JP5242485B2 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

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本発明は、耐熱性と、軟質性、耐傷つき摩耗性、流動性(成形加工性)に優れる熱可塑性樹脂組成物に関する。
ポリエステル系樹脂、特に熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)は、軟質性と共に優れた成形加工性、力学物性、耐熱性、パラフィンオイル耐油性を示す熱可塑性エラストマ−である。しかし、耐傷つき摩耗性やオレイン酸耐油性に課題がある。より軟質化の要望もあるが、さらなる軟質化により、力学物性や耐熱性が低下し、また耐傷つき摩耗性が更に悪化してしまう難点がある。これらを改善するために本ポリエステル系樹脂に配合しうる他の樹脂としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体の水添物(SEBS等)、スチレン−イソプレンブロック共重合体の水添物(SEPS等)、エチレン−α−オレフィン共重合体などが知られており、当業界にて周知である(特許文献1、2)。水添された共重合体(SEBS、SEPS等)は、耐油性、耐傷つき摩耗性に課題があり、そのプロセス故高価である。またエチレン−α−オレフィン共重合体はポリエステル系樹脂との相溶性が低いため、組成物においては力学物性が損なわれやすい。
一方、エチレン−スチレン共重合体に少量のジビニルベンゼンを共重合し、ジビニルベンゼンユニットのビニル基を介してポリスチレン(クロス鎖)を導入する方法、いわゆるクロス共重合体の製造方法および本方法により得られるクロス共重合体が提案されている(特許文献3、4)。本方法により得られるクロス共重合体は、スチレン−エチレン共重合体鎖をソフトセグメントとし、ポリスチレンをハードセグメントとして有する分岐型ブロック共重合体の一種であると考えられる。本共重合体は、スチレン−エチレン共重合体の特性、例えば耐傷つき摩耗性や室温耐油性を生かしながら、その耐熱性をポリスチレンのガラス転移温度付近(約100℃)まで向上させることができるが、より高い耐熱性が望まれている。また、射出成形に適合するような成形加工性(流動性)に乏しく改善が求められている。
特公昭52−31216号公報、特開平8−277359号公報 特開平3−109458号公報 再表00/037517号公報 WO2007139116号公報
本発明は従来のポリエステル系樹脂の耐傷つき摩耗性や軟質性を改良した熱可塑性樹脂組成物からなる熱可塑性エラストマーを提供することである。
また従来のクロス共重合体の成形加工性(射出成形性)、耐熱性、パラフィンオイル耐油性を改良した熱可塑性樹脂組成物からなる熱可塑性エラストマーを提供することである。
以下の(1)〜(4)の条件を満たすクロス共重合体5〜99質量%、並びに、ポリエステル系樹脂95〜1質量%、を含む熱可塑性樹脂組成物である。
(1)配位重合工程とクロス化工程からなる重合工程を含む製造方法であって、配位重合工程として、シングルサイト配位重合触媒を用いてオレフィンモノマー、芳香族ビニル化合物モノマーおよび芳香族ポリエンの共重合を行ってオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体を合成し、次にクロス化工程として、このオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体と芳香族ビニル化合物モノマーの共存下、アニオン重合開始剤またはラジカル重合開始剤を用いて重合することを特徴とする製造方法で得られるクロス共重合体。
(2)配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の組成が、芳香族ビニル化合物含量5モル%以上40モル%以下、芳香族ポリエン含量0.01モル%以上0.3モル%以下、残部がオレフィン含量である。
(3)配位重合工程において、用いられるシングルサイト配位重合触媒が下記の一般式(1)または(2)で表される遷移金属化合物と助触媒から構成されるシングルサイト配位重合触媒である。


式中、A、Bは同一でも異なっていてもよく、非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、非置換もしくは置換インデニル基、非置換もしくは置換シクロペンタジエニル基、または非置換もしくは置換フルオレニル基から選ばれる基である。
YはA、Bと結合を有し、他に置換基として水素もしくは炭素数1〜15の炭化水素基(1〜3個の窒素、酸素、硫黄、燐、珪素原子を含んでもよい)を有するメチレン基である。置換基は互いに異なっていても同一でもよい。また、Yは環状構造を有していてもよい。
Xは、水素、水酸基、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜4の炭化水素置換基を有するシリル基、または炭素数1〜20の炭化水素置換基を有するアミド基である。Xが複数の場合、X同士は結合を有しても良い。
nは、1または2の整数である。

Mはジルコニウム、ハフニウム、またはチタンである。


式中、Cpは非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、非置換もしくは置換シクロペンタジエニル基、非置換もしくは置換インデニル基、または非置換もしくは置換フルオレニル基から選ばれる基である。Y’は、Cp、Zと結合を有し、他に水素もしくは炭素数1〜15の炭化水素基を有するメチレン基、シリレン基、エチレン基、ゲルミレン基、硼素残基である。置換基は互いに異なっていても同一でもよい。また、Y’は環状構造を有していてもよい。Zは窒素、酸素またはイオウを含み、窒素、酸素またはイオウでM’に配位する配位子でY’と結合を有し、他に水素、炭素数1〜15の置換基を有する基である。
M’はジルコニウム、ハフニウム、またはチタンである。
X’は、水素、ハロゲン、炭素数1−15のアルキル基、炭素数6−10のアリール基、炭素数8−12のアルキルアリール基、炭素数1−4の炭化水素置換基を有するシリル基、炭素数1−10のアルコキシ基、または炭素数1−6のアルキル置換基を有するジアルキルアミド基である。
nは、1または2の整数である。
(4)クロス化工程で得られるクロス共重合体に対する配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の質量割合が50〜95質量%である。
本発明は、特定の条件を満たすクロス共重合体及び特定のポリエステル系樹脂、特に熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)を含む樹脂組成物であって、クロス共重合体5〜99質量%、ポリエステル系樹脂が95〜1質量%の範囲であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物であり、耐熱性、軟質性、パラフィンオイル耐油性、流動性、耐傷つき摩耗性、力学物性に優れる。
実施例2、3、4、5で得られた樹脂組成物及び比較例2、6の粘弾性スペクトル。
以下の(1)〜(4)の条件を満たすクロス共重合体5〜99質量%、並びに、ポリエステル系樹脂95〜1質量%、を含む熱可塑性樹脂組成物である。
(1)配位重合工程とクロス化工程からなる重合工程を含む製造方法であって、配位重合工程として、シングルサイト配位重合触媒を用いてオレフィンモノマー、芳香族ビニル化合物モノマーおよび芳香族ポリエンの共重合を行ってオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体を合成し、次にクロス化工程として、このオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体と芳香族ビニル化合物モノマーの共存下、アニオン重合開始剤またはラジカル重合開始剤を用いて重合することを特徴とする製造方法で得られるクロス共重合体。
(2)配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の組成が、芳香族ビニル化合物含量5モル%以上40モル%以下、芳香族ポリエン含量0.01モル%以上0.3モル%以下、残部がオレフィン含量である。
(3)配位重合工程において、用いられるシングルサイト配位重合触媒が下記の一般式(1)または(2)で表される遷移金属化合物と助触媒から構成されるシングルサイト配位重合触媒である。


式中、A、Bは同一でも異なっていてもよく、非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、非置換もしくは置換インデニル基、非置換もしくは置換シクロペンタジエニル基、または非置換もしくは置換フルオレニル基から選ばれる基である。
YはA、Bと結合を有し、他に置換基として水素もしくは炭素数1〜15の炭化水素基(1〜3個の窒素、酸素、硫黄、燐、珪素原子を含んでもよい)を有するメチレン基である。置換基は互いに異なっていても同一でもよい。また、Yは環状構造を有していてもよい。
Xは、水素、水酸基、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜4の炭化水素置換基を有するシリル基、または炭素数1〜20の炭化水素置換基を有するアミド基である。Xが複数の場合、X同士は結合を有しても良い。
nは、1または2の整数である。
Mはジルコニウム、ハフニウム、またはチタンである。


式中、Cpは非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、非置換もしくは置換シクロペンタジエニル基、非置換もしくは置換インデニル基、または非置換もしくは置換フルオレニル基から選ばれる基である。
Y’は、Cp、Zと結合を有し、他に水素もしくは炭素数1〜15の炭化水素基を有するメチレン基、シリレン基、エチレン基、ゲルミレン基、硼素残基である。置換基は互いに異なっていても同一でもよい。また、Y’は環状構造を有していてもよい。Zは窒素、酸素またはイオウを含み、窒素、酸素またはイオウでM’に配位する配位子でY’と結合を有し、他に水素、炭素数1〜15の置換基を有する基である。
M’はジルコニウム、ハフニウム、またはチタンである。
X’は、水素、ハロゲン、炭素数1−15のアルキル基、炭素数6−10のアリール基、炭素数8−12のアルキルアリール基、炭素数1−4の炭化水素置換基を有するシリル基、炭素数1−10のアルコキシ基、または炭素数1−6のアルキル置換基を有するジアルキルアミド基である。
nは、1または2の整数である。
(4)クロス化工程で得られるクロス共重合体に対する配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の質量割合が50〜95質量%である。
クロス共重合体は、主鎖であるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体に、クロス鎖である芳香族ビニル化合物モノマーから構成されるポリマー鎖が、主鎖芳香族ポリエンユニットを介して結合している構造(クロス共重合構造、またはSegregated star copolymer構造)を含むと考えられるが、本明細書におけるクロス共重合体は本構造には限定されず、本発明で規定される製造方法により得られる共重合体として定義される。本発明のクロス共重合体の200℃、荷重98Nで測定したMFR値は、特に限定されないが、一般的には0.01g/10分以上、300g/10分以下である。
本発明に用いられるクロス共重合体の製造において、その配位重合工程に用いられるオレフィンとしては、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィン、すなわちプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、ビニルシクロヘキサンや環状オレフィン、すなわちシクロペンテン、ノルボルネンが挙げられる。好ましくは、エチレンまたはエチレンとα−オレフィンすなわちプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、または1−オクテン等の混合物が用いられ、更に好ましくは、エチレンが用いられる。
配位重合工程に用いられる芳香族ビニル化合物モノマーは、スチレンおよび各種の置換スチレン、例えばp−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、o−t−ブチルスチレン、m−t−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−クロロスチレン、o−クロロスチレン等が挙げられる。工業的には好ましくはスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、特に好ましくはスチレンが用いられる。
配位重合工程に用いられる芳香族ポリエンは10以上30以下の炭素数を持ち、複数の二重結合(ビニル基)と単数または複数の芳香族基を有し配位重合可能な芳香族ポリエンであり、二重結合(ビニル基)の1つが配位重合に用いられて重合した状態において残された二重結合がアニオン重合またはラジカル重合可能な芳香族ポリエンである。好ましくは、オルトジビニルベンゼン、パラジビニルベンゼン及びメタジビニルベンゼンのいずれか1種または2種以上の混合物が好適に用いられる。
配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の組成が、芳香族ビニル化合物含量5モル%以上40モル%以下、芳香族ポリエン含量0.01モル%以上0.3モル%以下、残部がオレフィン含量である条件を満たすことにより、優れた軟質性を有するクロス共重合体を得ることが出来る。オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の組成は、公知の一般的方法により上記範囲に制御することが達成できるが、最も簡単にはモノマ−仕込み組成比を変更することにより達成できる。
上記オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の組成が、芳香族ビニル化合物含量5モル%未満の場合、オレフィン連鎖構造に由来する結晶構造、例えばエチレン連鎖やプロピレン連鎖に基づく結晶構造が一定以上存在し、最終的に得られる本発明の樹脂組成物の軟質性が損なわれてしまう場合があり、さらに成型加工時に結晶化による収縮等成型体の寸法安定性が損なわれてしまう場合がある。本発明により得られるクロス共重合体は、本オレフィン結晶性および他の結晶性も含めた総結晶融解熱としては50J/g以下、好ましくは30J/g以下である。総結晶融解熱はDSCにより50℃〜ほぼ200℃の範囲に観測される融点に由来するピ−クの面積の総和から求めることが出来る。
上記オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の組成が、芳香族ビニル化合物含量40モル%を超える場合には、そのガラス転移温度が室温付近、例えば10℃以上にまで上昇し、耐衝撃性、軟質性や耐寒性が損なわれてしまうことがある。さらに、配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の組成が芳香族ビニル化合物含量23モル%以上40モル%以下、芳香族ポリエン含量0.01モル%以上0.3モル%以下残部がオレフィン含量である条件を満たすことにより、より耐油性に優れた樹脂組成物を得ることが可能となる。
さらに、本製造方法の配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の重量がアニオン重合工程を経て最終的に得られるクロス共重合体重量の50質量%以上95質量%以下が好ましく、特に好ましくは60質量%以上90質量%以下である場合、軟質性に優れるクロス共重合体が得られ、ひいては耐衝撃性や軟質性に優れる樹脂組成物を得ることが出来る。
さらに本製造方法の配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の重量平均分子量は、一般的に100万以下3万以上、本発明の樹脂組成物の成型加工性を考慮すると、好ましくは30万以下、3万以上である。オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、一般的に1.5以上8以下、好ましくは1.5以上6以下、最も好ましくは1.5以上4以下である。分子量分布がこれらより高い値の場合、オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体のポリエン部分の自己架橋が起こっている場合があり、成形加工性の悪化やゲル化が懸念される場合がある。
さらに上記本製造方法の配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の芳香族ポリエン含量は0.01モル%以上0.3モル%以下、好ましくは0.01モル%以上0.2モル%以下である。上記範囲未満ではクロス共重合体としての特性が充分ではなく、上記範囲より高いと成形加工性が悪化してしまう場合がある。
クロス鎖部分の長さ(分子量)は、クロス化されなかったホモポリマーの分子量から推定できるが、その長さは、重量平均分子量として、好ましくは5000以上15万以下、さらに好ましくは5000以上10万以下、特に好ましくは5000以上7万以下である。また、その分子量分布(Mw/Mn)は好ましくは5以下、特に好ましくは3以下である。
本発明に用いられるクロス共重合体のクロス化工程において、芳香族ビニル化合物モノマ−がもちいられる。このような芳香族ビニル化合物モノマ−としては、スチレン、p−メチルスチレン、p−ターシャリ−ブチルスチレン、p−クロロスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が例示でき、好ましくはスチレンである。配位重合工程に用いられる芳香族ビニル化合物モノマ−とクロス化工程において用いられる芳香族ビニル化合物モノマ−は同一であることが好ましい。最も好ましくは配位重合工程で用いられる芳香族ビニル化合物モノマ−がスチレンであり、かつクロス化工程において用いられる芳香族ビニル化合物モノマ−がスチレンでありその一部または全部が配位重合工程における未反応スチレンである。
クロス化工程に於いては、芳香族ビニル化合物モノマ−に加えて、アニオン重合やラジカル重合可能なモノマ−を添加しても良い。その添加量は、用いる芳香族ビニル化合物モノマ−量に対して最大でも等モル量までである。
本発明のクロス工程では上記モノマ−以外に、配位重合工程で重合されずに重合液中に少量残存する芳香族ポリエンも重合されて良い。
以下に、本発明の製造方法について詳細に説明する。
<配位重合工程>
本製造方法の配位重合工程においては、シングルサイト配位重合触媒が用いられる。好ましくは、下記の一般式(1)または(2)で表される遷移金属化合物と助触媒から構成されるシングルサイト配位重合触媒を用いる。


式中、A、Bは同一でも異なっていてもよく、非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、非置換もしくは置換シクロペンタジエニル基、非置換もしくは置換インデニル基、または非置換もしくは置換フルオレニル基から選ばれる基である。ここで、例えば置換ベンゾインデニル基とは、置換可能な任意の数の水素を置換基である炭素数1〜5のアルキル基や炭素数6〜20のアリ−ル基、炭素数7〜20のアルキルアリ−ル基で置換したベンゾインデニル基を示す。本置換基は、1個または2個の珪素、酸素、硫黄、燐原子を含んでも良い。置換インデニル基、置換シクロペンタジエニル基、置換フルオレニル基も同様である。
YはA、Bと結合を有し、他に置換基として水素もしくは炭素数1〜15の炭化水素基(1〜3個の窒素、酸素、硫黄、燐、珪素原子を含んでもよい)を有するメチレン基である。置換基は互いに異なっていても同一でもよい。また、Yは環状構造を有していてもよい。
Xは、水素、水酸基、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜4の炭化水素置換基を有するシリル基、または炭素数1〜20の炭化水素置換基を有するアミド基である。Xが複数の場合、X同士は結合を有しても良い。nは、1または2の整数である。
Mはジルコニウム、ハフニウム、またはチタンである。
好ましくは、A、Bは非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、非置換もしくは置換インデニル基から選ばれる基である。
かかる遷移金属化合物の好適な例としては、EP−0872492A2公報、特開平11−130808号公報、特開平9−309925号公報に具体的に例示した置換メチレン架橋構造を有する遷移金属化合物である。


式中、Cpは非置換もしくは置換シクロペンタフェナンスリル基、非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、非置換もしくは置換シクロペンタジエニル基、非置換もしくは置換インデニル基、または非置換もしくは置換フルオレニル基から選ばれる基である。ここで、例えば置換ベンゾインデニル基とは、置換可能な任意の数の水素を置換基である炭素数1〜5のアルキル基や炭素数6〜20のアリ−ル基、炭素数7〜20のアルキルアリ−ル基で置換したベンゾインデニル基を示す。本置換基は、1個または2個の珪素、酸素、硫黄、燐原子を含んでも良い。置換シクロペンタフェナンスリル基、置換インデニル基、置換シクロペンタジエニル基、置換フルオレニル基も同様である。
Y’は、Cp、Zと結合を有し、他に水素もしくは炭素数1〜15の炭化水素基を有するメチレン基、シリレン基、エチレン基、ゲルミレン基、硼素残基である。置換基は互いに異なっていても同一でもよい。また、Y’は環状構造を有していてもよい。Zは窒素、酸素またはイオウを含み、窒素、酸素またはイオウでM’に配位する配位子でY’と結合を有し、他に水素、炭素数1〜15の置換基を有する基である。
M’はジルコニウム、ハフニウム、またはチタンである。
X’は、水素、ハロゲン、炭素数1−15のアルキル基、炭素数6−10のアリール基、炭素数8−12のアルキルアリール基、炭素数1−4の炭化水素置換基を有するシリル基、炭素数1−10のアルコキシ基、または炭素数1−6のアルキル置換基を有するジアルキルアミド基である。
nは、1または2の整数である。
一般式(2)で示される遷移金属化合物の好適な例としては、EP−416815A公報、USP6323294B1公報に具体的に例示された遷移金属化合物である。
本製造方法の配位重合工程においては、さらに好ましくは、上記の一般式(1)で表されるシングルサイト配位重合触媒と助触媒から構成される重合触媒が用いられる。
本製造方法の配位重合工程で用いる助触媒としては、従来遷移金属化合物と組み合わせて用いられている公知の助触媒を使用することができるが、そのような助触媒として、メチルアルミノキサン(またはメチルアルモキサンまたはMAOと記す)等のアルモキサンまたは硼素化合物が好適に用いられる。用いられる助触媒の例としては、EP−0872492A2号公報、特開平11−130808号公報、特開平9−309925号公報、WO00/20426号公報、EP0985689A2号公報、特開平6−184179号公報に記載されている助触媒やアルキルアルミニウム化合物が挙げられる。
アルモキサン等の助触媒は、遷移金属化合物の金属に対し、アルミニウム原子/遷移金属原子比で0.1〜100000、好ましくは10〜10000の比で用いられる。0.1より小さいと有効に遷移金属化合物を活性化出来ず、100000を超えると経済的に不利となる。
助触媒として硼素化合物を用いる場合には、硼素原子/遷移金属原子比で0.01〜100の比で用いられるが、好ましくは0.1〜10、特に好ましくは1で用いられる。0.01より小さいと有効に遷移金属化合物を活性化出来ず、100を超えると経済的に不利となる。遷移金属化合物と助触媒は、重合設備外で混合、調製しても、重合時に設備内で混合してもよい。
本発明の配位重合工程でオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体を製造するにあたっては、上記に例示した各モノマー、遷移金属化合物および助触媒を接触させるが、接触の順番、接触方法は任意の公知の方法を用いることができる。
以上の共重合の方法としては溶媒を用いずに液状モノマー中で重合させる方法、あるいはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、クロロ置換ベンゼン、クロロ置換トルエン、塩化メチレン、クロロホルム等の飽和脂肪族または芳香族炭化水素またはハロゲン化炭化水素の単独または混合溶媒を用いる方法がある。好ましくは混合アルカン系溶媒やシクロヘキサンやトルエン、エチルベンゼンを用いる。重合形態は溶液重合、スラリ−重合いずれでもよい。また、必要に応じ、バッチ重合、連続重合、予備重合、多段式重合等の公知の方法を用いることが出来る。
単数や連結された複数のタンク式重合缶やリニアやル−プの単数、連結された複数のパイプ重合設備を用いることも可能である。パイプ状の重合缶には、動的、あるいは静的な混合機や除熱を兼ねた静的混合機等の公知の各種混合機、除熱用の細管を備えた冷却器等の公知の各種冷却器を有しても良い。また、バッチタイプの予備重合缶を有していても良い。さらには気相重合等の方法を用いることができる。
重合温度は、−78℃から200℃が適当である。−78℃より低い重合温度は工業的に不利であり、200℃を超えると遷移金属化合物の分解が起こるので適当ではない。さらに工業的に好ましくは、0℃〜160℃、特に好ましくは30℃〜160℃である。
重合時の圧力は、0.1気圧〜100気圧が適当であり、好ましくは1〜30気圧、特に工業的に特に好ましくは、1〜10気圧である。
さらに用いられるシングルサイト配位重合触媒の遷移金属化合物が一般式(1)で示される構造を有し、かつA、Bは非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、非置換もしくは置換インデニル基から選ばれる基であり、YはA、Bと結合を有し、他に置換基として水素もしくは炭素数1〜15の炭化水素基(1〜3個の窒素、酸素、硫黄、燐、珪素原子を含んでもよい)を有するメチレン基または硼素基であり、かつ本遷移金属化合物はラセミ体である場合、得られる本組成範囲のオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体は、オレフィン−芳香族ビニル化合物の交互構造、好ましくはエチレン−芳香族ビニル化合物交互構造にアイソタクティックの立体規則性を有し、そのため本発明のクロス共重合体は本交互構造に由来する微結晶性を有することが出来る。そのため、本オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体は、立体規則性がない場合と比較し交互構造の微結晶性に基づく良好な力学物性や耐油性を与えることができ、この特徴は最終的に本発明のクロス共重合体にも受け継ぐことが出来る。
さらに用いられる一般式(1)で示される遷移金属化合物のA、Bが非置換ベンゾインデニル基、非置換インデニル基から選ばれる基である場合、オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体製造における重合活性が非常に高く、好適である。
オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の交互構造の微結晶性による結晶融点は概ね50℃〜120℃の範囲にありDSCによるその結晶融解熱は1〜30J/g以下であるので、本発明のクロス共重合体は総体として、50J/g以下、好ましくは30J/g以下の結晶融解熱を有することができる。本範囲の結晶融解熱の結晶性は、本クロス共重合体の軟質性、成型加工性に悪影響は与えず、むしろ優れた力学物性や耐油性の面で有益である。
配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体(エチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体)においては、TUS/DOU値は1.1より高い値をとり、概ね1.2以上10以下、好ましくは1.2以上5以下の値をとる。TUS/DOU値がより大きい場合、芳香族ポリエンユニット含量が少なすぎ、本発明のクロス共重合体としての機能が失われてしまう場合がある。また、TUS/DOU値が1.1以下の場合、芳香族ポリエンユニット含量が多すぎて主鎖に由来する機能が失われやすくなり、またクロス共重合体の成形加工性が悪化してしまったり、クロス共重合体中にゲル分が生成してしまう恐れがある。ここで、TUSは、共重合体に含まれるト−タルのビニル基含量で、芳香族ポリエン(ジビニルベンゼン)ユニットに由来するビニル基とポリマ−末端のビニル基の含量の総和であり、1H−NMR測定により求められる。またDOU値は主鎖エチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体に含まれるジビニルベンゼンユニット含量である。本TUS/DOU値の意味、求め方については、米国特許US6414102、US6265493、US6096849にも記載してある。
<クロス化工程>
本発明の製造方法のクロス化工程では、配位重合工程で得られたオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体と芳香族ビニル化合物モノマーの共存下、アニオン重合開始剤またはラジカル重合開始剤を用いてアニオン重合またはラジカル重合を行う。
本発明のクロス化工程で、アニオン重合が採用される場合には、公知のアニオン重合開始剤を用いることができる。好ましくは、アルキルリチウム化合物やビフェニル、ナフタレン、ピレン等のリチウム塩あるいはナトリウム塩、特に好ましくは、sec−ブチルリチウム、n(ノルマル)−ブチルリチウムが用いられる。また、多官能性開始剤、ジリチウム化合物、トリリチウム化合物を用いても良い。さらに必要に応じて公知のアニオン重合末端カップリング剤を用いてもよい。
溶媒は、連鎖移動等の不都合を生じない混合アルカン系溶媒やシクロヘキサンやベンゼン等の溶媒が特に好ましいが、重合温度が150℃以下であれば、トルエン、エチルベンゼン等の他の溶媒も用いることが可能である。
本発明のクロス化工程でラジカル重合が採用される場合には、芳香族ビニル化合物の重合や共重合に使用できる公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。そのような例として過酸化物系(パ−オキサイド)、アゾ系重合開始剤等必要に応じて当業者は自由に選択することが出来る。
そのような例は、日本油脂カタログ有機過酸化物organic peroxides第10版(http://www.nof.co.jp/business/chemical/pdf/product01/Catalog_all.pdfからダウンロ−ド可能)、和光純薬カタログ等に記載されておりこれらの会社より入手することが出来る。
重合開始剤の使用量に特に制限はないが一般的にはモノマ−100質量部に対し、0.001〜5質量部用いる。過酸化物系(パ−オキサイド)、アゾ系重合開始剤等の開始剤、硬化剤を用いる場合には、その半減期を考慮し、適切な温度、時間で硬化処理を行う。この場合の条件は、開始剤、硬化剤に合わせて任意であるが、一般的には50℃から150℃程度の温度範囲が適当である。本発明のラジカル重合工程には、クロス鎖の分子量制御を主な目的として公知の連鎖移動剤を用いることが出来る。そのような連鎖移動剤の例としては、t−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン誘導体、α−スチレンダイマー等が挙げられる。
溶媒は、アルカン系溶媒やシクロヘキサンやベンゼン等の溶媒が特に好ましいが、トルエン、エチルベンゼン等の他の溶媒も用いることが可能である。
本発明のクロス化工程では、芳香族ビニル化合物モノマ−の重合転換率が高いほど好ましい力学物性や光学物性のクロス共重合体が得られる。そのため、比較的短い時間で容易に芳香族ビニル化合物モノマ−の高重合転換率が達成可能なアニオン重合が好ましく採用される。
本発明のクロス化工程は、上記の配位重合工程の後に実施される。この際、配位重合工程で得られた共重合体を、クラムフォーミング法、スチームストリッピング法、脱揮槽、脱揮押出し機等を用いた直接脱溶媒法等、任意のポリマー回収法を用いて、重合液から分離、精製してクロス化工程に用いても良い。しかし、配位重合後の重合液から、残留オレフィンを放圧後、あるいは放圧せずに、次のクロス化工程に用いるのが、経済的に好ましい。重合体を重合液から分離せずに、重合体を含んだ重合溶液をクロス化工程に用いることができることが本発明の特徴の1つである。
重合形態は、ラジカルまたはアニオン重合に用いられる任意の公知の方法を用いることができる。重合温度は、−78℃から200℃が適当である。−78℃より低い重合温度は工業的に不利であり、150℃を超えると連鎖移動等が起こるので適当ではない。さらに工業的に好ましくは、0℃〜200℃、特に好ましくは30℃〜150℃である。
重合時の圧力は、0.1気圧〜100気圧が適当であり、好ましくは1〜30気圧、特に工業的に特に好ましくは、1〜10気圧である。
本発明で用いられるポリエステル系樹脂は、少なくとも1種の2官能性カルボン酸成分と少なくとも1種のグリコール成分またはオキシカルボン酸成分の重縮合により得られる熱可塑性ポリエステルであり、固有粘度が、テトラクロロエタン/フェノールの1/1(重量比)混合溶媒中、30℃において0.5dl/g以上であることが好ましい。原料の2官能性カルボン酸成分の具体例としてはテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、p,p−ジフェニルジカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。エステル形成性誘導体としては、メチルエステルなどの低級エステルが挙げられる。2官能性カルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体が好ましく、特にはテレフタル酸またはテレフタル酸ジエステルが好ましい。
グリコール成分の具体例としては一般式HO(CHOH(sは2〜20の整数)で表されるα,ω−アルキレングリコール類、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、またはこれらのエステル形成性誘導体等を挙げることができ、中でも1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のα,ω−アルキレングリコールが好ましく、特に好ましくは、1,4−ブタンジオールである。
本発明に用いるポリエステル系樹脂の中で、最も好ましいのは熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)である。本熱可塑性ポリエステルエラストマーは、A硬度95以下50以上であることが好ましく、さらにA硬度75〜95までの範囲が軟質熱可塑性エラストマーとしては好ましい。熱可塑性ポリエステルエラストマーは一般には東レ・デュポン株式会社より商品名ハイトレルとして、三菱化学株式会社より、商品名プリマロイとして、あるいは、株式会社東洋紡から商品名ペルプレンとして入手することができる。
この様な熱可塑性ポリエステルエラストマーは、例えば2000−344997号公報、2001−002943号公報、H08−277358号公報等に記載してある。
本発明に最も好ましく用いられる熱可塑性ポリエステルエラストマーは、ポリエステルブロック共重合体とも呼称され、高融点結晶性重合体セグメント(a)と軟質重合体セグメント(b)を含むブロック共重合体である。本熱可塑性ポリエステルエラストマーの高融点結晶性重合体セグメント(a)は、主として芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体から形成されるポリエステルであり、芳香族ジカルボン酸としてはテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ジフェニル−4,4' −ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4' −ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸、3−スルホイソフタル酸ナトリウム等が挙げられる。主として芳香族ジカルボン酸を用いるが、必要によっては、芳香族ジカルボン酸の一部を1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、4,4'−ジシクロヘキシルジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、アジピン酸、コハク酸、シュウ酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸に置換してもよい。もちろんジカルボン酸のエステル形成性誘導体、例えば低級アルキルエステル、アリールエステル、炭酸エステル、酸ハロゲン化物等も同等に用い得る。ジオールとしては、分子量400以下のジオール、例えば1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコールなどの脂肪族ジオール、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ジシクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールなどの脂環族ジオール、キシリレングリコール、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4'−ジヒドロキシ−p−ターフェニル、4,4' −ジヒドロキシ−p−クオーターフェニルなどの芳香族ジオールが好ましく、かかるジオールもエステル形成性誘導体、例えばアセチル体、アルカリ金属塩等の形でも用い得る。
これらのジカルボン酸およびその誘導体またはジオール成分を2種以上併用してもよい。そして、最も好ましい高融点結晶性重合体セグメント(a)の例はテレフタル酸および/またはジメチルテレフタレートと1,4−ブタンジオールから誘導されるポリブチレンテレフタレートである。
本熱可塑性ポリエステルエラストマーの軟質重合体セグメント(b)は、脂肪族ポリエーテルおよび/または脂肪族ポリエステルであり、脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体などが挙げられる。また、脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペートなどが挙げられる。これらの脂肪族ポリエーテルおよび/または脂肪族ポリエステルのなかで得られるポリエステルブロック共重合体の弾性特性からポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリブチレンアジペートなどが好ましい。
本熱可塑性ポリエステルエラストマーの軟質重合体セグメント(b)の共重合量は、好ましくは、10〜90重量%、更に好ましくは15〜75重量%である。特に10重量%以下では柔軟性やゴム弾性が不足し、90重量%以上では、結晶性が低く成形性が悪くなる。本発明に用いるポリエステル系樹脂の分子量は、特に限定されることはないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリスチレン換算重量平均分子量で2,000〜300,000で、成形加工性を考慮した場合、その好ましい範囲は約5,000〜100,000である。また、そのMFR値(200℃、荷重98Nで測定した値)は、特に限定されないが、クロス共重合体の流動性改善という見地からは、好ましくは、20g/10分以上、特に好ましくは50g/10分以上である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物はクロス共重合体5〜99質量%、ポリエステル系樹脂が95〜1質量%の範囲であることを特徴とする。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、単独のクロス共重合体と比較し、成形加工性(流動性)及び耐熱性が優れ、単独のポリエステル系樹脂と比較し、耐傷つき摩耗性、耐加水分解性(水蒸気性)、オレイン酸耐油性に優れるという特徴を有する。成形加工性(流動性)及び耐熱性に優れた熱可塑性樹脂組成物を目的とした場合、その組成はクロス共重合体20〜90質量%、ポリエステル系樹脂が80〜10質量%の範囲であることが好ましく、クロス共重合体40〜90質量%、ポリエステル系樹脂が60〜10質量%の範囲であることがさらに好ましい。耐傷つき摩耗性に優れた熱可塑性樹脂組成物を目的とした場合、その組成はクロス共重合体50〜99質量%、ポリエステル系樹脂が50〜1質量%の範囲であることが好ましく、クロス共重合体50〜90質量%、ポリエステル系樹脂が50〜10質量%の範囲であることがさらに好ましい。
本熱可塑性樹脂組成物は、引張試験において50%以上2000%未満の破断点伸びと、およそ10MPa以上100MPaまでの破断点強度を有することができる、力学物性に優れた熱可塑性樹脂組成物である。
さらに、本熱可塑性樹脂組成物は、耐熱変形試験において120℃以上の耐熱変形温度、好ましくは130℃以上の耐熱変形温度を有することができる、耐熱性に優れた熱可塑性樹脂組成物である。
また、本熱可塑性樹脂組成物は、粘弾性スペクトル測定(測定周波数1Hz)により観察される貯蔵弾性率(E‘)が10Paまで低下する温度が110℃以上、好ましくは120℃以上である耐熱性に優れた熱可塑性樹脂組成物である。
さらに、本熱可塑性樹脂組成物は、単独のポリエステル系樹脂と比較して永久伸びが小さいという特徴を示すことができる。このためには、クロス共重合体50〜99質量%、ポリエステル系樹脂が50〜1質量%の範囲であることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物のMFR(200℃、荷重10kgで測定)は特に限定されないが、一般には0.1g/10分以上、好ましくは0.3g/10分以上、射出成型用としては30g/10分以上である。本発明の熱可塑性樹脂組成物にすることで、MFR(成形加工性)は、クロス共重合体単独と比較し大きく改善させることが可能である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、他に、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、通常の樹脂に用いられる添加剤、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐候剤、耐光剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、充填剤、着色剤、滑剤、防曇剤、発泡剤、難燃剤、難燃助剤等を添加しても良い。
本発明のクロス共重合体とポリエステル系樹脂からなる樹脂組成物を製造する方法は特に限定されず、公知の適当なブレンド法を用いることができる。例えば、単軸、二軸のスクリュー押出機、バンバリー型ミキサー、プラストミル、コニーダー、加熱ロールなどで溶融混合を行うことができる。溶融混合を行う前に、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、スーパーミキサー、タンブラーなどで各原料を均一に混合しておくこともよい。溶融混合温度はとくに制限はないが、通常130〜350℃、好ましくは150〜300℃が一般的である。
<樹脂組成物>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、さらに以下に挙げる「オレフィン系ポリマ−」や「芳香族系ポリマー」との組成物として用いることが出来る。この場合、本発明の熱可塑性樹脂組成物は樹脂組成物全体質量に対し50〜99質量%の範囲で用いることが出来る。本発明の熱可塑性樹脂組成物は「オレフィン系ポリマ−」または「スチレン系ポリマー」に対し比較的良好な相溶性を示すため、得られる樹脂組成物は比較的軟質であり、「オレフィン系ポリマ−」または「スチレン系ポリマー」と比較し、耐傷つき摩耗性、耐熱性、耐パラフィンオイル性が向上する特徴がある。
さらに本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ブロック共重合体系ポリマ−との組成物として用いることが可能で、組成物の全体質量に対し1〜99質量%の範囲で用いることが出来る。本発明のクロス共重合体は良好な軟質性と耐油性を有するため、ブロック共重合体系ポリマ−との組成物においてはブロック共重合体の軟質性、力学物性を損なわずに耐油性を付与することが出来る。
「オレフィン系ポリマ−」
炭素数2〜20までのオレフィンモノマ−からなるオレフィン単独重合体または共重合体であり、例えば高密度ポリエチレン(LDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリオレフィンエラストマ−(POE)、アイソタクティックポリプロピレン(i−PP、ホモPP、ランダムPP、ブロックPPを含む)、シンジオタクティックポリプロピレン(s−PP)、アタクティックポリプロピレン(a−PP)、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−ノルボルネン共重合体、エチレン−ビニルシクロヘキサン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体が挙げられる。必要に応じてブタジエンやα−ωジエン等のジエン類を共重合した共重合体でも良い。このような例としてはエチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネン共重合体等が挙げられる。以上のオレフィン系ポリマ−は、その実用樹脂としての物性、成形加工性を発現するために、ポリスチレン換算重量平均分子量として、1万以上、好ましくは3万以上50万以下、好ましくは30万以下が必要である。

「スチレン系ポリマ−」
スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン等の芳香族ビニル化合物の単独重合体またはこれらの共重合体である。ここで芳香族ビニル化合物と共重合可能なモノマーとしては、ブタジエン、イソプレン、その他の共役ジエン類、アクリル酸、メタクリル酸、及びこれらのアミド誘導体やエステル誘導体、アクリロニトリル、無水マレイン酸及びその誘導体が挙げられる。芳香族ビニル化合物系重合体のポリスチレン換算重量平均分子量は、3万から50万の範囲である。また、これらの樹脂をポリブタジエン等のゴムで補強したいわゆるハイインパクトポリスチレン(HIPS)でも良い。
「ブロック共重合体系ポリマ−」
アニオン重合またはその他の重合方法によるリビング重合により得られるジブロック、トリブロック、マルチブロック、スタ−ブロックあるいはテ−パ−ドブロック構造を有するブロック共重合体である。この様な例として、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン共重合体(SIS)やこれらの水添物(SEBSやSIPS)が挙げられる。以上のブロック共重合体系ポリマ−は、その実用樹脂としての物性、成形加工性を発現するために、ポリスチレン換算重量平均分子量として、5000以上、好ましくは1万以上、50万以下、好ましくは30万以下が必要である。
さらに本発明の熱可塑性樹脂組成物に対し、「石油樹脂、水添石油樹脂」を添加することも出来る。その添加量は熱可塑性樹脂組成物100質量部に対し、一般的に1〜40質量部、好ましくは1〜20質量部である。「石油樹脂、水添石油樹脂」を添加することで、各種物性、機能性を保持しつつ流動性を向上させ、各種成型加工法に適合させることが可能となる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、「ポリフェニレンエーテル系樹脂」との組成物として用いることが可能で、本発明の熱可塑性樹脂組成物100質量部に対してこれらの樹脂を1〜100質量部の範囲で添加することが出来る。「ポリフェニレンエーテル系樹脂」との樹脂組成物は、耐熱性、耐傷つき摩耗性や高温耐油性の更なる向上に効果がある。用いられる「ポリフェニレンエーテル系樹脂」は、例えば特開昭53−71158号、特開昭54−88960号、特開昭59−100159号、EP0,209,874B1号公報、特開平11−181272号公報、特表2002−533478号公報、特開2000−178388号公報、特開2000−198918号公報、特公平8−3001号公報に記載のポリフェニレンエーテル系樹脂が挙げられる。
さらに本発明の熱可塑性樹脂組成物は、「ポリアミド系樹脂」との組成物として用いることが可能で、本発明の熱可塑性樹脂組成物100質量部に対してこれらの樹脂を1〜100質量部の範囲で添加することが出来る。このような樹脂組成物は、本樹脂組成物の耐熱性、軟質性、力学物性に加え、優れた高温耐油性、剛性と靱性のバランスを付与することが出来る。用いられる「ポリアミド系樹脂」は、例えば特開平8−217972号公報に記載のポリアミドが挙げられる。
<可塑剤>
本発明の熱可塑性樹脂組成物には従来塩ビや他の樹脂に用いられる公知の任意の可塑剤を配合することが出来る。用いられる可塑剤は炭化水素系可塑剤、または含酸素または含窒素系可塑剤である。炭化水素系可塑剤(オイル)の例としては、脂肪族炭化水素系可塑剤、芳香族炭化水素系可塑剤やナフテン系可塑剤が例示でき、含酸素または含窒素系可塑剤としてはエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、エ−テル系可塑剤、またはアミド系可塑剤が例示できる。
これらの可塑剤は、本発明の熱可塑性樹脂組成物の硬度、あるいは流動性(成形加工性)の調整に用いることができる。またガラス転移温度を低下させ、脆化温度を下げる効果がある。
本発明に好適に用いることができるエステル系可塑剤の例としては、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、アジピン酸エステル、セバチン酸エステル、アゼレ−ト系エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、グルタミン酸エステル、コハク酸エステル、酢酸エステル等のモノ脂肪酸エステル、リン酸エステルやこれらのポリエステルである。
本発明に好適に用いることができるエポキシ系可塑剤の例としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油が挙げられる。
本発明に好適に用いることができるエ−テル系可塑剤の例としては、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、これらの共重合物、混合物が挙げられる。
本発明に好適に用いることができるアミド系可塑剤の例としては、スルホン酸アミドが挙げられる。これら可塑剤は単独で用いても、複数を用いてもよい。
本発明に特に好ましく用いられるのはエステル系可塑剤である。これらの可塑剤は、芳香族ビニル化合物−オレフィン−芳香族ポリエン共重合体との相溶性に優れ、可塑化効果に優れ(ガラス転移温度低下度が高い)、ブリ−ドが少ないという利点がある。
可塑剤の配合量は、本発明の熱可塑性樹脂組成物またはその樹脂組成物100質量部に対して、可塑剤1質量部以上25質量部以下、好ましくは1質量部以上15質量部以下である。1質量部未満では上記効果が不足し、25質量部より高いとブリ−ドや、過度の軟化、それによる過度のべたつきの発現等の原因となる場合がある。
<無機質充填剤(フィラ−)>
以下、本発明に用いることができる無機質充填剤について示す。
無機質充填剤は、本発明の熱可塑性樹脂組成物に難燃性を付与するためにも用いられる。無機質充填剤の体積平均粒子径は、好ましくは50μm以下、好ましくは10μm以下の範囲である。体積平均粒子径が、0.5μm未満であったり50μmを超えるとフィルム化したときの力学物性(引張強度、破断伸度等)の低下が生じるとともに柔軟性の低下やピンホールの発生を引き起こしてしまうことがある。体積平均粒子径は、レーザ回析法で測定した体積平均粒子径である。
無機質充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、トリフェニルホスフィート、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アミド、酸化ジリコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化モリブデン、リン酸グアニジン、ハイドロタルサイト、スネークタイト、硼酸亜鉛、無水硼酸亜鉛、メタ硼酸亜鉛、メタ硼酸バリウム、酸化アンチモン、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、赤燐、タルク、アルミナ、シリカ、ベーマイト、ベントナイト、珪酸ソーダ、珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムであり、これらから選ばれる1種又は2種以上の化合物が使用される。特に、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、炭酸マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いるのが難燃性の付与効果に優れ、経済的に有利である。
無機質充填剤の配合量は、本発明の熱可塑性樹脂組成物100質量部に対し1〜500質量部、好ましくは5〜200質量部の範囲である。無機質充填剤が1質量部未満では、難燃性が劣る場合がある。一方で、無機質充填剤が500質量部を超えると、樹脂組成物の成形性及び強度等の機械的物性が劣る場合がある。
無機質充填剤を非ハロゲン系難燃剤として配合した場合は、チャー(炭化層)の形成を図り、フィルム等の難燃性を向上させることもできる。
<難燃剤>
以下、本発明に用いることができる難燃剤について示す。有機難燃剤としてはペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモシクロドデカンなどの臭素化合物、トリフェニルホスフェートなどの芳香族のリン酸エステル、赤リン、ハロゲンを含むリン酸エステル等のリン化合物、1,3,5−トリアジン誘導体等の含窒素化合物、塩素化パラフィン、臭素化パラフィン等のハロゲン含有化合物が例示できる。
無機難燃剤としては上記無機質充填材でもあるアンチモン化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物が例示できる。これら難燃剤は、用途に応じ、適切な添加量で用いることが出来る。これらは公知の適当な難燃助剤と共に用いても良い。難燃剤の例は例えば、特開平11−199724、特表2002−533478号公報等にも記載してある。
<耐光剤>
本発明に用いられる耐光剤は、公知の耐光剤である。一般的には耐光剤は、光エネルギーを無害な熱エネルギーに変換する紫外線吸収剤と光酸化で生成するラジカルを捕捉するヒンダードアミン系光安定剤から構成される。紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤の質量比は1:100〜100:1の範囲で、紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤の質量の合計量を耐光剤質量とし、その使用量は、本発明の本発明の熱可塑性樹脂組成物100質量部に対し、0.05〜5質量部の範囲である。
本発明の樹脂組成物、可塑剤組成物、フィラ−組成物を製造する方法は特に限定されず、公知の適当なブレンド法を用いることができる。例えば、単軸、二軸のスクリュー押出機、バンバリー型ミキサー、プラストミル、コニーダー、加熱ロールなどで溶融混合を行うことができる。溶融混合を行う前に、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、スーパーミキサー、タンブラーなどで各原料を均一に混合しておくこともよい。溶融混合温度はとくに制限はないが、一般的には150〜300℃、好ましくは200〜250℃である。
本発明の各種組成物の成形法としては、真空成形、射出成形、ブロー成形、押出し成形、異型押し出し成形等公知の成形法を用いることができる。特に本発明の熱可塑性樹脂組成物は、流動性に優れているため、射出成形、特には高速射出成形に対する適性が高い。
<フィルム、テ−プ基材>
本発明の熱可塑性樹脂組成物またはその樹脂組成物をフィルムとして用いる場合、その厚みに特に制限はないが、一般に3μm〜1mm、好ましくは10μm〜0.5mmである。
フィルム(シート)を製造するには、インフレーション成形、Tダイ成形、カレンダ−成形、ロ−ル成形などの成形法を採用することができる。本発明のフィルムは、物性の改善を目的として、他の適当なフィルム、例えば、アイソタクティックまたはシンジオタクティックのポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE、またはLLDPE)、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のフィルムと多層化することができる。
本発明のフィルムの具体的用途は、特に限定されないが、その優れた力学物性、風合い、耐油性、耐傷つき摩耗性、耐熱性から、様々な表皮材として有用である。例えば合成皮革、特に自動車内装用の合成皮革に好適に用いることができる。
自動車用内装材としては、例えばインパネ、ドアトリム、シ−トの表皮、天井材、床材の表皮、ハンドル、ブレーキ、レバー、グリップ等の表皮が例示できる。また、フロアーマット材としても好適に使用できる。これらの用途の場合、ポリオレフィン系またはポリウレタン系の発泡シートと共に多層化して用いてもよく、それ自体を発泡させて用いることも出来る。必要に応じて各種コート剤をその表面に塗布しても良い。
また、本発明のフィルムは各種テ−プ基材として用いることが出来る。テ−プ基材として用いる場合、本発明の熱可塑性樹脂組成物の軟質性、耐熱性、耐油性、特徴ある引張物性、難燃性がメリットとなる。本クロス共重合体を含む組成物をテ−プ基材とし、公知の粘着剤、添加剤、成型方法が用いられる。このような粘着剤、添加剤、成型方法は例えば特許公開公報2000−111646号公報に記載されている。本テ−プ基材からなる粘着テ−プは、各種結束テ−プ、保護用テ−プ、固定用テ−プとして好適に用いることが出来る。
本発明のフィルムは必要に応じて、コロナ、オゾン、プラズマ等の表面処理、防曇剤塗布、滑剤塗布、印刷等を実施することができる。本発明のフィルムは、必要に応じて1軸または2軸等の延伸配向を行った延伸フィルムとして作製することが出来る。本発明のフィルムは必要に応じて、熱、超音波、高周波等の手法による融着、溶剤等による接着等の手法によりフィルム同士、あるいは他の熱可塑性樹脂等の材料と接合することができる。
更に、本発明のフィルムは、例えば100μm以上の厚みを有する場合、真空成形、圧縮成形、圧空成形等の熱成形等の手法により食品、電気製品等の包装用トレーを成形することができる。
更に、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、各種電線被覆材、ケ−ブル被覆材として好適に用いることができる。その際には、本発明の熱可塑性樹脂組成物の軟質性、耐熱性、耐油性、耐傷つき摩耗性、難燃性がメリットとなる。
上記に記載した本発明の熱可塑性樹脂組成物のうち、A硬度50〜95までの範囲の熱可塑性樹脂組成物は、架橋処理や動的加硫処理を行っていないにもかかわらず、軟質性と高い耐熱性、成形加工性を両立できる特徴がある。しかし、さらに高い耐熱性や高度の耐油性を付与するために、本発明の熱可塑性樹脂組成物に対して公知の架橋法、または動的加硫処理を行うこともできる。例えば、架橋の方法は、特表平10−505621号公報に、動的加硫の方法は、特開平11−293045や特開平11−293046号公報に記載してある。
さらに本発明の樹脂組成物は、公知の方法で発泡体とすることができる。本発泡体は、連続気泡、独立気泡いずれでもよく、押し出し発泡、ビ−ズ発泡等公知の製造方法を適用できる。発泡体の製造方法は、再表00/037517号公報、特表2001−514275号公報、特表2002−506903号公報に記載してある方法が採用できる。このような発泡体は自動車バンパ−充填物や自動車構造材、あるいは各種ガスケットとして有用である。
本発明の樹脂組成物はハロゲンを基本的に含有しないため、環境適応性や安全性が高いという基本的特徴を有する。
以下、実施例により、本発明を説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
実施例で得られた共重合体の分析は以下の手段によって実施した。
13C−NMRスペクトルは、日本電子社製α−500を使用し、重クロロホルム溶媒または重1,1,2,2−テトラクロロエタン溶媒を用い、TMSを基準として測定した。ここでいうTMSを基準とした測定は以下のような測定である。先ずTMSを基準として重1,1,2,2−テトラクロロエタンの3重線13C−NMRピークの中心ピークのシフト値を決めた。次いで共重合体を重1,1,2,2−テトラクロロエタンに溶解して13C−NMRを測定し、各ピークシフト値を、重1,1,2,2−テトラクロロエタンの3重線中心ピークを基準として算出した。重1,1,2,2−テトラクロロエタンの3重線中心ピークのシフト値は73.89ppmであった。測定は、これら溶媒に対し、ポリマーを3質量/体積%溶解して行った。
ピーク面積の定量を行う13C−NMRスペクトル測定は、NOEを消去させたプロトンゲートデカップリング法により、パルス幅は45°パルスを用い、繰り返し時間5秒を標準として行った。
共重合体中のスチレン含量の決定は、1H−NMRで行い、機器は日本電子社製α−500及びBRUCKER社製AC−250を用いた。重1,1,2,2−テトラクロロエタンに溶解し、測定は、80〜100℃で行った。TMSを基準としてフェニル基プロトン由来のピーク(6.5〜7.5ppm)とアルキル基由来のプロトンピーク(0.8〜3ppm)の面積強度比較で行った。
分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求めた。測定は以下の条件で行った。
カラム:TSK−GEL MultiporeHXL-M φ7.8×300mm(東ソ−社製)を2本直列に繋いで用いた。
カラム温度:40℃
溶媒:THF
送液流量:1.0ml/min.
DSC測定は、セイコー電子社製DSC200を用い、窒素気流下で行った。すなわち樹脂組成物10mgを用い、昇温速度10℃/分で−50℃から240℃までDSC測定を行い、融点、結晶融解熱及びガラス転移点を求めた。1回目の測定後液体窒素で急冷した後に行う2度目の測定は行わなかった。
<サンプルシ−ト作成>
なお、物性評価用の試料は加熱プレス法(温度250℃、時間5分間、圧力50kg/cm2)により成形した厚さ1.0mmのシ−トを用いた。粘弾性スペクトル測定用のサンプルは、同条件で得た厚さ0.5mmのシ−トから切り出すことで得た。
<引張試験>
JIS K−6251に準拠し、厚さ1mmのシートを2号1/2号型テストピース形状にカットし、島津製作所AGS−100D型引張試験機を用い、引張速度500mm/minにて測定した。
<硬度>
硬度はJIS K−7215プラスチックのデュロメーター硬さ試験法に準じてタイプAのデュロメーター硬度を求めた。この硬度は瞬間値である。
<粘弾性スペクトル>
上記加熱プレス法により得た厚み約0.5mmのフィルムから測定用サンプル(3mm×40mm)を切り出し、動的粘弾性測定装置(レオメトリックス社RSA−III)を使用し、周波数1Hz、温度領域−50℃〜+250℃の範囲で測定した。
その他測定パラメ−タ−は以下の通り
測定周波数1Hz
昇温速度4℃/分
サンプル測定長10mm
Initial Static Force 5.0g
Auto Tension Sensitivity 1.0g
Max Auto Tension Rate 0.033mm/s
Max Applied Strain 1.5%
Min Allowed Force 1.0g
<ラビング摩耗試験>
厚さ1mmのシ−トを用い、学振型摩擦堅牢度試験機(テスタ−産業株式会社製)により6号帆布、加重0.5kgの条件で1万回往復摩耗を行った後の摩耗質量変化と表面の目視、感触による評価を行った。途中、摩耗によりシ−トを貫通した場合は、そこまでの往復摩耗回数を記録した。
摩耗質量(mg)=摩耗試験前の質量(mg)−摩耗試験後の質量(mg)
目視/触感評価
◎ 触感が平滑で表面の傷が目立たない
○ 触感で多少凸凹が感じられ表面の傷が見える
× 表面の削れまたは摩耗面の凹みが明らかで、表面が荒れている。
または、1万回未満でシ−トが貫通した。
<耐熱変形試験>
厚さ1mmのJIS2号小型1/2ダンベルを所定のオ−ブン内に吊し、所定の温度で1時間加熱処理し、処理前とダンベル縦方向、幅方向で長さを測定し、以下の式により伸び/収縮変形率を求めた。本伸び/収縮変形率が縦、または幅方向すべてが5%以内に収まる最高温度を耐熱変形温度とした。
伸び変形率=100×(試験後の長さ−試験前の長さ)/試験前の長さ
収縮変形率=100×(試験前の長さ−試験後の長さ)/試験前の長さ
<パラフィンオイル耐油性試験>
厚さ1mmのJIS2号小型1/2ダンベルを用い、約30mlのパラフィンオイル(カネダ株式会社ハイコールK−350)に全体を浸漬し、80℃、24時間経過後に取り出し、表面のオイルを拭き取った後に秤量し、下式により質量増加率%を求めた。
質量増加率(%)=100×(浸漬後の質量−浸漬前の質量)/浸積前の質量
<永久伸び>
厚さ0.5mm、幅3mm、長さ40mm以上の試験片を用い、中心部20mm部分に標線を引き、引張試験機にて引張速度500mm/minの速度で標線間が幅40mm(伸び100%)になるまで引っ張りそのまま10分保持した後、応力を解放し、23℃で48時間放置した後の標線間長さを測定し、以下の式により永久伸びを求めた。

永久伸び(%)= {L1−20}/20 × 100
L1:48時間後の標線間長さ(mm)
<ジビニルベンゼン>
ジビニルベンゼンは、新日鐵化学社製810(ジビニルベンゼンとしての純度81%、メタ体、パラ体混合物、メタ体:パラ体質量比70:30)である。
<触媒(遷移金属化合物)>
以下の実施例1〜11では、触媒(遷移金属化合物)として、rac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライド(化7)を用いた。

(製造例1)
<クロス共重合体の製造>
触媒としてrac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを用い、以下のように実施した。
容量50L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。シクロヘキサン21.2kg、スチレン3.3kg及び新日鐵化学社製ジビニルベンゼン(メタ、パラ混合品、純度81質量%、ジビニルベンゼン分として56mmol)を仕込み、内温60℃に調整し攪拌(220rpm)した。乾燥窒素ガスを30L/分の流量で数十分、液中にバブリングして系内及び重合液の水分をパージした。次いで、トリイソブチルアルミニウム50mmol、メチルアルモキサン(東ソーアクゾ社製、MMAO−3A/ヘキサン溶液)をAl基準で100mmol(表中ではMAOと記載)加え、ただちにエチレンで系内をパ−ジした。十分にパ−ジした後、内温を75℃に昇温してエチレンを導入し、圧力0.27MPa(1.7kg/cmG)で安定した後に、オートクレーブ上に設置した触媒タンクから、rac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを100μmol、トリイソブチルアルミニウム1mmolを溶かしたトルエン溶液約50mlをオートクレーブ中に加えた。さらに、流量制御弁を介しエチレンを補給し、内温を80℃、圧力を0.27MPaに維持しながら65分間重合を実施した。エチレンの流速、積算流量から重合進行状況をモニタ−した。エチレンの供給を停止し、エチレンを放圧すると共に内温を70℃まで冷却した(以上配位重合工程)。n−ブチルリチウム260mmolを触媒タンクから窒素ガスに同伴させて重合缶内に導入した(クロス化工程)。直ちにアニオン重合が開始し、内温は70℃から一時80℃まで上昇した。そのまま30分間温度を70〜80℃に維持し攪拌を継続し重合を続けた。約百mlのメタノ−ルを重合缶に加え、アニオン重合を停止した。
得られた重合液を大量のヘキサンとメタノ−ルの混合液中に少しずつ投入し、ポリマ−を析出させ溶媒と分離し、一昼夜風乾後真空乾燥機で70℃、10時間以上、質量変化が認められなくなるまで乾燥した。その結果、約4.6kgのポリマーを回収した。
(製造例2〜5)
製造例1と同様に、表1に示す仕込み、重合条件で重合を実施した。
表1に重合条件を、表2〜3に得られたクロス共重合体の組成分析値を示す。
配位重合工程で得られたポリマ−の分析値(配位重合工程でのポリマ−収量、組成、分子量等)は、配位重合工程終了時にサンプリングした少量(数十ml)の重合液をメタノールに混合してポリマ−を析出させて回収し乾燥後、分析を行うことで求めた。配位重合工程で得られたポリマ−のジビニルベンゼンユニット含量は、ガスクロマトグラフィ分析により求めた重合液中の未反応ジビニルベンゼン量と重合に用いたジビニルベンゼン量の差から求めた。
また、表中にUS6096849号公報に従って、本実施例配位重合工程で得られた主鎖エチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体のTUS/DOU値を示した。ここで、TUSは、共重合体に含まれるト−タルのビニル基含量で、芳香族ポリエン(ジビニルベンゼン)ユニットに由来するビニル基とポリマ−末端のビニル基の含量の総和であり、1H−NMR測定により求めた。またDOU値は主鎖エチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体に含まれるジビニルベンゼンユニット含量である。
本発明の配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体(エチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体)においては、TUS/DOU値は1.1より高い値をとり、概ね1.2以上10以下、好ましくは1.2以上5以下の値をとる。TUS/DOU値がより大きい場合、芳香族ポリエンユニット含量が少なすぎ、本発明のクロス共重合体としての機能が失われてしまう場合がある。また、TUS/DOU値が1.1以下の場合、芳香族ポリエンユニット含量が多すぎて主鎖に由来する機能が失われやすくなり、またクロス共重合体の成形加工性が悪化してしまったり、クロス共重合体中にゲル分が生成してしまう恐れがある。



(実施例1〜11)
以下のようにして、熱可塑性樹脂組成物を得た。
ブラベンダ−プラスチコ−ダ−(ブラベンダ−社製PL2000型)を使用し、本製造例で得られたクロス共重合体と熱可塑性ポリエステルエラストマー(東レ・デュポン株式会社製ハイトレル3046)を表4に示す配合(質量部)で、合計約45gを200℃、100rpm、10分間混練しサンプルを作製した。酸化防止剤としてはイルガノックス1076を用いた。実施例10、11ではさらにポリフェニレンエ−テル(PPE)樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社YPX−100L)を加えた。実施例12では、さらに可塑剤としてパラフィン系プロセスオイルPW−90(出光興産社製)を添加した。
実施例9では用いる熱可塑性ポリエステルエラストマーを三菱化学社製プリマロイA1700N10に変更した。
得られた組成物を用い、上記方法に従い、MFR測定、A硬度測定、粘弾性スペクトル測定およびラビング摩耗試験を実施した。さらに上記加熱プレス法により成形した厚さ1.0mmのシ−トを用い、引っ張り試験、耐熱変形試験、耐油性試験を行った。結果を表4に示す。

(比較例1〜6)
製造例1〜5で得たポリマ−に酸化防止剤のみ添加し、実施例と同じ条件で混練したサンプルの評価結果も表に示す。さらに熱可塑性ポリエステルエラストマー(東レ・デュポン株式会社製ハイトレル3046)も同様にして混練し、その評価結果を表5に示す。


実施例2、3、4、5で得られた樹脂組成物および比較例2(原料クロス共重合体)及び6(原料ハイトレル3046)の粘弾性スペクトル(貯蔵弾性率の温度変化)を図1に示す。
実施例1〜12の結果と比較例1〜5より、クロス共重合体にポリエステル系樹脂である熱可塑性ポリエステルエラストマー(東レ・デュポン株式会社製ハイトレル3046)を配合した樹脂組成物は、広い組成範囲でクロス共重合体単独と比較して耐熱性が向上している。すなわち、実施例の樹脂組成物はいずれも130℃以上の耐熱変形温度、粘弾性スペクトル測定による貯蔵弾性率E‘が106Paまで低下する温度が110℃以上である。
本実施例樹脂組成物はいずれもA硬度60〜90の範囲内にあって軟質であり、かつ引張試験において、熱可塑性エラストマーとして十分な力学物性、すなわち300%以上の破断点伸びとおよそ10MPa以上の破断点強度を示す。本実施例樹脂組成物は力学物性を維持しつつ単独の熱可塑性ポリエステルエラストマーより軟質化させることも可能である。
また、クロス共重合体に熱可塑性ポリエステルエラストマー(東レ・デュポン株式会社製ハイトレル3046)を配合した樹脂組成物は、クロス共重合体単独と比較し著しく流動性(MFR値)が増大しており、流動性の調整法として有用であり、得られた樹脂組成物は、例えば樹脂の高流動性が必要な射出成形に適する。
また、本実施例樹脂組成物は、クロス共重合体単独と比較しパラフィンオイル耐油性も向上していることがわかる。さらに、クロス共重合体の配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の組成が芳香族ビニル化合物含量23モル%以上40モル%以下、芳香族ポリエン含量0.01モル%以上0.3モル%以下残部がオレフィン含量であるクロス共重合体(製造例1〜3で得られたクロス共重合体)を用いることにより、本耐油性評価条件下で、質量増加率%(膨潤度)が50%以下である、より耐油性に優れた樹脂組成物を得ることが示される(実施例1〜6)。
ラビング摩耗試験の結果から、本組成物は単独の熱可塑性ポリエステルエラストマーより優れた耐摩耗性を示すことがわかる。さらに、クロス共重合体の配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の組成が芳香族ビニル化合物含量23モル%以上40モル%以下、芳香族ポリエン含量0.01モル%以上0.3モル%以下残部がオレフィン含量であるクロス共重合体(製造例1〜3で得られたクロス共重合体)を用い、かつクロス共重合体が50質量%以上であることで、本試験条件でのラビング摩耗量が50mg以下である、より耐摩耗性に優れた熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
本発明の樹脂組成物は、クロス共重合体と比較し耐熱性及び樹脂の流動性が大きく向上している。また、本発明の樹脂組成物は、熱可塑性ポリエステルエラストマーと比較し、力学物性を維持しつつより軟質化させることが可能で、耐傷つき摩耗性も向上している。本樹脂組成物は、クロス共重合体と熱可塑性ポリエステルエラストマーのそれぞれの長所を生かし、耐熱性、流動性、軟質性、耐傷つき摩耗性、パラフィンオイル耐油性を満足し、十分な力学物性を有する熱可塑性エラストマ−として有用である。

Claims (8)

  1. 以下の(1)〜(4)の条件を満たすクロス共重合体5〜99質量%、並びに、A硬度95以下の熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)であるポリエステル系樹脂95〜1質量%、を含む熱可塑性樹脂組成物。
    (1)配位重合工程とクロス化工程からなる重合工程を含む製造方法であって、配位重合工程として、シングルサイト配位重合触媒を用いてオレフィンモノマー、芳香族ビニル化合物モノマーおよび芳香族ポリエンの共重合を行ってオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体を合成し、次にクロス化工程として、このオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体と芳香族ビニル化合物モノマーの共存下、アニオン重合開始剤またはラジカル重合開始剤を用いて重合することを特徴とする製造方法で得られるクロス共重合体。
    (2)配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の組成が、芳香族ビニル化合物含量5モル%以上40モル%以下、芳香族ポリエン含量0.01モル%以上0.3モル%以下、残部がオレフィン含量である。
    (3)配位重合工程において、用いられるシングルサイト配位重合触媒が下記の一般式(1)または一般式(2)で表される遷移金属化合物と助触媒から構成されるシングルサイト配位重合触媒である。


    式中、A、Bは同一でも異なっていてもよく、非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、非置換もしくは置換インデニル基、非置換もしくは置換シクロペンタジエニル基、または非置換もしくは置換フルオレニル基から選ばれる基である。
    YはA、Bと結合を有し、他に置換基として水素もしくは炭素数1〜15の炭化水素基(1〜3個の窒素、酸素、硫黄、燐、珪素原子を含んでもよい)を有するメチレン基である。置換基は互いに異なっていても同一でもよい。また、Yは環状構造を有していてもよい。
    Xは、水素、水酸基、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜4の炭化水素置換基を有するシリル基、または炭素数1〜20の炭化水素置換基を有するアミド基である。Xが複数の場合、X同士は結合を有しても良い。
    nは、1または2の整数である。Mはジルコニウム、ハフニウム、またはチタンである。



    式中、Cpは非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、非置換もしくは置換シクロペンタジエニル基、非置換もしくは置換インデニル基、または非置換もしくは置換フルオレニル基から選ばれる基である。Y’は、Cp、Zと結合を有し、他に水素もしくは炭素数1〜15の炭化水素基を有するメチレン基、シリレン基、エチレン基、ゲルミレン基、硼素残基である。置換基は互いに異なっていても同一でもよい。また、Y’は環状構造を有していてもよい。Zは窒素、酸素またはイオウを含み、窒素、酸素またはイオウでM’に配位する配位子でY’と結合を有し、他に水素、炭素数1〜15の置換基を有する基である。
    M’はジルコニウム、ハフニウム、またはチタンである。
    X’は、水素、ハロゲン、炭素数1−15のアルキル基、炭素数6−10のアリール基、炭素数8−12のアルキルアリール基、炭素数1−4の炭化水素置換基を有するシリル基、炭素数1−10のアルコキシ基、または炭素数1−6のアルキル置換基を有するジアルキルアミド基である。
    nは、1または2の整数である。
    (4)クロス化工程で得られるクロス共重合体に対する配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の質量割合が50〜95質量%である。
  2. 請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物を含む成形体。
  3. 請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物を含むフィルム。
  4. 請求項記載のフィルムからなる表皮材。
  5. 請求項記載のフィルムからなる合成皮革。
  6. 請求項記載のフィルムからなるテ−プ基材。
  7. 請求項記載のフィルムからなる電線被覆材。
  8. 請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物からなるガスケット。
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