JP2009132916A - 蛍光体、及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Siと、2価の金属元素としてSrとを必須とし、Siに対する、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる2価の金属元素の組成比が0.56以上である窒化物又は酸窒化物を母体とし、発光ピーク強度維持率(25℃、395nm又は455nm励起)が下記式[1]及び/又は[2]を満足する蛍光体。
I(B)/I(A)≧ 0.93 [1]
I(1000)/I(0) ≧ 0.94 [2]
(I(A)は、蛍光体の発光ピーク強度、I(B)は、135℃、0.23MPa加圧、水蒸気雰囲気下に20時間静置した後の蛍光体の発光ピーク強度。I(0)は、蛍光体の発光ピーク強度、I(1000)は、温度85℃、湿度85%の環境下に1000時間静置した後の蛍光体の発光ピーク強度。)
【選択図】図5
Description
本発明はまた、この蛍光体を用いた蛍光体含有組成物及び発光装置、並びにこの発光装置を用いた画像表示装置及び照明装置に関する。
特許文献1に、熱酸化雰囲気(ベーク)劣化対策として、窒化物蛍光体を、窒化金属系材料、酸窒化金属系材料等の窒素元素を含有する被覆材料で被覆する方法が記載されている。
特許文献2に、窒素を構成元素に含む雰囲気ガス中で熱処理を行ない、結晶構造の欠陥及び歪みを除去すると共に、蛍光体表面に表面コーティング処理によりSiO2膜を形成することにより、長時間の点灯や製造工程の熱処理を受けても輝度の低下や色味の変化が少ない蛍光体を得る方法が記載されている。
特許文献3に、窒化物又は酸窒化物蛍光体を、リンを含む化合物によって処理することにより、熱酸化雰囲気(ベーク)による劣化が改善されることが記載されている。
特許文献4に、窒化物又は酸窒化物蛍光体の表面を2つの異なる化合物で被覆することにより、蛍光体の劣化を抑制する方法が記載されている。
さらに、本発明者等はこの蛍光体が光源として非常に優れた特性を示し、発光装置等の用途に好適に使用できることを見出して、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下の(1)〜(19)を要旨とするものである。
I(B)/I(A)≧ 0.93 [1]
(前記式[1]において、
I(A)は、25℃において、該蛍光体を波長395nm又は455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度であり、
I(B)は、該蛍光体を、135℃、0.23MPa加圧、水蒸気雰囲気下に20時間静置した後、25℃において、該蛍光体を波長395nm又は455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度である。)
I(1000)/I(0) ≧ 0.94 [2]
(前記式[2]において、
I(0)は、25℃において、該蛍光体を波長395nm又は455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度であり、
I(1000)は、該蛍光体を、温度85℃、湿度85%の環境下に1000時間静置した後、25℃において、該蛍光体を波長395nm又は455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度である。)
M1 aM2 bM3 cM4 dNeOf [4]
(但し、M1は、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
M2は、Srを必須とする、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
M3は、Al、Ga、In、及びScよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
M4は、Siを必須とする、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、及びHfよりなる群から選ばれる1種以上の元素である。
a、b、c、d、e、fはそれぞれ下記の範囲の値である。
0.00001≦a≦0.15
a+b=1
0.5≦c≦1.5
0.5≦d≦1.5
2.5≦e≦3.5
0≦f≦0.5 )
(W(B)/W(A)−1)×100 [3]
(前記式[3]において、
W(A)は、該蛍光体の重量であり、
W(B)は、該蛍光体を、135℃、0.23MPa加圧、水蒸気雰囲気下に20時間静置した後の該蛍光体の重量である。)
M1 aM2 bM3 cM4 dNeOf [4]
(但し、M1は、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
M2は、Srを必須とする、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
M3は、Al、Ga、In、及びScよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
M4は、Siを必須とする、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、及びHfよりなる群から選ばれる1種以上の元素である。
a、b、c、d、e、fはそれぞれ下記の範囲の値である。
0.00001≦a≦0.15
a+b=1
0.5≦c≦1.5
0.5≦d≦1.5
2.5≦e≦3.5
0≦f≦0.5 )
また、本発明の蛍光体の製造方法によると、劣化しにくい蛍光体を得ることができる。
1−1.蛍光体の物性
<発光ピーク強度維持率>
第1の態様に係る本発明の蛍光体は、Siと、2価の金属元素としてSrとを必須とし、かつ、Siに対する、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる2価の金属元素の組成比(モル比)が、0.56以上である窒化物又は酸窒化物を母体とする蛍光体であって、該蛍光体の発光ピーク強度維持率が下記式[1]及び/又は[2]を満足することを特徴とする。
なお、以下において、下記式[1]で表される発光ピーク強度維持率を「発光ピーク強度維持率[1]」と称し、下記式[2]で表される発光ピーク強度維持率を「発光ピーク強度維持率[2]」と称す場合がある。
(前記式[1]において、
I(A)は、25℃において、該蛍光体を波長395nm又は455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度であり、
I(B)は、該蛍光体を、135℃、0.23MPa加圧、水蒸気雰囲気下に20時間静置した後、25℃において、該蛍光体を波長395nm又は455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度である。)
(前記式[2]において、
I(0)は、25℃において、該蛍光体を波長395nm又は455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度であり、
I(1000)は、該蛍光体を、温度85℃、湿度85%の環境下に1000時間静置した後、25℃において、該蛍光体を波長395nm又は455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度である。)
発光ピーク強度維持率[1]も発光ピーク強度維持率[2]も、1に近い程、耐湿性などの耐久性に優れることを意味する。耐久性に優れた蛍光体を用いれば、長時間駆動しても全光束が低下しにくく、色ずれも小さい発光装置を得ることができる。
製造した蛍光体(試料)について、まず、下記オートクレーブ処理前に波長455nm(又は波長395nm)励起における発光ピーク強度I(A)を測定する。
次いで、オートクレーブ(内容積50リットル程度)を用いて、試料(蛍光体1g)を温度135℃、0.23MPa(自己発生圧)の水蒸気雰囲気に20時間暴露した後、波長455nm(又は波長395nm)励起における発光ピーク強度I(B)を測定する。
下記式[1]により、発光ピーク強度維持率I(B)/I(A)を算出する。
I(B)/I(A) [1]
製造した蛍光体(試料)について、下記エージング処理前に波長455nm(又は波長395nm)励起における発光ピーク強度I(0)を測定する。
次いで、温度85℃、相対湿度85%に保たれたチャンバーに試料を静置することにより、試料を高温高湿条件下に1000時間暴露した後、波長455nm(又は波長395nm)励起における発光ピーク強度I(1000)を測定する。
下記式[2]により、発光ピーク強度維持率I(1000)/I(0)を算出する。
I(1000)/I(0) [2]
ただし、本発明者らの検討により、発光ピーク強度維持率[1]による評価は、発光ピーク強度維持率[2]による評価と同等の結果が得られることが確認されている。即ち、発光ピーク強度維持率[1]が0.93以下の蛍光体は、通常発光ピーク強度維持率[2]についても0.94以下の値を示す。従って、発光ピーク強度維持率[1]による評価は、高温高湿条件下に1000時間暴露する発光ピーク強度維持率[2]による評価結果をも比較的短時間で評価することのできる優れた評価基準である。
但し、発光ピーク強度維持率[2]の評価後の試料は、炭酸塩化されていたのに対し、発光ピーク強度維持率[1]の評価後の試料は、加水分解が起きているのみであった。従って、両者の劣化のメカニズムは異なるものであり、劣化試験としては、長時間を要するが、発光ピーク強度維持率[2]で評価することが望ましい。
第2の態様に係る本発明の蛍光体は、Siと、2価の金属元素としてSrとを必須とし、かつ、Siに対する、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる2価の金属元素の組成比(モル比)が、0.56以上である窒化物又は酸窒化物を母体とする蛍光体であって、下記式[3]で表される重量増加率が11%以下であることを特徴とする。
なお、以下において、下記式[3]で表される重量増加率を「重量増加率[3]」と称す場合がある。
(W(B)/W(A)−1)×100 [3]
(前記式[3]において、
W(A)は、該蛍光体の重量であり、
W(B)は、該蛍光体を、135℃、0.23MPa加圧、水蒸気雰囲気下に20時間静置した後の該蛍光体の重量である。)
試料(蛍光体)について、まず、大気中、135℃で2時間乾燥後、重量W(A)を測定する。
次いで、オートクレーブ(内容積50リットル程度)を用いて、試料(蛍光体1g)を温度135℃、0.23MPa(自己発生圧)の水蒸気雰囲気に20時間暴露した後、大気中、135℃で2時間乾燥後、同様に重量W(B)を測定する。
下記式[3]により、重量増加率W(B)/W(A)を算出する。
(W(B)/W(A)−1)×100 [3]
なお、以下において、下記式[3A]で表される重量増加率を「重量増加率[3A]」と称す場合がある。
(W(1000)/W(0)−1)×100 [3A]
(前記式[3A]において、
W(0)は、該蛍光体の重量であり、
W(1000)は、該蛍光体を、温度85℃、湿度85%の環境下に1000時間静置した後の該蛍光体の重量である。)
試料(蛍光体)について、まず、大気中、135℃で2時間乾燥後、重量W(0)を測定する。
次いで、温度85℃、相対湿度85%に保たれたチャンバーに試料を静置することにより、試料を高温高湿条件下に1000時間暴露した後、大気中、135℃で2時間乾燥後、同様に重量W(1000)を測定する。
下記式[3A]により、重量増加率W(0)/W(1000)を算出する。
(W(1000)/W(0)−1)×100 [3A]
窒化物は、一般的に、大気中に曝すと、表面に酸化膜が生成することが知られている。従って、大気に暴露された蛍光体表面には、該蛍光体の母体結晶とは異なる組成を有する酸化膜(以下、「自然酸化膜」と称する。)が生成するものと考えられている。
一般的に、焼成工程を経て得られた、窒化物を母体とする蛍光体に対して、比較的高い温度(例えば、700℃〜1200℃)での再焼成を施すと、結晶欠陥が消失するという現象が見られることがあるが、本発明における表面層は、比較的低い温度(例えば、250℃〜650℃)の再焼成(アニール工程)で得ることができる。比較的低い温度で再焼成することにより、結晶欠陥が消失するという現象は、通常見られないことから、本発明の蛍光体は、結晶欠陥が消失することで結晶性が高まったからではなく、他の要因によって性質が変化し、この結果、耐久性が向上したものと推測される。
上記のような性質を有するかどうかは、以下のような方法で判定することができる。
試料(蛍光体)を、試料重量の10倍重量の希塩酸(0.5M塩酸水溶液)に分散させ、1時間、室温で攪拌した後、濾過、水洗を行う。次いで、100℃で2時間、真空乾燥を行う。
このようにして希塩酸で処理した後の試料と、処理前の試料とで、耐久性(例えば、前述の発光ピーク強度維持率[1]、又は発光ピーク強度維持率[2]、更には重量増加率[3])を比較した場合、処理後の試料で、処理前の試料に対して耐久性の劣化があるものは、処理前には存在していた前述の表面層が希塩酸に対して溶解するか、或いは希塩酸処理で脱離(剥離)されることによって耐久性が低下することを確認することができる。
表面層の化学組成について以下に詳述する。
表面層のO/N(モル比)は、母体結晶の組成にもよるが、通常9.5以上、好ましくは10以上、特に好ましくは11以上であり、また、通常95以下、好ましくは30以下、より好ましくは28以下、特に好ましくは25以下である。
また、表面層のEM/O(モル比)は、母体結晶の組成にもよるが、通常0.05以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.11以上、特に好ましくは0.12以上であり、また、通常1以下、好ましくは0.8以下、特に好ましくは0.7以下である。
酸素元素が多すぎると、蛍光体の発光特性が低下する場合があり、酸素元素が少なすぎると、蛍光体の耐久性が不充分となる場合があるからである。
また、表面層のアルミニウム元素に対するアルカリ土類金属元素のモル比(以下、「表面層のEM/Al(モル比)」と記載する場合がある。)は、母体結晶の組成にもよるが、通常0.1以上、好ましくは0.2以上であり、また、通常2以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1以下、さらに好ましくは0.8以下、特に好ましくは0.6以下である。
上述した中でも、表面層のN/Al(モル比)が0.37以下であり、かつ、表面層のEM/Al(モル比)が上記の範囲内にあることが好ましい。耐久性の程度との相関関係は、特に表面層のN/Al(モル比)の値に見られるものと推測され、また、表面層に含まれるアルカリ土類金属元素が多すぎるとアニール工程から得られる効果が小さくなるとも推測されるからである。
試料(蛍光体)についてPHI社製Quantum2000を用いて、以下の測定条件で測定を行う。
・X線源:単色化Al−Kα,出力16kV−34W(X線発生面積170μmφ)
・帯電中和:電子銃2μA,イオン銃併用
・分光系:パスエネルギー
187.85eV=ワイドスペクトル
58.7eV=ナロースペクトル[N1s,Na1s,Ca2p,Eu3d]
29.35eV=ナロースペクトル[C1s,O1s,Al2p,Si2p,
Sr3d]
・測定領域:300μmφ
・取り出し角:45°(表面より)
真空中で固体表面にX線を照射すると、表面原子から電子(光電子)が発生する。この光電子は、元素に固有のエネルギー値を有しているので、そのエネルギー分布を測定することにより、該固体表面の組成を調べることができる。表面から深いところで発生した光電子は、表面に出てくるまでに吸収されるため、この方法による分析可能な深さは、平均的な表面層の数十原子層(表面から3nm〜5nmの深さまで)の領域となる。また、この分析法は、化合物の種類によって結合しているエネルギーがわずかに異なるため、光電子のエネルギー分布を調べることにより、化合物を構成する各元素の化学結合に関する情報が得られる。
XPS以外に、例えばオージェ電子分光法(AES)により、表面層の原子比や、深さ方向の分布を求めることができる。また、オージェ電子スペクトルを高分解能で測定することにより、状態分析を行うこともできる。
以下、このことを、蛍光体の母体結晶の組成が、CaAlSiN3、又はSrxCa1−xAlSiN3である場合を例に説明するが、本発明の蛍光体の組成は、これらの組成に限定されるものではない。
非特許文献2(Frank L.Riley, J.Am.Ceram.Soc.,83[2]245-65(2000))に、i)大気中で窒化ケイ素を1000℃以上で加熱すると表面にSiO2の酸化膜が形成すること、ii)その酸化膜と窒化ケイ素の間にSi2N2Oが存在すること、及び、iii)前記酸化膜SiO2からSi3N4に向かって連続的に組成が変化していること、が報告されている。
上記ii)に記載のSi2N2Oは、CaAlSiN3やSrxCa1−xAiSiN3と同一の結晶構造であるため、CaAlSiN3やSrxCa1−xAiSiN3を酸化雰囲気下、高温で加熱処理を行なえば、窒化ケイ素の場合と同様にその表面に少なくとも酸化物からなる表面膜が容易に形成されるものと考えられる。
また、上述したように、該蛍光体(CaAlSiN3やSrxCa1−xAlSiN3など)と表面酸化膜との間にSi2N2Oが生成するならば、より緻密なSi2N2O層を表面酸化膜と蛍光体の表面の間に形成し、酸素、水蒸気等の拡散に対し、有効な障壁となってガスバリア性が向上する可能性がある(なお、非特許文献2には、Si2N2O中の酸素の拡散速度は、SiO2中よりも低いため酸化を防ぐ障壁となり得るとの記載がある)。このSi2N2O層の性質(厚さ等)は蛍光体中のアルカリ土類金属元素の含有量やアルカリ土類金属の種類によって変わり、Si2N2O層の性質によって、耐湿性が異なる可能性がある。
一方、Si2N2O層が存在せず、表面酸化膜と蛍光体表面の間を組成が連続的に変化している場合についても考えてみると、蛍光体表面に近い部分はSiO2よりSi2N2Oに近い性質を示し、これにより、蛍光体との密着性を高め、水分子等の拡散障壁となって耐湿性を向上できる可能性がある。
(推測1)及び(推測2)の元にした、非特許文献2等の公知の知見は1000℃以上の高温における酸化層(SiO2+Si2N2O)についてのものである。本発明における表面層は、比較的低温(例えば、450℃付近)で形成されるものであるので、その組成や性質が異なる可能性がある。
なお、上述した(推測1)〜(推測3)はそれぞれ単独で起こっていても、2つ以上が複合して起こっていてもよい。
また、このような表面層を生成する方法としては、後述のアニール工程のように気相反応とする代わりに、液相反応としてもよい。この場合、酸素等の代わりに、過酸化水素や硝酸で酸化させてもよい。
本発明の蛍光体の発光色は、化学組成等を調整することにより、波長360nm〜480nmといった近紫外領域〜青色領域の光で励起され、青色、青緑色、緑色、黄緑色、黄色、橙色、赤色等、所望の発光色とすることができる。
蛍光体の化学組成や付活元素の種類によって発光ピーク波長及びその形状は異なるが、例えば、本発明の蛍光体が、後述のSr置換量が多い蛍光体であり、かつ、付活元素M1としてEuを含有する場合、橙色ないし赤色蛍光体としての用途に鑑みて、ピーク波長455nmの光で励起した場合における発光スペクトルを測定した場合に、以下の特徴を有することが好ましい。
本発明の蛍光体は、その重量メジアン径D50が、通常3μm以上、中でも5μm以上、また、通常30μm以下、中でも20μm以下の範囲であることが好ましい。重量メジアン径D50が小さすぎると、輝度が低下する場合や、蛍光体粒子が凝集してしまう場合がある。一方、重量メジアン径D50が大きすぎると、塗布ムラやディスペンサー等の閉塞が生じる傾向がある。
なお、本発明における蛍光体の重量メジアン径D50は、例えばレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置等の装置を用いて測定することができる。
本発明の蛍光体は、温度特性(即ち、高温(例えば、150℃)下での発光ピーク強度の維持率)にも優れるものである。具体的には、波長455nmにピークを有する光を照射した場合における25℃での発光スペクトル図中の発光ピーク強度値に対する150℃での発光スペクトル図中の発光ピーク強度値の割合が、通常55%以上であり、好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上である。
また、通常の蛍光体は温度上昇と共に発光ピーク強度が低下するので、該割合が100%を越えることは考えられにくいが、何らかの理由により100%を超えることがあっても良い。ただし150%を超えるようであれば、温度変化により色ずれを起こす傾向となる。
本発明の蛍光体は、その内部量子効率が高いほど好ましい。その値は、通常0.5以上、好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.7以上である。内部量子効率が低いと発光効率が低下する傾向にあり、好ましくない。
本発明の蛍光体は、少なくともSiを含む4価の金属元素M4と、Srを必須とする、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる1種以上の2価の金属元素M2とを含むものであり、さらに好ましくは付活元素M1を含有する。
M1 aM2 bM3 cM4 dNeOf [4]
(但し、a、b、c、d、e、fはそれぞれ下記の範囲の値である。
0.00001≦a≦0.15
a+b=1
0.5≦c≦1.5
0.5≦d≦1.5
2.5≦e≦3.5
0≦f≦0.5 )
1.84≦e≦4.17
となる。しかしながら、前記式[4]で表される蛍光体組成において、窒素の含有量を示すeが2.5未満であると蛍光体の収率が低下する傾向にある。また、eが3.5を超えても蛍光体の収率が低下する傾向にある。従って、eは通常2.5≦e≦3.5である。
M1’ a’Srb’Cac’M2’ d’Ale’Sif’Ng’ [5]
(但し、a’、b’、c’、d’、e’、f’、g’はそれぞれ下記の範囲の値である。
0.00001≦a’≦0.15
0.1≦b’≦0.99999
0≦c’<1
0≦d’<1
a’+b’+c’+d’=1
0.5≦e’≦1.5
0.5≦f’≦1.5
0.8×(2/3+e’+4/3×f’)≦g’≦1.2×(2/3+e’+4/3×f’))
a’+b’+c’+d’=1
を満足する。
酸素の含有量は蛍光体の発光特性低下が容認できる範囲で通常5重量%以下、好ましくは2重量%以下、最も好ましくは1重量%以下である。
本発明の蛍光体の製造方法には特に制限はないが、好ましくは、本発明の蛍光体は、蛍光体原料を焼成する工程を有する、窒化物又は酸窒化物を母体とする蛍光体の製造方法において、焼成工程の後に、さらに、250℃以上650℃以下の温度で焼成する工程(以下、「アニール工程」)を経る本発明の蛍光体の製造方法により製造される。この場合において、出発原料として蛍光体原料用合金を用いることが好ましいが、固相反応方法を経て製造する方法であってもよい。
{原料の秤量}
例えば、化学組成が前記式[4]で表される部分を有する蛍光体を製造する場合、下記式[6]の組成となるように、原料となる金属やその合金(以下、単に「原料金属」と言う場合がある。)を秤量して蛍光体原料用合金を製造することが好ましい。
M1 aM2 bM3 cM4 d [6]
(但し、M1、M2、M3、M4、a、b、c、dはそれぞれ前記式[4]におけると同義である。)
原料の秤量後、当該原料を融解させて合金化して蛍光体原料用合金を製造する(融解工程)。得られる蛍光体原料用合金は、製造される蛍光体を構成する金属元素を2種以上含有するものである。なお、本発明の蛍光体を構成する金属元素を1つの蛍光体原料用合金が全て含有していなくても、後述の一次窒化工程又は二次窒化工程において、2種以上の合金及び/又は金属を併用することにより、本発明の蛍光体を製造することができる。
そこで、本発明では、Siの原料(即ち、Si及び/又はSiを含む合金)を先に融解させて、その後、アルカリ土類金属原料(即ち、アルカリ土類金属及び/又はアルカリ土類金属を含む合金)を融解することが好ましい。これにより、アルカリ土類金属の原料とSiの原料とをともに融解させることが可能である。さらに、このようにSiの原料を融解した後でアルカリ土類金属の原料を融解することにより、得られる蛍光体原料用合金の純度が向上し、それを原料とする蛍光体の特性が著しく向上するという効果も奏される。
アーク融解・電子ビーム融解の場合は、以下の手順で融解を行う。
i)Si金属又はSiを含む合金を電子ビームあるいはアーク放電により融解する。
ii)次いで間接加熱によりアルカリ土類金属を融解し、Siとアルカリ土類金属とを含む合金を得る。
ここで、Siを含む溶湯にアルカリ土類金属が溶け込んだ後、電子ビームあるいはアーク放電により加熱及び/又は攪拌して混合を促進しても良い。
アルカリ土類金属元素を含む合金は酸素との反応性が高いため、大気中ではなく真空あるいは不活性ガス中で融解する必要がある。このような条件では通常、高周波融解法が好ましい。しかしながら、Siは半導体であり、高周波を用いた誘導加熱による融解が困難である。例えば、アルミニウムの20℃における比抵抗率は2.8×10−8Ω・mであるのに対し、半導体用多結晶Siの比抵抗率は105Ω・m以上である。このように比抵抗率が大きいものを直接高周波融解することは困難であるため、一般に導電性のサセプタを用い、熱伝導や放射によりSiに熱移動を行って融解する。
i)Si金属を導電性の坩堝を使用して間接加熱により融解する。
ii)次に、絶縁性の坩堝を使用して、アルカリ土類金属を融解することにより、Siとアルカリ土類金属元素とを含む合金を得る。
i)Si金属と金属M(例えばAl、Ga)を導電性の坩堝を使用して間接加熱により融解し、導電性の合金(母合金)を得る。
ii)次いで、アルカリ土類金属耐性坩堝を使用して、i)の母合金を融解させた後、アルカリ土類金属を高周波により融解させることにより、Siとアルカリ土類金属元素とを含む合金を得る。
なお、Siを含む母合金に、さらにSi金属を加えることもできる。
付活元素M1を均一に分散させるため、また、付活元素M1の添加量は少量であるため、Si金属を融解させた後に付活元素M1の原料金属を融解させることが好ましい。
(1) Siと3価の金属元素M3との母合金を製造する。この際、好ましくはSiと3
価の金属元素M3とは、式[6]におけるSi:M3比で合金化する。
(2) (1)の母合金を融解させた後、Srを融解させる。
(3) その後、Sr以外の2価の金属元素、付活元素M1を融解させる。
また、原料の融解時の雰囲気は蛍光体原料用合金が得られる限り任意であるが、不活性ガス雰囲気が好ましく、中でもアルゴン雰囲気が好ましい。なお、不活性ガスは1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
さらに、原料の融解時の圧力は蛍光体原料用合金が得られる限り任意であるが、1×103Pa以上が好ましく、1×105Pa以下が好ましい。更に、安全性の面から、大気圧以下で行なうことが望ましい。
原料の融解により蛍光体原料用合金が得られる。この蛍光体原料用合金は通常は合金溶湯として得られるが、この合金溶湯から直接蛍光体を製造するには技術的課題が多く存在する。そのため、この合金溶湯を金型に注入して成型する鋳造工程を経て、凝固体(以下適宜、「合金塊」という)を得ることが好ましい。
加熱工程に先立ち、蛍光体原料用合金は、所望の粒径の粉末状にすることが好ましい。そこで、鋳造工程で得られた合金塊は、次いで粉砕することにより(粉砕工程)、所望の粒径、粒度分布を有する蛍光体原料用合金粉末(以下、単に「合金粉末」と称する場合がある。)とすることが好ましい。
この粉砕工程は、必要に応じて、粗粉砕工程、中粉砕工程、微粉砕工程等の複数の工程に分けてもよい。この場合、全粉砕工程を同じ装置を用いて粉砕することもできるが、工程によって使用する装置を変えてもよい。
上述したようにして得られた合金粉末は、例えば、バイブレーティングスクリーン、シフターなどの網目を使用した篩い分け装置;エアセパレータ等の慣性分級装置;サイクロン等の遠心分離機などを使用して、前述の所望の重量メジアン径D50及び粒度分布に調整(分級工程)してから、これ以降の工程に供することが好ましい。
また、QDの値は、特に制限はないが、通常0.59以下である。ここで、QDとは、積算値が25%及び75%の時の粒径値をそれぞれD25、D75と表記し、QD=(D75−D25)/(D75+D25)と定義する。QDの値が小さいことは粒度分布が狭いことを意味する。
上述のようにして得られた蛍光体原料用合金(ここで、蛍光体原料用合金は、粉末状であっても塊状であってもよいが、前述の蛍光体原料用合金粉末であることが好ましい。)、及び/又は後述する窒素含有合金を窒素含有雰囲気中で加熱することにより窒化する。加熱工程では、後述の二次窒化工程を必須とし、必要に応じて下記の一次窒化工程を行う。
本発明の蛍光体を工業的に効率よく製造する観点から、必要に応じて、二次窒化工程の前に一次窒化工程を行なう。この一次窒化工程は、合金粉末(但し、粒状、塊状の合金であってもよい。)を窒化することで、後述する窒素含有合金を製造する工程である。具体的には、窒素含有雰囲気下、所定の温度域で所定の時間、合金粉末を加熱することにより、予備的に窒化を行なう工程である。このような一次窒化工程の導入により、後述する二次窒化工程における合金と窒素との反応性を制御することができ、合金から蛍光体を工業的に生産することが可能となる。
(一次窒化工程後の窒素含有合金の重量−一次窒化工程前の合金粉末の重量)
/一次窒化工程前の合金粉末の重量×100 [7]
後述する二次窒化工程の反応条件、合金粉末の組成等によっても異なるが、上記式[7]で求められる合金粉末の重量増加率が、通常0.5重量%以上、中でも1重量%以上、特に5重量%以上となるように反応条件を調整することが好ましい。また、重量増加率の上限に特に制限はないが、理論上、通常40重量%以下、好ましくは31重量%以下となる。合金粉末の重量増加率を上記の範囲内となるように調整するために、一次窒化工程を2回以上繰り返し行なうこともできる。一次窒化工程を繰り返して行なう場合、その回数に特に制限はないが、製造コストを考えると、通常3回以下、中でも2回以下が好ましい。
なお、生産性の観点から回分方式よりも連続方式で行なうことが好ましい。即ち、一次窒化工程を連続方式で行なう場合、回分方式と比較してより高濃度の窒素を流通させ、より高温、より短時間で加熱することが好ましい。
(装置の形式)
一次窒化工程を連続方式で行なう場合、例えば、ロータリーキルン、トンネル炉、ベルト炉、流動焼成炉等の装置を用いることが可能であり、中でも、ロータリーキルンを用いることが好ましい。
ロータリーキルン方式を用いる場合、窒素含有ガスを流通させた耐火性の円筒形炉心管を回転させながら合金粉末を加熱する。炉心管を傾斜させ、合金粉末を連続供給することにより、連続処理が可能となる。ロータリーキルンを用いると、加熱中に合金粉末を攪拌することができることから、合金粉末同士の融着を抑制し、気固の接触効率を向上させることが可能である。その結果、加熱時間の短縮、かつ、均一な窒化処理を実現することができる。ロータリーキルンとしては、雰囲気ガスが流通可能な構造であるものが好ましく、さらには、合金粉末の滞留時間及び投入速度が制御できるものが好ましい。
なお、縦型炉を用いて、合金粉末を窒素雰囲気中で落下させながら、窒化させても良い。
連続方式で用いる装置において、焼成容器、炉心管等の合金粉末と接触する部品の材質は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、例えば、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、黒鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、モリブデン、タングステン等を用いることができる。使用時の温度がおおよそ1100℃以下の場合は、石英も用いることができる。これらの中でも、炉心管の材質としては、酸化アルミニウム、窒化ホウ素が特に好ましい。なお、前記材質は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
加熱時の雰囲気は、窒素元素を含有することを必須とし、窒素ガスと窒素以外の不活性ガスとを混合したガスを流通させることが好ましく、中でも、窒素と、アルゴン等の希ガス類元素とを混合したガスを流通させることが好ましい。これは、窒素ガスに不活性ガスを混合することで反応速度を制御することができるからである。なお、前記の不活性ガスは、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
連続方式の場合、単位時間あたり所定量の合金粉末が装置内に供給されるようにすることが好ましい。また、供給された合金粉末を所望の程度まで窒化するためには、少なくとも、単位時間あたり理論上必要な量の窒素を装置内に供給する。具体的には、単位時間あたり供給される合金粉末の重量に対し、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、また、上限には特に制限はないが、通常200重量%以下の窒素を含有する窒素含有雰囲気ガスが装置内に供給されることが好ましい。
なお、上記の窒素含有の雰囲気ガスの流通方向は合金粉末の供給方向に対し、向流であっても併流であっても構わないが、通常、向流とする。
加熱温度は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、通常は蛍光体原料用合金の融点より150℃低い温度以上、好ましくは蛍光体原料用合金の融点より100℃低い温度以上、また、通常は蛍光体原料用合金の融点より10℃低い温度以下の温度範囲で加熱するとよい。より具体的な加熱温度としては、合金の組成によっても異なるが、例えば、通常800℃以上、好ましくは900℃以上、また通常2500℃以下、好ましくは1500℃以下である。加熱温度が低すぎると窒化反応の進行が不充分となる傾向にあり、一方、温度が高すぎると炉心管への合金粉末の付着が多くなる傾向がある。なお、ここで加熱温度は、加熱時の炉心管温度を指している。
(装置の形式)
一次窒化工程を回分方式で行なう場合、例えば、管状炉、一般的な雰囲気加熱炉、ロータリーキルン等を用いることができる。具体的操作としては、通常、合金粉末を耐火性の焼成容器(トレイやルツボ等)に充填してから装置内にて加熱を行なう。
合金粉末を充填する焼成容器の形状は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、焼成雰囲気と合金粉末との接触効率が高くなるように、密閉構造でなく、かつ、充填層高が高すぎないものが好ましい。充填層高は、通常30mm以下、好ましくは20mm以下、さらに好ましくは15mm以下、また、通常3mm以上、好ましくは5mm以上である。充填層高が高すぎると窒化反応が均一に進行しないことがあり、一方、充填層高が低すぎると生産性が低下することがあるからである。
加熱時の雰囲気は、窒素雰囲気と不活性ガス雰囲気とを混合した雰囲気であることが好ましく、中でも、窒素と、アルゴン等の希ガス類元素とを混合した雰囲気であることが好ましい。これは、窒素雰囲気に不活性ガス雰囲気を混合することで反応速度を制御することができるからである。なお、前記の不活性ガスは、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
加熱温度は窒素含有合金が得られる限り任意であるが、通常は蛍光体原料用合金の融点より150℃低い温度以上、好ましくは蛍光体原料用合金の融点より100℃低い温度以上、また、通常は蛍光体原料用合金の融点以下、好ましくは蛍光体原料用合金の融点より10℃低い温度以下、より好ましくは蛍光体原料用合金の融点より50℃低い温度以下で加熱するとよい。より具体的な加熱温度としては、合金組成によっても異なるが、例えば、通常800℃以上、好ましくは900℃以上、また、通常2500℃以下、好ましくは1500℃以下である。加熱温度が低すぎると、一次窒化工程が完了するまでに長時間を要する傾向にあり、場合によっては窒化の進行が不完全となることがある。一方、加熱温度が高すぎると、一次窒化工程において窒化反応の制御が困難となり、窒化の進行が不均一となることがある。また、蛍光体原料用合金の融点付近の温度で加熱を行なうと、合金粉末が容器に付着したり、合金粒子が融着したりして窒素との接触効率が低下する傾向にある。なお、ここで加熱温度とは、加熱時の炉内温度を指している。
本明細書において、窒素含有合金とは、上述の一次窒化工程終了後の合金のことを指す。
窒素含有合金は本発明の蛍光体を構成する金属元素を2種以上含有するものである。また、窒素含有合金は、金属元素以外の成分として主として窒素を含有する。窒化の程度を表す指標の一つとして、下記式[8]で求められる全金属元素含有率(重量%)を用いることができる。この全金属元素含有率が小さいほど、窒化が進んでいることを示す。
全金属元素含有率(重量%)
=100−{(一次窒化工程後の窒素含有合金の重量−一次窒化工程前の合金の重量)
/一次窒化工程後の窒素含有合金の重量}×100 [8]
窒素含有合金の窒素含有率(重量%)
= (窒素含有量/窒素含有合金の重量)× 100 [9]
尚、上記式[9]で求められる窒素含有率が10重量%以上、好ましくは12重量%以上である窒素含有合金を蛍光体原料として用いると、後述の二次窒化工程において発熱を抑制する効果が大きく、焼成容器に充填する合金粉末の量を増やしても、高特性の蛍光体を製造できる傾向にあり、特に好ましい。
0.03≦NI/NP≦0.9 [10]
(式[10]において、
NIは、窒素含有合金の窒素含有率(重量%)を表し、
NPは、製造される蛍光体の窒素含有率(重量%)を表す。)
窒素含有合金の酸素含有率(重量%)
= (酸素含有量/窒素含有合金の重量)×100 [11]
一次窒化工程を行なった場合、一次窒化工程終了後、二次窒化工程の前に、一次窒化工程で得られた窒素含有合金からなる合金粉末を一旦冷却してもよい(冷却工程)。
雰囲気中の酸素濃度は、通常5体積%以下、好ましくは4体積%以下、また、通常0.1ppm以上である。酸素濃度が高すぎると、酸化される可能性があるので注意を要する。
このような一次窒化工程を導入すると、後述する二次窒化工程における原料合金と窒素との反応性を制御することができる。その他の条件によっても異なるが、一次窒化工程を行わない場合と比較して、一度に製造できる蛍光体の量を1.5倍以上、好ましくは2倍以上に増やすことができる。
二次窒化工程においては、蛍光体原料に対して窒化処理を施すことにより、アニール前蛍光体を得る。この際、蛍光体原料としては、一次窒化工程を経ていない蛍光体原料用合金(好ましくは、その合金粉末)を用いてもよく、一次窒化工程により得られた窒素含有合金(好ましくは、その合金粉末)を用いてもよく、両者を併用してもよい。ただし、工業的な生産性の観点から、窒素含有合金の合金粉末のみ、又は、蛍光体原料用合金の合金粉末と窒素含有合金の合金粉末との混合物に対して窒化処理を施すことが好ましい。更に、前記混合物に対して窒化処理を施す場合、当該混合物中の窒素含有合金粉末の割合が20重量%以上となるようにすることが好ましい。また、全金属元素含有率が97重量%以下の窒素含有合金であることが好ましく、特に蛍光体原料用合金の一部又は全部が、窒素含有率10重量%以上の窒素含有合金であることが好ましい。窒素含有合金の量ないしは窒素含有合金の窒素含有率が少なすぎると一次窒化工程を行なったことの利点が十分に得られない可能性があるからである。
また、加熱開始前に、焼成装置内に窒素を含むガスを流通して系内を十分にこの窒素含有ガスで置換することが好ましい。必要に応じて、系内を真空排気した後、窒素含有ガスを流通しても良い。
このように蛍光体原料に対して窒化処理することにより、窒化物又は酸窒化物を母体とする本発明のアニール前蛍光体を得ることができる。
しかしながら、蛍光体原料用合金、窒素含有合金等の合金を原料として蛍光体を工業的に生産する場合においては、昇温速度が速いと、窒化時の発熱により合金粉末が溶融し、合金粒子同士が融着し、内部まで窒素ガスが侵入できず、合金粒子の内部まで窒化反応が進行しない場合がある。このため、得られる蛍光体の輝度が低下する傾向にあり、場合によっては発光しない場合もある。
一方で、蛍光体、特に窒化物蛍光体の合成は、高温高圧下で反応を行なうため、通常は高価な反応装置を使用することになる。そのため、一回あたりの蛍光体原料の充填量を増やすことがコスト低減のためには望まれる。
ここで、蛍光体原料用合金の融点より100℃低い温度とは、おおよそ、窒化が開始される温度を意味する。また、該融点より30℃低い温度から該融点までの温度域では、窒化反応が急激に進行するため、昇温速度による窒化反応の進行の制御は困難であることが多い。
なお、前記の融点より100℃低い温度から融点より30℃低い温度までの温度域の温度とは、加熱処理の際の炉内温度、即ち、焼成装置の設定温度をさす。
以上のように蛍光体原料用合金及び/又は窒素含有合金を窒化することにより、本発明のアニール前蛍光体を製造することができる。
{再加熱工程}
二次窒化工程により得られたアニール前蛍光体は、必要に応じて再加熱工程を行ない、再度、加熱処理(再加熱処理)をすることにより粒子成長させても良い。これにより、粒子が成長し、蛍光体が高い発光を得ることが可能となる等、蛍光体の特性が向上する場合がある。
この場合には、例えば、金属化合物の混合物であって、焼成することにより、例えば、前記式[4]、好ましくは前記式[5]、あるいは後述の式[12]で表される組成物を構成しうる原料混合物を、窒素を含有する不活性雰囲気中において1200℃以上2200℃以下の温度範囲で焼成することにより、アニール前蛍光体を製造する。より具体的には、目的組成が得られるように蛍光体原料を秤量し、ボールミル等を用いて十分混合したのち、ルツボに充填し、所定温度、雰囲気下で焼成し、焼成物を粉砕、洗浄することにより、アニール前蛍光体を得ることができる。
また、後述の式[12]で表される蛍光体を製造する場合は、酸化ユーロピウム、窒化ストロンチウム等のアルカリ土類金属元素の窒化物、窒化ケイ素の粉末の混合物を出発原料とするのがよい。
目的組成が得られるように蛍光体原料を秤量して混合する際の混合手法としては、特に限定はされないが、具体的には、例えばハンマーミル、ロールミル、ボールミル、ジェットミル等の乾式粉砕機、又は、乳鉢と乳棒等を用いる粉砕と、例えばリボンブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等の混合機、又は、乳鉢と乳棒を用いる混合とを組み合わせ、前述の原料を粉砕混合する乾式混合法が挙げられる。
原料の混合は、窒化物原料が水分により劣化し無いように、水分管理されたN2グローブボックスでミキサー混合するのが良い。混合を行う作業場の水分は10000ppm以下が良く、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは10ppm以下、更に好ましくは1ppm以下がよい。また、酸素も1%以下、好ましくは10000ppm以下、より好ましくは100ppm以下、更に好ましくは10ppm以下がよい。
得られた混合物を、各原料との反応性の低い材料からなるルツボ又はトレイ等の耐熱容器中に充填する。このような焼成時に用いる耐熱容器の材質としては、例えば、アルミナ、石英、窒化ホウ素、窒化珪素、炭化珪素、マグネシウム、ムライト等のセラミックス、白金、モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ、イリジウム、ロジウム等の金属、あるいは、それらを主成分とする合金、カーボン(グラファイト)などが挙げられる。
このような耐熱容器の例として、好ましくは窒化ホウ素製、窒化珪素製、炭化珪素製、白金製、モリブデン製、タングステン製、タンタル製の耐熱容器が挙げられ、より好ましくは窒化ホウ素製のものである。
また、耐熱容器を炉内に充填する際の充填率(以下適宜、「炉内充填率」と称する)は、炉内の耐熱容器間で熱が不均一にならない程度につめることが好ましい。
さらに、上記焼成において、焼成炉中の耐熱容器の数が多い場合には、例えば、上記の昇温速度を遅めにする等、各耐熱容器への熱の伝わり具合を均等にすることが、ムラなく焼成するためには好ましい。
また、焼成工程においては、良好な結晶を成長させる観点から、反応系にフラックスを共存させてもよい。
なお、焼成工程を一次焼成と二次焼成とに分割し、混合工程により得られた原料混合物をまず一次焼成した後、ボールミル等で再度粉砕してから二次焼成を行ってもよい。
一次焼成の時間は任意であるが、通常1時間以上、好ましくは2時間以上、また、通常100時間以下、好ましくは50時間以下、より好ましくは24時間以下、さらに好ましくは12時間以下である。
なお、フラックスは一次焼成の前に混合してもよいし、二次焼成の前に混合してもよい。また、雰囲気等の焼成条件も一次焼成と二次焼成で変更してもよい。
本発明の蛍光体の製造方法においては、任意の時機において、上述した処理工程及び後述のアニール工程以外の処理を施しても良い。
粉砕工程では、窒化工程中の粒子成長、焼結などにより凝集している蛍光体に機械的な力を加え、粉砕する。例えば、ジェットミルなどの気流による粉砕や、ボールミル、ビーズミル等のメディアによる粉砕などの方法が使用できる。
上記の手法により分散された蛍光体の粉末は、分級工程を行なうことにより所望の粒度分布に調整できる。分級には、例えば、バイブレーティングスクリーン、シフター等の網目を使用した篩い分け装置、エアセパレータ、水簸装置等の慣性分級装置や、サイクロン等の遠心分級機を使用することができる。
洗浄工程では、蛍光体を、中性又は酸性の溶液(以下、「洗浄媒」と称する場合がある。)を用いて洗浄する。なお、洗浄工程を前述の粉砕工程後に行うと、蛍光体の特性が向上する傾向にあり、好ましい。
ここで用いる中性の溶液としては、水を用いることが好ましい。使用可能な水の種類は、特に制限はないが、脱塩水又は蒸留水が好ましい。用いる水の電気伝導度は、通常0.0064mS/m以上、また、通常1mS/m以下、好ましくは0.5mS/m以下である。また、水の温度は、通常、室温(25℃程度)が好ましいが、好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上、また、好ましくは90℃以下、さらに好ましくは80℃以下の温水又は熱水を用いることにより、目的とする蛍光体を得るための洗浄回数を低減することも可能である。
また、洗浄媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で行なってもよい。
撹拌時間は、蛍光体と上述のような洗浄媒とを十分に接触させることができるような時間であれば良く、通常1分以上、また、通常1時間以下である。
また、複数回の洗浄工程を行なう場合、洗浄工程の間に前述の粉砕工程や分級工程を行なっても良い。
即ち、洗浄後の蛍光体を、必要に応じて乾式ボールミル等で解砕ないし粉砕し、篩又は水簸により分級を行なって所望の重量メジアン径に整粒し、その後、当該蛍光体の10重量倍の水中で所定時間、例えば10分間撹拌して分散させた後、1時間静置することにより、水よりも比重の重い蛍光体粒子を自然沈降させる。このときの上澄み液の電気伝導度を測定し、その電気伝導度が、通常50mS/m以下、好ましくは10mS/m以下、より好ましくは5mS/m以下となるまで、必要に応じて上述の洗浄操作を繰り返す。
(1)結晶性の悪い窒化物等が加水分解して、例えばSr(OH)2などの水酸化物となり、水中に溶け出す。温水、あるいは希薄な酸で洗浄すると、これらが効率よく除去され、電気伝導度が低下する。一方で、洗浄媒の酸濃度が高過ぎたり、酸性の溶液にさらす時間が長過ぎたりすると、母体の蛍光体自体が分解する場合がある。
(2)前記の加熱工程において加熱時に使用する窒化ホウ素(BN)製ルツボから混入したホウ素が、水溶性のホウ素窒素−アルカリ土類化合物を形成して蛍光体に混入するが、上記洗浄によりこれが分解され、除去される。
上記洗浄後は、蛍光体を付着水分がなくなるまで乾燥させて、使用に供するとよい。具体的な操作の例を挙げると、洗浄を終了した蛍光体スラリーを遠心分離機等で脱水し、得られた脱水ケーキを乾燥用トレイに充填すればよい。その後、100℃〜200℃の温度範囲で含水量が0.1重量%以下となるまで乾燥する。得られた乾燥ケーキを篩等に通し、軽く解砕し、蛍光体、即ち、アニール前蛍光体を得る。
加熱処理後の蛍光体又はアニール前蛍光体に対して表面処理を施しても良い。表面処理としては、例えば、シリカ、アルミナ、リン酸カルシウム等の微粒子を蛍光体の表面に薄層として付着させる処理が挙げられる。これにより、蛍光体の粉体特性(凝集状態、溶液中での分散性や沈降挙動等)を改善することができる。
アニール工程とは、蛍光体原料を焼成する工程の後に、さらに、前記焼成工程の加熱条件よりも低い温度、好ましくは250℃以上650℃以下の温度で、アニール前蛍光体を焼成する工程をいう。
アニール工程の加熱条件としては、前記表面層が生成する程度に行なえば特に制限はないが、アニール工程を、蛍光体の母体結晶の構造まで変化するような条件で行なうと、かえって、耐湿性が低下する傾向にあるので、以下のように調整することが好ましい。
なお、上記の雰囲気は、流通させても密閉させてもよい。
・酸素含有雰囲気でアニール処理を行う場合、加熱温度(最高到達温度)は低めに設定することが好ましく、通常250℃以上、好ましくは320℃以上、より好ましくは350℃以上、通常550℃以下、好ましくは480℃以下、より好ましくは440℃以下である。
・不活性雰囲気でアニール処理を行う場合、加熱温度(最高到達温度)は高めに設定することが好ましく、通常450℃以上、好ましくは470℃以上、通常650℃以下、好ましくは600℃以下である。
加熱温度(最高到達温度)が高過ぎると、蛍光体の母体結晶の表面に存在する酸素イオンが熱により結晶構造中に拡散することにより、蛍光体の母体結晶の構造まで変化してしまう可能性があり、また低過ぎると前述の表面層を形成し得ない場合がある。
加熱時間が長過ぎると、蛍光体の母体結晶の表面に存在する酸素イオンが熱により結晶構造中に拡散することにより、蛍光体の母体結晶の構造まで変化してしまう可能性があり、また短か過ぎると前述の表面層を形成し得ない場合がある。
アニール工程のより好適な加熱温度(最高到達温度)としては、使用する加熱雰囲気によって異なるため、以下、雰囲気ごとに以下に説明する。
・酸素含有雰囲気でアニール処理を行う場合、加熱温度(最高到達温度)は低めに設定することが好ましく、通常250℃以上、好ましくは280℃以上、通常500℃以下、好ましくは480℃以下、さらに好ましくは450℃以下である。
・不活性雰囲気でアニール処理を行う場合、加熱温度(最高到達温度)は高めに設定することが好ましく、通常300℃以上、好ましくは350℃以上、通常600℃以下、好ましくは500℃以下である。
加熱温度(最高到達温度)が高過ぎると、蛍光体の母体結晶の表面に存在する酸素イオンが熱により結晶構造中に拡散することにより結晶構造が変化するおそれがある。
加熱時間が長過ぎると、蛍光体の母体結晶の表面に存在する酸素イオンが熱により結晶構造中に拡散することにより結晶構造が変化するおそれがある。
前述の本発明の蛍光体の製造方法において、アニール工程に供される蛍光体粒子(以下、適宜「蛍光体」と称することがある。)は、特に限定は無いが、発光特性が優れているが耐湿性が低い蛍光体粒子、酸素の暴露により劣化しやすい蛍光体粒子、イオンの溶出が起こりやすい蛍光体粒子、電気分解により劣化しやすい蛍光体粒子、臭気のある蛍光体粒子等は、本発明の製造方法の適用により、発光装置等に好ましく利用することができるようになるので好適である。
本発明に係る表面層形成処理の対象として好ましい蛍光体としては、窒化物又は酸窒化物を母体とする蛍光体が挙げられる。窒化物又は酸窒化物を母体とする蛍光体の中でも、アルカリ土類金属元素とSiとを含むものが好ましい。このような蛍光体は、表面層を形成しないと不安定なアルカリ土類金属が、Siで構成されるアニオン骨格で保護されずに水分子に攻撃されてアルカリ土類金属の水和物をつくり、結晶構造が破壊されてしまうことがあるからである。
(但し、Jは、Srを必須とする、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の元素である。kは、0.01≦k≦0.3を満たす数である。)
本発明の蛍光体は、液体媒体と混合して用いることもできる。特に、本発明の蛍光体を発光装置等の用途に使用する場合には、これを液体媒体中に分散させた形態で用いることが好ましい。本発明の蛍光体を液体媒体中に分散させたものを、適宜「本発明の蛍光体含有組成物」と呼ぶものとする。
本発明の蛍光体含有組成物に含有させる本発明の蛍光体の種類に制限は無く、上述したものから任意に選択することができる。また、本発明の蛍光体含有組成物に含有させる本
発明の蛍光体は、1種のみであってもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。更に、本発明の蛍光体含有組成物には、本発明の効果を著しく損なわない限り、本発明の蛍光体以外の蛍光体を含有させてもよい。
本発明の蛍光体含有組成物に使用される液体媒体としては、該蛍光体の性能を目的の範囲で損なわない限りにおいて特に限定されない。例えば、所望の使用条件下において液状
の性質を示し、本発明の蛍光体を好適に分散させるとともに、好ましくない反応を生じないものであれば、任意の無機系材料及び/又は有機系材料が使用できる。
(R1R2R3SiO1/2)M(R4R5SiO2/2)D
(R6SiO3/2)T(SiO4/2)Q (i)
また、上記式(i)において、M、D、T及びQは、各々0以上1未満の数であり、且つ、M+D+T+Q=1を満足する数である。
具体的には、下記一般式(ii)及び/又は(iii)で表わされる化合物、及び/又はそ
のオリゴマーを加水分解・重縮合して得られる重縮合物が挙げられる。
(式(ii)中、Qは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンより選択される少なくとも1種の元素を表し、Xは、加水分解性基を表し、Yは、1価の有機基を表し、mは、Qの価数を表す1以上の整数を表し、nは、X基の数を表す1以上の整数を表す。但し、m≧nである。)
(式(iii)中、Qは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンより選択される少なくとも1種の元素を表し、Xは、加水分解性基を表し、Yは、1価の有機基を表し、Y’は、u価の有機基を表し、sは、Qの価数を表す1以上の整数を表し、tは、1以上、s−1以下の整数を表し、uは、2以上の整数を表す。)
シリコーン系材料は、一般に半導体発光素子や素子を配置する基板及びパッケージ等との接着性が弱いことが課題とされるが、密着性が高いシリコーン系材料として、特に、以下の特徴〔1〕〜〔3〕のうち1つ以上を有する縮合型シリコーン系材料が好ましい。
〔2〕後に詳述する方法によって測定した固体Si−核磁気共鳴(NMR)スペクトルにおいて、下記(a)及び/又は(b)のSiに由来するピークを少なくとも1つ有する。
(a)ピークトップの位置がテトラメトキシシランを基準としてケミカルシフト−40ppm以上、0ppm以下の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上、3.0ppm以下であるピーク。
(b)ピークトップの位置がテトラメトキシシランを基準としてケミカルシフト−80ppm以上、−40ppm未満の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上5.0ppm以下であるピーク。
〔3〕シラノール含有率が0.1重量%以上、10重量%以下である。
以下、上記の特徴〔1〕〜〔3〕について説明する。
従来のシリコーン系材料の基本骨格は炭素−炭素及び炭素−酸素結合を基本骨格としたエポキシ樹脂等の有機樹脂であるが、これに対し本発明に好適なシリコーン系材料の基本骨格はガラス(ケイ酸塩ガラス)などと同じ無機質のシロキサン結合である。このシロキサン結合は、下記表1の化学結合の比較表からも明らかなように、シリコーン系材料として優れた以下の特徴がある。
(II)電気的に若干分極している。
(III)鎖状構造の自由度は大きく、フレキシブル性に富む構造が可能であり、シロキサン鎖中心に自由回転可能である。
(IV)酸化度が大きく、これ以上酸化されない。
(V)電気絶縁性に富む。
SiO2のみからなるガラスのケイ素含有率が47重量%であるという理由から、通常4
7重量%以下の範囲である。
シリコーン系材料を白金ルツボ中にて大気中、450℃で1時間、次いで750℃で1時間、950℃で1.5時間保持して焼成し、炭素成分を除去した後、得られた残渣少量に10倍量以上の炭酸ナトリウムを加えてバーナー加熱し溶融させ、これを冷却して脱塩水を加え、更に塩酸にてpHを中性程度に調整しつつケイ素として数ppm程度になるよう定容し、ICP分析を行なう。
本発明に好適なシリコーン系材料の固体Si−NMRスペクトルを測定すると、有機基の炭素原子が直接結合したケイ素原子に由来する前記(a)及び/又は(b)のピーク領域に少なくとも1本、好ましくは複数本のピークが観測される。
一方、(b)に記載のピークの半値幅は、通常5.0ppm以下、好ましくは4.0ppm以下、また、通常0.3ppm以上、好ましくは0.4ppm以上の範囲である。
シリコーン系材料について固体Si−NMRスペクトルを行なう場合、以下の条件で固体Si−NMRスペクトル測定及び波形分離解析を行なう。また、得られた波形データより、シリコーン系材料について、各々のピークの半値幅を求める。また、全ピーク面積に
対するシラノール由来のピーク面積の比率より、全ケイ素原子中のシラノールとなっているケイ素原子の比率(%)を求め、別に分析したケイ素含有率と比較することによりシラノール含有率を求める。
装置:Chemagnetics社 Infinity CMX−400核磁気共鳴
分光装置
29Si共鳴周波数:79.436MHz
プローブ:7.5mmφCP/MAS用プローブ
測定温度:室温
試料回転数:4kHz
測定法:シングルパルス法
1Hデカップリング周波数:50kHz
29Siフリップ角:90゜
29Si90゜パルス幅:5.0μs
繰り返し時間:600s
積算回数:128回
観測幅:30kHz
ブロードニングファクター:20Hz
基準試料:テトラメトキシシラン
フーリエ変換後のスペクトルの各ピークについてローレンツ波形及びガウス波形或いは両者の混合により作成したピーク形状の中心位置、高さ、半値幅を可変パラメータとして、非線形最小二乗法により最適化計算を行なう。
なお、ピークの同定は、AIChE Journal,44(5),p.1141,1998年等を参考にする。
本発明に好適なシリコーン系材料は、シラノール含有率が、通常0.1重量%以上、好ましくは0.3重量%以上、また、通常10重量%以下、好ましくは8重量%以下、更に好ましくは5重量%以下の範囲である。シラノール含有率を低くすることにより、シラノール系材料は経時変化が少なく、長期の性能安定性に優れ、吸湿・透湿性何れも低い優れた性能を有する。但し、シラノールが全く含まれない部材は密着性に劣るため、シラノール含有率に上記のごとく最適な範囲が存在する。
着性を発現することができる。
本発明の蛍光体含有組成物中の蛍光体及び液体媒体の含有率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、液体媒体については、本発明の蛍光体含有組成物全体に対して、通常50重量%以上、好ましくは75重量%以上であり、通常99重量%以下、好ましくは95重量%以下である。また、蛍光体については、本発明の蛍光体含有組成物全体に対して通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上であり、通常50重量%以下、好ましくは25重量%以下である。液体媒体の量が多い場合には特段の問題は起こらないが、半導体発光装置とした場合に所望の色度座標、演色指数、発光効率等を得るには、通常、上記のような配合比率で液体媒体及び蛍光体を用いることが望ましい。一方、液体媒体が少な過ぎると流動性がなく取り扱い難くなる可能性がある。
なお、本発明の蛍光体含有組成物には、本発明の効果を著しく損なわない限り、蛍光体及び液体媒体以外に、その他の成分を含有させてもよい。また、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明の発光装置(以下、適宜「発光装置」という)は、第1の発光体(励起光源)と、当該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを有する発光装置であって、該第2の発光体として本発明の蛍光体の1種以上を、第1の蛍光体として含有するものである。ここで、本発明の蛍光体は、何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(A) 第1の発光体として、420nm以上500nm以下の波長範囲に発光ピークを有するものを用い、第2の発光体の第2の蛍光体として、500nm以上580nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体を用いる。
(B) 第1の発光体として、300nm以上420nm以下の波長範囲に発光ピークを有するものを用い、第2の発光体の第2の蛍光体として、420nm以上470nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体と、500nm以上580nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体とを用いる。
<第1の発光体>
本発明の発光装置における第1の発光体は、後述する第2の発光体を励起する光を発光するものである。
なお、第1の発光体は、1個のみを用いてもよく、2個以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明の発光装置における第2の発光体は、上述した第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する発光体であり、第1の蛍光体として前述の本発明の蛍光体を含有するとともに、その用途等に応じて適宜、後述する第2の蛍光体(赤色蛍光体、青色蛍光体、緑色蛍光体、橙色蛍光体、黄色蛍光体等)を含有する。ここで、本発明の蛍光体としては、「1−1.蛍光体の物性」の項に記載した本発明の蛍光体特有の性質を満足すればよく、発光色については特に制限はない。また、例えば、第2の発光体は、第1及び第2の蛍光体を封止材料中に分散させて構成される。
本発明の発光装置における第2の発光体は、第1の蛍光体として、少なくとも上述の本発明の蛍光体を含有する。本発明の蛍光体は、何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、第1の蛍光体としては、本発明の蛍光体以外にも、本発明の蛍光体と同色の蛍光を発する蛍光体(同色併用蛍光体)を用いてもよい。例えば、本発明の蛍光体が橙色蛍光体である場合、第1の蛍光体として、本発明の蛍光体と共に他種の橙色蛍光体を併用することができる。
本発明の発光装置における第2の発光体は、その用途に応じて、上述の第1の蛍光体以外にも蛍光体(即ち、第2の蛍光体)を1種以上含有していてもよい。この第2の蛍光体は、第1の蛍光体とは発光ピーク波長が異なる蛍光体である。通常、これらの第2の蛍光体は、第2の発光体の発光の色調を調節するために使用されるため、第2の蛍光体としては第1の蛍光体とは異なる色の蛍光を発する蛍光体を使用することが多い。
また、第1の蛍光体が青色蛍光体である場合、第2の蛍光体としては、例えば橙色ないし赤色蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体等の青色蛍光体以外の蛍光体が用いられる。
また、第1の蛍光体が黄色蛍光体である場合、第2の蛍光体としては、例えば橙色ないし赤色蛍光体、青色蛍光体、緑色蛍光体等の黄色蛍光体以外の蛍光体が用いられる。
また、第1の蛍光体が橙色ないし赤色蛍光体である場合、第2の蛍光体としては、例えば青色蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体等の橙色ないし赤色蛍光体以外の蛍光体が用いられる。
第2の蛍光体として橙色ないし赤色蛍光体を使用する場合、当該橙色ないし赤色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、橙色ないし赤色蛍光体の発光ピーク波長は、通常570nm以上、好ましくは580nm以上、より好ましくは585nm以上、また、通常780nm以下、好ましくは700nm以下、より好ましくは680nm以下の波長範囲にあることが好適である。
以上例示した橙色ないし赤色蛍光体は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
第2の蛍光体として緑色蛍光体を使用する場合、当該緑色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、緑色蛍光体の発光ピーク波長は、通常500nm以上、中でも510nm以上、更には515nm以上、また、通常580nm以下、中でも542nm以下、更には535nm以下の範囲であることが好ましい。
第2の蛍光体として青色蛍光体を使用する場合、当該青色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、青色蛍光体の発光ピーク波長は、通常420nm以上、好ましくは430nm以上、より好ましくは440nm以上、また、通常490nm以下、好ましくは480nm以下、より好ましくは470nm以下、更に好ましくは460nm以下の波長範囲にあることが好適である。
長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Ba,Sr,Ca)MgAl10O17:Euで表されるユーロピウム賦活バリウムマグネシウムアルミネート系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)5(PO4)3(Cl,F):Euで表されるユウロピウム賦活ハロリン酸カルシウム系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ立方体形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Ca,Sr,Ba)2B5O9Cl:Euで表されるユウロピウム賦活アルカリ土類クロロボレート系蛍光体、破断面を有する破断粒子から構成され、青緑色領域の発光を行なう(Sr,Ca,Ba)Al2O4:Eu又は(Sr,Ca,Ba)4Al14O25:Euで表されるユウロピウム賦活アルカリ土類アルミネート系蛍光体等が挙げられる。
第2の蛍光体として黄色蛍光体を使用する場合、当該黄色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、黄色蛍光体の発光ピーク波長は、通常530nm以上、好ましくは540nm以上、より好ましくは550nm以上、また、通常620nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは580nm以下の波長範囲にあることが好適である。
酸硫化物系等の蛍光体が挙げられる。
特に、RE3M5O12:Ce(ここで、REは、Y、Tb、Gd、Lu、及びSmからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表し、Mは、Al、Ga、及びScからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表す。)やMa 3Mb 2Mc 3O12:Ce(ここで、Maは2価の金属元素、Mbは3価の金属元素、Mcは4価の金属元素を表す。)等で表されるガーネット構造を有するガーネット系蛍光体、AE2MdO4:Eu(ここで、AEは、Ba、Sr、Ca、Mg、及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表し、Mdは、Si、及び/又はGeを表す。)等で表されるオルソシリケート系蛍光体、これらの系の蛍光体の構成元素の酸素の一部を窒素で置換した酸窒化物系蛍光体、AEAlSiN3:Ce(ここで、AEは、Ba、Sr、Ca、Mg及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表す。)等のCaAlSiN3構造を有する窒化物系蛍光体等のCeで付活した蛍光体等が挙げられる。
上記第2の蛍光体としては、1種類の蛍光体を単独で使用してもよく、2種以上の蛍光体を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、第1の蛍光体と第2の蛍光体との比率も、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。従って、第2の蛍光体の使用量、並びに、第2の蛍光体として用いる蛍光体の組み合わせ及びその比率等は、発光装置の用途等に応じて任意に設定すればよい。
なお、本発明の蛍光体が橙色ないし赤色発光である場合、その組成は、特に制限はないが、(Sr,Ca)AlSi(N,O)3:Eu、及び(Ca,Sr,Ba)2Si5(N,O)8:Euからなる群から選ばれるものであることが好ましい。
本発明の発光装置において、上記第1及び/又は第2の蛍光体は、通常、封止材料である液体媒体に分散させて用いられる。
該液体媒体としては、前述の「3.蛍光体含有組成物」の項で記載したのと同様のものが挙げられる。
なお、これらの添加剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明の発光装置は、上述の第1の発光体及び第2の発光体を備えていれば、そのほかの構成は特に制限されないが、通常は、適当なフレーム上に上述の第1の発光体及び第2の発光体を配置してなる。この際、第1の発光体の発光によって第2の発光体が励起されて(即ち、第1及び第2の蛍光体が励起されて)発光を生じ、且つ、この第1の発光体の発光及び/又は第2の発光体の発光が、外部に取り出されるように配置されることになる。この場合、第1の蛍光体と第2の蛍光体とは必ずしも同一の層中に混合されなくてもよく、例えば、第1の蛍光体を含有する層の上に第2の蛍光体を含有する層が積層する等、蛍光体の発色毎に別々の層に蛍光体を含有するようにしてもよい。
以下、本発明の発光装置について、具体的な実施の形態を挙げて、より詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
本発明の発光装置の用途は特に制限されず、通常の発光装置が用いられる各種の分野に使用することが可能であるが、色再現範囲が広く、且つ、演色性も高いことから、中でも照明装置や画像表示装置の光源として、とりわけ好適に用いられる。
本発明の発光装置を照明装置に適用する場合には、前述のような発光装置を公知の照明装置に適宜組み込んで用いればよい。例えば、図3に示されるような、前述の発光装置(4)を組み込んだ面発光照明装置(11)を挙げることができる。
本発明の発光装置を画像表示装置の光源として用いる場合には、その画像表示装置の具体的構成に制限は無いが、カラーフィルターとともに用いることが好ましい。例えば、画像表示装置として、カラー液晶表示素子を利用したカラー画像表示装置とする場合は、上記発光装置をバックライトとし、液晶を利用した光シャッターと赤、緑、青の画素を有するカラーフィルターとを組み合わせることにより画像表示装置を形成することができる。
後述する各実施例、及び比較例で得られる蛍光体の物性値は、以下の方法で測定、及び算出することができる。
(発光スペクトル、及び色度座標)
発光スペクトルは、室温(25℃)において、励起光源として150Wキセノンランプを、スペクトル測定装置としてマルチチャンネルCCD検出器C7041(浜松フォトニクス社製)を備える蛍光測定装置(日本分光社製)を用いて測定した。
より具体的には、励起光源からの光を焦点距離が10cmである回折格子分光器に通し、波長445nm以上465nm以下の励起光のみを光ファイバーを通じて蛍光体に照射した。励起光の照射により蛍光体から発生した光を焦点距離が25cmである回折格子分光器により分光し、300nm以上800nm以下の波長範囲においてスペクトル測定装置により各波長の発光ピーク強度を測定し、パーソナルコンピュータによる感度補正等の信号処理を経て発光スペクトルを得た。
480〜800nm(励起波長455nmの場合)の波長領域のデータから、JIS Z8701で規定されるXYZ表色系における色度座標xとyを算出した。
発光ピーク強度は、上述の方法で得られた可視領域における発光スペクトルから励起波長域を除いた範囲で、「化成オプトニクス社製黄色蛍光体(Y,Gd,Ce)3Al5O12(タイプP46−Y3)」の発光ピーク強度を100%とした相対値として算出した。なお、このときの励起波長は455nmとした。
相対輝度は、JIS Z8724に準拠して算出したXYZ表色系における刺激値Yから、「化成オプトニクス社製黄色蛍光体(Y,Gd,Ce)3Al5O12(タイプP46−Y3)」の刺激値Yの値を100%とした相対値として算出した。なお、輝度は、励起青色光をカットして測定し、励起波長は455nmとした。
(オートクレーブ試験)
蛍光体の高温高湿度条件での耐久性を試験するため、以下の方法で発光ピーク強度維持率[1]を求めた。
各例で得られた蛍光体について、下記オートクレーブ処理前に、25℃で波長455nm励起における発光ピーク強度(相対発光ピーク強度)I(A)を求めた。
次いで、オートクレーブ(内容積50L)を用いて、この蛍光体(各サンプル1gずつ)をガラス製容器(容積10cc、内径20mm、開口径20mm)に詰めて(加圧充填はしなかった)、フタをせず、温度135℃、0.23MPa(自己発生圧)の水蒸気雰囲気に20時間暴露した後、25℃で波長455nm励起における発光ピーク強度(相対発光ピーク強度)I(B)を求めた。
下記式[1]により、発光ピーク強度維持率[1]を算出した。
I(B)/I(A) [1]
(W(B)/W(A)−1)×100 [3]
蛍光体の高温高湿度条件での耐久性を試験するため、以下の方法で発光ピーク強度維持率[2]を求めた。
各例で得られた蛍光体について、下記エージング処理前に、25℃で波長455nm励起における発光ピーク強度(相対発光ピーク強度)I(0)を求めた。
次いで、この蛍光体を、ガラス製容器(容積10cc、内径20mm、開口径20mm)に詰めて、フタをせず、温度85℃、相対湿度85%に保たれたチャンバー(容積50L)に静置することにより、蛍光体を高温高湿条件下に1000時間暴露した後、25℃で波長455nm励起における発光ピーク強度(相対発光ピーク強度)I(1000)を求めた。
下記式[2]により、発光ピーク強度維持率[2]を算出した。
I(1000)/I(0) [2]
(W(1000)/W(0)−1)×100 [3A]
東洋電波社製SMD LEDパッケージ「TY−SMD1202B」にCREE社製LEDチップ「C460−EZ290」(発光波長461nm)をボンディングした。
信越化学工業社製シリコーン樹脂「SCR−1011」及び硬化剤を100重量部:100重量部の割合で混合し、該混合物100重量部に対し、各例で得られた蛍光体6重量部を添加し、シンキー社製撹拌装置「あわとり練太郎AR−100」で3分間混練して蛍光体含有組成物とした。
この蛍光体含有組成物を上記LEDチップ付きパッケージの最上面まで充填し、70℃で1時間、次いで150℃で5時間加熱することにより硬化させた。
得られた発光装置を、室温(約25℃)において、20mAで駆動し、CIE色度座標xを測定した。
次に、上記発光装置を、温度85℃、湿度85%の高温高湿条件下、20mAで、通電した後(通電時間は、150時間、及び250時間の2通りとした。)、同様にCIE色度座標xを測定した。
そして、上記発光装置の製造直後の色度座標xに対する、高温高湿曝露150時間、250時間経過後の色度座標xの比率(x維持率:%)を算出した。
なお、製造例2の蛍光体を用いた実施例III−1〜III−3、及び比較例III−1、III−2においては、LEDチップとして、「C460−EZ290」の代わりに、昭和電工製LEDチップ「GU35R460T」(発光波長455.1nm〜457.5nm)を使用し、CIE色度座標はxとyの両方を測定し、色度座標xとyの維持率をそれぞれ算出した。
(ICP法)
ICP発光分光分析法(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry;以下、「ICP法」と称する場合がある。)により、ジョバイボン社製ICP化学分析装置「JY 38S」を使用して分析した。
PHI社製Quantum2000を用いて、以下の測定条件で測定を行った。
・X線源:単色化Al−Kα,出力16kV−34W(X線発生面積170μmφ)
・帯電中和:電子銃2μA,イオン銃併用
・分光系:パスエネルギー
187.85eV=ワイドスペクトル
58.7eV=ナロースペクトル[N1s,Na1s,Ca2p,Eu3d]
29.35eV=ナロースペクトル[C1s,O1s,Al2p,Si2p,
Sr3d]
・測定領域:300μmφ
・取り出し角:45°(表面より)
Philips社製XPert MPDを用いて、大気中で以下の条件で測定した。
ステップサイズ[°2Th.] 0.0500
スタートposition[°2Th.] 10.0350
終了pos.[°2Th.] 65
X線出力設定 45kV,40mA
発散スリット(DS)サイズ[°] 1.0000
受光スリット(RS)サイズ[mm] 1.0000
スキャンの種類 CONTINUOUS
スキャンステップ時間[s] 33.0000
ゴニオメータ半径[mm] 200.00
フォーカス−DS間の距離[mm] 91.00
照射幅[mm] 10.00
試料幅[mm] 10.00
スキャン軸 ゴニオ
入射側モノクロメータ なし
ターゲット Cu
CuKα(1.541Å)
(合金粉末の重量メジアン径D50の測定)
気温25℃、湿度70%の環境下において、エチレングリコールに合金粉末サンプルを分散させ、レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所 LA−300)により粒径範囲0.1μm〜600μmにて測定して得られた重量基準粒度分布曲線から求め、積算値が50%のときの粒径値を重量メジアン径D50とした。また、この積算値が25%及び75%の時の粒径値をそれぞれD25、D75とし、QD=(D75−D25)/(D75+D25)でQDを算出した。
測定前に、超音波分散器(株式会社カイジョー製)を用いて周波数を19KHz、超音波の強さを5Wとし、25秒間試料を超音波で分散させた。なお、分散液には、再凝集を防止するため界面活性剤を微量添加した水を用いた。
重量メジアン径の測定においては、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製)を使用した。
(重量変化、及び融点の測定)
合金粉末又は窒素含有合金10mgを用いて、熱重量・示差熱(thermogravimetry-differential thermal analysis:TG−DTA)測定装置(ブルカー・エイエックスエス株式会社製、TG−DTA2000)により、雰囲気ガス(窒素、アルゴン、又は窒素とアルゴンとの混合ガス)100ml/分流通下、昇温速度10℃/分で室温から1500℃まで加熱し、重量変化について測定を行った。
また、アルゴン気流中でのTG−DTA測定において、融解に伴う吸熱を検出し、吸熱ピークが現れる温度を融点とした。なお、融点の測定においては、Au(融点1063℃)及びSi(融点1410℃)を用いて温度校正を行った。
重量増加率は、一次窒化工程前の合金粉末、及び一次窒化工程後の窒素含有合金の重量を測定し、下記式[7]により求めた。
(一次窒化工程後の窒素含有合金の重量−一次窒化工程前の合金粉末の重量)
/一次窒化工程前の合金粉末の重量×100 [7]
全金属元素含有率は、一次窒化工程前の合金粉末、及び一次窒化工程後の窒素含有合金の重量を測定して、下記式[8]により求めた。
全金属元素含有率(重量%)
=100−{(一次窒化工程後の窒素含有合金の重量−一次窒化工程前の合金の重量)
/一次窒化工程後の窒素含有合金の重量}×100
[8]
窒素含有率は、酸素窒素同時分析装置(Leco社製)により、窒素含有合金又は蛍光体の窒素含有量を測定し、窒素含有合金の窒素含有率は下記式[9]により、また、蛍光体の窒素含有率は下記式[9A]により求めることができる。
窒素含有合金の窒素含有率(重量%)
= (窒素含有量/一次窒化工程後の窒素含有合金の重量)×100 [9]
蛍光体の窒素含有率(重量%)
= (窒素含有量/蛍光体の重量)×100 [9A]
酸素含有率は、酸素窒素同時分析装置(Leco社製)により、窒素含有合金又は蛍光体の酸素含有量を測定し、窒素含有合金の酸素含有率は下記式[11]により、また、蛍光体の酸素含有率は下記式[11A]により求めることができる。
窒素含有合金の酸素含有率(重量%)
= (酸素含有量/一次窒化工程後の窒素含有合金の重量)×100 [11A]
蛍光体の酸素含有率(重量%)
= (酸素含有量/蛍光体の重量)×100 [11A]
(合金の製造)
金属元素組成比がAl:Si=1:1(モル比)となるように各原料金属を秤量し、黒鉛ルツボに充填し、高周波誘導式溶融炉を用いてアルゴン雰囲気下で原料金属を溶融した。その後、ルツボから金型へ注湯して凝固させ、金属元素組成比がAl:Si=1:1である合金(母合金)を得た。
板状合金の中心部 Eu:Sr:Ca:Al:Si=0.009:0.782:0.212:1:0.986、
板状合金の端面 Eu:Sr:Ca:Al:Si=0.009:0.756:0.210:1:0.962
であり、分析精度の範囲において実質的に同一組成であった。従って、Euを始め、各々の元素が均一に分布していると考えられた。
得られた合金を、アルミナ乳鉢を用いて窒素雰囲気中でその粒径が約1mm以下になるまで粉砕した。得られた合金粉末を超音速ジェット粉砕機(日本ニューマチック工業株式会社、PJM−80SP)を用いて、窒素雰囲気中(酸素濃度2体積%)、粉砕圧力0.15MPa、原料供給速度0.8kg/時でさらに粉砕した。
また、得られた合金粉末について、アルゴン気流中で融点測定を行ったところ、融解開始温度は1078℃付近であり、融点は1121℃であった。
雰囲気ロータリーキルン内の雰囲気全体をアルゴンに置換し、直径90mm、全長1500mmであるアルミナ製炉心管を傾斜角θがtanθ=0.033となる角度に設定した。雰囲気ロータリーキルン全体を真空引きした後、窒素(2.5L/分)とアルゴン(2.5L/分)の混合ガスを導入することにより、ガス置換を行った。雰囲気ロータリーキルン全体に上記混合ガスを流通させながら、さらに、炉心管内に、傾斜した炉心管の下部から、窒素(2.5L/分)、アルゴン(2.5L/分)、及び水素(0.2L/分)の混合ガスを供給した。炉心管を5rpmで回転させながら、スクリューフィーダーを用いて合金粉末を300g/時で供給した。ヒーター温度は1100℃とした。この時、合金粉末の均熱帯滞留時間(フィード開始から排出開始までの時間×均熱帯長さ/炉心管全長)は約3分間であった。炉心管から出てきた一次窒化工程終了後の窒素含有合金を、雰囲気がアルゴンに置換された容器に回収し、急冷した。
また、一次窒化工程終了後の合金粉末の粉末X線回折パターンを測定したところ、SrSi(PDF No.16−0008)、SrSi2(PDF No.19−1285)等の金属間化合物が検出された。続いて、得られた窒素含有合金を前述の粉砕工程と同様に粉砕した。得られた合金粉末の重量メジアン径D50は11.4μmであり、45μm以上の合金粒子の割合は1%以下、100μm以上の合金粒子の割合は0.1%未満、5μm以下の合金粒子の割合は12%、QDは0.36であった。
一次窒化工程で得られた窒素含有合金を、内径54mmの窒化ホウ素製ルツボに充填し、これを熱間等方加圧装置(HIP)内にセットした。前記装置内を5×10−1Paまで真空排気した後、300℃に加熱し、300℃で真空排気を1時間継続した。その後、窒素を1MPaまで充填して、室温付近まで冷却した。その後、0.1MPaまで放圧し、再び1MPaまで窒素を充填する操作を二回繰り返し、加熱開始前に約0.1MPaに調圧した。次いで、炉内温度が950℃になるまで昇温速度600℃/時で加熱した。この時、内圧は、約0.5MPaまで上昇した。炉内温度が950℃から1100℃になるまで、昇温速度66.7℃/時で加熱し、1100℃で30分間保持した。その後、温度を1100℃に保ったまま、窒素圧力を約3時間かけて140MPaまで昇圧し、さらに、その後、約1時間かけて炉内温度が1900℃に、炉内圧力が190MPaになるまで昇温及び昇圧し、この状態で2時間保持した。続いて、3時間かけて400℃以下になるまで冷却して放冷した。12時間後、室温付近まで冷却した蛍光体を得た。なお、上記で記載の温度は炉内温度であり、即ち、焼成装置(本例においては、HIP)において設定することができる温度である。
得られた蛍光体を、ボールミルを用いて粉砕した後、0.5M塩酸を用いて洗浄後、濾過により分離し、蛍光体の重量の10倍の重量のイオン交換水に分散させ、分離する操作を10回繰り返すことにより、水洗した。次いで、分級を行い、重量メジアン径D50が9μmの蛍光体粒子を得た。その後、水分を除去して真空乾燥機を用いて50℃で乾燥後、さらに150℃で大気中で乾燥し、ポリエチレン容器で密閉し、保管した。
製造例1で得られた蛍光体(アニール工程は行なわなかった)について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表2A、及び表2Bに示す。
また、得られた蛍光体について上述のICP法により、化学組成(バルク組成)を分析した。その結果を表3に示す。さらに、上述のXPS法により、表面組成についても分析した。その結果を表3に示す。
製造例1で得られた蛍光体を石英容器に充填し、大気中、昇温速度5℃/分で昇温し、400℃(最高到達温度)で、12時間加熱処理し、室温になるまで放冷した(アニール工程)。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表2A、及び表2Bに示す。
また、得られた蛍光体について上述のICP法により、化学組成(バルク組成)を分析した。その結果を表3に示す。さらに、上述のXPS法により、表面組成についても分析した。その結果を表3に示す。
製造例1で得られた蛍光体にアニール工程に先立ち、蛍光体を10倍量(重量比)の水に分散し、Na3PO4水溶液、次いでCa(NO3)2水溶液を添加して、30分間撹拌後、蛍光体を分離し、水洗することによりリン酸カルシウム(0.2重量%)被覆処理を行ったこと以外は、実施例I−1と同様の条件でアニール工程を行なった。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表2A、及び表2Bに示す。
表2A、及び表2Bにおいて、実施例I−1と比較例I−1の結果を比較すると、アニール工程を行なうことにより、オートクレーブ試験後の発光強度維持率[1]が1に近くなり、蛍光体の耐久性が向上していることがわかる。また、実施例I−1と実施例I−2の結果を比較すると、リン酸カルシウム被覆処理の有無は、アニール工程による耐久性向上への影響は小さいことがわかる。
実施例I−1の蛍光体と比較例I−1の蛍光体(いずれも重量メジアン径D50は、9μm)のバルク組成(ICP分析及び窒素酸素分析計による)は同一であった。しかし、XPS法による表面組成の分析結果は異なっていることがわかる(なお、ここで言う表面組成とは、蛍光体粒子の表面から深さ3nm〜5nmの表面層を指し、実施例I−1では、アニール工程を行なうことで形成された表面層を、比較例I−1では、自然酸化膜を指す)。
例えば、比較例I−1の蛍光体が有する自然酸化膜と、実施例I−1の蛍光体が有する表面層の表面組成を比較すると、アニール処理によって、蛍光体表面のO/Al(Alに対するOのモル比を意味する。以下、同様。)、Sr/Al、及びCa/Alが増大し、一方、N/Alが低下していることがわかる。
また、比較例I−1の蛍光体が有する自然酸化膜に対して、実施例I−1の蛍光体が有する表面層は、O/Nが著しく大きく、また、Ca/Oに大きな差異はないが、Sr/Oは多くなっている。
図4(a)と図4(b)とを比較すると、比較例I−1ではオートクレーブ試験後に蛍光体粒子表面に蛍光体表面の加水分解によって生じたと推察される亀裂が生じているのに対し、実施例I−2ではそのような亀裂が全く認められない。
図6より、エージング試験とオートクレーブ試験では、回折強度が同程度まで低下していることがわかる。
図7より、アニール処理により、XPSスペクトルの形状が変化していることから、表面のSr濃度のみならず、Srの結合状態が変化していることがわかる。このスペクトル形状の変化から、蛍光体の表面層においては、自然酸化膜と比較して、例えば、複合酸化物として存在しているSrの割合が増大している可能性が示唆される。
アニール工程における加熱処理の温度(最高到達温度)を、それぞれ300℃(実施例I−3)、250℃(実施例I−4)、及び430℃(実施例I−5)としたこと以外は実施例I−1と同様の条件でアニール工程を行なった。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表2A、及び表2Bに示す。
実施例I−1、及び実施例I−3〜I−5の結果から、酸素含有雰囲気におけるアニール工程の最適な温度条件は350℃〜500℃であることがわかる。
アニール工程における最高到達温度を525℃、処理時間を3時間としたこと以外は実施例I−1と同様の条件でアニール工程を行なった。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表2A、及び表2Bに示す。
実施例I−6の結果から、アニール工程の加熱処理時間を短縮しても耐久性向上効果が得られることがわかる。
製造例1で得られた蛍光体を石英容器に充填し、窒素雰囲気(酸素濃度0.1ppm以下、水分濃度0.1ppm以下)中、昇温速度5℃/分で昇温し、400℃(最高到達温度)で、2時間加熱処理し、室温になるまで放冷した(アニール工程)。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表2A、及び表2Bに示す。
本実施例においても耐久性向上効果が認められることから、アニール工程における加熱雰囲気としては、大気に限定されず、窒素を用いてもよいことがわかる。
アニール工程における加熱処理の最高到達温度をそれぞれ500℃(実施例I−8)、550℃(実施例I−9)としたこと以外は実施例I−7と同様の条件でアニール工程を実施した。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表2A、及び表2Bに示す。
実施例I−7〜I−9の結果から、アニール工程において窒素雰囲気を用いる場合、加熱処理の最適温度は、大気中でアニール工程を行なう場合と比較して高めに設定した方が好ましく、具体的には450℃〜550℃が好ましいことがわかる。また、耐湿性の観点からは、アニール工程の雰囲気として、窒素雰囲気よりも大気中の方が好ましいことがわかる。
実施例I−2で得られた蛍光体を、10倍量の希塩酸(0.5M)に分散し、1時間、室温で攪拌した後、濾過、水洗を行った。次いで、100℃で2時間、真空乾燥を行って蛍光体を得た。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表2A、及び表2Bに示す。
参考例1と実施例I−2を比較すると、実施例I−2で得られた耐湿性向上効果が完全に消失していることから、実施例I−2で得られた蛍光体の表面層は0.5Mの希塩酸で除去されたことがわかる。
実施例I−2の蛍光体を重量比で10倍量のイオン交換水に分散し、攪拌しながら60℃で1時間保持した。その後、濾過、水洗を行った。次いで、100℃で2時間真空乾燥を行って蛍光体を得た。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表2A、及び表2Bに示す。
参考例2では実施例I−2で得られた耐湿性向上効果がそのまま保持されていることから、実施例I−2で得られた蛍光体の表面層は温水では除去されないことがわかる。
アニール工程における加熱処理の最高到達温度を300℃としたこと以外は実施例I−7と同様にして蛍光体を得た。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表2A、及び表2Bに示した。
アニール工程を、酸素を含有しない雰囲気(例えば、窒素雰囲気)で行なう際は、300℃よりも高い温度の方が、耐久性向上効果に優れることがわかる。
製造例1において、後処理工程における、酸洗浄後の水洗回数を10回から5回に変更したこと以外は製造例1と同様の条件で蛍光体を製造した。
得られた蛍光体10gに、フッ化アンモニウム0.5gを水5mlに溶解したものを添加し、混合した。その後、100℃で乾燥して得た粉末を石英容器に充填し、大気中、昇温速度5℃/分で昇温し、400℃(最高到達温度)で、12時間加熱処理し、室温になるまで放冷した(アニール工程)。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表2A、及び表2Bに示した。
本実施例では、加熱中にフッ化アンモニウムが分解してフッ素が生じ、フッ素含有雰囲気となっているものと考えられる。フッ素含有雰囲気中でアニール工程を実施する場合においても、耐久性が向上することがわかる。
製造例1において、後処理工程における、0.5Mの塩酸を用いた酸洗浄の時間を3倍にしたこと以外は、製造例1と同様の条件で蛍光体を製造した。
得られた蛍光体について、石英容器に代えてアルミナ容器とし、該アルミナ容器への充填量を40倍にしたこと以外は、実施例I−1と同様の条件でアニール工程を行なった。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表2Aに示す。また、前述のXPS法により、表面組成について分析した結果を表3に示す。
なお、本実施例の蛍光体は、重量増加率の点において、前述の実施例I−1で得られた蛍光体よりも優れたものである。
製造例1の(後処理工程)において、0.5M塩酸による洗浄、及び水洗を全く行わなかったこと以外は製造例1と同様の条件で蛍光体を製造した。得られた蛍光体について、実施例I−1と同様の条件でアニール工程を行った。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表2A、及び表2Bに示した。
製造例1で得られるような、前記式[4]で表される化学組成を有する蛍光体については、洗浄を行った方が、格段に耐久性が向上することがわかる。
製造例1の(後処理工程)において、0.5M塩酸による洗浄後の水洗回数を10回から5回に変更したこと以外は製造例1と同様の条件で蛍光体を製造した。得られた蛍光体について、実施例I−1と同様の条件でアニール工程を行った。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表2A、及び表2Bに示した。
実施例I−1と本実施例とを比較すると、製造例1で得られるような、前記式[4]で表される化学組成を有する蛍光体については、アニール前蛍光体の洗浄を十分に行うと、耐久性が格段に向上することがわかる。
また、たとえ、(後処理工程)における洗浄が不充分であっても、実施例I−11にあるように、フッ素含有雰囲気下でアニールを行なえば、耐久性向上効果が得られることがわかる。
実施例I−11において、大気中400℃でのアニール工程を行わなかったこと以外は実施例I−11と同様の条件で蛍光体を得た。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表2Aに示した。
実施例I−11と本参考例とから、フッ素含有化合物と混合しても、アニール工程を経なければ耐久性が向上しないことがわかる。
実施例I−11において、耐久性が向上した理由は次のように推測される。フッ化アンモニウム(NH4F)が分解して生じたHFガスと、蛍光体表面との高温での反応により、蛍光体表面に、フッ化ケイ素類アニオン(例えば、SiF6 2−などの難溶アルカリ土類塩)が形成されている可能性がある。フッ化アルミニウム類アニオンに関しても同様に難溶性の塩が形成されている可能性もある。あるいは、高温反応により、蛍光体表面に、カルシウム、ストロンチウムなどのアルカリ土類金属のフッ化物による被覆が生じている可能性もある。
得られる蛍光体の組成比率がEu:Sr:Si:N=0.02:1.98:5:8(モル比)となるように、Sr金属より得られたSr2NとSi3N4とEu2O3を、窒素雰囲気で満たされたグローブボックス内で秤量し、アルミナ乳鉢上で均一になるまで混合を行った。得られた蛍光体原料混合物を窒化ホウ素製坩堝に充填した。これを0.92MPaの窒素ガス雰囲気中で1600℃まで加熱し、その温度で2時間保持後、1800℃まで加熱しその温度で2時間保持した後、放冷した。得られた焼成物をアルミナ乳鉢上で粉砕後、篩い分けすることにより粒径50μm以下の粒子を得た。
製造例2で得られた蛍光体(アニール工程は行わなかった)について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表4A、及び表4Bに示した。
製造例2で得られた蛍光体をアルミナ容器に充填し、大気中、昇温速度5℃/分で昇温し、200℃(最高到達温度)で、2時間加熱処理し、室温になるまで放冷した(アニール工程)。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表4A、及び表4Bに示した。
アニール工程における加熱処理の温度(最高到達温度)を、300℃としたこと以外は比較例III−2と同様の条件でアニール工程を行なった。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表4A、及び表4Bに示した。
アニール工程における加熱処理の温度(最高到達温度)を、400℃としたこと以外は比較例III−2と同様の条件でアニール工程を行なった。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表4A、及び表4Bに示した。
アニール工程における加熱処理の温度(最高到達温度)を、400℃とし、焼成雰囲気を窒素雰囲気(酸素濃度0.1ppm以下、水分濃度1.2ppm以下)としたこと以外は比較例III−2と同様の条件でアニール工程を行なった。
得られた蛍光体について、前述の方法によりその特性を評価し、その結果を表4A、及び表4Bに示した。
2 励起光源(第1の発光体)(LD)
3 基板
4 発光装置
5 マウントリード
6 インナーリード
7 励起光源(第1の発光体)
8 蛍光体含有樹脂部
9 導電性ワイヤ
10 モールド部材
11 面発光照明装置
12 保持ケース
13 発光装置
14 拡散板
22 励起光源(第1の発光体)(LED)
23 蛍光体含有部(第2の発光体)
24 フレーム
25 導電性ワイヤ
26 電極
27 電極
Claims (20)
- Siと、2価の金属元素としてSrとを必須とし、かつ、Siに対する、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる2価の金属元素の組成比(モル比)が、0.56以上である窒化物又は酸窒化物を母体とする蛍光体であって、
該蛍光体の発光ピーク強度維持率が下記式[1]及び/又は[2]を満足することを特徴とする蛍光体。
I(B)/I(A)≧ 0.93 [1]
(前記式[1]において、
I(A)は、25℃において、該蛍光体を波長395nm又は455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度であり、
I(B)は、該蛍光体を、135℃、0.23MPa加圧、水蒸気雰囲気下に20時間静置した後、25℃において、該蛍光体を波長395nm又は455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度である。)
I(1000)/I(0) ≧ 0.94 [2]
(前記式[2]において、
I(0)は、25℃において、該蛍光体を波長395nm又は455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度であり、
I(1000)は、該蛍光体を、温度85℃、湿度85%の環境下に1000時間静置した後、25℃において、該蛍光体を波長395nm又は455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度である。) - 化学組成が下記式[4]で表されることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
M1 aM2 bM3 cM4 dNeOf [4]
(但し、M1は、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
M2は、Srを必須とする、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
M3は、Al、Ga、In、及びScよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
M4は、Siを必須とする、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、及びHfよりなる群から選ばれる1種以上の元素である。
a、b、c、d、e、fはそれぞれ下記の範囲の値である。
0.00001≦a≦0.15
a+b=1
0.5≦c≦1.5
0.5≦d≦1.5
2.5≦e≦3.5
0≦f≦0.5 ) - Siと、2価の金属元素としてSrとを必須とし、かつ、Siに対する、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる2価の金属元素の組成比(モル比)が、0.56以上である窒化物又は酸窒化物を母体とする蛍光体であって、
下記式[3]で表される重量増加率が11%以下であることを特徴とする蛍光体。
(W(B)/W(A)−1)×100 [3]
(前記式[3]において、
W(A)は、該蛍光体の重量であり、
W(B)は、該蛍光体を、135℃、0.23MPa加圧、水蒸気雰囲気下に20時間静置した後の該蛍光体の重量である。) - 化学組成が下記式[4]で表されることを特徴とする請求項3に記載の蛍光体。
M1 aM2 bM3 cM4 dNeOf [4]
(但し、M1は、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
M2は、Srを必須とする、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
M3は、Al、Ga、In、及びScよりなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
M4は、Siを必須とする、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、及びHfよりなる群から選ばれる1種以上の元素である。
a、b、c、d、e、fはそれぞれ下記の範囲の値である。
0.00001≦a≦0.15
a+b=1
0.5≦c≦1.5
0.5≦d≦1.5
2.5≦e≦3.5
0≦f≦0.5 ) - 該蛍光体が、該蛍光体の表面に、該蛍光体の母体結晶とは異なる化学組成を含む層(以下、「表面層」と称する。)を有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の蛍光体。
- 前記表面層が、該蛍光体の母体結晶に由来することを特徴とする請求項5に記載の蛍光体。
- 該蛍光体が、Srを必須とする、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる1種以上の元素、Si、Al、O(酸素)、及びN(窒素)を含有し、
該蛍光体の表面層において、Alに対する窒素元素のモル比が0.37以下であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の蛍光体。 - 前記表面層において、アルカリ土類金属元素の少なくとも一部が複合酸化物として存在することを特徴とする請求項5ないし請求項7のいずれか1項に記載の蛍光体。
- 該蛍光体を、該蛍光体の重量比で10倍量の塩酸(濃度 0.5M)に1時間分散させたとき、前記表面層が脱離又は溶解することを特徴とする請求項5ないし請求項8のいずれか1項に記載の蛍光体。
- 蛍光体原料を焼成する工程を有する、窒化物又は酸窒化物を母体とする蛍光体の製造方法であって、
該焼成工程の後に、さらに、アニール前蛍光体を250℃以上650℃以下の温度で焼成する工程(以下、「アニール工程」)を有することを特徴とする蛍光体の製造方法。 - 前記蛍光体が少なくともSrとSiとを含有することを特徴とする請求項10に記載の蛍光体の製造方法。
- 前記アニール工程の焼成温度が320℃以上480℃以下の温度範囲であることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の蛍光体の製造方法。
- 前記蛍光体が、N(窒素)を必須とし、かつ、O(酸素)とN(窒素)との合計に対するN(窒素)の割合(モル比)が0.6以上であることを特徴とする請求項10ないし請求項12のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
- 前記蛍光体が、Siと、2価の金属元素としてSrとを必須とし、かつ、Siに対する、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnよりなる群から選ばれる2価の金属元素の組成比(モル比)が、0.56以上であることを特徴とする請求項11ないし請求項13のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
- 前記アニール工程の前に、アニール前蛍光体を洗浄する工程を有することを特徴とする請求項10ないし請求項14のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
- 前記アニール工程を、酸素濃度0.1ppm以上の雰囲気下で行なうことを特徴とする請求項10ないし請求項15のいずれか1項に記載の蛍光体の製造方法。
- 請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の蛍光体と、液体媒体とを含有することを特徴とする蛍光体含有組成物。
- 第1の発光体と、該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを備え、
該第2の発光体が、請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の蛍光体の1種以上を、第1の蛍光体として含有することを特徴とする発光装置。 - 請求項18に記載の発光装置を光源として備えることを特徴とする画像表示装置。
- 請求項18に記載の発光装置を光源として備えることを特徴とする照明装置。
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