JP6439428B2 - 深絞り成形用多層フィルム - Google Patents
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しかしこのようなフィルムは、シール部のカールは抑制されるものの、ポリプロピレン樹脂は、ポリアミド樹脂と比べて透明性と光沢が良くないため、包装体の見栄えが悪くなってしまうという問題がある。また、ポリプロピレン樹脂層を外層に配すると、衝撃等に弱くフィルムの耐ピンホール性が劣り、内容物重量の大きいブロックハム等を包装すると輸送等の振動や衝撃でフィルムの外層からピンホールが発生しやすいという問題がある。
(特許文献2)
本発明のフィルムの外層に用いるポリプロピレン樹脂としては、種類は特には限定されないが、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種から構成されていることが好ましい。
プロピレン系共重合体は、プロピレン比率が50モル%以上である。プロピレンと共重合するモノマーはα−オレフィンであり、例えばエチレン、ブテン等が挙げられる。
融点が40℃未満では、常温で結晶化が進んでしまい透明性が損なわれ、また融点が150℃よりも高いと柔軟性が損なわれ、耐ピンホール性が劣ってしまう。
融点の測定は、JIS K 7121法に準じて測定できる。
混合割合が、5質量%未満の場合は耐ピンホール性が劣ってしまい、70質量%よりも高い場合はシール部のカールを抑制する効果が劣ってしまう。
外層(A)厚みのフィルム総厚みに対する比率を5%以上とすることにより、シール部のカールを抑制でき、15%以下とすることにより、耐ピンホール性の低下を防止することができる。
本発明のフィルムの接着樹脂層(C)は、ポリエチレン系接着樹脂又はポリプロピレン系接着樹脂から構成される。
本発明のフィルムは、各層の層間剥離強度を高める目的で、接着樹脂層を設けることができる。接着層は、一層であってもよいし、複数であってもよい。
特に、外層(A)やポリエチレン系樹脂層(B)等のポリオレフィン系樹脂からなる層と、ポリアミド樹脂層(D)との間に接着樹脂層(C)を配することにより、多層フィルム全体の層間剥離強度バランスをとることが出来て好ましい。
本発明のフィルムの中間層には、耐ピンホール性を付与する目的で、ポリアミド樹脂層を少なくとも1層備える。また、本発明のフィルムの中間層に、ポリアミド樹脂層(D)を2層以上設けることもでき、その場合、各層が異なる種類のポリアミド樹脂で構成されて良い。
また、高度な深絞り成形性を付与する観点では、6−66−12ナイロンを用いることが好ましい。高度な深絞り成形性としては、偏肉が起きず均等な肉厚の成型が出来ること、深絞り金型形状を正に写して容器形状を成型できること等が挙げられる。
前者によって、厚みムラによる薄肉箇所が生じないため、フィルム総厚を薄化しても局所的な強度不足箇所が生じない。また、後者によって、角部をより直角に近い形状に成形出来たり、リブなどの細かい形状を成形することが出来、内容物の形状や性状に適した成形を行うことが出来る。
本発明のフィルムの中間層には、酸素バリア性を付与する目的で少なくとも1層のエチレン酢酸ビニル共重合体けん化物樹脂(以下、EVOHと略記することもある)層を備えてもよい。
また、EVOHのケン化度は90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。
EVOH層(E)の厚み比率を3%以上とすることにより、本発明のフィルムに十分な酸素バリア性を付与することができ、また、厚み比率を20%以下とすることにより、フィルムの耐ピンホール性の低下や製造コストを抑制することができる。
本発明のフィルムのポリエチレン系樹脂層(B)を構成するポリエチレン系樹脂の種類は特には限定されないが、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)のアイオノマー、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)のアイオノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種からなる樹脂から構成されていることが好ましい。
また、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が主成分であることが、耐ピンホール性の点でより好ましい。この場合、主成分とは、層の構成比率が50質量%以上であることを意味する。
エラストマーの種類としては、例えば、各種のエチレン−α−オレフィン共重合体が挙げられ、α−オレフィンとしては、プロピレン、ブテンが好適である。
ポリエチレン系樹脂層(B)厚みのフィルム総厚みの比率を20%以上とすることによりフィルムに適度な柔軟性をもたせることができ、70%以下とすることにより、シール部のカールを防止できる。
本発明のフィルムのシール層(F)を構成するポリオレフィン系樹脂の種類は、特には制限はないが、ポリエチレン系樹脂層(B)を構成する樹脂を使用できる。
また、互いに非相溶のポリオレフィン系樹脂2種類を混合して形成させることにより、イージーピール機能を為すことができる。
本発明のフィルムの層構成は、ポリプロピレン樹脂に融点40℃以上150℃以下のプロピレン−ブテン共重合体を5質量%以上70質量%以下の割合で混合して構成される外層(A)、ポリエチレン系接着樹脂又はポリプロピレン系接着樹脂より構成される接着樹脂層(C)、中間層に少なくとも1層のポリアミド樹脂層(D)、ポリエチレン系樹脂層(B)、ポリオレフィン系樹脂より構成されるシール層(F)の順に層を成す多層フィルムであれば、特に限定されず、必要に応じて、各層間に他の層を配しても良い。
また、ポリアミド樹脂層(D)とEVOH層(E)の層間にポリエチレン系接着樹脂層(B)を設けないことで、製造コストを抑制することができる。
深絞り成形を行う上で、無延伸製法が望ましい。
(深絞り成形用多層フィルムの作製)
下記に記載の原料を用い、無延伸共押出Tダイ法により、表1に記す層構成を有する多層フィルムを作製した。
A−2; 日本ポリプロ製ノバテックPP(ポリプロピレンランダムコポリマー)に三井化学製タフマーXM(プロピレン−ブテン共重合体、融点98℃)を50質量%混合
A−3; 日本ポリプロ製ノバテックPP(ポリプロピレンランダムコポリマー)に三井化学製タフマーXM(プロピレン−ブテン共重合体、融点98℃)を30質量%混合
A−4; 日本ポリプロ製ノバテックPP(ポリプロピレンランダムコポリマー)に三井化学製タフマーXM(プロピレン−ブテン共重合体、融点75℃)を50質量%混合
A−5; 日本ポリプロ製ノバテックPP(ポリプロピレンホモポリマー)に三井化学製タフマーP(エチレン−プロピレン共重合体、融点50度以上)を50質量%混合
A−6;日本ポリプロ製ノバテックPP(ポリプロピレンホモポリマー)にクレイトンポリマー製クレイトン(スチレン系エラストマー)を30質量%混合
P−2; 日本ポリプロ製ノバテックPP(ポリプロピレンランダムコポリマー)
C−2; 三井化学製アドマー(PP系)
D−2: ディーエスエムジャパンエンジニアリングプラスチック製ノバミッド6−66共重合Ny(66Ny比率15%)
D−3: 宇部興産製TERPALEX6−66−12共重合Ny
E−2; 日本合成化学製ソアノール(エチレン含有率38モル%タイプ)
B−2; プライムポリマー製モアテックLL(LLDPE)
B−3; プライムポリマー製モアテックLLに理研ビタミン製リケマスターCNを3質量%混合
上記で作製した多層フィルムを深絞り包装機(大森機械工業社製、FV6300)、直方体の成形型(縦160mm、横110mm、深さ80mm)を用いて深絞り成型して底材とした。次いで、内容物としてネット付きブロックハム400gを入れて蓋材を被せて、内容物の周囲を20mm幅で面シールし、深絞り包装体を作製した。
包装条件は、深絞り成型温度90℃、成型加熱時間2秒、シール温度140℃、シール時間2秒の真空包装とした。
なお、蓋材には、OPPフィルム(東セロ社製、トーセロOP、20μm)に共押出フィルムEVOH(10μm)/Ny(10μm)/接着樹脂(10μm)/LLDPE(30μm)をドライラミネートしたものを使用した。
作製した深絞り包装体を90℃30分のボイル殺菌処理を行った後、水分を拭き取り、冷蔵庫で5℃24時間保管した。
作製した多層フィルムからボイル及び冷蔵処理した深絞り包装体までについて、以下の評価を行い、その結果を表1に記す。
作製した底材について、角(コーナー)部の厚みを測定し、用いた多層フィルム総厚に対する比率(%)を求めた。
直方体形状の底材の角部は、平面の多層フィルムが深絞り成形において最も引き伸ばされる箇所であるため、角部の厚みが薄いほど、型通りに成形されることを意味し、深絞り成形性の適性を評価する一つの尺度となり得る。
作製した多層フィルムと、底材の底面中央部を切り取り、光沢度計(日本電色工業社製、VG2000、標準板G10585)を用い、外層側から測定を行い、光沢度が90以上のものを「○」、90未満のものを「×」と評価した。
作製した深絞り包装体を目視観察し、シール部のカールがほとんどない、またはカールした際にできるシール部が描く弧の直径が70mm未満のものを「○」、70mm以上のものを「×」と評価した。
冷蔵保管処理を行った直後の深絞り包装体20個をダンボール箱に入れて、2.0mの高さより50回垂直落下させ、ピンホールの発生が包装体20個中1個以下のものを「○」、1個より多いものを「×」とした。
本発明は、深絞り成形性と耐衝撃性を兼備する観点から、包装体の角部のピンホール発生有無に特に注意を払い評価を行った。
作製した多層フィルムをMOCON製酸素透過率測定装置OX−TRANを用い、温度23℃相対湿度0%の条件で測定した。
また、耐ピンホール性については、実施例1〜5は、外層に耐ピンホール性に優れたポリアミド樹脂層を配した比較例6と同等あるいはそれ以上に良好であった。
光沢については、実施例1〜5は、多層フィルムの形態及びボイルから冷蔵処理を施した包装体においても良好であり、外層に光沢性の良いポリアミド樹脂層を配した比較例6と比べても同等あるいはそれ以上であった。
Claims (5)
- 多層フィルムにおいて、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー、ポリプロピレンブロックコポリマーから選ばれる少なくとも1種から構成されているポリプロピレン樹脂に融点40℃以上100℃以下のプロピレン−ブテン共重合体を5質量%以上70質量%以下の割合で混合して構成される外層(A)、ポリエチレン系接着樹脂又はポリプロピレン系接着樹脂より構成される接着樹脂層(C)、中間層に少なくとも1層のポリアミド樹脂層(D)、ポリエチレン系樹脂層(B)、ポリオレフィン系樹脂より構成されるシール層(F)の順に層を成すことを特徴とする深絞り成形用多層フィルム。
- 外層(A)の厚みが、総厚みの5%以上15%以下である請求項1に記載の深絞り成形用多層フィルム。
- 外層(A)と接着樹脂層(C)との間にポリオレフィン系樹脂層を有する請求項1または2に記載の深絞り成形用多層フィルム。
- 中間層に、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物樹脂層(E)を有する請求項1〜3に記載の深絞り成形用多層フィルム。
- ポリアミド樹脂層(D)の厚みが、フィルムの総厚みに対して30%以上70%以下である請求項1〜4に記載の深絞り成形用多層フィルム。
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