JP4750296B2 - クロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体及びその製造方法 - Google Patents

クロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な、クロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体(以下クロス共重合体と略する場合がある)及びその組成物、さらにそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エチレン−芳香族ビニル化合物(スチレン)共重合体
遷移金属触媒成分と有機アルミニウム化合物からなるいわゆる均一系チーグラ−ナッタ触媒系を用いて得られるエチレン−芳香族ビニル化合物(スチレン)ランダム性共重合体及びその製造方法がいくつか知られている。
特開平3−163088号公報、特開平7−53618号公報では、いわゆる拘束幾何構造を有する錯体を用いて得られる、スチレン含量50モル%以下の正常な(すなわちヘッド−テイルの)スチレン連鎖が存在しないエチレン−スチレン共重合体、いわゆる擬似ランダム共重合体が記載されている。
特開平6−49132号公報、及びPolymer Preprints,Japan,42,2292(1993)には、架橋メタロセン系Zr錯体と助触媒からなる触媒を用いて同様の正常な芳香族ビニル化合物連鎖の存在しない、芳香族ビニル化合物含量50モル%以下のエチレン−スチレン共重合体、いわゆる擬似ランダム共重合体の製造方法が記載されている。これらの共重合体には、芳香族ビニル化合物ユニットに由来する立体規則性はない。
【0003】
さらに最近、特定の架橋ビスインデニル系Zr錯体、すなわちラセミ[エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド]を用い、極低温(−25℃)の条件下、立体規則性を有する交互共重合に近いエチレン−芳香族ビニル化合物共重合体が報告されている。(Macromol. Chem.,Rapid Commun.,17,745(1996).)しかし、本錯体で得られる共重合体は、分子量が実用に十分ではなく、また組成分布も大きい。
また、特開平9−309925号公報、特開平11−130808号公報には、それぞれスチレン含量が1〜55モル%、1〜99モル%で、エチレン−スチレン交互構造及びスチレン連鎖構造にアイソタクティクの立体規則性を有し、また、ヘッド−テイルのスチレン連鎖構造を有し、共重合体の交互度(本明細書におけるλ値)が70以下の高分子量新規エチレン−スチレン共重合体が記載されている。また、この共重合体は、高い透明性を有する。
【0004】
以上に示した各種エチレン−スチレンランダム性共重合体は、種々のすぐれた特長を有するものの、その実用化にあたっては、特にその耐熱性や高温下での物性の向上が望まれている。
【0005】
さらに、従来のエチレン−スチレン共重合体は、そのスチレン含量により軟質性(ショア−A硬度、D硬度)が著しく変化する。たとえば、スチレン含量約5モル%の共重合体のショア−A硬度は95程度であり、10モル%では85程度に低下し、スチレン含量が約25モル%付近まで、スチレン含量の増加とともに軟質化する。しかし、共重合体のスチレン含量が増加すると急速にその耐熱性が低下してしまう。
他方、耐寒性(脆化温度)も、低スチレン含量の共重合体で−60℃以下と優れるものの、スチレン含量が増えるにつれ耐寒性は悪化し、30モル%付近では−10℃程度、50モル%付近では室温にまでなってしまう。
スチレン含量15〜50モル%付近の共重合体は、塩ビ類似の感触、柔軟性、応力緩和特性を有し、塩ビ代替材として有用である。また、制振性、防音性に優れている。しかし、その耐熱性、耐寒性は乏しくそのまま用いることは困難である。
【0006】
ストレッチフィルムとして用いる場合、スチレン含量30〜50モル%付近の共重合体は、室温で塩ビストレッチフィルム同様のゆっくりした伸び回復性を示すが、冷蔵、あるいは冷凍条件では堅くなりすぎてしまう。また、Tダイでの押し出し加工やインフレーション成型でこのフィルムを製造しようとすると、フィルム自体が高い自己粘着性を有するために巻き取りの際フィルム同士が接着してしまう。ある程度の自己粘着性は、特に食品包装用のストレッチフィルムとして塩ビフィルム代替のためには有効であるが、フィルム成形性と両立させることは困難である。
【0007】
スチレン含量40モル%以上のエチレン−スチレン共重合体は、印刷性や着色性に優れ、またスチレン系樹脂との相溶性も向上する。特にスチレン含量20モル%以下の共重合体の場合、印刷性や着色性に劣るが、ポリオレフィン系樹脂との相溶性に優れる。
これらランダム性エチレン−スチレン共重合体は、以上のように組成によりその物性や相溶性が著しく変化し、また一つの組成で優れた各種特性(例えば耐熱性、耐寒性と応力緩和特性や柔軟性)を同時に満足することが出来ないという問題点を有していた。
【0008】
従来、このような問題点を解決するため、組成の異なるエチレン−スチレン共重合体同士を混ぜ合わせ組成物としたり(特開平2000−129043号公報、WO98/10018号公報)、ポリオレフィンとの組成物にしたり(WO98/10015号公報)、架橋する方法(米国特許5869591号公報)が提案されている。しかし、組成の大きく異なるエチレン−スチレン共重合体同士は相溶性に乏しく、それらの組成物やポリオレフィンとの組成物は不透明であり、また力学物性も損なわれる場合があり用途が限られてしまう。また、架橋した場合、2次成型性やリサイクル性が失われ、また製造コストが上昇してしまう問題点がある。
【0009】
エチレン−αオレフィン共重合体
エチレンに1−ヘキセン、1−オクテン等を共重合したエチレン−αオレフィン共重合体、いわゆるLLDPEは、しなやかで透明であり、高い強度を有するために、汎用のフィルム、包装材料、容器等として幅広く用いられている。しかし、ポリオレフィン系樹脂の宿命として、印刷性、塗装性が低く、印刷、塗装のためにはコロナ処理等の特殊な処理が必要になる。さらに、ポリスチレン等の芳香族ビニル化合物ポリマーや極性ポリマーとの親和性が低いため、これらの樹脂との良好な力学物性を有する組成物を得るためには、他に高価な相溶化剤を用いる必要性があった。
【0010】
一般的なグラフト化共重合体
従来グラフト共重合体を得る方法として、一般的な公知のラジカルグラフト処方により、重合の際に、あるいは成形加工の際に、オレフィン系重合体またはオレフィン−スチレン系共重合体のグラフト共重合体を得る方法が知られている。しかしながら、この方法は高いグラフト効率を得ることがが困難であり、コスト的に不利であり、また得られるグラフト共重合体は不均一であり、一部ゲル化して不溶化したり、成形性を損なう等の問題点を一般的に有する。このようにして得られたグラフト化共重合体は、一般的にポリマー主鎖から一本ずつ分岐したグラフト鎖を有するが、これを組成物、相溶化剤として用いた場合、ポリマーミクロ構造界面の強度は十分とはいえない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、力学特性、高温特性、相溶性に優れたクロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合及びその組成物を提供し、さらにこのクロス共重合体及びその組成物の工業的に優れた製造方法を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、まず第一に従来技術の以上のような問題点を解決した、耐熱性と各種力学物性、相溶性を満足するクロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体およびその組成物、さらにこのクロス共重合体の工業的に優れた製造方法である。
本発明は、第二に、本発明のクロス共重合体の用途であり、上記、従来の各種樹脂組成物や成形物の問題点を解決、改良したクロス共重合体を含む各種樹脂組成物や成形物である。
【0013】
以下に本発明を詳細に説明する。
<クロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体(クロス共重合体)>
本発明において、オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体とは、オレフィン、芳香族ビニル化合物及びジエンの各モノマーから誘導されるユニット(単位)から構成される共重合体を示す。
本明細書において、共重合体の芳香族ビニル化合物含量とは、共重合体に含まれる、芳香族ビニル化合物モノマー由来のユニット(単位)の含量を示す。オレフィン含量、ジエン含量も同様である。
本発明のクロス共重合体は、オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体に、芳香族ビニル化合物含量が2.2モル%以下のオレフィン共重合体(ジエンが含まれていてもよい)をクロス共重合化してなるクロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体である。
好ましくは、本発明のクロス共重合体は、芳香族ビニル化合物含量が5モル%以上50モル%以下、ジエン含量が0.0001モル%以上3モル%以下、残部がオレフィンであるオレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体に、芳香族ビニル化合物含量が2.2モル%以下のオレフィン共重合体(ジエンが含まれていてもよい)をクロス共重合化してなることを特徴とするクロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体である。
また、本発明のクロス共重合体は、好ましくは芳香族ビニル化合物含量が2.2モル%以下のオレフィン共重合体(ジエンが含まれていてもよい)をクロス鎖として有し、全体の組成が芳香族ビニル化合物含量が5モル%以上50モル%以下、ジエン含量が0.0001モル%以上3モル%以下、残部がオレフィンであることを特徴とするクロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体である。すなわち本発明のクロス共重合体は、最終的に芳香族ビニル化合物含量が5モル%以上50モル%以下、ジエン含量が0.0001モル%以上3モル%以下、残部がオレフィンという組成を有することができる。さらに好ましくは本発明のクロス共重合体は、最終的に芳香族ビニル化合物含量が5モル%以上50モル%以下、ジエン含量が0.001モル%以上0.5モル%未満、残部がオレフィンという組成を有することができる。
【0014】
本発明のクロス共重合体の重量平均分子量は、好ましくは1万以上、更に好ましくは3万以上、特に好ましくは6万以上であり、100万以下、好ましくは50万以下である。分子量分布(Mw/Mn)は、10以下、好ましくは7以下、最も好ましくは5以下、1.5以上である。
また、本発明の明細書において、クロス共重合体とは、本発明の製造方法により直接得ることができる重合体である。
【0015】
さらに本発明は、好ましくは図1に示す構造から構成される、または好ましくは図1に示す構造を主に含むクロス共重合体である。
すなわち、図1に示す様に主鎖オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体とビニル化合物重合体とがジエンユニットを介し、一点または複数点で、クロス鎖と結合(交差結合)している構造を主として有する共重合体である。このようなクロス構造は、スター構造と言い換えることが出来る。また、米国化学会POLY分科会での分類ではSegregated star copolymer (Polymer preprints,1998,3月)と呼ばれている。以下、主鎖オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体にクロス結合しているオレフィン−芳香族ビニル化合物共重合体またはオレフィン(共)重合体をクロス鎖と記述する。
【0016】
これに対し、図2に示す様に当業者に公知のグラフト共重合体は、主鎖の一点または複数点から分岐したポリマー鎖を主に有する共重合体である。
ポリマー主鎖と他のポリマー鎖がクロス結合(交差結合)するような構造(スター構造ともいえる)は、組成物、相溶化剤として用いられた場合、一般的にグラフト化構造に比べ、ポリマーミクロ構造界面の優れた強度が得られ、高い力学的物性を与えると信じられる。
本発明のクロス共重合体(本明細書では、クロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体と同義語である。)は、クロス鎖の芳香族ビニル化合物含量が2.2モル%以下であることを特徴とし、そのため、高い結晶融点(耐熱性、高温力学物性)を有することができる特徴を有する。本発明のクロス共重合体は、そのため、DSCにより少なくとも一つの融点ピークが80℃以上140℃以下に、好ましくは100℃以上140℃以下の範囲に観測され、かつその結晶融解熱が10J/g以上150J/g以下、好ましくは20J/g以上120J/g以下である特徴を有する。さらに、好ましくは本発明のクロス共重合体はエチレン連鎖構造に基づく結晶構造を有する。この結晶構造は、公知の方法、たとえばX線回折法により確認することができる。
【0017】
より具体的には、本発明のクロス共重合体は、その芳香族ビニル化合物含量と、DSC測定による結晶融解熱が10J/g以上150J/g以下である融点ピークのうち少なくともが一つが以下の関係を満たすことを特長とする芳香族ビニル化合物含量が5モル%以上50モル%以下、ジエン含量が0.0001モル%以上3モル%以下、残部がエチレンまたはエチレンを含む2種以上のオレフィンであるクロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体であることが好ましい。
(5≦St≦15)
−3・St+125≦Tm≦140
(15<St≦50)
80≦Tm≦140
Tm;DSC測定による融点(℃)
St;芳香族ビニル化合物含量(モル%)
【0018】
さらに好ましくは、本発明のクロス共重合体は、その芳香族ビニル化合物含量と、DSC測定による結晶融解熱が10J/g以上150J/g以下である融点ピークのうち少なくともが一つが以下の関係を満たすことを特長とする芳香族ビニル化合物含量が5モル%以上50モル%以下、ジエン含量が0.0001モル%以上3モル%以下、残部がエチレンまたはエチレンを含む2種以上のオレフィンであるクロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体である。
(5≦St≦10)
−2・Xc+120≦Tm≦140
(10<St≦50)
100≦Tm≦140
Tm;DSC測定による融点(℃)
St;芳香族ビニル化合物含量(モル%)
【0019】
最も好ましくは、本発明のクロス共重合体は、その芳香族ビニル化合物含量と、DSC測定による結晶融解熱が10J/g以上150J/g以下である融点ピークうち少なくともが一つが以下の関係を満たすことを特長とする芳香族ビニル化合物含量が5モル%以上30モル%以下、ジエン含量が0.0001モル%以上3モル%以下、残部がエチレンまたはエチレンを含む2種以上のオレフィンであるクロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体である。
(5≦St≦10)
−2・St+120≦Tm≦140
(10<St≦30)
100≦Tm≦140
Tm;DSC測定による融点(℃)
St;芳香族ビニル化合物含量(モル%)
さらに好ましくは、DSCにより観測される融点がひとつであり、かつその融点が上記の関係を満たすクロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体である。
上記の式で示される本発明のクロス共重合体の融点は、主にα−オレフィンやスチレンを芳香族ビニル化合物とするエチレン系共重合体の芳香族ビニル化合物含量と融点の関係より明らかに高く、区別される。
【0020】
本発明のクロス共重合体は、主鎖及びクロス鎖、または主鎖のみに芳香族ビニル化合物が共重合されていることを特徴とするクロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体である。芳香族ビニル化合物を用いることにより、軟質塩化ビニル樹脂類似の力学物性やスチレン系樹脂やその他の樹脂、添加剤との優れた相溶性を有することが可能となる。
本発明のクロス共重合体のうち、クロス共重合化エチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体は、好ましくは30℃以下−30℃以上の範囲に少なくとも一つのガラス転移点を有することができる。ガラス転移点は、DSC測定において、接線法(on set法)により求めたガラス転移点である。
【0021】
さらに、本発明は、好ましくは230℃、荷重5kgで測定したMFRが0.1g/10分以上、更に好ましくは、1g/10分以上である、さらに成形加工性に優れたクロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体である。
さらに、本発明は、ASTM D−2765−84により求められる沸騰キシレン不溶物(ゲル分)が全体の10質量%未満、好ましくは1質量%未満、最も好ましくは0.1質量%未満である、ゲル分が少ない、または実質的にゲル分を含まないクロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体である。
本発明は、好ましくはオレフィンがエチレンまたはエチレンを含む2種以上のオレフィンであるクロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体である。
【0022】
また、本発明のクロス共重合体は、下記に示す製造方法により得ることができる共重合体である。
本発明のクロス共重合体は、クロス共重合体そのものを示す概念であるだけでなく、クロス共重合体、及び第一重合工程、第二以降の重合工程(以降第二重合工程と記す場合がある)で得られるクロス化されなかったオレフィン共重合体(オレフィン−芳香族ビニル化合物共重合体等)を任意の割合で含む組成物の概念を含む。このようなクロス共重合体を含む組成物は、本発明の製造方法によって得ることができる。
【0023】
本発明のクロス共重合体、主鎖とクロス鎖の芳香族ビニル化合物含量が大きく異なるため、各重合工程で得られる組成(芳香族ビニル化合物含量)が異なるオレフィン−芳香族ビニル化合物共重合体を含んでいても、これらの相溶化剤として機能すると考えられる。そのため、本発明の製造方法により得られるクロス共重合体は、通常のオレフィン−芳香族ビニル化合物共重合体と比較して優れた力学物性、高い耐熱性、透明性、加工性を有すると考えられる。
また、本発明により、経済性に優れたクロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体の製造方法が提供され、それにより得られるクロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体が提供される。これらクロス共重合体は広範な用途において極めて有用である。
【0024】
<クロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体の製造方法>
本発明は、以下に示す製造方法によって得ることが出来るクロス共重合体、すなわちクロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体である。
また、本クロス共重合体製造方法は、均一で、耐熱性に優れ、加工性が良好で、また透明性、力学物性を有するクロス共重合体を工業化に適する効率性、経済性をもって製造することができる。
【0025】
すなわち、本発明は第一重合工程(主鎖重合工程)として、配位重合触媒を用いてオレフィンモノマー、芳香族ビニル化合物モノマーとジエンモノマーの共重合を行い、オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体を合成し、次に第二重合工程(クロス化工程)として、この共重合体とオレフィン及び必要に応じ芳香族ビニル化合物、配位重合触媒を用いてオレフィン−芳香族ビニル化合物共重合体をクロス共重合化したクロス共重合体を得る製造方法である。この製造方法は、上記第一重合工程(主鎖重合工程)及び第二重合工程(クロス化工程)を含む2段以上の重合工程を用いる製造方法である。
【0026】
A)第一重合工程(主鎖重合工程)
本発明に用いられるオレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体は、オレフィンモノマー、芳香族ビニル化合物モノマー及びジエンモノマーをシングルサイト配位重合触媒の存在下で共重合することによって得られる。
本発明に用いられるオレフィン類としては、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィン、すなわちプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンや環状オレフィン、すなわちシクロペンテン、ノルボルネンや脂環族オレフィン、すなわちビニルシクロヘキサンの単数または複数が挙げられる。好ましくは、エチレン及び/または炭素数3〜20のαオレフィンが用いられ、特に好ましくは、エチレンとプロピレン、エチレンと1−ブテン、エチレンと1−ヘキセン、エチレンと1−オクテン、エチレンとノルボルネンが用いられる。最も好ましくはエチレンが用いられる。
【0027】
本発明に用いられる芳香族ビニル化合物としては好ましくはスチレンが用いられるが、他の芳香族ビニル化合物例えばp−クロロスチレン、p−ターシャリ−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、p−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等を用いることも可能で、さらにこれらの混合物を用いてもよい。
【0028】
また、本発明に用いられるジエン類としては、配位重合可能なジエン類が用いられる。好ましくは1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、ノルボルナジエン、4−ビニル−1シクロヘキセン、3−ビニル−1シクロヘキセン、2−ビニル−1シクロヘキセン、1−ビニル−1シクロヘキセン、オルトジビニルベンゼン、パラジビニルベンゼン、メタジビニルベンゼンまたはこれらの混合物が挙げられる。さらに、複数の二重結合(ビニル基)が単数または複数の芳香族ビニル環構造を含む炭素数6から30の炭化水素基を介して結合しているジエンを用いることができる。また、特開平6−136060号公報や特開平11−124420号公報に記載されているジエン類も本発明に用いることが出来る。好ましくは、二重結合(ビニル基)の1つが配位重合に用いられて重合した状態において残された二重結合が配位重合可能であるジエン類であり、最も好ましくはオルト、パラ、メタの各種ジビニルベンゼン及びその混合物が好適に用いられる。
【0029】
本発明においては、主鎖重合工程において用いるジエンの量が、モル比で、用いる芳香族ビニル化合物の量の1/100以下1/50000以上、好ましくは1/400以下1/20000以上である。これ以上のジエン濃度で主鎖重合工程を実施すると、重合中にポリマーの架橋構造が多く形成されゲル化等が起こったり、クロス化工程を経て最終的に得られるクロス共重合体の加工性や物性が悪化するため好ましくない。また、これ以上のジエン濃度で主鎖重合工程を実施すると、重合液中の残留ジエン濃度が高くなってしまうため、この重合液をクロス化工程にそのまま用いた場合、架橋構造が多く発生し、得られるクロス共重合体は同様に加工性や物性が悪化してしまう場合がある。
本発明の第一重合工程(主鎖重合工程)で重合されるオレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体は、芳香族ビニル化合物含量が5モル%以上50モル%以下、ジエン含量が0.0001モル%以上3モル%以下、残部がオレフィンである組成を有する。特に軟質性に優れるクロス共重合体を得るためには、第一重合工程(主鎖重合工程)で重合されるオレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体は、芳香族ビニル化合物含量が約15〜20モル%以上50モル%以下、ジエン含量が0.001モル%以上0.5モル%未満、残部がオレフィンである組成を有するのが好ましい。特に軟質塩ビ類似の特性(やわらかさ等の触感、粘弾性スペクトルにおける室温付近のtanδ成分)を有するクロス共重合体を得るためには、芳香族ビニル化合物は特にスチレンであることが好ましく、この場合スチレン含量が約20モル%以上50モル%以下でジエン含量が0.001モル%以上0.5モル%未満、残部がオレフィンであるオレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体が用いられる。
また、軟質性と耐寒性を併せ有するクロス共重合体を得るためには、第一重合工程(主鎖重合工程)で重合されるオレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体は、芳香族ビニル化合物含量が10モル%以上30モル%以下、ジエン含量が0.001モル%以上0.5モル%未満、残部がオレフィンである組成を有するのが好ましい。
また、第一重合行程(主鎖重合工程)において得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体のジエン含量は、0.0001モル%以上3モル%以下、好ましくは0.001モル%以上0.5モル%未満、最も好ましくは0.01モル%以上0.3モル%未満である。共重合体中のジエン含量がより高くなると第二重合行程(クロス化工程)を経て最終的に得られるクロス共重合体の加工性が悪化するため好ましくない。
【0030】
第一重合工程(主鎖重合工程)に用いられる遷移金属化合物触媒としては、可溶性遷移金属化合物と助触媒から構成される重合触媒、すなわち可溶性Zieglar−Natta触媒、メチルアルミノキサンや硼素化合物等で活性化された遷移金属化合物触媒(いわゆるメタロセン触媒やハーフメタロセン触媒、CGCT触媒等)が挙げられる。
具体的には以下の文献、特許に記載されている重合触媒を用いることができる。
たとえば、メタロセン触媒では、USP5324800、特公平7−37488号公報、特開平6−49132号公報、Polymer Preprints,Japan,42,2292(1993)、Macromol. Chem., Rapid Commun.,17,745(1996)、特開平9−309925号公報、EP0872492A2号公報、特開平6−184179号公報。
ハーフメタロセン触媒では、Makromol.Chem.191,2387(1990)。
CGCT触媒では、特開平3−163088号公報、特開平7−53618号公報、EP−A−416815号公報、WO99/14221。
可溶性Zieglar−Natta触媒では、特開平3−250007号公報、Stud.Surf.Sci.Catal.,517(1990)。
【0031】
重合体中に均一にジエンが含まれる、均一な組成を有するオレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体が本発明のクロス共重合体を得るためには好適に用いられるが、このような均一な組成の共重合体を得るためには、Zieglar−Natta触媒では困難であり、シングルサイト配位重合触媒が好ましく用いられる。シングルサイト配位重合触媒とは、遷移金属化合物と助触媒から構成される重合触媒で、メチルアルミノキサンや硼素化合物等で活性化された遷移金属化合物触媒(いわゆるメタロセン触媒やハーフメタロセン触媒、CGCT触媒等)から構成される重合触媒である。
【0032】
本発明において、最も好適に用いられるシングルサイト配位重合触媒は、下記一般式(1)で表される遷移金属化合物と助触媒から構成される重合触媒である。
下記の一般式(1)で表される遷移金属化合物と助触媒から構成される重合触媒を用いた場合、ジエン類特にジビニルベンゼンを高い効率でポリマーに共重合させることが可能であり、したがって、第一重合工程(主鎖重合工程)で用いるジエン類の使用量及び重合液に残留する未反応ジエン量を非常に低減させることが可能である。
【0033】
主鎖重合工程で用いるジエン量が多い、すなわち濃度が高いと、主鎖重合中にジエンユニット構造を架橋点としてポリマーの架橋が多く起こり、ゲル化や不溶化を起こしてしまい、ひいてはクロス共重合体またはクロス共重合体の加工性を悪化させる。また、主鎖重合工程で得られた重合液中に未重合のジエン類が多く残っていると、引き続くクロス重合工程の際にクロス鎖の架橋度が著しく高くなってしまい、得られたクロス化共重合体またはクロス共重合体が不溶化、ゲル化したり加工性を低下させてしまう。
【0034】
さらに、下記の一般式(1)で表される遷移金属化合物と助触媒から構成される重合触媒を用いた場合、工業化に適する著しく高い活性で均一な組成を有するオレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体、特にオレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体を製造することが可能である。また、高い透明性の共重合体を与えることができる。さらに、力学的物性に優れた、アイソタクティクの立体規則性とヘッド−テイルのスチレン連鎖構造を有するオレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体を与えることができる。
【0035】
【化2】
Figure 0004750296
【0036】
式中、A、Bはそれぞれ独立に、非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、非置換もしくは置換シクロペンタジエニル基、非置換もしくは置換インデニル基、または非置換もしくは置換フルオレニル基から選ばれる基である。
YはA、Bと結合を有し、他に水素もしくは炭素数1〜20の炭化水素を含む基(この基は1〜3個の窒素、硼素、珪素、燐、セレン、酸素または硫黄原子を含んでもよい)を置換基として有するメチレン基、シリレン基、エチレン基、ゲルミレン基、ほう素残基である。置換基は互いに異なっていても同一でもよい。また、Yはシクロヘキシリデン基、シクロペンチリデン基等の環状構造を有していてもよい。
Xは、それぞれ独立に水素、ハロゲン、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数8〜12のアルキルアリール基、炭素数1〜4の炭化水素置換基を有するシリル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、または水素、または炭素数1〜22の炭化水素置換基を有するアミド基である。nは、0、1または2の整数である。
Mはジルコニウム、ハフニウム、またはチタンである。
特に好ましくは、A、Bのうち、少なくとも1つは非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、または非置換もしくは置換インデニル基から選ばれる基である上記の一般式(1)の遷移金属化合物と助触媒から構成される重合触媒である。
【0037】
非置換または置換ベンゾインデニル基は、下記の化3〜5で表すことができる。下記の化学式においてR1b〜R3bはそれぞれ独立に水素、1〜3個の窒素、硼素、珪素、燐、セレン、酸素もしく硫黄原子を含んでもよい炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアルキルアリール基、ハロゲン原子、OSiR3基、SiR3基、NR2基またはPR2基(Rはいずれも炭素数1〜10の炭化水素基を表す)である。また、隣接するこれらの基は一体となって単数のあるいは複数の5〜10員環の芳香環または脂肪環を形成しても良い。
またR1a〜R3aは、それぞれ独立に水素、1〜3個の窒素、硼素、珪素、燐、セレン、酸素もしくは硫黄原子を含んでもよい炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアルキルアリール基、ハロゲン原子、OSiR3基、SiR3基、NR2基またはPR2基(Rはいずれも炭素数1〜10の炭化水素基を表す)であるが、水素であることが好ましい。
【0038】
【化3】
Figure 0004750296
【0039】
【化4】
Figure 0004750296
【0040】
【化5】
Figure 0004750296
【0041】
非置換ベンゾインデニル基として、4,5−ベンゾ−1−インデニル、(別名ベンゾ(e)インデニル)、5,6−ベンゾ−1−インデニル、6,7−ベンゾ−1−インデニルが、置換ベンゾインデニル基として、α−アセナフト−1−インデニル、3−シクロペンタ〔c〕フェナンスリル、1−シクロペンタ〔l〕フェナンスリル基等が例示できる。
特に好ましくは非置換ベンゾインデニル基として、4,5−ベンゾ−1−インデニル、(別名ベンゾ(e)インデニル)が、置換ベンゾインデニル基として、α−アセナフト−1−インデニル、3−シクロペンタ〔c〕フェナンスリル、1−シクロペンタ〔l〕フェナンスリル基等が挙げられる。
非置換もしくは置換インデニル基、非置換もしくは置換フルオレニル基または非置換もしくは置換シクロペンタジエニル基は、化6〜8で表すことができる。
【0042】
【化6】
Figure 0004750296
【0043】
【化7】
Figure 0004750296
【0044】
【化8】
Figure 0004750296
【0045】
R4b、R6はそれぞれ独立に水素、1〜3個の窒素、硼素、珪素、燐、セレン、酸素もしくは硫黄原子を含んでもよい炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアルキルアリール基、ハロゲン原子、OSiR3基、SiR3基、NR2基またはPR2基(Rはいずれも炭素数1〜10の炭化水素基を表す)である。また、隣接するこれらの基は一体となって単数のあるいは複数の5〜10員環(6員環となる場合を除く)の芳香環または脂肪環を形成しても良い。
R5はそれぞれ独立に水素、1〜3個の窒素、硼素、珪素、燐、セレン、酸素もしくは硫黄原子を含んでもよい炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアルキルアリール基、ハロゲン原子、OSiR3基、SiR3基、NR2基またはPR2基(Rはいずれも炭素数1〜10の炭化水素基を表す)である。また、隣接するこれらの基は一体となって単数のあるいは複数の5〜10員環の芳香環または脂肪環を形成しても良い。
またR4aは、それぞれ独立に水素、1〜3個の窒素、硼素、珪素、燐、セレン、酸素もしくは硫黄原子を含んでもよい炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアルキルアリール基、ハロゲン原子、OSiR3基、SiR3基、NR2基またはPR2基(Rはいずれも炭素数1〜10の炭化水素基を表す)であるが、水素であることが好ましい。
【0046】
A、B共に非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、または非置換もしくは置換インデニル基である場合には両者は同一でも異なっていてもよい。
本発明に用いられる共重合体を製造するにあたっては、A、Bのうち少なくとも一方が非置換もしくは置換ベンゾインデニル基であることが特に好ましい。
さらに、両方とも非置換もしくは置換ベンゾインデニル基であることが最も好ましい。
上記の一般式(1)において、YはA、Bと結合を有し、他に置換基として水素もしくは炭素数1〜20の炭化水素を含む基(この基は1〜3個の窒素、硼素、珪素、燐、セレン、酸素または硫黄原子を含んでもよい)を有するメチレン基、シリレン基、エチレン基、ゲルミレン基、ほう素残基である。置換基は互いに異なっていても同一でもよい。また、Yはシクロヘキシリデン基、シクロペンチリデン基等の環状構造を有していてもよい。
【0047】
好ましくは、Yは、A、Bと結合を有し、水素もしくは炭素数1〜20の炭化水素基またはアミノ基、トリメチルシリル基で置換された置換メチレン基または置換硼素基である。もっとも好ましくは、Yは、A、Bと結合を有し、水素もしくは炭素数1〜20の炭化水素基で置換された置換メチレン基である。
炭化水素置換基としては、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、シクロアリール基等が挙げられる。置換基は互いに異なっていても同一でもよい。
好ましい例としては、Yは、−CH2−、−CMe2−、−CEt2−、−CPh2−、シクロヘキシリデン、シクロペンチリデン基等である。ここで、Meはメチル基、Etはエチル基、Phはフェニル基を表す。
【0048】
Xは、それぞれ独立に水素、ハロゲン、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数8〜12のアルキルアリール基、炭素数1〜4の炭化水素置換基を有するシリル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、または水素、または炭素数1〜22の炭化水素置換基を有するアミド基またはアミノ基である。nは、0、1または2の整数である。
ハロゲンとしては塩素、臭素、フッ素等が、アルキル基としてはメチル基、エチル基等が、アリール基としてはフェニル基等が、アルキルアリール基としては、ベンジル基が、シリル基としてはトリメチルシリル基等が、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等が、またアミド基としてはジメチルアミド基等のジアルキルアミド基、N−メチルアニリド、N−フェニルアニリド、アニリド基等のアリ−ルアミド基等が挙げられる。また、Xとしては米国特許公報5859276号、米国特許公報5892075号に記載してある基を用いることもできる。
Mはジルコニウム、ハフニウム、またはチタンである。特に好ましくジルコニウムである。
【0049】
かかる遷移金属化合物の例としては、EP−0872492A2公報、特開平11−130808号公報、特開平9−309925号公報、WO00/20426公報、EP0985689A2公報、特開平6−184179号公報に記載されている遷移金属化合物が挙げられる。
特に好ましくは、EP−0872492A2公報、特開平11−130808号公報、特開平9−309925号公報に具体的に例示した置換メチレン架橋構造を有する遷移金属化合物である。
【0050】
本発明の製造方法で用いる助触媒としては、従来遷移金属化合物と組み合わせて用いられている公知の助触媒やアルキルアルミニウム化合物を使用することができるが、そのような助触媒として、メチルアルミノキサン(またはメチルアルモキサンまたはMAOと記す)またはほう素化合物が好適に用いられる。用いられる助触媒やアルキルアルミニウム化合物の例としては、EP−0872492A2号公報、特開平11−130808号公報、特開平9−309925号公報、WO00/20426号公報、EP0985689A2号公報、特開平6−184179号公報に記載されている助触媒やアルキルアルミニウム化合物が挙げられる。
更に、その際用いられる助触媒が下記の一般式(2)、(3)で示されるアルミノキサン(またはアルモキサンと記す)が好ましい。
【0051】
【化9】
Figure 0004750296
【0052】
式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、または水素、mは2〜100の整数である。それぞれのRは互いに同一でも異なっていても良い。
【0053】
【化10】
Figure 0004750296
【0054】
式中、R'は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、または水素、nは2〜100の整数である。それぞれのR'は互いに同一でも異なっていても良い。
【0055】
本発明に用いられるオレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体を製造するにあたっては、上記に例示した各モノマー、金属錯体(遷移金属化合物)および助触媒を接触させるが、接触の順番、接触方法は任意の公知の方法を用いることができる。
以上の共重合あるいは重合の方法としては溶媒を用いずに液状モノマー中で重合させる方法、あるいはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、クロロ置換ベンゼン、クロロ置換トルエン、塩化メチレン、クロロホルム等の飽和脂肪族または芳香族炭化水素またはハロゲン化炭化水素の単独または混合溶媒を用いる方法がある。好ましくは混合アルカン系溶媒やシクロヘキサンやトルエン、エチルベンゼンを用いる。重合形態は溶液重合、スラリー重合いずれでもよい。
【0056】
また、重合は、バッチ式、回分式、連続式のいずれの形式でもよい。
重合装置は、タンク式、リニアやループの単数または連結された複数のパイプ式、あるいは塔式等の公知の装置を用いることができる。この場合、パイプ状の重合装置には、動的、あるいは静的な混合機や除熱を兼ねた静的混合機等の公知の各種混合機、除熱用の細管を備えた冷却器等の公知の各種冷却器を有しても良い。また、バッチタイプの予備重合缶を有していても良い。さらには気相重合等の方法を用いることができる。
【0057】
重合温度は、−78℃から200℃が適当である。−78℃より低い重合温度は工業的に不利であり、200℃を超えると金属錯体の分解が起こるので適当ではない。さらに工業的に好ましくは、0℃〜160℃、特に好ましくは30℃〜160℃である。
重合時の圧力は、一般的には0.1気圧〜1000気圧が適当であり、好ましくは1〜100気圧、特に工業的に特に好ましくは、1〜30気圧である。
【0058】
助触媒として有機アルミニウム化合物を用いる場合には、錯体の金属に対し、アルミニウム原子/錯体金属原子比で0.1〜100000、好ましくは10〜10000の比で用いられる。0.1より小さいと有効に金属錯体を活性化出来ず、100000を超えると経済的に不利となる。
助触媒としてほう素化合物を用いる場合には、ほう素原子/錯体金属原子比で0.01〜100の比で用いられるが、好ましくは0.1〜10、特に好ましくは1で用いられる。
0.01より小さいと有効に金属錯体を活性化出来ず、100を超えると経済的に不利となる。
金属錯体と助触媒は、重合槽外で混合、調製しても、重合時に槽内で混合してもよい。
【0059】
本発明の第一重合工程では、オレフィン分圧は、重合開始時のオレフィン分圧に対し、150%未満、50%より大きい範囲で連続的にまたは段階的に変更することができる。第一重合工程のオレフィン分圧は、重合中は一定に保つのが好ましい。
また、本発明の第一重合工程では、重合液中の芳香族ビニル化合物濃度は、重合開始時の濃度に対し、30%より高く200%より低い範囲で連続的に、または段階的に変更する事ができる。また好ましくは、芳香族ビニル化合物モノマーの分添を行わず、芳香族ビニル化合物モノマーの転換率を70%未満(芳香族ビニル化合物濃度を重合開始時と比較して30%より高くする)であるのがよい。
【0060】
<本発明に用いられるオレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体>
本発明に用いられるオレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体は、上記第一重合工程において、シングルサイト配位重合触媒を用いて芳香族ビニル化合物、オレフィン、ジエンの各モノマーから合成される。
本発明の第一重合工程(主鎖重合工程)で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体としては、好ましくはエチレン−α−オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体、またはエチレン−環状オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体、またはエチレン−脂環族オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体、特に好ましくはエチレン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体が用いられる。
本発明の第一重合工程(主鎖重合工程)で得られるエチレン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体としては、好ましくはエチレン−スチレン−ジエン共重合体、またはエチレン−スチレン−α−オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体、またはエチレン−スチレン−環状オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体、特に好ましくはエチレン−スチレン−ジエン共重合体が用いられる。
また、本発明の第一重合工程(主鎖重合工程)で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体は、含まれるジエンモノマーユニットでクロス構造または架橋構造を有していても良いが、ゲル分が全体の10質量%未満、好ましくは0.1質量%未満である必要がある。
【0061】
以下に本発明に用いられる代表的、好適なエチレン−スチレン−ジエン共重合体について説明する。
第一重合工程(主鎖重合工程)で得られるエチレン−スチレン−ジエン共重合体は、TMSを基準とした13C−NMR測定によって40〜45ppmに観察されるピークによって帰属されるヘッド−テイルのスチレンユニットの連鎖構造を有することが好ましく、さらに、42.3〜43.1ppm、43.7〜44.5ppm、40.4〜41.0ppm、43.0〜43.6ppmに観察されるピークによって帰属されるスチレンユニットの連鎖構造を有することが好ましい。
また、本発明に好適に用いられる共重合体は、スチレンの単独重合によって、アイソタクティクのポリスチレンを作ることのできるメタロセン触媒を用いて得られるエチレン−スチレン−ジエン共重合体であり、かつ、エチレンの単独重合によって、ポリエチレンを作ることのできるメタロセン触媒を用いて得られるエチレン−スチレン−ジエン共重合体である。
【0062】
そのため、得られるエチレン−スチレン−ジエン共重合体は、エチレン連鎖構造、ヘッド−テイルのスチレン連鎖構造、エチレンユニットとスチレンユニットが結合した構造を共にその主鎖中に有することができる。
【0063】
本発明において好ましく用いられる、第一重合工程(主鎖重合工程)で得られるエチレン−スチレン−ジエン共重合体は、その構造中に含まれる下記の一般式(4)で示されるスチレンとエチレンの交互構造のフェニル基の立体規則性がアイソタクティクダイアッド分率(またはメソダイアッド分率)mで0.5より大きい、好ましくは0.75より大きい、特に好ましくは0.95より大きい共重合体である。
エチレンとスチレンの交互共重合構造のアイソタクティクダイアッド分率mは、25ppm付近に現れるメチレン炭素ピークのr構造に由来するピーク面積Arと、m構造に由来するピークの面積Amから、下記の式(ii)によって求めることができる。
m=Am/(Ar+Am) 式(ii)
ピークの出現位置は測定条件や溶媒によって若干シフトする場合がある。
例えば、重クロロホルムを溶媒とし、TMSを基準とした場合、r構造に由来するピークは、25.4〜25.5ppm付近に、m構造に由来するピークは25.2〜25.3ppm付近に現れる。
また、重テトラクロロエタンを溶媒とし、重テトラクロロエタンの3重線の中心ピークを73.89ppmとして基準にした場合、r構造に由来するピークは、25.3〜25.4ppm付近に、m構造に由来するピークは25.1〜25.2ppm付近に現れる。
なお、m構造はメソダイアッド構造、r構造はラセミダイアッド構造を表す。
【0064】
第一重合工程(主鎖重合工程)で得られるエチレン−スチレン−ジエン共重合体は、共重合体構造中に含まれる一般式(4)で示されるスチレンとエチレンの交互構造の割合を示す交互構造指数λ(下記の式(i)で表される)が70より小さく、0.01より大きい、好ましくは30より小さく、0.1より大きい共重合体であることが好ましい。
λ=A3/A2×100 式(i)
ここでA3は、13C−NMR測定により得られる、下記の一般式(4')で示されるエチレン−スチレン交互構造に由来する3種類のピークa、b、cの面積の総和である。また、A2はTMSを基準とした13C−NMRにより0〜50ppmの範囲に観測される主鎖メチレン及び主鎖メチン炭素に由来するピークの面積の総和である。
【0065】
【化11】
Figure 0004750296
【0066】
【化12】
Figure 0004750296
【0067】
(式中、Phはフェニル基、xは繰り返し単位数を示し2以上の整数を表す。)ジエン含量が3モル%以下、好ましくは1モル%未満のエチレン−スチレン−ジエン共重合体において、ヘッド−テイルのスチレン連鎖を有すること、及び/またはエチレン−スチレン交互構造にアイソタクティクの立体規則性を有すること及び/または交互構造指数λ値が70より小さいことは、透明性の高い、破断強度等の力学的強度が高いエラストマー共重合体であるために有効であり、このような特徴を有する共重合体は本発明に好適に用いることができる。
特に、エチレン−スチレン交互構造に高度のアイソタクティクの立体規則性を有しかつ、交互構造指数λ値が70より小さい共重合体が本発明の共重合体として好ましく、さらに、ヘッド−テイルのスチレン連鎖を有し、かつエチレン−スチレン交互構造にアイソタクティクの立体規則性を有し、かつ交互構造指数λ値が70より小さい共重合体が本発明の共重合体として特に好ましい。
【0068】
すなわち、本発明の好ましいエチレン−スチレン−ジエン共重合体は、高い立体規則性を有するエチレンとスチレンの交互構造と、同時に種々の長さのエチレン連鎖、スチレンの異種結合、種々の長さのスチレン連鎖等の多様な構造を併せて有するという特徴を持つ。また、本発明のエチレン−スチレン−ジエン共重合体は、用いる重合触媒や重合条件、共重合体中のスチレンの含量によって交互構造の割合を、上記の式で得られるλ値で0.01より大きく70未満の範囲で種々変更可能である。
交互指数λ値が70より低いということは、結晶性ポリマーでありながら、有意の力学的強度、耐溶剤性、靭性、透明性を与えるために、また、部分的に結晶性のポリマーとなるために、あるいは、非結晶性のポリマーとなるために重要である。
【0069】
以上に記した、本発明に好適に用いられるオレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体、特にエチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体は、上記の一般式(1)で表される遷移金属化合物と助触媒から構成される重合触媒により得ることができる。
以上、本発明に用いられるオレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体の代表的、好適な例としてのエチレン−スチレン−ジエン共重合体について説明したが、もちろん本発明に用いられるオレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体はこれには限定されない。
【0070】
本発明に用いられるオレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体の重量平均分子量は、好ましくは1万以上、更に好ましくは3万以上、特に好ましくは6万以上であり、100万以下、好ましくは50万以下である。分子量分布(Mw/Mn)は、6以下、好ましくは4以下、最も好ましくは3以下である。
ここでの重量平均分子量はGPCで標準ポリスチレンを用いて求めたポリスチレン換算分子量をいう。以下の説明でも同様である。
本発明に用いられるオレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体の重量平均分子量は、水素等の連鎖移動剤を用いる公知の方法、或いは重合温度を変えることにより上記の範囲内で必要に応じて調節することが可能である。
本発明の第一重合工程(主鎖重合工程)で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体は、含まれるジエンユニットを介して、一部クロス構造や分岐構造を有していても良い。
【0071】
B)第二重合工程(クロス化工程)
本発明の第二重合工程としては、上記シングルサイト配位重合触媒を用いた配位重合が採用される。好ましくは第一重合工程と同じ一般式(1)で示される遷移金属化合物と助触媒から構成されるシングルサイト配位重合触媒が採用される。この一般式(1)で示される遷移金属化合物と助触媒から構成されるシングルサイト配位重合触媒は、ポリマー主鎖に共重合されたジエンユニット、特にジビニルベンゼンの残留配位重合性二重結合を高い効率で共重合できるため、本発明には好ましい。本発明の第二重合工程で得られる共重合体は、上記第一重合工程における共重合体と同様の構造、すなわち含まれるモノマーユニットの種類や立体規則性を有するのが好ましい。
本発明の第二重合工程では、上記の第一重合工程で用いられる重合方法と同様の方法が用いられる。この場合、上記第一重合工程で用いられるオレフィン類や芳香族ビニル化合物等の芳香族ビニル化合物類の各モノマーを用いることができる。
本発明の第二重合工程は、上記の第一重合工程で得られた重合液を用い、第一重合工程に引き続いて実施されるのが好ましい。しかし、上記の第一重合工程で得られた共重合体を重合液から回収し、新たな溶媒に溶解し、用いられるモノマーを加えて、シングルサイト配位重合触媒の存在下で第二重合工程を実施しても良い。
【0072】
本発明の第二以降の重合工程(クロス化工程)で重合されるオレフィン共重合体またはオレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体(第一重合工程で得られる重合液をそのまま第二以降の重合工程に用いる場合、得られる重合体には、少量の残留ジエンが共重合される)の芳香族ビニル化合物含量は、2.2モル%以下である。第二以降の重合工程(クロス化工程)で重合されるオレフィン共重合体の芳香族ビニル化合物含量は極端な場合0モル%でも良い。この場合、第一重合工程で得られた重合液から共重合体を回収し、新たな溶媒に溶解し触媒や助触媒、オレフィンを添加し、第二重合工程を実施することが好ましい。また、第一重合工程で得られた重合液から適当な手段で芳香族ビニル化合物を除去し、第二重合工程を実施することもできる。
第一重合工程において得られた重合液を第二重合工程に用いる場合、重合液中に残留している未反応のジエンが第二重合工程で共重合されるが、そのジエン含量は第二重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物共重合体(クロス鎖を含む)中、通常は0.0001モル%以上3モル%以下の範囲であり、好ましくは0.001モル%以上0.5モル%未満である。ジエン含量がこれより高くなると、最終的に得られるクロス共重合体が不溶化、ゲル化したり、加工性が悪化するために好ましくない。
しかし、本発明の第二重合工程(クロス鎖重合工程)で得られる重合体は、含まれる少量のジエンユニットを介して、一部クロス構造や分岐構造を有していても良い。
【0073】
以上を満足する本発明のクロス共重合体の具体的な製造方法を以下に示す。
すなわち、第一重合工程(主鎖重合工程)として、配位重合触媒を用いて芳香族ビニル化合物等の芳香族ビニル化合物、オレフィンモノマーおよびジエンモノマーの共重合を行ってオレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体を合成し、次にこれと重合条件の異なる第二重合工程(クロス化工程)として、このオレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体と少なくともオレフィン、芳香族ビニル化合物の共存下、配位重合触媒を用いて重合する少なくとも2段階の重合方法を用いることにより製造するクロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体の製造方法であり、更に、好ましくは少なくとも以下の条件の一つ以上を満足する製造方法である。
【0074】
1)第一重合工程の開始時のオレフィン分圧に対し、第二以降の重合工程における重合液のオレフィン分圧が150%以上である。
一方、本発明において、第一重合工程におけるオレフィンの分圧は重合開始持のオレフィン圧の50%より高く150%より低い範囲に調整されるが、オレフィン分圧は一定であることが更に好ましい。
2)第一重合工程開始時の芳香族ビニル化合物濃度に対し、第二以降の重合工程開始時における重合液の芳香族ビニル化合物濃度が30%以下である。
但し、本発明における第一工程の芳香族ビニル化合物濃度は、重合開始時の濃度の30%より高い範囲に維持される。
3)第一重合工程と第二以降の重合工程において、異なるシングルサイト配位重合触媒を用いる。
4)第一重合工程と第二以降の重合工程において、重合に用いられるオレフィンの種類が異なる。
【0075】
第一重合工程と第二重合工程は、これらの条件変更のための作業が開始された時点で区別される。
以上の条件を満たす変更は、できるだけ急峻に行われ完了すること、好ましくは第二重合工程の重合時間の50%以内、更に好ましくは30%以内、最も好ましくは10%以内の時間内に完了することが好ましい。
第一重合工程と第二重合工程の重合温度は同一あることが好ましい。異なる場合は、最大100℃以内、好ましくは70℃以内の温度差が適当である。
重合液中のモノマー組成比を変更する方法としては、第一重合工程に対し、第二以降の重合工程における重合液のオレフィン分圧を150%以上、好ましくは200%、最も好ましくは300%以上に変更する方法がある。たとえばオレフィンとしてエチレンが用いられる場合、エチレン圧0.2MPaで第一重合工程を実施した場合は、第二重合工程では0.3MPa以上、好ましくは0.4MPa以上、最も好ましくは0.6MPa以上で実施する。
【0076】
第二重合工程のオレフィン分圧は上記の条件を満たしていれば、重合中は一定でもよく、また段階的に、または連続的に変化しても良い。
さらに重合液中のモノマー組成比を変更する方法としては、第一重合工程に対し、第二以降の重合工程における重合開始時の重合液の芳香族ビニル化合物濃度が30%以下、好ましくは20%以下に変更する方法も適用できる。たとえば芳香族ビニル化合物として芳香族ビニル化合物であるスチレンが用いられる場合、重合液中のスチレン濃度1モル/Lで第一重合工程を開始した場合は、第二重合工程では0.5モル/L以下、好ましくは0.2モル/L以下で実施する。さらに、上記オレフィン分圧と芳香族ビニル化合物濃度の変更を組み合わせて適用してもよい。
【0077】
第一重合工程で得られた共重合体を重合液から回収し、新たな溶媒に溶解し、オレフィン及び芳香族ビニル化合物モノマーを加えて、シングルサイト配位重合触媒の存在下で第二重合工程を実施する場合には、第一重合工程とは異なるシングルサイト重合触媒を用いることができる。
第一重合工程と第二以降の重合工程において、重合に用いられるオレフィンの種類を変更することで、第一重合工程と第二重合工程で重合される共重合体の芳香族ビニル化合物含量、最終的に得られるクロス共重合体の芳香族ビニル化合物含量を上記のごとく変更させることも可能である。
第二重合工程で重合される芳香族ビニル化合物モノマー種の転換率は、第二重合工程開始時の好ましくは1質量%以上、特に好ましくは10質量%以上である。また、第二重合工程が上記の第一重合工程で得られた重合液を用い第一重合工程に引き続いて実施され、新たな芳香族ビニル化合物モノマーの添加なしに第一重合工程重合液中に残留するモノマーを第二重合工程に用いる場合には、すべての重合工程を通した芳香族ビニル化合物モノマー種の転換率は、好ましくは40質量%以上、特に好ましくは60質量%以上である。第二重合工程、あるいは、すべての重合工程を通しての芳香族ビニル化合物モノマーの転換率が高くなるほど、共重合体主鎖のジエンユニットの重合性二重結合がクロス共重合される確率が増加する。
【0078】
本発明のクロス共重合体の製造に当たっては、好ましくは上記条件のうち、1)または2)を満足する製造方法が採用される。
さらに本発明のクロス共重合体の製造に当たっては、最も好ましくは上記条件のうち、1)を満足する製造方法が採用される。
本発明のクロス共重合体の製造に当たっては、最も好ましくは第一重合工程に対し、第二以降の重合工程における重合液のオレフィン分圧を300%以上に変更する方法が採用される。
また、第一重合工程のオレフィン分圧が一定ではない場合、すなわち上記の範囲内で変動する場合は、最も好ましくは第一重合工程の開始時のオレフィン分圧に対し、第二以降の重合工程における重合液のオレフィン分圧を300%以上を維持する様に変更する方法が採用される。
【0079】
第一重合工程で得られる共重合体の割合は最終的に得られるクロス共重合体の少なくとも10質量%以上を占める必要がある。また、第二重合工程で得られる重合体(クロス鎖質量を含む)の量は、最終的に得られるクロス共重合体の少なくとも10質量%以上を占める必要がある。
第一重合工程または、第二重合工程で得られる共重合体の割合が最終的に得られるクロス共重合体の10重量%未満では、少量成分の共重合体の特長が十分に発現しない。
また、本発明のクロス共重合体は、主鎖共重合体(第一重合工程で得られた共重合体成分)とクロス鎖共重合体(第二重合工程で得られた共重合体成分)の重量比を変更することで、軟質樹脂の範疇であっても比較的硬質な樹脂(ショア−A硬度で88以上)から軟質な樹脂(ショア−A硬度で87以下約60以上)まで、任意にその硬度を変更することができる。特に本発明のクロス共重合体のショア−A硬度が87以下であるためには、第一重合工程で得られる共重合体が実質的に非結晶性であり、かつこの実質的な非結晶性共重合体が最終的に得られるクロス共重合体の少なくとも60質量%以上占めることが特に好ましい。ここにおいて実質的に非結晶性とは、DSCにおいて観察される結晶ピークの融点が50℃以下であり、さらに好ましくはその融解熱が10J/g以下である、またはX線回折法により算出した結晶化度(結晶化率)が10%以下であることを意味する。また、第一重合工程で得られる共重合体のガラス転移点が5℃以下、好ましくは0℃以下であることが本発明のクロス共重合体のショア−A硬度が、室温で87以下であるために重要である。
【0080】
第一重合工程と第二重合工程を別な反応器で実施することもできる。これらの工程を単一の反応器を用いて実施することもできる。これらの場合、上記の1)〜4)の条件変更作業が開始された時点で区別される。
本発明のクロス共重合体を、単一の反応器で、連続的にオレフィンまたは芳香族ビニル化合物濃度を変更しながら、オレフィン、芳香族ビニル化合物、ジエンの共重合を配位重合触媒を用いて製造することもできる。重合初期と重合終了時で実質的に上記1)〜4)の条件変化のひとつ以上が満たされていればよい。
本発明のクロス共重合体は、前記第一重合工程(主鎖重合工程)と第二重合工程(クロス化工程)を含む製造方法により製造することができる。そのプロセスは、任意の公知の方法を用いることができる。例えば、第一重合工程を完全混合式のバッチ重合または連続重合(回分式重合)で行い、第二重合工程も同様のバッチ重合または連続重合(回分式重合)で行う方法や、第一重合工程を完全混合式のバッチ重合または連続重合(回分式重合)で行い、第二重合工程をプラグフロー重合で行う方法が挙げられる。ここに於いて、完全混合式の重合とは、例えばタンク状、塔状またはループ状のリアクターを用いる公知の方法であり、リアクター内において重合液が比較的良好に撹拌、混合され、実質的に均一な組成を有することが可能な重合方法である。また、プラグフロー重合とは、リアクター内において物質移動が制限され、リアクター入口から出口にかけて、重合液に連続的、または不連続的な組成分布を有する重合方法である。本発明の第二重合工程では、重合液の粘度が上昇するので効率的な除熱を行うという観点からは、各種冷却器、混合器を有し、パイプ状の形状を有するループ式またはプラグフロー式の重合方法が好ましい。
【0081】
以下、本発明のクロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体の代表例としてのクロス共重合化エチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体の物性とその用途について記述する。
本発明のクロス共重合体は、比較的高いスチレン含量の主鎖と非常に少ないスチレン含量のクロス鎖を有することが特徴である。すなわち、クロス鎖(第二重合工程以降で得られる成分)がポリエチレンに由来する高い結晶性を有する。また、本発明のクロス共重合体は、主鎖及びクロス鎖のスチレン含量にそれぞれ対応する、異なったスチレン含量のエチレン−スチレン共重合体(少量のジビニルベンゼンを含んでいても良い)を任意の割合で含むことができる。しかし、クロス共重合体がこれらの相溶化剤として機能するために、各種特徴と高い透明性をあわせ有することが可能となる。
【0082】
本発明のクロス共重合体は、エチレン連鎖に由来する結晶構造を有するため、良好な耐熱性を有する。さらに、低いスチレン含量のエチレン−スチレン共重合体が有する低いガラス転移温度や低い脆化温度(−50℃以下)、高い力学物性(破断強度、引張り弾性率)という特徴をもあわせ有することができる。また、主鎖、あるいはクロス鎖のどちらかに相対的にスチレン含量の高い組成を有することができるため、以下に示す比較的高いスチレン含量を有するエチレン−スチレン共重合体の特徴を有することができる。すなわち、相対的に低い引張り弾性率、表面硬度、しなやかさ、粘弾性スペクトルにおける室温付近のtanδ成分(0℃または25℃において0.05〜0.80)や、対傷つき性、塩ビ様の感触、着色性、印刷性を有することができる。
【0083】
本発明のクロス共重合化エチレン−スチレン−ジエン共重合体は、単独で用いて軟質塩ビ等公知の透明軟質樹脂の代替として好適に用いることができる。
本発明のクロス共重合体には、通常樹脂に使用される安定剤、老化防止剤、耐光性向上剤、紫外線吸収剤、可塑剤、軟化剤、滑剤、加工助剤、着色剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、結晶核剤等を添加することができる。これらは単独または複数を組み合わせて使用することができる。
本発明のクロス共重合体は、その優れた特徴から、単体やそれ自身が主に含まれる組成物として、軟質塩ビ等公知の透明軟質樹脂の代替であるストレッチフィルム、シュリンクフィルムやパッケージ材料、シート、チューブやホースとして好適に用いることができる
【0084】
フィルム用途
本発明のクロス共重合体をフィルムやストレッチ包装用フィルムとして用いる場合、その厚みに特に制限はないが、一般に3μm〜1mm、好ましくは10μm〜0.5mmである。食品用のストレッチ包装用フィルム用途として好適に使用するためには、好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜50μmである。
本発明のクロス共重合体からなる透明フィルム、またはストレッチ包装用フィルムを製造するには、インフレーション方式、Tダイ方式などの通常の押出しフィルム成形法を採用することができる。本発明のフィルムまたはストレッチ包装用フィルムは、物性の改善を目的として、他の適当なフィルム、例えば、アイソタクティクまたはシンジオタクティクのポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE、またはLLDPE)、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のフィルムと多層化することができる。
【0085】
さらに、本発明のフィルムまたはストレッチ包装用フィルムは、主鎖、またはクロス鎖の組成を適宜選択することにより自己粘着性、接着性を有することができる。しかし、更に強い自己粘着性が要求される場合には、自己粘着性を有する他のフィルムとの多層フィルムにすることも出来る。
さらに、非粘着面および粘着面を表裏に有するストレッチ包装用フィルムとしたい場合は、非粘着面にスチレン含量のより高いエチレン−スチレン共重合体あるいは密度が0.916g/cm3以上の線状低密度ポリエチレンを全厚みに対して5〜30%程度、中間層に本発明で用いるエチレン−スチレン共重合体を、粘着層には本発明で用いるエチレン−スチレン共重合体に液状ポリイソブチレン、液状ポリブタジエン等を2〜10質量%添加したもの、または密度が0.916g/cm3以下の線状低密度ポリエチレンに液状ポリイソブチレン、液状ポリブタジエン等を2〜10質量%添加したもの、あるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体を全厚みに対して5〜30%程度積層した多層フィルムとすることも出来る。また、適当な粘着付与剤を適当量添加して用いることもできる。
【0086】
本発明のフィルムの具体的用途は、特に限定されないが、一般包装材料、容器として有用であり、包装用フィルム、バッグ、パウチ等に使用することができる。特に食品包装用のストレッチ包装用フィルム、パレットストレッチフィルム等に好適に使用することができる。
本発明の成型体、特にフィルム、またはストレッチ包装用フィルムは必要に応じて、コロナ、オゾン、プラズマ等の表面処理、防曇剤塗布、滑剤塗布、印刷等を実施することができる。
本発明の成型体のうちフィルムまたはストレッチ包装用フィルムは、必要に応じて1軸または2軸等の延伸配向を行った延伸フィルムとして作製することが出来る。
本発明のフィルム、またはストレッチ包装用フィルムは必要に応じて、熱、超音波、高周波等の手法による融着、溶剤等による接着等の手法によりフィルム同士、あるいは他の熱可塑性樹脂等の材料と接合することができる。
また食品用のストレッチ包装用フィルムとして使用する場合には、自動包装機、手動包装機により好適に包装することが可能である。
更に、本発明のフィルムは、例えば100μm以上の厚みを有する場合、真空成形、圧縮成型、圧空成形等の熱成形等の手法により食品、電気製品等の包装用トレーを成形することができる。
【0087】
更に、本発明のクロス共重合体は溶出性の可塑剤や、ハロゲンを基本的に含有しないため、環境適応性や安全性が高いという基本的特徴を有する。
本発明のクロス共重合体は、他のポリマーとの組成物として用いても良い。
従来、エチレン−スチレン共重合体との組成物として公知のポリマーや添加剤が本発明のクロス共重合体との組成物としても用いることができる。このようなポリマー、添加剤としては以下のようなものが挙げられる。以下のポリマーは、本発明のクロス共重合体を用いた組成物に対して1〜99質量%、好ましくは30〜95質量%の範囲で添加することができる。また、本発明のクロス共重合体は、「芳香族ビニル化合物系重合体」と「オレフィン系重合体」との相溶化剤として用いることができる。本発明のクロス共重合体は、その主鎖とクロス鎖のオレフィン/芳香族ビニル化合物含量比を著しく変更することが可能なため、それぞれの重合体との相溶性を高めることが可能であり、そのため相溶化剤として好適に用いることができる。この場合、本発明のクロス共重合体は、組成物に対し、1〜50質量%、好ましくは1〜20質量%の範囲で用いることができる。
さらに、「フィラ−」や「可塑剤」の場合、組成物に対し1〜80質量%、好ましくは5〜50質量%の範囲で用いることができる。
【0088】
「芳香族ビニル化合物系重合体」
芳香族ビニル化合物単独の重合体及び芳香族ビニル化合物と共重合可能な1種類以上のモノマー成分を含む芳香族ビニル化合物含量が10質量%以上、好ましくは30質量%以上の共重合体。芳香族ビニル化合物系重合体に用いられる芳香族ビニル化合物モノマーとしては、スチレンおよび各種の置換スチレン、例えばp−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、o−t−ブチルスチレン、m−t−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン等が挙げられ、またジビニルベンゼン等の一分子中に複数個のビニル基を有する化合物等も挙げられる。また、これら複数の芳香族ビニル化合物間の共重合体も用いられる。なお、芳香族ビニル化合物の相互の芳香族基間の立体規則性は、アタクティック、アイソタクティク、シンジオタクティクいずれでもよい。
【0089】
芳香族ビニル化合物と共重合可能なモノマーとしては、ブタジエン、イソプレン、その他の共役ジエン類、アクリル酸、メタクリル酸及びアミド誘導体やエステル誘導体、無水マレイン酸及びその誘導体が挙げられる。共重合形式はブロック共重合、テーパードブロック共重合、ランダム共重合、交互共重合のいずれでもよい。さらに、上記のモノマーからなる重合体に、上記芳香族ビニル化合物をグラフト重合したもので芳香族ビニル化合物を10質量%以上、好ましくは30質量%以上含有するものでも差し支えない。
以上の芳香族ビニル化合物系重合体は、その実用樹脂としての性能を発現するために、スチレン換算重量平均分子量として、3万以上、好ましくは5万以上が必要である。
【0090】
用いられる芳香族ビニル化合物系樹脂としては例えばアイソタクティクポリスチレン(i−PS)、シンジオタクティクポリスチレン(s−PS)、アタクティクポリスチレン(a−PS)、ゴム強化ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体等のスチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−ジエンブロック/テーパード共重合体(SBS、SISなど)、水添スチレン−ジエンブロック/テーパード共重合体(SEBS、SEPSなど)、スチレン−ジエン共重合体(SBRなど)、水添スチレン−ジエン共重合体(水添SBRなど)、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−イミド化マレイン酸共重合体が挙げられる。さらに石油樹脂を含む概念である。
【0091】
「オレフィン系重合体」
例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、アイソタクティクポリプロピレン(i−PP)、シンジオタクティクポリプロピレン(s−PP)、アタクティクポリプロピレン(a−PP)、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリイソブテン、ポリブテン、ポリノルボルネン等の環状オレフィン重合体、エチレン−ノルボルネン共重合体等の環状オレフィン共重合体が挙げられる。必要に応じてブタジエンやα−ωジエン等のジエン類を共重合したオレフィン系樹脂でもよい。
以上のオレフィン系重合体は、その実用樹脂としての性能を発現するために、スチレン換算重量平均分子量として、1万以上、好ましくは3万以上が必要である。
【0092】
「その他の樹脂、エラストマー、ゴム」
例えば、ナイロン等のポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリビニルアルコールや、SBS(スチレン−ブタジエンブロック共重合体)、SEBS(水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体)、SIS(スチレン−イソプレンブロック共重合体)、SEPS(水添スチレン−イソプレンブロック共重合体)、SBR(スチレン−ブタジエンブロック共重合体)、水添SBR等スチレン系ブロック共重合体で上記芳香族ビニル化合物系樹脂の範疇に入らないもの、天然ゴム、シリコン樹脂、シリコンゴムが挙げられる。
【0093】
「フィラー」
公知のフィラーを用いることが出来る。好適な例としては炭酸カルシウム、タルク、クレー、珪酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、マイカ、硫酸バリウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、カーボンブラック、木粉、木材パルプ等を例示することができる。また、ガラス繊維、公知の黒鉛、炭素繊維等の導電性フィラーを用いることができる。
「可塑剤」
パラフィン系、ナフテン系、アロマ系プロセスオイル、流動パラフィン等の鉱物油系軟化剤、ヒマシ油、アマニ油、オレフィン系ワックス、鉱物系ワックス、各種エステル類等公知のものが使われる。
【0094】
本発明の重合体組成物を製造するには、公知の適当なブレンド法を用いることができる。例えば、単軸、二軸のスクリュー押出機、バンバリー型ミキサー、プラストミル、コニーダー、加熱ロールなどで溶融混合を行うことができる。溶融混合を行う前に、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、スーパーミキサー、タンブラーなどで各原料を均一に混合しておくこともよい。溶融混合温度はとくに制限はないが、100〜300℃、好ましくは150〜250℃が一般的である。
【0095】
本発明の各種組成物の成型法としては、真空成形、射出成形、ブロー成形、押出し成形、異型押し出し成形等公知の成型法を用いることができる。
本発明のクロス共重合体を含む組成物は、各種フィルムやパッケージ材料、シート、チューブやホース、ガスケット、さらには床材、壁材等の建築材料や自動車の内装材として好適に用いることができる。
【0096】
【実施例】
以下に実施例を挙げ、本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
各実施例、比較例で得られた共重合体の分析は以下の手段によって実施した。
13C−NMRスペクトルは、日本電子社製α−500を使用し、重クロロホルム溶媒または重1,1,2,2−テトラクロロエタン溶媒を用い、TMSを基準として測定した。ここでいうTMSを基準とした測定は以下のような測定である。先ずTMSを基準として重1,1,2,2−テトラクロロエタンの3重線13C−NMRピークの中心ピークのシフト値を決めた。次いで共重合体を重1,1,2,2−テトラクロロエタンに溶解して13C−NMRを測定し、各ピークシフト値を、重1,1,2,2−テトラクロロエタンの3重線中心ピークを基準として算出した。重1,1,2,2−テトラクロロエタンの3重線中心ピークのシフト値は73.89ppmであった。測定は、これら溶媒に対し、ポリマーを3質量/体積%溶解して行った。
【0097】
ピーク面積の定量を行う13C−NMRスペクトル測定は、NOEを消去させたプロトンゲートデカップリング法により、パルス幅は45°パルスを用い、繰り返し時間5秒間を標準として行った。
ちなみに、同一条件で、但し繰り返し時間を1.5秒間に変更して測定してみたが、共重合体のピーク面積定量値は、繰り返し時間5秒間の場合と測定誤差範囲内で一致した。
共重合体中のスチレン含量の決定は、1H−NMRで行い、機器は日本電子社製α−500及びBRUCKER社製AC−250を用いた。重1,1,2,2−テトラクロロエタンに溶解し、測定は、80〜100℃で行った。TMSを基準としてフェニル基プロトン由来のピーク(6.5〜7.5ppm)とアルキル基由来のプロトンピーク(0.8〜3ppm)の強度比較で行った。
共重合体中のジエン(ジビニルベンゼン)含量は、1H−NMRによって行った。
【0098】
実施例中の分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて標準ポリスチレン換算の重量平均分子量を求めた。
室温でTHFに可溶な共重合体は、THFを溶媒とし、東ソー社製HLC−8020を用い測定した。
室温でTHFに不溶な共重合体は、測定はオルトジクロロベンゼンを溶媒として、東ソー製HLC−8121装置を用い、145℃で測定した。ディテクターはRI(示差屈折率計)を用いた。本実施例のクロス共重合体は、主鎖成分とクロス鎖成分で、溶媒であるオルトジクロロベンゼンに対する屈折率が反転するため、RIディテクターにより得られたクロス共重合体の分子量は正確ではなく、参考値である。
DSC測定は、セイコー電子社製DSC200を用い、N2気流下昇温速度10℃/minで行った。サンプル10mgを用い、昇温速度20℃/分で240℃まで加熱し、液体窒素で−100℃以下まで急冷し(前処理)、次に−100℃より10℃/分で昇温し240℃までDSC測定を行い、融点、結晶融解熱及びガラス転移点を求めた。
なお、物性評価用の試料は加熱プレス法(温度180℃、時間3分間、圧力50kg/cm2)により成形した厚さ1.0mmのシートを用いた。
【0099】
<MFR> JIS K7210に従って測定した。測定温度は230℃、荷重は5kgまたは10kgで測定した。
<引張試験>
JIS K−6251に準拠し、シートを1号型テストピース形状にカットし、島津製作所AGS−100D型引張試験機を用い、引張速度500mm/minにて測定した。
【0100】
<動的粘弾性の測定>
損失正接tanδは、動的粘弾性測定装置(レオメトリックス社RSA−II)を使用し、周波数1Hz、温度領域−120℃〜+150℃の範囲(測定温度領域はサンプル特性により若干変更した)で測定した。熱プレスにより作成した厚み0.1mmのシートから測定用サンプル(3mm×40mm)を得た。
<X線回折>
X線回折は、マックサイエンス社製MXP−18型高出力X線回折装置、線源はCu封入対陰極(波長1.5405オングストローム)を用いて測定した。
<硬度>
硬度はJIS K−7215プラスチックのデュロメーター硬さ試験法に準じてタイプAおよびDのデュロメーター硬度を求めた。
<ジビニルベンゼン>
以下の重合において、用いたジビニルベンゼンは、アルドリッチ社製純度80%である。以下の重合においてスチレン400mlに対し、1ml用いた場合には、ジビニルベンゼンの量はモル比でスチレンの量の1/640となる。
【0101】
<エチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体の合成>
実施例1
触媒としてrac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを用い、以下のように実施した。
容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。
トルエン4000ml、スチレン800ml及びジビニルベンゼン4.0mlを仕込み、内温70℃に加熱攪拌した。窒素を約200Lバブリングして系内及び重合液をパージした。トリイソブチルアルミニウム8.4mmol、メチルアルモキサン(東ソーアクゾ社製、PMAO−3A)をAl基準で21mmol加え、ただちにエチレンを導入し、圧力0.5MPa(1.5Kg/cm2G)で安定した後に、オートクレーブ上に設置した触媒タンクから、rac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを8.4μmol、トリイソブチルアルミニウム0.84mmolを溶かしたトルエン溶液約50mlをオートクレーブに加えた。内温を50℃、圧力を0.5MPaに維持しながら86分間重合(第一重合工程)を実施した。
重合終了後、得られたポリマー液を、激しく攪拌した大量のメタノール液中に少量ずつ投入して、ポリマーを回収した。このポリマーを、室温で1昼夜風乾した後に80℃、真空中、質量変化が認められなくなるまで乾燥した。657gのポリマー(P−1)を得た。
【0102】
実施例2〜4
表1に示す条件下、実施例1と同様に重合を行い、エチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体を得た。
表1には、得られた共重合体の分析結果も示す。
【0103】
<クロス共重合体の合成>
実施例5
触媒としてrac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを用い、以下のように実施した。
容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。トルエン4700ml、ポリマー(P−2)を100gをオートクレーブに仕込み、
内温70℃に加熱攪拌し溶解した。窒素を約200Lバブリングして系内及び重合液をパージした。トリイソブチルアルミニウム8.4mmol、メチルアルモキサン(東ソーアクゾ社製、PMAO−3A)をAl基準で21mmol加え、ただちにエチレンを導入し、圧力0.3MPa(2.0Kg/cm2G)で安定した後に、オートクレーブ上に設置した触媒タンクから、rac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを8.4μmol、トリイソブチルアルミニウム0.84mmolを溶かしたトルエン溶液約50mlをオートクレーブに加えた。内温を70℃、圧力を0.3MPaに維持したまま30分間重合を実施した。重合終了後、得られたポリマー液を、激しく攪拌した大量のメタノール液中に少量ずつ投入して、ポリマーを回収した。このポリマーを、室温で1昼夜風乾した後に80℃、真空中、質量変化が認められなくなるまで乾燥した。250gのポリマー(P−5)を得た。
【0104】
実施例6〜9
表2に示す条件下、実施例5と同様に重合を実施した。ただし、実施例6ではスチレンモノマーを200ml、トルエンを4500ml用いた。
【0105】
<クロス共重合体のワンポット合成>
実施例10
触媒としてrac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを用い、以下のように実施した。
容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。
トルエン4400ml、スチレン400ml及びジビニルベンゼン1.0mlを仕込み、内温90℃に加熱攪拌した。窒素を約200Lバブリングして系内及び重合液をパージした。トリイソブチルアルミニウム8.4mmol、メチルアルモキサン(東ソーアクゾ社製、PMAO−3A)をAl基準で21mmol加え、ただちにエチレンを導入し、圧力0.25MPa(1.5Kg/cm2G)で安定した後に、オートクレーブ上に設置した触媒タンクから、rac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを8.4μmol、トリイソブチルアルミニウム0.84mmolを溶かしたトルエン溶液約50mlをオートクレーブに加えた。内温を90℃、圧力を0.25MPaに維持しながら110分間重合(第一重合工程)を実施した。この段階でのエチレンの積算流量(消費量)は標準状態で約200Lであった。重合液の一部をサンプリングし、メタ析により第一重合工程のポリマーサンプル(P−10A)を得た。急速にエチレンを導入し、17分間かけて系内の圧力を1.1MPaにした。圧力を1.1MPaに維持したまま35分間重合を実施した(第二重合工程)。エチレンの圧を上昇させたことにより、重合が促進され、内温は90℃から一時95℃まで上昇した。
重合終了後、得られたポリマー液を、激しく攪拌した大量のメタノール液中に少量ずつ投入して、ポリマーを回収した。このポリマーを、室温で1昼夜風乾した後に80℃、真空中、質量変化が認められなくなるまで乾燥した。842gのポリマー(P−10C)を得た。
【0106】
実施例11、12
表3に示す条件下、実施例10と同様に重合を実施した。
表1、2、3に各実施例の重合条件をまとめた。
表4、5に、各実施例で得られたポリマーの分析結果を示す。
実施例5、7、8、9で得られたクロス共重合体P−5、P−7、P−8、P−9は、第二重合工程(クロス化工程)において、スチレンモノマーを用いず、エチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体存在下でエチレン単独重合を行っているため、第二重合工程(クロス化工程)で得られた共重合体(クロス鎖)はポリエチレン鎖となる。
実施例6で得られたクロス共重合体P−6については、用いたエチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体P−1の質量、組成と得られたP−6の質量、組成から、マスバランスにより、第二重合工程(クロス化工程)で得られた共重合体(クロス鎖)の組成を求めたところ、スチレン含量は2.0モル%であった。
表5には、第一重合工程で得られたポリマー(P−10A等)、第二重合工程を経て最終的に得られたポリマー(P−10C等)の他に、第二重合工程で重合されたポリマー(P−10B)の質量と組成をマスバランスにより求めた値も示す。その結果、実施例10〜12において、第二重合工程(クロス化工程)で得られた共重合体(クロス鎖)の組成を求めたところ、何れも2.2モル%以下であった。
【0107】
実施例10〜12では、第一重合工程終了時に抜き出した重合液のガスクロマトグラフ分析により、重合液中の残留ジビニルベンゼン量を求め、第一重合工程で消費されたジビニルベンゼン量を求めた。その値から、各第一重合工程で得られた共重合体中のジビニルベンゼン含量を求めたところ、P−10A、P−12Aは約0.04モル%、P11−Aは約0.03モル%であった。
各実施例で得られたクロス共重合体の構造指数λ値、スチレンユニット−エチレンユニット交互構造のアイソタクティクダイアッド分率m値をそれぞれ上記の式(i)、(ii)に従って求めた。
実施例1〜4で得られたP−1〜P−4のλ値はいずれも12〜22の範囲内であった。またm値は何れも0.95以上であり、アイソタクティックの高い立体規則性を示した。
実施例10〜12で得られたP−10C〜P−12Cのλ値はいずれも7〜15の範囲内であった。またm値は何れも0.95以上であり、アイソタクティックの高い立体規則性を示した。
【0108】
比較例1〜6
rac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを触媒として、メチルアルモキサン(MAO)を助触媒としてEP−0872492A2号公報、特開平11−130808号公報に示された方法で重合して得られた各スチレン含量のエチレン−スチレン共重合体の分析結果を表6に示す。
【0109】
表7に実施例ポリマーの物性試験結果を示す。
本実施例のクロス共重合化スチレン−エチレン−ジビニルベンゼン共重合体は、良好な力学物性(伸び、強度)、高い耐熱性(融点)を有することがわかる。同じ組成(スチレン含量)のエチレン−スチレン共重合体とその物性を比較した場合、著しく高い融点を示すことができる。また、主鎖、クロス鎖の組成、及びその比率を変更することで、高い耐熱性(融点)を維持しながらも、広い範囲で弾性率、硬度を変更できることが示される。すなわち本実施例のクロス共重合体は、芳香族ビニル化合物(スチレン)含量が少ないクロス鎖を有するため、高い融点を有することが可能で、良好な力学物性を有し、弾性率や硬度を種々変更することができる。
また、実施例12で得られたクロス共重合体P−12Cは、第一重合工程で得られる共重合体が実質的に非結晶性(DSCにおいて観察される結晶ピークの融点が50℃以下であり、融解熱が10J/g以下である)であり、かつこの実質的な非結晶性共重合体が最終的に得られるクロス共重合体の60質量%以上を占めているため、ショア−A硬度で87以下と軟質性に優れる特徴を有する。
また、第一重合工程で得られたP−12Aのガラス転移点が0℃以下であるためにクロス共重合体P−12Cは軟質性に富み、ショア−A硬度は、室温で87以下という値を取ることができる。
【0110】
図3には、本実施例で得られたクロス共重合体と比較例のエチレン−スチレン共重合体のスチレン含量とDSC融点の関係を示す。
さらに、本実施例で得られたクロス共重合化スチレン−エチレン−ジエン共重合体は、比較的良好な加工性(MFR、荷重10kg、230℃で測定したMFRが0.1g/10min.以上)を示す。
ASTM D−2765−84に従い、クロス共重合体のゲル分を測定した。
すなわち、精秤した1.0gポリマー(直径約1mm、長さ約3mmの成型物)を、100メッシュのステンレス製網袋に包み、精秤した。これを沸騰キシレン中で約5時間抽出したのちに網袋を回収し、真空中90゜Cで10時間以上乾燥した。十分に冷却後、網袋を精秤し、以下の式により、ポリマーゲル量を算出した。
【0111】
ゲル量=A/B×100
A=網袋に残留したポリマーの質量
B=はじめのポリマー質量
その結果、いずれも0%(測定下限0.1質量%)であり、本クロス共重合体の極めて低いゲル含量、架橋度が示される。
これは、本実施例に用いる配位重合触媒が、高い効率でジエンを共重合することができるために、ジエンの使用量が非常に低いレベルで十分にクロス化が進行するためである。重合液中の残留ジエン量/濃度が十分に少ないことにより、重合中に共重合体のジエンユニットでの架橋が極めて低いレベルに抑えられ、ゲル成分の生成が抑制されるためと考えられる。
クロス化工程においても、残留ジエン量/濃度が低いため、ゲル成分の生成が抑制される。そのため良好な成形性が得られると考えられる。
X線回折により、本実施例のすべてのクロス共重合体にはエチレン連鎖に由来する結晶構造が確認された。
【0112】
本実施例のクロス共重合体の脆化温度をJIS K−6723、K−7216に従い測定した。その結果、クロス共重合体P−11C、P−12Cはいずれも−60℃以下の脆化温度を示した。他方、透明軟質塩ビコンパウンド(デンカ、ビニコンS2100−50)はほぼ−25℃の脆化温度を示した。
図4に実施例12で得られたクロス共重合体のフィルムの粘弾性スペクトル(1Hzでの測定)を示す。本実施例のクロス共重合体のE’(貯蔵弾性率)は、110℃において106Pa以上の値を示し、106Paまで低下する温度が約120℃であり、高い耐熱性を有することがわかる。
【0113】
<混練及びCセット測定>
ブラベンダープラスチコーダー(ブラベンダー社PLE331型)を使用し、ポリマー溶融後、200℃、60rpm、10分間、表8〜表10に示す配合で混練しサンプルを作製した。サンプルをプレス成形し、力学物性を測定し、またJIS K6262に準拠し、70℃、20時間、加圧熱処理後における残留圧縮永久歪み(C−セット)を測定した。結果を図8に示す。
本実施例のクロス共重合体単独(安定剤のみ含有)のC−セットは、実施例13、14、17、20、22、24の結果により示される。そして、何れも60%以下の良好なC−セット値を有する。これは、本クロス共重合体の良好な弾性回復性(70℃における変形回復性が高いこと)を示す。また、120℃、2時間の耐熱性試験(ダンベルをギアオ−ブン中につるして変形を観測)においても、溶融することはなく、高い耐熱性を示した。他方、比較例のエチレン−スチレン共重合体は、90〜100%以上の高いC−セット値を示し、高温における弾性回復性が低いこと(すなわち耐熱性の低さ)がわかる。また120℃の耐熱性試験では15分以内に溶融した(例えば比較例7)。
【0114】
本実施例のクロス共重合体の比較例として、クロス共重合体の主鎖(第一重合工程で得られる共重合体)及びクロス鎖(第二重合工程で得られる共重合体)に相当するエチレン−スチレン共重合体同士(R−6:R−1)を質量比で7:3の割合で混合したブレンドサンプルのC−セット測定、耐熱性試験を行った。混合サンプルは機械的混合及び溶液混合法で得た。すなわち、2種類のエチレン−スチレン共重合体を実施例と同様の条件でブラベンダー混合したサンプル(比較例8)と、トルエンを溶媒とし120℃で2時間溶液混合した後にメタノール析出で回収、乾燥したサンプル(比較例9)を作成し、C−セットと120℃耐熱性試験を行った。さらに、エチレン−スチレン共重合体同士(R−6:R−1)を質量比で5:5の割合で混合したブレンドサンプルを調製し、C−セット、耐熱性試験を行った(比較例10)。その結果、これらのC−セットいずれも100%であり、120℃では15分以内に溶融した。
【0115】
さらに、クロス共重合体実施例の主鎖に相当する組成のエチレン−スチレン共重合体R−6とポリエチレンを7:3の質量比で混合したサンプル(比較例11)のC−セットは100%であった。
なお、これらの比較例におけるブレンド比は、本実施例9及び12のクロス共重合体を模した物である。
以上の結果から、本実施例のクロス共重合体は、エチレン−スチレン共重合体及びその組成物よりも著しく優れた高温弾性回復性と耐熱性を有することがわかる。
また、本実施例のクロス共重合体は、可塑剤及びポリエオレフィンとのブレンドによりC−セット値を改善し、また硬度をおよそ90〜70程度の範囲で調整することも可能である(実施例15、16、18、19、21、23、25〜27)。ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンと可塑剤としてのオイルを含むクロス共重合体組成物は、およそ40〜70%のC−セットと、高い耐熱性を示した。
【0116】
【表1】
Figure 0004750296
【0117】
【表2】
Figure 0004750296
【0118】
【表3】
Figure 0004750296
【0119】
【表4】
Figure 0004750296
【0120】
【表5】
Figure 0004750296
【0121】
【表6】
Figure 0004750296
【0122】
【表7】
Figure 0004750296
【0123】
【表8】
Figure 0004750296
【0124】
【表9】
Figure 0004750296
【0125】
【表10】
Figure 0004750296
【0126】
【発明の効果】
本発明によれば、力学特性、高温特性、相溶性に優れたクロス共重合化オレフィン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合及びその組成物が提供され、さらにこのクロス共重合体及びその組成物の工業的に優れた製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のクロス化共重合体を表す概念図。
【図2】 従来のグラフト化共重合体を表す概念図。
【図3】 本発明のクロス化共重合体とエチレン−スチレン共重合体の組成と融点の関係を示す図。
【図4】 実施例12で得られたクロス共重合体の(P−12C)の粘弾性スペクトル。

Claims (9)

  1. 第一重合工程(主鎖重合工程)として、配位重合触媒を用いてエチレンモノマー、芳香族ビニル化合物モノマー及びジエンモノマーの共重合を行ってエチレン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体を合成し、次にこれと重合条件の異なる第二重合工程(クロス化工程)として、このエチレン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体と少なくともオレフィンと必要に応じて芳香族ビニル化合物、ジエンの共存下、配位重合触媒を用いて重合する、少なくとも2段階の重合方法を用いることにより製造する下記1)〜4)のいずれか記載のクロス共重合化エチレン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体の製造方法。
    1)芳香族ビニル化合物含量が5モル%以上50モル%以下、ジエン含量が0.0001モル%以上3モル%以下、残部がエチレンであるエチレン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体に、芳香族ビニル化合物含量が2.2モル%以下のオレフィン共重合体(ジエンが含まれていてもよい)をクロス共重合化してなることを特徴とするクロス共重合化エチレン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体。
    2)DSC測定により、少なくとも1つの融点ピークが100℃以上140℃以下の範囲に観測され、かつその結晶融解熱が10J/g以上150J/g以下であることを特徴とする1)記載のクロス共重合化エチレン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体。
    3)エチレン連鎖構造に由来する結晶構造を有し、芳香族ビニル化合物含量と、DSC測定による結晶融解熱が10J/g以上である融点のうち少なくとも一つが以下の関係を満たすことを特徴とする1)記載のクロス共重合化エチレン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体。
    (5≦Xc≦10)
    −2・Xc+120≦Tm≦140
    (10<Xc≦50)
    100≦Tm≦140
    Tm;DSC測定による融点(℃)
    Xc;芳香族ビニル化合物含量(モル%)
    4)クロス鎖がポリエチレンであることを特徴とする1)〜3)のいずれかに記載のクロス共重合化エチレン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体。
  2. 第一重合工程において用いるジエンの量が用いる芳香族ビニル化合物の量の1/100以下1/50000以上(モル比)であることを特徴とする請求項記載の製造方法。
  3. 第一重合工程で得られた重合液を、エチレン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体を分離回収することなしに、第二重合工程以降の重合工程に用いることを特徴とする請求項記載の製造方法。
  4. 第二重合工程以降の重合工程で用いられる芳香族ビニル化合物およびジエンモノマーが第一重合工程で未反応のモノマーであることを特徴とする請求項記載の製造方法。
  5. 第一重合工程で得られた重合液から分離回収して得られたエチレン−芳香族ビニル化合物−ジエン共重合体を、第二重合工程以降の重合工程に用いることを特徴とする請求項記載の製造方法。
  6. 第二重合工程以降の重合工程で用いられる芳香族ビニル化合物、および必要に応じてジエンモノマーが、第二重合工程において新たに加えられたモノマーであることを特徴とする請求項記載の製造方法。
  7. 第一重合工程および第二重合工程において用いられる配位重合触媒が、遷移金属化合物と助触媒から構成されるシングルサイト配位重合触媒であることを特徴とする請求項記載の製造方法。
  8. 第一重合工程および第二重合工程において用いられる配位重合触媒が、下記の一般式(1)で表される遷移金属化合物と助触媒から構成される重合触媒であることを特徴とする請求項記載の製造方法。
    Figure 0004750296
    式中、A、Bは非置換もしくは置換シクロペンタフェナンスリル基、非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、非置換もしくは置換シクロペンタジエニル基、非置換もしくは置換インデニル基、または非置換もしくは置換フルオレニル基から選ばれる基である。YはA、Bと結合を有し、他に水素もしくは炭素数1〜20の炭化水素を含む基(この基は1〜3個の窒素、硼素、珪素、燐、セレン、酸素または硫黄原子を含んでもよい)を置換基として有するメチレン基、シリレン基、エチレン基、ゲルミレン基、ほう素残基である。置換基は互いに異なっていても同一でもよい。また、Yはシクロヘキシリデン基、シクロペンチリデン基等の環状構造を有していてもよい。Xは、それぞれ独立に水素、ハロゲン、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数8〜12のアルキルアリール基、炭素数1〜4の炭化水素置換基を有するシリル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、または水素、または炭素数1〜22の炭化水素置換基を有するアミド基である。nは、0、1または2の整数である。Mはジルコニウム、ハフニウム、またはチタンである。
  9. 一般式(1)におけるA、Bのうち、少なくとも1つは非置換もしくは置換シクロペンタフェナンスリル基、非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、または非置換もしくは置換インデニル基から選ばれる基であることを特徴とする請求項記載の製造方法。
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