JP2021035859A - スキンパック蓋材用多層フィルム、スキンパック包装体 - Google Patents

スキンパック蓋材用多層フィルム、スキンパック包装体 Download PDF

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Abstract

【課題】透明性、ガスバリア性に優れ、かつ複雑な形状の内容物に対しても内容物密着性(スキンパック性)が優れ、加熱用途にも使用でき、フィルムのカット性が良好であるスキンパック蓋材用多層フィルムを提供する。【解決手段】最外層がポリアミド系樹脂を主成分として含み、中間層にガスバリア性樹脂を主成分として含む層を少なくとも1層有し、最内層に隣接する層がアイオノマー樹脂を主成分として含み、最内層がシーラント性樹脂を主成分として含む少なくとも4層を有する多層フィルムであって、下記(I)、(II)を満たすスキンパック蓋材用多層フィルム。(I)前記最外層のポリアミド系樹脂が結晶性ポリアミド樹脂および非晶性ポリアミド樹脂を含む(II)前記最外層のガラス転移温度が70℃以上110℃以下【選択図】なし

Description

本発明は、主として生肉、惣菜、食肉加工品、水産加工品等の食品のスキンパック包装の蓋材用に好適に使用できるスキンパック蓋材用多層フィルムに関する。スキンパックとは、加熱した蓋材用フィルムを圧空で内容物に密着させると同時に底材トレーとフィルムとを熱シールして真空包装した包装体をいう。
従来、食肉加工品や水産加工品等の食品は、ガスバリア層を有するフィルムを用いた深絞り包装が多く用いられてきた。また、生肉や惣菜は発泡ポリスチレントレーにラップフィルムや蓋を用いる包装形態が一般的であった。しかしながら、これら従来の方法では、内容物と包装体との間に隙間が発生するため、しわの発生やドリップ溜まりによる見栄えの悪化が起こり、さらには品質低下を速めてしまう場合があった。そこで、包装体が内容物に密着した状態で隙間が発生することがない包装形態としてスキンパック包装の需要が高まってきている。
スキンパック包装では、内容物を入れたトレーの上に、蓋材となるフィルムを隙間なく被せて、内容物に密着させる。その方法としては、蓋材となるフィルムが真空環境下で加熱後わずかに延伸され、その後大気圧への解放によりフィルムが収縮しながら内容物に圧着する方法が一般的に知られている。
スキンパック蓋材用のフィルムとしては、ガスバリア層とアイオノマー層などから成る多層フィルム(特許文献1)や、さらにその外層にポリエチレンテレフタレート樹脂層を有する多層フィルム(特許文献2)やポリアミド樹脂層を有する多層フィルム(特許文献3)が開示されている。
しかしながら、特許文献1に開示の方法ではガスバリア層が最外層にあり、衝撃や擦傷に弱く、耐ピンホール性が不十分であり、ガスバリア性も発揮されない。また、特許文献2に開示の方法では、包装可能温度が狭くスキンパック性が悪いことや、耐熱性が低く食品惣菜等の電子レンジ加熱する用途への使用を推奨できるものではなかった。特許文献3に開示の方法では、耐ピンホール性や耐熱性には優れるが外層のポリアミド樹脂のガラス転移温度が低く、スキンパック包装時にフィルムのカット性が悪く、連続包装が困難であった。
特開2012−035630号公報 特開2016−222259号公報 特開平06−293111号公報
本発明は、従来技術の上記課題を解決しようとするものであり、本発明の課題は、透明性や光沢、ガスバリア性に優れ、かつ複雑な形状の内容物に対しても内容物密着性(スキンパック性)が優れ、加熱用途にも使用でき、フィルムのカット性が良好であるスキンパック蓋材用多層フィルムを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の層構成を採用することにより、上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成するに至った。
第1の本発明は、最外層がポリアミド系樹脂を主成分として含み、中間層にガスバリア性樹脂を主成分として含む層を少なくとも1層有し、最内層に隣接する層がアイオノマー樹脂を主成分として含み、最内層がシーラント性樹脂を主成分として含む少なくとも4層を有する多層フィルムであって、下記(I)、(II)を満たすスキンパック蓋材用多層フィルムである。
(I)前記最外層のポリアミド系樹脂が結晶性ポリアミド樹脂および非晶性ポリアミド樹脂を含む
(II)前記最外層のガラス転移温度が70℃以上110℃以下である
第1の本発明のスキンパック蓋材用多層フィルムにおいて、前記最外層が単層または複数層であり、前記最外層の少なくとも1層がガラス転移温度が70℃以上110℃以下であり、ポリアミド系樹脂が結晶性ポリアミド樹脂および非晶性ポリアミド樹脂を含む層であることが好ましい。
第1の本発明のスキンパック蓋材用多層フィルムの、110℃、10Hzの条件で測定された貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下であることが好ましい。
第1の本発明のスキンパック蓋材用多層フィルムにおいて、フィルム総厚が40μm以上200μm以下であり、フィルム総厚に対する最外層の厚さ比が2%以上40%以下であり、フィルム総厚に対する最内層に隣接する層の厚さ比が20%以上90%以下であることが好ましい。
第1の本発明のスキンパック蓋材用多層フィルムにおいて、フィルム総厚が40μm以上200μm以下であり、フィルム総厚に対する最外層の厚さ比が2%以上30%以下であり、フィルム総厚に対する最内層に隣接する層の厚さ比が20%以上90%以下であることが好ましい。
第1の本発明のスキンパック蓋材用多層フィルムにおいて、前記最外層の結晶性ポリアミド樹脂および非晶性ポリアミド樹脂を含む層において、結晶性ポリアミド樹脂と非晶性ポリアミド樹脂の質量比が、結晶性ポリアミド樹脂:非晶性ポリアミド樹脂=55:45〜15:85の範囲であることが好ましい。
第1の本発明のスキンパック蓋材用多層フィルムにおいて、前記最外層が、前記結晶性ポリアミド樹脂および非晶性ポリアミド樹脂を含む層と結晶性ポリアミド樹脂を主成分とする層の少なくとも2層を有することが好ましい。
第1の本発明のスキンパック蓋材用多層フィルムは共押出多層フィルムであることが好ましい。
第2の本発明は、第1の本発明のスキンパック蓋材用多層フィルム、および、内容物を入れるトレーを備えた、スキンパック包装体である。
本発明のスキンパック蓋材用多層フィルムによれば、透明性や光沢、ガスバリア性に優れ、かつ複雑な形状の内容物に対しても内容物密着性(スキンパック性)に優れ、加熱用途に使用でき、連続包装時のフィルムカット性も良好であるため、スキンパック用蓋材として好適に使用することができる。
図1(a)は成形性の評価方法を説明するイメージ図(断面図)であり、図1(b)はイメージ図(上面図)である。
以下、本発明の実施形態の一例としての本発明のスキンパック蓋材用多層フィルム、および、スキンパック包装体について説明する。ただし、本発明の範囲は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
[スキンパック蓋材用多層フィルム]
本発明のスキンパック蓋材用多層フィルム(以下、本発明の多層フィルムと記載することがある。)は、最外層がポリアミド系樹脂(以下、ポリアミド樹脂やPA樹脂、PAなどと記すことがある。)を主成分として含み、中間層にガスバリア性樹脂を主成分として含む層を少なくとも1層有し、最内層に隣接する層がアイオノマー樹脂(以下、IO樹脂やIOと記すことがある。)を主成分として含み、最内層がシーラント性樹脂を主成分として含む少なくとも4層を有する多層フィルムである。
本発明において、「主成分」とは、該成分を含むもの(例えば層)を基準として、該成分を、50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上含むことを意味する。また、「X〜Y」(X、Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」および「好ましくはYより小さい」の意を包含するものである。
<最外層>
(結晶性ポリアミド樹脂および非晶性ポリアミド樹脂を含む層)
本発明の多層フィルムの最外層は、ポリアミド系樹脂を主成分として含み、該ポリアミド系樹脂は、結晶性ポリアミド樹脂(結晶性PA)と非晶性ポリアミド樹脂(非晶性PA)とのブレンド物である。なお、「最外層は、ポリアミド系樹脂を主成分として含み」とは、最外層が複数層により構成される場合は、該複数層のうち、少なくとも1層が結晶性PAと非晶性PAとのブレンド物であるポリアミド系樹脂を主成分として含む層であればよい。
また、「最外層」とは、最内層とは反対側の層、つまり、包装体の外面を形成する層である。
結晶性ポリアミド樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ポリアミド116)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドジメチルPACM12)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ポリアミド9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド10T)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド11T)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド(ポリアミド11T(H))、ポリウンデカミド(ポリアミド11)、ポリドデカミド(ポリアミド12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、および、これらの共重合物(ポリアミド6とポリアミド66の共重合物など)等が挙げられる。
非晶性ポリアミド樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミドTMDT)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリヘキサメチレンテレフタル/イソフタルアミド(ポリアミド6T/6I)、および、これらの共重合物等が挙げられる。
フィルムの最外層(結晶性ポリアミド樹脂および非晶性ポリアミド樹脂を含む層)のガラス転移温度(JIS K7121)は70℃以上110℃以下である。ガラス転移温度は75℃以上110℃以下の範囲がより好ましい。ガラス転移温度を70℃以上にすることで耐熱性、カット性を付与することができ、110℃以下にすることで包装適性(スキンパック性)を付与することができる。明瞭な融点(JIS K7121)は測定できなくても良いが、170℃〜240℃の範囲にあると耐熱性付与の観点から好ましい。ここでガラス転移温度、および、融点は、示差走査熱量計(DSC)を用い、昇温速度10℃/minで測定した値である。
結晶性ポリアミド樹脂の融点(JIS K7121)は170℃〜240℃が好ましく175℃〜230℃の範囲がより好ましい。融点を170℃以上とすることでフィルムの耐熱性を付与することができ、240℃以下とすることで製膜性を確保することができる。一方、ガラス転移温度は、20℃〜70℃の範囲が好ましく、30℃〜60℃の範囲がより好ましい。ガラス転移温度を20℃以上とすることでフィルムのカット性を付与することができ、70℃以下とすることで包装適性(スキンパック性)を付与することができる。
非晶性ポリアミド樹脂のガラス転移温度(JIS K7121)は100℃〜170℃の範囲が好ましく、105℃〜160℃の範囲がより好ましく、110〜150℃の範囲がさらに好ましい。ガラス転移温度を100℃以上にすることで耐熱性を付与することができ、170℃以下にすることで包装適性(スキンパック性)を付与することができる。
最外層(結晶性ポリアミド樹脂および非晶性ポリアミド樹脂を含む層)における結晶性ポリアミド樹脂と非晶性ポリアミド樹脂の質量比は55:45〜15:85が好ましく、45:55〜20:80がより好ましい。結晶性ポリアミド樹脂の質量比を55以下にすることで、連続包装時のフィルムカット性を付与することができ、非晶ポリアミドの質量比を85以下にすることで耐熱性と包装時の内容物への密着性を付与することができる。
最外層(結晶性ポリアミド樹脂および非晶性ポリアミド樹脂を含む層)の厚さは、フィルム総厚に対する厚さ比が2%以上30%以下の範囲が好ましく、3%以上25%以下の範囲がより好ましい。最外層(ポリアミド系樹脂を主成分として含む層)を厚さ比2%以上にすることで、カット性と製膜安定性が確保でき、30%以下にすることで包装適性(スキンパック性)を付与することができる。
(最外層が複数層からなる場合)
最外層は単層であっても、または、複数層であってもよい。最外層が複数層の場合は、最外層の少なくとも1層が、上記したガラス転移温度が70℃以上110℃以下であり、ポリアミド系樹脂が結晶性ポリアミド樹脂および非晶性ポリアミド樹脂を含む層である。
該複数層を構成する他の層としては、結晶性ポリアミド樹脂を主成分とする層(結晶性ポリアミド層)が挙げられる。結晶性ポリアミド樹脂は、上記したものと同様である。
前記結晶性ポリアミド層を配する場合、フィルムにスキンパック包装時の収縮性、および、強度、特に耐ピンホール性を付与することができる。前記結晶性ポリアミド層の厚さは、フィルム総厚に対する比率として、上限は20%以下が好ましく、15%以下がより好ましい。また、下限は1%以上が好ましく、5%以上がより好ましい。下限を1%以上とすることにより、フィルムに耐ピンホール性を付与することができる。また、上限を20%以下とすることで内容物密着性(スキンパック性)およびフィルム成形性を良好にすることができる。
また、最外層が複数層からなる場合は、層間に接着樹脂層を有していてもよい。
接着樹脂としては、公知の酸変性ポリエチレン系樹脂などを用いることができる。
また、最外層が複数層からなる場合、フィルム総厚に対する最外層の厚さ比が2%以上40%以下の範囲が好ましく、3%以上30%以下の範囲がより好ましい。最外層を厚さ比2%以上にすることで、カット性と製膜安定性が確保でき、40%以下にすることで包装適性(スキンパック性)を付与することができる。
<中間層:ガスバリア性樹脂を主成分として含む層>
本発明の多層フィルムは、生肉、惣菜、食肉加工品、水産加工品などの包装に用いる為、それらが腐食しないようにガスバリア性を有することが必要である。そこで、フィルムにガスバリア性を向上させる目的で、中間層としてガスバリア性樹脂を主成分として含む層(以下、ガスバリア層という場合がある。)を少なくとも1層備える。
前記ガスバリア性樹脂には、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体をアルカリ触媒等によってケン化することによって得られる共重合体(以下、EVOHと記載することがある。)などを用いることが出来る。
EVOH中のエチレン含有率は、特に限定されるものではないが、製膜安定性の観点から、通常23モル%以上、好ましくは27モル%以上であり、ガスバリア性の観点から、通常47モル%以下、好ましくは44モル%以下である。また、EVOHのケン化度は、通常96モル%以上、好ましくは99モル%以上である。EVOH中のエチレン含有量およびケン化度を上記範囲に保つことにより、良好なガスバリア性を維持できる。なお、EVOHは、化学構造が同様なものである限り、ケン化によって製造されたものに限定されるものではない。
EVOHの融点は、特に限定されるものではないが、二次加工性の観点から150℃以上210℃以下、好ましくは150℃以上190℃以下、より好ましくは155℃以上185℃以下である。
EVOHのMFR(210℃、2.16kgf)は、特に限定されるものではないが、フィルムの製膜性の観点から0.1〜80g/10分、好ましくは0.5〜50g/10分、より好ましくは1.0〜25g/10分である。
ガスバリア層の厚さのフィルム総厚に対する比率の上限は20%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。また、下限は1%以上が好ましい。下限を1%以上とすることにより、フィルムにガスバリア性を付与することができ、また、上限を20%以下とすることにより、フィルムの耐ピンホール性の低下や、製造コストの上昇、内容物密着性(スキンパック性)の低下を抑制することができる。
ガスバリア層には、その機能を阻害しない限り、柔軟性を付与する目的でポリオレフィン系エラストマーやポリスチレン系エラストマーを加えてもよく、添加剤を加えることもできる。添加剤としては、加工助剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
<最内層:シーラント性樹脂を主成分として含む層>
本発明の多層フィルムは、ヒートシール性を付与する目的で、シーラント性樹脂を主成分として含む層(以下、シーラント層という場合がある。)を最内層に配する。
シーラント性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂が好ましく使用される。
ここで、「最内層」とは、最外層と反対側、つまり、包装体とした場合に、内容物側になる層であり、ヒートシール性を有する層である。
シーラント性樹脂としては、エチレン−α−オレフィン共重合体、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、アイオノマー樹脂、酢酸ビニル含有率が8モル%以上40モル%以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ホットメルト樹脂(HM)の群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
これらの樹脂は、トレーの材質、トレー面の形状、内容物の形状、種類に合わせ、適宜選択することができる。
最内層の厚さは、フィルム総厚に対する比率が5%以上の場合、良好なヒートシール性が得られる。また、20%以下の場合、最内層に隣接する層の厚さとのバランスによって、フィルム強度を確保することができる。
<最内層に隣接する層:アイオノマー樹脂を主成分として含む層>
本発明の多層フィルムは、柔軟性を付与する目的で、最内層に隣接する層にアイオノマー樹脂を主成分として含む層(以下、アイオノマー層という場合がある。)を配する。
アイオノマー樹脂は限定されるものではないが、例えば、エチレン−メタクリル酸共重合体を亜鉛やナトリウムなどの金属イオンで架橋させたものであり、ナトリウムイオン中和タイプのアイオノマー樹脂を用いることが好ましい。
アイオノマー層のフィルム総厚に対する比率の下限は、20%以上が好ましく、25%以上がより好ましい。また、上限は90%以下が好ましく、85%以下がより好ましく、80%以下であることがさらに好ましい。
<その他の層>
本発明の多層フィルムは最外層がポリアミド系樹脂を主成分として含み、中間層にガスバリア性樹脂を主成分として含む層を少なくとも1層有し、最内層に隣接する層がアイオノマー樹脂を主成分として含み、最内層がシーラント性樹脂を主成分として含む少なくとも4層を有する多層フィルムであれば、その他の熱可塑性樹脂を含む層と合わせて多層化することが出来る。
例えば、本発明の多層フィルムには、前記4層以外に、中間層として、ポリオレフィン系樹脂を含むポリオレフィン層や接着樹脂層などを配してもよい。ここで、中間層とは、最外層と最内層に隣接する層に挟まれた層をいう。
なお、本発明の多層フィルムは、最外層の表面に他の層を設けることを排除するものではない。例えば、最外層の表面に、印刷層、ラベル層、コーティング層、保護層等を設けてもよい。
<多層フィルムの総厚>
本発明の多層フィルムの総厚は、40μm以上200μm以下であることが好ましい。下限はより好ましくは60μm以上、さらに好ましくは80μm以上である。上限はより好ましくは190μm以下、さらに好ましくは180μm以下である。フィルム総厚を40μm以上にすることで、フィルム強度が確保でき、鋭利な形状の内容物の場合や低温保管の場合に、衝撃や擦れによるフィルムの破れやピンホールが発生しにくい。200μm以下にすることで、内容物を潰すことなく、形状に対する追従性が付与でき、密着性が良好となる。例えば、内容物の周辺部、即ち内容物がトレーに接する際(きわ)の箇所において、フィルムに浮きが生じにくい。
<多層フィルムの各物性>
(光沢度)
多層フィルムの光沢度は、包装体の外観の点から、好ましくは70以上であり、より好ましくは90以上である。
(全ヘーズ)
多層フィルムの全ヘーズは、内容物視認性の観点から好ましくは15%以下であり、より好ましくは13%以下である。
(ガス透過率)
本発明の多層フィルムの厚さ100μmにおけるガス透過率は、10.0cc/m・24hr・atm以下が好ましく、より好ましくは8.5cc/m・24hr・atm以下であり、さらに好ましくは7.0cc/m・24hr・atm以下である。ガス透過率を10.0cc/m・24hr・atm以下にすることで、包装体として使用する際に求められるガスバリア性を付与することができる。
(貯蔵弾性率)
本発明の多層フィルムの振動周波数10Hz、110℃の条件で測定された貯蔵弾性率E´は、1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下であることが好ましく、2.0×10Pa以上9.0×10Pa以下であることがより好ましく、3.0×10Pa以上8.0×10Pa以下であることがさらに好ましい。110℃の条件で測定された貯蔵弾性率E´を、1.0×10Pa以上とすることで、スキンパック包装時の収縮性を付与することができ、1.0×10Pa以下とすることで延伸性を付与することができる。
本発明の多層フィルムの振動周波数10Hz、23℃の条件で測定された貯蔵弾性率E´は、3.0×10Pa以上5.0×10Pa以下であることが好ましく、3.2×10Pa以上3.0×10Pa以下であることがより好ましく、3.5×10Pa以上1.0×10Pa以下であることがさらに好ましい。23℃の条件で測定された貯蔵弾性率E´を、3.0×10Pa以上とすることで、フィルムのカット性を付与することができ、5.0×10Pa以下とすることでフィルムの柔軟性、耐ピンホール性を付与することができる。
<その他の成分>
本発明の多層フィルムは、その効果を著しく阻害しない範囲内で、成形加工性、生産性等の諸性質を改良・調整する目的で、適宜、必要とする層に対して、シリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤などの添加剤を添加できる。
[多層フィルム製膜方法]
本発明の多層フィルムは、公知の方法を用いて作製することができる。例えば、押出ラミネーション法、共押出インフレーション法、共押出Tダイ法等を用いることができ、特に、フィルムの層数が多い場合でも製膜工程は変わらない点や厚み制御が比較的容易である点で共押出Tダイ法を用いることが好ましい。つまり、本発明の多層フィルムは、共押出多層フィルムであることが好ましい。
本発明の多層フィルムは無延伸フィルムであっても、延伸フィルムであってもよいが、通常は無延伸である。なお、収縮性を付与する等の目的で、僅かに延伸されたものであってもよい。
[スキンパック包装体]
本発明のスキンパック包装体は、内容物をいれるトレーと上記したスキンパック蓋材用多層フィルムからなる蓋材とを備える。スキンパック蓋材用多層フィルムは、トレーおよび内容物の大きさに応じて所定の大きさに切断されて蓋材として使用される。
トレーは、内容物の種類等に応じて適宜選択されるものであり、特に限定されないが、例えば、ポリスチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂製のトレーやそれらの発泡樹脂トレーの内容物側に、ガスバリア性および蓋材とのシール性を備えたフィルムをラミネートしたものを使用することができる。
本発明の多層フィルム、および、スキンパック包装体は、生肉、惣菜、食肉加工品、水産加工品等の食品を包装する用途に適しているが、包装する対象はこれらに限定されるものではなく、例えば、各種工業部材、精密部品、工業中間製品、雑貨類、衛生用品、医療器具、医薬品等にも好適に用いることができる。
以下、本発明の多層フィルムの効果を明確にするために実施した実施例に基づいてより詳細に説明する。なお、本発明の多層フィルムは、以下の実施例、および、比較例によって何ら限定されるものではない。
<多層フィルムの製膜>
下記に記載の原料を用い、共押出Tダイ法により、各例に記した層構成で無延伸多層フィルムを作製した。
(最外層)
結晶性PA:宇部興産社製、PA6/66(5033X80、融点197℃、ガラス転移温度52℃)
非晶性PA:DSM社製、PA6T/6I(ガラス転移温度127℃)
AD1:三井化学社製、アドマーSF731(無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン−ブテン1共重合体)
AD2:三井化学社製、アドマーNF567(エチレン−ブテン1−4メチルペンテン共重合体)
(最内層に隣接する層)
IO:三井・ダウ ポリケミカル社製、アイオノマー樹脂(エチレン‐メタクリル酸共重合体のNaイオン中和タイプ)
(中間層)
EVOH1:三菱ケミカル社製、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(エチレン38モル、MFR4g/10分、融点163℃)
EVOH2:三菱ケミカル社製、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(エチレン32モル、MFR3.8g/10分、融点185℃)
AD1:三井化学社製、アドマーSF731(無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン−ブテン1共重合体)
AD2:三井化学社製、アドマーNF567(エチレン−ブテン1−4メチルペンテン共重合体)
(最内層)
シーラント1:三井・ダウ ポリケミカル社製、エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル15モル%)
シーラント2:ダウケミカル社製、エチレン−オクテン1共重合体(オクテン1 29wt%)
(参考例)
最外層の結晶性PAおよび非晶性PAを含む層における、結晶性PAと非晶性PAの配合比によるガラス転移温度、融点を測定した結果を表1に示す。ガラス転移温度、融点はパーキンエルマージャパン社製、Diamond DSCにてJIS K7121に準ずる方法で、昇温速度10℃/minで測定した。
(実施例1)
最外層1(12μm)/AD1(18μm)/EVOH1(4μm)/AD1(9μm)/IO(51μm)/シーラント1(6μm)、計100μm厚、
最外層1には結晶性PA:非晶性PA=45:55質量%の割合で配合したブレンド原料を用いた。多層フィルムの構成を表2に示す。
(実施例2)
最外層1に、結晶性PA:非晶性PA=25:75質量%の割合で配合したブレンド原料を用いた以外は実施例1と同様の層構成で多層フィルムを得た。多層フィルムの構成を表2に示す。
(実施例3)
最外層1(15μm)/AD1(28μm)/EVOH1(5μm)/AD1(14μm)/IO(70μm)/シーラント1(8μm)、計140μm厚、
最外層1には実施例2と同様の配合のブレンド原料を用いた。多層フィルムの構成を表2に示す。
(実施例4)
最外層1(6μm)/EVOH1(4μm)/AD1(8μm)/IO(74μm)/シーラント1(8μm)、計100μm厚、
最外層1には実施例2と同様の配合のブレンド原料を用いた。多層フィルムの構成を表2に示す。
(実施例5)
最外層1(6μm)/EVOH2(4μm)/AD2(8μm)/IO(74μm)/シーラント2(8μm)、計100μm厚、
最外層1には実施例2と同様の配合のブレンド原料を用いた。多層フィルムの構成を表2に示す。
(実施例6)
最外層1(9μm)/EVOH2(7μm)/AD2(12μm)/IO(104μm)/シーラント2(8μm)、計140μm厚、
最外層1には実施例2と同様の配合のブレンド原料を用いた。多層フィルムの構成を表2に示す。
(実施例7)
最外層1(5μm)/最外層2(11μm)/最外層3(11μm)/EVOH2(4μm)/AD2(11μm)/IO(50μm)/シーラント2(8μm)、計100μm厚、
最外層1には実施例2と同様の配合のブレンド原料を用いた。最外層2にはAD2を用いた。最外層3には結晶性PAを用いた。多層フィルムの構成を表2に示す。
(実施例8)
最外層1(6μm)/最外層2(11μm)/最外層3(5μm)/EVOH2(4μm)/AD1(11μm)/IO(55μm)/シーラント1(8μm)、計100μm厚、
最外層1には結晶性PAを用いた。最外層2にはAD1を用いた。最外層3には実施例2と同様の配合のブレンド原料を用いた。多層フィルムの構成を表2に示す。
(実施例9)
最外層1(16μm)/最外層2(16μm)/最外層3(8μm)/EVOH2(7μm)/AD1(15μm)/IO(70μm)/シーラント1(8μm)、計140μm厚、
最外層1には結晶性PAを用いた。最外層2にはAD1を用いた。最外層3には実施例2と同様の配合のブレンド原料を用いた。多層フィルムの構成を表2に示す。
(実施例10)
最外層1(8μm)/最外層2(16μm)/最外層3(8μm)/EVOH1(7μm)/AD1(15μm)/IO(78μm)/シーラント1(8μm)、計140μm厚、
最外層1には結晶性PAを用いた。最外層2にはAD1を用いた。最外層3には実施例2と同様の配合のブレンド原料を用いた。多層フィルムの構成を表2に示す。
(比較例1)
最外層を結晶性PA:非晶性PA=75:25質量%の割合で配合したブレンド原料を用いた以外は実施例5と同様の層構成で多層フィルムを得た。多層フィルムの構成を表2に示す。
(比較例2)
最外層1(5μm)/AD1(22μm)/EVOH1(5μm)/AD1(14μm)/IO(61μm)/シーラント1(8μm)、計115μm厚、
最外層1には結晶性PA:非晶性PA=10:90質量%の割合で配合したブレンド原料を用いた。多層フィルムの構成を表2に示す。
実施例および比較例にて作成した多層フィルムについて、以下の物性測定・評価を行った。評価結果を表2に示す。
<多層フィルムの物性>
(光沢度)
作製した多層フィルムについて、JIS Z 8741−1997に準拠して光沢度を測定し、光沢度70以上を良好と判断した。
(全ヘーズ)
作製した多層フィルムについて、JIS K−7105に準拠して全ヘーズを測定し、全ヘーズ15%以下を良好と判断した。
(貯蔵弾性率E´)
周波数10Hz、引張モードで110℃、23℃における貯蔵弾性率E´を測定した。
<多層フィルムの評価>
スキンパック包装機(MULTIVAC社製T200)において、得られた多層フィルムを蓋材フィルム(ロール幅450mm、ロール外径200mm)として巻き出し側にセットし、下記層構成の成形トレー20(縦200mm×横200mm×深さ20mm)を供給して、半円柱状の冷凍蒲鉾10(長さ100mm×幅50mm×半径30mm)をトレー20に半円の頂点が底面になるように収容し、包装加工温度130℃および150℃(フィルム実測温度110℃および130℃)に設定し蓋材フィルムを加熱して、圧空で蓋材フィルムを内容物とトレーに密着させると同時に蓋材フィルムとトレーの間を真空脱気して熱シールし、また同時にフィルムカットを行い、スキンパック包装品を作製した。
図1に、上記成形性評価の概要を示すイメージ図を示す。
成形トレー(発泡ポリスチレン樹脂シートにシール層を有する多層フィルムをラミネートした構成であり、多層フィルム側を内容物側とする。)
成形トレーの層構成:発泡ポリスチレン樹脂シート(160μm)//PP(10μm)/接着樹脂(5μm)/EVOH(5μm)/接着樹脂(5μm)/PE(15μm)
(スキンパック性)
得られたスキンパック包装品のスキンパック性を以下の基準により評価した。
○:フィルムのしわも内容物の潰れもほとんどなく、内容物の周辺、即ち内容物がトレーに接する際(きわ)の箇所にフィルム浮き、破けも生じなかった。
△:フィルムのしわも内容物の潰れもほとんどなく、内容物の周辺、即ち内容物がトレーに接する際(きわ)の箇所にフィルム浮き、破けも生じなかったが、成形機の熱板とられが発生した。
×:フィルムのしわ、内容物の潰れ、内容物周辺のフィルム浮き、破けの何れかが発生した。あるいは、カット性が悪いため、正確な評価ができなかった。
(カット性)
また、フィルムのカット性を以下の基準で評価した。
○:フィルムがきれいに切れ、フィルム切れ片は見られなかった。
×:フィルムが切れない、または、フィルム切れ片が見られた。
表2に示すように、実施例1〜10はスキンパック性、カット性共に良好であり、スキンパック用包装フィルムとして好適に用いることができた。中でも、実施例8〜10では結晶性PA層をスキンパック包装機の熱板側に配することで、フィルム最外層の耐熱性を上げることができ、高温条件でもスキンパック性が良好となった。比較例1では最外層の結晶性PAの量が多く常温での弾性率が低いためカット性が悪くスキンパック性の正確な評価ができなかった。一方、比較例2では非晶性PAの量が多くガラス転移温度が高いため、110℃での弾性率が高くスキンパック性が悪くなった。
以上より、本発明のスキンパック蓋材用多層フィルムによれば、透明性、ガスバリア性に優れ、かつ複雑な形状の内容物に対しても内容物密着性(スキンパック性)に優れ、加熱用途に使用でき、連続包装時のフィルムカット性も良好であるスキンパック用蓋材を提供することができる。

Claims (9)

  1. 最外層がポリアミド系樹脂を主成分として含み、中間層にガスバリア性樹脂を主成分として含む層を少なくとも1層有し、最内層に隣接する層がアイオノマー樹脂を主成分として含み、最内層がシーラント性樹脂を主成分として含む少なくとも4層を有する多層フィルムであって、下記(I)、(II)を満たすスキンパック蓋材用多層フィルム。
    (I)前記最外層のポリアミド系樹脂が結晶性ポリアミド樹脂および非晶性ポリアミド樹脂を含む
    (II)前記最外層のガラス転移温度が70℃以上110℃以下である
  2. 前記最外層が単層または複数層であり、前記最外層の少なくとも1層がガラス転移温度が70℃以上110℃以下であり、ポリアミド系樹脂が結晶性ポリアミド樹脂および非晶性ポリアミド樹脂を含む層である、請求項1に記載のスキンパック蓋材用多層フィルム。
  3. 110℃、10Hzの条件で測定された貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下である請求項1または請求項2に記載のスキンパック蓋材用多層フィルム。
  4. フィルム総厚が40μm以上200μm以下であり、フィルム総厚に対する最外層の厚さ比が2%以上40%以下であり、フィルム総厚に対する最内層に隣接する層の厚さ比が20%以上90%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のスキンパック蓋材用多層フィルム。
  5. フィルム総厚が40μm以上200μm以下であり、フィルム総厚に対する最外層の厚さ比が2%以上30%以下であり、フィルム総厚に対する最内層に隣接する層の厚さ比が20%以上90%以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載のスキンパック蓋材用多層フィルム。
  6. 前記最外層の結晶性ポリアミド樹脂および非晶性ポリアミド樹脂を含む層において、結晶性ポリアミド樹脂と非晶性ポリアミド樹脂の質量比が、結晶性ポリアミド樹脂:非晶性ポリアミド樹脂=55:45〜15:85の範囲である請求項1〜5のいずれか1項に記載のスキンパック蓋材用多層フィルム。
  7. 前記最外層が、前記結晶性ポリアミド樹脂および非晶性ポリアミド樹脂を含む層と結晶性ポリアミド樹脂を主成分とする層の少なくとも2層を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載のスキンパック蓋材用多層フィルム。
  8. 共押出多層フィルムである、請求項1〜7のいずれか1項に記載のスキンパック蓋材用多層フィルム。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のスキンパック蓋材用多層フィルム、および、内容物を入れるトレーを備えた、スキンパック包装体。
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