備重合を施した。なお、この間の温度は15℃に保持した。
【0130】
得られたスラリーの固体部分を精製ヘプタンで6回洗浄し、メタロセン含有ポリオレフィンよりなる予備重合触媒を得た。
【0131】
[重合]
上記の予備重合触媒を用いて実施例1の[重合]と同様に行った。
【0132】
結果を表1に示す。
【0133】
[物性評価]
実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0134】
実施例9
[重合]
(前段、プロピレンの重合)内容積2Lのオートクレーブにプロピレンを450g装入し、メチルアルミノキサンのトルエン溶液(PMAO−S、東ソーアクゾ社製、3.1mmol−Al/ml)を1ml導入した。その後、オートクレーブの内温を55℃に昇温した。次いで予め室温で15分間、予備活性化したメチルアルミノキサンのトルエン溶液(PMAO−S、東ソーアクゾ社製、3.1mmol−Al/ml)0.5mlとrac−ジメチルシリレンビス−1−(2−メチルベンズインデニル)ジルコニウムジクロリド0.1mgの混合溶液全量を装入した。続いてオートクレーブの内温を60℃まで昇温し、70分間重合を行った。
【0135】
(後段、プロピレンとエチレンの共重合)
前段の重合を行った後に、気相濃度でエチレンガスを35.5mol%の濃度まで供給し、更にエチレンの気相濃度を一定に保つように供給しながら70分間共重合を行った。重合終了後、未反応のプロピレンをパージし、50℃で1時間乾燥を行うことにより白色塊状の重合体180gを得た。結果を表1に示す。
【0136】
[物性評価]
実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0137】
実施例10
[重合]
実施例7において使用するメタロセンをジメチルシリレンビス(2−メチル−4−ナフチル−インデニル)ジルコニウムジクロリド0.01mg使用した以外は実施例8と同様に行った。白色塊状の重合体165gを得た。結果を表1、表2に示す。
【0138】
実施例11
[ランダム共重合体の製造]
内容積2Lの重合槽にプロピレンを450g挿入し、トリイソブチルアルミニウム1.2mmolを導入した。その後、重合槽の内温を55℃に昇温し、エチレンガスを気相濃度で35.4mol%の濃度まで供給した。次いで前記のシリカゲルに担持されたメタロセン触媒5mgを装入した。続いてオートクレーブの内温を60℃まで昇温し、エチレンの気相濃度を一定に保つように供給しながら120分間重合を行った。重合終了後、未反応のプロピレンをパージし、50℃で1時間乾燥を行うことにより白色塊状の重合体160gを得た。嵩密度は、塊状の為測定できなかった。
【0139】
[結晶性ポリプロピレンとのブレンド]
結晶性ポリプロピレン(プロピレンホモポリマー、MFR=2.0g/10分、Mw/Mn=6.2、融点=163℃)20重量部と上記ランダム共重合体(塊状の重合体を凍結粉砕したもの)80重量部をブレンドした。得られたブレンド物の結果を表1に示す。
【0140】
[物性評価]
実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0141】
比較例1
[触媒の調製]
触媒の調製法は、特開昭58−83006号公報の実施例1の方法に準じて行った。即ち、無水塩化マグネシウム0.95g(10mmol)、デカン10ml、及び2−エチルヘキシルアルコール4.7ml(30mmol)を25℃で2時間加熱撹拌した。
【0142】
この溶液中に無水フタル酸0.55g(6.75mmol)を添加し、125℃にて更に1時間撹拌混合を行い均一溶液とした。室温まで冷却した後、120℃に保持された四塩化チタン40ml(0.36mmol)中に1時間にわたって全量滴下装入した。
【0143】
その後、この混合溶液の温度を2時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでジイソブチルフタレート0.54mlを添加し、これより2時間110℃にて撹拌下に保持した。2時間の反応終了後、濾過し固体部を採取し、この固体部を200mlのTiCl4にて再懸濁させた後、再び110℃で2時間の加熱反応を行った。
【0144】
反応終了後、再び110℃で2時間の加熱反応を行った。反応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、デカン及びヘキサンにて洗液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで十分洗浄した。固体Ti触媒の組成はチタン2.1重量%、塩素57重量%、マグネシウム18.0%、及びジイソブチルフタレート21.9重量%であった。
【0145】
[予備重合]
N2置換を施した内容積1Lのオートクレーブに精製n−ヘキサン200ml、トリエチルアルミニウム50mmol、ジフェニルジメトキシシラン10mmol、ヨウ化エチル50mmol、及び固体Ti触媒成分をTi原子換算で5mmol装入した後、プロピレンを固体触媒成分1gに対し3gとなるように30分間連続的にオートクレーブに導入した。なお、この間の温度は15℃に保持した。
【0146】
30分後に反応を停止し、オートクレーブ内をN2で充分に置換した。得られたスラリーの固体部分を精製n−ヘキサンで4回洗浄し、チタン含有ポリプロピレンを得た。分析の結果、固体Ti触媒成分1gに対し2.1gのプロピレンが重合されていた。
【0147】
[重合]
(前段、プロピレンの重合)
内容積2m3の重合槽にプロピレンを600kg装入し、トリエチルアルミニウム612mmol、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン306mmol、更に水素ガスを導入した後、を導入した後、重合槽の内温を55℃に昇温した。
次いで、チタン含有ポリプロピレンをTi原子として1.4mmol装入し、重合を開始した。続いてオートクレーブの内温を60℃まで昇温し、40分間重合を行った。
【0148】
(後段、プロピレンとエチレンの共重合)
前段の重合を行った後に、気相濃度でエチレンガスを9.5mol%の濃度まで供給し、更にエチレンの気相濃度を一定に保つように供給しながら100分間共重合を行った。
【0149】
重合終了後、未反応のプロピレンをパージし、50℃で1時間乾燥を行うことにより白色顆粒状の重合体155kgを得た。結果を表1に示す。
【0150】
[物性評価]
実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0151】
比較例2
実施例1の[重合]において前段の重合時間を50分、後段の重合時間を90分とした以外は実施例1と同様に行った。結果を表1、表2に示す。
【0152】
比較例3
実施例1の[重合]において前段の重合時間を90分、後段の重合時間を50分、エチレン気相濃度を49.8mol%とした以外は実施例1と同様に行った。結果を表1、表2に示す。
【0153】
比較例4
実施例1の[重合]において前段の重合時間を10分、後段の重合時間を130分、エチレン気相濃度を32.1mol%とした以外は実施例1と同様に行った。結果を表1、表2に示す。
【0154】
比較例5
実施例1の[重合]において前段の重合時間を120分、後段の重合時間を20分、エチレン気相濃度を32.1mol%とした以外は実施例1と同様に行った。結果を表1、表2に示す。
【0155】
【表1】
【0156】
【表2】
フィルム物性評価
実施例12
[ペレタイズ]
実施例1で得られた重合体5kgに酸化防止剤として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを0.1重量部、塩素捕捉剤としてステアリン酸カルシウム0.05重量部、ブロッキング防止剤としてサイロイド55(平均粒径;2.73μm)0.15重量部、滑剤としてエルカ酸アミド0.06重量部を添加し、ヘンシェルミキサーで5分間混合した後、スクリュー径65mmΦ単軸押出し機で230℃の条件で押出しペレットを造粒し原料ペレットを得た。
【0157】
[フィルムの作成]
得られたペレットを260℃で加熱された40mmΦ押出機に供給し、Tダイ口金から押出し、表面温度40℃に調整されたキャスティングロールでキャストし、厚さ150μmの無延伸フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表3に示す。
【0158】
実施例13〜22、参考例2
実施例2〜11及び参考例1で得られた重合体を用いて、実施例12と同様の方法で無延伸フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表3に示す。
【0159】
比較例7〜11
比較例1〜5で得られた重合体を用いて、実施例12と同様の方法で無延伸フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表3に示す。
【0160】
比較例12
プロピレン−エチレン共重合体(MFR;7.0g/10分、エチレン含有量;3.5重量%、融点;145℃)100重量部に対して軟質樹脂としてエチレン−ブテン−1共重合体(MI;7.0、1−ブテン含有量;12モル%)100重量部を混合した樹脂を用いて実施例12と同様の方法で無延伸フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表3に示す(表3中には、PP+EBRと記載)。
【0161】
比較例13
低結晶樹脂としてプロピレン−ブテン−1共重合体(MI;7.0g/10分、ブテン−1含有量;23モル%)を用いて実施例12と同様の方法で無延伸フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表3に示す。(表3中には、PB共重合体と記載)
【0162】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明におけるプロピレン系樹脂組成物の粘着性評価方法を示す図である。
【図2】 本発明の代表的な重合方法を示すフローチャートである。
【図3】 本発明の代表的な重合方法を示すフローチャートである。
Claims (5)
- ポリプロピレン成分およびプロピレンとエチレンおよび/またはC4〜C18のα−オレフィンとの共重合体成分から成り、(I)o−ジクロロベンゼン溶媒を用いた温度昇温溶離分別法により、80℃までの温度で溶出する成分(以下中低温溶出成分という)が全体の50〜81.7重量%で、80℃以上の温度で溶出する成分(以下高温溶出成分という)が、全体の50〜18.3重量%であり、
前記高温溶出成分の、プロピレン以外のα−オレフィン又はエチレンよりなる単量体単位が1.5重量%以下であり、
且つ0℃までの温度で溶出する成分(以下低温溶出成分という)が全体の10重量%以上であり、且つ、(II)−40℃の温度で測定したトルエン可溶分量が全体の5重量%未満であることを特徴とするプロピレン系樹脂組成物。 - ASTM−D1238に準拠して、230℃、2.16kg荷重下で測定されるメルトフローレートが、0.5〜20g/10分である請求項1記載のプロピレン系樹脂組成物。
- 高温溶出成分の熱示差走査熱量計により測定された融点が、130〜155℃である請求項1又は2記載のプロピレン系樹脂組成物。
- ポリプロピレンブロックとプロピレンとエチレンおよび/またはC4〜C18のα−オレフィンとよりなる共重合ブロックからなるブロック共重合体である請求項1〜3のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物からなる軟質フィルム。
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