JP2009113482A - 多層フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】成形加工された多層フィルムに中身を充填し、蓋材によりシールされる包装体に使用される多層フィルムにおいて、透明性や成形性を損なうことなく、カール性に優れた多層フィルムを提供すること。
【解決手段】少なくとも外層1、中間層2及びシール層3を有する多層フィルムであって、該多層フィルムの140〜160℃における貯蔵弾性率の最大値(A)が、該多層フィルムの110〜130℃における貯蔵弾性率の最小値(B)より大きいことを特徴とする多層フィルム。
【選択図】図1

Description

本発明は、多層フィルム及びそれを用いた包装体に関する。
食品や医薬品等の包装においては、様々な要求性能を満足するために複合化された多層フィルムが多く用いられている。例えば、多層フィルムを真空成形あるいは圧空成形により内容物に適した形に成形したもの(以下、底材と記載する。)と未成形フィルム(以下、蓋材と記載する。)とからなる包装体の場合、底材側には成形性に優れる未延伸フィルムを多層化したものが使用されることが多い。一方、蓋材側には一般に印刷が施されるため、少なくとも1層に印刷適性に優れる延伸フィルムを含む多層フィルムが広く用いられている。内容物が重量物等である包装体の中には、JISの分類ではシートの区分に属する厚み範囲のものもある。
これら包装体に用いられるフィルムへの要求性能としては、ガスバリアー性や耐ピンホール性等が挙げられる。前者は、内容物が酸素ガスにより変質することを防ぐために必要であり、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(以下、EVOH樹脂と記載する。)及びジアミン単位の90モル%以上がメタキシリレンジアミン単位であるポリアミド樹脂(ポリメタキシレンアジパミド、MXD−6ナイロン)等が好適に用いられる。一方、後者は、流通過程において振動や落下等で製品に与えられる外部応力によってピンホールが発生することを防ぐために必要であり、各種延伸フィルムやポリアミド樹脂を含む多層フィルムが好適に用いられる。(例えば、特許文献1参照。)
これら内容物保護に関する機能以外にも、内容物に対する認識、区別を可能にする透明性、使用時に簡便に開封出来るイージーピール性および包装体の見栄えが良いこと等、内容物に適した性能が要求されるが、包装コストが安いこと、および包装体の生産性が高いことも重要である。そのため、近年、生産速度を上げたり、従来製造されていたよりも広い幅で包装体を製造することで、単位時間当たりの生産数を増やした方法で包装体が製造される場合が増加している。また、廃棄物の削減や包装コストを下げるために包装資材の減容化、すなわち、蓋材および底材の薄肉化が進んでいる。
また、包装体に要求される性能の1つにカール性がある。ここで言うカール性とは、底材と蓋材をシールしたときに包装体のフランジ部に発生するカールがどれだけ少ないかを表すものである。カール性が悪い、すなわち、包装体のフランジ部に発生するカールが大きいと、商品の見栄えが悪くなるだけではなく、製造時のベルトコンベアーでの搬送時に不良が生じたり、包装体を複数個整列させ、その整列した包装体に印刷されたラベルを貼り付ける必要がある際に、ラベルが斜めに貼り付けられ、貼り直しの工数が発生する等の問題が生じ、単位時間当たりの生産数を下げてしまうことがあった。
このカールの原因としては、底材と蓋材の熱膨張係数や収縮挙動等が異なること、底材と蓋材にかかっている張力が異なることに起因する場合が多いが、底材や蓋材の弾性率が低い場合にカールが発生することもある。後者は、単位時間当たりの生産数を増やした方法で包装体が製造される場合、すなわち高速で広幅の生産機(以下、高速・広幅ラインと記載する。)を使用して包装体を生産する場合において発生しやすい。底材や蓋材の弾性率が低い場合に発生するカールを抑制するために、底材に用いる多層フィルムの腰の強さや多層フィルムのある1つの層の弾性率を規定し、カール改善を果たそうとする試みが行われている。(例えば、特許文献2及び3参照。)
特許第2073396号公報 特開2007−98579号公報 特開2007−136914号公報
本発明の目的は、成形加工された多層フィルムに中身を充填する底材と、前記底材に対して熱シールされる蓋材とを有する包装体において、前記底材及び蓋材のいずれにも使用することができる多層フィルムであって透明性や成形性を損なうことなく、カール性に優れた多層フィルムを提供することにある。
更に、本発明の多層フィルムからなるカール性に優れた包装体を提供することにある。
このような目的は、下記(1)〜(8)に記載の本発明により達成される。即ち本発明は、
(1)少なくとも外層、中間層及びシール層を有する多層フィルムであって、該多層フィルムの140〜160℃における貯蔵弾性率の最大値(A)が、該多層フィルムの110〜130℃における貯蔵弾性率の最小値(B)より大きいことを特徴とする多層フィルム、
(2)前記貯蔵弾性率の最大値(A)と前記貯蔵弾性率の最小値(B)の差((A)−(
B))が、10MPa以上である(1)項に記載の多層フィルム、
(3)前記外層が結晶性ポリエステル系樹脂である(1)項に記載の多層フィルム、
(4)前記結晶性ポリエステル系樹脂の降温過程における結晶化温度が185℃以下である(3)項に記載の多層フィルム、
(5)前記結晶性ポリエステル系樹脂が、酸成分としてテレフタル酸あるいはテレフタル酸ジメチルを用い、グリコール成分としてエチレングリコール及びシクロヘキサンジメタノールを用いて得られる飽和ポリエステル樹脂であり、前記グリコール成分におけるシクロヘキサンジメタノールの含有量が3〜10モル%であることを特徴とする(4)項に記載の多層フィルム、
(6)前記中間層が、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂からなる群の少なくとも一種の樹脂を含む(1)項に記載の多層フィルム、
(7)前記シール層がイージーピール機能を有する樹脂からなる(1)項に記載の多層フ
ィルム、
(8)蓋材(H)と底材(S)とをヒートシールしてなる包装体であって、前記蓋材(H)または底材(S)の少なくとも一方が(1)〜(7)項のいずれかに記載された多層フィルムを含むものである包装体。

である。
本発明によれば、透明性や成形性を損なうことなく、底材と蓋材をシールした包装体のフランジ部に発生するカールを抑制できる多層フィルムを提供することが可能となる。また、カールの抑制効果が高いため、底材に用いる多層フィルムの厚みを薄くすることが可能となる。
以下、本発明の多層フィルムについて詳細に説明する。
本発明の多層フィルムは、少なくとも外層、中間層及びシール層を有する多層フィルムであって、該多層フィルムの140〜160℃における貯蔵弾性率の最大値(A)が、該多層フィルムの110〜130℃における貯蔵弾性率の最小値(B)より大きいことを特徴とする多層フィルムである。
まず、多層フィルムについて好適な実施形態に基づいて説明する。
例えば、図1に示すように、多層フィルム70は、少なくとも外層1と、中間層2と、シール層3とがこの順で積層されてなる。
以下、各層について説明する。
(外層)
外層1は、包装体の見栄えや手にしたときの質感が優れるといった機能を有している。
また、底材と蓋材をシールした際にフランジ部に発生するカールを抑制する機能も有している。外層1に好適に用いられる樹脂はポリエステル系樹脂である。これにより、ポリエステル系樹脂は剛性が高いことに加え、フィルムにした際の透明性や表面光沢度が良いことから、包装体の見栄えや質感を優れたものにすることができる。
前記ポリエステル系樹脂は、酸成分としてテレフタル酸等の2価の酸またはエステル形成能を持つそれらの誘導体を用い、グリコール成分として炭素数2〜10のグリコール、その他の2価のアルコールまたはエステル形成能を有するそれらの誘導体等を用いて得られる飽和ポリエステル樹脂をいう。前記ポリエステル系樹脂として、具体的にはポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリヘキサメチレンテレフタレート樹脂等のポリアルキレンテレフタレート樹脂が挙げられる。これにより、特に包装体の見栄えや質感を向上することができる。
前記ポリエステル系樹脂は、多層フィルムにした際の140〜160℃における貯蔵弾性率の最大値(A)が、該多層フィルムの110〜130℃における貯蔵弾性率の最小値(B)より大きくなる範囲であれば、他の成分を共重合しても良い。共重合成分の量は、多層フィルムにした際の前記貯蔵弾性率の最大値(A)と前記貯蔵弾性率の最小値(B)の差((A)−(B))が、10MPa以上となるように制限するほうが、包装体のカール抑制効果が高くなるため好ましい。前記共重合する成分としては、公知の酸成分、アルコール成分、フェノール成分またはエステル形成能を持つこれらの誘導体、ポリアルキレングリコール成分等が挙げられる。
前記共重合可能な酸成分としては、例えば2価以上の炭素数8〜22の芳香族カルボン酸、2価以上の炭素数4〜12の脂肪族カルボン酸、さらには、2価以上の炭素数8〜15の脂環式カルボン酸、及びエステル形成能を有するこれらの誘導体が挙げられる。前記共重合可能な酸成分の具体例としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボジフェニル)メタンアントラセンジカルボン酸、4−4‘−ジフェニルカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マレイン酸、トリメシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及びエステル形成能を有するこれらの誘導体が挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上を併用して用いることができる。
前記共重合可能なアルコール及び/またはフェノール成分としては、例えば2価以上の炭素数2〜15の脂肪族アルコール、2価以上の炭素数6〜20の脂環式アルコール、炭素数6〜40の2価以上の芳香族アルコールまたは、フェノール及びエステル形成能を有するこれらの誘導体が挙げられる。前記共重合可能なアルコール及び/またはフェノール成分の具体例としては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、デカンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、2,2‘−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、ハイドロキノン、グリセリン、ペンタエリスリトール、などの化合物、及びエステル形成能を有するこれらの誘導体、ε−カプロラクトン等の環状エステルが挙げられる。
前記共重合可能なポリアルキレングリコール成分としては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール及び、これらのランダムまたはブロック共重合体、ビスフェノール化合物のアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及びこれらのランダムまたはブロック共重合体等)付加物等の変性ポリオキシアルキレングリコール等が挙げられる。
このようなポリエステル系共重合体樹脂の中でも、降温過程における結晶化温度が185℃以下である結晶性ポリエステル系樹脂が多層フィルムの製膜性の点で好ましい。ここで言う降温過程における結晶化温度とは、試料を約5mg秤量し、それを示差走査熱量測定装置にセットし、昇温速度5℃/分で上限温度を350℃に設定して昇温した後、降温速度5℃/分で25℃まで冷却した際に現われたピークの内、最大ピークが現われた温度のことである。降温過程における結晶化温度が185℃より大きいものは、ポリエステル系樹脂の結晶化速度が速く、多層フィルムを共押出法で製膜する際に、ポリエステル系樹脂層の結晶化が起こりやすく、推奨生産条件幅が狭いといった問題点があるだけでなく、条件によっては多層フィルムの透明性が損なわれる場合がある。
前記降温過程における結晶化温度が185℃以下であるポリエステル系樹脂としては、酸成分としてテレフタル酸あるいはテレフタル酸ジメチルを用い、グリコール成分としてエチレングリコール及びシクロヘキサンジメタノールを用いて得られる飽和ポリエステル樹脂であり、前記グリコール成分におけるシクロヘキサンジメタノールの含有量が3〜10モル%であるポリエステル樹脂が具体的な例として挙げられる。このポリエステル樹脂は透明性に優れるため、外層として用いることにより外観の良いフィルムを作製することができる。前記グリコール成分におけるシクロヘキサンジメタノールの含有量が3モル%未満では、ポリエステル樹脂の結晶化温度が185℃より大きくなり多層フィルムの製膜性の点で劣る。一方、前記グリコール成分におけるシクロヘキサンジメタノールの含有量が10モル%を超える場合は、多層フィルムにした際の140〜160℃における貯蔵弾性率の最大値(A)が、該多層フィルムの110〜130℃における貯蔵弾性率の最小値(B)の差が小さくなり、包装体のカール抑制効果が小さくなるので好ましくない。
このような外層1の厚さは、特に限定されないが、10〜50μmが好ましく、特に20〜30μmが好ましい。厚さが前記範囲内であると、比較的安価で、外観がより優れたフィルムを得ることができ、また、多層フィルムにした際の前記貯蔵弾性率の最大値(A)と前記貯蔵弾性率の最小値(B)の差((A)−(B))が、10MPa以上となり、包装体のカールの抑制効果が高くなる。
(中間層)
中間層2としては、以下の理由によりEVOH樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂などから選ばれる少なくとも1種類以上の樹脂を用いることが好ましい。
前記EVOH樹脂を中間層として使用することで、酸素バリアー性を付与することが可能となる。EVOH樹脂以外にも酸素バリアー性を付与する目的でポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、及びジアミン成分に芳香環を有するポリアミド樹脂等を含有することができるが、多層フィルムの製膜性やフィルム剛性の点でEVOH樹脂を用いることが好ましい。中でもエチレン共重合比率が24〜44モル%のEVOH樹脂が好適に用いられる。EVOH樹脂のエチレン共重合比率が24モル%未満では、容器形状への加工性に劣ったり、加熱水や蒸気の影響より酸素バリアー性の低下を起こしやすくなる。一方、エチレン共重合比率が44モル%を超えると、乾燥状況下における酸素バリアー性が充分でなく、内容物の変質が起こり易くなる。
前記ポリアミド樹脂を中間層として使用することで、耐ピンホール性や包装体のカールを抑制する効果を得ることが可能となる。前記ポリアミド樹脂としては、例えば、ポリカプラミド(ナイロン−6)、ポリ−ω−アミノヘプタン酸(ナイロン−7)、ポリ−ω−アミノノナン酸(ナイロン−9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン−11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン−12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン−2、6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン−4、6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン−6、6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン−6、10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン−6、12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン−8、6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン−10、8)や、共重合樹脂であるカプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン−6/12)、カプロラクタム/ω−アミノノナン酸共重合体(ナイロン−6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン−6/6、6)、ラウリルラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン−12/6、6)、エチレンジアミンアジパミド/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン−2、6/6、6)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン−6、6/6、10)、エチレンアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン−6/6、6/6、10)等といった結晶性ポリアミドや、その主骨格がヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸及び/又はイソフタル酸が重合したもの、具体的には、ヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸の重合体、ヘキサメチレンジアミン−テレフタル酸の重合体、ヘキサメチレンジアミン−テレフタル酸−ヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸の共重合体等といった非晶性のポリアミド樹脂を用いることができる。これらは、単独あるいは2種以上を併用して用いることができる。
このような中間層にポリアミド系樹脂を用いた層の厚さは、特に限定されないが、10〜40μmが好ましく、特に10〜25μmが好ましい。該ポリアミド系樹脂を用いた層の厚みが10μm未満であると、輸送時や誤って落下してしまった際にピンホールが発生する場合があり、40μmを超えると、深絞り成形性あるいは打ち抜き性が低下する場合がある。
前記EVOH樹脂あるいはポリアミド系樹脂以外の樹脂を、フィルムの腰の強さ、耐ピンホール性、柔軟性あるいは成形性等を上げる目的で他の樹脂層を中間層として含有することができる。特にポリオレフィン系樹脂を中間層として使用することで、包装体の屈曲によるピンホール発生を抑制することが可能となる。このような中間層に好適に用いられる樹脂としては、低密度ポリエチレン樹脂(以下、LDPE樹脂と記載する。)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(以下、LLDPE樹脂と記載する。)、中密度ポリエチレン樹脂(以下、MDPE樹脂と記載する。)、高密度ポリエチレン樹脂(以下、HDPE樹脂と記載する。)、ポリプロピレン樹脂(以下、PP樹脂と記載する。)等のポリオレフィン樹脂及びエチレン共重合体であるエチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVA樹脂と記載する。)、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体(以下、EMMA樹脂と記載する。)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(以下、EEA樹脂と記載する。)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(以下、EMA樹脂と記載する。)、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体(以下、E−EA−MAH樹脂と記載する。)、エチレン−アクリル酸共重合体(以下、EAA樹脂と記載する。)、エチレン−メタクリル酸共重合体(以下、EMAA樹脂と記載する。)、アイオノマー(以下、ION樹脂と記載する。)等のポリオレフィン系樹脂が好適に使用でき、単体あるいは2種類以上を含んでいても良い。なかでも、LLDPE樹脂、ION樹脂を用いることで、耐ピンホール性をより良好にすることができる。ここで言うLLDPE樹脂とは、メタロセン触媒にて製造されたメタロセン直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(mLLDPE樹脂)も含むものである。また、ION樹脂の分子鎖間を架橋する金属陽イオンとしてはNa+、Zn+等があるがいずれのタイプでも良い。さらには、シール層3に隣接するようにポリオレフィン系樹脂層を設けることで、シール層3にイージーピール機能を付与した際のピール強度をより均一にすることができる。
特に、中間層としてポリアミド系樹脂層とポリオレフィン系樹脂層の両方を含有する多層フィルムは、ポリアミド系樹脂層が硬いものや鋭利なものによる接触に対するピンホール発生を抑制し、ポリオレフィン系樹脂層が屈曲によるピンホール発生を抑制するので、両層が補完しあって、振動や落下により与えられる外部応力からピンホール発生をより抑制することができる。
(シール層)
シール層3は、耐内容物性と相手材とのシール適性の機能を有している。使用される樹脂としては、LDPE樹脂、LLDPE樹脂、MDPE樹脂、HDPE樹脂、PP樹脂、EVA樹脂、EMMA樹脂、EEA樹脂、EMA樹脂、E−EA−MAH樹脂、EAA樹脂、EMAA樹脂、ION樹脂等の樹脂が好適に使用でき、単体あるいは2種類以上を含んでいても良い。なかでも、LLDPE樹脂、EVA樹脂が透明性やシール強度等に優れる点で特に好ましい。
シール層3にはイージーピール機能を付与することができる。イージーピール機能とは、流通時や保管時には内容物の密封性を保持しているが、開封時には手の力で容易に開けられるといった機能である。イージーピール機能としては、シール層と相手材の界面から剥がれる界面剥離タイプ、シール層あるいは相手材の最外層の層間で剥がれる層間剥離タイプおよびシール層が凝集破壊することで剥がれる凝集剥離タイプがあるが、いずれのタイプでも良い。例えば、凝集剥離タイプのイージーピール機能を付与する方法としては、EVA樹脂、EMMA樹脂、EEA樹脂、EMA樹脂、EAA樹脂、EMAA樹脂、ION樹脂、LDPE樹脂およびLLDPE樹脂などとPP樹脂とを混合することで達成される。ここで用いられるPP樹脂としては、ポリプロピレンのホモポリマー、プロピレン−エチレンのランダムコポリマーあるいはプロピレン−エチレンのブロックコポリマーいずれのタイプであっても良い。中でも、EMAA樹脂あるいはEMMA樹脂10〜90重量部にPP樹脂90〜10重量部を含有したものが、耐油性に優れる等の点から好適に用いられる。この場合、エチレン共重合体が10重量部未満ではイージーピール性の効果が少なくなり、90重量部を越えるとピール強度のばらつきが大きくなってしまう。
(多層フィルム)
図1で例示したような多層フィルム70では、外層1と、中間層2と、シール層3とを、別々に製造してからラミネーター等により接合して得ても良いが、外層1と、中間層2と、シール層3とを例えば空冷式または水冷式共押出インフレーション法、共押出Tダイ法で製膜する方法で得る方法が好ましい。なかでも、共押出Tダイ法で製膜する方法が厚さ制御に優れる点で特に好ましい。また、外層1と、中間層2と、シール層3とをそのまま接合しても良いし、接着層を介して接合しても良い。
前記多層フィルムの層数は3層以上で、該多層フィルムの140〜160℃における貯蔵弾性率の最大値(A)が、該多層フィルムの110〜130℃における貯蔵弾性率の最小値(B)より大きければ他の層を設けても良い。この場合、外層およびシール層のそれぞれが多層フィルムの最外部の層となるように配置されていればその他の層の順番に制限はない。さらには、前記貯蔵弾性率の最大値(A)と前記貯蔵弾性率の最小値(B)の差((A)−(B))が、10MPa以上である多層フィルムが包装体のカール抑制効果が大きくなるので好ましい。
高速・広幅ラインで包装体を作製する場合、内容物を底材に充填した後は、内容物の重さによりフィルムの垂れ下がりが大きくなる。また、高速・広幅ラインではシール時間を短くするためにシール温度を高く設定されることが多く、蓋材と底材とをシールした直後の多層フィルム複合体、すなわち包装体のフランジ部の温度も高くなり、最も変形のしやすい状態となっている。このように、シール直後の変形のしやすい状態に、内容物の重さによるフィルム面と垂直な下向きの力と、次の工程に搬送するために与えられるフィルム面と水平の力が包装体に働くので、シール直後に包装体のフランジ部に変形が生じやすく、この変形が包装体のカールの原因となる。そのため、シール温度領域である140〜160℃における貯蔵弾性率の最大値(A)を110〜130℃における貯蔵弾性率の最小値(B)より大きくなるように設計することで、成形性や耐ピンホール性などを低下させることなく、包装体のカールを抑制することが可能となる。
本発明の多層フィルムにおける各層については、酸化防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、樹脂改質剤、染料及び顔料等着色剤、安定剤等の添加剤、フッ素樹脂、シリコンゴム等の耐衝撃性付与剤、酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク等の無機充填剤を含有しても良い。また、各樹脂層の間には必要に応じて接着樹脂層を設けることができる。
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
1.多層フィルムの作製
図2に示すように、外層1を構成するポリエステル系樹脂1として共重合ポリエステル樹脂((品番SKYPET−BR8040:酸成分としてテレフタル酸ジメチル、グリコール成分として95モル%のエチレングリコールおよび5モル%のシクロヘキサンジメタノールを用いた共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂、SK chemicals製)試料を約5mg秤量し、それを示差走査熱量測定装置(セイコーインスツル(株)製DSC6100)にセットし、昇温速度5℃/分で上限温度を350℃に設定して昇温した後、降温速度5℃/分で25℃まで冷却した際に現われたピークの内、最大ピークが現われた温度(即ち結晶化温度であり、以下、Tcと記載する。)=163℃)と、中間層23及び24を構成する樹脂として接着性樹脂1(品番SF740、三井化学(株)製)と、中間層22を構成する樹脂としてEVOH樹脂1(品番J102B、(株)))クラレ製)と、中間層21を構成する樹脂としてポリアミド系樹脂1〔ポリアミド樹脂(a)(品番1030B、宇部興産(株)製)60重量部に対し、ポリアミド樹脂(b)(品番シーラPA 3426、三井・デュポンポリケミカル(株)製)を40重量部含有した樹脂〕と、中間層25を構成する樹脂としてLLDPE樹脂1(品番ウルトゼックス2022L、(株)プライムポリマー製)と、シール層3を構成する樹脂としてポリオレフィン系樹脂1〔エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(品番P1205、三井・デュポンポリケミカル(株)製)60重量部に対し、ポリプロピレン樹脂(品番S131、住友化学(株)製)を40重量部含有した樹脂〕とを7層ダイスで共押出し、多層フィルム71を作製した。得られた多層フィルムの各層の厚さは、外層1が25μm、中間層23及び24が5μm、中間層21が15μm、中間層22が10μm、中間層25が15μm及びシール層3が5μmであった。
2.多層フィルムの貯蔵弾性率の測定
得られた多層フィルムを幅4mm、長さ20mmにカットし、動的粘弾性測定装置(セイコーインスツル(株)製DMS6100)にセットして、引張りモード、昇温速度5℃/分、周波数1Hzで140℃〜160℃における貯蔵弾性率の最大値(A)および110℃〜130℃における貯蔵弾性率の最小値(B)を測定したところ、(A)の値が50MPa、(B)の値が30MPaおよびその差((A)−(B))の値が20MPaであった。
3.試験用包装体の作製
得られた多層フィルムを包装体底材用フィルムとした。また、2軸延伸ポリプロピレンフィルム4(OPPフィルム、厚さ30μm。)とアルミ蒸着を施した2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム5(VM−PETフィルム、厚さ12μm。)及びLLDPE樹脂(品番ウルトゼックス2022L、(株)プライムポリマー製)をTダイ押出法にて製膜したLLDPEフィルム6(30μm)をドライラミネート法により貼り合せた多層のフィルム80(図3を参照。)を包装体蓋材用フィルムとした。そして深絞り型全自動真空包装機(型番R−530、MULTIVAC社製)を用いて、包装体底材用フィルムに成形温度90℃でポケットを成形し、スライスハム40gを充填するとともに、前記包装体蓋材用フィルムをシール温度150℃にてシールすることにより試験用包装体を作製した。ここでの真空成形時の底材の絞り深さは5mmとした。
(実施例2)
外層1を構成するポリエステル系樹脂として、下記のものを用いた以外は実施例1と同様にして試験用包装体を作製した。
外層1:ポリエステル系樹脂2(品番ノバペックスGM600S:ポリエチレンテレフタレート樹脂、三菱化学(株)製、Tc=183℃)を用いた。得られた多層フィルムの貯蔵弾性率の値(A)は53MPa、値(B)は32MPa、その差((A)−(B))は21MPaであった。
(実施例3)
多層フィルム71の各層の厚みを下記のものにした以外は実施例1と同様にして試験用包装体を作製した。
得られた多層フィルムの各層の厚さは、外層1が20μm、中間層23及び24が5μm、中間層21が15μm、中間層22が10μm、中間層25が10μm及びシール層3が5μmであり、得られた多層フィルムの貯蔵弾性率の値(A)は47MPa、値(B)は29MPa、その差((A)−(B))は18MPaであった。
(実施例4)
多層フィルム71の各層の厚みを下記のものにした以外は実施例1と同様にして試験用包装体を作製した。
得られた多層フィルムの各層の厚さは、外層1が10μm、中間層23及び24が5μm、中間層21が15μm、中間層22が10μm、中間層25が10μm及びシール層3が5μmであり、得られた多層フィルムの貯蔵弾性率の値(A)は38MPa、値(B)は25MPa、その差((A)−(B))は13MPaであった。
(実施例5)
外層1を構成するポリエステル系樹脂として、下記のものを用いた以外は実施例1と同様にして試験用包装体を作製した。
外層1:ポリエステル系樹脂3(品番SKYPET−BL8050:酸成分として95モル%のテレフタル酸あるいはテレフタル酸ジメチルおよび5モル%のイソフタル酸、グリコール成分としてエチレングリコールを用いた共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂、SK chemicals製、Tc=177℃)
得られた多層フィルムの貯蔵弾性率の値(A)は51MPa、値(B)は31MPa、その差((A)−(B))は20MPaであった。
(比較例1)
外層1を構成するポリエステル系樹脂として、下記のものを用いた以外は実施例1と同様にして試験用包装体を作製した。
外層1:ポリエステル系樹脂4(品番イースターGN071:酸成分としてテレフタル酸あるいはテレフタル酸ジメチル、グリコール成分として70モル%のエチレングリコールおよび30モル%のシクロヘキサンジメタノールを用いた共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂、イーストマンケミカルジャパン(株)製、非結晶性のためTcは無し)
得られた多層フィルムの貯蔵弾性率の値(A)は14MPa、値(B)は20MPa、その差((A)−(B))は−6MPaであった。
(比較例2)
外層1を構成するポリエステル系樹脂として、下記のものを用いた以外は実施例1と同様に
して試験用包装体を作製した。
外層1:ポリエステル系樹脂5 (品番ノバデュラン5020、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、Tc=190℃)
得られた多層フィルムの貯蔵弾性率の値(A)は50MPa、値(B)は57MPa、その差((A)−(B))は−7MPaであった。
実施例1〜5及び比較例1〜2で得られた多層フィルムを包装体底材用フィルムとして用いた試験用包装体について、以下の評価を行った。評価項目を内容と共に示す。得られた結果を表1に示す。
透明性ASTM−D1003に準じ、包装体底材用フィルムの光線透過率を測定した。各符号は、以下の通りである。なお、評価はn=10で行った。

○:光線透過率の値が90%以上であった。
×:光線透過率の値が90%未満であった。
成形性
包装体底材用フィルムを成形温度90℃でポケット成形した際、金型通りに深絞り成形できているかを観察した。各符号は、以下の通りである。
○:金型通りに成形できていた。
×:金型通りに成形できていなかった。
カール性
スライスハムを包装した直後に、水平に設置された測定台の上で包装体の底材側を上にして置き、包装体の4隅のカール高さを測定した。各符号は、以下の通りである。なお、評価はn=10で行った。
○:4隅のカール高さの平均値が5mm以下であった。
×:4隅のカール高さの平均値が5mmを超えていた。
Figure 2009113482
(実施例6)
2軸延伸ポリプロピレンフィルム4(OPPフィルム、厚さ30μm。)と実施例4で作製した多層フィルム71(外層1を構成するポリエステル系樹脂:ポリエステル系樹脂1、品番SKYPET−BR8040、多層フィルムの厚み:60μm)をドライラミネート法により貼り合せた多層のフィルム90(図4)を包装体蓋材用フィルムとして使用した。また、比較例1で作製した多層フィルム71(外層1を構成するポリエステル系樹脂:ポリエステル系樹脂4、品番イースターGN071、多層フィルムの厚み:80μm)を包装体底材用フィルムとして使用した。これらの点以外は、実施例1と同様にして試験用包装体の作製を行った。
(比較例3)
2軸延伸ポリプロピレンフィルム4(OPPフィルム、厚さ30μm。)と比較例1で作製した多層フィルム71(外層1を構成するポリエステル系樹脂:ポリエステル系樹脂4、品番イースターGN071、多層フィルムの厚み:80μm)をドライラミネート法により貼り合せた多層のフィルム90(図4)を包装体蓋材用フィルムとして使用した。また、比較例1で使用した多層フィルム71(外層1を構成するポリエステル系樹脂:ポリエステル系樹脂4、品番イースターGN071、多層フィルムの厚み:80μm)を包装体底材用フィルムとして使用した。これらの点以外は、実施例1と同様にして試験用包装体を作製した。
実施例6及び比較例3において作製された試験用包装体について、実施例1〜5及び比較例1〜2と同様の方法で評価した。得られた結果を表2に示す。
Figure 2009113482
実施例1〜6のように本発明に係る多層フィルムを包装体底材用フィルムまたは包装体蓋材用フィルムとして用いることにより、カール性の良好な包装体を得ることができ、包装体をベルトコンベアーで搬送した後にラベルを貼り付ける工程でも、個々がきれいに整列し正常にラベルを貼り付けることができた。また、実施例1〜6の多層フィルムは透明性や腰も十分であり、深絞り型全自動真空包装機での成形性にも優れていた。
本発明の多層フィルムは、その多層フィルムを成形した後、中身を充填し、蓋材によりシールされる包装体に使用することで、カール性に優れた包装体を得ることができる。また、包装体に使用するフィルムを薄くすることができるので、廃棄物を削減することができる。
本発明に係る多層フィルムの一例を示す断面図である。 本発明の実施例1〜5、比較例1〜2に用いた多層フィルム71の断面図である。 本発明の実施例1〜5、比較例1〜2に用いた多層フィルム80の断面図である。 本発明の実施例6、比較例3に用いた多層フィルム90の断面図である。
符号の説明
1・・・外層
2・・・中間層
3・・・シール層
4・・・2軸延伸ポリプロピレンフィルム
5・・・2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム
6・・・LLDPEフィルム
21・・・ポリアミド系樹脂層
22・・・EVOH樹脂層
23・・・接着性樹脂層
24・・・接着性樹脂層
25・・・LLDPE樹脂層
70・・・本発明に係る多層フィルムの一例
71・・・本発明に係る多層フィルムの一例
80・・・本発明に係る多層フィルムと共に用いられる多層フィルムの一例
90・・・本発明に係る多層フィルムと二軸延伸フィルムとを貼りあわせた多層フィルムの一例

Claims (8)

  1. 少なくとも外層、中間層及びシール層を有する多層フィルムであって、該多層フィルムの140〜160℃における貯蔵弾性率の最大値(A)が、該多層フィルムの110〜130℃における貯蔵弾性率の最小値(B)より大きいことを特徴とする多層フィルム。
  2. 前記貯蔵弾性率の最大値(A)と前記貯蔵弾性率の最小値(B)の差((A)−(B)
    )が、10MPa以上である請求項1に記載の多層フィルム。
  3. 前記外層が結晶性ポリエステル系樹脂である請求項1に記載の多層フィルム。
  4. 前記結晶性ポリエステル系樹脂の降温過程における結晶化温度が185℃以下である請
    求項3に記載の多層フィルム。
  5. 前記結晶性ポリエステル系樹脂が、酸成分としてテレフタル酸あるいはテレフタル酸ジメチルを用い、グリコール成分としてエチレングリコール及びシクロヘキサンジメタノールを用いて得られる飽和ポリエステル樹脂であり、前記グリコール成分におけるシクロヘキサンジメタノールの含有量が3〜10モル%であることを特徴とする請求項4に記載の多層フィルム。
  6. 前記中間層が、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂からなる群の少なくとも一種の樹脂を含む請求項1に記載の多層フィルム。
  7. 前記シール層がイージーピール機能を有する樹脂からなる請求項1に記載の多層フィルム。
  8. 蓋材(H)と底材(S)とをヒートシールしてなる包装体であって、前記蓋材(H)または底材(S)の少なくとも一方が請求項1乃至7のいずれか1項に記載された多層フィルムを含むものである包装体。
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